IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ サリーの特許一覧

<>
  • 特表-半導体膜の応力-歪み工学 図1
  • 特表-半導体膜の応力-歪み工学 図2
  • 特表-半導体膜の応力-歪み工学 図3
  • 特表-半導体膜の応力-歪み工学 図4
  • 特表-半導体膜の応力-歪み工学 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体膜の応力-歪み工学
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20240423BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/265 Q
H01J37/317 Z
H01L21/265 601Q
H01L29/78 301B
H01L27/12 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023563973
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 GB2022050981
(87)【国際公開番号】W WO2022223962
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2105585.0
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595042184
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クロウス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】コックス,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マステギン,マテウス
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー,スティーブン
【テーマコード(参考)】
5C101
5F140
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101DD33
5C101EE44
5C101FF02
5F140AC28
5F140BA03
5F140BA05
5F140BA12
(57)【要約】
半導体膜を備え、半導体膜が少なくとも1つのアモルファス化領域と活性領域とを有し、少なくとも1つのアモルファス化領域が活性領域に歪みを及ぼすように少なくとも1つのアモルファス化領域が活性領域に隣接している、半導体構造、並びに、イオン注入によって結晶性半導体膜に歪みを導入する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体膜を備え、前記半導体膜が少なくとも1つのアモルファス化領域と活性領域とを有し、前記少なくとも1つのアモルファス化領域が前記活性領域に歪みを及ぼすように前記少なくとも1つのアモルファス化領域が前記活性領域に隣接している、
半導体構造。
【請求項2】
前記半導体膜が表面層及び表面下層を備え、前記表面層が前記活性領域と前記少なくとも1つのアモルファス化領域とを備え、前記表面下層が結晶性である、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記表面層の厚さが前記半導体膜の厚さの40~60%である、請求項2に記載の半導体構造。
【請求項4】
前記活性領域が第1のアモルファス化領域を取り囲む、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項5】
前記第1のアモルファス化領域が円形又は細長い形状を有する、請求項4に記載の半導体構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアモルファス化領域が第1の活性領域を取り囲む、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアモルファス化領域が環を備え、前記第1の活性領域が前記環の中心に位置される、請求項6に記載の半導体構造。
【請求項8】
前記活性領域が細長い形状を有する、請求項6又は7に記載の半導体構造。
【請求項9】
前記細長い形状は、150:1~2:1、100:1~3:1、又は75:1~4:1のアスペクト比を規定する、請求項8に記載の半導体構造。
【請求項10】
前記アモルファス化領域の最大幅と前記第1の活性領域の最大幅との間の比は、1:50~200:1、1:25~100:1、1:10~75:1、1:5~50:1、1:1~40:1、2:1~30:1、又は5:1~20:1である、請求項6から9のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記半導体膜が複数の活性領域を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記活性領域が結晶構造を画定する、請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項13】
前記結晶構造は、前記結晶構造の前記活性領域の表面内において異方性を示すように配向される、請求項12に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記半導体膜は、IV族元素、III-V族化合物半導体、又はIV族合金を含む又はこれらから成る、請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記半導体膜は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ドープシリコン又はドープゲルマニウムを含む又はこれらから成る、請求項14に記載の半導体構造。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の半導体構造を備える半導体デバイス、光増幅器、又は光電子デバイス。
【請求項17】
結晶性半導体膜に歪みを導入する方法であって、
結晶性半導体膜を設けるステップと、
前記半導体膜の表面上に少なくとも1つの注入領域と前記少なくとも1つの注入領域に隣接する活性領域とを画定するステップと、
前記半導体膜が前記少なくとも1つの注入領域内でアモルファス化して前記活性領域内に歪みを引き起こすように、前記半導体膜の前記少なくとも1つの注入領域内にイオンを注入するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
イオンを注入する前記ステップは、希ガスイオンを注入するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
