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特表2024-518264NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20240423BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240423BHJP
   F01N 3/28 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B01J29/78 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/28 301C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561353
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 GB2022051209
(87)【国際公開番号】W WO2022238709
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/201,773
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】エイヴィス、ダニエル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、アレクサンダー ニコラス ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、マシュー エーベン
(72)【発明者】
【氏名】アイアコノ、カルメロ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス、ケイトリン ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー、アラナ スーザン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB04
3G091BA14
4D148AA06
4D148AB02
4D148BA07Y
4D148BA08Y
4D148BA11X
4D148BA19X
4D148BA22Y
4D148BA28X
4D148BA35X
4D148BA41X
4D148BB02
4D148BB14
4D148BB17
4D148DA03
4D148DA11
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA19
4G169EA20
4G169EA27
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169FC08
4G169ZA14A
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物であって、本組成物が、銅置換ゼオライトを含み、銅置換ゼオライトが、i)約0.1~約200g/ftの総量のCeと、ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、を含む、触媒組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物であって、前記組成物が、銅置換ゼオライトを含み、前記銅置換ゼオライトが、
i)約0.1~約200g/ftの総量のCeと、
ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、
を含む、触媒組成物。
【請求項2】
前記銅が、前記触媒組成物の約1~約6重量%の量で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記銅が、前記触媒組成物の約3~約5.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記銅が、前記触媒組成物の約3.2~約4.8重量%の量で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記銅置換ゼオライトが、小細孔ゼオライトである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記小細孔ゼオライトが、CHA及び/又はAEI骨格構造型を有する、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
Mnが、約10~約70g/ftの量で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
Ceが、約80~約140g/ftの量で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記組成物が、
前記触媒組成物の約1~約6重量%の量の銅と、
約10~約70g/ftの量のMnと、
約80~約140g/ftの量のCeと、
を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
排気ガスシステムのための触媒物品であって、前記触媒物品が、請求項1に記載の触媒組成物と、基材と、を含む、触媒物品。
【請求項11】
請求項10に記載の触媒物品と、燃焼機関と、を含む、排気ガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、触媒組成物に関し、特に、NOx含有排気ガスを処理するための組成物に関する。この組成物は、改善されたNO選択性と共に良好なNOx転化率を与える。
【0002】
