(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ケイ素系負極材料及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20240423BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240423BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240423BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/36 B
H01M4/36 C
C01B33/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567261
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2021111681
(87)【国際公開番号】W WO2022236986
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110524212.X
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520464393
【氏名又は名称】▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANMULAKE EXCELLENT ANODE MATERIALS CO, LTD.
【住所又は居所原語表記】3/F,Office Building 15,No.87 ShangShang Road,Kunlun Street Liyang,Jiangsu 213330 China
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ ▲飛▼
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA24
4G072BB05
4G072DD05
4G072DD06
4G072DD07
4G072GG02
4G072HH01
4G072HH14
4G072JJ47
4G072LL03
4G072QQ09
4G072RR13
4G072TT01
4G072TT05
4G072TT30
4G072UU30
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050CA08
5H050CB01
5H050CB02
5H050FA18
5H050GA02
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5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】 ケイ素系負極材料及びその調製方法と応用を提供する。
【解決手段】 本発明は、ケイ素系負極材料及びその調製方法と応用に関する。ケイ素系負極材料は、一酸化ケイ素マトリックスと、原子レベルで一酸化ケイ素マトリックス中に均一に分布した炭素原子とを含み、炭素原子とケイ素原子が結合して無秩序なC-Si結合を形成し、X線回折法(XRD)にはSiCの結晶化ピークがなく、前記ケイ素系負極材料のX線光電子分光分析法(XPS)では、C1sエネルギースペクトルをピーク分裂した後283.5±1eVの位置にC-Si結合に属する結合ピークが存在し、前記ケイ素系負極材料の粒子の平均粒径D
50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m
2/g~40m
2/gであり、前記炭素原子の質量は一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.1%~40%を占める。本発明は、ガス処理により得られた超微細なケイ素を導電性の高い炭素と結合して、分子レベルで混合された無秩序なC-Si結合構造を形成し、材料の体積膨張を緩和し、一酸化ケイ素内部の導電性を向上させ、材料の急速充電性能を向上させることに有利である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素系負極材料であって、
前記ケイ素系負極材料は、一酸化ケイ素マトリックスと、原子レベルで一酸化ケイ素マトリックス中に均一に分布した炭素原子とを含み、炭素原子とケイ素原子が結合して無秩序なC-Si結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、前記ケイ素系負極材料のX線光電子分光分析法XPSでは、C1sエネルギースペクトルをピーク分裂した後283.5±1eVの位置にC-Si結合に属する結合ピークが存在し、
前記ケイ素系負極材料の粒子の平均粒径D
50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m
2/g~40m
2/gであり、前記炭素原子の質量は一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.1%~40%を占める、
ことを特徴とするケイ素系負極材料。
【請求項2】
前記ケイ素系負極材料の外側には、炭素被覆層をさらに有し、前記炭素被覆層の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0~20%を占めることを特徴とする請求項1に記載のケイ素系負極材料。
【請求項3】
前記炭素原子の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.5%~10%を占め、前記炭素被覆層の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0~10%を占めることを特徴とする請求項2に記載のケイ素系負極材料。
【請求項4】
上記請求項1~3のいずれか一項に記載のケイ素系負極材料の調製方法であって、
ケイ素と二酸化ケイ素の粉末を必要量で均一に混合し、真空炉の第1の坩堝に入れることと、
炭素含有有機物を必要量で真空炉の第2の坩堝に入れることと、
真空炉を減圧加熱し、0.1トル未満に減圧した後、第1の坩堝を1300℃~1700℃に上げ、第2の坩堝を100℃~1000℃に上げ、1~10時間反応させることと、
減圧加熱によって発生した混合蒸気を400℃~900℃で冷却し、蒸着後、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、蒸着後の材料を粉砕することで、前記ケイ素系負極材料を得ることと、
を含む、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項5】
前記炭素含有有機物としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、グルコース、デンプン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
粉砕後の材料に炭素被覆を施し、分級した後、前記ケイ素系負極材料を得ることをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項7】
前記炭素被覆は、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
上記請求項1~3のいずれか一項に記載のケイ素系負極材料を含む負極シート。
【請求項9】
上記請求項8に記載の負極シートを含むリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年05月13日に中国特許庁提出された出願番号が202110524212.Xであり、発明の名称が「ケイ素系負極材料及びその調製方法と応用」である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、材料の技術分野に関し、特に、ケイ素系負極材料及びその調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
