(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01R 31/3828 20190101AFI20240423BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240423BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240423BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01R31/3828
G01R31/385
H01M10/48 P
H02J7/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535579
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2023084108
(87)【国際公開番号】W WO2023185741
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210345240.X
(32)【優先日】2022-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523187376
【氏名又は名称】深▲せん▼市徳蘭明海新能源股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN POWEROAK NEWENER CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】F19,BLD NO.1, Kaidaer,Tongsha Rd No.168, Xinwei Community, Xili Street,Nanshan,Shenzhen, Guangdong 518000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】馬輝
(72)【発明者】
【氏名】雷健華
(72)【発明者】
【氏名】李賢任
(72)【発明者】
【氏名】尹相柱
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB03
2G216BA02
2G216BA16
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503EA05
5G503EA07
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS14
5H030FF41
(57)【要約】
本出願は、SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体を開示し、主に、モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出して、単位電気量を順次にステップ的に重畳し、モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出して、累積電気量の絶対値と固定ステップサイズの電気量の値とを比較し、比較結果に基づいてSOC値に固定ステップサイズを累加/累減し、又はSOC値をそのまま保持し、次の時点の累積電気量の開始値を得る。このようにしてモバイル電源のSOC値を取得することで、実際のプログラミングにおいて、既存のSOC推定方法の除算の代わりにif判定と加減算のみを用いることができ、SOCを推定する時の計算量を大幅に減らし、算出資源の消費及び記憶空間の占用を低減し、チップの演算能力と周辺機器の資源に対する要求を大幅に低下し、設備のエネルギー消費を低減し、SOC推定速度を高めて、算出の安定性を高める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル電源に適用されるSOC推定方法であって、
ステップS1.前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出することと、
ステップS2.単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出することと、
ステップS3.前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得することと、
ステップS4.SOC値の更新後、前記累積電気量が変化し続ける場合、ステップS2-S3をサイクルしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存することと、を含み、
前記ステップS3は、
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値以上である場合、前記モバイル電源の充放電状態に応じて前の時点のSOC値に前記固定ステップサイズを加算又は減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算又は加算して次の時点の累積電気量の開始値を得ることと、
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、前の時点のSOC値を現在のSOC値として保持し、かつ前記累積電気量を次の時点の累積電気量の開始値として保存することと、を含むことを特徴とするSOC推定方法。
【請求項2】
前記ステップS1は、
第1の式から前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を取得することを含み、ここで、前記第1の式が、以下の通りであり:
ここで、ΔCは固定ステップサイズの電気量の値であり、Cは前記モバイル電源の電池の定格容量であり、Pは固定ステップサイズであり、λは環境温度によって変化する比例係数であり、I
maxは極端な場合での前記モバイル電源が耐えられる最大過電流値であり、T
2は前記モバイル電源のSOCの算出周期であること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS2は、第2の式から前記単位電気量を算出することを含み、ここで、前記第2の式が、以下の通りであり:
【請求項4】
前記ステップS2は、第2の式から前記単位電気量を算出することを含み、ここで、前記第2の式が、以下の通りであり:
【請求項5】
前記ステップS2は、
第3の式から前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出することを含み、ここで、前記第3の式は、以下の通りであり:
【請求項6】
前記方法は、前記モバイル電源の充放電終端段階で前記ステップS3で得られた現時点のSOC値を補正することをさらに含むこと、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
前記モバイル電源の充電中に、前記モバイル電源の電圧Uが充電終端電圧の閾値U
upより大きく、かつ前記モバイル電源のSOC値が満充電にならないと、補正プロセスを導入することを含み、補正の式は、以下の通りであり:
【請求項8】
上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
前記モバイル電源の放電中に、前記モバイル電源の電圧Uが放電終端電圧の閾値U
deより小さく、かつ前記モバイル電源のSOC値が空にならないと、補正プロセスを導入することを含み、補正の式は、以下の通りであり:
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに通信接続されるメモリと、を備えるモバイル電源であって、
前記メモリに前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なコマンドが記憶され、前記コマンドは前記少なくとも1つのプロセッサによって実行され、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行させることができる、ことを特徴とするモバイル電源。
【請求項10】
コンピュータで実行可能なコマンドが記憶される読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータで実行可能なコマンドは、コンピュータに請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行させるために用いられるものである、ことを特徴とする読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年04月02日付けに中国特許局に提出された202210345240.Xという出願号である中国特許出願(出願名称:「SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体」)による優先権を請求し、その全体内容が引用の方式によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、モバイル電源のSOC推定という技術分野に関し、特に、SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、市場では、携帯用のマイクロ小型のエネルギー貯蔵製品に対して、電子製品のコストが高騰するため、各メーカーもコストのより安い代替品を続々と探し始めている。代替品を選択するときに、通常、安価で演算能力が弱いチップを選択し、又はチップの周辺機器の資源と性能を絶えず圧縮する。しかしながら、マイクロ小型のモバイル電源類の製品では、SOC(荷電状態)推定などのような関連演算が比較的多く、高性能で演算能力が高く、演算速度が速いチップだけを適用できる。演算を簡素化せずに安価なチップだけを追求すると、必然的に適応できなく、そして互換できない。
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記の問題を解決するために、本出願の実施形態は、SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0006】
