(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】薄シングルサイト触媒ポリマーシート
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20240423BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240423BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240423BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L23/02
C08F10/00
C08L91/06
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565871
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 US2022026317
(87)【国際公開番号】W WO2022232123
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391024559
【氏名又は名称】フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクロード,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リー,フェンクイ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,ラッセル
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA17
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4J100JA58
(57)【要約】
薄ポリマーシート及びその使用が記載される。ポリマーシートは、90重量%超のシングルサイト触媒ポリオレフィン(PO)を含むことができ、及び厚さ少なくとも0.0254cmを有することができる。本シートは、成形された物品の製造に使用可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90重量%超のシングルサイト触媒ポリオレフィン(PO)を含むポリマーシートであって、前記シートは、厚さ少なくとも0.0254cmを有する、前記ポリマーシート。
【請求項2】
前記PO材料は、シングルサイト触媒ポリエチレン(PE)、シングルサイト触媒ポリプロピレン(PP)、又はそれらのコポリマー、あるいはそれらのブレンドを含む、請求項1に記載のポリマーシート。
【請求項3】
前記ポリマーシートは、90重量%のシングルサイト触媒PEと、及び10%以下の追加のポリマーと、を含む、請求項2に記載のポリマーシート。
【請求項4】
前記追加のポリマーは、シングルサイト触媒PP、シングルサイト触媒コポリマー、シングルサイト触媒プラストマー、エラストマー、非シングルサイト触媒ポリオレフィン、又はそれらのブレンドである、請求項3に記載のポリマーシート。
【請求項5】
前記非シングルサイト触媒ポリオレフィンは、低密度ポリオレフィン材料である、請求項4に記載のポリマーシート。
【請求項6】
前記低密度ポリオレフィン材料は、LDPE又はLDPPである、請求項5に記載のポリマーシート。
【請求項7】
前記シート厚さは、0.0254cm~0.1cm、又は0.0254cm~0.0762cm、又は0.0254cm~0.0508cmである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項8】
前記シートは、密度が少なくとも0.918g/mL、又は0.918g/mL~0.942g/mL、又は0.924g/mL~0.936g/mLである、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項9】
平均引張係数が少なくとも200MPa、又は300MPa~1300MPa、又は350MPa~800MPa、又は360MPaである、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項10】
平均降伏引張強度が、同じ厚さの低密度ポリエチレンシート(LDPE)の平均降伏引張強度よりも高い、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項11】
最大時引張強度の平均が少なくとも18.7MPa、又は少なくとも42MPaである、請求項10に記載のポリマーシート。
【請求項12】
平均引張靱性が少なくとも25MPa、又は50MPa~400MPa、又は55MPa~250MPaである、請求項1から11のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項13】
前記ポリマーシートは、厚さ0.0254cmを有するとともに、23℃での衝撃エネルギーが1.5kJ/m超、又は2.5kJ/m超、又は少なくとも3.0kJ/mである、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項14】
前記ポリマーシートは、厚さ0.0254cmを有するとともに、-20℃での衝撃エネルギーが2.5kJ/m、又は3.5kJ/m超、又は少なくとも4.5kJ/mである、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項15】
同一条件下で同じ厚さのLDPEシートの収縮%以下の収縮%を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項16】
同一条件下で同じ厚さのLDPEシートよりも高い最大負荷に対するエネルギーを有する、請求項1~15のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項17】
前記ポリオレフィンは、30重量%未満のワックスを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項18】
前記ポリオレフィンは、25重量%未満のワックス、15重量%未満のワックス、10重量%未満のワックス、5重量%未満のワックス、を含む、又はワックスを含まない、請求項17に記載のポリマーシート。
【請求項19】
同一条件下で同じ厚さのLDPEシートの熱変形温度(HDT)よりも高いHDT性能を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載のメタロセンポリマーシートを含む、製造品。
【請求項21】
前記製造品は、成形された材料である、請求項20に記載の製造品。
【請求項22】
前記成形された材料は、複数容器リングホルダーである、請求項21に記載の製造品。
【請求項23】
前記成形された材料は、オーバーキャップ蓋である、請求項22に記載の製造品。
【請求項24】
ポリマーシートの作成法であって、メルトフローインデックスが0.1デシグラム/分~10デシグラム/分(dg/分)、又は0.25dg/分~7.5dg/分、又は0.4dg/分~5.7dg/分、及び密度が少なくとも0.918g/mL、0.918g/mL~0.942g/mL、又は0.924g/mL~0.936g/mLであるシングルサイト触媒ポリオレフィンポリマーを、厚さが少なくとも0.0254cmであるシートの製造に適した条件に供することを含む、前記方法。
【請求項25】
