(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】鋼板コイルを用いた移動式ヘリカルパイプ工場
(51)【国際特許分類】
B21C 37/12 20060101AFI20240423BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20240423BHJP
B23C 3/12 20060101ALI20240423BHJP
B23K 9/173 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B21C37/12 Z
B21C37/12 A
B23K9/032 A
B23C3/12 D
B23K9/173 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565231
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 BR2021050163
(87)【国際公開番号】W WO2022221929
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523399599
【氏名又は名称】メンプス-トゥボス エリコイダイス インドゥストリア エ セルヴィソス リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ,エネ ピレス デ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,リカルド ミゲル レイタン
【テーマコード(参考)】
3C022
4E001
4E028
4E081
【Fターム(参考)】
3C022DD08
4E001AA03
4E001BB00
4E028DA03
4E028DA05
4E028DA07
4E081AA12
4E081BA02
4E081BB03
4E081CA07
(57)【要約】
トレーラー(1)、ラフト(2)、コンテナ型構造物(3)に設置可能なヘリカルパイプ製造工場であって、任意選択の駆動装置(4)、ベベラー(13)、1パスあたり2本(36)、3本(37)、4本(38)、5本(39)の溶接ワイヤを使用できるワイヤ溶接システム(18)の使用により、高速生産と、最大で25.4mm(1インチ)の鋼板コイルの使用が可能であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場であって、より高い生産速度で最大で25.4ミリメートル(1インチ)の鋼板コイルで動作するために、プラー(7, 8)、プレス機(10)、カレンダー(17)、および溶接機(18)を駆動するために十分な電気エネルギーを有する自律型低床式トレーラー(1)に設置された装置を使用して、鋼板コイルからヘリカルパイプが得られ、トレーラー(1)の前部にコイルをアンワインダー(6)上に位置するコイル駆動装置(4)を任意選択で有しており、プラー(7, 8, 9)は、直面するプレス機(10, 11)およびパイプストレートナー(12)を通して、鋼板を生産ラインに沿って移動させ、ベベラー(13)は、鋼板の側縁に15°から30°の面取りを施し、ガイドテーブル(14, 15, 16)は、カレンダー(17)の方向における鋼板の位置合わせを維持し、溶接機(18)において、ワイヤ溶接システム(18)は、1パスあたり2本(36)、3本(37)、4本(38)、または5本(39)の溶接ワイヤを含むことができる、移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【請求項2】
コイル駆動装置(4)は、工場フロア(1, 2, 3)上に配置されたレール(21)上に支持され、アンワインダー(6)の方向への移動を可能とするキャスター(20)を備えるガントリー(19)を含み、ガントリー(19)の底部には高架軌道(22)があり、そのレール(23)をローラー(24)が移動することで、コイルを受けるクレードル(25)をスライド移動させることができる、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【請求項3】
新規のパイプストレートナー(12)と、ガイドテーブル(14、15)に挟まれたベベラー(13)との間に配置されるプラー(7、8)の再配置を提示し、ガイドテーブル(15)には、任意選択の補助プラー(9)と別のガイドテーブル(16)が続く、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【請求項4】
プレス機(10)が付加されている、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【請求項5】
パイプストレートナー(12)は、下側シリンダ(29)に平行な上側シリンダ(28)を有し、電動機(30)によって十分に駆動され、調整ロック(32)を有するスピンドル(31)によって調整可能である、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【請求項6】
ベベラー(13)は、鋼板の2つの側縁を囲み、切削インサート(35)が15°から30°の角度に調整されるフライスカッター(34)を駆動する電動機(33)を有する、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【請求項7】
前記工場がラフト(2)に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
可動式工場。
【請求項8】
前記工場がコンテナ型構造物(3)に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(はじめに)
本特許は、トラック、ラフト、またはコンテナ型構造物に設置可能な移動式工場に関するものであり、ヘリカルパイプの製造に必要なすべての装置および工具を含む。その特徴は、主としてコイルの移動、使用される鋼板の端部の準備、およびパイプを得るための溶接において得られる生産速度の向上である。
