(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】タンタルナノ複合体及びその製造方法と応用、リンパトレーサ、放射線治療増感剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/24 20190101AFI20240423BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240423BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240423BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240423BHJP
A61K 51/06 20060101ALI20240423BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/56 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/60 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/62 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/64 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240423BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K33/24
B22F1/00 R
B22F1/05
B22F1/102
A61P35/00
A61K51/04
A61K51/04 300
A61K51/06
A61K51/08
A61K51/04 310
A61K51/04 100
A61K51/06 100
A61K51/08 100
A61K9/56
A61K9/60
A61K9/62
A61K9/64
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534977
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2022112635
(87)【国際公開番号】W WO2023061030
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202111203003.1
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508085682
【氏名又は名称】インスティテュート オブ ハイ エナジー フィジックス チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】谷戦軍
(72)【発明者】
【氏名】紀超
(72)【発明者】
【氏名】趙茂如
(72)【発明者】
【氏名】董興華
(72)【発明者】
【氏名】朱双
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4K018
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076CC27
4C076CC50
4C076DD01
4C076DD41
4C076DD63
4C076DD69
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE37
4C076EE41
4C076FF67
4C076GG01
4C076GG16
4C084AA11
4C085HH05
4C085JJ03
4C085KB07
4C085KB42
4C085KB68
4C085KB74
4C085KB75
4C085KB79
4C085KB82
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZC80
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC30
4K018BD10
4K018KA70
(57)【要約】
本発明は、タンタルナノ複合体及びその製造方法と応用、放射線治療増感剤、リンパトレーサに関する。本発明に係るタンタルナノ複合体は、タンタルナノ粒子と、前記タンタルナノ粒子に作用する生物界面活性剤とを含む。本発明に係るタンタルナノ複合体は、高い生物学的安全性を有し、放射線治療増感剤として、放射線治療効果を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタルナノ粒子と、前記タンタルナノ粒子の表面に被覆された生物界面活性剤とを含む、
ことを特徴とするタンタルナノ複合体。
【請求項2】
前記生物界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ツイーン20、ポリ乳酸及びキトサンのうちの一種又は複数種を含むポリマー界面活性剤を含み、前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、58000であり、前記ポリ乳酸の重量平均分子量は、60000であり、前記キトサンの重量平均分子量は、3200である、
ことを特徴とする請求項1に記載のタンタルナノ複合体。
【請求項3】
前記生物界面活性剤は、糖脂質、リポペプチド、リポタンパク質、脂肪酸、リン脂質及び中性脂質を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のタンタルナノ複合体。
【請求項4】