条件は、前記シングルサイト触媒ポリマーを、175℃~260℃又は200℃~235℃の温度で押し出しすることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記厚さは、0.0254cm~0.1cm、0.0254cm~0.0762cm、又は0.0254cm~0.0508cmである、請求項24~25のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/179,873号、2021年4月26日出願、の優先権を主張し、この出願はあらゆる目的でそのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、シングルサイト触媒ポリマーを含む薄ポリマーシートに関する。詳細には、本発明は、シングルサイト触媒ポリオレフィン(PO)を90重量%超含むポリマーシートに関する。本ポリマーシートは、少なくとも0.0254センチメートル(cm)、好ましくは0.0254cm~0.1cmの厚さを有することができる。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンのフィルム及びシートは、様々な消費財及び商品に使用されている。伝統的に、フィルムとは厚さが0.0254cm未満のものであり、シートとは厚さが0.0254cm以上のものである。薄シートの用途として、飲料容器、例えば、水、アルコール飲料、又はソフトの缶を複数接続するための容器コネクタが挙げられ、これらは周知である。そのようなコネクタは、典型的には、一連の開口部を備えた薄い柔軟なプラスチックシートである。各開口部は、缶の一部を受けられる大きさになっている。例えば、一般的な「シックスパック」コネクタは、6つの開口部を備え、開口部はそれぞれ、缶の上稜部に係合できる。類似のコネクタが、瓶、及び非液体容器の固定に使用されてきた。例として、Bougeらの特許文献1には、多層ポリマー、ポリオレフィン発泡シートで作られた柔軟な飲料支持シートが記載されている。
【0004】
ポリオレフィンシートの他の用途として、他の材料(例えば、補強材)と組み合わせて一緒にプレスされたシートを含む商品が挙げられる。例として、Yangらの特許文献2には、厚さが0.0889cm~0.2286cm(35ミル~90ミル)のポリオレフィン屋根膜が記載されており、これは、50重量%~90重量%のメタロセン触媒ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンとブテンのコポリマー)と10重量%~50重量%の添加剤を含む熱可塑性層の間に、補強材を備える。
【0005】
ポリオレフィンのフィルム及び/又はシートは既知であるものの、所望の特性を提供するシートにすることが可能であるとともに、所望の特性に悪影響を及ぼすことなくポリマーシートの容易な製造を可能にする、ポリマー組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願公開第WO 2014/4204460号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004-157075号
【発明の概要】
【0007】
ポリマーシートに関連した問題の少なくとも一部についての解決策をもたらす発見がなされた。本発見は、90重量%超のシングルサイト触媒ポリオレフィン(PO)を含むポリマーシートに基づいている。本発見は、ポリマーシートの優れた物理的特性による軽量化、ポリマーシート中にワックス及び/又は低分子量種が最小量しか又は全く存在しないことによる加工性、並びにポリマーシートの高密度による温度耐性において利点をもたらす。例として、本発明の薄ポリマーシートは、軽量化用途において、厚い低密度ポリエチ
レン(LDPE)シートと全面的に又は部分的に置き換わることができる。別の例では、LDPEの各等級品は、低分子量種及びワックスの量が本発明の薄ポリマーシートよりも多い可能性がある。ワックスは、加工上の問題、例えば、ダイリップ付着(die lip buidup)の増加等を引き起こす可能性があり、これは、製造費用に関するダウンタイムに影響する。ワックス状種の方が移動性が高く、そのため、LDPEから製造された最終物品を被覆する又はそのような最終物品から抽出される可能性が高くなる。さらに、ポリマーに伴う感覚刺激的問題が、さまざまな原料から生じる可能性があり、ワックスはそれらのうちの1種である。更に別の例として、本発明の薄ポリマーシートは、温度耐性(例えば、軟化抵抗性)を有することができ、これにより、食料パッケージに使用することが適切になる。なおもさらに、本発明の薄ポリマーシートは、本発明のシートが熱成形可能であることから、LDPE及び直鎖LDPE(LLDPE)の高メルトフロー速度(MFR)射出成形を通じて従来提供されててきた技術(例えば、射出成形したリッドストック(lidstock)、又はオーバーキャップ蓋(overcap lid)成形)等)に利点をもたらすことができる。
【0008】
本発明の1つの態様において、ポリマーシートが記載される。本発明のポリマーシートは、90重量%超のシングルサイト触媒ポリオレフィン(PO)を含み、及び少なくとも0.0254cmの厚さを有することができる。PO材料は、シングルサイト触媒ポリエチレン(PE)、シングルサイト触媒ポリプロピレン(PP)、又はそれらのコポリマー、あるいはそれらのブレンドを含むことができる。一部の実施形態において、ポリマーシートは、90重量%のシングルサイト触媒PEと、及び10%以下の追加のポリマーと、を含むことができる。追加のポリマーの限定ではなく例として、シングルサイト触媒PP、シングルサイト触媒コポリマー、シングルサイト触媒プラストマー、エラストマー、非シングルサイト触媒ポリオレフィン、又はそれらのブレンドを挙げることができる。非シングルサイト触媒ポリオレフィンとして、低密度ポリオレフィン材料(例えば、LDPE又はLDPP)を挙げることができる。一部の実施形態において、本発明のポリオレフィン及び/又はポリマーシートは、ワックスを30重量%未満、ワックスを25重量%未満、ワックスを20重量%未満、ワックスを15重量%未満、ワックスを10重量%未満、ワックスを5重量%未満、ワックスを4重量%未満、ワックスを3重量%未満、ワックスを2重量%未満、ワックスを1重量%未満有する、又は無ワックスとすることができる。シートの特性として、厚さ、密度、引張係数、引張強度、引張靱性、衝撃エネルギー、収縮%、荷重(load)、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。シート厚さは、少なくとも0.0254cm、0.0254cm~0.1cm、又は0.0254cm~0.0762cm、又は0.0254cm~0.0508cmが可能である。シートの密度は、少なくとも0.918g/mL、又は0.918g/mL~0.942g/mL、又は0.924g/mL~0.936g/mLが可能である。本発明のポリマーシートの平均引張係数は、少なくとも200MPa、又は300MPa~1300MPa、又は350MPa~800MPa、又は360MPaが可能である。シートは、同じ厚さで、低密度ポリエチレンシート(LDPE)の平均降伏引張強度よりも高い平均降伏引張強度を有することができる。例として、本発明のポリマーシートは、少なくとも18.7MPa、又は少なくとも42MPaの最大時引張強度の平均を有することができる。本発明のポリマーシートの平均引張靱性は、少なくとも25MPa、又は50MPa~400MPa、又は55MPa~250MPaが可能である。一部の実施形態において、本発明のポリマーシートは、厚さ0.0254cmを有して、23℃の衝撃エネルギーが1.5kJ/m超、若しくは2.5kJ/m超、若しくは少なくとも3.0kJ/m、及び/又は-20℃の衝撃エネルギーが2.5kJ/m、若しくは3.5kJ/m超、若しくは少なくとも4.5kJ/mであることが可能である。本発明のポリマーシートは、同一条件下で同じ厚さのLDPEシートの収縮%以下の収縮%、同一条件下で同じ厚さのLDPEシートよりも高い最大負荷に対するエネルギー、同一条件下で同じ厚さのLDPEシートの熱変形温度(HDT)よりも高いHDT性能、又はそれらの任意の組み合わせを有すること
ができる。
【0009】
本発明の更なる態様において、本発明のメタロセンポリマーシートを含む製造品が記載される。製造品として、成形された材料(例えば、複数容器リングホルダー、フォーパックリング、シックスパックリング、トゥウェルブパックリング、又はオーバーキャップ蓋等)を挙げることができる。
【0010】
本発明の更に別の態様において、本発明のポリマーシートの作成方法が記載される。ある方法は、メルトフローインデックス0.1デシグラム/分~10デシグラム/分(dg/分)、0.25dg/分~7.5dg/分、又は0.4dg/分~5.7dg/分、及び密度少なくとも0.918g/mL、0.918g/mL~0.942g/mL、又は0.924g/mL~0.936g/mLを有するシングルサイト触媒ポリマーを、厚さ少なくとも0.0254cm(例えば、0.0254cm~0.1cm、0.0254cm~0.0762cm、又は0.0254cm~0.0508cm)を有するシートの製造に適した条件に供することを含むことができる。条件は、シングルサイト触媒ポリマーを、温度175℃~260℃、又は200℃~235℃で押し出しすることを含むことができる。
【0011】
