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特表2024-518368フルオロシリコーン剥離コーティング組成物及び剥離ライナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】フルオロシリコーン剥離コーティング組成物及び剥離ライナー
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20240423BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20240423BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240423BHJP
   C09D 183/05 20060101ALI20240423BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L83/08
C09D183/07
C09D183/04
C09D183/05
C09J7/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567182
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2021093762
(87)【国際公開番号】W WO2022236796
(87)【国際公開日】2022-11-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ルイファ
(72)【発明者】
【氏名】マー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】コン、リンシュアン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、チン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、フーミン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジホア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CP083
4J002CP084
4J002CP08W
4J002CP08X
4J002DD006
4J002GH00
4J002HA05
4J004AA11
4J004AB01
4J004DB03
4J004EA06
4J038DL032
4J038DL042
4J038DL111
4J038GA12
4J038KA04
4J038KA06
4J038NA10
4J038PB08
4J038PC08
(57)【要約】
フルオロシリコーン剥離コーティング組成物であって、(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない直鎖状オルガノポリシロキサンと、(B)1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない分岐状オルガノポリシロキサンと、(C)1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、脂肪族不飽和基及びケイ素原子結合水素原子のいずれも有しない直鎖状オルガノポリシロキサンと、(D)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(E)有効量のヒドロシリル化反応触媒と、を含む、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物が提供される。この組成物は、低いガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤に対して安定かつ低い剥離力を呈する剥離コーティングを形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロシリコーン剥離コーティング組成物であって、
(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない直鎖状オルガノポリシロキサンと、
(B)1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない分岐状オルガノポリシロキサンと、
(C)1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、脂肪族不飽和基及びケイ素原子結合水素原子のいずれも有しない直鎖状オルガノポリシロキサンと、
(D)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(E)有効量のヒドロシリル化反応触媒と、を含み、
構成成分(A)~(C)の総質量に各々基づいて、構成成分(A)の含有量が、約40~約90.5質量%の範囲であり、構成成分(B)の含有量が、約9~約56質量%の範囲であり、構成成分(C)の含有量が、約0.5~約4質量%の範囲であり、構成成分(D)の含有量が、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、約1~約15質量部の範囲である、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項2】
構成成分(A)は、1分子中の前記フルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量が少なくとも30質量%となる量で前記フルオロアルキル基を有する、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項3】
構成成分(A)が、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位及び一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンであり、式中、Rが、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、ただし、1分子中、少なくとも2つのRが、前記アルケニル基であり、少なくとも1つのRが、前記フルオロアルキル基である、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項4】
構成成分(B)は、1分子中の前記フルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量が少なくとも15質量%となる量で前記フルオロアルキル基を有する、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項5】