NH-SCRは、希薄燃焼エンジン排気の後処理におけるNOx軽減のために最も有効な技術である。これに関して、銅ゼオライトは、優れた触媒性能及び熱水安定性というそれらの重要な利点のために、NH-SCR触媒として商業化されてきた。しかしながら、特に冷間始動条件下の車両について、エンジン排気からのエミッションに課される制限がますます厳しくなるにつれて、低温NH-SCR活性及びNO選択性を更に高めることが非常に望ましい。
【0003】
したがって、NOx含有排気ガスを処理するための、及び/又は従来技術に関連する問題のうちの少なくともいくつかに取り組むための、又は少なくとも、商業的に採算の合うその代替案を提供するための、改善された触媒組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明のいくつかの態様によれば、NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物であって、本組成物が、銅置換ゼオライトを含み、銅置換ゼオライトが、i)約0.1~約200g/ftの総量のCeと、ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、を含む、触媒組成物。いくつかの態様では、Mnは、約10~約70g/ftの量で存在する。いくつかの態様では、Ceは、約80~約140g/ftの量で存在する。
【0005】
いくつかの態様では、銅は、触媒組成物の約1~約6重量%、触媒組成物の約3重量%~約5.5重量%、又は触媒組成物の約3.2~約4.8重量%の量で存在してもよい。
【0006】
いくつかの態様では、銅置換ゼオライトは、小細孔ゼオライト、例えば、CHA及び/又はAEI骨格構造型を有する小細孔ゼオライトである。
【0007】
特定の態様では、触媒組成物は、触媒組成物の約1~約6重量%の量の銅と、約10~約70g/ftの量のMnと、約80~約140g/ftの量のCeと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒のNOx転化活性を示すグラフである。
図2】800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒のNO選択性を示すグラフである。
図3】800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒の200℃でのNOx転化の一時的な応答を示すグラフである。
図4】650℃で50時間エージングした比較例3、4及び5並びに実施例2の触媒のNOx転化活性を示すグラフである。
図5】650℃で50時間エージングした比較例3、4及び5並びに実施例2の触媒のNO選択性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物、方法、及びシステムは、NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物であって、本組成物が、銅置換ゼオライトを含み、銅置換ゼオライトが、
i)約0.1~約200g/ftの総量のCeと、
ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、を含む、触媒組成物に関する。
【0010】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に矛盾することが示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0011】
触媒組成物
触媒組成物は、i)約0.1~約200g/ftの量のCeと、ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、を含む銅置換ゼオライトを含む。いくつかの態様では、銅置換ゼオライトは、銅置換ゼオライトと、i)約0.1~約200g/ftの量のCeと、ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、から本質的になる。いくつかの態様では、銅置換ゼオライトは、銅置換ゼオライトと、i)約0.1~約200g/ftの量のCeと、ii)約0.1~約200g/ftの総量のMnと、からなる。いくつかの態様では、銅置換ゼオライトは、Cu、Ce、及びMnに加えて、更なる金属を含む。
【0012】
ゼオライト
ゼオライトは、アルミナ及びシリカから形成される構造であり、アルミナに対するシリカのモル比(silica-to-alumina molar ratio、「SAR」)が、ゼオライト構造内の反応部位を決定付ける。
【0013】
いくつかの態様では、好適なゼオライトは、5~200(例えば、10~200)、10~100(例えば、10~30又は20~80)、10~50、10~30、12~40、15~30、5~20、5~15、8~15、8~13、10~15、10~20、10~40、10~60、10~80、10~100、10~150、30未満、20未満、15未満、又は13未満のアルミナに対するシリカのモル比(SAR)を有する。いくつかの態様では、好適なモレキュラーシーブは、200超、600超、又は1200超のSARを有する。いくつかの態様では、モレキュラーシーブは、約1500~約2100のSARを有する。
【0014】
いくつかの態様では、ゼオライトは、小細孔ゼオライトである。小細孔ゼオライトは、8個の四面体原子(Si4+及びAl3+)で構成される細孔を有し、それぞれが共有酸素によって連結されている。これらの8員環の細孔は、全体的な触媒性能にとって重要である、より大きな分子の進入及び離脱を制限しつつ、結晶内空隙空間に対する、例えば、自動車排気浄化(NOx除去)の間のNOxに対する、又はメタノールから軽質オレフィンへの転化の途中のメタノールに対する、小分子のアクセスを提供する。小細孔ゼオライトは、環中に8個の四面体原子を有する細孔開口部を含む材料であるが、中細孔ゼオライトは、最小細孔が環中に10個の四面体原子を有するものであり、大細孔ゼオライトは、最小細孔が環中に12個の四面体原子を有するものである。
