(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電気化学水性ガスシフト反応器及び使用方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/58 20240101AFI20240423BHJP
【FI】
B01J35/58 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553027
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2021065228
(87)【国際公開番号】W WO2022235304
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522162325
【氏名又は名称】ユティリティ・グローバル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Utility Global, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】ファランドス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,ジン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA15
4G169BA05A
4G169BA13A
4G169BA17
4G169BB04A
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4G169CC26
4G169DA05
4G169EC28
4G169EE09
(57)【要約】
イオン伝導性膜を含む電気化学反応器が本明細書で説明され、本反応器は、電気入力なしに水性ガスシフト反応を電気化学的に行い、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はその両方を含む。また、二機能層及び混合伝導性膜を含み、二機能層及び混合伝導性膜が互いに接触し、二機能層が逆水性ガスシフト(RWGS)反応を触媒し、電気化学反応においてアノードとして機能する反応器が本明細書で説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性膜を備えた電気化学反応器であって、前記反応器は、電気入力なしで水性ガスシフト反応を電気化学的に行い、前記電気化学水性ガスシフト反応は、前記膜を通るイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はその両方を含む、電気化学反応器。
【請求項2】
金属相及びセラミック相を含む多孔質電極を備え、前記金属相は電子伝導性であり、前記セラミック相はイオン伝導性である、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記電極は、前記膜によって分離され、両方とも還元環境に曝露される、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
前記電極は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む、請求項2に記載の反応器。
【請求項5】
前記イオン伝導性膜は、電子も伝導し、前記反応器は相互接続を含まない、請求項1に記載の反応器。
【請求項6】
前記膜は、CGOを含む、請求項1に記載の反応器。
【請求項7】
前記膜は、CoCGOを含む、請求項1に記載の反応器。
【請求項8】
化学逆水性ガスシフト(RWGS)反応を促進する触媒を含む、請求項1に記載の反応器。
【請求項9】
前記反応器は、化学水性ガスシフト反応も行う、請求項1に記載の反応器。
【請求項10】
二機能層及び混合伝導性膜を含み、前記二機能層及び前記混合伝導性膜が互いに接触し、前記二機能層が、逆水性ガスシフト(RWGS)反応を触媒し、電気化学反応においてアノードとして機能する、反応器。
【請求項11】
前記アノードとしての前記二機能層は、還元環境に曝露され、前記二機能層内で生じる前記電気化学反応は、酸化である、請求項10に記載の反応器。
【請求項12】
集電体が前記二機能層に取り付けられていない、請求項10に記載の反応器。
【請求項13】
前記反応器は、相互接続を含まず、前記反応器は、電気を受信も生成もしない、請求項10に記載の反応器。
【請求項14】
前記二機能層は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む、請求項10に記載の反応器。
【請求項15】
