(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】細胞培養のためのインキュベータ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240423BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240423BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20240423BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/34 B
G16Y20/10
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565435
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2022061225
(87)【国際公開番号】W WO2022229268
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン パウルゼン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヨリー
(72)【発明者】
【氏名】グレーゴール ベヒマン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029DF07
4B029FA12
(57)【要約】
本発明は、インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気のVOC汚染を検出するためのセンサ装置を備えたインキュベータに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている細胞培養物をインキュベートするためのインキュベータ(1;50;200;300;400;500;600;700;800;900;1000)であって、前記インキュベータは、
制御可能なガス雰囲気を有するインキュベータチャンバであって、前記インキュベータチャンバの閉鎖可能な内部空間内に物体、特に細胞培養物容器を受容するためのインキュベータチャンバ(2)と、
前記内部空間のガス雰囲気中の揮発性有機化合物(VOC)の蓄積、特に汚染を検出するための検出するためのセンサ装置(11;21;31;41)であって、前記センサ装置が、前記VOCを検出するための少なくとも1つのVOCセンサ(11)を有し、そして前記少なくとも1つのVOCセンサが少なくとも1つの測定領域を有し、前記測定領域が、前記内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されている、センサ装置(11;21;31;41)と
を有している、インキュベータ。
【請求項2】
流路、特に少なくとも1つのガス導管を有し、前記流路が前記インキュベータチャンバの前記内部空間から、前記インキュベータチャンバの外部空間内に配置された測定チャンバ内へ通じていて、前記インキュベータチャンバからの雰囲気ガスが前記測定チャンバ内へ輸送されるようになっている、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項3】
前記流路、特に排ガス導管を有しており、前記流路が、前記測定チャンバからの排気を前記測定チャンバの外部空間内へ搬送するために配置されている、請求項2に記載のインキュベータ。
【請求項4】
前記流路、特に戻りガス導管を有しており、前記流路が、前記測定チャンバからの排気を、好ましくはフィルタを通して、特にヘパフィルタを通して、前記インキュベータチャンバ内へ戻すように搬送するために配置されている、請求項2に記載のインキュベータ。
【請求項5】
前記センサ装置が複数のVOCセンサを有しており、前記VOCセンサの前記測定領域、特に前記VOCセンサの吸着面が、前記測定チャンバの前記内部空間と接触した状態で配置されている、請求項2に記載のインキュベータ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの又は前記VOCセンサがMOXセンサであり、そして加熱側を有しており、前記加熱側が特にそれぞれ前記測定チャンバの外部に配置されている、請求項1又は5に記載のインキュベータ。
【請求項7】
前記測定チャンバが、前記測定チャンバのトーラス状の測定チャンバ区分のトーラス状の前記内部空間を有しており、複数のVOCセンサの前記測定領域が、前記トーラス状の測定チャンバ区分の壁に沿って配置されている、請求項2に記載のインキュベータ。
【請求項8】
前記センサ装置が電子鼻として構成されており、そして電子制御装置、並びに複数の異なるVOCセンサを有し、また特にパージ装置を有しており、前記パージ装置によって、前記測定チャンバがパージガスによってパージすることができる、請求項2に記載のインキュベータ。
【請求項9】
前記制御装置が、少なくとも1つのデータメモリを備えたデータ処理装置を有しており、前記データ処理装置が、下記ステップ、すなわち
i)N>1個の前記VOCセンサの、特に時間の関数として取得された測定値を含む測定データセットをデータメモリ内に記憶させるステップであって、測定値は、前記インキュベータチャンバに由来し、前記VOCセンサの測定範囲に適用されたガス雰囲気の体積の存在下で取得された、前記VOCセンサのそれぞれの検出された測定信号の特徴である、前記データメモリに記憶する、ステップ、
ii)前記測定データセットと基準データセットとの比較から、特に前記測定データセットと前記基準データセットとの差を使用して、第1結果測定データを決定するステップであって、前記基準データセットは、特に、時間の関数として記録された、N>1個の前記VOCセンサの基準測定値を含み、前記基準測定値は、前記パージ装置に由来し且つ前記VOCセンサの測定領域に印加される前記パージガスの存在下で記録された、前記それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴である、前記第1結果測定データを決定するステップ、
任意には:iii)前記結果測定データを含む結果測定データセットにおいて、特徴的なデータパターンを認識するステップであって、前記特徴的なデータパターンは、前記雰囲気ガス中に検出されたVOC、特に前記VOCの濃度又は量を表す、前記特徴的なデータパターンを認識するステップ、
を実施するようにプログラミングされている、請求項8に記載のインキュベータ。
【請求項10】
前記ステップiii)が、機械学習によって決定された分類アルゴリズム、特にニューラルネットワークが、前記特徴的なデータパターンを分類するために使用されることを含む、請求項9に記載のインキュベータ。
【請求項11】
少なくとも1つのデータメモリを備えたデータ処理装置を有しており、前記データ処理装置が、下記ステップを実行するようにプログラムされている、請求項8に記載のインキュベータ:
i)N>1個のVOCセンサの試験測定値、特に時間の関数として取得された試験測定値を含む試験測定データセットをデータメモリ内に記憶させるステップであって、前記試験測定値は、前記測定チャンバに供給され且つ前記VOCセンサの前記測定領域に印加された、特に種類及び/又は量に関して予め知られたVOC含有率を有する予め知られた試験ガスの体積の存在下で取得された、それぞれの前記VOCセンサの検出された測定信号の特徴である、前記データメモリ内に記憶させるステップ、
ii)前記試験測定データセットと基準データセットとの比較から、特に、前記試験測定データセットと、N>1個の前記VOCセンサの、特に時間の関数として記録された基準測定値を含む基準データセットとの差を用いて、第2結果測定データを決定するステップであって、前記基準測定値は、前記パージ装置から取り出され、前記VOCセンサの測定領域に印加されるパージガスの存在下で記録された、それぞれの前記VOCセンサの検出された測定信号の特徴である、前記第2結果測定データを決定するステップ、
iii)前記第2結果測定データを含み、前記試験ガスに対して特徴的な既知のデータパターンを有する第2結果測定データセットを保存するステップ。
【請求項12】
前記第2結果測定データが、適応分類型アルゴリズム、特にニューラルネットワークを機械学習によってトレーニングするために標識データとして使用されることを含み、前記適応分類型アルゴリズム/ニューラルネットワークを、続いて、測定された特徴的なデータパターンを分類するために使用するステップiv)を備える、請求項11に記載のインキュベータ。
【請求項13】
前記センサ装置によって検出された前記VOCの検出に応じて、前記検出に関連する情報を出力するために、特に警告情報を利用者又は監視システムへ出力するために、情報出力システム、特にディスプレイ、スピーカー、又は外部データ処理装置とのデータインターフェイスを備える、請求項1から12のいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項14】
前記インキュベータチャンバ内の前記VOCの蓄積を検出するための、特に汚染を検出するための実験室用監視システムであって、
* 請求項1から13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのインキュベータと、
* 前記少なくとも1つのインキュベータの外部に配置された、少なくとも1つのデータ処理装置であって、特にイントラネット又はインターネットを介して、特に前記少なくとも1つのインキュベータとデータ交換接続されている、データ処理装置と
を有しており、
前記データ処理装置は、前記少なくとも1つのインキュベータから得られ、前記インキュベータのセンサ装置を用いて検出することによって判定される、前記インキュベータチャンバの汚染の可能性に関する測定データを取得し、データ記憶装置内に記憶させるように、特に前記測定データをさらなる機器へ、特に移動無線機器へ通信するように、プログラミングされている、
実験室用監視システム。
【請求項15】
インキュベータ、特に請求項1から14のいずれか1項に記載のインキュベータの前記インキュベータチャンバの前記内部空間内のVOCの蓄積を検出するための、特に汚染を検出するための方法であって、
* 前記インキュベータの前記センサ装置によって測定データを取得するステップであって、前記センサ装置が、揮発性有機化合物(VOC)を検出するための少なくとも1つの前記VOCセンサ(11)を有しており、前記VOCセンサは、前記内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されている前記測定領域を有する、ステップと、
* 前記内部空間の前記ガス雰囲気の存在し得る汚染を、前記測定データを評価することにより判定するステップと
を有する、VOCの蓄積を検出するための方法。
【請求項16】
インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気におけるVOC、特に汚染の蓄積の可能性を検出するための後付け可能なセンサ装置であって、前記センサ装置は、揮発性有機化合物(VOC)を検出するための少なくとも1つのVOCセンサ(11)を有し、前記VOCセンサは、前記内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置可能である測定領域を有し、前記センサ装置は、好ましくは、前記内部空間と前記測定領域との間に配置可能であるガス導管を有し、そして好ましくは、前記インキュベータチャンバの前記内部空間の所定の体積のガス雰囲気を、前記ガス導管を通して前記測定領域へ搬送するためにポンプを有する、
後付け可能なセンサ装置。
【請求項17】
インキュベータ装置であって、前記インキュベータチャンバを備えたインキュベータと、請求項16に記載のセンサ装置とを有しており、前記センサ装置が、前記インキュベータチャンバの前記内部空間のガス雰囲気におけるVOCの蓄積の可能性、特に汚染を検出するために、前記インキュベータ上に、又は前記インキュベータの前記インキュベータチャンバ内に配置されている、インキュベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的細胞の成長のためのインキュベータに関する。本発明はさらに、インキュベータ雰囲気を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなインキュベータを用いると、生物学的及び医学的な実験室において、細胞培養物中の細胞が制御された周囲条件下に保たれ、したがって生きている細胞のin vitroでの成長が可能になる。このために、周囲から隔離されたインキュベータチャンバの内部の雰囲気の温度及びガス組成もしくは空気湿度が、インキュベータの機器装置によって所望の値に保たれる。真核細胞はCO2-インキュベータを必要とする。雰囲気は所定のCO2及びO2含有率及び所定の空気湿度を備えた空気によって形成され、適温はしばしば37℃である。
【0003】
インキュベータは、細胞培養にとってだけではなく、生物学的汚染にとっても理想的な成長環境である。細胞培養物の生物学的汚染の結果は、生物学研究、ワクチン製造、オーダーメイド医療、及び再生医療用途においても幅広い問題を引き起こす。生物学的汚染の結果としてはしたがって、時間とお金が損なわれ、不正確もしくは誤りのある試験結果がもたらされる。これは例えば法医学又は再生医療にもあてはまり、そこでは、個々の試料、特に細胞培養容器内に存在する細胞の値を、例えばインキュベータ全体の値よりも著しく高く評価するようになっているので、汚染に起因する試料の損失は回避しなければならない。
【0004】
インキュベータチャンバの汚染はしかし、非生物学的な原因を有することがあり、これは特にインキュベータの周囲からインキュベータチャンバ内へ進入する汚染であり得る。例えばインキュベータの製造の結果として、例えば有機物質がプラスチックから、特に隔離材料及び/又はシール材料から蒸発もしくは遊離されてインキュベータチャンバ内へ侵入する場合には、非生物学的汚染は起こりうる。
【0005】
従来技術のインキュベータの機能範囲はしばしば、高温滅菌を目的としてインキュベータチャンバを例えば180℃まで加熱することをも含む。高温滅菌時には、インキュベータチャンバは熱感受性の物体を含んではならない。したがって、インキュベータチャンバは高温滅菌前に空にしなければならず、このプロセスの際に、感受性の高い試料は少なくとも1つの第2インキュベータ内へ移し替えなければならない。試料のこのような付加的な操作によって、試料損失のリスクが高められる。さらに、インキュベータ内に場合によっては発生した汚染を、置き換えられた試料容器を通して、少なくとも1つの第2インキュベータ内へ持ち込み、そして場合によってはさらに広げるリスクも生じる。試料の移し替えとともに慎重に実施される高温滅菌は、いずれにしても多大な手間がかかることを意味する。それでもやはり、インキュベータチャンバの滅菌状態が重要であるため、規則的な間隔を置いて、例えば1ヶ月に2回、高温滅菌を実施することが、製造業者の標準的な推奨である。このようにすると、統計的に見て、汚染に起因する試料損失のリスクは低減される。インキュベータチャンバをできる限り滅菌状態で運転するために求められる使用者の手間を軽減することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の根底を成す課題は、できるだけ僅かな手間で汚染が少ない状態でインキュベータチャンバを使用者によって信頼性高く運転し得る、インキュベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの課題を請求項1に記載のインキュベータ、請求項16に記載の方法、及び請求項17に記載の後付け可能なセンサ装置によって解決する。好ましい実施形態は特に従属請求項の対象である。
【0009】
生きている細胞培養物をインキュベートするための本発明によるインキュベータは、制御可能なガス雰囲気で運転可能なインキュベータチャンバの閉鎖可能な内部空間内に物体、特に細胞培養物の容器を受容するためのインキュベータチャンバ、前記内部空間のガス雰囲気中の揮発性有機化合物(VOC)の蓄積、特に汚染を検出するための検出するためのセンサ装置であって、前記センサ装置が、前記VOCを検出するための少なくとも1つのVOCセンサを有し、前記少なくとも1つのVOCセンサが少なくとも1つの測定領域を有し、前記測定領域が、前記内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されている、センサ装置を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の根底を成す思想は、インキュベータチャンバの高温滅菌を「盲目的に」周期的に実施するのではなく、インキュベータチャンバ内に汚染が発生したらそれを自動的に検出し得る条件下で実施することである。このために、汚染を汚染検出器(VOCセンサ、下記参照)によって検出し、そして好ましくは使用者に、検出された汚染に関する情報を直接に通信することであり、これにより使用者は高温滅菌を開始することができる。これにより、客観的条件下で必要時に滅菌を実施し、ひいてはより高い効率を伴うことができる。
【0011】