上記の技術的問題を解決するために、本出願の実施形態が採用する技術試案は、以下の通りである:モバイル電源に適用されるSOC推定方法が提供されており、前記方法は、
ステップS1.前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出すること;
ステップS2.単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出すること;
ステップS3.前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得すること;
ステップS4.SOC値の更新後、前記累積電気量が変化し続ける場合、ステップS2-S3をサイクルしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存すること、を含む。
【0007】
任意的に、前記ステップS1は、
第1の式から前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を取得すること(ここで、前記第1の式が、以下の通りである:
ここで、ΔCは固定ステップサイズの電気量の値であり、Cは前記モバイル電源の電池の定格容量であり、Pは固定ステップサイズであり、λは環境温度によって変化する比例係数であり、I
maxは極端な場合での前記モバイル電源が耐えられる最大過電流値であり、T
2は前記モバイル電源のSOCの算出周期である)を含む。
【0008】
任意的に、前記ステップS2は、第2の式から前記単位電気量を算出すること(ここで、前記第2の式が、以下の通りである:
【0009】
任意的に、前記ステップS2は、
第3の式から前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出すること(ここで、前記第3の式は、以下の通りである:
ここで、Qstは累積電気量の開始値を表し、Nは正の整数である)を含む。
【0010】
任意的に、前記ステップS3は、
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値以上である場合、前記モバイル電源の充放電状態に応じて前の時点のSOC値に前記固定ステップサイズを加算又は減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算又は加算して次の時点の累積電気量の開始値を得ること;
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、前の時点のSOC値を現在のSOC値として保持し、かつ前記累積電気量を次の時点の累積電気量の開始値として保存すること、を含む。
【0011】
任意的に、前記方法は、前記モバイル電源の充放電終端段階で、ステップS3で得られた現時点のSOC値を補正することをさらに含む。
【0012】
任意的に、上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
ここで、SOC'は充電時の補正後のSOC値であり、SOCは補正前のSOC値であり、αは充電補正パラメータである)を含む。
【0013】
任意的に、上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
【0014】
上記の技術的問題を解決するために、本出願の実施形態が採用する別の技術試案は、以下の通りである:モバイル電源が提供されており、前記モバイル電源は、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに通信接続されるメモリと、を備えており、
前記メモリに前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なコマンドが記憶され、前記コマンドは前記少なくとも1つのプロセッサによって実行され、前記少なくとも1つのプロセッサに前記荷電状態の算出方法を実行させることができる。
【0015】
上記の技術的問題を解決するために、本出願の実施形態が採用する別の技術試案は、以下の通りである:読み取り可能な記憶媒体が提供されており、前記読み取り可能な記憶媒体にコンピュータ実行可能なコマンドが記憶され、前記コンピュータ実行可能なコマンドが前記荷電状態の算出方法をコンピュータに実行させるためのものである。
【0016】
有益な効果は、以下の通りである:本出願は、以上のようなSOC推定方法を採用することで、実際のプログラミングにおいて、既存のSOC推定方法の除算の代わりにif判定と加減算のみを用いることができ、SOCを推定する時の計算量を大幅に減らし、算出資源の消費及び記憶空間の占用を低減し、チップの演算能力と周辺機器の資源に対する要求を大幅に低下し、設備のエネルギー消費を低減し、SOC推定速度を高めて、算出の安定性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0017】
1つまたは複数の実施例は、その対応する図面によって例示的に説明され、それらの例示的な説明は実施例に対する限定を構成するものではなく、図面において、同じ参照数字ラベルを有する要素は類似的な要素であることを表し、特に断らない限り、図面中の図はスケールを制限しない。
【
図1】本出願の実施例によって提供される応用場面の模式図である。
【
図2】本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法を実行するコントローラの構成模式図である。
【
図3】本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法のフローチャートである。
【
図4】本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法のプロセス模式図である。
【
図5】本出願の実施例によって提供されるモバイル電源の充電開始からある時点までの累積電気量の模式図である。
【
図6】本出願の実施例によって提供されるモバイル電源の充電開始から充電終了までの累積電気量の模式図である。
【
図7】本出願の実施例によって提供されるモバイル電源の充電時のSOC推定曲線の比較図である。
【
図8】本出願の実施例によって提供されるSOC推定装置の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願の目的、技術試案及び利点をより明らかにするために、以下、本出願を図面及び実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ここに説明される具体的な実施例は本出願を説明するためだけに使用されており、本出願を限定するために使用されるものではないことが理解されるべきである。
【0019】
なお、本出願の実施例における各特徴は、衝突しない場合、互いに組み合わせることができ、いずれも本出願による保護範囲内にある。また、装置の模式図において、機能モジュールの分割を行って、かつフローチャートに論理的な手順を示したが、いくつかの場合には、装置の模式図におけるモジュールの分割、あるいはフローチャートにおける手順と異なる分割、あるいは手順で、示されるあるいは説明されるステップを実行してもよい。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本出願の技術分野に属する技術者によって一般的に理解される意味と同じである。本出願の明細書で用いられる用語は、具体的な実施形態を説明するためのものだけであり、本出願を制限するためのものではない。本明細書で用いられる用語「及び/又は」は、関連するリスト項目のうちの1つまたは複数の任意の及びすべての組み合わせを含む。
【0021】
本出願におけるモバイル電源とは、画面表示部(SOC値の表示可能)を有し、デジタル製品及び小型の家庭電器などに電力を供給できる携帯用のマイクロ小型のエネルギー貯蔵電源である。
【0022】
前記SOC推定方法及び装置は、モバイル電源のSOC推定プロセスに適用されることができる。
図1に示すように、
図1は、本出願の実施例によって提供される応用場面であり、この応用場面は、電力網10と、負荷20と、モバイル電源30とを備えており、前記モバイル電源30は前記電力網10と前記負荷20とにそれぞれ接続され、前記モバイル電源30がコントローラ31とディスプレイ32とを含み、前記コントローラ31と前記ディスプレイ32とが接続する。前記モバイル電源30とは、自身が電気エネルギーを蓄えることができる携帯充電器であり、前記モバイル電源30の作動状態は充電状態及び放電状態を含み、前記電力網10は前記モバイル電源30に対して充電するためのものであり、前記モバイル電源30は前記負荷20に対して放電するためのものであり、前記モバイル電源30の充放電時に、前記コントローラ31は、前記モバイル電源30の現在のSOC値、即ち前記モバイル電源30の現在の電気量を表示するようにディスプレイ32を制御し、ここで、前記ディスプレイ32の表示には、数字1-100を含むが、これに限定されなく、前記モバイル電源30の充電時に、前記ディスプレイ32に表示される数字が徐々に上昇し、前記モバイル電源30の放電時に、前記ディスプレイ32に表示される数字が徐々に低下する。さらに、前記SOC値とは、前記モバイル電源の満充電状態での容量に対する前記モバイル電源の残存容量の比であり、前記SOCの取りうる値の範囲は0%~100%であり、前記SOCの値が0%に等しい時に、前記モバイル電源の放電が完全的に行われることを示し、前記SOCの値が100%である時に、前記モバイル電源が満充電状態にあることを示しており、前記SOCの取りうる値を知ることにより、前記モバイル電源の運転を制御することができる。
【0023】
【0024】