構成成分(B)が、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位、一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位、及び一般式:SiO4/2で表されるQシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンであり、式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、ただし、1分子中、少なくとも1つのRが、前記フルオロアルキル基である、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項6】
構成成分(C)は、1分子中の前記フルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量が少なくとも20質量%となる量で前記フルオロアルキル基を有する、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項7】
構成成分(C)が、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位及び一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンであり、式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、ただし、1分子中、少なくとも1つのRが、前記フルオロアルキル基である、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項8】
(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、約0.01~約5質量部の量で更に含む、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項9】
(G)任意の量の溶媒を更に含む、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項10】
シリコーン感圧接着剤に使用される、請求項1に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物を基材にコーティングして得られる、剥離ライナー。
【請求項12】
前記基材が、プラスチックフィルムである、請求項11に記載の剥離ライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物、及びそれを使用した剥離ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン感圧接着剤(silicone pressure-sensitive adhesive、Si-PSA)は、その良好な濡れ性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性、電気絶縁性などのために、電子機器、工業加工、包装、保護フィルム、及び車両などの多くの用途において広く使用されている。Si-PSAは、典型的には、片面若しくは両面テープ又はSi-PSAフィルムの形態で使用される。容易な剥離を得るために、フルオロシリコーン(fluorosilicone、F-Si)系剥離ライナーを一般に使用して、テープ又はフィルムとの積層体を形成する。したがって、F-Si系剥離ライナーは、使用中にSi-PSAに保護及び容易な剥離を提供することができる。
【0003】
例えば、特許文献1は、硬化性シリコーン組成物であって、(A)アルケニル基及びパーフルオロアルケニル置換有機基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、付加反応のための触媒と、を含み、この組成物は、様々な基材に強固に接着し、良好な剥離特性、剥離特性の安定性、撥水性及び撥油性、並びに耐溶剤性を有する硬化コーティングを形成することができる、硬化性シリコーン組成物を開示する。
【0004】
特許文献2は、シリコーン組成物であって、(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基及び少なくとも1個のパーフルオロポリエーテル置換アルキル基を有し、かつ20~40重量%のフッ素含有量を有する、オルガノポリシロキサンと、(B)1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)直鎖状パーフルオロポリエーテル消泡剤と、(D)白金族金属系触媒と、を含み、この組成物は、低い剥離力しか必要とせず、かつ残留接着率の低減をほとんど与えない、硬化コーティングを提供する、シリコーン組成物を開示する。
【0005】
特許文献3は、シリコーン感圧接着剤とともに使用するための無溶媒剥離剤組成物であって、(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基及び少なくとも1個のパーフルオロポリエーテル置換アルキル基を有し、かつ分子の30~50重量%のフッ素含有量、及び25℃での100~2000mPa・sの粘度を有する、オルガノポリシロキサンと、(B)1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)反応調節剤と、(D)白金族金属触媒と、を含み、組成物が、基材にコーティングされ、硬化されて、Si-PSAとともに使用するための剥離ライナーを形成する、無溶媒剥離剤組成物を開示する。
【0006】
特許文献4は、Si-PSAのためのシリコーン剥離コーティング組成物であって、(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつフルオロアルキル基及びフルオロポリエーテル基を有する、オルガノポリシロキサンと、(B)1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)白金族金属系触媒と、を含み、この組成物が、剥離力をSi-PSAに対して中~強剥離力の範囲内で制御することができる硬化コーティングを形成することができる、シリコーン剥離コーティング組成物を開示する。
【0007】
