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特表2024-518375RNA送達のためのイオン化可能なカチオン性脂質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】RNA送達のためのイオン化可能なカチオン性脂質
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/12 20060101AFI20240423BHJP
   C07C 327/32 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07C229/12 CSP
C07C327/32
A61K31/7088
A61K31/713
A61K31/7105
A61K48/00
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/69
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/60
A61K9/19
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/02
A61P43/00 105
A61P37/04
A61K38/02
A61K38/43
A61K39/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567891
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022027874
(87)【国際公開番号】W WO2022235935
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,303
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513269893
【氏名又は名称】アークトゥラス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Arcturus Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ラジャッパン,クマール
(72)【発明者】
【氏名】タニス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】サギ,アミット
(72)【発明者】
【氏名】カルマリ,プリヤ プラカシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB15
4C076CC07
4C076CC26
4C076DD23
4C076DD38
4C076DD57
4C076DD63
4C076DD67
4C076DD70
4C076EE23
4C076GG06
4C084AA13
4C084BA35
4C084BA44
4C084DC01
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB09
4C084ZB21
4C085AA13
4C085BA01
4C085BB23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB21
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BT12
4H006BU32
4H006TN50
4H006TN60
(57)【要約】
本開示は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を記載し、式中、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-であり、mが、4~11であり、L及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、若しくは(CH-O-(CHであり、p及びqが各々独立して、1~3であり、Rは、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンであり、R及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルであり、Xは、O又はSであり、nは、0~2である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
【化1】
式中、
及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-であり、mが、4~11であり、
及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、若しくは(CH-O-(CHであり、p及びqが、各々独立して、1~3であり、
は、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンであり、
及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルであり、
Xは、O又はSであり、
nは、0~2である、化合物。
【請求項2】
及びRが、各々独立して、(CH(CHCH-、及び(CH(CHCHCH-から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRが、各々独立して、(CH(CHCH-である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが、各々独立して、(CH(CHCHCH-である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが、各々独立して、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、及び(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、(CH(CHCH-又は(CH(CHCHCH-であり、Rが、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、及び(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
mが、4~8である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
mが、5~7である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
mが、5である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
mが、6である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
mが、7である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
及びLが、各々独立して、C2-5アルキレン又は(CH-O-(CHである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
及びLが、各々独立して、C2-5アルキレンである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
及びLが各々、プロピレンである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
及びLが各々、存在しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が、C3-5アルキレンである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
が、プロピレンである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
及びRが、各々独立して、C1-6アルキルである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
及びRが各々、メチルである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
nが、0~1である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
nが、0である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
nが、1である、請求項1~20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
【化2】
【化3】
、又はその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が、ATX-193:
【化4】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物が、ATX-200:
【化5】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物が、ATX-201:
【化6】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項27】
前記化合物が、ATX-202:
【化7】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項28】
前記化合物が、ATX-209:
【化8】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項29】
前記化合物が、ATX-210:
【化9】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項30】
前記化合物が、ATX-230:
【化10】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項31】
前記化合物が、ATX-231:
【化11】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が、ATX-232:
【化12】
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項33】
核酸と、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物と、を含む、脂質組成物。
【請求項34】
前記核酸が、siRNA、mRNA、自己複製RNA、DNAプラスミド、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、請求項33に記載の脂質組成物。
【請求項35】
前記核酸が、目的の治療用タンパク質をコードするコード領域を含むmRNA又は自己複製RNAである、請求項33又は34に記載の脂質組成物。
【請求項36】
前記目的の治療用タンパク質が、酵素、及び抗体、抗原、受容体、又は輸送体である、請求項35に記載の脂質組成物。
【請求項37】
前記目的の治療用タンパク質が、遺伝子編集酵素である、請求項35又は36に記載の脂質組成物。
【請求項38】
前記遺伝子編集酵素が、TALEN、CRISPR、メガヌクレアーゼ、又はジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、請求項37に記載の脂質組成物。
【請求項39】