ここで、前記電力網10は、商用電源であってもよいし、前記モバイル電源30に対して充電できる任意の設備であってもよい。前記負荷20は、無線電話、ノート型コンピューターなどの手持ち式のモバイル設備の電子製品を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本出願の一つの実施例では、
図2に示すように、前記コントローラ31は、少なくとも1つのプロセッサ311(
図2において、1つのプロセッサ311を例にとる)と、前記少なくとも1つのプロセッサ311に通信接続されるメモリ321(
図2において、バスで接続されることを例にとる)と、を備える。
【0026】
ここで、前記メモリ321に前記少なくとも1つのプロセッサ311によって実行可能なコマンドが記憶され、前記コマンドは前記少なくとも1つのプロセッサ311によって実行され、前記少なくとも1つのプロセッサ311に下記のSOC推定方法を実行させることができる。
【0027】
メモリ321は、一つのコンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体として、本出願の実施例におけるSOC推定方法に対応するプログラムコマンド/モジュールのような、不揮発性ソフトウェアプログラム、コンピュータで実行可能な不揮発性プログラム及びモジュールを記憶することに用いられることができる。プロセッサ311は、メモリ321に記憶される不揮発性ソフトウェアプログラム、コマンド及びモジュールを実行することによって、モバイル電源30の各種の機能アプリ及びデータ処理を実行し、即ち、下記の方法の実施例におけるSOC推定方法を実現する。
【0028】
メモリ321は、プログラム記憶領域とデータ記憶領域を含んでもよく、ここで、プログラム記憶領域には、システム、少なくとも1つの機能を取り扱うために必要であるアプリプログラムを記憶できる。また、メモリ321は、高速ランダムアクセスメモリを含んでもよく、不揮発性メモリを含んでもよい。例えば、少なくとも1つの磁気ディスクメモリデバイス、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体メモリデバイスを含む。いくつかの実施例では、メモリ321は、オプションとしてプロセッサ311に対して遠隔に設置されるメモリを含む。
【0029】
前記1つ又は複数のモジュールは前記メモリ321に記憶され、かつ前記1つ又は複数のプロセッサ311により実行される時に、下記のいずれの方法の実施例におけるSOC推定方法を実行し、例えば、以下に説明される
図3における方法のステップを実行する。
【0030】
前記モバイル電源30には、本出願の実施例によって提供される方法をよりよく実行するために他の装置も接続され、例えば、ディスプレイスクリーンや他のディスプレイを電気的に接続することができ、ターゲットユーザの通信設備を遠隔通信で接続することができるなど、ここで一つ一つ述べない。
【0031】
上記のモバイル電源30は、本出願の実施例によって提供される方法を実行でき、方法の実行に対応する機能モジュールを備える。本実施例において詳細に説明しない技術細部については、本出願の実施例によって提供される方法を参照できる。
【0032】
図3と
図4を参照して、
図3は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法のフローチャートであり、
図4は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定のプロセス模式図であり、前記方法が上記のモバイル電源に適用され、
図3に示すように、以下のステップを含む。
【0033】
S01、前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出する。
温度が電池の充放電に与える影響を考慮して、この固定ステップサイズの電気量の値に環境温度という要因を加味し、即ち温度補正を行う。具体的には、以下の式から前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出し、ここで、前記式が、以下の通りである:
ここで、I
maxは極端な場合での前記モバイル電源が耐えられる最大過電流値であり、T
2は前記モバイル電源のSOCの算出周期である。本文で述べた方法において、SOCは、固定ステップサイズPで累加又は累減されるものであり、SOCの各算出時間での最大変化量はPであるため、モバイル電源が最大電流で充放電される時に、T
2の時間の内の累積電気量がΔCより小さいことを確保する必要がある。
【0034】
S02、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出する。
具体的には、単位時間に応じて、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量Qを算出する。
【0035】
オプションとして、本実施例では、単位時間がモバイル電源のSOCの算出周期T2であるが、単位電気量を取得する時に、前記モバイル電源のSOCの算出周期T2、電流のサンプリング周期T1及びサンプリング電流Iを先に取得する必要がある。ここで、前記電流のサンプリング周期T1が小さいほど実際の変化状況を反映することができるが、実際の応用では、前記モバイル電源におけるチップの性能及び必要性(例えば、温度の変化が比較的遅いような場合)を考慮すると、前記電流のサンプリング周期T1が百/ミリ秒レベルや秒レベルであってもよいが、前記サンプリング電流Iがミリ秒レベルやマイクロ秒レベルであり、好ましいのは、前記電流のサンプリング周期T1が10msであってもよい。前記SOCの算出周期T2の取る値が小さすぎると、計算量が過大となり、SOCの算出周期T2の取る値が大きすぎると、前記モバイル電源のSOCの変化が十分に平滑であるものではないおそれがあり、オプションとして、前記SOCの算出周期T2の値は100msを取ることができる。電流のサンプリング周期T1及びSOCの算出周期T2は、実際の状況に応じて調整、設定することができる。
【0036】
具体的には、前記モバイル電源のSOCの算出周期T
2は、前記モバイル電源のサンプリング周期T
1よりはるかに大きいため、1つのSOCの算出周期T
2の内に、複数の電流のサンプリング周期T
1が存在し、かつ各電流のサンプリング周期T
1の内のサンプリング電流が異なる可能性があるため、各SOCの算出周期内の単位電気量ΔQ
nは積分方式を採用し、下式のように表される:
ここで、ΔQ
nとは、あるSOCの算出周期T
2の時間内の単位電気量である。
【0037】
実際のプログラミングの実現を考慮すると、上記のような積分式を離散化する必要があり、つまり、複数回でサンプリングされた電流の平均値を算出周期T
2の時間内の定電流とする。
【0038】
以上のような式では、k値の取得について、1回の除算だけで得られるが、あくまでも除算であり、演算オーバーヘッドを小さくするために、k値を以下のようにさらに最適化する:
ここで、jは正の整数である。kが2の指数乗を取り、このように設定するメリットは以下の通りである:チップでは、2進数演算を採用し、除数が2の指数乗である場合、除算の代わりに左シフトを用いることで演算速度を上げることができる。
【0039】
各サンプリング周期T1が対応するサンプリング電流Iが必ず異なるため、各単位電気量も異なることが理解されるべきである。
【0040】
ある現時点については、その累積電気量は前の時点の累積電気量と単位電気量の和であり、ここで、Qn=Qn-1+ΔQn;
ここで、現時点と前の時点との時間差はT2であり、Qnは現時点の累積電気量を表し、Qn-1は前の時点の累積電気量を表し、ΔQnは前の時点から現時点までの単位電気量を表す。
【0041】
前回のSOCの変化時点を開始時点とする場合、以上のような式は、以下のような式にさらに変換する:
ここで、Qは累積電気量の開始値を表し、Nは正の整数である。
【0042】
上記の単位時間は、実際のニーズに応じて設定することができ、例えば、単位時間を2T2又は3T2に設定し、それに応じて、その単位電気量も相応的に変化することが理解されるべきである。単位時間を大きく設定するほど、後続のステップS03で比較をする回数が減り、チップの演算オーバーヘッドもある程度減らすことができる。
【0043】
S03.前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得する。
具体的には、前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値とを比較して、前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値以上である場合、前記モバイル電源の充放電状態に応じて前の時点のSOC値に前記固定ステップサイズを加算又は減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算又は加算して次の時点の累積電気量の開始値を得ており、前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、前の時点のSOC値を現在のSOC値として保持し、かつ前記累積電気量を次の時点の累積電気量の開始値として保存する。
【0044】
以上の通り、前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、それも、加減算を行うことに相当するが、加数又は減数は0であることが理解されるべきである。
【0045】
ここで、前記モバイル電源が作動する時に、前記モバイル電源は充放電状態を取得し、かつプロセッサは周期的に前記モバイル電源の累積電気量を取得する。モバイル電源が充電状態になる場合、入力は出力より大きく、累積電気量は正であり、モバイル電源が放電状態になる場合、入力は出力より小さく、累積電気量は負である。
【0046】
具体的には、各SOCの算出周期T2の後、累積電気量Qと固定ステップサイズの電気量の値ΔCとを比較する。
【0047】
