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特表2024-518302RAS誘導性再発性ネオアンチゲンに対するT細胞受容体およびそれらを同定するための方法
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  • 特表-RAS誘導性再発性ネオアンチゲンに対するT細胞受容体およびそれらを同定するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】RAS誘導性再発性ネオアンチゲンに対するT細胞受容体およびそれらを同定するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240423BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240423BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240423BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240423BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/0783
C12N5/10
C12Q1/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P37/02
A61K48/00
A61K39/395 E
A61K45/00
G01N33/68
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564575
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 IL2022050443
(87)【国際公開番号】W WO2022229966
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】282814
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】63/223,114
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502379147
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルズ ヤルデナ
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン ニール
(72)【発明者】
【氏名】ペリ アヴィヤー
(72)【発明者】
【氏名】グリーンスタイン エレッツ
(72)【発明者】
【氏名】アロン ミカル
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
2G045CB02
2G045DA36
2G045FB06
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QR51
4B063QS33
4B063QS40
4B063QX10
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA60
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
対象の癌を治療する方法が開示される。当該方法は、対象に治療有効量のT細胞集団を投与することを含み、集団内のT細胞の少なくとも10%が、TCRのα鎖に配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、前記集団内の前記T細胞の少なくとも10%が、TCRのα鎖に配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有し、前記投与によって前記対象の癌を治療する、方法。
【請求項2】
対象の癌を治療する方法であって、
(a)対象のHLAプロファイルを確かめ、
(b)対象によるNRAS.Q61KまたはNRAS.Q61Rの発現を決定し、そして
(c)前記対象がHLA-A*01:01/NRAS.Q61KまたはHLA-A*01:01/NRAS.Q61Rであると同定されたとき、治療有効量の、TCRを発現するT細胞の集団を対象に投与し、前記TCRのα鎖が配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記TCRのβ鎖が配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有することを含み、前記投与によって前記対象の癌を治療する、方法。
【請求項3】
対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、前記集団内の前記T細胞が、TCRのα鎖に配列番号2に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記CDRのβ鎖に配列番号17に示すCDR3アミノ酸配列を有し、前記投与によって前記対象の癌を治療する、方法。
【請求項4】
対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、前記集団内の前記T細胞が、TCRのα鎖に配列番号16に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記CDRのβ鎖に配列番号3に示すCDR3アミノ酸配列を有し、前記投与によって前記対象の癌を治療する、方法。
【請求項5】
前記集団内の前記T細胞の少なくとも10%が、配列番号2に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記CDRのβ鎖に配列番号17に示すCDR3アミノ酸配列を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記集団内の前記T細胞の少なくとも10%が、配列番号16に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記CDRのβ鎖に配列番号3に示すCDR3アミノ酸配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記対象内のHLA-A*01:01アレルとの複合体において、前記TCRが、配列番号1または配列番号34に示す配列を有するペプチドと結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記T細胞が前記対象にとって自家性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記T細胞が前記対象にとって非自家性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記T細胞が、T細胞受容体を発現するように遺伝的に修飾されたものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記T細胞がCD8+T細胞を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が、メラノーマ、大腸癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、白血病、膀胱癌、肺癌、卵巣癌、乳癌および前立腺癌からなる群より選ばれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記癌がメラノーマである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象をチェックポイント阻害薬で治療することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
T細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝的に修飾されたT細胞の単離集団であって、前記TCRのα鎖が配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記TCRのβ鎖が配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団。
【請求項16】
T細胞の単離集団であって、前記集団内のT細胞の少なくとも10%がTCRのα鎖に配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記TCRのβ鎖に配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団。
【請求項17】
T細胞の単離集団であって、前記集団内のT細胞がTCRのα鎖に配列番号2に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記TCRのβ鎖に配列番号17に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団。
【請求項18】
T細胞の単離集団であって、前記集団内のT細胞がTCRのα鎖に配列番号16に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つ前記TCRのβ鎖に配列番号3に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団。
【請求項19】
前記TCRを発現するように遺伝的に修飾されている、請求項17または18に記載のT細胞の単離集団。
【請求項20】
CD8+ T細胞である、請求項15または16に記載のT細胞の単離集団。
【請求項21】
癌の治療における、請求項15~20のいずれか一項に記載のT細胞の単離集団の使用。
【請求項22】
癌免疫療法の標的となり得る再発性HLA提示ネオアンチゲンを選択する方法であって、
(a)複数の癌患者の腫瘍細胞内の個別のHLAアレルにおける癌関連変異タンパク質の発生頻度を分析する工程と、
(b)前記癌関連変異タンパク質から誘導された長さが8~14アミノ酸のペプチドの、前記個別のHLAアレルに対する結合親和性を決定する工程であって、前記ペプチドが野性型タンパク質と比べて変異した部分を含み、
第2の所定レベルを超える発生頻度を有するHLAアレルに対して、第1の所定レベルを超える親和性をもって結合する候補ペプチドを、癌免疫療法の標的となり得る候補HLA提示ネオアンチゲンとして選択し、
(c)前記候補ペプチドが、抗原提示細胞内のin vitro発現系において前記HLAアレルによって提示されたことを立証する工程と、
(d)立証された前記ペプチドが、腫瘍細胞内の前記HLAアレルによって提示されていることを確認する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記決定が、予測アルゴリズムを用いて前記結合親和性を予測することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記予測アルゴリズムがNetMHCpanを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記確認を、標的化質量分析を用いて実施する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記HLAがHLAクラスIを含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記複数の患者が、少なくとも1種の癌療法に耐性である患者を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記工程(c)の前に、前記癌関連変異タンパク質を内包する腫瘍細胞の割合分析する工程をさらに含み、第2の所定レベルを超える発生頻度を有するHLAアレルに対して、第1の所定レベルを超える親和性をもって結合し、且つ所定レベルを超える割合の腫瘍細胞に内包された候補ペプチドを、癌免疫療法の標的となり得る候補HLA提示ネオアンチゲンとして選択する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記in vitro発現系が、25~27アミノ酸または45~47アミノ酸の伸長ペプチドを発現することを含み、前記伸長ペプチドが癌関連変異タンパク質のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記抗原提示細胞がB細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記癌関連変異タンパク質がRASファミリーのメンバーである、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記メンバーが、NRAS、KRASおよびHRASからなる群より選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記メンバーがNRASである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記癌関連変異タンパク質がRAFキナーゼである、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記RAFキナーゼがB-RAFである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記癌患者が、メラノーマ患者、甲状腺癌患者、褐色細胞腫患者、セミノーマ患者、胃底腺型胃癌患者、胆管癌患者、膵臓腺癌患者、結腸直腸腺癌、白血病患者、膀胱尿路上皮癌患者、子宮内膜癌患者、胸腺上皮性腫瘍患者、非小細胞肺癌患者、肉腫患者、卵巣癌患者および前立腺癌患者を含む、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年7月19日に出願された米国仮特許出願第63/223,114号および2021年4月29日に出願されたイスラエル国特許出願第282814号の優先権を主張し、その内容のすべてを本参照により本願に援用する。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願の出願と同時に提出された、2022年4月26日付作成の「91651SequenceListing.txt」と題された9,217バイトのASCIIファイルを本参照により本願に援用する。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、再発性変異ネオペプチド、より詳細にはRas誘導変異ネオペプチド、に結合するT細胞受容体の同定に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫療法は、転移性癌の長期腫瘍退縮を誘導するその優れた能力故に、近年の癌研究に新しい希望をもたらした。この特徴は、チェックポイント遮断およびTILの養子細胞移植(ACT)の両方を含む免疫療法モダリティ間で共通する。上記2種の治療の最終共通経路は、細胞傷害性Tリンパ球による腫瘍抗原の特異的認識であると信じられている。具体的には、シーケンシング技術の発展に伴い、免疫療法の成功例の徹底解剖から、抗腫瘍免疫応答の仲介における、ネオアンチゲンと呼ばれる変異誘導抗原の重要な役割が明らかとなった。
【0005】
ネオアンチゲンとは、細胞表面ペプチド/ヒト白血球抗原(HLA)複合体であって、ペプチド成分、即ち、ネオペプチドが、変異タンパク質の変化した分解産物であるものである。患部組織において発現が制限され、免疫寛容によって抑制されないネオアンチゲンは、TCRエンゲージメントの際に特異的な抗腫瘍反応性を惹起することがあり、故に、治療用標的として理想的である。
【0006】
治療した患者から同定されたネオアンチゲンのほとんどが、特有な、非再発性の変異から誘導されたものであり、それ故に、効果的であっても、個別の患者を超えて一般化することはできない。ホットスポットのネオアンチゲン、即ち、癌患者の大きな群に出現するネオアンチゲンは、再発性発癌性変異と一般的なHLAアレルとの交差点においてのみ明確に形成される。このようなネオアンチゲンは、2つの主たる理由により強く求められている。第1に、ホットスポットネオアンチゲンは、「既成の」細胞治療、ワクチンおよび患者スクリーニング手法への道を形成し得る。立証済みの変異/HLA組み合わせを発現する腫瘍細胞には、免疫療法を施すことができるはずである。先験的な免疫認識が不在であっても、他の患者のみならず、健常なドナーまでもから予め決定したTCRは、無視されたホットスポットネオアンチゲンに対して自家性T細胞を再度向かわせるために使用することができる。加えて、治療前には検出不可能であったネオアンチゲン特異的T細胞は、変異に基づくワクチンに続いて有意に増殖することが示されている。第2に、ホットスポットネオアンチゲンは、治療用標的として個体のネオアンチゲンよりも潜在的に優れている。これは、ヘテロ接合性の腫瘍の副クローン性変異に対する免疫療法が、免疫逃避の道を提供する可能性がある一方、クローン性発癌性変異から誘導したホットスポットネオアンチゲンは、腫瘍内でより均一に存在することが期待されている。
【0007】
過去数年で見いだされたホットスポットネオアンチゲンは、主たる癌遺伝子(例えば、BRAF、NRASおよびp53)を元とするものである。しかしながら、このようなネオアンチゲンの臨床的有用性は、新たに発見されたHLA-C*08:02/KRAS.G12Dホットスポットネオアンチゲンに対する自家性TILを用いたACT治療の、転移性大腸癌の患者における成功を通じて直接示された。これら最近の成功例は、ホットスポットネオアンチゲンを発見するための探求の再興を促進した。p53を中止とするスクリーニングは、誘導したネオアンチゲンに対する本来のTIL反応性をスクリーニングした患者の8%で明らかとし、その全症例においてホットスポットネオアンチゲンが提示されていた。他の試みは、患者または健常ドナーの末梢血から特定のホットスポットを標的とするT細胞を同定して、HLAクラスIおよびHLAクラスIIの両方に対する公知のKRASおよび他の癌遺伝子誘導ネオアンチゲンのレパートリーを拡大することに集中していた。
【0008】
今日まで、ネオアンチゲンを発見する試みはほとんど全てがT細胞を中心とするものであった。これらの方法において、候補ネオペプチドは、パルスされた合成ペプチドとして、またはミニジーンの過剰発現を介した、抗原提示細胞(APC)によって人工的に発現されるものである。APCは次にT細胞、最も一般的にはTIL、と共インキュベートされ、ネオアンチゲンの間接的な道程のためにそれらの応答プロファイルが解釈される。さらなる特徴付けおよび立証はin silicoの結合予測に大きく依存し、そのため同定されたネオアンチゲンは、結合すると予測され、且つ試験した患者で免疫原性である者に限定される。加えて、腫瘍の進化において提示されたレパートリーから編集した無関係のネオアンチゲンは、一度でも免疫原性であるかぎり、いずれにせよ同定される。
【0009】
RASタンパク質の因果的な役割は、全ヒト癌の三分の一に見られる活性化変異によって長い間認識されていた。3種の主たるアイソフォームであるKRAS、NRASおよびHRASには、同一の86-アミノ酸長のN末端が共通する。この同一な伸長鎖内には3種の変異ホットスポットが、12位、13位および61位に認識された。汎癌であるKRASは最も高度に変異したRASアイソフォームである(RAS変異の85%)。しかしながら、メラノーマにおいては、今日までに最も成功した免疫療法標的であるNRAS変異が優性である。特にNRAS.61は、メラノーマにおいて2番目に高度に変異した部位であり、患者の20%にも出願する。NRAS変異体メラノーマは、非NRAS変異体メラノーマと比べて、より少ない結果を示す。RAS標的療法を開発する複数の試みが未だ効果的ではなく、特にNRAS変異体メラノーマに対する承認済み療法、は得られていない。
【0010】
背景技術には以下が含まれる。
国際公開第2020/234875号号、国際公開第2020/037302号、国際公開第2019/075112号、国際公開第2020/180648号、国際公開第2019/226939号、国際公開第2019/168984号、国際公開第2019/226941号、国際公開第2019/133853号、国際公開第2019/036688号、国際公開第2018/227030号、国際公開第2019/050994号、国際公開第2018/208856号、国際公開第2018/195357号、国際公開第2018/098362号、国際公開第2019/104203および国際公開第2017/106638号。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一実施形態によると、対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、集団内のT細胞の少なくとも10%が、TCRのα鎖に配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有し、投与によって対象の癌を治療する、方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態によると、対象の癌を治療する方法であって、
(a)対象のHLAプロファイルを確かめ、