より長い航続距離に対する新エネルギー自動車の追求は、エネルギー密度の高い動力電池の絶え間ない発展を促してきた。2020年11月に発表された「新エネルギー自動車産業発展計画(2021~2035年)」によると、2025年までに新エネルギー自動車の新車販売台数は、自動車新車販売台数合計の20%程度に達する。エネルギー密度の高い動力電池の発展において、動力電池の正極には、高ニッケル三元系材料が使用され、負極にはケイ素系負極材料が使用されている。ケイ素系負極の調製プロセスが徐々に成熟するにつれて、ケイ素系負極は将来的に比較的広範な市場を迎えるであろう。
【0004】
ケイ素系負極材料は、主に、ケイ素・酸素負極材料、シリコンカンボン系負極材料及びケイ素系合金負極材料に分けることができる。ケイ素・酸素負極は容量が高く、膨張率が相対的に低く、サイクル特性が他のケイ素系負極材料よりも優れている。しかしながら、一酸化ケイ素の電子導電性が悪いため、電池のレート特性が比較的悪かった。
【0005】
一酸化ケイ素のレート特性を改善するために、業界では酸化ケイ素に炭素被覆を施す手段がよく採用されていた。特許出願CN104022257Aでは、一酸化ケイ素粉末の表面に均一で緻密な導電性炭素層を作製することで、材料の導電性を向上させ、ハイレート充電・放電に適している。特許出願CN110034284Aでは、ケイ素系負極の表面にカーボンナノウォールを成長させ、サイクルにおける炭素被覆膜の亀裂問題を改善し、材料のサイクル特性を向上させる。炭素被覆が一酸化ケイ素の表面導電性を改善するための一般的な方法であることが分かる。
【0006】
ただし、一酸化ケイ素粒子内部の導電性は、表面改質により改善されることができず、将来の応用における急速充電の実際のニーズに直面して、その内部の導電性を改善する必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例は、ケイ素系負極材料及びその調製方法と応用を提供する。当該材料は、従来の一酸化ケイ素負極材料に比べ、材料内部の導電性を効果的に向上させ、材料の急速充電性能を向上させ、材料の体積膨張を緩和できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明の実施例は、一酸化ケイ素マトリックスと、原子レベルで一酸化ケイ素マトリックス中に均一に分布した炭素原子とを含み、炭素原子とケイ素原子が結合して無秩序なC-Si結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、前記ケイ素系負極材料のX線光電子分光分析法XPSでは、C1sエネルギースペクトルをピーク分裂した後283.5±1eVの位置にC-Si結合に属する結合ピークが存在し、
前記ケイ素系負極材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m2/g~40m2/gであり、前記炭素原子の質量は一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.1%~40%を占めるケイ素系負極材料に関する。
【0009】
好ましくは、前記ケイ素系負極材料の外側には、炭素被覆層をさらに有し、前記炭素被覆層の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0~20%を占める。
【0010】
さらに好ましくは、前記炭素原子の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.5%~10%を占め、前記炭素被覆層の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0~10%を占める。
【0011】
第2の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のケイ素系負極材料の調製方法であって、前記調製方法は、
ケイ素と二酸化ケイ素の粉末を必要量で均一に混合し、真空炉の第1の坩堝に入れることと、
炭素含有有機物を必要量で真空炉の第2の坩堝に入れることと、
真空炉を減圧加熱し、0.1トル未満に減圧した後、第1の坩堝を1300℃~1700℃に上げ、第2の坩堝を100℃~1000℃に上げ、1~10時間反応させることと、
減圧加熱によって発生した混合蒸気を400℃~900℃で冷却し、蒸着後、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、蒸着後の材料を粉砕することで、前記ケイ素系負極材料を得ることと、
を含む。
【0012】
好ましくは、炭素含有有機物としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、グルコース、デンプン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの1種以上を含む。
【0013】
好ましくは、前記調製方法は、前記粉砕後の材料に炭素被覆を施し、分級した後、前記ケイ素系負極材料を得ることをさらに含む。
【0014】
さらに好ましくは、前記炭素被覆は、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうちの少なくとも1種を含む。
【0015】
第3の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のケイ素系負極材料を含む負極シートに関する。
【0016】
第4の態様において、本発明の実施例は、上記第3の態様に記載の負極シートを含むリチウム電池に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ケイ素と二酸化ケイ素の混合物を炭素含有有機物とともに真空炉内で加熱し、冷却してから蒸着させることで、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素負極材料が得られる。材料内部では、炭素原子とケイ素原子が結合して無秩序なC-Si結合を形成し、XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、XPS測定では、C1sネルギースペクトルをピーク分裂した後283.5±1eVの位置にC-Si結合に属する結合ピークが存在する。本発明は、従来の機械的混合方法と異なり、気相混合法を用いることで、分子レベルの超微細なケイ素を導電性の高い炭素と結合して、分子レベルで混合された無秩序なC-Si結合構造を形成し、材料の体積膨張を緩和し、一酸化ケイ素内部の導電性を向上させ、材料の急速充電性能を向上させることに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、図面及び実施例を参照して本発明の実施例における技術案をより詳細に説明する。
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係るケイ素系負極材料の調製方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例1によるケイ素系負極材料のXPS C1sエネルギースペクトルを示す図である。
【
図3】本発明の実施例1によるケイ素系負極材料のXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明をより詳細に説明するためのものにすぎず、いかなる形で本発明を制限するためのものではないと理解すべきであり、すなわち、本発明の保護範囲を制限することを意図していない。
【0021】
本発明のケイ素系負極材料は、一酸化ケイ素マトリックスと、原子レベルで一酸化ケイ素マトリックス中に均一に分布した炭素原子とを含み、炭素原子とケイ素原子が結合して無秩序なC-Si結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、前記ケイ素系負極材料のX線光電子分光分析法XPSでは、C1sエネルギースペクトルをピーク分裂した後283.5±1eVの位置にC-Si結合に属する結合ピークが存在し、
ケイ素系負極材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m2/g~40m2/gであり、炭素原子の質量は一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.1%~40%を占める。好ましくは、炭素原子の質量は一酸化ケイ素マトリックスの質量の0.5%~10%を占める。