前記脂質組成物が、リポソーム、リポプレックス、又は脂質ナノ粒子を含む、請求項33~38のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【請求項40】
複数のリガンドを含む、脂質ナノ粒子であって、各リガンドが、独立して、請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物であり、前記複数のリガンドが、自己集合して、内部及び外部を含む前記脂質ナノ粒子を形成する、脂質ナノ粒子。
【請求項41】
前記脂質ナノ粒子の平均粒径が、約100nm未満である、請求項40に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項42】
前記脂質ナノ粒子の前記平均粒径が、約55nm~約85nmである、請求項40又は41に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項43】
前記脂質ナノ粒子が、前記内部に封入された核酸を更に含む、請求項40~42のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項44】
前記核酸が、siRNA、mRNA、自己複製RNA、DNAプラスミド、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、請求項43に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項45】
前記核酸が、目的の治療用タンパク質をコードするコード領域を含むmRNA又は自己複製RNAである、請求項43又は44に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項46】
前記目的の治療用タンパク質が、酵素、及び抗体、抗原、受容体、又は輸送体である、請求項45に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項47】
前記目的の治療用タンパク質が、遺伝子編集酵素である、請求項45又は46に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項48】
前記遺伝子編集酵素が、TALEN、CRISPR、メガヌクレアーゼ、又はジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、請求項47に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項49】
前記脂質ナノ粒子が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、及びホスファチジルコリン(PC)から選択されるヘルパー脂質を更に含む、請求項40~48のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項50】
前記ヘルパー脂質が、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、請求項49に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項51】
コレステロールを更に含む、請求項40~50のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項52】
ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含む、請求項40~51のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項53】
PEG-脂質コンジュゲートが、PEG-DMGである、請求項52に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項54】
前記PEG-DMGが、PEG2000-DMGである、請求項53に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項55】
前記脂質ナノ粒子が、約45モル%~65モル%の請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物、約2モル%~約15モル%のヘルパー脂質、約20モル%~約42モル%のコレステロール、及び約0.5モル%~約3モル%のPEG-脂質コンジュゲートを含む、請求項40~54のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項56】
前記脂質ナノ粒子が、約50モル%~約61モル%の請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物、約5モル%~約9モル%の前記ヘルパー脂質、約29モル%~約38モル%のコレステロール、及び約1モル%~約2モル%の前記PEG-脂質コンジュゲートを含む、請求項55に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項57】
前記脂質ナノ粒子が、約56モル%~約58モル%の請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物、約6モル%~約8モル%のDSPC、約31モル%~約34モル%のコレステロール、及び約1.25モル%~約1.75モル%の前記PEG-脂質コンジュゲートを含む、請求項55に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項58】
前記脂質ナノ粒子が、約50:1~約10:1の総脂質:核酸重量比を有する、請求項43~48のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項59】
前記脂質ナノ粒子が、約40:1~約20:1の総脂質:核酸重量比を有する、請求項58に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項60】
前記脂質ナノ粒子が、約35:1~約25:1の総脂質:核酸重量比を有する、請求項58に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項61】
前記脂質ナノ粒子が、約32:1~約28:1の総脂質:核酸重量比を有する、請求項58に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項62】
前記脂質ナノ粒子が、約31:1~約29:1の総脂質:核酸重量比を有する、請求項58に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項63】
請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項40~62のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項64】
前記医薬が、凍結乾燥組成物である、請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記脂質ナノ粒子が、約7.4のpHのHEPES緩衝液を含む、請求項63又は64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記HEPES緩衝液が、約7mg/mL~約15mg/mLの濃度である、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記脂質ナノ粒子が、約2.0mg/mL~約4.0mg/mLのNaClを更に含む、請求項63~66のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記脂質ナノ粒子が、1つ以上の凍結保護剤を更に含む、請求項63~67のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項69】
前記1つ以上の凍結保護剤が、スクロース、グリセロール、又はスクロースとグリセロールとの組み合わせから選択される、請求項68に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項70】
前記脂質ナノ粒子が、約70mg/mL~約110mg/mLの濃度のスクロースと、約50mg/mL~約70mg/mLの濃度のグリセロールとの組み合わせを含む、請求項69に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項71】
疾患の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、治療有効量の、請求項40~62のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項63に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項72】
前記組成物又は脂質ナノ粒子が、静脈内又は筋肉内投与される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
標的細胞においてタンパク質又はポリペプチドを発現する方法であって、前記標的細胞を、請求項40~62のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項63に記載の医薬組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項74】
前記タンパク質又はポリペプチドが、抗原であり、前記抗原の発現が、インビボ免疫原性応答を提供する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
核酸の送達を必要とする対象においてそれを行う方法であって、治療有効量の前記核酸を、40~62のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子に封入することと、前記脂質ナノ粒子を前記対象に投与することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、概して、脂質に関する。具体的には、本明細書の実施形態は、生物活性分子及び治療用分子の細胞内送達を促進する、新しい脂質及び脂質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
標的送達のための様々な核酸系の治療薬は、脂質系送達ビヒクルにとっての課題を生み出す。例えば、核酸は、サイズ及びタイプが構造的に多様である。例としては、遺伝子療法で使用されるDNA、プラスミド、低分子干渉核酸(siNA)、及びRNA干渉(RNAi)で使用するためのマイクロRNA(miRNA)、アンチセンス分子、リボザイム、アンタゴミル、及びアプタマーが挙げられる。
【0003】