特許文献5は、シリコーン剥離コーティング組成物であって、(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基含有有機基及び少なくとも1個のアリール基含有有機基を有し、かつフッ素含有有機基を有しない、直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサンと、(B)1分子当たり少なくとも1個のアルケニル基含有有機基及び少なくとも1個のフッ素含有有機基を有する直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサンと、(C)1分子当たり少なくとも3個のシリコーン原子結合水素原子を有し、かつフッ素含有有機基を有しない、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(D)白金族金属系触媒と、(E)1分子当たり少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、かつフッ素含有有機基を有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、を含み、この組成物が、Si-PSAに対する極めて低い剥離力と、剥離後の優れた残留接着力と、を有する剥離フィルムを形成することができる、シリコーン剥離コーティング組成物を開示する。
【0008】
近年、家電は、スマートフォン、パッド、更には折り畳み可能な電話のようにますます普及している。これらの用途、特に、折り畳み可能な光学透明接着剤(optical clear adhesive、OCA)用途は、高性能Si-PSAを必要とする。OCAのためのSi-PSAは、通常、F-Si剥離ライナー上にコーティングされて、硬化し、したがってフィルムを形成し、フィルムの他方の側は、F-Si剥離ライナーの別の層に積層され、したがってサンドイッチ構造を形成する。両側の各F-Si剥離ライナーは、一方の側において、十分に低い剥離力(例えば、10gf/インチ未満)、及び他方の側において、中程度の剥離力(例えば、40gf/インチ未満)を必要とする。OCAフィルムは、高い接着性及び低いガラス転移温度を呈することが要求され、更に、数十万回の折り畳み試験に合格することが要求される。Si-PSAに対するこれらの高い要求は、F-Si剥離ライナーに対する高い要求をもたらし、F-Si剥離コーティング組成物になる。
【0009】
しかしながら、上記の組成物は、Si-PSAから低い剥離力で剥離することができる剥離ライナーを形成する際に問題を有する。すなわち、現在のF-Si剥離コーティングは、ドライラミネーションを有するライト側及びウェットコーティングを有するタイト側において十分な低剥離性能を提供することができなかった。特に、ドライラミネーションのためのOCAとして使用される30℃以下の低いガラス転移温度を有するSi-PSAから十分に低い剥離力で剥離することができる剥離ライナーを形成する際に問題があり、同時に、ダイレクトコーティングによるOCAとして使用される30℃以下の低いガラス転移温度を有するSi-PSAにおける中程度の剥離力を提供することができる剥離ライナーを形成する際に問題がある。
【0010】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:米国特許第5,204,436(A)号
特許文献2:米国特許出願公開第2004/0186225(A1)号
特許文献3:米国特許出願公開第2011/0251339(A1)号
特許文献4:特開2017-165893(A)号公報
特許文献5:国際公開第2020/137835(A1)号
【発明の概要】
【0011】
技術的問題
本発明の目的は、低いガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤に対して安定かつ低い剥離力を有する剥離フィルムを形成することができるフルオロシリコーン剥離コーティング組成物を提供することであり、更に、低いガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤に対して安定かつ低い剥離力を有する剥離フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物は、
(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない直鎖状オルガノポリシロキサンと、
(B)1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない分岐状オルガノポリシロキサンと、
(C)1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、脂肪族不飽和基及びケイ素原子結合水素原子のいずれも有しない直鎖状オルガノポリシロキサンと、
(D)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(E)有効量のヒドロシリル化反応触媒と、を含み、
構成成分(A)~(C)の総質量に各々基づいて、構成成分(A)の含有量が、約40~約90.5質量%の範囲であり、構成成分(B)の含有量が、約9~約56質量%の範囲であり、構成成分(C)の含有量が、約0.5~約4質量%の範囲であり、構成成分(D)の含有量が、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、約1~約15質量部の範囲である。
【0013】
様々な実施形態では、構成成分(A)は、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量が少なくとも30質量%となる量でフルオロアルキル基を有する。
【0014】
様々な実施形態では、構成成分(A)は、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位及び一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンであり、式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、ただし、1分子中、少なくとも2つのRは、アルケニル基であり、少なくとも1つのRは、フルオロアルキル基である。
【0015】
様々な実施形態では、構成成分(B)は、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量が少なくとも15質量%となる量でフルオロアルキル基を有する。
【0016】
種々の実施形態では、構成成分(B)は、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位、一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位、及び一般式:SiO4/2で表されるQシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンであり、式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、ただし、1分子中、少なくとも1つのRは、フルオロアルキル基である。
