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特表2024-518374トランスサイレチン(TTR)媒介性アミロイドーシスを治療するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】トランスサイレチン(TTR)媒介性アミロイドーシスを治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20240423BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/603 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K31/713 ZNA
A61K31/573
A61P25/00
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P9/00
A61K31/167
A61K31/135
A61K31/341
A61K31/07
A61K31/603
A61K31/423
A61K48/00
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567885
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022027210
(87)【国際公開番号】W WO2022235537
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,434
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505369158
【氏名又は名称】アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ベスト,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA201
4C084ZA202
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA361
4C084ZA362
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086DA10
4C086DA17
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA20
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206FA05
4C206GA02
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA20
4C206ZA22
4C206ZA36
4C206ZC75
(57)【要約】
有効量のトランスサイレチン(TTR)阻害組成物を投与することによって、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行うための方法が本明細書に開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリニューロパチーおよび/または心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載のパチシラン医薬品を前記患者に投与することを含み、前記方法は、心機能の改善または安定化をもたらす、方法。
【請求項2】
前記パチシラン医薬品が、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パチシラン医薬品が、3週間毎に一回静脈内投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、左心室腔機能障害の進行を低減する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、左心室静電容量の低減を防止する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの改善または安定化をもたらす、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記心エコーパラメータが等容性圧容積(PV)面積である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記等容性PV面積が、30mmHgの左心室(LV)拡張終期圧にインデックス付けされる(PVAiso30)、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較した前記等容性PV面積の変化が、プラセボの投与と比較して安定化される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
PVAiso30の前記ベースラインからの変化が、9ヶ月の治療後、1500未満、1200未満、1000未満、800未満、600未満、500未満、400未満、300未満、200未満、150未満、または100mmHgmL未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PVAiso30の前記ベースラインからの変化が、18ヶ月の治療後、2500未満、2000未満、1500未満、1200未満、1000未満、900未満、800未満、700未満、または600mmHgmL未満である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、FAPステージ、PNDスコア、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)または他のニューロパチー関連臨床評価項目、血清パーセントTTR濃度、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの安定化または改善をもたらす、方法。
【請求項13】
ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、前記ベースラインは、前記パチシラン医薬品投与前の前記患者の前記mNIS+7スコアである、方法。
【請求項14】
心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、前記パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善をもたらす、方法。
【請求項15】
心筋症およびポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、前記ベースラインは、前記パチシラン医薬品投与前の前記患者の前記mNIS+7スコアであり、前記方法は、前記パチシラン医薬品の投与前に決定される前記ベースラインと比較して、血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善をもたらす、方法。
【請求項16】
修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの低減を、それを必要とするヒト患者において行うための方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの、前記修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、前記ベースラインは、前記パチシラン医薬品投与前の前記患者の前記mNIS+7スコアである、方法。
【請求項17】
生活の質、運動力、障害、歩行速度、栄養状態、および/または自律神経症状の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、前記パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、前記生活の質、前記運動力、前記障害、前記歩行速度、前記栄養状態、および/または前記自律神経症状のそれぞれの、安定化または改善をもたらす、方法。
【請求項18】
Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)、NIS-W、Rasch-built全般身体障害スコア(R-ODS)、10メートル歩行試験(10-MWT)、修正ボディ・マス指数(mBMI)、COMPASS-31スコアからなる群から選択される少なくとも一つのニューロパチー関連臨床評価項目の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、前記パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、前記少なくとも一つの臨床評価項目の安定化または改善をもたらす、方法。
【請求項19】
血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、前記パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、前記血清NT-proBNP濃度および/または前記左心室(LV)ストレインおよび/または前記LV壁厚の安定化または改善を、それぞれもたらす、方法。
【請求項20】
FAPステージおよび/またはPNDスコアおよび/または血清パーセントTTR濃度の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法であって、前記方法は、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、前記患者に体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、前記パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、前記方法は、前記パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、前記FAPステージおよび/または前記PNDスコアおよび/または前記血清パーセントTTR濃度の安定化または改善を、それぞれもたらす、方法。
【請求項21】
前記mNIS+7スコアの前記ベースラインからの変化が、-6.0点である、請求項12、13、15、または16に記載の方法。
【請求項22】
mNIS+7スコアの前記ベースラインからの減少も、9ヶ月で決定される、請求項12、13、15、または16に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、
a.Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)、および
b.NIS-W、および
c.Rasch-built全般身体障害スコア(R-ODS)、および
d.10メートル歩行試験(10-MWT)、および
e.修正ボディ・マス指数(mBMI)、および
f.COMPASS-31スコア、からなる群から選択される一つ以上のニューロパチー関連臨床評価項目における、前記ベースラインを上回る改善をもたらす、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、前記ニューロパチー障害関連臨床評価項目のすべてにおいて改善をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)およびCOMPASS-31スコアおよび10メートル歩行試験の改善をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記パチシラン医薬品の投与前に決定される前記ベースラインと比較して、前記患者における血清パーセントTTR濃度の低減をもたらす、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、前記パチシラン医薬品の投与前に決定される前記ベースラインと比較して、前記患者におけるFAPステージの安定化または回帰をもたらす、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記パチシラン医薬品の投与前に決定される前記ベースラインと比較して、PNDスコアの安定化または回帰をもたらす、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、前記パチシラン医薬品の投与前に決定される前記ベースラインと比較して、皮膚生検における表皮内神経線維密度の減少をもたらす、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が、少なくとも12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、または36ヶ月間、前記パチシラン医薬品を投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が、心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を必要としており、前記方法が、前記パチシラン医薬品の投与前に決定される前記ベースラインと比較して、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの改善または安定化をもたらす、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記心臓マーカーは、血清NT-proBNP濃度であり、前記心エコーパラメータは、左心室(LV)ストレインまたはLV壁厚である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記患者に、以下:デキサメタゾン、経口パラセタモール/アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、およびラニチジン、の前投薬を投与することをさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者に、以下:
a.IVデキサメタゾン10mg、または同等物、および
b.経口パラセタモール/アセトアミノフェン500mg、または同等物、および
c.IVヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1ブロッカー):ジフェンヒドラミン50mg、または同等の他のIV H1ブロッカーもしくはヒドロキシジン25mg、もしくはPOでフェキソフェナジン30もしくは60mg、もしくはPOでセチリジン10mg、および
d.IVヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):ラニチジン50mgもしくはファモチジン20mg、または同等の他のH2ブロッカー用量、の前投薬を投与することをさらに含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記前投薬が、各パチシラン医薬品投与の約一時間前に投与される、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記患者に、ビタミンAのUSDA推奨日当の経口一日用量を投与することをさらに含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
四量体安定化剤を投与することをさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記四量体安定化剤が、タファミジスまたはジフルニサルである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記患者が、
a.白人であり、および/または
b.北米に居住し、および/または
c.65歳以上であり、および/または
d.男性であり、および/または
e.FAPステージIを有し、および/または
f.FAPステージIIを有し、および/または
g.8~165のベースラインmNIS+7スコアを有し、および/または
h.Val30 Met TTR変異を有し、および/または
i.表Xに見られる一つ以上のTTR変異を有し、および/または
j.心アミロイド関与の心エコーによる証拠を有し、および/または
k.以前に長期のTTR四量体安定化剤を使用した履歴を有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を有する、請求項16~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記患者が、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を有さない、請求項16~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、TTR関連障害を有する、請求項16~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記TTR関連障害が、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(ATTR)、症候性ポリニューロパチー、家族性アミロイド心筋症(FAC)、および軟髄膜/CNS(中枢神経系)アミロイドーシスからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも一つの薬物の投与が、前記患者によって実施される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも一つの薬物の投与が、医療専門家によって実施される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
投与が80分にわたって実施される、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ベースラインが平均である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年5月3日に出願された米国仮特許出願第63/183,434号の優先権の利益を主張する。先述の出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含んでおり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。先述のASCIIの写しは、2022年4月29日に作成され、121301-20020_SL.txtという名称で、サイズは1,692バイトである。
【背景技術】
【0003】
トランスサイレチン(TTR)は、主に肝臓で産生される四量体タンパク質である。TTR遺伝子の変異は、タンパク質四量体を不安定化し、単量体のミスフォールディングおよびTTRアミロイド線維への凝集をもたらす(ATTR)。組織沈着は、全身性ATTRアミロイドーシスをもたらす(Coutinho et al.,Forty years of experience with type I amyloid neuropathy.Review of 483 cases.In:Glenner et al.,Amyloid and Amyloidosis,Amsterdam:Excerpta Media,1980 pg.88-93;Hou et al.,Transthyretin and familial amyloidotic polyneuropathy.Recent progress in understanding the molecular mechanism of neurodegeneration.FEBS J 2007,274:1637-1650;Westermark et al.,Fibril in senile systemic amyloidosis is derived from normal transthyretin.Proc Natl Acad Sci USA 1990,87:2843-2845)。100を超える報告されたTTR変異は、様々な疾患症状を示す。
【0004】
TTRアミロイドーシスは、様々な形態で現れる。末梢神経系がより顕著に影響を受ける場合、疾患は家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)と呼ばれる。心臓が主に関与しているが神経系が関与していない場合、疾患は家族性アミロイド心筋症(FAC)と呼ばれる。TTRアミロイドーシスの第三の主要なタイプは、軟髄膜/CNS(中枢神経系)アミロイドーシスと呼ばれる。
【0005】
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)およびATTR関連心筋症に関連する最も一般的な変異は、それぞれVal30Metである(Coelho et al.,Tafamidis for transthyretin familial amyloid polyneuropathy:a randomized,controlled trial.Neurology 2012,79:785-792)およびVal122Ile(Connors et al.,Cardiac amyloidosis in African Americans:comparison of clinical and laboratory features of transthyretin V122I amyloidosis and immunoglobulin light chain amyloidosis.Am Heart J 2009,158:607-614)。
【0006】
FAPに対する現在の治療選択肢は、循環アミロイド形成タンパク質の量の安定化または減少に焦点を当てている。同所性肝移植は、変異TTRレベルを低減し(Holmgren et al.,Biochemical effect of liver transplantation in two Swedish patients with familial amyloidotic polyneuropathy(FAP-met30).Clin Genet 1991,40:242-246)、早期のFAP患者において生存率の改善が報告されているが、野生型TTRの沈着は継続し得る(Yazaki et al.,Progressive wild-type transthyretin deposition after liver transplantation preferentially occurs into myocardium in FAP patients.Am J Transplant 2007,7:235-242;Adams et al.,Rapid progression of familial amyloid polyneuropathy:a multinational natural history study Neurology 2015 Aug 25;85(8)675-82;Yamashita et al.,Long-term survival after liver transplantation in patients with familial amyloid polyneuropathy.Neurology 2012,78:637-643;Okamoto et al.,Liver transplantation for familial amyloidotic polyneuropathy:impact on Swedish patients’survival.Liver Transpl 2009,15:1229-1235;Stangou et al.,Progressive cardiac amyloidosis following liver transplantation for familial amyloid polyneuropathy:implications for amyloid fibrillogenesis.Transplantation 1998,66:229-233;Fosby et al.,Liver transplantation in the Nordic countries - An intention to treat and post-transplant analysis from The Nordic Liver Transplant Registry 1982-2013.Scand J Gastroenterol.2015 Jun;50(6):797-808.Transplantation,in press)。
【0007】
タファミジスおよびジフルニサルは循環TTR四量体を安定化させ、疾患進行速度を遅らせることができる(Berk et al.,Repurposing diflunisal for familial amyloid polyneuropathy:a randomized clinical trial.JAMA 2013,310:2658-2667;Coelho et al.,2012;Coelho et al.,Long-term effects of tafamidis for the treatment of transthyretin familial amyloid polyneuropathy.J Neurol 2013,260:2802-2814;Lozeron et al.,Effect on disability and safety of Tafamidis in late onset of Met30 transthyretin familial amyloid polyneuropathy.Eur J Neurol 2013,20:1539-1545)。しかしながら、症状は、大多数の患者において治療中も悪化し続け、FAPに対する新しい、疾患修飾治療選択肢の必要性を強調している。
【0008】
TTRを標的とするdsRNAの説明は、例えば、国際特許出願番号 PCT/US2009/061381(WO2010/048228)および国際特許出願番号 PCT/US2010/055311(WO2011/056883)に見出される。
【発明の概要】
【0009】
遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)(ポリニューロパチーおよび/または心筋症を伴う、または伴わない)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法が本明細書に記載され、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNA用量で投与することを含み、パチシランは、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、FAPステージ、PNDスコア、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)または他のニューロパチー関連臨床評価項目、血清パーセントTTR濃度、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの安定化または改善をもたらす。
【0010】
有効量のトランスサイレチン(TTR)阻害組成物を投与することによって、ニューロパチー障害スコア(NIS)または修正NIS(mNIS+7)の増加の低減または停止を、それを必要とするヒト対象において行うための方法も本明細書に記載され、有効量は、ヒト対象の血清中のTTRタンパク質の濃度を50μg/ml未満または少なくとも80%低減する。増加するNISまたはFAPを有する対象にTTR阻害組成物を投与し、増加するNISまたはFAPを有する対象におけるTTRタンパク質のレベルを決定することによって、増加するNISまたは家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の治療のためのTTR阻害組成物の投与量を調節するための方法も、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、その後対象に投与されるTTR阻害組成物の量は、TTRタンパク質のレベルが50μg/ml超である場合に増加され、その後対象に投与されるTTR阻害組成物の量は、TTRタンパク質のレベルが50μg/ml未満である場合に減少される。本明細書において、TTRを阻害するsiRNAの製剤化型も記載される。
【0011】
一態様では、本発明は、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法を提供し、方法は、表1A,1Bまたは1Cに記載されるパチシラン医薬品を患者に投与することを含み、方法は、心機能の改善または安定化をもたらす。
【0012】
いくつかの実施形態では、パチシラン医薬品は、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、左心室腔機能障害の進行を低減する。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、左心室静電容量の低減を防止する。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの改善または安定化をもたらす。
【0017】
いくつかの実施形態では、心エコーパラメータは、等容性圧容積(PV)面積である。
【0018】
いくつかの実施形態では、等容性PV面積は、30mmHgの左心室(LV)拡張終期圧(PVAiso30)にインデックス付けされる。
【0019】
いくつかの実施形態では、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較した等容性PV面積の変化は、プラセボの投与と比較して安定化する。
【0020】
いくつかの実施形態では、PVAiso30のベースラインからの変化は、9ヶ月の治療後、1500未満、1200未満、1000未満、800未満、600未満、500未満、400未満、300未満、200未満、150未満、または100mmHg*mL未満である。
【0021】
いくつかの実施形態では、PVAiso30のベースラインからの変化は、18ヶ月の治療後、2500未満、2000未満、1500未満、1200未満、1000未満、900未満、800未満、700未満、または600mmHg*mL未満である。
【0022】
別の態様では、本発明は、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、FAPステージ、PNDスコア、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)または他のニューロパチー関連臨床評価項目、血清パーセントTTR濃度、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの安定化または改善をもたらす。
【0023】
一態様では、本発明は、ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈投与され、方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、ベースラインは、パチシラン医薬品の投与前の患者のmNIS+7スコアである。
【0024】
一態様では、本発明は、心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善をもたらす。
【0025】
別の態様では、本発明は、心筋症およびポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行うための方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、ベースラインは、パチシラン医薬品の投与前の患者のmNIS+7スコアであり、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善をもたらす。
【0026】
一態様では、本発明は、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの低減を、それを必要とするヒト患者において行うための方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、ベースラインは、パチシラン医薬品の投与前の患者のmNIS+7スコアである。
【0027】
別の態様では、本発明は、生活の質、運動力、障害、歩行速度、栄養状態、および/または自律神経症状の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、生活の質、運動力、障害、歩行速度、栄養状態、および/または自律神経症状のそれぞれの、安定化または改善をもたらす。
【0028】
一態様では、本発明は、Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)、NIS-W、Rasch-built全般身体障害スコア(R-ODS)、10メートル歩行試験(10-MWT)、修正ボディ・マス指数(mBMI)、およびCOMPASS-31スコアからなる群から選択される少なくとも一つのニューロパチー関連臨床評価項目の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、少なくとも一つの臨床評価項目の安定化または改善をもたらす。
【0029】
別の態様では、本発明は、血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、血清NT-proBNP濃度および/または左心室(LV)ストレインおよび/またはLV壁厚の安定化または改善を、それぞれもたらす。
【0030】
別の態様では、本発明は、FAPステージおよび/またはPNDスコアおよび/または血清パーセントTTR濃度の安定化または改善を、それを必要とするヒト患者において行うための方法を提供し、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシラン医薬品は、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、FAPステージおよび/またはPNDスコアおよび/または血清パーセントTTR濃度の安定化または改善を、それぞれもたらす。
【0031】
いくつかの実施形態では、mNIS+7スコアのベースラインからの変化は、-6.0点である。
【0032】
いくつかの実施形態では、mNIS+7スコアのベースラインからの減少も、9ヶ月で決定される。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法は、
a.Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)、および
b.NIS-W、および
c.Rasch-built全般身体障害スコア(R-ODS)、および
d.10メートル歩行試験(10-MWT)、および
e.修正ボディ・マス指数(mBMI)、および
f.COMPASS-31スコア、からなる群から選択される一つ以上のニューロパチー関連臨床評価項目における、ベースラインを上回る改善をもたらす。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、ニューロパチー関連臨床評価項目のすべての改善をもたらす。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)およびCOMPASS-31スコアおよび10メートル歩行試験の改善をもたらす。
【0036】
いくつかの実施形態では、本方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、患者における血清パーセントTTR濃度の低減をもたらす。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、患者におけるFAPステージの安定化または回帰をもたらす。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、PNDスコアの安定化または回帰をもたらす。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、皮膚生検における表皮内神経線維密度の減少をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、または36ヶ月間、パチシラン医薬品を投与される。