本発明の他の実施形態については、本出願全体を通じて検討する。本発明の1つの態様に関して検討された実施形態はどれであっても、本発明の他の態様に適用され、その逆もまたしかりである。本明細書中記載される各実施形態は、本発明の他の態様に適用可能な本発明の実施形態であると解釈される。本明細書中検討される実施形態又は態様はどれであっても、本明細書中検討される及び/又は本発明の任意の方法又は組成物に関して実施される他の実施形態又は態様と組み合わせることが可能であることが企図され、その逆もまたしかりである。そのうえさらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するのに使用することができる。
【0012】
以下で、本明細書全体を通じて使用される様々な用語及び語句の定義を挙げる。
【0013】
収縮は、最初に、流れに沿った方向(差示的収縮測定時の縦軸方向と呼ばれる)の冷却時の縮小長さ及び流れと交差する方向(差示的収縮測定時の横軸方向と呼ばれる収縮)で生じる縮小長さを測定することにより、計算することができる。流れに沿った縮小と流れと交差する縮小との差に100%を乗算することにより、収縮パーセントが得られる。収縮の測定は、樹脂流れの方向における変化及び樹脂流れの方向と垂直な方向における変化の測定に限られる。収縮は、米国特許第7,445,827号に記載されるとおりの光学装置又はコンピュータ数値制御(CNC)顕微鏡を使用して、測定することができる。CNC顕微鏡の例としては、QV APEX 302(Mitutoyo、USA)がある。ポリマー検体としては、ISO294-3タイプD2型に従って、本開示のポリマー組成物から形成された60×60×2mmのポリマー検体が可能である。検体長さの光学的測定は、ポリマー検体をポジショニングテーブルに配置し、ポジショニングテーブルを顕微鏡カメラ下に設置することにより行われ、この顕微鏡カメラは、マイクロプロセッサと通信している。ポリマー検体の両端の位置を、マイクロプロセッサの表示画面上の特定目印を利用して、一定時間の始め及び終わりに記録する。検体の長さ又は幅を、続いて、一定時間にわたり観察された位置変化から推定する。収縮測定の処理パラメーターは、ISO294-3及びISO294-1に基づいているが、顕著な違いが2つある:(1)同一材料において、固定圧を、20MPa、40MPa、60MPa、又は80MPaから選択することができる、及び(2)固定時間は、最小限に維持する。
【0014】
「メルトフローレート」又は「メルトインデックス(MFR若しくはMI2)」という語句は、熱可塑性ポリマー又はブレンドの溶融物の流れやすさの尺度を指す。本明細書中
、「メルトフローレート」又はMFRは、ポリプロピレンについて使用され、「メルトインデックス」又は「MI2」は、ポリエチレン及びポリエチレンリッチブレンドについて使用される。本明細書中で言及されるMFR値は、ASTM D 1238に従って、温度230℃でram重さ2.16kgを用いて特定したものである。本明細書中報告されるMFR測定は、Tinuius-Olsen(USA)MP1200メルトフローインデックス装置を用いて行なった。本明細書中で言及されるMI2値は、ASTM D 1238に従って、温度190℃でram重さ2.16kgを用いて特定したものである。本明細書中報告されるMI2測定は、Tinuius-Olsen MP993メルトフローインデックス装置を用いて行なった。
【0015】
「密度」は、体積あたりの重量と定義される。密度は、ISO 1183により特定可能である。
【0016】
「約(about)」又は「約(apploximately)」という用語は、当業者が理解するとおり、近いことと定義される。1つの限定ではない実施形態において、これらの用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0017】
「重量%」、「体積%」、又は「モル%」という用語は、それぞれ、ある成分を含む、合計重量、材料合計体積、又は合計モルに基づく、その成分の重量パーセンテージ、その成分の体積パーセンテージ、又はその成分のモルパーセンテージを指す。1つの限定ではない実施形態において、材料100グラム中のある成分10グラムは、ある成分が10重量%ということである。
【0018】
「実質的に」という用語及びその変形語は、10%以内、5%以内、1%以内、又は0.5%以内の範囲を含むと定義される。
【0019】
「阻害する」又は「減少させる」又は「阻止する」又は「回避する」という用語あるいはこれらの用語の変形語は、特許請求の範囲及び/又は明細書において使用される場合、所望の結果を達成する任意の測定可能な減少又は完全阻害を含む。
【0020】
「有効な」という用語は、この用語が明細書及び/又は特許請求の範囲において使用される場合、所望の、予想される、又は意図した結果を達成するのに適切であることを意味する。
【0021】
「a」又は「an」という語の使用は、特許請求の範囲において、又は明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「有する(having)」という用語のいずれかと一緒に使用される場合、「1つ」を意味することができるが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多い」という意味とも矛盾しない。
【0022】
「含む(comprising)」(及び含む(comprising)の任意の語形、例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有する(having)」(及び有する(having)の任意の語形、例えば、「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(及び含む(including)の任意の語形、例えば、「含む(includes)」及び「含む(include)」)、又は「含有する(containing)」(及び含有する(containing)の任意の語形、例えば、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)という用語は、包括的又は開放的であり、追加の、言及されていない要素又は方法工程を排除しない。
【0023】
本発明のポリマーシートは、本明細書全体を通じて開示される特定の成分、要素、組成物等について、それら「を含む(comprise)」、それら「から本質的になる(consist essentially of)」、あるいはそれら「からなる(consisting of)」ことが可能である。移行句「から本質的になる(consist essentially of)」に関して、1つの限定ではない態様において、ポリマーシートの基本的かつ新規特徴は、それらが、90重量%超のシングルサイト触媒POを含むとともに、厚さ少なくとも0.0254cmを有することである。
【0024】
本発明の他の目的、特長、及び利点は、以下の図面、詳細な説明、及び実施例から明らかとなるだろう。しかし、当然のことながら、図面、詳細な説明、及び実施例は、本発明の具体的実施形態を示しているものの、例示としてのみ与えられており、制限することを意味しない。さらに、本発明の趣旨及び範囲内での変更及び修飾が、この詳細な説明から当業者に明らかとなることが企図される。更なる実施形態において、具体的実施形態による特長は、他の実施形態による特長と組み合わせることができる。例えば、1つの実施形態による特長を、その他の実施形態のいずれかによる特長と組み合わせることができる。更なる実施形態において、更なる特長を、本明細書中記載される具体的実施形態に加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の利点は、以下の詳細な説明により、及び添付の図面を参照することで、当業者に明らかとなり得る。
【
図1】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、射出成形した(IM)蓋のシート厚さ及びシート収縮%の比較を示す図である。
【
図2】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の剛性データを示す図である。
【
図3】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の降伏引張強度を示す図である。
【
図4】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の最大時引張強度を示す図である。
【