(b)対象によるNRAS.Q61KまたはNRAS.Q61Rの発現を決定し、そして
(c)対象がHLA-A*01:01/NRAS.Q61KまたはHLA-A*01:01/NRAS.Q61Rであると同定されたとき、治療有効量の、TCRを発現するT細胞の集団を対象に投与し、TCRのα鎖が配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つTCRのβ鎖が配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有することを含み、投与によって対象の癌を治療する、方法が提供される。
【0013】
対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、集団内のT細胞が、TCRのα鎖に配列番号2に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号17に示すCDR3アミノ酸配列を有し、投与によって対象の癌を治療する、方法が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によると、対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、集団内のT細胞が、TCRのα鎖に配列番号16に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号3に示すCDR3アミノ酸配列を有し、投与によって対象の癌を治療する、方法が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によると、T細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝的に修飾されたT細胞の単離集団であって、TCRのα鎖が配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つTCRのβ鎖が配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団が提供される。
【0016】
本発明の一実施形態によると、T細胞の単離集団であって、集団内のT細胞の少なくとも10%がTCRのα鎖に配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つTCRのβ鎖に配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態によると、T細胞の単離集団であって、集団内のT細胞がTCRのα鎖に配列番号2に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つTCRのβ鎖に配列番号17に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団が提供される。
【0018】
本発明の一実施形態によると、T細胞の単離集団であって、集団内のT細胞がTCRのα鎖に配列番号16に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つTCRのβ鎖に配列番号3に示すCDR3アミノ酸配列を有する、集団が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態によると、癌免疫療法の標的となり得る再発性HLA提示ネオアンチゲンを選択する方法であって、
(a)複数の癌患者の腫瘍細胞内の個別のHLAアレルにおける癌関連変異タンパク質の発生頻度を分析する工程と、
(b)癌関連変異タンパク質から誘導された長さが8~14アミノ酸のペプチドの、個別のHLAアレルに対する結合親和性を決定する工程であって、ペプチドが野性型タンパク質と比べて変異した部分を含み、
第2の所定レベルを超える発生頻度を有するHLAアレルに対して、第1の所定レベルを超える親和性をもって結合する候補ペプチドを、癌免疫療法の標的となり得る候補HLA提示ネオアンチゲンとして選択し、
(c)候補ペプチドが、抗原提示細胞内のin vitro発現系においてHLAアレルによって提示されたことを立証する工程と、
(d)立証されたペプチドが、腫瘍細胞内のHLAアレルによって提示されていることを確認する工程と
を含む、方法が提供される。
【0020】
本発明の実施形態によると、集団内のT細胞の少なくとも10%は、配列番号2に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号17に示すCDR3アミノ酸配列を有する。
【0021】
本発明の実施形態によると、集団内のT細胞の少なくとも10%は、配列番号16に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号3に示すCDR3アミノ酸配列を有する。
【0022】
本発明の実施形態によると、対象内のHLA-A*01:01アレルとの複合体において、TCRは、配列番号1または配列番号34に示す配列を有するペプチドと結合する。
【0023】
本発明の実施形態によると、T細胞は対象にとって自家性である。
【0024】
本発明の実施形態によると、T細胞は対象にとって非自家性である。
【0025】
本発明の実施形態によると、T細胞は、T細胞受容体を発現するように遺伝的に修飾されたものである。
【0026】
本発明の実施形態によると、T細胞はCD8+ T細胞を含む。
【0027】
本発明の実施形態によると、癌は、メラノーマ、大腸癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、白血病、膀胱癌、肺癌、卵巣癌、乳癌および前立腺癌からなる群より選ばれる。
【0028】
本発明の実施形態によると、癌はメラノーマである。
【0029】
本発明の実施形態によると、方法は、対象をチェックポイント阻害薬で治療することをさらに含む。
【0030】
本発明の実施形態によると、T細胞の単離集団は、TCRを発現するように遺伝的に修飾されている。
【0031】
本発明の実施形態によると、T細胞はCD8+ T細胞である。
【0032】
本発明の実施形態によると、T細胞の単離集団は癌の治療用である。
【0033】
本発明の実施形態によると、決定は、予測アルゴリズムを用いて結合親和性を予測することを含む。
【0034】
本発明の実施形態によると、予測アルゴリズムはNetMHCpanを含む。
【0035】
本発明の実施形態によると、確認を、標的化質量分析を用いて実施する。
【0036】
本発明の実施形態によると、HLAはHLAクラスIを含む。
【0037】
本発明の実施形態によると、複数の患者は、少なくとも1種の癌療法に耐性である患者を含む。
【0038】
本発明の実施形態によると、工程(c)の前に、癌関連変異タンパク質を内包する腫瘍細胞の割合分析する工程をさらに含み、第2の所定レベルを超える発生頻度を有するHLAアレルに対して、第1の所定レベルを超える親和性をもって結合し、且つ所定レベルを超える割合の腫瘍細胞に内包された候補ペプチドを、癌免疫療法の標的となり得る候補HLA提示ネオアンチゲンとして選択する。
【0039】
本発明の実施形態によると、in vitro発現系は、25~27アミノ酸または45~47アミノ酸の伸長ペプチドを発現することを含み、伸長ペプチドは癌関連変異タンパク質のアミノ酸配列を含む。
【0040】
本発明の実施形態によると、抗原提示細胞はB細胞を含む。
【0041】
本発明の実施形態によると、癌関連変異タンパク質はRASファミリーのメンバーである。
【0042】
本発明の実施形態によると、メンバーは、NRAS、KRASおよびHRASからなる群より選ばれる。
【0043】
本発明の実施形態によると、メンバーはNRASである。
【0044】
本発明の実施形態によると、癌関連変異タンパク質はRAFキナーゼである。
【0045】
本発明の実施形態によると、RAFキナーゼはB-RAFである。
【0046】
本発明の実施形態によると、癌患者は、メラノーマ患者、甲状腺癌患者、褐色細胞腫患者、セミノーマ患者、胃底腺型胃癌患者、胆管癌患者、膵臓腺癌患者、結腸直腸腺癌、白血病患者、膀胱尿路上皮癌患者、子宮内膜癌患者、胸腺上皮性腫瘍患者、非小細胞肺癌患者、肉腫患者、卵巣癌患者および前立腺癌患者を含む。
【0047】
特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本願に記載のものと同様の又は均等な方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含め、本願特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本願に記載する。以下、特に図面に詳細に言及するが、示される詳細は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の例証的説明を目的とすることを強調する。この点に関して、図面を用いて説明することで、当業者には、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1のA~C: 有効な、ネオアンチゲン特異的TCRのレパートリー。健常ドナーのT細胞に対して、in vitroで転写したTCRα鎖およびβ鎖のエレクトロポレーションを実施した。(A)A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)-テトラマーで染色した細胞のフローサイトメトリープロット。陰性対照-mRNA無しでエレクトロポレーションした細胞(‘Electroporated Nothing’,EN)(B-C)ペプチドでパルスしたIHW01161細胞と一晩共インキュベートしたエレクトロポレーション済T細胞(B)IFNγ ELISA、10μMのペプチド、多重比較用テューキー補正付きの一元配置ANOVA、エラーバーは生物学的な3回の繰り返しに対するSEMを表す。(C)4-1BBペプチド滴定アッセイ、多重比較用シダック補正付きの二元配置ANOVA。
図2図2のA~B: ネオアンチゲン特異的TCRはネオアンチゲンを内在性発現する腫瘍細胞に対して反応性および細胞傷害能を伝達する。In vitroで転写したTCRα鎖およびβ鎖をエレクトロポレーションし、腫瘍誘導細胞系と共インキュベートした健常ドナー(D3)のT細胞。T細胞陰性対照:mRNA無しでエレクトロポレーションしたドナー細胞(‘Electroporated Nothing’,EN)。(A)一晩の1:1の共インキュベート後に活性化マーカー4-1BBを発現するT細胞のパーセント、108T-A*01:01+/NRAS野性型、MM150414-A*01:01-/NRAS.Q61K、多重比較用シダック補正付きの二元配置ANOVA。(B)開裂されたカスパーゼ3殺傷アッセイ:3:1のエフェクター対標的比で3-時間共インキュベートした後に開裂されたカスパーゼ3を発現する腫瘍細胞のパーセント。多重比較用テューキー補正付きの一元配置ANOVA。エラーバーは、全体を通じて生物学的な3回の繰り返しに対するSEMを表す。
図3図3のA~F: 17TILレパートリーの検査は、N135.1:N17.3.2、N17.5、N17.6およびN17.7に類似した4つのTCRのクラスターを明らかにする。このリストの中で最も頻繁に存在するTCRであるN17.3.2およびN17.5は、効力があり、ネオアンチゲン特異的であると立証された。(A)類似クラスターのα鎖およびβ鎖の両方が、テトラマー+のサブ集団において富化されている。α/βペアリングは単一細胞TCRシーケンシングによって確認された。バルクTCRシーケンシングの複製#1からの代表的データ。(B)TCRの可変領域の配列比較。4アミノ酸までのレーベンシュタイン距離およびV/J遺伝子の類似性に着目されたい。(C)TCRを、そのα鎖(X軸)およびβ鎖(Y軸)の発生確率に応じて、プロットした。N135.1類似クラスターを丸で囲った。NH1(NRASハイブリッドTCR #1)は類似クラスター内で最も確率の高いα/βの組み合わせであり、それはN135.1とN17.5との間のチェーンスワッピング(chain swapping)によって作製される。NH2はNH1の相対物であり、NA17.5とNB135.1の混合物である。(D)NH1を作製する、NA135.1とNB17.5を組み合わせるチェーンスワッピングの模式図。(E-F)NH1およびNH2を発現させるために、ドナー(D3)T細胞に対して、in vitroで転写したTCRのα鎖およびβ鎖でエレクトロポレーションを行った。T細胞陰性対照:mRNA無しでエレクトロポレーションしたドナー細胞(‘Electroporated Nothing’,EN)。(E)CD8およびテトラマー染色細胞のフローサイトメトリー解析。(F)野性型または変異ペプチドでパルスされたIHW01161提示細胞と1:1で一晩共インキュベートした後のIFNg ELISA。ペプチドなパルス無し(DMSOのみ)のIHW01161が陰性対照となる。エラーバーは生物学的な3回の繰り返しに対するSEMを表し、多重比較用テューキー補正付きの一元配置ANOVA。
図4図4: 17TのHLAペプチドミクスによって同定されたそのもののILDTAGKEEY(配列番号1)のタンデム質量スペクトル。方法:FTMS;HCD,スコア-91.55、m/z-569.79.
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、再発性変異ネオペプチドに対して結合するT細胞受容体に関する。
【0051】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途は、以下の発明を実施するための形態に示される詳細又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、又はさまざまな方法で実施若しくは実現することが可能である。
【0052】
免疫療法は、特にメラノーマに対して示されているように、転移性癌に対する治療可能性を有する。抗腫瘍効果は、多くの場合、ネオアンチゲン、即ち、HLA提示変異含有ペプチド、のT細胞認識を媒介とする。わずかな例外を除き、反応者(responders)から同定されたネオアンチゲンは個人的な変異に基づくものであり、よって、患者個人を超えて一般化することができない。定義上、「再発性ネオアンチゲン」は、の定義は、患者の群間で共通するものである。自然界でこれらは、一般的なドライバー変異から誘導され、一般的なHLAアレル上に存在する抗原である。加えて、ドライバー変異のクローン性故に、腫瘍および転移部位にわたって均一に存在すると予測される。故に再発性ネオアンチゲンは、効果的で腫瘍特異的な「既成」の療法の開発に役立ち得ることから、大きな臨床的価値があるべきである。
【0053】
過去には、本発明者らは、再発性変異の存在と患者HLAアロタイプの療法を考慮するバイオインフォマティクス解析と、結合予測とを組み合わせた、再発性ネオアンチゲンの同定のための新規な手法を明らかにした(国際公開第2020/234875号)。この手法を用いて、彼らは、HLA-A*01:01/NRAS.Q61Kホットスポットネオアンチゲンが、数千人の患者に関連するロバストな免疫原性標的であると予測した。
【0054】
今回、本発明者らは、この手法を合理化する方法を見出し、in vivoでの実証の前に潜在的候補ネオアンチゲンの数を更に絞り込むためにin vitroシステムを使用する。この工程は、上述したバイオインフォマティクス解析と結合予測解析に続き実施され、より迅速でより効率的な同定工程を可能にする。In vivo工程は高額な試薬(例:質量スペクトル解析のために腫瘍サンプルにスパイクされたアイソトープ標識候補)を使用することもあるため、立証工程の前に潜在的候補のリストを狭めることは、方法の効率に大きな影響を与える。
【0055】
よって、本発明の第1の態様によると、癌免疫療法の標的となり得る再発性HLA提示ネオアンチゲンを選択する方法であって、
(a)複数の癌患者の腫瘍細胞内の個別のHLAアレルにおける癌関連変異タンパク質の発生頻度を分析する工程と、
(b)癌関連変異タンパク質から誘導された長さが8~14アミノ酸のペプチドの、個別のHLAアレルに対する結合親和性を決定する工程であって、ペプチドが野性型タンパク質と比べて変異した部分を含み、
第2の所定レベルを超える発生頻度を有するHLAアレルに対して、第1の所定レベルを超える親和性をもって結合する候補ペプチドを、癌免疫療法の標的となり得る候補HLA提示ネオアンチゲンとして選択し、
(c)候補ペプチドが、抗原提示細胞内のin vitro発現系においてHLAアレルによって提示されたことを立証する工程と、
(d)立証されたペプチドが、腫瘍細胞内の前記HLAアレルによって提示されていることを確認する工程と
を含む、方法が提供される。
【0056】
本明細書で使用する「ネオアンチゲン」という用語は、例えば、対応する野生型親抗原とは、腫瘍細胞における変異又は腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾により異なるものにする、少なくとも1つの変更を有するエピトープである。ネオアンチゲンは、ポリペプチド配列又はヌクレオチド配列を含み得る。変異は、フレームシフト若しくは非フレームシフト型のインデル(インデル)、ミスセンス若しくはナンセンス置換、スプライス部位の変更、ゲノム再編成若しくは遺伝子融合、又はネオORFを生じる、任意のゲノム若しくは発現における変更を含み得る。変異はまた、スプライスバリアントを含み得る。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾には、異常なリン酸化が含まれ得る。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾はまた、プロテアソームにより作製されるスプライシングされた抗原を含み得る。
【0057】
一実施形態において、ネオアンチゲンは、クラスI又はIIのMHC受容体と結合して三量複合体を形成する短いペプチドであり、この三量複合体は、適当な親和性でMHC/ペプチド複合体を結合するのに適したT細胞受容体を担持しているT細胞によって認識され得る。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、典型的には約8~14アミノ酸長である。MHCクラスII分子に結合するT細胞エピトープは、典型的には約12~30アミノ酸長である。MHCクラスII分子に結合するペプチドの場合、同じペプチドと、対応するT細胞エピトープとは共通のコア部分を共有し得るが、それぞれ、コア配列のアミノ末端の上流及びそのカルボキシ末端の下流の隣接配列の長さが異なることに起因して全長が異なり得る。T細胞エピトープは、免疫応答を引き起こす場合、抗原として分類され得る。
【0058】
ネオアンチゲンが誘導されるタンパク質は癌-関連修飾を含む。例示的な修飾としては、癌関連変異および癌関連リン酸化パターンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「変異」という用語は、参照と比べ際の核酸配列の変化または差異(ヌクレオチド置換、付加、又は欠失)である。「体性変異」は、胚細胞(精子および卵子)以外の体の任意の細胞で起こり得るため、子供に遺伝することはない。これら変化は、(常にではないが)癌または他の疾患を起こし得る。好ましくは、変異は非同義変異である。「非同義変異」という用語は、翻訳産物中のアミノ酸置換等のアミノ酸変化をもたらすことのない変異,好ましくはヌクレオチド置換を示す。
【0060】
本発明によると、「変異」という用語には、点変異、インデル、融合、クロモスリプシスおよびRNA編集が含まれる。
【0061】
特定の実施形態によると、変異は点変異、即ち、単一アミノ酸置換である。
【0062】
本発明によると、「インデル」という用語は、挿入と欠失の共存およびヌクレオチドの純増加または純損失をもたらす変異と定義される特別な変異クラスを表す。ゲノムのコード領域においては、インデルの長さが3の倍数でない限り、これらはフレームシフト変異を産生する。インデルは点変異と比較することができ、インデルが配列に対してヌクレオチドを挿入および欠失させるのに対して、点変異は1つのヌクレオチドを置き換える置換を形成する。一実施形態において、インデルはフレームシフト欠失変異である。他の実施形態において、インデルはフレームシフト挿入変異である。
【0063】
融合は、2つの以前は分離した遺伝子から形成されたハイブリッド遺伝子を作製することができる。これは転移、中間部欠損または染色体逆位の結果として生じ得る。多くの場合、融合遺伝子は癌遺伝子である。発癌性融合遺伝子は、2つの融合パートナーとは異なるまたは新しい機能を有する遺伝子産物につながる場合もある。代わりに、原癌遺伝子を強力なプロモーターと融合し、上流の融合パートナーの強力なプロモーターによって生じるアップレギュレーションによって発癌性機能が機能する用に設定する。発癌性融合転写産物は、トランススプライシングまたはリードスルー事象によって発生することもある。
【0064】
本発明によると、「クロモスリプシス」という用語は、単一の破棄的事象によってゲノムの特定の領域が破砕され、その後、縫い合わされる遺伝的現象を意味する。
【0065】
