IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-518297抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する抗微生物血清学的アッセイのための組成物、キット、および方法
<>
  • 特表-抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する抗微生物血清学的アッセイのための組成物、キット、および方法 図1
  • 特表-抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する抗微生物血清学的アッセイのための組成物、キット、および方法 図2
  • 特表-抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する抗微生物血清学的アッセイのための組成物、キット、および方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する抗微生物血清学的アッセイのための組成物、キット、および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20240423BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N33/569 L
G01N33/53 N
G01N33/536 E
G01N21/76
G01N33/532 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564442
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021070435
(87)【国際公開番号】W WO2022225575
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・ウェイ
(57)【要約】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するための試薬、キット、およびマイクロ流体デバイスが開示される。また、試薬、キット、およびマイクロ流体デバイスの製造方法および使用方法も開示される。抗ヒト免疫グロブリン抗体は、微生物を検出するためのブリッジングイムノアッセイにおける試薬として利用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学発光検出システムを利用するヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出する血清学的アッセイを実行するためのキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を含む組成物と
を含む、キット。
【請求項2】
微生物はウイルスである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
化学発光検出システムを利用するヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出する血清学的アッセイを実行するためのキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物と;
(c)ビオチン化されている、少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体と
を含む、キット。
【請求項6】
微生物はウイルスである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項5に記載のキット。
【請求項9】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するためのマイクロ流体デバイスであって:
(i)ヒト生体サンプルが適用される入口チャネルと;
(ii)入口チャネルと流体連絡することができ、
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合することができる少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を含む少なくとも1つの組成物と
を含有することができる少なくとも第1の区画と
を含む、マイクロ流体デバイス。
【請求項10】
微生物はウイルスである、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
(b)の少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
(b)はさらに:
一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物;ならびに
ビオチン化されている、少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体
として定義される、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
(a)および(b)は同じ区画に存在する、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
(a)および(b)は2つの異なる区画にある、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するための方法であって:
(1)
(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物;ならびに
(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を含む組成物
を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;
(2)(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;
(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;
(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項17】
微生物はウイルスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(c)の少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ヒト生体サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するための方法であって:
(1)
(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物;
(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物;ならびに
(d)ビオチン化されている、少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体
を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;
(2)(c)/(d)を形成するための(d)への(c)の結合ならびに(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;
(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;
(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
微生物はウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(c)の少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ヒト生体サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
化学発光検出システムを利用するヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出する血清学的アッセイを実行するためのキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している微生物の抗原を含む組成物と
を含む、キット。
【請求項27】
微生物はウイルスである、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
化学発光検出システムを利用するヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出する血清学的アッセイを実行するためのキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物と;
(c)ビオチン化されている、微生物の抗原と
を含む、キット。
【請求項31】
微生物はウイルスである、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項30に記載のキット。
【請求項34】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するためのマイクロ流体デバイスであって:
(i)ヒト生体サンプルが適用される入口チャネルと;
(ii)入口チャネルと流体連絡することができ、
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合することができる微生物の抗原を含む少なくとも1つの組成物と
を含有することができる少なくとも第1の区画と
を含む、マイクロ流体デバイス。
【請求項35】
微生物はウイルスである、請求項34に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項36】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項34に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項37】