【0041】
いくつかの実施形態では、患者は、心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を必要としており、方法は、パチシラン医薬品の投与前に決定されるベースラインと比較して、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの改善または安定化をもたらす。
【0042】
いくつかの実施形態では、心臓マーカーは、血清NT-proBNP濃度であり、心エコーパラメータは、左心室(LV)ストレインまたはLV壁厚である。
【0043】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者に、以下の前投薬を投与することをさらに含む:デキサメタゾン、経口パラセタモール/アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、およびラニチジン。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者に、以下の前投薬を投与することをさらに含む:
a.IVデキサメタゾン10mg、または同等物、および
b.経口パラセタモール/アセトアミノフェン500mg、または同等物、および
c.IVヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1ブロッカー):ジフェンヒドラミン50mg、または同等の他のIV H1ブロッカーもしくはヒドロキシジン25mg、もしくはPOでフェキソフェナジン30もしくは60mg、もしくはPOでセチリジン10mg、および
d.IVヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):ラニチジン50mgもしくはファモチジン20mg、または同等の他のH2ブロッカー用量。
【0045】
いくつかの実施形態では、前投薬は、各パチシラン医薬品投与の約一時間前に投与される。
【0046】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者に、ビタミンAのUSDA推奨日当の経口一日用量を投与することをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、四量体安定化剤を投与することをさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、四量体安定化剤は、タファミジスまたはジフルニサルである。
【0049】
いくつかの実施形態では、患者は、
a.白人であり、および/または
b.北米に居住し、および/または
c.65歳以上であり、および/または
d.男性であり、および/または
e.FAPステージIを有し、および/または
f.FAPステージIIを有し、および/または
g.8~165のベースラインmNIS+7スコアを有し、および/または
h.Val30 Met TTR変異を有し、および/または
i.表Xに見られる一つ以上のTTR変異を有し、および/または
j.心アミロイド関与の心エコーによる証拠を有し、および/または
k.以前に長期のTTR四量体安定化剤を使用した履歴を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、患者は、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、患者は、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を有さない。
【0052】
いくつかの実施形態では、患者は、TTR関連障害を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、TTR関連障害は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(ATTR)、症候性ポリニューロパチー、家族性アミロイド心筋症(FAC)、および軟髄膜/CNS(中枢神経系)アミロイドーシスからなる群から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つの薬剤の投与は、患者によって実施される。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つの薬剤の投与は、医療専門家によって実施される。
【0056】
いくつかの実施形態では、投与は、80分にわたって実施される。
【0057】
いくつかの実施形態では、ベースラインは平均である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、ΔNISまたはΔmNIS+7における進行とTTR濃度との間の関係を示すグラフである。
【0059】
図2図2は、ΔNISまたはΔmNIS+7における進行とTTR濃度との間の関係を示すグラフである。
【0060】
図3-1】図3は、パチシランのセンス鎖およびアンチセンス鎖の構造式である。図3は、配列番号1~2をそれぞれ出現順に開示する。
図3-2】同上。
【0061】
図4図4は、ベースラインと比較した神経障害の改善を示すグラフである。
【0062】
図5図5は、mNIS+7に対するパチシランの効果を示す。
【0063】
図6図6は、他の副次的評価項目に対するパチシランの効果を示す。
【0064】
図7図7は、試験参加者における血清TTR濃度を示すグラフである。
【0065】
図8図8は、18ヶ月での血清TTRの減少とmNIS+7スコアとの関係を示す。
【0066】
図9-1】図9は、18ヶ月でのPNDスコアおよびFAP状態の両方におけるシフトを示す。
図9-2】同上。
【0067】
図10図10は、18ヶ月間の二重盲検試験における試験参加者のパチシランで12ヶ月間治療された結果を示すグラフである。
【0068】
図11図11は、24ヶ月間の試験における試験参加者の結果を示すグラフである。
【0069】
図12A図12Aおよび12Bは、ベースライン(実線)と比較され、治療群によって階層化された、9ヶ月(破線)での圧容積ループ(図12A)および等容性圧容積面積(図12B)の変化についてのグラフを示す。
図12B】同上。
【0070】
図13A図13Aおよび13Bは、ベースライン(実線)と比較され、治療群によって階層化された、18ヶ月(破線)での圧容積ループ(図13A)および等容性圧容積面積(図13B)の変化についてのグラフを示す。
図13B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下においてより詳細に記載されるように、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)(ポリニューロパチーおよび/または心筋症を伴う、または伴わない)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法が本明細書に開示され、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシランは、3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、FAP段階、PNDスコア、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)または他のニューロパチー関連臨床評価項目、血清パーセントTTR濃度、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの安定化または改善をもたらす。有効量のトランスサイレチン(TTR)阻害組成物を投与することによって、ニューロパチー障害スコア(NIS)または修正NIS(mNIS+7)の増加の低減または停止を、それを必要とするヒト対象において行うための方法も開示され、その結果、有効量は、血清中のTTRタンパク質の濃度を50μg/ml未満または少なくとも80%低減する。
【0072】
一実施形態では、TTR阻害組成物は、パチシラン、例えば、パチシラン医薬品である。パチシランは、静脈内(IV)投与のために肝指向性脂質ナノ粒子(LNP)中で製剤化された、TTRに特異的な低分子干渉リボ核酸(siRNA)である。
【0073】
TTR阻害組成物
本明細書に記載の方法は、TTR阻害組成物の投与を含む。TTR阻害組成物は、ヒト対象の血清中のTTRタンパク質の濃度を低減する任意の化合物であり得る。例としては、RNAi、例えば、siRNAが挙げられるが、これらに限定されない。siRNAの例としては、TTR遺伝子を標的とするsiRNA、例えば、以下のパチシリン(より詳細に説明される)およびレブシラン(revusiran)が挙げられる。例としてはまた、アンチセンスRNAが挙げられる。TTR遺伝子を標的とするアンチセンスRNAの例は、米国特許第8,697,860号に見出すことができる。
【0074】
TTR阻害組成物は、TTR遺伝子の発現を阻害する。本明細書で使用される場合、「トランスサイレチン」(「TTR」)は、細胞中の遺伝子を指す。TTRは、ATTR、HsT2651、PALB、プレアルブミン、TBPA、およびトランスサイレチン(プレアルブミン、アミロイドーシスI型)としても知られている。ヒトTTR mRNA転写物の配列は、NM_000371に見出すことができる。マウスTTR mRNAの配列は、NM_013697.2に見出すことができ、ラットTTR mRNAの配列は、NM_012681.1に見出すことができる。
【0075】
「を沈黙化する」、「の発現を阻害する」、「の発現を下方制御する」、「の発現を抑制する」などの用語は、TTR遺伝子を指す限りにおいて、本明細書では、TTR遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を指し、これは、TTR遺伝子がそこで転写され、TTR遺伝子の発現が阻害されるように処理された第一の細胞または細胞群から単離され得るmRNAの量の、第一の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処理されていない第二の細胞または細胞群(対照細胞)と比較しての、減少によって示される。阻害の程度は、以下によって表すことができる:
【数1】
【0076】
【0077】
あるいは、阻害の程度は、例えば、細胞によって分泌されるTTR遺伝子によってコードされるタンパク質の量、またはアポトーシスなどの特定の表現型を示す細胞の数などの、TTR遺伝子発現に機能的に連結されたパラメータの減少の観点から与えられ得る。原則として、TTR遺伝子サイレンシングは、構成的にまたはゲノム工学によってのいずれか、および任意の適切なアッセイによって、標的を発現する任意の細胞で決定され得る。しかしながら、所与のdsRNAがTTR遺伝子の発現をある程度阻害し、したがって本発明に包含されるかどうかを決定するために参照が必要な場合、以下の実施例に提供されるアッセイは、そのような参照として機能するものとする。
【0078】
RNAi
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、TTR遺伝子の発現を阻害するための、RNAi、例えば、siRNA、例えば、dsRNAであるTTR阻害組成物を使用する。一実施形態では、siRNAは、TTR遺伝子を標的とするdsRNAである。dsRNAは、TTR遺伝子の発現の際に形成されるmRNAの少なくとも一部に対して相補的である相補的領域を有するアンチセンス鎖を含み、相補的領域は、長さは30ヌクレオチド未満であり、概して長さは19~24ヌクレオチドである。本発明のdsRNAは、一つ以上の一本鎖ヌクレオチドオーバーハングをさらに含み得る。TTR阻害siRNAは、両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願番号 PCT/US2009/061381(WO2010/048228)および国際特許出願番号 PCT/US2010/055311(WO2011/056883)に記載される。
【0079】
一実施形態では、TTR阻害組成物は、以下により詳細に記載されるパチシランである。別の実施形態では、TTR阻害組成物は、三価GalNAc炭水化物クラスターにコンジュゲートされたTTRに特異的なsiRNAであるレブシラン(revusiran)である。レブシラン(revusiran)の完全な説明は、国際出願番号PCT/US2012/065691および米国特許公開US20140315835号に見出すことができ、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0080】
dsRNAは、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するのに十分に相補的である二本のRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、TTR遺伝子の発現中に形成されるmRNAの配列に由来する標的配列と実質的に相補的であり、概して完全に相補的である相補的領域を含み、他方の鎖(センス鎖)は、好適な条件下で組み合わされたときに二本の鎖がハイブリダイズし、二本鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖と相補的である領域を含む。用語「アンチセンス鎖」は、標的配列に対して実質的に相補的である領域を含むdsRNAの鎖を指す。本明細書において使用する場合、用語「相補的領域」は、本明細書において定義される、配列、例えば標的配列に対して実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域を指す。相補的領域が標的配列と完全に相補的ではない場合、ミスマッチは末端領域で最も許容され、存在する場合は、概して、例えば、5’末端および/または3’末端の6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内の末端領域にある。用語「センス鎖」は、本明細書において使用する場合、アンチセンス鎖の領域に対して実質的に相補的である領域を含むdsRNAの鎖を指す。概して、二本鎖構造は、15~80の間、または15~60または15~30または25~30の間、または18~25の間、または19~24、または19~21の間、または19、20、または21塩基対の長さである。一実施形態では、二本鎖は、長さが19塩基対である。別の実施形態では、二本鎖は、長さが21塩基対である。
【0081】
dsRNAの各鎖は、概して、15~80の間または15~60または15~30、または18~25の間、または18、19、20、21、22、23、24、または25のヌクレオチドの長さである。他の実施形態では、各鎖は、25~30ヌクレオチドの長さである。二本鎖の各鎖は、同じ長さであってもよく、または異なる長さであってもよい。二つの異なるsiRNAを組み合わせて使用する場合、各siRNAの各鎖の長さは同一であってもよく、または異なっていてもよい。
【0082】
dsRNAは、一つ以上のヌクレオチドの一つ以上の一本鎖オーバーハングを含み得る。一実施形態では、dsRNAの少なくとも一つの端は、1~4、概して1または2のヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを有する。別の実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、センス鎖上の各3’末端および5’末端に1~10のヌクレオチドのオーバーハングを有する。さらなる実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、アンチセンス鎖上の各3’末端および5’末端に1~10のヌクレオチドのオーバーハングを有する。
【0083】
本明細書において使用する場合、特に別段に示さない限り、用語「相補的」は、第二のヌクレオチド配列との関連において第一のヌクレオチド配列を説明するために使用される場合には、当業者によって理解されることとなるとおり、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと特定の条件下においてハイブリダイズして二重鎖構造を形成する第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの能力を指す。こうした条件は、例えば、厳しい条件であってもよく、厳しい条件は、400mMのNaCl、40mMのPIPES pH6.4、1mMのEDTA、50°Cまたは70°Cで12~16時間、続いて洗浄することを含み得る。生物体内で遭遇し得るような生理学的に関連のある条件などの他の条件を適用することができる。当業者は、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な用途に応じて、二つの配列の相補性の試験に最も適切な条件の組を決定することができるであろう。
【0084】
これには、第一および第二のヌクレオチド配列の全長にわたる第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに対する第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの塩基対形成が含まれる。このような配列は、本明細書において、互いに対して「完全に相補的」であると称され得る。しかしながら、本明細書において、第一の配列が第二の配列に対して「実質的に相補的」であるという場合、この二つの配列は、完全に相補的であり得るか、また、それらはハイブリダイゼーションの際に、それらの最終的な用途に最も関連した条件下でハイブリダイズする能力を維持しつつ、一つ以上であるが、概して4、3、または2以下であるミスマッチ塩基対を形成し得る。しかしながら、二つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションの際に一つ以上の一本鎖のオーバーハングを形成するように設計される場合には、かかるオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチとはみなさないものとする。例えば、長さが21ヌクレオチドである一方のオリゴヌクレオチドと長さが23ヌクレオチドであるもう一方のオリゴヌクレオチドとを含むdsRNAであって、長い方のオリゴヌクレオチドが、短い方のオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的である21ヌクレオチドの配列を含むようなdsRNAは、依然として、本明細書において記載する目的に関しては「完全に相補的」と称し得る。
【0085】
「相補的」配列は、本明細書において使用する場合、ハイブリダイズするそれらの能力に関する上記の要件を満たす限り、非ワトソン・クリック塩基対および/または非天然の修飾ヌクレオチドから形成された塩基対も含み得るか、または全体的にそれらから形成され得る。そのような非ワトソン・クリック塩基対としては、これらに限定されるわけではないが、G:Uのゆらぎまたはフーグスティーン型の塩基対が挙げられる。
【0086】
本明細書における用語「相補的」、「完全に相補的」および「実質的に相補的」は、それらの使用の文脈から理解されるであろうとおり、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、またはdsRNAiのアンチセンス鎖と標的配列との間における塩基マッチングに関連して使用され得る。
【0087】
本明細書において使用する場合、メッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも一部に対して実質的に相補的」であるポリヌクレオチドは、オープン・リーディング・フレームである5’UTRまたは3’UTRを含む目的のmRNA(例えば、TTRをコードするmRNA)の連続する部分に対して実質的に相補的であるポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、配列が、TTRをコードするmRNAの中断されない部分に対して実質的に相補的である場合、TTR mRNAの少なくとも一部に対して相補的である。
【0088】
dsRNAは、例えば、Biosearch、Applied Biosystems、Inc.などから市販されているような、例えば、自動DNA合成機を用いて、以下でさらに論じるように、当技術分野で公知の標準的な方法によって合成することができる。
【0089】
修飾dsRNA
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるdsRNAは、安定性を高めるために化学的に修飾される。本発明において取り上げる核酸は、当技術分野で十分に確立された方法によって、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、“Current protocols in nucleic acid chemistry,”Beaucage,S.L.et al.(Edrs.),John Wiley&Sons,Inc.,New York,NY,USA、に記載されるものなどによって合成または修飾され得る。本発明に有用なdsRNA化合物の具体的な例には、修飾された骨格を含むか、または天然ヌクレオシド間結合を含まないdsRNAが含まれる。本明細書で定義されるように、修飾された骨格を有するdsRNAは、骨格内にリン原子を保持するdsRNA、および骨格内にリン原子を有しないdsRNAを含む。本明細書の目的のため、また当技術分野で時に言及されるように、ヌクレオシド間骨格内にリン原子を有さない修飾dsRNAもまた、オリゴヌクレオシドであるとみなされ得る。
【0090】
修飾dsRNA骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルのホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、ならびに隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’から5’-3’または2’-5’から5’-2’で結合している反転した極性を有するもの)が挙げられる。種々の塩、混合塩および遊離酸の形態も挙げられる。
【0091】
上記のリン含有連結の調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されないが、米国特許第3,687,808号、第4,469,863号、第4,476,301号、第5,023,243号、第5,177,195号、第5,188,897号、第5,264,423号、第5,276,019号、第5,278,302号、第5,286,717号、第5,321,131号、第5,399,676号、第5,405,939号、第5,453,496号、第5,455,233号、第5,466,677号、第5,476,925号、第5,519,126号、第5,536,821号、第5,541,316号、第5,550,111号、5,563,253号、第5,571,799号、第5,587,361号、および第5,625,050号が挙げられ、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
骨格内にリン原子を含まない修飾dsRNA骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間連結、または一つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環のヌクレオシド間連結によって形成される骨格を有する。これらとしては、モルフォリノ連結を有するもの(ヌクレオシドの糖部分から一部形成される)、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、スルホネートおよびスルホンアミド骨格、アミド骨格、ならびにN、O、SおよびCHの混合した構成要素部分を有する他のものが挙げられる。
【0093】
上記のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されないが、米国特許第5,034,506号、第5,166,315号、第5,185,444号、第5,214,134号、第5,216,141号、第5,235,033号、第5,64,562号、第5,264,564号、第5,405,938号、第5,434,257号、第5,466,677号、第5,470,967号、第5,489,677号、第5,541,307号、第5,561,225号、第5,596,086号、第5,602,240号、第5,608,046号、第5,610,289号、第5,618,704号、第5,623,070号、第5,663,312号、第5,633,360号、第5,677,437号、および第5,677,439号が挙げられ、これらそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
他の好適なdsRNA模倣体では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間連結の両方、すなわち骨格が新規基と置き換えられている。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このようなオリゴマー化合物のひとつ、優れたハイブリダイゼーション特性を有すると示されたdsRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物においては、dsRNAの糖骨格は、アミド含有骨格で、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。核酸塩基は、保持されて、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されないが、米国特許第5,539,082号、第5,714,331号、および第5,719,262号が挙げられ、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.,Science,1991,254,1497-1500に見出すことができる。
【0095】
本発明の他の実施形態には、ホスホロチオエート骨格をもつdsRNAおよびヘテロ原子骨格をもつオリゴヌクレオシドが挙げられ、特に上記で参照した米国特許第5,489,677号の、--CH--NH--CH-、--CH--N(CH)--O--CH--[(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、--CH--O--N(CH)--CH--、--CH--N(CH)--N(CH)--CH--、および--N(CH)--CH--CH--[天然のホスホジエステル骨格を--O--P--O--CH--として表す]、および上記で参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格、が挙げられる。また、上記で参照した米国特許第5,034,506号のモルフォリノ骨格構造を有するdsRNAも好ましい。
【0096】
修飾dsRNAはまた、一つ以上の置換された糖部分を含み得る。好ましいdsRNAは、2’位に以下の一つを含む:OH;F;O-、S-またはN-アルキル;O-、S-またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、式中アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換のC~C10アルキルまたはC~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。特に好適ものは、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、およびO(CHON[(CHCH)]であり、式中nおよびmは、1から約10である。他の好ましいdsRNAは、2’位に以下の一つを含む:C~C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、dsRNAの薬物動態特性を改善するための基、またはdsRNAの薬力学的特性を改善するための基、および同様の特性を有する他の置換基。好ましい修飾としては、2’-メトキシエトキシ(2’-O--CHCHOCH、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られる)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78:486-504)、すなわちアルコキシ-アルコキシ基が挙げられる。さらに例示的な修飾としては、本明細書において以下の実施例において記載される、2’-DMAOEとしても知られる、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CHON(CH基、および本明細書において以下の実施例においてまた記載される、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野で2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’-DMAEOEとして知られる)、すなわち2’-O--CH--O--CH--N(CHが挙げられる。
【0097】
他の好ましい修飾としては、2’-メトキシ(2’-OCH)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCHCHCHNH)および2’-フルオロ(2’-F)が挙げられる。同様の修飾はまた、dsRNA上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’-5’連結dsRNA中の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位でも行うことができる。DsRNAiはまた、糖模倣体を有し得、例えばペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などを有し得る。こうした修飾糖構造の調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されないが、米国特許第4,981,957号、第5,118,800号、第5,319,080号、第5,359,044号、第5,393,878号、第5,446,137号、第5,466,786号、第5,514,785号、第5,519,134号、第5,567,811号、第5,576,427号、第5,591,722号、第5,597,909号、第5,610,300号、第5,627,053号、第5,639,873号、第5,646,265号、第5,658,873号、第5,670,633号、および第5,700,920号が挙げられ、それらのうちいくつかは、本出願と共同所有され、それらそれぞれが、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
dsRNAはまた、核酸塩基(当技術分野では単に「塩基」と称することも多い)の修飾または置換を含み得る。本明細書において使用する場合、「未修飾の」または「天然の」核酸塩基としては、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、他の合成核酸塩基および天然核酸塩基が挙げられ、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換のアデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換のウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-ダアザアデニン(daazaadenine)ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどである。さらなる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号にて開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858-859,Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley&Sons,1990にて開示されるもの、Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613にて開示されるもの、およびSanghvi,Y S.,Chapter 15,DsRNA Research and Applications,pages 289-302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press,1993にて開示されるものが挙げられる。これら核酸塩基の一部は、本発明で取り上げるオリゴマー化合物の結合親和性を増大するのに特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6および0~6置換のプリンが挙げられる。5-メチルシトシン置換は、核酸の二重鎖安定性を0.6~1.2℃高めることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,DsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、そしてさらにより具体的には2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合には、例示的な塩基置換である。
【0099】
上述の修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基の一部の調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されるものではないが、上述の米国特許第3,687,808号、ならびに第4,845,205号、第5,130,30号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、および第5,681,941号が挙げられ、これらそれぞれが参照によって本明細書に組み込まれ、ならびに米国特許第5,750,692号が挙げられ、これもまた参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
パチシラン
一実施形態では、TTR阻害組成物は、パチシランである。パチシランは、静脈内(IV)投与のために肝指向性脂質ナノ粒子(LNP)中で製剤化された、TTRに特異的な低分子干渉リボ核酸(siRNA)である(Akinc A,Zumbuehl A,et al.A combinatorial library of lipid-like materials for delivery of RNAi therapeutics.Nat Biotechnol.2008;26(5):561-569)。このTTR siRNAは、WT TTRならびに報告されたすべてのTTR変異との相同性を確保および確認するために、TTR遺伝子の3’UTR領域内に標的領域を有する。肝臓へのLNP媒介送達後、パチシランは、分解のためにTTR mRNAを標的とし、RNAi機構を介した変異体およびWT TTRタンパク質の強力かつ持続的な低減をもたらす。
【0101】
TTR siRNA(ALN-18328としても知られる)は、以下の配列を有するセンス鎖およびアンチセンス鎖からなり、小文字は、ヌクレオチドの2’-O-メチル型を示す。
パチシラン原薬
【表1】