化学逆水性ガスシフト(RWGS)反応を促進する触媒を含む、請求項10に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、水性ガスシフト反応に関する。より具体的には、本発明は、電気化学経路を伴う水性ガスシフト反応に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ガスシフト(WGS)反応は、二酸化炭素と水素とを形成するための、一酸化炭素と水蒸気との反応:
【数1】
を言い表したものである。逆水性ガスシフト(RWGS)反応は、逆方向の反応、すなわち、一酸化炭素と水とを形成するための、二酸化炭素と水素との反応である。これらの2つの反応、WGS及びRWGSは、平衡状態にある。WGS平衡反応は、アンモニア、炭化水素、メタノール、及び水素の生成などの多くの用途に存在する。それは、多くの場合、メタン及び他の炭化水素の蒸気改質と併せて使用される。フィッシャー-トロプシュプロセスでは、WGS平衡反応は、H
2/CO比のバランスをとるために使用される最も重要な反応のうちの1つである。加えて、WGS平衡反応は、水素を生成するために、石炭の気化と組み合わされる。石油及び化学工業では、大量の水素が必要である。例えば、大量の水素は、化石燃料の改良、及びアンモニア又はメタノール又は塩酸の生成で使用される。石油化学プラントは、水素化分解、水素化脱硫、水素化脱アルキルのために水素を必要とする。不飽和脂肪及び油の飽和レベルを高めるための水素添加プロセスにも水素が必要である。水素は、金属鉱石の還元剤でもある。
【0003】
従来、WGS反応は、高温シフト(HTS)触媒及び低温シフト(LTS)触媒の2つのカテゴリの触媒によって触媒される。HTS触媒は、酸化クロムによって安定化された酸化鉄からなり、LTS触媒は、銅をベースとしている。今日まで、WGS平衡反応は化学的に行われてきた。従来の実施とは違い、本開示は、電気化学的に実施されるWGS反応の予期しない発見について説明する。電気化学反応器及びそのような反応を行う方法についても説明する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、イオン伝導性膜を含む電気化学反応器について説明し、反応器は、電気入力なしに水性ガスシフト反応を電気化学的に行い、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はその両方を含む。
【0005】
一実施形態では、反応器は、金属相及びセラミック相を含む多孔質電極を備え、金属相は電子伝導性であり、セラミック相はイオン伝導性である。一実施形態では、電極は、膜によって分離され、両方とも還元環境に曝露される。一実施形態では、電極は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0006】
一実施形態では、イオン伝導性膜は、流体の流れに対して不浸透性である。一実施形態では、イオン伝導性膜は、電子も伝導し、反応器は、相互接続を含まない。一実施形態では、膜は、CGOを含む。一実施形態では、膜は、CoCGOを含む。一実施形態では、反応器は、化学逆水性ガスシフト(RWGS)反応を促進する触媒を含む。一実施形態では、反応器は、化学水性ガスシフト反応も行う。
【0007】
また、本明細書では、二機能層及び混合伝導性膜を含み、二機能層と混合伝導性膜とが互いに接触し、二機能層が逆水性ガスシフト(RWGS)反応を触媒し、電気化学反応においてアノードとして機能する反応器についても説明する。
【0008】
一実施形態では、アノードとしての二機能層は、還元環境に曝露され、二機能層で起こる電気化学反応は、酸化である。一実施形態では、集電体は、二機能層に取り付けられていない。一実施形態では、反応器は、相互接続を含まず、反応器は、電気を受信も生成もしない。一実施形態では、二機能層は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0009】
一実施形態では、反応器は、化学逆水性ガスシフト(RWGS)反応を促進する触媒を含む。一実施形態では、触媒は、高温RWGS触媒である。一実施形態では、触媒は、二機能層の一部である。一実施形態では、触媒は、二機能層の外側にあるように構成される。一実施形態では、触媒は、Ni、Cu、Fe、Pt族金属、又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