(a)の少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項34に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項38】
(b)はさらに:
一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物;ならびに
ビオチン化されている、微生物の抗原
として定義される、請求項34に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項39】
(a)および(b)は同じ区画に存在する、請求項34に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項40】
(a)および(b)は2つの異なる区画にある、請求項34に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項41】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するための方法であって:
(1)
(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物;ならびに
(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を含む組成物;
を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;
(2)(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;
(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;
(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項42】
微生物はウイルスである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(b)の少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
ヒト生体サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するための方法であって:
(1)
(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物;
(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物;ならびに
(d)ビオチン化されている、微生物の少なくとも1つの抗原;
を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;
(2)(c)/(d)を形成するための(d)への(c)結合ならびに(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;
(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;
(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項47】
微生物はウイルスである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
(b)の少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
ヒト生体サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による組み入れの記述
適用なし。
【0002】
連邦政府の支援による研究または開発に関する記述
適用なし。
【背景技術】
【0003】
医療診断の分野では、多くの異なる形式のアッセイ技術が利用されている。患者が微生物(限定されないが、細菌またはウイルスなど)に感染している疑いがある場合、アッセイは、患者の免疫系によって産生される微生物に対する抗体を検出するために患者からの生体サンプルに対して実施される。
【0004】
患者の血清および血漿中の抗ウイルスまたは抗細菌抗原抗体(限定されないが、IgG、IgM、および/またはIgAなど)の検出が望まれる場合、固定化されたウイルス/細菌抗原および標識されたウイルス/細菌抗原が、多くの場合、アッセイ試薬を配合するために使用される、ブリッジング血清学的アッセイが利用されてきた。別の例では、ラテックス粒子凝集アッセイは、患者サンプル中の抗ウイルス/細菌抗原抗体の存在下で凝集する単一試薬としてウイルス/細菌抗原でコーティングされたラテックス粒子を利用する。
【0005】
しかしながら、抗体過剰(すなわち、フック効果)に関連する不確実性、ウイルス/細菌感染の早期検出の必要性、および一部の患者サンプルにおける低い抗ウイルス/細菌抗体力価のために、検査に必要なサンプルの量を低減させながら、また、アッセイによって生成されるシグナルを増強することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、従来技術の不利益および欠点を克服する微生物抗原に対する抗体のための新規かつ改良されたアッセイが当該技術分野において必要とされている。本開示が対象とするのは、微生物抗原に対する抗体を検出するためのこのような新規かつ改良された試薬、キット、マイクロ流体デバイス、および方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】SARS-CoV-2全(COV2T)アッセイ(Siemens Healthineers、Tarrytown、NY)を概略的に示す。
図2】本開示に従って構築された血清学的アッセイ形式の1つの非限定的な実施形態を概略的に示す。
図3】本開示に従って構築された血清学的アッセイ形式の別の非限定的な実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示的な言語および結果によって本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において以下の説明に記載される構成の詳細および構成要素の配列に限定されないことは理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であるか、または種々の手法で実践もしくは実行することができる。したがって、本明細書に使用される言語は、可能な限り最も広い範囲および意味を与えることを意図し;実施形態は包括的ではなく、例示的であることを意味する。また、本明細書に利用される表現および用語は、説明の目的のためであり、限定的とみなされるべきではないことは理解されるべきである。
【0009】
本明細書で別段に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野において周知であり、本明細書全体を通して引用され、論じられている種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。標準的な技術が化学合成および化学分析のために使用される。
【0010】
本明細書において述べられている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの部分に参照されている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個々の特許または刊行物が参照によって組み入れることを具体的かつ個別に示している場合と同じ程度までそれらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0011】
本明細書に開示される組成物、キット、デバイスおよび/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製され、実行される。組成物、キット、デバイスおよび/または方法は特定の実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱せずに、組成物、キット、デバイスおよび/または方法に対して、ならびに本明細書に記載される方法の工程または一連の工程において変更を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかである全てのこのような同様の置換および修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の趣旨、範囲および概念内であるとみなされる。
【0012】
本開示に従って利用される場合、別段に示さない限り、以下の用語は以下の意味を有すると理解されるべきである:
【0013】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ(one)」を意味することがあるが、それはまた、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味と一致する。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」という用語は、文脈が明確に別段を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」に対する言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つもしくはそれ以上の化合物、3つもしくはそれ以上の化合物、4つもしくはそれ以上の化合物、またはより多い数の化合物を指すことがある。「複数」という用語は、「2つまたはそれ以上」を指す。