前記タンタルナノ粒子の粒径は、70~200nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のタンタルナノ複合体。
【請求項5】
前記タンタルナノ粒子、前記生物界面活性剤及び水を含む混合物を提供するステップと、 前記混合物にボールミリング処理を行い、前記タンタルナノ複合体を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のタンタルナノ複合体の製造方法。
【請求項6】
前記水における前記生物界面活性剤の濃度は、0.2~1g/mLであり、及び/又は、 前記生物界面活性剤及び水の質量の和と前記タンタルナノ粒子との質量比は、1:1~5:1である、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
混合物を提供するステップは、 生物界面活性剤を水に溶解し、生物界面活性剤の水溶液を得るステップと、 前記生物界面活性剤の水溶液とタンタルナノ粒子とを混合するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ボールミリング処理の回転速度が100~300rpmであり、時間が1~3hであり、前記ボールミリング処理が完了した後、前記ボールミリング処理後の混合物に遠心分離処理を行うステップをさらに含み、前記遠心分離処理の回転速度が12000rpmであり、時間が10minである、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のタンタルナノ複合体又は請求項5~8のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたタンタルナノ複合体を含む、
ことを特徴とするリンパトレーサ。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載のタンタルナノ複合体又は請求項5~8のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたタンタルナノ複合体を含む、
ことを特徴とする放射線治療増感剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタルナノ材料の技術分野に係り、特にタンタルナノ複合体及びその製造方法と応用、リンパトレーサ、放射線治療増感剤に関する。
【0002】
本願は、2021年10月15日に中国国家知識産権局に提出された、出願名称が「タンタルナノ複合体及び該タンタルナノ複合体を含有するリンパトレーサ、放射線治療増感剤」である中国特許出願第CN202111203003.1号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
悪性腫瘍は、全世界の範囲内で人の生命健康を脅威する疾患であり、リンパ循環は、腫瘍転移の主な経路であり、センチネルリンパ節は、腫瘍領域のリンパ循環を最も早く受け、かつ腫瘍転移が最初に発生する結腸周囲リンパ節である。センチネルリンパ節に腫瘍転移がなければ、該領域の他のリンパ節に腫瘍転移が発生する確率が小さい。しかしながら、腫瘍領域のリンパ節は、一般的に結合組織に隠され、直接観測しにくいため、リンパ節に染色追跡を行って癌転移のリンパ節を認識し、かつそれを徹底的に除去する必要がある。
【0004】
また、放射線治療も腫瘍の成長を抑制する治療方式の1つであり、低用量X線が腫瘍を効果的に抑制することができず、高用量X線が正常な組織への損傷を増加させるため、放射線治療の効果を制限する。
【0005】
したがって、本分野では、生体適合性が高く、リンパ追跡及び/又は放射線治療増感作用を果たすことができる材料を得ることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記分析に鑑み、本発明の一実施形態は、放射線治療効果を向上させるタンタルナノ複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明の一実施形態は、タンタルナノ粒子と、前記タンタルナノ粒子に作用する生物界面活性剤とを含むタンタルナノ複合体を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記生物界面活性剤は、ポリマー界面活性剤を含む。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記ポリマー界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ツイーン20、ポリ乳酸、キトサンのうちの一種又は複数種を含む。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記タンタルナノ粒子の粒径は、70~200nmである。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記タンタルナノ複合体の製造方法は、 前記タンタルナノ粒子、前記生物界面活性剤及び水を含む混合物を提供するステップと、 前記混合物にボールミリング処理を行うステップと、を含む。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記水における前記生物界面活性剤の濃度は0.2~1g/mLであり、及び/又は、 前記生物界面活性剤及び水の質量の和と前記タンタルナノ粒子との質量比は、1:1~5:1である。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記ボールミリング処理の回転速度は、100~300rpmであり、時間は、1~3hである。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記製造方法は、前記ボールミリング処理後の混合物に遠心分離処理を行うステップをさらに含む。