かかる脂質系送達ビヒクルに含むためのカチオン性脂質及びイオン化可能なカチオン性脂質の設計及び使用は、大きな利点を示している。しかしながら、これらの脂質の使用は、インビボで投与された場合、有意な副作用に寄与し得る。観察されている1つの問題には、低い生分解性及び標的組織からのクリアランスが含まれ、したがって、脂質のインビボでの蓄積が生じる。別の問題は、大量の脂質が、対象における不快感及び活性成分の治療効果の減少をもたらし得る、有害な免疫原性効果を引き起こし得ることである。多くのカチオン性脂質に関連する第3の問題は、標的への効果的な送達の割合が低いことであり、したがって、比較的低い治療効果又は低い効力をもたらす。最後に、送達ビヒクル中のカチオン性脂質が、特別に調整されたpHを有し、それにより、活性剤と製剤化し、投与中に分解から保護することができるが、ビヒクルがその標的に到達すると、活性剤を放出することができることが重要である。したがって、当該技術分野において、脂質-核酸送達系の特別な必要性を満たすことができる新しい脂質の開発の必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、疾患を治療するための核酸及び他の治療剤の脂質系送達に有用な、本明細書に記載の式(I)の脂質を提供する。これら及び他の使用は、当業者には明らかであろう。主題技術の追加的な特徴及び利点は以下の説明に記載され、部分的には、説明から明らかになるか、又は主題技術の実施によって学習され得る。主題技術の利点は、本明細書の書面による説明及び実施形態、並びに添付図面で具体的に指摘される構造によって実現及び達成されるであろう。
【0005】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的であり、また主題技術の更なる説明を提供することが意図されていることが理解されるべきである。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を提供し、
【化1】
式中、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-であり、mが、4~11であり、L及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、若しくは(CH-O-(CHであり、p及びqが各々独立して、1~3であり、Rは、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンであり、R及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルであり、Xは、O又はSであり、nは、0~2である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、複数のリガンドを含む脂質ナノ粒子を提供し、各リガンドは独立して、本明細書に記載の化合物であり、複数のリガンドは、自己集合して、内部及び外部を含む脂質ナノ粒子を形成する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、方法は、治療有効量の、本明細書に記載の化合物、本明細書に記載の脂質ナノ粒子、又は本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、核酸の送達を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、方法は、治療有効量の核酸を、本明細書に記載の脂質ナノ粒子に封入することと、脂質ナノ粒子を対象に投与することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.一般
主題技術の様々な構成は、本開示から当業者には容易に明らかになり、主題技術の様々な構成は、例示として示され、かつ説明されることが理解される。当然のことながら、主題技術は、その他の構成及び異なる構成の能力を有し、そしてそのいくつかの詳細は全て、主題技術の範囲から逸脱することなく、様々な他の点で修正することができる。したがって、概要及び発明を実施するための形態は、本質的に例示とみなされ、制限的とみなされるべきではない。
【0012】
以下に記載される発明を実施するための形態は、主題技術の様々な構成の説明として意図されており、主題技術が実践され得る唯一の構成を表すことを意図していない。添付図面は本明細書に組み込まれ、発明を実施するための形態の一部を構成する。発明を実施するための形態には、主題技術の完全な理解を提供する目的での具体的な詳細が含まれる。しかしながら、当業者には、主題技術がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることが明らかであろう。一部の事例では、周知の構造及び構成要素は、主題技術の概念を不明瞭にすることを回避するために、ブロック図の形態で示されている。同様の構成要素は、理解の簡単のために同一の要素番号でラベル付けされる。
【0013】
II.定義
本明細書の様々な箇所で、本開示の化合物の置換基が、群又は範囲で開示される。本開示は、こうした群及び範囲の一員のありとあらゆる個々の部分組み合わせを含むことが特に意図される。例えば、「C1-6アルキル」という用語は、メチル、エチル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、及びCアルキルを個々に開示することを特に意図している。
【0014】
「~と組み合わせて投与する」又は「~と組み合わせた投与」という語句は、2つ以上の薬剤が、患者に対する各薬剤の効果の重複があってもよいように、同時に又は間隔内で対象に投与されることを意味する。いくつかの実施形態では、それらは、互いに約60、30、15、10、5、又は1分以内に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤の投与は、組み合わせ効果(例えば、相乗効果)が達成されるように、相互十分に近い間隔が置かれる。
【0015】
1つ以上の興味のある値に適用される「およそ」又は「約」という用語は、記載された参照値と類似した値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、別段の記載がない限り、又は別の方法で文脈から明らかでない限り、記載された基準値のいずれかの方向(その値から超又は未満)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満内に収まる値の範囲を指す(ただし、そのような数が可能性のある値の100%を超えることになる場合を除く)。
【0016】
特許請求の範囲において、「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」などの冠詞は、相反することが示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ以上を意味する場合がある。1つ以上の群のメンバーの間に「又は」を含む特許請求の範囲又は説明は、群のメンバーの1つ、2つ以上、又は全てが、相反することが示されない限り、又は別の方法で文脈から明白でない限り、所与の生成物又はプロセスに存在するか、採用されるか、又は別の方法で関連する場合に、充足されるとみなされる。本開示は、群の厳密に1つのメンバーが所与の生成物又はプロセスに存在するか、採用されるか、又は別の方法で関連する実施形態を含む。本開示は、群のメンバーの2つ以上又は全てが所与の生成物又はプロセスに存在するか、採用されるか、又は別の方法で関連する実施形態を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有してもよい(本明細書に現れるときは常に、「1~20」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指し、例えば、「1~20個の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などからなってもよく、最大20個の炭素原子を含むが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の発生も包含することを意味する)。アルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中サイズのアルキルであってもよい。アルキル基はまた、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルとすることも可能である。アルキル基は、「C1-4アルキル」又は類似の指定として指定されてもよい。一例としてのみであるが、「C1-4アルキル」は、アルキル鎖に1~4個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルからなる群から選択される。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらにいかなるやり方でも限定されない。
【0018】
「アルキレン」とは、示される炭素原子の数を有し、少なくとも2つの他の基を結合する、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族ラジカル、すなわち二価炭化水素ラジカルを指す。アルキレンに結合された2つの部分は、アルキレン基の同じ原子又は異なる原子に結合され得る。例えば、直鎖アルキレンは、-(CH-の二価ラジカルであり得、nは、1、2、3、4、5、又は6である。代表的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、sec-ブチレン、ペンチレン、及びヘキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。アルキレン基は、置換又は非置換であり得る。
【0019】
「低級アルキル」という用語は、鎖が直鎖又は分岐鎖であってもよい鎖内に1~6個の炭素を有する基を意味する。好適なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、及びヘキシルが挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アミノ」という用語は、-N(RN1を表し、各RN1は、独立して、H、OH、NO、N(RN2、SOORN2、SON2、SORN2、N保護基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アルカリル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、カルボキシアルキル(例えば、O-保護基で任意選択的に置換された、例えば、任意選択的に置換されたアリールアルコキシカルボニル基若しくは本明細書に記載の任意のもの)、スルホアルキル、アシル(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、若しくは本明細書に記載の他のもの)、アルコキシカルボニルアルキル(例えば、O-保護基で任意選択的に置換された、例えば、任意選択的に置換されたアリールアルコキシカルボニル基若しくは本明細書に記載の任意のもの)、ヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール)、又はアルキルヘテロシクリル(例えば、アルキルヘテロアリール)であり、これらの列挙されたRN1基の各々は、各基について本明細書に定義されるように、任意選択的に置換され得るか、又は2つのRN1を組み合わせて、ヘテロシクリル若しくはN保護基を形成することができ、各RN2は、独立して、H、アルキル、又はアリールである。本開示のアミノ基は、非置換アミノ(すなわち、-NH)又は置換アミノ(すなわち、-N(R′))であり得る。好ましい実施形態では、アミノは、-NH又は-NHRN1であり、RN1は、独立して、OH、NO、NH、NRN2 、SOORN2、SON2、SORN2、アルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アシル(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、若しくは本明細書に記載の他のもの)、アルコキシカルボニルアルキル(例えば、t-ブトキシカルボニルアルキル)、又はアリールであり、各RN2は、H、C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、又はC1-10アリールであり得る。