汚染プロセスを通して、特に細菌及び微生物の成長を通して、所定の汚染物質が周囲に放出されることが知られている。微生物の揮発性有機ガス状の代謝産物はMVOC(英語:Microbial Volatile Organic Compounds(微生物揮発性有機化合物))と呼ばれ、微生物成長の指標として活用することができる。本発明の観点では、MVOCの検出というコンセプトの一般化において、化学的プロセス、特に汚染プロセスを通して、周囲へもしくはインキュベータ雰囲気内へ放出されたすべての物質が、VOC(揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound))と呼ばれる。
【0012】
従来技術である特許文献1に基づき公知の、インキュベータ内の個別容器監視機能の場合、インキュベータはインキュベータチャンバの貫通開口を有することにより、インキュベータチャンバ内に配置された容器の、試料体積の上方に位置する上部空気領域内へ導入されたガス導管によって、このような上部空気領域からのガスを取り出し、そしてインキュベータの外部に配置されたVOCセンサ装置へ輸送する。上部空気領域のガス中には、容器雰囲気が形成されており、この容器雰囲気中には、容器内に含有された細胞培養物からのVOCの痕跡が蓄積されていることがあるので、この測定装置によって、容器内に含有された細胞培養物の汚染が特異的に検出される。しかしながら、このようにすると、インキュベータチャンバ自体、例えばインキュベータチャンバの水トレイ、扉シール又はインキュベートされた試料容器の外側、又は、凝縮に起因する湿分形成によって細菌成長を被りやすい他の個所に形成されている汚染を検出することはできない。
【0013】
本発明の根底を成す研究活動において、複数の閉じた細胞培養容器が配置されるインキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気が、インキュベータ固有のVOCセンサ装置によって、それも好ましくはインキュベータの運転時間中、規則的にアクティブな監視機能として試験される、新しい装置が開発された。汚染源とは無関係に、利用者にこうして警告することができ、インキュベータチャンバの内部空間を滅菌もしくは洗浄を開始することができる。汚染の他に、一般にはインキュベータ雰囲気中のVOCの蓄積を測定することにより、特に所定の生化学的プロセスを見出すことができる。
【0014】
センサ装置は、内部空間のガス雰囲気の汚染を検出するのに役立つ。センサ装置は好ましくは、少なくとも1種の揮発性有機化合物(VOC)を検出するための少なくとも1つの、好ましくは正確に1つのVOCセンサを有している。このようなVOCセンサは好ましくは、汚染によって遊離される少なくとも1種のVOCに対して感度があり、そして内部空間のガス雰囲気中のVOCの濃度が変化、特に増大したか否かを測定し得るように構成又は選択されている。
【0015】
微生物及びすべての他の生き物のガス状代謝産物の生成は基本的な特性である。微生物の揮発性有機ガス状の代謝産物はMVOC(英語:Microbial Volatile Organic Compounds(微生物揮発性有機化合物))と呼ばれ、その形成は主として種及び栄養培地に依存するが、微生物成長の指標として活用できる。細胞培養物は微生物有機体を象徴するものではないので、ガス状代謝産物はVOCと呼ばれる。便宜上、本特許出願の枠内では、VOCもMVOCもVOCと呼ばれる。この概念はさらに、特に有機の化合物をも含んでおり、これらの化合物は、例えばプラスチック部分からの製造から所定の時間後に蒸発し得る。VOCはCO2ガス(二酸化炭素ガス)を示すことはない。CO2ガスは特にインキュベータチャンバのガス雰囲気の成分である。微生物のVOCと同様に、細胞培養物のVOCも成長の指標として活用することができる。それというのも、これらは、細胞の代謝的状態及び生理学的状態に関する情報を提供するからである。
【0016】
センサ装置は好ましくは、N>1の複数のN個のVOCセンサ、好ましくは多数のN=>10個のVOCセンサを有している。好ましくは、センサ装置のVOCセンサの数は、最大数M=2000,100,50,25又は10に制限されている。VOCセンサはすべてタイプが異なっていてよく、これにより、タイプの異なる種々の様々な測定結果が得られ、ひいてはVOC検出、又は生じ得るVOC検出もしくは生じ得るVOCの分類をより良好に区分することができる。同一タイプの複数のVOCセンサが設けられていてもよい。例えば、人の鼻が約380の異なる受容体タイプを使用し、別の哺乳動物は著しく多い数の受容体タイプを使用することが生物学において知られているので、このようなアプローチは技術的に「信頼できる」とみなすことができる。
【0017】
好ましくは、センサ装置は電子鼻として構成されており、電子鼻では、特にVOCセンサの測定領域でガス雰囲気からVOCの蓄積したものを同時に検出することによって、複数又は多数のVOCセンサが特に同時に、内部空間のガス雰囲気を測定する。特に、複数又は多数のN個のVOCセンサの収集された測定信号、特にVOCセンサの1つの各VOCセンサの各測定信号を一緒に評価することにより、汚染を検出し、特に汚染の種類又は部類を認識し、好ましくはまた定量化するのに、電子鼻が適しており、もしくはそのように構成されている。ガス雰囲気中に存在する少なくとも2種のVOCを区別するように、電子鼻が特に構成されている。種々の種類又は部類の汚染を区別するのに、電子鼻が特に適している。さらに、複数のVOCセンサによって、ただ1つのVOCセンサを用いた場合よりも信頼性が高く、ひいては感度も高い汚染検出を達成することができる。
【0018】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、微生物、特に細菌、マイコプラズマ、菌類、酵母のガス状の代謝産物を検出するように構成されている。好ましくは、センサ装置は、検出選択性が異なる複数のVOCセンサを有している。
【0019】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、生物学的細胞のガス状の代謝産物を検出するように構成されている。これにより、細胞培養物の成長状態、特にその時間的な発達に関する情報を得ることができる。
【0020】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、特にインキュベータの製造から所定の時間後にインキュベータ構成部分の材料から流出するガス状物質を検出するように構成されている。このようなガス状物質には、溶媒又は可塑剤、又はインキュベータのプラスチック構成部分から逃れる他の物質が含まれる。
【0021】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、アルコール類に属する少なくとも1種の化合物、好ましくはアルコール類に属する複数の異なる化合物を検出するように構成されている。本発明の根底を成す研究活動において、汚染検出という意味で、アルコールを特に鋭敏に検出し得ることが確認された。このことの理由は、インキュベータの汚染に特に関連する細菌の代謝プロセスが、特定の程度までアルコールを生成させることにある。他方において、対応する商業的に入手可能なアルコールセンサは、すでに僅かなアルコール痕跡をも検出するのに適した感度を有している。
【0022】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、芳香族に所属する少なくとも1種の化合物、好ましくは芳香族に所属する複数の異なる化合物を検出するように構成されている。本発明の根底を成す研究活動において、汚染検出という意味で、芳香族をも特に鋭敏に検出し得ることも特に確認された。このことの理由も、インキュベータの汚染に特に関連する細菌の代謝プロセスが、種々の芳香族を発生させることにある。他方において、対応する商業的に入手可能な芳香族センサは、すでに僅かな芳香族痕跡をも検出するのに適した感度を有している。
【0023】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、アルカンに所属する少なくとも1種の化合物、好ましくはアルカンに所属する複数の異なる化合物を検出するように構成されている。本発明の根底を成す研究活動において、汚染検出という意味で、アルカンをも特に鋭敏に検出し得ることも確認された。このことの理由も、インキュベータの汚染に特に関連する細菌の代謝プロセスが、種々のアルカンを発生させることにある。このことは特に細胞の代謝プロセスにも当てはまる。他方において、対応する商業的に入手可能なアルカンセンサは、すでに僅かなアルカン痕跡をも検出するのに適した感度を有している。
【0024】
特に好ましくは、VOCセンサは、アルコール、及び芳香族及び/又はアルカンを検出するように構成されている。
【0025】
好ましくは、センサ装置は少なくとも1つのVOCセンサを有しており、このVOCセンサは、化合物群の少なくとも1種の化合物、好ましくは{アルコール、芳香族、ベンゾール、アルキルベンゾール、アルカン、アルケン、アルカン、アルデヒド、エステル、ケトン、ピラゾール、オキシム、テルペン、酸、カルボン酸、複素環アミン及びインドール}を含む複数の異なる化合物を検出するように構成されている。本発明の根底を成す研究活動において、汚染検出という意味で、このような物質をも特に鋭敏に検出し得ることも確認された。これは、インキュベータの汚染に特に関連する細菌の代謝プロセスが、種々のこのような物質を発生させるという事実にもよる。このことは特に細胞の代謝プロセスにも当てはまる。他方において、種々の物質のための対応する商業的に入手可能なセンサは、すでに僅かなこのような物質痕跡をも検出するのに適した感度を有している。
【0026】
VOCセンサは、特にガス雰囲気中のVOCを検出するための化学センサである。ガス雰囲気中で検出される同様の又は異なるVOCは、センサによって検出され、そして電気信号に変換される。
【0027】
VOCセンサは、導電性センサであってよく、導電性センサは特に、少なくとも1種のVOCに応じて変化する導電性を測定する。VOCセンサは特に好ましくは金属酸化物半導体(MOX)ガスセンサであり、略してMOXセンサとも呼ばれる。このような化学センサは検出層を有しており、検出層によって、化学的な相互反応を電気信号へ転換することができる。これらの化学センサは連続的な測定運転に適している。
【0028】
MOXセンサの機能は、ターゲットガスの濃度に応じて、ガス感応性の金属酸化物層もしくは半導体の導電率が変化させられ、ひいてはターゲットガスの存在も量も決定されるという事実に基づいている。典型的には、MOXセンサは4つの要素、すなわちガス感応性の金属酸化物層と、電極と、加熱要素と、隔離層とから成っている。加熱要素はガス感応性の金属酸化物層及びコンタクト電極から、隔離層によって分離されている。ガス感応性の金属酸化物層は加熱要素によって加熱され、そして周囲からの酸素分子がガス感応性の金属酸化物層の表面に吸着される。吸着された酸素分子は半導体の伝導帯から電子を捉え、エネルギー障壁が形成され、これらのエネルギー障壁は半導体内の電子流の一部をブロックし、ひいては導電性を悪化させ、もしくはガスセンサの抵抗を高める。還元ガス(ターゲットガス)が存在するとすぐに、これらは結合された酸素分子と反応する。酸素分子はガス感応性の金属酸化物層の表面から解放され、そして導電率は上昇し、もしくは抵抗は低下する。
【0029】
VOCセンサは容量センサであってよく、容量センサは、少なくとも1種のVOCに応じて変化する電気容量を検出する。VOCセンサは光学センサであってよい。光学センサは、少なくとも1種のVOCに応じて変化する光学特性、例えば変化する屈折率、変化する光強度、又は変化する光スペクトルを測定し、使用される光の波長は制限されず、特に赤外波長をも含む。VOCセンサは質量感感応センサであってよく、例えば少なくとも1種のVOCと相互作用する振動体の変化する振動を検出することによって、少なくとも1種のVOCに応じて変化する質量を測定する質量感応センサであってもよい。
【0030】
センサ装置は好ましくはインキュベータの構成部分であり、そして特にインキュベータのハウジング又はハウジング部分内に配置されている。
【0031】
好ましくは、電子評価装置が設けられており、電子評価装置は好ましくはデータ処理装置を含む。評価装置は、少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定信号、特に測定値を記録するように、そして特に評価するように構成されている。評価装置は好ましくはインキュベータの構成部分であり、そして特にインキュベータのハウジング又はハウジング部分内に配置されている。特に後者が、このようなセンサ装置をまだ有していないインキュベータ用の後付けシステムの一部として構成される場合にも、評価装置はセンサ装置の構成部分とすることも可能である。
【0032】
特にインキュベータの評価装置は、好ましくはデータ記憶装置を有している。データ記憶装置は、データ処理装置とデータの交換のために接続されている。
【0033】
評価装置、特にデータ処理装置は、好ましくはプログラムコードでプログラミング可能であり、そして、特にこのようなプログラムコードにしたがって、特に下記ステップを実行するように、プログラミングされている:
・ 少なくとも1つのVOCセンサの、特に測定データの少なくとも1つの測定信号を受信すること;特に、一連の測定信号であって、特に少なくとも1つのVOCセンサの時間的な測定経過を形成する一連の測定信号を時間的に、特に測定時間Δtの継続期間にわたって順次に受信すること;
・ 少なくとも1つの測定信号を少なくとも1つの基準値と比較すること;
・ このような比較の結果に基づいて、内部空間のガス雰囲気中のVOC濃度の変化、特に内部空間の汚染に特徴的な変化が存在するか否かを判断すること。
【0034】
上記少なくとも1つの基準値は、予め規定されていてよく、データ記憶装置内に記憶されていてよい。上記少なくとも1つの基準値は、少なくとも1つのVOCセンサが内部空間のガス雰囲気中のVOC分子を検出する測定時間Δtの開始時の測定から得られる開始値であってもよい。VOCセンサの開始値は特に、測定領域をパージガス、例えば窒素N2でパージすることによって、それぞれのVOCセンサの測定領域が初期化されたときに、検出することができる。このようなパージは、好ましくは、少なくとも1つのVOCセンサの測定信号の時間的な経過が一定になるまで、又は既知の基準経過を有するまで、例えば線形に増大又は減少するまで行われる。
【0035】
評価装置、特にデータ処理装置は、好ましくは特にこのようなプログラムコードにしたがって、下記ステップを実施するように特にプログラミングされている:
・ MOXセンサの、特に測定データの測定信号、特に測定領域の抵抗値、特に電気抵抗又は導電率を表す測定信号を受信すること;特に、一連の測定信号であって、特にMOXセンサの時間的な測定経過を形成する一連の測定信号を、時間的に、特に測定時間Δtの継続期間にわたって順次に受信すること;
・ 好ましくは、測定信号を評価することにより、これから新たに1つ又は2つ以上の測定信号を得ること;
・ 測定信号を少なくとも1つの基準値と比較すること;
・ このような比較の結果に基づいて、内部空間のガス雰囲気中のVOC濃度の変化、特に内部空間の汚染に対して特徴的な変化が存在するか否かを判断するステップこと。
【0036】
インキュベータの制御装置、特にデータ処理装置は好ましくは、1つのVOCセンサ又は2つ以上のVOCセンサを一定電圧で制御するように構成及び/又はプログラミングされている。
【0037】
特に好ましくは、インキュベータの制御装置、特にデータ処理装置は、1つ又は2つ以上のVOCセンサを周期的に変化する電圧で制御するように構成及び/又はプログラミングされている。VOCセンサの化学反応の収率はこのような電圧に依存し、又はそればかりかVOCに対して特異的に依存し得るので、このような周期的な制御は、センサ装置の有利な運転モードである。
【0038】
インキュベータの制御装置、特にデータ処理装置は好ましくは、MOXセンサの加熱要素を、周期的に変化する電圧で制御することにより、金属酸化物層に、相応して周期的に変化する温度を発生させるように構成及び/又はプログラミングされている。センサ装置のこのような運転形式は、「温度サイクル操作(「temperature cycled operation(TCO)」)とも呼ばれる。このために、ヒーターはここでは、段階状の経過を有する電圧U-H-Sollで制御される。電圧は加熱期間T毎に複数の種々の値を提供する。このような電圧値のそれぞれは好ましくは、加熱期間Tの規定された部分に対して調節される。加熱期間は好ましくは1秒[s]~60s、好ましくは5s~30s、好ましくは15s~25s、好ましくは17s~23sであり、そしてここでは約20sである。制御の結果、測定期間Tで周期的に変化する測定信号が生じる。加熱期間は特に、VOCセンサの熱質量に応じて選択することができる。
【0039】
周期的な測定信号の場合、好ましくは、(評価された)測定信号を得るために、測定信号の1つ又は好ましくは2つ以上の期間を統計的に評価することによって、評価が行われる。好ましくは、データ処理装置は、測定期間の平均的な経過を決定するようにプログラミングされている。このことは、M個の測定期間の測定信号の値を重ね合わせ、次いでこのような付加された期間経過に逆数1/Mを乗じることを含み得る。こうして測定信号は平滑化され、測定の作為的な影響が低減される。平滑化のためのメディアンフィルタを使用することもできる。平滑化は、複数の連続した測定信号、特に測定期間の測定信号を平均値として結合することによっても行うことができ、それによって測定曲線の測定信号(当時の平均値)の数を減らすことができる。このことは移動平均としても知られる。