【0017】
様々な実施形態では、構成成分(C)は、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量が少なくとも20質量%となる量でフルオロアルキル基を有する。
【0018】
様々な実施形態では、構成成分(C)は、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位及び一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンであり、式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、ただし、1分子中、少なくとも1つのRは、フルオロアルキル基である。
【0019】
様々な実施形態では、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物は、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、約0.01~約5質量部の量で更に含む。
【0020】
様々な実施形態では、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物は、(G)任意的な量の溶媒を更に含む。
【0021】
様々な実施形態では、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物は、シリコーン感圧接着剤に使用される。
【0022】
本発明の剥離ライナーは、上述のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物を基材にコーティングすることによって得られる。
【0023】
様々な実施形態では、基材は、プラスチックフィルムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物は、硬化して、低いガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤に対して安定かつ低い剥離力を呈する剥離コーティングを形成することができる。特に、本発明の剥離ライナーは、低いガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤に対して安定かつ低い剥離力を有する。
【0025】
定義
「含む(comprising)又は含む(comprise)」という用語は、本明細書において最も広義に使用され、「含む(including)又は含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」を意味し、それらの概念を包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。かかる軽微な変動は、数値の±0~25、±0~10、±0~5、又は±0~2.5%ほどであり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、複数の数値に当てはまることがある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<フルオロシリコーン剥離コーティング組成物>
最初に、本発明のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物について詳細に説明する。
【0027】
<構成成分(A)>
構成成分(A)は、1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基及び少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない直鎖状オルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基などの2~12個の炭素原子を有するアルケニル基が挙げられ、これらの中でもビニル基が好ましい。フルオロアルキル基の例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ペンタデカフルオロノニル基などの1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基が挙げられ、これらの中でも、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基が好ましい。アルケニル基及びフルオロアルキル基以外のケイ素原子結合基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチルなどの1~12個の炭素原子を有するアルキル基が挙げられる。例えば、フェニル基、トリル基、及びキシリル基などの、6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基及びフェネチル基などの7~12個の炭素原子を有するアラルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。なお、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量は、好ましくは、少なくとも30質量%、あるいは少なくとも35質量%、又はあるいは少なくとも40質量%である。これは、構成成分(A)中のフッ素原子の含有量が上記下限値以上であると、本組成物を架橋して得られる剥離コーティングがシリコーン感圧接着剤に対して良好な剥離力を呈するからである。なお、構成成分(A)中のフッ素原子の含有量の上限は特に限定されないが、含有量が高すぎると、構成成分(A)自体が溶媒に溶解しない傾向があり、これにより取り扱いやすさが低下し、したがって、含有量は、好ましくは、多くとも60質量%であるか、あるいは多くとも50質量%である。なお、構成成分(A)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又は炭素数1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基が結合していてもよい。
【0028】
構成成分(A)は、好ましくは、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位及び一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンである。
【0029】
式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、これらの例としては、上記と同様のものである。なお、1分子中、少なくとも2つのRが、アルケニル基であり、少なくとも1つのRが、フルオロアルキル基である。