【0102】
典型的には、パチシラン原薬、すなわち、siRNAは、薬学的に許容される塩の形態である。いくつかの実施形態では、パチシラン原薬は、パチシランナトリウムである。パチシランナトリウムの分子式は、C412480148Na4029040であり、分子量は14304Daである。センス鎖およびアンチセンス鎖の構造式は、図3に見出される。
【0103】
製造工程は、従来の固相オリゴヌクレオチド合成による、二本鎖の二つの一本鎖オリゴヌクレオチドの合成から成る。精製後、二つのオリゴヌクレオチドを二本鎖にアニールする。
【0104】
パチシラン医薬品は、等張性リン酸緩衝生理食塩液中の脂質賦形剤(DLin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-C-DMG)を含むTTR siRNA ALN-18328の滅菌製剤である。
【0105】
パチシラン医薬品の製剤を以下の表1A,1B、または1Cに示す。いくつかの実施形態では、任意の一つの成分の濃度もしくは量は、+/-0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、5.0、もしくは10.0%、または表に見られる濃度もしくは量である。
表1A:パチシラン医薬品の組成
【表2】



表1B:パチシラン医薬品の組成、1ml当たり
【表3】



表1C:パチシラン医薬品の組成、1ml当たり
【表4】


【0106】
いくつかの実施形態では、パチシラン医薬品は、バイアル当たり以下の量で、容器中に、例えば、ガラスバイアルに提供される。
表2:パチシラン医薬品の組成、バイラル当たりを含む
【表5】