【0040】
好ましくは、データ処理装置は、単一の測定期間の信号から、又は1つの測定期間の平均経過から、二次的特徴と呼ばれる、測定期間の特性に関する少なくとも1つの二次値を導出するようにプログラミングされている。二次値は、測定期間の特徴的な時点、例えば電圧値の転換時点に存在する勾配とすることができる。特徴的な勾配は特にこのような時点の直前又は直後に記録することができる。それというのも勾配は転換時には定義不能であり得るからである。さらなる評価のために、二次値は上記のように新たな測定信号として、このような二次値に対応する少なくとも1つの基準値と比較することができる。
【0041】
好ましくは、データ処理装置は、複数の測定信号の平均値を決定するように、特に1つの測定期間の複数の、又はほぼすべての測定信号の平均値を決定するようにプログラミングされている。さらなる評価のために、平均値は上記のように、このような平均値に対応する少なくとも1つの基準値と比較することができる。
【0042】
インキュベータ、特にセンサ装置は好ましくは電子制御装置を有している。電子制御装置は特に第2のデータ処理装置を有することができ、あるいは電子制御装置はセンサ装置のデータ処理装置を使用し、そして電子制御装置は、少なくとも1つの弁を制御し、この弁を開くことによって、パージガス、特にN2が、少なくとも1つのVOCセンサの測定領域全体にわたって流れるようにプログラミングされている。このような弁は特に少なくとも1つのVOCセンサの測定信号に応じて開閉することができる。
【0043】
評価装置、特にデータ処理装置は、好ましくはプログラミング可能であり、そして、特に下記ステップを実施するようにプログラミングされている:
・ 多数又は複数のVOCセンサのうちの少なくとも2つ、3つ以上、又はすべてのVOCセンサから、特にこのような少なくとも2つのVOCセンサのそれぞれのセンサ毎に、少なくとも1つの測定値、特に測定データを受信すること:
・ 特に時間的に並行して、少なくとも1つのVOCセンサの一連の測定値を時間的に順次に、特に測定時間Δtの継続期間にわたって受信することであって、これらの測定値が特に少なくとも1つのVOCセンサの時間的な測定経過を形成する、受信すること;
・ 少なくとも2つのVOCセンサのそれぞれの少なくとも1つの測定値を少なくとも1つの基準値と比較するステップ、
・ このような比較の結果に基づいて、内部空間のガス雰囲気中のVOC濃度の変化、特に内部空間の汚染に対して特徴的である変化が存在するか否かを判断するステップ、
。
【0044】
少なくとも1つの基準値は特に、インキュベータ雰囲気のガス体積を測定する前又は後の所定の時間に、少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定領域をパージガス、特に窒素でパージし、そしてパージガスでパージされた測定領域における1つ又は2つ以上の基準値を検出するための基準測定を行うことにより、決定することができる。日常的に選択可能な許容値を付加的に考慮に入れながら、測定値と基準値とを比較することにより、インキュベータチャンバのガス雰囲気中のVOCが確実に検出されるようになる。
【0045】
本発明の根底を成す研究活動において見出されたように、インキュベータチャンバのガス雰囲気中の、特に細菌に起因するVOCの蓄積、つまり汚染を容易に検出することができる。それというのも、細菌は相応の対数期における指数関数的な増殖により、指数関数的に増大する代謝を有しており、これに伴い、VOCの放出が相応に指数関数的に増大するからである。これに比べて、例えば密には閉鎖されていない細胞培養容器、例えばペトリ皿を通じて、このような「正常な」VOCの一部がインキュベータチャンバのガス雰囲気内へ進入する限り、正常に成長する細胞培養物からのVOCの放出量は極めて僅かである。細菌に起因する代謝はこれにより、インキュベータチャンバのガス雰囲気の、VOCに起因する「臭い(Geruch)」を支配する。
【0046】
評価装置、特にデータ処理装置は、好ましくはプログラミング可能であり、特に以下のステップまたは以下のステップの少なくとも1つを実行するようにプログラムされる:
・ 任意選択的に、内部空間のガス雰囲気中のVOC濃度の変化、特に内部空間の汚染に特徴的な変化が存在するか否かに関する情報を含む結果データを作成すること;
・ 任意選択的に、内部空間のガス雰囲気中のVOC濃度の変化、特に内部空間の汚染に特徴的な変化が存在するか否かに関する情報を、結果データに応じてインキュベータの利用者に出力することであって、このような情報の出力は、インキュベータの適宜の出力装置、特にディスプレイ、及び/又はスピーカーによって発生させる視覚的又は音響的信号の形態で行うことができる。このような出力は、存在する汚染を利用者に警告するために、特に警告信号として構成することができる;
・ 任意選択的に、データ記憶装置に結果データを記憶させること;
・ 任意選択的に、特に有線又は無線の信号接続によって、外部データ処理装置へ、特にPC、スマートフォン、タブレットコンピュータへ結果データを送信すること。
【0047】
VOCセンサは、揮発性有機化合物(VOC)を検出するために使用され、VOCセンサは測定領域を有しており、この測定領域は内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されている。好ましくは、少なくとも1つのVOCセンサ又は2つ以上又はすべてのVOCセンサの測定領域が、インキュベータチャンバ内に配置されている。好ましくは、少なくとも1つのVOCセンサ又は2つ以上又はすべてのVOCセンサの測定領域が、少なくとも1つ又は2つ以上の測定チャンバ内に配置されている。測定チャンバの内部空間雰囲気は好ましくは、インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気と流体接続されている。このような流体接続は、インキュベータチャンバと測定チャンバとを少なくとも1つの流路によって接続することにより、形成されていてよい。しかしながら、測定チャンバはインキュベータチャンバ内に配置されていてもよく、あるいは測定チャンバの内部空間は、専用の流路を必要とすることなしに、インキュベータチャンバの内部空間内へ直接に開口することができる。測定チャンバとして、貫流される流路の区分をみなすこともできる。この区分に沿って、少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定領域が配置されている。測定チャンバは、被測定ガスが測定チャンバ内へ入る際に通る流入開口と、特に被測定ガスが測定チャンバから出る際に通る流出開口とを有することができる。
【0048】
センサ装置は特に少なくとも1つの温度センサ及び/又は空気湿度センサ及び/又は圧力センサを有し、圧力センサは、好ましくは測定チャンバ内のガス雰囲気を測定するために配置されている。
【0049】
少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定領域は、好ましくは流入開口と流出開口との間の直線的な接続部に沿って見て、このような流入開口とこのような流出開口との間に位置する、測定チャンバの区分内に配置される。少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定領域は好ましくは流れ方向、特に測定チャンバ内の主要流れ方向に対して平行である。このような流れ方向は特に、測定チャンバの流入開口と流出開口とを繋ぐ線、特に直線に従う。少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定領域は、好ましくは測定チャンバの側壁に対して平行に配置されており、且つ/又は測定チャンバの側壁を形成している。この場合、側壁は、特に測定チャンバの内壁であり、この内壁に沿って、被測定ガス/被測定雰囲気の流れが流れる。このような手段によって、測定領域におけるVOCの分離によって排出された可能性のあるガス雰囲気を、元のガス雰囲気で置き換えることにより、特に、ガス雰囲気からのVOCの濃度が測定領域に沿ってできる限り一定になる。
【0050】
複数のVOCセンサの測定領域が互いに平行に、且つ特に測定チャンバを通る流れ方向に対して平行に配置されていることが可能であり、且つ好ましい。複数のVOCセンサの測定領域が互いに平行に、且つ/又は特に測定チャンバを通る流れ方向に対して平行に配置されていることが可能であり、且つ好ましい。測定領域は測定チャンバを通る流れ区分を取り囲むことができ、特にこのような流れ区分もしくは流れ方向の周りに同心的に配置されていてよい。測定領域は、特に流れ区分もしくは流れ方向の周りに配置されており、測定チャンバ内に位置して測定チャンバを通って流れるガス体積区分が、複数のVOCセンサの複数もしくはすべての測定領域に同時に接触するようになっている。これにより特に、測定領域において同一のガス組成が優勢になること、特に、上流側に位置するセンサにおいてVOCの上流における分離が、下流側に位置するセンサで異なるガス組成が測定されることにつながらないことが保証される。
【0051】
流路が特に少なくとも1つのガス導管によって形成されている。ガス導管の一方の端部は特にインキュベータチャンバ内へ開口しており、そして他方の端部は特に測定チャンバ内へ開口している。
【0052】
インキュベータ又はセンサ装置の電子制御装置によって制御される、少なくとも1つの弁装置が設けられていてよく、これにより、少なくとも1つの流路の通流部が開放又は閉鎖され、特にまた絞られる。弁装置は特に少なくとも1つの方向切換弁、特に少なくとも1つの3/2方向切換弁を有してもよい。インキュベータもしくはセンサ装置は特にパージガス・リザーバを有してもよく、パージガス・リザーバ内には、測定チャンバをパージするためのパージガス、特にN2又は希ガスが含有されており、パージガス・リザーバは弁によって、少なくとも1つの流路に接続されている。少なくとも1つの方向切換弁は、第1切換位置において、インキュベータチャンバと測定チャンバとの間で弁の通流部を開き、同時にパージガス・リザーバと測定チャンバとの間で弁の通流部を閉じ、そして第2切換位置では、インキュベータチャンバと測定チャンバとの間で弁の通流部を閉じ、同時にパージガス・リザーバと測定チャンバとの間で弁の通流部を開くように構成されていてよい。パージガス・リザーバの代わりに、パージガスを供給するための接続部が設けられていてもよい。この接続部にはパージガス・リザーバが接続可能であり、又はパージガス流(例えば-特に濾過された-周囲空気の搬送)を供給することができる。
【0053】
好ましくは、インキュベータもしくはセンサ装置は、ガス搬送装置、特にファン又はポンプを有しており、このガス搬送装置によって、ガス雰囲気がインキュベータチャンバから、流路を通って測定チャンバ内へ搬送される。測定チャンバは好ましくは、流路、特に少なくとも1つのガス導管を有しており、この流路を通って、ガス雰囲気が測定チャンバから送り出される。特に、ガス雰囲気が測定チャンバから、インキュベータの周囲内へ、特に、周囲に開放されているインキュベータのハウジング領域内へ案内される。
【0054】
しかし、測定チャンバから出たガスをインキュベータチャンバ内へ戻す流路を設けることも可能であり、好ましい。これにより、インキュベーションガス、特にCO2の損失が阻止される。好ましくは、戻されたガスはフィルタ装置を通して案内され、フィルタ装置は特にHEPAフィルタを有してもよい。フィルタ装置は特に、測定チャンバがガスに添加する物質及び粒子を濾過するように構成されている。
【0055】
好ましくは、インキュベータチャンバと測定チャンバを、測定チャンバの上流側又は下流側で、特にまた少なくとも1つの測定チャンバ外側の少なくとも1つの区分で、接続する少なくとも1つの流路、特にガス導管は、断熱装置によって断熱されている。断熱装置は二重壁、又は断熱材料層を有することができる。断熱材量層は、特に断熱作用のあるエアポケットを有することができる。
【0056】
好ましくは、インキュベータチャンバと測定チャンバとを、測定チャンバの上流側又は下流側で接続する少なくとも1つの流路、特に、ガス導管が、温度制御手段、特に加熱装置と接触していることにより、特にインキュベータチャンバの温度まで又はそれよりも高い温度まで、流路を温める。特に、少なくとも1つの流路は、-いずれにしてもすでに-適温化されたインキュベータチャンバの壁に沿って案内されていてよい。このような手段は、凝縮効果の発生や、VOCが温度に起因して変化させられるか又は沈殿することを防ぐことを意図している。
【0057】
インキュベータの内部空間のガス雰囲気は特に、内部空間内に配置された細胞培養容器内の雰囲気とは別の組成を有している。細胞培養容器内の雰囲気は特に、揮発性成長培地(細胞培地)と直接に接触している。特に、測定チャンバ内へ進入するガスと、内部空間のガス雰囲気とは同一の組成を有している。
【0058】
少なくとも1つのVOCセンサの測定領域は好ましくは、測定領域がインキュベータチャンバ内に配置されていることにより、内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されており、この場合、特に別個の測定チャンバは必要とならないが、これが設けられていてもよい。少なくとも1つの測定領域は、特にインキュベータチャンバの内部空間と直接に隣接し、内部空間のガス雰囲気と直接に接触していてよく、特に、少なくとも1つのVOCセンサの廃熱放出構成部分は、インキュベータチャンバの外部に、そして特にインキュベータチャンバの周囲内に配置されている。このような周囲は、特に測定領域とは接触しておらず、特に冷却されており、好ましくは空気冷却されている。
【0059】
少なくとも1つのVOCセンサが、インキュベータチャンバ内及び/又は測定チャンバ内に、部分的に、そして特に不完全に配置されていることが特に好ましい。少なくとも1つのVOCセンサの、センサの測定領域とは反対側の少なくとも1つの区分が、インキュベータチャンバ及び/又は測定チャンバの外部に配置されていることが特に好ましい。特に、少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの加熱手段もしくはすべての加熱手段が、インキュベータチャンバ及び/又は測定チャンバの外部に配置されていることが好ましい。このようにすると、電気的な制御装置への少なくとも1つのVOCセンサの電気的な接続が可能であり、特に容易になる。さらに、少なくとも1つのVOCセンサの、測定領域とは反対側の温度制御もしくは冷却、特に加熱手段の温度制御もしくは冷却が可能であり、特に容易になる。
【0060】
ガス導管によって、特に雰囲気ガスがインキュベータチャンバからインキュベータの外部空間内へ輸送可能であり、もしくはこのように直接に輸送される。センサ装置は好ましくは1つ又は好ましくは2つ以上の測定チャンバを有しており、測定チャンバ内には、少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定領域が配置されている。一方の端部でインキュベータチャンバ内へ開口する流路は、他方の端部で測定チャンバ内へ開口することができ、又は複数の端部で複数の測定チャンバ内へ開口するように分割することができる。特に、測定チャンバごとに、特にガス導管が開口する測定チャンバ内に、N個(10>=N>=1)のVOCセンサを設けることができる。1つの測定チャンバ内には、1つのVOCセンサの正確に1つの測定領域が配置されていてよく、あるいはVOCセンサの正確に2つの測定領域が配置されていてよい。インキュベータチャンバからの雰囲気ガスは特に少なくとも1つの、好ましくは各測定チャンバ内への輸送が可能であり、そして特に電気制御装置によって制御された状態で輸送される。
【0061】
好ましくは、測定チャンバは、測定チャンバからの排ガスをインキュベータチャンバもしくはインキュベータの外部空間内へ搬送するために配置された排ガス導管を有している。
【0062】
好ましくは、センサ装置は複数のVOCセンサを有しており、これらのVOCセンサの測定領域、特にVOCセンサの吸着面は、測定チャンバの内部空間と接触して配置されている。
【0063】
好ましくは、センサ装置は複数のVOCセンサを有しており、これらのVOCセンサの測定領域、特にVOCセンサの吸着面が、測定領域へのVOCの吸着のために、測定チャンバの内部空間と接触して配置されており、VOCセンサは、それぞれの場合において、測定チャンバの外部に配置されている加熱側を有する。
【0064】
好ましくは、測定チャンバは、特に閉じたトーラスの形態を成す、トーラス状に形成された内部空間を有しており、特に、少なくとも1つの流入開口と少なくとも1つの流出開口とを備えている。トーラスは平面に対して平行に位置することができ、流入開口は、基本的にこの平面のこちら側に、特にトーラスのこちら側に配置されていてよく、そして流出開口は基本的にこの平面の反対側に、特にトーラスの反対側に配置されていてよい。しかしながら、流入開口及び流出開口は、この平面内に位置していてもよく、あるいはこの平面と交差していてもよい。
【0065】
