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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】プラズマ処理のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240423BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240423BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20240423BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H05H1/46 A
H01L21/205
H01L21/365
C23C16/30
C23C16/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566410
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022060433
(87)【国際公開番号】W WO2022228969
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21171389.6
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506029255
【氏名又は名称】フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
【住所又は居所原語表記】VOESTALPINE-STRASSE 3, A-4020 LINZ, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンデン ブランデ、ピエール
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB07
2G084BB14
2G084BB27
2G084CC33
2G084DD37
2G084DD40
2G084FF02
2G084FF07
2G084FF15
2G084FF21
2G084FF23
2G084FF27
2G084FF28
2G084FF29
2G084HH02
2G084HH19
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH30
2G084HH44
2G084HH52
4K030BA02
4K030BA18
4K030BA21
4K030BA29
4K030BA30
4K030BA40
4K030BA42
4K030BA43
4K030BA44
4K030BB04
4K030BB05
4K030CA06
4K030FA01
4K030JA09
4K030JA16
4K030KA30
4K030KA34
5F045AA08
5F045AB02
5F045AB04
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AB40
5F045AC00
5F045AC11
5F045AC16
5F045AE13
5F045AE15
5F045AF07
5F045AF10
5F045BB14
5F045DP22
5F045EB03
5F045EB05
5F045EB06
5F045EH19
5F045EH20
5F045EJ04
5F045GB08
5F045HA03
5F045HA07
(57)【要約】
開口23を提示する拡散体パネルを形成する少なくとも1つの壁13によって輸送方向5に対して横方向に範囲を定められている処理領域を通って、前記輸送方向5に沿って移動する基板21をプラズマ処理するための方法及び対応する装置。プラズマは、前記開口23を通して処理領域に導入され、開口23に接続しているプラズマ・ソースを用いて発生する。前記開口23を通って処理領域に進入する前記プラズマがこの処理領域の中で前記壁13に沿って分布されるように、前記壁13に沿って、少なくとも部分的に開口23の周りに且つこの開口23に隣接して延在する多極カスプ磁場が発生する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のプラズマ処理のための装置であって、処理領域を有し且つ輸送方向(5)を提示する閉込め筐体(15)を備えた真空チャンバ(1)を有し、処理する基板(21)が、前記輸送方向(5)に沿って前記処理領域を通して移動され、前記処理領域は、前記閉込め筐体(15)の側壁(13)によって、前記輸送方向(5)に対して横断する方向において範囲を定められており、前記側壁(13)のうちの少なくとも1つが、前記処理領域へのプラズマの進入を可能にするための開口(23)を有し、前記開口(23)が、前記処理領域の外部のプラズマ・ソース(8)に接続し、それにより前記プラズマ・ソース(8)によって生成されたプラズマが前記開口(23)を通して前記処理領域に進入可能であり、
前記開口(23)を有する前記少なくとも1つの壁(13)が、前記壁(13)に沿って延びる多極磁気カスプ場(16)を発生させるための手段を提示し、前記多極磁気カスプ場は、プラズマ拡散体パネルを形成するために、少なくとも部分的に前記開口(23)の周りに且つ前記開口(23)に隣接して延びることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記多極磁気カスプ場が、前記開口(23)に隣接して前記開口(23)の全周囲の周りに延びている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記多極磁気カスプ場を発生させるための前記手段が、前記輸送方向(5)に沿った前記処理領域の長さに対応する距離にわたって、前記輸送方向(5)に沿って延びている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記閉込め筐体(15)の前記側壁(13)が、前記輸送方向(5)に実質的に平行に延びている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記閉込め筐体(15)の前記壁(13)が、前記基板(21)に対して少なくとも平均で正に極性化されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記多極磁気カスプ場を発生させるための前記手段が、前記処理領域に対して前記壁(13)の外部側を覆っている永久磁石及び/又は電磁石の組立体を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記壁(13)が、前記処理領域に対して外部側で電気的絶縁(14)を提示する金属壁(13)である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記閉込め筐体(15)が、前記処理領域の反対側で前記輸送方向(5)に平行に延びる2つの反対壁(13)を有し、前記反対壁(13)の各々が、プラズマ拡散体パネルを形成する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの電子ソースが、前記処理領域内の前記プラズマの密度を制御するために前記処理領域内に設けられている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つのプラズマ電流測定プローブ(20a、20b)が前記処理領域内に設けられ、それにより前記少なくとも1つの電子ソースと協働して、前記輸送方向(5)に対して横断する方向に沿ってプラズマ密度を制御する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電子ソースが熱フィラメント(17)を有し、前記熱フィラメント(17)は、好ましくは前記輸送方向(5)に従って前記壁(13)に沿って延びている、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記閉込め筐体(15)が、前記基板のための、入口開口部(3)によって画定された入口と、出口開口部(4)によって画定された出口とを有し、前記開口部(3、4)の各々が、前記処理領域の反対側で前記輸送方向(5)に沿って延びる対応する管状通路(3a、4a)に接続し、前記管状通路(3a、4a)は、浮遊電位に維持されるように電気的に隔離され、又は前記真空チャンバ(1)の壁の電位に対応する電位に維持されている、請求項1から11までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記管状通路(3a、4a)が、前記管状通路と、前記通路を通して移動する前記基板との間の、前記輸送方向(5)に対して横向きの距離を減少させるための閉止手段を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記閉込め筐体(15)が、前記閉込め筐体(15)から前記真空チャンバ(1)に向かってガスを排気するための少なくとも1つのポンピング・ポート(10)を提示し、前記ポート(10)が、前記処理区域に面する内部メッシュ(10a)及び前記真空チャンバ(1)に面する外部メッシュ(10b)によって覆われた開口を提示し、前記外部メッシュ(10b)が、前記処理領域に対して外部にある前記内部のメッシュ(10a)の側に設けられ、前記内部メッシュ(10a)が前記壁(13)に電気的に接続され、前記外部メッシュ(10b)が、浮遊電位又は前記真空チャンバ(1)の壁の電位に対応する電位に維持されている、請求項1から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記内部メッシュ(10a)と前記外部メッシュ(10b)との間の距離が、5mmよりも大きい、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記処理領域が、前記処理領域の反対側で前記輸送方向(5)に対して横向きに延びる閉止パネル(22)によって範囲を定められており、前記閉止パネル(22)が、前記側壁(13)に接続しており、前記多極磁気カスプ場を発生させるための前記手段が、前記少なくとも1つの側壁(13)に沿って前記閉止パネル(22)の間に延びている、請求項1から15までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記多極磁気カスプ場を発生させるための前記手段が、前記処理領域の長さにわたって前記側壁(13)又は前記輸送方向(5)に沿ってのみ延び、それにより、前記プラズマの密度の低減が、前記輸送方向(5)に沿った前記処理領域の反対側で得られる、請求項1から16までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