【0021】
「アニオン性脂質」という用語は、生理的pHで負に荷電した脂質を意味する。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に結合された他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
一連の項目の前に置かれ、項目のいずれかを分離する「及び(and)」又は「又は(or)」という用語を伴う「少なくとも1つの」という語句は、リストの各メンバー(すなわち、各項目)ではなく、全体としてリストを修飾する。「少なくとも1つの」という語句は、列挙された各項目のうちの少なくとも1つの選択を必要とせず、むしろ、この語句は、項目のうちのいずれか1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の各々のうちの少なくとも1つのうちの少なくとも1つを含む意味を可能にする。一例として、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B又はCのうちの少なくとも1つ」という語句は各々、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、A、B、及びCの任意の組み合わせ、並びに/又はA、B、及びCの各々のうちの少なくとも1つを指す。
【0023】
「含む(include)」、「有する(have)」、又はそれに類する用語が記載又は特許請求の範囲で使用され、こうした用語は、「含む(comprise)」という用語が特許請求の範囲の移行語として用いられる場合、「含む(comprise)」という用語と同様の様態で包括的であることが意図される。
【0024】
単数形の要素への言及は、特に明記されない限り、「1つのみ」を意味することを意図するものではなく、むしろ「1つ以上」を意味することを意図する。男性の代名詞(例えば、彼の)には、女性及び中性の性別(例えば、彼女の及びその)が含まれ、その逆も同様である。「いくつかの」という用語は、1つ以上を指す。下線付き及び/又は斜体の見出し及び小見出しは、便宜上のみ使用され、主題技術を限定せず、また主題技術の記載の解釈に関連しては言及されない。当業者に既知であるか、又は後に既知となる、本開示全体を通して記載される様々な構成の要素に対する全ての構造的及び機能的均等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、主題技術によって包含されることが意図される。更に、本明細書に開示されるいかなる開示も、かかる開示が上記の記載に明示的に列挙されているか否かにかかわらず、一般公衆専用であることを意図するものではない。
【0025】
「カチオン性脂質」という用語は、正の親水性頭部基、1つ、2つ、3つ以上の疎水性脂肪酸又は脂肪アルキル鎖、及びこれら2つのドメイン間のコネクタを有する、両親媒性脂質及びその塩を意味する。イオン性カチオン性脂質又はプロトン化可能なカチオン性脂質は、典型的に、そのpKaを下回るpHでプロトン化(すなわち、正に荷電)され、pKaを上回るpHで実質的に中性である。好ましいイオン性カチオン性脂質は、生理的pHよりも低いpKaを有する脂質であり、典型的に約7.4である。本開示のカチオン性脂質はまた、滴定可能なカチオン性脂質と称されてもよい。カチオン性脂質は、プロトン化可能な三級アミン(例えば、pH滴定可能な)頭部基を有する「アミノ脂質」とすることができる。いくつかのアミノ例示的なアミノ脂質は、C18アルキル鎖を含むことができ、各アルキル鎖は、独立して、0~3個(例えば、0、1、2、又は3個)の二重結合、及び頭部基とアルキル鎖との間にエーテル結合、エステル結合、又はケタール結合を有する。かかるカチオン性脂質としては、DSDMA、DODMA、DLinDMA、DLenDMA、γ-DLenDMA、DLin-K-DMA、DLin-K-C2-DMA(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られる)、DLin-K-C3-DM A、DLin-K-C4-DMA、DLen-C2K-DMA、y-DLen-C2K-DMA、DLin-M-C2-DMA(MC2としても知られる)、DLin-M-C3-DMA(MC3としても知られる)、及び(DLin-MP-DMA)(1-Bl 1としても知られる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「含む」という用語は、開かれたものであることが意図され、追加の要素又は工程を含むことを許容するが、必要とはしない。本明細書において「含む(comprising)」という用語が使用されるときは、それゆえに「からなる(consisting of)」という用語も包含され、かつ開示される。
【0027】
「と組み合わせて」という用語は、本開示の脂質製剤化されたmRNAを、本開示の治療方法において他の薬剤とともに投与することを意味し、本開示の脂質製剤化されたmRNA及び他の薬剤が、別個の剤形で逐次的に若しくは同時に投与されるか、又は同じ剤形で同時に投与されることを意味する。
【0028】
本明細書に記載される実施例で使用される「市販の化学物質」という用語及び化学物質は、標準的な商業的供給源から得られてもよく、そのような供給源としては、例えば、Acros Organics(Pittsburgh,Pa.)、Sigma-Adrich Chemical(Milwaukee,Wis.)、Avocado Research(Lancashire,U.K.)、Bionet(Cornwall,U.K.)、Boron Molecular(Research Triangle Park,N.C.)、Combi-Blocks(San Diego,Calif.)、Eastman Organic Chemicals、Eastman Kodak Company(Rochester,N.Y.)、Fisher Scientific Co.(Pittsburgh,Pa.)、Frontier Scientific (Logan,Utah)、ICN Biomedicals,Inc.(Costa Mesa,Calif.)、Lancaster Synthesis(Windham,N.H.)、Maybridge Chemical Co.(Cornwall,U.K.)、Pierce Chemical Co.(Rockford,Ill.)、Riedel de Haen(Hannover,Germany)、Spectrum Quality Product,Inc.(New Brunswick,N.J.)、TCI America(Portland,Or.)、及びWako Chemicals USA,Inc.(Richmond,Va.)が挙げられる。
【0029】
「化学文献に記載される化合物」という語句は、当業者には既知のように、化学化合物及び化学反応を対象とする参考書及びデータベースを介して特定され得る。本明細書に開示される化合物の調製に有用な反応物質の合成を詳述する、又は本明細書に開示される化合物の調製を記載する記事への参照を提供する、好適な参考文献及び論文としては、例えば、“Synthetic Organic Chemistry”,John Wiley and Sons,Inc.New York、S.R.Sandler et al,“Organic Functional Group Preparations,”2nd Ed.,Academic Press,New York,1983、H.O.House,“Modern Synthetic Reactions,”2nd Ed.,W.A.Benjamin,Inc.Menlo Park,Calif.,1972、T.L.Glichrist,“Heterocyclic Chemistry,”2nd Ed.John Wiley and Sons,New York,1992、J.March,“Advanced Organic Chemistry:reactions,Mechanisms and Structure,”5th Ed.,Wiley Interscience,New York,2001が挙げられ、具体的かつ類似の反応物質はまた、ほとんどの公共図書館及び大学図書館で入手可能である、Chemical Abstract Service of the American Chemical Societyによって調製された既知の化学物質の索引を通して、並びにオンラインデータベース(更なる詳細については、American Chemical Society、Washington,D.C.に連絡することが可能である)を通して特定され得る。既知であるがカタログで市販されていない化学物質は、カスタム化学合成企業によって調製されてもよく、ここで、標準化学物質供給企業の多く(上記に列挙したものなど)は、カスタム合成サービスを提供する。
【0030】
本明細書で使用される場合、薬剤の「有効量」という用語は、有益な又は所望の結果、例えば、臨床結果をもたらすのに十分な量であり、そのため、「有効量」はそれが適用される状況に依存する。例えば、がんを治療する薬剤を投与する文脈では、薬剤の有効量は、例えば、薬剤の投与なく得られた応答と比較して、本明細書に定義されるようながんの治療を達成するのに十分な量である。
【0031】
「完全に封入された」という用語は、核酸-脂質粒子中の核酸(例えば、mRNA)が、遊離RNAを有意に分解するであろう血清又はヌクレアーゼアッセイへの曝露後に有意に分解されないことを意味する。完全に封入されると、通常では遊離核酸の100%を分解するであろう処理で、好ましくは粒子中の核酸の25%未満が分解され、より好ましくは10%未満が分解され、最も好ましくは5%未満が分解される。「完全に封入された」は、核酸脂質粒子が、インビボ投与時にその成分部分へと急速に分解しないことも意味する。
【0032】
「化合物」という用語は、示される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意味する。
【0033】
「送達」という用語は、化合物、物質、実体、部分、積荷、又はペイロードを送達する行為又は方法を指す。
【0034】
「特徴」という用語は、特性(characteristic)、特性(property)、又は特有の要素を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、一部分を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化することによって得られたポリペプチドを含んでもよい。
【0036】
「疎水性脂質」という用語は、長鎖飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基、並びに1つ以上の芳香族基、脂環式基、又は複素環式基によって任意選択的に置換されたかかる基が挙げられるが、これらに限定されない、無極性基を有する化合物を意味する。好適な例としては、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、及び1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含み、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする有機化合物を意味する。脂質は通常、少なくとも3つのクラスに分けられる:(1)脂肪及び油並びにワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」、及び(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0038】