特に、インキュベータもしくはセンサ装置はガス搬送のための搬送手段を有することができ、ガスの搬送によって、測定チャンバの内部空間内に位置する、インキュベータチャンバから予め取り出された雰囲気ガスを循環させることができる。流入開口及び/又は流出開口は、クロージャを、-特に電気的な制御装置によって制御可能な-クロージャを有することができ、このクロージャによって、対応する開口を選択的に閉鎖することができる。ガスを循環させることにより、測定領域/吸着面におけるガス交換が達成され、インキュベータチャンバからの被測定ガス雰囲気の長時間にわたる放出を回避することができる。これにより、インキュベータチャンバ内のインキュベータ雰囲気の復旧及び/又は圧力を均一化するためにその他に必要となり得るガス、例えばCO2、及びエネルギーの消費を回避することができる。
【0066】
好ましくは、インキュベータ及び/又はインキュベータの電子制御装置は、流路を通ってインキュベータチャンバから測定チャンバの方向に流出する体積流に応じて、少なくとも1種のインキュベータガス、特に確定されたインキュベータガス混合物、例えばN2及びCO2の体積流の相応の流入体積流を制御するように構成されている。これにより、インキュベータ雰囲気は、センサ装置による測定中にもできる限り変化しないように保たれる。このようなガスの流出及び流入によって場合によっては変化もしくは低下し得るインキュベータ雰囲気の温度も、インキュベータの温度調整装置、特にその適温化装置及び温度センサを用いた適温化によって、特に目標温度、例えば37℃まで一定に保つことができ、もしくは再調整することができる。
【0067】
好ましくは、センサ装置は電子鼻として構成されている。このために、センサ装置は特に電子制御装置並びに複数の好ましくはタイプの異なるVOCセンサ、並びに特にパージ装置を有しており、パージ装置によって、少なくとも1つの測定チャンバをパージガスによってパージすることができる。
【0068】
好ましくは、電子鼻として構成されたセンサ装置又はインキュベータの電子制御装置は、少なくとも1つのデータメモリを備えたデータ処理装置を有し、データ処理装置は、下記ステップの少なくとも1つ、2つ以上、又はそれぞれを実施するようにプログラミングされている。同様に、本発明による方法はこのようなステップを有してもよい:
i)N>1個のVOCセンサの、特に時間の関数として、特に少なくとも1つの時間区分内で検出された測定値を含む測定データ記録をデータメモリ内に記憶させることであって、測定値は、前記インキュベータチャンバに由来し且つ前記VOCセンサの測定領域に存在する、特に過去に流れたガス雰囲気の体積の存在下で記録された、前記それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴である、データメモリ内に記憶させることと;
ii)前記測定データセットと基準データセットとの比較から、特に前記測定データセットと、基準測定値を含む、特に時間の関数として記録された、N>1個のVOCセンサの、基準データセットとの差を使用して、第1結果測定データを決定することであって、基準測定値は、パージ装置に由来するパージガスの存在下で記録された、前記VOCセンサの測定領域、特に過去に流れたパージガスと接触する前記それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴である、第1結果測定データを決定することと;
iii)任意には、前記結果測定データを含む前記結果測定データセット内の特徴的なデータパターンを認識することであって、前記特徴的なデータパターンが、所定の、前記雰囲気ガス中で検出されたVOC、特にまた前記VOCの濃度又は量を表す。
【0069】
結果測定データを含有する結果測定データセット内の特徴的なデータパターンは、好ましくは下記評価によって考慮することができる:センサ装置の特定のVOCセンサ・サブセットの測定値が、-任意には、そのそれぞれの基準値から逸脱する許容値を考慮に入れながら、-任意には、相対的な逸脱度を考慮することができる-、しかしセンサ装置の他のVOCセンサの測定値が-任意には許容値を考慮に入れながら-、その基準値から逸脱していない場合に、特に汚染が存在する可能性がある。特徴的なデータパターンは、定義されたVOC含有率を有する1種又は2種以上の試験ガスを予め測定することによって、突き止めることができる。
【0070】
ステップiii)は、好ましくは機械学習によって突き止められた分類アルゴリズム、特に人工ニューラルネットワークが、前記特徴的なデータパターンを分類するために使用されることを含む。
【0071】
好ましくは、制御装置は、少なくとも1つのデータメモリを備えたデータ処理装置を有しており、データ処理装置は、下記ステップの第1のステップ、又は2つ以上又はすべてのステップを実施するように、プログラミングされている。同様に、本発明による方法はこのようなステップを含んでもよい。
i)N>1個のVOCセンサの、特に時間の関数として、特に少なくとも1つの時間区分内で検出された試験測定値を含む試験測定データセットをデータメモリ内に記憶させることであって、試験測定値は、前記測定チャンバに供給され且つ前記VOCセンサの測定領域に隣接している、特に種類及び/又は量に関して予め知られたVOC含有率を有する予め知られた試験ガスの体積の存在下、特に過去に流れている状態で記録された、前記それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴である、データメモリ内に記憶させることと;
ii)試験測定データセットと基準データセットとの比較から、特に、試験測定データセットと、N>1個のVOCセンサの、特に時間の関数として、特に少なくとも1つの同じ時間区分内で検出された基準測定値を含む、基準データセットとの差分を用いて、第二結果測定データを決定することであって、N>1個のVOCセンサの基準測定値、基準測定値は、パージ装置に由来するパージガスの存在下、特に過去に流れたパージガスにおいて記録された、前記それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴である、第1結果測定データを決定することと;
iii)前記第2結果測定データを含む第2結果測定データセットを記憶させることであって、前記第2結果測定データセットが、前記試験ガスの特徴的な既知のデータパターンを有している。
【0072】
前記ステップによって、特にガス雰囲気中の特定のVOCの存在を検出することができ、特にガス雰囲気中の少なくとも1種のVOCの濃度を推定し得る方法を特に実現することができる。
【0073】
好ましくは、ステップiv)が実施され、このステップiv)では、iii)で得られた第2結果測定データが、適応分類型アルゴリズム、特にニューラルネットワークを機械学習によってトレーニングするために標識データとして使用されることを含み、分類アルゴリズムを、続いて、測定された特徴的なデータパターンを分類するために使用することができる。このようなステップによって、ガス雰囲気中の特定のVOCの存在を検出し得る、特にガス雰囲気中の少なくとも1種のVOCの濃度を評価し得る方法を特に実現することもできる。
【0074】
好ましくは、インキュベータは、センサ装置によって検出されたVOCの検出に応じて、このような検出に関連する情報を出力するために、特に警告情報を利用者又は監視システムへ出力するために、情報出力システム、特にディスプレイ、スピーカー、又は外部データ処理装置へのデータインターフェイスを有している。
【0075】
本発明はまた、少なくとも1つのインキュベータチャンバの汚染を検出するためのラボラトリ監視システムであって、
* 少なくとも1つの本発明によるインキュベータと、
* 少なくとも1つのインキュベータの外部に配置された、少なくとも1つのデータ処理装置であって、特にイントラネット又はインターネットを介して、特に前記少なくとも1つのインキュベータとデータ交換接続されている、データ処理装置と
を有しており、
データ処理装置は、少なくとも1つのインキュベータから得られ、インキュベータのセンサ装置を用いて検出することによって判定される、前記インキュベータチャンバの汚染の可能性に関する測定データを取得し、データ記憶装置内に記憶させるように、特に前記測定データをさらなる機器へ、特に、PC、移動無線機器、スマートフォン、又はタブレットコンピュータへ通信するように、プログラミングされている、
実験室用監視システムに関する。
【0076】
本発明はまた、インキュベータ、特に本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内の汚染を検出するための方法であって、
* 揮発性有機化合物(VOC)を検出するための少なくとも1つのVOCセンサを有するセンサ装置によって測定データを取得するステップであって、前記VOCセンサは、内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されている測定領域を有する、ステップと、
* 内部空間のガス雰囲気の存在し得る汚染を、測定データを評価することにより判定するステップと、
を有する、汚染を検出するための方法に関する。
【0077】
本発明はまた、インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気の汚染の可能性を検出するための後付け可能なセンサ装置を備えた後付けシステムに関し、前記センサ装置は、揮発性有機化合物(VOC)を検出するための少なくとも1つのVOCセンサ(11)を有し、VOCセンサは、測定領域を有し、測定領域が、内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置可能であり、センサ装置が好ましくは、内部空間と測定領域との間に配置可能であるガス導管を有し、好ましくは、インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気を、ガス導管を通して測定領域へ搬送するためのポンプを有している。本発明はまた、インキュベータのためのこのような後付け可能なセンサ装置に関する。後付けシステムもしくは後付け可能なセンサ装置はさらに特に電子評価装置を含み、この電子評価装置は好ましくはデータ処理装置を含む。評価装置は好ましくは、少なくとも1つのVOCセンサの少なくとも1つの測定信号、特に測定値を記録し、そして特に評価するように構成されている。この代わりに且つ/又はこれに加えて、後付けシステムはプログラムコードを含んでおり、このプログラムコードの実行時に、特にインキュベータのデータ処理装置が、少なくとも1つのVOCセンサの特に1つの測定値を取得し、そして特に評価する。プログラムコード可能なステップは本明細書中にすでに記載され/なおも記載される。
【0078】
本発明は、インキュベータ装置であって、インキュベータチャンバを備えたインキュベータと、上記のような後付け可能なセンサ装置とを有しており、前記センサ装置が、インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気の存在し得る汚染を検出するために、インキュベータに、又はインキュベータのインキュベータチャンバ内に配置されている、インキュベータ装置に関する。
【0079】
インキュベータは実験室装置又は実験室インキュベータである。インキュベータとは、特に、インキュベータチャンバを備え、インキュベータチャンバの雰囲気が、インキュベータによって、規定の目標温度まで調整可能でありもしくは調整される実験室装置を指す。特にこれは、種々の生物学的発育及び成長プロセスのための制御された気候条件を形成し、そして維持するように使用できる実験室装置である。インキュベータは好ましくは加振機、すなわちインキュベータチャンバ内に配置された物体を動かすための移動装置を備えたインキュベータであってよく、又はこれを含んでよい。インキュベータは細胞培養装置、微生物インキュベータ(CO2なしも含む)であってよい。インキュベータは、特にインキュベータチャンバ内の調整されたガス及び/又は空気湿度及び/又は温度の条件を有する微気候を形成し得るのに役立ち、このような処理は時間に依存してよい。実験室インキュベータ、特に実験室インキュベータの処理装置は特に、タイマー、特にタイマー、加熱/冷却装置、そして好ましくはインキュベータチャンバに供給される交換ガスを調整するための調節装置、インキュベータのインキュベータチャンバ内のガスの組成用の、特にガスのCO2及び/又はO2及び/又はN2含有率を調節するための調節装置、及び/又はインキュベータのインキュベータチャンバ内の湿度を調節するための調節装置を有することができる。インキュベータ、特にインキュベータの処理装置は、特にインキュベータチャンバと、さらに好ましくは少なくとも1つの制御ループを備えた調整装置とを有しており、調整装置には、作動装置として、少なくとも1つの加熱/冷却装置が割り当てられ、そして測定装置として、少なくとも1つの温度測定装置が割り当てられている。インキュベータ内の温度は、調整装置によって調整することができる。実施形態に応じて、さらに湿度を調整することもできる。水で充填されたトレイを加熱又は冷却することにより、蒸発を介して湿度を調節することができる。この代わりに且つ/又はこれに加えて、水分蒸発装置がインキュベータの構成部分として設け、水分蒸発装置によって、インキュベータチャンバの雰囲気中の湿度を調節してもよい。CO2-インキュベータは特に、動物もしくは人間の細胞を培養するのに使用される。インキュベータは、少なくとも1つの細胞培養容器を反転させるための反転装置、及び/又は少なくとも1つの細胞培養容器を振盪もしくは運動させるための振盪装置を有することもできる。
【0080】
特に調節装置に割り当てられてよいインキュベータのセンサ装置は特に少なくとも1つの温度センサ、好ましくは複数の温度センサを有している。温度センサは例えばPt 100又はPt 1000温度センサであってよい。センサ装置は好ましくは、相対ガス濃度を決定するための、特にCO2及び/又はO2及び/又はN2含有率を決定するためのセンサを有している。センサ装置は好ましくは、相対空気湿度を決定するためのセンサを有している。
【0081】
インキュベータは好ましくは1つもしくは単一のインキュベータチャンバを有している。このようなインキュベータチャンバは複数の区画に分割されていてよい。これらの区画は-特に孔付きの-支承板によって分離されていてよく、それによって特に、区画間のガス交換が可能になる。支承板は、特に下側にセンサ装置、又はインキュベータ雰囲気を測定チャンバ内へ案内する流路を保持するように設置することができ、特にこれらの部分のためのホルダを有することができる。
【0082】
インキュベータチャンバはチャンバ壁もしくはチャンバ内壁と、正確に1つ又は少なくとも1つのチャンバ開口とを有しており、このチャンバ開口を介して、物体もしくは細胞培養容器をインキュベータチャンバの内部に配置し、ここから取り出すことができる。このようなチャンバ開口は、インキュベータチャンバと可動に結合された閉鎖要素、特にヒンジによりインキュベータチャンバに可動に取り付けられたインキュベータ扉、特に1つ又は2つ以上のチャンバ扉によって閉鎖することができる。インキュベータは、特に透明であってよい1つ又は2つ以上の内側扉を有し、-特に非透明な-外側扉を有することができ、特にチャンバ開口部を閉鎖または開放するインキュベータチャンバおよび場合によっては少なくとも1つの内側インキュベータードアを環境から熱的に断熱する外側ドア、特に非透明の外側ドアを有することができる。
【0083】
チャンバ開口の閉鎖位置では、インキュベータチャンバの内部(内部空間と同義)は、好ましくは内部においてインキュベータによって制御される所望の雰囲気を内部に設定、特に調節できるように、周囲に対して隔離されている。「インキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気」という概念は、インキュベータチャンバ内に配置された実質的に閉じられた中空体の内部空間を意味するのではなく、また特に、当該容器の開口が閉じられた、特に覆われた、又は非気密又は気密に閉じられた、インキュベータチャンバ内に配置された容器の容器内部空間を意味するものでもない。例えば、細胞培養容器のこのような内部空間は、通常、液状培地と、この液体の上方に位置するゲル化した空気上澄みとを有する。チャンバ開口の開位置では、このような開口を介して、インキュベータの周囲とインキュベータチャンバの内部との間のガス交換が可能である。チャンバ開口は、通常、チャンバ開口を取り囲む前壁に位置している。
【0084】
インキュベータチャンバは、好ましくは複数の壁もしくは内壁面を有し、これら壁もしくは内壁面は、特に一体的に特に縁なしに互いに接続されていてよい。壁もしくは内壁は好ましくはほぼ平面状に形成されているが、しかし全体的又は部分的に湾曲した形状を有してもよい。インキュベータチャンバは好ましくは立方体状に形成されているが、しかし他の形状、例えば球状、楕円体状、多面体状に形成されていてもよい。壁もしくは内壁面は好ましくは低腐食性材料、特にステンレス鋼、銅、真鍮、又はプラスチック、特に複合プラスチックでできている。これにより、チャンバ内部の清浄化/滅菌が容易になる。物体もしくは細胞培養容器の装填/取り出しの役割を果たすチャンバ開口とは別に、インキュベータチャンバは、適切に寸法設定された装置もしくはガス導管及び/又はケーブル接続部をインキュベータチャンバの内部からその外側へ又はインキュベータの周囲へ貫通案内するための少なくとも1つのポートを有することができる。ポートは、特に、適切に寸法設定された装置もしくはガス導管及び/又はケーブル接続部をインキュベータチャンバの内部からその外側へ又はインキュベータの周囲へ貫通案内するための、インキュベータチャンバのチャンバ壁内の開口を含む。
