(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】顕微鏡研究用試料の超急速凍結固定方法および装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/28 20060101AFI20240423BHJP
G02B 21/34 20060101ALI20240423BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20240423BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240423BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240423BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G02B21/28
G02B21/34
G02B21/06
G01N21/64 E
G01N21/64 B
G01N1/28 F
G01N1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566941
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2022061123
(87)【国際公開番号】W WO2022229231
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501497655
【氏名又は名称】マックス プランク ゲゼルシャフト ツゥアー フェデルゥン デル ヴィッセンシャフテン エー フォー
(71)【出願人】
【識別番号】523409005
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ブエノス アイレス
(71)【出願人】
【識別番号】523407274
【氏名又は名称】ナショナル サイエンティフィック アンド テクニカル リサーチ カウンシル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バスティアンス フィリップ イー.ハー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒュービンガー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グレコ エルナン エドガルド
【テーマコード(参考)】
2G043
2G052
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA08
2G043EA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043KA08
2G043KA09
2G043LA03
2G043MA03
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD42
2G052EB08
2G052EB13
2G052GA32
2G052JA08
2H052AA08
2H052AA09
2H052AC14
2H052AC34
2H052AD03
2H052AD23
2H052AE03
(57)【要約】
本発明は、試料の温度を低下させる方法、特に、時間および空間分解顕微鏡測定のための試料の超急速凍結固定方法、ならびに対象とする特定の時点での顕微鏡上の試料の超急速凍結固定装置に関する。当該方法および装置は、正の摂氏温度での分子運動によって引き起こされる根本的な限界を超えた空間的および分光的分解能で生きた細胞内の生来の分子組織および(生)化学反応を研究するのに特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法であって、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供するステップと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給するステップと、
(c)前記圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で前記圧力タンク(400)から前記キャリア基板(10)の上側(11)に前記液体窒素を供給し、前記液体窒素を前記キャリア基板(10)の前記上側(11)に接触させ、前記試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
(d)さらなる液体に前記キャリア基板(10)の前記上側(11)を通過させることによって、前記キャリア基板(10)の前記下側(12)の前記試料(1)をテンパリングするステップ、
を含む方法。
【請求項3】
前記試料(1)が生物材料の生きた試料、好ましくは生きた細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘリウムの圧力が5MPaから100MPaの間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)において、前記試料(1)の温度を低下させる、好ましくは、前記試料(1)内に氷晶を形成することなく、または前記試料(1)内に直径10nmを超える氷晶を形成することなく、急速に低下させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試料(1)の温度を低下させるための装置(100)であって、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)前記出口弁(22)を前記キャリア基板(10)の前記上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて前記液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)前記キャリア基板(10)の前記上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
前記供給ライン(20)を可能な限り短くするために、前記圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の前記上側(11)に取り付けられた装置(100)。
【請求項7】
前記供給ライン(20)が、内側から断熱される、請求項6に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記試料(1)内に氷晶が形成されないように、または前記試料(1)内に直径10nmを超える氷晶が形成されないように、前記試料(1)の温度を低下させる、請求項6または7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記出口弁(22)が、切替可能な弁、好ましくは素早く開く切替可能な弁、好ましく
は電気または空気圧で切替可能な弁、好ましくは切替可能なピストン弁である、請求項6から8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記圧力タンク(400)の底部は漏斗状であり、前記出口弁(22)は前記底部の中央に位置している、請求項6から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記キャリア基板(10)がダイヤモンド、特にCVDダイヤモンドである、請求項6から10のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記出口開口部(21)と前記キャリア基板(10)の前記上側(11)との間の距離は、0.5mmから1.5mmの範囲である、請求項6から11のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記膨張チャンバ(30)の寸法が、50cm
3から100cm
3の範囲である、請求項6から12のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記圧力タンク(400)が、前記液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)によって囲まれている、かつ/または前記供給ラインが漏斗状、好ましくは前記出口開口部(21)において漏斗状である、請求項6から13のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項15】
蛍光顕微鏡法の方法であって、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供するステップと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給するステップと、
(c)前記圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で前記圧力タンク(400)から前記キャリア基板(10)の上側(11)に前記液体窒素を供給し、前記液体窒素を前記キャリア基板(10)の前記上側(11)に接触させ、前記試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させるステップと、
(d)前記試料(1)を照射するステップと、
(e)前記試料(1)によって生成される蛍光を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
凍結停止試料(1)の誘導放出抑制による光学顕微鏡法を実施する方法であって、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)前記圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で前記圧力タンク(400)から前記キャリア基板(10)の上側(11)に前記液体窒素を供給し、前記液体窒素を前記キャリア基板(10)の前記上側(11)に接触させ、前記試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d1)少なくとも1つの焦点領域に集束される第1のパルスレーザービームによって前記試料(1)を照射して、前記試料(1)中の前記蛍光分子を励起して蛍光を発させることと、
(d2)前記少なくとも1つの焦点領域内に強度ゼロ点を含む第2のトーラス形レーザービームによって前記試料(1)を照射して、前記試料(1)中の前記蛍光分子を脱励起することと、
(e)前記試料(1)によって生成される前記蛍光を検出することと、
(f)任意選択で、前記第1のパルスレーザービームの焦点領域のさまざまな位置および前記第2のトーラス形レーザービームの強度ゼロ点のさまざまな位置で、ステップ(d1)と、ステップ(d2)と、ステップ(e)とを繰り返すことと、
を含む方法。
【請求項17】
凍結停止試料(1)の時間相関単一光子計数法による蛍光寿命イメージング顕微鏡法を実施する方法であって、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)前記圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で前記圧力タンク(400)から前記キャリア基板(10)の上側(11)に前記液体窒素を供給し、前記液体窒素を前記キャリア基板(10)の前記上側(11)に接触させ、前記試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)パルスレーザービームを前記試料に照射することにより、定期的に前記蛍光分子を励起して蛍光光子を放出することと、
(e)前記試料(1)によって生成された前記蛍光光子を、前記レーザーパルス(1)に対する光子の到着時間とともに検出することと、
(f)前記検出された前記蛍光光子および前記光子の到着時間から蛍光寿命を決定することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、試料の温度を低下させる方法、特に、時間および空間分解顕微鏡測定用の試料の超急速凍結固定方法、ならびに顕微鏡上の対象とする特定の時点での試料の超急速凍結固定装置に関する。当該方法および装置は、正の摂氏温度での分子運動によって引き起こされる基本的な限界を超えた空間および分光分解能で生きた細胞内の生来の分子組織および(生)化学反応を研究するのに特に有用である。
[発明の背景]
蛍光顕微鏡法は、分子系の構造と動態を研究するための強力なツールである。
【0002】
蛍光顕微鏡法の最近の発展により、ナノスケールおよびミリ秒の位置特定精度で十分に分離された分子を追跡できるようになっている(Balzarotti et al.2017,Science,355:606-12)。単一分子局在顕微鏡法(SMLM)(Betzig et al.2006,Science,313:1642-46)、座標標的ナノスコピー法(誘導放出抑制(STED)顕微鏡法など)(Hell and Wichmann 1994,Optics Letters,19:780-82;Sahl,Hell,and Jakobs 2017,Nature reviews.Molecular cell biology,18:685-701)または最小光子束(MINFLUX)によるナノスコピー法(Balzarotti et al.2017,Science,355:606-12)などの超解像法により、混雑した環境でも光の回折限界を超える分解能が可能になる。偏光(Runnels and Scarlata 1995,Biophys J,69:1569-83;Varma and Mayor 1998,Nature,394:798-801)や励起状態の寿命(Gadella,Jovin,and Clegg 1993,Biophysical Chemistry,48:221-39;Bastiaens and Squire 1999,Trends in Cell Biology,9:48-52)など、顕微鏡法またはナノスコピー法での光子の読み出しに分光次元を追加することにより、空間的に分解可能な体積要素内の分子反応状態に関する情報の抽出が可能になる。
【0003】
しかし、空間分解能ならびに分光分解能は、量子相互作用のポアソン統計により、収集された光子の数によって基本的に制限される(Gratton et al.2003,Journal of Biomedical Optics,8;Balzarotti
et al.2017,Science,355:606-12)。分子断面、蛍光量子収量、励起状態の寿命によって決定される、基底状態と励起状態の間の蛍光色素分子の可飽和循環により、蛍光光子束に制限が設定される。この結果、達成可能な露光時間が最小限になり、光子の取得中にブラウン運動によるモーションブラーが発生する。モーションブラーは観察される構造のサイズに反比例し、位置特定精度と分解能を基本的に制限する(
図1)。この露光時間の基本的な制限は、座標標的ナノスコピー法におけるレーザースキャンや座標確率的ナノスコピー法における蛍光色素分子の切り替えなどの光学系の技術的制約によってさらに引き延ばされる。分子モーター駆動の輸送や細胞骨格の再構成などの能動的な動きは、モーションブラーをさらに増大させる。照射強度を高めて蛍光色素分子の可飽和束を最大化すると、蛍光色素分子が化学反応性の励起状態にある時間が長くなり、強い漂白が引き起こされる。これにより、検出器に到達する有益な光子の量が制限されて分解能が低下するだけでなく(
図1)、光毒性が増大し、試料内の反応が混乱する。
【0004】
具体的な例としては、生きた細胞などの生体系の蛍光顕微鏡法がある。ここでは、細胞の機能はマイクロメートルスケールで現れ、ナノメートルサイズの分子の非平衡パターン形成動態から現れる(Bastiaens et al.2006,Trends Cel
l Biol,16:125-34;Battle et al.2016,Science,352:604-07;Koseska and Bastiaens 2017,The EMBO Journal,36:568-82;Gnesotto et al.2018,Reports on Progress in Physics,81)。蛍光顕微鏡法およびナノスコピー法は原理的に、細胞内の分子パターンの画像化を可能にし、また根底にある反応動力学を測定する。しかし、分子の集合的挙動を細胞機能に関連付ける究極の目標(Varma and Mayor 1998,Nature,394:798-801;Bastiaens and Squire 1999,Trends in Cell Biology,9:48-52;Wouters,Verveer,and Bastiaens 2001,Trends Cell Biol,11:203-11;Sahl,Hell,and Jakobs 2017,Nature reviews.Molecular cell biology,18:685-701;Balzarotti et al.2017,Science,355:606-12)は、モーションブラーとともに、蛍光プローブの光化学反応性という根本的な問題により、達成できないことが多い。
【0005】
分子の運動を防ぐために、このような試料は通常、化学的に固定される。しかし、架橋または変性による固定は本質的に試料を変化させるため、この方法は生来の非平衡状態、特に細胞の非平衡分子パターンの観察には適していない。固定プロセスも少なくとも数分かかり、不完全である。したがって、定義された状態を固定することはできない(Huebinger et al.2018,Sci Rep,8:17756)。光安定性を高めるための後処理は、アーティファクトの別の原因となる。
【0006】
モーションブラーは、試料が固体になるか非常に高い粘度に達する温度まで冷却することで軽減でき、それにより蛍光色素分子の光化学反応性も軽減される。しかし、相変化や非平衡状態の喪失による試料の変化を避けるために、これを非常に素早く行う必要がある。例えば、生きた細胞は、氷晶による細胞構造の機械的破壊や脂質膜やタンパク質の変性を避けるために、ガラス転移温度-136℃程度以下で極めて迅速に固定化する必要がある。このようにして、試料中の水分子は、この低温では熱力学的平衡に達することが抑制され、液体のような構造に閉じ込められる。したがって、細胞の平衡から外れた高分子パターンでさえ、超急速冷却によって保存できる。
【0007】
しかしながら、試料を冷却するために試料に液体を塗布する場合、制限要因は、初期の温かい表面の濡れ性に限界があることである。ライデンフロスト現象により、液体に比べて熱伝導が大幅に低下した断熱性の蒸気層が表面に形成されるため、表面での冷却速度が制限される。さらに、技術的に可能な流速、したがって冷却能力には制限がある。しかし、ガス状の冷却媒体を使用する場合、その密度が低いため、体積に関連した熱容量が低すぎて、実際の調査に十分な冷却能力を達成できない。
【0008】
顕微鏡上での直接の超急速冷却は、分子運動のない状態での正確な分析と、凍結停止下で大幅に低下した同じ試料の光化学反応性と組み合わせた正の温度での動的測定の組み合わせを可能にするため、特に望まれている。
【0009】
最先端技術で知られている試料を急速に冷却するための方法は、例えば高圧凍結とプロパンジェット凍結である。高圧凍結では、試料の融点を下げ、氷晶の形成が可能な温度範囲を迅速に通過させるために2000バールの圧力が必要である。試料を加圧するにはカプセル化が必要である。プロパンジェット凍結に関しては、試料を試料の上下2つの側面から噴射する必要があるため、その方法および装置は、急速冷却プロセスの前、最中、後の顕微鏡、特に、倒立顕微鏡による試料の観察を可能にするのには適していない。倒立顕微鏡では、試料は顕微鏡の対物レンズの上から供給される。
【0010】
欧州特許EP2877828B1には、試料の温度制御方法および温度制御装置が開示されている。そこでは、キャリア基板の前面に設けられた試料を冷却するために超臨界媒体が使用される。超臨界媒体は、キャリア基板の裏側に下から、つまり地球の重力の方向に逆らって供給される。前述の方法によって試料を冷却することは可能であるが、氷晶によって生体試料を破壊することなく試料を継続的に観察するには温度変化率が小さすぎる。さらに、地球の重力に逆らって冷却媒体を供給しても、倒立顕微鏡による試料の観察はできない。
【0011】
現場での凍結固定法がFuest et al(Journal of Microscopy,2018,272:87-95)によって報告されており、この方法では、断熱体を介して液体窒素と熱接触しているヒーター上に試料が置かれる。凍結保護剤の存在にもかかわらず、達成された冷却速度は氷晶の形成を防ぐには低すぎた(Fuest et
al.2019,Scientific Reports,9:19133)。したがって、この凍結固定法は、カエノラブディティスエレガンスや酵母などの氷晶形成を許容する微生物にのみ適用可能である。
【0012】
哺乳類細胞などの他の試料は、水分含有量が高く、ガラス形成が非常に悪く、熱伝導率が比較的低い(<0.6Wm-1K-1)ため、凍結固定による停止が特に困難である。
【0013】
生きた細胞における氷晶の形成を回避する最近のアプローチには、冷却前に水を凍結保護物質で置き換えることが含まれていた(Fuest et al.2019,Scientific Reports,9:19133)。しかし、この方法は試料を変更することになるため(Huebinger 2018,PLOS ONE,13:e0205520)、生体試料の研究に影響を与える可能性がある。したがって、凍結保護物質の使用を回避する急速冷却方法が強く望まれている。
【0014】
EP3418710A1は、倒立顕微鏡法研究用の試料を調製するための方法および装置に関するものであり、試料は、時間t1で第1の領域に光を照射され、時刻t1後の時刻t2において、試料の第2の領域に光が照射され、時刻t2後の時刻t3で試料が固定される。試料は、凍結(液体窒素など)またはグルタルアルデヒド溶液と光硬化性樹脂を使用した化学固定によって固定できる。WO2013/152239A1は、生体試料をほぼ瞬時にガラス化するための凍結調製システムに関する。システムは、試料が極低温冷却ジェットにさらされることによって超急速凍結される間、試料を凹部内に保持するように構成されたカプセル構造を含む。試料内での氷晶の形成を避けるために、急速冷却中にパルスマイクロ波エネルギーが加えられる。これらの方法では、試料を十分に速く冷却するために断熱気体層の形成を効果的に回避する冷却ジェットを生成する方法は開示されていない。EP3128267A1は、食品を極低温に冷却するための食品凍結トンネル装置を開示している。パルス状の液体冷媒流が加圧タンクから加えられる。パルス状の冷媒流は、2つの弁を交互に開閉することによって生成される。しかし、圧力はポンプによって1.379MPaに制限されるため、冷却速度が制限される。
【0015】
従来の方法の一般的な欠点は、試料を凍結するための特殊な設計に起因している。急な試料の解凍など、他のテンパリングプロセスは、通常、従来の方法では実施できない。しかし、動的システムの調査では、静止画像を撮影し、加熱による固定を終了した後、システム内のプロセスが可能な限り妨げられずに継続できることが重要である。例えば生体試料の場合、重要なのは、解凍中に氷晶が形成されず、試料が過熱されないような方法で加熱を行うことである。
【0016】
本発明の目的は、従来の技術の欠点や限界を回避し、顕微鏡による調査のために急な温
度調整を行い、試料の温度を低下させる改良された方法および装置を提供することである。より正確には、本発明は、空間分解顕微鏡測定用の試料を凍結保護剤を使用せずに超急速凍結固定する方法、および顕微鏡上で試料を超急速凍結固定するための装置を含む。特に、本発明は、従来の技術と比較して、より高い温度調整率で試料の温度変更を可能にすること、温度の上昇または下降を実現すること、温度変更の最終温度を設定することおよび/または試料を監視することを目的とする。急激な温度調整は、任意のタイミングで、特に試料の観察中に行う必要がある。具体的に、本発明は、氷晶の形成や過熱が起こらないように生体試料をガラス化するおよびその加熱を制御するための改良された技術を提供することを目的としており、これにより、試料を変化させることなくガラス化前、ガラス化中およびガラス化後の試料の顕微鏡測定が可能になる(可逆的)。言い換えれば、本発明は、対象を絞った影響を受けない(「生来の」)方法で試料の短寿命状態を固定(「凍結停止」)するための技術を提供し、他の方法ではこれらの状態を研究するには記録速度が遅すぎるであろう蛍光顕微鏡法を使用してそれらを調査することを目的とする。本発明のさらなる目的は、凍結固定前後の試料の連続観察を可能にするために、倒立顕微鏡上の試料を十分に速く冷却するための装置および方法を提供することである。