図5】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の引張靱性を示す図である。
【
図6】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の合計衝撃エネルギーを示す図である。
【
図7】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の最大負荷での合計衝撃エネルギーを示す図である。
【
図8】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びIM蓋の衝撃中の最大負荷を示す図である。
【
図9】比較LDPEシート、本発明のポリマーシート、及びシックスパックリングホルダーのゲル透過データを示す図である。
【0026】
本発明は様々な修飾及び代替形態を受け入れることができるものの、図面においては、例として本発明の具体的実施形態が示されている。図面は必ずしも縮尺どおりではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ポリオレフィン系シートに関連した問題の少なくとも一部についての解決策をもたらす発見がなされた。本発見は、90重量%超のシングルサイト触媒ポリオレフィンを含むポリマーシートに基づいており、本シートは、厚さ少なくとも0.0254cmを有する。本ポリマーシートは、軽量化、製造品の製造、耐熱性において利点をもたらす。
【0028】
本発明のこれら及び他の限定ではない態様について、以下の章で更に詳細に検討する。
【0029】
A.ポリマーシート
本発明のポリマーシートは、90重量%超のシングルサイト触媒ポリオレフィンを含むことができる。一部の実施形態において、ポリマーシートは、シングルサイト触媒PEを、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、及び100重量%のうちいずれか1つは少なくともある量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量で、並びに追加のポリマーを10、9、8、7、6、5、4、3、2、1重量%のうちいずれか1つより少ない量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量で、含むことができる。追加のポリマーの限定ではなく例として、シングルサイト触媒PP、シングルサイト触媒コポリマー、シングルサイト触媒プラストマー、エラストマー、非シングルサイト触媒ポリオレフィン、又はそれらのブレンドを挙げることができる。非シングルサイト触媒ポリオレフィンは、低密度ポリオレフィン材料が可能である。低密度ポリオレフィン材料の限定ではなく例として、LDPE、LDPP、LLDPE、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、本発明のポリオレフィン及び/又はポリマーシートは、ワックスを30重量%未満で、あるいは、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、若しくは0重量%のうちいずれか1つより少ない量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量で、有することができる。
【0030】
本発明のポリマーシートの特性として、厚さ、密度、引張係数、引張強度、引張靱性、衝撃エネルギー、収縮%、荷重、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。シート厚さは、0.0254cm~0.1cm、あるいは0.0254、0.0260、0.0270、0.0280、0.0290、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、0.055、0.060、0.065、0.070、0.075、0.080、0.085、0.090、0.095、及び0.1cmのうちいずれか1つは少なくともある量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量であることが可能である。シートの密度は、少なくとも0.918g/mL、あるいは0.918、0.920、0.925、0.930、0.935、及び0.940g/mLのうちいずれか1つは少なくともある量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量であることが可能である。本発明のポリマーシートの平均引張係数は、少なくとも200MPa、あるいは200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、及び1300MPaのうちいずれか1つは少なくともある量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量であることが可能である。平均降伏引張強度は、同じ厚さで低密度ポリエチレンシート(LDPE)の平均降伏引張強度より高い。例として、本発明のポリマーシートは、少なくとも18.7MPa、あるいは18.7MPa、19MPa、20MPa、25MPa、30MPa、35MPa、40MPa、45MPa、50MPa、55MPa、60MPa、65MPa、70MPa、又はそれより大きい量のうちいずれか1つは少なくともある量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量である最大時引張強度の平均を有することが可能である。本発明のポリマーシートの平均引張靱性は、少なくとも25MPa、あるいは25MPa、50MPa、100MPa、150MPa、200MPa、250MPa、300MPa、350MPa、400MPa、及び450MPaのうちいずれか1つは少なくともある量で、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量で、又はこれらのうちいずれか2つの間の量であることが可能である。一部の実施形態において、ポリマーシートは、1)厚さ0.0254cm~0.1cm、又は0.0254cm~0.0762cm、又は0.0254cm~0.0508cm、2)密度少な
くとも0.918g/mL、又は0.918g/mL~0.942g/mL、又は0.924g/mL~0.936g/mL、3)平均引張係数少なくとも200MPa、又は300MPa~1300MPa、又は350MPa~800MPa、又は360MPa、4)最大時引張強度の平均少なくとも18.7MPa、又は少なくとも42MPa、5)平均引張靱性少なくとも25MPa、又は50MPa~400MPa、又は55MPa~250MPa、あるいはそれらの任意の組み合わせを有することが可能である。一部の実施形態において、本発明のポリマーシートは、厚さ0.0254cmを有して、23℃での衝撃エネルギー1.5kJ/m超、又は2.5kJ/m超、又は少なくとも3.0kJ/m、及び/又は-20℃での衝撃エネルギー2.5kJ/m、又は3.5kJ/m超、又は少なくとも4.5kJ/mを有することが可能である。本発明のポリマーシートは、同一条件下で同じ厚さのLDPEシートの収縮%以下の収縮%、同一条件下で同じ厚さのLDPEシートよりも高い最大負荷に対するエネルギー、同一条件下で同じ厚さのLDPEシートの熱変形温度(HDT)よりも高いHDT性能、又はそれらの任意の組み合わせを有することができる。
【0031】
B.ポリマーシートの製造法
ポリマーシートの調製は、押出機又は他の既知のシート加工装置を用いて行うことができる。ある特定の態様において、プロセスは、押出機において、加工中にシングルサイト触媒ポリオレフィンに添加剤又は追加のポリマーを導入することにより行うことができる。押出機の限定ではなく例として、単軸押出機、逆回転及び共回転二軸押出機、プラネタリーギア押出機、リング押出機、又は共混錬機(co-kneader)を挙げることができる。一部の実施形態において、追加のポリマー又は添加剤は、押し出し前に、得てシングルサイト触媒ポリオレフィンと混合して、ポリマーブレンドを生成させることができる。シングルサイト触媒ポリオレフィン、及びその任意選択の成分は、任意選択の成分をシングルサイト触媒ポリオレフィンと一体化させるのに十分な長さの時間、高温に供することができる。ブレンド温度は、ポリマーの軟化点より高温が可能である。ある特定の態様において、あるプロセスは、約160℃~280℃の温度で行うことができる。そのような「溶融混合」又は「溶融配合」は、シングルサイト触媒ポリオレフィンポリマーマトリクス中に任意選択の添加剤を含む均一分散物をもたらす。