【0107】
注射用パチシラン溶液は、2mg/mLのTTR siRNA原薬を含有する。いくつかの実施形態では、パチシラン医薬品は、5.5mLの充填体積で10mLガラスバイアルに包装される。いくつかの実施形態では、パチシラン医薬品は、単回使用バイアルとして5ml中10mgで包装される。
【0108】
いくつかの実施形態では、容器栓システムは、米国薬局方/欧州薬局方(USP/EP)I型ホウケイ酸ガラスバイアル、テフロン面ブチルゴムストッパー、およびアルミニウムフリップオフキャップからなる。
【0109】
四量体安定化剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、四量体安定化剤と別のTTR阻害組成物との同時投与を含む。
【0110】
四量体安定化剤は、TTRタンパク質に結合し、TTR四量体を安定化するように作用する化合物である。TTR四量体を不安定化する変異は、誤って配置されたおよび凝集されたTTRをもたらす。
【0111】
四量体安定剤の例としては、タファミジスおよびジフルニサルが挙げられる。タファミジスおよびジフルニサルの両方が、疾患進行速度を遅らせることができる(Berk et al.,Repurposing diflunisal for familial amyloid polyneuropathy:a randomized clinical trial.JAMA 2013,310:2658-2667;Coelho et al.,2012;Coelho et al.,Long-term effects of tafamidis for the treatment of transthyretin familial amyloid polyneuropathy.J Neurol 2013,260:2802-2814;Lozeron et al.,Effect on disability and safety of Tafamidis in late onset of Met30 transthyretin familial amyloid polyneuropathy.Eur J Neurol 2013,20:1539-1545)。
【0112】
対象および診断
遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を、それを必要とするヒト患者において行う方法が本明細書に開示され、方法は、表1A,1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で患者に投与することを含み、パチシランは、3週間毎に一回静脈内投与される。いくつかの実施形態では、方法は、心機能の安定化または改善をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、FAPステージ、PNDスコア、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)、または他のニューロパチー関連臨床評価項目、血清パーセントTTR濃度、心臓マーカー、および/または心エコーパラメータの安定化または改善をもたらす。いくつかの実施形態では、患者は、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を有する。いくつかの実施形態では、患者は、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を有さない。
【0113】
本明細書で使用される場合、「ポリニューロパチー」という用語は、脳および脊髄の外側に位置する人の末梢神経または神経が損傷を受ける状態を指す。ポリニューロパチーは、通常、手および足に筋力低下、麻痺、および疼痛を引き起こすことが多い。それはまた、消化、排尿および循環を含む他の領域および身体機能にも影響を与えうる。ポリニューロパチーは、外傷性傷害、感染、代謝問題、遺伝性の原因、および毒素への曝露から生じ得る。ポリニューロパチーには、急性および慢性の二つの主要なカテゴリーがある。
【0114】
本明細書で使用される場合、「心筋症」という用語は、心筋(心筋)に影響を及ぼす状態を指す。心筋症は、心臓を硬化、拡大、または肥厚させ、瘢痕組織を引き起こす可能性がある。結果として、心臓は血液を身体の残りの部分に効果的に送り込むことができない。そのうち、心臓は衰弱し、心筋症は心不全につながり得る。心筋症の初期段階では兆候または症状はない可能性がある。しかし、状態が進行するにつれて、活動中の、または安静時においてもの息切れ、脚、足首および足の腫脹、体液の蓄積による腹部の膨満、横たわっている間の咳、横たわって睡眠をとることの困難、疲労、急な、激しい、または不安定と感じる心拍、胸部不快感または圧迫感、めまい、立ち眩みおよび失神を含む、徴候および症状が通常現れる。心筋症の最も一般的なタイプは、拡張型心筋症、肥大型心筋症、不整脈源性右室異形成症(ARVD)、拘束型心筋症、およびトランスサイレチンアミロイド心筋症(ATTR-CM)である。
【0115】
また、ニューロパチー障害スコア(NIS)または修正NIS(mNIS+7)の増加の低減または停止を、それを必要とするヒト対象において行うための方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、TTR関連障害を有する。いくつかの実施形態では、TTR関連障害は、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異によって引き起こされる疾患の一つである。一実施形態では、疾患は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(ATTR)、および症候性ポリニューロパチーなどの様々な形態で現れるTTRアミロイドーシスである。末梢神経系がより顕著に影響を受ける場合、疾患はFAPと呼ばれる。心臓が主に関与しているが神経系が関与していない場合、疾患は家族性アミロイド心筋症(FAC)と呼ばれる。TTRアミロイドーシスの第三の主要なタイプは、軟髄膜/CNS(中枢神経系)アミロイドーシスと呼ばれる。ATTRは、自律神経系に影響を及ぼす。
【0116】
いくつかの実施形態では、TTR関連障害を有するヒト対象は、変異TTR遺伝子を有する。100を超える報告されたTTR変異は、様々な疾患症状を示す。FAPおよびATTR関連心筋症に関連する最も一般的な変異は、それぞれVal30MetおよびVal122Ileである。TTR変異は、タンパク質のミスフォールディングを引き起こし、TTRアミロイド形成のプロセスを加速し、臨床的に有意なTTRアミロイドーシス(ATTR(アミロイドーシス-トランスサイレチン型)とも呼ばれる)の発症の最も重要なリスク因子である。85個を超えるアミロイド形成性TTRバリアントが、全身家族性アミロイドーシスを引き起こすことが知られている。
【0117】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、生検で実証されたATTRアミロイドーシスおよび軽度~中等度のニューロパチーを有する成人(≧18歳)である場合、任意の形態のTTRアミロイドーシスの治療を受けるように選択される。さらなる実施形態では、ヒト対象はまた、以下の一つ以上を有する:カルノフスキーパフォーマンス状態(KPS)≧60%;ボディ・マス指数(BMI)17~33kg/m;適切な肝臓および腎機能(アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)≦2.5×正常上限(ULN)、正常範囲内の総ビリルビン、アルブミン>3g/dL、ならびに国際標準化比(INR)≦1.2;血清クレアチニン≦1.5ULN)、およびB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスに対する血清反応陰性。
【0118】
別の実施形態では、ヒト対象が、肝臓移植を行っていた場合;治療中に手術が計画された場合;HIV陽性である場合;30日以内にタファミジスまたはジフルニサル以外の治験薬を受けた場合;ニューヨーク心臓協会の心不全分類が>2であった場合;妊娠しているまたは授乳中である場合;全身性細菌性、ウイルス性、寄生虫性、または真菌性感染症が判明しているか、または疑われる場合、不安定な狭心症、制御されていない臨床的に有意な心不整脈を有する場合;またはリポソーム産物に対する重度の反応が以前にあった場合、またはオリゴヌクレオチドに対する既知の過敏症を有していた場合、ヒト対象は治療から除外される。
【0119】
ニューロパチー障害スコア(NIS)
本明細書に開示される方法は、トランスサイレチン(TTR)阻害組成物を投与することによって、ニューロパチー障害スコア(NIS)の増加の低減または停止を、それを必要とするヒト対象において行う。NISは、特に末梢神経障害に関して、筋力低下、感覚、および反射を測定するスコアリングシステムを指す。NISスコアは、筋力低下の標準群(1は25%低下、2は50%低下、3は75%低下、3.25は重力に抗する動き、3.5は重力を排除した状態での動き、3.75は動きのない筋肉収縮、4は麻痺)、筋肉伸張反射の標準群(0は正常、1は減少、2は消失)、ならびに触圧覚、振動覚、関節位置覚および運動覚、ならびに痛覚(すべて人差し指および足の親指でグレード付け:0は正常、1は減少、2は消失)について評価する。評価は、年齢、性別、および体力について補正される。
【0120】
一実施形態では、NISスコアを低減する方法は、少なくとも10%のNISの低減をもたらす。他の実施形態では、方法スコアは、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、または少なくとも50%のNISの低減をもたらす。他の実施形態では、方法は、NISスコアの増加を停止し、例えば、NISスコアの0%の増加をもたらす。
【0121】
ヒト対象におけるNISを決定するための方法は、当業者に周知であり、以下に見出すことができる:
【0122】
Dyck,PJ et al.,Longitudinal assessment of diabetic polyneuropathy using a composite score in the Rochester Diabetic Neuropathy Study cohort,Neurology 1997.49(1):pgs.229-239).
【0123】
Dyck PJ.Detection,characterization,and staging of polyneuropathy:assessed in diabetics.Muscle Nerve.1988 Jan;11(1):21-32。
【0124】
修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、トランスサイレチン(TTR)阻害組成物を投与することによって、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)の増加の低減または停止を、それを必要とするヒト対象において行う。当業者に周知のように、mNIS+7は、小神経線維機能および大神経線維機能の電気生理学的尺度と組み合わせた神経障害(NIS)(NCSおよびQST)の臨床試験ベースの評価、ならびに自律神経機能(姿勢血圧)の測定を指す。
【0125】
mNIS+7スコアは、NIS+7スコアの修正である(NIS+七つの試験を表す)。NIS+7は、筋力の低下および筋肉伸張反射を分析する。七つの検査のうち五つは、神経伝導の属性を含む。これらの特性は、腓骨神経複合筋活動電位振幅、運動神経伝導速度および運動神経遠位潜時(MNDL)、脛骨MNDL、ならびに腓腹感覚神経活動電位振幅である。これらの値は、年齢、性別、身長、および体重の変数に対して補正される。七つの試験のうちの残りの二つは、深呼吸による振動検出閾値および心拍数の減少を含む。
【0126】
mNIS+7スコアは、スマートソマトトピック定量的感覚検査の使用、新しい自律神経評価、ならびに尺骨、腓骨、脛骨神経の複合筋活動電位振幅、尺骨および腓骨神経の感覚神経活動電位の使用を考慮に入れてNIS+7を修正する(Suanprasert,N.et al.,Retrospective study of a TTR FAP cohort to modify NIS+7 for therapeutic trials,J.Neurol.Sci.,2014.344(1-2):pgs.121-128)。
【0127】
一実施形態では、mNIS+7スコアを低減する方法は、mNIS+7を少なくとも10%低減させる。他の実施形態では、方法スコアは、mNIS+7スコアの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、または少なくとも50%の低減をもたらす。他の実施形態では、方法は、mNIS+7の増加を停止し、例えば、方法は、mNIS+7の0%の増加をもたらす。
【0128】
生活の質およびニューロパチー関連臨床評価項目
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、生活の質および/またはニューロパチー関連臨床評価項目を安定化または改善する。例えば本明細書に記載される方法は、生活の質、運動力、障害、歩行速度、栄養状態、および/または自律神経症状の改善または安定化を、それを必要とするヒト患者、例えば、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を伴う、または伴わない遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)を有するヒト患者において行うことができ、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシランは、3週間毎に一回静脈内投与される。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)、NIS-W、Rasch-built全般身体障害スコア(R-ODS)、10メートル歩行試験(10-MWT)、修正ボディ・マス指数(mBMI)、およびCOMPASS-31スコアからなる群から選択される少なくとも一つのニューロパチー関連臨床評価項目の改善または安定化を、それを必要とするヒト患者、例えば、ポリニューロパチーおよび/または心筋症を伴う、または伴わない遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)を有するヒト患者において行うことができ、方法は、患者に、表1A、1B、または1Cに記載されるパチシラン医薬品を、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で投与することを含み、パチシランは、3週間毎に一回静脈内投与される。
【0130】
FAPステージおよびPNDスコア
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のポリニューロパチー障害(PND)スコアおよび家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)ステージを安定化または改善する。PNDスコアは以下のように決定される:PND I:歩行の維持、感覚障害;PND II:歩行障害はあるが、杖や松葉杖なしで歩行できる;PND IIIA:1本の杖や松葉杖で歩く;PND IIIB:2本の杖や松葉杖で歩く;PND IV:車椅子やベッドで寝たきりの状態。FAPステージは以下のとおりである。FAP I:歩行障害なし、FAP II:歩行の支援が必要、FAP III:車椅子やベッドで寝たきりの状態。
【0131】
血清TTRタンパク質濃度
本明細書に記載される方法は、ヒト対象に、有効量のトランスサイレチン(TTR)阻害組成物、例えば、パチシランを投与することを含み、有効量は、ヒト対象の血清中のTTRタンパク質の濃度を50μg/ml未満または少なくとも80%低減する。血清TTRタンパク質濃度は、当業者に公知の任意の方法、例えば、抗体ベースのアッセイ、例えば、ELISAを使用して直接決定することができる。あるいは、血清TTRタンパク質濃度は、TTR mRNAの量を測定することによって決定され得る。さらなる実施形態では、血清TTRタンパク質濃度は、代替物、例えば、ビタミンAまたはレチノール結合タンパク質(RBP)の濃度を測定することによって決定される。一実施形態では、血清TTRタンパク質濃度は、以下の実施例に記載されるELISAアッセイを使用して決定される。
【0132】