イオンを注入する前記ステップは、キセノンイオンを注入するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
結晶性半導体膜を設ける前記ステップは、単結晶膜を設けるステップを含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記半導体膜の厚さの40~60%の深さまで前記少なくとも1つの注入領域にイオンを注入するステップを含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体膜、及び半導体膜を製造して歪ませる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス工学には歪みの多くの利点がある。歪みシリコンデバイスは、既存の産業プロセスに適合するIII-V高電子移動度トランジスタ(HEMT)の代替物を提供する。1%引張歪み下のSi nMOSFETの移動度は、0.584%歪み下のSi薄膜トランジスタにおいて最大15%、更には最大40%増大される1,2。これらの利点は、シリコンが6倍(Δ6)の伝導帯縮退を有し、歪みの下で、これが2倍(Δ2)及び4倍(Δ4)のセットに分割され、歪みの量に依存するエネルギーギャップをΔ2とΔ4との間に伴うために生じる3,4。分割Δ6は、移動度を増大させてノイズ及び加熱効果を減少させるn型における電子散乱の減少を引き起こす。また、歪みが価電子帯の軽い正孔(LH)及び重い正孔(HH)も分割し、それにより、p型の散乱が更に低減される。重い正孔バンド及び軽い正孔バンドの縮退の分割は、III-V系半導体レーザの効率を高める。また、歪みは、間接バンドギャップ半導体を直接ギャップに変化させ、発光確率及び利得を制御することもできる。現在の殆ど全ての光電子エミッタ(例えば、レーザ、LED)は、高い光学効率をもたらすそれらの直接バンドギャップに起因して化合物半導体(一般に、III-V系)に基づいている。しかしながら、これらは、シリコンベースの電子デバイスよりも製造コストが著しく高い。したがって、シリコンは光エミッタには好ましいが、間接バンドギャップによって根本的に妨げられる。それらが実現され得る場合、シリコン互換性のある直接バンドギャップ半導体は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)の駆動電子機器との適合性に起因して、オプトエレクトロニクス/フォトニックデバイスの利用に段階的変化をもたらす。したがって、歪みシリコン及びゲルマニウムを製造する改善された方法が必要とされている。本発明は、この分野における発明者らの研究から生じる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、半導体膜を備え、半導体膜が少なくとも1つのアモルファス化領域と活性領域とを有し、少なくとも1つのアモルファス化領域が活性領域に歪みを及ぼすように少なくとも1つのアモルファス化領域が活性領域に隣接している、半導体構造が提供される。
【0004】
半導体膜は、少なくとも1nm、少なくとも5nm又は少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm、少なくとも20nm又は少なくとも25nm、最も好ましくは少なくとも30nmの厚さを規定することができる。半導体膜は、100μm未満、10μm未満又は1μm未満、より好ましくは100nm未満、70nm未満又は50nm未満、最も好ましくは40nm未満の厚さを規定することができる。半導体膜は、1nm~100μm、5nm~10μm又は10nm~1μm、より好ましくは15nm~100nm、20nm~70nm又は25nm~50nm、最も好ましくは30nm~40nmの厚さを規定することができる。
【0005】
好ましくは、半導体膜は表面層及び表面下層を備え、表面層が活性領域と少なくとも1つのアモルファス化領域とを備え、表面下層が結晶性である。
【0006】
半導体膜は、少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも25μm、少なくとも50μm又は少なくとも75μm、最も好ましくは少なくとも100μmの長さ及び/又は幅を有し得る。半導体膜は、250μm未満、より好ましくは200μm未満、175μm未満又は150μm未満、最も好ましくは125μm未満の長さ及び/又は幅を有し得る。半導体膜は、10~250μm、より好ましくは25~200μm、50~175μm、又は75~150μm、最も好ましくは100~125μmの長さ及び/又は幅を有することができる。
【0007】
半導体膜は、支持構造上又は支持構造内に配置されてもよい。半導体膜は支持構造に固定されてもよい。半導体膜は、より大きな半導体構造内に窓を画定することができる。より大きな半導体構造はウェハであってもよい。例えば、窓は、エッチングに起因して構造内に露出されていてもよい。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチング、プラズマエッチング又は反応性イオンエッチングであってもよい。
【0008】
好適には、半導体膜は、半導体膜がアモルファス化された二材料湾曲(バイマテリアルボウイング)を成す。
【0009】
表面層の厚さは、半導体膜の厚さの5~95%、より好ましくは半導体膜の厚さの10~90%、20~80%又は30~70%、最も好ましくは半導体膜の厚さの40~60%又は45~55%であり得る。好ましい実施形態において、表面層の厚さは、半導体膜の厚さの約50%である。
【0010】
一実施形態において、活性領域は第1のアモルファス化領域を取り囲む。したがって、第1のアモルファス化領域は、実質的に円形の形状を有してもよい。或いは、第1のアモルファス化領域は、細長い形状を有してもよい。
【0011】
半導体膜は、第2のアモルファス化領域を有してもよい。第2のアモルファス化領域は、活性領域を取り囲んでもよい。したがって、活性領域は、第1のアモルファス化領域と第2のアモルファス化領域との間に環を備える又は環を画定することができる。
【0012】
しかしながら、好ましい実施形態において、少なくとも1つのアモルファス化領域は、第1の活性領域を取り囲む。
【0013】
したがって、少なくとも1つのアモルファス化領域は、環を備える又は環を画定することができ、また、第1の活性領域は、環の中心に位置され得る。
【0014】
第1の活性領域は、実質的に円形の形状を有してもよい。或いは、第1の活性領域は、細長い形状を有してもよい。
【0015】