【0030】
構成成分(A)のためのオルガノポリシロキサンは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他のシロキサン単位、例えば、一般式:(X)R SiO1/2で表されるMシロキサン単位を含有してもよい。式中、Xは、ヒドロキシル基、又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0031】
<構成成分(B)>
構成成分(B)は、1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有しない分岐状オルガノポリシロキサンである。フルオロアルキル基としては、上記と同様のものが挙げられ、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。フルオロアルキル基以外のケイ素原子結合基の例としては、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基が挙げられ、これらの例としては、上記と同様のものであり、メチル基及びビニル基が好ましい。なお、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量は、好ましくは、少なくとも15質量%、あるいは少なくとも20質量%、又はあるいは少なくとも25質量%である。これは、構成成分(B)中のフッ素原子の含有量が上記下限値以上であると、本組成物を架橋して得られる剥離コーティングがシリコーン感圧接着剤に対して良好な剥離力を呈するからである。なお、構成成分(B)中のフッ素原子の含有量の上限は特に限定されないが、含有量が高すぎると、構成成分(B)自体が溶媒に溶解しない傾向があり、これにより取り扱いやすさが低下し、したがって、含有量は、好ましくは、多くとも60質量%であるか、あるいは多くとも50質量%である。なお、構成成分(B)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基が結合していてもよい。
【0032】
構成成分(B)は、好ましくは、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位、一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位、及び式:SiO4/2で表されるQシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンである。
【0033】
式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、これらの例としては、上記と同様のものである。なお、1分子中、少なくとも1つのRは、フルオロアルキル基である。
【0034】
構成成分(B)のオルガノポリシロキサンは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他のシロキサン単位、例えば、一般式:(X)R SiO1/2で表されるMシロキサン単位、一般式:RSiO3/2で表されるTシロキサン単位を含有してもよい。式中、Xは、ヒドロキシル基、又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0035】
25℃での構成成分(B)の粘度は限定されないが、様々な実施形態では、約100mPa・s~約100,000mPa・sの範囲、あるいは約200mPa・s~約50,000mPa・sの範囲、あるいは約300mPa・s~約50,000mPa・sの範囲である。これは、構成成分(B)の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られた剥離コーティングの特徴は十分にである一方で、粘度が上記範囲の上限以下であると、得られた組成物は、加工及び取り扱いにおいて好適な粘度を有するからである。なお、本明細書において、粘度は、ASTM D 1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃で測定した値である。
【0036】
<構成成分(C)>
構成成分(C)は、1分子当たり少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、脂肪族不飽和基及びケイ素原子結合水素原子のいずれも有しない直鎖状オルガノポリシロキサンである。フルオロアルキル基の例としては、上記と同様のものが挙げられ、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基が好ましい。フルオロアルキル基以外のケイ素原子結合基の例としては、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基が挙げられ、これらの例としては、上記と同様であり、メチル基が好ましい。なお、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量は、好ましくは、少なくとも20質量%、あるいは少なくとも25質量%、又はあるいは少なくとも30質量%である。これは、構成成分(C)中のフッ素原子の含有量が上記下限値以上であると、本組成物を架橋して得られる剥離コーティングがシリコーン感圧接着剤に対して良好な剥離力を呈するからである。なお、構成成分(C)中のフッ素原子の含有量の上限は特に限定されないが、含有量が高すぎると、構成成分(C)自体が溶媒に溶解しない傾向があり、これにより取り扱いやすさが低下し、したがって、含有量は、好ましくは、多くとも60質量%であるか、あるいは多くとも50質量%である。なお、構成成分(C)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又は炭素数1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基が結合していてもよい。
【0037】
構成成分(C)は、好ましくは、一般式:R SiO1/2で表されるMシロキサン単位及び一般式:R SiO2/2で表されるDシロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンである。
【0038】
式中、Rは、同一であるか又は異なり、かつ1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基であり、これらの例としては、上記と同様のものである。なお、1分子中、少なくとも1つのRは、フルオロアルキル基である。
【0039】