更なる態様及び実施形態は、以下の図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲において提供される。別途指定されない限り、本明細書に記載の特徴は組み合わせ可能であり、そのような全ての組み合わせは本開示の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図面は、本明細書に記載される特定の実施形態を説明するために提供される。図面は単に例示であり、特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではなく、特許請求される発明の全ての潜在的な特徴又は実施形態を示すことを意図するものではない。図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではなく、いくつかの例では、図面の特定の要素が、説明の目的のために図面の他の要素に対して拡大される場合もある。
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態による、電気化学(EC)反応器又は電気化学ガス生成器を示す。
【
図2A】本開示の一実施形態による、管状電気化学反応器を示す。
【
図2B】本開示の一実施形態による、管状電気化学反応器の断面図を示す。
【
図3】本開示の一実施形態による、本明細書で説明されるEC反応器を利用した水素生成システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概要
本明細書における開示は、電気化学WGS反応器及び使用方法について記載する。電極及び膜などの反応器の様々な構成要素が、構成要素の構成材料とともに記載されている。以下の記載は、本明細書に開示される本発明の様々な態様及び実施形態について詳述している。特定の実施形態は、本発明の範囲を定義することを意図したものではない。むしろ、実施形態は、特許請求される発明の範囲内に含まれる様々な組成物及び方法の非限定的な例を提供するものである。この説明は、当業者の観点から読まれるべきである。したがって、当業者に周知の情報は必ずしも含まれない。
【0014】
本明細書に別段の定めがない限り、以下の用語及び語句は、以下に示される意味を有する。本開示は、本明細書で明示的に定義されていない他の用語及び語句を使用する場合がある。そのような他の用語及び語句は、当業者にとって、それらが本開示の文脈内で有するであろう意味を有するものとする。場合によっては、用語又は語句は、単数形又は複数形で定義される場合がある。そのような例では、反対に明示的に示されない限り、単数形のいかなる用語も、その複数の対応物を含む場合があり、逆もまた同様であることが理解される。
【0015】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「置換基」への言及は、単一の置換基、並びに2つ以上の置換基などを包含する。本明細書で使用される場合、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など(such as)」、又は「含む(including)」は、より一般的な主題を更に明確にする例を導入することを意味する。特に明示的に示されない限り、そのような例は、本開示に示される実施形態を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる方法でも限定することを意図するものではない。また、これらの語句は、開示された実施形態に対するいかなる種類の優先性を示すものではない。
【0016】
本明細書で使用される場合、組成物と材料は、別途指定されない限り、互換的に使用される。各組成物/材料は、複数の要素、相、及び成分を有し得る。本明細書で使用される場合、加熱は、組成物又は材料にエネルギーを積極的に加えることを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、CGOは、代わりにガドリニアドープセリア、ガドリニウムドープ酸化セリウム、酸化セリウム(IV)、ガドリニウムドープGDC又はGCO(式Gd:CeO2)としても知られるガドリニウムドープセリアを指す。特に指定されていない限り、CGOとGDCとは互換的に使用される。本開示におけるシンガス(すなわち、合成ガス)は、主に水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素からなる混合物を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、セリアは、酸化セリウム(ceric oxide)、二酸化セリウム(ceric dioxide)、又は二酸化セリウム(cerium dioxide)としても知られる酸化セリウム(cerium oxide)を指し、希土類金属セリウムの酸化物である。ドープセリアは、サマリアドープセリア(SDC)、又はガドリニウムドープセリア(GDC又はCGO)などの他の元素でドープされたセリアを指す。本明細書で使用される場合、クロマイトは、クロム酸化物の全ての酸化状態を含むクロム酸化物を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、不浸透性である層又は物質は、それが流体の流れに対して不浸透性であることを指す。例えば、不浸透性層又は物質は、1マイクロダルシ未満、又は1ナノダルシ未満の浸透性を有する。