【0015】
他の態様において、本発明の一実施形態は、上記いずれか一項のタンタルナノ複合体を含むリンパトレーサを提供する。
【0016】
本発明の一実施形態は、上記いずれか一項のタンタルナノ複合体を含む放射線治療増感剤をさらに提供する。
【0017】
本発明の一実施形態は、上記いずれか一項のタンタルナノ複合体のリンパトレーサ及び/又は放射線治療増感剤としての応用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べて、本発明は、少なくとも以下の有益な効果の1つを達成することができる。
【0019】
1、本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体は、高い生物学的安全性を有し、放射線治療増感剤として、放射線治療効果を向上させることができる。
【0020】
2、本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体は、リンパ節を染色することにより、リンパ節を追跡して、リンパ節の除去を容易にすることができる。
【0021】
本発明において、上記各技術手段を互いに組み合わせることにより、より多くの好ましい組み合わせ解決手段を実現することができる。本発明の他の特徴及び利点は、以下の明細書に説明され、かつ、一部の利点は、明細書から明らかになるか、又は本発明を実施することにより理解することができる。本発明の目的及び他の利点は、明細書及び図面に特別に指摘された内容により実現して取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面は、具体的な実施例を示す目的のためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
【
図1】実施例1のタンタルナノ複合体の分散液の実物写真である。
【
図2】実施例1のタンタルナノ複合体の透過型電子顕微鏡図である。
【
図3】実施例1のタンタルナノ複合体のX線回折スペクトルである。
【
図4】実施例1-4から得られたタンタルナノ複合体のローダミンBに対する分解率図である。
【
図5a】実施例1の対照1群の細胞クローン写真である。
【
図5b】実施例1の実施例1-1群の細胞クローン写真である。
【
図5c】実施例1の対照2群の細胞クローン写真である。
【
図5d】実施例1の実施例1-2群の細胞クローン写真である。
【
図6a】実施例1のタンタルナノ複合体の分散液を注射する前のマウスの両足パッドのリンパ節写真である。
【
図6b】実施例1のタンタルナノ複合体の分散液を注射した後のマウスの両足パッドのリンパ節写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を具体的に説明し、図面は、本発明の一部を構成し、かつ本発明の実施形態とともに本発明の原理を説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
本発明の一実施形態は、タンタルナノ粒子と、タンタルナノ粒子に作用する生物界面活性剤とを含むタンタルナノ複合体又はタンタルナノ材料を提供する。
【0026】
本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体において、タンタルは、高い生体適合性及び高い高エネルギー放射線エネルギー堆積能力を有し、放射線治療増感剤に用いられ、生物学的安全性及び放射線治療効果を向上させることができ、具体的には、放射線治療においてタンタルナノ複合体を添加した後、同じ用量のX線を使用すると、より強い細胞損傷を引き起こし、強化効果を体現する一方で、 生物界面活性剤を用いてタンタルナノ粒子を修飾することにより、それをタンタルナノ粒子の表面に被覆して、タンタルナノ複合体全体の水中での分散性を向上させ、該タンタルナノ複合体を放射線治療増感剤として使用することに役立つ。
【0027】
一実施形態において、タンタルナノ粒子の粒径は、70~200nm、例えば、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、180nm、200nmなどであってもよい。
【0028】
一実施形態において、使用された生物界面活性剤は、分解可能なポリマーであってもよく、無毒、生分解性、生態安全及び高界面活性などの利点を有する。生物界面活性剤は、多くの異なる種類、具体的には、糖脂質、リポペプチド及びリポタンパク質、脂肪酸、リン脂質、中性脂質及びポリマー界面活性剤を含んでもよい。
【0029】
一実施形態において、生物界面活性剤は、高い生体適合性を有し、ポリマー界面活性剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ツイーン20、ポリ乳酸、キトサンなどのうちの一種又は複数種であってもよい。
【0030】
一実施形態において、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、58000であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体は、物理吸着作用により製造することができる。
【0032】