【0002】
(発明の属する技術分野)
本発明は、重機の分野で使用され、より具体的には、らせん状の継ぎ目を有する鋼板コイルパイプを現場で製造するための手段で使用される。
【背景技術】
【0003】
(説明)
らせん状の継ぎ目を有するパイプの製造は、20世紀初頭の中頃まで遡り、今日、パイプ製造業、特に、配管、メタルライナー、石油およびガス輸送において最も一般的に使用されている形態の1つである。製造におけるらせん状の継ぎ目の使用は、様々な直径のパイプを製造する設備を使用することによるコストの削減、工場レイアウトの縮小による節約、他のタイプの継ぎ目と同等かそれ以上の機械的性能などの利点をもたらす。
【0004】
通常、パイプの製造は定置された工場で行われる。そのため、保管や取り扱いの過程で、パイプの長さによって工程が制限される。パイプの長さが30メートルを超えると、DNITの2020年1月6日付決議第1号に従い、特別な認可が必要となるため、移動および輸送ロジスティクスの点で実行不可能となる。
【0005】
このため、現場へのパイプの供給に関する物流活動の改善と生産性の向上を可能にする新技術が、当該分野において望まれている。
【0006】
(技術の現状)
現在の技術状況には、「移動式薄板ヘリカルパイプ工場」と題されたブラジル国特許出願第PI0802712-9が含まれる。この特許文献では、アンワインダー(巻出式)、(プラー(牽引機)アセンブリ、プレス機、サイドガイドローラー、カレンダー、溶接機アセンブリ、電源、および薄板ヘリカルパイプの製造に必要なその他の手段から構成される工場について言及されている。この工場は、移動式であり、牽引トラックの移動アセンブリである低床式トレーラーに設置され、これによって、この移動式工場は、パイプが使用される建設現場に移動し、パイプを、継ぎ目を要することなく、指定された長さで直接「現場」製造することができる。ここで、ローラーベッドは、他の設備、工具、および材料とともに、工場の一部を構成する補助トラックによって運搬可能な取り外し可能な構造であり、このローラーベッドは、カレンダーの出口でトレーラーに直交して取り付けられている。
【0007】
上記文献に予見される工場は、パイプの継ぎ目の数を著しく減少させることによる機械的性能の向上、遠隔地や交通の便の悪い多くの場所でのパイプの製造、定置された工場で製造されるパイプの平均よりも大きな長さのパイプを含む、コスト削減の著しい改善を提供する。しかしながら、上記の解決策で遭遇する主な問題は、溶接される薄板の厚さに制限されるプロセスの生産性、薄板に開先加工部がないこと、薄板の厚さなどの要因に依存する溶接速度範囲、使用される溶接エネルギーおよび1本に制限される溶接ワイヤの量、およびコイルを移動させるクレーンにかかる時間である。
【発明の概要】
【0008】
(発明の目的)
本発明は、低床式トレーラーへの設置に加えて、ラフトおよびコンテナ型構造物への設置も可能な鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。
【0009】
本発明は、製造速度が向上し、生産性が向上した鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。
【0010】
本発明は、その場で、すなわち現場で、定置された工場と同様に任意の長さのパイプを同じ品質で製造することができ、したがって、設計および物流に関する問題を低減することができる鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。
【0011】
本発明は、鋼板の側面に面取り部を形成するベベラー(開先加工機)によって、上部の溶接を改善するために鋼板の接合部を中央に配置することができ、それによって溶接の速度を向上させることができる鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。開先加工部がない場合、融着不足、非効率的な融着、または接合部の片側のみの融着という問題が生じる。
【0012】
本発明は、鋼板の側面を開先加工することによって、より低いまたは等量のエネルギーを使用することに加えて、より大きな厚さで、より少ないパス数で、鋼板接合部への溶接の完全な溶け込みを可能にする鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。
【0013】
本発明は、複数の溶接ワイヤを使用して鋼板をらせん状の継ぎ目で結合することにより、生産速度を向上させることができる鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。生産能力の増加は、内面溶接または外面溶接のいずれかで使用されるワイヤの量に比例し、1溶接あたり2~5本のワイヤを使用することができる。
【0014】
本発明は、厚い鋼板コイルにのみ適用可能な任意選択のコイル駆動装置を備えた鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものであり、このコイル駆動装置は、外部媒体を要することなく、この資源の変更時間を短縮し、それによって工場の生産性を向上させる。
【0015】
本発明は、速度を低下させることなく厚い鋼板を加工するのに役立つ追加的なプレス機および(1つは追加的である)プラー(牽引機)、ならびにガイドテーブルを備えた鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。
【0016】
本発明は、費用対効果の大きい鋼板コイルヘリカルパイプ工場を提供しようとするものである。
【0017】
(発明の概要)
本発明は、トレーラー、ラフト、およびコンテナ型構造物に設置された、鋼板の溶接によってヘリカルパイプを製造するための工場である。その主な利点は、鋼板の厚さに依存しない生産速度である。これは、可変角度を有するベベラーであって、鋼板の側面をフライス加工する際に頂部の接合/溶接に有利であるベベラーの作用、内面および外面の継ぎ目に2~5本の溶接ワイヤを使用すること、および、厚い鋼板に対して使用されるコイル駆動装置によってコイルの移動に速度を与えること、によってもたらされる。