本発明によると、「RNA編集」または「RNAの編集」という用語は、基礎的構造の化学的変化を通じてRNA分子内の情報が変更される分子過程を意味する。RNAの編集には、シチジン(C)からウリジン(U)およびアデノシン(A)からイノシン(I)への脱アミノ化等のヌクレオシド修飾のみならず、非鋳型ヌクレオチド付加および挿入が含まれる。mRNAのRNA編集は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を効果的に変更するため、それはゲノムDNA配列から予測されるものとは異なる。
【0066】
好ましくは、変異は非同義変異であり、好ましくは、腫瘍または癌細胞で発現されるタンパク質の非同義変異である。
【0067】
特定の実施形態において、癌関連修飾パターンを発現するタンパク質は、メラノーマ細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞または頭頸部扁平上皮癌細胞によって発現される。
【0068】
好ましくは、癌関連修飾パターンを発現するタンパク質は、メラノーマ細胞によって発現される。
【0069】
好ましくは、癌関連修飾パターンを発現するタンパク質は、ヒトタンパク質である。
【0070】
癌関連修飾パターンを発現し得るタンパク質の例としては、RASファミリーのメンバー、例えば、神経芽細胞腫RASウイルス(V-Ras)癌遺伝子ホモログ(NRAS;UniProtKB-P01111)、Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(KRAS;UniProtKB-P01116)およびHarveyラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(HRAS,UniProtKB-P01112)、が挙げられる。
【0071】
具体的に想定されるNRASバリアントとしては、Q61K、Q61R、Q61LおよびQ61Hが挙げられる。
【0072】
癌関連の変異したタンパク質の他の例としては、RAFキナーゼ、例えば、B-RAF UniProtKB-P15056が挙げられる。
【0073】
具体的なB-RAFバリアントとしては、V600E、V600M、G466E、H725Y、K601EおよびV600Gが挙げられる。
【0074】
他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
カリクレイン4、パピローマウイルス結合因子(PBF)、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、ウィルムス腫瘍1(WT1)、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(HSDL1)、メソテリン、癌精巣抗原(NY-ESO-1)、癌胎児性抗原(CEA)、p53、ヒト上皮成長因子受容体2/神経受容体チロシンキナーゼ(Her2/Neu)、癌腫関連上皮細胞接着分子(EpCAM)、卵巣および子宮抗原(CA125)、葉酸受容体a、精子タンパク質17、腫瘍関連差別的発現遺伝子-12(TADG-12)、ムチン-16(MUC-16)、L1細胞接着分子(L1CAM)、マンナン-MUC-1、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K-MEL)、北九州肺癌抗原-1(KK-LC-1)、ヒト癌/精巣抗原(KM-HN-1)、癌精巣抗原(LAGE-1)、メラノーマ抗原-A1(MAGE-A1)、精子表面透明帯結合タンパク質(Sp17)、滑膜肉腫 Xブレークポイント4(SSX-4)、一過性軸索糖タンパク質-1(TAG-1)、一過性軸索糖タンパク質-2(TAG-2)、Enabledホモログ(ENAH)、マンモグロブリンA、NY-BR-1、乳癌抗原、(BAGE-1)、Bメラノーマ抗原、メラノーマ抗原-A1(MAGE-A1)、メラノーマ抗原-A2(MAGE-A2)、ムチンk、滑膜肉腫 Xブレークポイント(SSX-2)、タキソール耐性関連遺伝子3(TRAG-3)、トリ骨髄細胞腫ウイルス癌遺伝子(c-myc)、サイクリンB1、ムチン1(MUC1)、p62、サバイビン、リンパ球共通抗原(CD45)、Dickkopf WNTシグナル伝達経路阻害因子1(DKK1)、テロメラーゼ、Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(K-ras),G250、腸管カルボキシエステラーゼ、アルファフェトタンパク質、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、カスパーゼ5(CASP-5)、チトクロームCオキシダーゼアセンブリー因子1ホモログ(COA-1)、O結合(3-N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼ(OGT)、骨肉腫増幅9、小胞体レクチン(OS-9)、トランスフォーミング増殖因子ベータ受容体2(TGF-ベータRII)、マウス白血病糖タンパク質70(gp70)、カルシトニン関連ポリペプチドアルファ(CALCA)、プログラム細胞死1リガンド1(CD274)、マウス二重微小染色体2ホモログ(mdm-2)、アルファ-アクチン4、伸長因子2、マリック酵素1(ME1)、核転写因子YサブユニットC(NFYC)、G抗原1,3(GAGE-1,3)、メラノーマ抗原-A6(MAGE-A6)、癌精巣抗原XAGE-1b、前立腺の6回膜貫通型上皮抗原1(STEAP1)、PAP、前立腺特異的抗原(PSA)、線維芽細胞増殖因子5(FGF5)、ヒートショックタンパク質hsp70-2、メラノーマ抗原-A9(MAGE-A9)、Arg特異的ADPリボシルトランスフェラーゼファミリーC(ARTC1)、B-Raf原癌遺伝子(B-RAF)、セリン/スレオニンキナーゼ、ベータ-カテニン、細胞分裂サイクル27ホモログ(Cdc27)、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、サイクリン依存性キナーゼ12(CDK12)、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A(CDKN2A)、カゼインキナーゼ1アルファ1(CSNK1A1)、フィブロネクチン1(FN1)、成長停止特異的タンパク質7(GAS7),糖タンパク質非転移性メラノーマタンパク質B(GPNMB)、HAUSオーグミン様複合体サブユニット3(HAUS3)、LDLR-フコシルトランスフェラーゼ、T細胞によって認識されるメラノーマ抗原2(MART2)、ミオスタチン(MSTN)、メラノーマ関連抗原(変異)1(MUM-1-2-3)、ポリ(A)ポリメラーゼガンマ(ネオPAP)、ミオシンクラスI、タンパク質ホスファターゼ1制御サブユニット3B(PPP1R3B)、ペルオキシレドキシン5(PRDXS)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼカッパ(PTPRK)、トランスフォーミングタンパク質N-Ras(N-ras)、網膜芽細胞腫関連因子600(RBAF600)、サーチュイン2(SIRT2)、SNRPD1、トリオースリン酸イソメラーゼ、眼白皮症1型タンパク質(OA1)、メンバーRAS癌遺伝子ファミリー(RAB38)、チロシナーゼ関連タンパク質1-2(TRP-1-2)、メラノーマ抗原Gp75(gp75)、チロシナーゼ、メランA(MART-1),糖タンパク質100メラノーマ抗原(gp100)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV遺伝子(GnTVf)、リンパ球抗原6複合体遺伝子座K(LY6K)、メラノーマ抗原-A10(MAGE-A10)、メラノーマ抗原-A12(MAGE-A12)、メラノーマ抗原-C2(MAGE-C2)、メラノーマ抗原NA88-A、タキソール耐性関連タンパク質3(TRAG-3),BDZ結合キナーゼ(pbk)、カスパーゼ8(CASP-8)、肉腫抗原1(SAGE)、ブレークポイントクラスター領域-Abelson癌遺伝子(BCR-ABL)、白血病の融合タンパク質dek-can、伸長因子Tu GTP結合ドメイン含有2(EFTUD2)、ETSバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病融合タンパク質(ETV6-AML1)、FMS様チロシンキナーゼ3内部タンデム重複(FLT3-ITD)、サイクリンA1、フィブロネクチンIII型ドメイン含有3B(FDNC3B)、前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容体アルファ融合タンパク質(pml-RARアルファ)、メラノーマ抗原-C1(MAGE-C1)、膜タンパク質アルタネイティブスプライシングアイソフォーム(D393-CD20)、メラノーマ抗原-A4(MAGE-A4)又はメラノーマ抗原A3(MAGE-A3)。
【0075】
癌関連修飾パターンを発現し得るタンパク質の追加の例も知られており、例えば、以下の文献に記載されている。Reuschenbach et al., Cancer Immunol. Immunother. 58:1535-1544 (2009)、Parmiani et al., J. Nat. Cancer Inst. 94:805-818 (2002)、Zarour et al., Cancer Medicine. (2003)、Bright et al., Hum. Vaccin. Immunother. 10:3297-3305 (2014)、Wurz et al., Ther. Adv. Med. Oncol. 8:4-31 (2016)、Criscitiello, Breast Care 7:262-266 (2012)、Chester et al., J. Immunother. Cancer 3:7 (2015)、Li et al., Mol. Med. Report 1:589-594 (2008)、Liu et al., J. Hematol. Oncol. 3:7 (2010)、Bertino et al., Biomed. Res. Int. 731469 (2015)、およびSuri et al., World J. Gastrointest. Oncol. 7:492-502 (2015)。
【0076】
一実施形態において変異は、癌特異的体性変異である。
【0077】
配列変化を検出するための方法は当業界で広く知られており、DNAシーケンシング、電気泳動、酵素に基づくミスマッチ検出アッセイ、並びにPCR、RT-PCR、RNase保護、in-situハイブリダイゼーション、プライマー伸長法、サザンブロット、ノーザンブロットおよびドットブロット解析等のハイブリダイゼーションアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
特定遺伝子の配列変化は、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動的手法、並びにELISAと、ウエスタンブロット解析と、免疫組織化学等の免疫検出アッセイによって、タンパク質レベルでも決定することができる。
【0079】
一実施形態において、癌特異的体性変異の同定または配列の差異を同定するための工程は、次世代シーケンシング(NGS)の使用を含む。
【0080】
一実施形態において、癌特異的体性変異の同定または配列の差異を同定するための工程は、腫瘍検体のゲノムDNAおよび/またはRNAのシーケンシングを含む。
【0081】
癌特異的体性変異または配列の差異を明らかにするために、腫瘍検体から得た配列情報を、好ましくは参照、例えば、核酸(患者または別の個人から得られる生殖細胞系細胞等の正常な非癌性細胞のDNAまたはRNA等)のシーケンシングで得られた配列情報と比較する。一実施形態において、正常ゲノム生殖細胞系DNAは末梢血単核球(PBMC)から得る。
【0082】
「ゲノム」という用語は、生物または細胞内の染色体の遺伝的情報の総量に関連する。
【0083】
「エキソーム」という用語は、発現された遺伝子のコード部分であるエキソンで形成された生物のゲノムの一部分を意味する。エキソームはタンパク質および他の機能的遺伝子産物の合成に用いる遺伝的青写真を提供する。これはゲノムの最も機能的に重要な部分であり、それ故に、生物の表現型に最も貢献する可能性が高い。ヒトゲノムのエキソームは、総ゲノムに対して1.5%を占めると推定されている(Ng, P C et al., PLoS Gen., 4(8): 1-15, 2008)。
【0084】
「トランスクリプトーム」という用語は、1つの細胞または細胞の集団によって産生される、mRNA、rRNA、tRNA、および他の非コードRNAを含む、一群の全RNA分子に関連する。本発明の文脈において、トランスクリプトームは、1つの細胞、細胞の集団、好ましくは癌細胞の集団、または特定の個体のある時点の全細胞によって産生される全RNA分子を意味する。
【0085】
本発明によると、「参照」は、腫瘍検体から本発明の方法によって得られた結果を相関させ。比較するために使用してもよい。典型的には、「参照」は、1以上の正常な検体、具体的には、患者、または1以上の異なる個体(好ましくは健康な個体、特に同種の個体)から得た癌疾患に罹患していない検体から得てもよい。「参照」は、十分に大きな数の正常検体を試験することで実験的に決定することもできる。
【0086】
本発明によると、変異を決定するために任意の適切なシーケンシング方法を使用することができ、次世代シーケンシング(NGS)技術が好ましい。将来的には、本方法のシーケンシング工程のスピードアップのために、NGS技術は第三世代シーケンシング方法によって置き換わるかもしれない。明確にすることを目的とすると、本発明の文脈において「次世代シーケンシング」または「NGS」という用語は、サンガー化学として知られる「従来」のシーケンシング方法に対して、全ゲノムを細かく分割して、並行して全ゲノムに沿って核酸テンプレートをランダムに読み取る、全ての新規なハイスループットシーケンシング技術を意味する。
【0087】
疾患特異的リン酸化パターンを同定するための方法は当業界で知られており、例としては、培養細胞中のアミノ酸の安定同位体標識(SILAC)、RRPA、およびホスホ特異的ウエスタンブロットが挙げられる。
【0088】
好ましい実施形態においては、HLAアレルはクラスI HLAアレルである。特定の実施形態においては、クラスI HLAアレルはHLA-AアレルまたはHLA-Bアレルである。好ましい実施形態においては、HLAアレルはクラスII HLAアレルである。クラスIおよびクラスII HLAアレルの配列は、IPD-EVIGT/HLAデータベースに見出すことができる。例示的なHLAアレルとしては、A*01:01、A*02:01、A*02:03、A*02:04、A*02:07、A*03:01、A*24:02、A*29:02、A*31:01、A*68:02、B*35:01、B*44:02、B*44:03、B*51:01、B*54:01またはB57:01が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、HLAアレルはHLA-A*01:01である。
【0089】
対象特異的HLAアレルまたは対象のHLA遺伝子型は、任意の公知の方法で決定してもよい。特定の実施形態において、HLA遺伝子型は国際公開第2015085147号として2015年6月11日に発行された国際特許出願番号PCT/US2014/068746号に記載の方法で決定する。まとめると、方法は、多型遺伝子のアレルバリアントを含む遺伝子参照セットに合わせたシーケンシングデータから抽出したリードのアライメントの作製を含んでもよい、多型遺伝子型を決定することと、アライメント内の各アレルバリアントに対して第1の事後確率または事後確率誘導スコアを決定することと、第1の事後確率または事後確率誘導スコアの最大値を示すアレルバリアントを第1のアレルバリアントとして同定することと、第1のアレルバリアントおよび1以上の他のアレルバリアントとアラインする1以上のオバーラップするリードを同定することと、1以上のアレルバリアントに対して、重みづけ係数を用いて、第2の事後確率または事後確率誘導スコアを決定することと、第2の事後確率または事後確率誘導スコアの最大値を示すアレルバリアントを第2のアレルバリアントとして同定し、第1および第2のアレルバリアントは各多型遺伝子の遺伝子型を定義することと、第1および第2のアレルバリアントに対するアウトプットを提供すること、とを含む。
【0090】
個別のHLAアレルの文脈において癌関連変異タンパク質は、好ましくは所定数の癌患者において高頻度のもの(例:少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000またはそれ以上)を選択する
【0091】
癌患者群は同じ癌型(メラノーマ)を患うもの、または種々の異なる癌型を患う汎癌群の一部から選択してもよい。
【0092】
癌患者群には、メラノーマ患者、甲状腺癌患者、褐色細胞腫患者、セミノーマ患者、胃底腺型胃癌患者、胆管癌患者、膵臓腺癌患者、結腸直腸腺癌、白血病患者、膀胱尿路上皮癌患者、子宮内膜癌患者、胸腺上皮性腫瘍患者、非小細胞肺癌患者、肉腫患者、卵巣癌患者および前立腺癌患者、または上記癌患者が含まれてもよい。
【0093】
一実施形態において、癌患者群はメラノーマ癌患者のみを含む。
【0094】
他の実施形態において、癌患者群は、特定の療法に耐性であることが判明したばかりのものを含む。
【0095】
群内でHLAステータスが高頻度を有する、および/または群内で特定の変異が高頻度で存在することが望ましい。好ましくは、HLAステータス頻度は高く(例:0.5%超、1%、2%、3%、4%、5%,6%、7%、8%、9%、10%)且つ群内で特定変異の頻度も高い(例:0.5%超、1%、2%、3%、4%、5%,6%、7%、8%、9%、10%)。
【0096】
特定の実施形態において、癌関連変異タンパク質を内包する腫瘍細胞の割合(即ち、クローン性)も、初期スクリーニング段階で考慮する。よって、第2の所定レベルを超える発生頻度を有するHLAアレルに対して第1の所定レベルを超える親和性で結合し、且つ第3の所定レベルを超える割合で腫瘍細胞に内包されている候補ペプチドを、癌免疫療法の標的となり得る候補HLA提示ネオアンチゲンとして選択する。
【0097】
一実施形態において、クローン性の基準はバリアントアレル頻度(VAF)である。
【0098】
一実施形態において、バリアントアレル頻度は、変異部位を網羅し且つ変異を含む、検出された配列(特にリード)の合計を、変異部位を網羅する全検出配列(特にリード)の合計で除したものである。一実施形態において、バリアントアレル頻度は、変異部位の変異したヌクレオチドの合計を変異部位で決定された全ヌクレオチドの合計で除したものである。一実施形態において、癌関連変異タンパク質を内包する腫瘍細胞の割合を確かめるためのスコアを確かめるために、修飾の関連するタンパク質の発現レベルのスコアを、修飾が関連するタンパク質中の修飾タンパク質の頻度のスコアと掛け合わせる。
【0099】
一般的に、バリアントアレル頻度の値は0~1であり得、ここでバリアントアレル頻度が0であることは、その位置に代わりのアレルを有する配列リードは無いことを示し、バリアントアレル頻度が1であることは、全ての配列リードがその位置に代わりのアレルを有することを示す。他の実施形態において、バリアントアレル頻度の他の範囲および/または値を使用することができる。
【0100】
よって、例えば、一実施形態において、腫瘍サンプルの平均VAFが0.1~0.55の間の場合、タンパク質の変異を考慮する。他の実施形態において、腫瘍サンプルの中央VAFが0.1~0.55の間の場合、タンパク質の変異を考慮する。
【0101】
一旦、HLAアレルと特定の変異タンパク質を選択したら、選択した癌関連変異タンパク質から誘導した8~14アミノ酸長のペプチド(選択した変異を含むもの)の選択したHLAアレルに対する結合親和性を分析する。
【0102】
ペプチドのHLAアレルに対する結合親和性を分析する方法は当業界で知られている。
【0103】
一実施形態において、結合親和性は、HLA結合のための予測アルゴリズムを用いて予測することができる。このような予測アルゴリズムとしては、NetMHC、NetMHCII、NetMHCpan、IEDB解析リソース(URL:immuneepitope(dot)org)、RankPep、PREDEP、SVMHC、Epi予測、HLA結合および他の方法(例:J Immunol Methods 2011; 374:1-4を参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない
【0104】
このような予測を用いて、所定量を超える親和性でHLAに結合する候補ネオアンチゲンのリストを作製することができる。特定の実施形態によると、%Rank≦0.5(NetMHCpanのデフォルトパラメーター)または異なる予測アルゴリズムを用いて対応するレベルの結合を示す候補ペプチドのみを選択する。別の実施形態によると、その結合%Rank≦2(sofNetMHCpanのデフォルトパラメーター)または異なる予測アルゴリズムを用いて対応するレベルと特徴づけられる候補ペプチドを選択する。
【0105】
HLAアレル頻度および/または変異の頻度が高ければ、上記レベルよりも結合親和性が低いこともある点を理解されたい。
【0106】