【0014】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つおよび限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む1つより多い任意の量を含むと理解されるだろう。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100または1000またはそれ以上にまで及ぶことがある;さらに、より高い限界値も満足のいく結果をもたらす可能性があるため、100/1000の量は限定的と考えられるべきではない。さらに、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組合せを含むと理解されるだろう。序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つまたはそれ以上の項目を区別する目的のためのみであり、例えば、任意の順列もしくは順序または1つの項目の別の項目に対する重要性あるいは添加の任意の順序を意味することを意図するものではない。
【0015】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明示的に示されない限りまたは選択肢が相互に排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するために使用される。例えば、条件「AまたはB」は、以下のいずれかによって満たされる:Aは真であり(または存在する)、かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、かつBは真である(または存在する)、およびAとBは両方とも真である(または存在する)。
【0016】
本明細書で使用される場合、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの例」、「例えば」または「ある例」に対するいずれかの言及は、実施形態に関連して記載される特定の要素、機能、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、明細書の種々の場所における「いくつかの実施形態において」または「1つの例」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例に対する言及は、全て、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0017】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が組成物/装置/デバイスについての誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。例えば、限定するものではないが、「約」という用語が利用される場合、指定された値は、特定された値から、プラスマイナス20パーセント、または15パーセント、または12パーセント、または11パーセント、または10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセント、または1パーセントだけ変化することがあり、このような変動は、開示された方法を実施するのに適切であり、当業者によって理解されている通りである。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」のような有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」のような含む(including)の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」のような含有する(containing)の任意の形)という単語は、包括的であるかまたは無制限であり、追加の、引用されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「またはそれらの組合せ」という用語は、この用語に先立って列挙された項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも、含むことを意図する。この例に引き続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような、1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組合せも明示的に含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、典型的には、いかなる組合せにおいても項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0020】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象もしくは状況が完全に起きるか、またはそれに引き続いて記載される事象もしくは状況が大いにもしくはかなりの程度起きることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象または状況が時間の少なくとも80%、または時間の少なくとも85%、または時間の少なくとも90%、または時間の少なくとも95%に起きることを意味する。「実質的に隣接している」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに近接している範囲内であるが、互いに100%隣接していないこと、または2つの項目のうちの1つの一部が他の項目に100%隣接していないが、他の項目に近接している範囲内であることを意味することがある。
【0021】
本明細書で使用される場合、「会合する」および「連結する」という語句は、2つの部分の互いに直接的な会合/結合および2つの部分の互いに間接的な会合/結合の両方を含む。会合/連結の非限定的な例には、例えば、直接結合によるもしくはスペーサー基を介した1つの部分の別の部分への共有結合、直接的なもしくは両部分に結合している特異的結合対メンバーによる1つの部分の別の部分への非共有結合、1つの部分の別の部分への溶解もしくは合成によるような1つの部分の別の部分への組み込み、および1つの部分の別の部分への被覆が含まれる。
【0022】
「類似体」および「誘導体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、その構造において所与の化合物と同じ基本的な炭素骨格および炭素官能基を含むが、それらに対する1つまたはそれ以上の置換も含有することができる物質を指す。本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、化合物上の少なくとも1つの置換基の残基Rによる置き換えを指すと理解されるだろう。ある特定の非限定的な実施形態では、Rは、H、ヒドロキシル、チオール、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物、以下:場合により置換されている、直鎖、分枝または環状アルキル、および直鎖、分枝または環状アルケニルのうちの1つから選択されるC1-C4化合物を含んでもよく、任意選択の置換基は、1つまたはそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルから選択され、それらの各々は場合により置換されており、任意選択の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクルアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、カルボキシ、および-C(O)-アルキルのうちの1つまたは複数から選択される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、本開示に従って利用することができる任意の種類の生体サンプルを含むと理解されるだろう。利用することができる流体生体サンプルの例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、それらの組合せなどが含まれる。
【0024】
「抗体」という用語は、最も広い意味において本明細書で使用され、例えば、インタクトなモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに検体結合の所望の生物活性を示す抗体断片およびそのコンジュゲート(例えば、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ、一本鎖抗体、ならびにインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体断片およびそのコンジュゲート)、抗体置換タンパク質またはペプチド(すなわち、操作された結合タンパク質/ペプチド)、ならびにそれらの組合せまたは誘導体を指す。抗体は、任意の種類またはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であってもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「LOCI(登録商標)」という用語は、発光酸素チャネリングアッセイ(LOCI(登録商標))技術に基づく商業的に使用されるアッセイ技術を指す。LOCI(登録商標)による進化した化学発光アッセイは、例えば、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。現在利用可能なLOCI(登録商標)技術は高い感度を有し、いくつかの試薬を使用する。特に、LOCI(登録商標)アッセイは、これらの試薬のうちの2つ(「センシビーズ(sensibead)」および「ケミビーズ(chemibead)」と称される)が、センシビーズおよびケミビーズが互いに近接してシグナルを達成する様式で他の特異的結合パートナーアッセイ試薬によって保持されることを必要とする。ある特定の波長の光に曝露すると、センシビーズは一重項酸素を放出し、2つのビーズが近接している場合、一重項酸素はケミビーズに移動する;これにより化学反応が引き起こされ、その結果、ケミビーズが、異なる波長で測定することができる光を発する。
【0026】