基板をプラズマ処理するための方法であって、前記基板(21)が、処理領域を通して輸送方向(5)に沿って移動され、前記処理領域は、開口(23)を提示する拡散体パネルを形成する少なくとも1つの壁(13)によって輸送方向(5)に対して横断する方向において範囲を定められ、プラズマが、前記開口を通して前記処理領域内に導入され、前記プラズマは、前記開口(23)に接続しているプラズマ・ソースによって生成され、
多極カスプ磁場が、前記壁(13)に沿って、また少なくとも部分的に前記開口(23)の周りに且つ前記開口(23)に隣接して延びるように生成され、それにより、前記開口(23)を通して前記処理領域に進入する前記プラズマが、前記処理領域内で前記壁(13)に沿って分布されることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記処理領域内の前記プラズマの密度が、前記多極磁気カスプ場内の少なくとも1つの電子ソース(17)によって電子流を発生させることによって制御される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プラズマ電流が前記処理領域内で測定され、前記輸送方向(5)に対して横断する方向に沿って前記プラズマ密度を制御するために、前記電子流が、前記測定されたプラズマ電流に応じて調整される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多極カスプ磁場が、前記壁(13)に沿って、また前記開口(23)の完全な周囲の周りで前記開口(23)に隣接して生成される、請求項18から20までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のプラズマ処理のための装置に関わる。装置は、処理領域を有し且つ処理されるべき基板が処理領域を通って移動するときに沿うべき処理方向を提示する閉込め筐体を伴う真空チャンバを有する。この処理領域は、処理方向に対して横方向に、閉込め筐体の側壁によって範囲を定められている。これらの側壁のうちの少なくとも1つは、プラズマが処理領域に進入することを可能にするための開口部を有する。開口部は、プラズマ・ソースによって発生したプラズマがこの開口部を通って処理領域に進入することができるように、処理領域の外部にあるプラズマ・ソースに接続する。
【0002】
本発明は、一般に、基板のプラズマ処理のための方法及び装置に関し、特に、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD:plasma enhanced vapor deposition)による洗浄、加熱、又はコーティングに関する。本発明の装置又は方法によって処理されるべき基板は、例えば、帯、シート、ワイヤ、桁、板の形の金属製品、又は全ての種類の断面を提示する特性等である。また、基板又は製品は、支持体の上に配設されており又は例えば金属フック若しくは金属バスケットによって保持されている部品を有することができる。基板は例えば、列に並んだローラ、コンベヤ、又はモノレール輸送システムなどの輸送システムを用いて、処理区域を通して輸送される。
【0003】
本発明によれば、1つ又は複数のプラズマ・ソースが、閉込め筐体の側壁に提供される磁気多極プラズマ閉込めと組み合わされる。これらの側壁は、処理方向と実質的に平行であり、その方向と交わらないことが好ましい。
【0004】
そのような設計により、他の考えられる組合せに比べて以下の2つの重要な利点がもたらされる。i)処理方向に沿って移動する製品又は基板をより均一に処理することができる前記処理方向に沿った処理領域内のプラズマのより良い均一性、ii)プラズマ閉込め区域の外側への寄生放電を抑圧することができる処理方向に沿ったプラズマ閉込め区域の先端におけるプラズマ密度のより急速な崩壊。プラズマ閉込め区域内でアノードが使用されているときに、動いている製品が真空チャンバの内壁と同じ電位、より具体的には接地電位にあるプラズマ・プロセス工程において、プラズマ閉込め区域の外側への寄生放電は深刻な問題である。これは特に、アノードに対する製品のバイアス極性を伴う製品のエッチング又はPECVDコーティングの場合である。
【背景技術】
【0005】
多極磁気カスプ(MMC:multipolar magnetic cusps)と、プラズマ・ソース、特に誘導ソースとの組合せ(例えば、イオン・ソースを記載している米国特許第8,436,318号参照)、並びに放電特性をより均一にするMMCの効果(例えば、J.Hopwood、C.R.Guarnieri、S.J.Whitehair、J.J.Cuomo、「Langmuir probe measurements of a radio frequency induction plasma」、J.Vac.Sci.Technol.A11(1)、Jan/Feb(1993)152参照)が、当業者には周知である。イオン・ソースの場合にはイオン・グリッド・オプティックが固定されており、又はプラズマ・ソースの場合には基板が置かれているMMC閉込め領域の出口において均一なプラズマ密度を得るために、常にMMC組立体が、プラズマ・ソースの開口を完全に取り囲んでいる。その構成は一般に、器具の下に動かないように置かれた静的な基板を処理するために使用される。
【0006】
また当業者には、パネルを、MMC及びプラズマ発生器としての電子ソースと組み合わせることも既知である(例えば、K.N.Leung、T.K.Samec、A.Lamm、「Optimization of permanent magnet plasma confinement」、Physics Letters、51A(1975)490参照)。
【0007】
本発明は、処理区域を通って移動する基板が、この処理区域内に配置されている1つ又は複数の対面するアノードに対して、周期的な信号と共に優先的に、連続的又は不連続的に負に極性化される従来技術によって開示されているようなプラズマ処理の方法及び装置の改善である。例えば、米国特許第6,933,460号には、磁気ミラーによってプラズマが閉じ込められている処理区域を横切る基板のためのプラズマ処理方法が記載されている。文献米国特許第8,835,797号には、インダクタを汚染から保護し且つシステムのアノードとなる複数のアンテナ又はファラデー遮蔽を通した誘導結合によってプラズマが発生する処理区域を横切る基板のためのプラズマ処理方法が記載されている。
【0008】
これらのプラズマ処理方法では共通して、処理されるべき基板は、1つ又は複数の電極と基板との間で基板の表面の近傍に放電が作り出される処理区域を提示する真空チャンバを通って、所与の方向に移動する。
【0009】
これらの1つ又は複数のアノードに対して負に極性化された基板のプラズマ処理方法が対象とする典型的な用途は以下である。
i)真空堆積技法によって後に塗布されるコーティングの接着を促進するように、自然表面金属酸化物及び表面的な炭素汚染層などの基板上の汚染層を排除すること。
ii)金属製品を焼き戻すため、又は処理区域に大気圧未満の圧力のガスなどの反応物を添加した場合の拡散若しくは基板との反応による表面化合物の形成を確実にするために、基板を加熱すること。
iii)処理区域に導入された反応性ガスのプラズマ分解、すなわちPECVDによって基板をコーティングすること。
【0010】
一般に、上記の方法は、十分に導電性がある任意の基板に適用されることができ、したがって、低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、及び他の金属から作製された任意の基板だけではなく、薄い絶縁層でコーティングされた導電性のある基板にも適用されることができる。しかしながら、これらの方法は本質的に、高真空コーティング・プラントにおける金属帯の真空堆積方法によるコーティング又はPECVD処理の前に、金属帯を前処理することをねらいとした産業用途のために開発されてきた。
【0011】
(従来技術の問題)