【0032】
具体的実施形態において、本発明のポリマーシートは、メルトフローインデックスが0.1デシグラム/分~10デシグラム/分(dg/分)、0.25dg/分~7.5dg/分、又は0.4dg/分~5.7dg/分、及び密度が少なくとも0.918g/mL、0.918g/mL~0.942g/mL、又は0.924g/mL~0.936g/mLである、シングルサイト触媒ポリマーを、厚さ少なくとも0.0254cmであるシートの製造に適した条件に供することにより、調製することができる。条件は、シングルサイト触媒ポリマーを、175、180、185、190、195、200、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、及び260℃のうちいずれか1つは少なくともある温度、又はこれらのうちいずれか1つと等しい温度、又はこれらのうちいずれか2つの間の温度で、押し出しすることを含む。
【0033】
C.シングルサイト触媒ポリマー
シングルサイト触媒ポリマーは、メルトフローインデックスが、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、及び10dg/分のうちいずれか1つは少なくともある量、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量、又はこれらのうちいずれか2つの間の量であり、及び密度が、0.918、0.920、0.925、0.930、0.935、0.940、0.945g/mLのうちいずれか1つは少なくともある量、又はこれらのうちいずれか1つと等しい量、又はこれらのうちいずれか2つの間の量である、任意のシングルサイト触媒ポリオレフィンが、可能である。
【0034】
a.ポリオレフィン
ポリオレフィンの限定ではなく例として、ポリプロピレン及びポリエチレンが挙げられる。ポリエチレンとして、エチレンのホモポリマー、又はエチレンと少なくとも1種のアルファオレフィン(例えば、ブテン、ヘキセン、オクテン等)とのコポリマーを挙げることができる。ポリエチレンの限定ではなく例として、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンコポリマー、又はそれらのブレンドが挙げられる。ポリプロピレンとして、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと他のオレフィンのコポリマー、並びにプロピレン、エチレン、及びジエンのターポリマーが挙げられる。レオロジーが制御されたグレードのポリプロピレン(CRPP)は、更に加工されて(例えば、分解プロセスを通じて)目的とする出発ポリプロピレンよりも高いメルトフローインデックス(MFI)、より低い分子量、及び/又はより狭い分子量分布を持つポリプロピレンポリマーを生成するものの1種である。リアクターグレード、別名低次元ポリプロピレンが使用可能である。ポリオレフィンホモポリマー(例えば、PPホモポリマー)は、別のアルファオレフィンを0重量%~約5%(例えば、0、1、2、3、4、5重量%、及びこれらの任意の値又は範囲)含むことができる。アルファ-オレフィンの限定ではなく例として、C2-C8アルファ-オレフィン、例えば、エチレン、1-ブテン、及び1-ヘキセンが挙げられる。ホモポリマーは、調製することも、TOTAL Petrochemicals、France及び/又はTotal Petrochemicals USA, Inc等の商業元を通じて得ることkもできる。ホモポリマー及びコポリマーの限定ではなく例として、TOTAL Lumicene(登録商標)ブランドが挙げられる。
【0035】
b.シングルサイト触媒
シングルサイト触媒とは、異なる種の混合物ではなくて、明確な化学種である触媒である。シングルサイト触媒は、担持されていることもいないことも可能である。担持されていないシングルサイト触媒は、炭化水素溶媒に可溶性である。シングルサイト触媒は、狭い分子量分布(Mw/Mn<3)で、良好、均一にコモノマーを組み込んだポリオレフィンをもたらすことができる。シングルサイト触媒として、後周期遷移金属錯体及びメタロセンが挙げられる。後周期遷移金属には、周期表の8族~12族が含まれる。後周期遷移金属の限定ではなく例として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及び金(Au)が挙げられる。例えば、後周期遷移金属触媒として、窒素配位子を持つニッケル(II)及びパラジウム(II)を挙げることができる。
【0036】
メタロセンは、一般に、n結合を通じて遷移金属に配位した1つ又は複数のシクロペンタジエニル(Cp)基(これらは、置換されていても無置換であっても可能であり、同じであっても異なっていても可能である)を組み込んだ配位化合物として特徴付けることができる。Cp基は、他の近接環構造を形成するように、直鎖、分岐鎖、又は環状ヒドロカルビルラジカル、望ましくは、環状ヒドロカルビルラジカルによる置換を有することもでき、近接環構造としては、例えば、インデニル基、アズレニル基、及びフルオレニル基が挙げられる。これらの追加の環構造もまた、ヒドロカルビルラジカル、望ましくは、C1-C20ヒドロカルビルラジカルにより置換されていることも無置換であることも可能である。メタロセン化合物は、活性化剤及び/又は共触媒(以下でより詳細に記載するとおり)と、あるいは活性化剤及び/又は共触媒の反応生成物と、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)と、及び任意選択でアルキル化/スカベンジング剤、例えば、トリアルキルアルミニウム化合物(TEAL、TMA、及び/又はTIBAL)等と、組み合わせることが可能である。各種のメタロセンが当該分野で既知であり、これらは担持されていても可能である。典型的な支持体としては、任意の支持体、例えば、タルク、無機酸化物、
粘土、及び粘土鉱物、イオン交換層状化合物、珪藻土、ケイ酸塩、ゼオライト、又はポリオレフィン等の樹脂支持体材料等が可能である。具体的な無機酸化物として、シリカ及びアルミナが挙げられ、これらは単独で使用されるか、他の無機酸化物、例えば、マグネシア、チタニア、ジルコニア等と組み合わせて使用される。非メタロセン遷移金属化合物、例えば、四塩化チタンもまた、担持触媒成分に組み込まれる。支持体として使用される無機酸化物は、平均粒径が30ミクロン~600ミクロン、望ましくは30ミクロン~100ミクロン、表面積が50平方メートル/グラム~1,000平方メートル/グラム、望ましくは100平方メートル/グラム~400平方メートル/グラム、細孔容積が0.5cc/g~3.5cc/g、望ましくは約0.5cc/g~2cc/gの範囲であることを特徴とする。
【0037】
任意のメタロセンが、本発明の実施において使用可能である。本明細書中使用される場合、特に記載がない限り、「メタロセン」には、単一メタロセン組成物、又は2種以上のメタロセン組成物が含まれる。メタロセンは、典型的には、嵩高い配位子の遷移金属化合物であり、これは一般に以下の式で表される:[L]mM[A]n、式中、Lは、嵩高い配位子、Aは、脱離基、Mは、遷移金属、並びにm及びnは、遷移金属価に対応した合計配位子価になっている。配位子L及びAは、互いに架橋していることが可能であり、2つの配位子L及び/又はAが存在する場合、それらは架橋していることが可能である。メタロセン化合物は、2つ以上の配位子Lを有する完全サンドイッチ化合物であることが可能であり、配位子Lは、シクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエン由来配位子が可能であり、あるいは、1つの配位子Lを有する半サンドイッチ化合物であることが可能であり、配位子Lは、シクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエン由来配位子が可能である。遷移金属原子は、周期表の4族、5族、又は6族遷移金属及び/又はランタニド系列及びアクチニド系列の金属が可能である。金属の限定ではなく例として、ジルコニウム、チタン、及びハフニウムが挙げられる。脱離基等他の配位子は、遷移金属に結合することができる。配位子の限定ではなく例として、ヒドロカルビル、水素、又は任意の他の一価アニオン配位子が挙げられる。例えば、架橋メタロセンは、一般式:RCpCp’MeQxで記載することができる。Meは、遷移金属元素を表し、Cp及びCp’はそれぞれ、シクロペンタジエニル基を表しており、それぞれ同じであるか異なっていて、置換又は無置換のいずれかであることができ、Qは、アルキル若しくは他のヒドロカルビル又はハロゲン基であり、xは数字であって、1~3の範囲内にあることができ、Rは、シクロペンタジエニル環の間にかかる構造的架橋である。イソタクチックポリオレフィンを生成するメタロセン触媒及びメタロセン触媒系は、米国特許第4,794,096号及び同第4,975,403号に開示されており、これらは本明細書中参照として援用される。これらの特許は、オレフィンを重合してイソタクチックポリマーを形成し、高度イソタクチックポリプロピレンの重合に特別有用であるキラルな立体剛直メタロセン触媒を開示している。