【0018】
以下に、本発明の実施形態が説明され、理解を深めるために、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、トレーラーに設置された移動式ヘリカルパイプ工場を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、トレーラーに設置された移動式ヘリカルパイプ工場のベベラーの上面図である。
【
図3】
図3は、移動式ヘリカルパイプ工場のベベラーの上面図である。
【
図4】
図4は、移動式ヘリカルパイプ工場のベベラーを、切削要素の詳細とともに示す側面図である。
【
図5】
図5は、移動式ヘリカルパイプ工場の、2本の溶接ワイヤを使用した溶接アセンブリを、切削要素の詳細とともに側面図である。
【
図6】
図6は、トレーラーに設置された移動式ヘリカルパイプ工場の、3本の溶接ワイヤを使用した溶接アセンブリの側面図である。
【
図7】
図7は、移動式ヘリカルパイプ工場の、4本の溶接ワイヤを使用した溶接アセンブリの側面図である。
【
図8】
図8は、移動式ヘリカルパイプ工場の、5本の溶接ワイヤを使用した溶接アセンブリの側面図である。
【
図9】
図9は、移動式ヘリカルパイプ工場のコイル駆動装置の正面図である。
【
図10】
図10は、移動式ヘリカルパイプ工場のコイル駆動装置の側面図である。
【
図11】
図11は、移動式ヘリカルパイプ工場のパイプストレートナーの透視図である。
【
図12】
図12は、ラフトに設置された移動式ヘリカルパイプ工場を模式的に示す側面図である。
【
図13】
図13は、ラフトに設置された移動式ヘリカルパイプ工場を模式的に示す上面図である。
【
図14】
図14は、コンテナ型構造物に設置され移動式ヘリカルパイプ工場を模式的に示す側面図である。
【
図15】
図15は、コンテナ型構造物に設置された移動式ヘリカルパイプ工場を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な技術的説明)
本発明は、トレーラー1、ラフト2、コンテナ型構造物3に設置可能なヘリカルパイプの製造工場からなる移動式鋼板コイルヘリカルパイプ工場に関する。この工場は、生産速度が速いこと、最大で25.4ミリメートル(1インチ)の鋼板コイルを使用すること、任意選択のコイル駆動装置4、ベベラー(開先加工機)13、および1パス当たり2本(36)、3本(37)、4本(38)、または5本(39)の溶接ワイヤを含むことができる(内面および外面の)ワイヤ溶接システム18を使用すること、によって特徴付けられる。
【0021】
より具体的には、本発明は、好ましくは厚さ6.35ミリメートル(1/4インチ)から25.4ミリメートル(1インチ)の鋼板コイルを使用してヘリカルパイプを製造するための工場に関する。この工場は、低床式トレーラー1、ラフト2、またはコンテナ型構造物3に設置することができるため移動可能であり、すべて自律的であり、そして、帯鋼板を相当な速度でヘリカルパイプに変換するために必要な装置を駆動するのに十分な電気エネルギーを有しており、その結果、より生産性の高い工場モデルが得られる。ヘリカルパイプの製造工場1、2、3は、任意選択のコイル駆動装置4を含み、この装置はコイルの変更・交換の速さを向上させるために使用される。これは、生産ラインに沿って戦略的に配置された少なくとも3つのプラー7、8、9のセットによって鋼板コイルが移動するアンワインダー(巻出機)6の領域に配置された外部サポートの独立した移動が可能になるからである。この装置が、より厚い鋼板コイルで作動するという事実のため、および、生産速度を向上させる必要性を考慮すると、既存のプレス機11にプレス機10を追加し、それらを前面に配置し、新規のパイプストレートナー(パイプ矯正機)12と、ガイドテーブル14、15に挟まれたベベラー13との間に配置されたプラー7、8を再配置する必要があった。このガイドテーブル15の後には、任意選択の補助プラー9と別のガイドテーブル16が続き、次いで、カレンダー17と溶接機18が続く。任意選択のコイル駆動装置4は、アンワインダー6にコイルを迅速に配置する役割を担い、トレーラー1、ラフト2、またはコンテナ型構造物3の前部に配置され、キャスター20を備えたガントリー19を含む。キャスター20は、工場フロア1、2、3上に配置されたレール21上に支持され、これによって、コイル駆動装置がアンワインダー6に向かって移動することが可能となる。このガントリー19の底部には、高架軌道22があり、ローラー24が移動する高架軌道のレール23によって、クレードル25が、横梁27上に配置された油圧カート26によって移動するコイルを受けるためにスライド移動することが可能となる。アンワインダー6上にコイルが配置されると、プラー7、8、9が起動し、鋼板を、直面するプレス機10、11およびパイプストレートナー12を通して生産ラインに沿って移動させる。パイプストレートナーにおいて、下側シリンダ29と平行な上側シリンダ28は、電動機30によって十分に駆動され、調整ロック32を備えたアンワインダー(スピンドル)31によって調整することができ、鋼板がベベラー13に入る準備ができる。ベベラーにおいて、側縁には15°から30°の面取りが施される。これによって、厚さ25.4ミリメートル(1インチ)までの鋼板の継ぎ目への溶接の完全な溶け込みが、少ないパス数で可能になる。ベベラー13は、鋼板の両側縁を囲み、切削インサート35が15°か30°の角度に調整されたフライスカッター34を駆動する電動機33を含む。前述のすべての手順を経た鋼板は、ガイドテーブル14、15、16の作用により位置合わせを維持したまま、カレンダー17に送られ、そこで近接する側面がらせん状のパイプの形をとり、その後、溶接機18での溶接工程に供される。溶接システムは、タンデムアーク方式(各ワイヤーに溶接電源)および/またはツインアーク方式(単一の溶接電源)および/または混合方式(タンデムアーク+ツインアーク)で、1パス(内面および外面)あたり2本(36)、3本(37)、4本(38)、または5本(39)の溶接ワイヤを含むことができる。システムの選択は使用されるパラメーターに依存する。
【国際調査報告】