「脂質送達ビヒクル」という用語は、治療用核酸(例えば、mRNA)を興味のある標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達するために使用することができる脂質製剤を意味する。脂質送達ビヒクルは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、粒子の凝集を防止するコンジュゲートされた脂質(例えば、PEG脂質)、及び任意選択的にコレステロールから形成することができる核酸脂質粒子とすることができる。典型的には、治療用核酸(例えば、mRNA)は、粒子の脂質部分に封入され、それによって酵素分解から保護されてもよい。
【0039】
「脂質封入」という用語は、完全封入、部分封入、又はその両方を有するmRNAなどの治療用核酸を提供する脂質粒子を意味する。好ましい実施形態では、核酸(例えば、mRNA)は、脂質粒子内に完全に封入される。
【0040】
「両親媒性脂質(amphipathic lipid)」又は「両親媒性脂質(amphiphilic lipid)」という用語は、脂質材料の疎水性部分が疎水性相に配向する一方で、親水性部分が水相に配向する材料を意味する。親水性の特性は、極性、又は炭水化物、リン酸塩、カルボン酸、スルファト、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシル、及び他の同様の基などの荷電基の存在に由来する。疎水性は、長鎖飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基、並びに1つ以上の芳香族基、脂環式基、又は複素環式基によって置換されたかかる基が挙げられるがこれらに限定されない無極性基の包含によって与えられることが可能である。両親媒性化合物の例としては、リン脂質、アミノ脂質、及びスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「リンカー」又は「結合部分」という用語は、原子の群、例えば、10~100個の原子を指し、またそれらは、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、及びイミンなど、しかしこれらに限定されない原子又は基からなることができる。リンカーは、アミノ酸配列への組み込みに干渉しない十分な長さであってもよい。リンカーに組み込むことができる化学基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロシクリルが挙げられるがそれらに限定されず、それらの各々は、本明細書に記載されるように、任意選択的に置換することができる。リンカーの例としては、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレン又はプロピレングリコール単量体単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、又はテトラエチレングリコール)、及びデキストランポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。その他の例としては、還元剤又は光分解を使用して開裂され得る、リンカー内の開裂可能な部分、例えば、ジスルフィド結合(-S-S-)又はアゾ結合(-N=N-)が挙げられるが、これらに限定されない。選択的に開裂可能な結合の非限定的な例としては、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、又は他の還元剤の使用によって開裂することができるアミド結合、及び/又は光分解、並びに、例えば、酸性加水分解若しくは塩基性加水分解によって開裂することができるエステル結合が挙げられる。
【0042】
哺乳動物という用語は、ヒト若しくは他の哺乳動物を意味するか、又はヒトを意味する。
【0043】
「メッセンジャーRNA」(mRNA)という用語は、興味のあるタンパク質又はポリペプチドをコードし、インビトロ、インビボ、インサイチューで、又はエクスビボで、コードされた興味のあるタンパク質又はポリペプチドを産生するように翻訳することができる任意のポリヌクレオチドを指す。
【0044】
「修飾」という用語は、本開示の分子の状態又は構造の変化を指す。分子は、化学的、構造的、及び機能的を含む多くの方法で修飾される場合がある。一実施形態では、核酸活性成分は、例えば、天然リボヌクレオチドA、U、G、及びCに関連するため、非天然ヌクレオシド及び/又はヌクレオチドの導入によって修飾される。キャップ構造などの非標準ヌクレオチドは、A、C、G、Uリボヌクレオチドの化学構造とは異なる場合があるが、「修飾」とは考えられない。
【0045】
「天然に存在する」という用語は、人工的な補助を有しないで自然界に存在することを意味する。
【0046】
「非ヒト脊椎動物」という用語は、野生種及び家畜種を含むホモサピエンスを除く全ての脊椎動物を含む。非ヒト脊椎動物の例としては、哺乳動物、例えばアルパカ、バンテン、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、イヌ、ロバ、ガヤル、ヤギ、モルモット、ウマ、ラマ、ラバ、ブタ、モルモット、ウサギ、トナカイ、ヒツジ、水牛、及びヤクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「患者」という用語は、治療を求めるか、又は治療を必要とする対象、治療が必要とされる患者、治療を受けている対象、又は治療を受ける予定の対象、又は特定の疾患若しくは状態について訓練を受けた専門家からケアを受けている対象を指す。
【0048】
「任意選択的に置換されるX」(例えば、任意選択的に置換されるアルキル)という語句は、「Xが任意選択的に置換される、X」と均等であることが意図され、(例えば、「当該アルキルが任意選択的に置換される、アルキル」)である。特徴「X」(例えば、アルキル)それ自体が任意選択的であることを意味することを意図するものではない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に匹敵する、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために使用される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」という語句は、本明細書に記載される化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁又は溶解することができるビヒクル)を指し、患者において実質的に非毒性かつ非炎症性である特性を有する。賦形剤としては、例えば、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成体又はコーティング、風味剤、香味剤、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、保存剤、印刷インク、吸収剤、懸濁剤又は分散剤、甘味料、及び水和水が挙げられてもよい。例示的な賦形剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、プレゼラチン化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「薬学的に許容可能な塩」という語句は、開示された化合物の誘導体を指し、親化合物は、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることによって)修飾される。薬学的に許容可能な塩の例としては、アミンなどの塩基性残基のミネラル塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウ脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどだけでなく、非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンも挙げられるが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどに限定されない。本開示の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、非毒性無機酸又は非毒性有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容可能な塩は、従来の化学方法によって塩基性部分又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般的に、こうした塩は、これらの化合物の遊離酸形態又は遊離塩基形態を、水中又は有機溶媒中、又は2つの混合物中の化学量論的な量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができ、一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985、p.1418,Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Wiley-VCH,2008、及びBerge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66,1-19(1977)に見られ、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
「薬物動態」という用語は、生きている生命体に投与される物質の運命の決定に関連する際の分子又は化合物の任意の1つ以上の特性を指す。薬物動態は、吸収、分布、代謝、及び排泄の程度及び速度を含むいくつかの領域に分けられる。これは一般的に、ADMEと称され、以下である。(A)吸収は血液循環に入る物質のプロセスであり、(D)分布は身体の流体及び組織全体にわたる物質の分散又は播種であり、(M)代謝(又は生体内変換)は、親化合物の娘代謝産物への不可逆的な変換であり、(E)排泄(又は排除)は、身体からの物質の除去を指す。まれに、一部の薬剤は身体組織に不可逆的に蓄積する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な溶媒和物」という用語は、好適な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれる、本開示の化合物を意味する。好適な溶媒は、投与される投与量において生理学的に忍容性がある。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、又はそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶、又は沈殿によって調製されてもよい。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、及び三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジルなどである。水が溶媒である場合、溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。
【0054】
「物理化学的」という用語は、物理的及び/又は化学的特性を意味する、又は物理的及び/又は化学的特性に関連する。
【0055】
「リン酸塩」という用語は、当業者によって理解されるその通常の意味で使用され、そのプロトン化形態、例えば、
【化2】
を含む。