【0020】
本開示では、焼結は、材料を液化の程度まで溶融することなく、熱又は圧力、又はそれらの組み合わせによって材料の固体塊を形成するプロセスを指す。例えば、材料粒子は、加熱されることによって固体又は多孔質の塊に凝集され、材料粒子内の原子は、粒子の境界を越えて拡散し、粒子が一緒に融合し、1つの固体片を形成する。
【0021】
電気化学装置(例えば、燃料電池)内の相互接続は、多くの場合、個々のセル又は繰り返しユニットの間に配置される金属又はセラミックのいずれかである。その目的は、電気を分配又は結合することができるように、各セル又は繰り返しユニットを接続することである。相互接続は、電気化学装置におけるバイポーラプレートとも称される。本明細書で使用される場合、不浸透性層である相互接続は、流体の流れに対して不浸透性である層を指す。
【0022】
電気化学は、測定可能で定量的な現象としての電位と、識別可能な化学的変化との間の関係に関連する物理化学の分野であり、電位は、特定の化学的変化の結果か、又はその逆になるかのいずれかである。これらの反応は、イオン伝導性及び電子絶縁性の膜(又は溶液中のイオン種)によって分離された、電子伝導相(典型的には、必ずしもそうではないが、外部電気回路)を介して電極間を移動する電子を伴う。化学反応が、電解のような電位差によって影響を受ける場合、又はバッテリ又は燃料電池のような化学反応から電位が生じれば、それは電気化学反応と呼ばれる。化学反応とは異なり、電気化学反応では、電子(及び必然的に得られるイオン)は、分子間で直接移送されるのではなく、前述の電子伝導回路及びイオン伝導回路を介してそれぞれ移送される。この現象は、電気化学反応と化学反応とを区別するものである。
【0023】
従来の実施とは違い、イオン伝導性膜を含む電気化学反応器が見出されており、この反応器は、水性ガスシフト反応を電気化学的に行うことができ、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を含み、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はその両方を含む。これは、化学水性ガスシフト反応が反応物質の直接の結合を伴うため、化学経路を介した水性ガスシフト反応とは異なる。
【0024】
一実施形態では、反応器は、金属相及びセラミック相を含む多孔質電極を備え、金属相は、電子伝導性であり、セラミック相は、イオン伝導性である。様々な実施形態では、電極は、それらに取り付けられた集電体を有しない。様々な実施形態では、反応器は、いかなる集電体も含有しない。明らかに、そのような反応器は、いかなる電解装置又は燃料電池とも根本的に異なる。様々な実施形態では、そのような反応器は、電気を受信も生成もしない。
【0025】
一実施形態では、反応器内の電極のうちの1つは、電気化学的に酸化反応を行いながら還元環境に曝露されるように構成されたアノードである。様々な実施形態では、電極は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0026】
反応器内で起こる電気化学水性ガスシフト反応は、電気化学ハーフセル反応を含み、ハーフセル反応は、以下のとおりである。
【数2】
【0027】
様々な実施形態では、ハーフセル反応は、三相境界で行われ、三相境界は、電子伝導相及びイオン伝導相と細孔との交差部である。更に、反応器はまた、化学水性ガスシフト反応を行うことができる。
【0028】
様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、プロトン又は酸化物イオンを伝導する。様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、固体酸化物を含む。様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、流体の流れに対して不浸透性である。様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、電子も伝導し、反応器は、相互接続を含まない。
【0029】
