(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法
(51)【国際特許分類】
C22B 21/06 20060101AFI20240423BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240423BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20240423BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240423BHJP
C22B 1/248 20060101ALI20240423BHJP
B22D 21/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C22B21/06
C22B7/00 F
C22B1/02
C22B1/00 601
C22B1/248
B22D21/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561372
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022018830
(87)【国際公開番号】W WO2022240467
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110528009.X
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523043898
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】グオユ・チアン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・スン
(72)【発明者】
【氏名】チュンウェイ・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ホンビン・カオ
(72)【発明者】
【氏名】ペンチェン・ヤン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA22
4K001CA05
4K001CA09
4K001CA11
4K001CA49
4K001DA05
4K001EA03
4K001GA02
4K001GA14
4K001GA17
(57)【要約】
方法は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うステップを含む。方法は、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うステップをさらに含む。方法は、アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内でブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うステップをさらに含む。方法は、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品を得るためにアルミニウム合金溶湯に対して鋳造を行うステップをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法であって、前記方法は、
航空アルミニウム合金の前記加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うステップと、
ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前記加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うステップと、
アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内で前記ブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うステップと、
航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品を得るために前記アルミニウム合金溶湯に対して鋳造を行うステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記酸素制御された製錬の後、前記鋳造の前に、前記アルミニウム合金溶湯の酸素制御された精製を行うステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
航空アルミニウム合金の前記加工済みアルミニウムスクラップは、2系アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップおよび7系アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記焙焼は空気雰囲気中で行われ、前記焙焼における焙焼温度は100~500℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記湿式洗浄は洗浄および乾燥を含み、洗浄工程で使用される洗浄液は、工業用水、高純度水またはエチルアルコールのうちの1つまたは複数であり、前記洗浄工程は、前記洗浄工程でマイクロ波振動、超音波振動または機械的撹拌のうちの1つまたは複数を使用することによって強化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
乾燥工程で使用される乾燥温度は約60℃~約150℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プレス成形後に形成される前記ブロック形状のアルミニウムスクラップの密度は、1.0~5.0t/m
3である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸素制御された製錬において、酸素ポテンシャルを0.001Pa以下の前記酸素制御された製錬における酸素分圧に制御するために真空または不活性ガス保護が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素制御された製錬は、酸素制御された状態で前記ブロック形状のアルミニウムスクラップの急速な溶融を達成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ブロック形状のアルミニウムスクラップの前記急速な溶融は、前記酸素制御された製錬において電磁撹拌またはガス吹込み撹拌を用いて加速される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
製錬時間が約10分~約30分である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記製錬は、酸素制御された製錬状態で約800℃~約1100℃の製錬温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素制御された精製において酸素ポテンシャルを制御するために真空または不活性ガス保護が使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記酸素制御された精製における酸素分圧が約0.001Pa以下に制御される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
元素反応および拡散工程が、前記酸素制御された精製において電磁撹拌またはガス吹込み撹拌の助けを借りて加速される、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