本明細書で使用される場合、「一リン酸塩」、「二リン酸塩」、及び「三リン酸塩」という用語は、当業者によって理解されるような、通常の意味で使用され、プロトン化形態を含む。
【0056】
「予防」という用語は、感染、疾患、障害、及び/又は状態の発症を部分的又は完全に遅延させること、1つ以上の症状、機能、又は特定の感染、疾患、障害、及び/若しくは状態の臨床的な兆候の発症を部分的又は完全に遅延させること、特定の感染、疾患、障害、及び/若しくは状態の1つ以上の症状、機能、又は兆候の発症を部分的又は完全に遅延させること、感染、特定の疾患、障害及び/又は状態からの進行を部分的又は完全に遅延させること、並びに/又は感染、疾患、障害、及び/若しくは状態に関連する病理が進展するリスクを減少させることを指す。
【0057】
「RNA」という用語は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β-D-リボ-フラノース部分の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生RNA、並びに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は改変によって天然に存在するRNAとは異なる改変RNAを含む。そのような改変は、干渉RNAの末端への、又は内部への、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドにおける非ヌクレオチド材料の付加を含むことができる。本開示のRNA分子中のヌクレオチドはまた、天然に存在しないヌクレオチド、又は化学的に合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドを含むことができる。これらの改変RNAは、類似体又は天然に存在するRNAの類似体と称することができる。本明細書で使用される場合、「リボ核酸」及び「RNA」という用語は、siRNA、アンチセンスRNA、一本鎖RNA、マイクロRNA、mRNA、非コードRNA、及び多価RNAを含む、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含有する分子を指す。
【0058】
「試料」又は「生体試料」という用語は、その組織、細胞、又は成分部分のサブセット(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜血、尿、膣液、及び精液が挙げられるが、これらに限定されない体液)を指す。試料は、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸、及び生殖器管の外部切片、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、臓器が挙げられるがしかしこれらに限定されない、全生物体、又はその組織、細胞、若しくは成分部分のサブセット、又はその画分若しくは部分から調製された均質物、溶解物、又は抽出物を更に含んでもよい。試料は更に、タンパク質又は核酸分子などの細胞成分を含有し得る栄養ブロス又はゲルなどの培地を指す。
【0059】
「有意な(significant)」又は「有意に(significantly)」という用語は、「実質的に(substantially)」という用語と同義で使用される。
【0060】
「単回単位用量」という語句は、1回の用量/一回/単一の経路/単一の接触点、すなわち、単一の投与事象で投与される任意の治療薬の用量である。
【0061】
「siRNA」という用語又は低分子干渉RNAは、時として短干渉RNA又はサイレンシングRNAとして知られており、典型的に、miRNAと類似した18~27塩基対の長さの二本鎖RNA非コードRNA分子のクラスを指し、RNA干渉(RNAi)経路内で作動する。これは、転写後にmRNAを分解し、それによって翻訳を防止することによって相補的ヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現と干渉する。
【0062】
溶媒和物という用語は、本開示の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、水素結合を含む、様々な程度のイオン結合を伴う。ある特定の事例では、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれるときに、単離する能力を有する。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。好適な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール酸塩、メタノール酸塩などが挙げられる。
【0063】
「分割用量」という用語は、単回単位用量又は総1日用量を2回以上の用量に分割することである。
【0064】
「安定」という用語は、反応混合物から有用な純度までの単離に耐えるのに十分に堅牢であり、好ましくは有効な治療剤に製剤化することができる化合物を指す。
【0065】
「安定化する(stabilize)」、「安定化した(stabilized)」、「安定化領域(stabilized region)」という用語は、安定させる、又は安定するようになることを意味する。
【0066】
「置換」という用語は、水素以外の特定の基による置換、又は、例えば、独立して選択される各々が同一であっても異なっていてもよい、1つ以上の基、部分、若しくはラジカルによる置換を意味する。
【0067】
「実質的に」という用語は、興味のある特性(characteristic)又は特性(property)の合計又はほぼ合計の範囲又は程度を示す定性的条件を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的現象及び化学的現象は、もし存在する場合であっても、完了すること、及び/若しくは完全性に進むこと、又は絶対的な結果を達成若しくは回避することはほとんどないことを理解するであろう。したがって、本明細書では、多くの生物学的現象及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如の可能性を捕捉するために、「実質的に」という用語が使用される。
【0068】
「実質的に等しい」という語句は、用量間の時間差に関し、用語は、±2%を意味する。
【0069】
「実質的に同時に」という語句は、複数の用量に関し、用語は、2秒以内を意味する。
【0070】
「に罹患している(suffering from)」という語句は、疾患、障害、及び/又は状態「に罹患している」個人が、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状と診断されたか、あるいは疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状を示すことに関連する。
【0071】
「感受性」という語句は、疾患、及び/又は状態に対する「感受性が高い」個人が、疾患、障害、及び/又は状態は診断されていない、及び/あるいは疾患、障害、及び/又は状態の症状を示さないが、疾患又はその症状を発症する傾向を有する個人に関する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態(例えば、がん)に対する感受性が高い個人は、以下のうちの1つ以上によって特徴解析される場合がある:(1)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子変異、(2)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子多型、(3)疾患、障害、及び/又は状態に関連するタンパク質及び/若しくは核酸の発現並びに/又は活性の増加及び/若しくは減少、(4)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する習慣及び/又はライフスタイル、(5)疾患、障害、及び/又は状態についての家族歴、並びに(6)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する微生物への曝露及び/又は感染。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態に対して感受性が高い個人は、疾患、障害、及び/又は状態を発症する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態に対して感受性を有する個人は、疾患、障害、及び/又は状態を発症しない。
【0072】
「合成」という用語は、人の手によって生成、調製、及び/又は製造されることを意味する。本開示のポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又は他の分子の合成は、化学的合成又は酵素的合成であってもよい。
【0073】
「治療剤」という用語は、対象に投与されたとき、治療効果、診断効果、及び/若しくは予防効果を有し、かつ/又は所望の生物学的及び/若しくは薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。
【0074】
「治療有効量」という用語は、感染、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しているか、感染、疾患、障害、及び/又は状態に対して感受性が高い対象に投与された場合、感染、疾患、障害、及び/又は状態を治療、その症状の改善、診断、予防、及び/又はその発症を遅延させるのに十分である、送達される薬剤(例えば、核酸、薬剤、治療剤、診断剤、予防剤など)の量を意味する。
【0075】
「治療的に有効な転帰」という用語は、感染、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しているか、又は感染、疾患、障害、及び/又は状態に対して感受性が高い対象において、感染、疾患、障害、及び/又は状態を治療、その症状の改善、診断、予防、及び/又はその発症を遅延させるのに十分である転帰を意味する。
【0076】
「総1日用量」という用語は、24時間の期間に与えられる、又は処方される量である。これは、単回単位用量として投与されてもよい。
【0077】
「治療」という用語は、特定の感染、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状又は特徴の部分的又は完全な軽減、軽快、改善、緩和、その発症の遅延、その進行の阻害、その重症度の低減、及び/又はその発生率の低減を指す。例えば、がんの「治療」とは、腫瘍の生存、成長、及び/又は拡散を阻害することを指す場合がある。治療は、疾患、障害、及び/又は状態に関連する病理の発症リスクを減少させる目的で、疾患、障害、及び/若しくは状態の徴候を示さない対象、並びに/又は疾患、障害、及び/又は状態の早期の徴候のみを示す対象に投与されてもよい。
【0078】
「非修飾」という用語は、いかなる方法であれ変更される前の任意の物質、化合物、又は分子を指す。非修飾は、必ずしもではないが、野生型又は天然型の生体分子を指す場合がある。分子は、一連の修飾を受けてもよく、それによって、各修飾分子は、その後の修飾のための「非修飾」開始分子として機能してもよい。
【0079】