更に、本明細書で説明されるのは、二機能層と混合伝導性膜とを含む反応器であり、二機能層と混合伝導性膜とは、互いに接触しており、二機能層は、逆水性ガスシフト(RWGS)反応を触媒し、電気化学反応においてアノードとして機能する。一実施形態では、アノードとしての二機能層は、還元環境に曝露され、二機能層で起こる電気化学反応は、酸化である。一実施形態では、集電体は、二機能層に取り付けられていない。一実施形態では、二機能層は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0030】
このような反応器は、様々な用途を有する。一実施形態では、反応器は、二酸化炭素の水素化により一酸化炭素を生成するために利用される。別の実施形態では、反応器は、H2をCOに変換するか、又はCOをH2に変換することによって、シンガス組成物(すなわち、H2/CO比)を調節するために使用される。以下の説明では、水素の生成を例として挙げるが、反応器の用途は水素の生成に限定されない。
【0031】
電気化学反応器
従来の実施とは違い、混合伝導性膜を含み、反応器が電気入力なしで水から水素を電気化学的に生成することができる電気化学反応器が見出されている。電気化学反応は、膜を通した酸化物イオンの交換を伴い、燃料(例えば、一酸化炭素)を酸化する。混合伝導性膜は、電子も伝導して電気化学反応を完了する。このように、反応器は、相互接続もバイポーラプレートも含まない。更に、反応器は発電せず、燃料電池ではない。様々な実施形態では、電極は、それらに取り付けられた集電体を有しない。様々な実施形態では、反応器は、いかなる集電体も含有しない。明らかに、そのような反応器は、いかなる電解装置とも又はいかなる燃料電池とも根本的に異なる。
【0032】
図1は、本開示の一実施形態による、電気化学反応器又は電気化学(EC)ガス生成器100を示す。電気化学反応器(又はECガス生成器)装置100は、第1の電極101、膜103、及び第2の電極102を含む。第1の電極101(アノードとも称される)は、燃料104を受けるように構成される。流れ104は、酸素を含まない。本開示では、酸素がないことは、第1の電極101に酸素が存在しないこと、又は少なくとも、反応を妨げるのに十分な酸素がないことを意味する。第2の電極102(カソードとも称される)は、105で示されるように、水(例えば、蒸気)を受けるように構成されている。
【0033】
一実施形態では、装置100は、燃料(例えば、アンモニア又はシンガス)を含む流れ104を受け、第1の電極(101)でCO2及び/又はH2O(106)を生成するように構成されている。様々な実施形態では、燃料は、H2、CO、シンガス、アンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、装置100はまた、水又は蒸気(105)を受け、第2の電極(102)で水素(107)を生成するように構成される。場合によっては、第2の電極は、蒸気と水素の混合物とを受ける。水は、反対側の電極で燃料(例えば、H2)を酸化するために必要な酸化イオン(膜を通って輸送される)を提供するため、このシナリオでは水が酸化剤とみなされる。このように、第1の電極101は還元環境で酸化反応を行っており、第2の電極102は還元環境で還元反応を行っている。様々な実施形態では、103は、酸化物イオン伝導性膜を表す。一実施形態では、酸化物イオン伝導性膜103はまた、電子を伝導する。このように、膜は混合導電性である。
【0034】
一実施形態では、第1の電極101及び第2の電極102は、Ni-YSZ又はNiO-YSZを含む。様々な実施形態では、電極101及び102は、Ni又はNiOと、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。代替的に、炭化水素を含むガスは、膜103/電極101と接触する前に改質される。改質器は、蒸気改質、乾式改質、又はそれらの組み合わせを行うように構成されている。改質されたガスは、供給流104として好適である。
【0035】
様々な実施形態では、装置は、集電体を含まない。一実施形態では、装置は、相互接続を含まない。電気を必要とせず、そのような装置は電気分解器ではない。これは、本開示のEC反応器の主な利点である。膜103は、電子を伝導するように構成され、したがって、混合伝導性、すなわち、電子伝導性とイオン伝導性との両方である。一実施形態では、膜103は、酸化物イオン及び電子を伝導する。一実施形態では、電極101、102及び膜103は、管状である(例えば、
図2A及び2Bを参照)。一実施形態では、電極101、102及び膜103は、平面である。これらの実施形態では、アノード及びカソードでの電気化学反応は、反応器に電位/電気を加える必要がなく、自発的に行われる。
【0036】