【0017】
本発明の目的は、独立請求項の教示によって解決される。本発明のさらに有利な特徴、態様および詳細は、本出願の従属請求項、明細書、図面、および実施例から明らかである。
[発明の簡単な説明]
本目的は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法によって解決された。
【0018】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、大気圧よりも高い圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
少なくとも1つの液体(2)は窒素であり、気体(500)は少なくとも2.5MPaの圧力のヘリウムである。
【0019】
言い換えると、本発明は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法に関する。
【0020】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0021】
言い換えれば、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0022】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有す
るヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を塗布することであって、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0023】
言い換えれば、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0024】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を塗布することであって、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0025】
言い換えれば、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0026】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を通過させることであって、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急激に低下させること。
【0027】
こうして、キャリア基板(10)の下側(12)に収容された試料(1)の急速冷却は、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に臨界温度未満の温度を有する液体窒素を供給することによって達成される。液体窒素には、圧力タンク(400)内に高圧で入っている気体(500)(ヘリウム)によって圧力が加えられる。
【0028】
ヘリウムの圧力は、少なくとも2.5MPaが好ましく、より好ましくは少なくとも3.0MPa、より好ましくは少なくとも3.5MPa、より好ましくは少なくとも4.0MPa、より好ましくは少なくとも4.5MPa、最も好ましくは少なくとも5.0MPaである。
【0029】
したがって、好ましい実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0030】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0031】
さらなる実施形態では、ヘリウムの圧力は、2.5MPaから100MPaの間が好ましく、より好ましくは3.0MPaから100MPaの間、より好ましくは3.5MPaから100MPaの間、より好ましくは4.0MPaから100MPaの間、より好ましくは4.5MPaから100MPaの間、最も好ましくは5.0MPaから100MPaの間である。
【0032】
したがって、別の好ましい実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0033】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0034】
冷却媒体またはヒートシンクとして機能する液体窒素は、圧力タンク(400)の出口弁(22)を開くことによって突然(または急速または瞬間的に)塗布される。したがって、出口弁は液体窒素を迅速に放出するように構成される必要がある。この点で、出口弁は切り替え可能である必要がある。すなわち、出口弁は非常に高速に完全に開閉する必要がある。また、出口弁は、液体窒素を迅速に放出するための最大直径を有するように設計する必要がある。
【0035】
液体窒素から試料(1)を分離するキャリア基板(10)は、ここでは熱伝導体として機能するため、所望の熱伝導率とテンパリング液の圧力下で十分な強度を有する任意の材料で作られる。キャリア基板(10)がダイヤモンドディスクを含むか、またはダイヤモンドディスクからなるのが好ましい。
【0036】
一実施形態では、最大限の窒素をキャリア基板の上側に接触させることにより、試料を最大限に冷却するために、ステップ(c)で液体窒素を圧力タンク(400)から完全に放出する。したがって、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0037】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を完全に供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0038】
本発明によれば、突然のまたは急速なまたは爆発的な温度低下が実現される。これは、試料温度が、試料内の分子プロセス(氷晶の形成など)の速度がより遅いか無視できる程度の速度(冷却速度、テンパリング速度)で初期温度(開始温度)から終了温度(目標温度)まで低下することを意味する。
【0039】
換言すれば、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0040】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を完全に供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を爆発的に低下させること。
【0041】
別の実施形態では、ステップ(c)において、圧力タンク(400)の全内容物、すなわち、最初に液体窒素、第2にヘリウムがキャリア基板(10)の上側(11)に供給される。試料の冷却は主に液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって引き起こされるが、液体窒素と同じ温度を有するヘリウムによって追加の冷却が達成されることもある。したがって、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0042】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素および気体(500)を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0043】
より正確には、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0044】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素および気体(500)を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
ステップ(c)では、液体窒素が最初に供給され、ヘリウムが2番目に供給される。
【0045】
試料が結晶化せずに、具体的には氷晶の形成や直径10nmを超える氷晶を形成することなくガラス化するように、冷却媒体としての液体窒素は突然加えられる。試料のガラス化の冷却速度は試料の特性に大きく依存し、主に試料の分子成分に依存する。例えば、ガラス化は、希釈水性緩衝液中で、分子成分が約100,000K/秒から1,000,000K/秒の速度で冷却されるときに起こる。
【0046】
したがって、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0047】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を少
なくとも-100,000K/秒の速度で低下させること。
【0048】
試料のガラス化に必要な冷却速度は、デキストランなどの凍結保護化合物の添加、または試料に約200MPaの高圧をかけることによって低下する可能性があることはよく知られている。しかし、凍結保護剤の使用は試料の特性や活性にも影響を与える可能性がある。
【0049】
試料(1)の温度を低下させるための本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、試料(1)の温度を、少なくとも-10,000K/秒、より好ましくは少なくとも-100,000K/秒、より好ましくは少なくとも-200,000K/秒、より好ましくは少なくとも-500,000K/秒、最も好ましくは少なくとも-1,000,000K/秒の速度で低下させる。
【0050】
一実施形態では、試料(1)の温度を、-100,000K/秒から-1,000,000K/秒の間の速度で低下させる。
【0051】
他の実施形態では、試料は、塩、糖(例えば、トレハロース、デキストラン)、有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール)、タンパク質、または特定の細胞中の不凍タンパク質などの凍結保護化合物を元々または付加的に含む。これらの実施形態では、上述の速度よりも遅い、ガラス化のための冷却速度が適用されてもよい。
【0052】
したがって、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0053】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を、少なくとも-10,000K/秒の速度で低下させること。
【0054】
言い換えると、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0055】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を、少なくとも-10,000K/秒の速度で低下させることであって、
試料は凍結保護化合物を含む。
【0056】
これらの実施形態では、試料(1)の温度を、好ましくは少なくとも-5,000K/秒、より好ましくは少なくとも-6,000K/秒、より好ましくは少なくとも-7,000K/秒、より好ましくは少なくとも-8,000K/秒、より好ましくは少なくとも-9,000K/秒、最も好ましくは少なくとも-10,000K/秒の速度で低下させる。
【0057】
達成される冷却速度は、試料内の熱伝導率や厚さなどの試料の特性に依存することはよく知られている。当業者は、本発明による方法を用いて確実に試料を完全にガラス化するために、適切な試料の厚さを容易に選択できる。したがって、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0058】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
試料(1)の厚さは500μm未満である。
【0059】
試料(1)の厚さは、500μm未満が好ましく、より好ましくは400μm未満、より好ましくは300μm未満、より好ましくは200μm未満、より好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、より好ましくは30μm未満、より好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、さらにより好ましくは10μm未満である。
【0060】
したがって、一実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0061】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
試料(1)の厚さは20μm未満である。
【0062】
換言すれば、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0063】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは室温から少なくとも-120℃、好ましくは-130℃まで急速に低下させること。
【0064】
倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させるための本発明の方法の好ましい実施形態では、試料(1)はガラス化する(すなわち、直径10nmを超える氷晶は形成されない)。ナノメートルサイズの氷晶は通常、試料の特性や活性に影響を与えない(Huebinger et al.,2016、Biophysical Journal,110:840-49)。試料(1)内の氷晶のサイズは、クライオ電子顕微鏡法(クライオEM)やX線回折などの標準的な方法で測定できる。
【0065】
したがって、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0066】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させ、試料(1)を結晶化させることなく、好ましくは直径80nmを超える氷晶を形成することなく、好ましくは直径10nmを超える氷晶を形成することなく、より好ましくは直径1nm以上の氷晶を形成することなく、さらにより好ましくは氷晶を形成することなくガラス化すること。
【0067】
本明細書に開示される試料(1)の温度を低下させるためのすべての方法は、氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく試料(1)の温度を低下させることができる。
【0068】
より正確には、本明細書に開示される試料(1)の温度を低下させるためのすべての方法は、氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく、試料(1)の温度を-120℃未満、好ましくは-130℃未満に低下させることができる。
【0069】
したがって、試料(1)の温度は爆発的に、つまり非常に急速に低下する。直径10nmを超える氷晶の形成を避けるための最小冷却温度を定義するのは困難である。なぜなら、必要な冷却速度は試料(1)の厚さとサイズ、試料(1)の材料または材料の混合物、凍結保護化合物(すなわち、凍結保護剤)の存在および本明細書に開示される他のパラメータに依存するからである。しかしながら、一例として、本明細書に開示される試料(1)の温度を低下させる方法は、50μmの熱電対を用いて、100μmの厚さの水性試料の温度を、室温から-120℃から-130℃の間の温度に10ミリ秒未満の時間枠内で-15,000K/秒以下の冷却速度で低下させることができる(
図7Aを参照)。前記冷却速度は、水性試料の理論的な熱拡散限界に近づき、したがって、付着哺乳類細胞を含む厚さ10μmから15μmの水性試料については、最大-200,000K/秒の冷却速度に相当する。
【0070】
本発明の別の態様は、試料(1)の温度を制御するための装置(100)に関し、装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に位置する出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0071】
加圧下で圧力タンク(400)から冷却液をキャリア基板(10)の上側(11)に突
然供給することにより、キャリア基板上に断熱気体層が形成されること(ライデンフロスト現象)を防止する。低圧で液体を使用するだけでは、断熱気体層の形成が防げないため、冷却速度が遅くなる。この問題は、特にこれらの条件下では液化しないヘリウムなどの気体(500)を使用して冷却液をさらに加圧することによって解決できる。この液体と気体の混合物がキャリア基板上に急速に放出されると、キャリア基板における冷却剤の流れが非常に多くなり、急速な対流冷却が可能になり、膜沸騰が抑制される。さらに、この装置はEP2877828B1による装置と比較して逆さまになっており、冷却媒体を貯蔵するタンクが試料の上に位置し、冷却媒体が上部からキャリア基板上に塗布される。
【0072】
供給ライン(20)内の冷却液(2)の温度上昇を最小限に抑えるために、圧力タンク(400)は、供給ライン(20)が可能な限り短くできるようにキャリア基板の上側(11)に配置される。圧力タンク(400)の出口弁(22)からキャリア基板(10)の上側(11)までのラインを短くすることにより、冷却液(2)と周囲との間の熱交換を少なくできる。これは、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)をキャリア基板(10)の上部(11)に取り付けるか接続することによって実現できる。
【0073】
装置(100)の好ましい実施形態では、供給ライン(20)を断熱することによって、冷却液(2)の温度上昇がさらに最小限に抑えられる。したがって、試料(1)の温度を制御するための装置(100)の好ましい実施形態は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に位置する出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0074】
本発明による装置(100)により、凍結保護剤を使用しない固定と、生きた細胞内の細胞質分子組織や反応パターンなどの本来の非平衡な分子状態の観察が可能になる。装置(100)が倒立顕微鏡装置に結合されると、生理的温度での動的な細胞プロセスを継続的に観察し、その後急速に凍結させ、凍結保存状態の同じ細胞の分子パターンを測定することができる。
【0075】
換言すれば、本発明による装置(100)は、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させるための装置であり、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に位置する出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)に接続された上端と、下端にキャリア基板(10)の上側(11)を向いた出口開口部(21)を有し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)出口開口部(21)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備える。
【0076】
驚くべきことに、本発明者らは、EP2877828B1による装置と比較して、本発明の装置を使用すると、より高い冷却速度を達成できることを発見した。
図7Aは、厚さ
100μmの水性試料を、熱電対素子をキャリア基板の下側に配置し、上側から冷却した場合、約-15,000K/秒の冷却速度(理論的には、付着細胞などの厚さ10μmから15μmからなる水性試料では水のガラス化冷却速度が最大-200,000K/秒に達すると推定される)が測定されたことを示す。EP2877828B1の装置を、試料がキャリア基板の下側に配置され、上側から冷却されるように構成した場合、観察された温度変化率はわずか-1,000K/秒であった(
図7B)。
【0077】
また、冷却後の倒立光学顕微鏡下の厚さ15μmの細胞培養培地中の蛍光色素ローダミン6Gの溶液では、微結晶を含む氷晶は観察できなかった(
図18参照)。試料の脱水も観察されなかった。
【0078】
さらに重要なことに、本発明者らは、接着HeLa細胞を発現するEGFPの形態が凍結固定中に保存され、細胞内に氷晶が検出されなかったことを広視野蛍光イメージングによって実証できた(実施例および
図17を参照)。
【0079】
さらに、共焦点レーザー走査型顕微鏡法(CLSM)および広視野蛍光イメージングにより、凍結固定中に小胞体(ER)などの大きな細胞小器官の形態が無傷のままであることが示された。この点で、ER膜は、蛍光mCitrineに融合されたT細胞タンパク質チロシンホスファターゼ(TC-PTP)を発現するMCF7細胞を使用することによって標識された(
図19を参照)。極低温でのmCitrineの高い光安定性により、ERのSRRF(super resolution radial fluctuation)再構成を生成するために、その後、同じ停止細胞の広視野蛍光画像を100枚取得することも可能になり、それによって本発明による装置を用いた凍結固定後、蛍光タンパク質の空間的局在が完全に保存されることを示すことができた。
【0080】
有利なことに、本発明は、対象を絞った影響を受けない方法で短寿命状態を固定(「凍結停止」)し、他の方法では記録速度が遅すぎてこれらの状態を研究できない方法で短寿命状態を調査することを可能にする。これらには、例えば、CLSMや誘導放出抑制顕微鏡法(STED)など、空間分解能とスペクトル分解能が向上した多くの光学顕微鏡技術が含まれる。
【0081】
このために、本発明者らは、MCF7細胞において蛍光融合構築物(Alexa647-SNAP-EGFRおよびR-PTP-γ-mCitrine)として共発現された、原癌タンパク質EGFR(上皮成長因子受容体)および機能的に関連する腫瘍抑制因子R-PTP-γ(受容体様プロテインチロシンホスファターゼγ)に焦点を当てた。
【0082】
室温での両方の蛍光融合タンパク質の小胞動態は、上皮成長因子(EGF、100ng/ml)による刺激時にCLSMによって追跡することができ、その後、凍結停止により、両方のタンパク質の互いの関係における空間パターンを正確に捕捉することができた(
図20A)。モーションブラーがなくなり(
図20B)、蛍光マーカーの光安定性が向上したことにより、各チャネルからの100枚の広視野蛍光画像のSRRF再構成を使用した共局在解析が可能になった。したがって、この凍結停止分析により、これまで知られていなかったEGFRとR-PTP-γの原形質膜に沿ったナノスケールクラスターへのおよびエンドソーム内での共組織化、ならびにEGF刺激によるそれらの分離が明らかになった。この成長因子によって誘導される、阻害性ホスファターゼからのEGFRナノクラスターの分離は、システムが動的に沈黙した状態から一時的に活性なシグナル伝達状態に切り替わることと一致する。
【0083】
STEDナノスコピー法は、蛍光強度が蛍光マーカーの密度に直接関係し、定量的な分子パターンを得ることができるため、超解像技術の中でも特別なケースを構成する。この
レーザー走査型ナノスコピー法では、2番目に高強度のドーナツ型レーザービームを使用して励起された蛍光色素分子を誘導放出することによって回折限界を超える分解能が達成される。その結果、光安定性、蛍光量子収率、および蛍光標識の密度に対する高い要求が、生細胞内の蛍光タグが付けられたまばらな分子のSTEDイメージングを妨げる。
【0084】
実際、低ディプリーションレーザー出力(<42mW/μm
2)のみが、室温でMCF7細胞内のAlexa647-Snap-EGFRのノイズのあるSTED画像を取得するのに十分な蛍光マーカーを保存し(
図21Aおよび21Bを参照)、通常のCLSMよりも回折限界を超える情報量の統計的に有意な増加はなかった(
図21Aおよび21C)。分解能は、細胞の化学固定によってモーションブラーを軽減することによりわずかに改善することができ、試料を漂白する前に5つの連続したSTEDフレームからの光子の蓄積を可能にした(
図21C)。しかしながら、生きた細胞の超急速凍結停止後、漂白率が約45分の1に低下した(
図21B)ことで、ディプリーションレーザー出力(420mW/μm
2)と露光時間(放射線エネルギー密度:35mJ/μm
2)の両方を10倍増加させることができ、Alexa647-Snap-EGFRを含むエンドソーム構造が鮮明に分解された(
図21D)。情報量は、125nm未満のスケールから80nmのデジタル(ピクセル制限あり)分解能まで大幅に増加した(
図21C)。
【0085】
さらに、モーションブラーがなく、光化学が大幅に低減されているため、CLSMによって細胞全体を3Dスキャンし、その後、さまざまなzレベルのさまざまな領域でAlexa647-Snap-EGFRの超解像度STED画像を記録することが可能である(
図21D)。これにより、室温では分解できない回折限界を超えた小胞クラスターの識別が可能になった。ここで、総取得時間は15分を超え、細胞領域全体での平均照射エネルギー密度は20mJ/μm