約10分~約30分の精製時間を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記精製は、酸素制御された精製状態で約800℃~約1100℃の精製温度で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記酸素制御された精製は、前記アルミニウム合金溶湯中の元素の除去および合金化処理を行うために、前記アルミニウム合金溶湯に金属銅、銅合金、金属亜鉛、亜鉛合金およびマグネシウム合金のうちの1つまたは複数を添加するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記酸素制御された精製における酸素分圧が最大0.001Paである、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法であって、前記方法は、
航空アルミニウム合金の前記加工済みアルミニウムスクラップを前処理するステップであって、前処理する前記ステップが焙焼および湿式洗浄のうちの1つまたは複数を含む、ステップと、
ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前記前処理された加工済みアルミニウムスクラップをプレス加工するステップと、
アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内で前記ブロック形状のアルミニウムスクラップの酸素制御された製錬を行うステップと、
アルミニウム合金製品を得るために前記アルミニウム合金溶湯を鋳造するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年5月14日に出願された中国特許出願第202110528009.X号の優先権を主張する。
【0002】
分野
本開示は、二次資源回収に関し、より詳細には、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
航空アルミニウム合金などのアルミニウム合金は、航空機製造産業で一般的に使用される材料であり、標準的には胴体の総重量の約70%以上を占める。製造工程中に製造されたチップなどのスクラップ材料をリサイクルすることは、製造コストを削減し、効率を改善し、廃棄物を削減するために望ましい。現在のリサイクル工程の欠点は、廃棄された材料の表面酸化、腐食、切削液および油水汚染が原因で生じる。さらに、異なるグレードのアルミニウム合金を分離することは費用がかかり、労力を要するため、航空アルミニウムスクラップの標準的な回収率は低い。
【0004】
したがって、当業者は、材料回収の分野、ゆえに、上記の懸念に対処することを意図した装置および方法の研究開発努力を続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下は、本開示による主題の、特許請求されるものもされないものもある例の非網羅的なリストである。
【0006】
開示するのは、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法である。
【0007】
一例では、方法は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うステップを含む。方法は、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うステップをさらに含む。方法は、アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内でブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うステップをさらに含む。方法は、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品を得るためにアルミニウム合金溶湯に対して鋳造を行うステップをさらに含む。
【0008】
別の例では、方法は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを前処理するステップであって、前処理が焙焼および湿式洗浄のうちの1つまたは複数を含む、ステップを含む。方法は、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップをプレス加工するステップをさらに含む。方法は、アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内でブロック形状のアルミニウムスクラップの酸素制御された製錬を行うステップをさらに含む。方法は、アルミニウム合金製品を得るためにアルミニウム合金溶湯を流し込むステップをさらに含む。
【0009】
開示のシステム、装置、および方法の他の例は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態による航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法の全体的な工程フロー図である。
【
図2A】本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真である。
【
図2B】本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真である。
【
図2C】本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真である。
【
図2D】本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真である。
【
図2E】本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真である。
【
図2F】本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真である。
【
図3】本開示の実施例1による鋳造アルミニウムインゴットの写真である。
【
図4】本開示の実施例2による鋳造アルミニウムインゴットの写真である。
【
図5A】本開示の実施例3による鋳造アルミニウムインゴットの写真である。
【
図5B】本開示の実施例3による鋳造アルミニウムインゴットの写真である。
【
図6】本開示の実施例4による鋳造アルミニウムインゴットの写真である。
【
図7】本開示の比較例1による鋳造アルミニウムインゴットの写真である。
【
図8】本開示の比較例2による鋳造アルミニウムインゴット含有物の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
現在の航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップの回収は、アルミニウムスクラップの切削液および油水汚染、易酸化性、低回収率、ならびに溶融工程中のアルミニウムの大量の燃焼損失を含む課題に直面している。繰り返し慎重に研究した後、上記の問題は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して焙焼または湿式洗浄を行って切削液および油水を除去し、次いで加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行い、酸素制御された製錬工程を使用するなどといった方法の統合された最適化によって解決される可能性があり、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを効率的に回収するという目的が達成されることが分かっている。本開示における高効率は2つの意味を指し、その第一はアルミニウムスクラップの溶融速度を改善することであり、第二はアルミニウムスクラップの回収率を改善することである。実施工程のこれらの考察および検証に基づいて、本開示を提供する。
【0012】
したがって、本開示の主な目的は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップの回収効率が低いという先行技術の問題を解決するために、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法を提供することである。