いくつかの実施形態では、血清TTRタンパク質の濃度は、50μg/ml未満に、または40μg/ml、25μg/ml、もしくは10μg/ml未満に低減される。いくつかの実施形態では、血清TTRタンパク質の濃度は、80%、または81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、または95%低減される。
【0133】
心臓マーカーおよび心エコーパラメータ
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTRアミロイドーシス)の治療を必要とする患者を治療し、方法は、ベースラインと比較して、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータの改善または安定化をもたらす。
【0134】
心臓マーカーの例は、血清NT-proBNP濃度である。心エコーパラメータの例は、左心室(LV)ストレインまたはLV壁厚である。
【0135】
AUC
AUCは、薬剤、例えば、TTR阻害組成物の用量が患者に投与された後の経時的な血流の血漿中の組成物、例えば、TTRの濃度の曲線下面積を指す。これは、組成物の患者の血漿への吸収速度および患者の血漿からの除去速度によって影響を受ける。当業者が知っているように、AUCは、薬剤が投与された後の血漿組成物濃度の積分を計算することによって決定し得る。別の態様では、AUCは、以下の式を使用して予測することができる:
【0136】
予測AUC=(D×F)/CL
【0137】
式中、Dは用量濃度であり、Fは生物学的利用能の尺度であり、CLは予測されるクリアランス速度である。当業者は、予測AUCの値が、±3~4倍の範囲の誤差を有することを理解する。
【0138】
いくつかの実施形態では、AUCを決定するためのデータは、薬剤の投与後の様々な時間間隔で患者から血液サンプルを採取することによって得られる。一態様では、TTR阻害組成物の投与後の患者の血漿中の平均AUCは、約9000~約18000の範囲内である。
【0139】
TTRの血漿濃度は、代謝および/または他の治療剤との起こり得る相互作用に関する変動性に起因して、対象間で有意に変化し得ることが理解される。本発明の一態様によれば、TTRの血漿濃度は、対象によって変化し得る。同様に、最大血漿濃度(Cmax)などの値または最大血漿濃度に達するまでの時間(Tmax)、または時間ゼロから最後の測定可能な濃度の時間までの曲線下面積(AUClast)、または血漿濃度時間曲線下総面積(AUC)などの値は、対象によって変化し得る。この変動性に起因して、TTR阻害組成物などの化合物の「治療有効量」を構成するために必要な量は、対象によって変化し得る。
【0140】
医薬組成物
本明細書に記載される方法は、TTR阻害組成物、例えば、TTR遺伝子、例えば、パチシランを標的とするsiRNAの投与を含む。いくつかの実施形態では、TTR阻害組成物は、医薬組成物である。
【0141】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、TTR阻害組成物および薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤の投与のための担体を指す。こうした担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特に細胞培養培地を含まない。経口投与される薬剤については、薬学的に許容される担体には、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤などの薬学的に許容される賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。適切な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ならびにラクトースが含まれ、一方でトウモロコシデンプンおよびアルギン酸は適切な崩壊剤である。結合剤は、デンプンおよびゼラチンを含んでもよく、一方、潤滑剤は、存在する場合、概してステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクである。必要に応じて、錠剤は、消化管における吸収を遅延させるために、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングされてもよい。
【0142】
本発明の医薬組成物は、局所処置または全身処置のどちらが所望されるか、ならびに処置される面積に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所的、例えばネブライザーなどによる粉末またはエアロゾルの吸入または吹送による肺内、気管内、鼻腔内、表皮および経皮、経口または非経口であり得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内への注射または注入、または例えば実質内、髄腔内、または脳室内などの脳内への投与を含む。
【0143】
組成物は、肝臓(例えば、肝臓の肝細胞)などの特定の組織を標的とする様式で送達され得る。医薬組成物は、脳への直接の注射により送達することができる。注射は、脳の特定の領域(例えば、黒質、皮質、海馬、線条体、または淡蒼球)への定位注射によってもよく、またはdsRNAを中枢神経系の複数の領域(例えば、脳の複数の領域、および/または脊髄内に)に送達してもよい。dsRNAはまた、脳の拡散領域に送達され得る(例えば、脳皮質への拡散送達)。
【0144】
一実施形態では、TTRを標的とするdsRNAは、組織、例えば、脳、例えば、脳の黒質、皮質、海馬、線条体、脳梁または淡蒼球に移植された一端を有するカニューレまたは他の送達デバイスによって送達され得る。カニューレは、dsRNA組成物の貯蔵部に接続され得る。流れまたは送達は、ポンプ、例えば浸透圧ポンプまたはAlzetポンプ(Durect,Cupertino,CA)などのミニポンプによって媒介され得る。一実施形態では、ポンプおよび貯蔵部は、組織から離れた領域、例えば腹部に移植され、送達は、ポンプまたは貯蔵部から放出部位へと導く導管によって行われる。dsRNA組成物の脳内への注入は、数時間または数日間、例えば、1、2、3、5、または7日以上であり得る。脳への送達のための装置は、例えば、米国特許第6,093,180号および第5,814,014号に記載されている。
【0145】
用量およびタイミング
当業者は、これらに限定されるものではないが、疾患または障害の重症度、過去の治療、対象の健康全般および/または年齢、および存在する他の疾患などの特定のファクターが、対象を効果的に治療するために必要な投薬量およびタイミングに影響を及ぼし得ることを理解するであろう。その上、治療有効量での組成物での対象の治療には、単回治療または一連の治療が含まれ得る。本発明に包含されるTTR阻害組成物の有効用量およびインビボ半減期の推定は、本明細書の他の箇所に記載されるように、従来の方法論を使用して、または適切な動物モデルを使用したインビボ試験に基づいて行うことができる。
【0146】
概して、TTR阻害組成物の医薬組成物の好適な用量は、一日当たりレシピエントの体重1キログラム当たり0.01~200.0ミリグラムの範囲、概して一日当たり体重1キログラム当たり1~50mgの範囲であろう。
【0147】
例えば、TTR阻害組成物はsiRNAであってもよく、単回投与あたり、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.628mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、5.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kgで投与されてもよい。別の実施形態では、投与量は0.15mg/kg~0.3mg/kgである。例えば、TTR阻害組成物は、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、または0.3mg/kgの用量で投与することができる。一実施形態では、TTR阻害組成物は、0.3mg/kgの用量で投与される。
【0148】
医薬組成物(例えば、パチシラン)は、一日一回、または5、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30日に一回もしくは二回投与され得る。投与単位は、例えば、数日間にわたるTTR阻害組成物の徐放性を提供する従来の徐放性製剤を使用して、数日間にわたる送達のために配合され得る。徐放性製剤は当該技術分野で周知であり、本発明の薬剤と併用できるものなど、特定の部位での薬剤の送達に特に有用である。
【0149】
一実施形態では、TTR阻害組成物は、パチシラン、例えば、パチシラン医薬品であり、用量は、0.3mg/kgであり、用量は、21日または3週間毎に一回投与される。いくつかの実施形態では、用量、例えば、有効量は、約3週間毎にまたは約21日毎に投与される。別の実施形態では、有効量は0.3mg/kgであり、有効量は、1mL/分で15分間、続いて3mL/分で55分間の70分間の注入を介して、21日または3週間毎に一回投与される。別の実施形態では、有効量は0.3mg/kgであり、有効量は、3.3mL/分の60分間の注入を介して、または1.1mL/分で15分間、続いて3.3mL/分で55分間の70分間の注入を介して、21~28日毎に二回投与される。
【0150】
いくつかの実施形態では、方法は、約80分にわたって静脈内注入により3週間毎に一回投与される、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの投与量での、パチシラン、例えば、パチシラン医薬品の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの投与量でパチシランを投与することを含み、60分にわたって3.3mL/分で静脈内注入により投与され、または70分にわたって、マイクロ投与レジメン(1.1mL/分で15分間)を使用して、続いて残りの用量に対して3.3mL/分で投与される)。
【0151】
TTR阻害組成物の投与量は、TTR阻害組成物を投与し、対象におけるTTRタンパク質のレベルを決定することによって、NISまたはFAPの増加を治療のために調整され得る。TTRタンパク質のレベルが50μg/ml超である場合、その後対象に投与されるTTR阻害組成物の量は増加され、TTRタンパク質のレベルが50μg/ml未満である場合、その後対象に投与されるTTR阻害組成物の量は、減少される。
【0152】
TTR阻害組成物は、標的遺伝子発現によって媒介される病理学的プロセスの治療に有効な他の公知の薬剤と組み合わせて投与することができる。一実施形態では、パチシランは、タファミジスまたはジフルニサルなどの四量体安定化剤と共に投与される。いずれにしても、投与する医師は、当技術分野で公知であるかまたは本明細書において記載した、有効性の標準尺度を使用して観察された結果に基づいて、パチシランおよび/または四量体安定化剤投与の量およびタイミングを調節することができる。
実施例
【0153】
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、例示のみを目的として提供され、本発明の範囲をいかなる方法でも限定することを意図するものではない。使用する数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するために努力がなされてきたが、当然ながら、一部の実験誤差および偏差が許容されるべきである。
【0154】
本発明の実施は、別段の示唆がない限り、当該技術分野の技術範囲内のタンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法を採用する。こうした技術は、文献で完全に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods in Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照。
【0155】
「パチシラン」および「パチシラン医薬品」という用語は、実施例において互換的に使用され、表1A,1Bおよび1Cに記載されるように製剤化されたsiRNAを指す。
【実施例
【0156】
実施例1.TTRアミロイドーシスに対するパチシランの安全性および有効性
第I相臨床試験では、パチシランは、28日間にわたって患者のTTRレベルを減少させることが見出された。この研究の結果は、New England Journal of Medicine(Coelho et al.,N Engl J Med 2013;369:819-29.)で公開された。刊行物は、すべての目的のために参照により組み込まれる。研究デザインおよび結果の要約も以下のように通り提示する。
【0157】
試験は、多施設、無作為化、単盲検、プラセボ対照、および用量範囲的であり、TTRアミロイドーシスを有する患者または健康な成人におけるパチシランの単回投与の安全性および有効性を評価した。18~45歳の男性および女性は、健康であり(病歴、身体検査、および12誘導心電図に基づいて決定される)、18.0~31.5のBMIを有し、適切な肝機能および血球数を有し、および妊娠可能性を有していなかった場合に、本試験に適格とした。
【0158】
一連の参加者(各シリーズに4人)を無作為に割り当て、パチシランを0.01~0.5mg/kgの用量で、またはプラセボ(通常の生理食塩水)を3:1の比率で投与した。パチシランは、それぞれ15分間および60分間、静脈内投与された。試験では、注入関連反応のリスクを低減するために、患者は注入の前夜および当日に類似する前投薬を受けた。これらの薬剤には、デキサメタゾン、アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミンまたはセチリジン、およびラニチジンが含まれた。
【0159】
総TTRについて検証された酵素免疫測定法(ELISA)を使用して、血清TTRレベルを反映して、パチシラン薬力学的活性を測定した(Charles River Laboratories,Wilmington MA)。各患者についてのTTR、レチノール結合タンパク質、およびビタミンAのベースラインレベルを、パチシランの投与前の四つの測定値の平均として定義した。有害事象は、薬剤投与の開始から28日目までモニタリングされた。安全性モニタリングには、血液学的評価、血液化学分析、および甲状腺機能検査も含まれた。
【0160】
パチシランに含有されるTTR siRNAの血漿薬物動態を、検証されたELISAベースのハイブリダイゼーションアッセイによって評価した。siRNAの検出および定量のために、ATTO-Probe-HPLCアッセイ(定量下限、1.0ng/ミリリットル)(Tandem Laboratories,Salt Lake City UT)を使用した。WinNonlin(Pharsight,Princeton NJ)を使用して、薬物動態推定値を決定した。
【0161】
TTR、ビタミンA、およびレチノール結合タンパク質のノックダウンを、ベースラインレベルと比較して測定した(データは示さず)。
【0162】
結果
パチシランの二つの最低用量では、TTRレベルの有意な変化は観察されなかった(プラセボと比較して)。しかしながら、0.15~0.5mg/kgの用量を投与されたすべての参加者において、実質的なTTRノックダウンが観察された(データは示さず)。TTRノックダウンは、三つの用量レベルすべてにわたって迅速、強力、および耐久性があり、28日目までプラセボと比較して、非常に有意な変化があった(P<0.001)。0.15および0.3mg/kgで見られた頑健な応答、および0.5mg/kgでの応答における緩やかな漸増的改善を考慮して、一人の参加者のみが0.5mg/kgの用量を受けた。
【0163】
応答の動態(データは示さず)において、特に少なくとも0.3mg/kgの用量では、参加者間で変動はほとんどなく、3日目までに50%超低下し、およそ10日目までに最低値レベルとなり、28日目には50%超の継続的な抑制が見られ、70日目までに完全な回復が生じた。0.15mg/kg、0.3mg/kg、および0.5mg/kgを投与された参加者に対するTTRノックダウンの最大値は、それぞれ85.7%、87.6%、および93.8%であった。0.15mg/kgおよび0.3mg/kgの用量での平均最低値は、それぞれ82.3%(95%信頼区間(CI)、67.7~90.3)および86.8%(95%CI、83.8~89.3)であり、これらの最低値は、絶対TTRレベルまたはTTRノックダウン率のいずれかとして分析された場合、参加者間でほとんど変動を示さず、プラセボと比較して高度に有意であった(P<0.001)(データは示さず)。