本明細書に記載される化合物は、非対称であってもよい(例えば、1つ以上の立体中心を有する)。別段の指示がない限り、エナンチオマー及びジアステレオマーなどの全ての立体異性体が意図される。非対称的に置換された炭素原子を含有する本開示の化合物は、光学的活性形態又はラセミ体において単離することができる。光学的活性出発材料から光学的活性形態を調製する方法は、ラセミ混合物の分解能、又はエナンチオ選択的及び/若しくは立体選択的合成によるなど、当該技術分野では既知である。オレフィン、C=N二重結合、及びこれに類するものの多くの幾何異性体も、本明細書に記載される化合物中に存在することができ、本開示ではこのような安定した異性体の全てが意図される。本開示の化合物のシス幾何異性体及びトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として、又は分離された異性体形態として単離されてもよい。
【0080】
本開示の化合物はまた、互変異性型も含む。互変異性型は、隣接する二重結合との一重結合のスワッピング及びプロトンの同時移動からもたらされる。互変異性型は、同じ経験式及び総電荷を有する異性体プロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体を含む。プロトトロピック互変異性体の例としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対、及び環状形態が挙げられ、プロトンは、1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、並びに1H-及び2H-ピラゾールなどの複素環系の2つ以上の位置を占めることができる。互変異性型は、平衡状態であってもよく、又は適切な置換によって1つの形態に立体的に係止されてもよい。
【0081】
本開示の化合物はまた、中間化合物又は最終化合物で生じる原子の同位体の全ても含む。「同位体」とは、核内の異なる数の中性子からもたらされる、同じ原子数を有するが異なる質量数を有する原子を指す。例えば、水素の同位体は、三重水素及び重水素を含む。
【0082】
本開示の化合物及び塩は、溶媒又は水分子と組み合わせて調製されて、日常的な方法によって溶媒和物及び水和物を形成することができる。
【0083】
「半減期」という用語は、核酸又はタンパク質の濃度又は活性などの量が、ある期間の開始時に測定した際のその値の半分に減少するのに必要とされる時間である。
【0084】
「インビトロ」という用語は、生命体(例えば、動物、植物、又は微生物)の中ではなく、人工的な環境内、例えば、試験管又は反応容器内、細胞培養物内、シャーレ内などで生じる事象を指す。
【0085】
「インビボ」という用語は、生命体(例えば、動物、植物、若しくは微生物、又はその細胞若しくは組織)の中で生じる事象を指す。
【0086】
「モノマー」という用語は、単一の単位、例えば、同じ又は異なるタイプの別の分子と結合してオリゴマーを形成し得る単一の核酸を指す。いくつかの実施形態では、モノマーは、非固定核酸、すなわち、UNAモノマーであってもよい。
【0087】
「中性脂質」という用語は、選択されたpHで非荷電性又は中性双性イオン性形態のいずれかで存在する脂質種を意味する。生理的pHにおいて、かかる脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが挙げられる。
【0088】
「非カチオン性脂質」という用語は、両親媒性脂質又は中性脂質又はアニオン性脂質を意味し、本明細書に記載される。
【0089】
「対象」又は「患者」という用語は、例えば、実験、診断、予防、及び/又は治療目的のために、本開示による組成物が投与されてもよい任意の生命体を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)及び/又は植物が挙げられる。
【0090】
「翻訳可能」という用語は、「発現可能」という用語と互換的に使用されてもよく、宿主細胞によってポリペプチドに変換されるポリヌクレオチド又はその一部分の能力を指す。当該技術分野で理解されるように、翻訳は、細胞の細胞質中のリボソームがポリペプチドを生成するプロセスである。翻訳では、メッセンジャーRNA(mRNA)は、リボソーム複合体中のtRNAによって復号されて、特定のアミノ酸鎖又はポリペプチドを産生する。更に、オリゴマーに関して本明細書で使用される場合、「翻訳可能」という用語は、オリゴマーの少なくとも一部分、例えば、オリゴマー配列のコード領域(コード配列又はCDSとしても知られる)が、タンパク質又はその断片に変換される能力を有することを意味する。
【0091】
治療的に有効な転帰:本明細書で使用される場合、「治療的に有効な転帰」という用語は、感染、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しているか、又は感染、疾患、障害、及び/又は状態に対して感受性が高い対象において、感染、疾患、障害、及び/又は状態を治療、その症状の改善、診断、予防、及び/又はその発症を遅延させるのに十分である転帰を意味する。
【0092】
「単位用量」という用語は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量を指す。活性成分の量は、概して、対象に投与されることになる活性成分の用量、及び/又はそのような用量の1/2又は1/3が挙げられるが、しかしこれらに限定されない、そのような用量の好都合な画分と等しくてもよい。
【0093】
本開示は、ある特定の実施形態に関連して記載されており、多くの詳細が例示の目的で説明されているが、本開示は、追加の実施形態を含み、本明細書に記載される詳細の一部は、本開示から逸脱することなく大幅に変化する場合があることが、当業者には明らかであろう。本開示は、このような追加の実施形態、修飾、及び均等物を含む。特に、本開示は、様々な例示的な構成要素及び実施例の特徴、用語、又は要素の任意の組み合わせを含む。
【0094】
III.化合物
いくつかの実施形態では、本開示は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を提供し、
【化3】
式中、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-であり、mが、4~11であり、L及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、若しくは(CH-O-(CHであり、p及びqが各々独立して、1~3であり、Rは、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンであり、R及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルであり、Xは、O又はSであり、nは、0~2である。
【0095】
いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-である。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-である。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、及び(CH(CHCHCH-から選択される。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-である。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCHCH-である。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、及び(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、(CH(CHCH-又は(CH(CHCHCH-であり、Rは、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、及び(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、mは、4~11である。いくつかの実施形態では、mは、4~9である。いくつかの実施形態では、mは、4~8である。いくつかの実施形態では、mは、5~7である。いくつかの実施形態では、mは、5である。いくつかの実施形態では、mは、6である。いくつかの実施形態では、mは、7である。
【0097】
いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、又は(CH-O-(CHである。いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、C1-5アルキレン又は(CH-O-(CHである。いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、C2-5アルキレン又は(CH-O-(CHである。いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、C2-5アルキレンである。いくつかの実施形態では、L及びLは各々、プロピレンである。いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、C2-5アルキレンである。いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、(CH-O-(CHである。いくつかの実施形態では、L及びLは、各々独立して、存在しない。
【0098】
いくつかの実施形態では、p及びqは、各々独立して、1~3である。いくつかの実施形態では、p及びqは、各々独立して、1~2である。いくつかの実施形態では、p及びqは、各々独立して、1である。いくつかの実施形態では、p及びqは、各々独立して、2である。いくつかの実施形態では、p及びqは、各々独立して、3である。
【0099】
いくつかの実施形態では、Rは、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンである。いくつかの実施形態では、Rは、直鎖C2-5アルキレンである。いくつかの実施形態では、Rは、C3-5アルキレンである。いくつかの実施形態では、Rは、C1-3アルキレンである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピレンである。
【0100】
いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、C1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、C1-3アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、メチルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、各々独立して、Hである。
【0101】
いくつかの実施形態では、Xは、O又はSである。いくつかの実施形態では、Xは、Oである。いくつかの実施形態では、Xは、Sである。
【0102】
いくつかの実施形態では、nは、0~2である。いくつかの実施形態では、nは、0~1である。いくつかの実施形態では、nは、0である。いくつかの実施形態では、nは、1である。いくつかの実施形態では、nは、2である。
【0103】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化4】
【化5】