上記で示した従来技術を参照すると、帯、シート、ワイヤ、又はコードなどの金属製品の連続処理の場合には常時であるが基板が接地電位に保たれている場合に、安全上の理由で常に接地されている接地真空チャンバ内に存在するアノードは、真空容器の壁が電子の放電のために静電気を反射するもの、すなわちプラズマ形成を可能にする中空カソードを構成するので、一般に寄生プラズマを受ける。
【0012】
その欠点は壁がイオン衝撃を受けることであり、内壁の浸食及び加熱、並びに電力の重大な損失、及び真空容器の壁からスパッタされた物質による製品の汚染を意味する。
【0013】
この欠点を克服するために一般的に採用されている解決手段は、電気的なアイソレーター上に固定された金属パネルで、真空チャンバの内壁を電気的に絶縁又は遮蔽することである。しかしながら、このことは、フィードスルーが電気的な絶縁層又は遮蔽パネルも横切らなければならず、真空ポンピング・ポートが同様に電気的に絶縁又は遮蔽される必要があり、それにもかかわらず高速の真空ポンピングを可能にするので、真空チャンバ設計のより高度な複雑さをもたらす。
【0014】
特にプラズマ処理区域内で連続的に動いている例えば帯又はワイヤなどの製品のプラズマ処理のために、本発明によって解決される従来技術の第2の欠点は、事前に製品を除去せずにメンテナンスのためにプラズマ処理機器を除去することが不可能な点である。このことは、磁気ミラーに使用されている磁石が製品を完全に取り囲んでいる米国特許第6,933,460号の装置の場合、並びに処理中にファラデー遮蔽及びインダクタが同様に製品を取り囲んでいる米国特許第8,835,797号の器具の場合に明らかである。
【0015】
本発明が解決手段をもたらす従来技術の第3の欠点は、処理区域内の横方向に沿った不均等な処理の問題である。このことは、処理されるべき製品が、移動する方向ではなく移動する方向に対して横方向に長距離にわたって広がっているとき、例えば、コンベヤによって処理区域中に輸送される平行なワイヤ、幅広い帯、又は板のような複数の製品を同時に処理するときに、特に重要である。これは特に、アークの可能性を低減するために米国特許第8,835,797号に記載されているプラズマ処理構成などが使用される場合である。実際、その場合にプラズマは、製品を取り囲んでおり極性化したファラデー遮蔽によって保護されているインダクタでの誘導結合によって発生する。そのような場合には、誘導結合によってエネルギーを与えられた一次電子によるガスのイオン化容積によってプラズマが発生する場合、及び表面で本質的にプラズマ再結合が起こる場合に、プラズマ密度が不均等(放電の中心で最大値を伴う釣鐘型)になることが周知である。これは特に、処理区域の断面の幅及び高さに沿ってなど、基板の動く方向に対して横方向に沿って認められている。これにより、局所的なプラズマ密度に依存している基板のプラズマ処理は、プラズマ処理区域の幅の方向に沿って不均等になり、その区域の中央、すなわち動いている製品による進行方向に従う中心軸の位置で、最大値を提示する。したがって、プラズマ処理後の製品によって受容される供与量は、動く方向に対して横向きの製品の幅(或いは、製品の断面及び処理区域の断面の形状に応じて製品の高さ)に沿って変動する。
【0016】
典型的に、製品によって受容される関係する供与量は、製品の縁部での比1から、動いている製品による進行方向に沿った製品の中心軸の位置での比2まで変動し得る。大抵の場合は厚さの±5%の最大変動が容認されるので、特に鋼帯コーティング又はガラス・コーティングには、言うまでもなく、そのような製品の幅にわたるコーティングの厚さの変動は容認されることができない。
【0017】
同様に、この従来技術によれば、バンド又は帯に適用されるエッチング・プロセス又は加熱プロセスにおいて、製品の中央での温度上昇が製品の縁部での温度上昇の2倍になり得、このことは、機械的又は冶金的な理由で容認されることができない。
【0018】
従来技術の別の欠点は、製品の幅が処理区域の幅よりもはるかに小さく、且つ製品が処理区域を通って動くときにその横方向に沿って移動している場合に、プラズマ密度特性が区域中の製品の一時的な位置及び幅に依存しているので、その特性が適時に変動することである。帯の幅がその長さに沿って変わる場合(鋼帯の処理ではよくある)も同様である。実際、処理区域内の製品の区域は、電荷の再結合のために重要な区域を構成する。
【0019】
米国特許第8,835,797号によって開示されている器具のさらなる欠点は、エッチングに又はPECVD中に適用される場合に処理される製品に直接対面するアンテナの汚染である。特に低合金鋼のエッチング中には、スパッタされたイオンによるアンテナ又はファラデー遮蔽の汚染は、プロセスの効率を低下させることになる。鉄汚染層の加熱においてより多くのエネルギーが損失されるので、それに従ってプラズマ発生に利用可能なエネルギーが減少する。プロセスの持続可能性についてより一層重大なことに、近くのアンテナ間の空間の汚染は、プロセスの停止につながり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第8,436,318号
【特許文献2】米国特許第6,933,460号
【特許文献3】米国特許第8,835,797号
【特許文献4】EP0780485
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J.Hopwood、C.R.Guarnieri、S.J.Whitehair、J.J.Cuomo、「Langmuir probe measurements of a radio frequency induction plasma」、J.Vac.Sci.Technol.A11(1)、Jan/Feb(1993)152
【非特許文献2】K.N.Leung、T.K.Samec、A.Lamm、「Optimization of permanent magnet plasma confinement」、Physics Letters、51A(1975)490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、処理方向、すなわち処理領域を通って基板が移動する方向に沿ったプラズマ密度の均一性の改善を可能にする方法及び装置を提案することによって、従来技術の上述の欠点を克服することをねらいとする。同様に、本発明の意図は、処理方向に沿った処理区域の長さを、処理領域内で移動する基板、すなわち製品の正面に位置付けられているプラズマ・ソースの直径よりも大きくなるように広げることでもある。したがって、動いている基板又は製品の正面のプラズマ・ソース開口によって画定される長さそのものよりも長いプロセス区域において、所与の供与量(例えば、エネルギー密度又はコーティング厚さ)を得ることができ、それによって、プラズマ・ソースにおいて実質的に同じ動作パラメータが維持される。
【0023】
さらに、本発明の目的は、処理方向に対して横方向のプラズマ分布を制御することである。
【0024】
本発明の別の目的は、1つのアノード又は多数のアノードが存在する状態で、内壁が保護されていない接地された真空容器内の、接地された基板のプラズマ処理を可能にするための方法及び機器構成を提案することである。ここでは、処理区域の外側の真空容器容積内での寄生プラズマのいずれの可能性も防止され、処理区域の極めて高速な真空ポンピングは可能なままである。これは、処理されるべき動いている製品のガス放出が重要になる場合に、特に重要である。これは例えば、高速で動いている帯又はホイルなどの製品のプラズマ処理中の水蒸気ガス放出の場合である。
【0025】
したがって、本発明は、
i)動いている基板の周りに分布されたプラズマ・ソースのみを使用する場合に得られるものよりも、プラズマ処理区域内の処理方向に沿ったより均一なプラズマ密度分布を生成することを可能にする方法及び装置と、
ii)プラズマ処理区域内のいくつかの特定の箇所でのプラズマ密度の測定値に続くフィードバック信号に従って、処理方向に対して横方向に沿った処理区域内での局所的なプラズマ密度変動の調整を可能にする方法及び装置と
を提供することをねらいとする。
【0026】
本発明による方法及び装置は、導電性基板だけでなく、絶縁材料へのいくつかの具体的な適合があれば、ガラス板及びプラスチック・ウェブなどの電気的に絶縁している基板にも適用されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
概して、本発明による基板のプラズマ処理のための装置は、処理領域を有し且つ処理されるべき基板が処理領域を通って移動するときに沿うべき処理方向を提示するプラズマ閉込め筐体を伴う真空チャンバを有する装置に関わる。処理領域は、プラズマ閉込め筐体の側壁によって、処理方向に対して横方向に範囲を定められており、これらの側壁のうちの少なくとも1つは、処理領域にプラズマが進入することを可能にするための開口部を有する。この開口部は、プラズマ・ソースによって発生したプラズマがこの開口部を通って処理領域に進入することができるように、プラズマ・ソースに接続する。
【0028】
本発明によれば、プラズマが進入することを可能にするための開口部を提示する少なくとも前記壁は、プラズマ拡散体パネルを形成するために、この壁に沿って、開口部の周りに且つ開口部に隣接して延在する多極磁気カスプ場を発生させるための手段を提示する。
【0029】
興味深い形で、前記多極磁気カスプ場を発生させるための手段は、処理方向に沿った前記処理領域の長さに実質的に対応する距離にわたって、前記処理方向に沿って延在する。
【0030】