第1の活性領域が細長い形状を有する実施形態において、細長い形状は、150:1~2:1、100:1~3:1、又は75:1~4:1、より好ましくは50:1~5:1、40:1~6:1、又は30:1~8:1、最も好ましくは25:1~10:1のアスペクト比を規定することができる。発明者らは、125μm:5μm、100μm:5μm、及び50μm:5μmのアスペクト比を伴う細長い形状を有する半導体構造を製造したが、それらは全て同様の結果を生じるわけではない。本発明者らは、25μm:5μmのアスペクト比がより多くの歪みをもたらすが、中央領域で屈曲を引き起こす場合があることに留意している。また、本発明者らは、50μmよりも長い任意の長さ及び5μmよりも小さい幅が高い一軸歪みをもたらすことにも留意する。
【0016】
アモルファス化領域の最大幅と第1の活性領域の最大幅との間の比は、少なくとも1:50、より好ましくは少なくとも1:25、少なくとも1:10、少なくとも1:5、少なくとも1:1、少なくとも2:1又は少なくとも5:1、最も好ましくは少なくとも10:1であってもよい。アモルファス化領域の最大幅と第1の活性領域の最大幅との間の比は、1:50~200:1、より好ましくは1:25~100:1、1:10~75:1、1:5~50:1、1:1~40:1、2:1~30:1、又は5:1~20:1、最も好ましくは10:1~15:1であってもよい。本発明者らは、大きな膜の中心にある小さな非曝露領域がより高い二軸歪みをもたらすことが分かった。
【0017】
活性領域は、1,000μm未満、750μm未満、500μm未満、250μm未満、200μm未満、150μm未満、100μm未満、75μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、10μm未満、又は5μm未満の最大幅を有することができる。活性領域は、少なくとも0.1μm、少なくとも0.5μm、少なくとも1μm、少なくとも1.5μm、少なくとも2μm、少なくとも2.5μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、又は少なくとも40μmの最大幅を有し得る。活性領域は、0.1~1,000μm、1~750μm、1.5~500μm、又は2~250μmの最大幅を有することができる。幾つかの実施形態において、活性領域は、2.5~200μm、5~150μm、10~100μm、20~75μm、又は40~50μmの最大幅を有し得る。別の実施形態において、活性領域は、0.1~30μm、0.5~20μm、1~15μm、1.5~10μm、2~7.5μm、又は2.5~5μmの最大幅を有してもよい。
【0018】
半導体膜は、複数の活性領域を備えることができる。各活性領域は、円形又は細長い形状を有することができる。好ましくは、各活性領域は細長い形状を有する。半導体膜は、1つのアモルファス化領域を備えてもよい。1つのアモルファス化領域は、活性領域の全てを取り囲んで分離することができる。或いは、半導体膜は、複数のアモルファス化領域を備えてもよい。したがって、各アモルファス化領域は、対応する活性領域を取り囲むことができる。
【0019】
半導体科学において、周期表の族を議論するとき、従来の名称が使用される。本明細書中、ホウ素族(すなわち、ホウ素が第1の元素である族)をIII族と称する。同様に、炭素族(すなわち、炭素が第1の元素である族)をIV族、窒素族(すなわち、窒素が第1の元素である族)をV族、フッ素族(すなわち、フッ素が第1の元素である族)をVII族と称する。或いは、これらの族は、13族、14族、15族及び17族と称されてもよい。
【0020】
半導体膜は、IV族元素、III-V族化合物半導体又はIV族合金を含む又はこれらから成り得る。IV族元素は、シリコン又はゲルマニウムであってもよい。III-V族化合物半導体は、周期表のIII族及びV族の元素を含む合金であってもよいことが理解され得る。III-V族化合物半導体の例としては、GaAs、GaP、GaN、GaSb、GaBi、InN、InAs、InP、InSb、InBi、AlN、AlAs、AlP、AlSb、AlBiが挙げられる。IV族合金は、周期表のIV族の元素を含む合金であってもよいことが理解され得る。IV族合金の例としては、SiGe、GeSn及びSiGeSnが挙げられる。
【0021】
半導体膜はヘテロ構造を備え得る。したがって、膜は、IV族元素、III-V族化合物半導体及び/又はIV族合金の2つ以上の層を備えることができる。ヘテロ構造は量子井戸を含み得る。
【0022】
幾つかの実施形態では、半導体膜は、IV族元素又はIV族合金を備える。したがって、半導体膜は、シリコン、ゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムを備える又はこれらから成り得る。
【0023】
半導体膜は、ドーピング種を含んでもよい。半導体は、nドープ又はpドープされてもよい。ドーピング種は、遷移金属及び/又はIII族~VII族元素であり得る。遷移金属はエルビウムであってもよい。III族~VII族元素は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、ビスマス、ゲルマニウム、ケイ素、アンチモン、ヒ素又はスズであってもよい。幾つかの実施形態において、III族~VII族元素は、ホウ素、リン、アンチモン又はヒ素である。
【0024】
一実施形態において、ドーピング種は、20at.%未満、15at.%未満、10at.%未満又は7.5at.%未満、最も好ましくは5at.%未満の濃度で存在してもよい。ドーピング種は、少なくとも0.1at.%、少なくとも0.5at.%、少なくとも1at.%、又は少なくとも2at.%、最も好ましくは少なくとも3at.%の濃度で存在してもよい。ドーピング種は、0.1~20at.%、0.5~15at.%、1~10at.%、又は2~7.5at.%、最も好ましくは3~5at.%の濃度で存在してもよい。この実施形態において、ドーピング種は、好ましくはIV族又はV族からのものであり、最も好ましくはスズである。
【0025】
別の実施形態において、ドーピング種は、100部当たり1部未満、1,000部当たり1部未満、5,000部当たり1部未満、又は10000部当たり1部未満のレベルで存在してもよい。ドーピング種は、1000000部当たり少なくとも1部、500000部当たり少なくとも1部、100000部当たり少なくとも1部、又は50000部当たり少なくとも1部のレベルで存在してもよい。ドーピング種は、100部当たり1部~1000000部当たり1部、1,000部当たり1部~500000部当たり1部、5,000部当たり1部~100000部当たり1部、又は10000部当たり1部~50000部当たり1部のレベルで存在してもよい。この実施形態では、ドーピング種が好ましくはIII族~VII族元素である。
【0026】
したがって、表面層及び表面下層はいずれも、シリコン又はゲルマニウムを含む又はこれらから成り得る。同様に、活性領域及び少なくとも1つのアモルファス化領域はいずれも、シリコン又はゲルマニウムを含む又はこれらから成り得る。