【0015】
いくつかの態様では、小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、EMT、GME、KFI、LEV、LTN、及びSFW(これらの2つ以上の混合物又は相互成長を含む)からなる群から選択される骨格構造を有する。特定の態様では、ゼオライトは、CHA及び/又はAEI型骨格構造を有する。
【0016】
いくつかの態様では、小細孔ゼオライトは、約30未満、約5~約30、又は約10~約30のアルミナに対するシリカのモル比(SAR)を有する。
【0017】
ゼオライトが中細孔ゼオライトである場合、中細孔ゼオライトは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、又はこれらの2つ以上の混合物及び/若しくは相互成長からなる群から選択される骨格構造を有し得る。いくつかの態様では、中細孔ゼオライトは、FER、MEL、MFI、及びSTTからなる群から選択される骨格構造を有する。
【0018】
ゼオライトが大細孔ゼオライトである場合、大細孔ゼオライトは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、及びVET、又はこれらの2つ以上の混合物及び/若しくは相互成長からなる群から選択される骨格構造を有し得る。いくつかの態様では、大細孔ゼオライトは、AFI、BEA、MAZ、MOR、及びOFFからなる群から選択される骨格構造を有する。
【0019】

本発明のゼオライトは、銅置換されている。銅は、イオン交換などの既知の技術によって組み込まれてもよい。銅は、約1~約6重量%、約3~約5.5重量%、又は約3.2~約4.8重量%の量で銅置換ゼオライト中に存在してもよい。重量%への言及は、銅置換ゼオライトの総重量に対する銅の重量である。
【0020】
セリウム
本発明の銅置換ゼオライトは、セリウムを含む。触媒組成物は、約0.1~約200g/ftの総量のCeを含む。いくつかの態様では、触媒組成物は、約80~約140g/ft、又は約90~約130g/ftの総量のCeを含む。
【0021】
マンガン
本発明の銅置換ゼオライトは、マンガンを含む。触媒組成物は、約0.1~約200g/ftの総量のMnを含む。いくつかの態様では、触媒組成物は、約10~約70g/ft、又は約10~約40g/ftの総量のMnを含む。
【0022】
Ce/Mnの重量比
いくつかの態様では、銅置換ゼオライトは、セリウム及びマンガンを約1:1の重量比で含む。いくつかの態様では、銅置換ゼオライトは、セリウム及びマンガンを約0.1~約50、約0.2~約15;又は約0.33~約3の重量比で含む。
【0023】
本発明の触媒は、例えば、1ポット、予固定、及び噴霧乾燥をはじめとする、当該技術分野において公知の任意の好適な手段によって調製することができる。
【0024】
触媒物品
更なる態様によれば、本明細書に記載の触媒組成物を含む、排気ガスシステムのための触媒物品が提供される。触媒組成物を含むそのような触媒物品を形成するための技術は、当該技術分野において周知である。
【0025】
本発明の触媒物品は、基材と、触媒組成物と、を含んでもよい。基材は、フロースルー基材であってもフィルタ基材であってもよい。基材は、触媒組成物を含んでもよく(すなわち、触媒物品は押出成形によって得られる)、又は触媒組成物は、基材上に配置又は担持されてもよい(すなわち、触媒組成物は、ウォッシュコーティング法によって基材上に適用される)。触媒組成物は、所望な場合、基材を完全に又は部分的にコーティングしてもよい。いくつかの態様では、触媒物品は、1つ以上の追加の触媒でコーティングされたCu/Mn/Ceゼオライト押出成形物品を含む。いくつかの態様では、押出成形触媒は、1つ以上の追加のSCR触媒でコーティングされ、例えば、Cu/Mn/Ceゼオライトを含み得る。
【0026】
いくつかの態様では、触媒物品は、約0.5~約4.0g in 3、約1.0~約3.0g in 3、又は約1.2~約2.5g/in3の総濃度で触媒組成物を含み得る。
【0027】
触媒物品がフィルタ基材を有する場合、かかる触媒物品は、選択的触媒還元フィルタ触媒である。選択的触媒還元フィルタは、フィルタ基材及び触媒組成物を含む。本出願にわたり、SCR触媒の使用への言及は、該当する場合、選択的触媒還元フィルタ触媒の使用も含むと理解される。
【0028】
フロースルー基材又はフィルタ基材は、触媒/吸着剤成分を含有することが可能な基材である。基材は、好ましくはセラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、メタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメン(spudomene)など)、又はこれらの任意の2つ以上の混合物若しくは混合酸化物を含んでもよい。コーディエライト、アルミノケイ酸マグネシウム、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0029】
金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びにその他の微量金属に加えて鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0030】
フロースルー基材は、好ましくは、基材を通って軸方向に連続しており、かつ基材の入口又は出口から全体にわたって延びている、多くの小さな平行薄壁チャネルを有するハニカム構造を有するフロースルーモノリスである。基材のチャネル断面は、任意の形状であってもよいが、好ましくは正方形、正弦波形、三角形、矩形、六角形、台形、円形、又は楕円形である。フロースルー基材はまた、触媒を基材壁に浸透させる高多孔性のものであってもよい。
【0031】