【0038】
適切なメタロセン触媒は、例えば、米国特許第4,530,914号、同第4,542,199号、同第4,769,910号、同第4,808,561号、同第4,871,705号、同第4,933,403号、同第4,937,299号、同第5,017,714号、同第5,026,798号、同第5,057,475号、同第5,120,867号、同第5,132,381号、同第5,155,180号、同第5,198,401号、同第5,278,119号、同第5,304,614号、同第5,324,800号、同第5,350,723号、同第5,391,790号、同第5,436,305号、同第5,510,502号、同第5,145,819号、同第5,243,001号、同第5,239,022号、同第5,329,033号、同第5,296,434号、同第5,276,208号、同第5,672,668号、同第5,304,614号、同第5,374,752号、同第5,510,502号、同第4,931,417号、同第5,532,396号、同第5,543,373号、同第6,100,214号、同第6,2
28,795号、同第6,124,230号、同第6,114,479号、同第6,117,955号、同第6,087,291号、同第6,140,432号、同第6,245,706号、同第6,194,341号,同第6,399,723号,同第6,380,334号,同第6,380,331号,同第6,380,330号,同第6,380,124号,同第6,380,123号,同第6,380,122号,同第6,380,121号,同第6,380,120号,同第6,376,627号,同第6,376,413号,同第6,376,412号,同第6,376,411号,同第6,376,410号,同第6,376,409号,同第6,376,408号,同第6,376,407号,同第5,635,437号,同第5,554,704号,同第6,218,558号,同第6,252,097号,同第6,255,515号,及びEP公開第549 900号、同第576 970号、及び同第611 773号、並びにWO 97/32906号、同第98/014585号、同第98/22486号、及び同第00/12565号に開示されている。
【0039】
メタロセンは、活性触媒系を作出する目的で、ある形態の活性化剤と組み合わせて使用することができる。「活性化剤」という用語は、本明細書中、1種又は複数のメタロセンがオレフィンを重合してポリオレフィンにする能力を向上させることが可能な、任意の化合物若しくは要素、又は化合物若しくは要素の組み合わせと定義される。アルキルアルモキサン(Alklyalumoxane)、例えば、メチルアルモキサン(MAO)が、一般的にメタロセン活性化剤として使用される。一般に、アルキルアルモキサンは、約5~40の繰り返し単位を有する。アルモキサン溶液、特にメチルアルモキサン溶液は、様々な濃度を有する溶液として、販売業者から得ることができる。アルモキサンの調製法は各種存在し、それらの限定ではなく例として、米国特許第4,665,208号、同第4,952,540号、同第5,091,352号、同第5,206,199号、同第5,204,419号、同第4,874,734号、同第4,924,018号、同第4,908,463号、同第4,968,827号、同第5,308,815号、同第5,329,032号、同第5,248,801号、同第5,235,081号、同第5,103,031号、及びEP-A-0 561 476号、EP 0 279 586号、EP-A-0 594 218号、及びWO 94/10180に記載がある。これらの特許文献は本明細書中参照として全面的に援用される。
【0040】
イオン化活性化剤もまた、メタロセンを活性化するのに使用可能である。こうした活性化剤は、中性であるかイオン性であり、あるいは中性メタロセン化合物をイオン化する化合物、例えば、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等である。そのようなイオン化化合物は、活性プロトン、又はある種の他のカチオンを有することができ、この部分は、イオン化化合物の残部イオンに付随しているが、配位していない又はゆるく配位している。活性化剤の組み合わせもまた使用可能であり、例えば、アルモキサンとイオン化活性化剤が組み合わされる。例えば、WO 94/07928を参照。
【0041】
非配位アニオンにより活性化されたメタロセンカチオンで構成される配位重合用のイオン性触媒の説明は、初期研究において、EP-A-0 277 003、EP-A-0 277 004、及び米国特許第5,198,401号、及びWO-A-92/00333に登場しており、これらは本明細書中参照として全面的に援用される。これらは、望ましい調製法を教示しており、この場合、メタロセン(ビスCp及びモノCp)は、アルキル/ヒドリド基が遷移金属から引き抜かれて、カチオン性であることおよび非配位アニオンにより電荷が中和されていることの両方を満たすように、アニオン前駆体によりプロトン化される。適切なイオン性塩として、テトラキス置換ボレート又はフッ化アリール構成要素、例えば、フェニル、ビフェニル、及びナフチルを有するアルミニウム塩が挙げられる。
【0042】
「非配位アニオン」(「NCA」)という用語は、当該カチオンに配位していないか、当該カチオンに弱く配位しているだけで、そのため中性ルイス塩基による置換を十分に受けやすいままであるかのいずれかであるアニオンを意味する。「適合性のある」非配位アニオンとは、最初に形成された錯体が分解するときに、分解されて中性にならないものである。さらに、アニオンは、カチオンがアニオンから中性四配位メタロセン化合物及び中性副生成物の形成を引き起こすような、アニオン性置換基又は断片のカチオンへの移動を行うことはない。
【0043】
活性プロトンを有していないが、活性メタロセンカチオン及び非配位アニオンの両方を生成することができるイオン化イオン性化合物の使用もまた、既知である。例えば、EP-A-0426637及びEP-A-0573403を参照、これらは本明細書中参照として全面的に援用される。イオン性触媒の更なる作成法は、イオン化アニオン前駆体を使用する。この前駆体は、最初は中性のルイス酸であるが、メタロセン化合物とのイオン化反応の際、カチオン及びアニオンを形成する、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが使用される。EP-A-0520732を参照、これは本明細書中参照として全面的に援用される。付加重合用のイオン性触媒は、アニオン基と合わせて金属性酸化基を有するアニオン前駆体による遷移金属化合物の金属中心の酸化によっても調製することができる。EP-A-0495375を参照、これは本明細書中参照として全面的に援用される。
【0044】
金属配位子が、標準条件下ではイオン化引き抜きを起こすことができないハロゲン部分を有する場合(例えば、ビス-シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド)、これらは、有機金属化合物、例えば、リチウムヒドリド又はアルキルリチウム又はアルミニウムヒドリド又はアルキルアルミニウム、アルキルアルモキサン、グリニャール試薬等を用いた既知のアルキル化反応により、変換することができる。in situプロセスに関してEP-A-0 500 944及びEP-A1-0 570 982を参照、これらは、活性化アニオン性化合物の添加前又は添加による、アルキルアルミニウム化合物とジハロ置換メタロセン化合物の反応について記載している。
【0045】