【0013】
上記目的を達成するために、本開示によれば、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法が提供され、方法は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うステップと、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うステップと、アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内でブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うステップと、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品を得るためにアルミニウム合金溶湯に対して鋳造を行うステップと、を含む。
【0014】
さらに、方法は、酸素制御された製錬の後、鋳造の前に、アルミニウム合金溶湯の成分最適化を達成するためにアルミニウム合金溶湯に対して酸素制御された精製を行うステップをさらに含む。
【0015】
さらに、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップは、2系アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップおよび7系アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップのうちの1つまたは複数である。
【0016】
さらに、焙焼は空気雰囲気中で行われ、焙焼における焙焼温度は100~500℃である。
【0017】
さらに、湿式洗浄は洗浄および乾燥を含み、洗浄工程で使用される洗浄液は、工業用水、高純度水またはエチルアルコールのうちの1つまたは複数であり、好ましくは洗浄工程は、洗浄工程でマイクロ波振動、超音波振動または機械的撹拌のうちの1つまたは複数を使用することによって強化され、好ましくは乾燥工程で使用される乾燥温度は60~150℃である。
【0018】
さらに、プレス成形後に形成されるブロック形状のアルミニウムスクラップの密度は、1.0~5.0t/m3である。
【0019】
さらに、酸素制御された製錬では、酸素ポテンシャルの制御を行うために真空または不活性ガス保護が使用され、好ましくは、酸素制御された製錬における酸素分圧が0.001Pa以下に制御される。
【0020】
さらに、酸素制御された製錬は、酸素制御された状態でブロック形状のアルミニウムスクラップの急速な溶融を達成するステップを含み、好ましくは、ブロック形状のアルミニウムスクラップの溶融は、酸素制御された製錬において電磁撹拌またはガス吹込み撹拌の助けを借りて加速され、好ましくは製錬時間は10~30分であり、酸素制御された製錬における製錬温度は800~1100℃である。
【0021】
さらに、酸素制御された精製における酸素ポテンシャルの制御を行うために真空または不活性ガス保護が使用され、好ましくは酸素制御された精製における酸素分圧は0.001Pa以下に制御され、好ましくは元素反応および拡散工程が、酸素制御された精製において電磁撹拌またはガス吹込み撹拌の助けを借りて加速され、好ましくは、酸素制御された精製における精製時間は10~30分であり、精製温度は800~1100℃である。
【0022】
さらに、酸素制御された精製は、アルミニウム合金溶湯中の元素の除去および合金化処理を行うために、アルミニウム合金溶湯に金属銅、銅合金、金属亜鉛、亜鉛合金またはマグネシウム合金を添加するステップを含み、好ましくは、酸素制御された精製における酸素分圧は0.001Pa以下に制御される。
【0023】
本開示の技術的解決策が適用され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うことによって、加工工程で使用される切削液および油水が容易に除去され得、加工済みアルミニウムスクラップの汚染が可能な限り低減され、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることが回避され、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うことによって、加工済みアルミニウムスクラップ間の熱伝達効率が高められ得、加工済みアルミニウムスクラップの酸化燃焼損失が回避され、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、ブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うことによってアルミニウムスクラップの酸化が回避され得、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、溶融スラグや溶融塩などといった関連する固体廃棄物の生成が回避される。したがって、本開示の方法により、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品がより高いアルミニウムスクラップ回収率で作製され得、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることが回避され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップが効率的に回収され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップの価値維持および利用が達成される。
【0024】
本出願の実施形態および実施形態の特徴は、矛盾しない場合には互いに組み合わされてもよいことに留意されたい。本開示を実施形態と組み合わせて以下で詳細に説明する。
【0025】
背景技術で説明したように、先行技術における航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップの回収効率は低い。この問題を解決するために、本出願は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法を提供し、方法は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うステップと、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うステップと、アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内でブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うステップと、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品を得るためにアルミニウム合金溶湯に対して鋳造を行うステップと、を含む。
【0026】
本出願では、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすことは、「GB/T3190-2008 wrought aluminum and aluminum alloy chemical components(展伸アルミニウムおよびアルミニウム合金の化学成分)」に規定されている、2024-Al合金などの2系アルミニウム合金や7075-Al合金などの7系アルミニウム合金といった特定の航空アルミニウム合金の成分要件を満たすことを指す。
【0027】