次に、本開示のある特定の非限定的な実施形態を参照すると、ヒト生体サンプル中に存在する微生物に対する抗体を検出するための血清学的アッセイにおいて利用することができる試薬、キット、およびマイクロ流体デバイスが開示される。抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体は、微生物に対する少なくとも1つの抗原を含有する第1の試薬と組み合わせて様々な血清学的アッセイ形式における第2の試薬の一部として利用される。生体サンプル中に存在する抗微生物抗体は第1のアッセイ試薬の抗原に結合し、一方、第2の試薬中に存在する抗ヒトIg抗体は第1のアッセイ試薬に結合している抗微生物抗体に結合し、それによって検出可能な複合体を形成する。
【0027】
患者の血清および血漿中のSARS-CoV-2ウイルスに対する抗ウイルス抗原抗体(すなわち、IgG、IgM、IgAなど)を検出するために、固定化されたウイルス抗原試薬および標識されたウイルス抗原試薬を利用するブリッジングイムノアッセイ形式が典型的に使用される。1つのウイルス抗原は、かさ高い固相(限定されないが、ラテックスまたは磁性粒子など)に固定化される必要があるので、モノマー二価抗体(IgGなど)によって2つのウイルス抗原分子(少なくとも1つは固相に付着している)を架橋することにより、固相抗原のより遅いブラウン運動およびそれへの抗ウイルス抗体の配向の不確実性に起因して弱いシグナルを生成し得る。結果として、特に低い抗ウイルス抗体力価を有するサンプルに関して、ブリッジングアッセイの検出シグナルを増強する必要がある。さらに、患者の抗ウイルス抗原抗体の両方の結合アームが固相に固定化された複数の抗原分子に結合し、それによって標識された抗原試薬による抗体の検出が阻止される可能性がある。
【0028】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するための血清学的アッセイを実行するためのキットを対象とする。キットは、少なくとも2つの成分:(a)組成物に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を含む組成物と;(b)組成物に直接的または間接的に結合している抗ヒト免疫グロブリン抗体を含む組成物とを含み、(a)および(b)のうちの少なくとも1つは検出可能な分子をさらに含む。ヒト生体サンプル中に存在する抗微生物抗体は(a)の抗原に結合し、一方、(b)の抗ヒト免疫グロブリン抗体は(a)に結合している抗微生物抗体に結合し、それによって検出可能な複合体を形成する。
【0029】
本開示に従って利用することができるサンプル(したがって、ある特定の非限定的な実施形態では、マトリクスの配合が基づくことができる)の非限定的な例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せなどの生体サンプルが含まれる。
【0030】
本開示の試薬およびキットが利用される血清学的アッセイは、検出が望まれる任意の微生物の抗原に対するヒト抗体を検出することができる。例えば(限定する目的ではないが)、検出される微生物は、細菌、ウイルス、原生動物、真菌などであってもよい。
【0031】
本開示に従って検出することができる細菌の非限定的な例には、アシネトバクター(Acinetobacter)、アクチノミセス(Actinomyces)、アエロモナス(Aeromonas)、アグリゲイティバクター(Aggregatibacter)、アトポビウム(Atopobium)、バチルス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、バルトネラ(Bartonella)、ビフィドバクテリア(Bifidobacterium)、ボレリア(Borellia)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア(Chlamydia)、クラミドフィラ(Chlamydophila)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、コクシエラ(Coxiella)、エイケネラ(Eikenella)、エンテロバクター(Enterobacter)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリキア(Escherichia)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、フランシセラ(Francisella)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ガードネレラ(Gardnerella)、ヘモフィルス(Haemophilis)、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、モビルンカス(Mobiluncus)、モラクセラ(Moraxella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、パルビモナス(Parviomonas)、パスツレラ(Pasteurella)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、プレボテラ(Prevotella)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、タンネレラ(Tannerella)、トレポネーマ(Treponema)、ビブリオ(Vibrio)、およびエルシニア(Yersinia)種などが含まれる。
【0032】
本開示に従って検出することができるウイルスの非限定的な例には、アデノウイルス、アストロウイルス、コロナウイルス(限定されないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)または中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)など))、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エコーウイルス、脳炎ウイルス、エンテロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、エリスロウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、ロトウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、西ナイルウイルス、およびジカウイルスなどが含まれる。
【0033】
本開示に従って検出することができる原生動物の非限定的な例には、回虫(Ascaris)、バーベシア(Babesia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、サイクロスポーラ(Cyclospora)、エントアメーバ(Entamoeba)、エンテロビウス(Enterobius)、ジアルジア(Giardia)、膜様条虫(Hymenolepis)、ネカトール(Necator)、プラスモジウム(Plasmodium)、ストロンギロイデス(Strongyloides)、テニア(Taenia)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、およびトリコモナス(Trichomonas)種などが含まれる。
【0034】
本開示に従って検出することができる真菌の非限定的な例には、カンジダ(Candida)、クリプトコックス(Cryptococcus)、エピデルモフィトン(Epidermophyton)、マラセジア(Malassezia)、ミクロスポルム(Microsporum)、およびトリコフィトン(Trichophyton)種などを含む(しかしこれらに限定されない)、酵母、カビなどが含まれる。
【0035】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、血清学的アッセイによって検出される微生物は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、およびヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、HIV、B型肝炎コアトータル、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルス(HSV)、CMV、風疹、H.ピロリ(H.pylori)、またはトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)である。
【0036】
抗原は、検出される微生物に由来する任意の抗原であり得る。上記に列挙した微生物の各々の検出に有用な抗原は当該技術分野で周知であり、広く入手可能である。さらに、本開示に従って利用することができる抗原の選択は、十分に当業者の理解の範囲内である。したがって、そのさらなる開示は必要ないと考えられる。
【0037】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、微生物はSARS-CoV-2であり、抗原は当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のSARS-CoV-2抗原である。例えば(限定する目的ではないが)、抗原は、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、スパイク(S)タンパク質、膜(M)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質、融合(F)タンパク質などに由来し得る。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、抗原はヌクレオカプシドタンパク質またはスパイクタンパク質に由来し得る。
【0038】
1つの特定の(しかし非限定的な)実施形態では、抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)である。RBD S1抗原は、当該技術分野において公知である任意の供給源から得られる。例えば(限定する目的ではないが)、特定の抗原は、GenScript(Piscataway、NJ);Meridian Life Sciences,Inc.(Memphis、TN);Sino Biological US Inc.(Wayne、PA);ACRO Biosystems(Newark、DE);Biorbyt,LLC(St.Louis、MO);Icosagen,AS(San Francisco、CA);およびBios Pacific Inc.(Emeryville、CA)から市販されている。