2を超え、正の温度における哺乳類細胞株の致死光線量の約1mJ/μm
2を大幅に超えた。したがって、本発明者らは、本発明による装置を用いた凍結固定により、モーションブラーの低減と光安定性の大幅な向上により大幅に延長された露光時間で、分子運動の非存在下で、空間分解能および分光分解能が向上した3Dでの生きた細胞全体の画像化が可能になることを実証することができた。
【0086】
その結果、本明細書に記載の発明の方法により、STEDまたはSRRFによる回折限界を超えて画像化された細胞構造であっても、細胞の細胞質内の無蛍光領域としてこの分解能で検出可能な氷晶を含まない希釈水性培地および細胞の凍結固定が可能になる(
図26)。さらに、最大ディプリーションレーザー強度でSTEDスキャンを繰り返した後、エンドサイトーシス構造の構造と配置が保存されたが、氷晶は観察されなかったため、高強度のSTED照明では、氷晶を生成するほど生体試料が温められないことが実証された。さらに、FRET-FLIMで測定したLIFEA2センサーの分子立体構造の分布は保存されており、凍結停止後もタンパク質構造が無傷のままであることが示された。したがって、本明細書に記載の方法による超高速の凍結固定は、複数の分解能で観察できる細胞内の動的分子パターンの一時的な状態を忠実に固定する。
【0087】
本発明のさらに重要な利点は、従来の技術と比較して、より速いテンパリング速度で試料の温度を変化させることができ、かつ/または試料を自然な状態から引き出したり、移動させたり、添加物または例えば過剰な圧力上昇により操作したりすることなく試料を監視できることである。
【0088】
さらに、発明者らは、超急速凍結停止後の細胞における分子反応の機能的画像化を評価した。FLIMは、蛍光顕微鏡法にナノ秒の蛍光減衰速度論の分光次元を追加する。これにより、分子の近接性により引き起こされた蛍光色素分子(例えば、FRET)間の励起状態の反応は画像化されて、相互作用や立体構造変化などの高分子反応を空間的に分解できる。遺伝的にコードされたバイオセンサーLIFEA2は、分子立体構造、およびそれ
によって蛍光タンパク質mCitrineおよびmCherry間のFRETを介した細胞ガイダンスエフリン受容体A型(EphA2)のキナーゼ活性について報告する。室温では、リガンドクラスター化エフリンA1による受容体の活性化が、LIFEA2におけるFRETドナーmCitrineの平均蛍光寿命のわずかな(約0.2ns)低下によってCos7細胞の原形質膜で観察できた(
図22)。しかし、モーションブラー、および蛍光減衰プロファイルと派生フェーザーの分離が不十分なため、細胞内の膜構造の空間分解能と蛍光寿命分解能とが大幅に制限された(
図22)。ただし、極低温では、mCitrineの量子収量の増加により、刺激された細胞と刺激されていない細胞におけるLIFEA2の減衰プロファイル、平均蛍光寿命(τ)、および関連するフェーザーの分離が大幅に改善された(
図22)。クラスター化された受容体の活性は、原形質膜パッチおよびエンドサイトーシス構造において分解できており(
図22)、外因性刺激の非存在下での基礎活性は、隣接する細胞の内因性エフリンによって引き起こされた可能性が高かった。分子活性イメージングにおけるこのコントラストの向上は、同じエフリンA1刺激細胞を凍結停止前と凍結停止中に比較した場合に特に明らかになった(
図22)。
【0089】
凍結停止下では、累積フェーザーが大きく分離されることにより(
図24C)、大域解析による活性(τ=0.9±0.2ns)および不活性(τ=3.5±0.1ns)立体構造の空間的に不変の蛍光寿命、および非吸収性mCherryアクセプターを含むLIFEA2の割合(約0.2)を導出できる。これらの制約を使用すると、活性LIFEA2の空間的に変化する分子の割合(α)を画像の各ボクセル内のフェーザーから導出できる。それにより、凍結停止により、刺激されたCos7細胞におけるLIFEA2の3D分子活性マップの取得(時間>10分)および再構成が可能となり(
図25)、原形質膜から出現した活性化受容体を有する個々の小胞を核周囲のエンドソーム区画にある徐々に不活化された受容体から区別することができた。
【0090】
したがって、本発明者らは、本発明の装置を用いた凍結固定により、蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)により蛍光減衰速度論の空間分布を大幅に改善された分解能で測定することができ、それによって、蛍光標識された分子、好ましくはインジケーターを含む遺伝的にコード化された1つまたは2つのコンポーネントの蛍光タンパク質の反応状態の前例のないマッピングが可能になることを示すことができた。遺伝的にコードされた立体構造FRETセンサーLIFEA2の例が示されており、これを使用すると、細胞内の多数の個々のエンドソームおよび内膜構造におけるEphA2受容体の活性状態を正確に測定できる(
図25)。
【0091】
したがって、本発明のさらなる態様は、以下のステップを含む蛍光顕微鏡法の方法を対象とする。
【0092】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)試料(1)をレーザー光で照射することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出すること。
【0093】
したがって、本発明のさらなる態様は、凍結停止試料(1)の誘導放出抑制による光学顕微鏡法を実施する方法を対象とし、以下のステップを含む。
【0094】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d1)少なくとも1つの焦点領域に集束される第1のパルスレーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を励起して蛍光を発させることと、
(d2)少なくとも1つの焦点領域内に強度ゼロ点を含む第2のトーラス形レーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を脱励起することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出することと、
(f)任意選択で、第1のパルスレーザービームの焦点領域のさまざまな位置および第2のトーラス形レーザービームの強度ゼロ点のさまざまな位置で、ステップd1と、ステップd2と、ステップeとを繰り返すこと。
【0095】
したがって、本発明のさらなる態様は、凍結停止試料(1)の時間相関単一光子計数法による蛍光寿命イメージング顕微鏡法を実施する方法を対象とし、以下のステップを含む。
【0096】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)パルスレーザービームを試料に照射することにより、定期的に蛍光分子を励起して蛍光光子を放出することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光光子を検出することと、
(f)検出された蛍光光子から蛍光寿命を決定すること。
【0097】
したがって、本明細書に開示されるすべての実施形態において、「倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法」という文は、「倒立顕微鏡法用の生きた試料(1)の温度を低下させる方法」という文に置き換えることができ、あるいは、より正確には「倒立顕微鏡法用の生きた細胞(1)の温度を低下させる方法」に置き換えることができる。
【0098】
したがって、「試料(1)の温度を制御する装置(100)」という文は、「生きた試料(1)の温度を制御する装置(100)」という文に置き換えることができ、あるいは、より正確には、「生きた細胞(1)の温度を制御する装置(100)」に置き換えられる。
【0099】
したがって、本出願は、以下のステップを含む、生きた試料(1)、好ましくは倒立顕微鏡法用の生きた細胞(1)の温度を低下させる方法に関する。
【0100】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有す
るヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0101】
したがって、本出願は、生きた試料(1)、好ましくは生きた細胞(1)の温度を制御するための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)を有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に位置する出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
[発明の説明]
試料の「温度を低下させる」という用語は、通常、温度の低下(冷却)を含む、テンパリング液と試料を含むキャリア基板との間の温度差に応じた温度変化を表すために使用される。
【0102】
したがって、テンパリング液は冷却媒体または寒剤と呼ばれる。試料を含むキャリア基板が水の凝固点を超える温度で配置されている場合、冷却媒体の使用により試料が固体状態に変化する。固体状態への移行は、ここでは試料の凍結とも呼ばれる。
【0103】
「点拡がり関数」(PSF)という用語は、集束光学系のインパルス応答による微小な点源の広がりを表し、画像システムの光学伝達関数に相当する。光学系内の物体の取得画像は、物体とPSFの畳み込みである。
【0104】
「位置特定精度」という用語は、光学系内の単一の物体または点源の検出位置の偏差を表し、分散または標準偏差で表される。
【0105】
「分解能」という用語は、光学系内で2つの物体または点源を区別できる最小距離として定義され、例えばレイリー基準によって定義できる。
【0106】
本明細書で使用される「凍結固定」という用語は、試料の(ほぼ)瞬間的な(急速または爆発的な)凍結を指し、試料内の分子運動が停止し、試料に含まれる水分子が氷晶の水素結合ネットワークを形成できなくなる。得られた非晶質の氷は「ガラス氷」と呼ばれ、試料の本来の構造を乱すことのない無秩序な液体水のような配置に留まる。したがって、凍結固定は氷晶の成長を回避し、および/またはナノ分散氷の形成(ガラス化)のみを引き起こし、試料の構造には影響を与えない。ナノ分散氷は、100nm未満、特に10nm未満、例えば5nm未満の氷の粒子を含む。
【0107】
生きた細胞の場合、原則として凍結固定は細胞を非常によく保存できるため、後で適切な速度で解凍すれば多くの細胞は生き続ける。したがって、このプロセスは可逆プロセスと考えることができる。
【0108】
「凍結停止」は、本明細書では「凍結固定」と同義に使用される。
【0109】
テンパリング液は、通常、試料を冷却するために対象となる温度範囲で液体状態で提供され得る化学元素または化合物または組成物を含む物質である。好ましくは、液体は窒素を含む。温度制御媒体としての液体のさらなる例は、水素、アルゴン、ヘリウムまたはメタンである。
【0110】
本明細書で使用される「気体」(500)は、圧力タンク(400)内に存在する条件下、すなわち、大気圧よりも高い圧力下およびテンパリング液の沸点で液化しない気体を指す。さらに、気体(500)は、好ましくは不活性である。すなわち、気体(500)は、テンパリング液と反応せず、またはテンパリング液に溶解せず、あるいは圧力タンクまたは装置(100)の他のコンポーネントと反応しない。気体は圧力手段として機能する。つまり、圧力タンク内の圧力を高めるために使用される。この点で、気体は圧縮性でなければならない。好ましくは、気体はヘリウムまたは水素を含むか、またはヘリウムまたは水素からなる。
【0111】
本明細書で使用されるキャリア基板(10)の「上側」(11)は、供給ライン(20)の出口開口部(21)に向けられたキャリア基板(10)の側面を指し、(10)、上向き、つまり地球の重力の方向と反対側を向いている。
【0112】
本明細書で使用される「下側」(12)は、供給ライン(20)の出口開口部(21)とは反対側のキャリア基板(10)の側面を指し、下向き、つまり地球の重力の方向を向いている。
【0113】
明確にするために、キャリア基板(10)は1つの上側と1つの下側のみを有することとする。上側は下側の反対側であり、その逆も同様である。
【0114】
本明細書で使用される「室温」とは、4℃を超える温度、好ましくは15から40℃、15℃から30℃、および15℃から24℃、および16℃から21℃の温度を指す。このような温度には、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、および21℃が含まれる。
【0115】
本明細書で使用する「正の摂氏温度」とは、水の融点を超える温度、すなわち0℃を超える温度を指す。このような温度には、例えば、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、25℃、30℃、35℃、37℃、および40℃が含まれる。
【0116】
本明細書で使用する「倒立顕微鏡法」とは、顕微鏡の対物レンズがステージの下にあり、上を向いているため、試料を下から観察できる任意のタイプの顕微鏡法を指す。試料は、最高の光学的特徴を有する容器の底に配置することも、キャリア基板の下側に付着させることもできる。したがって、倒立顕微鏡法には、共焦点顕微鏡法、(マルチモーダル)落射蛍光顕微鏡法、広視野蛍光顕微鏡法、単一分子局在化顕微鏡法などの超解像顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法(STED)、時間相関単一光子計数法による蛍光寿命イメージング顕微鏡法、電子顕微鏡法が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書で使用される「臨界温度」とは、それより低い温度では、圧力によって気体が液化できる温度を指し、臨界温度を超えるとこれは不可能である。2つ以上の液体(2)を含む実施形態では、臨界温度は、個々の液体のうちの最低臨界温度を指す。
【0118】
本発明によれば、供給ライン(20)は、大気圧よりも高い圧力でテンパリング液をキャリア基板に導くように構成されている。さらに、キャリア基板の下側(12)は、大気圧で試料を受け入れ、収容し、または保持するように構成されている。
【0119】
圧力タンク(400)内の気体(500)の圧力が少なくとも50バールである場合、冷却速度は試料の熱伝導率によって制限され、もはやライデンフロスト現象によって制限されないことがわかった。したがって、本発明の一実施形態は、気体(500)の圧力が50バールから1000バールの間である、試料の温度を低下させる方法を対象とする。したがって、本発明による実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法に関する。
【0120】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであり、
少なくとも1つの液体(2)は液体窒素であり、気体(500)はヘリウムである。
【0121】
したがって、本発明の一実施形態は、ヘリウムの圧力が5MPaから100MPaの間である、試料の温度を低下させる方法を対象とする。したがって、本発明による実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法に関する。
【0122】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0123】
原則として、試料を数ミリ秒以内に水のガラス転移温度(約-136℃)未満に冷却できる液体または液体の混合物を液体(2)として使用できる。しかしながら、所望の冷却速度は、本発明の方法において液体窒素を使用した場合にのみ達成される。
【0124】
本明細書に記載される発明の方法のステップb)では、少なくとも1つの液体(2)が最初に圧力タンク(400)内に充填され、その後、気体(500)が加えられて圧力タンク(400)内に高圧が生成されることが好ましい。
【0125】
本明細書に記載の発明の方法のステップb)では、少なくとも1つの液体(2)は、その臨界温度未満の温度に冷却された液体を充填することによって、すなわち、予め冷却された液体を圧力タンク内に充填することによって、圧力タンク(400)内に供給され得る。あるいは、少なくとも1つの液体(2)を圧力タンク(400)に気体として充填し、その後、気体が凝縮して液体となるように、その臨界温度未満の温度まで冷却できる。圧力タンク内の気体の冷却は、例えば圧力タンクを取り囲む冷却タンク(300)によって達成できる。
【0126】
好ましくは、少なくとも1つの液体(2)は液体窒素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液体(2)は、液体アルゴンまたは液体メタンなどのさらなる冷却液
を含んでもよい。したがって、本発明による実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0127】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
少なくとも1つの液体(2)は液体窒素を含む。
【0128】
別の実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0129】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
少なくとも1つの液体(2)が(i)液体窒素と液体アルゴン、または(ii)液体窒素と液体メタン、または(iii)液体窒素と、液体アルゴンと、液体メタンとの混合物を含む。
【0130】
別の実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0131】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
少なくとも1つの液体(2)が、(i)液体窒素と液体アルゴン、または(ii)液体窒素と液体メタン、または(iii)液体窒素と、液体アルゴンと、液体メタンとの混合物を含む。
【0132】
好ましい実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0133】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下
させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、あるいは試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく、低下させること。
【0134】
好ましい実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0135】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、あるいは試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく、低下させること。
【0136】
本発明の方法で使用される少なくとも1つの液体(2)の温度は、液体の臨界温度より少なくとも5℃、好ましくは10℃以上低い。したがって、本発明による実施形態は、少なくとも1つの液体(2)の温度がその臨界温度より少なくとも10℃低い、試料の温度を低下させる方法に関する。
【0137】
したがって、本発明による実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0138】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度より少なくとも10℃低い温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
少なくとも1つの液体(2)は液体窒素であり、気体(500)はヘリウムである。
【0139】
さらなる実施形態では、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法は、以下のステップを含む。
【0140】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度より少なくとも10℃低い温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0141】
原則として、ヘリウムまたは水素などの任意の気体(500)を本明細書に記載の発明の方法で使用することができる。このガスは圧縮性ガスであり、圧力タンク内に存在する
条件下で液化せず、液体と反応しないかまたは液体に溶ける。しかし、ヘリウムを気体(500)として使用すると、所望の冷却速度が達成された。
【0142】
一実施形態では、気体(500)の混合物が本発明の方法で使用される。ガスの混合物は、圧力タンク(500)内の圧力を調整するのに有利であり得る。したがって、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0143】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)の混合物とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
気体(500)の混合物はヘリウムを含む。
【0144】
本発明のさらなる実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0145】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)の混合物とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
気体(500)の混合物はヘリウムおよび水素を含む。
【0146】
また、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0147】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、2.5MPaから1000MPaの間の圧力を有する気体(500)の混合物とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
気体(500)の混合物はヘリウムを含む。
【0148】
また、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0149】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)の混合物とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、あるいは試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく、低下させること。
【0150】
本明細書で使用される「試料」とは、本発明の方法および本発明の装置を使用して凍結固定または凍結停止され、分析される任意の標本を指す。一般に、各種類の試料は冷却できる。試料は通常、軟質物質、材料、化学反応の相手、または特に好ましい生物材料などの物質の可変液体組成を含む。
【0151】
試料は、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、糖類、または生化学系の水溶液などの(ポリマー)材料またはバイオポリマーのような化学分子系を含み得る。上述の系は、影響を受けていない本来の状態、改変された状態、励起状態、非平衡状態、または平衡状態であり得る。試料は、(哺乳動物の)細胞、組織、体液(血液、血清、血漿など)のような生体試料であってもよい。好ましくは、試料は、生きた生物材料、より好ましくは、生きた細胞、生きた生体細胞、または生きた細胞成分を含む。細胞は、キャリア基板の下側(12)に、好ましくは細胞単層の形態で接着細胞培養物を形成する。試料がキャリア基板と観察窓の間の非常に薄い層からなる場合、接着は絶対に必要というわけではない。
【0152】
本発明によれば、試料は常圧(大気圧)で調製され、テンパリングされる(凍結または解凍される)。したがって、本発明による実施形態は、試料(1)が生体細胞、好ましくは生きた生体細胞を含む、試料の温度を低下させる方法に関する。したがって、本発明による実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0153】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に生体細胞(1)、好ましくは生きた生体細胞(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に提供することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、生体細胞(1)、好ましくは生きた生体細胞(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることであって、