本発明の一実施形態は、 生物界面活性剤を水と混合し、第1混合物を得るステップと、 タンタルナノ粒子(タンタル粉末)を第1混合物と混合し、第2混合物を得て、第2混合物にボールミリング処理を行うことにより、生物界面活性剤をタンタルナノ粒子の表面に吸着し、生物界面活性剤及びタンタルナノ粒子で構成されたタンタルナノ複合体を形成するステップと、 上記タンタルナノ複合体を含有する体系に遠心分離処理を行うことにより、遊離の生物界面活性剤を除去し、タンタルナノ複合体を得るステップと、を含む、上記タンタルナノ複合体の製造方法をさらに提供する。
【0033】
一実施形態において、タンタルナノ複合体を製造する水は、超純水であってもよい。
【0034】
一実施形態において、第1混合物は、ポリビニルピロリドンの水溶液であってもよく、その濃度が0.2~1g/mL、例えば、0.5g/mL、0.6g/mL、0.8g/mL、1g/mLであってもよい。
【0035】
一実施形態において、使用されたタンタル粉末と第1混合物(例えば、ポリビニルピロリドンの水溶液)との質量比は、1:1~1:5、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5である。
【0036】
一実施形態において、ボールミリング処理過程のボールミリング回転速度は、100rpm~300rpm、例えば、100rpm、150rpm、200rpm、250rpm、300rpmであってもよく、ボールミリング時間は、1~3h、例えば、1.5h、2h、2.5h、3hであってもよい。
【0037】
一実施形態において、遠心分離処理の回転速度は、12000rpmであってもよく、遠心分離時間は、10minであってもよい。
【0038】
本発明の一実施形態は、上記タンタルナノ複合体を含むリンパトレーサをさらに提供する。
【0039】
本発明の一実施形態は、上記タンタルナノ複合体を含む放射線治療増感剤をさらに提供する。
【0040】
本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体は、X線エネルギー堆積を強化し、さらにラジカルの生成を効果的に強化することにより、放射線治療増感剤として使用することができる。
【0041】
本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体は、リンパ染色追跡の性能を有し、リンパトレーサとして使用することができる。具体的には、使用時にタンタルナノ複合体を水に分散して分散液を形成し、生体内(例えば、人体)に直接注射してもよく、注射後にタンタルナノ複合体を含有する液体は、リンパ節に流れ、リンパ節を染色することにより、リンパ節の追跡を行い、さらにリンパ節の除去を容易にし、リンパ節を除去する手術に使用することができる。
【0042】
本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体は、高い生物学的安全性を有するとともに、リンパ追跡及び放射線治療増感に使用することができ、リンパ追跡及び放射線治療増感の一体化を実現することができ、ナノ医学及び腫瘍抑制などの分野に広い応用の将来性を有する。
【0043】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明の一実施形態のタンタルナノ複合体の製造及び応用をさらに説明する。実施例に使用された原料は、いずれも市販により取得することができる。使用されたタンタル粉末は、徐州捷創新材料科技有限公司から購入され、タンタルナノ粒子の平均粒径は、70nmであり、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、58000であり、ポリ乳酸の重量平均分子量は、60000であり、キトサンの重量平均分子量は、3200である。
【実施例1】
【0044】
まず本発明の実施例1について説明する。
タンタルナノ複合体の製造 (1)ポリビニルピロリドンを超純水に溶解し、濃度が1g/mLのポリビニルピロリドンの水溶液を得る。
【0045】
(2)タンタル粉末とステップ(1)で得られたポリビニルピロリドンの水溶液とを混合し、両者の質量比を1:5とする。得られた混合物をボールミリングし、ボールミリング回転速度を300rpmとし、ボールミリング時間を3hとする。
【0046】
(3)ボールミリング後の混合液に遠心分離処理を行い、遠心分離の回転速度を12000rpmとし、遠心分離の時間を10minとし、次に遠心分離生成物を超純水に再分散し、ポリビニルピロリドンで修飾されたタンタルナノ材料(タンタルナノ複合体)の分散液を得る。
【0047】
図1は、ポリビニルピロリドンで修飾する前後の原料のタンタル粉末をそれぞれ水と生理食塩水に分散させた場合での写真である。
図1から分かるように、水におけるタンタルナノ複合体の分散性が水におけるタンタルナノ粒子の分散性よりはるかに優れることにより、製造されたタンタルナノ複合体において、ポリビニルピロリドンがタンタルナノ粒子の表面に作用することにより、タンタルナノ粒子の分散性を向上させることを十分に示す。
【0048】
透過型電子顕微鏡によるタンタルナノ複合体の特徴付け 上記得られたタンタルナノ複合体を透過型電子顕微鏡により特徴付け、得られた電子顕微鏡写真は、
図2を参照し、
図2からタンタルナノ複合体におけるナノ粒子の粒径が約70ナノメートルであることが分かり、ポリビニルピロリドンの修飾がタンタルナノ粒子のサイズに実質的な影響を与えないことを示す。
【0049】
X線回折によるタンタルナノ複合体の特徴付け 上記得られたタンタルナノ複合体をX線回折により特徴付け、得られたスペクトルは、
図3に示すとおりである。
図3から分かるように、標準的なJCPDSスペクトルに比べて、実施例1のスペクトルに他の不純物ピークがないため、使用されたタンタル粉末は、純度が非常に高いタンタル単体ナノ材料であり、他の不純物をほとんど含有することを示す。