【0039】
抗ヒトIg抗体は、当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のヒト免疫グロブリン分子の任意の部分に特異的に結合し得る。例えば(限定する目的ではないが)、抗体は、ヒトIgG、IgE、IgM、IgD、および/もしくはIgA、ならびに/またはそれらの任意の部分(限定されないが、抗ヒトガンマ鎖、抗ヒトH+L、抗ヒト軽鎖など)を対象とすることができる。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、抗ヒトIg抗体は、ヒトIgA、ヒトIgG、およびヒトIgMに特異的に結合する;この抗体の使用により、アッセイは全抗ウイルス抗原抗体アッセイ(すなわち、全SARS-CoV-2抗体アッセイ)になる。
【0040】
抗ヒトIg抗体(限定されないが、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、および/または抗ヒトIgA抗体、ならびに2つもしくは3つ全てのヒト免疫グロブリン抗体を認識する抗体を含む)は当該技術分野において周知であり、広く市販されており、大いに研究されている。例えば(限定する目的ではないが)、抗ヒトIgGモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体のいくつかの商業的供給源には、Rockland Immunochemicals,Inc.(Pottstown、PA);USBiological Life Sciences(Swampscott、MA);Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Dallas、TX);Jackson Immuno Research Labs,Inc.(West Grove、PA);Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA);およびSigma-Aldrich Corp.(St.Louis、MO)が含まれる。しかしながら、このリストは包括的なものではなく、本開示に従って利用することができる抗ヒトIg抗体の多くのさらなる商業的供給源が存在する。したがって、当業者であれば、本開示に従って利用することができる様々な抗ヒトIg抗体を明確かつ一義的に同定および選択することができるため、抗ヒトIg抗体またはその特徴のさらなる説明は必要ないと考えられる。
【0041】
微生物抗原を含む組成物(a)および抗ヒト免疫グロブリン抗体を含む組成物(b)は、微生物に対する抗体のその結合の検出を可能にする任意の物理的および/または構造的特徴を有し得る。例えば(限定する目的ではないが)、組成物は、粒子、ビーズ、表面、または基材などの形態をとることができる。血清学的アッセイにおいて利用することができる組成物は、当該技術分野において周知であり、市販されている。同様に、このような組成物において利用することができる標識は、当該技術分野において周知であり、市販されている。さらに、特定の血清学的アッセイ形式のための特定の組成物および標識の選択は、十分に当業者の理解の範囲内である。したがって、そのさらなる説明は必要ないと考えられる。しかしながら、単に例示の目的のために、いくつかの異なる血清学的アッセイ形式およびそれとともに利用される特定の組成物が本明細書以下に提供される。
【0042】
本開示のキットは、当該技術分野において知られているか、またはそうでなければ本明細書に記載される任意の血清学的アッセイ形式で使用するために設計される。
【0043】
血清学的アッセイ形式において利用される第1の組成物は、典型的には、微生物抗原に結合している微生物抗体および抗ヒトIg抗体の架橋によって形成される複合体の単離および/または検出のために設計される。ある特定の非限定的な実施形態では、第1の組成物は、少なくとも1つの微生物抗原が直接的または間接的に結合している固定化表面を含む;したがって、第1の組成物は複合体を形成することができる固定化表面を提供するので、サンプルの残りおよびアッセイの非結合成分から単離される。しかしながら、第1の組成物の一部としての固定化表面の使用は、例示のみの目的のためである;第1の組成物は、抗微生物抗体と第1の組成物および第2の組成物との間に形成される複合体の単離および/または検出を可能にする任意の物理的および/または構造的特徴を有し得る。例えば(限定する目的ではないが)、第1の組成物は、粒子、ビーズ、固定化または非固定化表面または基材などの形態をとることもできる。
【0044】
血清学的アッセイ形式の別の特定の(しかし非限定な)実施形態では、キットは、(限定されないが)発光酸素チャネリングアッセイ(LOCI(登録商標))形式などの化学発光検出システムのための1つまたはそれ以上の試薬をさらに含むことができる。この特定の(しかし非限定的な)例では、キットは、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物((限定されないが)ケミビーズなど)を含む組成物と、増感剤((限定されないが)センシビーズなど)とを含む組成物を含み、試薬の一方は、それに直接的または間接的に結合している微生物抗原を有し、他方の試薬は、それに直接的または間接的に結合している抗ヒトIg抗体を有する。代替の実施形態では、キットは、アッセイの前または間のいずれかに、組成物を微生物抗原および/または抗ヒトIg抗体に直接的または間接的に付着させるための試薬を含有する。
【0045】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、キットの第1の組成物は、それに直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含むものとしてさらに定義される。キットは、一重項酸素をその励起状態で生成することができる増感剤と、増感剤に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒトIg抗体とを含む第2の組成物をさらに含有する。
【0046】
キットが増感剤および抗ヒトIg抗体を含む第2の組成物を含有する場合、第2の組成物は、既に増感剤に結合している抗ヒトIg抗体を有するキットに配置されなくてもよい。すなわち、増感剤および抗ヒトIg抗体の両方を含有する単一の第2の組成物を含有するのではなく、キットは代わりに2つの試薬:(i)一重項酸素をその励起状態で生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する増感剤を含む組成物と;(ii)ビオチン化されている、少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体とを含んでもよい。
【0047】
化学発光化合物(化学発光物質(chemiluminescer))は、化学的に活性化可能であり、そのような活性化の結果として、ある特定の波長で光を発する化合物である。例示を目的とし、限定ではない化学発光物質の例には:一重項酸素または過酸化物と反応してヒドロペルオキシドまたはジオキセタンを形成することができるオレフィン、これはケトンまたはカルボン酸誘導体に分解することができる;光の作用によって分解することができる安定なジオキセタン;一重項酸素と反応してジケトンを形成することができるアセチレン;(限定されないが)ルミノールのようなアゾ化合物またはアゾカルボニルを形成することができるヒドラゾンまたはヒドラジド;および例えば、エンドペルオキシドを形成することができる芳香族化合物が含まれる。活性化反応の結果として、化学発光物質は直接的または間接的に発光を引き起こす。
【0048】
ある特定の実施形態では、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質であり得る。化学発光化合物を含む組成物は活性化された化学発光化合物によって直接励起される;あるいは組成物は活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含んでもよい。
【0049】
増感剤は、化学発光化合物の活性化のための、例えば、一重項酸素のような反応中間体を生じる、分子、通常、化合物である。一部の非限定的な実施形態では、増感剤は光増感剤である。(例えば、酵素および金属塩によって)化学的に活性化される(chemi-activated)他の増感剤には、例を目的とし、限定ではない、外部光源によって活性化されてまたは活性化されずに一重項酸素を生じることができる他の物質および組成物が含まれる。例えば、ある特定の化合物は、過酸化水素の一重項酸素および水への変換を触媒することが示されている。他の増感剤物質および組成物の非限定的な例には:アルカリ土類金属Ca、SrおよびBaの酸化物;d配置の3A、4A、SAおよび6A族の元素の誘導体;アクチニドおよびランタニドの酸化物;ならびに酸化剤ClO、BrO、Au3+、IO およびIO ;ならびに特に、モリブデン酸イオン、ペルオキソモリブデン酸イオン、タングステン酸イオンおよびペルオキソタングステン酸イオン、ならびにアセトニトリルが含まれる。それらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる以下の参考文献は、本開示の範囲内でもある増感剤物質および組成物に関するさらなる開示を提供する:Aubry、J.Am.Chem.Soc.、107:5844~5849(1985);Aubry、J.Org.Chem.、54:726~728(1989);BohmeおよびBrauer、Inorg.Chem.、31:3468~3471(1992);NiuおよびFoote、Inorg.Chem.、31:3472~3476(1992);Nardelloら、Inorg.Chem.、34:4950~4957(1995);AubryおよびBouttemy、J.Am.Chem.Soc.、119:5286~5294(1997);ならびにAlmeidaら、Anal.Chim.Acta、482:99~104(2003);これらの各々の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0050】