【0027】
好ましくは、活性領域は結晶構造を画定する。幾つかの実施形態において、結晶構造は、結晶構造の活性領域の表面内において異方性が示されるように配向されてもよい。
【0028】
半導体がシリコンであり、活性領域が細長い形状を有する実施形態において、細長い形状の長い縁部は、(100)ウェハにおいて[110]、[100]又は[120]結晶方向と整列してもよい。細長い形状の長い縁部は、[110]方向に対して0~90°の角度で、より好ましくは10~80°、20~70°、又は30~60°の角度で、最も好ましくは[110]方向に対して40~50°の角度で又は45°の角度で整列されてもよい。異方性は、(110)Siウェハにおいても予想されるべきである。
【0029】
膜は、その中に共振空洞を備えることができる。共振空洞は、フォトニック結晶空洞であってもよく、又は1つ以上の分布ブラッグ反射器を備えてもよい。
【0030】
活性領域は、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、又は少なくとも8%の歪みを有することができる。活性領域は、0.01~50%、0.1~40%、0.5~30%、1~25%、2~20%、3~18%、4~16%、5~14%、6~12%、7~10%、又は8%~9%の歪みを有することができる。歪みは、活性領域の中心で測定され得る。歪みの大きさは、ラマンスペクトルのシフトに基づいて測定され得る。
【0031】
第2の態様によれば、第1の態様の半導体構造を備えるシリコンオンインシュレータ基板が提供される。
【0032】
第3の態様によれば、第1の態様の半導体構造を備える半導体デバイスが提供される。
【0033】
第4の態様によれば、第1の態様の半導体構造を備える光増幅器、光電子デバイス、光検出器、光エミッタ又はフォトニック集積回路が提供される。フォトニック集積回路は、同じ膜上に設けられた1つ以上の光検出器と1つ以上のエミッタの両方を備えてもよい。
【0034】
光増幅器がレーザであってもよい。
【0035】
光電子デバイスは、光電子エミッタであってもよい。光電子エミッタは、レーザダイオード又は発光ダイオードであってもよい。
【0036】
活性領域は、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、又は少なくとも8%の歪みを有することができる。活性領域は、0.5~50%、1~25%、2~20%、3~18%、4~16%、5~14%、6~12%、7~10%、又は8%~9%の歪みを有することができる。歪みは、活性領域の中心で測定され得る。歪みの大きさは、ラマンスペクトルのシフトに基づいて測定され得る。
【0037】
第5の態様によれば、結晶性半導体膜に歪みを導入する方法であって、
結晶性半導体膜を設けるステップと、
半導体膜の表面上に少なくとも1つの注入領域と少なくとも1つの注入領域に隣接する少なくとも活性領域とを画定するステップと、
半導体膜が少なくとも1つの注入領域内でアモルファス化して活性領域内に歪みを引き起こすように、半導体膜の少なくとも1つの注入領域内にイオンを注入するステップと、
を含む方法が提供される。
【0038】
イオンは活性領域に注入されないことが理解され得る。
【0039】
第5の態様の方法は、第1の態様の半導体膜を提供することが好ましい。
【0040】
イオンを注入すると、結晶性半導体膜がアモルファス化することが理解され得る。したがって、第5の態様の少なくとも1つの注入領域の形状及び位置は、第1の態様に関して規定されるように、少なくとも1つのアモルファス化領域の形状及び位置に対応することができる。同様に、第5の態様の少なくとも1つのアクティブエリアの形状及び位置は、第1の態様に関して規定された1つのアクティブエリアの形状に対応することができる。
【0041】
任意の適切なイオンを使用することができる。好ましくは、イオンは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、又は少なくとも50の原子番号を有する。イオンは、III族イオン、IV族イオン、V族イオン又は希ガスイオンであり得る。希ガスイオンは、ヘリウムイオン、ネオンイオン、アルゴンイオン、クリプトンイオン及びキセノンイオンを含むと理解され得る。III族イオンはガリウムイオンであってもよい。IV族イオンは、シリコンイオン又はゲルマニウムイオンであってもよい。二重にイオン化された原子種を使用することができる。
【0042】
幾つかの実施形態において、使用されるイオンは、半導体膜を備える材料のイオンである。したがって、半導体膜がシリコンを含む又はシリコンから成る場合、シリコンイオンが使用され得る。同様に、半導体膜がゲルマニウムを含む又はゲルマニウムから成る場合、ゲルマニウムイオンが使用され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、イオンが希ガスイオンである。好ましくは、イオンがキセノンイオンである。
【0043】
半導体膜は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ドープシリコン又はドープゲルマニウムを含む又はこれらから成り得る。半導体膜は、第1の態様に関連して規定される通りであってもよい。
【0044】
結晶性半導体膜を設けるステップは、好ましくは、単結晶シリコン膜を設けるステップを含む。
【0045】
方法は、半導体膜の厚さの5~95%、より好ましくは半導体膜の厚さの10~90%、20~80%又は30~70%、最も好ましくは半導体膜の厚さの40~60%又は45~55%の深さまで少なくとも1つの注入領域にイオンを注入するステップを含むことができる。好ましい実施形態において、方法は、半導体膜の厚さの約50%の深さまで少なくとも1つの注入領域にイオンを注入するステップを含む。
【0046】
イオンを注入するステップは、注入領域の表面をイオンビームに曝露するステップを含んでもよい。イオンビームのエネルギーは、使用されるイオン、使用される半導体、半導体層の厚さ、及び所望の注入深さを含む幾つかの変数に応じて変化し得ることが理解され得る。
【0047】
イオンを注入することは、電子ビーム又は光リソグラフィ及びブロードビームインプランターを使用することを含み得る。好適には、これは、方法がスケーラブルとなり得るようにする。
【0048】
幾つかの実施形態において、イオンビームは、少なくとも1keV、少なくとも5keV、又は少なくとも10keV、より好ましくは少なくとも15keV、少なくとも20keV、又は少なくとも25keVのエネルギーを有し得る。イオンビームは、1keV~1,000keV、5keV~500keV、又は10keV~100keV、より好ましくは15keV~50keV、20keV~40keV、又は25keV~35keVのエネルギーを有し得る。