本出願は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うことによって、加工工程で使用された切削液および油水を容易に除去し、加工済みアルミニウムスクラップの汚染を可能な限り低減し、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることを回避することができ、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うことによって、加工済みアルミニウムスクラップ間の熱伝達効率が高められ得、加工済みアルミニウムスクラップの酸化燃焼損失が回避され、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、ブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うことによってアルミニウムスクラップの酸化が回避され得、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、溶融スラグや溶融塩などといった関連する固体廃棄物の生成が回避される。したがって、本開示の方法により、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品がより高いアルミニウムスクラップ回収率で作製され得、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることが回避され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップが効率的に回収され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップの価値維持および利用が達成される。
【0028】
本出願の方法は、酸素制御された製錬の後、鋳造の前に、アルミニウム合金溶湯の成分最適化を達成するためにアルミニウム合金溶湯に対して酸素制御された精製を行うステップをさらに含む。そのようなモードにより、アルミニウム合金の酸化が回避され得、揮発性元素またはガスが除去され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップ中の、亜鉛、マグネシウム、銅などの主要元素の含有量がより正確に調整および制御される。
【0029】
本出願の好ましい一実施形態では、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法は、航空アルミニウム合金の、アルミニウム削りくずなどの加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うステップと、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、前処理されたアルミニウムスクラップに対して特定の成形圧力でプレス成形を行うステップと、最終的に航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品を得るために、酸素制御された製錬および精製工程を使用することによって、前処理されたブロック形状のアルミニウムスクラップを急速に溶融し、溶鉱炉内で成分最適化を達成するステップと、を含む。
【0030】
別の例では、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法であって、方法は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを前処理するステップであって、前処理が焙焼および湿式洗浄のうちの1つまたは複数を含む、ステップを含む。方法は、ブロック形状のアルミニウムスクラップを形成するために、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップをプレス加工するステップをさらに含む。方法は、アルミニウム合金溶湯を形成するために、溶鉱炉内でブロック形状のアルミニウムスクラップの酸素制御された製錬を行うステップをさらに含む。方法は、アルミニウム合金製品を得るためにアルミニウム合金溶湯を流し込むステップをさらに含む。
【0031】
本出願では、溶鉱炉内で行われる酸素制御された製錬および精製工程は、酸素制御された製錬および酸素制御された精製の2つのリンクを含んでもよく、酸素制御された製錬および製錬工程では、酸素ポテンシャルの制御を行うために真空または不活性ガス保護が使用されてもよく、原料特性および製品要件に従って、酸素制御された製錬の別個の作業が使用されるか、または酸素制御された製錬と酸素制御された精製の統合作業が使用される。
【0032】
加工済みアルミニウムスクラップの酸素制御された製錬および精製工程は、撹拌モードと連携されてもよい。本開示による航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法では、酸素制御された製錬および精製工程中に、アルミニウムスクラップの溶融速度ならびに元素反応および拡散工程を加速するために、ガス吹込み撹拌や、電磁撹拌や、物理的な機械的撹拌などの機械的撹拌といった撹拌モードが使用され得る。
【0033】
本出願で使用される航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップは、2系航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップおよび7系航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップのうちの1つ、またはそれらのうちの複数の混合物であってもよい。例えば、加工済みアルミニウムスクラップのサイズは、長さ×幅×厚さ=(2~10mm)×(2~10mm)×(0.5~2mm)であってもよい。
【0034】
焙焼に使用される焙焼炉は、マッフル炉、抵抗炉、中間周波数炉などといった装置であってもよい。好ましくは、焙焼は空気雰囲気中で行われ、それによって有機物を酸化させる酸素の存在を確保する。空気雰囲気中の酸素濃度は一般に約21vol%である。焙焼における焙焼温度は100~500℃であるため、有機物の除去が達成され得、アルミニウムスクラップの酸化が防止される。好ましくは、焙焼時間は10~30分であってもよい。
【0035】
湿式洗浄は、洗浄および乾燥を含んでもよい。洗浄工程で使用される洗浄液は、工業用水、高純度水もしくはエチルアルコールのうちの1つ、またはそれらのうちの複数の混合物であってもよい。洗浄工程は、洗浄工程でマイクロ波振動、超音波振動または機械的撹拌のうちの1つまたは複数を使用することによって強化されてもよく、洗浄効率が改善され、洗浄時間が短縮される。
【0036】
さらに、洗浄後の加工済みアルミニウムスクラップに対して乾燥処理が行われる。乾燥工程で使用される乾燥装置は、トンネル乾燥器や空気乾燥器などといった従来の乾燥装置である。乾燥工程で使用される乾燥温度は60~150℃であってもよく、水が急速に除去され、アルミニウムスクラップの酸化が防止されることが保証される。乾燥時間は10~30分であってもよい。
【0037】
航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行う際に使用されるプレス機は、単カラム油圧プレス、4カラム油圧プレス、6カラム油圧プレス、砥石成形油圧プレス、Y28型万能油圧プレス、ヘッド成形油圧プレス、Y32-100T油圧プレスなどといった従来の装置であってもよい。プレス成形工程で使用される成形圧力は、20~700MPaの範囲内、好ましくは30~600MPaの範囲内であってもよい。プレス成形後に形成されるブロック形状のアルミニウムスクラップ(すなわち、アルミニウムブロック)のサイズ仕様は、溶鉱炉の仕様に従って決定されてもよく、好ましくは、プレス成形後に形成されるブロック形状のアルミニウムスクラップの直径は5~10cmであり、厚さは2~5cmである。プレス成形後に形成されるブロック形状のアルミニウムスクラップの密度は、1.0~5.0t/m3、好ましくは1.5~3.5t/m3、より好ましくは2.0t/m3~3.0t/m3であってもよい。プレス成形後に形成されるブロック形状のアルミニウムスクラップの密度が上記範囲内に制御されることを可能にすることにより、アルミニウムスクラップ間の熱伝達効率が高められ得、アルミニウムスクラップの酸化燃焼損失が回避され、アルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善される。