少なくとも1つの液体(2)は窒素であり、気体(500)はヘリウムである。
【0154】
本発明によるさらなる実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0155】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に生体細胞(1)、好ましくは生きた生体細胞(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、2.5MPaから1000MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に提供することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で液体窒素を圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、生体細胞(1)、好ま
しくは生きた生体細胞(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0156】
本発明によるさらなる実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0157】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に生体細胞(1)、好ましくは生きた生体細胞(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、2.5MPaから1000MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、生体細胞(1)、好ましくは生きた生体細胞(1)の温度を低下させる、好ましくは、生体細胞(1)内に氷晶を形成することなく、あるいは生体細胞(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく、急速に低下させること。
【0158】
本発明によれば、液体(2)はキャリア基板(10)に接触する。急な温度変化を達成するために、液体は加圧下で圧力タンク(400)から放出される。キャリア基板の上側への液体の流れが形成される。その流れは、定義された開始時間と所定の流速で実現できる。流量は、液体の特性(粘度など)と所望の温度に応じて選択される。
【0159】
有利なことには、キャリア基板の上側に対してテンパリング液の流れを導く方法は様々ある。流れは、供給ライン(20)およびその出口開口部(21)の設計によって方向付けできる。第1の変形例によれば、キャリア基板の上側の面法線に平行な流れ方向が提供される。テンパリング液は垂直に上側に流れ、その後キャリア基板から横方向に遠ざかる。この場合、特に効率的な熱伝達が得られるという利点があり得る。あるいは、第2の変形例では、流れ方向は、キャリア基板の上側の面法線に対して垂直である。テンパリング液は、キャリア基板を通過するように上側を越えて平行に流れる。この場合、流れ抵抗が低いという利点がある。
【0160】
好ましい実施形態では、流れはキャリア基板の上側の面法線に平行に方向付けされ、その結果、液体は重力の方向に流れ、それによって流速がある程度まで増加する。
【0161】
本発明によれば、急な温度低下が実現される。「急激な温度低下」(または、急な温度低下、即時温度低下、瞬間的な温度低下、急速な温度低下、または爆発的な温度低下)という用語は、試料温度が初期温度(開始温度)から終了温度(目標温度)まで低下する速度(冷却速度、テンパリング速度)が、それと比較した場合に試料内の分子プロセス(氷晶の形成や生体分子や生体系の変性など)の速度がより低いか無視できるものであることを説明するために使用される。
【0162】
結果として、本明細書に開示される方法は、試料(1)内に氷晶が形成されない、または試料(1)内に10nmを超える氷晶が形成されない、または試料(1)内に直径80nmを超える氷晶が形成されない、または細胞などの生体分子または生体系が変性しない方法で(すなわち、非常に急速または爆発的に)試料(1)の温度を低下させることができる。
【0163】
試料、特に生体試料の調査では、氷晶の形成を避けるために、ステップ(c)の急速(または爆発的)冷却後、試料を常に低温に保つことが望ましい場合がある。この点で、少なくとも1つの液体(2)(液体窒素)に、キャリア基板(10)の上側(11)を恒久
的に通過させてもよい。したがって、本発明による実施形態は、追加のステップ(d)を含む、試料の温度を低下させる方法に関する。
【0164】
(d)少なくとも1つの液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0165】
したがって、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0166】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)少なくとも1つの液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすることであって、
少なくとも1つの液体(2)は液体窒素であり、気体(500)はヘリウムである。
【0167】
本発明のさらなる実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0168】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0169】
本発明の好ましい実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させるための方法を対象とする。
【0170】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく低下させることと、
(d)液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キ
ャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0171】
本発明の好ましい実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させるための方法を対象とする。
【0172】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、低下させることと、
(d)液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)内に氷晶を形成することなく試料(1)をテンパリングすること。
【0173】
ステップ(d)で使用されるテンパリング液は、ステップ(b)で使用されるものと同じ液体であってもよい。テンパリング液は、臨界温度未満の同じ温度であっても、異なる温度であってもよい。あるいは、ステップ(d)で使用されるテンパリング液は、その臨界温度未満の同じまたは異なる温度を有する、ステップ(b)で使用されるものと異なる液体であってもよい。
【0174】
したがって、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0175】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する第1の液体(2)と、少なくとも2.5MPaの圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に第1の液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)第2の液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすることであって、
第1の液体(2)は液体窒素、気体(500)はヘリウムである。
【0176】
言い換えると、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0177】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低
下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)さらなる液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0178】
言い換えると、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0179】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)さらなる液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0180】
言い換えると、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0181】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、低下させることと、
(d)さらなる液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0182】
したがって、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0183】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)温度T1の液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)温度T2のさらなる液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすることであって、
温度T1は液体窒素の臨界温度より低く、任意選択で温度T2はさらなる液体の臨界温度より低い。
【0184】
好ましい実施形態では、試料の急激な温度変化を避けるために、T1とT2の差は10Kを超えない。好ましくは、T1とT2は同一またはほぼ同一である。すなわち、T1とT2の差は5Kを超えない。
【0185】
したがって、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0186】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0187】
ステップ(d)で使用されるテンパリング液は、圧力タンク(400)から供給されてもよいし、供給ラインに接続された別のラインを介して供給されてもよい。
【0188】
長期間にわたって試料の十分な冷却を維持するために、本発明の方法のステップ(d)では、テンパリング液が大気圧より高い圧力でキャリア基板の上側を通過させられる。好ましくは、圧力は0.1MPaから1.5MPaの間、より好ましくは0.2MPaから1MPaの間、最も好ましくは0.5MPaから1MPaの間にある。したがって、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0189】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)大気圧よりも高い圧力で液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0190】
また、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0191】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下面(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給
し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)0.5MPaから1MPaの間の圧力で液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0192】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0193】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことにより、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、低下させることと、
d)大気圧よりも高い圧力で液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0194】
また、本発明の一実施形態は、以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)、好ましくは生きた試料(1)、より好ましくは生きた細胞(1)の温度を低下させる方法を対象とする。
【0195】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)大気圧よりも高い圧力で液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
[装置]
本発明は、試料(1)内に氷晶が形成されない、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶が形成されない、または試料(1)内に直径80nmを超える氷の結晶が形成されない、または細胞などの生体分子または生体系が変性しない方法で(すなわち、非常に急速または爆発的に)試料(1)の温度を低下させるための装置(100)を対象とし、装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え
、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0196】
換言すれば、本発明はまた、試料(1)の温度を制御するための装置(100)を対象とし、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に接続される。
【0197】
また、本発明は、試料(1)の温度を制御するための装置(100)を対象とし、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0198】
また、本発明は、試料(1)の温度を制御するための装置(100)を対象とし、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接接続される。
【0199】
より正確には、本発明はまた、試料(1)の温度を制御するための装置(100)を対象とし、装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え
、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)の底部はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0200】
言い換えれば、本発明はまた、試料(1)の温度を制御するための装置(100)を対象とし、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)の底部はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
[供給ライン]
供給ライン(20)は、その上端が圧力タンク(400)の出口弁(22)に接続されている。供給ラインは、その下端に、
図2に示すように、少なくとも1つの液体(2)を放出するための出口開口部(21)を備える。供給ライン(20)は、圧力タンク(400)とキャリア基板の上側(11)との間に配置され、それにより、少なくとも1つの液体(2)(および任意選択で気体(500))をキャリア基板の上側(11)に供給することができる。
【0201】
供給ライン(20)は、試料の冷却速度が遅くなることに帰結し得る、少なくとも1つの液体(2)の望まない温度変化を低減するために、可能な限り短いことが好ましい。一方、供給ラインは、出口開口部(21)がキャリア基板の上側への液体の供給に最適な位置に配置されるように、十分な長さである必要がある。つまり、
図3に示すように、放出された液体(2)が装置の他のコンポーネントではなくキャリア基板の上側と直接接触する必要がある。
【0202】
供給ライン(20)内の冷却液(2)の温度上昇を最小限に抑えるために、供給ライン(20)を断熱してもよい。原則として、供給ラインは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリウレタンなどの適切な不活性ポリマー材料で内側から断熱できる。本発明者らは、高密度ポリエチレンが低温高圧下で最も安定した長持ちする断熱体であることを発見した。したがって、供給ラインは内側から高密度ポリエチレンで断熱されるのが最も好ましい。
【0203】
供給ライン(20)は、円筒形または漏斗形などの任意の形状を有することができる。本明細書で漏斗状とは、供給ラインの上部の直径が供給ラインの下部の直径よりも大きいこと、具体的には供給ラインの上部の直径が供給ラインの出口開口部(21)の直径よりも大きいことを意味する。供給ライン(20)は、
図3Cおよび
図3Dに示すように、その下端(出口開口部(21))が漏斗状であるのが好ましい。
【0204】
したがって、本発明による実施形態は、供給ライン(20)が漏斗状である、倒立顕微鏡法用の試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。
【0205】
したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)
に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された漏斗状の供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0206】
本発明によるさらなる実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された漏斗状の供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0207】
本発明によるさらなる実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された漏斗状の供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0208】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状になった供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0209】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状になった供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0210】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状になった供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0211】
さらに、本明細書に記載の発明の装置(100)の供給ライン(20)は、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成されている。したがって、供給ラインは、液体(2)の温度において機械的に安定しており、液体が高圧で通過しても変形しない材料で作られている。
【0212】
また、供給ライン(20)は、好ましくは直線であり(
図3に示されるように)、少なくとも1つの液体(2)をより高い流速で供給するために、角、エッジ、または巻きを含まない。
[圧力タンク(400)]
本発明の装置(100)は、少なくとも1つの圧力タンク(400)を含む。装置(100)の圧力タンク(400)は、好ましくは、テンパリング液(2)および気体(500)を入れるように構成された圧力容器、および/またはテンパリング液(2)および気体(500)を入れるように構成された断熱貯蔵容器である。「流体」という用語は液体および気体を含むため、装置(100)の圧力タンク(400)も、流体を入れるように構成された圧力容器および/または流体を入れるように構成された断熱貯蔵容器であることが好ましい。より好ましくは、圧力タンク(400)は、テンパリング液(2)および気体(500)を入れるように構成された断熱圧力容器である。
【0213】
圧力タンク(400)の容積は、好ましくは0.5Lから10L、より好ましくは0.5Lから9L、より好ましくは0.5Lから8L、より好ましくは1Lから7Lであり、最も好ましくは1Lから5Lである。
【0214】
したがって、一実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた、容積1Lから5Lの圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0215】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた、容積1Lから5Lの圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0216】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた、容積1Lから5Lの圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0217】
好ましい実施形態では、圧力タンク(400)は、
図4Aに示すように丸みを帯びた底部を有する。したがって、一実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、丸みを帯びた底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも
高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0218】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、丸みを帯びた底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0219】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、丸みを帯びた底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0220】
好ましい実施形態では、圧力タンク(400)は漏斗状の底部を有し、これは出口弁(22)、および供給ライン(20)との接続を密閉するのに有利である。したがって、一実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0221】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0222】
好ましくは、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0223】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
[冷却タンク(300)]
装置(100)は、好ましくは、圧力タンク(400)内の少なくとも1つの液体(2)を冷却またはテンパリングするための少なくとも1つの冷却タンク(300)をさらに備える。本発明の装置(100)の冷却タンク(300)は、ステンレス鋼で作られたタンクであることが好ましいが、他の材料で作られてもよい。冷却タンク(300)は、好ましくは、冷却媒体を都合よく供給するために上部に開口部を有する。したがって、冷却タンク(300)は、液体を冷却するために圧力タンク(400)を取り囲んでいる。
【0224】
したがって、一実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0225】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0226】