フィルタ基材は、好ましくはウォールフローモノリスフィルタである。ウォールフローフィルタのチャネルは、交互に遮断される。このことにより、排気ガス流が入口からチャネルに入り、その後、チャネル壁を通って流れ、出口につながる異なるチャネルからフィルタを出ることができる。したがって、排気ガス流中の粒子状物質は、フィルタ内に捕捉される。
【0032】
触媒組成物は、ウォッシュコート手順などの任意の公知の手段によって、フロースルー基材又はフィルタ基材に添加されてもよい。
【0033】
触媒物品が選択的触媒還元フィルタである場合、フィルタ基材は、好ましくはウォールフローフィルタ基材のモノリスであってもよい。ウォールフローフィルタ基材のモノリス(例えば、SCR-DPFのもの)は、典型的には、60~400セル/平方インチ(cells per square inch、cpsi)のセル密度を有する。ウォールフローフィルタ基材のモノリスは、100~350cpsi、より好ましくは200~300cpsiのセル密度を有することが好ましい。
【0034】
ウォールフローフィルタ基材のモノリスは、0.20~0.50mm、好ましくは0.25~0.35mm(例えば、約0.30mm)の壁厚(例えば、平均内部壁厚)を有し得る。
【0035】
概ね、コーティングされていないウォールフローフィルタ基材のモノリスは、50~80%、好ましくは55~75%、より好ましくは60~70%の多孔率を有する。コーティングされていないウォールフローフィルタ基材のモノリスは、典型的には、少なくとも5μmの平均細孔径を有する。平均細孔径は、10~40μm、例えば15~35μm、より好ましくは20~30μmであることが好ましい。
【0036】
ウォールフローフィルタ基材は、対称セル設計を有しても、非対称セル設計を有してもよい。
【0037】
選択的触媒還元フィルタの場合、概して、触媒組成物は、ウォールフローフィルタ基材のモノリスの壁内に配置されている。加えて、触媒組成物は、入口チャネルの壁上に、及び/又は出口チャネルの壁上に配置されてもよい。
【0038】
本発明の態様の触媒組成物は、好適なモノリス基材上にコーティングされてもよい。モノリス基材上にコーティングするため又は押出成形型基材モノリスを製造するための本発明の触媒組成物を含有するウォッシュコート組成物は、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然に存在する粘土、TiO、ZrO、及びSnOからなる群から選択される結合剤を含み得る。概して、所望の充填レベルで触媒組成物を含む触媒物品は、ウォッシュコーティング、押出成形、又は当該技術分野において公知の他の方法によって調製され得る。
【0039】
排気ガスシステム及び方法
更なる態様によれば、本明細書に記載の触媒物品と、燃焼機関、好ましくはディーゼルエンジンとを含む、排気ガスシステムが提供される。触媒物品は、エンジンから排出される排気ガスを処理するためにエンジンの下流に配置される。
【0040】
本発明の方法は、窒素酸化物を含有する排気ガスを、本明細書に記載の触媒組成物の存在下で、窒素性還元剤又は炭化水素還元剤などの還元剤と接触させることによって、排気ガスを処理することに関する。そのようにして、本発明の触媒組成物は、選択的触媒還元触媒として機能することができる。
【0041】
いくつかの態様では、窒素酸化物は、少なくとも100℃の温度で還元剤によって還元される。いくつかの態様では、本明細書に記載の触媒は、900℃より高い温度で熱水安定性であることに加えて、窒素酸化物を還元剤によって広い温度範囲(例えば約150℃~750℃)で還元するのに効果的である。熱水安定性は、重負荷及び軽負荷ディーゼルエンジンからの排気ガス、特に、(任意選択的に触媒による)ディーゼル微粒子フィルタを含む排気システムを含むエンジンからの排気ガスを処理するのに特に有用な場合があり、フィルタは、例えば、フィルタの上流の排気システムに炭化水素を噴射することにより活性に再生され、本発明に使用するためのゼオライト触媒はフィルタの下流に位置している。
【0042】
特定の態様では、本明細書に記載の触媒は、窒素酸化物を還元剤により175~550℃の温度範囲で還元するのに効果的である。別の態様では、温度範囲は175~400℃である。いくつかの態様では、温度範囲は、275~500℃、又は250~550℃である。NOがガス流中に存在する場合、温度範囲は、より広くてもよく、例えば、150~650℃、175~625℃、200~600℃、又は225~575℃であってもよい。
【0043】
発明の利点
驚くべきことに、本発明の触媒組成物は、以下のような予想外の利点を提供することが発見された。
・触媒組成物中にCeが存在すると、エージングされた触媒のNO転化の改善を与える。Mnの添加は、NOx転化性能を損なわず、いくつかの添加量で実際に改善する。Mnの添加はまた、エージングされた触媒について、低温及び高温の両方で、改善されたNO選択性をもたらす。
・セリウム及びマンガンの組み合わせは、低温NOx活性を相乗的に改善する。
・マンガンに加えてセリウムを添加しても、マンガンの存在による場合に達成される減少したNO選択性を著しく損なうことはない。
・マンガンの添加は、セリウムの存在によって達成される改善された一時的な応答を損なわないだけでなく、改善されたNH貯蔵ももたらす。
・マンガンの添加は、セリウムの存在によって達成される改善された低温NOx活性を損なわないだけではなく、実際に高温NOx活性を改善する。
・セリウムの添加はまた、マンガンの存在によって達成される高温での減少したNO選択性を有意に損なわない。
【0044】
本発明の好ましい実施形態について本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、変形がなされ得ることが当業者には理解されるであろう。
【0045】