一実施形態では、電気化学反応器(又はECガス生成器)は、第1の電極、第2の電極、及び電極間の膜を含む装置であり、第1の電極及び第2の電極は、装置の使用中に白金族金属を含有しない金属相を含み、膜は酸化物イオン伝導性である。実施形態では、第1の電極は、燃料を受けるように構成される。一実施形態では、当該燃料は、アンモニア、若しくは水素、若しくは一酸化炭素、又はそれらの組み合わせを含む。実施形態では、第2の電極は、水及び水素を受けるように構成され、水を水素に還元するように構成される。様々な実施形態では、そのような還元は、電気入力なしで電気化学的に行われる。
【0037】
一実施形態では、膜は、ドープランタンクロマイト又は電子伝導性金属又はそれらの組み合わせを含有する電子伝導相を含み、膜は、ガドリニウムドープセリア(CGO)、サマリウムドープセリア(SDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeドープジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含有するイオン伝導相を含む。一実施形態では、ドープランタンクロマイトは、ストロンチウムドープランタンクロマイト、鉄ドープランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄ドープランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含み、導電性金属は、Ni、Cu、Ag、Au、Pt、Rh、又はそれらの組み合わせを含む。
【0038】
一実施形態では、膜は、ガドリニウムドープセリア、サマリウムドープセリア、焼結助剤、又はそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態では、焼結助剤は、二価又は三価の遷移金属イオン又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、金属イオンは、酸化物である。一実施形態では、遷移金属は、Co、Mn、Fe、Cu、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、膜は、CGOを含む。一実施形態では、膜は、コバルトドープCGO(CoCGO)を含む。一実施形態では、膜は、本質的に、CGOからなる。一実施形態では、膜は、CGOからなる。一実施形態では、膜は、本質的に、CoCGOからなる。一実施形態では、膜は、CoCGOからなる。一実施形態では、反応器は、相互接続を含まない。
【0039】
図2Aは、本開示の一実施形態による、管状電気化学(EC)反応器又はECガス生成器200を(正確な縮尺ではない)示す。管状生成器200は、それぞれ、内側管状構造体202、外側管状構造体204、及び内側管状構造体202と外側管状構造体204との間に配置された膜206を含む。管状生成器200は、流体通路のための空隙空間208を更に含む。
図2Bは、本開示の一実施形態による、管状生成器200の断面図(正確な縮尺ではない)を示す。管状生成器200は、第1の内側管状構造体202、第2の外側管状構造体204、及び内側管状構造体202と外側管状構造体204との間の膜206を含む。管状生成器200は、流体通路のための空隙空間208を更に含む。
【0040】
一実施形態では、電極及び膜は管状であり、第1の電極は最も外側にあり、第2の電極は最も内側にあり、第2の電極は水及び水素を受けるように構成されている。一実施形態では、電極及び膜は管状であり、第1の電極は最も内側にあり、第2の電極は最も外側にあり、第2の電極は水及び水素を受けるように構成されている。一実施形態では、電極及び膜は、管状である。
【0041】
一実施形態では、反応器は、化学逆水性ガスシフト(RWGS)反応を促進する触媒を含む。一実施形態では、触媒は、高温RWGS触媒である。一実施形態では、触媒は、反応器内のアノードの一部である。一実施形態では、触媒は、アノードの外側にあるように構成される。例えば、そのような触媒としてのNi-Al
2O
3ペレットは、
図2A及び
図2Bに示されるように、管を取り囲む反応器内に配置される。一実施形態では、触媒は、Ni、Cu、Fe、Pt族金属、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、触媒は、Pt、Cu、Rh、Ru、Fe、Ni、又はそれらの組み合わせを含む。
【0042】
水素生成システム及び方法
本明細書に開示される方法は、第1の電極、第2の電極、及び電極間の膜を含む装置を提供することと、第1の電極に第1の流れを導入することと、第2の電極に第2の流れを導入することと、第2の電極から水素を抽出することと、を含み、第1の電極及び第2の電極は、装置の使用中に白金族金属を含有しない金属相を含む。一実施形態では、膜は、酸化物イオン伝導性である。
【0043】