さらなる実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ラインは、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0227】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための、圧力タンク(400)を取り囲む冷却タンク(300)とを備える。
【0228】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための、圧力タンク(400)を取り囲む冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基
板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0229】
さらなる実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための、圧力タンク(400)を取り囲む冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ラインは、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0230】
圧力タンク(400)内の液体(2)の冷却は、冷却タンク(300)内に収容された冷却媒体との熱交換によって達成される。この点で、冷却媒体の温度は液体(2)の臨界温度よりも低い。冷却媒体は、液体(2)と同じ物質、例えば液体窒素であってもよい。したがって、一実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための、冷却媒体を入れるように構成された冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0231】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
冷却タンク(300)と圧力タンク(400)とは断熱されておらず、供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0232】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を
有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0233】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0234】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられ、供給ラインは、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
[出口弁]
本発明によれば、キャリア基板の上側へのテンパリング液の供給は、テンパリング液の供給ライン(20)にある出口弁、例えば電気式または空気圧式の弁によって作動(開始)する。出口弁を開閉するための制御要素は、熱交換器(キャリア基板)とは別に配置されている。最終制御要素を作動させることにより、定義された温度制御が開始できる。出口弁が開くと、テンパリング液は、所定の定義された遅延をもってキャリア基板(10)に当たる。これにより、倒立顕微鏡による観察中に事前に特定された試料の選択された状態を固定できる。したがって、装置(100)には出口弁(22)、好ましくは切替可能な出口弁、より好ましくは素早く開く切替可能な出口弁が装備される。切替可能な出口弁(22)は、空気圧または電気で切替可能な弁および/または流体回転弁であってもよい。
【0235】
したがって、本発明による実施形態は、圧力タンク(400)が切替可能な出口弁、より好ましくは素早く開く切替可能な出口弁を備えた、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させ
るための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、出口弁は切替可能な出口弁、より好ましくは、素早く開く切替可能な出口弁である。
【0236】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられ、出口弁は切替可能な出口弁、より好ましくは、素早く開く切替可能な出口弁である。
【0237】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁は切替可能な出口弁、より好ましくは、素早く開く切替可能な出口弁であり、
供給ラインは、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0238】
本発明による別の実施形態では、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基
板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁は空気圧または電気で切替可能な弁および/または流体回転弁である。
【0239】
-196℃および少なくとも50バールで、非常に素早く(切替可能に)、すなわち数ミリ秒以内に大きな断面を開くことができる限り、どんな弁も本明細書に開示される発明の装置(100)および方法に適している。出口弁(22)は、電気または空気圧で切替可能な弁とすることができる。好ましくは、出口弁(22)は空気圧で切替可能な弁である。切替可能な出口弁(22)は、
図5に示すように、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)とで構成できる。ピストンチップは、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されることが好ましい。
【0240】
さらに、切替可能な出口弁(22)は、ピストンガイド(520)をさらに備え得る。切替可能な出口弁(22)が、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)とから構成される空気圧で切替可能な弁であるのが好ましい。さらに、空気圧で切替可能な弁は、ピストンガイド(520)をさらに備え得る。この空気圧で切替可能な弁により、大きな断面を素早く開くことができる。
【0241】
ピストン(501)は可動である。垂直方向に移動可能なピストン(501)は、密封されたピストンガイド(520)を介して圧力タンク(400)内に挿入される。ピストンチップ(510)は圧力タンク(400)の底部を密閉するように設計される。ピストンは、空気圧駆動の昇降シリンダ(200)によって調整でき、それによって圧力タンク(400)の出口弁として機能する。圧力タンク(400)は、ねじ穴にねじ込まれたチューブを通して液体およびガスで満たすことができる。周囲の冷却タンク(300)による圧力タンク(400)の冷却により、ガスは冷却され、凝縮してもよい。
【0242】
高い冷却能力を即座に達成するには、ピストン(501)が急激に、すなわち数マイクロ秒以内に動くと有利である。
【0243】
したがって、本発明による好ましい実施形態は、圧力タンク(400)に、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)とを備えた空気圧で切替可能な弁が設けられた、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。したがって、本発明による好ましい実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)とを備えた空気圧で切替可能な弁である。
【0244】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(4
00)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)とを備えた空気圧で切替可能な弁である。
【0245】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)とを備えた空気圧で切替可能な弁であり、供給ラインは、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0246】
本発明による別の好ましい実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とし、圧力タンク(400)が昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁を備える。したがって、本発明による好ましい実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁である。
【0247】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給
ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁である。
【0248】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられ、
出口弁は昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁である。
【0249】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁であり、
供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
[出口開口部]
本発明のさらなる利点は、特にテンパリング媒体の膨張を伴う設計において、出口開口部(21)を形成する供給ライン(20)の下端部が以下の特徴の少なくとも1つを有する場合に生じる。第1の変形例によれば、端部は、出口開口部(21)のキャリア基板の上側(11)からの距離が可変となるように配置され得る。例えば、供給ラインは移動可能であってもよく、端部はキャリア基板に対して調整可能であってもよい。代わりにまたは追加的に、出口開口部の直径が可変となるように端部を設計することもできる。言及された距離および/または直径は、最適な熱伝達および/またはテンパリング媒体の所定の温度設定のための本発明の具体的な用途に応じて選択できる。別の特に好ましい変形例によれば、出口開口部(21)はノズルの形状を有する。ノズルは、供給ライン(20)の出口開口部(21)を形成し、出口開口部(21)が供給ライン(20)よりも直径が小さくなるような形状(漏斗状)である。本発明による別の実施形態では、下端部は、供給
ライン(20)から分離できるように配置される。例えば、交換可能なノズル(24)を設けることができる。端部、特にノズルがねじ接続を介して供給ラインに結合される場合、交換可能性(ノズル直径を変更するため)および位置決め可能性(キャリア基板までの距離を変更するため)の両方を有利に単純化できる。
【0250】
好ましくは、出口開口部(21)の形状がノズルの形態を有する。したがって、本発明による実施形態は、出口開口部(21)がノズルの形状を有する、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口開口部(21)はノズルの形状を有する。
【0251】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられ、
出口開口部(21)はノズルの形状を有する。
【0252】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱され、出口開口部(21)はノズルの形状を有する。
【0253】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁であり、
出口開口部(21)はノズルの形状を有する。
【0254】
好ましくは、ノズルの直径は、1mmから15mmの間、より好ましくは1mmから12mmの間、より好ましくは1mmから10mmの間、より好ましくは1mmから5mmの間、最も好ましくは1.5mmから5mmの間である。好ましくは、ノズルの直径は3mmである。したがって、本発明による一実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口開口部(21)は直径が1.5mmから5mmの間のノズルの形状を有する。
[出口開口部とキャリア基板]
出口開口部(21)とキャリア基板(10)の上側(11)との間の距離を調整することにより、温度変化率をさらに改善できる。距離は0.1mmから5mmの範囲、好ましくは0.1mmから3mmの範囲、より好ましくは0.5mmから1.5mmの範囲であってもよく、最も好ましくは距離は1mmである。
【0255】
したがって、本発明による実施形態は、出口開口部(21)とキャリア基板(10)の上側(11)との間の距離が0.5mmから1.5mmの範囲である、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口開口部(21)とキャリア基板(10)の上側(11)との間の距離が0.5mm
から1.5mmの範囲である。
【0256】
出口開口部(21)の直径とキャリア基板(10)の直径との比が温度変化率にプラスの影響を与える可能性があることも判明した。したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口開口部(21)の直径はキャリア基板(10)の直径よりも小さい。
【0257】
好ましい実施形態では、試料の温度を低下させるための本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁であり、出口開口部(21)はノズルの形状を有し、出口開口部(21)の直径はキャリア基板(10)の直径よりも小さい。
[キャリア基板]
キャリア基板(10)(または冷却基板)は、試料ホルダーおよび熱交換器を形成する。キャリア基板(10)は通常、板状の平坦または湾曲したコンポーネントであり、その一方の表面(ここでは下側と呼ばれる)が試料の容器を形成し、もう一方の表面(ここでは上側と呼ばれる)が熱交換器の表面を形成する。接着性細胞培養物などの自己接着性試料の場合、修飾層を担持する場合がある下側の露出表面が試料ホルダーを提供する。それ以外の場合、例えば非接着性試料の場合、例えば液体の反応相手の試料を受け取る容器を形成するために、下側に受け構造を設けてもよい。上面は、冷却媒体で湿らせるために露出された平らな表面であることが好ましい。しかしながら、上側は、テンパリング流体が接触できる突起または凹みなどの表面構造を有することもできる。
【0258】
テンパリング速度(冷却速度または加熱速度)は5,000K/秒より大きく、特に20,000K/秒より大きい、例えば50,000K/秒を超え、さらには100,000K/秒以上であるのが好ましい。試料の温度変化は、テンパリング流体によって引き起こされるキャリア基板の温度変化と本質的に同時に起こる。この目的のために、キャリア基板は、好ましくは、試料の温度が言及された限界を超えるテンパリング速度(温度勾配)で変化するように熱伝導率の値が選択される材料を含む。キャリア基板(10)の熱伝
導率は、1,000W/Kmより大きいことが特に好ましく、特に1,500W/Kmより大きいことが好ましい。
【0259】
キャリア基板(10)の厚さは、好ましくは2mm未満、好ましくは1mm未満、より好ましくは500μm未満である。キャリア基板に加えられる高圧に必要な適切な安定性と組み合わせた素早い熱伝達は、厚さが0.1mmから10mmの範囲、より好ましくは0.1mmから2mmの範囲、最も好ましくは0.5mmから1.5mmの範囲にある場合に達成できる。
【0260】
したがって、本発明による実施形態は、キャリア基板(10)の厚さが0.1mmから10mmの範囲である、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有する、厚さが0.1mmから10mmの範囲のキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0261】
キャリア基板(10)は、所望の熱伝導率およびテンパリング流体の圧力下での十分な強度を有する任意の材料で作ることができる。したがって、キャリア基板(10)は熱伝導体として機能する。例えば、キャリア基板は銅(400W/Km)または銀(430W/Km)で作ることができる。このような場合、十分な強度を得るために必要なキャリア基板の厚さは、熱伝導率の値や達成可能な温度変化率(テンパリング速度)に悪影響を与える可能性があるが、キャリア基板(10)が確実に十分な厚さを有することが重要である。しかし、テンパリング速度に対する要求が低い場合、および/または大気圧に対して高い圧力下でも試料が配置される場合、これは決定的ではない。
【0262】
キャリア基板は、ダイヤモンドディスク、例えば厚さ2mm未満、特に500μm未満の合成ダイヤモンドディスクを含む。ダイヤモンドの使用は、基板厚を薄くした場合の熱伝導率(製品によって異なり、例えば1,500W/Km)と強度の最適値に関して特別な利点がある。
【0263】
したがって、本発明による実施形態は、キャリア基板(10)がダイヤモンド、特にCVDダイヤモンドである、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。好ましくは、CVDダイヤモンドの不純物は6ppb未満である。キャリア基板は、ダイヤモンドディスク、例えば厚さが2mm未満、好ましくは1mm未満、より好ましくは500μm未満の合成ダイヤモンドディスクを含み得る。ダイヤモンドの使用は、基板厚を薄くした場合の熱伝導率(製品によって異なり、例えば1,500W/Km)と強度の最適値に関して特別な利点がある。特に好ましいのは2200W/Kmを超える熱伝導率を示す単結晶CVDダイヤモンドである。
【0264】
したがって、本発明による実施形態は、キャリア基板(10)が不純物が6ppb未満のCVDダイヤモンドから構成される、試料の温度を低下させるための温度制御装置(1
00)を対象とする。このようなCVDダイヤモンドを使用すると、熱伝導率が増加し、温度変化率も大きくなる。
【0265】
したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有する、不純物が6ppb未満のCVDダイヤモンドで作られたキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0266】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有する、不純物が6ppb未満のCVDダイヤモンドで作られたキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0267】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有する、不純物が6ppb未満のCVDダイヤモンドで作られたキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0268】
本発明による別の実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有する、単結晶CVDダイヤモンドで作られたキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(4
00)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0269】
本発明のさらなる利点は、キャリア基板(10)の上側からの温度低下によってもたらされ、それによって試料を下側で露出させることができる。例えば、テンパリング媒体の供給前、供給中および/または供給後に試料の光学的および/または電気的測定を実施することが可能である。例えば、光学顕微鏡、共焦点顕微鏡、倒立型共焦点顕微鏡、または観察光学系を含む測定装置(1000)および/またはインピーダンス測定装置(1000)、具体的には倒立光学顕微鏡、より具体的には倒立型共焦点顕微鏡が配置される。顕微鏡を使用すると、試料をキャリア基板上の変化しない位置に留めながら、高解像度で観察できる。インピーダンス測定装置は、キャリア基板の前面に配置される測定電極を備えてもよい。
【0270】
したがって、装置(100)は測定装置(1000)を備えることができ、好ましくは、顕微鏡を含み、より好ましくは倒立顕微鏡を含む。
【0271】
したがって、本発明の一実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とし、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(f)測定装置(1000)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0272】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(f)測定装置(1000)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0273】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(4
00)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(f)測定装置(1000)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0274】
本発明による装置(100)の好ましい実施形態では、測定装置(1000)は倒立顕微鏡である。したがって、本発明の別の態様は、倒立型クライオ顕微鏡(2000)を対象とし、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(f)測定装置(1000)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0275】
好ましい実施形態では、本発明の倒立型クライオ顕微鏡(2000)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)に接続された上端と、下端にキャリア基板(10)の上側(11)を向いた出口開口部(21)を有し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)出口開口部(21)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)と、
(f)測定装置(1000)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁であり、出口開口部(21)はノズルの形状を有し、出口開口部(21)の直径はキャリア基板(10)の直径よりも小さい。
[試料チャンバ(14)]
装置はさらに、試料チャンバ(14)を備えることができる。したがって、本発明による実施形態は、試料チャンバ(14)をさらに備えた、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。試料チャンバ(14)はスペーサを含んでもよいが、スペーサを含まないことが好ましい。これにより、温度変化率をさらに著しく向上させることができる、すなわち温度変化率が増加する。
【0276】
したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(g)試料チャンバ(14)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0277】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(g)試料チャンバ(14)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0278】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(g)試料チャンバ(14)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0279】
一実施形態では、
図3Eに示すように、試料チャンバ(14)は、キャリア基板の下側と観察窓(15)によって形成される。この試料チャンバは追加のスペーサを含んでも含まなくてもよい。
【0280】
本発明による好ましい実施形態は、スペーサを含まない試料チャンバ(14)を含む、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。したがって、本発明による好ましい実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(g)スペーサを含まない試料チャンバ(14)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0281】