【0164】
ノックダウンの程度は、抑制期間を決定するようなものであり、0.15mg/kgおよび0.3mg/kgを投与された参加者では、28日目の平均減少はそれぞれ56.6%(95% CI、11.6~78.7)および67.1%(95%CI、45.5~80.1)であり、0.5mg/kgを投与された単一患者の28日目の減少は76.8%であった。0.3mg/kgの用量でヒトで観察されたTTRノックダウンは、同じ用量レベルで非ヒト霊長類で観察されたものと実質的に同一であった(データは示さず)。パチシランによるTTRのこれらの低減は、レチノール結合タンパク質およびビタミンAのレベルの変化と相関があった(データは示さず)。
【0165】
パチシランの使用は、血液学的、肝臓、または腎臓の測定値、または甲状腺機能に有意な変化をもたらさず、薬物関連の重篤な有害事象または有害事象に起因する治験薬投与中止もなかった(データは示さず)。
【0166】
パチシランの血漿薬物動態プロファイルは、試験された用量範囲にわたって、TTR siRNAのピーク血漿濃度および最終日までの曲線下面積の値がほぼ用量比例的に増加したことを示した(データは示さず)。
【0167】
パチシランの特異性
パチシランの効果の特異性をさらに実証するために、パチシランで使用される同じタイプの脂質ナノ粒子に製剤化されるPCSK9(コレステロール低下の標的)を標的とするsiRNAを含有するALN-PCSの第1相試験において、健康なボランティアの群でTTRも測定した。0.4mg/kgのALN-PCS(いわゆる対照siRNA)の単回投与は、TTRに影響を及ぼさず(データは示さず)、これは、TTRに対するパチシランの効果が、脂質ナノ粒子の製剤の非特異的な効果ではなく、siRNAによる特異的な標的化に起因することを示した。
【0168】
パチシランの薬力学的効果の特異性および作用機序を裏付ける追加の証拠を、循環細胞外RNA中の予測TTR mRNA切断産物を検出するために、0.3mg/kgの用量を投与された参加者から得られた血液サンプルに対する5’RACE(相補的DNA末端の急速増幅)アッセイを使用して得た。血液サンプルを採取するために、凝固した血液サンプル(対象からの投与前および投与後24時間の)を1200×gで20分間遠心分離した後に血清を採取した。血清を1200×gで10分間、二度目に遠心分離して、浮遊細胞物質を除去し、次いで凍結した。解凍された血清を塩化リチウム(最終濃度1M)と混合し、4°Cで1時間インキュベートした。サンプルを、120,000×gで2時間、4°Cで回転させて、RNAをペレット化し、総RNAを、トリゾール抽出(Life Technologies,Grand Island,New York,USA)およびイソプロパノール沈殿によってペレットから単離した。
【0169】
TTR siRNA媒介切断産物を検出するために、単離されたRNAを、GeneRacerキット(Life Technologies)を使用してライゲーション媒介性RACE PCRに使用した。RNAをGeneRacerアダプターにライゲートし、TTR特異的リバースプライマー(5’-aatcaagttaaagtggaatgaaaagtgcctttcacag-3’)(配列番号3)を使用して逆転写し、続いて、アダプターに相補的なGene Racer GR5’順方向プライマーおよびTTR特異的リバースプライマー(5’-gcctttcacaggaatgttttattgtctctg-3’))(配列番号4)を使用して、2ラウンドのPCRを行った。ネステッドPCRを、GR5’ネステッドプライマーおよびTTR特異的逆ネステッドプライマー(5’-ctctgcctggacttctaacatagcatatgaggtg-3’))(配列番号5)を用いて行った。PCR産物を、TOPO-Bluntベクター(Life Technologies)を使用してクローニングした。クローニングされた挿入物を、M13フォワードおよびリバースプライマーを使用してコロニーPCRによって増幅した。アンプリコンを、Macrogenシーケンシング施設にてT7プロモータープライマーで配列決定した。96個のクローンからの配列を、CLC WorkBenchを使用してヒトTTRに整列させた。
【0170】
TTR mRNAは、投与前サンプルおよび薬剤投与の24時間後に取得されたサンプルの両方で検出された。RNAi機序と一致して、予測されるmRNA切断産物は、投与前サンプル中に存在せず、三人の参加者全員の投与後サンプル中に存在した(データは示さず)。
【0171】
ヒト血清中の野生型および変異TTRの定量のためのLC/MS/MSアッセイは、Tandem Labによって認定され、実施された。血清サンプルを、キモトリプシンを使用して消化し、次いで、LC/MS/MSによる分析の前にタンパク質沈殿抽出によって処理した。野生型TTRを表すキモトリプシンペプチドTTRW-1および変異体V30Mを表すV30M-1を、それらの固有の質量対電荷比遷移に従って監視した。安定同位体標識ペプチド(TTRW-1-D8およびV30M-1-D8)を用いて得られた標準較正曲線データを使用して、ヒト血清サンプル中の内因性ペプチド断片(TTRW-1およびV30M-1)を計算した。標準(すなわち、内部標準TTRW-L1-D16に対するTTRW-1-D8およびV30M-L1-D16に対するV30M-1-D8)に対するピーク面積比を使用して、1/x2加重最小二乗回帰分析を使用して線形較正曲線を作成した。適格なLC/MS/MS法は、5~2500ng/mlの範囲の標準曲線で、5ng/mlの定量下限(LLOQ)を達成した。
【0172】
実施例2.家族性アミロイドポリニューロパチーのためのパチシラン療法の安全性および有効性に関する多数回投与試験
この第II相臨床試験では、TTR媒介性FAPを有する患者にパチシランの複数回用量を投与し、これらの患者におけるパチシランの複数回漸増静脈内投与の安全性、忍容性、薬物動態、および薬力学を評価した。このデータは、2013年11月に開催された家族性アミロイドポリニューロパチーに関する国際シンポジウム(ISFAP)で提示された。
【0173】
適格な患者は、生検で実証されたATTRアミロイドーシスおよび軽度~中等度のニューロパチーを有する;カルノフスキーパフォーマンス状態(KPS)≧60%;ボディ・マス指数(BMI)17~33kg/m;適切な肝臓および腎機能(アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)≦2.5×正常上限(ULN)、正常範囲内の総ビリルビン、アルブミン>3g/dL、ならびに国際標準化比(INR)≦1.2;血清クレアチニン≦1.5ULN);およびB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスに対する血清反応陰性の成人(≧18歳)である。肝臓移植を行っていた場合;試験中に手術が計画された場合;HIV陽性である場合;30日以内にタファミジスまたはジフルニサル以外の治験薬を受けた場合;ニューヨーク心臓協会の心不全分類が>2であった場合;妊娠しているまたは授乳中である場合;全身性細菌性、ウイルス性、寄生虫性、または真菌性感染症が判明しているか、または疑われる場合、不安定な狭心症、制御されていない臨床的に有意な心不整脈を有する場合;またはリポソーム産物に対する重度の反応が以前にあった場合、またはオリゴヌクレオチドに対する既知の過敏症を有していた場合;患者は治療から除外される。
【0174】
これは、FAPの患者におけるパチシランの多施設、国際的、非盲検、複数回用量漸増第II相試験であった。3名の患者のコホートは、パチシランの二回用量を投与され、各用量は静脈内(IV)注入として投与された。コホート1~3は、それぞれ、四週間毎(Q4W)に、パチシラン0.01、0.05、および0.15mg/kgの二回投与を受け、コホート4および5は両方とも、Q4Wにパチシラン0.3mg/kgの二回投与を受けた。コホート6~9のすべての患者は、三週間毎(Q3W)に、パチシラン0.3mg/kgの二回投与を受けた。全ての患者は、デキサメタゾン、パラセタモール(アセトアミノフェン)、H2ブロッカー(例えば、ラニチジンまたはファモチジン)、およびH1ブロッカー(例えば、セチリジン、ヒドロキシジンまたはフェキソフェナジン)からなる各パチシラン注入前に前投薬を受け、注入関連反応のリスクを低減した。パチシランを、3.3mL/分で60分にわたって、またはマイクロ投与レジメン(1.1mL/分で15分間、続いて、残りの用量を3.3mL/分)を使用して70分にわたってIV投与した。
【0175】
酵素免疫測定法(ELISA)を使用して、すべての患者について総TTRタンパク質の血清レベルを評価した。さらに、野生型および変異型TTRタンパク質を、専有の質量分析法(Charles River Laboratories,Quebec,Canada)を使用して、Val30Met変異を有する患者について血清中で個別的かつ特異的に測定した。血清サンプルを、スクリーニング時、および以下の日に採取した:追跡調査の0、1、2、7、10、14、21、22、23(Q3Wのみ)、28、29(Q4Wのみ)、30(Q4Wのみ)、31(Q3Wのみ)、35、38(Q4Wのみ)、および42 49、56、112、および208。
【0176】
0日目および以下の時点で採取された血液サンプルに基づいて、TTR siRNAの血漿濃度-時間プロファイルを作成した:投与前(予定投与開始の1時間以内)、注入終了時(EOI)、5分、10分および30分、ならびに注入後1、2、4、6、24、48、168、336、504(21日目、Q3Wレジメンのみ)および672時間(28日目、Q4Wレジメンのみ)。Q4Wレジメンについては84日目および180日目に、Q3Wレジメンについては35日目、91日目および187日目に追加のサンプルを採取した。コホート3~9については、EOIの0日目および注入後2時間の血液サンプルも、遊離および封入されたTTR siRNAの両方について分析した。血清TTR siRNAを、検証済みのATTO-Probe高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイ(Tandem Laboratories,Salt Lake City,Utah,USA)を使用して分析した。PK分析を、TTR siRNA血漿濃度-時間データの非区画的および/または区画的評価を使用して実施し、検証されたソフトウェアプログラムWinNonlin(登録商標)を使用してPKパラメータ推定値を決定した。尿サンプルを、排泄されたTTR siRNAのレベルについて分析し、投与後に腎クリアランス(CL)を測定した。
【0177】
ビタミンAおよびレチノール結合タンパク質(RBP)の血清レベルを、それぞれHPLCおよびネフェロメトリーによって、総TTRについて指定されたのと同じ時点で測定した(Biomins Specialized Medical Pathology,Lyon,France)。
【0178】
ベースラインからのTTRノックダウンの平均および分散を、PP集団について計算し、ベースラインをすべての投与前値の平均として定義した。分散分析(ANOVA)および共分散分析(ANCOVA)を使用して、PDデータ(ベースラインに対する自然対数変換されたTTR)を分析し、個々の対毎の比較のテューキーの事後検定(用量レベル間)を行った。最低TTRレベルは、各用量投与後の28日間(Q3W群については21日間)の間の患者当たりの最小レベルとして定義された(第一の用量、第二の用量期間:1~28日、29~56日および1~21日、22~42日、それぞれQ4W群およびQ3W群について)。ベースラインに対するTTRとRBPまたはビタミンAとの関係、および野生型とV30MのTTRレベルとの関係を、線形回帰を介して調査した。PKパラメータにおけるパチシラン成分の用量比例性を、パワーモデル解析を使用して評価した。AEは、国際医薬用語集(MedDRA)コードシステム、バージョン15.0、ならびにAE、臨床検査データ、バイタルサインデータ、およびECG間隔データに対して提供される記述統計を使用してコードされた。すべての統計解析は、SASソフトウェア、バージョン9.3以上を使用して実施された。有効性および薬力学:平均(SD)ベースライン血清TTRタンパク質レベルは、用量コホートにわたって類似していた:0.01、0.05、0.15、0.3 Q4Wおよび0.3mg/kg Q3W用量群について、それぞれ、272.9(98.86)、226.5(12.67)、276.1(7.65)、242.6(38.30)、および235.5(44.45)μg/mL。
【0179】
0.01mg/kgの用量コホートと比較して、0.3mg/kgのQ4WおよびQ3Wコホートにおいて、パチシランの第一および第二の投与後にTTRの有意な減少(ANCOVA後の事後検定によりp<0.001)が観察された。(データは示さず)Val30Met変異を有する患者では、野生型および変異TTRについて非常に類似したノックダウンの程度が観察された(データは示さず)。血清TTRノックダウンのレベルは、RBP(r=0.89、p<10-15)およびビタミンA(r=0.90、p<10-15)の循環レベルの減少と高度に相関があった(データは示さず)。
【0180】
タファミジスまたはジフルニサルを服用している患者は、安定剤療法を受けていない患者と比較して血清TTRのベースラインレベルが有意に増加したが(ANOVAによるp<0.001)(データは示さず)、パチシラン投与は、これら二つの患者群において同様の程度のTTRノックダウンをもたらした(データは示さず)。
【0181】
薬物動態:パチシランTTR siRNA成分の平均濃度は、EOI後に減少し(データは示さず)、21/28日目の二回目の投与後、siRNAの蓄積はなかった。各用量後のTTR siRNAの封入濃度と非封入濃度の測定は、循環LNP製剤の安定性を示した。第一および第二の用量の両方について、最大血漿濃度(Cmax)およびゼロから最後の測定可能な時点までの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)の平均値は、試験された用量範囲にわたって用量比例的に増加した。用量1および用量2後のCmaxおよびAUC0-lastは同程度であり、蓄積はなかった。0日目および21/28日目のパチシランの終末相半減期の中央値は、用量>0.01mg/kgで39~59時間であり、各用量コホートの用量1および用量2を比較したときには比較的変化しなかった。
【0182】
これらの第II相データは、パチシランを用いたFAP患者の治療が、血清TTRタンパク質レベルの頑健で、用量依存的で、統計的に有意なノックダウンをもたらしたことを実証する。>80%のTTRの平均持続的な低減は、3~4週間毎に投与されたパチシラン0.3mg/kgの二回の連続投与で達成され、Q3W群で96%の最大ノックダウンが達成された。これらのノックダウン率は、パチシランの単回漸増用量、プラセボ対照第1相試験で観察された率と一致する(Coelho et al.2013a)。他の全身性アミロイド症の証拠は、疾患を引き起こすタンパク質のわずか50%の低減が、臨床的疾患の改善または安定化をもたらし得ることを示す(Lachmann et al.2003;Lachmann et al.2007)。パチシランによるTTRノックダウンの程度は、タファミジスまたはジフルニサルを摂取している患者によって影響を受けず、これらのTTR安定剤薬剤がパチシランの薬理学的活性を妨げないことを示唆する。Val30Met変異を有する患者では、パチシランは、変異型および野生型TTRの両方の産生を抑制し、後者は、肝臓移植後に遅発性FAPを有する患者においてアミロイド生成性のままである(Yazaki et al,2003;Liepnieks et al,2010)。
【0183】
実施例3.パチシランの投与によるNISおよびmNIS+7によって測定される神経学的障害の低減
非盲検継続(OLE)試験は、実施例2に記載される治験実施計画書を使用して、FAP患者で実施されたおよびされる。パチシランの投与は、NISおよびmNIS+7の両方の低減をもたらした。
【0184】
過去に第2相試験で投与を受けたFAP患者は、第2相OLE試験への移行が適格となる。0.30mg/kgを3週間毎、最長2年間投与されたおよびされ、6ヶ月毎に臨床評価項目を評価した。治験の目的は、神経障害(mNIS+7およびNIS)、生活の質、mBMI、障害、可動性、握力、自律神経症状、皮膚生検内神経線維密度、心臓関連障害(心臓関連サブグループにおいて)、および血清TTRレベルに対する効果を含んだ。
【0185】
患者の人口統計を以下に示す。
【表6】