前記多極磁気カスプ場を発生させるための手段は、処理領域に対して前記壁の外部側部を覆っている永久磁石又は電磁石の組立体を有することが有利である。
【0031】
装置の好ましい一実施例によれば、前記閉込め筐体は、処理領域の反対側部上で前記処理方向に平行に延在することが好ましい少なくとも2つの反対壁を有し、これらの反対壁の各々は、処理領域に対して前記壁の外部側部を覆っている永久磁石又は電磁石の組立体を備えているプラズマ拡散体パネルを形成する。各拡散体パネルはさらに、処理領域にプラズマが進入することを可能にするための前記開口部を提示し、前記開口部に隣接して、永久磁石又は電磁石の前記組立体が設けられている。
【0032】
本発明による装置の興味深い一実施例によれば、少なくとも1つの電子ソースが、処理領域内のプラズマの密度を制御するために、処理領域に設けられている。
【0033】
本発明の特定の一実施例によれば、前記少なくとも1つの電子ソースと協働して前記処理方向に対して横方向に沿ってプラズマ密度を制御する少なくとも1つのプラズマ電流測定プローブが、処理領域に設けられている。
【0034】
本発明のさらなる一実施例によれば、前記閉込め筐体は、前記基板のための、入口開口によって画定された入口と出口開口によって画定された出口とを有し、前記開口の各々は、処理領域の反対側部上で前記処理方向に沿って延在する対応する管状通路へと開口しており、前記管状通路は、浮遊電位に維持されるように電気的に隔離されている。
【0035】
本発明はまた、基板をプラズマ処理するための方法であって、基板が、開口部を提示する拡散体パネルを形成する少なくとも1つの壁によって処理方向に対して横方向に範囲を定められている処理領域を通して、前記処理方向に沿って移動する方法に関する。前記プラズマは、前記開口部を通して処理領域の中に導入され、プラズマは、前記開口部に接続しているプラズマ・ソースを用いて発生する。本方法は、前記開口部を通って処理領域に進入する前記プラズマが処理領域内で前記壁に沿って分布されるように、この壁に沿って、前記開口部の周りに且つ前記開口部に隣接して延在する多極磁気カスプ場が、発生することを特徴とする。
【0036】
本発明のさらなる詳細及び利点は、本発明による装置及び方法のいくつかの特定の実施例の以下の説明において与えられるものである。この説明は、一実例としてのみ与えられ、特許請求される保護の範囲を制限しない。以下で使用される参照番号は、添付の図面に属する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】金属帯の2つの反対面の処理のための閉込め式プラズマ処理モジュールを有する、本発明による装置の好ましい実施例の概略部分透視斜視図である。
図2】わかりやすさの向上のために真空チャンバを表していない、図1の金属帯の2つの面の処理のための閉込め式プラズマ処理モジュールの好ましい実施例の概略斜視図である。
図3】異なる角度からの図2の組立体の斜視図である。
図4】本発明の別の実施例による、動いている金属帯の片面の処理に適合されている閉込め式プラズマ処理モジュールを離れる基板、特に製品の概略斜視図である。
図5】動いている帯の処理に適合されている閉込め式プラズマ処理モジュールの組立部品の内部構造の概略斜視図である。
図6】閉込め筐体の内壁に向かって方向付けられている逆の極性16N及び16Sの交互の列から作製された多極磁気カスプを概略的に示す、図5の閉込め式プラズマ処理モジュールの組立部品の内部構造の概略部分透視斜視図である。
図7】真空チャンバと共にある図2及び図3の閉込め式プラズマ処理モジュールの概略断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
異なる図において、同じ参照数字は同一又は類似の要素を指す。
【0039】
本発明は、一般に、動いている処理されるべき製品の横方向にわたって均一なプラズマ密度特性を発生させるための方法及び装置に関わる。
【0040】
本発明による装置の興味深い一実施例が図1に示されている。この装置は、金属帯などの連続する基板の2つの反対面の処理のための閉込め式プラズマ処理モジュール2を包含する真空チャンバ1を有し、この連続する基板は、処理モジュール2を通って移動している。図面のわかりやすさのために、図1には金属帯が表されていない。閉込め式プラズマ処理モジュール2は、入口開口部3及び出口開口部4を提示しており、処理方向又は輸送方向5、すなわち入口開口部3から出口開口部4に沿った処理モジュール2を通した金属帯の通路が可能になる。
【0041】
閉込め式プラズマ処理モジュール2の内側は、モジュール2の壁によって範囲を定められている処理領域を画定する。したがって、金属帯などの製品又は基板をプラズマ処理する場合、製品は、入口開口部3を通って処理領域に進入し、処理領域を横断した後、処理方向又は輸送方向5に沿って移動しながら出口開口部4を通ってこの領域を離れる。処理領域は、この明細書を通して、処理区域、又はプラズマ閉込め筐体、閉込め区域、若しくは閉込め領域とも呼ばれる。
【0042】
真空チャンバ1の逆側には、プラズマ処理モジュール2のそれぞれの入口開口部3及び出口開口部4の正面に、入口開口3’及び出口開口4’がある。真空チャンバ1は、入口開口3’及び出口開口4’において、接続ベローズ7を介してそれぞれのローラ装置6に接続されている。したがって、ローラ装置6は、真空チャンバ1の上流側及び下流側に設けられている。両方のローラ装置6は、金属帯のためのローラ11を装備しており、ローラ11は、帯を確実に電気接地し、帯を支持する。
【0043】
図1に表されている装置のプラズマ処理モジュール2は、図2図3、及び図7で、連続する金属帯21と共に示されている。モジュール2は、2つの閉込め式プラズマ処理モジュール組立部品2a及び2bを有する。図5及び図6は、そのような組立部品2a又は2bを表している。
【0044】
各組立部品2a及び2bは、対応するプラズマ・ソース8を提示している。これらのプラズマ・ソース8は、対応するカバー・フランジ9に各々固定されている。組立部品2a及び2bのこれらのカバー・フランジ9は、真空チャンバ1の逆側の壁を構成する(図1参照)。
【0045】
閉込め式プラズマ処理モジュール2の内側は、ポンピング・ポート10を介して、真空チャンバ1の内部と連通している。こうして、これらのポート10を通して、閉込め式プラズマ処理モジュール2の内側区域の真空ポンピングが達成される。図面に表されている本発明の実施例では、ポンピング・ポートは、各入口開口部3及び出口開口部4のすぐ上方並びにすぐ下方に設けられている。図3は、入口開口部3の上方のポンピング・ポート10が、出口開口部4の上方のポンピング・ポート10に対面しているのが見えるように、異なる角度でプラズマ処理モジュール2を示している。
【0046】
図7は、閉込め式プラズマ処理モジュール2の輸送方向5に沿った垂直断面図である。この図面は、熱フィラメント17と、側方のイオン電流プローブ20aと、中心のイオン電流プローブ20bとが処理領域内に存在することを示している。これらのプローブ20a及び20bは、熱電子エミッタを構成する熱フィラメント17において、電子電流及び電圧のフィードバック制御を可能にする。
【0047】
図5及び図6には、動いていている帯のプラズマ処理に適合されている閉込め式プラズマ処理モジュール2の組立部品2a又は2bの内側の構造が表されている。図2図3、及び図7の閉込め式プラズマ処理モジュール2は、2つのそのような組立部品2a及び2bを有し、組立部品2a及び2bは、入口開口部3及び出口開口部4が2つの組立部品2a及び2bの間に形成されるように、互いに対して対称に位置付けられている。
【0048】
真空ポンピング・ポート10の各々は、内部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10a及び外部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10bによって覆われた開口によって形成されている。内部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10a及び外部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10bは、互いに平行に延在することが好ましく、それによって、内部のメッシュ又はスクリーン10aは、当該組立部品2a又は2bの内部の側において延在し、外部のメッシュ又はスクリーン10bは、組立部品2a又は2bの外側に向けられている。内部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10aと外部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10bとの間の距離は、5mmよりも大きいことが好ましい。ポンピング・ポート10は、プラズマ閉込め筐体15の入口開口部3及び出口開口部4の近傍に又は隣接して位置していることが好ましいが、必須ではない。
【0049】
組立部品2a及び2bは、基板又は製品21に対して特に正に極性化されている金属の内壁13を有し、そのようにして、壁13が製品21に対してアノードを形成する。壁13は、ポート10の内部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10aに電気的に接続されているのに対して、外部の金属メッシュ又はプラズマ・スクリーン10bは、浮遊電位に残されており、又は概して接地されている真空チャンバ1の電位に接続されている。