【0038】
本開示の航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法に使用される溶鉱炉は、真空抵抗炉、真空誘導炉、中間周波数炉などといったアルミニウム製錬装置である。酸素制御された製錬工程において酸素ポテンシャルの制御を行うために、保護のための真空またはArなどの不活性ガスが使用されてもよい。好ましくは、酸素制御された製錬工程における保護のために不活性ガスが選択され、溶融アルミニウムの酸化が防止される。好ましくは、酸素制御された製錬における酸素分圧は、0.001Pa以下に制御される。酸素制御された製錬は、酸素制御された状態でブロック形状のアルミニウムスクラップの急速な溶融を達成するステップを含み得る。ブロック形状のアルミニウムスクラップの溶融は、酸素制御された製錬において電磁撹拌またはガス吹込み撹拌の助けを借りて加速されてもよい。酸素制御された製錬では、製錬時間は10~30分であってもよく、製錬温度は800~1100℃であってもよい。酸素制御された製錬における製錬時間および製錬温度を上記範囲内に制御することにより、ブロック形状のアルミニウムスクラップの急速な溶融が確実にされ得、溶融アルミニウムの長時間の高温燃焼損失が回避される。
【0039】
酸素制御された精製工程において酸素ポテンシャルの制御を行うために、保護のための真空またはArなどの不活性ガスが使用されてもよい。好ましくは、酸素制御された精製工程において真空が選択され、揮発性不純物元素またはガスが除去され得る。好ましくは、酸素制御された精製における酸素分圧は、0.001Pa以下に制御される。元素反応および拡散工程は、酸素制御された精製工程において電磁撹拌またはガス吹込み撹拌の助けを借りて加速されてもよい。酸素制御された精製では、精製時間は10~30分であってもよく、精製温度は800~1100℃であってもよい。酸素制御された精製における精製時間および精製温度を上記範囲内に制御することにより、アルミニウム合金の酸化燃焼損失が回避され得、アルミニウム合金溶湯の成分最適化が達成される。
【0040】
加工済みアルミニウムスクラップが完全に溶融された後、アルミニウム合金溶湯に対してサンプリング分析が行われ、アルミニウム合金溶湯の成分最適化を達成するために、検出結果に従ってアルミニウム合金溶湯に対して酸素制御された精製が行われる。好ましくは、酸素制御された精製は、アルミニウム合金溶湯中の元素の除去および合金化処理を行うために、アルミニウム合金溶湯に金属銅、銅合金、金属亜鉛、亜鉛合金またはマグネシウム合金を添加するステップを含み得る。好ましくは、酸素制御された精製における酸素分圧は、0.001Pa以下に制御され得る。酸素制御された精製では、鉄、ケイ素、ガスおよび含有物などといった不純物がさらに除去され得る。好ましくは、不純物の除去は、遠心分離や濾過などといった不純物除去モードを使用することによって行われ得る。
【0041】
酸素制御された精製の工程では、金属銅、銅合金、金属亜鉛、亜鉛合金またはマグネシウム合金などといった金属または合金の添加量は、アルミニウム合金溶湯の実際に検出された成分と対象のアルミニウム合金成分との差によって決定される。アルミニウム合金溶湯中の特定の成分の検出された含有量がX重量%であり、対象のアルミニウム合金中のその成分の平均含有量がY重量%である必要があると仮定し、X重量%がY重量%未満である場合、添加されるべき成分の金属または合金の重量は、Y重量%とX重量%との差分値に従って計算され得、X重量%がY重量%より大きい場合、精製条件を制御することによって成分の適切な除去が達成され得る。
【0042】
本開示の航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法によれば、アルミニウム合金溶湯に対して成分最適化が行われた後、アルミニウム合金溶湯はアルミニウムタンクに注入され、アルミニウムインゴットに鋳造される。
【0043】
先行技術と比較して、本開示の改善点を以下のいくつかの態様に示す。
【0044】
航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄などを含む前処理を行うことによって、加工工程で使用された切削液および油水が容易に除去され得、加工済みアルミニウムスクラップの汚染が可能な限り低減され、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることが回避される。
【0045】
アルミニウムスクラップの比表面積が大きく、緩んだ状態のアルミニウムスクラップ同士の距離が相対的に大きいため、加熱工程における粒子間の熱伝達効率が低い。また、アルミニウムスクラップの質量が軽いため、アルミニウムスクラップが溶融池の表面に浮遊し得るので、その酸化燃焼損失は深刻である。実験から、アルミニウムスクラップの収率はほぼ0であり、一方でアルミニウムスクラップは緩い状態で空気中で溶融されることが分かっている。本開示は、この現象の考察に基づき、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形処理を行うことを提供し、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形処理を行うことにより、加工済みアルミニウムスクラップ間の熱伝達効率が高められ得、加工済みアルミニウムスクラップの酸化燃焼損失が回避され、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善される。
【0046】
アルミニウムスクラップの質量はフラックスの質量に近く、アルミニウムスクラップとフラックスとは混合されやすく分離が困難であり、製錬後の分離処理に支障をきたす。実験から、アルミニウムスクラップの回収率は、KClやNaClなどといったフラックスによって改善され得るが、フラックスとアルミニウムインゴットとの混合度が大きく、効率的に分離することが困難であることが分かっている。また、従来のフラックス酸素制御モードではほとんど、フラックスに対して方向分離処理を行うために特別な撹拌モードを使用するので、装置に対してより高い要件が必要とされる。本開示は、ブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うことを提供し、特に、製錬は、真空または不活性雰囲気保護状態で電磁撹拌やガス吹込み撹拌などのモードの助けを借りて行われ、アルミニウムスクラップの酸化が回避され得、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、溶融スラグや溶融塩などといった関連する固体廃棄物の生成が回避される。
【0047】
アルミニウムは酸素との結合能力が強く、酸化反応が起こりやすい。実験から、アルミニウムスクラップが溶融された後、大気保護状態にあっても、温度が特定の温度まで上昇し続ける間に大量の煙が依然として発生し得ることが分かっており、溶融アルミニウムに酸化が起こり、最終的に収率が低下することを示している。この実験現象に基づき、製錬工程における加熱温度や製錬時間などのパラメータを選択的に制御することによって、アルミニウムスクラップの溶融工程において煙が発生することが回避され、それによってアルミニウムスクラップの収率が大幅に改善される。
【0048】