【0049】
この方法は、半導体膜を設ける予備ステップを含むことができる。半導体膜を設けるステップは、より大きな半導体構造内の半導体膜を露出させるステップを含むことができる。より大きな半導体構造はウェハであってもよい。方法は、半導体膜を露出させるためにより大きな半導体構造の一部をエッチングするステップを含むことができる。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチング、プラズマエッチング又は反応性イオンエッチングであってもよい。
【0050】
本方法は、膜内に共振空洞を生成するステップを含むことができる。共振空洞は、少なくとも1つの注入領域にイオンを注入する前に生成されてもよい。
【0051】
本明細書に記載の全ての特徴(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)、及び/又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも幾つかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで上記の態様のいずれかと組み合わせることができる。
【0052】
本発明をより良く理解するために、及び本発明の実施形態をどのように実施することができるかを示すために、ここで、例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1aはシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハをバックエッチングすることによって生成された場合にシリコンナノ膜がどのように不規則であり得るかを示す走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像である。図1bは3.75×1014イオンcm-2のイオンフルエンスを伴う30keVのXeビームに100μmの円の周りの20μm幅の環(より明るい領域)を曝露した後のSTEM画像である。イオンビーム曝露によって引き起こされる引張歪み後、中央のSi領域は平坦になった。図1cは赤色正方形でマークされた図1b)の中央領域で収集された回折パターンを示す。この回折パターンは、サンプル法線に関して異なる角度で電子ビームを揺動させる一方で、サンプルの下に位置された(膜厚を透過した)ダイオードで回折信号を収集することによって得られた。菊池パターンは、シリコン(001)表面について予想されるものと類似しており、シリコン膜の歪み部分がその周囲をイオンビームに曝露した後も結晶性のままであることを示している。
図2】異なるXeイオンビーム線量及びパターンに曝露されたSi薄膜のSTEM画像を提供する。特に、図2aでは、平坦な大きな結晶Si円の周りの領域が環状パターン曝露によってアモルファス化されている。曝露領域は、より暗い円の周りのより明るい領域である。曝露は、3.75×1014イオンcmから成っていた。図2aのSTEM画像を撮影した後、(b)2秒、(c)4秒、(d)6秒、(e)8秒、及び(f)9秒の間、1.88×1014イオンcm-2-1の線量まで、残りの結晶Si領域(その後、環になる)の内側でより小さい円を曝露した。曝露線量に比例する強度で径方向に生成される皺を見ることができ、すなわち、内側の円で線量を増大させることによって、その収縮が非曝露領域の縁部に大きな引張力を加えた。
図3図3aは以下に報告される実験のために使用されるシリコン膜の概略図を示す。(a)の上部は、厚さ35nmの約110μm×110μmの9個の窓を含む直径3mmのウェハを示す。(a)の下部は、環状パターン曝露がどのように起こったか、すなわち、明るい青色領域がイオンビームに曝露され、小さな内側円が曝露されないままだったことを示す。図3bは内側の曝露されていない円(結晶領域)で得られた二軸歪みを、その直径を変えることによってどのように調整することができるかを示すプロットである。非曝露結晶に隣接するより大きな領域を曝露すると、歪みの値がより高くなり、これは、材料の湾曲と単純な幾何学的要因との両方によって得られる増幅効果の表示であることに留意されたい。
図4】結果として得られた歪みに対するシリコン異方性の影響を試験するために実施された実験で使用されたスロットの概略図を提供する。外側部分は膜の曝露領域に対応し、内側部分は中央に残された結晶スロットを表す。全てのスロットは、50μm×5μmであるが、(a)[100]方向、(b)[120]方向、及び(c)[100]方向の3つの異なる向きに位置されている。[110]は窓フレーム側面と平行に方向付けられ、[100]は縁部を横切って方向付けられ、すなわち、45は[110]方向を向く。(c)の挿入図は、<100>における50μm×5μmの走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像を示す。この図の下部は、全ての向きについて、スロットの中心で収集されたラマンスペクトルを示す。計算された一軸歪み値は、グラフ内に表示される。
図5】結果として得られた歪みに対するシリコン異方性の影響を試験するために実施された実験で使用されたスロットの概略図を示す。外側部分は膜の曝露領域に対応し、内側部分は中央に残された結晶スロットを表す。全てのスロットは、[100]方向に沿って位置されるが、(a)50μm×5μm、(b)50μm×10μm、及び(c)50μm×20μmの異なる寸法を有する。この図の下部は、スロットの中心で収集されたラマンスペクトルを示す。計算された一軸歪み値がグラフ内に表示される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
実施例
実施例1:座屈した膜における皺消滅
シリコン(Si)膜は、通常、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハをウェットエッチングすることによって調製される。反応性イオンエッチング(RIE)を使用して、上端(100)シリコン層を35nmまで薄くした。最初のエッチングは、下端シリコン層を除去するための水酸化カリウム(KOH)バックエッチングから成り、自然ストッパである二酸化シリコン(SiO)である。KOHによるシリコンの異方性ウェットエッチングは、縁部に沿った方向が[110]であって正方形の対角線が[100]方向に整列される約120×120μmのシリコン膜窓をもたらした。SiO層が曝露されると、フッ化水素酸(HF)エッチングが行われ、残りの上端Si膜のみが残る。
【0055】