光増感剤の範囲内には、真の増感剤ではないが、熱、光、電離放射線または化学活性化による励起で一重項酸素の分子を放出する化合物も含まれる。このクラスの化合物のメンバーには、例えば(限定する目的ではないが)、1,4-ビスカルボキシエチル-1,4-ナフタレンエンドペルオキシド;9,10-ジフェニルアントラセン-9,10-エンドペルオキシド;および5,6,11,12-テトラフェニルナフタレン5,12-エンドペルオキシドのようなエンドペルオキシドが含まれる。加熱またはこれらの化合物による光の直接吸収は一重項酸素を放出する。
【0051】
光増感剤は、例えば、光による励起による一重項酸素の生成によって光活性化合物を活性化するための増感剤である。光増感剤は光活性化可能であり、例えば、色素および芳香族化合物を含み、通常、複数の共役二重または三重結合を有する、通常、共有結合原子からなる化合物である。化合物は、励起波長において、500M-1cm-1より大きい、または5,000M-1cm-1より大きい、または50,000M-1cm-1より大きい、その吸収最大における吸光係数で、(限定されないが)約300nm~約1,000nmの範囲または約450nm~950nmの範囲のような約200nm~約1,100nmの波長範囲の光を吸収すべきである。光増感剤は比較的光安定性であるべきであり、一重項酸素と効率的に反応しなくてもよい。例示を目的とし、限定ではない、光増感剤の例には:アセトン;ベンゾフェノン;9-チオキサントン;エオシン;9,10-ジブロモアントラセン;メチレンブルー;(限定されないが)ヘマトポルフィリンのようなメタロ-ポルフィリン;フタロシアニン;クロロフィル;ローズベンガル;およびバックミンスターフラーレン;ならびにこれらの化合物の誘導体が含まれる。
【0052】
特に、本開示に従って利用することができる化学発光化合物および光増感剤の非限定的な例は米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0053】
当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のビオチン特異的結合パートナーは、本開示に従って利用することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、ビオチン特異的結合パートナーはビオチンに対する抗体である。他の非限定的な実施形態では、ビオチン特異的結合パートナーはアビジンまたはその類似体である。
【0054】
当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のアビジン類似体は、アビジンまたはアビジン類似体が:(1)増感剤と会合することができ;(2)ビオチン化した検体特異的結合パートナーに結合することができ;(3)サンプル中に存在し得るビオチンに結合することができる限り、本開示に従って利用することができる。本開示に従って利用することができるアビジン類似体の非限定的な例には、Kangら(J Drug Target(1995)3:159~65)に開示されているものが含まれ、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。アビジン類似体の特定の非限定的な例には、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン(Neutralite avidin)、ニュートラアビジン(Neutravidin)、ライト-アビジン(Lite-avidin)、スクシニル化アビジン、修飾もしくは遺伝子操作されたアビジンの他の形態、上記のいずれかのエステル、塩および/または誘導体などが含まれる。
【0055】
活性化された化学発光化合物によって励起され、特定の検出可能な波長で発光することができる当該技術分野において公知の任意の蛍光分子は、各蛍光分子によって生成されるシグナルが、利用される他の蛍光分子によって生成されるシグナルから検出可能である限り、(a)および(b)(および存在する場合、(e))の蛍光分子として本開示に従って利用することができる。すなわち、(a)の蛍光分子は、(b)の蛍光分子が発光する波長と十分に異なる波長で発光しなければならず、それによって2つのシグナルは、同時に検出される場合、互いに区別される。ある特定の(しかし非限定的な)例において、本開示に従って利用される各蛍光分子は、独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムおよびジスプロシウムからなる群から選択される。例えば(限定する目的ではないが)、テルビウムは約545nmの波長で発光し、ウランは約612nmの波長で発光し、サマリウムは約645nmの波長で発光する。
【0056】
本明細書上記に記載される他の2つの成分(すなわち、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物および増感剤)への抗原および抗ヒト免疫グロブリン抗体の付着は任意であることに留意すべきである;実際に、本開示は、本明細書上記に記載される付着の反対も含む。すなわち、本開示の特定のある実施形態は:(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している微生物の抗原を含む組成物とを含むキットを含む。あるいは、キットは、(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物、ならびに(c)ビオチン化されている、微生物の抗原と組み合わせて上記の(a)を含んでもよい。
【0057】
したがって、キットのある特定の非限定的な実施形態は:(a)一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含む組成物と;(c)化学発光化合物または増感剤に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体と;(d)(c)が結合していない化学発光化合物または増感剤に直接的または間接的に結合している微生物の抗原とを含む。あるいは、キットは、(a)一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物と;(c)少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体と;(d)微生物の抗原とを含んでもよく;(c)および(d)の一方は化学発光化合物に直接的または間接的に結合しており、一方、(c)および(d)の他方はビオチン化されている。
【0058】
本開示のキットの全ては、抗微生物抗体の定性的および/または定量的測定に利用することができる。
【0059】
キットに存在するアッセイ成分/試薬は、それらが本開示に従って機能することを可能にする任意の形態で提供される。例えば、限定の目的ではないが、試薬の各々は、液体形態で提供され、キット内にバルクおよび/または単一のアリコート形態で配置される。あるいは、特に(しかし非限定的な)実施形態では、試薬の1つまたはそれ以上は、単一のアリコートの凍結乾燥試薬の形態でキット内に配置される。マイクロ流体デバイスにおける乾燥試薬の使用は米国特許第9,244,085号(Samproni)に詳細に記載されており、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0060】
本明細書上記で詳細に記載されるアッセイ成分/試薬に加えて、キットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される特定のアッセイのいずれかを行うための他の試薬をさらに含有してもよい。これらのさらなる試薬の性質は特定のアッセイ形式に依存し、それらの同定は十分に当業者の技術の範囲内である;したがってそれらのさらなる説明は必要ないと考えられる。また、キットに存在する成分/試薬の各々は別個の容器/区画にあってもよいか、または種々の成分/試薬が、成分/試薬の交差反応および安定性に応じて、1つもしくはそれ以上の容器/区画内に合わせられる。さらに、キットは、成分/試薬が配置されているマイクロ流体デバイスを含んでもよい。
【0061】
キット内の種々の成分/試薬の相対量は、アッセイ方法の間に発生することを必要とする反応を十分に最適化し、さらに、アッセイの感度を十分に最適化する濃度の成分/試薬を提供するために広範に変更することができる。適切な状況下で、キット内の成分/試薬の1つまたはそれ以上は凍結乾燥粉末のような乾燥粉末として提供することができ、キットは乾燥試薬を溶解するための賦形剤をさらに含んでもよい;このように、本開示に従って方法またはアッセイを実施するための適切な濃度を有する試薬溶液はこれらの成分から得ることができる。キットに含めることができる他の試薬の非限定的な例には、洗浄溶液、較正溶液、品質管理溶液、希釈溶液、賦形剤、干渉溶液、陽性対照、陰性対照などが含まれる。さらに、キットは、キットの使用方法を説明している書面の説明書のセットをさらに含んでもよい。この性質のキットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される方法のいずれかにおいて使用することができる。
【0062】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される血清学的アッセイ試薬のいずれかを含有するマイクロ流体デバイスを対象とする。例えば(限定する目的ではないが)、本開示のある特定のさらなる非限定的な実施形態は、本明細書上記に記載されるキットのいずれかの成分を含むマイクロ流体デバイスを対象とする。
【0063】