本開示の航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップを回収するための方法を使用することにより、ブロック形状のアルミニウムスクラップの急速な溶融を達成することができ、高収率および高品質の成分を有するアルミニウム合金が得られる。本開示により、切削液および油水汚染、易酸化性、低回収率、溶融工程中のアルミニウムの大量の燃焼損失などの従来のアルミニウムスクラップ回収工程における問題が十分に解決され得る。本開示は、アルミニウムスクラップの仕様および形成条件に対する要件が低く、溶融スラグや溶融塩などといった関連する固体廃棄物の生成が回避されるので、グリーンプロダクション要件が達成される。また、切削液および油水汚染源の種類、アルミニウムスクラップのサイズ、および含有量の範囲に対して大きな許容範囲を有する。
【0049】
本開示を、具体的な実施例および比較例と組み合わせて以下で詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本開示を説明するために使用されているにすぎず、本開示の保護範囲は特許請求の範囲のすべての内容を含むべきであり、本実施例に限定されるものではない。さらに、以下の実施例により、本開示の特許請求の範囲に記載されたすべての内容が当業者によって完全に理解されよう。
【0050】
実施例1
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:>2mm、平均幅:4mm、平均厚さ:0.5~2mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップであり、アルミニウムスクラップをマッフル炉に入れ、空気雰囲気中で380℃で30分間焙焼し、次いで30MPaの成形圧力を使用することによってアルミニウムスクラップをプレスして、直径10cm、厚さ2cm、密度1.5t/m
3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。プレス後のブロック形状のアルミニウムスクラップ43.8gを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分であり、真空度は50Paであり、酸素分圧は0.0005Pa未満である。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造して2024-Al合金を作製する。
図2A~
図2Fは、本開示の実施例1によるアルミニウムスクラップ溶融工程の写真を示している。
図3は、本開示の実施例1による鋳造アルミニウムインゴットの写真を示している。表2は、「GB/T3190-2008 wrought aluminum and aluminum alloy chemical components」における2024-Al合金の成分要件を示している。
【0051】
実施例2
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:>2mm、平均幅:4mm、平均厚さ:0.5~2mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップであり、アルミニウムスクラップは、工業用水を装填した超音波洗浄機で30分間洗浄し、洗浄したアルミニウムスクラップを乾燥器に入れ、80℃で60分間乾燥させる。乾燥したアルミニウムスクラップを、50MPaの成形圧力を使用することによってプレスして、直径10cm、厚さ2cm、密度1.9t/m
3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。乾燥後のブロック形状のアルミニウムスクラップ48gを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分であり、真空度は50Paであり、酸素分圧は0.0005Pa未満である。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造して2024-Al合金を作製する。
図4は、本開示の実施例2による鋳造アルミニウムインゴットの写真を示している。
【0052】
実施例3
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴットおよび7075-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:5~10mm、平均幅:5~10mm、平均厚さ:0.5~1mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップ混合物であり、2種類のアルミニウムスクラップの重量比は1:1である。アルミニウムスクラップ混合物をマッフル炉に入れ、空気雰囲気中で380℃で30分間焙焼し、次いで200MPaの成形圧力を使用することによってアルミニウムスクラップをプレスして、直径10cm、厚さ5cm、密度2.62t/m
3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。プレス後のブロック形状のアルミニウムスクラップ300gを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分であり、真空度は50Paであり、酸素分圧は0.0005Pa未満である。その後、溶融アルミニウムに対してサンプリング分析を行い、検出結果に従って、真空条件下での銅とマグネシウムと合金化のために金属銅3.75gおよびマグナリウム7.5gを溶融アルミニウムに添加し、電磁撹拌条件下で10分間製錬を行う。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造して2024-Al合金を作製する。
図5Aおよび
図5Bは、本開示の実施例3による鋳造アルミニウムインゴットの写真を示している。
【0053】
実施例4
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴットおよび7075-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:5~10mm、平均幅:5~10mm、平均厚さ:0.5~1mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップ混合物であり、2種類のアルミニウムスクラップの重量比は1:1である。アルミニウムスクラップ混合物をマッフル炉に入れ、空気雰囲気中で380℃で30分間焙焼し、次いで400MPaの成形圧力を使用することによってアルミニウムスクラップをプレスして、直径10cm、厚さ5cm、密度3.15t/m
3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。プレス後のブロック形状のアルミニウムスクラップ12kgを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分であり、真空度は50Paであり、酸素分圧は0.0005Pa未満である。その後、溶融アルミニウムに対してサンプリング分析を行い、検出結果に従って、真空条件下での銅とマグネシウムの合金化のために金属銅0.15kgおよびマグナリウム0.3kgを溶融アルミニウムに添加し、電磁撹拌条件下で10分間製錬を行う。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造して2024-Al合金を作製する。
図6は、本開示の実施例4による鋳造アルミニウムインゴットの写真を示している。
【0054】
実施例5