【0186】
ベースライン特性には以下が含まれる:
【表7】


【0187】
以下の表に示されるように、パチシランの投与は、血清TTRレベルの低下をもたらした。パチシランは、およそ80%の持続的な血清TTR低下を達成し、投与間で最大88%のさらなる最低値を達成した。
【表8】


【0188】
以下の表に示されるように、パチシランの投与は、6ヶ月および12ヶ月で測定されるように、mNIS+7の変化をもたらした。
【表9】


【0189】
以下の表に示すように、パチシランの投与は、6ヶ月および12ヶ月でNISの変化をもたらした。
【表10】


【0190】
ΔNISまたはΔmNIS+7における進行とTTR濃度との関係を、図1および図2に示すように線形回帰を用いて調査した。TTRおよび平均投与前トラフ(trough)[TTR]は、6ヶ月でのmNIS+7の変化と相関があった。
【0191】
NISおよびmNIS+7を、0、6、および12ヶ月で測定した。0~6ヶ月および0~12ヶ月のΔNISまたはΔmNIS+7を応答変数として使用した。予測変数には、TTR濃度の二つの異なる尺度が含まれた:TTRタンパク質濃度曲線下面積(「AUC」)、ならびに84日目および168日目(0~6ヶ月の比較の場合)、84日目、168日目、273日目、および357日目(0~12ヶ月の比較の場合)のベースラインに対する平均ノックダウン率。
【0192】
両方のTTR測定値について、「ベースライン」は、すべての投与前値の平均として定義された。TTR AUCは、未加工のTTR濃度(μg/mL)および台形の方法を使用して計算され、ベースライン値(0日目に挿入)から始まり、182日目(0~6ヶ月の比較の場合)または357日目(0~12ヶ月の比較の場合)まで延長した。ベースラインに対するノックダウンの割合を、各予定された時点で計算した。線形回帰を行い、予測変数と応答変数との間に関連が存在しないという帰無仮説の検定に関連するP値を報告した。
【0193】
12ヶ月で、それぞれ-2.5および0.4点のmNIS+7およびNISの平均変化があり、これは、類似のベースラインNISを有する患者集団における以前のFAP試験から12ヶ月で推定されたmNIS+7およびNISの急速な増加(例えば、10~18点の増加)と比較して好ましい。ニューロパチー障害スコアの進行に対するパチシランの好ましい影響は、TTR低下の程度と相関があった。これは、パチシランによる血清TTR負荷の低減が、FAP患者における臨床的利益につながることを示す。
【0194】
実施例4.ポリニューロパチーを伴うhATTRアミロイドーシスのる患者における、パチシランの単一の無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相試験。
試験デザイン
ポリニューロパチーを伴うhATTRアミロイドーシスの患者において、パチシランの有効性と安全性を、単一の無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相試験(APOLLO)で評価した。主要有効性評価項目は、18ヶ月目でのmNIS+7複合神経障害スコアのベースラインからの変化であった。副次的評価項目には、Norfolk QOL-DN生活の質スコア、ならびに運動力(NIS-W)、障害(R-ODS)、歩行速度(10メートル歩行試験)、栄養状態(mBMI)、および自律神経症状(COMPASS-31)の尺度が含まれた。探索的評価項目には、ベースラインでの心臓関連障害の証拠を有する患者における心臓測定値、ならびに皮膚生検における皮膚アミロイド負荷および神経線維密度の測定値が含まれた。
【0195】
概要:
APOLLOは、その主要評価項目(mNIS+7)を満たし、また、Norfolk QOL-DNおよび全ての他の副次的評価項目に対して、高度に統計的に有意な効果を示し、ポリニューロパチーを伴うhATTRアミロイドーシスにおけるパチシランの臨床的利益を実証した。パチシランで治療された患者の50%超が、ベースラインと比較して、18ヶ月で神経障害の改善を有した。
【0196】
治験実施計画書の概要:
患者は、上述のようにパチシランで治療された。簡潔に述べると、患者は、体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量でパチシラン(表1を参照)の投与を受け、三週間毎(Q3W)に静脈内投与された。パチシランを、例えば、3.3mL/分で60分にわたって、またはマイクロ投与レジメン(1.1mL/分で15分間、続いて、残りの用量を3.3mL/分)を使用して70分にわたって静脈内投与した。
【0197】
いくつかの実施形態では、患者は、注入関連反応のリスクを低減するために、例えば、パチシラン注入の投与の前夜および/または当日、例えば、パチシラン注入の投与の一時間前に、前投薬を受けた。これらの薬剤には、デキサメタゾン、アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミンまたはセチリジン、およびラニチジンが含まれた。いくつかの実施形態では、以下の前投薬レジメンを使用することができる:IVデキサメタゾン10mg、もしくは同等物;および経口パラセタモール/アセトアミノフェン500mg、もしくは同等物;およびIVヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1ブロッカー):ジフェンヒドラミン50mg、もしくは同等の他のIV H1ブロッカーまたはヒドロキシジン25mgまたはフェキソフェナジン30もしくは60mgPOまたはセチリジン10mgPO;およびIVヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):ラニチジン50mgまたはファモチジン20mg、もしくは同等の他のH2ブロッカー用量。
【0198】
ベースライン特性:
APOLLOは、225人の患者(パチシランに148人、プラセボに77人)を登録した。患者は、2013年12月から2016年1月にかけて、北米、欧州、アジア太平洋地域、および中央/南アメリカの19カ国の44の施設で登録された。患者の大部分は、白人(72.4%)であり、74.2%は男性であり、ほとんどは、62歳中央値(24~83歳の範囲)の高齢の成人であった。FAPステージIとFAPステージIIの患者の割合は同様であり、平均mNIS+7スコアは、パチシラン群およびプラセボ群でそれぞれ80.9(範囲8~165)および74.6(範囲11~153.5)であった。Val30Met変異は、非Val30Met変異の57.3%と比較して、患者の42.7%に存在した。心臓アミロイド関与の心エコー的証拠は、56%に存在し、全患者の52.9%は、TTR四量体安定化剤の使用歴を有していた。治療群は、年齢、性別、疾患ステージ、ベースラインmNIS+7、および以前のTTR四量体安定化剤の使用について良好にバランスが取れていた。パチシラン群は、より多くの白人(76.4%対64.9%)を有し、非Val30Met変異を有する患者の割合が高く(62.2%対48.1%)、ベースラインでの心臓関連障害の心エコー的証拠を有し(心臓亜集団、60.8%対46.8%)、ならびに北米に登録されたより多くの患者(25%対13%)を有した。
【0199】
TTR遺伝子型
先述の通り、Val30Met変異は、非Val30Met変異の57.3%と比較して、患者の42.7%に存在した。患者に見られる非Val30Met変異を以下に列挙する。
【表11】


【0200】
疾患ステージ
FAPのステージを以下の表に示す。
【0201】
【表12】


【0202】
傾向(Disposition):
計185名の患者が試験治療を完了し、パチシランでは完了者の割合が高かった(パチシラン群およびプラセボ群でそれぞれ92.6%対62.3%)。計193名の患者が試験を完了し、パチシランでは完了者の割合が高かった(パチシラン群およびプラセボ群でそれぞれ93.2%対71.4%)。
【0203】
6名(7.8%)のプラセボ患者は、パチシラン群の1名(0.7%)と比較して、9ヶ月で急速な疾患進行(臨床判定委員会によって決定される、FAPステージ進行に沿った≧24点のmNIS+7増加)を示した。
【0204】
プラセボ群では、試験治療中止の主な理由は、被験者の同意の撤回(15.6%)、ならびに有害事象(9.1%)、進行性疾患(5.2%)、および死亡(5.2%)であり、試験参加中止の主な理由は、被験者の同意の撤回(14.3%)、ならびに有害事象(7.8%)および死亡(5.2%)であった。
【0205】
パチシラン群において、試験治療中止の主な理由は、死亡(3.4%)および有害事象(2%)であり、試験参加中止の主な理由は、死亡(4.1%)および有害事象(1.4%)であった。
【0206】
APOLLOを完了し、かつ潜在的にグローバル非盲検継続試験に登録する資格がある189人の患者のうち、186人(98.4%)が進行中のグローバル非盲検継続試験に登録された。
【0207】
有効性の概要
mNIS+7および副次的評価項目の両方の結果の要約を以下の表に示す。
【表13】



【表14】



【表15】


【0208】
mNIS+7
本試験は、その主要有効性評価項目を満たした。mITT(修正治療意図)集団では、パチシラン群は、ベースラインと比較して、18ヶ月で神経障害の改善(-6.0(1.7)点のmNIS+7 LS平均(SEM)変化)を示したが、プラセボ群は、神経障害の悪化(+28.0(2.6)点のmNIS+7 LS平均(SEM)変化)を示し、プラセボと比較して、パチシランを用いたニューロパチー進行の高度に有意な低減(-34.0点のLS平均差、95%CI:-39.9、-28.1、p=9.26E-24)を示した。同様の結果がPP集団で観察された。パチシランの効果は、9か月に早くも観察され(-16.0点のLS平均差、95%CI:-20.7、-11.3)、パチシランを好ましくする一貫した効果は、mNIS+7の全ての構成要素にわたって見られた。
【0209】
図4に示されるように、18ヶ月でのベースライン(<0点のmNIS+7の変化)と比較した神経障害の改善は、プラセボ(40.0のオッズ比、p=1.82E-15)でのわずか3.9%(95%CI:0.0%、8.2%)と比較して、パチシランでは患者の56.1%(95%CI:48.1%、64.1%)で見られた。
【0210】
図5に示すように、mNIS+7に対するパチシランの効果は、年齢、性別、民族、地理的領域、TTR遺伝子型、ニューロパチーの重症度、疾患ステージ、および以前のTTR四量体安定化剤の使用によって定義されるすべての患者サブグループにわたって観察された。
【0211】
パチシランの有効性の維持は、mNIS+7スコアの測定によって、30ヶ月および36ヶ月の治療レジメンにわたって患者において観察された。
【0212】
副次評価項目:
六つの副次的評価項目も、階層的試験ごとに統計学的有意性も満たした。
【0213】
図6に示すように、mITT集団では、Norfolk QOL-DNについての18ヶ月時点でのベースラインからのLS平均(SEM)変化は、パチシランでは-6.7(1.8)点であり、生活の質の悪化を示すプラセボの+14.4(2.7)点と比較して、生活の質の改善を表した。治療群間のLS平均差は、-21.1点(95%CI:-27.2、-15.0、p=1.10E-10)であり、プラセボと比較してパチシランを用いた場合の生活の質の有意な改善を示した。同様の結果がPP集団で観察された。
【0214】
mNIS+7と同様に、Norfolk QOL-DNに対するパチシランの効果は、9か月という早さで見られた(-15.0点のLS平均差、95%CI:-19.8、-10.2)。Norfolk QOL-DNに対するパチシランの効果は、年齢、性別、民族、地理的領域、TTR遺伝子型、ニューロパチーの重症度、疾患ステージ、および以前のTTR四量体安定化剤の使用によって定義されるすべての患者サブグループにわたって観察された。
【0215】
パチシラン治療はまた、以下を含む複数の追加の副次的評価項目においても、18ヶ月でプラセボと比較してベースラインよりも有意な改善をもたらした:NIS-W(-17.9点のLS平均差、95%CI:-22.3、-13.4、p=1.40E-13)、R-ODS(+9.0点のLS平均差、95%CI:7.0、10.9、p=4.07E-16)、10メートル歩行試験(+0.311m/秒のLS平均差、95%CI:0.23、0.39、p=1.88E-12)、BMI(+115.7kg/m2×g/LのLS平均差、95%CI:82.4、149.0、p=8.83E-11);およびCOMPASS-31(-7.5点のLS平均差、95%CI:-11.9、-3.2、p=0.0008))。改善は、年齢、性別、民族、地理的領域、TTR遺伝子型、ニューロパチーの重症度、疾患ステージ、および以前のTTR四量体安定化剤の使用によって定義されるすべての患者サブグループにわたって観察された。
【0216】
以下の表に示すように、すべての副次的評価項目は、18ヶ月で統計的有意性を達成した。COMPASS-31を除くすべての副次的評価項目について、9ヶ月時点で分離が見られた。基準範囲は以下の通りである:NIS-W:0(より良好)~192(より不良)、R-ODS:0(より不良)~48(より良好)、COMPASS 31:0(より良好)~100(より不良)。
【表16】