一実施形態では、装置は、500℃以上、又は600℃以上、又は700℃以上、又は750℃以上、又は800℃以上、又は850℃以上、又は900℃以上、又は950℃以上、又は1000℃以上の温度で動作される。様々な実施形態では、第1の電極と第2の電極との間の圧力差は、2psi以下、又は1.5psi以下、又は1psi以下である。一実施形態では、第1の流れは、10psi以下、又は5psi以下、又は3psi以下の圧力で装置に入る。一実施形態では、第2の流れは、10psi以下、又は5psi以下、又は3psi以下の圧力で装置に入る。
【0044】
一実施形態では、第1の流れは、燃料を含む。一実施形態では、当該燃料は、炭化水素若しくは水素若しくは一酸化炭素若しくはアンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第1の流れは、第1の電極に直接導入されるか、若しくは第2の流れは、第2の電極に直接導入されるか、又はその両方である。一実施形態では、方法は、第1の電極の上流に改質器又は触媒部分酸化(CPOX)反応器を提供することを含み、第1の流れは、第1の電極に導入される前に、改質器又はCPOX反応器を通過し、第1の電極は、Ni又はNiOを含む。一実施形態では、改質器は、蒸気改質器又は自己熱改質器である。
【0045】
一実施形態では、第1の流れは、燃料を含む。一実施形態では、燃料は、炭化水素若しくは水素若しくは一酸化炭素若しくはアンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第2の流れは、水及び水素からなる。一実施形態では、当該第一の流れは、一酸化炭素を含み、有意な量の水素も、炭化水素も、水も含まない。そのような場合、上流の改質器は必要ではない。本開示では、有意な量の水素も炭化水素も水も存在しないとは、水素又は炭化水素又は水の体積含有量が、5%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下、又は0.5%以下、又は0.1%以下、又は0.05%以下であることを意味する。
【0046】
様々な実施形態では、第1の流れは、50体積%以上のCO、又は60体積%以上のCO、又は70体積%以上のCO、又は80体積%以上のCO、又は90体積%以上のCOを含む。一実施形態では、第1の流れは、CO2を含む。一実施形態では、第1の流れは、シンガス(CO及びH2)を含む。一実施形態では、第1の流れは、アルゴン又は窒素のような不活性ガスを含む。一実施形態では、第2の流れは、水及び水素からなる。
【0047】
一実施形態では、この方法は、抽出された水素を、フィッシャー-トロプシュ(FT)反応、乾式改質反応、ニッケルによって触媒されるサバティエ反応、ボッシュ反応、逆水性ガスシフト反応、電気を生成するための電気化学反応、アンモニアの生成、肥料の生成、水素貯蔵のための電気化学コンプレッサ、水素ビヒクル又は水素化反応、又はそれらの組み合わせのうちの1つで使用することを含む。
【0048】
一実施形態では、第1の流れ及び第2の流れは、装置内で互いに接触しない。様々な実施形態では、水から水素への還元は、電気入力なしで電気化学的に行われる。一実施形態では、第1の流れは、水素と接触しない。一実施形態では、第1の流れ及び第2の流れは、装置内の膜によって分離される。
【0049】
一実施形態では、燃料は、炭化水素若しくは水素若しくは一酸化炭素若しくはアンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第2の流れは、水素を含む。一実施形態では、第1の流れは、燃料を含む。一実施形態では、燃料は、一酸化炭素からなる。一実施形態では、第1の流れは、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる。一実施形態では、第2の流れは、水及び水素からなる。一実施形態では、第2の流れは、蒸気及び水素からなる。
【0050】
図3に示すように、水素生成システムが示されている。システムは、触媒部分酸化(CPOX)反応器310、蒸気発生器330、及び電気化学(EC)反応器320を備え、CPOX反応器生成物流323は、EC反応器に導入され、蒸気発生器は、EC反応器に蒸気321を提供し、生成物流323及び蒸気321は、EC反応器内で互いに接触しない。CPOX反応器生成物流323は、EC反応器320内の燃料として使用される。CPOX反応器310は、炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパン、ガソリン、ジェット燃料など)を有する流れ311を取り込み、炭化水素を酸化して、シンガス、CO