構成成分(C)のためのオルガノポリシロキサンは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他のシロキサン単位、例えば、一般式:(X)R SiO1/2で表されるMシロキサン単位を含有してもよい。式中、Xは、ヒドロキシル基、又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0040】
25℃での構成成分(C)の粘度は限定されないが、様々な実施形態では、約1,000mPa・s~約100,000mPa・sの範囲、あるいは約2,000mPa・s~約100,000mPa・sの範囲、あるいは約3,000mPa・s~約100,000mPa・sの範囲である。これは、構成成分(C)の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られた剥離コーティングの特徴は十分にである一方で、粘度が上記範囲の上限以下であると、得られた組成物は、加工及び取り扱いにおいて好適な粘度を有するからである。なお、本明細書において、粘度は、ASTM D 1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃で測定した値である。
【0041】
構成成分(A)~(C)の総質量に各々基づいて、構成成分(A)の含有量は、40~90.5質量%の範囲であり、構成成分(B)の含有量は、9~56質量%の範囲であり、構成成分(C)の含有量は、0.5~4質量%の範囲であり、好ましくは、構成成分(A)の含有量は、40~85.5質量%の範囲であり、構成成分(B)の含有量は、14~56質量%の範囲であり、構成成分(C)の含有量は、0.5~4質量%の範囲であり、あるいは、構成成分(A)の含有量は、40~80.5質量%の範囲であり、構成成分(B)の含有量は、19~56質量%の範囲であり、構成成分(C)の含有量は、0.5~4質量%の範囲である。これは、構成成分(A)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる剥離コーティングの剥離力は安定する傾向がある一方で、含有量が上記範囲の上限以下であると、構成成分(A)の比較性が向上する傾向があるからである。一方、構成成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる剥離コーティングのウェットコーティング時の剥離力が良好であり、経時剥離力が安定する傾向があり、上記範囲の上限以下であると、構成成分(B)の比較性が向上する傾向がある。一方、構成成分(C)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる剥離コーティングの剥離力は安定する傾向がある一方で、含有量が上記範囲の上限以下であると、得られる剥離コーティングの剥離力が安定する傾向があり、経時剥離力も安定する傾向がある。
【0042】
<構成成分(D)>
構成成分(D)は、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。構成成分(D)中のケイ素原子に結合した基の例としては、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、1~12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基などが挙げられ、これらの例としては、上記と同様のものであり、これらの中でも、メチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基が好ましい。なお、1分子中のフルオロアルキル基に関連するフッ素原子の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも35質量%である。これは、構成成分(D)中のフッ素原子の含有量が上記下限値以上であると、構成成分(A)~(C)との相溶性が向上し、本組成物を架橋して得られる剥離コーティングがシリコーン感圧接着剤に対して良好な剥離力を呈するからである。なお、構成成分(D)中のフッ素原子の含有量の上限は特に限定されないが、含有量が高すぎると、構成成分(D)自体が溶媒に溶解しない傾向があり、これにより取り扱いやすさが低下し、そのため、含有量は、好ましくは、多くとも60質量%又は多くとも50質量%である。なお、構成成分(D)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又は炭素数1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基が結合していてもよい。
【0043】
構成成分(D)の分子構造は特に限定されない。例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹脂状、環状などが挙げられ、直鎖状又は一部分岐を有する直鎖状が好ましい。
【0044】
構成成分(D)の含有量は、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、約1~約15質量部の範囲、好ましくは約1~約13質量部の範囲、あるいは約2~約15質量部の範囲、あるいは約3~約15質量部の範囲、あるいは約2~約13質量部の範囲、あるいは約3~約13質量部の範囲である。これは、構成成分(D)の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物の架橋は、十分に進行する一方で、含有量が上記範囲の上限以下であると、得られる剥離コーティングの特徴が安定化するからである。
【0045】
<構成成分(E)>
構成成分(E)は、本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応触媒である。それらの例としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、及びパラジウム系触媒が挙げられ、白金系触媒が好ましい。白金系触媒の例としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体が挙げられる。
【0046】
構成成分(E)の含有量は、本組成物の硬化を促進する有効量であり、具体的には、本組成物に対して、触媒中の白金原子が質量単位で約0.1~1000ppmの範囲内となる量である。これは、構成成分(E)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られた組成物の硬化が進行する一方で、含有量が上記範囲の上限以下であると、得られた硬化物は変色しにくくなるからである。
【0047】
<構成成分(F)>