二酸化ケイ素(SiO)層は、膨張シリコンが酸化中に受けた後、特に異なる熱膨張係数に起因して、Si活性層を二軸方向に歪ませる7-9。結晶構造は、両方のセルにおける原子間のロンドンの弱い相互作用によって維持される。しかしながら、自立型Si膜を形成するためのシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板のバックエッチング中に、歪まされたSi原子がその平衡状態に再組織化し、この平衡状態は、STEM(走査透過型電子顕微鏡法)が撮像されるときに座屈(初期状態の膜上に大きな皺として見える)を引き起こす(図1a)。この座屈は、TEMグリッドとしてのこれらの単結晶Si膜の適用を妨げる。更に、皺のある膜は、リソグラフィ技術などの将来のデバイス処理を妨げる。
【0056】
直径100μmの円の周りの幅20μmの環(図1bのより明るい領域)を曝露させることによって、中央領域の平坦化を見ることができる(図1b)。イオン曝露は、3.75×1014イオンcmの線量での30keV加速エネルギーの単荷電キセノンイオン(Xe)を使用して行われ、このイオンフルエンスは、30keVのXeイオン曝露時のシリコン完全アモルファス化線量に等しい。
【0057】
図1cに示されるように、平坦化領域の中心の所与の点(図1bの赤色正方形)の周りで電子ビームを揺動させることによって、走査型電子回折パターンを得た。菊池線パターンは、Si(100)に対応し、中央領域を引張歪みした後、活性Si結晶が結晶性のままであるが、ここでは長距離秩序を呈することを示す。
【0058】
図1に示されるような膜の平坦化(又は中央領域の皺消滅)は、イオンビーム曝露後のSi収縮の結果である。単結晶が低線量イオンインプラントに曝されると密度が増大し、小さなポケット(空隙)が生成され、それ自体の中で崩壊する。しかしながら、30keVのXe注入中、シリコン中のイオン平均侵入深さは21.02nmに等しく、これにより、13.98nmの結晶層を下に有する上部非晶質層(表面層とも呼ばれる)(表面下層とも呼ばれる)が生成され、したがって注入領域がバイマテリアル化する。注入された領域は収縮するため、バイメタル熱電対ストリップと同様に、バイマテリアルの下方への湾曲(拘束されていなければ曲がる)を引き起こす。イオン注入のエネルギーは、平均侵入深さを変化させるように制御することができる。したがって、バイマテリアルボウイングによって導入される余分な歪みは、イオン注入エネルギーを変えることによって正確に制御することができる。最大のボーイング効果、したがって最大の歪みは、表面層と表面下層とが等しい厚さである場合に生じる。
【0059】
実施例2:座屈したSi薄膜に張力をかける
図2に示される例は、異なる曝露パターンがシリコン薄膜にどのように異なる影響を及ぼし得るかを示している。結晶領域の周りの環を3.75×1014Xeイオンcm図2a)の線量に曝露することにより、実施例1のように中央に皺のない結晶領域を作成することが可能である。しかしながら、大きな平坦な結晶領域の中心の別の円が曝露すると、新しく作成された結晶環に径方向に引張歪みが生じる(図2b)。内側の円がイオンビーム(1.88×1014イオンcm-2-1)に曝露される線量を増大させることにより、アモルファス化した最上層を更に圧縮するために、より大きな引張歪みが生成される。
【0060】
膜の曝露部分のこの湾曲は、非晶質であること以外に、かなりの曲率を有さず(拘束されている場合)、したがって、走査型電子顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)を使用して容易に検出することができない。しかしながら、二重層構造によって引き起こされる湾曲は、薄い弾性フィルム上に配置された液滴からなどの皺の発現によって暗示され、液滴の下の膜の湾曲とそれに続く径方向の皺の出現をもたらす10,11。同様に、膜窓の中心の円のイオンビーム曝露は、図2に見られるように、二重層形成から生じる湾曲に起因する径方向の皺を形成する。そうすることによって、皺を消滅させるだけでなく、曝露パターン及び線量に基づいて要求に応じてそれらを再パターン化することもできる。
【0061】
実施例3:二軸歪み工学
発明者らは、テンショナの面積(曝露領域)と鼓膜の面積(中心単結晶)との比を制御することによって生じる二軸歪みの程度を調査した。歪みの大きさは、ラマンスペクトルにおける521cm-1ピーク(T2gモード)のシフトから推定した。
【0062】
結果として生じるT2gピークのラマンシフト、したがって応力に対する曝露比及び非曝露比の影響を、異なる環パターンを使用することによって調べた。これらのパターンは、イオン注入の前に作成された。環は、より大きな直径の円からより小さな直径の円を差し引いた2つの同心円から成り、その結果、より小さな円はイオンビームに曝露されなかった(図3aに概略図を見ることができる)。
【0063】
サファイア基板上のシリコン膜を使用したラマンシフト対印加圧縮二軸応力の以前の実験は、応力(σxx=σyy)とσxx=σyy==-249MPa*Δωに等しいラマンシフト(Δω)との間の関係を報告した。高線量酸素イオン注入によって形成された標準SOI又はSOIを用いた他の研究もほぼ同じ関係を示し、この場合、σxx=σyy=-250MPa*Δωの関係を用いてラマンスペクトルから面内応力を求めた。本発明者らは、ゲルマニウムにおいて、変換が高応力で非線形であることが見出されたが、そのような非線形性はシリコンについて報告されていないことに留意する。本発明者らは、これらの線形変換を利用して、ここで使用される二軸引張応力を適用し、この二軸引張応力はピークをより低い周波数にシフトさせ(レッドシフト)、それにより、二軸引張では、歪み%(ε)とラマンシフト(Δω)との間の関係が0.121cm*Δω cm-1に等しくなる12-20
【0064】
鼓膜の直径(内円結晶領域)は、d=100μmからd=5μmまで変化させた。異なる環サイズの曝露で得られた二軸歪みは、図3bに見ることができる。膜窓の縁部サイズは100~120μmの範囲であり、したがって、曝露面積が大きくなると収縮/下向きの曲げが大きくなるため、報告される歪みはわずかに変化することに留意すべきである。本発明者らは、dが更に減少するとラマン顕微鏡の空間分解能を下回るため、この時点で内側円の直径を停止した。dの最高値では、張力はすでに平坦な鼓膜を提供するのに十分である。図3bから、歪みを小さい値から非常に高い二軸歪みまで滑らかに増大させることができることが明らかである。非曝露領域への曝露の増大に伴うこの歪みの増大は、それが湾曲したときのテンショナ縁部のより小さい分離の結果であり、したがって、一方の縁部がフレームによって拘束され、他方の縁部が鼓膜に取り付けられることによって、湾曲は、平坦であるときと比較して応力を増幅する。
【0065】
実施例4:一軸歪み工学