【0085】
インキュベータチャンバの内部の典型的な大きさは50~400リットルである。
【0086】
インキュベータは正確に1つのインキュベータチャンバを有しているが、2つ以上のインキュベータチャンバを有することもでき、これらのインキュベータチャンバの雰囲気(温度、相対ガス濃度、空気湿度)は特に個々に又はまとめて調節可能であってもよい。インキュベータは複数のインキュベータチャンバを有することができ、これらはそれぞれ固有のチャンバ開口と、チャンバ開口を閉じるための、特に固有のポートを閉じるための固有のチャンバ扉とを有することができる。複数のセンサ装置が、特にチャンバ1つごとに1つ設けられていてもよい。
【0087】
インキュベータは、インキュベータチャンバを部分的又は完全に取り囲むハウジングを有することができる。ハウジングは基本的に立方体状に形成されていてよく、そして特に、インキュベータが積み重ねできるように形成されていてよい。センサ装置及び/又は少なくとも1つのVOCセンサは、好ましくはハウジング内又はハウジング区分内に配置されており、特にハウジングと不動に結合されている。このようにすると、センサ装置はインキュベータの一体的な部分を形成する。しかしセンサ装置はモジュールとして、特に後付けシステムの一部として、ハウジング内に配置可能であってよく、特にハウジングと不動に連結して配置することもできる。
【0088】
インキュベータの貯蔵領域は、特に貯蔵板、特に棚板挿入体によって実現され、この貯蔵板/棚板挿入体は特にステンレス鋼又は銅又は類似のものから作られるか、又はこのような材料を有することができる。貯蔵板は底板、特に中間底板として機能する。貯蔵板はインキュベータチャンバから取り外すことができ(「貯蔵板挿入体(Lagerplatteneinsatz)」)、又は固定的に挿入された状態でインキュベータチャンバと接続されていてもよい。インキュベータチャンバは、1つ又は2つ以上の貯蔵板挿入体又は挿入可能な機器を保持するための保持区分又は保持フレームを有することができる。貯蔵板はその下側で、センサ装置又は少なくとも1つのガス導管を保持するように設置されていてよく、特にこのようなセンサ装置又はガス導管のためのホルダを有することができる。この代わりに又はこれに加えて、インキュベータチャンバの内壁のうちの少なくとも1つは、1つ又は2つ以上の貯蔵板挿入体、又は挿入可能な機器を保持するように配置されていてよい。このために、壁内に一体的に組み込まれた保持構造、特に1つ又は2つ以上の突起、溝、又はウェブが設けられていてよい。貯蔵板は、インキュベータチャンバ内の利用可能な収納スペースを増加させる。
【0089】
少なくとも1つの支承板のための保持フレームも、好ましくは非腐食性材料、ステンレス鋼から製作されている。保持フレームは好ましくは、インキュベータチャンバの底壁に載る少なくとも1つのベース区分を有することにより、立設体として設計される。しかしながら保持フレームはインキュベータチャンバの側壁に支持されていてもよく、且つ/又はインキュベータチャンバの天井壁に懸吊されていてもよい。
【0090】
支承板は好ましくは(そして特に主として完全に)、インキュベータチャンバの水平方向断面を横切って延びている。
【0091】
好ましくは、インキュベータは、少なくとも1つの細胞培養容器を取り扱うためのハンドリング装置を有している。「ハンドリング(Behandlung)」という概念は特に、対象物、特に細胞培養物又は細胞培養容器が動かされ、且つ/又は輸送され、且つ/又は調査され、且つ/又は変化させられ、特に物理的、化学的、生化学的に、又はその他の方法で変化させられることを意味する。
【0092】
ハンドリング装置は、細胞培地が少なくとも1つの細胞培養容器内で、好ましくは制御プログラムによって制御される運動プログラムを介して運動するように維持される移動装置とすることができる。移動装置は振盪装置又は揺動装置であってよい。移動装置は、好ましくは支持装置、特に1つ又は2つ以上の細胞培養容器が置かれ且つ/又は固定されるプレートを有し、移動装置は好ましくは駆動装置を有し、特に振盪装置の場合、1つの駆動装置、例えばオシレータ駆動装置を有し、オシレータ駆動装置によって、所望の運動プログラムが実行される。運動プログラムの構成は細胞培養物の細胞の成長段階に依存することができ、そして細胞の種類、特に細胞株に依存することができる。ハンドリング、特に運動プログラムの構成及び/又は制御は、細胞成長データに依存することができる。ハンドリング装置は、少なくとも1つの細胞培養容器が揺動させられる揺動装置であってよい。揺動装置の構成部分は、振盪装置の構成部分に相当するが、しかし揺動運動するように構成されている。
【0093】
ハンドリング装置、少なくとも1つの細胞培養容器をインキュベータチャンバ内で運搬するための運搬装置であってもよい。運搬装置は、少なくとも1つの細胞培養容器を載せることができる支持装置を有するリフト装置であってよい。。リフト装置は、好ましくは移動機構、及び/又は移動機構を駆動するための電気的に制御可能な駆動機構を有している。運搬装置はさらに、少なくとも1つの細胞培養容器を把持し保持するための、移動可能で電気的に制御可能な把持アームを有してよい。運搬装置は、その上に載置された少なくとも1つの細胞培養容器を移動させるためのコンベアを有することができる。輸送により、少なくとも1つの細胞培養容器をインキュベータチャンバ内で、特にインキュベータチャンバ内の処理ステーションにおける処理位置へ移動させ、このような処理位置から離れるように移動させることができる。制御装置は、評価装置によってセンサ装置の測定値から得られた結果データに応じて運搬装置を制御するように構成されていてよい。
【0094】
センサ装置、特にガス導管はさらにインキュベータチャンバ内に位置する運搬装置に取り付け可能であってよくもしくは固定されていてよい。センサ装置をインキュベータチャンバ内で運動可能且つ位置決め可能にする位置決め機構に、当該センサ装置を位置決め機構に取り付けられるか、又は固定されていてよい。位置決め機構は、可動ロボットアームを含むことができ、好ましくは、特に制御装置の制御プログラムによって電気的に制御可能である。このようにすると、インキュベータチャンバ内の異なる位置において、VOC濃度を、1つのセンサ装置を用いて、又は数個のセンサ装置を連続的に用いて連続的に測定することができる。位置決めメカニズムは、インキュベータチャンバ内に挿入可能な構成部分として形成されていてよい。このような構成部分の電源は、好ましくは壁開口、例えばポートを通したインキュベータへのケーブル接続を介して、又は外部電圧源とのこのようなケーブル接続を介して行うことができる。制御装置は、センサ装置の測定値から評価装置によって得られた結果データに応じて、位置決め機構を制御するように構成されていてよい。
【0095】
ハンドリング装置は、インキュベータチャンバの温度制御装置(Temperiereinrichtung)と理解することもでき、温度制御装置によって、インキュベータチャンバ内の雰囲気を所望の値、特に37℃に調整される。適温化(Temperieren)という概念は、加熱及び冷却によって雰囲気温度を上昇させたり低下させることを指す。好ましくは、内部の温度はインキュベータの壁の温度を変えることで調節される。対応する温度調整装置の温度センサは、インキュベータチャンバの内部及び/又は外部の少なくとも1つの位置に、特にインキュベータチャンバの壁に配置されている。
【0096】
インキュベータは好ましくはユーザーインターフェイス装置を有しており、利用者がユーザーインターフェイス装置を介してデータをデータ処理装置もしくは制御装置へ入力することができ、且つ/又はユーザーインターフェイス装置を介して情報を利用者へ出力することができる。好ましくは、インキュベータもしくはこのようなユーザーインターフェイス装置は、利用者がセンサ装置の測定値、特に評価装置の結果データに依存する情報を受け取ることができるように構成されている。好ましくは、インキュベータもしくはこのようなユーザーインターフェイス装置は、利用者がインキュベータ又はセンサ装置の運転のための少なくとも1つの運転パラメータをこのようなユーザーインターフェイス装置に入力し、且つ/又は対応する情報をこのようなユーザーインターフェイス装置から得ることができるように構成されている。このようにすると、ただ1つのユーザーインターフェイス装置を利用者によって使用することにより、インキュベータそして少なくとも1つのセンサ装置にも影響を与えたり、又はセンサ装置を制御したり、又はセンサ装置から情報を受け取ったりすることができる。特に、センサ装置は、利用者にインキュベータのユーザーインターフェイス装置によって行われる、利用者の問い合わせに対して測定値又は結果データ、又は測定値から導出された統計的な情報、及び/又は測定値又は結果データの時間経過を示すように構成されていてよい。
【0097】
インキュベータの機器制御型処理は、好ましくはプログラム制御型処理、すなわちプログラムによって制御される処理である。試料のプログラム制御型処理とは、処理のプロセスが、本質的に複数又は多数のプログラムステップを実行することによって行われることが理解される。好ましくは、プログラム制御型処理は、少なくとも1つのプログラムパラメータ、特に利用者によって選択された少なくとも1つのプログラムパラメータを使用することによって行われる。利用者によって選択されるパラメータは、ユーザーパラメータとも呼ばれる。プログラム制御型処理は、好ましくはデジタルデータ処理装置によって行われる。デジタルデータ処理装置は、特に制御装置の一部であるデジタルデータ処理によって実行される。データ処理装置は、少なくとも1つのプロセッサ、すなわちCPUを有することができ、且つ/又は少なくとも1つのマイクロプロセッサを含んでいてもよい。プログラム制御型処理は、好ましくは、プログラム、特に制御プログラムの指示に対応して制御され且つ/又は実施される。特に、プログラム制御型処理の場合、少なくとも利用者が必要とするプログラムパラメータを取得した後は、実質的には利用者の活動は必要でない。インキュベータの機器制御型処理は、特に少なくとも1つのセンサ装置の測定値又は結果データに依存して実施することができる。
【0098】
プログラムパラメータとは、プログラム又はサブプログラムの内部で、プログラム又はサブプログラム内で所定の方法で設定可能な変数であり、プログラムまたはサブプログラムの少なくとも1回の実行(呼び出し)に対して有効であるプログラムパラメータは、例えば利用者によって設定され、プログラム又はサブプログラムを制御し、このようなプログラムパラメータに応じてデータ出力を生じさせる。特に、プログラムパラメータ及び/又はプログラムによるデータ出力は、機器の制御、特に少なくとも1つのハンドリング装置によるハンドリングの制御に影響を及ぼし、及び/又は制御する。
【0099】
プログラムとは、特にコンピュータプログラムを意味すると理解される。プログラムは、特に宣言と命令とから成る一連の指示であり、これによりデジタルデータ処理装置上で所定の機能、タスク、または問題を処理及び/又は解決することができる。プログラムは通常、データ処理装置によって使用されるソフトウェアとして存在する。特に、プログラムはファームウェアとして、本発明の場合、特に、インキュベータ又はシステムの制御装置のファームウェアとして存在することができる。プログラムは、通常、データ記憶媒体上に、実行可能なプログラムデータとして、多くの場合いわゆるマシンコードで存在し、マシンコードは、データ処理装置の計算機のメインメモリ内へローディングされる。プログラムは一連の機械命令、すなわちプロセッサ命令としてコンピュータのプロセッサによって処理され、実行される。「コンピュータプログラム」という用語は、特に、実験室装置の制御の経過中に、実行可能なコードが生成されるソースコードをも意味するものと理解される。
【0100】
ユーザーインターフェイス装置は、インキュベータの構成部分、又はモジュールであってよい。ユーザーインターフェイス装置は、好ましくは、それぞれの場合において、ユーザーインターフェイス装置のための制御装置、実験室装置、特にインキュベータとのそのユーザーインターフェイス装置を介したデータ接続を確立するための通信装置、利用者のユーザー入力を検出するための入力装置、情報を出力するための出力装置、特に表示装置及び/又はディスプレイ、特にタッチセンサ式ディスプレイと、を有する。ユーザーインターフェイス装置の制御装置は好ましくは、データ接続を介して、インキュベータの制御装置とデータを交換するように構成されている。
【0101】
インキュベータチャンバ内に収納可能な物体は、特に細胞培養容器である。細胞培養容器は特に透明である。細胞培養容器は、特にプラスチック製、特にPE又はPS製であり、特に細胞の成長面を形成する平面状の底板を有する。このような底板は、細胞の付着を促進するための表面処理が施されていてもよい。細胞培養容器は、PEキャップ又はガス交換キャップ、特にフィルタが任意に含まれる蓋で閉鎖可能であってよく、又は閉鎖されていてよく、もしくはこれを備えていてもよい。細胞培養容器は特に積み重ね可能である。特に適しているのはエッペンドルフ細胞培養フラスコである。
【0102】
インキュベータは好ましくは電気制御装置(Steuereinrichtung)(制御装置(Steuerungseinrichtung)と同義)を有しており、制御装置は特に調整装置を含むことができる。データ処理装置は好ましくは、インキュベータの機能を制御するインキュベータの制御装置の一部である。制御装置の機能は、特に電子的な切換回路によって実現される。制御装置は、データ処理装置を含むマイクロプロセッサを有してもよい。制御装置及び/又はデータ処理装置は、好ましくは制御ソフトウェア又は制御プログラムとも呼ばれる制御手順を実施するように構成されている。インキュベータ及び/又は制御装置及び/又は評価装置の機能は方法ステップで記述することができる。これらの機能は、制御プログラムのコンピュータプログラム(コード)の構成要素として、特に制御プログラムのサブルーチンとして実現されていてよい。
【0103】
本発明の文脈において、制御装置は、一般に、データ処理装置、特にデータを処理するための計算ユニット(CPU)、及び/又はマイクロプロセッサを有するか、又はデータ処理装置である。インキュベータの制御装置のデータ処理装置は、好ましくは、インキュベータの1つまたは複数の、特にオプションの処理装置によって実施される処理プロセスおよび/または個々の処理を制御するためにも配置される。
【0104】
データ処理装置はあるいは、好ましくはインキュベータの外部に配置され、且つインキュベータとは別個に配置された装置であり、外部装置もしくは外部データ処理装置とも呼ばれる。データ処理装置とインキュベータは、好ましくはデータ接続されており、好ましくはデータ交換のためのネットワークの構成要素である。データ処理装置及びインキュベータは、特に、VOCの蓄積を検出するための、特に汚染を検出するための、本発明による実験室用監視システムの構成要素である。
【0105】
特に、インキュベータは、少なくとも1つの制御ループを備えた調整装置を有している。制御ループには、作動装置として少なくとも1つの温度制御装置が割り当てられ、測定要素として少なくとも1つの温度センサが割り当てられている。空気湿度自体は空気湿度センサ(rHセンサ)によって測定されず、空気湿度は制御ループの入力変数ではないものの、実施形態によっては、これを介して空気湿度を調節することもできる。インキュベータチャンバ内の水を充填されたトレイを加熱又は冷却することにより、蒸発によって湿度を調節することができる。CO2インキュベータは、特に動物もしくは人間の細胞を培養するのに役立つ。インキュベータは、少なくとも1つの細胞培養容器を回転させるための回転装置、及び/又は少なくとも1つの細胞培養容器を振盪もしくは移動させるための振盪装置を有することができる。
【0106】
インキュベータチャンバ上又はインキュベータチャンバ内にセンサ装置を配置する場合、インキュベータチャンバ内の電気装置の運転が廃熱をもたらし、これがチャンバ雰囲気を許容できない程度に加熱するおそれがあることに注意すべきである。したがってインキュベータの制御装置は、特に、温度センサによって検出されたチャンバ雰囲気の温度に応じて、電気装置、特にインキュベータチャンバ内又はインキュベータチャンバ上の少なくとも1つのセンサ装置の動作を制御するように、構成されていてよい。インキュベータの制御装置は、特に、チャンバ雰囲気の望ましくない加熱を補償するために、少なくとも1つの温度制御装置によるチャンバ雰囲気の温度制御と、インキュベータチャンバ内の電気装置の動作とを、互いに依存して制御するように設定することができる。
【0107】
制御装置は、インキュベータのプログラムパラメータ又は制御パラメータが他のデータに応じて自動的に選択されるように構成されていてよい。少なくとも1つの細胞培養物の制御パラメータによって制御される少なくとも一つの細胞培養容器内の少なくとも一つの細胞培養物の処理は、特に、少なくとも一つの細胞培養物が受ける気候処理に対応する。気候処理に影響を与えるために使用される可能なパラメータ、特にプログラムパラメータ、特にユーザーパラメータは特に、少なくとも1つの試料がインキュベートされるインキュベータチャンバの温度、インキュベーションチャンバ内のO2-及び/又はCO2及び/又はN2の相対ガス濃度、インキュベーションチャンバ内の湿度、及び/又は複数のステップから成るインキュベーション処理プログラムのシーケンス、特に順序に影響を与えるか、又は定義する少なくとも1つのシーケンスパラメータを定義する。