【0050】
タンタルナノ複合体のラジカル生成能力の特徴付け ローダミンBは、典型的にその分解によりインビトロラジカル生成を研究するモデルであり、554nm箇所に特徴的な吸収ピークを有し、それがラジカルと反応した後、特徴的な吸収ピークの吸収値が低下し、吸収値の低下程度によりラジカル生成の効果を評価することができる。以下、この原理に基づいて上記タンタルナノ複合体のラジカル生成に対する能力を評価する。
【0051】
対照群について、X線管(50kV、75μA)により濃度が5μg/mLのローダミンB溶液を10min照射する。
【0052】
実施例1-4群について、X線管(50kV、75μA)によりそれぞれ5μg/mLのローダミンBと実施例1-4で製造された250μg/mLのタンタルナノ複合体とを含有する溶液を10min照射する。
【0053】
図4は、上記照射の吸光度を示し、分かるように、対照群における吸光度は、0.8に近く、実施例1-4における吸光度は、いずれも約0.5である。タンタルナノ複合体を添加した後、ローダミンBの特徴的な吸収ピークの吸収値が低下することを示し、さらにタンタルナノ複合体がX線励起で高いラジカル生成能力を有することを示す。
【0054】
タンタルナノ複合体の放射線治療増感能力の測定 細胞クローンは、細胞増殖能力を測定する方法であり、以下、異なる処理群の細胞クローン実験への影響を評価することによりタンタルナノ複合体の放射線治療増感効果を説明する。
【0055】
乳癌腫瘍細胞を六ウェルプレートに接種し、各ウェルが1000細胞であり、24h後に六ウェルプレートに完全培地溶液を交換し、7日後にパラホルムアルデヒドで固定してギムザで染色し、得られた体系を対照1群と命名し、その写真は、
図5aに示すとおりであり、 乳癌腫瘍細胞を六ウェルプレートに接種し、各ウェルが1000細胞であり、24h後に六ウェルプレートに濃度が250μg/mLの上記製造されたポリビニルピロリドンで修飾されたタンタルナノ複合体の完全培地溶液を交換し、7日後にパラホルムアルデヒドで固定してギムザで染色し、得られた体系を実施例1-1群と命名し、その写真は、
図5bに示すとおりであり、 乳癌腫瘍細胞を六ウェルプレートに接種し、各ウェルが1000細胞であり、24h後に六ウェルプレートに完全培地溶液を交換し、かつそれに6GyのX線照射を行い、7日後にパラホルムアルデヒドで固定してギムザで染色し、得られた体系を対照2群と命名し、その写真は、
図5cに示すとおりであり、 乳癌腫瘍細胞を六ウェルプレートに接種し、各ウェルが1000細胞であり、24h後に六ウェルプレートに濃度が250μg/mLの上記製造されたポリビニルピロリドンで修飾されたタンタルナノ複合体の完全培地溶液を交換し、かつそれに6GyのX線照射を行い、7日後にパラホルムアルデヒドで固定してギムザで染色し、得られた体系を実施例1-2群と命名し、その写真は、
図5dに示すとおりである。
【0056】
図5a~5dから分かるように、X線で照射されない対照1群(
図5a)及び実施例1-1群(
図5b)では、いずれもより多くの細胞クローンを有し、X線で照射された対照2群内に少ないクローンを形成し、タンタルナノ複合体を含有する実施例1-2群には、X線作用下(6Gy)で個別のX線群(対照2群)に比べて、より少ないクローンを形成することができるため、タンタルナノ複合体がより高い放射線治療増感の能力を有することを示す。
【0057】
タンタルナノ複合体のリンパ追跡能力の測定 BALB/c雄マウスの両足パッドに上記タンタルナノ複合体の水分散液(75mg/mL、75μL)を注射し、90分間後にリンパ節の染色状況を観察し、かつマウスを殺してリンパ節を取り出して観察する。
図6aは、タンタルナノ複合体の水分散液を注射する前のマウスリンパ節写真であり、
図6bは注射した後の写真であり、
図6bの矢印で示す部位の注射前後の色変化は、膝窩リンパ節と腸骨リンパ節がいずれも高い染色効果を有することを示し、さらにタンタルナノ複合体がリンパ染色追跡の能力を有することを示す。
【実施例2】
【0058】
次に本発明の実施例2について説明する。
本実施例は、実施例1と同じ原料、ステップを用い、用いられた生物界面活性剤がツイーン20であるという点のみで相違する。得られたタンタルナノ複合体のラジカル生成能力の特徴付け結果を
図4に示す。
【実施例3】
【0059】
次に本発明の実施例3について説明する。
本実施例は、実施例1と同じ原料、ステップを用い、用いられた生物界面活性剤がポリ乳酸であるという点のみで相違する。得られたタンタルナノ複合体のラジカル生成能力の特徴付け結果を
図4に示す。
【実施例4】
【0060】
次に本発明の実施例4について説明する。
本実施例は、実施例1と同じ原料、ステップを用い、用いられた生物界面活性剤がキトサンであるという点のみで相違する。得られたタンタルナノ複合体のラジカル生成能力の特徴付け結果を
図4に示す。
【0061】
上記結果により、本発明の実施例のタンタルナノ複合体が、X線照射で腫瘍部位のラジカルの生成量を向上させ、放射線治療の効果を向上させることができることを十分に示す。また、本発明の実施例のタンタルナノ複合体は、さらにリンパ節の染色追跡を行うことにより、リンパ節の除去を容易にすることができる。
【0062】
以上の記載は、本発明の好ましい具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲は、これに限定されるものではなく、本発明に開示された技術的範囲内で、任意の当業者が容易に想到できる変更又は置換は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】