一軸歪みを調査するために、本発明者らは、高アスペクト比のスロット形状の鼓膜を製造した。そのような鼓膜の場合、中心の応力及び歪みは、長い縁部に垂直な一軸力によって支配され、他の成分は端部付近にのみ現れる。誘導歪みに対する結晶異方性の影響を調べるために、50μm×5μmの長方形のティンパナを、3つの異なるシリコン配向:[110](0°のとき)、[100](45°のとき)、及び22.5°のときその間に整列させた。鼓膜の配向と[110]方向との間の角度が増大するにつれて、主ピークのより高いラマンレッドシフトが観察され(図4)、これはFWHMの増大を伴う。ラマンシフトは、[110]及び[100]方向についてそれぞれ1.7%~8.5%の歪みに対応し、対応するFWHMは7.5cm-1~22.6cm-1である。22.5°の中間の鼓膜角は、2.6%の歪み及び9.7cm-1のFWHMを示す。
【0066】
結晶領域に加えられる引張力は、シリコン膜窓の縁部とそれぞれのスロットとの間の長さに比例する。更に、剛性(変形に対する抵抗)はヤング率に比例する21。したがって、対角線が最長の長さであり、シリコン[100]方向(130.2GPa)のヤング率が低いことを考慮すると、45°に向けられたスロットの中心でより高い応力が予想される、すなわち、[100]方向は曝露領域の曲げに対する抵抗がより少なく、したがって、45°に向けられたスロットにより高い引張力を加える。一方、曝露距離は、スロットが0°にあるときに最小であり、[110]ヤング率は、この方向(168.9GPa)に最大値を有する22。更に、スロットが45°に位置するとき、最も大きい力は、スロットのより大きい縁部に垂直な方向に加えられ、力がsin(θ)の係数で減少するのを防ぐと考えることができる。
【0067】
実施例5:得られた応力に対するアスペクト比の影響
ラマンスペクトルに観測される主ピークの膜歪みへの幅の影響とFWHMへの欠陥量の影響に関するループを閉じるために、45°([100]方向)に配向したアスペクト比の異なるスロットを含むサンプルを作製した。
【0068】
図5を検査することによって、図3の10μm及び5μmの円について観察されるように、50μm×10μmと50μm×5μmのスロットとの間のかなりの飛躍に気づくことができる。Xeイオンを直径20μm、10μm、及び5μmの円の周りに注入した場合、518.66°、515.45°、及び500.85°のピークが得られた。一方、50μm×20μm、50μm×10μm、50μm×5μmのスロットでは、516.50cm-1、514.70cm-1、495.40cm-1にピークが見られた。これらの発見は、結晶領域幅によって果たされる主要な役割を示すだけでなく、スロット縁部に垂直かつ最低ヤング率の方向に平行に配向された最も強い力を得るためにシリコン異方性を探索すること([100])が、シリコン主ピークのより大きなシフト、したがってより高い歪みをもたらすという考えを裏付けている。最後の記述を証明する明確な例は、50μm×20μmのスロットが元の膜に関してより歪んでいると考えられるのに対して、20μmの円は緩和膜とみなされるという事実である(そのピークはバルクシリコンで予想される521cm-1に近い)。
【0069】
5μmの円(22.6cm-1対17.9cm-1)と比較して、50μm×5μmのスロットでより高いFWHMが得られたことも注目に値する。したがって、5μmの円の内部に注入されたイオンを有する可能性が125×5μmのスロットよりも高いことを考慮すると、本発明者らは、パターン縁部の周りの注入されたイオンのガウス分布の代わりに、ピークの広がりを結晶領域の結果として生じる歪みと相関させることができる。
【0070】
実施例6:ゲルマニウム膜へのイオン注入
本発明者らは、ゲルマニウム膜を調製し、それに実施例1に記載されたものと同様の方法でイオンを注入した。発明者らは、定性的には、得られた構造が注入されたシリコン膜と同じように挙動するように見えることに注目している。本発明者らは、一旦定性分析を行うと、これが初期の定性所見を裏付けていると予想している。
【0071】
References
1.Uchida,K.,Kinoshita,A.&Saitoh,M.Carrier transport in(110)nMOSFETs:Subband structures,non-parabolicity,mobility characteristics,and uniaxial stress engineering.in 2006 International Electron Devices Meeting 1-3(IEEE,2006).
2.Lee,W.,Hwangbo,Y.,Kim,J.-H.&Ahn,J.-H.Mobility enhancement of strained Si transistors by transfer printing on plastic substrates.NPG Asia Mater.8,e256(2016).
3.Paul,D.J.Si/SiGe heterostructures:from material and physics to devices and circuits.Semicond.Sci.Technol.19,R75(2004).
4.Whall,T.E.&Parker,E.H.C.SiGe-heterostructures for CMOS technology.Thin Solid Films 367,250-259(2000).
5.Geiger,R.et al.Uniaxially stressed germanium with fundamental direct band gap.arXiv Prepr.arXiv1603.03454(2015).
6.Jansen,H.,Gardeniers,H.,de Boer,M.,Elwenspoek,M.&Fluitman,J.A survey on the reactive ion etching of silicon in microtechnology.J.micromechanics microengineering 6,14(1996).
7.Brunner,K.,Abstreiter,G.,Kolbesen,B.O.&Meul,H.W.Strain at Si SiO2 interfaces studied by Micron-Raman spectroscopy.Appl.Surf.Sci.39,116-126(1989).
8.Jaccodine,R.J.&Schlegel,W.A.Measurement of strains at Si-SiO2 interface.J.Appl.Phys.37,2429-2434(1966).
9.Taraschi,G.,Pitera,A.J.&Fitzgerald,E.A.Strained Si,SiGe,and Ge on-insulator:review of wafer bonding fabrication techniques.Solid.State.Electron.48,1297-1305(2004).