よって、3種のパラメーター、即ち、HLAアレルの頻度、変異の発生頻度、および結合親和性、の組み合わせであり、これらが候補ネオアンチゲンの選択を決定し、単一パラメーターのみに基づくものではないと理解されている。よって、上記パラメーターのいずれもについて所定量は固定値ではなく、むしろ流動的であり、他の2種のパラメーターのレベルに応じて変化させることができる。
【0107】
上述した工程を用いて候補ネオアンチゲンを決定する際には、潜在的候補をさらに絞り込むために、候補ネオアンチゲンをin vitroシステムで試験する。
【0108】
In vitroシステムは、典型的には、候補ネオアンチゲンとその同種HLAを発現するように遺伝的に修飾された抗原提示細胞を含む。
【0109】
抗原提示細胞(APC)とは、その細胞表面HLA(MHC)分子と共同してタンパク質抗原のペプチド断片を提示する細胞である。
【0110】
APCの例としては、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞およびB細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
特定の実施形態によると、APCは樹状細胞またはB細胞である。最も好ましくはB細胞である。
【0112】
一実施形態において、APCは不死化されている、即ち、形質転換細胞系(例えばエプスタインバールウイルス(EBV)形質転換B細胞)である。
【0113】
一実施形態において、APCは、候補ネオアンチゲンに結合すると予測された特定のHLAアレルを発現するように遺伝的に修飾されている。
【0114】
HLAを不足したB細胞(例:B721.221)は、システムが無関係のHLAから「クリーン」な状態になるように使用することができる。
【0115】
無関係のHLAアレルを発現する抗原提示細胞の内在性クラスIまたはクラスII遺伝子を欠損/不活化させる例示的な方法は、CRISPR-Cas9仲介ゲノム編集である。
【0116】
典型的には、25~27量体のミニジーンシステムおよび/または45~47量体のミニジーンシステムを用いて候補ペプチドを細胞内で発現させる。
【0117】
このようにして、同定された変異を取り囲む種々の長さの伸長ペプチドを細胞内で発現させる。発現の際に、細胞の内在性プロテアゾーム性システムが伸長ペプチドをより短いペプチドに消化し、HLAのコンテキストで細胞表面にネオアンチゲンが提示される。
【0118】
ミニジーンは、伸長したネオアンチゲンをコードする核酸分子を含む。上述したいずれかの実施形態においては、発現構築物はタンデムなミニジーンを含んでもよく、各ミニジーンはネオアンチゲンをコードする核酸分子を含む。例えば、タンデムなミニジーンは、2~約20のネオアンチゲン、または2~約10のネオアンチゲン、または2~約5のネオアンチゲンをコードする核酸分子を含んでもよい。
【0119】
In vitroシステムの使用は、ネオアンチゲンが内在性の量と比べて高レベルで発現されることを確実とするため、質量分析や他の同等の技術(薄層クロマトグラフィー、電気泳動、特にキャピラリー電気泳動、固相抽出(CSPE)、逆相高性能液体クロマトグラフィー、酸加水分解後の高速原子衝撃法(FAB)質量分析によるアミノ酸解析、さらにはMALDIおよびESI-Q-TOF質量分析が挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、HLAによって提示された特定のペプチドの同定が容易になる。
【0120】
特定の実施形態において、液体クロマトグラフィーおよびタンデム質量分析(LC-MS/MS)および/またはHPLCを用いて解析することもできる、例えば、本参照をもって本願に援用する、Kalaora et al., Oncotarget. 2016 Feb 2; 7(5): 5110-5117
を参照。
【0121】
同種HLAによって候補ネオアンチゲンが提示されたことが確認できたら、腫瘍細胞(例:新鮮腫瘍細胞、PDXまたは腫瘍細胞系)を用いて候補ペプチドとHLAとのペアを立証する。特定の実施形態によると、候補ペプチドとHLAとのペアは、適切なHLAステータスを有することがわかっている癌患者から誘導した腫瘍細胞を用いて、in vivoシステムで立証する。
【0122】
特定されたHLAによるネオアンチゲンの提示は、公知の方法を用いて腫瘍細胞内で立証される。例えば、腫瘍細胞からまたは腫瘍から免疫沈降させたHLA分子からペプチドを酸で溶出し、質量分析を用いて同定することができる。同定工程の間に、スパイクした重いペプチド(候補ネオアンチゲン)を対照となるシステムに導入してもよい。こうすることで、腫瘍サンプル内のネオアンチゲンの定量も可能になる。
【0123】
選択したネオアンチゲンの反応性を、次に後述するように求めることができる。
【0124】
一実施形態において、候補ペプチドを、APCの表面への提示が可能となる条件下で、APCにロードする。
【0125】
APCの表面に提示されるためには、APCの細胞膜を横断し、新規に合成されたHLAクラスIまたはII受容体にロードされなければならない。形成されたHLA-ペプチド複合体は、細胞膜へ移動され、そこではT細胞認識のためにすぐに利用可能である。
【0126】
一実施形態において、ペプチドを、APCを生存状態に維持する培地(例:RPMI)内のAPCと、12~48時間、12~24時間、6~48時間または8~48時間の間の時間にわたりインキュベートする。ロード工程の際のペプチドの濃度は、好ましくは10~50μMの間、より好ましくは10~30μMの間である。
【0127】
次に、CD4+またはCD8+ T細胞の活性化を決定することができる。特定のT細胞活性を検出するための方法には、T細胞の増殖、サイトカイン(例:リンホカイン、インターフェロンガンマ、TNFアルファ)の産生、または細胞溶解活性の発生の検出が挙げられる。CD4+ T細胞の場合、特定のT細胞活性を検出する好ましい方法は、T細胞増殖の検出である。CD8+ T細胞の場合、特定のT細胞活性を検出する好ましい方法は、細胞溶解活性の発生の検出である。
【0128】
特定の実施形態によると、抗原特異的エフェクター細胞によるIFN-ガンマの産生を測定することで求めることのできるCD8+ CTL応答を、双眼実体顕微鏡下でスポット形成単位(SFU)を計数することで定量化するELISPOTアッセイを実施することで、ペプチドの反応性を決定することができる(Rininsland et al., (2000) J Immunol Methods: 240(1-2):143-155)。このアッセイでは、マイクロタイターウエルのプラスチック製表面に抗原提示細胞(APC)を固定し、そこに種々のエフェクター:標的比でエフェクターT細胞を添加する。抗原提示細胞は好ましくはB細胞または樹状細胞である。抗原特異的エフェクター細胞によるAPCの結合は、エフェクター細胞によるサイトカイン(IFNガンマを含む)産生のトリガーとなる(Murali-Krishna et al., (1998) Adv Exp Med Biol.: 452:123-142)。一実施形態においては、対象特異的T細胞をELISPOTアッセイに用いる。TILから分泌される可溶性IFNγの量は、ELISAアッセイ(例:Biolegend)によって測定してもよい。
【0129】
ペプチドの反応性を検出するための別の方法は、CTL活性のための古典的なアッセイ、即ち、クロミウム放出アッセイ、によって細胞溶解を測定することで直接決定する方法(Walker et al., (1987) Nature: 328:345-348、Scheibenbogen et al., (2000) J Immunol Methods: 244(1-2):81-89)である。エフェクター細胞傷害Tリンパ球(CTL)は、クラスIMHC上に抗原性ペプチドを有する標的に結合し、標的がアポトーシスするようにシグナルを伝達する。CTLの添加前に標的が51クロミウムで標識されていると、上清に不出される51Crの量は殺傷された標的の数に比例する。抗原特異的溶解は、疾患または対照抗原を発現する標的細胞の溶解を患者エフェクター細胞の存在下または不存在下で比較することで計算し、通常、%特異的溶解として表される。パーセント特異的細胞傷害は、(特異的放出-突発的放出)/(最大放出-突発的放出)によって計算し陽性アッセイでは20%~85%となり得る。パーセント特異的細胞傷害は、通常、数種のエフェクター(CTL)対標的細胞比(E:T)で決定する。加えて、標準溶解アッセイは定性的であり、定量的結果を得るためには限定希釈解析(LDA)に依拠する必要があり、LDA頻度はCTL応答の真のレベルを過小評価する。CTLはそれぞれがinvivoで複数の標的を殺傷可能であるが、in vitroのこのアッセイは、検出可能な殺傷のために標的の数と同等またはそれ以上の複数のCTLを必要とする。一実施形態においてCTL応答は、適切な抗原-MHC複合体を発現する、放射線標識したHLA適合「標的細胞」を溶解するT細胞(エフェクター細胞)の能力をモニタリングする、クロミウム放出アッセイで測定する。
【0130】
本願で上述したように、本発明者らは以前に、HLA-A*01:01/NRAS.Q61Kホットスポットネオアンチゲンが、年間数千人の患者に適応するロバストな免疫原性標的であると予測していた(国際公開2020/234875号)。本発明者らは、今回はこのHLA提示ネオアンチゲンに対して高反応性のT細胞受容体を同定した。
【0131】
具体的には、このTCRは、ILDTAGKEEY(配列番号1)およびILDTAGREEY(配列番号34)ネオペプチドの療法を1nMという低濃度で認識し、適切な癌細胞系(例:メラノーマ細胞系および肺腺癌細胞系)との共インキュベーションによって4-1BBのアップレギュレーションを誘導することを示した。
【0132】
よって、本発明の第1の態様によると、対象の癌を治療する方法であって、対象に治療有効量のT細胞の集団を投与することを含み、集団内の前記T細胞の少なくとも10%が、TCRのα鎖に配列番号6に示すCDR3アミノ酸配列を有し、且つCDRのβ鎖に配列番号7に示すCDR3アミノ酸配列を有し、投与によって前記対象の癌を治療する、方法が提供される。
【0133】
癌の例としては、メラノーマ、大腸癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、白血病、膀胱癌、肺癌、卵巣癌、乳癌および前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
一実施形態において、癌は、癌遺伝子ホモログ(NRAS、UniProtKB-P01111)関連癌(例:Q61K,Q61R NRAS)等のRAS関連癌である。
【0135】
一実施形態において、癌は転移性癌である。
【0136】
本願に記載した癌の治療に用いるT細胞は、癌を患う対象から誘導したものでもよい(養子細胞療法、ACT)。一実施形態において、T細胞は、対象の末梢血リンパ球から誘導したものである。
【0137】
一実施形態において、T細胞は自家性T細胞である。
【0138】
他の実施形態において、T細胞は非自家性T細胞である。
【0139】
ACTは、新規ホストの免疫機能および特徴を移植することを目的とした、細胞、最も一般的には免疫誘導細胞、の同じ患者への、または新たなレシピエントホストへの移植を意味する。可能であれば、自家性細胞の使用は、GVHD事象を最小化することによってレシピエントを助ける。自家性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の養子移植(Besser et al., (2010) Clin. Cancer Res 16 (9) 2646-55、Dudley et al., (2002) Science 298 (5594): 850-4、およびDudley et al., (2005) Journal of Clinical Oncology 23 (10): 2346-57)または遺伝的にリダイレクトした末梢血単核球(Johnson et al., (2009) Blood 114 (3): 535-46、およびMorgan et al., (2006) Science 314(5796) 126-9)の養子移植は、メラノーマおよび結腸直腸癌を含む進行した固形腫瘍を患者、さらにはCD19発現を有する血液癌の患者の治療における使用に成功している(Kalos et al., (2011) Science Translational Medicine 3 (95): 95ra73)。一実施形態においては、本願で同定したネオアンチゲンへの結合に基づき、対象への投与用のTCRを選択する。一実施形態においてT細胞は、公知の方法を用いて増殖させる。腫瘍特異的TCRを発現する増殖したT細胞を対象に戻してもよい。他の実施形態においては、PBMCにTCR発現用のポリヌクレオチドを形質導入またはトランスフェクトしてから対象に投与する。ネオアンチゲンに特異的なTCRを発現するT細胞を増殖させて、対象に戻す。
【0140】
T細胞受容体を発現するT細胞集団は、配列番号1および34に示す配列を有するペプチドエピトープの少なくとも1種に結合し、且つ対応するペプチドに対して抗原特異性を有する。一実施形態において、T細胞は、配列番号1に示すペプチドエピトープおよび配列番号34に示すペプチドエピトープの両方に対して抗原特異性を有する。
【0141】
本願で使用する「抗原特異性」という成句は、TCRが免疫学的に認識される変異標的(例:変異したNRASまたはBRAF)に対して、高い活性をもって、特異的に結合し得ることを意味する。例えば、TCRは、(a)低濃度の、配列番号1または34に示す配列を有する変異標的ペプチドでパルスされた抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞(例:約0.05ng/mL~約5ng/mL、0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、または任意の2つの上記値によって定められる範囲)、もしくは(b)標的細胞が変異標的を発現するように、配列番号1または34に示す配列を有する変異標的ペプチドをコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞との共培養によって、TCRを発現するT細胞が少なくとも約200pg/mL以上(例:200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、20,000pg/mL以上、または任意の2つの上記値によって定められる範囲)のIFNガンマを分泌したら、変異標的に対して「抗原特異性」であると言える。本発明のTCRを発現する細胞はより高濃度の変異標的ペプチドでパルスされた抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞との共培養の際にもIFNガンマを分泌してもよい。
【0142】
代わりに、または加えて、TCRを発現するT細胞が、(a)低濃度の変異標的ペプチドでパルスされた抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞、または(b)標的細胞が変異標的を発現するように、変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞のいずれかと共培養した際に、陰性対照によって発現されるIFN-ガンマの量と比べて少なくとも2倍のIFN-ガンマを分泌するときは、TCRが変異標的に対して「抗原特異性」を有するとみなしてもよい。陰性対照は、例えば、(i)TCRを発現するT細胞であって、(a)同じ濃度の無関係のペプチド(例:変異した標的ペプチドとは異なる配列の他のペプチド)でパルスされた抗原-陰性HLA-A*01:01標的細胞、または(b)標的細胞が無関係のペプチドを発現するように、無関係のペプチドをコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞と共培養したもの、もしくは(ii)非形質導入T細胞(例:TCRを発現しないPBMCから誘導したもの)であって、(a)同じ濃度の変異標的ペプチドでパルスされた抗原-陰性HLA-A*01:01標的細胞、または(b)標的細胞が変異標的を発現するように、変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞との共培養したものでもよい。IFN-ガンマ分泌は公知の方法、例えば、酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)で測定してもよい。
【0143】
代わりに、または加えて、TCRを発現するT細胞が、(a)低濃度の変異標的ペプチドでパルスされた抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞、または(b)標的細胞が変異標的を発現するように、変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A*01:01標的細胞のいずれかと共培養した際に、陰性対照によって発現されるIFN-ガンマの量と比べて少なくとも2倍のIFN-ガンマを分泌するときは、TCRが変異標的に対して「抗原特異性」を有するとみなしてもよい。ペプチド濃度及び陰性対照は、本発明の他の観点から語ることもできる。IFNガンマを発現する細胞数は、公知の方法、例えば、ELISPOTによって測定することができる。
【0144】
癌治療用に、組換えT細胞受容体を発現するようにT細胞を改変する方法は、Ping et al Protein Cell. 2018 Mar; 9(3): 254-266に開示されている。
【0145】
本発明は、TCRのアルファ(アルファ)鎖、TCRのベータ鎖、TCRのガンマ(ガンマ)鎖、TCRのデルタ(デルタ)鎖、またはこれらの組み合わ等の2つのポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを発現するT細胞を提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRが変異標的(例:変異NRAS)に対して抗原特異性を有するかぎり、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0146】
本発明の一実施形態において、TCRは、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、およびCDR3を含む可変領域をそれぞれが含む2つのポリペプチド鎖を含む。
【0147】
CDRと同様に、本願に開示するTCRもV領域とJ領域を含む。V領域とJ領域の特定の組み合わせは、下記の表1に開示されている。
【0148】
本発明の本態様に従って使用してもよいT細胞受容体の例示的なβ鎖のCDR3領域の配列を配列番号7に示した。
【0149】
本発明の本態様に従って使用してもよいT細胞受容体の例示的なα鎖のCDR3領域の配列を配列番号6に示した。
【0150】
本発明はT細胞集団を想定し、集団内のT細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%が、配列番号7に示すアミノ酸配列を有するβ鎖CDR3および配列番号6に示すアミノ酸配列を有するα鎖CDR3を有するT細胞受容体を発現する。
【0151】
一実施形態において、集団内のT細胞の少なくとも95%が、配列番号7に示すアミノ酸配列を有するβ鎖CDR3および配列番号6に示すアミノ酸配列を有するα鎖CDR3を有するT細胞受容体を発現する。
【0152】
本発明者らは、CAR-T細胞、即ち、配列番号6および7に示すCDR3アミノ酸配列を有するキメラ抗体を発現するT細胞、をさらに想定する。
【0153】
CDR3領域の配列は含む少なくとも1種または2種のアミノ酸置換を含み、且つ結合活性を有してもよいことを理解されたい。
【0154】
一実施形態において、アミノ酸置換は保存性置換である。
【0155】
本願で使用する「保存性置換」という用語は、ペプチドの本来の配列に存在するアミノ酸を天然または非天然のアミノまたは同様の立体特性を有するペプチドミメティックによる置換を意味する。置換される本来のアミノ酸の側鎖が極性または疎水性の場合、保存性置換に用いる天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、またはペプチドミメティック部分も、(置換されるアミノ酸の側鎖と同じ立体特性を有することに加えて)極性または疎水性であるべきである。
【0156】
天然のアミノ酸が典型的にはその性質によってグループ分けされることから、天然のアミノ酸による保存性置換は、本発明によると帯電アミノ酸の構造的に類似した非帯電アミノ酸による置換は、保存性置換とすることを念頭に、容易に決定することができる。
【0157】
非天然アミノ酸によって保存性置換を産生するには、当業界で公知のアミノ酸類似体(合成アミノ酸)を使用することもできる。天然アミノ酸のペプチドミメティックは当業者に知られる文献に広く記述されている。
【0158】
保存性 置換を実施する際には、置換するアミノ酸は元のアミノ酸と同様に、その側鎖に同一または類似した官能基を有するべきである。
【0159】