温度変化率をさらに高める必要がある場合には、本発明による装置が試料チャンバ(14)さえ含まないことがさらに好ましい。したがって、本発明による実施形態は、試料チャンバ(14)を含まず、スペーサも含まない、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。
【0282】
したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と
を備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
当該装置(100)は試料チャンバ(14)およびスペーサを含まない。
[膨張チャンバ]
出口開口部と膨張チャンバとの間の高い圧力差により、キャリア基板(10)での液体(2)の素早い輸送が可能になることがわかった。膨張チャンバ(30)が大きくなればなるほど、出口開口部(21)と膨張チャンバ(30)との間の圧力差が大きくなり、キャリア基板(10)における液体の輸送速度を高めることができる。
【0283】
したがって、本発明による実施形態は、膨張チャンバ(30)の寸法が50cm3から100cm3の範囲である、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。
【0284】
したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む、寸法が50cm3から100cm3の範囲である膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0285】
最大冷却速度を達成するためには、キャリア基板(10)はCVDダイヤモンドで作られ、膨張チャンバ(30)の寸法は50cm3から100cm3の範囲にあり、供給ライ
ン(20)は漏斗形であり、出口開口部(21)とキャリア基板(10)の上側(11)との間の距離は0.5mmから1.5mmの範囲にある。
【0286】
したがって、本発明による好ましい実施形態は、キャリア基板(10)はCVDダイヤモンドで作られ、膨張チャンバ(30)の寸法は50cm3から100cm3の範囲にあり、供給ライン(20)は漏斗形であり、出口開口部(21)とキャリア基板(10)の正面(11)との間の距離は0.5mmから1.5mmの範囲にある、試料の温度を低下させるための装置(100)を対象とする。
【0287】
したがって、本発明による好ましい実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む、出口開口部(21)とキャリア基板(10)の正面(11)との間の距離が0.5mmから1.5mmの範囲にあり、寸法が50cm3から100cm3の範囲である膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0288】
本発明の装置(100)の膨張チャンバ(30)は、テンパリング液が供給されるときにチャンバ内が確実に低圧であり得るように開放されていることが好ましい。膨張チャンバは、
図3B、
図3Cおよび
図3Dに示すように、気体出口(23)を備えたハウジング内にあってもよい。したがって、本発明による装置は、気体出口(23)をさらに備え得る。気体出口(23)が排気ホース用クイックカップリングを介して排気ホースに接続されるのが好ましい。排気ホースは膨張チャンバ(30)のハウジングに接続されるのが好ましい。
【0289】
したがって、本発明による実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む開放膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0290】
本発明による別の実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも
高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む、気体出口(23)を備えた開放膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0291】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む、気体出口(23)を備えた開放膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に直接取り付けられる。
【0292】
好ましくは、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む、気体出口(23)を備えた開放膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
供給ライン(20)は、好ましくは高密度ポリエチレンで、内側から断熱される。
【0293】
好ましい実施形態では、本発明の装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備え、漏斗状の底部を有する圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、その下端が漏斗状である供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む、気体出口(23)を備えた開放膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
出口弁(22)は、昇降シリンダ(200)と、ピストン(501)と、ピストンチップ(510)と、ピストンガイド(520)とを備えた空気圧で切替可能な弁であり、出口開口部(21)はノズルの形状を有し、出口開口部(21)の直径はキャリア基板(10)の直径よりも小さい。
[恒久的冷却]
本発明の別の有利な変形例によれば、試料の温度変化後、特に冷却後、試料を有するキ
ャリア基板(10)の恒久的テンパリングを行うことができる。例えば、倒立顕微鏡法による試料の検査中に、気体または液体の恒温媒体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって低温を維持できる。気体または液体の恒温媒体は、5バールから10バールの間の低圧で供給される。さらに、急凍結した試料の凍結固定も可能である。凍結固定は、それ自体公知の方法の1つを使用して実施することができ、それにより、試料を有するキャリア基板(10)が装置から凍結固定装置、例えば液体窒素の入ったクライオタンクに必要に応じて移送される。
【0294】
恒久的冷却のためのテンパリング液は、圧力タンク(400)から、あるいは供給ラインに接続された別個のラインを介して供給されてもよい。恒久的冷却のためのテンパリング液は、冷却タンク(300)に貯蔵された冷却媒体であるのが好ましい。
【0295】
したがって、本発明による一実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成され、恒久的冷却のためのテンパリング液用の入口を備えた供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
【0296】
本発明による一実施形態では、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
冷却タンク(300)は供給ラインに恒久的冷却のためのテンパリング液を供給するための圧力タンク(400)に接続される。
【0297】
テンパリング液は、試料温度を常に低く保つために、冷却後に素早くまたは瞬間的に供給されることが好ましい。この点で、テンパリング液が圧力タンク(400)から供給される本発明の装置の実施形態では、テンパリング液の供給は弁によって制御される。弁は、出口弁(22)が開くことによりタンク内の圧力が下がるとすぐに開く逆止弁であってもよい。あるいは、弁は、所定の時間が経過した後に開く弁であってもよい。
【0298】
したがって、本発明による一実施形態では、試料の温度を低下させるための装置(100)は、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲む膨張チャンバ(30)と、
(e)液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)はキャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられ、
冷却タンク(300)は弁を介して供給ラインに恒久的冷却のためのテンパリング液を供給するための圧力タンク(400)に接続される。
【0299】
弁は、圧力タンク内の圧力が大気圧に達すると開くように構成された逆止弁であるのが好ましい。弁は、圧力タンク内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力を下回ると開くように構成された逆止弁であるのが好ましい。
【0300】
本発明による別の実施形態は、試料の温度を低下させるための装置(100)に関し、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)をキャリア基板(10)の上側(11)に接続し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)キャリア基板(10)の上側(11)を取り囲み、恒久的冷却のためのテンパリング液用の入口をさらに備えた膨張チャンバ(30)とを備え、
供給ライン(20)を可能な限り短くするために、圧力タンク(400)が前記キャリア基板(10)の上側(11)に取り付けられる。
[蛍光顕微鏡法]
本明細書に開示される方法および装置は、凍結停止試料(1)の蛍光顕微鏡法に特に有用である。試料(1)、好ましくは生きた細胞などの生体試料の超急速凍結停止は、モーションブラーおよび光化学反応性によって課せられる基本的な分解能の障壁を克服し、それによって、生理的温度では解像できない本来の分子分布および反応パターンの観察を可能にする。
【0301】
したがって、本発明のさらなる態様は、以下のステップを含む蛍光顕微鏡法の方法を対象とする。
【0302】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)試料(1)を照射することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出すること。
【0303】
試料(1)を、レーザー、LED、キセノンまたは水銀ガスランプなどの任意の適切な光源によって照射できる。
【0304】
好ましくは、蛍光顕微鏡検査の方法は以下のステップを含む。
【0305】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)試料(1)を照射することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出すること。
【0306】
好ましくは、蛍光顕微鏡検査の方法は以下のステップを含む。
【0307】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させて、試料(1)を結晶化させることなく、好ましくは直径80nmを超える氷晶を形成することなく、好ましくは直径10nmを超える氷晶を形成することなく、より好ましくは直径1nmを超える氷晶を形成することなく、さらにより好ましくは氷晶を形成することなくガラス化することと、
(d)試料(1)を照射することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出すること。
【0308】
好ましい実施形態では、蛍光顕微鏡検査の方法は以下のステップを含む。
【0309】
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(a’)試料(1)を照射することと、
(a’’)試料(1)によって生成される蛍光を検出することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d’)ステップ(a’)およびステップ(a’’)を繰り返すこと。
【0310】
[誘導放出抑制(STED)による光学顕微鏡法]
本発明のさらなる態様は、凍結停止試料(1)の誘導放出抑制を用いて光学顕微鏡法を実施する方法を対象とし、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d1)少なくとも1つの焦点領域に集束される第1のパルスレーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を励起して蛍光を発させることと、
(d2)少なくとも1つの焦点領域内に強度ゼロ点を含む第2のトーラス形レーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を脱励起することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出することと、
(f)任意選択で、第1のパルスレーザービームの焦点領域のさまざまな位置および第2のトーラス形状レーザービームの強度ゼロ点のさまざまな位置で、ステップd1と、ステップd2と、ステップeとを繰り返すこととを含む。
【0311】
好ましくは、凍結停止試料(1)の誘導放出抑制による光学顕微鏡法を実施する方法は、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d1)少なくとも1つの焦点領域に集束される第1のパルスレーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を励起して蛍光を発させることと、
(d2)少なくとも1つの焦点領域内に強度ゼロ点を含む第2のトーラス形レーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を脱励起することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出することと、
(f)任意選択で、第1のパルスレーザービームの焦点領域のさまざまな位置および第2のトーラス形状レーザービームの強度ゼロ点のさまざまな位置で、ステップd1と、ステップd2と、ステップeとを繰り返すこととを含む。
【0312】
好ましくは、凍結停止試料(1)の誘導放出抑制による光学顕微鏡法を実施する方法は、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させて、試料(1)を結晶化させることなく、好ましくは直径80nmを超える氷晶を形成することなく、好ましくは直径10nmを超える氷晶を形成することなく、より好ましくは直径1nmを超える氷晶を形成することなく、さらにより好ましくは氷晶を形成することなくガラス化することと、
(d1)少なくとも1つの焦点領域に集束される第1のパルスレーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を励起して蛍光を発させることと、
(d2)少なくとも1つの焦点領域内に強度ゼロ点を含む第2のトーラス形レーザービームによって試料(1)を照射して、試料(1)中の蛍光分子を脱励起することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光を検出することと、
(f)任意選択で、第1のパルスレーザービームの焦点領域のさまざまな位置および第2のトーラス形状レーザービームの強度ゼロ点のさまざまな位置で、ステップd1と、ステップd2と、ステップeとを繰り返すこととを含む。
[蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)]
本発明のさらなる態様は、凍結停止試料(1)の時間相関単一光子計数法による蛍光寿命イメージング顕微鏡法を実施する方法を対象とし、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)パルスレーザービームを試料に照射することにより、定期的に蛍光分子を励起して蛍光光子を放出することと、
(e)試料によって生成された蛍光光子を、レーザーパルス(1)に対する光子の到着時間とともに検出することと、
(f)検出された蛍光光子および光子の到着時間から蛍光寿命を決定することとを含む。
【0313】
好ましくは、凍結停止試料(1)の時間相関単一光子計数法による蛍光寿命イメージング顕微鏡法を実施する方法は、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、5MPaから100MPaの間の圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させることと、
(d)パルスレーザービームを試料に照射することにより、定期的に蛍光分子を励起して蛍光光子を放出することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光光子を検出することと、
(f)検出された蛍光光子から蛍光寿命を決定することとを含む。
【0314】
好ましくは、凍結停止試料(1)の時間相関単一光子計数法による蛍光寿命イメージング顕微鏡法を実施するための方法は、
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に蛍光分子を含む試料(1)を提供することと、
(b)臨界温度未満の温度を有する液体窒素と、少なくとも2.5MPaの圧力を有するヘリウムとを圧力タンク(400)内に供給することと、
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に液体窒素を供給し、液体窒素をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に、そして試料(1)内に氷晶を形成することなく、あるいは試料(1)内に直径80nmを超える氷晶を形成することなく、または直径10nmを超える氷晶を形成することなく、低下させることと、
(d)パルスレーザービームを試料に照射することにより、定期的に蛍光分子を励起して蛍光光子を放出することと、
(e)試料(1)によって生成される蛍光光子を検出することと、
(f)検出された蛍光光子から蛍光寿命を決定することとを含む。
【0315】
本開示は、以下の項目にも関連する。
【0316】
項目1.以下のステップを含む、倒立顕微鏡法用の試料(1)の温度を低下させる方法:
(a)大気圧でキャリア基板(10)の下側(12)に試料(1)を提供することと;
(b)臨界温度未満の温度を有する少なくとも1つの液体(2)と、大気圧よりも高い圧力を有する気体(500)とを圧力タンク(400)内に供給することと;
(c)圧力タンク(400)の底部に位置する出口弁(22)を開くことによって、加圧下で圧力タンク(400)からキャリア基板(10)の上側(11)に少なくとも1つの液体(2)を供給し、少なくとも1つの液体(2)をキャリア基板(10)の上側(11)に接触させ、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは急速に低下させること。
【0317】
項目2.気体(500)の圧力が50バールから1000バールの間である、項目1に記載の方法。
【0318】
項目3.ステップ(b)における少なくとも1つの液体(2)が液体窒素である、項目1または項目2に記載の方法。
【0319】
項目4.気体(500)はヘリウムである、項目1から項目3のいずれかに記載の方法。
【0320】
項目5.ステップ(d)をさらに含む、項目1から項目4のいずれかに記載の方法:
(d)さらなる液体にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることによって、キャリア基板(10)の下側(12)の試料(1)をテンパリングすること。
【0321】
項目6.試料(1)が生物材料の生きた試料、好ましくは生きた細胞である、項目1から項目5のいずれかに記載の方法。
【0322】
項目7.ステップ(c)において、試料(1)の温度を低下させる、好ましくは試料(1)内に氷晶を形成することなく、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶を形成することなく、急速に低下させる、項目1から項目7のいずれかに記載の方法。
【0323】
項目8.試料(1)の温度を低下させるための装置(100)であって、
(a)試料(1)を収容するための下側(12)と、液体(2)の供給のために露出された上側(11)とを有するキャリア基板(10)と、
(b)流体を保持するように構成され、底部に出口弁(22)を備えた圧力タンク(400)と、
(c)出口弁(22)に接続された上端と、下端にキャリア基板(10)の上側(11)を向いた出口開口部(21)を有し、大気圧よりも高い圧力をかけて液体(2)を通過させるように構成された供給ライン(20)と、
(d)出口開口部(21)を取り囲む膨張チャンバ(30)とを備えた装置(100)。
【0324】
項目9.試料(1)内に氷晶が形成されないように、または試料(1)内に直径10nmを超える氷晶が形成されないように、試料(1)の温度を低下させる、項目8に記載の装置(100)。
【0325】
項目10.出口弁(22)が、切替可能な弁、好ましくは素早く開く切替可能な弁、好ましくは電気または空気圧で切替可能な弁、好ましくは切替可能なピストン弁である、項目8または項目9に記載の装置(100)。
【0326】
項目11.圧力タンク(400)の底部は漏斗状であり、出口弁(22)はその底部の中央に位置している、項目8から項目10のいずれかに記載の装置。
【0327】
項目12.キャリア基板(10)がダイヤモンド、特にCVDダイヤモンドである、項目8から項目11のいずれかに記載の装置(100)。
【0328】
項目13.出口開口部(21)とキャリア基板(10)の上側(11)との間の距離は、0.5mmから1.5mmの範囲である、項目8から項目12のいずれかに記載の装置(100)。
【0329】
項目14.膨張チャンバ(30)の寸法が、50cm3から100cm3の範囲である、項目8から項目13のいずれかに記載の装置(100)。
【0330】
項目15.圧力タンク(400)が、液体(2)を冷却するための冷却タンク(300)によって囲まれている、および/または供給ラインが漏斗状、好ましくは出口開口部(21)において漏斗状である、項目8から項目14のいずれかに記載の装置(100)。
【図面の簡単な説明】
【0331】
【
図1】ブラウン運動をシミュレーションした室温で(実線)または凍結停止下で(点線)放出されたさまざまな量の光子(右の凡例)の構造サイズに対してプロットした実際の構造サイズ(左)および分解能(右)を基準として計算された位置特定精度を示す。水平の黒い点線:実際の構造サイズの10%の位置特定精度。この図は、観察されたシステムの空間分解能の限界(「基本的な障壁」)を示す。PSFは顕微鏡の点拡がり関数を示す。この限界は、観察された構造のサイズに反比例し、ブラウン運動または活発な運動(「室温」対「凍結停止」)によって、および分子断面積、蛍光量子収率、励起状態寿命、光化学的安定性によって決定される最大限に達成可能な蛍光光子束によって制限される露光時間によって決定される収集された光子の数によって引き起こされる。
【
図2】倒立顕微鏡(1000)に適用された本発明の装置(100)の一実施形態の概略図を示す。以下の手段が示されている:試料(1)、液体(2)、気体(500)、キャリア基板(10)、キャリア基板(10)の上側(11)および下側(12)、冷却タンク(300)、圧力タンク(400)、供給ライン(20)、出口開口部(21)、出口弁(22)、膨張チャンバ(30)および倒立顕微鏡(100)。
【
図3A】本発明による装置(100)の詳細図を示す:キャリア基板(10)は、熱交換器として機能し、その下側で試料(1)を受け入れ、液体(2)用の供給ライン(20)、出口開口部(21)。出口弁(22)が開くと、液体(2)と気体(500)が圧力タンク(400)から流出し、供給ラインを通ってキャリア基板(10)の上側(11)へ通り、膨張チャンバ(30)内に流れ込む。
【
図3B】気体出口(23)を備えた膨張チャンバ(30)を有する本発明の装置(100)の一実施形態の詳細図を示し、気体出口(23)は、排気ホース用のクイックカップリングをさらに備えてもよい。
【
図3C】閉じた膨張チャンバ(30)と、漏斗状の出口開口部(21)を有する供給ライン(20)とを有する本発明の装置(100)の一実施形態の詳細図を示す。出口開口部は、ノズルの形状であってもよい。
【