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴットおよび7075-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:5~10mm、平均幅:5~10mm、平均厚さ:0.5~1mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップ混合物であり、2種類のアルミニウムスクラップの重量比は1:1である。アルミニウムスクラップ混合物をマッフル炉に入れ、空気雰囲気中で380℃で30分間焙焼し、次いで600MPaの成形圧力を使用することによってアルミニウムスクラップをプレスして、直径10cm、厚さ5cm、密度4.0t/m3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。プレス後のブロック形状のアルミニウムスクラップ15kgを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分であり、保護のためにArガスを使用し、酸素分圧は0.0005Pa未満である。その後、溶融アルミニウムに対してサンプリング分析を行い、検出結果に従って、Arガス保護条件下での銅とマグネシウムとの合金化のために金属亜鉛0.5kgおよびマグナリウム0.65kgを溶融アルミニウムに添加し、電磁撹拌条件下で10分間製錬を行う。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造して7075-Al合金を作製する。表2は、「GB/T3190-2008 wrought aluminum and aluminum alloy chemical components」における7075-Al合金の成分要件を示している。
【0055】
比較例1
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴットおよび7075-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:5~10mm、平均幅:5~10mm、平均厚さ:0.5~1mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップ混合物であり、2種類のアルミニウムスクラップの重量比は1:1である。アルミニウムスクラップ混合物をマッフル炉に入れ、空気雰囲気中で380℃で30分間焙焼し、次いで400MPaの成形圧力を使用することによってアルミニウムスクラップをプレスして、直径10cm、厚さ5cm、密度3.15t/m
3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。プレス後のブロック形状のアルミニウムスクラップ12kgを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを誘導炉に入れ、空気雰囲気中で製錬し、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分である。その後、溶融アルミニウムに対してサンプリング分析を行い、検出結果に従って、空気雰囲気中での銅とマグネシウムの合金化のために金属銅0.15kgおよびマグナリウム0.3kgを溶融アルミニウムに添加し、電磁撹拌条件下で10分間製錬を行う。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造する。
図7は、本開示の比較例1による鋳造アルミニウムインゴットの写真を示している。
【0056】
比較例2
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴットおよび7075-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:5~10mm、平均幅:5~10mm、平均厚さ:0.5~1mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップ混合物であり、2種類のアルミニウムスクラップの重量比は1:1である。アルミニウムスクラップを、400MPaの成形圧力を使用することによってプレスして、直径10cm、厚さ5cm、密度3.15t/m3のブロック形状のアルミニウムスクラップにする。プレス後のブロック形状のアルミニウムスクラップ12kgを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ950℃および10分であり、真空度は50Paであり、酸素分圧は0.0005Pa未満である。その後、溶融アルミニウムに対してサンプリング分析を行い、検出結果に従って、真空条件下での銅とマグネシウムの合金化のために金属銅0.15kgおよびマグナリウム0.3kgを溶融アルミニウムに添加し、電磁撹拌条件下で10分間製錬を行う。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造する。
【0057】
比較例3
航空アルミニウム合金のアルミニウム削りくずは、2024-Alアルミニウムインゴットおよび7075-Alアルミニウムインゴット(アルミニウムスクラップ長さ:5~10mm、平均幅:5~10mm、平均厚さ:0.5~1mm、切削液はHocut 795-Bである)を切断することによって生成されたアルミニウムスクラップ混合物であり、2種類のアルミニウムスクラップの重量比は1:1である。アルミニウムスクラップ混合物をマッフル炉に入れ、空気雰囲気中380℃で30分間焙焼する。アルミニウムスクラップ3kgを秤量して黒鉛るつぼに入れ、次いで黒鉛るつぼを製錬用の真空誘導炉に入れ、製錬の温度および時間はそれぞれ1100℃および20分であり、真空度は50Paであり、酸素分圧は0.0005Pa未満である。その後、溶融アルミニウムに対してサンプリング分析を行い、検出結果に従って、真空条件下での銅とマグネシウムの合金化のために金属銅0.15kgおよびマグナリウム0.3kgを溶融アルミニウムに添加し、電磁撹拌条件下で10分間製錬を行う。製錬後の溶融アルミニウムを鋳鉄タンクに流し込み、アルミニウムインゴットに鋳造する。
【0058】
【0059】
【0060】
実施例1と比較して、実施例2では前処理モードが変更されており、すなわち、切削液および油水が、実施例1および実施例2ではそれぞれ、焙焼モードおよび湿式洗浄モードを使用することによって除去されている。実施例3では、2系アルミニウムスクラップに基づいて、7系アルミニウムスクラップ50%が混合されて2系アルミニウム合金が作製され、Zn除去工程およびMgとCuの合金化工程が追加されている。実施例4では、実施例3に基づいてスケールアップ実験が行われており、スケールが300gから12kgに拡大されている。実施例5では、実施例4に基づいて、Arガス保護を使用し、ZnとMgの合金化処理を行うことにより、7075-Al合金が作製され、合金成分要件が満たされている。比較例1では、実施例4を暗示して真空酸素制御リンクが排除されており、アルミニウムスクラップ溶融および成分最適化に対する酸素制御された製錬および精製の効果が比較されている。比較例2では、焙焼または湿式洗浄を含む前処理が行われず、アルミニウムスクラップ回収に対する前処理の効果が比較されている。比較例3では、アルミニウムスクラップに対してブリケッティング処理が行われず、アルミニウムスクラップ回収に対するブリケッティング処理の効果が比較されている。
【0061】
表1から、実施例1および実施例2の2つのモードの下で、本開示は、ブロック形状のアルミニウムスクラップの急速な溶融を達成することができ、アルミニウムスクラップの回収率は最大99%以上であり、製錬後のアルミニウムインゴットの成分は2024-Al合金の要件を満たし、アルミニウムスクラップの価値維持および利用の要件が達成されることが分かるであろう。実施例3および実施例4では、2系および7系のアルミニウム削りくず混合物が対象物として使用されており、300gの小規模実験から12kgのスケールアップ実験まで、99%以上のアルミニウムスクラップ回収率が両方とも達成され、製錬後のアルミニウムインゴットの成分は2024-Al合金の要件を満たし、アルミニウムスクラップの価値維持および利用の要件が満たされる。比較例1では、酸素制御条件を使用せずに製錬および精製が行われ、その結果、アルミニウムスクラップの回収率が低く、主成分の亜鉛を2024-Al合金の成分要件内の範囲まで減少させることができず、マグネシウム含有量が2024-Al合金の成分要求量の範囲を超えており、酸素制御の必要性を証明している。比較例2では、焙焼や湿式洗浄を行わない条件下で製錬および精製が行われ、その結果、最終アルミニウム合金中の炭素含有量2.02ppmは、他の実施例における1ppmよりも明らかに高く、炭化物含有物(