本願で使用する「非保存性置換」は、親配列に存在するアミノ酸の、異なる電気化学的および/または立体特性を有する他の天然または非天然アミノ酸による置換を意味する。よって、側鎖のアミノ酸置換は、置換される本来のアミノ酸の側鎖よりも有意に大きい(または小さい)、および/または置換されるアミノ酸とは有意に異なる電子的性質を有する官能基を有し得る。このような非保存性置換の例としては、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルメチルグリシンによるアラニンの置換、イソロイシンによるグリシンの置換、または-NH-CH[(-CH-COOH]-CO-によるアスパラギン酸の置換が挙げられる。本発明の範囲に入るこれらの非保存性置換は、引き続き抗細菌特性を今でも発揮するペプチドを形成するものである。
【0160】
特定の実施形態によると、TCR受容体は、配列番号6に示すCDR3領域を含むα鎖と、および配列番号7に示すCDR3領域を含むβ鎖を含む。
【0161】
さらに別の実施形態によると、TCR受容体は、配列番号6に示すCDR3領域を含むα鎖と、配列番号3、5、7、9、11、13、15または17に示すCDR3領域を含むβ鎖とを含む。
【0162】
さらに別の実施形態によると、TCR受容体は、配列番号7に示すCDR3領域を含むβ鎖と、配列番号2、4、6、8、10、12、14または16に示すCDR3領域を含むα鎖とを含む。
【0163】
特定の実施形態によると、TCR受容体は、配列番号2に示すCDR3領域を含むα鎖と、配列番号17に示すCDR3領域を含むβ鎖とを含む。
【0164】
特定の実施形態によると、TCR受容体は、配列番号16に示すCDR3領域を含むα鎖と、配列番号3に示すCDR3領域を含むβ鎖とを含む。
【0165】
本願で特定したCDR配列の少なくとも1種を含む単離された抗体および/または二重特異性抗体も想定される。
【0166】
本発明のTCR(および抗体)は1以上の天然アミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。このような合成アミノ酸は当業界で知られており、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、アルファ-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、ベータ-フェニルセリンベータ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、アルファ-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、N’,N’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、アルファ-アミノシクロペンタンカルボン酸、アルファ-アミノシクロヘキサンカルボン、アルファ-アミノシクロヘプタンカルボン酸、アルファ-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、アルファ,ガンマ-ジアミノ酪酸、アルファ,ベータ-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびアルファ-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0167】
本発明のTCR(および抗体)(その機能的バリアントを含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、(例:ジスルフィド架橋による)環化、または酸付加塩に変換される、および/または任意で二量体化または重合体化または結合され得る。
【0168】
本発明のTCR(および抗体)は当業界で公知の方法、例えば、de novo合成によって得ることができる。さらに、TCRは、本願に記載した核酸を用いて、標準的な組換え方法を用いて組換え的に製造することもできる。例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4.sup.th ed., Cold Spring Harbor Pres、Cold Spring Harbor, N.Y. (2012)を参照。代わりに、本願に記載したTCR、ポリペプチド、および/またはタンパク質(その機能的バリアントを含む)は、Synpep(カリフォルニア州、ダブリン)、Peptide Technologies Corp.(メリーランド州、ゲイザースバーグ)、およびMultiple Peptide Systems((カリフォルニア州、サンディエゴ)等の業者に合成してもらうこともできる。この観点から、本発明のTCRは、合成、組換え、単離および/または精製であり得る。本発明の範囲には、本発明のTCRを含むコンジュゲート(例:バイオコンジュゲート)も含まれる。コンジュゲートのみならず、一般的なコンジュゲートの合成方法も当業界で広く知られている。
【0169】
対象特異的TCRを発現する腫瘍反応性T細胞の集団は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、腫瘍反応性T細胞の個別化細胞集団を含む医薬組成物を得てもよい。好ましくは、担体は薬学的に許容される担体である。医薬組成物については、担体は細胞の投与に一般的に使用される任意のものであり得る。このような薬学的に許容される担体は当業者には広く知られており、一般的に入手が容易である。薬学的に許容される担体は、使用条件下で有害な副作用または毒性を示さないものが好ましい。細胞の注射に適した薬学的に許容される担体としては、等張性の担体、例えば、正常生理食塩水(水中に約0.90%w/vのNaCl、水中に約300mOsm/LのNaCl、または1リットルの水に対して約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(イリノイ州、シカゴ、Abbott)、PLASMA-LYTE A(イリノイ州、ディアーフィールド、Baxter)、水中に約5%のデキストロース、または乳酸リンゲル液等が挙げられる。一実施形態において、薬学的に許容される担体は、ヒト血清アルブミンが添加されている。
【0170】
T細胞は、当業界で公知の任意の適切な経路で投与することができる。T細胞は、好ましくは30~60分間にわたる動脈内または静脈内点滴で投与することが好ましい。他の投与経路の例としては、腹腔内、髄腔内およびリンパ系内が挙げられる。T細胞は注射で投与してもよい。T細胞は腫瘍部位に導入してもよい。
【0171】
本願に記載するT細胞は、対象にとって自家性または非自家性でもよい。
【0172】
本発明の目的において、投与される用量(例:対象特異的TCRを発現する本発明の細胞集団内の細胞数)は、一定の時間枠内で対象に効果(例:治療的または予防的応答)を引き起こすのに十分な量であるべきである。例えば、癌抗原に結合する、もしくは投与時から約2時間またはそれ以上(例:12~24時間以上)の期間内に癌を検出、治療または予防するのに十分な細胞数であるべきである。ある実施形態においては、期間はさらに長くてもよい。細胞数は、例えば、特定の細胞の効能および対象(例:ヒト)の状態のみならず、処置される対象(例:ヒト)の体重によって決定される。
【0173】
対象特異的TCRを発現する本発明の細胞集団から投与した細胞数を決定するための多くのアッセイが当業界で知られている。本発明の目的において、一定数のこのような細胞を対象に投与した際の標的細胞の溶解または1以上のサイトカイン(例:IFNガンマおよびIL-2等)の分泌の程度を比較することを含むアッセイを、哺乳動物に投与する開始数を決定するために使用することができる。一定数の細胞を対象に投与した際の標的細胞の溶解または1以上のサイトカイン(例:IFNガンマおよびIL-2等)の分泌の程度は、当業界で公知の方法によって解析することができる。サイトカイン(例:IL-2)の分泌は、細胞製剤の品質(例:表現型および/または効果)の指標を提供することもある。
【0174】
対象特異的TCRを発現する本発明の細胞集団から投与される細胞の数は、特定の細胞集団の投与に伴う可能性のある副反応の存在、性質および程度によって決定することもできる。
【0175】
処置される対象は、典型的には哺乳類、例えば、ヒトである。
【0176】
一実施形態において、対象は、彼/彼女がNRAS.Q61K変異またはNRAS.Q61R変異を発現するか、およびHLA-A*01:01アロタイプを有すると同定されているかに基づき、予め選択される。
【0177】
対象特異的HLAアレルまたは対照のHLA遺伝子型は、当業界で公知の任意の方法で決定してもよい。特定の実施形態において、HLA遺伝子型は、2015年6月11日付で国際公報2015085147号として公開された国際特許出願番号第PCT/US2014/068746号に記載の任意の方法によって決定してもよい。まとめると、当該方法は、シーケンシングデータセットから抽出したリードと、多型遺伝子のアレルバリアントを含む遺伝子参照セットとのアライメントを作製することと、アライメント内の各アレルバリアントについて第1の事後確率または事後確率誘導スコアを決定することと、最大の第1の事後確率または事後確率誘導スコアを有するアレルバリアントを第1のアレルバリアントとして同定することと、第1のアレルバリアントおよび1以上の他のアレルバリアントとアラインする1以上の重なるリードを同定することと、重みづけ因子を用いて1以上の他のアレルバリアントの第2の事後確率または事後確率誘導スコアを決定することと、最大の第2の事後確率または事後確率誘導スコアを有するアレルバリアントを選択することで第2のアレルバリアントを同定し、第1および第2のアレルバリアントは多型遺伝子の遺伝子型を定義することと、第1の所定レベルおよび第2のアレルバリアントのアウトプットを提供することを含む。
【0178】
本願で開示するT細胞集団は、少なくとも1種の他の治療薬との併用が可能である。本願で開示するT細胞集団との併用が可能な治療薬の例としては、免疫調節性サイトカイン(IL-2、IL-15、IL-7、IL-21、GM-CSFが挙げられるが、これらに限定されない)のみならず、更に免疫応答を増強可能な任意の他のサイトカイン、免疫調節性抗体(抗CTLA4、抗CD40、抗41BB、抗OX40、抗PD1and抗PDL1が挙げられるが、これらに限定されない)、および免疫調節薬(レナリドミド(lenalidomide)(レブラミド(Revlimid))が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
加えて、本願で開示するT細胞集団は、低用量シクロホスファミドおよびタキソールが挙げられるが、これらに限定されない、免疫系を阻害しない治療レジメンにおいて、化学療法と併用して癌治療のために投与してもよい。癌に対して、抗HER2/neu(ハーセプチン)および抗CD20(リツキサン)が挙げられるが、これらに限定されない治療用抗体と併用してワクチンも投与してもよい。
【0180】
T細胞集団は、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗マラリア薬等が挙げられるが、これらに限定されない特定の感染症を治療するための薬剤と併用して慢性感染症の治療のために投与することができる。
【0181】
一実施形態において、本発明の本態様における試薬は、免疫チェックポイント阻害薬と共に投与される。
【0182】
本願で使用する「免疫チェックポイント阻害薬」という成句は、免疫チェックポイントタンパク質の機能を阻害することのできる化合物を意味する。阻害には、機能の減少と、完全遮断とが含まれる。特に免疫チェックポイントタンパク質はヒト免疫チェックポイントタンパク質である。よって免疫チェックポイントタンパク質阻害薬は、好ましくはヒト免疫チェックポイントタンパク質の阻害薬である。免疫チェックポイントタンパク質は公知文献に記載されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev. Cancer 12: 252-264を参照)。相手となる(designation)免疫チェックポイントとしては、in vitroまたはin vivoにおける免疫チェックポイントタンパク質の阻害による、抗原-受容体をトリガーとしたTリンパ球応答の促進の実験的説明が挙げられ、例えば、免疫チェックポイントタンパク質の発現しないマウスが増強された抗原特異的Tリンパ球反応または自己免疫のサインを示すこと(Waterhouse et al., 1995. Science 270:985-988、Nishimura et al., 1999. Immunity 11:141-151等に開示)である。In vitroまたはin vivoにおける免疫チェックポイントタンパク質の意図的な促進による抗原-受容体をトリガーとしたCD4+またはCD8+ T細胞応答の阻害を示すことも含まれてもよい(例:Zhu et al., 2005. Nature Immunol. 6:1245-1252)。
【0183】
好ましい免疫チェックポイントタンパク質阻害薬は、免疫チェックポイントタンパク質を特異的に認識する抗体である。複数のCTLA-4、PD1、PDL-1、PD-L2、LAG-3、BTLA、B7H3、B7H4、TIM3およびKIR阻害薬が公知であり、これら公知の免疫チェックポイントタンパク質阻害薬と同様に、代替的な免疫チェックポイント阻害薬が(近い)将来開発されることもある。例えば、イピリムマブは、現在、ヤーボイ(Bristol-Myers Squibb)の名称で市販されている完全ヒトCTLA-4遮断抗体である。第2のCTLA-4阻害薬はトレメリムマブ(Ribas et al, 2013, J. Clin. Oncol. 31:616-22において参照)である。PD-1阻害薬の例としては、限定するものではないが、ラムブロリズマブ(例:国際公開第2008/156712号においてhPD109Aおよびそのヒト化誘導体h409A11、h409A16およびh409A17と開示、Hamid et al., N. Engl. J. Med. 369: 134-144 2013)またはピジリズマブ(Rosenblatt et al., 2011. J. Immunother. 34:409-18に開示)等のヒトPD-1を遮断するヒト化抗体、さらにはニボルマブ(以前はMDX-1106またはBMS-936558として知られる、Topalian et al., 2012. N. Eng. J. Med. 366:2443-2454、米国特許第8,008,449号に開示)等の完全ヒト抗体が挙げられる。他のPD-1阻害薬としては、可溶性PD-1リガンドの提示が挙げられ、限定されるものではないが、B7-DC-IgまたはAMP-244(Mkrtichyan M, et al. J Immunol. 189:2338-47 2012に開示)としても知られるPD-L2 Fc融合タンパク質、および治療用に現在研究中および/または開発中の他のPD-1阻害薬が挙げられる。加えて、免疫チェックポイント阻害薬としては、限定されるものではないが、MEDI-4736(国際公開第2011066389号に開示),MPDL3280A(米国特許第8,217,149号に開示)およびMIH1(eBioscience(16.5983.82)より入手可能なAffymetrix)等のPD-Lを遮断するヒト化または完全ヒト抗体および現在研究中および/または開発中の他のPD-L1阻害薬が挙げられる。本発明によると、免疫チェックポイント阻害薬は、好ましくは、CTLA-4、PD-1またはPD-L1の阻害薬から選択され、例えば、上述した公知のCTLA-4、PD-1またはPD-L1阻害薬(イピリムマブ、トレメリムマブ、ラムブロリズマブ(labrolizumab)、ニボルマブ、ピジリズマブ、AMP-244、MEDI-4736、MPDL3280A、MIH1)から選択される。これら免疫チェックポイントタンパク質の公知の阻害薬はそのまま使用してもよいし、類似体、特にキメラ化、ヒト化またはヒト型の抗体を使用してもよい。
【0184】
本願で使用する「約」という用語は、±10%を表す。
【0185】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」ことを意味する。
【0186】
「からなる(consisting of)」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0187】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含み得るが、当該追加の成分、工程、及び/又は部分が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法、又は構造の基本的及び新規な特徴を大きく変化させない場合に限られることを意味する。
【0188】
本明細書で使用する場合、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1種の化合物」は、複数の化合物を含み、それらの混合物も含み得る。
【0189】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限をなすものと解釈するべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲の全部、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6も具体的に開示するとみなされるべきである。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0190】
本明細書において数値範囲を示す場合は常に、示された範囲内の任意の記載された数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数と「の間の範囲」という語句と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句とは、本明細書で互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、第1の指示数と第2の指示数との間の分数及び整数の全部とを含むことを意図する。
【0191】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものを含むが、これらに限定されない。
【0192】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、状態の進行を抑制し、実質的に阻害し、遅延、又は逆転させ、状態の臨床的若しくは審美的な症状を実質的に改善することを含む。一実施形態において、方法は、状態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に予防するためのものである。
【0193】
明確さのために別個の実施形態との関連において記載した本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態との関連において記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、又は任意の好適な部分的な組み合わせ、又は適宜、本発明の他の任意の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される特定の特徴は、その要素なしでは実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須の特徴であるとみなすべきではない。
【0194】
本明細書に上記され、特許請求の範囲において特許請求される本発明のさまざまな実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けが見出される。
【実施例
【0195】
以下では実施例を参照する。本実施例は、上記の説明とともに本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示するものである。
【0196】
材料及び方法
再発性ネオアンチゲン候補の優先順位付けのためのデータ駆動型解析
患者データを用いたHLA/変異の同時発生解析
TCGA仮コホートデータを使用し、合計8038人の患者を蓄積した37,61,62。9176人のTCGA患者に関する既報のようの高分解能HLA-Iタイピングも入手した。2種の情報源の交点は、変異とHLAによりアノテーションされた合計6840人の患者からなるコホートをもたらし、その内の368人はメラノーマ患者であった。11033人の患者の変異とHLAのデータは汎癌であり、221人のメラノーマ患者を含み、これらを用いて、記載済みの方法で処理した。HLAタイピングをしたサンプルについて、それらのRAS.Q61ステータスに基づくアノテーションを行った。2020年8月31日付でNRAS(ENST00000369535)、KRAS(ENST00000256078)およびHRAS(ENST00000451590) Ensembl v101のカノニカルな転写産物識別子を得、2020年8月30日付でそれらのタンパク質コード配列の座標(coordinates)をGencode v35から得た。69人のメラノーマ患者からなる既報のMELA-AUデータセットを得た。これら3種のデータセットのそれぞれについて、RAS.Q61変異と共に出現する全てのHLA-Iアレルのリストを汎癌およびメラノーマについて計算した。各HLA/変異組み合わせについてメラノーマおよび汎癌における頻度を計算した。TCGAデータセットについては、HLA-I頻度をRAS.Q61変異と一般的な集団との間で比較した(FDR補正付きのフィッシャー抽出試験)。