特に、ある特定の非限定的な実施形態は、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される血清学的アッセイを介して、生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出するためのマイクロ流体デバイスを含む。マイクロ流体デバイスは、(i)生体サンプルが適用される入口チャネルと;(ii)入口チャネルと流体連絡することができる少なくとも第1の区画とを含む。(ii)の区画は、単独で、または本明細書に記載されるか、もしくはそうでなければ企図される1つもしくはそれ以上の他の試薬(限定されないが、血清学的アッセイにおいて使用するための1つまたはそれ以上の試薬など)と組み合わせて、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される試薬のいずれかを含有する。例えば(限定する目的ではないが)、1つまたはそれ以上の試薬は、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される第1および/または第2の組成物(それぞれ、微生物抗原および抗ヒトIg抗体を含有する)を含む。
【0064】
ある特定の非限定的な実施形態では、(ii)の試薬(および本明細書上記に記載され任意のさらなる要素)の全ては同じ区画中に存在する。代替の非限定的な実施形態では、試薬は、2つまたはそれ以上の区画の間で分割される。
【0065】
マイクロ流体デバイスは、本開示に従ってそのデバイスが機能することを可能にする、区画の任意の配列およびそれらの間の種々の成分の分配を提供することができる。
【0066】
マイクロ流体デバイスの区画のいずれかは、試薬を使用するまで、実質的に気密環境でその中に配置される試薬を維持するために封止され;例えば、凍結乾燥試薬を含有する区画は試薬のあらゆる意図的でない再構成を阻止するために封止される。入口チャネルおよび区画、ならびに2つの区画は互いに「流体連絡することができる」と記載され;この語句は、区画の各々を常に封止することができるが、2つの区画はそれらの中またはそれらの間に形成される封止が破壊されるとそれらの間に流体が流れることができることを示す。
【0067】
本開示のマイクロ流体デバイスは、当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意の他の所望の機能を提供することができる。例えば、限定する目的ではないが、本開示のマイクロ流体デバイスは読み取りチャンバをさらに含んでもよく;読み取りチャンバは本明細書上記に記載される試薬を含有する区画のいずれかであってもよいか、または読み取りチャンバは前記区画と流体連絡することができる。
【0068】
マイクロ流体デバイスは、(限定されないが)洗浄溶液、較正溶液、品質管理溶液、希釈溶液、賦形剤、干渉溶液、陽性対照、陰性対照などの他の溶液を含有する1つまたはそれ以上のさらなる区画をさらに含むことができる。これらのさらなる区画は他の区画の1つまたはそれ以上と流体連絡することができる。例えば、マイクロ流体デバイスは洗浄液を含有する1つまたはそれ以上の区画をさらに含んでもよく、これらの区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。別の例では、マイクロ流体デバイスは1つまたはそれ以上の乾燥試薬を溶解するための賦形剤を含有する1つまたはそれ以上の区画をさらに含んでもよく、区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。なおさらなる例では、マイクロ流体デバイスは希釈液を含有する1つまたはそれ以上の区画を含んでもよく、区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。
【0069】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ヒト生体サンプル中の微生物に対する抗体の存在および/または濃度を検出する方法を対象とする。1つの非限定的な実施形態では、方法は:(1)(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル、(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物、ならびに(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を含む組成物を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;(2)(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程とを含む。
【0070】
別の非限定的な実施形態では、方法は:(1)(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル;(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物;(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物;ならびに(d)ビオチン化されている、少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;(2)(c)/(d)を形成するための(d)への(c)の結合ならびに(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程とを含む。
【0071】
方法の他の非限定的な実施形態は:(1)(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル、(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物、ならびに(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合している微生物の少なくとも1つの抗原を含む組成物を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;(2)(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程とを含む。
【0072】
さらに別の非限定的な実施形態では、方法は、(1)(a)微生物に対する抗体を含有すると疑われるヒト生体サンプル;(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物;(c)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤、および増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを含む組成物;ならびに(d)ビオチン化されている、微生物の少なくとも1つの抗原を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;(2)(c)/(d)を形成するための(d)への(c)結合ならびに(a)に存在する微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合を可能にする工程であって、微生物に対する抗体への(b)および(c)/(d)の結合は、増感剤が化学発光化合物と近接する複合体の形成を生じる、工程と;(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;(4)複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定して、サンプル中に存在する微生物に対する抗体の存在および/または濃度を決定する工程とを含む。
【0073】
本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図されるアッセイ形式を介して検出を可能にする任意の抗微生物抗体は、本開示の血清学的アッセイによって検出される。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、抗体は、SARS-CoV-2ウイルスに対する抗ウイルス抗原抗体である。
【0074】
いくつかの非限定的なアッセイの実施形態では、例えば、光増感剤などの増感剤、および化学発光分子組成物を含むシグナル生成システム(sps)メンバーが利用され、それらの各々は、微生物の抗原またはそれに直接的もしくは間接的に付着している(またはアッセイの間、それに直接的もしくは間接的に結合している抗原もしくは抗体を有することができる)抗ヒト免疫グロブリン抗体のいずれかを有する;これらのアッセイの実施形態では、増感剤の活性化により、化学発光組成物を活性化する生成物が生じ、それによって検出される結合しているヒト抗微生物抗体の量に関連する検出可能なシグナルが生成される。本開示が基づくことができるアッセイプラットフォームの例示的(しかし非限定的)な実施形態は、発光酸素チャネリングアッセイ(Luminescence Oxygen Channeling Assay)(LOCI(登録商標);Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NY)である。LOCI(登録商標)アッセイは、例えば、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0075】
本明細書上記に詳細に記載されているか、またはそうでなければ本明細書に企図される微生物抗原、抗ヒト免疫グロブリン抗体、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物、増感剤、蛍光分子、およびビオチンまたはその類似体のいずれも、本開示の方法において利用することができる。
【0076】
例えば、ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である。
【0077】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、増感剤は光増感剤であり、工程(3)における増感剤の活性化は、光による照射(例えば、限定されないが、約680nmでの照射)を含む。
【0078】
微生物に対する抗体の存在についてのアッセイが所望される任意のサンプルを、本開示の方法に従ってサンプルとして利用することができる。サンプルの非限定的な例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せのような生体サンプルが含まれる。特定の非限定的な例には、溶解全血細胞および溶解赤血球が含まれる。特定の(しかし非限定的な)例では、サンプルはヒト由来である。