本組成物はまた、その架橋反応を制御するために、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含み得る。構成成分(F)の例としては、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び2-フェニル-3-ブチン-2-オールなどのアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエンイン化合物、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどのメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、及びメチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランなどのアルキンオキシシラン;メチルトリス(1-メチル-1-フェニル-プロピネオキシ)シラン、ジメチルビス(1-メチル-1-フェニル-プロピネオキシ)シラン、メチルトリス(1,1-ジメチル-プロピネオキシ)シラン、ジメチルビス(1,1-ジメチル-プロピネオキシ)シランなどのアルキネオキシシラン化合物;トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、ヒドラジン、スルホキシド、ホスフェート、ニトリル、ヒドロペルオキシド、アミン、エチレン性不飽和イソシアネート、フマレート(例えば、ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、及び/又はジアルコキシアルキルフマレート)、マレエート(例えば、ジアリルマレエート)、アルケン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
構成成分(F)の含有量は限定されないが、本組成物に十分なポットライフを付与する観点から、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、好ましくは約0.01~約5質量部の範囲、あるいは約0.05~約5質量部の範囲、あるいは約0.05~約3質量部の範囲である。これは、構成成分(F)の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物のポットライフが使用上十分にとなり、上記範囲の上限以下であると、本組成物の硬化性が使用上良好となるからである。
【0049】
<構成成分(G)>
加えて、本組成物は、その粘度を低減させ、塗布作業性及び濡れ性を改善するために、(G)溶媒を含み得る。構成成分(G)の例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、工業用ガソリン(ゴム溶媒など)、石油ベンジン、溶媒ナフサなどの炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロへキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、及び酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、及び1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒;2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノエーテルアセテート、及び2-ブトキシエチルアセテートなどのエステル及びエーテル構成成分を有する溶媒;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、及びテトラキス(トリメチルシロキシ)シランなどのシロキサン系溶媒;トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロキシレン、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルなどのフッ素系溶媒;並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0050】
構成成分(G)の含有量は、任意であり、必要に応じて適宜調整してもよいが、含有量は、典型的には、構成成分(A)~(C)の総質量100質量部に対して、約2,000質量部以下である。
【0051】
本組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、反応性希釈剤、レベリング剤、充填剤、帯電防止剤、消泡剤、顔料などを含んでいてもよい。
【0052】
<剥離ライナー>
次に、本発明の剥離ライナーについて詳細に説明する。
【0053】
剥離ライナーは、本組成物を基材に塗布し、組成物を硬化させることによって製造することができる。
【0054】
基材の例としては、紙、プラスチックフィルム、ガラス、金属フィルムを挙げることができる。紙の例としては、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、クラフト紙などが挙げられる。プラスチックフィルムの例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、及びポリフェニレンスルフィドフィルムが挙げられる。ガラスは、厚さ、種類などが特に限定されず、化学強化処理などが施されていてもよい。加えて、ガラス繊維も塗布してもよく、ガラス繊維を単独で使用してもよく、又は別の樹脂と併用してもよい。金属の例としては、アルミニウム箔、銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔が挙げられる。剥離フィルムとして使用する場合には、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0055】
本組成物を基材に塗布する方法は限定されず、既知のコーティング方法を使用することができる。コーティング方法の例としては、ワイヤーバー、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーンコーティング、浸漬コーティング、キャストコーティングなどが挙げられる。
【0056】
基材に塗布される本組成物の量も限定されないが、好ましくは、固形分換算で約0.1~約2g/mの範囲内又は約0.2~約1.8g/mの範囲内である。硬化条件も限定されないが、組成物は、好ましくは、約80~約180℃の範囲内又は約90~約160℃の範囲内で約10~約180秒間又は約15~約150秒間加熱される。
【0057】
このようにして製造された剥離ライナーに、シリコーン感圧接着剤を塗布してもよい。シリコーン感圧接着剤組成物としては、市販の組成物を使用してもよい。
【0058】