【0197】
NetMHCpan予測
RAS.Q61誘導ネオペプチドの予測にnetMHCpan 4.0を使用した。UsingNRASタンパク質配列を用いて、61位に隣接する27アミノ酸長の伸長さを抽出した。この配列は、RASバリアント間で保存されており、よってNRAS、KRASおよびHRASを代表するものである。61位のグルタミンをアルギニン、リシン、ロイシンまたはヒスチジンで置換することで4種の変異バリアントを構築した。全5種の配列をFASTAフォーマットに包み込み、解析した患者データベースにおいてRAS.Q61変異と共に出願するHLAアレルについて作製したリスト共にnetMHCpanに対するインプットとして機能した。長さ8~14アミノ酸の結合ペプチドについてスキャンするようにアルゴリズムを設定し、0.5≦%Rank≦2とランク付けされたペプチドは弱い結合物であり、%Rank≦0.5とランク付けされたペプチドは強い結合物である。61位をまたぐペプチドのみが残るようにアウトプットをフィルタリングした。‘best %Rank’スコアを予測ネオペプチドにわたって列挙することで、各HLA/変異組み合わせにアサインした。
【0198】
腫瘍組織、細胞系、TILおよびPBMC
転移性メラノーマ細胞系17T、135T、108T、並びにその同種TIL産物を確立した。確立されたTILを、既報のように、高速増殖プロトコル(REP)で増殖させた
【0199】
市販のメラノーマ細胞系SK-MEL-30(ACC-151)をDSMZより購入した。追加の腫瘍細胞系: HuT78、Hs940TおよびCalu6、さらにはHB95(W6/32)およびHB145(IVA12)ハイブリドーマ細胞をATCCより購入した。研究目的の献血由来の健常ドナー白血球調製物はMDA(イスラエル国の国立血液事業者)より購入した。PBMCは、フィコール-プラーク(Ficoll-Paque)PLUS(GE Healthcare)を用い、密度勾配遠心分離によりこれらから抽出し、FCS/10% DMSO内で等量を凍結保存し、実験ごとに必要に応じて融解した。
【0200】
HLA親和性カラムの調製のためのpan-HLA-Iおよびpan-HLA-II抗体の精製にハイブリドーマ細胞HB95およびHB145を使用した。全細胞系を定期的に試験し、マイコプラズマのコンタミネーションについて陰性であるとわかった(EZ-PCRマイコプラズマキット、Biological Industries)。
【0201】
メラノーマ細胞系を、10%のFCS、2mMのL-グルタミン、2.5%のHEPES、100IU/mlのペニシリンおよび0.1mg/mlのストレプトマイシンを添加したRPMIからなる完全RPMI培地で培養した。B-LCLは、1mMのピルビン酸ナトリウムを添加した完全RPMI培地からなるB細胞培地で培養した。TILおよびPBMCは、10%の熱不活化ヒト血清AB、2mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシンおよび5.5×10-5Mのβ-メルカプトエタノールを添加したRPMIからなるT細胞培地で培養した。TILは、下流のアッセイで使用する3日前に融解し、6000IU/mlのIL-2(Proleukin)を含有するT細胞培地で回復させた。PBMCは実験の7日前に融解し、300IU/mlのIL-2と50ng/mlのOKT3抗CD3抗体(#317304、Biolegend)を含有するT細胞培地内でT細胞を選択した。PBMCは、融解から3~4日後に、300IU/mlのIL-2を添加したT細胞培地で継代培養した。カスパーゼ3殺傷アッセイおよびネオアンチゲン誘導増殖アッセイにおいて、T細胞培地を共インキュベーションに使用した。完全RPMI培地を一晩のTIL/B-LCLとPBMC/B-LCLの共インキュベーションに使用した。
【0202】
複合体ILDTAGKEEY(配列番号1)内のHLA-A*01:01の構造モデリング
RAS.61誘導ペプチドと複合体化したHLA-A*01:01の構造について、ALKチロシンキナーゼ受容体デカペプチドとの複合体内のHLA-A*01:01の結晶構造を用いてモデリングを実施した(PDB:6at9)。HLA受容体と複合体化したILDTAGKEEY(配列番号1)ペプチドおよびILDTAGQEEY(配列番号35)ペプチドを得るために、結晶学的に結合したペプチドを手動で変異させた。HLA構造をペプチド結合ドメイン(A鎖、1から180残基)まで切り詰めた。得られたペプチド-HLA構造を、ペプチドドッキングおよび分子動力学計算の開始立体構造として用いた。
【0203】
ペプチドのドッキングは、自由にアクセス可能なウエブサーバー上のインターフェースであるFlexPepDock、ClusProおよびDINCを用いて実施した。加えて、分子動力学計算を、GROMACSバージョン2018.3.5とGROMOS 54a7ユナイテッドアトム力場を用いて実施した。複合体を、溶質と箱の壁との最小距離が10Åとなる斜方形12面体の箱に入れて、SPC水により溶媒和させた。5Na+の対イオンの添加によりシステムの電荷を中和した。最大5,000工程の最急降下アルゴリズムを用いた最小化により立体不調和を除去した。システムを一定の容量と温度(NVT アンサンブル)で平衡化し、全てのタンパク質とペプチドの重原子を10K、100psで拘束し、続いて300K、100ps、拘束なしでさらに平衡化した。システムの圧力を、00K、300psで一定大気圧下(NPTアンサンブル)のシミュレーションにより、平衡化した。全ての平衡化工程において、LINCSアルゴリズムを用いて、タンパク質の残基に位置的な拘束を加えた。平衡化によってもたらされる最終座標を、ILDTAGKEEY(配列番号1)システムおよびILDTAGQEEY(配列番号35)システムの両方について、5つの独立した生産工程を開始するために使用し、それぞれをNPTアンサンブルで500ns実施した。温度は、0.1psの時定数とカップリングした速度スケーリングサーモスタットを用いて300Kで一定に保ち、システムの圧力は、2psの時定数とカップリングしたParrinello-Rahman圧調節器を用いて1バールで一定に保った。システムの動きを統合するために、2fsの時間ステップを使用した。長距離静電場を粒子 Mesh Ewald10法を用いて計算し、一方、短距離カットオフ値は、vdWおよびクーロン効果の両方について、1.0nmに設定した。結合したときの立体構造に着目するために、RASペプチドのN末およびC末がそれぞれHLA のBポケットおよびFポケットの7Å以内である立体構造のみを解析した。下記原子間の距離を測定した:HLAのTyr171の側鎖ヒドロキシの酸素(OH)とペプチドのIle1主鎖アミドの窒素(N)の間、並びにHLAのTyr123の側鎖フェノールの炭素(CZ)とペプチドのTyr10の側鎖ガンマ炭素(CG)との間。分子構造はPyMOLバージョン1.311を用いて視覚化した。ドッキングシミュレーションフレームの立体構造および結合シミュレーションフレームの立体構造を、HLAペプチド水素結合相互作用によってクラスター化した。MDTraj13バージョン1.9.2に実装されるWernet-Nilssonの判断基準を用いて水素結合を検出した。クラスターの重心は、対応する水素結合フィンガープリントが全クラスターメンバーに対して最も小さいManhattan/Cityblock距離を有するシミュレーションフレームとして同定した。
【0204】
腫瘍組織のRAS.Q61変異ステータスおよびHLAタイピング
17Tおよび108Tについて、RAS.Q61ステータスおよびHLAタイピングの両方を、全エキソームシーケンシングから抽出し、HLAタイピングは、PolySolverソフトウエア14を用いて決定した。MM121224 HLAとMM150414 HLAおよび変異データは協力者によって提供された。135Tおよび急速冷凍腫瘍については、RAS.Q61ステータスはは協力者によって提供され、一方、QIAGENのDNeasy血液および組織キット(#69504)を用いて抽出したゲノムDNAをHLAタイピング(GenDx SBTexcellerator HLA-Aキット#4100234またはMX6-1 NGSタイピングきっと、#7371464)に利用した。細胞系SK-MEL-30、MZ2-mel、HuT78、Hs940TおよびCalu6に関する変異およびHLAデータは、“TRON細胞系ポータル”14,15から抽出した。EBV形質転換B細胞のHLAタイピングはIHWGCell and DNABank16より提供された。
【0205】
cDNAシーケンシング
RNeasyミニキット(#74104,QIAGEN)を製造社のプロトコルに従って使用し、メラノーマ細胞系17T、135T、SK-MEL-30、MM121224、MZ2-mel、HuT78、Calu6およびHs940Tから全RNAを抽出し、30μlのジエチルピロカーボネート(DEPC)処理-蒸留水で溶出した。RT-qPCRキット用のiScript逆転写スーパーミックス(#1708841,Biorad)を製造社のプロトコルに従って使用し、一本鎖相補性DNA(cDNA)合成に合計500ngのRNAを使用した。61位を含むNRAS領域およびKRAS領域を、下記プライマーを用いるPCRで増幅した。
NRASフォワード: 5’-TTGGAGCAGGTGGTGTTGGG-3’(配列番号36)、
NRASリバース: 5’-GTATCAACTGTCCTTGTTGGC3’(配列番号37)、
KRASフォワード: 5’-TAAACTTGTGGTAGTTGGAGCTGGT-3’(配列番号38)、と
KRASリバース: 5’-TTCTTTGCTGATTTTTTTCAA-3’(配列番号39)。
【0206】
2μlのcDNAをPCR反応用に取り出し、最終容量が25μlとなるように2×KAPA HIFI(#KM2605,KAPABioSystems)と混合し、以下のパラメーターを用いる標準PCRプログラムを使用した:oneサイクルat95℃で3分を1サイクル、sof98℃で20秒を35サイクル、58℃のアニーリング温度で30秒、および72℃で1分。PCR産物を1%のアガロースゲル上で分離し、次にWizard SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(#A9281,Promega)で精製し、続いて3730 DNAアナライザー(ABI)を用いてサンガーシーケンシングを実施した。シーケンシングプライマーはPCRプライマーと同一であった。SnapGeneソフトウエア(バージョン4.3.2)を用いてシーケンシング結果を解析した。
【0207】
二重トランスフェクタント721.221の確立
HLA-A*01:01および25-merのミニジーン(RAS.Q61KおよびRAS.Q61R)のそれぞれをコードするDNA配列を、それぞれ5’末および3’末の隣接するXbaIおよびNotI制限部位を有するように設計した。設計したものは合成二本鎖DNAとしてTwist bioscienceまたはIDT(gBlock)から購入し、対応する会社のプラットフォームに基づき、ヒト発現のために最適化した。PCR増幅テンプレートをXbaI/NotI(NEB,#R0145Lおよび#R0189L)を用いて、レンチウイルスベクターpCDH-CMV-MCS-EF1α-Neo(SBI,#CD514B-1)およびpCDH-CMV-MCS-EF1α-GreenPuro(SBI,#CD513B-1)内に制限的にクローニングした。T4 DNAリガーゼ(NEB,#M0202L)を用いて、HLA挿入物およびミニジーン挿入物をそれぞれネオマイシンベクターおよびプロマイシンベクターに連結し、pCDH-Neo-A*01:01、pCDH-Puro-GFP-mRAS.Q61KおよびpCDH-Puro-GFP-mRAS.Q61Rを得た。配列の立証されているクローンプラスミドを、エンベローププラスミドおよびパッケージングプラスミドPMD2.GおよびpsPAX2とのHEK293T細胞への、リポフェクタミン2000(Invitrogen、#11668027)を製造社の説明書に従って使用した共トランスフェクションによるレンチウイルス粒子の製造に使用した。回収したウイルス含有上清をろ過し、等量に分け、-80℃で保存した。HLA-I不足ヒトB-LCL 721.221細胞を段階的に感染させ、具体的には、第1にHLA-A*01:01を発現するようにし、次にミニジーンウイルス(RAS.Q61KまたはRAS.Q61R)に感染させた。感染から48~72時間後に800μg/mlのネオマイシン(G418)または1μg/mlのプロマイシンのいずれかによる選択を開始した。感染細胞を選択下で連続的に増殖させた。HLA-A*01:01の産生的な過剰発現は、感染から約2週間後に、モノクローナル抗体W6/32を用いたフローサイトメトリーにより立証された。HLA発現の立証後に、ミニジーン過剰発現を誘導するために、上述したように721.221A*01:01細胞を感染させて選択した。721.221A*01:01;RAS.Q61K細胞および721.221A*01:01;RAS.Q61R細胞を両方の選択試薬を含む培地中で約2週間培養し、その後、HLAペプチドミクスのための拡張の前に、抗生物質無しの培地でさらに2週間増殖させた。
【0208】
HLAペプチドミクス
膜HLA分子の産生および精製
それぞれ2×10細胞からなる細胞ペレットを回収し、PBS中に0.25%のデオキシコレートナトリウム、0.2mMのヨードアセトアミド、1mMのEDTA、1:200のプロテアーゼ阻害カクテル(Sigma-Aldrich、P8340)、1mMのPMSFおよび1%のオクチル-β-D-グルコピラノシドを含有する溶解バッファーを用いて氷上で溶解した。サンプルを次に4℃で1時間インキュベートした。溶解物を4℃、48,000gで60分の遠心分離によって清澄化、次にプロテインAセファロースビーズを含有する前清澄化カラムに通した。
【0209】
プロテインAセファロースビーズ(Thermo-Fisher Scientific,既報の通り)17,18.の共有結合したpan-HLA-I抗体(HB95ハイブリドーマ細胞から精製したW6/32抗体)を用いて、清澄化溶解物からHLA-I分子の免疫親和性精製を行った。親和性カラムを、第1に400mMのNaCl、20mMのTrisHCl,pH8.0で洗浄し、次に20mMのTris-HCl,pH8.0で洗浄した。HLAペプチドおよびHLA分子を次に1%のトリフルオロ酢酸で溶出させ、続いて溶出画分をSep-Pak(Waters)に結合させることで、タンパク質からペプチドを分離した。ペプチドの溶出は、0.1%のトリフルオロ酢酸中の28%のアセトニトリルで実施した17
【0210】
溶出HLAペプチドの同定
液体クロマトグラフィー:
細胞系17T、SK-MEL-30およびMM121224: HLAペプチドを真空遠心分離によって乾燥し、0.1%のギ酸で可溶化し、0.1%ギ酸中の7~40%のアセトニトリル勾配で180分、Reprosil C18-Aqua(ドイツ国、アンマーブーフエントリンゲン、Dr. Maisch,GmbH)を圧縮したキャピラリーカラムで0.15μL/分で既報19のように分離させた。細胞系17T、SK-MEL-30およびMM121224については、クロマトグラフィーを、Q-Exactive-Plus(ThermoFisherScientific)上のタンデム質量分析機にエレクトスプレーを介して結合したUltiMate 3000RSLCナノキャピラリーUHPLCシステム(ThermoFisher Scientific)で実施した。HLAペプチドは、0.1%のギ酸中の5%~28%のアセトニトリルの直線勾配、流速0.15μl/分で、2時間かけて溶出させた。
【0211】
細胞系721.221A*01:01、mRAS.Q61K,721.221A*01:01、mRAS.Q61R,135T、MZ2-MEL、HuT78、Hs940Tおよび4腫瘍のサンプル(Mela-183、Mela-49、MM-1369およびMM-1319): HLAペプチドを真空遠心分離によって乾燥し、97:3の水:アセトニトリル 0.1%のギ酸で可溶化した。サンプルの脱塩は、逆相Symmetry C18補足カラム(内径180μm、長さ20mm、粒子径5μm、Waters)を用いてオンラインで実施した。ペプチドの分離は、流速0.35μl/分のT3HSSナノカラム(内径75μm、長さ250mm、粒子径1.8μm、Waters)を用い、0.1%のギ酸中の5%~28%のアセトニトリル勾配で120分かけて行った。クロマトグラフィーは、Q-Exactive-Plus(ThermoFisher Scientific)上のタンデム質量分析機にエレクトスプレーを介して結合した、nanoAcquity(Waters)で実施した。
【0212】
質量分析: 細胞系721.221A*01:01、mRAS.Q61K,721.221A*01:01、mRAS.Q61Rおよび17Tをディスカバリーモードで走らせた。細胞系SK-MEL-30、MM121224および135Tのみならず、等量の721.221A*01:01、mRAS.Q61K、721.221A*01:01、mNRAS.Q61R、17T、MZ2-MEL、HuT78、Hs940Tのサンプルおよび4種の腫瘍サンプル(Mela-183、Mela-49、MM-1369およびMM-1319)を絶対標的化質量分析で解析し、特にILDTAGKEEY(配列番号1)またはILDTAGREEY(配列番号34)について探索し、重ペプチドスパイクインを利用して、ペプチドの定量も可能にした。重リシン(13C6;15N2)を導入した合成重同位体標識ILDTAGKEEY(配列番号1)または重アルギニン(13C6;15N4)を導入した合成重同位体標識ILDTAGREEY(配列番号34)はJPTから純度>95%のものを購入した。
【0213】
ディスカバリーモード: 高エネルギー衝突誘起解離によってペプチドを断片化する、データ依存“トップ10”法を用いてデータを獲得した。標的値が3×10イオン、200m/zで分解能解像度70,000の条件でフルスキャンのMSスペクトルを獲得した。最大射出時間が通常100msecの条件で、自動利得制御(AGC)標的値が10となるまでイオンを蓄積した。ペプチド一致のオプションはPreferredに設定した。正常化衝突エネルギーは25%に設定し、MS/MS分解能は200m/zで17,500とした。断片化したm/z値は、さらなる選択から動的に20秒間排除した。MSデータは、FDRを0.05として、MaxQuant(バージョン1.5.8.3)20を用いて解析した。ペプチドの同定は、UniProtデータベース21(2017年4月)のヒトセクションおよびWESによって17Tに対して同定された変異配列を含むカスタマイズされた参照データベースに基づいていた。
【0214】
SK-MEL-30、MM121224絶対標的化モード: 質量分析計に注入したペプチドームサンプルに0.1pmolの重ペプチドを加えた。次に解析を、PRM法を用いて実施した。MS/MS獲得のために、インクルージョンリストを方法にインポートした。インクルージョンリスト内のイオンを断片化するために、装置をフルMSとMS/MS獲得との間で切り替えた。フルスキャンMSスペクトルは、分解能70,000で、質量/電荷数比(m/z)が350~1,400AMUの条件で獲得した。断片化した質量はAGC標的値が10となるまで蓄積し、最大放射時間を400msecおよび1.8m/zウインドウとした。解析には、アンドロメダ検索エンジン22を伴うMaxQuantソフトウエア(バージョン1.5.8.3)20を再度使用した。ペプチドの同定はUniProtデータベース21(2017年4月)のヒトセクションおよびILDTAGKEEY(配列番号1)ネオアンチゲンを含むカスタマイズされた参照データベースに基づいていた。以下のパラメーターを使用した:前駆体イオン質量および断片質量許容差を20ppm、偽陽性率(FDR)をSK-MEL-30は0.05でMM121224は0.3、並びに、酸化(Met)、アセチル化(タンパク質のN末)および重リシン(13C6;15N2)の可変修飾。721.221A*01:01、mRAS.Q61K、721.221A*01:01、mRAS.Q61R、17T、135T、MZ2-MEL、HuT78、Hs940Tおよび4種の腫瘍サンプル(Mela-183、Mela-49、MM-1369およびMM-1319):絶対標的化モード。
【0215】
ナノUPLCを、ナノESIエミッター(10μmのチップ、New Objective、米国、マサチューセッツ州、ウォバーン)を介して、FlexIonナノスプレイ装置(Proxeon)を使用して、四重極型質量分析計(Q Exactive Plu、Thermo Scientific)にオンラインでカップリングした。10のPRMスキャンごとに1のMS1スキャンを行う並発反応モニタリング(PRM)によってデータを獲得した。MS1スキャン範囲は300~1800m/z、分解能は70,000、AGCは3e6および最大放射時間は120msecに設定した。PRMチャネルは35,000の分解能、最大放射時間が200msec、AGCが2e5、NCEが27および単離が1.7m/zで獲得した。
【0216】
ペプチドの定量化:
生PRMデータをSkyline23にインポートした。絶対定量値は、ペプチドごとの全断片化の抽出イオンクロマトグラムを合計し、本来のペプチドの総シグナル対サンプルにスパイクした重標識化内部標準の総シグナルの比を内部標準の量で掛けた値をエクスポートして得た。
【0217】