2、及び水などを生成する。EC反応器は、窒素、アルゴン、二酸化炭素などのガスの存在下で意図された反応を効率的に実行することができるため、CPOX反応器とEC反応器との間のガス分離の必要がない。また、これにより、CPOX反応器は、酸化剤として空気を利用することができる。もちろん、精製された酸素は常にCPOX反応器で使用することができるが、空気を直接使用することで、設備コストと運用コストとの両方を大幅に節約することができる。
【0051】
EC反応器320は、CO及びCO
2を含む第1の生成物流324と、H
2及びH
2Oを含む第2の生成物流322とを生成し、2つの生成物流は互いに接触しない。場合によっては、第1の生成物流324の少なくとも一部(325)が再循環されて蒸気発生器に入り、熱を提供して水から蒸気を生成する。場合によっては、第2の生成物流322の一部は、再循環されてEC反応器に入る(カソード側、
図3には図示せず)。様々な実施形態では、EC反応器320は、イオン伝導性膜を含み、この膜は、アノードとともに、反応器が電気化学水性ガスシフト反応を行うことを可能にし、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はその両方を含む。アノードにより、反応器が化学水性ガスシフト反応を行うこともできる。
【0052】
したがって、水素は、以下の方法によって生成され、この方法は、炭化水素を触媒部分酸化(CPOX)反応器に導入して生成物流を生成することと、当該生成物流及び蒸気を電気化学(EC)反応器に提供することであって、生成物流及び蒸気はEC反応器内で互いに接触しない、提供することと、を含む。EC反応器は、イオン伝導性膜を含み、反応器は、水性ガスシフト反応を電気化学的に行うことができ、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はその両方を含む。更に、膜は、生成物流を蒸気から分離する。様々な実施形態では、生成物流側と蒸気側との間の圧力差は、2psi以下、又は1.5psi以下、又は1psi以下である。
【0053】
様々な実施形態では、CPOX反応器は、酸化剤として空気を利用する。様々な実施形態では、CPOX反応器生成物流は、ガス分離なしでEC反応器に直接入る。様々な実施形態では、EC反応器は、還元環境においてCPOX反応器生成物流を酸化させ、CO及びCO2を含む第1の生成物流を生成し、EC反応器は、電気入力なしで水素への蒸気を電気化学的に還元し、H2及びH2Oを含む第2の生成物流を生成する。様々な実施形態では、膜は、第1の生成物流及び第2の生成物流を分離する。様々な実施形態では、第1の生成物流の少なくとも一部は、水から蒸気を生成するために利用される。様々な実施形態では、第2の生成物流の少なくとも一部は、再循環されてEC反応器に入る。
【0054】
蒸気発生器は、水から蒸気を生成する。一実施形態では、電気化学反応器に入る蒸気は、600℃以上、又は700℃以上、又は800℃以上、又は850℃以上、又は900℃以上、又は950℃以上、又は1000℃以上、又は1100℃以上の温度を有する。一実施形態では、電気化学反応器に入る蒸気は、10psi以下、又は5psi以下、又は3psi以下の圧力を有する。
【0055】
本開示は、本発明の異なる特徴、構造、又は機能を実装するための例示的な実施形態を説明することを理解されたい。構成要素、配置、及び構成の例示的な実施形態は、本開示を簡略化するために説明されるが、これらの例示的な実施形態は、単に例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書に提示される実施形態は、特に指定されない限り、組み合わされてもよい。そのような組み合わせは、本開示の範囲から逸脱するものではない。
【0056】
更に、特定の用語は、特定の構成要素又はステップを指すために、説明及び特許請求の範囲全体にわたって使用される。当業者であれば理解するように、様々なエンティティは、異なる名前で同じ構成要素又はプロセスステップを参照する場合があり、したがって、本明細書に記載される要素の命名規則は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。更に、本明細書で使用される用語及び命名規則は、名前が異なるが機能が異なる構成要素、特徴、及び/又はステップを区別することを意図するものではない。
【0057】
本開示は、様々な修正及び代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態は、図面及び説明において例として示されている。しかしながら、図面及び詳細な説明は、開示される特定の形態に本開示を限定することを意図するものではなく、逆に、本開示の趣旨及び範囲内にある全ての修正、等価物、及び代替物を網羅することを意図することを理解されたい。
【国際調査報告】