図8参照)が電子顕微鏡下で明らかに発見される。実施例1~実施例5で得られたアルミニウム合金は、電子顕微鏡で観察され、炭化物含有物は発見されていない。これらの炭化物は、合金の特性に明らかな影響を及ぼす可能性があり、アルミニウムスクラップに対して焙焼前処理を行うことの重要性を証明している。比較例3では、2系および7系のアルミニウム削りくず混合物が対象物として使用されており、ブリケッティング処理は使用されず、製錬工程および精製における温度および時間は明らかに増加し、回収率は相対的に低下し、いくつかの元素成分は合金要件を満たすことができない。
【0062】
以上の説明から、本開示の上記実施例は、以下の技術的効果を達成することが分かるであろう。
【0063】
アルミニウムスクラップの表面層上の切削液および油水の除去は、焙焼または湿式洗浄の両方の前処理によって達成され、最終的なアルミニウムスクラップ回収に明らかな違いはなく、両方の前処理モードが実行可能であることを証明している。
【0064】
プレス成形後に形成されたブロック形状のアルミニウムクラップの密度は、1.0t/m3~5.0t/m3の広いスパン範囲で変化し得、酸素制御された製錬および精製工程は、良好な溶融および成分最適化を達成し得るので、これは、炉に装入する前のアルミニウムスクラップの仕様に対する本開示の要件が低いことを証明し得る。
【0065】
酸素制御された製錬および精製工程は、加工済みアルミニウムスクラップの回収率を大幅に改善し、アルミニウムスクラップの高価値の変換を達成し、溶融スラグや溶融塩などといった関連する固体廃棄物の発生を回避することができる。したがって、本開示の方法により、加工済みアルミニウムスクラップがより効率的に回収され得る。
【0066】
本出願は、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップに対して、焙焼または湿式洗浄を含む前処理を行うことによって、加工工程で使用された切削液および油水を容易に除去し、加工済みアルミニウムスクラップの汚染を可能な限り低減し、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることを回避することができ、航空アルミニウム合金の前処理された加工済みアルミニウムスクラップに対してプレス成形を行うことによって、加工済みアルミニウムスクラップ間の熱伝達効率が高められ得、加工済みアルミニウムスクラップの酸化燃焼損失が回避され、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、ブロック形状のアルミニウムスクラップに対して酸素制御された製錬を行うことによってアルミニウムスクラップの酸化が回避され得、加工済みアルミニウムスクラップの回収率が大幅に改善され、溶融スラグや溶融塩などといった関連する固体廃棄物の生成が回避される。したがって、本開示の方法により、航空アルミニウム合金の成分要件を満たすアルミニウム合金製品がより高いアルミニウムスクラップ回収率で作製され得、最終的に形成されるアルミニウム合金製品中に含有物が生成されることが回避され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップが効率的に回収され、航空アルミニウム合金の加工済みアルミニウムスクラップの価値維持および利用が達成される。
【0067】
本明細書で使用される場合、指定された機能を実施する「ように構成されている」システム、装置、デバイス、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、さらなる変更後に指定された機能を実施する可能性を単に有するのではなく、改変なしに指定された機能を実際に実施することが可能である。言い換えれば、指定された機能を実施する「ように構成されている」システム、装置、デバイス、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、指定された機能を実施する目的で具体的に選択され、作成され、実施され、利用され、プログラムされ、および/または設計される。本明細書で使用される場合、「ように構成されている」とは、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアがさらなる変更なしに指定された機能を実施することを可能にするシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアの既存の特性を表す。本開示の目的のために、特定の機能を実施する「ように構成されている」ものとして説明されたシステム、装置、デバイス、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、追加的または代替的に、その機能を実施する「ように適合された」および/または「ように動作する」ものとして説明されてもよい。
【0068】
特に明記しない限り、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、本明細書では単にラベルとして使用され、これらの用語が参照する項目に順序、位置、または階層の要件を課すことを意図するものではない。さらに、例えば、「第2の」項目への参照は、例えば、「第1の」もしくはより小さい番号の項目、および/または、例えば、「第3の」もしくはより大きい番号の項目の存在を必要とするものでも排除するものではない。
【0069】
本開示の目的のために、「結合された」、「結合する」という用語、および同様の用語は、接合されるか、連結されるか、固定されるか、取り付けられるか、接続されるか、通信状態に置かれるか、または他の方法で(例えば、機械的、電気的、流体的、光学的、電磁的に)互いに関連付けられた2つ以上の要素を指す。様々な例において、要素は直接的または間接的に関連付けられ得る。一例として、要素Aは、要素Bと直接的に関連付けられ得る。別の例として、要素Aは、例えば、別の要素Cを介して、要素Bと間接的に関連付けられ得る。様々な開示の要素間のすべての関連付けが必ずしも表されているわけではないことが理解されよう。したがって、図に示されたもの以外の結合も存在し得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ほぼ」という用語は、依然として所望の機能を実施するか、または所望の結果を達成する、記載の条件に近いが正確ではない条件を指すかまたは表す。一例として、「ほぼ」という用語は、記載の条件の10%以内の条件など、許容可能な所定の許容範囲または精度内にある条件を指す。しかしながら、「ほぼ」という用語は、正確に記載の条件である条件を排除するものではない。本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、所望の機能を実施するか、または所望の結果を達成する、本質的に記載の条件である条件を指す。
【0071】
さらに、本明細書全体を通して、本明細書で使用される特徴、利点、または同様の文言への言及は、本明細書に開示される例で実現され得るすべての特徴および利点が任意の単一の例であるべきであるか、またはその中にあることを意味するものではない。むしろ、特徴および利点を指す文言は、例に関連して説明された特定の特徴、利点、または特性が少なくとも1つの例に含まれることを意味すると理解される。したがって、本開示全体で使用される特徴、利点、および同様の文言の説明は、必ずしもそうではないが、同じ例を指す場合がある。
【0072】
上記は、本開示の好ましい例にすぎず、本開示を限定することを意図するものではない。当業者によれば、本開示に対して様々な修正および変更が行われ得る。本開示の趣旨および原理の範囲内で行われる任意の修正、同等の置換、改良などは、本開示の保護の範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】