蛍光に基づくin vitroの殺傷アッセイ
本アッセイにおいては、蛍光量の減少を標的細胞死の定量に用いた24。レンチウイルス感染および抗生物質選択によってGFP+細胞を確立した。蛍光標的細胞を実験の前日に70%のコンフルエンシーで48-穴プレート(17Tおよび135Tをそれぞれ1×10および5×10細胞/ウエル)に植え付けて付着させた。0:1から4:1の範囲内のエフェクター対標的比で同種TILを加え、メラノーマと共に16時間共インキュベートした。各条件について3組の実験を準備した。インキュベーション後に、非付着TILおよび死滅標的細胞をPBSで洗い流した。残存生標的細胞の蛍光をTecan-M200プレートリーダーで定量した。蛍光の読み取りはプレート表面の3mm上を中心に行った。特異的溶解のパーセントを100×(C-X)/C(但し、CはTIL無しの条件の蛍光およびXはTIL存在下の蛍光)として計算した。
【0218】
B-LCLのペプチドのパルス化
合成純度95%超のペプチド(ILDTAGKEEY(配列番号1)、ILDTAGREEY(配列番号34)、ILDTAGQEEY)(配列番号35)をGenScriptより購入し、DMSOに溶解した。HLA-A*01:01を保有するB-LCLを完全培地に1×10細胞/mlに懸濁し、所望のペプチドと、所望の濃度(10-11~10-5)で2~4時間、37℃、5%のCO、加湿したインキュベーター内、または直立した15mlの三角フラスコ内でインキュベートした。全サンプルにおいてDMSOの容積は1%に維持した。ペプチドなしの対照については、ペプチドのないDMSOを添加した。TILとの共インキュベーションに進む前にB細胞をPBSで3回洗浄した。
【0219】
IFNγ放出アッセイによるT細胞の反応性の解析
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した、TILからのIFNγの放出を、反応性の測定に用いた。TILを同種メラノーマまたはBLCLのいずれかと1:1の比(10~2×10細胞)で、丸底96穴プレート内で共培養し、37℃、5%のCO、加湿したインキュベーター内で一晩インキュベートした。TILから分泌された可溶性IFNγを、BiolegendヒトIFNγ ELISA MAXDeluxe(#430106)を用い、Tecan-M200プレートリーダーを使用して共培養上清から定量した。全ての実験を生物学的な3回の繰り返しで実施した。
【0220】
フローサイトメトリー解析および蛍光活性セルソーティング
特に断りがない限り、フローサイトメトリー実験における染色および解析バッファーとしてPBS、1%のBSA、2mMのEDTAを使用した。ソーティングの前に細胞を40μmのセルストレーナー(Corning,#431750)に通した。フローサイトメトリーのために、単一細胞懸濁液をBD LSRII(BD Biosciences)またはCytoFlex(Beckman Coulter)で解析した。BD FACSAria IIIまたはBD FACSAria IIセルソーター(BD Biosciences)を蛍光活性化セルソーティングに使用した。4℃の暗条件で細胞を抗体/テトラマーと共に30分間インキュベートし、その後、洗浄した。起こり得る干渉を防止するために、テトラマーおよびTCRβまたは抗CD8染色を順番に実施した。
【0221】
テトラマーをNIHテトラマーコア施設から入手し、バックグラウンド染色を最小にするために校正した: HLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)(BV421結合)を1:8000~10000で使用し、A*01:01/ILDTAGREEY(配列番号34)(FITC結合)を1:4000で使用した。以下の抗体をBiolegendより購入し、1:100希釈で使用した:CD3(PE/Cy7,#300316)、CD4(FITC,#317407)、CD8(APC#300911またはFITC#301006)、4-1BB(APC#309809)、マウスTCRβ定常領域(APC,#109211,Biolegend)、CD19(BV421,#302234)。withCellTrace Far Red、抗カスパーゼ3およびIFNγ補足抗体による染色を、開裂カスパーゼ3殺傷およびIFNγ分泌アッセイに記載したように実行した。
【0222】
サイズおよび顆粒度の測定値は生単一細胞のゲートとして機能した。特定した場合、ヨウ化プロピジウム(Invitrogen #P3566)を生/死染色に使用した。ソーティング実験は陽性および陰性のサブ集団を重複無しにゲートした。
【0223】
IFNγ分泌アッセイ
A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)反応性TILのパーセンテージを求めるために、IFNγ分泌アッセイ(MiltenyiBiotec,#130-090-762)を製造社の説明書に従って実施した。このアッセイでは、IFNγ特異的抗体を細胞表面に取り付け、細胞から放出された際に分泌サイトカインを補足する。細胞表面に結合したIFNγ分子は、次に人工表面分子として染色し、細胞をフローサイトメトリーで解析する。この手法では、TCR認識ではなく、誘導反応性に基づいてネオアンチゲン特異的細胞が同定されることから、テトラマー染色を補完する。これら実験においてAPCとして機能するIHW01161細胞を、ペプチドなし(DMSO)または10μg/mlの変異ペプチド(ILDTAGKEEY)(配列番号1)または野性型(ILDTAGQEEY)(配列番号35)ペプチドのいずれかでパルスした。TILを4時間にわたり、APCと共インキュベートした。ペプチドなしおよび野性型の条件は対照シナリオとなり、ネオアンチゲン特異的反応によるバックグラウンドを区別することを可能にした。
【0224】
抗原誘導性TIL増幅アッセイ
APCとして機能するIHW01161細胞に70グレイを照射し、PBで1度洗浄し、10μg/mlの変異ペプチド(ILDTAGKEEY)(配列番号1)または野性型ペプチド(ILDTAGQEEY)(配列番号35)のいずれかで、上述したようにパルスした。2.5×10細胞/mlの17TIL懸濁液をT細胞培地で調製し、96穴の丸底組織培養プレートに100μ1等量を分注した。変異体および野性型でパルスされたAPCを、それぞれ、2.5×10細胞/mlをT細胞培地に再懸濁した。各ウエルにT細胞培地またはパルスされたAPC懸濁液のいずれを100μl追加した。追加の1μg/mlの変異体または野性型ペプチドをそれぞれ変異体/野性型ウエルに添加した。続いて、細胞を37℃、5%のCO、加湿したインキュベーターで合計10日間培養した。インキュベーションの3日目に、培地の半量を100IU/mlのIL-2、50ng/mlのIL-7(Peprotech,#200-07)および50ng/mlのIL-15(Peprotech,#200-15)を含有する新鮮T細胞培地と交換した。インキュベーションの7日目に、培地の半量を200IU/mlのIL-2、50ng/mlのIL-7(Peprotech,#200-07)および50ng/mlのIL-15(Peprotech,#200-15)を含有する新鮮T細胞培地と再び交換した。インキュベーションの10日目に、細胞を回収し、抗CD4抗体とA*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)テトラマーとで共染色し、フローサイトメトリーで解析した。
【0225】
バルクTCRシーケンシング
ソートされたTILに対して、既報25に従い、TCRライブラリーの調製を実施したまとめると、RNAをTILプールから抽出し、DNase(RNeasyマイクロキット(QIAGEN)、RQ1 RNaseフリーDNase(Promega))で処理した。次に、TCRのα/β鎖の定常領域に対するプライマー(SuperScript III,#18080044,Invitrogen)を用いて逆転写を実施した。ユニバーサルプライマー領域と独自の分子同定部(UMI)の両方からなる一本鎖オリゴヌクレオチドを、TCR cDNA転写産物(T4 RNAリガーゼ,#0204、NEB)の3’末に連結した。3回の連続したPCR工程によって、ライブラリーを適切に増幅させ、α鎖プールおよびβ鎖プールに分割した。ライブラリーに対して、NextSeq Illuminaプラットフォーム上で300サイクルのシーケンシングを実施し、所内のパイプラインを用いて処理した。主として、リードは、(1)正確な頻度評価のために、UMIに従ってクラスター化、(2)により、手動でTRDV遺伝子を添加したIMGT所定ライブラリーに従い、VおよびJ生殖細胞系遺伝子セグメントをアノテートした26、および(3)ヌクレオチドおよびアミノ酸レベルの両方でそれらのCDR3配列を決定。アノテートしたアウトプットはα鎖およびβ鎖の個別のコレクションからなり、非産生的なシングルトン配列を除去するように更にフィルタリングした。各実験条件について0.5×10細胞を回収した。テトラマーでソートした実験においては、TILをHLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)テトラマーおよび抗CD4抗体で染色し、バルクCD4-およびそのテトラマー+およびテトラマーサブ集団にソートした、全3種の集団のシーケンシングを行い、実験は生物学的な3回の繰り返しで実施した。
【0226】
単一細胞RNAおよびCD8+ TILのTCRシーケンシング
TIL:メラノーマの共インキュベーションおよびテトラマーソーティング
17TIL/17Tおよび135TIL/135Tを24穴組織培養プレートにウエル当たり4×10細胞となるように1:1の比で植え付けた。一晩の共インキュベーション後に、細胞をピペッティングにより再懸濁し、PBSで洗浄し、7~10×10細胞/mlをCryoStor CS10(#07930,STEMCELL Technologies)で凍結した。10×ライブラリー調製の日に細胞をBenzonase(#E8263,Millipore Sigma)添加完全培地に融解し、洗浄後に、完全培地で染色した。細胞をHLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)テトラマーで染色し、続いてCD4およびCD8を染色した。ヨウ化プロピジウムを生/死染色に使用した。
【0227】
サンプルを完全培地内にソートして、CD8+テトラマー+(CD8+CD4-テトラマー+)集団をCD8+テトラマー-(CD8+CD4-テトラマー-)集団から分離した。テトラマー染色無しのCD4およびCD8の染色およびCD8+CD4-集団のソーティングによってバルクCD8+のサンプルも得た。ソーティング後に直ちに細胞を10×ライブラリー調製に回した。
【0228】
10×ライブラリーの調製およびシーケンシング
上述したように、単一細胞ライブラリーの構築のために、ソーティング直後にサンプルを処理した。まとめると、ソートした細胞を洗浄し、0.04%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSに再懸濁し、トリパンブルー染色を用いて計数した。サンプル当たり10,000細胞のであるChromium Controllerにロードすることで単一細胞を液滴に補足した。Chromium 単一細胞 5’ V(D)Jv1.1キット(10×ゲノム)を製造業者のプロトコルに従って使用し、単一細胞遺伝子発現ライブラリーおよびTCR富化ライブラリーを調製した。サンプルのシーケンシングは、遺伝子発現ライブラリーは26bpのリード1、8bpのi7インデックスおよび58bpのリード2で、TCRライブラリーは150bpのペア化リードで、Illumina NovaSeqで実施した。
【0229】
scRNAライブラリーおよびTCR-seqライブラリーのデータプロセッシング
10×のscRNA発現ライブラリーから得たリードをヒトゲノムアセンブリGRCh38(hg38)に対してアラインし、cellranger count(10×ゲノム、バージョン3.1.0)を用いて定量した。細胞バーコードのみを含む、フィルタリングした変数バーコードマトリクス(feature-barcode matrices)をさらなる解析に使用した単一細胞遺伝子発現マトリクスをR(バージョン3.6.1)にインポートし、Seurat(バージョン3.1.1)を用いて解析した。検出された、UMIが4,000未満または20,000超の細胞を除いた。さらにミトコンドリアのリードが10%超の細胞を続く分析から除外した。
【0230】
単一細胞TCRリードをヒトゲノムアセンブリGRCh38(hg38)に対してアラインし、cellranger vdj(10×ゲノム、バージョン3.1.0)を用いて、再構築したTCRコンセンサス配列に組み立てた。生産性TCRαおよびTCRβ配列のみをさらなる分析で考慮した。全体としては、TCR配列は、95.2%の細胞においてアノテーションされ、ペアになったTCRαβ配列は41,542細胞の内の37,934細胞(91.3%)で検出された。従来のペア化TCR鎖の組み合わせであるαβまたはααβのみを下流の分析のために残した(34,966細胞、84.1%)。同じCDR3αβアミノ酸配列が共通する細胞を同じTCRクローンに属すると定義した。
【0231】
ネオアンチゲン反応性クローンの同定:
TCRクローン頻度を、各患者のソートしたテトラマー+とテトラマー集団との間で比較した。クローンは、以下の場合はテトラマー特異的とみなした:(1)テトラマー-集団と比べてテトラマー+のクローン頻度が100倍以上高い、および(2)バルクTCRシーケンシング実験の少なくとも1種の複製において、テトラマー集団と比べてテトラマー+の各TCR鎖が100倍以上富化されている。12および1ネオアンチゲン反応性クローンを、上記基準に基づき、それぞれ17TILおよび135TILに対してテトラマー特異的と定義した。少なくとも5細胞からなるテトラマー特異的クローンを下流のネオアンチゲン特異的単一細胞分析のために保持した。TCR類似性基準に基づき、N17.5(7細胞)、N17.6(2細胞)およびN17.7(1細胞)を含めた。
【0232】
単一細胞データの統合およびクラスター化
ネオアンチゲン反応性クローンの遺伝子発現プログラムを解析するために、両患者のテトラマー+の集団(ネオアンチゲン反応性クローンのためにフィルタリングしたもの)およびバルクサンプルを統合した。具体的には、分散安定化変換に基づく、対数正規化および可変変数選択を初めに各サンプルに対して個別に実行した。次に、バルクサンプルを参照とし、相互PCAを30ディメンションとしたFindIntegrationAnchorを用い、データセット間のアンカーを同定した。30ディメンションのIntegrateDataを用いてサンプルを統合した。統合した発現マトリクスを次に各変数についてスケーリングし、センタリングした。次に、PCAを用いて、統合したスケーリング後のデータに対して直線次元削減を実施し、TCRおよび細胞周期遺伝子を除いた。可視化のために、初めの30の主成分を用いてUMAPプロジェクションを計算した。遺伝子発現プロファイルに基づきクラスターを同定するために、kパラメーターを20、分解能を0.5として共有近傍法(SNN)モジュール性最適化クラスター化を実施した。
【0233】
TCR類似性解析
3回繰り返したバルク17TILTCR-シーケンシング実験のそれぞれについて、テトラマー+のレパートリーをバルクレパートリーと比較した。各アミノ酸クロノタイプについて、テトラマー+レパートリーの頻度と、テトラマーレパートリーの頻度との比を計算した。バルクレパートリーに配列が存在しないときは、その頻度を、レパートリーの最小頻度よりもわずかに低い3×10-5と概算した。この比が1を超える(即ち、テトラマー+の集団の方が高頻度の)配列を選択した。3回繰り返した実験の全てにおいてこの集団に出現した配列に集中した。この手順では10のα鎖および11のβ鎖を得た。この集団内では、N135.1からのハミング距離が低い配列を探した。各β配列について、エマーソンデータセット27内のその共有レベルを計算し、各α配列またはβ配列については、与えられたCDR3(αまたはβ)の発生確率を概算するためのモデルである、OLGA28によって提供された.標準ヒトモデルに基づき、その発生確率を計算した。エマーソンデータセット内にHLA-A*01:01がどれだけ普及しているかの研究は、DeWitt et al.29のHLAアノテーションに基づいていた。
【0234】
PBMCにおけるTCR過剰発現
後述するように、この比六発表されている技術をわずかな改変後に使用した30。CDR3ヌクレオチド配列をIMGT参照文献26に示される適切なVおよびJ配列によって再構築し、既報31のように、マウス定常領域に結合した。最適化マウス定常領域配列を得た。各TCR鎖をXbaI/NotI制限部位の間に埋め込んだ。配列はTwist bioscienceに二本鎖DNAと発注し、販売社のプラットフォームを用いてヒト発現用に配列を最適化した。TCR鎖をpGEM-4Z-EGFP-A64内に制限的にクローニングした。配列の立証されたクローンプラスミドをSpeI消化で直線化し、AmpliCap-Max T7 High Yield Message Makerキット(#C-ACM04037,CellScript)を用いてin vitroで転写し、RNAcleanupキット(#23600,NorgenBiotek)を用いて精製した。形成されたmRNAを5μgの等量で-80℃に保存した。ElectroSquare Porator ECM830(BTX)を用い、PBMCをα/β mRNA混合物、1×10細胞当たり10μg、400V/500μでエレクトロポレーションに付した。エレクトロポレーションした細胞を、下流の実験で使用する前に少なくとも2時間休ませた。マウス定常TCRβ染色を用いたフローサイトメトリーにより、TCR発現を立証した。
【0235】
ペプチド滴定アッセイ
HLA-A*01:01+B-LCLを、上述したように、10-11M~10-5Mの範囲内の濃度の合成ペプチドでパルスし、続いて、TILまたはエレクトロポレーションしたリンパ球のいずれかと、1:1の比で、96穴の丸底プレート内、37℃、5%のCOの加湿したインキュベーターで16~20時間共インキュベートした。共インキュベーションに続き、プレートを300gの遠心分離に付した。4-1BBのリードアウトについて、細胞ペレットをCD19、CD3、CD8および4-1BBに対して染色し、フローサイトメトリーで解析した。CD8+の集団内の4-1BB+の細胞のパーセンテージを種々の条件について比較した。分泌IFNγのリードアウトについては、上清を回収し、上述のように、ヒトIFNγ ELISA MAX Deluxe(Biolegend,#430106)を用いて解析した。
【0236】
カスパーゼ3開裂アッセイ
メラノーマ標的細胞の細胞傷害T細胞誘導性アポトーシスを測定するために開裂カスパーゼ3の細胞内染色を既報32のように使用した。簡単には、メラノーマ細胞を、製造社のプロトコルに従い、CellTrace Far Red(Invitrogen,#C34564)で染色した。1×10の標的メラノーマ細胞を次にリンパ球と3:1のエフェクター:標的比で、丸底96穴プレート内、37℃、5%のCO、加湿したインキュベーター内で3時間インキュベートした。インキュベーションに続き、細胞を洗浄し、固定し、透過処理し、カスパーゼ3アポトーシスPEキット(BD,#550914)を製造社のプロトコルに従って使用して抗開裂化カスパーゼ3-PE抗体で標識した。CellTrace+の標的細胞中のカスパーゼ3+細胞のパーセントを決定するために、洗浄した細胞をフローサイトメトリーで解析した。目的のTCRのエレクトロポレーションを実施したドナー由来リンパ球を、RNA無しのエレクトロポレーションに付したリンパ球またはメラノーマ細胞のみのいずれかである陰性対照と比較した。実験は生物学的な3回の繰り返しとして実施した。
【0237】
統計解析
統計解析をMacO用のGraphPadPrismバージョン9.0.2、ベースR(バージョン3.5.0)およびエクセル用Real Statistics Resource Packソフトウエア(リリース7.7.1、www(dot)real-statistics(dot)com)で実行した。汎癌、メラノーマおよびRAS.Q61-変異したTCGA集団の間のHLAアレル頻度の比較をFDR補正付きのフィッシャー抽出試験で実施した。IFNg ELISA、4-1BBに基づく反応性および開裂カスパーゼ3アッセイを多重比較用テューキー補正付きの一元配置ANOVA、で解析した。複数のアッセイを同時に行い、よって信頼性の高い比較が可能な場合、二元配置ANOVAを使用した。ペプチド-滴定アッセイを多重比較用シダック補正付きの二元配置ANOVAで解析した。単一細胞の表現型の割合はカイ2乗検定で行った。TCRクローン間の活性化スコアの差はボンフェローニ多重仮設試験補正付きのウィルコクソンの順位和検定で解析した。補正後のP値は≦0.05のとき有意とした。
【0238】
材料と方法の参照文献
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【0239】
実施例1
ネオアンチゲン候補の選択
ネオアンチゲン候補のデータ駆動選択