|Q|≧ΔCであり、かつ、モバイル電源が充電状態になる場合、前の時点のSOC値に固定ステップサイズを加算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算して次の時点の累積電気量の開始値を得ており、|Q|≧ΔCであり、かつ、モバイル電源が放電状態になる場合、前の時点のSOC値に固定ステップサイズを減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を加算して次の時点の累積電気量の開始値を得る。
【0048】
S04、SOC値の更新後、前記累積電気量が変化し続ける場合、ステップS02-S03をサイクルしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存する。
具体的には、前記モバイル電源が充放電される時に、前記累積電気量は絶えず変化し、前記モバイル電源が充放電を停止する時に、前記累積電気量は変化しない。ここで、1回のサイクルを行うたびに、ステップS02で累積電気量を算出するための開始時点は変化し、その開始時点は毎回のSOCの変化時点に更新され、対応する累積電気量の開始値もQ-ΔCに更新される。
【0049】
以下のように、モバイル電源の室温での充電を例にとってSOC推定のプロセスにおけるステップS02-S04のプロセス模式図を示す。
図5は、モバイル電源の充電中の充電開始からある時点までの累積電気量の模式図である。
図6は、モバイル電源の充電中の充電開始から充電終了までの総累積電気量の模式図である。
【0050】
図5と
図6に示すように、t
M-1時点はモバイル電源のある充電の開始時点であり、t
N1は充電中のある時点であり、t
Mは充電を停止する時点である。充電の開始時点のSOC値が23.4%であり、固定ステップサイズPが0.1%であると仮定する。
【0051】
充電中に、各電流のサンプリング周期T1の内に電流をサンプリングして、リアルタイムの電流を得ており、各SOCの算出周期T2の内に、いずれもこの周期内の単位電気量の算出を行ってから、累積電気量の算出及びSOCの算出を行う。
【0052】
各SOCの算出周期T
2の内の単位電気量については、その計算式は以下の通りである:
【0053】
各SOCの算出周期の後、累積電気量の算出を行い、累積電気量と固定ステップサイズの電気量の値ΔCとを比較し、この例では、累積電気量の開始値が0であると、ΔQ1、ΔQ1+ΔQ2、ΔQ1+ΔQ2+ΔQ3、ΔQ1+ΔQ2+ΔQ3+ΔQ4、...、ΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ8がいずれもΔCと比較する。この例で、ΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ7<ΔCかつΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ7+ΔQ8≧ΔCであると仮定すると、tN1時点で、そのSOC値は、tM-1時点のSOC値に固定ステップサイズPを加算したもの、即ち、23.5%であり、そして、累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算して次の時点の累積電気量の開始値、即ちQtN1-ΔCを得ており、ここで、QtN1=ΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ8である。
【0054】
図6に示すように、モバイル電源は充電を続け、累積電気量は変化し続け、以上のようなプロセスをサイクルし続け、なお、t
N2時点については、その累積電気量を算出する開始時点がt
N1時点に更新され、累積電気量の開始値がQ
tN1-ΔCとなり、累積電気量がt
N1時点からt
N2時点までに累積される電気量となり、同様に、t
N3、t
N4、t
Mの時点については、SOC値が変化するたびに、その累積電気量を算出する開始時点が前回のSOCの変化時点に更新され、累積電気量の開始値が前回のSOCの変化時点の累積電気量にΔCを減算したものに更新され、累積電気量は前回のSOCの変化時点からその時点までに累積される電気量となる。
【0055】
tN2、tN3、tN4の時点までは、その累積電気量QtN2、QtN3、QtN4はそれぞれΔC以上であるため、tN2、tN3、tN4でのSOC値はそれぞれ23.6%、23.7%、23.8%であり、かつtN4時点で、QtN4-ΔCを次の時点の累積電気量の開始値とする。tM時点までは、累積電気量QtM<ΔCとなるため、tM時点のSOC値が前の時点のtN4時点のSOC、即ち23.8%に保持され、現時点の累積電気量を次回の電気量が変化するときの累積電気量の開始値として保存する。
【0056】
チップとしては、演算オーバーヘッドでは、余りを求めること>除算>乗算>減算>加算となり、安価で演算能力が弱いチップ、特にハードウェア除算器を持たないチップでは、多くの除算が大きなオーバーヘッドになり、そして、この算出方式は、算出の安定にも不利である。本出願は、以上のようなSOC推定方法を採用することで、実際のプログラミングにおいて、既存の除算の代わりにif判定と加減算のみを用いることができ、SOCを推定する時の計算量を大幅に減らし、算出資源の消費及び記憶空間の占用を低減し(実際の応用では、レベルが低い8ビット、5-16KFlashのチップを採用すればよい)、チップの演算能力と周辺機器の資源に対する要求を大幅に低下し、設備のエネルギー消費を低減し、SOC推定速度を高めて、算出の安定性を高める。
【0057】
いくつかの実施例では、前記モバイル電源の充放電終端段階で、ステップS04で得られたSOC値を補正することをさらに含む。
【0058】
リン酸鉄リチウムの充放電末端電圧の特性から、電池の電圧については、満充電及び満放電の段階で、電圧が急速に上昇する傾向及び急速に低下する傾向があることが分かる。従って、充放電末端段階でSOCを補正する。
【0059】
例えば、電池の特性に応じて、充電末端に対応する電圧の閾値Uupと放電末端に対応する電圧の閾値Udeをそれぞれ1つ設定しており、
前記モバイル電源の電圧UがUup~Udeの間にあり範囲を超えていない場合、前記モバイル電源のSOCが満充電又は空にならないと考えられるので、ステップS04で得られたSOC値を補正する必要はない。
【0060】
充電中に、前記モバイル電源の電圧UがU
upより大きく、かつSOCが満充電にならない場合、補正プロセスを導入する:
【0061】
放電中に、前記モバイル電源の電圧UがU
deより小さく、かつSOCが空にならない場合、補正プロセスを導入する:
【0062】
精確度をさらに高めるために、電池の特性に応じて、充電末端に対応する電圧の閾値Uup1とUup2及び放電末端に対応する電圧の閾値Ude1とUde2をそれぞれ2つ設定し、実際のテストで対応する補正パラメータα1、α2、β1、β2を得ることもできることが理解されるべきである。
【0063】
以上のようなSOC推定方法に従って、実験を行い、定格容量が5.4Ahであるモバイル電源を用いて常温条件下で充電を行い、それぞれ従来のアンペア時積分法及び本出願において以上のような方法を用いてSOC推定を行って、得られたSOC推定曲線の比較図を
図7に示し、図中の累積電気量/定格容量は使用されるアンペア時積分法を表す。
【0064】
図7から分かるように、充電時に、両方法で得られたSOC曲線の一致度が比較的高く、特に充電末端では、補正されたSOC推定値とアンペア時積分法で得られたSOC推定曲線図も高く一致しており、それは、本出願のSOC推定方法による推定の正確度が高いことを示す。
【0065】
図8を参照して、
図8は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定装置の構成ブロック図であり、
図8に示すように、前記SOC推定装置40は、第1の算出モジュール41と、第2の算出モジュール42と、比較取得モジュール43と、判定サイクルモジュール44とを含む。
【0066】
前記第1の算出モジュール41は、前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出するためのものであり、
前記第2の算出モジュール42は、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出するためのものであり、
前記比較取得モジュール43は、前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得するためのものであり、
前記判定サイクルモジュール44は、SOC値の更新後に累積電気量が変化し続けるか否かを判定し、前記累積電気量が変化し続ける場合、第1の算出モジュール41と、第2の算出モジュール42と、比較取得モジュール43と、をサイクル制御することで、前記第1の算出モジュール41が、前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出することを実行し、前記第2の算出モジュール42が、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出することを実行し、前記比較取得モジュール43は、前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得することを実行するようにしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存するためのものである。
【0067】
なお、前記SOC推定装置は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法を実行することができ、かつ方法の実行に対応する機能モジュール及び有益な効果を備える。SOC推定装置の実施例において詳細に説明しない技術細部については、本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法を参照できる。
【0068】