【0050】
熱フィラメント熱電子エミッタ17は、内壁13の各々の正面に、それらの壁13と平行に延在する。各エミッタ17は、2つの電気フィードスルー18によって支持されており、2つの電気フィードスルー18は、壁13を通って延在し、プラズマ処理モジュール2の外側に固定されたそれぞれのコネクタ19に接続されている。図面に表されている本発明の実施例では、エミッタ17は、輸送方向5に平行であり、壁13の近傍にある処理領域の側方側で延在する。しかしながら、熱フィラメントエミッタ17が輸送方向5に平行に延在する必要がないことが、当業者には明らかである。
【0051】
熱フィラメント熱電子エミッタ17が存在することにより、処理方向5に対して実質的に横向きである方向において、プラズマ密度特性を調整することが可能になる。このプラズマ密度特性の調整は、プラズマ処理区域内に多極磁気カスプ(MMC)の近位において、電子を、プローブ20a及び20bによるプラズマ電流測定値に対応するフィードバック信号に従って制御された電流及び制御された電圧で注入することによって実現される。そのようなプローブ20a及び20bは、プラズマ処理区域内でいくつかの特定の箇所に固定されており、好ましくはイオン電流プローブによって形成されている。
【0052】
多極磁気カスプ(MMC)の近位で電子エミッタ17をプローブ20a及び20bと組み合わせることのいくつかの利点は、以下である。
i)プラズマ・ソースを伴うMMCパネルのみを使用する場合よりも均一なプラズマ密度分布を実現することができる。
ii)これらの独立した電子ソース17によって、処理方向に対して横方向に沿った実際のプラズマ密度特性に対応するフィードバック信号に応答して、輸送方向に対して横方向のイオン化を制御できる可能性がある。このようにして、製品の転置、又は処理領域を通って動いている製品の幅の変化によるプラズマ密度の変動をリアルタイムで補償することが可能になる。
【0053】
可能性のあるプロセス残留物を濃縮する内壁13は、絶縁シート14によって機器の残りの部分から絶縁されている。これらのシート14は、壁13の外側に沿って延在する。
【0054】
閉込め式プラズマ処理モジュール2の内側に且つ壁13に隣接して磁場を作り出すために、壁13は、当該壁13に向かって向けられている交互の極性を伴う磁石によって発生した多極磁気カスプによって覆われている。前記絶縁シート14は、壁13と対応する磁石との間に設けられていることが好ましい。壁13の逆側の磁石の側部は、強磁性ヨーク又は磁気誘導遮蔽の板によって支持されている。壁13は、例えば、銅又はアルミニウムなどの非磁気材料で作製されており、好ましくは水冷式である。
【0055】
図6は、プラズマ処理モジュール2の組立部品2a又は2bの内部構造を示しており、多極磁気カスプ配列16は、内壁13に向かって方向付けられている逆の極性の磁極16N及び16Sを伴う磁石の交互の列を有する。
【0056】
プロセス・ガスは、この効果のために設けられているガス・ノズル12を介して、プラズマ・ソース8を通じて閉込め式プラズマ処理モジュール2の中に導入される。
【0057】
図4は、輸送方向5に従って処理領域を通って移動している金属帯21によって形成されている基板又は製品の片面の処理に適合された、本発明による閉込め式プラズマ処理モジュール2の一実施例を表している。したがって、モジュール2は、第2の組立部品2bの代わりに閉止パネル22に取り付けられた単一の組立部品2aのみを有する。こうして、帯21のための処理領域は、このパネル22及び単一の組立部品2aの壁13によって範囲を定められている。多極磁気カスプ配列がないパネル22の存在は、パネル22と帯21との間のプラズマの形成を防止する。
【0058】
こうして本発明は、概して、少なくともプラズマ拡散体パネルと組み合わせられた1つ以上のプラズマ・ソースを有するプラズマ処理モジュール2に関わる。そのようなプラズマ拡散体パネルは、処理領域に対面し且つそうしてモジュール2の前記内壁13に対応する温度制御された金属遮蔽を示している。拡散体パネル、及びそうして壁13は、処理されるべき製品の前記輸送方向5に沿って延在する。パネルは、この輸送方向5に平行であることが好ましいが、これは要求ではない。パネルは、処理領域を通って移動する製品21の経路を横切ってはならないことが明らかである。したがって、パネル又は対応する壁13は、輸送方向5に対して横方向に沿って処理領域の範囲を定める。
【0059】
プラズマ拡散体パネルは、処理領域に対面しているパネルの前記金属遮蔽の表面が多極磁気カスプ(MMC)で覆われるように、磁気誘導場を発生させる要素のネットワークによって覆われている。プラズマ処理区域に対面している金属遮蔽、すなわち壁13は、処理区域の逆側において、磁気誘導場を発生させる前記要素のネットワークから電気的に絶縁されている。この絶縁は例えば、前記絶縁シート14によって実現される。
【0060】
プラズマ・ソース8は、当該ソース8によって発生したプラズマが通って処理領域に進入する開口23に接続する。本発明によれば、前記拡散体パネル、特に前記多極磁気カスプは、プラズマ・ソース8の開口23に隣接して延在する。多極磁気カスプは、この開口23が当該拡散体パネルに開口部を形成するように、この開口23の周りを延在することが好ましい。
【0061】
本発明の装置の好ましい実施例によれば、前記要素のネットワークは、永久磁石の組立体を有する。したがって、多極磁気カスプは、この永久磁石の組立体によって発生する。
【0062】
処理区域は、プラズマ処理区域が管状になるように、前記壁13によって製品21の運搬経路の周りで閉止されていることが好ましい。したがって、図7に表されている装置の実施例は、輸送方向5に実質的に平行に延在している前記壁13によって、輸送方向5に対して横方向に範囲を定められた管状の処理区域を提示している。
【0063】
図7に表されている実施例では、製品帯21の表面の正面に延在している壁13は、当該プラズマ・ソース8によって発生したプラズマが通って処理領域に進入する開口23を提示している。
【0064】
さらに、図7のこの実施例では、製品帯の側縁部に沿って輸送方向5に平行に延在する壁13はまた、前記磁気多極カスプ(MMC)で覆われており、そうして拡散体パネルを構成するが、プラズマ・ソースと接続するための開口はない。
【0065】
そうしてこれらの壁13は、上記で説明したように、管状の処理区域を包囲しており、実質的に壁13の全表面にわたって前記磁気多極カスプ(MMC)を備えている。
【0066】
処理領域、すなわちプラズマ閉込め筐体15の入口開口部3及び出口開口部4において、壁13の先端は、製品21の輸送方向5に対して横に延在している横壁に接続している。したがって、閉込め式プラズマ筐体15又はプラズマ拡散体は、前記入口開口部3及び前記出口開口部4において、真空チャンバに向かう開口のみを有するプラズマ処理モジュール2の内部に形成されており、この開口の縁部は、移動する製品21の表面から近距離において延在する。
【0067】
図4に表されているように、装置が製品21の片面のみを処理するように適合されている場合、製品21の表面の近傍にあり閉止パネル22を形成する壁は、閉止パネル22と、このパネル22に向けられており製品21の処理される側部の逆側である製品21の側部との間でプラズマ密度を防止又は著しく低減するように、MMCを備えていない。
【0068】
本発明による装置の好ましい一実施例が、図1図2図3、及び図7に表されている。この実施例では、装置は、上記で既に説明したように、2つの組立部品2a及び2bの並置によって得られる。当然ながら、3つ以上の組立部品が互いに接続されている本発明のさらに別の実施例による装置を実現することも可能である。
【0069】
入口開口部3及び出口開口部4は、処理区域から真空チャンバ容積までのプラズマ崩壊を増進する入口及び出口管状マニホールド、特に管状通路3a及び4aに接続する。これらの管状通路3a及び4aの内壁は、輸送方向5に沿って処理区域を移動している製品21から近距離において延在している。したがって、処理区域の外側の真空チャンバの容積内での寄生プラズマの形成を回避するために、処理区域と真空チャンバの容積との間のプラズマによるいずれの導電も防止される。管状通路3a及び4は、真空チャンバ1の中及びプラズマ閉込め筐体15の外側に延在することが好ましい。
【0070】
前記管状通路3a及び4a又はマニホールドは、いずれの電極又は接地からも電気的に隔離されるように、電気的な絶縁材料、又は金属と電気的な絶縁要素との組合せで作製されていることが好ましい。したがって、これらの管状通路3a及び4aは浮遊電位にある。
【0071】
本発明の興味深い一実施例によれば、前記管状通路3a及び4aは、プラズマの再結合を増進し且つ処理区域と真空チャンバ容積との間の開放区域を減少させるために、通路3a及び4a、特にそれらの内壁の区域を増加させるための閉止手段とも呼ばれる追加要素を提示する。概して、閉止手段とも呼ばれるそのような追加要素は、管状通路間の、すなわちそれらの内壁の輸送方向5に対して横向きの距離を減少させるために設けられ、製品がその通路を通って移動する。これらの要素は、例えば、少なくとも部分的に通路3a及び4aを充填しており、場合によっては、動いている製品21と接触することができる。そのような要素は例えば、ブラシ、スライダー、ロール、移動式シャッター等を有する。
【0072】