NRAS.Q61は、メラノーマ内で2番目に最も高度に変異したタンパク質の位置であるが、その誘導ネオアンチゲンの全てが等しく再発性ではない。「興味深い」ホットスポット-ネオアンチゲンとなるためには、組み合わせるHLAアレル/変異頻度が癌患者で高くなければならない。ここで、ネオアンチゲンの発見のために、高い有効性の候補に修するために患者の遺伝的データ分析するデータ駆動アプローチを採用する。解析データセット内でRAS.Q61変異と共に発生するHLAアレルのみを考慮し、8~14長のRAS.Q61誘導ネオペプチドであるNetMHCpanを結合の予測のために使用した。これらデータを用いて、各HLA/変異の組み合わせに2つのスコア:(1)コホート内のその頻度、および(2)その最良結合予測スコア(即ち、予測された結合性ネオペプチドに対して列挙した最良の%Rank)。次に段階的なフィルタリング/ソーティングを適応して、頻度閾値を設定し、残りの候補をその概算結合ポテンシャルに基づき順位づけた。
【0240】
3種のRASアイソフォーム、即ち、NRAS、KRASおよびHRAS、は同一のN末配列を有し、4種の最も高頻度のRAS.Q61アミノ酸置換:アルギニン、リシン、ロイシンおよびヒスチジンと同様に、全てを解析に加えた。
【0241】
上述のスキームを使用し、3種のメラノーマコホート:363メラノーマ症例において変異およびHLA-Iアノテーションを集計するTCGA、このような患者221人を育成するHartwigデータベースおよび既報の69患者のMELA-AUデータセット。
【0242】
これらコホート内の95(26%)、60(27%)および15(22%)の個体はそれぞれ変異をRAS.Q61に有する。予想通り、61位で最も高頻度のアミノ酸置換はアルギニン(46~60%)およびリシン(35~47%)であり、61位の最も多い変異RASアイソフォームがNRASであった(RAS.61変異の96~100%)。
【0243】
RAS.Q61変異体患者および-野性型メラノーマ患者の間のTCGA HLAアレル頻度の比較は、有意な有病傾向(significant prevalence skews)を示さなかった(FDR補正付きフィッシャー抽出試験)。
【0244】
HLA/変異の組み合わせをそれらのスコアでプロットすると、最も約束された候補が優位である理由が示される。3種のデータセットにわたり、HLA-A*01:01が候補のツートップ:HLA-A*01:01/RAS.Q61RおよびHLA-A*01:01/RAS.Q61K、を押し上げるために飛びぬけて貢献している。よって、HLA-A*01:01をさらなる解析に選択した。
【0245】
一般集団において多く存在することと一致し、分析した癌コホート内の患者の26~38%はHLA-A*01:01を保有していた。重要な点は、RAS.61変異体集団に拘束してもアレル頻度が抄出しない点である:RAS.Q61変異体メラノーマ患者の27~40%が保有する。7~8.7%のメラノーマにおいてHLA-A*01:01はRAS.Q61変異と共に出現する。特に、我々の解析では、3.3~4.5%および3~4.3%はそれぞれHLA-A*01:01/RAS.Q61Rの組み合わせおよびHLA-A*01:01/RAS.Q61Kの組み合わせを保有する。
【0246】
NetMHCpan 4.0は、A*01:01に対して32のRAS.Q61誘導ネオペプチドを予測し、そこには9の予測された強い結合体が含まれる。重要な点は、同じ「基準ペプチド」、ILDTAGXEEY(配列番号40)、がRAS.Q61RおよびRAS.Q61Kの両方に対して最も結合すると予測されるものであり(予測された結合親和性はそれぞれ202.4nMおよび218.5nM)、一方、より存在の少ないバリアント(RAS.Q61LおよびRAS.Q61H)もA*01:01アレルを結合すると予測されている(それぞれ58.2nMおよび101.8nM)。
【0247】
注目すべきは、汎癌解析が我々のメラノーマに基づく候補優先化を要約する点である。今でも頻繁にRAS.Q61変異は汎癌症例の3.3~5.9%に出現する(TCGAおよびHartwigデータセットのそれぞれで226/6824個体および123/2091個体)。HLA-A*01:01/RAS.Q61ネオアンチゲンの妥当性は、よってメラノーマに制限されるものではない。
【0248】
単アレル過剰発現系を用いたHLA-A*01:01/RAS.Q61誘導ネオアンチゲンの直接同定
RAS.Q61Rとは異なり、高再発性HLA-A*01:01/RAS.Q61K組み合わせに対してネオアンチゲンは過去に報告されていない。RAS.Q61Kに注目し、HLA-A*01:01結合ネオアンチゲンランドスケープに対する不偏なクエリを設定した。このために、25-merのRAS.Q61Kミニジーンを共過剰発現する、721.221に基づくHLA-A*01:01単アレル細胞系を確立し、HLAペプチドミクスに付した。この過剰発現セットアップは存在頻度およびネオアンチゲン増幅において有利でありながら、本来の抗原プロセシングおよび提示を維持している。質量分析(MS)結果をMaxQuantで解析し、ミニジーン配列を手動で加えたヒトプロテオームデータセット(Uniprot)に対してクエリを実行した。合計2403ペプチドを721.221A*01:01;mRAS.Q61Kに対して検出した。NetMHCpanが7種の異なるHLA-A*01:01結合ネオペプチドをRAS.Q61Kに予測するのに対して、単一のデカペプチドであるILDTAGKEEY(配列番号1)が同定された。この知見は合成ペプチドの同定スペクトルの比較によって更に立証された。興味深いことに、ILDTAGKEEY(配列番号1)と、それに非常に関連したILDTAGREEY(配列番号34)は、それぞれがHLA-A*01:01拘束的に、RAS.Q61KおよびRAS.Q61Rに対して予測された最もスコアの高いネオペプチドであった。高感度絶対標的化MSを用いて、我々の過剰発現系でネオペプチドの提示を定量化し、さらにうRAS.Q61R誘導ILDTAGREEY(配列番号34)の提示を立証した。ILDTAGKEEY(配列番号1)およびILDTAGREEY(配列番号34)はそれぞれ721.221A*01:01;mRAS.Q61Kおよび721.221A*01:01;mRAS.Q61Rに対して、1×10細胞当たり3.2850および38.2375amolが検出された。
【0249】
ILDTAGKEEY(配列番号1)は、HLA-A*01:01/RAS.Q61K-発現腫瘍にいてロバストに提示される
我々の知見を悪性のコンテキストおよび内在性変異/HLA発現下で更に立証するために、17T腫瘍誘導細胞系をHLAペプチドミクスに付した。過去に完全エキソームによる試みが17TメラノーマをNRAS.Q61K変異体として同定し、HLAタイピングがそれをHLA-A*01:01+であると認めたことから、予測または過去の同定に関わらず、ネオアンチゲンを不偏的に同定するために、MSをディスカバリーモードで使用した。データベースとしてヒトプロテオームに手動で加えたNRAS.Q61Kバリアントを含む17T変異したタンパク質配列に対して上述したように解析を実行した。その結果、2356ペプチドの中から、単一ネオペプチドであるデカペプチドILDTAGKEEY(配列番号1)(図4)が検出された。
【0250】
提示のロバスト度を探索するために、いずれもがHLA-A*01:01/NRAS.Q61Kの組み合わせを内在性発現する、4種の瞬間凍結腫瘍および5種の追加の腫瘍誘導細胞系からなるパネルを作製した。ILDTAGREEY(配列番号34)の内在性提示も試験するためにHLA-A*01:01/NRAS.Q61Rメラノーマ細胞系であるHs940Tを我々の解析に含めた。全ての細胞系が変異体NRAS転写産物を発現することが立証された。
【0251】
高感度絶対標的化MSを用いたHLAペプチドミクスは、全NRAS.Q61K-変異体サンプルからILDTAGKEEY(配列番号1)ネオペプチドを、1mgの腫瘍組織当たり1×10の推定の下、1×10細胞あたり0.1250~2.9138amolの範囲内の量で同定した41。ILDTAGREEY(配列番号34)はHs940Tに対して予想された通り、同定された。重要な点は、我々のパネルの細胞系HuT78はT細胞リンパ腫から誘導されたものであり、同定されたネオアンチゲンが癌種を超える適応性を有することを明示する。
【0252】
我々は、ILDTAGKEEY(配列番号1)が、HLAアレルA*01:01のコンテキストで提示された、ロバストで、天然にプロセッシングされるRAS.Q61K誘導ネオペプチドであると結論付けた。
【0253】
実施例2
ネオアンチゲンを結合する新規TCRの同定
結果
上述したように、変異体ILDTAGKEEY(配列番号1)はHLA-A*01:01に協力に結合すると予測され、そうすることが既に立証されている(国際公開第2020/234875号)。
【0254】
HLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)ネオアンチゲンを標的とするTCRには翻訳価値があり、組換えT細胞を有し、それを利用するACTは、メラノーマ症例の3%および2.9:1000の個体の汎癌が該当すると期待される。RNAに基づくTCRシーケンシングは、関連するα鎖およびβ鎖を同定するために、テトラマーでソートしたTILに対して実施した。17TILおよび135TILのそれぞれに対して、3種の細胞集団をそれぞれ別個にシーケンシングした: バルクCD4-およびそのA*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)-テトラマー+およびテトラマー-のサブ集団。テトラマー富化(即ち、テトラマー特異的)鎖を抽出するためにテトラマー+のレパートリーおよびテトラマー-のレパートリーを対比させ、一方、バルク集団のシーケンシングは、これらの鎖をコンテキスト下に置くことを可能にした。ソーティング実験およびシーケンシング実験は生物学的な3回の繰り返しで実施し、非常に一定していた。各シーケンシング実験が数百から数千の明確な、産生性TCR鎖を明らかにし、17TILおよび135TILはいずれもオリゴクローン性分布を明確に示した。1%以上の転写産物からなるアミノ酸配列に限定すると、11のβ鎖(12のα鎖)が17TILのCD4-のレパートリーを独占し、その累積カバー率は転写産物の75.4%であった。同様に、135TILにおいては、6のβ鎖(7のα鎖)がCD4-のレパートリーの92.2%を担う。テトラマー+のサブ集団およびテトラマー-のサブ集団も同様にオリゴクローン性TCR分布によって特徴づけられた。さらに少なくとも100倍の
【数1】
転写産物頻度富化を示すTCR鎖に集中すると、17TILに対してネオアンチゲン特異的なものとして4のβ鎖および5のα鎖が現れた。テトラマー+、バルクCD4-およびテトラマー-の集団のそれぞれにおけるこれら4のβ鎖の累積頻度は、68.5%、3%および0.005%であった。同様に、テトラマー+、バルクCD4-およびテトラマー-の集団のそれぞれにおけるこれら5のα鎖の累積頻度は、68.9%、3.2%および0%であった。単一αβペアである135TILは上記基準を満たし(NA135.1鎖およびNB135.1鎖)、テトラマー+135TIL内の頻度はそれぞれ89.6%および85%であった。
【0255】
同種メラノーマとの一晩の共インキュベーション後のソートした4-1BB+TILのTCR-のシーケンシングは、目的鎖の全てがメラノーマ反応性レパートリー内の一部を成しており、4-1BB+のサブ集団において2のα鎖および1のβ鎖が有意に富化されていることを確証した(多重比較のために、Benjamini-Hochberg補正付きの二項検定)。
【0256】
TCRレパートリーの単一細胞の特徴付け
これらTCRレパートリーについて更に探求し、テトラマー-結合性のαβペアリングについて明らかにするために、単一細胞TCR-シーケンシングを実施した。TILと同種メラノーマとの(即ち、17TILと17T、135TILと135T)一晩の共インキュベーション後に、サンプルを目的の集団にソートし、次に10×プラットフォームを用いた二重RNAシーケンシングおよびTCR単一細胞シーケンシングを実施した。バルクシーケンシング実験と同様に、本発明者らはバルクCD8+およびそのHLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)-テトラマー+およびテトラマー-のサブ集団の3種のTIL集団に着目した。テトラマー特異的クローンへと突き進むために、
【数2】
頻度富化を使用した。
【0257】
期待通り、バルクおよび単一細胞のシーケンシングデータは高度に一致していた。バルクTCR-シーケンシングから演繹した候補鎖のペアリングは単一細胞データによって確証された。
【0258】
本発明者らは、単一細胞テトラマー+のサブ集団内の少なくとも2の細胞によって再提示されたクローンに集中した。17TIL内の主要なテトラマー特異的クローンを本願において、頻度の減少する順に、N17.1~5と称する。135TILに対する単一ドミナントテトラマー特異的クローンをN135.1と称する。N17.2、N17.4、N17.5およびN135.1は全てαβ細胞であり、一方、N17.3はααβである。従来の解析パイプラインはN17.1をαβクローンとした。しかし、下記でさらに明らかにするように、このクローンは、実際はδ遺伝子TRDV1とリアレンジメントされた第2のα鎖を有する。上記クローンのそれぞれのTCR鎖を次のように表す:N{鎖種:A/B}{TIL:17/135}.{クローン番号}.{鎖番号}。例えば、クローンN17.2のβ鎖はNB17.2と記載し、一方、クローンN17.3の第2のα鎖はNA17.3.2である。
【0259】
受容体の配列を下記表1にまとめた。
【表1】
【0260】
ネオアンチゲン-結合TCRレパートリーの立証および特徴付け
複数のテトラマー特異的T細胞クローン同定したため、本発明者らは、HLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)ネオアンチゲンに対する個別の感度および特異度を立証することを試みた。
【0261】
これまでに、健常ドナー末梢T細胞内で目的のα/β組み合わせを過剰発現させてきた。図1のAに示したように、テトラマー結合実験は、N17.2、N17.5およびN135.1に対するネオアンチゲン結合を確証し、ααβクローンN17.3(NA17.3.2/NB17.3)に対する適切なαβ組み合わせを識別した。驚くべきことに、17TILのテトラマー特異的クローンの中で最も多く存在するN17.1に関連するαβペアは、効率的な発現にもかかわらず、立証されなかった(図1のA)。単一細胞RNAシーケンシングで見られるような、クローンによるδ遺伝子TRDV1のクローン発現はTCRシーケンシングデータの再調査およびN17.1の第2のα鎖、即ち、TRDV1/TRAJ27組換え体の一般的でないイベントによって生じるNA17.1.2の解明へとつなげた46。NA17.1.2はバルクTCR-シーケンシングにおいてNA17.1.1と同等の頻度で同定されていた。他のTRDV遺伝子はα鎖の再編成に関与していなかった。予測通り、NA17.1.2/NB17.1鎖の組み合わせは、テトラマー染色によって立証された(図1のA)。
【0262】
本発明者らは、異なるTCR組換えT細胞と、種々の濃度のILDTAGKEEY(配列番号1)ネオペプチドまたはその対応野性型のいずれかでパルスされたHLA-A*01:01+B-LCLとの共インキュベーションへと進めた。超生理学的なパルスペプチド濃度における変異したペプチドに対する差異的な反応性によって証明されるように、全5種の試験したTCRがネオアンチゲン特異的であることが証明された(図1のB)。ペプチド滴定実験は、これらTCRが0.01nM~10nMの範囲の濃度においてILDTAGKEEY(配列番号1)ネオペプチドを強力に認識することをさらに明らかにした(図1のC)。興味深いことに、TCR頻度と感度との逆比例関係の傾向が17TIL内で観察された。内在性発現ネオアンチゲンに対するTCRの反応性および細胞傷害能をさらに正確に測定するために、本発明者らは、TCR組換えT細胞と、swithHLA-A*01:01+NRAS.Q61K+腫瘍細胞系との共インキュベーションを実施した。2つの最も強力なTCRであるN17.1.2およびN17.2を腫瘍細胞系のパネルに対する反応性アッセイによる試験は、免疫ペプチドミクスの結果を再現した(図2のA)。加えて、HLA-A*01:01+KRAS.Q61K+肺腺癌細胞系Calu6の共インキュベーションにおいて有意な4-1BBアップレギュレーションが観察され、これは予測通り、HLA-A*01:01/ILDTAGKEEY(配列番号1)ネオアンチゲンの交差アイソフォーム、交差癌種関連性(cross-cancer-typerelevance)を裏付けた。全5種の試験したTCRが、開裂カスパーゼ3アッセイで示されたように、ネオアンチゲン発現メラノーマに対して細胞傷害能を有していた(図2のB)。
【0263】
テトラマー結合性17TILの大部分がHLA-A*01:01/ILDTAGREEY(配列番号34)-テトラマーにも交差結合することから、両方の反応性を保有するのはN17.1.2であると推測した。注目すべきことに、実際、N17.1.2は、1nMの低濃度でILDTAGREEY(配列番号34)ネオペプチドを認識し、HLA-A*01:01+/NRAS.Q61R+細胞系との共インキュベーションの際に4-1BBのアップレギュレーションを誘導することが証明された(図1のCおよび図2のA)。残りの4のTCRはILDTAGREEY(配列番号34)ネオペプチドを認識しないことが確認された。
【0264】
ネオアンチゲン特異的T細胞受容体の患者内および患者間の配列収束
本発明者らは、(表1に提示したような)未発見のα/β鎖のいくつかは代替可能ではないか探索した。図3のA~Fに示したように、NH1(NA135.1/NB17.5)は、類似クラスター内でαおよびβの両方のPgenを最大化した仮説クローンである。NH1のネオアンチゲン-反応性を試験し、テトラマー染色およびネオアンチゲン特異的IFNγ放出の両方で立証した(図3のA~F)。逆向きの組み合わせであるNA17.5/NB135.1についても立証された。
【0265】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、このような代替、改変、及び変形はすべて、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるものとする。
【0266】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書中に援用されることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されているかのように、その全体が参照により本明細書中に援用されることは本出願人の意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。章の見出しが使用される範囲において、当該見出しは必ずしも限定を加えるものと解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権書類は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0267】
配列番号1: ネオペプチドアミノ酸配列
配列番号2: cdr3sアミノ酸配列
配列番号3: cdr3sアミノ酸配列
配列番号4: cdr3sアミノ酸配列
配列番号5: cdr3sアミノ酸配列
配列番号6: cdr3sアミノ酸配列
配列番号7: cdr3sアミノ酸配列
配列番号8: cdr3sアミノ酸配列
配列番号9: cdr3sアミノ酸配列
配列番号10: cdr3sアミノ酸配列
配列番号11: cdr3sアミノ酸配列
配列番号12: cdr3sアミノ酸配列
配列番号13: cdr3sアミノ酸配列
配列番号14: cdr3sアミノ酸配列
配列番号15: cdr3sアミノ酸配列
配列番号16: cdr3sアミノ酸配列
配列番号17: cdr3sアミノ酸配列
配列番号18: cdr3s核酸配列
配列番号19: cdr3s核酸配列
配列番号20: cdr3s核酸配列
配列番号21: cdr3s核酸配列
配列番号22: cdr3s核酸配列
配列番号23: cdr3s核酸配列
配列番号24: cdr3s核酸配列
配列番号25: cdr3s核酸配列
配列番号26: cdr3s核酸配列
配列番号27: cdr3s核酸配列
配列番号28: cdr3s核酸配列
配列番号29: cdr3s核酸配列
配列番号30: cdr3s核酸配列
配列番号31: cdr3s核酸配列
配列番号32: cdr3s核酸配列
配列番号33: cdr3s核酸配列
配列番号34: ネオペプチドアミノ酸配列
配列番号35: 合成ペプチド
配列番号36: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号37: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号38: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号39: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号40: 合成ペプチド、7位のXaaは任意の天然アミノ酸であり得る
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024518302000001.app
【国際調査報告】