本出願の実施例は、コンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータで実行可能なコマンドが記憶され、このコンピュータで実行可能なコマンドは、1つまたは複数のプロセッサによって実行され、例えば、以上に説明される
図3及び
図4における方法のステップを実行し、
図8における各モジュールの機能を実現する。
【0069】
以上に説明された装置の実施例は、模式的なものだけであり、その中、上記した離間部品として説明されるユニットは、物理的に離間してもよいし、離間しなくてもよく、ユニットとして表される部品は、物理的なユニットでもよいし、物理的なユニットでなくてもよく、即ち、1つの箇所に位置してもよいし、複数のネットユニットに分布されて位置してもよい。実際のニーズに応じてその中の一部又は全部のモジュールを選択して本実施例試案の目的を実現できる。
【0070】
以上の実施形態の説明によって、各実施形態が、ソフトウェアに汎用なハードウェアプラットフォームを加えることによって実現されてもよく、もちろん、ハードウェアによって実現されてもよいことは、当業者にとって明らかである。上記の実施例方法の中の全部又は一部のフローの実現が、コンピュータプログラムが関連するハードウェアに指令を与えることによって成されることは、当業者にとって理解でき、上記プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、このプログラムは実行される時に、上記の各方法の実施例のようなフローを含んでもよい。その中、上記の記憶媒体は、磁気ディスク、光ディスク、リードオンリーメモリ(Read-Only Memory;ROM)又はランダムアクセスメモリ(Random Access Memory;RAM)などであってもよい。
【0071】
最後に説明する。以上の実施例は、本出願の技術試案を説明するためのものだけであり、これを制限するものではなく、本出願の主旨下、以上の実施例又は異なる実施例における技術特徴同士はお互いに組み合わせることができ、ステップはいずれの手順で実現でき、また、上記のような本出願の異なる局面での多くの他の変更があるが、説明の簡略化のために細部に提供されなく、前記実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者にとって理解されるべきように、依然として前記各実施例に記載される技術試案に対して修飾し、又は、その中の一部の技術特徴を同等に置き換えることができ、これらの修飾又は置き換えは、対応する技術試案を実質的に本出願の各実施例の技術試案の範囲から逸脱させることはない。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル電源に適用されるSOC推定方法であって、
ステップS1.前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出することと、
ステップS2.単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出することと、
ステップS3.前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得することと、
ステップS4.SOC値の更新後、前記累積電気量が変化し続ける場合、ステップS2-S3をサイクルしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存することと、を含み、
前記ステップS3は、
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値以上である場合、前記モバイル電源の充放電状態に応じて前の時点のSOC値に前記固定ステップサイズを加算又は減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算又は加算して次の時点の累積電気量の開始値を得ることと、
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、前の時点のSOC値を現在のSOC値として保持し、かつ前記累積電気量を次の時点の累積電気量の開始値として保存することと、を含むことを特徴とするSOC推定方法。
【請求項2】
前記ステップS1は、
第1の式から前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を取得することを含み、ここで、前記第1の式が、以下の通りであり:
【請求項3】
【請求項4】
前記ステップS2は、第2の式から前記単位電気量を算出することを含み、ここで、前記第2の式が、以下の通りであり:
【請求項5】
【請求項6】
前記方法は、前記モバイル電源の充放電終端段階で前記ステップS3で得られた現時点のSOC値を補正することをさらに含むこと、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
前記モバイル電源の充電中に、前記モバイル電源の電圧Uが充電終端電圧の閾値U
upより大きく、かつ前記モバイル電源のSOC値が満充電にならないと、補正プロセスを導入することを含み、補正の式は、以下の通りであり:
ここで、SOC'は充電時の補正後のSOC値であり、SOCは補正前のSOC値であり、αは充電補正パラメータであること、を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
前記モバイル電源の放電中に、前記モバイル電源の電圧Uが放電終端電圧の閾値U
deより小さく、かつ前記モバイル電源のSOC値が空にならないと、補正プロセスを導入することを含み、補正の式は、以下の通りであり:
ここで、SOC''は放電時の補正後のSOC値であり、SOCは補正前のSOC値であり、βは放電補正パラメータであること、を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに通信接続されるメモリと、を備えるモバイル電源であって、
前記メモリに前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なコマンドが記憶され、前記コマンドは前記少なくとも1つのプロセッサによって実行され、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行させることができる、ことを特徴とするモバイル電源。
【請求項10】
コンピュータで実行可能なコマンドが記憶される読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータで実行可能なコマンドは、コンピュータに請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行させるために用いられるものである、ことを特徴とする読み取り可能な記憶媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年04月02日付けに中国特許局に提出された202210345240.Xという出願号である中国特許出願(出願名称:「SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体」)による優先権を請求し、その全体内容が引用の方式によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、モバイル電源のSOC推定という技術分野に関し、特に、SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、市場では、携帯用のマイクロ小型のエネルギー貯蔵製品に対して、電子製品のコストが高騰するため、各メーカーもコストのより安い代替品を続々と探し始めている。代替品を選択するときに、通常、安価で演算能力が弱いチップを選択し、又はチップの周辺機器の資源と性能を絶えず圧縮する。しかしながら、マイクロ小型のモバイル電源類の製品では、SOC(荷電状態)推定などのような関連演算が比較的多く、高性能で演算能力が高く、演算速度が速いチップだけを適用できる。演算を簡素化せずに安価なチップだけを追求すると、必然的に適応できなく、そして互換できない。
【0004】
チップの演算では、SOC推定に必要な演算オーバーヘッドが比較的大きい。現在の技術では、SOC推定にはアンペア時積分法を採用することが多く、その式は以下の通りである:
このアルゴリズムには、加算、減算、乗算、除算などの演算を用いたが、演算オーバーヘッドが極めて大きく、安価で演算能力が弱いチップによってその演算要求を満たすことができないため、低コストのSOC推定アルゴリズムが緊急に必要である。
【発明の概要】
【0005】
上記の問題を解決するために、本出願の実施形態は、SOC推定方法、モバイル電源及び読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0006】
上記の技術的問題を解決するために、本出願の実施形態が採用する技術試案は、以下の通りである:モバイル電源に適用されるSOC推定方法が提供されており、前記方法は、
ステップS1.前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出すること;
ステップS2.単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出すること;
ステップS3.前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得すること;
ステップS4.SOC値の更新後、前記累積電気量が変化し続ける場合、ステップS2-S3をサイクルしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存すること、を含む。
【0007】
任意的に、前記ステップS1は、
第1の式から前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を取得すること(ここで、前記第1の式が、以下の通りである:
【0008】