メタロセンカチオン及びNCAを含むイオン性触媒の望ましい担持方法は、米国特許第5,643,847号、同第6,228,795号、及び同第6,143,686号に記載されており、これらはそれぞれ、本明細書中参照として全面的に援用される。支持体組成物を使用する場合、これらのNCA担持方法は、ルイス酸が共有結合になるように、シリカ表面に存在するヒドロキシル反応基と反応するのに十分な強さのルイス酸である、中性アニオン前駆体の使用を含むことができる。さらに、メタロセン担持触媒組成物用の活性化剤がNCAである場合、望ましくは、支持体組成物に、最初にNCAを加えて、続いてメタロセン触媒を加える。活性化剤がMAOである場合、望ましくは、MAO及びメタロセン触媒を、溶液に一緒に溶解させる。次いで、支持体をMAO/メタロセン触媒溶液と接触させる。他の方法及び添加順序も、当業者に明らかとなる。
【0046】
c.シングルサイトポリオレフィン製造
シングルサイトポリオレフィンは、1種又は複数のオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン)を、シングルサイト触媒の存在下、及びそれらの重合に適切な反応条件下、単独で又は他のモノマーとともに、適切な反応容器に入れることにより形成させることができる。オレフィンをポリマーへと重合するのに適切な任意の装置及びプロセスが使用可能である。例えば、そのようなプロセスとして、溶液相プロセス、気相プロセス、スラリー相プロセス、バルク相プロセス、高圧プロセス、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。そのようなプロセスは、米国特許第5,525,678号、同第6,420,580号、同第6,380,328号、同第6,359,072号、同第6,34
6,586号、同第6,340,730号、同第6,339,134号、同第6,300,436号、同第6,274,684号、同第6,271,323号、同第6,248,845号、同第6,245,868号、同第6,245,705号、同第6,242,545号、同第6,211,105号、同第6,207,606号、同第6,180,735号、及び同第6,147,173号に詳細に記載されており、これらはそれぞれ、本明細書中参照として全面的に援用される。
【0047】
シングルサイトポリオレフィンは、気相重合プロセスにより形成させることができる。気相重合プロセスの1例として、連続サイクルシステムが挙げられ、この場合、循環ガス流(そうでなければ、リサイクル流又は流動媒体として知られる)が、反応器中で、重合熱により加熱される。熱は、サイクルの別部で、反応器外部の冷却システムにより循環ガス流から除去される。1種又は複数のモノマーを含有する循環ガス流は、触媒の存在下、反応条件下で、流動床を通じて連続循環させることができる。循環ガス流は、一般に、流動床から抜き出され、反応器へとリサイクルして戻される。同時に、シングルサイトポリオレフィンポリマーを反応器から抜き出すことができ、及び新たなモノマーを加えて、重合したモノマーと置き換えることができる。気相プロセスにおける反応器圧は、100psig~500psig、又は200psig~400psig、又は250psig~350psigで変化可能である。気相プロセスにおける反応器温度は、30℃~120℃、又は60℃~115℃、又は70℃~110℃、又は70℃~95℃が可能である。ポリマー プロセスの限定ではなく例としては、米国特許第4,543,399号、同第4,588,790号、同第5,028,670号、同第5,317,036号、同第5,352,749号、同第5,405,922号、同第5,436,304号、同第5,456,471号、同第5,462,999号、同第5,616,661号、同第5,627,242号、同第5,665,818号、同第5,677,375号、及び同第5,668,228号に記載があり、これらはそのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0048】
D.製造品
本発明のポリマーシートは、一定時間貯蔵可能であり、そのまま使用可能であり、又は形成プロセスにおいて即時使用可能である。形成プロセスとして、熱形成又は型成形を挙げることができる。成形された物品として、飲料リング、例えば、シックスパックリングホルダー、オーバーキャップ蓋等の蓋等を挙げることができる。
【実施例】
【0049】
具体例により、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、どのような形式でも本発明を制限することを意図しない。当業者なら、本質的に同じ結果を得るために、様々な重要性の低いパラメーターが変更又は修飾可能であると容易に理解するだろう。
【0050】
実施例1
(シングルサイト触媒ポリオレフィンによる押し出しシート、比較LDPE、及び比較射出成形(IM)蓋)
5種の異なる材料を、様々なシート用途での利用可能性について試験した。第一材料は、非シングルサイト触媒を使用して作成されたLDPE基準材料(LDPE#1、これは、Westlake Chemical(USA)製のWestlake EF403(分別溶融低密度配合物、メルトインデックス0.8g/10分及び密度0.924g/cm3)であった)であり、その他の4種は、メタロセン中密度ポリエチレン材料(mPE#1~#4と称する、TOTAL、USAから入手)であった。Davis Standard Sheet Lineに、垂直3ロールスタックを備えた1.5インチ直径の主押出機を使用して、シートを製造した。5種の材料それぞれを使用して、10、15、2
0、及び30ミル(すなわち0.010インチ、0.015インチ、0.020インチ、及び0.030インチ)を含む各種厚さの押し出しシートを作成した。表1及び表2に、非シングルサイト触媒を用いて作成されたLDPEシート、シングルサイト触媒を用いて作成された各種厚さのポリマーシート、及びLLDPE製の市販されている射出成形した蓋の特性の概要をまとめる。蓋は、直径4.6インチ(11.68cm)、重さ9.6g、及び厚さ23.7ミル(0.061cm)であった。
【0051】
シート収縮は、シート厚さが増大するほど減少した(
図1)。LDPEは、最も類似した密度を有するmPE#1シート及びmPE#2シートと同様な収縮成績を示した。mPE#3は、LDPEに比べてはるかに少ない収縮を示し、及びmPE#4は、その他の試料とは非常に異なる挙動を示した(M方向及びT方向のどちらも同様に収縮する)。射出成形した蓋は、高分子量種が欠如しているため、mPEシートよりも良好な収縮特性を有すると予想された。化学種の分子量が高いほど、加工時に配向が生じた場合にそれを維持する傾向にある。高分子量鎖が少ないと、溶融物が完全に固化する前に、あらゆる方向で溶融物の配向の弛緩が迅速に起こり得る。すなわち、キャストシートは、高分子量のため、より収縮すると予測することが可能である。実際、射出成形した蓋が示した有利性は、驚くほど小さかった。キャストシートは、射出成形した蓋と同様な収縮特性を有した(
図1を参照)。機械方向の収縮は、mPE#3及びmPE#1のものの間であった。横断方向の収縮は、mPE#3よりやや大きかった。このデータから、シングルサイト触媒ポリマーシートが、どのような溶融相熱成形部品、溶融ビレット相形成、並びにリッドストックに見られるような非常に浅絞りの熱成形(例えば、ドレープ形成)、にも、首尾よく使用可能であることが予測される。
【0052】
mPEシートは、剛性(
図2)、強度(
図3)、及び靱性(
図4)において、LDPEシートに比べて優れた引張性能を示した。概して、シート厚さは、正規化した引張特性に対してあまり感受性を示さなかった。このことは、これらの引張特性を、ほぼ直接材料特性として扱うことが可能であることを示す(用途による影響を受けない)。データから、IM蓋の方が柔らかかったことが特定された。このことは、IM蓋の方が密度が低いことから予想されていた。すなわち、本発明のシングルサイトポリマーシートは、軽量化のために使用することが可能である。というのも、シングルサイトポリマーから作成したシートは、施蓋(lidding)における現行の市場の期待に一致又はそれを超えつつ、降級する(downgauged)ことが可能だからである。
【0053】
降伏強度は、剛性と何らかの相関関係を有しており、いつ力が物品を恒久的に変形させることになるかの同定に重要な特質である。施蓋の場合、降伏応力は、高速充填操作において、並びに消費者にとって、重要となり得る(例えば、蓋が剥がし取りにくい場合、それが恒久的に変形する可能性がある)。射出成形した蓋は、mPE#1及びmPE#2と同様な成績であり、mPE#3又はmPE#4よりも容易に降伏した(