図3D】閉じた膨張チャンバ(30)と、漏斗状の出口開口部(21)を有する供給ライン(20)とを有する本発明の装置(100)の実施形態の詳細図を示す。出口開口部はノズルの形状であってもよい。
【
図3E】本発明の装置(100)の一実施形態の詳細図を示し、観察窓(15)が試料(1)の下方に配置され、それによって試料チャンバ(14)を形成している。
【
図4A】丸底または半円形の底を有する、本発明による装置の圧力タンク(400)の例示的な実施形態を示す。
【
図4B】平らな底を有する、本発明による装置の圧力タンク(400)の例示的な実施形態を示す。
【
図5】切替可能な出口弁(22)を備えた本発明による装置の圧力タンク(400)の例示的な実施形態を示す。以下の手段が示されている:昇降シリンダ(200)、ピストンガイド(520)、ピストンチップ(510)およびピストン(501)。ピストンチップは、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されることが好ましい。この切替可能な弁により、大きな断面を素早く開くことができる。
【
図6】本発明による装置を使用することによる温度プロファイルを示す。冷却実験には、直径4mm、厚さ100μmの円柱状の試料を使用した。温度は、水性イメージング媒体(PAN-Biotech GmbHのHEPES緩衝液を含むDMEM)中で50μmの非断熱ワイヤ熱電対(Tタイプ、Omega Engineering Inc.)を使用することによって測定した。見てわかるように、温度は最初は所望の温度に維持できる。切替弁を開くと温度が急に下がり-130℃を下回る。その後、液体窒素にキャリア基板(10)の上側(11)を通過させることにより、温度は常に-130℃を下回る温度に保たれる。
【
図7A】
図7A~
図7Cは、本発明による装置(
図7A)とEP2877828B1による装置(
図7B)によって達成される温度および冷却速度の比較を示す。温度は、水性イメージング媒体(PAN-Biotech GmbHのHEPES緩衝液を含むDMEM)中で50μmの非断熱ワイヤ熱電対(Tタイプ、Omega Engineering Inc.)を使用することによって測定した。
図7Aの一番下の曲線は、本発明による装置または方法を使用した冷却実験の冷却速度を℃/秒で示している。太線は個々の冷却実験の平均値であり、標準偏差を示している。他の曲線は、個々の冷却実験の温度プロファイルを示している。ここでは冷却プロセスがはっきりと確認でき、0℃から-130℃の間の温度範囲で冷却速度(一番下の曲線)が10,000K/秒を超えていることがわかる。その温度範囲では、通常、氷が形成され得る。
【
図7B】一番下の曲線は、EP2877828B1による装置または方法を使用した冷却実験の冷却速度を℃/秒で示している。
【
図7C】50バールの圧力(実線)と25バールおよび15バールのより低い圧力(破線)で液体窒素(LN2)とヘリウム(He)の混合物で動作させた本発明による装置、およびLN2を使用せず50バールのヘリウムで動作させた本発明による装置によって達成される冷却速度の比較を示す。温度は、水性イメージング媒体(PAN-35 Biotech GmbHのHEPES緩衝液を含むDMEM)中で50μmの非断熱ワイヤ熱電対(Tタイプ、Omega Engineering Inc.)を使用して測定した。ヘリウム圧力が低いほど冷却速度が遅くなることがはっきりとわかる。液体窒素を省略した場合に、最も低い冷却速度が観察された。
【
図8】本発明による装置と、供給ラインをキャリア基板の上側まで延長することによって倒立顕微鏡に適合させたEP2877828B1による装置(「従来技術の装置」)とによって達成される温度と温度変化率との比較を示す。温度変化率は、水性イメージング媒体(PAN-Biotech GmbHのHEPES緩衝液を含むDMEM)中で50μmの非断熱ワイヤ熱電対(Tタイプ、Omega Engineering Inc.)を使用して測定した。
【
図9】さまざまな冷却速度での希水溶液(PBS)中の氷晶の電子顕微鏡画像(入口:電子回折パターン)を示す。すべての冷却速度(相対測定)を50μmの熱電対を使用して記録した。実際の冷却速度ははるかに速い。(A)倒立顕微鏡に適合させた従来技術の装置で得られた、約1000K/秒の測定冷却速度で凍結された試料(
図8)。電子回折パターンは、六角形の氷晶が1つだけ見つかることを示している。氷晶の実際の大きさは決定できない。しかし、試料は六角形の氷のみで構成されており、このサイズでは細胞内の分子成分が変位させられて細胞が破壊されてしまうだろう。(B)および(C)は、それぞれ約2500K/秒および3500K/秒の測定冷却速度で凍結した試料を示す。個々の氷晶が観察された。約3500K/秒の冷却速度では、氷晶の直径は50nmより小さい。(D)は、約3500K/秒の測定冷却速度で凍結された30%デキストラン(凍結保護剤)を含む細胞試料を示す。直径10nm未満の立方体の氷晶が形成された。矢印は細胞膜の方向を指す。
【
図10】本発明による装置(100)の一実施形態の断面図を示す。以下の手段が示されている:昇降シリンダ(200)、冷却タンク(300)、圧力タンク(400)、ピストンチップ(510)、熱交換器(600)、測定装置(1000)、例えば倒立顕微鏡、および気体出口(23)。密閉された膨張チャンバ(30)は、キャリア基板(10)とともに熱交換器(600)を形成する。気体出口(23)はさらに、排気ホース用のクイックカップリングを備える。
【
図11】
図10に示した本発明による装置(100)の実施形態の外観図を示す。高さを調整およびロックするための手段(800)が図示されている。
【
図12】
図10に示した本発明による装置(100)の実施形態の下部を示す。特に、ピストンチップ(510)、熱交換器(600)、およびダイヤモンド窓(700)が図示されている。
【
図13】
図10に示した排気ホース用のクイックカップリングとともに、本発明による装置(100)の下部、具体的には気体出口(23)を示す。
【
図14】
図10に示した本発明の装置(100)の一部としての圧力タンク(400)の上部の詳細図を示す。圧力測定器、破裂板、ガス供給管などのアセンブリ部品用のねじ穴(450)が図示されている。
【
図15】
図10に示した本発明による装置(100)の一実施形態のねじ穴(450)の上面図を示す。高さを調整およびロックするための手段(800)、ねじ穴(450)、および昇降シリンダ用の穴(210)が図示されている。
【
図16】
図10に示した本発明による装置(100)の一実施形態の昇降シリンダ(200)のより詳細な図を示す。とりわけ、ピストンガイド(520)が図示されている。
【
図17】EGFPをトランスフェクトしたHeLa細胞の凍結固定前(最初の3つの画像)および凍結固定中(右端の画像)の広視野蛍光顕微鏡法の結果を示す。スケールバー:10μm
【
図18】顕微鏡での超急速凍結停止後の細胞培養培地中の蛍光色素ローダミン6Gの広視野蛍光画像を示す(一番左)。試料は、凍結停止前にすでに存在していた蛍光性の高い構造を除けば、ほとんど均一であった。矢印:膨張亀裂。右端の3つの画像:再加温中の同じ試料。亀裂は完全に消失し、その後、蛍光染料を除去すると氷晶が見えるようになった(矢印)。その後、氷晶が最初に成長し、さらに高い温度で溶けて氷晶間の液相が膨張した(右端の図の矢印で例示)。スケールバー:10μm
【
図19】凍結停止前に、停止前の指定の時間で共焦点走査型顕微鏡法によって画像化された、TC-PTP-mCitrineを発現するMCF7細胞の例を示す(左から画像1から3)。右半分:同じ細胞が共焦点顕微鏡法(10フレームの合計)および広視野顕微鏡法(上:単一フレーム、下:100フレームの合計)で画像化されている。右下の画像:100フレームのSRRF(super resolution radial fluctuation)再構成。スケールバー:10μm
【
図20A】R-PTP-γ-mCitrineおよびAlexa647標識されたSnap-EGFRを発現するMCF7細胞を示す。100ng/mLのEGF適用後(単一フレーム、画像1から3)および凍結停止中(10フレームの合計、37.5秒、画像4)の指定時間(3.75秒のスキャン時間)で以前に共焦点レーザー走査型顕微鏡法で画像化したものである。右、上:いくつかの細胞を含むより広い領域の共焦点スキャン。2列目:同じ細胞の100フレームの広視野記録のSRRF再構成(左)および事前のEGF刺激なしで固定された細胞の例。3列目:原形質膜用のマスクを備えたボックス領域の拡大図(白い点線)。スケールバー:10μm
【
図20B】室温(上)および凍結停止下(下)でAlexa647-Snap-EGFR標識エンドソームのCLSMによって測定されたモーションブラー。左の画像:個々のフレーム、右の画像:10フレームの合計。グラフ:フレーム番号ごとに色分けされた、対応する累積背景補正ラインプロファイル。
【
図21A】生MCF7細胞(上)および凍結停止MCF7細胞(下)におけるAlexa647-Snap-EGFRのCLSMおよびSTEDナノスコピー法。細胞のCLSM(最初の列、ピクセルサイズ:100nm)。指定のレーザー照射強度によるボックス領域の詳細(ピクセルサイズ:40nm)CLSMスキャン(2列目)およびSTEDスキャン(3列目)。生細胞:単一スキャン。凍結停止細胞:10スキャンの合計。
【
図21B】指定のディプリーションレーザー出力での室温(rt)または凍結停止下(cryo)でのSTEDスキャン中のAlexa647光退色。λ:指数関数的適合によって決定された減衰率(平均+/-標準偏差、N=5)。
【
図21C】小胞を含むさまざまな領域の対応するCLSMによって正規化されたSTED空間周波数スペクトル(cryo:n=11;化学固定:n=8;rt 生:n=6)。水平線:STED情報内容がCLSM(スチューデントのt検定)よりも大幅に高い周波数範囲;垂直線:デジタル分解能。
【
図21D】上の段:凍結停止したMCF7細胞の3D-CLSM。下の段:上の段の指定された領域の詳細な高解像度スキャン(ピクセルサイズ:40nm):CLSM(左の列)、STED(中央の列)、および併合したもの(右の列)。
【
図22】LIFEA2を安定的に発現するCos7細胞の共焦点FLIMによって得られた代表的な強度加重平均蛍光寿命(τ)画像。室温(rt、上)または凍結停止下(cryo、下)でのクラスター化エフリンA1刺激がない(左の列)場合およびクラスター化エフリンA1刺激がある場合(右)。バー:τ(ns)。
【
図23】超急速凍結停止前および超急速凍結停止中の指定時間のクラスター化エフリンA1刺激後のLIFEA2発現Cos7細胞の共焦点FLIM。上のパネル:蛍光光子数、下のパネル:τ(ns)、グラフ:室温および凍結停止での対応するτヒストグラム。
【
図24A】クラスター化エフリンA1刺激がある場合(rt:B、N=6;n=9;cryo:D、N=7;n=16)、およびない場合(rt:A、N=6、n=10、cryo:C、N=2、n=11)の、室温および凍結停止でのLIFEA2の正規化された累積蛍光減衰ヒストグラム。
【
図24B】
図24Aの蛍光減衰データの第1高調波から導出されたフェーザー(R)の虚数部(Im)と実数部(Re)。破線:フェーザーの線形回帰。
【
図25】クラスター化エフリンによる14分間の刺激後の凍結停止時の共焦点FLIMによって得られた、さまざまなz高さ(行)での蛍光光子数(上パネル)およびLIFEA2の活性構造の蛍光強度加重割合(下パネル)。バー:活性構造にあるLIFEA2の割合(α)。
【
図26】凍結停止下のEGF刺激(100ng/ml)MCF7細胞におけるAlexa647-Snap-EGFRの5×5μm領域の10連続STEDスキャンからなる代表的なシリーズを示す。画像は2回のスキャンの合計として表示され、暗い蛍光を強調するためにガンマ補正(γ:0.24)されている。突起のある原形質膜は、エンドサイトーシス構造を伴う細胞質蛍光を細胞外自己蛍光(細胞外)から分離する連続蛍光領域として見えている。このシリーズは最大レーザー強度(0.42W/μm
2)で取得された。蛍光色素分子を排除し、光を散乱させ、暗い斑点として現れる80nm(デジタル分解能)以上の氷晶は統合画像では検出されず、STEDビームによって起こり得る加熱によりスキャン中に形成されることもなかった。
【発明を実施するための形態】
【0332】
[実施例1:本発明の装置の例示的な実施形態の設計と動作]
冷却装置(100)の主要部品は、N2およびヘリウムを保持する圧力タンク(400)と、熱交換器ユニットとして機能するキャリア基板(10)である。圧力タンク(400)はステンレス鋼で作られ、接合部は銅ガスケットで密閉された。圧力タンク(400)は、鋼板から作られたStyrodur(登録商標)で断熱された冷却タンク(300)に満たされた液体N2によって外部から冷却される。圧力タンク(400)は、弁(22)として機能する、空気圧制御の特注ピストンを含んでいた。ピストンは、シャフトでバネ仕掛けのPTFEシーリング材でシールされている。ピストンの先端は高密度ポリエチレン(HDPE)で作られ、閉じたときにタンクのステンレス鋼に対してシールを形成すると同時に圧力に耐える。ピストンが上昇すると、加圧流体がキャリア基板(10)の上側(11)に放出される。接続部品として機能する供給ライン(20)は実現可能な限り短く保たれ、金属部品からの冷却剤の加熱を最小限に抑えるためにHDPEによって内側から断熱された。熱交換器ユニット内で、混合物は、出口開口部(21)のノズルを通して、ダイヤモンド窓を含むキャリア基板(10)の上側(11)に直接導かれる。その後、混合物は拡がって排気口に導かれる。
【0333】
ヘリウムとN2の混合物を使用すると、それぞれを単独で使用するよりもはるかに優れた冷却性能が得られた。N2単独では-196℃、50バールで急速に液化するため、容器内の圧力が低下し、放出が遅くなる。その結果、冷却速度ははるかに遅くなった。ヘリウムはこれらの条件下では液化できないが、ガスだけでは熱容量が低すぎるため、凍結固定が不完全で遅くなる。液体窒素に浸した銅スパイラルを通して導入された、内部供給源(約7から8バール)からの窒素でまず装置を満たすことにより、N2を1分間装置に充填した。その後、加圧ボトル(200バール、Westfalen AG、ミュンスター、ドイツ)からのヘリウムによって圧力を高めた。圧力タンクを満たすために使用される圧力は、減圧弁によって50バールに制限された。
【0334】
すべての弁は、Labviewソフトウェア(National Instruments、オースティン、テキサス州、米国)を使用して作成されたグラフィカルユーザーインターフェイスを介して制御した。極低温使用に適した逆止弁(CGS250SS、Fluessiggas-Anlagen GmbH、ザルツギッター、ドイツ)を圧力容器と窒素供給用の銅スパイラルの間に設置し、高圧が銅スパイラルに入るのを防いだ。装置全体は、電子制御昇降シリンダ(1000N、Drive-System Europe
Ltd.、ヴェルター、ドイツ)を使用して試料を取り付けるために上昇できる方法で、落射蛍光顕微鏡の上のフレームに取り付けられる。
【0335】
熱交換器ユニットに取り付けられ、PIDコントローラー(KT4、パナソニック株式会社、門真、日本)によって制御される2つの50W加熱バンド(Friedr.Freek GmbH、メンデン、ドイツ)によって、ショット前には常に37℃に加熱された。
【0336】
急速冷却後の温度を常に-196℃に保つために、内部供給(約8バール)からのN2を使用し、N2は液体窒素に浸した銅製のスパイラルを通して導入された。銅コイルと圧力容器の間の逆止弁は、容器内の圧力が銅コイル内の圧力を下回るとすぐに開く。これにより、液体窒素がダイヤモンド上の容器を通って流れ、容器を-196℃近い温度に保つ。
【0337】
対物レンズの周囲には、カスタム3Dプリントされたコネクタによって透明なフレキシブルフォイルがステージに取り付けられた。このホイルの内側の部屋は、実験の間中一定の低流量の室温の乾燥ヘリウムで満たされていた。対物レンズの温度は、対物レンズヒーター(Bioptechs Inc.、バトラー、ペンシルベニア州、米国)によって制御された。対物レンズヒーターは常に25℃に設定した。30から60分のイメージング
実験中、対物レンズの温度は通常7℃から10℃の間であった。
[実施例2:本発明による装置による温度測定]
50μmの非断熱ワイヤ熱電対を、本発明による装置(100)のキャリア基板(10)の下側(12)に取り付けた。冷却タンク(300)と恒久的冷却装置を、液体窒素の激しい沸騰が止まり、部品が77Kに近い温度に達するまで、液体窒素で冷却した。次いで、圧力タンク(400)に50バールの液体窒素およびヘリウムを充填した。顕微鏡カバースライド上のHEPES緩衝DMEMの液滴を、水の付着によってキャリア基板(10)の下側(12)に付着させ、その液滴が熱電対を取り囲むようにした。ワイヤ熱電対は平坦ではなかったので、キャリア基板とワイヤとの間に隙間が残り、直径4mm、厚さ約100μmの円筒形試料が得られた。温度測定を開始し、測定中に出口弁(22)を開いて冷却を開始した。この測定の結果を
図6、
図7A、および
図8に示す。
[実施例3:15バール、25バール、および50バールの圧力での本発明による装置による温度測定]
50μmの非断熱ワイヤ熱電対を、本発明による装置(100)のキャリア基板(10)の下側(12)に取り付けた。冷却タンク(300)と恒久的冷却装置を、液体窒素の激しい沸騰が止まり、部品が77Kに近い温度に達するまで、液体窒素で冷却した。次いで、圧力タンク(400)を、15バール、25バールまたは50バールの液体窒素およびヘリウムで満たすか、または液体窒素なしで50バールのヘリウムで満たした。顕微鏡カバースライド上のHEPES緩衝DMEMの液滴を、水の付着によってキャリア基板(10)の下側(12)に付着させ、その液滴が熱電対を取り囲むようにした。ワイヤ熱電対は平坦ではなかったので、キャリア基板とワイヤとの間に隙間が残り、直径4mm、厚さ約100μmの円筒形試料が得られた。温度測定を開始し、測定中に出口弁(22)を開いて冷却を開始した。冷却速度は圧力が低くなると大幅に低下し、液体窒素が存在しない場合には最低の冷却速度が観察された(
図7C)。
[実施例4:倒立顕微鏡に適合させた従来技術の装置による温度測定]
EP2877828B1に開示された装置を配置し、供給ラインをキャリア基板の上側に延長することによって倒立顕微鏡に適合させた。キャリア基板の下側には熱電対を取り付けた。温度測定は実施例2に記載したように実施した。この測定の結果を
図7Bと
図8に示す。
[実施例5:接着増殖した哺乳類細胞の顕微鏡法]
本発明の温度制御装置を備えた倒立顕微鏡を配置した。まず、液体窒素の激しい沸騰が止まり、部品が77Kに近い温度に達するまで、冷却タンク(300)と恒久的冷却装置を液体窒素で冷却した。次いで、圧力タンク(400)を50バールの窒素およびヘリウムで満たした。細胞が付着して増殖したカバースライドを、水の付着によってキャリア基板(10)の下側(12)に取り付けた。このために、細胞培養培地のほとんどが除去され、細胞は約15μmの薄い層に残った。ステージを顕微鏡の対物レンズ上に降ろすと、生きた細胞が観察できた。対象の時点で、弁を開いて細胞を急激に凍結停止させた。この後、凍結停止した細胞の詳細な顕微鏡測定を実施できた。
[実施例6:生きた細胞の空間分解分光調査]
・方法
[分解能と位置特定精度の計算]
イメージングシステム、分子運動、蛍光色素分子の量子収量、光安定性の影響を考慮して、解像度と位置特定精度を計算した。簡単に言うと、運動はレイノルズ数の低い液体を通る分子の拡散としてモデル化されたため、物体の拡散係数Dは、次のストークス-アインシュタインの式を通じて温度(T)と半径(r)の関数として取得された。
【0338】
【0339】
ここで、ηは液体の粘度、kBはボルツマン定数である。水の粘度は、37℃で0.6922mPasである。凍結停止(CA)すると、粘度は15桁を超えて増加するため、物体は静止していると見なされた。蛍光タンパク質の光物理的性質(量子収量と光安定性)は文献から得られ、それらの凍結停止時の変化はここに示したデータから得られた(QYCA/QYRT=1.2、(放出光子)CA/(放出光子)RT>10)。
【0340】
点拡がり関数(PSF)にガウス近似を使用し、複数のガウス分布の畳み込みの分散がそれらの個々の分散の合計であることを使用すると、モーションブラーを含むPSF(EPSF)の分散
【0341】
【0342】
は次のようになる。
【0343】
【0344】
ここで、νMBは拡散プロセスの平均二乗変位(4DT)に対応する。説明した計算、手順は、単一の点状光源が画像化された構造の標識として使用される場合に適切である。対照的に、対象の構造が完全に標識化されている場合は、追加の手順が必要になる。均一な標識化を考慮すると、構造の各点に1つの光源があるため、観察されたオブジェクトはEPSFとオブジェクトの畳み込みになる。ガウス近似では、出力分散は再び2つの入力分散の合計になる。計算は、室温で分子が(1/500ns)の率で放出する光子の数の関数として実行された。この値は、蛍光色素分子が活性時に再励起されないことを保証し、文献で報告されている他の値と一致することが判明した。さらに、収集および伝達効率が低下したことにより、放出された光子の10%だけが検出器に到達すると考えられた。
【0345】
光子の数の関数としての分解能は、モンテカルロシミュレーションを使用して計算された。簡単に言うと、
【0346】
【0347】
によって定義された2つのガウス分布からなる分布からN個の光子が抽出され、所定の距
離dで分離された。結果はピクセル化をシミュレートするためにビン化(サイズa)された。これらのガウス分布を復元するために混合ガウスモデルが使用され、コントラストは次のように定義された。
【0348】
【0349】
ここで、Iminは2つのガウス分布の間の谷間のカウント数に対応し、Imaxは2つのピークの最大高さに対応する。アッベの基準に従って、C>1.7%の場合に構造が分解されたとみなされた。このプロセスは、
【0350】
【0351】
とdとNの組み合わせごとに1000回繰り返された。距離が
【0352】
【0353】
よりも大きい場合、構造は分解されたと見なされた。定められた
【0354】
【0355】
およびNの分解能は、実現値の95%が分解される最小dとして定義された。位置特定精度は、N、a、および検出器のノイズの関数として計算された。重要なのは、モーションブラーを考慮してPSFがEPSFに置き換えられたことである。
[冷却速度の測定]
冷却性能は、μLの水性緩衝液滴に取り付けられた50μmコンスタンタン銅熱電対 (Omega Engineering Inc.、ノーウォーク、コネチカット州、米国;応答時間:3ミリ秒)によって測定された。熱電対の厚さにより、取り付けられたカバースライドの全領域を覆う液滴から推測されるように、試料の総厚は約100μmだった。熱電対は、USBデータ収集モジュール(Omega Engineering Inc.、ノーウォーク、コネチカット州、米国)を介してコンピューターに接続され、L
abviewソフトウェア(National Instruments、オースティン、テキサス州、米国)を使用して1000Hzの周波数(デジタル分解能:2ミリ秒)で読み取られた。
[熱拡散率制限冷却速度の計算]
測定冷却速度を水性試料の熱拡散率で制限された冷却速度に関連付けるために、一方の表面からの熱流束制限冷却(つまり、ダイヤモンドからの水溶液の冷却)は、以下の熱流量の方程式に基づいている。
【0356】
【0357】
面積(A)はカバースライドの面積(2×10-5m2)である。水の熱伝導率(κ)は0.5562Wm-2、初期温度差(ΔT)は37℃の試料と液体窒素(-196℃)の間の約233℃である。厚さ(L)は、カバースライド全体をカバーするピペットで採取した体積から計算された。50μmの熱電対を含む試料の凍結速度は、熱電対が100μmの厚さの試料内の50μmの深さ(L=50μm)で測定していると仮定して計算された。熱電対を使用しない水性試料の場合、厚さは10から15μmと測定され、付着した哺乳動物細胞試料の場合の典型的なL約13μmを想定した。
【0358】
熱流Qは次のように説明することもできる。
【0359】
【0360】
ここでcは熱容量(水:4Jcm-3K-1)、mは試料の質量(0.25mg)である。
【0361】
組み合わせると、次の結果が得られる。
【0362】
【0363】
厚さLの試料の推定温度経過は、初期温度37℃からMATLABを使用して計算された。
【0364】
【0365】
熱電対に沿った熱輸送、および熱電対と水溶液の異なる熱伝導率および容量とを無視しているにもかかわらず、結果として得られる拡散率制限された温度変化率と測定された温度変化率は非常に類似していた。
[安定したトランスジェニック細胞株の生成]