【0108】
温度制御装置は加熱装置/冷却装置の組み合わせであってよい。温度制御装置は好ましくは加熱装置だけである。加熱装置は特に、電気抵抗線を介して熱を発生させることができる。
【0109】
インキュベータによって制御されるプロセスには物理的状態「インキュベータ雰囲気の温度」に影響を与えるすべての適温化ステップ、特に、空のインキュベータチャンバで実施される約100℃~120℃または最高180℃または200℃の高温期によるオプションの自動滅菌のステップも含まれる。
【0110】
インキュベータによって制御されるプロセスには、インキュベータ雰囲気の所望のガス組成を設定するために、特に制御プロセスの一環として、特にインキュベータのドアを開けた後に望ましくない態様で変化した場合、または測定チャンバ内のインキュベータチャンバのガス雰囲気の抽出によってチャンバ雰囲気、特にチャンバ圧力が望ましくない態様で変化した場合に、インキュベータ雰囲気の一部が時間当たり所定の体積の体積流量に従って交換されるガス交換プロセスがさらに含まれ得る。このような場合に測定されるべき物理的状態は、相対ガス濃度又は相対空気湿度である。インキュベータもしくはその制御装置は好ましくは、相対ガス濃度、又は相対ガス濃度の結果として検出されるガス値、特にCO2及び/又はO2値を調整するように設定され、これはある時点で温度制御ループの設定値として適用される。このようなガス制御には、空気湿度の制御も含むことができ、空気湿度の調整はセンサ装置の空気湿度センサによって、特に相対空気湿度を測定するセンサによって行われる。
【0111】
インキュベータ自体によって制御されるプロセスには、例えば、インキュベータ雰囲気の一部を、時間当たり所定の体積を有する体積流に従って、特にインキュベータチャンバ内の1つ以上の可変または一定の流れ方向にも移動させる気体移動プロセスも含まれ得る。これにより、特に、異なる位置にある細胞培養容器を時間平均で同じ雰囲気にさらすために、インキュベータチャンバ内の雰囲気をより均一にすることができる。
【0112】
本発明はまた、液体、特に生物学的実験試料、特に生細胞を処理するための実験装置の内部空間のガス雰囲気における揮発性有機化合物(VOC)の蓄積、特に汚染を検出するための、特にインキュベータのインキュベータチャンバの内部空間のガス雰囲気における揮発性有機化合物(VOC)の蓄積、特に汚染を検出するための、本明細書に記載されているようなセンサ装置の使用に関し、VOCは、各場合において、好ましくは、
- 内部空間に配置された微生物:
- 内部空間に配置された生体細胞;
- 実験装置、特にインキュベータ、特にインキュベータチャンバの機器部品から内部空間への漏れ;
によって遊離されており、
センサ装置がVOCの検出のために少なくとも1つのVOCセンサを有しており、少なくとも1つのVOCセンサは、内部空間の大気ガスと流路連通するように配置された少なくとも1つの測定領域を備える、
センサ装置の使用に関する。
少なくとも1つのVOCセンサ、その制御、及びその測定信号の評価は、本文書における記載内容に従って実施することができ、特に、言及された発生源に由来するそれぞれのVOCを検出するための要件に適合させることができる。
【0113】
本発明によるインキュベータ、センサ装置、及び方法のさらなる有利な構成は、実施例の下記説明から、図面及びその説明と併せて明らかになる。実施例の同じ構成部分は別段の記載がない場合、又は文脈から他のことが生じるのではない場合には、主として同じ符号によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】
図1aは、実施例に基づく本発明によるインキュベータを、ハウジング扉の閉状態で示す側方-前方斜視図である。
【
図1b】
図1bは、
図1aのインキュベータを示す側方-後方斜視図である。
【
図1c】
図1cは、
図1aのインキュベータを、ハウジング扉の開状態で示す側方-前方斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1aのインキュベータであって、側壁に対して平行に且つインキュベータの中心を通って延びる平面に沿った断面で、ハウジング扉を取り除いた状態で示す側方-前方斜視図である。
【
図3】
図3a~3kは、本発明のそれぞれ有利な実施例に基づくそれぞれ1つの別のインキュベータを示す図である。
【
図4a】
図4aは、特に
図1a~2のインキュベータ1内に使用され得る、本発明の実施例に基づく測定チャンバを備えたセンサ装置を示す図である。
【
図4b】
図4bは、
図6aの測定チャンバを備えたセンサ装置を、VOCセンサが挿入されておらず、またそのケーブルもない状態で示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4a,4bに対応し得るセンサ装置の概略的な構造、及びインキュベータの制御装置とのその接続を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明によるセンサ装置において使用可能なMOXセンサの概略的な構造を示す図である。
【
図7】
図7は、
図4a~6に示された構成部分によって実施可能な、VOC測定におけるガス制御を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したDH5αからのVOCの測定時の測定値を含んで示すダイアグラムである。
【
図9】
図9は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地からのVOCの測定時の測定値を含んで示すダイアグラムである。
【
図10】
図10は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地内のDH5aからのVOCの測定時の測定値を含んで示すダイアグラムである。
【
図11】
図11は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地内のDH5α及びCHO-Sの測定時の測定値を含んで示すダイアグラムである。
【
図12】
図12は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地内のDH5aからのVOCの測定時の測定値を含んで示すダイアグラムである。ガスセンサの受信された測定信号は時間に関してプロットされ、そして場合によっては存在する警告時点がマーキングされる(縦方向の黒いマーキング)。
【
図13a】
図13aは、さらなる有利の実施形態に基づく本発明によるインキュベータを、MOXセンサとして構成されたただ1つのVOCセンサを有する状態で示す図である。
【
図14】
図14は、
図13bのMOXセンサの周期的制御(温度サイクル操作(temperature cycled operation、TCOモード))、及びこれから生じる、測定領域の導電率の周期的経過の段階的経過を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14の測定期間における測定信号曲線から導出された、正規化された測定サイクルの1つの測定期間の測定信号の経過を示す図である。
【
図16a】
図16aは、細菌試料をチャンバ内部へ導入した後の、タービンとして形成された複数のMOXセンサを備えたセンサ装置からの測定信号を示す図である。
【
図16b】
図16bは、
図16aのように細菌試料をチャンバ内部へ導入した後の、
図13a,bに基づく、単独のセンサを有するように形成されたMOXセンサを備えたセンサ装置からの測定信号を示す図であり、測定信号はTCOモードで突き止められ、二次的特徴が測定信号として使用された。
【
図17a】
図17aは、エタノールをチャンバ内部へ導入した後の、
図13a,bに基づく、単独のセンサを有するように形成されたMOXセンサを備えたセンサ装置からの複数の試験の測定信号を示す図であり、測定点もしくは測定信号は、1つの測定期間の測定信号の平均値としてTCOモードで突き止められた。
【
図19】
図19は、
図19の曲線の最大値を、「試料のアルコール濃度」の値を横座標に示すダイアグラムに記入して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
図1aは、細胞培養物の成長のためのインキュベータ1を示しており、ここでは真核細胞の成長のための、CO2インキュベータとして設計された実験室用温度制御キャビネットである。インキュベータ1は、少なくとも1つのハウジング壁2によって囲まれたハウジング内部を備えたハウジング2と、ハウジング内に配置された適温化可能なインキュベータチャンバ3(「チャンバ3」とも)であって、少なくとも1つのチャンバ壁によって取り囲まれた、実験室試料を受け入れるためのチャンバ内部を備えたインキュベータチャンバ3(「チャンバ3」とも)とを有している。ハウジングの外壁は、インキュベータの他の全ての構成部分、特にセンサ装置30をも支持するように互いに接続されている。ハウジングは台座8に載置されている。使用目的では、ハウジングの側壁2cの外側、前壁2a、背面壁2b、並びにハウジング扉4の外側及びその内側4a、並びにチャンバの側壁、チャンバ前壁3a、及びチャンバ背面壁3bは鉛直方向に、つまり重力方向に対して平行に配置される。ハウジングの上部の外側2dと、見ることができない底部側、並びにチャンバの底壁及び天井壁はそれに応じて水平方向に配置されている。「下方へ向かって」とは、本発明の説明では、意図された通りに作動されるインキュベータが整列される重力方向を常に意味し、「上方へ向かって」という方向はその反対方向を意味する。「前方へ向かって」の方向は、閉じたハウジング扉の前側へ向かう水平方向を意味する。「後方へ向かって」の方向は、インキュベータの背面へ向かう水平方向を意味する。チャンバはステンレス鋼から製作され、ハウジングはラッカー処理されたシートメタルから製作されている。
【0116】
ハウジング扉4には、ユーザーインターフェイス装置5が搭載されており、このユーザーインターフェイス装置は、利用者によって情報を読みそして入力するために、特にセンサ装置20によって得られた情報を出力するために使用されるタッチセンサ式ディスプレイを有する。ハウジング扉は、ハウジング扉をハウジング2に連結する2つのヒンジ9を有する。ハウジング扉は、係止装置7;7a,7bによって、閉位置に保持される。ハウジング扉は扉グリップ6を有している。
【0117】
図1Cには、ハウジング扉4が開かれた状態で示されている。チャンバ扉10は、ヒンジ15によって、チャンバ前壁3aに取り付けられており、手動式ロック13によって図示の位置で閉じた状態に保持され、チャンバ内部にはアクセスできないようになっている。しかしながら、チャンバ扉10が透明であるので、利用者はこのような位置で内部を見ることができる。チャンバ扉は、チャンバ扉の環状の弾性シール11によって、チャンバ前壁に気密に保持される。ハウジング扉の内側4aは、チャンバ扉が閉じられたとき、ハウジング前壁と、環状のシール12と同一平面になる環状の弾性シール14を有しており、チャンバ扉10とハウジング扉4aとの間の領域の気密な遮蔽を実現する。
【0118】
図2に一部見られるように、インキュベータは、チャンバ内部空間3を適温化し、すなわちその温度を温度調整によって調節する2つの温度制御装置を備えている。このため に必要な構成部分18の一部が、ハウジング底壁2eとチャンバ底壁3eとの間に配置されている。上側の加熱回路(図示せず)の加熱回路(図示せず)の加熱コイルは、チャンバ天井壁3dの外側とチャンバ側壁の上側領域、ここではチャンバの側壁3cの高さに沿って上側ほぼ2/3に熱的に接続され結合されている。下側の加熱回路(図示せず)の加熱コイルは、チャンバ底壁3eの外側とチャンバ側壁の下側領域、ここではチャンバの側壁3cの高さに沿って下側ほぼ1/3に熱的に接続され結合されている。
【0119】
断熱装置19(19a,19b,19c)が、チャンバとハウジングとの間に設けられている。断熱装置は、隣接する温度制御装置を備えたチャンバを、その外側で環境と直接接触しているハウジングから隔離する。インキュベータは通常は、外部温度18℃~28℃で作業する。温度制御装置もしくは温度制御システムは、このような領域内で特に効率的に作業する。断熱装置はU字形に湾曲した、グラスウールもしくはミネラルウール製の断熱要素19aを含んでおり、断熱要素は、チャンバ天井板と両チャンバ側壁3cとを取り囲む。断熱要素は底部へ、そして背面壁へ向かってPIR発泡体(ポリイソシアヌレート発泡体)から成る断熱プレート19cに開口し、ハウジング前壁2a、チャンバ前壁3a、及びシール12の内側に当接する環状のニードルフェルトストリップ19aによってハウジング及びチャンバの前側で終端している。チャンバの、外方へ向かう断熱は、本発明による手段によって最適化される。
【0120】
ハウジング背面壁2bには、背面に取り付けられた構成部分、特にセンサ装置30の測定チャンバ31を覆うために二重ハウジング背面壁16が取り付けられている。背面壁は、グリップ17によって取り外すことができる。
【0121】
インキュベータは、その背面側に2つのアクセスポート20,20‘を有し、これらのアクセスポートは、チャンバの背面壁に設けられた開口20h,20‘hを通して、測定チャンバ32とインキュベータチャンバ3との間に導管、特に少なくとも1つのガス導管を敷設し、且つ/又はチャンバ3の内部へケーブルを敷設することにより、例えば内部に配置されたセンサ装置を制御することを可能にする。アクセスポートが不要な場合、アクセスポートは断熱材料、例えばシリコーン発泡体から成る栓25によって充填される。
【0122】
好ましくは、ガス導管29は、インキュベータチャンバ3の内部空間内に開口し、チャンバ背面壁の開口20h及び/又はポート20の開口を通って、間接的に適温化されるこのようなチャンバ壁によって適温化されるようにチャンバ背面壁に沿って断熱装置19の断熱材19c間を通り、次いで、ガス導管29は初めてチャンバ背面壁から離れ、断熱材19cを貫通して、好ましくは設けられた測定チャンバ32内へ入り、測定チャンバ32は、ここでは、ハウジング背面壁16によって分離されたインキュベータ1の領域内に配置され、インキュベータに接続されている。測定チャンバ32の排気導管(見られない)は、好ましくはハウジング背面壁16を通ってインキュベータの周囲内へ通じている。
【0123】
センサ装置、少なくとも1つのVOCセンサ、及び測定チャンバの有利な他の構成、及びインキュベータ、特にインキュベータ1におけるその有利な配置関係について、以下の図面に基づき説明する。
【0124】
図3aは、インキュベータチャンバ102と、インキュベータチャンバの外側に位置する、インキュベータのハウジング区分103(「外部領域」)とを備えたインキュベータ200を示している;これらの構成部分を
図3a~3kの各インキュベータが有している。
図3aでは、搬送手段113(ポンプ又はベンチレータ)によってチャンバ雰囲気を搬送することにより、チャンバ102の内部からポート105を介して、チャンバ壁102aを通って、制御装置104とともに外部領域103内に配置されたVOCセンサ装置130の測定チャンバ132へガス交換が行われ、VOC測定チャンバ132の排ガスは、排気導管109aを介して周囲に放出される;パージガス112はパージガス導管109c及び弁109dを介してVOC測定チャンバへ導かれることにより、測定前にVOC測定チャンバをパージする。
【0125】
図3bはインキュベータ200を示している:VOCセンサ制御装置(204)は外部領域103内に配置されており、測定領域、つまりVOCセンサ211のMOX側211aはチャンバ102の内部領域内に位置し、VOCセンサ211の加熱側211bが外部領域103内に位置し、VOCセンサ211はチャンバ壁202a“内の 穴205‘内に密封した状態で組み込まれている。
【0126】
図3cは、インキュベータ300を示している:ポンプ313による搬送によって、チャンバ102の内部からガス導管309を用いて、チャンバ壁302aを通るポート305を介して、制御装置304と一緒に外部領域103内に配置された6つのVOCセンサ311を備えたVOCセンサ装置もしくはe-鼻331の測定チャンバ332へガス交換が行われ、そしてVOC測定チャンバ332の排ガスは、排気導管309aを介して周囲に放出され、パージガス312は測定前にパージガス導管309c及び弁309dを介してVOC測定チャンバへ送られる。
【0127】
図3dは、インキュベータ400を示している:ポンプ413による搬送によって、チャンバ102の内部からガス導管409を用いて、チャンバ壁402aを通るポート405を介して、制御装置404と一緒に外部領域103内に配置された6つのVOCセンサ411を備えたVOCセンサ装置もしくはe-鼻431の測定チャンバ43へガス交換が行われ、VOC測定チャンバ432の排ガスは、排気導管409a‘及び任意にはフィルタ415を介して、ポート405‘を経て、チャンバ壁402aを通ってチャンバ102内へ戻され;パージガス412は、パージガス導管409c及び弁409dを介してVOC測定チャンバへ搬送される。任意には、結露防止のために、導管409のヒーターもしくは加熱装置417が設けられる。