10.Davidovitch,B.&Vella,D.Partial wetting of thin solid sheets under tension.Soft Matter 14,4913-4934(2018).
11.Box,F.et al.Dynamics of wrinkling in ultrathin elastic sheets.Proc.Natl.Acad.Sci.116,20875-20880(2019).
12.Ganesan,S.,Maradudin,A.A.&Oitmaa,J.A lattice theory of morphic effects in crystals of the diamond structure.Ann.Phys.(N.Y).56,556-594(1970).
13.Anastassakis,E.,Cantarero,A.&Cardona,M.Piezo-Raman measurements and anharmonic parameters in silicon and diamond.Phys.Rev.B 41,7529(1990).
14.Anastassakis,E.,Pinczuk,A.,Burstein,E.,Pollak,F.H.&Cardona,M.Effect of static uniaxial stress on the Raman spectrum of silicon.Solid State Commun.88,1053-1058(1993).
15.De Wolf,I.Micro-Raman spectroscopy to study local mechanical stress in silicon integrated circuits.Semicond.Sci.Technol.11,139(1996).
16.Macia,J.et al.Raman microstructural analysis of silicon-on-insulator formed by high dose oxygen ion implantation:As-implanted structures.J.Appl.Phys.82,3730-3735(1997).
17.Wolf,I.De.Stress measurements in Si microelectronics devices using Raman spectroscopy.J.Raman Spectrosc.30,877-883(1999).
18.de Wolf,I.Finding the Stress from the Raman Shifts:A Case Study.in Raman Scattering in Materials Science 104-106(Springer,2000).
19.Peng,C.-Y.et al.Comprehensive study of the Raman shifts of strained silicon and germanium.J.Appl.Phys.105,83537(2009).
20.Urena,F.,Olsen,S.H.&Raskin,J.-P.Raman measurements of uniaxial strain in silicon nanostructures.J.Appl.Phys.114,144507(2013).
21.Baumgart,F.Stiffness-an unknown world of mechanical science? Inj.J.Care Inj.31,14-23(2000).
22.Kim,J.,Cho,D.D.&Muller,R.S.Why is(111)silicon a better mechanical material for MEMS? in Transducers’ 01 Eurosensors XV 662-665(Springer,2001).
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体膜を備え、前記半導体膜が少なくとも1つのアモルファス化領域と活性領域とを
有し、前記少なくとも1つのアモルファス化領域が前記活性領域に歪みを及ぼすように前
記少なくとも1つのアモルファス化領域が前記活性領域に隣接し、
前記半導体膜は、表面層及び表面下層を備え、前記表面層が前記活性領域と前記少なく
とも1つのアモルファス化領域とを備え、前記表面下層が結晶性であり、
前記半導体膜は、前記半導体膜がアモルファス化された二材料湾曲を成す、半導体構造
【請求項2】
前記表面層の厚さが前記半導体膜の厚さの40~60%である、請求項に記載の半導
体構造。
【請求項3】
前記活性領域が第1のアモルファス化領域を取り囲む、請求項1または2に記載の半導
体構造。
【請求項4】
前記第1のアモルファス化領域が円形又は細長い形状を有する、請求項に記載の半導
体構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアモルファス化領域が第1の活性領域を取り囲む、請求項1また
は2に記載の半導体構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアモルファス化領域が環を備え、前記第1の活性領域が前記環の
中心に位置される、請求項に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記活性領域が細長い形状を有する、請求項に記載の半導体構造。
【請求項8】
前記細長い形状は、150:1~2:1、100:1~3:1、又は75:1~4:1
のアスペクト比を規定する、請求項に記載の半導体構造。
【請求項9】
前記アモルファス化領域の最大幅と前記第1の活性領域の最大幅との間の比は、1:5
0~200:1、1:25~100:1、1:10~75:1、1:5~50:1、1:
1~40:1、2:1~30:1、又は5:1~20:1である、請求項に記載の半導
体構造。
【請求項10】
前記半導体膜が複数の活性領域を有する、請求項1または2に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記活性領域が結晶構造を画定する、請求項1または2に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記結晶構造は、前記結晶構造の前記活性領域の表面内において異方性を示すように配
向される、請求項11に記載の半導体構造。
【請求項13】
前記半導体膜は、IV族元素、III-V族化合物半導体、又はIV族合金を含む又は
これらから成る、請求項1または2のいずれか一項に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記半導体膜は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ドープシリコン又
はドープゲルマニウムを含む又はこれらから成る、請求項13に記載の半導体構造。
【請求項15】
請求項1または2に記載の半導体構造を備える半導体デバイス、光増幅器、又は光電子
デバイス。
【請求項16】
結晶性半導体膜に歪みを導入する方法であって、
結晶性半導体膜を設けるステップと、
前記半導体膜の表面上に少なくとも1つの注入領域と前記少なくとも1つの注入領域に
隣接する活性領域とを画定するステップと、
前記半導体膜が前記少なくとも1つの注入領域内でアモルファス化して前記半導体膜が
、前記半導体膜がアモルファス化された二材料湾曲を成し、前記活性領域内に歪みを引き
起こすように、前記半導体膜の前記少なくとも1つの注入領域内にイオンを注入するステ
ップと、
を含む方法。
【請求項17】
イオンを注入する前記ステップは、希ガスイオンを注入するステップを含む、請求項
に記載の方法。
【請求項18】
イオンを注入する前記ステップは、キセノンイオンを注入するステップを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
結晶性半導体膜を設ける前記ステップは、単結晶膜を設けるステップを含む、請求項
6または17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記半導体膜の厚さの40~60%の深さまで前記少なくとも1つの注入
領域にイオンを注入するステップを含む、請求項16または17に記載の方法。
【国際調査報告】