mCitrineに融合したTC-PTPを発現するMCF7のポリクローナル安定細胞株(TC-PTP-mCitrine)を、内因性TC-PTPを発現しないようにCRISPR遺伝子編集によって改変されたMCF7細胞のバックグラウンドで生成した。TC-PTP-mCitrine(Stanoev et al.2018,Cell Systems 7,295-309.e11)は、最初にPiggyBacベクター(System Bioscience、パロアルト、カリフォルニア州)にクローン化された。その後、MCF7細胞にこの構築物とPiggyBacトランスポザーゼ(System Bioscience)を1:1の比率でトランスフェクトした。トランスフェクション試薬としてFuGENE(登録商標)6(Roche Diagnostics)を使用して、播種の24時間後にトランスフェクションを実施した。トランスフェクションは製造元のプロトコールに従って実施された。1日後、トランスフェクトされた細胞を2μg/mLのピューロマイシンで30時間選択した。通常の細胞培養培地でさらに1週間置いた後、FACSによって細胞をR-PTP-γ-mCitrine発現が高いかどうかで選別した。
【0366】
LIFEA2を安定して発現するポリクローナルCos7細胞株(Sabet et al.2015,Nature Communications 6,1-13)を、LIFEA2をPiggyBacベクター(System Bioscience、パロアルト、カリフォルニア州)にクローン化することによって生成した。その後、MCF7細胞にこの構築物とPiggyBacトランスポザーゼ(System Bioscience)を1:1の比率でトランスフェクトした。トランスフェクション試薬として FuGENE(登録商標)6(Roche Diagnostics)を使用して、播種の24時間後にトランスフェクションを実行した。トランスフェクションは製造元のプロトコールに従って実行された。1日後、トランスフェクトされた細胞を3μg/mLのピューロマイシンで14日間選択した。
【0367】
細胞外SNAPタグ(SNAP-EGFR)(Ibach et al.2015、Plos One 10、e0143162)およびmCitrineに融合したR-PTP-γ(R-PTP-γ-mCitrine)を有するEGFRを発現するMCF7のポリクローナル安定細胞株を生成するために、両方の構築物を最初にPiggyBacベクター(System Bioscience、パロアルト、カリフォルニア州)にクローン化した。その後、MCF7細胞に構築物とPiggyBacトランスポザーゼ(System Bioscience)を1:1:2の比率でトランスフェクトした。トランスフェクション試薬としてFuGENE(登録商標)6(Roche Diagnostics)を使用して播種の24時間後にトランスフェクションを実施した。トランスフェクションは製造元のプロトコールに従って実施された。1日後、トランスフェクトされた細胞を2μg/mLのピューロマイシンで30時間選択した。通常の細胞培養培地でさらに1週間置いた後、FACSによって細胞をR-PTP-γ-mCitrine発現が高いかどうかで選別した。我々は、内因性R-PTP-γ-mCitrineを発現し、内因
性EGFRを発現しないMCF7細胞は、数日を超えて生存できないことを観察した。Snap-EGFRの標識化は、細胞を0.5μM Snap-Surface Alexa 647(New England Biolabs GmbH、フランクフルト、ドイツ)とともに少なくとも60分間インキュベートすることによって行った。EGFRの一定のリサイクルにより、細胞内区画だけでなく原形質膜でもEGFRが標識化された。細胞はSnap-Surface Alexa 647で標識化され、これらの細胞の99%を超える細胞がSNAP-EGFRも発現することが顕微鏡で確認された。
[細胞培養、トランスフェクション、および調製]
HeLa(ATCC番号CCL-185)、Cos7(ATCC番号CRL-1651)、およびMCF7(ATCC番号HTB-22)細胞をATCCから入手した。細胞はショートタンデムリピート(STR)分析によって認証され、マウス、ラット、ハムスター(ライプニッツ研究所DSMZ)のDNA配列は含まれていなかった。MycoAlertマイコプラズマ検出キット(Lonza、バーゼル、スイス)を使用して、細胞のマイコプラズマ感染について定期的に検査した。それらを、10%ウシ胎児血清(FBS)、200mM L-グルタミン、および1%非必須アミノ酸を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で維持し、37℃、95%空気および5%CO2で培養した。
【0368】
超急速凍結停止実験では、細胞を3.5cmプラスチックペトリ皿の4mmカバースライドにウェルあたり1×105から2×105細胞の濃度で播種するか、4mmカバースライドを4×104細胞/mLの細胞培養培地20μLで満たされた生体適合性シリコン(4ウェルマイクロインサート;ibidi GmbH、グラフェルフィング、ドイツ)製のチャンバに取り付けた。後者のアプローチには、カバースライドの底面に培地が残らないという利点があった。細胞は実験の少なくとも1日前に播種された。実験前に過剰な液体を除去し、残りの水溶液をダイヤモンド熱交換器に直接付着させることで取り付けを容易にするために、カバースライドをカスタム3Dプリントされたホルダー上に設置した。37℃での実験を、ガラス底細胞培養皿(MatTek Corporation、アシュランド、マサチューセッツ州、米国)で、皿あたり1×105から4×105細胞で実施した。
【0369】
EGFP(GFP-N1ベクター、Clontech Laboratories Inc.、マウンテンビュー、カリフォルニア州、米国)によるHeLa細胞の一過性トランスフェクションは、細胞播種後6から24時間後に、ウェルあたり1μgのDNAとトランスフェクション試薬としてFuGENE(登録商標)6(Roche Diagnostics)を使用して行われた。トランスフェクションは製造元のプロトコールに従って実行された。
【0370】
STEDイメージングのための化学固定は、細胞をリン酸緩衝生理食塩水中の4%ホルムアルデヒド中2%グルタルアルデヒド中で37℃で20分間インキュベートすることによって行った。これは、他のアルデヒド固定よりも速く、また少ないアーティファクトで細胞を固定する(Huebinger et al.2018,Sci Rep 8,17756)。
[蛍光顕微鏡法]
クライオ蛍光顕微鏡法および対応する対照実験は、488nm、561nm、640nm励起レーザーと、595nm(公称1W)および775nm(1.25W)の波長のSTEDレーザーと、FLIMハードウェアおよびソフトウェアの統合とを備えた市販の共焦点レーザー走査型STED顕微鏡(Expert Line、Abberior Instruments、ゲッティンゲン、ドイツ)で実施された。このシステムにはさらに、広視野イメージング用のMT20照明システム(Olympus Deutschland GmbH、ハンブルク、ドイツ)とOrca-R2カメラ(浜松ホトニクス、浜松、日本)が装備された。
【0371】
EGFPを発現するHeLa細胞およびローダミン6G溶液、ならびにFLIMのドナーのみのコントロールの広視野蛍光イメージングを、40倍の0.6NA対物レンズ(LucPlanFLN;Olympus Deutschland GmbH、ハンブルク、ドイツ)を使用して実施した。他のすべてのイメージングは、40倍の0.95NA対物レンズ(UPlanApo、Olympus Deutschland GmbH、ハンブルク、ドイツ)で取得された。
【0372】
FLIM測定を含む共焦点イメージングは、485nmレーザー励起(mCitrine)または640nmレーザー励起(Alexa647、光退色のための試料面での測定照射パワー:0.2mW)および100nmまたは200nmのピクセル長(FLIM)で実施した。広視野蛍光イメージングは、EGFPおよびmCitrine(励起:470/40nm、ダイクロイックミラー495nm、発光520/35nm、試料面での測定パワー:10mW)またはAlexa647(励起:620/60nm、ダイクロイックミラー640nm、発光537 700/75nm)用のフィルターセット、および163nmのピクセル長を使用して実施した。SRRF再構成用の連続広視野蛍光画像は、1フレーム/秒のフレームレートで取得された。この比較的低いフレームレートにより、極低温条件下で低減された蛍光変動動態から超解像度画像を首尾よく再構成することができた。
【0373】
STEDイメージングは、640nmレーザー励起と誘導放出抑制用の775nmレーザーを使用して行った。試料は、ピクセル長40nm、滞留時間15usでスキャンした。個々のフレームは、試料のドリフトを補正するために、オープンソースプログラムFiji(Schindelin et al.2012,Nature Methods 9,676-682)を使用した剛体レジストレーションアルゴリズムによって位置合わせした。極低温条件下で高感度のドーナツ型ディプレッションビームを実現するには、対物レンズの補正環によって球面収差を補正する必要があった。
[画像解析]
蛍光強度の定量化、ラインプロファイルの抽出、およびマンダース係数の計算を含む一般的な画像処理は、オープンソースプログラムFijiを使用して行った(Schindelin et al.2012 Nature Methods,9:676-82.)。漂白の定量化は、Microsoft Excel(Microsoft Corporation、レドモンド、ワシントン州、米国)を使用して蛍光強度を単指数関数フィットでフィッティングすることによって行った。蛍光が0に収束するため、蛍光強度を単指数関数フィットでフィッティングができない場合は、データの最初の単指数関数部分をフィッティングした。SRRF(Super-Resolution Radial Fluctuation)解析は、FijiへのNanoJプラグインを使用して実施し(Laine et al.2019 Journal of Physics D:Applied Physics,52:163001)。決定係数は、SciPy(バージョン1.5.2)に実装されているピアソン関数を使用して計算した(Virtanen et al.2020,Nature Methods 17,261-272)。[FLIMデータセットの分析]
剛体移動のみの変換を適用することで起こり得るステージドリフトを補正するために、各光子計数データセットを登録した。光子計数画像スタックを計算した後、Python(imreg_dft 2.0)に実装された離散フーリエ変換ベースのアルゴリズム(Reddy et al.1996,IEEE Transactions on Image Processing 5,1266-1271)を使用して、最初のフレームに対する各フレームのX方向とY方向のシフトを見つけた。これらの値は、最も近い整数に丸められる。新しい、登録された光子計数データセットは、各フレーム内の各光子を、事前に決定されたピクセル数だけシフトすることによって組み立てた。登録後の最初のフ
レームによって定義された画像の外側にある光子は削除した。
【0374】
登録された光子計数データセットは、既述されるように、バックグラウンドおよび装置応答関数(IRF)についてデータから直接補正された(Grecco et al.2009,Opt.Express 17,6493-6508)。簡単に言えば、バックグラウンドは2つの方法で推定された。まず、画像スタック内のすべてのフレームを合計して、光子計数画像を生成した。Python(SciPy1.5.2)で実装された9ピクセルのメディアンフィルターを使用してノイズを除去した後、最小値の位置(P)を見つけた。次に、(画像に応じて)21ピクセルから51ピクセルウィンドウを使用して、元の画像からPピクセル付近の平均値として総バックグラウンドを計算した。バックグラウンドも光子計数ヒストグラムから推定した。再度、メディアンノイズ除去(21ビンウィンドウ)後、ビンごとのバックグラウンドを、ノイズ除去されたものの最小値付近の元のヒストグラムの平均値(51ビンウィンドウ)として推定した。次に、この値にビンの数を乗算して画像全体に外挿した。両方のバックグラウンド値の一貫性をクロスチェックした。IRFはヒストグラムの高調波から推定した。
【0375】
結果として得られた修正されたデータセットは、pawFLIMを使用してノイズ除去された(Silberberg et al.2017,Methods Appl Fluoresc 5,024016)。簡単に言えば、これはバイアスと平均二乗誤差を大幅に減少させるフェーザー画像に対する重み付けされた並進不変ハールウェーブレット変換ノイズ除去アルゴリズムである。
【0376】
測定されたMCF7細胞で発現したTC-PTPまたはR-PTP-γに融合したFRETドナーmCitrineの平均蛍光寿命は、室温での3.04+/-0.01nsから凍結停止下の3.71+/-0.02ns(平均+/-標準偏差)(スチューデントのt検定を使用してp<0.0001)に増加したが、単指数関数に近いままだった。LIFEA2を使用した測定では、凍結停止下で明確に分解された非指数関数的蛍光減衰プロファイルは、明確な平均FRET効率と非吸収性mCherryアクセプターを含むLIFEA2の割合とを示す活性構造および不活性構造の混合物を示した。したがって、結果として得られるノイズ除去された累積フェーザープロットは、既述の2成分モデルの拡張として導出された3成分モデルを用いた大域解析によって分析された(Verveer et al.2000,Science 290,1567-1570)。これら3つの空間的に不変な状態は、(1)ドナー単独の固定割合(非吸収アクセプターを備えたセンサー;凍結停止下の割合:0.2)および蛍光寿命(3.71+/-0.02ns)、(2)蛍光寿命(0.9+/-0.2ns)を備えた閉じた(活性)構造のセンサー、および対応するFRET効率(0.75+/-0.25)、および(3)蛍光寿命(3.5+/-0.2ns)を備えた拡張された(不活性)構造のセンサー、および対応するFRET効率(0.05+/-0.01)であり、それぞれはフェーザーで表される。したがって、観測される各フェーザーは、各状態からの対応する正規化された光子の数によって重み付けされた3つのフェーザーの合計である。したがって、画像の完全なフェーザーデータは、Imfit 1.0.2に基づくカスタムメイドのPythonプログラムを使用して、3つのフェーザーと対応する光子の割合の線形結合でフィッティングした。既述のように(Verveer et al.2000,Biophys J 78,2127-2137)、各状態の光子の割合から分子の割合への変換は、それぞれを対応する蛍光寿命(量子収率の尺度)で割って合計を1に正規化することによって行った。活性構造の割合は、非吸収アクセプターを含むセンサーの割合を考慮して、(1-ドナーのみの割合)で割ることによって正規化した。
・EGFPを発現する凍結固定HeLa細胞の蛍光顕微鏡法
EGFPをトランスフェクトしたHeLa細胞を、上で概説したように凍結顕微鏡法用に調製した。EGFPを発現するこれらのHeLa細胞の広視野蛍光イメージングにより
、本発明の装置による凍結保存後、EGFP蛍光および細胞形態が保存され、蛍光のない領域を生じる可能性のある検出可能な氷晶が見られないことが示された(
図17)。
・ローダミン6G溶液の蛍光顕微鏡法
厚さ15μmの細胞培養培地中のローダミン6Gの溶液を調製し、本明細書に記載の装置を用いて凍結保存および解凍を行った。蛍光溶液の広視野蛍光イメージングでは、凍結固定中および凍結固定後に検出可能な氷晶が形成されていないことが示された。溶液を解凍すると、氷晶が形成された(
図18)。
・TC-PTP-mCitrineを発現するMCF7細胞の共焦点イメージング
超急速凍結停止後に複雑な細胞内組織が保存されているかどうかを調べるために、広範囲かつ動的に維持された小胞体(ER)(Guo et al.2018,Cell,175:1430-42.e17)を、複数の蛍光顕微鏡法によって凍結停止の前後で画像化した。このために、蛍光タンパク質mCitrineに融合したTC-PTP(TC-PTP-mCitrine)を発現するMCF7細胞(Stanoev et al.2018,Cell Systems,7:295-309.e11)を使用した。凍結停止前後の共焦点レーザー走査型顕微鏡法(CLSM)により、超急速凍結固定後もERの保存性が非常に高いことが実証された。
【0377】
極低温での蛍光色素分子の光安定性が高いため、同じ停止細胞の広視野蛍光画像を100枚取得でき、分解能およびコントラストが向上したSRRF(super resolution radial fluctuation)再構成が可能になり(Gustafsson et al.2016,Nature Communications,7:12471)(
図19)、凍結固定後に繊細なER細胞小器官が保存されることが実証された。
・Alexa647-SNAP-EGFRおよびR-PTP-γ-mCitrineを共発現するMCF7細胞の共焦点イメージング
超急速凍結停止が動的細胞システムにおける分子組織の研究をどのように改善できるかを評価するために、癌原タンパク質と機能的に関連する候補腫瘍抑制タンパク質の空間分布をマルチモーダル蛍光イメージングによって画像化した。このために、受容体チロシンキナーゼ上皮成長因子受容体(EGFR、Snap-EGFRと標識化されたAlexa647:Alexa647-SNAP-EGFR)とmCitrineに融合した受容体様タンパク質チロシンホスファターゼγ(R-PTP-γ)(R-PTP-γ-mCitrine)の蛍光融合構築物を共発現したMCF7細胞(Stanoev et al.2018,Cell Systems,7:295-309.e11)を、本発明によるクライオ顕微鏡に取り付けた。上皮成長因子(EGF、100ng/ml)による刺激により、両方のタンパク質の小胞輸送動態を室温で追跡できるようになり、その後凍結停止することで、両方のタンパク質の相互関係の空間パターンを正確に捕捉することが可能になった(
図20A)。
【0378】
同じ停止細胞の100枚の広視野蛍光画像のSRRF再構成も可能になった(
図20A)。これらの再構成から、原形質膜の側面に沿ったEGFRの不均一な分布(Masip
et al.2016,Nature Methods,13)が約400nmのパッチとして明らかになった。デュアルカラーSRRFにより、静止細胞内のこれらのパッチにおけるR-PTP-γとAlexa647-SNAP-EGFRの高度な共局在が明らかになった。両方のタンパク質はエンドソーム構造でも共局在を示したが、15分のEGF刺激後には失われ、両方のタンパク質は原形質膜ですでに分離されていた(
図19)。極低温で得られたこの共局在解析により、エンドソーム系内を共移動するEGFR/R-PTP-γ複合体のナノスケール組織化が明らかになった。これらの結果は、刺激の非存在下で原形質膜におけるEGFRのサイレントシグナル伝達状態を維持するEGFR/R-PTP-γ複合体のリサイクルと一致している(Baumdick et al.2015,eLife,4)。EGF刺激によるEGFR/R-PTP-γクラスターの観察
された分離は、EGFR-EGF二量体複合体がもはやR-PTP-γと相互作用できないことを示している。EGFR-EGF複合体はその後、後期エンドソームに再経路指定されて、有限のエンドソームシグナル伝達応答を生成する(Stanoev et al.2018,Cell Systems,7:295-309.e11)。
・Alexa647-SNAP-EGFRおよびR-PTP-γ-mCitrineを共発現するMCF7細胞のSTED顕微鏡法
Alexa647-SNAP-EGFRおよびR-PTP-γ-mCitrineを共発現するMCF7細胞を入手し、上で概説したSTEDイメージング用に調製した。
【0379】
STEDナノスコピー法は、蛍光強度が蛍光マーカーの密度に直接関係し、定量的な分子パターンが得られるため、超解像技術の中でも特別なケースを構成する。このレーザースキャン型ナノスコピー法では、第2の高強度のドーナツ型レーザービームを使用した励起蛍光色素分子の誘導放出によって、回折限界を超える分解能が達成される。その結果、光安定性、蛍光量子収率、蛍光標識の密度に対する高い要求が、生細胞内の蛍光タグが付けられたまばらな分子のSTEDイメージングを妨げる。
【0380】
実際、低ディプリーションレーザー出力(<42mW/μm
2)のみが、室温でMCF7細胞内のAlexa647-Snap-EGFRのノイズのあるSTED画像を取得するのに十分な蛍光マーカーを保存し(
図21Aおよび
図21Bを参照)、通常のCLSMよりも回折限界を超える情報量の統計的に有意な増加はなかった(
図21Aおよび
図21C)。分解能は、細胞の化学固定によってモーションブラーを軽減することによってわずかに改善することができ、試料を漂白する前に5つの連続したSTEDフレームからの光子の蓄積を可能にした(
図21C)。しかしながら、生きた細胞の超急速凍結停止後、漂白速度が約45分の1に低下した(
図21b)ことで、ディプリーションレーザー出力(420mW/μm
2)と露光時間(放射線エネルギー密度:35mJ/μm
2)の両方を10倍増加させることができ、Alexa647-Snap-EGFRを含むエンドソーム構造が鮮明に分解された(
図21D)。情報量は、125nm未満のスケールから80nmのデジタル(ピクセル制限)分解能まで大幅に増加した(
図21C)。この分解能では、これらの細胞の細胞質内に蛍光のない領域として氷晶は検出されなかった(
図26)。これは、最大のディプリーションレーザー強度でSTEDスキャンを繰り返した後にエンドサイトーシス構造の構造と配置が保存される場合にも当てはまった。これは、高強度のSTED照明が氷晶を生成するほど試料を温めなかったことを示す。
【0381】
この実験では、凍結固定によってモーションブラーと漂白が大幅に防止され、それによって共焦点顕微鏡法による細胞全体の3Dスキャンが可能になり、その後、さまざまなzレベルでさまざまな領域のSTED画像を記録できることが確認された(
図21D)。合計取得時間は15分を超えた。
【0382】
その結果、凍結固定により、信号が大幅に改善され、より大きなボリューム内の複数のサブエリアのSTED顕微鏡法が容易になる。
・LIFEA2を発現するCos7細胞の共焦点FRET-FLIM顕微鏡法
LIFEA2を発現するCos7細胞を入手し、上で概説したように、極低温顕微鏡法用に調製した。本発明の装置を用いた凍結固定後のチロシンキナーゼEphA2の活性状態分布を調べるために、FRET-FLIM調査を実施した。
【0383】
室温では、リガンドクラスター化エフリンA1による受容体の活性化が、LIFEA2におけるFRETドナーmCitrineの平均蛍光寿命のわずかな(約0.2ns)低下によってCos7細胞の原形質膜で観察できた(
図22)。しかし、モーションブラー、および蛍光減衰プロファイルと派生フェーザーの分離が不十分なため、細胞内の膜構造の空間分解能と蛍光寿命分解能が大幅に制限された(
図22)。しかし、極低温では、m
Citrineの量子収量の増加により、刺激された細胞と刺激されていない細胞におけるLIFEA2の減衰プロファイル、平均蛍光寿命(τ)、および関連するフェーザーの分離が大幅に改善された(
図22)。クラスター化された受容体の活性は、原形質膜パッチおよびエンドサイトーシス構造において分解できており(
図22)、外因性刺激の非存在下での基礎活性は、隣接する細胞の内因性エフリンによって引き起こされる可能性が高かった。分子活性イメージングにおけるこのコントラストの向上は、同じエフリンA1刺激細胞を凍結停止前と凍結停止中に比較した場合に特に明らかになった(
図22)。
【0384】
凍結停止下では、累積フェーザーが大きく分離されることにより(
図24C)、大域解析による活性(τ=0.9±0.2ns)および不活性(τ=3.5±0.1ns)構造の空間的に不変の蛍光寿命、および非吸収性mCherryアクセプターを含むLIFEA2の割合(約0.2)を導出できる。これらの制約を使用すると、活性LIFEA2の空間的に変化する分子割合(α)を画像の各ボクセル内のフェーザーから導出できる。それにより、凍結停止により、刺激されたCos7細胞におけるLIFEA2の3D分子活性マップの取得(時間>10分)および再構築が可能となり(
図25)、原形質膜から出現した活性化受容体を有する個々の小胞を、核周囲のエンドソーム区画にある徐々に不活化される受容体から区別することができた。
【0385】
したがって、本発明の装置を用いた凍結固定下では、蛍光寿命の空間分布を大幅に改善された分解能で測定することができ、細胞内の多数の個々のエンドソームおよび内膜構造に対する受容体の立体構造状態のこれまでにないマッピングが可能となる(
図25)。
【国際調査報告】