任意的に、前記ステップS2は、第2の式から前記単位電気量を算出すること(ここで、前記第2の式が、以下の通りである:
【0009】
任意的に、前記ステップS2は、
第3の式から前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出すること(ここで、前記第3の式は、以下の通りである:
【0010】
任意的に、前記ステップS3は、
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値以上である場合、前記モバイル電源の充放電状態に応じて前の時点のSOC値に前記固定ステップサイズを加算又は減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算又は加算して次の時点の累積電気量の開始値を得ること;
前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、前の時点のSOC値を現在のSOC値として保持し、かつ前記累積電気量を次の時点の累積電気量の開始値として保存すること、を含む。
【0011】
任意的に、前記方法は、前記モバイル電源の充放電終端段階で、ステップS3で得られた現時点のSOC値を補正することをさらに含む。
【0012】
任意的に、上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
ここで、SOC'は充電時の補正後のSOC値であり、SOCは補正前のSOC値であり、αは充電補正パラメータである)を含む。
【0013】
任意的に、上記した前記モバイル電源の充放電終端段階で前記モバイル電源のSOCを補正することは、
【0014】
上記の技術的問題を解決するために、本出願の実施形態が採用する別の技術試案は、以下の通りである:モバイル電源が提供されており、前記モバイル電源は、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに通信接続されるメモリと、を備えており、
前記メモリに前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なコマンドが記憶され、前記コマンドは前記少なくとも1つのプロセッサによって実行され、前記少なくとも1つのプロセッサに前記荷電状態の算出方法を実行させることができる。
【0015】
上記の技術的問題を解決するために、本出願の実施形態が採用する別の技術試案は、以下の通りである:読み取り可能な記憶媒体が提供されており、前記読み取り可能な記憶媒体にコンピュータ実行可能なコマンドが記憶され、前記コンピュータ実行可能なコマンドが前記荷電状態の算出方法をコンピュータに実行させるためのものである。
【0016】
有益な効果は、以下の通りである:本出願は、以上のようなSOC推定方法を採用することで、実際のプログラミングにおいて、既存のSOC推定方法の除算の代わりにif判定と加減算のみを用いることができ、SOCを推定する時の計算量を大幅に減らし、算出資源の消費及び記憶空間の占用を低減し、チップの演算能力と周辺機器の資源に対する要求を大幅に低下し、設備のエネルギー消費を低減し、SOC推定速度を高めて、算出の安定性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0017】
1つまたは複数の実施例は、その対応する図面によって例示的に説明され、それらの例示的な説明は実施例に対する限定を構成するものではなく、図面において、同じ参照数字ラベルを有する要素は類似的な要素であることを表し、特に断らない限り、図面中の図はスケールを制限しない。
【
図1】本出願の実施例によって提供される応用場面の模式図である。
【
図2】本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法を実行するコントローラの構成模式図である。
【
図3】本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法のフローチャートである。
【
図4】本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法のプロセス模式図である。
【
図5】本出願の実施例によって提供されるモバイル電源の充電開始からある時点までの累積電気量の模式図である。
【
図6】本出願の実施例によって提供されるモバイル電源の充電開始から充電終了までの累積電気量の模式図である。
【
図7】本出願の実施例によって提供されるモバイル電源の充電時のSOC推定曲線の比較図である。
【
図8】本出願の実施例によって提供されるSOC推定装置の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願の目的、技術試案及び利点をより明らかにするために、以下、本出願を図面及び実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ここに説明される具体的な実施例は本出願を説明するためだけに使用されており、本出願を限定するために使用されるものではないことが理解されるべきである。
【0019】
なお、本出願の実施例における各特徴は、衝突しない場合、互いに組み合わせることができ、いずれも本出願による保護範囲内にある。また、装置の模式図において、機能モジュールの分割を行って、かつフローチャートに論理的な手順を示したが、いくつかの場合には、装置の模式図におけるモジュールの分割、あるいはフローチャートにおける手順と異なる分割、あるいは手順で、示されるあるいは説明されるステップを実行してもよい。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本出願の技術分野に属する技術者によって一般的に理解される意味と同じである。本出願の明細書で用いられる用語は、具体的な実施形態を説明するためのものだけであり、本出願を制限するためのものではない。本明細書で用いられる用語「及び/又は」は、関連するリスト項目のうちの1つまたは複数の任意の及びすべての組み合わせを含む。
【0021】
本出願におけるモバイル電源とは、画面表示部(SOC値の表示可能)を有し、デジタル製品及び小型の家庭電器などに電力を供給できる携帯用のマイクロ小型のエネルギー貯蔵電源である。
【0022】
前記SOC推定方法及び装置は、モバイル電源のSOC推定プロセスに適用されることができる。
図1に示すように、
図1は、本出願の実施例によって提供される応用場面であり、この応用場面は、電力網10と、負荷20と、モバイル電源30とを備えており、前記モバイル電源30は前記電力網10と前記負荷20とにそれぞれ接続され、前記モバイル電源30がコントローラ31とディスプレイ32とを含み、前記コントローラ31と前記ディスプレイ32とが接続する。前記モバイル電源30とは、自身が電気エネルギーを蓄えることができる携帯充電器であり、前記モバイル電源30の作動状態は充電状態及び放電状態を含み、前記電力網10は前記モバイル電源30に対して充電するためのものであり、前記モバイル電源30は前記負荷20に対して放電するためのものであり、前記モバイル電源30の充放電時に、前記コントローラ31は、前記モバイル電源30の現在のSOC値、即ち前記モバイル電源30の現在の電気量を表示するようにディスプレイ32を制御し、ここで、前記ディスプレイ32の表示には、数字1-100を含むが、これに限定されなく、前記モバイル電源30の充電時に、前記ディスプレイ32に表示される数字が徐々に上昇し、前記モバイル電源30の放電時に、前記ディスプレイ32に表示される数字が徐々に低下する。さらに、前記SOC値とは、前記モバイル電源の満充電状態での容量に対する前記モバイル電源の残存容量の比であり、前記SOCの取りうる値の範囲は0%~100%であり、前記SOCの値が0%に等しい時に、前記モバイル電源の放電が完全的に行われることを示し、前記SOCの値が100%である時に、前記モバイル電源が満充電状態にあることを示しており、前記SOCの取りうる値を知ることにより、前記モバイル電源の運転を制御することができる。
【0023】
【0024】
ここで、前記電力網10は、商用電源であってもよいし、前記モバイル電源30に対して充電できる任意の設備であってもよい。前記負荷20は、無線電話、ノート型コンピューターなどの手持ち式のモバイル設備の電子製品を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本出願の一つの実施例では、
図2に示すように、前記コントローラ31は、少なくとも1つのプロセッサ311(
図2において、1つのプロセッサ311を例にとる)と、前記少なくとも1つのプロセッサ311に通信接続されるメモリ
312(
図2において、バスで接続されることを例にとる)と、を備える。
【0026】
ここで、前記メモリ312に前記少なくとも1つのプロセッサ311によって実行可能なコマンドが記憶され、前記コマンドは前記少なくとも1つのプロセッサ311によって実行され、前記少なくとも1つのプロセッサ311に下記のSOC推定方法を実行させることができる。
【0027】
メモリ312は、一つのコンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体として、本出願の実施例におけるSOC推定方法に対応するプログラムコマンド/モジュールのような、不揮発性ソフトウェアプログラム、コンピュータで実行可能な不揮発性プログラム及びモジュールを記憶することに用いられることができる。プロセッサ311は、メモリ312に記憶される不揮発性ソフトウェアプログラム、コマンド及びモジュールを実行することによって、モバイル電源30の各種の機能アプリ及びデータ処理を実行し、即ち、下記の方法の実施例におけるSOC推定方法を実現する。
【0028】