本発明の有利な一実施例によれば、前記プラズマ拡散体パネルは、連続的又は不連続的に、基板に対して特に正に極性化されている。そうして、前記壁13を形成するプラズマ拡散体パネルは、例えば基板に対して平均して正に極性化されている。
【0073】
上記で既に示したように、興味深い形で、壁13を形成するプラズマ拡散体パネルは、ポンピング・ポート10の内部のメッシュ又はプラズマ・スクリーン10aに電気的に接続されている。
【0074】
本発明による装置の興味深い代替の一実施例によれば、1つ又は複数のプラズマ・ソース8の前記開口23は、いわゆるイオン・オプティックの大型のビーム・イオン・ソースを形成する1組の平行なグリッドによって覆われている。このようにして、イオン・ソースが得られる。
【0075】
興味深い形で、そのようなイオン・ソースは、ソース・イオン・オプティックと動いている基板21との間に流れるイオン・ビームに向かって向けられている外部の電子ソースと組み合わされている。
【0076】
本発明による装置の1つ以上のプラズマ・ソース8は、概して、誘導的に結合されていることが好ましい。
【0077】
さらにプラズマ・ソース8は、ファラデー遮蔽によって保護されていてもよい。そのようなファラデー遮蔽は、プロセス残留物の凝縮によるファラデー遮蔽の汚染を最小化するために、プラズマ・ソースの開口23、すなわち動いている製品21の表面に直接対面していないことが好ましい。
【0078】
概して、本発明による装置は、5×10-3mbar未満のガス圧力で動作している。そうして、真空チャンバ1内、その結果としてプラズマ閉込め筐体15内のガス圧力は、5×10-3mbar未満の圧力に維持されることが好ましい。
【0079】
そうして、本発明によれば、概して、プラズマを発生させるための1つ又は複数のプラズマ・ソース8は、磁気多極プラズマ閉込めシステムと組み合わせられる。この閉込めシステムは、製品21の輸送方向5に実質的に平行に延在している壁13に沿って設けられている多極磁気カスプ(MMC)を有し、閉止パネル22は、そのようなMMCを提示しない方向と実質的に垂直に延在する。
【0080】
そのような構成により、輸送方向5に対して横方向に沿ったプラズマの均一性を改善することができる。輸送方向5に沿って延在する壁13を形成するMMCを備えているパネルによって、プラズマを輸送方向5に沿って延在させることが確実になり、それによって、この輸送方向5に対して横方向のプラズマ密度の均一性を改善する。そうして、輸送方向5に沿ったMMCで覆われた区域の広がりにより、この方向に沿ったイオン化が増加し、横方向のプラズマ拡散が低減し、そのため、この横方向のプラズマ密度の均一性が改善される。
【0081】
この構成の別の顕著な利点は、プラズマ・ソース8と連通している開口23の長さに対して、処理区域の長さを広げることができる点である。したがって、動いている製品の正面のプラズマ・ソース8の開口23によって画定される長さそのものよりも長いプロセス区域において、実質的にプラズマ・ソース8で同じ動作パラメータを維持しながら、所与の供与量(例えば、エネルギー密度又はコーティング厚さ)を製品21に適用することができる。
【0082】
その利点は、広がった区域に分布したプラズマが、アークの可能性を低減するように平均プラズマ密度を低減するという事実に由来する。さらにこのことは、例えばスパッタ・エッチング・プロセス中に基板表面からスパッタされた材料、又はPECVDプロセス中の汚染層の堆積などのプロセスによって発生する可能性のある汚染を元に戻す機器の表面、特に壁を増加させる。この処理区域の長さの増加は、1つ又は複数のソース8における所与の条件について、壁すなわちMMCパネル上の所与の厚さの汚染物を取得するより長い動作時間を可能にし、1つ又は複数のプラズマ・ソース8は動いている製品に対面する。例えば、動いている低合金鋼製品のプラズマ・エッチングによる鉄によって汚染層が形成される場合、その汚染層は、その厚さと共にますますMMCにおける磁気誘導場をそらせ、MMCパネルの効率を減少させる。概して所与の汚染層を許容可能である最大厚さに紐づいている装置の動作時間を増加させるためには、その汚染層を機器の表面上に可能な限り広く分布させることへの著しい重要性がある。動作時間は、壁から汚染層を除去するための中断なしで、装置が動作することができる最大時間である。
【0083】
製品の経路を横切る閉止パネル22上にMMC組立体がいずれもないことは、以下の2つの捕捉の顕著な利点を授ける。
i)場合によっては入口開口部3及び出口開口部4に電気的な絶縁マニホールドすなわち管状通路3a及び4aを追加することによって、又は簡易的な横向きの閉止パネルを設けることによって、真空チャンバ1の容積に向かうプラズマ密度を完全に崩壊させること。
ii)真空チャンバ1の容積内でプラズマが広がることを防止するメッシュ10a及び10bを伴うポンピング・ポート10を提供しながら、真空収納チャンバ1への高速の真空ポンピングを可能にすること。アノードが処理領域に存在する一方で、基板21が導電しており、真空チャンバ1の内壁と同じ電位、特に接地電位であるときに、真空チャンバ1の容積内でのいずれの寄生プラズマも回避することは、特別に重要である。
【実施例
【0084】
本発明の異なる実施例の実例(非限定的):鋼帯のプラズマ処理で使用するための本発明の動作条件及び具体的な構成
「実施例1」
帯の両面の1ステップ処理
鋼帯を物理気相成長法(PVD:physical vapor deposition)又はプラズマ励起化学気相成長法(PECVD)によってコーティングする前に、コーティングの接着を促進するために、鋼帯表面は、例えば、水蒸気、炭素質の汚染物質などのいずれの汚染物吸収層からの汚染も除かれなければならないが、大抵の場合には、自然表面酸化物層が除去されなれければならない。このことは、図1に示すように、真空チャンバ1内に設置された閉込め式プラズマ処理モジュール2内で、典型的には10-3mbarの圧力に維持されるアルゴンのプラズマを発生させることによって達成される。アルゴン圧力は、各プラズマ・ソース8におけるガス・ノズル12を介したモジュール2内のアルゴンの注入口と、図1には示していない真空ポンプによるアルゴンの排出口とを釣り合わせることによって維持される。ガスは、例えば図2に示すように、ポンピング・ポート10を通って、閉込め式プラズマ処理モジュールから本質的にポンプ排出される。ポンピング・ポートは、ポンピング速度を最大化し、且つプラズマ閉込め筐体15の外側に向かうプラズマ拡散を完全に防止するように設計されている。そのことを達成するために、当業者には周知であるように、プラズマ/メッシュ界面で形成するプラズマ・シース厚さよりも、隣接するワイヤとの間の典型的な間隔がより低い微細メッシュ10aでスクリーンされている大型のポンピング窓10が使用されなければならない。イオンの損失を制限することを目標とするその設計のさらなる改善は、浮遊電位にある第1のメッシュ10aから長距離に第2のメッシュ10bを置くことである。これらの大型のポンピング・ポート10は、帯の表面からガス放出する大量の水を、閉込め式プラズマ筐体15からポンプ排出する必要があるときに必要である。図1に示す好ましい実施例では、閉込め式プラズマ処理モジュール2の2つの組立部品2a及び2bが、図2に示すようにフランジ9を介して真空チャンバ1に接続されている。それにより機器は、真空チャンバの壁の電位に、すなわちこの場合には接地された状態に外部から維持される。帯21は、入口マニホールド3a及び出口マニホールド4aを介して、閉込め式プラズマ処理モジュール2を横切る。誘電材料で製造されたそれらのマニホールド又は管状通路の役割は、それらのマニホールドの内側でのプラズマの完全な再結合を達成することである。上記で述べたように、閉込め式プラズマ処理区域15の入口開口3及び出口開口4を横切るMMCは全くなく、当然ながらマニホールド3a及び4aの表面には、それらの壁において電子を捕捉しプラズマ再結合を低減する可能性のある磁場は全く存在しない。これらのマニホールド3a及び4a、並びにポンピング・ポート10内の2つの対面するメッシュ10a及び10bは、プラズマと真空チャンバ1の壁との間に無限の電気抵抗を作り出し、すなわち真空チャンバ1内のプラズマ閉込め筐体15の外側で放出される電子のうち、閉込め式プラズマ処理モジュール2の内側のプラズマに電気誘導によって戻ることができるものは全くない。そのため、閉込め式プラズマ処理区域15の外側でのガス分解のリスクはいずれも防止される。閉込め式プラズマ処理モジュール2の側壁13は、交互の極性の磁石のトラック又は閉ループによって形成されている多極磁気組立体MMC16によって覆われている(図1及び図6参照)。これらの磁石の極性化の方向は、それらが支持されている平面と垂直な方向に平行である。磁石は、機器の外部表面において磁場を遮蔽する接地電位にある鉄ヨーク又は板によって支えられている。鉄ヨークの反対先端では、磁石は、金属内壁13上に固定された電気的な絶縁材料14によって覆われている。これらの壁13は、閉込め式プラズマ処理モジュール2の内側の表面において磁場の発展が可能であるように、水冷式の、銅又はアルミニウムなどの非磁性である。これらのパネル又は壁13は、図示していないコネクタを介して電気発生器のアノードに接続されており、接地されていれるその発生器の負極は、ローラ装置6内の接触しているローラ11を介して帯21に接続されている。