【0022】
上記材料の外層に炭素被覆層を被覆してもよく、炭素被覆層の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0~20%を占め、好ましくは、炭素被覆層の質量は、一酸化ケイ素マトリックスの質量の0~10%を占める。
【0023】
本発明の上記ケイ素系負極材料は、以下のような調製方法により得られ、主な方法ステップは、
図1に示す通りであり、以下のステップを含む。
【0024】
ステップ110では、ケイ素と二酸化ケイ素の粉末を必要量で均一に混合し、真空炉の第1の坩堝に入れる。
ステップ120では、炭素含有有機物を必要量で真空炉の第2の坩堝に入れる。
具体的に、炭素含有有機物としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、グルコース、デンプン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの1種以上を含む。
【0025】
ステップ130では、真空炉を減圧加熱し、0.1トル未満に減圧した後、第1の坩堝を1300℃~1700℃に上げ、第2の坩堝を100℃~1000℃に上げ、1~10時間反応させる。
ステップ140では、減圧加熱によって発生した混合蒸気を400℃~900℃で冷却し、蒸着後、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材を得て、蒸着後の材料を粉砕することで、ケイ素系負極材料を得る。
【0026】
さらに、外側に炭素被覆層をさらに有するケイ素系負極材料を調製する場合、粉砕後の材料に炭素被覆を施すことにより、分級した後、ケイ素系負極材料を得ることができる。炭素被覆の具体的な方法は、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうちの少なくとも1種を含み得る。上記の3種の方法は、いずれも電池材料の調製過程でよく用いられる被覆方法であり、ここでは説明を省略する。
【0027】
本発明によって得られる材料は、従来の機械的混合方法によって得られる材料と異なり、材料内の炭素は凝集していないが、気相混合法を用いることで、ガス状のケイ素をガス状の炭素と結合させ、すなわち、分子レベルの超微細なケイ素を導電性の高い炭素と結合させ、分子レベルで混合された無秩序なC-Si結合構造を形成し、材料の体積膨張を緩和し、一酸化ケイ素内部の導電性を向上させ、材料の急速充電性能を向上させることに有利である。
【0028】
本発明によるケイ素系負極材料は、リチウム電池に適用する負極シートを作製するために用いられることができる。
【0029】
本発明による技術案をより良く理解するために、以下では、複数の具体的な実施例を挙げて本発明の上記実施例による方法でケイ素系負極材料を調製する具体的なプロセス、及びリチウム二次電池に適用する方法及び特性をそれぞれ説明する。
【実施例1】
【0030】
ケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素粉末4kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、フェノール樹脂0.5kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃、坩堝Bを500℃に加熱し、7時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素を得た。
【0031】
炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、1.5%である。本実施例で調製した内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材にXPS測定を実施し、C1sエネルギースペクトルを得た。C1sエネルギースペクトルに対して、ピーク分割及びピークフィッティングを行い、結果を
図2に示し、283.35eVの位置にC-Siの結合ピークが現れた。XRD測定を実施し、XRDパターンを得て、結果を
図3に示し、本実施例の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素は、非晶質構造であり、SiCの結晶化ピークが存在しない。
【0032】
その後、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素に炭素被覆を施し、材料4kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温した後、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比は2:3である。3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の合計含有量は、5.5%である。
【0033】
上記の炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を負極材料とし、導電性添加剤である導電性カーボンブラック(SP)と接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2%:3%の比率で秤量し、室温にてビーター内でスラリーを調製する。調製したスラリーを銅箔上に均一に塗布する。50℃で送風乾燥器において2時間乾燥させた後、8×8mmの極片に切断し、真空乾燥器において100℃で真空引きして10時間乾燥させた。電池組立のために、乾燥させた極片をすぐにグローブボックス内に移して用意しておく。
【0034】
模擬電池の組立は、高純度Ar雰囲気を含むグローブボックス内で行われ、リチウム金属を対電極とし、1mol/LのLiPF6を含有するエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(EC/DMCの体積比が1:1)の溶液を電解液とし、電池を組み立てた。充放電器を用いて定電流充放電モード試験を実施し、放電終止電圧は0.005Vであり、充電終止電は1.5Vであり、1サイクル目の充放電試験はC/10電流密度にて行われ、2サイクル目の放電試験はC/10電流密度にて行われた。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例2】
【0035】
ケイ素粉末10kgと二酸化ケイ素粉末10kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、エポキシ樹脂2kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃、坩堝Bを600℃に加熱し、7時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、2%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で900℃に昇温し、アルゴンとプロピレンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の合計含有量は、4.5%である。
【0036】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例3】
【0037】
ケイ素粉末15kgと二酸化ケイ素粉末6kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、エグルコース0.9kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃、坩堝Bを300℃に加熱し、7時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、1.5%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、粉砕された試料と石油ピッチとを質量比20:1で混合し、高温炉に入れ、窒素雰囲気下で、900℃で2時間熱処理し、温度を下げて分級した後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は5%である。