【0128】
図3eはインキュベータ500を示している:VOCセンサ511はチャンバ102内のラック板506上に配置されており、ケーブル507及びケーブルに基づく信号接続によって、チャンバ壁502aを通るポート505を介して外部領域103内のVOC制御装置504へ接続されている。
【0129】
図3fは、インキュベータ600を示している:VOCセンサ621はチャンバ10内のラック板606上に取り付けられており、そしてケーブルのない、無線機器621a,604aに基づく信号接続によって、ポートのないチャンバ壁602a‘を通して外部領域103内のVOC制御装置604と接続されている。
【0130】
図3gはインキュベータ700を示している:VOCセンサ711は、チャンバ102内の磁気留め具708(Magnethefter)によってチャンバ壁702aに取り付けられており、ケーブル707に基づく信号接続によって、チャンバ壁702aを通るポート705を介して外部領域103内のVOC制御装置704と接続されている。
【0131】
図3hはインキュベータ800を示す:VOCセンサ821は、チャンバ102内の磁気留め具808によってチャンバ壁802aと接続されており、そしてケーブルのない、無線機器821a,804aに基づく信号接続によって、ポートのないチャンバ壁802a‘を通して外部領域103内のVOC制御装置804と接続されている。
【0132】
図3iはインキュベータ900を示している:リング輪郭と循環するチャンバガスとを有する測定チャンバが示されている。ポンプ913による搬送によって、チャンバ102の内部からガス導管909を用いて、チャンバ壁902を通るポート905を介して、制御装置904と一緒に外部領域103内に配置されたここでは6つのVOCセンサ911dを備えたVOCセンサ装置もしくはe-鼻931の測定チャンバ932へガス交換が行われ、そして弁909d及び909gの閉鎖後、VOC測定チャンバ932からの排ガスを、循環導管909fを介してポンプ916によって測定チャンバ932を通して循環させ、これによりVOC含有チャンバガスの連続的な対流を、チャンバ102のガスもしくは雰囲気を大きく損なうことなしに可能にする。パージガス912はパージガス導管909c及び弁909dを介してVOC測定チャンバへ送られる。ガス体積が循環する結果、これ以上のガス体積がチャンバ102から取り出されることはなく、これによりチャンバガス損失は最小限に抑えられる。
【0133】
図3kはインキュベータ1000を示している:図には、循環するガスを測定するための循環式に形成された測定チャンバが示されている。ポンプ1013による搬送によって、チャンバ102の内部からガス導管1009を用いて、チャンバ壁1002aを通るポート1005を介して、ここでは12個のVOCセンサ1011dを備えたVOCセンサ装置もしくはe-鼻1041のリング状の測定チャンバ1042へガス交換が行われ、そして対応する弁の閉鎖後、排ガスをVOC測定チャンバ1042を通してポンプ1013によって循環させることにより、チャンバ102のガスもしくは雰囲気を大きく損なうことなく、VOC含有チャンバガスの連続的な対流を可能にする;パージガス1012は、パージガス導管1009c及び弁1009dを介してVOC測定チャンバへ搬送される。利点:チャンバガスが最短距離でチャンバから取り出され、したがって凝縮がほとんど生じない;しかし、チャンバ102からは、狭幅のリング状のVOC測定チャンバのために必要な体積だけを取り出せばよく;測定中にはガス体積が循環する;結果として、周囲に対するガス供給導管及び排ガス導管を有する構造と比較すると、チャンバガスの損失が少ないことである。
【0134】
図4aは、本発明の1実施例に基づく測定チャンバ62を備えたセンサ装置61を、斜め上方から見た側方斜視図で示している。このセンサ装置は、特に
図1a~2のインキュベータ1内に使用することができる。測定チャンバは中空スピンドル状体であり、
図4aでは、この中空スピンドル状体は、その上端部で、流入開口63がガス導管64によってインキュベータチャンバから雰囲気ガスを流入させ、流出導管67を通して流出させるようになっている。測定チャンバはホルダ66によってインキュベータに固定可能であり、とくにねじ固定可能であり、はんだ付け可能であり、又は他の形式で不動にインキュベータ、特にハウジング壁又はチャンバ壁に結合可能である。測定チャンバ62は部分的な中空体62aを有しており、部分的な中空体62a内へは、ガス案内体68が配置され、そして部分的な中空体は蓋部分62bで覆われる。部品62a,6sb及び68は固定的に互いに結合されている。測定チャンバ62の外側には、ここでは9つのMOX-VOCセンサの背面65a~65iが見られ、これらのMOX-VOCセンサは、測定チャンバの中心長手方向軸Aに面し且つ平行に、その前面側に測定領域又は加熱されたMOX吸着面(見えない)を有する。
【0135】
図4bは、モデルを破断することにより、
図6aの測定チャンバを有する開かれたセンサ装置61を、VOCセンサが挿入されておらず且つそのケーブルがない状態で、側方斜視図で示している。
【0136】
測定チャンバ62は、
図4bに示されているように、上側の中空円錐形区分62Aと、中央の中空円筒形区分62Bと、下側の中空円錐形区分62Cとを有している。中空円錐形区分62Aの頂部にはガスのための流入開口63が設けられており、中空円錐形区分62Cの先端には、ガスのための流出開口63が設けられている。主要流れ方向Aは、円形流入開口63及び円形流出開口67の中心を直線で結ぶことから生じる。ガス案内体の区分68bの、流入開口に向いた頂部には、周囲センサ(図示せず;圧力、温度、空気湿度)が配置されており、周囲センサは、9つのVOCセンサのように、信号交換のために電子評価装置と接続されている。
【0137】
ガス案内体はスピンドル状であって、測定チャンバ62の外壁の中空スピンドル状の輪郭と軸線Aに対して同軸的に配置され、測定チャンバ62の外壁の内側とガス案内体の外側との間にはスリーブ状の流路、もしくはリング状断面を有する流路が生じるようになっている。このようにして、ガスは、均一に、そして特に渦流形成を排除しながら(つまりできる限り層状に)、VOCセンサ65a~65iの測定領域の傍らを案内され、これらのVOCセンサは測定チャンバ62の外壁の円形開口62cに密着して当て付けられているので、9つの開口62cのそれぞれにおいて、各VOCセンサの測定領域のMOX吸着面の同一面が、流れ方向Aに対して平行に傍らを流過するガスと接触している。ガスは案内要素及びガス案内体によって案内される。ガス流の案内要素及び均一性により、センサ装置61によって実施される測定は特に鋭敏であり、さらに再現可能であり、そして信頼性が高い。MOX-VOCセンサの背面が測定チャンバの外部に、そしてこの測定チャンバとは接触せずに配置されていることにより、センサの加熱要素と測定チャンバとの間の熱伝達が最小化される。背面はさらに対流/空気流により容易に冷却することができる。
【0138】
センサ装置及び電子鼻を備えたインキュベータの実施例
下記本発明によるインキュベータは、
図1a~2に基づく構造を有しており、(センサ装置30を実現するための)
図4a,4bのセンサ装置61を使用する。センサ装置61は電子鼻として、全部で9つの種々のVOCセンサを有するように形成されている。
【0139】
VOCの基礎:
微生物有機体及び細胞の代謝時には、VOCが放出される。センサ装置61は電子鼻の原理にしたがって構成され、VOCを測定する。センサ装置は、細胞培養物の汚染について、もしくは、インキュベータチャンバ内のVOC濃度と関連する細胞培養物中又はインキュベータチャンバ内のプロセスについて、結論を導き出すことができる。このための前提条件は、微生物汚染を検出するために発生するVOCに対して、ガスセンサが十分な選択性と感度を有することである。
【0140】
選択性の異なる合計9つのガスセンサがここでは設置されている。そのため、微生物が持つVOCに対してそれぞれ異なる反応を示し、特徴的な測定信号パターンを生成する。測定は、特に生物試料の成長期間中に行われるため、測定信号パターンを時間の関数として記録することができる。生物学的サンプルの測定信号パターンには、分析され、意味論的なステートメントにまとめられるべき情報が含まれている。細胞培養物の微生物汚染の検出可能性についての詳細は後述する。これら9つのガスセンサのそれぞれは、8つ以下のガスセンサ、又は単一のガスセンサを備えたセンサ装置に使用することもできる。さらに、微生物有機体由来のVOCを検出し得るだけではなく、製造のすぐ後のインキュベータの機器構成部分の遊離に由来するVOCをも検出することができる。
【0141】
多様なガスセンサによって、種々様々な微生物有機体及び細胞の間をより良好に区別することができる。例えば一部では、種々様々な汚染時に、類似の測定信号パターンが発生することがあるが、個々のガスセンサの信号曲線が特徴的に異なる。複数の種々様々なガスセンサを使用することの利点はつまり、測定の情報量が増加することである。
【0142】
センサ装置61は測定チャンバ(MK)、ガス導管システム(GS)、及び処理ユニット(VE)を利用する。MKはVOCを測定するガスセンサ(VOCセンサ)を含む。GSはVOCをアクチュエータを利用してMKへ導く。VEはGSを制御し、ガスセンサ及び周囲センサを読み出し、データを処理し、そしてインキュベータに通信インターフェイスを提供する。VEは、データ処理装置を有する評価装置を含むセンサ装置の電子制御装置を含む。制御装置のマイクロコントローラは、ここではRaspberry Pi 3 B (Raspberry)である。通信インターフェイスは、AIモジュールと測定チャンバとの間の情報の流れを可能にし、ひいてはセンサ装置61のユーザーインターフェイスを用いた制御を可能にする。
【0143】
図5には、センサ装置61の概略構造と、及びAIモジュールとも呼ばれる、インキュベータの制御装置とのその接続の構造が概略的に示されている。MKは、ガスセンサと、周囲センサと、入口及び出口とを含む。GSは、弁及びポンプからのガス導管の助けを借りて、パージガス又はVOC(つまりチャンバ雰囲気ガス)のいずれかをMK内へ導く。VEは、電気的な導線を介してGS及びMKと接続されている。VEはGSを制御し、ガスセンサ及び周囲センサを読み出し、データを処理し、そしてインキュベータに通信インターフェイスを提供する。通信インターフェイスは、AIモジュールとセンサ装置61との間の情報の流れを可能にし、ひいてはセンサ装置61のユーザーインターフェイス(ユーザーインターフェイス装置)を使用した制御を可能にする。
【0144】
本実施形態では、各VOC分析の前にできる限り同一の開始条件が提供されるように、VOCの導入前にMKはパージされる。パージプロセスは、比較可能な測定結果を発生させるために好ましい。センサ装置61が利用されない場合、ガスが周囲からMK内へ侵入するか、あるいは過去のVOC測定のVOCがMK内に留まる可能性がある。好ましくは、一定の組成のパージガスが常に使用される。パージガス中の変化するガスの割合を低く保つために、好ましくは窒素5.0がパージガスとして使用される。このパージガスはここでは純度>99.999%を有する。
【0145】
MKは入口及び出口(流入部及び流出部)を有している。入口を介して、パージガス又はVOCがMK内へ導入される。入口の上流にはY継手があり、このY継手は、パージ導管とVOC導管とを結合する。出口を介してガスは再びMKから排出される。入口及び出口は、できる限り均一なガスの通流及び分配を確保するために、好ましくはMKのそれぞれの外壁上に対向して中心に配置される。
【0146】
ガスセンサ(VOCセンサ)としては、好ましくはMOXセンサが使用される。
【0147】
VOCを検出するために、種々様々な分析法が存在するが、そのひとつに電子鼻がある。電子鼻はセンサアレイを活用することにより、パターン認識を用いて、与えられた臭いの指紋を生成し、この指紋を他の臭いの指紋から区別する。このようにすると、電子鼻は哺乳類の嗅覚システムを模倣し、臭いを全体として認識することができるため、ひいては臭いの発生源を特定することができる。例えば、特徴的なVOCの検出された混合物に基づき、発生源の結論を導き出すことにより、微生物の識別を行うことができる。
【0148】
電子鼻の測定システムは、特に試料誘導ユニット、検出ユニット、並びに計算ユニットから構成されており、使用されるガスセンサは、発生するガス分子に対して感度を有するが、個々のガスセンサはそれらに対して異なる強度でガス分子に反応するように選択されることが好ましい。ここでは、化学センサのクラスに属する金属酸化物半導体(MOX)ガスセンサが使用される。化学センサは、化学的な相互作用によって電気的な信号に変換する検出層を有しており、さらに低廉なだけではなく、連続的な測定操作にも使用できる。
【0149】
MOXセンサの構造及び機能:センサのメカニズムは、ターゲットガスの濃度に応じて、ガス感応性の金属酸化物層もしくは半導体の電気伝導度が変化させられ、その結果、ターゲットガスの存在と量が決定されるという事実に基づいている。通常、MOXセンサは4つの要素からなる:ガス感応性の金属酸化物層と、電極と、加熱要素と、隔離層とから成っている(
図6参照)。
【0150】
図6は、MOXセンサの概略的構造を示している。MOXセンサは4つの要素からなる:ガス感応性の金属酸化物層と、電極と、加熱要素と、隔離層と、である。加熱要素は、ガス感応性金属酸化物層及びコンタクト電極から、隔離層によって分離されている。ガス感応性の金属酸化物層は、加熱要素によって加熱され、そして周囲からの酸素分子がガス感応性の金属酸化物層の表面に吸着される。吸着された酸素分子は半導体の伝導帯から電子を捉え、エネルギー障壁が形成される。これらのエネルギー障壁は半導体内の電子流の一部をブロックし、ひいては導電性を悪化させ、或いはガスセンサの抵抗を上昇させたりする。還元ガス(ターゲットガス)が存在するとすぐに、これらは結合された酸素分子と反応する。酸素分子はガス感応性の金属酸化物層の表面から解放され、そして導電率は上昇し、もしくは抵抗は減少する。
【0151】
製造業者は通常の場合、MOXセンサが有効な測定値を提供する周囲条件と、測定値がこれらの周囲条件によっていかに強く影響を及ぼされるかを規定する。環境条件がいかに強くVOC測定に影響を与えるかを概観するために、付加的にMKの中央に周囲センサが配置される。関連のある環境条件には、湿度、温度、及び周囲圧力が含まれる。
【0152】
VOC測定のプロセスは、2つの段階、すなわちパージ及びVOCの導入に分割されることが好ましい。センサ装置を備えたインキュベータは先ず測定用に初期化され、パージされる。ガスセンサは測定のために好ましくは連続的に読み出され、一時的に記憶される。必要な場合には、利用者は一時的に記憶されたデータを恒久的に保存し、場合によってはエクスポートすることができる。VOC測定自体は利用者によって、又はインキュベータによってGSを制御することにより自動的に開始され停止される。制御されるべき要素は弁及びポンプである。VOC測定を制御するために、例えばパージプロセスが開始される。弁1(V1)が開かれ、弁2(V2)が閉じられ、そしてポンプ(P)が非アクティブ化される(
図7の上側参照)。パージプロセスを終了し、VOCの供給を開始しようとする場合、弁1(V1)は閉じられ、弁2(V2)は開かれ、そしてポンプ(P)は起動される(
図7下側参照)。VOC測定を終了させるには、ポンプ(P)が遮断され、弁2(V2)は閉じられる。センサ装置は、インキュベータの回路網部分を介して電圧を供給されることが好ましい。これはVE、MKのガスセンサ、GSの弁及びポンプに関係する。
【0153】
図7は、VOC測定時のガス制御を概略的に示す。これは、VOCのパージ及び吸引に分けることが好ましい。ガス搬送構成部分は緑色にマーキングされており、非搬送構成部分は赤色で表示されている。パージプロセス中には、弁1は開かれており、弁2は閉じられており、ポンプは非アクティブ化されており、そしてパージガスは測定チャンバを貫流する。VOCの吸引中には、弁1は閉じられており、弁2は開かれており、ポンプはアクティブ化されており、VOCは測定チャンバを貫流する。
【0154】
MKはねじ固定可能な天井を備えたアルミニウム鋳造チャンバから成っており、さまざまなタイプのガスセンサ(MQ1,MQ2,MQ3,MQ4,MQ5,MQ6,MQ7,MQ8,Q9及びMQ135もしくは符号65a-i、HANWEI ELETRONICS CO.,LTDから従来通り入手)、及び周囲センサ(BME680)を含む。周囲センサは、必要とされる環境パラメータである温度、湿度、及び圧力を提供し、そしてMK内部に配置された。ガスセンサは、潜在的に発生するVOCの物質群に対して主に選択性を有するように選択し、確立されたコンセプトに従ってMKに隣接した状態で配置された。ガスセンサとMKとの接続個所はシリコーンで密閉した。ガスセンサのそれぞれの選択性は表1の詳細欄に記載されている。
【表1】
【0155】