メモリ312は、プログラム記憶領域とデータ記憶領域を含んでもよく、ここで、プログラム記憶領域には、システム、少なくとも1つの機能を取り扱うために必要であるアプリプログラムを記憶できる。また、メモリ312は、高速ランダムアクセスメモリを含んでもよく、不揮発性メモリを含んでもよい。例えば、少なくとも1つの磁気ディスクメモリデバイス、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体メモリデバイスを含む。いくつかの実施例では、メモリ312は、オプションとしてプロセッサ311に対して遠隔に設置されるメモリを含む。
【0029】
前記1つ又は複数のモジュールは前記メモリ
312に記憶され、かつ前記1つ又は複数のプロセッサ311により実行される時に、下記のいずれの方法の実施例におけるSOC推定方法を実行し、例えば、以下に説明される
図3における方法のステップを実行する。
【0030】
前記モバイル電源30には、本出願の実施例によって提供される方法をよりよく実行するために他の装置も接続され、例えば、ディスプレイスクリーンや他のディスプレイを電気的に接続することができ、ターゲットユーザの通信設備を遠隔通信で接続することができるなど、ここで一つ一つ述べない。
【0031】
上記のモバイル電源30は、本出願の実施例によって提供される方法を実行でき、方法の実行に対応する機能モジュールを備える。本実施例において詳細に説明しない技術細部については、本出願の実施例によって提供される方法を参照できる。
【0032】
図3と
図4を参照して、
図3は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法のフローチャートであり、
図4は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定のプロセス模式図であり、前記方法が上記のモバイル電源に適用され、
図3に示すように、以下のステップを含む。
【0033】
S01、前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出する。
温度が電池の充放電に与える影響を考慮して、この固定ステップサイズの電気量の値に環境温度という要因を加味し、即ち温度補正を行う。具体的には、以下の式から前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出し、ここで、前記式が、以下の通りである:
【0034】
S02、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出する。
具体的には、単位時間に応じて、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量Qを算出する。
【0035】
オプションとして、本実施例では、単位時間がモバイル電源のSOCの算出周期T2であるが、単位電気量を取得する時に、前記モバイル電源のSOCの算出周期T2、電流のサンプリング周期T1及びサンプリング電流Iを先に取得する必要がある。ここで、前記電流のサンプリング周期T1が小さいほど実際の変化状況を反映することができるが、実際の応用では、前記モバイル電源におけるチップの性能及び必要性(例えば、温度の変化が比較的遅いような場合)を考慮すると、前記電流のサンプリング周期T1が百/ミリ秒レベルや秒レベルであってもよいが、前記サンプリング電流Iがミリ秒レベルやマイクロ秒レベルであり、好ましいのは、前記電流のサンプリング周期T1が10msであってもよい。前記SOCの算出周期T2の取る値が小さすぎると、計算量が過大となり、SOCの算出周期T2の取る値が大きすぎると、前記モバイル電源のSOCの変化が十分に平滑であるものではないおそれがあり、オプションとして、前記SOCの算出周期T2の値は100msを取ることができる。電流のサンプリング周期T1及びSOCの算出周期T2は、実際の状況に応じて調整、設定することができる。
【0036】
具体的には、前記モバイル電源のSOCの算出周期T
2は、前記モバイル電源のサンプリング周期T
1よりはるかに大きいため、1つのSOCの算出周期T
2の内に、複数の電流のサンプリング周期T
1が存在し、かつ各電流のサンプリング周期T
1の内のサンプリング電流が異なる可能性があるため、各SOCの算出周期内の単位電気量ΔQ
nは積分方式を採用し、下式のように表される:
【0037】
実際のプログラミングの実現を考慮すると、上記のような積分式を離散化する必要があり、つまり、複数回でサンプリングされた電流の平均値を算出周期T
2の時間内の定電流とする。
【0038】
以上のような式では、k値の取得について、1回の除算だけで得られるが、あくまでも除算であり、演算オーバーヘッドを小さくするために、k値を以下のようにさらに最適化する:
ここで、jは正の整数である。kが2の指数乗を取り、このように設定するメリットは以下の通りである:チップでは、2進数演算を採用し、除数が2の指数乗である場合、除算の代わりに左シフトを用いることで演算速度を上げることができる。
【0039】
各サンプリング周期T1が対応するサンプリング電流Iが必ず異なるため、各単位電気量も異なることが理解されるべきである。
【0040】
ある現時点については、その累積電気量は前の時点の累積電気量と単位電気量の和であり、ここで、Qn=Qn-1+ΔQn;
ここで、現時点と前の時点との時間差はT2であり、Qnは現時点の累積電気量を表し、Qn-1は前の時点の累積電気量を表し、ΔQnは前の時点から現時点までの単位電気量を表す。
【0041】
前回のSOCの変化時点を開始時点とする場合、以上のような式は、以下のような式にさらに変換する:
【0042】
上記の単位時間は、実際のニーズに応じて設定することができ、例えば、単位時間を2T2又は3T2に設定し、それに応じて、その単位電気量も相応的に変化することが理解されるべきである。単位時間を大きく設定するほど、後続のステップS03で比較をする回数が減り、チップの演算オーバーヘッドもある程度減らすことができる。
【0043】
S03.前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得する。
具体的には、前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値とを比較して、前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値以上である場合、前記モバイル電源の充放電状態に応じて前の時点のSOC値に前記固定ステップサイズを加算又は減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算又は加算して次の時点の累積電気量の開始値を得ており、前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、前の時点のSOC値を現在のSOC値として保持し、かつ前記累積電気量を次の時点の累積電気量の開始値として保存する。
【0044】
以上の通り、前記累積電気量の絶対値が前記固定ステップサイズの電気量の値より小さい場合、それも、加減算を行うことに相当するが、加数又は減数は0であることが理解されるべきである。
【0045】
ここで、前記モバイル電源が作動する時に、前記モバイル電源は充放電状態を取得し、かつプロセッサは周期的に前記モバイル電源の累積電気量を取得する。モバイル電源が充電状態になる場合、入力は出力より大きく、累積電気量は正であり、モバイル電源が放電状態になる場合、入力は出力より小さく、累積電気量は負である。
【0046】
具体的には、各SOCの算出周期T2の後、累積電気量Qと固定ステップサイズの電気量の値ΔCとを比較する。
【0047】
|Q|≧ΔCであり、かつ、モバイル電源が充電状態になる場合、前の時点のSOC値に固定ステップサイズを加算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算して次の時点の累積電気量の開始値を得ており、|Q|≧ΔCであり、かつ、モバイル電源が放電状態になる場合、前の時点のSOC値に固定ステップサイズを減算して現在のSOC値を得て、かつ前記累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を加算して次の時点の累積電気量の開始値を得る。
【0048】
S04、SOC値の更新後、前記累積電気量が変化し続ける場合、ステップS02-S03をサイクルしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存する。
具体的には、前記モバイル電源が充放電される時に、前記累積電気量は絶えず変化し、前記モバイル電源が充放電を停止する時に、前記累積電気量は変化しない。ここで、1回のサイクルを行うたびに、ステップS02で累積電気量を算出するための開始時点は変化し、その開始時点は毎回のSOCの変化時点に更新され、対応する累積電気量の開始値もQ-ΔCに更新される。
【0049】
以下のように、モバイル電源の室温での充電を例にとってSOC推定のプロセスにおけるステップS02-S04のプロセス模式図を示す。
図5は、モバイル電源の充電中の充電開始からある時点までの累積電気量の模式図である。
図6は、モバイル電源の充電中の充電開始から充電終了までの総累積電気量の模式図である。
【0050】
図5と
図6に示すように、t
M-1時点はモバイル電源のある充電の開始時点であり、t
N1は充電中のある時点であり、t
Mは充電を停止する時点である。充電の開始時点のSOC値が23.4%であり、固定ステップサイズPが0.1%であると仮定する。
【0051】
充電中に、各電流のサンプリング周期T1の内に電流をサンプリングして、リアルタイムの電流を得ており、各SOCの算出周期T2の内に、いずれもこの周期内の単位電気量の算出を行ってから、累積電気量の算出及びSOCの算出を行う。
【0052】
各SOCの算出周期T
2の内の単位電気量については、その計算式は以下の通りである:
ここで、k=8であり、n=1、2、...、8である。
【0053】