側壁13において、2つの組立部品2a及び2bの場合には帯21の両側において、好ましい実施例では、熱フィラメント17によって形成されている4つの電子エミッタがあり、側方MMCパネルの近傍での相補的なプラズマ・イオン化、各組立部品に1つある2つのプラズマ・ソースの独立したイオン化を確実にし、エネルギーの大部分を、ファラデー遮蔽を通して誘導的にプラズマ電子に結合することによって、プラズマに結合する。当業者には、ソース・プロセス・パラメータの取り扱い方が既知である。アノードの存在により、プラズマ電位は、アノードの電位に近い値まで上昇して、プラズマ内で発生したイオンがプラズマ/帯界面に形成されたシースにおいて帯表面に向かって加速することが可能になる。このイオン衝撃は、帯表面からの材料、本質的には鉄のスパッタを誘導し、それは対面する金属内壁13上で濃縮する。MMCによって金属内壁13の表面に発生する磁場は、鉄汚染層によって次第にそらされることに留意されたい。そのことは、ソース8の下で帯が進行する距離と比較して、プラズマ閉込め筐体15の距離を広げることの重要性を説明する。実際、その距離が増加することにより、当業者には周知の理由で、プラズマがより大きな容積に分布することが可能になり、それによりプラズマ密度、並びに当然の結果として、帯のエッチング中での金属内壁13の局所的な汚染及びアーク確率が減少する。図5は、着目されるプラズマ密度がプラズマ・ソース8の中央からのポンピング・ポート10並びにマニホールド3a及び4aに向かって急速に崩壊して、機器のそれらの部品上でのプラズマ再結合による熱負荷を最小化し、またマニホールド3a及び4aの長さを低減することを明確に示している。その理由のために、2つの側方MMCパネルによって画定されている閉込め式プラズマ処理領域の出口及び入口において、またその後には、磁気閉込めが全くない。組立部品2a又は2bの場合のモジュールの内部機器の詳細を示している図5についてさらに検討すると、ソース8がプラズマの大部分を発生させる。プラズマ・ソース内及びプラズマ・ソースの出口でのプラズマ密度特性は、釣鐘型であり、すなわちソースの中央においてプラズマ密度の最大値を提示する。プラズマ・ソースの外側では、プラズマは側方に膨張しMMCパネルに到達する。ここで、帯の幅にわたるより均一なプラズマ密度の信頼性のある原理的なメカニズムのため、プラズマからの一次電子は、パネルの近傍に位置付けられたMMC磁場線によって捕捉され、パネルは、電子の軌跡、それによりパネルの近くのイオン化確率を伸ばして、MMC磁場捕捉部内のその局所的なイオン化区域とパネルとの間のプラズマ密度変動を急勾配にし、そうして、帯21の軸に向かった反対方向においてプラズマ密度変動を平滑化する。熱フィラメント17は、アノードの電位を基準にする負の制御されている電位で、制御されている電子電流の放出を可能にする。これらの運動エネルギーが高い電子、又はいわゆる一次電子は、それらが直接磁場内に放出され、それらの運動エネルギーに応じて帯21の縁部での顕著なガスの相補的なイオン化を可能にするので、MMCの磁場線によって即座に捕捉される。一定の電子電流では、ガスのイオン化率は、電子の運動エネルギーによって容易に制御される。そのエネルギーがアルゴンについての第1イオン化電位の値未満である場合、相補的なイオン化は全くない。アルゴンのイオン化確率は、電子の運動エネルギーが約50eVの場合に最大である。上記で説明した機器の断面図である図7を参照すると、1つの側方イオン電流プローブ20a及び1つの中心イオン電流プローブ20bは、組立部品2a内で帯21の近くに固定されており、プローブ区域は、プラズマ・ソース8に向かって対面している。これらのプローブは、局所的なイオン飽和電流を測定するために、プラズマ電位に対してわずかに負に極性化されている。プローブ20a及びプローブ20bによって測定された電流の差は、帯の隣接する表面上での値と同じ差を示す。プローブ20a及び20bにおけるイオン電流のこれらの値を平衡化するために、フィードバック・メカニズムが、熱フィラメント17に印加される電圧を調整する。概して、熱フィラメント17の極性化がなければ、プローブ20aはプローブ20bよりも低い電流を測定する。次いで、測定されたイオン電流差を打ち消すために、熱フィラメント17に印加される電圧を次第に増加させることによって、帯21の側部でのアルゴンのイオン化を増大させることが必要である。それにより、これらの電子エミッタは、プローブ20a及び20bからのフィードバックのおかげで、帯の側方への転置又は帯の幅の変動などの様々な予測不能な外乱に従って、リアルタイムで、横方向のすなわち帯の幅に沿ったプラズマ密度特性を制御することが可能になる。(タングステンでの)熱フィラメントに必要な衝撃であるイオンの50eVの最大運動エネルギーにおいては、フィラメントのスパッタ率は無視できることに留意されたい。接地されている帯に対して金属内壁13上に数百ボルトの正電位を印加することが、帯表面のスパッタに好都合となる。スパッタが弾道的なプロセスであるので、着目される幾何形状についてのアルゴンの10-3mbarの圧力下では、スパッタされた鉄は、大部分が帯に対面する表面上に濃縮し、すなわち、誘導プラズマ・ソース8のファラデー遮蔽のアンテナ上により少なく、側方MMCパネル上により少なく、帯の面に通常は平行であるそれらの発生器に表面が方向付けられているポンピング・ポート10の内部メッシュ上により少なく濃縮する。機器の重大な要素上への汚染を最小化するその幾何学的な実施例は、それ自体のメンテナンスまでの使用時間を増加させる。
【0085】
上記で説明した通りの機器は、特にエッチングに適合されているが、圧力が約5×10-3mbarよりも低い場合にはPECVDにも適合されている。その圧力の限界は、実際には、MMCパネルでの磁場による電子の閉込めによって決定される。プラズマに結合されている一定の出力では、圧力が減少すると、電子の閉込めが改善され、プロセスの率が減少する。約10-3mbarの圧力は、捕捉領域における十分なイオン化を達成するため、それにより均一な横向きのプラズマ処理を発生させるため、またそのプロセスについての最大率を確実にするために、MMCパネルでの磁場で電子を十分に捕捉するのに最適な圧力であると示されている。基板表面上に薄いコーティングを生成することが目標であるPECVDプロセスでは、アルゴンの代わりに反応性ガスの混合物が、ガス・ノズル12を通して閉込めプラズマ処理モジュールに導入される。本発明による閉込め式プラズマ処理モジュールを用いて生成することができる典型的なコーティングの実例は、以下である。
-水素化アモルファスシリコン a-Si:H
-微結晶シリコン μc-Si
-窒化ケイ素 Si
-酸化ケイ素 SiO
-酸化亜鉛 (TCO)
-酸化チタン TiO
-酸化アルミニウム Al
例えば、堆積前の低合金鋼帯エッチングの場合にはアルゴンと水素の混合物でのエッチングなど、反応性エッチングを使用することができる。従来技術文書EP0780485は、所与の割合でアルゴンを水素と混合することによって、一定の出力において低合金鋼のエッチング率を増加させることができると示している。
【0086】
「実施例2」
動いている帯の片面に限定された処理
帯の片面のみを処理するためには、1つのプラズマ・ソースとMMCパネルとを装備した1つの組立部品のみが必要であり、図4に示すように、プラズマ・ソースは、処理されるべき帯の面に対面している。帯の2つの面の1ステップでの処理について先行の節で既に説明した2つの接合する組立部品の場合の動作原理に関わるものは全て、帯の片面に対面する1つの組立部品にも依然として有効である。
【0087】
真空チャンバの容積内のいずれの寄生プラズマも防止するために、閉込め式プラズマ処理区域の外側では、組立部品2bは閉止パネル22によって閉止されている。この閉止パネル22は、金属内壁13の電位に電気的に接続されている内部の金属板の組立体によって作製されており、且つ同様に金属である外部の遮蔽の電位からは電気的に絶縁されている。閉止パネル22はまた、入口マニホールド3aの半分(図示せず)と、組立部品2b上に固定されている対応する半マニホールドと接合する出口マニホールド4aの半分とを備えている。閉止パネル22にいずれのプラズマ・ソース及び磁気閉込めがないこと、及び閉止パネル22の内部表面と、処理側とは反対の帯21の面との間の距離が短いことにもより、帯と閉止パネル22との間にはプラズマが全く形成せず、それにより、帯21のこの面はプラズマ処理されない。組立部品2bは、製品21が壁13に対して負に(パルス状又はDC)極性化されている場合に、概して閉止パネル22によって閉止されなければならない。
【0088】
「実施例3」
動いているガラス・パネルの片面の処理
金属内壁13の極性化がなければ、閉込め式プラズマ処理区域の外側で寄生プラズマが形成するリスクは全くない。それは、典型的には、動いているガラス板などの非導電性基板上へのPECVDの場合である。その場合、処理は、図5及び6に示すような、処理されるべき動いている表面の上方に短距離(<10mm)で空中停止している簡易的な組立部品によって達成される。製品は、閉込め式プラズマ区域の入口から出口まで、MMCパネルに実質的に平行な方向に動いている。
【0089】
「実施例4」
ロールによって支持されているホイル又はウェブの処理
ロール上に支持されている折り曲げたホイルの上方に短距離で空中停止するように、組立部品の形状を、例えばプラズマ閉込め区域の入口から出口まで曲げて定めると、ホイル又はウェブを処理することが可能になる。プラスチック・ウェブの場合、PECVDによるコーティング、酸素プラズマにおける活性化処理等があり得る。
【0090】
「実施例5」
動いている製品の処理のための大型のイオン・ソース