シリコーン感圧接着剤組成物を塗布する方法は、既知のコーティング方法であり得、これらの例としては、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーンコーティング、浸漬コーティング、キャストコーティングなどが挙げられる。
【0059】
塗布されるシリコーン感圧接着剤の量は、硬化後の厚さが約0.1~約300μmとなる量であればよく、好ましくは硬化後の厚さが約0.5~約200μmとなる量である。加えて、上記の剥離力の測定において、シリコーン感圧接着剤組成物の硬化条件は、約80~約150℃で約10秒~約10分であってもよい。
【実施例
【0060】
本発明のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物及び剥離ライナーを、実施例及び比較例を使用して以下に更に詳細に説明する。本発明は、以下の例に限定されるものではない。なお、式中、Meはメチル、Viはビニル基、Pf1は3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、Pf2は3,3,3-トリフルオロプロピル基である。オルガノポリシロキサンの粘度は次のようにして測定した。
【0061】
<粘度>
ASTM D 1084「Standard Test Methods for Viscosity of Adhesive」に従って、B型粘度計(Brookfield HA又はHB型回転粘度計、スピンドル#52を使用、5rpm)を使用することによって、23±2℃での粘度を測定した。
【0062】
<実施例1及び比較例1~3>
以下の構成成分を使用して、表1に示すフルオロシリコーン剥離コーティング組成物を調製した。まず、構成成分(A)、(B)、(C)、及び(F)を均質に混合し、構成成分(G)として好適な溶媒、例えば、イソプロピルエーテル、ヘプタン、フッ素系溶媒、又はこれらの混合物を仕込み、不揮発分を調整した。次に、構成成分(D)及び(E)を添加して、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物を製造した。なお、フルオロシリコーン剥離コーティング組成物の各不揮発分を9質量%となるように調整した。組成物を、PET基材上にコーターでコーティングし、次いで140℃で30秒間硬化した。組成物の性能も、表2に示した。
【0063】
以下の構成成分を、構成成分(A)として使用した。
構成成分(a-1):MeSiO2/2、MeRf1SiO2/2、ViMeSiO2/2、及びViMeSiO1/2単位からなり、かつ0.16質量%のビニル基含有量及び42.1質量%のフッ素原子含有量を有する、オルガノポリシロキサンの混合物
構成成分(a-2):MeSiO2/2、MeRf1SiO2/2、ViMeSiO2/2、及びMeSiO1/2単位からなり、かつ0.20質量%のビニル基含有量及び41.9質量%のフッ素原子含有量を有する、オルガノポリシロキサン
【0064】
以下の構成成分を、構成成分(B)として使用した。
構成成分(b-1):SiO4/2、MeSiO2/2、MeRf2SiO2/2、MeSiO1/2、及びViMeSiO1/2単位からなり、かつ約500mPa・sの粘度、0.44質量%のビニル基含有量、及び26質量%のフッ素原子含有量を有する、オルガノポリシロキサン
【0065】
以下の構成成分を、構成成分(C)として使用した。
構成成分(c-1):MeSiO2/2、MeRf1SiO2/2、及びMeSiO1/2からなり、かつ、66,000mPa・sの粘度及び32.4質量%のフッ素原子含有量を有する、オルガノポリシロキサン
【0066】
以下の構成成分を、構成成分(D)として使用した。
構成成分(d-1):MeHSiO2/2、MeRf1SiO2/2、及びMeSiO1/2からなり、66,000mPa・sの粘度、38質量%のフッ素原子含有量、及び0.50質量%のケイ素原子結合水素原子含有量を有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0067】
以下の構成成分を、構成成分(E)として使用した。
構成成分(e-1):450mPa・sの粘度を有するジメチビニルシロキシ末端ジメチルポリシロキサン中1.5質量%のPt-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体
【0068】
以下の構成成分を、構成成分(F)として使用した。
構成成分(f-1):3-メチル-1-ブチン-2-オール
構成成分(f-2):マレイン酸ジアリル
【0069】
【表1】
【0070】
<Si-PSA>
以下のシリコーン感圧接着剤を使用して、実施例及び比較例のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物を評価した。
Si-PSA 1:-11℃のガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤。
Si-PSA 2:-18℃のガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤。
Si-PSA 3:30℃のガラス転移温度を有するシリコーン感圧接着剤。
【0071】
<剥離力(a)の測定>
乾燥積層体:硬化したSi-PSA1又はSi-PSA2テープをコーティングされた剥離コーティング上に積層し、積層試料上に20g/cmの重量を負荷し、室温(room temperature、RT)又は70℃で20時間又は3日間放置した。20時間又は3日後、負荷を取り除き、30分間待つ。次いで、ChemInstruments AR-1500でライナー側の剥離力を試験する。FINAT Test Method No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を参照する。
【0072】
<剥離力(b)の測定>
湿式コーティング:Si-PSAを、コーティングされた剥離ライナー上に直接コーティングし、硬化させ、ブランクPETをPSA表面上に積層し、次いで、1インチ幅に切断した。積層試料上に20g/cmの重量を負荷し、室温又は70℃で20時間又は3日間放置した。20時間又は3日後、負荷を取り除き、30分間待つ。次いで、ChemInstruments AR-1500でライナー側の剥離力を試験する。FINAT Test Method No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を参照する。
【0073】
【表2】
【0074】
産業上の利用可能性
本発明のフルオロシリコーン剥離コーティング組成物は、低いガラス転移温度を有するSi-PSAに対して低い剥離力を呈する剥離コーティングを形成することができるため、OCA保護のためのSi-PSAのための剥離ライナーを製造するためのF-Si剥離コーティング組成物として有効である。
【国際調査報告】