各SOCの算出周期の後、累積電気量の算出を行い、累積電気量と固定ステップサイズの電気量の値ΔCとを比較し、この例では、累積電気量の開始値が0であると、ΔQ1、ΔQ1+ΔQ2、ΔQ1+ΔQ2+ΔQ3、ΔQ1+ΔQ2+ΔQ3+ΔQ4、...、ΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ8がいずれもΔCと比較する。この例で、ΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ7<ΔCかつΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ7+ΔQ8≧ΔCであると仮定すると、tN1時点で、そのSOC値は、tM-1時点のSOC値に固定ステップサイズPを加算したもの、即ち、23.5%であり、そして、累積電気量に固定ステップサイズの電気量の値を減算して次の時点の累積電気量の開始値、即ちQtN1-ΔCを得ており、ここで、QtN1=ΔQ1+ΔQ2+...+ΔQ8である。
【0054】
図6に示すように、モバイル電源は充電を続け、累積電気量は変化し続け、以上のようなプロセスをサイクルし続け、なお、t
N2時点については、その累積電気量を算出する開始時点がt
N1時点に更新され、累積電気量の開始値がQ
tN1-ΔCとなり、累積電気量がt
N1時点からt
N2時点までに累積される電気量となり、同様に、t
N3、t
N4、t
Mの時点については、SOC値が変化するたびに、その累積電気量を算出する開始時点が前回のSOCの変化時点に更新され、累積電気量の開始値が前回のSOCの変化時点の累積電気量にΔCを減算したものに更新され、累積電気量は前回のSOCの変化時点からその時点までに累積される電気量となる。
【0055】
tN2、tN3、tN4の時点までは、その累積電気量QtN2、QtN3、QtN4はそれぞれΔC以上であるため、tN2、tN3、tN4でのSOC値はそれぞれ23.6%、23.7%、23.8%であり、かつtN4時点で、QtN4-ΔCを次の時点の累積電気量の開始値とする。tM時点までは、累積電気量QtM<ΔCとなるため、tM時点のSOC値が前の時点のtN4時点のSOC、即ち23.8%に保持され、現時点の累積電気量を次回の電気量が変化するときの累積電気量の開始値として保存する。
【0056】
チップとしては、演算オーバーヘッドでは、余りを求めること>除算>乗算>減算>加算となり、安価で演算能力が弱いチップ、特にハードウェア除算器を持たないチップでは、多くの除算が大きなオーバーヘッドになり、そして、この算出方式は、算出の安定にも不利である。本出願は、以上のようなSOC推定方法を採用することで、実際のプログラミングにおいて、既存の除算の代わりにif判定と加減算のみを用いることができ、SOCを推定する時の計算量を大幅に減らし、算出資源の消費及び記憶空間の占用を低減し(実際の応用では、レベルが低い8ビット、5-16KFlashのチップを採用すればよい)、チップの演算能力と周辺機器の資源に対する要求を大幅に低下し、設備のエネルギー消費を低減し、SOC推定速度を高めて、算出の安定性を高める。
【0057】
いくつかの実施例では、前記モバイル電源の充放電終端段階で、ステップS04で得られたSOC値を補正することをさらに含む。
【0058】
リン酸鉄リチウムの充放電末端電圧の特性から、電池の電圧については、満充電及び満放電の段階で、電圧が急速に上昇する傾向及び急速に低下する傾向があることが分かる。従って、充放電末端段階でSOCを補正する。
【0059】
例えば、電池の特性に応じて、充電末端に対応する電圧の閾値Uupと放電末端に対応する電圧の閾値Udeをそれぞれ1つ設定しており、
前記モバイル電源の電圧UがUup~Udeの間にあり範囲を超えていない場合、前記モバイル電源のSOCが満充電又は空にならないと考えられるので、ステップS04で得られたSOC値を補正する必要はない。
【0060】
充電中に、前記モバイル電源の電圧UがU
upより大きく、かつSOCが満充電にならない場合、補正プロセスを導入する:
【0061】
放電中に、前記モバイル電源の電圧UがU
deより小さく、かつSOCが空にならない場合、補正プロセスを導入する:
【0062】
精確度をさらに高めるために、電池の特性に応じて、充電末端に対応する電圧の閾値Uup1とUup2及び放電末端に対応する電圧の閾値Ude1とUde2をそれぞれ2つ設定し、実際のテストで対応する補正パラメータα1、α2、β1、β2を得ることもできることが理解されるべきである。
【0063】
以上のようなSOC推定方法に従って、実験を行い、定格容量が5.4Ahであるモバイル電源を用いて常温条件下で充電を行い、それぞれ従来のアンペア時積分法及び本出願において以上のような方法を用いてSOC推定を行って、得られたSOC推定曲線の比較図を
図7に示し、図中の累積電気量/定格容量は使用されるアンペア時積分法を表す。
【0064】
図7から分かるように、充電時に、両方法で得られたSOC曲線の一致度が比較的高く、特に充電末端では、補正されたSOC推定値とアンペア時積分法で得られたSOC推定曲線図も高く一致しており、それは、本出願のSOC推定方法による推定の正確度が高いことを示す。
【0065】
図8を参照して、
図8は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定装置の構成ブロック図であり、
図8に示すように、前記SOC推定装置40は、第1の算出モジュール41と、第2の算出モジュール42と、比較取得モジュール43と、判定サイクルモジュール44とを含む。
【0066】
前記第1の算出モジュール41は、前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出するためのものであり、
前記第2の算出モジュール42は、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出するためのものであり、
前記比較取得モジュール43は、前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得するためのものであり、
前記判定サイクルモジュール44は、SOC値の更新後に累積電気量が変化し続けるか否かを判定し、前記累積電気量が変化し続ける場合、第1の算出モジュール41と、第2の算出モジュール42と、比較取得モジュール43と、をサイクル制御することで、前記第1の算出モジュール41が、前記モバイル電源の固定ステップサイズの電気量の値を算出することを実行し、前記第2の算出モジュール42が、単位電気量を順次にステップ的に重畳して、前記モバイル電源の前回のSOCの変化時点からの累積電気量を算出することを実行し、前記比較取得モジュール43は、前記累積電気量の絶対値と前記固定ステップサイズの電気量の値との大小を比較し、かつ比較結果に基づいて加減算を行い、現時点のSOC値と次の時点の累積電気量の開始値とを取得することを実行するようにしており、前記累積電気量が変化しない場合、前の時点のSOC値を保持し、かつ現時点の累積電気量を保存するためのものである。
【0067】
なお、前記SOC推定装置は、本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法を実行することができ、かつ方法の実行に対応する機能モジュール及び有益な効果を備える。SOC推定装置の実施例において詳細に説明しない技術細部については、本出願の実施例によって提供されるSOC推定方法を参照できる。
【0068】
本出願の実施例は、コンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータで実行可能なコマンドが記憶され、このコンピュータで実行可能なコマンドは、1つまたは複数のプロセッサによって実行され、例えば、以上に説明される
図3及び
図4における方法のステップを実行し、
図8における各モジュールの機能を実現する。
【0069】
以上に説明された装置の実施例は、模式的なものだけであり、その中、上記した離間部品として説明されるユニットは、物理的に離間してもよいし、離間しなくてもよく、ユニットとして表される部品は、物理的なユニットでもよいし、物理的なユニットでなくてもよく、即ち、1つの箇所に位置してもよいし、複数のネットユニットに分布されて位置してもよい。実際のニーズに応じてその中の一部又は全部のモジュールを選択して本実施例試案の目的を実現できる。
【0070】
以上の実施形態の説明によって、各実施形態が、ソフトウェアに汎用なハードウェアプラットフォームを加えることによって実現されてもよく、もちろん、ハードウェアによって実現されてもよいことは、当業者にとって明らかである。上記の実施例方法の中の全部又は一部のフローの実現が、コンピュータプログラムが関連するハードウェアに指令を与えることによって成されることは、当業者にとって理解でき、上記プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、このプログラムは実行される時に、上記の各方法の実施例のようなフローを含んでもよい。その中、上記の記憶媒体は、磁気ディスク、光ディスク、リードオンリーメモリ(Read-Only Memory;ROM)又はランダムアクセスメモリ(Random Access Memory;RAM)などであってもよい。
【0071】
最後に説明する。以上の実施例は、本出願の技術試案を説明するためのものだけであり、これを制限するものではなく、本出願の主旨下、以上の実施例又は異なる実施例における技術特徴同士はお互いに組み合わせることができ、ステップはいずれの手順で実現でき、また、上記のような本出願の異なる局面での多くの他の変更があるが、説明の簡略化のために細部に提供されなく、前記実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者にとって理解されるべきように、依然として前記各実施例に記載される技術試案に対して修飾し、又は、その中の一部の技術特徴を同等に置き換えることができ、これらの修飾又は置き換えは、対応する技術試案を実質的に本出願の各実施例の技術試案の範囲から逸脱させることはない。
【国際調査報告】