【0038】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例4】
【0039】
ケイ素粉末7kgと二酸化ケイ素粉末5kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、デンプン0.3kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃、坩堝Bを380℃に加熱し、4時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、1.2%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1100℃に昇温し、アルゴンとアセチレンの混合ガスを体積比1:2で吹き込んで気相被覆を実施する。3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は6%である。
【0040】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例5】
【0041】
ケイ素粉末5kgと二酸化ケイ素粉末5kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、ポリアクリロニトリル0.6kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃、坩堝Bを700℃に加熱し、2時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、2%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1100℃に昇温し、アルゴンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施する。2時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は5%である。
【0042】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例6】
【0043】
ケイ素粉末7kgと二酸化ケイ素粉末9kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、ポリフッ化ビニリデン0.5kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを400℃に加熱し、2時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、0.8%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1100℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比が2:3である。2時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は5.8%である。
【0044】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例7】
【0045】
ケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素粉末4kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.3kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを600℃に加熱し、2時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、3%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1100℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比が2:3である。2時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は7%である。
【0046】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例8】
【0047】
ケイ素粉末7kgと二酸化ケイ素粉末6kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.2kgとエポキシ樹脂0.3kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを600℃に加熱し、2時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、2.6%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、粉砕された試料と石油ピッチとを質量比20:1で混合し、高温炉に入れ、窒素雰囲気下で、900℃で2時間熱処理し、温度を下げて分級した後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は4.5%である。
【0048】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例9】
【0049】
ケイ素粉末6kgと二酸化ケイ素粉末5kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、フェノール樹脂0.2kgとエポキシ樹脂0.3kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを400℃に加熱し、3時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、3%である。
【0050】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例10】
【0051】
ケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素粉末4kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.3kgを真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを600℃に加熱し、2時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、3%である。
【0052】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例11】
【0053】
ケイ素粉末10kgと二酸化ケイ素粉末12kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、フェノール樹脂0.2kg、ポリアクリロニトリル0.3kg及びカルボキシメチルセルロースナトリウム0.8kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを600℃に加熱し、5時間反応させた。混合蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、3%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、粉砕された試料とフェノール樹脂を20:1の比率でアルコール溶媒に溶かし、6時間撹拌して均一なスラリーを形成する。その後、スラリーを直接に乾燥させ、高温炉に入れ、窒素雰囲気下で、900℃で混合物を2時間焼結し、冷却した後、分級及びふるい分けを行うことにより、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は3.8%である。
【0054】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例12】
【0055】
ケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素粉末3kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、グルコース0.4kgとデンプン0.4kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを600℃に加熱し、5時間反応させた。混合蒸気を600℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、4%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、粉砕された試料とフェノール樹脂を20:1の比率でアルコール溶媒に溶かし、6時間撹拌して均一なスラリーを形成する。その後、スラリーを直接に乾燥させ、高温炉に入れ、窒素雰囲気下で、900℃で混合物を2時間焼結し、冷却した後、分級及びふるい分けを行うことにより、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は6.8%である。
【0056】
上記の炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を負極材料とし、導電性添加剤である導電性カーボンブラック(SP)と接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2%:3%の比率で秤量し、室温にてビーター内でスラリーを調製する。調製したスラリーを銅箔上に均一に塗布する。50℃で送風乾燥器において2時間乾燥させた後、8×8mmの極片に切断し、真空乾燥器において100℃で真空引きして10時間乾燥させた。電池組立のために、乾燥させた極片をすぐにグローブボックス内に移して用意しておく。
【0057】
模擬電池の組立は、高純度Ar雰囲気を含むグローブボックス内で行われ、上記電極を負極とし、三元系正極材NCM811を対電極とし、ガーネット型Li7La3Zr2O12(LLZO)を固体電解質とし、グローブボックス内でボタン形全固体電池に組み立てられ、それを充電して電気化学性能を評価した。充放電器を用いて定電流充放電モード試験を実施し、放電終止電圧は0.005Vであり、充電終止電圧は1.5Vであり、1サイクル目の充放電試験はC/10電流密度にて行われ、2サイクル目の放電試験はC/10電流密度にて行われた。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例13】
【0058】
ケイ素粉末6kgと二酸化ケイ素粉末5kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、エポキシ樹脂0.4kg、デンプン0.3kg及びポリフッ化ビニリデン0.6kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1300℃、坩堝Bを600℃に加熱し、6時間反応させた。混合蒸気を700℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、4%である。その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1100℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比は1:3である。3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げた後、炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得て、ここで、炭素の合計含有量は6%である。
【0059】
上記の炭素被覆の内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を負極材料とし、導電性添加剤である導電性カーボンブラック(SP)と接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2%:3%の比率で秤量し、室温にてビーター内でスラリーを調製する。調製したスラリーを銅箔上に均一に塗布する。50℃で送風乾燥器において2時間乾燥させた後、8×8mmの極片に切断し、真空乾燥器において100℃で真空引きして10時間乾燥させた。電池組立のために、乾燥させた極片をすぐにグローブボックス内に移して用意しておく。
【0060】
模擬電池の組立は、高純度Ar雰囲気を含むグローブボックス内で行われ、上記電極を負極とし、三元系正極材NCM811を対電極とし、ポリオレフィン系ポリマーゲル電解質膜を半固体電解質とし、グローブボックス内でボタン形半固体電池に組み立てられ、それを充電して電気化学性能を評価した。充放電器を用いて定電流充放電モード試験を実施し、放電終止電圧は0.005Vであり、充電終止電圧は1.5Vであり、1サイクル目の充放電試験はC/10電流密度にて行われ、2サイクル目の放電試験はC/10電流密度にて行われた。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【実施例14】
【0061】
ケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素粉末5kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、エポキシ樹脂0.4kgとポリフッ化ビニリデン0.6kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Bに入れ、炉ドアを閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃、坩堝Bを400℃に加熱し、2時間反応させた。混合蒸気を700℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素原子が原子レベルで均一に分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の含有量は、3%である。
【0062】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
ケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素粉末4kgを均一に混合した後、混合粉末を真空炉の坩堝Aに入れ、炉の扉を閉めて圧力が0.1トル未満になるまで真空引きした後、坩堝Aを1400℃に加熱し、7時間反応させた。蒸気を400℃で冷却して蒸着させ、材料を取り出して粉砕した。
【0064】
その後、粉砕された材料に炭素被覆を施し、材料4kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比は2:3である。3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、炭素・硫黄分析装置で測定した炭素の合計含有量は、3%である。
【0065】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0066】
実施例1~14及び比較例1における負極材料の初回クーロン効率、5C可逆容量、5Cレートにおけるサイクル特性の試験結果は、次の通りである。
【0067】
【0068】
表のデータから分かるように、同じ試験条件下で、実施例1~14では、ケイ素と二酸化ケイ素の混合物を炭素含有有機物とともに真空炉内で加熱し、その後冷却して蒸着させることで、内部に原子レベルで均一に分布した炭素原子を有する一酸化ケイ素材料を得た。ガス状の混合法により、超微細なケイ素を導電性の高い炭素と結合させ、分子レベルで混合された無秩序なC-Si結合構造を形成し、材料の体積膨張を緩和し、一酸化ケイ素内部の導電性を向上させ、材料のレート特性、サイクル特性を向上させることに有利である。
【0069】
上述の具体的な実施形態では、本発明の目的、技術案及び有益な効果をさらに詳細に説明し、以上は本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則内でなされたいかなる修正、均等な置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】