ここで、以下の非限定的な実施例及び図に関連して本発明を更に説明する。
【実施例
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示される比較例1~5並びに実施例1及び2の触媒のNOx活性及びNO選択性を、500ppmのNO、750ppmのNH、350ppmのCO、8%のCO、10%のO、5%のHO、残部のNを含むガス流を用いて試験した。試験の結果を図1~5に示す。
【0048】
図1は、800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒のNOx転化活性を示すグラフである。
【0049】
図2は、800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒のNO選択性を示すグラフである。
【0050】
図3は、800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒の200℃でのNOx転化の一時的な応答を示すグラフである。
【0051】
図4は、650℃で50時間エージングした比較例3、4及び5並びに実施例2の触媒のNOx転化活性を示すグラフである。
【0052】
図5は、650℃で50時間エージングした比較例3、4及び5並びに実施例2の触媒のNO選択性を示すグラフである。
【0053】
図1は、800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒のNOx転化活性のデータを含む。図1は、セリウム又はマンガン単独と比較した、銅ゼオライトをマンガン及びセリウムの両方で置換することのNOx活性に対する効果を示す。図1に示されるように、マンガン及びセリウムの組み合わせは、マンガンのみで置換された銅ゼオライト及びセリウムのみで置換された銅ゼオライトの両方と比較して、低温で改善されたエージング後NOx活性をもたらす。したがって、セリウム及びマンガンの組み合わせは、低温NOx活性を相乗的に改善する。
【0054】
図2は、800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒のNO選択性のデータを含む。図2は、セリウム又はマンガン単独と比較した、銅ゼオライトをマンガン及びセリウムの両方で置換することのNO選択性に対する効果を示す。図2に示されるように、マンガン及びセリウムの組み合わせ(実施例1)は、セリウムのみで置換された銅ゼオライトと比較して、低温及び高温の両方で改善されたNO選択性をもたらし、マンガンのみで置換された銅ゼオライトと比較して、同等のNO選択性をもたらす。したがって、マンガンに加えてセリウムを添加しても、マンガンの存在による場合に達成される減少したNO選択性を著しく損なうことはない。
【0055】
図3は、800℃で16時間エージングした比較例1及び2並びに実施例1の触媒の200℃でのNOx転化の一時的な応答のデータを含む。図3は、セリウム又はマンガン単独と比較したNOx活性に対する、銅ゼオライトをマンガン及びセリウムの両方で置換した場合のNOx転化の一時的な応答に対する効果を示す。図3に示されるように、マンガン及びセリウムの組み合わせ(実施例1)は、マンガンのみで置換された銅ゼオライトと比較して、NOx活性の改善された一時的な応答をもたらし、セリウムのみで置換された銅ゼオライトと比較して、改善されたNH貯蔵をもたらす。実際に、マンガンの添加は、セリウムの存在によって達成される改善された一時的な応答を損なわないだけでなく、改善されたNH貯蔵ももたらす。
【0056】
図4は、650℃で50時間エージングした比較例3、4及び5並びに実施例2の触媒のNOx転化活性のデータを含む。図4は、セリウム又はマンガン単独と比較した、銅ゼオライトをマンガン及びセリウムの両方で置換することのNOx活性に対する効果を示す。図4に示されるように、マンガン及びセリウムの組み合わせ(実施例1)は、CuMnと比較して、低温で改善されたNOx活性をもたらす。図4はまた、図1とは対照的に、セリウムのみで置換された銅ゼオライトと比較して、高温でマンガン及びセリウムの組み合わせの場合に改善されたNOx活性を示し、マンガンのみで置換された銅ゼオライトと比較して、同等の高温NOX活性を示す。したがって、マンガンの添加は、セリウムの存在によって達成される改善された低温NOx活性を損なわないだけではなく、実際に高温NOx活性を改善する。
【0057】
図5は、650℃で50時間エージングした比較例3、4及び5並びに実施例2の触媒のNO選択性のデータを含む。図5は、セリウム又はマンガン単独と比較したNO選択性に対する、銅ゼオライトをマンガン及びセリウムの両方で置換した場合のNOに対する効果を示す。図5に示されるように、マンガン及びセリウムの組み合わせは、マンガンのみで置換された銅ゼオライト(比較例4及び5の両方の場合)及びセリウムで置換された銅ゼオライトと比較して、低温で、より低いNO選択性を相乗的に達成する。セリウムの添加はまた、マンガンの存在によって達成される高温での減少したNO選択性を有意に損なわない。
【0058】
したがって、マンガン及びセリウムの組み合わせは、特に低温で、エージングされた触媒のNO選択性及びNOx活性を相乗的に改善する。
【0059】
「含む(comprising)」という用語は、他の成分の存在を許容するように触媒の組成を説明するために使用されているが、本発明の特定の態様は、本明細書に記載の成分から実質的になる組成物、すなわち、5重量%未満の他の成分、1%未満の他の成分を含有するか、又は他の成分を含有しない組成物を含むことが理解されるであろう。
【0060】
本明細書における重量%への全ての言及は、別段の指示がない限り、銅置換小細孔ゼオライトの総重量に対するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】