図3を参照)。mPE#3又はmPE#4いずれかで作られた蓋は、15ミル(0.0381cm)以下に軽量化することが可能であり、それでもなお射出成形した蓋の降伏強度と一致する又はそれを超える可能性がある。
【0054】
引張検体が降伏する可能性のある点に加えて、達成される最大応力も、一部の用途において重要である可能性がある。というのも、これは、引張破壊前に達成される硬化現象を含むからである。この場合、本発明のシングルサイト触媒ポリマーは全て、非常に優れた最大強度を示した(
図4を参照)。このことは、降伏強度の代わりに最大強度周囲で設計する用途にとって更なる軽量化が達成可能になり得ることを示す。
【0055】
引張データを同じく用いて、各シートが比較的遅い荷重(後段で検討する衝撃試験とは対照的である)下でエネルギーを吸収する能力を図解する。応力-歪みデータを積分し、
試験範囲の初期体積で乗算することにより、合計エネルギーを計算した。機械方向のデータを
図5に示す。なお、横断データは非常に類似していた。予想どおり、シートが薄いほど、引張エネルギーをより多く吸収することができた。ほとんどにおいて、このデータは、剛性及び強度により示された傾向に従った。主な例外は、mPE#4及びIM蓋であった。mPE#4の場合、最大強度は、顕著に低く(配向性に駆動される硬化が少ないことを示す)、これは、比較的低い引張エネルギーの一因となった。IM蓋は、極端に低い破断伸びを示し、引張エネルギーの計算値を顕著に低下させた。全体として、この知見は、シートをゆっくりと引き裂く又は穿刺するのにどれぐらい多くのエネルギーを要する可能性があるかの指標を提供した。
【0056】
衝撃落下試験は、梱包において特に重要な特性である。梱包の損傷による等の棚卸損失は、小売業界において減耗と呼ばれる。破損した食品容器は、消費者レベルで問題となる。なぜなら、損傷は病原体の侵入点となる可能性があり、食品漏出を引き起こす可能性があり、それ以外にも不満の原因となる可能性があるからである。大部分のmPEシート(mPE#4を除く、これは高いMFIを有する)の衝撃性能は、室温及び-20℃の両方で、優れた衝撃性能を示した(
図5を参照)。この性能の上昇は、室温結果について+0.42ft-lb及び-20℃結果について1.10ft-lbの移動係数を適用した後、シート厚さに比例した。データから、引張又は衝撃性能にどのような損失ももたらすことなくmPE#2のシート厚さが38%減少したことが特定された。これらの特性は、場合によっては更に高くなる可能性がある。IM蓋に対する室温及び-20℃での衝撃試験は両方とも、シングルサイト触媒ポリマーシート選択肢の方が優れていたことを実証した。試料mPE#1、mPE#2、及びmPE#3は全て、IM蓋の厚さの42%しかない10ミル(0.0245cm)でより良好な衝撃性能を示した。5.7MI2及び0.933g/cc密度を持つmPE#4でさえ、15ミル(0.0381cm)しかなくて同じ衝撃性能を与えた。すなわち、シングルサイト触媒ポリマーシートを使用することで、落下衝撃性能を犠牲にすることなく実質的な軽量化が可能になる。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【0057】
実施例2
(シングルサイト触媒ポリオレフィンの押し出しシート、比較LDPE、及び比較シック
スパックリング)
本発明のmPE#1~mPE#4ポリマーシート試料、比較LDPE、及び市販のシックスパックリング材料を、分析及び比較した。表3に、試料のDSC及び密度をまとめる。シックスパックリングは、密度0.930g/ccを示し、これは、比較LDPEの密度より高かった。このことは、シックスパックリングがより高密度の製品であったことを示す。エンタルピーは、顕著により高くなる。mPE#3の密度は、シックスパックリングと同様であった。データから、密度及びDSCが市販品に匹敵するため、本発明のポリマーシートがシックスパックリング製造に適していることが特定された。
【表3】
【0058】
6つの試料のレオロジー試験結果を、表4にまとめる。全分子構築の参照用に、密度を含めた。
【表4】
【0059】
動的温度周波数掃引を行って、レオロジー比較の理解を更に深めた。比較を表5にまとめる。これらにより、分子構築を更に最適化するためのCarreau-Yasudaパラメーターが定義された。ゼロ剪断粘度を、分別メルトインデックス(fractional melt index)を有するmPE試料と一致させることが可能であった。本発明のポリマーシートの方が緩和時間が短いことは、それらの方が溶融強度が低いことを示したが、キャストシートでは、このことは加工において埋め合わせ可能である。これは、凍結物から溶融物になるレオロジー応力の量を減少させる上で何らかの恩恵をもたらすことができる。というのも、これは、キャストシートロールスタックにおいて急冷されるからである。
【表5】
【0060】
加工に関する別の基準は、ワックス濃度である。ワックス濃度が高いほど(化学種の分子量が低いほど)、様々な加工上の困難を招く可能性がある。燻し(Smokiness)、ダイリップ付着、及びロールストック付着が、3つの潜在的問題である。一部の加工技術は、装置の汚染及びダウンタイムを防ぐため、そのような低分子量材料を収集する特別な「グリーストラップ」を必要とする。
【0061】
ワックス試験から、本発明のポリマーシートが利点をもたらすことが特定された。試験した4種の本発明のポリマーシートは全て、シックスパックリング及びLDPEよりもワックスが顕著に少なかった(表6を参照)。ワックスが乏しいことにより、加工の改善、物理的特性の改善、及び軽量化という利点がもたらされる。
【表6】
【0062】
GPCデータは、ワックス結果と一致していた。データを表7にまとめる。平均分子量は、シングルサイト触媒ポリオレフィンの分子量の方が狭いことを示した。これは、高分子量種を少ししか残さなかったものの、これは、物理的特性に目立って寄与することのないワックス状種の多くを除去した。
【表7】
【0063】
分子量の違いを、GPCスライスデータの重ね合わせで図解する(
図9を参照)。シックスパックホルダーは、非常に広く、二峰性に近い分布形状を有した。LDPE比較例は、それより狭い分子量分布を有した。これらの違いは、反応器技術に基づいている可能性がある。というのも、管型技術とオートクレーブ技術の対比において、異なる分子量建築がもたらされる可能性があることが知られているからである。
【0064】
要約すると、本発明のmPEポリマーシートは、以下を示した:(1)多分散性がLDPEの3.7に対してmPEは2.6~2.8の範囲であったことから、分子量の変動性がより小さい、(2)LDPE(55%)よりも少ないワックス(1%~20%)、(3)LDPE(0.27%)よりも少ないアッシュ含有量(0.02%~0.04%)、(4)より高い融点、これは、密度が上昇すると上昇するが、MFIが上昇すると低下する、(5)LDPE(49kJ/mol)よりも低いレオロジー活性化エネルギー(27kJ/mol~31kJ/mol)、これは、融点特性の温度感受性の尺度である、(6)ねじりによる動的機械分析における貯蔵弾性率及び損失弾性率がより高い、並びに(7)推定HDT性能がより高い。例えば、閾値0.20%歪みに関して、mPEの推定HDTが147℃~167℃に対して、LDPEの推定HDTは133℃であった。また、本発明のポリマーシートの使用は、シックスパックリング製造にLDPEを使用するという選択肢を提供する。例として、本発明のポリマーシートは、低分子量種の含有量がより少なかった。このことは、ワックス結果の低さと一致する。
【0065】
本出願の実施形態及びそれらの利点について詳細に記載してきたものの、当然のことながら、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置き換え、及び改変を、本明細書においてなすことが可能である。そのうえ、本出願の範囲は、本明細書において記載されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者なら上記の開示から容易に認めるだろうが、本明細書中記載される相当する実施形態と実質的に同じ機能を発揮する又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するあるいは後世で開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又は工程が、利用可能である。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又は工程を含めることを意図する。
【国際調査報告】