【0217】
血清TTR減少率
血清TTR濃度を、研究参加者で測定した。血清TTRの平均減少率は、プラセボのわずか5.8%(最小-57%、最大43)の低減と比較して、パチシランを受けている患者において77.7%(最小-38%、最大95%)であった。血清TTRに対するパチシランの効果は、年齢、性別、遺伝子型、および以前のTTR四量体安定化剤の使用によって定義される患者サブグループにわたって観察された。より大きなTTR低減はまた、R値が0.52(95%CI:-0.62、-0.41)であるmNIS+7スコアとR値が-0.40(95%CI:-0.51、-0.27)であるNorfolk QoL-DNスコアとの両方の改善された変化と相関があった。データは、図7に示される。
【0218】
より大きなTTR低減は、mNIS+7の改善された変化と相関した(R値0.52[95% CI:-0.62、-0.41])。より大きなTTR低減は、Norfolk QoL-DNの改善された変化と相関した(R値-0.40[95%CI:-0.51、-0.27]。図8のグラフは、18ヶ月での血清TTRの減少とmNIS+7スコアとの関係を示す。
【0219】
PNDスコアおよびFAPステージ
患者は、本明細書に記載されるように、ポリニューロパチー障害(PND)スコアおよび家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)ステージについて評価された。PNDスコアは以下のように決定される:PND I:歩行の維持、感覚障害;PND II:歩行障害はあるが、杖や松葉杖なしで歩行できる;PND IIIA:1本の杖や松葉杖で歩く;PND IIIB:2本の杖や松葉杖で歩く;PND IV:車椅子やベッドで寝たきりの状態。FAPステージは以下のとおりである。FAP I:歩行障害なし、FAP II:歩行の支援が必要、FAP III:車椅子やベッドで寝たきりの状態。
【0220】
図9に示すように、18ヶ月時点で、PNDスコアおよびFAP状態の両方にシフトがあった。パチシランを用いた治療は、安定化または改善されたいずれかのPNDスコアおよびFAPステージをもたらした。
【0221】
皮膚生検:神経線維密度および皮膚アミロイド含量
自発的な皮膚生検を、試験参加者に対して行った。神経線維密度および皮膚アミロイド含量を決定した。ベースライン皮膚生検を受けたプラセボ患者の約50%は、脱落により18ヶ月の追跡サンプルを有していなかった。これは、大幅な変動性も加わり、結果の解釈を限定した。しかしながら、結果は、プラセボと比較して、パチシラン治療による表皮内神経線維密度(IENFD)の減弱した減少を示し(名目上のp値有意)、プラセボと比較して、パチシラン治療での汗腺神経線維密度(SGNFD)または皮膚アミロイド含量の有意な変化を示さなかった。(データは非表示)。
【0222】
パチシランの有効性の維持
18ヶ月間の二重盲検試験の試験参加者は、パチシランで12ヶ月間治療された。結果を図10のグラフに示し、30ヶ月にわたるmNIS+7に対するパチシラン効果の維持、およびプラセボを以前に受けた患者における有効性の証拠を示す。
【0223】
24ヶ月間の試験における試験参加者は、パチシランで12ヶ月間治療された。結果を図11のグラフに示し、36ヶ月にわたるmNIS+7に対するパチシラン効果の維持を示す。
【0224】
心臓サブグループ解析
心臓亜集団、例えば、心筋症を有する患者については、先述された。概して、これらは、13mm以上の心臓の全厚を有し、高血圧または心臓弁疾患の証拠がない患者であった。心臓亜集団は、プラセボ亜集団の36名(46.8%)の患者、およびパチシラン集団の90名(60.8%)の患者から構成された。心臓亜集団における患者の総数は、126人、または本試験における患者の56%であった。
【0225】
探索的心臓関連評価項目、例えば、心臓マーカーおよび/または心エコーパラメータを、集団全体にわたって評価した。結果を以下の表に示す。
心臓探索的評価項目
【表17】


【0226】
パチシランを投与された患者は、プラセボ患者と比較して、NT-proBNPの安定化を示した(パチシラン:12.5pmol/L増加、プラセボ:227.2pmol/L増加)。パチシラン治療患者とプラセボ患者とのNT-proBNPの差は、-214.6pmol/L(p=0.0024)であった。
心臓サブグループにおけるNT-proBNPマーカー
【表18】


18ヶ月で非消失(non-missing)NT-proBNPを有する患者のみを含む
18ヶ月でベースラインNT-proBNP≧650ng/Lおよび非消失(non-missing)NT-proBNPを有する患者のみを含む
【0227】
改善は、パチシランを受けている患者のLV(左心室)壁厚および長軸方向ストレインでも見られた。LV壁厚は、プラセボ患者におけるわずか0.007cmと比較して、パチシラン治療患者にいてベースラインと比較して0.1cm減少した(p=0.0173)。LV長軸方向ストレインはまた、パチシラン患者において安定化し、プラセボ患者における1.46%と比較して、わずか0.08%増加した(p=0.0154)。
【0228】
実施例5.概要
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、心筋症およびポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTR)の治療を、それを必要とするヒト患者において行うために、表1に記載の組成のパチシランを体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で、患者に投与することによって使用され、パチシランは、21日または3週間毎に一回静脈内投与される。方法は、パチシランの投与前の対象のベースラインスコアからの修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらす。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、心筋症を伴う遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTR)の治療を、それを必要とするヒト患者において行うために使用され、方法は、表1に記載の組成のパチシランを体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で、患者に投与することを含み、パチシランは、21日または3週間毎に一回静脈内投与される。
【0230】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、心筋症およびポリニューロパチーを有する遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(hATTR)を有し治療するヒト患者において、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアを低減するために使用され、方法は、表1に記載の組成のパチシランを体重1kg当たり0.3mgのsiRNAの用量で、患者に投与することを含み、パチシランは、21日または3週間毎に一回静脈内投与され、方法は、18ヶ月で決定されるベースラインからの修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)複合神経障害スコアの減少をもたらし、ベースラインは、パチシラン投与前の患者のmNIS+7スコアである。
【0231】
いくつかの実施形態では、本方法は、Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)、NIS-W、Rasch-built全般身体障害スコア(R-ODS)、10メートル歩行試験、修正ボディ・マス指数(mBMI)、COMPASS-31スコアからなる群から選択される一つ以上の評価項目におけるベースラインからの改善をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、全ての評価項目の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、Norfolk生活の質質問票-糖尿病神経障害(QOL-DN)およびCOMPASS-31スコアおよび10メートル歩行試験の改善をもたらす。
【0232】
いくつかの実施形態では、患者は、デキサメタゾン、経口パラセタモール/アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、フェキソフェナジン、セチリジン、ラニチジン、ファモチジン、または他のIVヒスタミンH1またはH2受容体拮抗薬などの前投薬を投与される。いくつかの実施形態では、前投薬は、パチシランの約一時間前に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、ビタミンAのUSDA推奨日当の経口一日用量をさらに投与される。いくつかの実施形態では、患者は、タファミジスまたはジフルニサルなどの四量体安定化剤も投与される。
【0233】
いくつかの実施形態では、開示された方法で治療される患者は、白人であってもよく、北米に住んでいてもよく、65歳以上であってもよく、男性であってもよく、FAPステージIを有してもよく、FAPステージIIを有してもよく、8~165のベースラインmNIS+7スコアを有してもよく、Val30 Met TTR変異を有してもよく、表Xに見られる一つ以上のTTR変異を有してもよく、心臓アミロイド関与の心エコー的証拠を有してもよく、および/または以前の長期TTR四量体安定化剤使用の履歴を有してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの薬剤の投与は、患者によって実施される。他の実施形態では、少なくとも一つの薬剤の投与は、医療専門家によって実施される。
【0234】
実施例6.パチシラン投与による非侵襲的な圧容積分析を使用して測定される安定した心臓機能
背景
トランスサイレチン(TTR)タンパク質の不安定化によって引き起こされるトランスサイレチン媒介性(ATTR)アミロイドーシスは、心臓、神経、および他の器官におけるアミロイド線維の沈着をもたらす。
【0235】
TTRの肝合成を阻害するRNA干渉(RNAi)治療薬であるパチシランは、第III相APOLLO試験に基づいて、遺伝性トランスサイレチン媒介性(hATTR)アミロイドーシスのポリニューロパチーの治療に対して承認された。
【0236】
この事後解析では、非侵襲的圧容積(PV)技術を使用して、APOLLO試験における左心室(LV)機構に対するパチシランの効果をさらに詳述する。
【0237】
方法
APOLLO試験に登録されたすべての患者は、ポリニューロパチーを伴うhATTRアミロイドーシスとの診断を受けた。LV容積、LV圧力および血圧のドップラー推定値を使用して、APOLLO試験から利用可能なコアラボ心エコーを有する患者に対して非侵襲的PVループを構築した。
【0238】
収縮終期PV関係(ESPVR)および拡張終期PV関係(EDPVR)が、各対象に対してこれまでに検証された技術から導出された。ESPVRとEDPVRとの間の面積、30mmHgのLV拡張終期圧(PVAiso30)にインデックス付けされた等容性PV面積を、LV機能の一次尺度として使用し、経時的に追跡した。ANCOVAを使用して、9ヶ月および18ヶ月でのPVAiso30のベースラインからの最小二乗(LS)平均変化における治療群間の差異の有意性を評価した。
【0239】
結果
修正治療意図(mITT)試験集団の225人の患者が含まれた。ベースラインでは、平均PVAiso30は13,319mmHgmLであった(正常から約25%減少した)。
【0240】
9ヶ月時点で、PVAiso30のLS平均変化は、パチシランで-77mmHgmL、プラセボで-2003mmHgmLであった(p<0.001)。18ヶ月時点で、PVAiso30のLS平均変化は、パチシランで-565mmHgmL、プラセボで-2810mmHgmLであった(p<0.001)。PVAiso30の低下は、両方の時点でのLV静電容量の減少によって引き起こされた。
【0241】
ベースラインおよび利用可能な心エコーデータを有するmITT試験集団における患者の心エコーおよび圧容積パラメータの変化を表4に示す。図12Aおよび12Bは、ベースライン(実線)と比較され、治療群によって階層化された、9ヶ月(破線)での圧容積ループ(図12A)および等容性圧容積面積(図12B)の変化についてのグラフを示す。図13Aおよび13Bは、ベースライン(実線)と比較され、治療群によって階層化された、18ヶ月(破線)での圧容積ループ(図13A)および等容性圧容積面積(図13B)の変化についてのグラフを示す。
【0242】
これらの結果は、パチシランが、LV静電容量の減少を防止することによって、18ヶ月間の治療にわたってLVチャンバー機能不全の進行を遅延させることを示す。パトリシランを用いた治療は、非侵襲的圧容積分析を使用して評価された遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスを有する患者において、安定した心機能をもたらす。
【表19】

【表20】

【0243】
表4:IVS、心室中壁;PW、後壁;LVMi、体表面積に対してインデックス付けされ左心室質量;RWT、相対壁厚;LVEDV、左心室拡張末期容積;LVESV、左心室収縮末期容積;SVi、体表面積に対してインデックス付けされたストローク体積;LVEF、左心室駆出分画率;MCF、心筋収縮率;GLS、長軸方向グローバルストレイン;LVEDP、推定左心室拡張末期圧;LVESP、推定左心室収縮末期圧;Ees、収縮末期弾性、Ea;動脈弾性、Vo;0mmHgの圧力での推定心室容積、V120;120mmHgの圧力での推定左心室容積、V30;30mmHgの圧力での推定左心室容積、PVAiso30、左心室拡張末期圧力30mmHgに対してインデックス付けされた等容性圧容積面積;ベースラインからの変化を転帰変数として、ならびに対応するベースライン値および治療群を共変量として、ANCOVAを用いて比較した。
【0244】
本発明は、好ましい実施形態および様々な代替的な実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更をその中に行うことができることは、当業者によって理解されるであろう。
【0245】
本明細書の本文内で引用されるすべての参考文献、発行された特許、および特許出願は、すべての目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
【配列表】
2024518374000001.app
【国際調査報告】