センサ装置の機能を証明し、インキュベータチャンバ内に汚染を発生させるための試料として、株DH5α(DH5α)の大腸菌(Escherichia coli)を用いた。これらは日常の実験室作業においてしばしば遭遇し得る。種々のVOCがDH5αによって放出される(表2参照)。VOCはベンゾール、アルキルベンゾール、ケトン、アルコール、アルカン、テルペン、酸、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルケン、複素環アミン、及びインドールの物質群に所属する。記載したVOCの最も多くはアルコールの物質群に所属する。使用されたガスセンサの一部は、製造業者の申告によればアルコール、アルカン、ベンゾール、及びアミノの物質群のガスに対して選択的である。これに対応して、ガスセンサMQ2,MQ3,MQ4,MQ5,MQ6,MQ9及びMQ135は、DH5のVOCに応答するようになっており、測定信号の上昇を記録することができる。発生するVOCの最も多くはアルコール群に所属するので、ガスセンサMQ2,MQ3及びMQ135は、他のガスセンサよりも高い測定信号を生成する。
【表2】
【0156】
チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物(CHO)は、実験室において日常的に遭遇する細胞種である。CHOから放出されるVOCは、アルカン、アルデヒド、エステル、ベンゾール、ケトン、ピラゾール、オキシム、及びアルコールの物質群に属する。列挙されたVOCのうちの最も多くは、アルカンの物質群に属する。使用されたガスセンサの一部は、製造業者の申告によればアルコール、アルカン、及びベンゾールの物質群のガスに対して選択性を有する。従って、ガスセンサMQ2,MQ3,MQ4,MQ5,MQ6,MQ9及びMQ135は、CHOのVOCに反応するようになっており、測定信号の増加を記録することができる。発生するVOCの最も多くはアルカン群に属するので、ガスセンサMQ2,MQ4,MQ5,MQ6,及びMQ9は、他のガスセンサよりも高い測定信号を発生させるはずである。DH5の場合と同様に、細胞培養物は各試験時に一貫した成長動力学の特性を有していなければならない。DH5とは反対に、CHOは独立して培養されることはなく、出願人によって準備され、内部標準手順にしたがって培養した。
【0157】
評価装置(VE)は、試験試料(DH5αを伴う/伴わないCHO)中に汚染が存在するか否かを認識するために、アルゴリズムを使用する。開発されたアルゴリズムは、順次CUSUM分析技術(CUSUM制御チャート(CUSUM Control Chart)とも呼ばれる)に基づいており、Pageによって最初に発表された。AIアルゴリズム、特にニューラルネットワークによる評価も可能である。CUSUM分析手法は、実行中のプロセスの逸脱を監視するために利用される。xiはi番目の観察であるものとする。プロセスは2つの状態、すなわちこれが制御下にあるか否かの状態に分けられる。プロセスが制御下にある場合には、xiは平均値μ0及び標準偏差σを有する正規分布に従う。μ0はしばしば、プロセスが制御下に留まるように、xiはできる限り近似していなければならない目標値として解釈される。
【0158】
図8は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したDH5αからのVOCの測定時の測定値を含むダイアグラムを示している。DH5αはLB培地内で測定され、ガスセンサの記録された測定信号を時間に対してプロットした。
図8(
図9,10も同様)に示す測定データを記録するために、特にインキュベータのデータ処理装置をプログラミングすることによって、下記ステップを実施した:
ゼロ時点での測定開始から第1期間内に、異なるタイプのMOXセンサの測定領域を有する測定チャンバは、パージガス、ここでは窒素でパージする。この際に、パージガスが測定領域の傍らを流過している状態で、MOXセンサは(それぞれ電圧の形で)この第1時間内にほぼ時間的に並行して且つ連続的に基準測定値を測定する。このような第1期間は、
図8aでは約5時間であり、
図8b及び8cでは約7時間である。第1期間の直後の第2期間では、給気路として機能するガス導管が弁によって開放され、この弁は同時にパージガスの測定チャンバ内への流入を停止する。その結果、所定の体積のガス雰囲気が測定チャンバ内へ流入し、この測定チャンバから例えば排気路を通って再び流出する。この体積は、第2期間中に測定領域を通過して流れる。この第2期間内に、MOXセンサは、基本的に時間的に並行して且つ連続的に測定値を測定する。
図8aでは、第2期間は、測定開始から5時間目が終わった時から、
図8b及び8cでは測定開始から7時間目が終わった時から、測定開始からそれぞれ22.5時間の時間が終わったときまでの間である。各MOXセンサの場合、第1時間内に決定された基準測定値は、「ベースライン」を形成し、ベースラインと比較して測定値が考察される:ある時点における測定値と基準測定値との差は、汚染の測定結果(結果測定データ)とみなすことができる。このような差がゼロである場合、汚染は存在しない。差がここで例えばゼロよりも大きい場合には、汚染が存在する。ほとんどのMOXセンサは、ゼロではない結果測定データによって汚染を検出する。
【0159】
このような種類の測定(
図8,9,10)及び後続の評価に際して、データ記憶装置は、以下のステップを実行するようにプログラムされている:(i)測定データセットをデータメモリ内に記憶し、このデータメモリは、ここではN=9>1個のVOCセンサの測定値を含み、測定値は、それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴であり、前記測定信号は、インキュベータチャンバに由来し且つVOCセンサの測定範囲に印加されたガス雰囲気の体積の存在下で検出されたものである、ステップ、(ii)前記測定データセットと基準データセットとの比較から、特に前記測定データセットと前記基準データセットとの差分を用いて、第1結果測定データを決定するステップであって、特に、N>1個のVOCセンサの、時間の関数として記録された基準測定値を含み、基準測定値は、パージ装置に由来し且つ前記VOCセンサの測定領域に存在するパージガスの存在下で記録された、それぞれのVOCセンサの検出された測定信号の特徴である、ステップ。
【0160】
任意には、(iii)前記結果測定データを含む結果測定データセットにおいて、特徴的なデータパターンを認識するステップであって、前記特徴的なデータパターンが、所定の、前記雰囲気ガス中で検出されたVOCもしくはVOC混合物、特にまた前記VOCの濃度又は量を表す、ステップ。例えば、タイプの異なるMOXセンサの結果測定値は、特に共通のスケーリング係数を考慮に入れながら、もしくは正規化係数を考慮に入れながら、1つの測定時点又は複数の測定時点での特徴的なデータパターンを記録することができる。
【0161】
図9は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地からのVOCの測定時の測定値を含む図を示している。CHO-CD培地をセンサ装置61によって測定し、ガスセンサの受信された測定信号を時間に対してプロットした。
【0162】
図10は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地内のDH5aからのVOCの測定時の測定値を含む図を示している。CHO-CD培地内のDH5aを測定し、ガスセンサの受信された測定信号を時間に対してプロットした。
【0163】
図11は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地内のDH5a及びCHO-Sの測定時の測定値を含む図を示している。CHO-CD培地内のDH5a及びCHO-Sを測定し、ガスセンサの受信された測定信号を時間に対してプロットした。
【0164】
図12は、本発明によるインキュベータのインキュベータチャンバ内にある細胞培養フラスコ内で成長したCHO-CD培地内のDH5aからのVOCの測定時の測定値を含む図を示している。ガスセンサの受信された測定信号は時間に対してプロットされ、そして場合によっては存在する警告時点がマーキングされる(垂直の黒いマーキング)。
【0165】
試験結果に基づいて、センサ装置61が、細胞培養物の増大する微生物汚染を検出し得ることが示される。ガスセンサシステムはすなわち、微生物汚染を認識されないままにはせず、ひいては細胞培養の適用範囲におけるさらなる問題を回避するように貢献することができる。CO2ガスセンサシステム内のガスセンサシステムの統合は効果的であり、そしてCO2インキュベータの実験室環境内でガスセンサシステムが容易に使用されようになる。
【0166】
単一つのVOCセンサを有するセンサ装置を備えたインキュベータの実施例
図13は、生きている細胞培養物をインキュベートするためのインキュベータ50を示している。インキュベータ50は、ハウジング52と、前記ハウジング内で、制御可能なガス雰囲気を有する、当該インキュベータチャンバの、インキュベータ扉54によって閉鎖可能な内部空間内に物体、特に細胞培養物容器を受容するためのインキュベータチャンバ53と、前記内部空間のガス雰囲気中の揮発性有機化合物(VOC)の蓄積、特に汚染を検出するための検出するためのセンサ装置であって、前記センサ装置が、前記VOCを検出するための正確に1つのVOCセンサ51を有し、そして前記VOCセンサ51が測定領域51aを有している、センサ装置とを有し、VOCセンサ51は、Figaro USA, Inc.を介して商業的に入手可能なFigaro TGS2602という名称の厚膜センサ、MOXセンサである。このようなセンサは、2つ以上のVOCセンサを有するセンサ装置を備えたインキュベータ内に使用することもできる。このことは、インキュベータ内のその取り付け、一定又は可変の電圧による制御、及び測定信号の評価の態様にも当てはまる。
【0167】
センサ51はチャンバ53の内壁に固定的に取り付けられているので、測定領域として役立つ金属酸化物表面は、内部空間の雰囲気ガスと流体接続して配置されている。電気的なケーブル51dがハウジング52の、電気的な制御装置51‘が配置されているハウジング領域内で、チャンバ壁のポート52aを貫通している。制御装置51‘には、センサ51はケーブル51dによって接続されている。制御装置51‘によって、センサ51は制御され評価される。センサ51の加熱要素は、制御装置によって、ボルトで測定される測定電圧U_H_目標値で作動させられる。測定電圧はセンサ51の電極51bに印加される(
図13b)。オームで測定される電気抵抗値、例えば電気抵抗R_センサ、又はジーメンスで測定される導電率G_センサが、さらに電極51cを介して検出される。相応する測定信号は制御装置51‘によって評価される。センサによって出力された電気抵抗値は電圧(ボルト)として出力されることが可能である。所望の測定値R_センサ又はG_センサは、予め知られた依存性、特に比例性に基づいて導出することができる。特に、出力されたこのような電圧値は所望の測定値R_センサ又はG_センサに対して比例する。
【0168】
制御装置51‘は評価装置として役立ち、そしてデータ処理装置を含む。評価装置はプログラムコードでプログラミング可能であり、そして、特にこのようなプログラムコードにしたがって、下記ステップを実行するようにプログラムされている:
・ MOXセンサの、特に測定データの測定信号R/G_センサを受信し、特に、一連の測定信号を時間的に、特に測定時間Δtの継続期間にわたって相前後して受信するステップであって、これらの測定信号が特に前記1つのMOXセンサの時間的な測定経過を形成する、ステップ、
・ 測定信号を基準値と比較するステップ、
・ このような比較の結果に基づいて、内部空間のガス雰囲気中のVOC濃度の変化、特に内部空間の汚染に対して特徴的である変化が存在するか否かを決定するステップ。
【0169】
制御装置51‘は、センサ51の加熱要素を、周期的に変化する電圧U-H-目標値で制御することにより、金属酸化物表面に、相応して周期的に変化する温度を発生させるように配置されている。センサ装置のこのような動作もー℃は、「温度サイクル操作(「temperature cycled operation(TCO)」)とも呼ばれる。このために、ヒーターはここでは、段階状の経過を有する電圧U-H-目標値で制御される。電圧は加熱期間T毎に複数の種々の値、ここでは電圧値4.0ボルト、4.5ボルト、及び5.0ボルトを提供する。このことは
図14に示されている。このような電圧値のそれぞれは加熱期間Tの規定された部分に対して調節される。加熱期間は好ましくは、5秒[s]~30s、好ましくは15s~25s、好ましくは17s~23sであり、そしてここでは約20sである。制御からは、測定期間Tを有する周期的に変化する測定信号が生じる。
【0170】
周期的な測定信号の場合、好ましくは、測定信号の1つ又は好ましくは2つ以上の期間を統計的に評価することによって、評価が行われる。好ましくは、データ処理装置は、1つの測定期間の平均的な経過を決定するようにプログラミングされている。このことは、M個の測定期間の値を重ね合わせ、そしてこのような付加された期間経過を次いで逆数1/Mで掛け算することを含み得る。こうして測定信号は平滑化され、測定アーティファクトの影響が低減される。
【0171】
好ましくは、データ処理装置は、単一つの測定期間の信号から、または測定期間の平均経過から、二次特徴と呼ばれる測定期間の特性に関連する少なくとも1つの二次値を導出するようにプログラムされる。
図15に示されているように、二次値は、測定期間の特徴的な時点、例えば電圧値の転換時点に存在する勾配であってよい。
図15に見られるように、特徴的な勾配は特にこのような時点の直前又は直後に記録することができる。さらなる評価のために、二次値は上記のように、このような二次値に対応する少なくとも1つの基準値と比較することができる。
【0172】
好ましくは、データ処理装置は、複数の測定信号の平均値を決定するように、特に1つの測定期間の複数の、又はほぼすべての測定信号の平均値を決定するようにプログラミングされている。さらなる評価のために、平均値は上記のように、このような平均値に対応する少なくとも1つの基準値と比較することができる。
【0173】
図16aには、「タービン」タイプのセンサ装置61のセンサを用いて決定された測定値の時間的経過が示されている。各センサの測定信号は細菌、すなわちチャンバ内部空間内へVOC源の添加に時間的な遅延を伴って反応し、この場合約15時間後に測定信号の上昇を検出し得る。
図16bには、比較実験において、単一のセンサ(
図13a,13bに示されているようなFigaro)がTCOモードで作動された。測定点は、
図14に示されたセンサ制御に従って指定された1つのサイクルもしくは1つの測定期間T=20秒のそれぞれ1つの平均値である。測定信号期間の二次的特徴、この場合には商m0e/m_gesを評価した。文字列「m0e」は二次的特徴を表す。各測定サイクルは複数の温度サイクルから成る。各温度サイクルは0で始まる番号を有している。各温度サイクルは開始「s」と終了「e」とを有している。特徴量には2つのクラス、すなわち平均値「m」と勾配「s」とがある。これによれば、商は、以下を意味する:m0e=0番目のサイクルの終了時の平均値/m_ges=全測定サイクルにわたる平均値。
【0174】
図17aは、種々異なる実験において獲得された、評価された測定信号(測定層の導電率(ジーメンス))の一連の種々異なる曲線を、より良好に比較するために重ね合わせた状態で示している。測定セットアップは、TCOモード、測定期間20sで作動された、
図13a,bの装置に対応する。色又は目盛りで区別できる曲線は、それぞれ1回の実験に対応する。エタノールの体積パーセント含有率(例えば0.1%~0.4%)は、予め決められた総容量のエタノール-水混合物中で変化させ、この混合液は、常にチャンバ内部の同一の開放容器内に入れた。基準時間は、試料容器の短時間の挿入後、チャンバ扉を再び閉めた、その瞬間である。
図17aには、サイクル(測定期間)毎に、測定期間の測定信号の、ここでは平滑化された、平均値「m_ges平滑化」がプロットされている。
図17bでは、測定信号の正規化のために、値「m_ges平滑化」が、さらに基準時間でのそれぞれの曲線の最小値によって割り算されており、そしてこの商から値1が引き算されている(m_ges平滑化/Min-1)。すべての信号はこのような値に正規化され(mges/min)、この場合には最小値は1に等しい。次いで測定値から1を引き算すると、曲線はゼロへ引き寄せられる。
【0175】
図18では、
図17bの測定曲線の最大値が、それぞれのアルコール濃度(水中のエタノール、重量%)に対してプロットされている。一方では、測定設備が化学MOXセンサによってチャンバ内部のEtOH-VOCを検出して定量化するのに効率的に適していることを認識し得る。それというのも、評価された量(m_ges平滑化/Min-1)の最大値が直線上にあるからである。未知のエタノール濃度のそれぞれのさらなる比較実験(m_ges平滑化/Min-1)から、曲線の最大値の位置及び直線勾配から、試料のエタノール濃度を決定することができる。この試験は、チャンバ内部の細菌を検出するために非常に適している。それというのも、細菌の代謝プロセスに際して遊離されるVOCの主成分はアルコールであるからである。直線の勾配自体は、測定設備の感度の尺度でもあり、勾配が大きければ大きいほど、評価された量をより容易に識別し得ることを意味する。検出限界の任意の推定、測定設備/測定方法の検出限界及び定量限界は、DIN 32645によって決定することができる。
図18に関しては、勾配は、時間に関する測定信号のドリフト、及び測定信号のノイズが考慮されている。
【国際調査報告】