【0079】
上述のように、方法の種々の成分は、(同時にまたは連続してのいずれかで)組み合わせて提供される。方法の種々の成分が連続して添加される場合、成分の添加の順序を変更させてもよく;当業者は、アッセイへの異なる成分の添加の特定の所望の順序を決定することができる。添加の最も簡単な順序は、もちろん、全ての材料を同時に添加し、それらから生成されたシグナルを決定することである。あるいは、成分の各々、または成分のグループを連続して合わせることができる。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の工程(限定されないが、1つもしくはそれ以上のインキュベーション工程および/または1つもしくはそれ以上の洗浄工程など)は1つまたはそれ以上の追加の後に含まれる。
【0080】
代替の(しかし非限定的な)実施形態では、化学発光検出システムを利用する方法の工程(1)は、サンプルを、ビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン抗体および増感剤を含む組成物と最初に合わせる工程と、それを、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物および微生物抗原を含む組成物を加える前に、インキュベートする工程とを含む。あるいは、方法の工程(1)は、サンプルを、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と最初に合わせる工程と、それを、増感剤を含む組成物を加える前に、インキュベートする工程とを含んでもよい。この後者の実施形態では、ビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン抗体はインキュベーション工程の前または後に加えられる。これらの異なる添加の順序は、抗原がビオチン化されており、抗ヒト免疫グロブリン抗体が化学発光化合物と会合している場合にも適用可能であることに留意されたい。
【0081】
上記の実施形態は、ヒトサンプル中の抗体の検出に関して説明されているが、本開示の範囲はヒトサンプルでの使用に限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本明細書上記に記載される実施形態のいずれも、他の哺乳動物由来の生体サンプル中の微生物に対する抗体の検出に適合させることができる。したがって、本開示はまた、上記に記載される実施形態の全てにおいて利用される抗ヒト免疫グロブリン抗体を、生体サンプルが取得される種に対応する抗哺乳動物免疫グロブリン抗体と置き換えることによって、非ヒト哺乳動物の生体サンプル中の抗微生物抗体を検出するための組成物、キット、デバイス、および方法も含む。
【実施例
【0082】
実施例を本明細書以下に提供する。しかしながら、本開示は、その適用において、本明細書に開示される特定の実験、結果、および実験手順に限定されないことは理解されるべきである。むしろ、実施例は種々の実施形態の1つとして単に提供され、包括的ではなく、例示的であることを意図する。
【0083】
2020年6月に、米国食品医薬品局(FDA)は、血液中のIgM、IgA、およびIgGを含むSARS-CoV-2抗体の存在を検出するための、Siemens Healthineers(Malvern、PA)によって開発された実験室ベースの全抗体検査の緊急使用許可(EUA)を発行した。SARS-CoV-2ウイルスの表面上のスパイクタンパク質により、ウイルスは複数の臓器および血管に見出されるヒトの細胞に侵入して感染することができる。Siemens Healthineersの全抗体COV2Tアッセイを図1に示し、スパイクタンパク質に対する抗体を検出するように設計した。これらの抗体の一部はSARS-CoV-2ウイルスを中和し、したがって感染を阻止すると考えられている。SARS-CoV-2に対して開発中の複数の可能性のあるワクチンは、それらの焦点の中にスパイクタンパク質を含む。
【0084】
図1のアッセイ形式は、SARS-CoV-2抗原を両方とも含有する2つの試薬を利用する:第1の試薬は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1サブユニット(S1のRBD)のフルオレセイン標識化受容体結合ドメインと予備形成した抗FITCケミビーズを含み、第2の試薬は、S1のビオチン-RBDと結合しているストレプトアビジンによりコーティングしたセンシビーズを含む。S1抗原のビオチン化されたRBDは、ユニバーサルのストレプトアビジンによりコーティングしたセンシビーズとは別個の試薬として生成され、アッセイの前または間の任意の時点で第2のアッセイ試薬を生成するために合わせられることに留意されたい。
【0085】
しかしながら、生体サンプル中に存在する単量体二価抗体(IgGなど)による2つのウイルス抗原分子(すなわち、図1に示したS1抗原の2つのRBD)の架橋は、より遅いブラウン運動および最初の抗原に付着したときの抗ウイルス抗体の配向の不確実性に起因して弱いシグナルを生成する可能性がある。さらに、各ケミビーズ上の複数の抗原分子の存在を考慮すると、患者の抗RBD抗体の両方の結合アームが単一のケミビーズの表面に結合し得る可能性がある。結果として、特に低い抗ウイルス抗体力価を有するサンプルに関して、ブリッジングアッセイの検出シグナルを増強し、また、その両方の結合アームが単一のケミビーズの表面に結合している抗SARS-CoV-2抗体を検出するための機構を提供する必要がある。
【0086】
図2は、これらの問題に対処する、本開示に従って構築されたアッセイ形式の一実施形態を示す。このアッセイ形式では、患者サンプル中の全抗RBD抗体を測定するために、図1のビオチン化されたウイルス抗原(S1のビオチン-RBD)の代わりに、ビオチン化された抗ヒト免疫グロブリン抗体を反応混合物に添加した。この例では、利用した抗体は、Thermo Fisher Scientific (Rockford、IL;カタログ番号A18849)から入手した、ヒトIgG/M/Aに対する市販のアフィニティー精製したヤギポリクローナル抗体であった。
【0087】
この方法は、図1の全抗RBD抗体(抗RBD IgG、IgM、およびIgAを含む)とブリッジングアッセイ形式(すなわち、RBDによりコーティングされたケミビーズ(CB)およびRBDによりコーティングされたセンシビーズ(SB))を測定する別の手段を提供する。このアプローチの利点は、2つの異なるビーズに位置する2つの抗原分子に結合する抗RBD抗体による立体障害の問題を克服し、患者の抗RBD抗体の両方の結合アームがケミビーズ表面に結合することができる場合、抗RBD抗体がケミビーズおよびセンシビーズを架橋できないという潜在的な問題も排除することである。
【0088】
表1は、本開示のアッセイ形式を使用したCOVID-19陽性サンプル中の抗SARS-CoV-2抗体の検出を実証するデータを含み(図2に示されるように、表1では「ビオチン抗ヒトAMG」と標識されている)、図1のアッセイ形式を使用したCOVID-19陽性サンプル中の抗SARS-CoV-2抗体(表1では「S1のビオチン-RBD」と標識されている)の検出と比較した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1で使用される「抗ヒトAMG」という用語は、IgA、IgM、およびIgGの全てに特異的に結合する抗ヒト抗体を指し、したがってCOVID-19患者サンプル中の全抗SARS-CoV2抗体の検出を提供することに留意されたい(ここで「全」はIgG、IgM、およびIgAの合計を指す)。
【0091】
表1に見ることができるように、図1のアッセイ形式を使用して検査した15個のCOVID-19陽性サンプルのうちの9個で抗SARS-CoV-2抗体の陽性結果が検出された。対照的に、抗SARS-CoV-2抗体についての陽性結果が、本開示のアッセイ形式を使用して検査した15個全てのCOVID-19陽性サンプル中で検出された(図2に示される)。さらに、両方のアッセイ形式は、検査した7個全てのCOVID-19陰性サンプルについて陰性結果を提供した。
【0092】
したがって、本開示は、生体サンプル中の微生物に対する抗体を検出する際に有効な組成物、キット、マイクロ流体デバイス、および方法を提供する。特に(限定する目的ではないが)、この実施例は、本開示の組成物、キット、マイクロ流体デバイス、および方法が、生体サンプル中の抗SARS-CoV-2抗体を検出する際に非常に有効であることを実証する。
【0093】
本明細書上記に詳細に論じられるように、図2の他の2つの成分(すなわち、ケミビーズおよびセンシビーズ)への抗原および抗ヒト免疫グロブリン抗体の付着は任意であることに留意されたい;実際に、本開示は、本明細書上記に記載される付着の反対も含む。例えば、図3は、本開示に従って構築されたアッセイ形式の別の非限定的な実施形態を示す。ケミビーズおよびセンシビーズに結合している2つの化合物が入れ替わっていることを除いて、図3のアッセイ形式は図2のアッセイ形式と同一である。すなわち、図3のアッセイ形式は、ケミビーズに直接的または間接的に結合している少なくとも1つの抗ヒト免疫グロブリン抗体を有するケミビーズ、および増感剤に直接的または間接的に結合している微生物の抗原を有するセンシビーズを利用する(ここで、センシビーズは、それに直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有することができ、抗原はセンシビーズへの後の付着のためにビオチン化されている)。
【0094】
このように、本開示に従って、本明細書上記に示した目的および利点を完全に満たす、組成物、キット、およびデバイス、ならびにそれらを製造し、使用する方法が提供される。本開示は、本明細書上記に示した具体的な図面、実験、結果、および言語と併せて記載してきたが、多くの代替、修飾、および変更が当業者には明らかであることは自明である。したがって、本開示の趣旨および広い範囲内である全てのこのような代替、修飾、および変更を包含することを意図する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】