図5及び図6に示すように、当業者には周知である1、2、又は3つのグリッドを伴う古典的な配置を用いた、動いている製品の表面と平行であるいわゆるイオン・オプティックを形成する1組のイオン・グリッドによって組立部品を閉止すると、組立部品が大型イオン・ソースに変換される。イオンは、金属内壁13上に設定された電位によって一定になる所与のエネルギーで、イオン・オプティックによって取り出される。最終的にイオンは、例えば中空カソードなどの電子の外部ソースによって中性化される。
【0091】
用途の実例
「実例1」
物理気相成長法によるコーティング前の鋼帯エッチング
物理気相成長法の前に、コーティングの良好な接着を促進するために、吸収された水蒸気をガス放出し、炭素質の汚染物及び低合金鋼帯の表面に常に存在する酸化層をスパッタ・エッチングすることが必須である。そのことは、図1から図3までに示すような、1ステップで帯の2つの面をエッチングすることを可能にする閉込め式プラズマ・エッチング・モジュールを用いて有利に達成することができる。そのモジュールは、上記の第1節(「帯の両面の1ステップ処理」)で説明したように完全に装備した2つの接合する組立部品からなる。各半モジュールは、長さ3330mm(帯が動く方向)、幅2000mm(帯の幅の方向に対応)、及び深さ150mm(帯の面に垂直な方向)の寸法である1つのプラズマ拡散体からなる。各半モジュールには誘導結合されたプラズマが供給され、インダクタが、ファラデー遮蔽によって鉄汚染から保護されている。動いている帯に対面する、半プラズマ拡散体へのプラズマ・ソース開口は、1800mm長(帯の幅の方向)であり、動いている帯の方向に200mm幅である。鋼帯は、閉込め式プラズマ処理モジュールを取り囲んでいる2つのローラ・ブロック6内で、接地しているローラ11を介して接地されている。モジュールは、入口マニホールド3a及び出口マニホールド4aを装備している。モジュールはまた、閉込め式プラズマ処理区域の内側の高速の真空ポンピングを可能にする大きな寸法(1800×100mm)の4つのポンピング・ポートを装備している。独立して制御されている4つの電子エミッタ、すなわちタングステン熱フィラメント17は、制御された電圧で電子を放出して、帯の幅の変動並びに横向きの転置によるプラズマ密度変動を補償する。各フィラメント電圧は、プラズマ・ソースに対面するフィラメント17の近くのプローブによって測定されたイオン電流を、同様にプラズマ・ソースに対面するが動く方向の中心軸に固定されているプローブによって測定されたイオン電流と比較する独立した回路によって制御される。電流の差が測定されるとき、すなわちフィラメントの近くに固定されているプローブによって測定された電流が、機器中心軸に固定されているプローブによって測定された電流よりも低いときには、電流の等しさが達成されるまで、フィラメントの電圧極性化を増大させ、逆も同様である。帯の幅にわたるイオン電流密度の調整という利点に加えて、この構成の大きな利点としては、この特定の寸法決定をすると、機器により、プラズマ・ソース開口の幅よりもかなり長い処理区域にプラズマを広げることが可能になり、すなわち、プラズマ・ソースの内部区域よりもかなり大きな区域上にスパッタ・エッチングされた鉄を分布させることが可能になる。それにより、システムは、プラズマ拡散体の内部表面13上に濃縮した汚染層を除去するためのメンテナンスまでに、14日間動作することができる。帯をエッチングするためには、閉込め式プラズマ・エッチング・モジュールの3つのユニットが必要になる。システムの典型的な構成は、以下である。
-最大1800mmの帯の幅
-最大5m/sのライン速度
-メンテナンスまでの動作時間:14日間
-鉛直構成のローラ・ブロックによって分離された直列の3つのエッチング・モジュールでの1ステップの2つの面処理
-エッチング・モジュールごとに設置されたRF出力:2×30kW
-エッチング・モジュールごとに設置されたDC出力:180kW
-3つのエッチング・モジュールのための設置される出力合計:720kW
【0092】
「実例2」
プラズマ励起化学気相成長法(PECVD)による鋼帯コーティング
実例1のエッチングに使用されるものと同じ構成の閉込め式プラズマ処理モジュールを用いて、直接エッチングの後、又はPVDによって実現されるコーティングの後のいずれでも、PECVDによって帯をコーティングすることができる。例えば、実例1のエッチングに使用されるものと同じ構成の1つの閉込め式プラズマ処理モジュールを用いて、2.5nmのSiOの不動態化層を帯の両面上に堆積させることができる。熱イオン電流プローブ20a及び20bは、SiOによるそれらの汚染を防止するために使用される。システムの典型的な構成は以下である。
-最大1800mmの帯の幅
-最大5m/sのライン速度
-メンテナンスまでの動作時間:14日間
-鉛直構成の接地しているロールを伴う2つのローラ・ブロックによって取り囲まれた1つの閉込め式プラズマ処理モジュールでの1ステップの2つの面処理
-設置されたRF出力:2×30kW
-バイアスのための設置されたパルス状DC出力:60kW
-プロセス・ガス:HDMSO(ヘキサメチルジシロキサン)及び酸素
-動作圧力:<5×10-3mbar
-設置される出力合計:120kW
【0093】
「実例3」
Alドープ酸化亜鉛薄膜の堆積前のAr/Oイオン・ビームによるガラス基板の前処理
シリコン薄膜太陽電池には、光トラッピング効率を改善するために、テクスチャーTCO(透明導電性酸化物:transparent conducting oxide)表面が必要になる。マグネトロン・スパッタによって、ZnO:Al膜堆積の前にガラス基板をイオン・ビーム処理することにより、成長したままの粗いZnO:Al膜を達成し、スパッタ後のHCIにおけるZnO:Al膜エッチングの必要性を抑えることが可能になる。それにより、そのプロセスは、TCOとシリコン堆積との間の真空の破れを回避する著しい利点をもたらし、適切な相互接続プロセスが利用可能になる。ガラス表面の前処理は、上記の第5節(「動いている製品の処理のための大型のイオン・ソース」)で説明したようなイオン・ソースに配置された閉込め式プラズマ処理モジュールの1つの組立部品を用いて達成される。イオン・ソースは、プラズマ・ソースの開口の反対側にある組立部品モジュールの開口状態の開口を完全に閉止する3つのグリッド・イオン・オプティックを装備している。内部のグリッドはアノード表面と同じ電位にあり、動いているガラス基板に対面する外部のグリッド又は加速グリッドは接地電位にある。組立部品の両側には、2つの側方MMCパネルの接地されている遮蔽の先端において、加速グリッドと動いている基板の表面との間の50mmの自由間隔に横方向に向かって電子を放出する2つの中空カソードが固定されている。これらの電子は、ガラス基板表面に向かって向けられたイオン・ビームの正電荷を中性化する。システムの典型的な構成は以下である。
-ガラス基板:1250×1100mm
-閉込め式プラズマ区域の長さ(製品の輸送の方向):500mm
-閉込め式プラズマ区域の幅(運搬方向に横向きでの対面する側方MMCパネル間の距離):1300mm
-イオン・オプティック開口面積:1300×500mm
-RF設置出力:12kW
-DC設置出力:10kW
-プロセス・ガス:Ar(50%)、O(50%)
-動作圧力;10-3mbar
-イオン・エネルギー範囲:500~1000eV
-最大中性化電流:13A
【0094】
本発明は、当然ながら、本明細書において上記で説明した装置の幾何形状に限定されない。本発明の装置は、考えられる任意の幾何形状を提示してもよい。例えば、プラズマ拡散体パネルは、図5及び図6に表されるようなもの、又は図2及び図3に表されるような2a及び2bなどの2つの組立部品に限定されるべきではない。例えば、処理区域の4つの側部の各々に組立部品を1つとして4つの組立部品を組み立てることが可能である。各組立部品が備えているプラズマ・ソースは、0、1つ、又はそれ以上であり得る。組立部品は、必ずしも大気圧にある一方の側部すなわち真空チャンバ1の横断する1つの壁と、真空チャンバ1の内側に完全に取り付けられ得る真空中の他方の側部とを伴わない。
【0095】
入口開口部3及び出口開口部4、又は管状通路3a及び4aの形状は、製品断面の形状、又は例えば、並列に処理される製品の数に応じて、図に表されているものとは異なることができる。したがって、ワイヤ、コード、及び長い製品のための管状通路を提供することが可能である。また、並列に処理される各製品のための通路を並列に複数提供することも可能である。プラズマ拡散体MMCパネルは、製品の輸送方向に単に実質的に平行でなければならないが、厳密に平行である必要はない。つまり、これらのパネルは、製品の経路を横切らない場合があるが、輸送方向に平行な表面の形状とは異なる形状を有する場合がある。これらのパネルは、例えば、その方向との角度を簡易的に作り、曲げられ、又は「V字型」であることができ、或いはそれらの形状の組合せが存在することができる。プラズマ・ソースの幾何形状等は、異なる可能性がある。
【0096】
本発明は、永久磁石で製造されたMMCに限定されず、MMCは、ワイヤの構造又はいわゆる杭柵構造に流れる電流によって発生する磁場によって造られることもできる。電子ソースは、熱フィラメント(HF:hot filament)熱電子エミッタに限定されず、同様に冷熱電子エミッタ、中空カソード、又はプラズマ・ブリッジによって構成されることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】