、又はその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-193である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-200である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-201である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-202である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-209である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-210である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-230である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-231である。いくつかの実施形態では、化合物は、ATX-232である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明は、核酸と、本発明の化合物と、を含む、脂質組成物を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、siRNA、mRNA、自己複製RNA、DNAプラスミド、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される。いくつかの実施形態では、核酸は、目的の治療用タンパク質をコードするコード領域を含むmRNA又は自己複製RNAである。いくつかの実施形態では、目的の治療用タンパク質は、酵素、及び抗体、抗原、受容体、又はトランスポーターである。いくつかの実施形態では、目的の治療用タンパク質は、遺伝子編集酵素である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集酵素は、TALEN、CRISPR、メガヌクレアーゼ、又はジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、リポソーム、リポプレックス、又は脂質ナノ粒子を含む。
【0106】
IV.脂質製剤及びナノ粒子
脂質系製剤
標的細胞への核酸の細胞内送達に基づく療法は、細胞外バリア及び細胞内バリアの両方に直面する。実際に、裸の核酸材料は、それらの毒性、血清中での低い安定性、急速な腎クリアランス、標的細胞による取り込みの低減、食細胞の取り込み、及び免疫応答を活性化するそれらの能力、それらの臨床開発を妨げる全ての特徴に起因して、簡単に全身投与することができない。外因性核酸材料(例えば、mRNA)がヒト生物系に入るとき、それは、細網内皮系(RES)によって外来病原体として認識され、そして血管系内又は血管系外の標的細胞に遭遇する機会を有する前に血液循環から除去される。血流中の裸の核酸の半減期は、おおよそ数分であることが報告されている(Kawabata K,Takakura Y,Hashida MPharm Res.1995 Jun;12(6):825-30)。化学修飾及び適正な送達方法は、RESによる取り込みを低減し、かつ遍在するヌクレアーゼによる分解から核酸を保護することができ、これは核酸ベースの療法の安定性及び有効性を増加させる。加えて、RNA又はDNAは、細胞による取り込みについては好ましくない、表面でもアニオン性であるアニオン性親水性ポリマーである。したがって、核酸ベースの療法の成功は、主に、遺伝子材料を標的細胞へと効率的かつ効果的に送達し、かつ最小限の毒性かつインビボで十分なレベルの発現を得ることができるビヒクル又はベクターの開発に依存する。
【0107】
更に、標的細胞への内部移行時に、核酸送達ベクターは、細胞内バリアによって、エンドソームの取り込み、リソソーム分解、ベクターからの核酸の開梱、核膜を横切る移行(DNAについて)、及び細胞質での放出(RNAについて)を含む課題を突き付けられる。したがって、順調な核酸ベースの療法は、遺伝子の発現などの十分なレベルの望ましい活性を得るために、ベクターが核酸を細胞内側の標的部位に送達する能力に依存する。
【0108】
いくつかの遺伝子療法は、ウイルス送達ベクター(例えば、AAV)を首尾よく利用することができるが、脂質系製剤は、その生体適合性及び大規模な生産の簡単さに起因して、RNA及び他の核酸化合物のための最も有望な送達システムの1つとしてますます認識されている。脂質系の核酸療法の最も重要な進歩の1つは、パチシラン(ALN-TTR02)が最初のsiRNA治療薬として米国食品医薬品局(FDA)及び欧州委員会(EC)から承認された2018年8月に生じた。ALN-TTR02は、いわゆる安定した核酸脂質粒子(SNALP)トランスフェクション技術に基づくsiRNA製剤である。パチシランの成功にもかかわらず、脂質製剤を介した、mRNAを含む核酸治療薬の送達は、依然として開発中である。脂質送達ビヒクルにおけるmRNAの使用は、COVID-19のパンデミックの結果として急速に注目されるようになり、COVID-19のスパイクタンパク質をコードするmRNAを送達するいくつかのワクチンは、強力な保護能力を示す。かかる脂質系のmRNAワクチンには、Pfizer及びBioNtechのBNT162b2並びにModernaのmRNA-1273が含まれ、これらは、世界中で緊急使用の認可を受けている。
【0109】
核酸治療薬のための一部の当技術分野で認識されている脂質製剤送達ビヒクルとしては、様々な実施形態による、ポリマー系担体、(ポリエチレンイミン(PEI)、脂質ナノ粒子及びリポソームなど)、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム、多小胞リポソーム、プロテオリポソーム、天然及び合成の両方に由来するエクソソーム、天然、合成及び半合成の層状体、ナノ粒子、ミセル、及びエマルションが挙げられる。これらの脂質製剤は、それらの構造及び組成物が異なることが可能であり、また急速に発展する分野で期待することができるため、当該技術分野では、単一のタイプの送達ビヒクルを説明するためにいくつかの異なる用語が使用されている。同時に、脂質製剤の用語は、科学文献全体を通してそれらの意図される意味に関して変化しており、この一貫性のない使用は、脂質製剤のいくつかの用語の正確な意味に関して混乱を引き起こしている。いくつかの潜在的な脂質製剤の中でも、リポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子は、本開示の目的のために詳細に具体的に記載され、かつ本明細書で定義される。
【0110】
リポソーム
従来のリポソームは、少なくとも1つの二重層及び内部水性区画からなる小胞である。リポソームの二重層膜は、典型的に、空間的に分離された親水性ドメイン及び疎水性ドメインを含む合成起源又は天然起源の脂質などの両親媒性分子によって形成される(Lasic,Trends Biotechnol.,16:307-321,1998)。リポソームの二重層膜はまた、両親媒性ポリマー及び界面活性剤(例えば、ポリメロソーム(polymerosome)、ニオソームなど)によっても形成することができる。それらは、一般的に球状小胞として存在し、20nm~数ミクロンのサイズの範囲である可能性がある。リポソーム製剤は、コロイド分散体として調製することができ、又は安定性リスクを低減し、かつリポソーム系薬剤の貯蔵寿命を改善するために凍結乾燥することができる。リポソーム組成物を調製する方法は、当技術分野で知られており、当業者の技能範囲内である。
【0111】
1つの二重層のみを有するリポソームは、単層と称され、2つ以上の二重層を有するリポソームは、多層と称される。リポソームの最も一般的なタイプは、小型単層小胞(SUV)、大型単層小胞(LUV)、及び多層小胞(MLV)である。リポソームとは対照的に、リソソーム、ミセル、及び逆ミセルは、脂質の単層から構成される。一般的に、リポソームは、単一の内部区画を有すると考えられるが、一部の製剤は、いくつかの非同心性脂質二重層によって分離された多数の不連続な内部水性区画からなる、多小胞リポソーム(MVL)とすることができる。
【0112】
リポソームは、リポソームが基本的には生体膜の類似体であり、また天然リン脂質及び合成リン脂質の両方から調製することができることを考慮して、その優れた生体適合性のために、リポソームは薬剤送達ビヒクルとして長い間認識されてきた(Int.J.Nanomedicine.2014;9:1833-1843)。薬剤送達ビヒクルとしてのそれらの使用では、リポソームは疎水性膜によって囲まれた水溶液コアを有するため、コアに溶解した親水性溶質は、二重層を容易に通過することができず、疎水性化合物は二重層と会合する。したがって、リポソームには、疎水性分子及び/又は親水性分子を搭載することができる。RNAなどの核酸を担持するためにリポソームが使用される場合、核酸は水相においてリポソーム区画内に含有される。
【0113】
カチオン性リポソーム
リポソームは、カチオン性脂質、アニオン性脂質、及び/又は中性脂質から構成することができる。リポソームの重要なサブクラスとして、カチオン性リポソームは、正に荷電した脂質、すなわちより具体的には、カチオン性基及び親油性部分の両方を含む脂質から全体的又は部分的に作製されるリポソームである。リポソームについて上記で描かれた一般的な特性に加えて、カチオン性リポソームで使用されるカチオン性脂質の正に荷電した部分は、いくつかの利点及びいくつかの固有の構造的特徴を提供する。例えば、カチオン性脂質の親油性部分は疎水性であり、したがって、リポソームの水性内部から離れるようにそれ自体を方向付け、そして他の非極性種及び疎水性種と会合する。反対に、カチオン性部分は、水性媒体と、そしてより重要なことに、カチオン性リポソームの水性内部で複合体化することができる極性分子及び種と会合する。これらの理由から、カチオン性リポソームは、静電相互作用を介して負に荷電した核酸に対するそれらの好ましさにより、遺伝子治療での使用についてますます研究され、生体適合性、低毒性、及びインビボ臨床用途に必要とされる大規模な生産の可能性を提供する複合体をもたらす。カチオン性リポソームでの使用のために好適なカチオン性脂質は、以下にリストされている。
【0114】
脂質ナノ粒子
リポソーム及びカチオン性リポソームとは対照的に、脂質ナノ粒子(LNP)は、固相で化合物を封入する脂質の単一の単層又は二重層を含む構造を有する。したがって、リポソームとは異なり、脂質ナノ粒子は、その内部に水相又は他の液相を有しないが、むしろ、二重層シェル又は単層シェルからの脂質は、内部化合物に直接的に複合体化され、それによって固体コア内にそれを封入する。脂質ナノ粒子は典型的に、形状及びサイズの比較的均一な分散を有する球状小胞である。脂質粒子をナノ粒子として認定するサイズに関しては情報源によって異なるが、脂質ナノ粒子が10nm~1000nmの範囲の直径を有することができることで、いくらかの重複した一致がみられる。しかしながら、より一般的には、それらは120nmよりも小さい、又は100nmよりも小さいと考えられる。
【0115】
脂質ナノ粒子核酸送達システムについては、脂質シェルは、核酸コアの負に荷電した骨格と複合体化しかつ会合することができるイオン性カチオン性脂質を含むように製剤化することができる。約7未満の見かけのpKa値を有するイオン性カチオン性脂質は、核酸の負に荷電した骨格と複合体化し、それが正に荷電したイオン化脂質のpKa未満のpH値で脂質ナノ粒子に搭載するためのカチオン性脂質を提供する、という利点を有する。次いで、生理的pH値では、脂質ナノ粒子は、比較的中性の外部を適合することができ、静脈内投与後の粒子の循環半減期の有意な増加を可能にする。核酸送達の文脈において、脂質ナノ粒子は、高い核酸封入効率、強力なトランスフェクション、治療薬を送達するための組織への浸透の改善、及び細胞毒性及び免疫原性の低いレベルを含む、他の脂質系核酸送達システムよりも多くの利点を提供する。
【0116】
核酸用の脂質ナノ粒子送達システムの開発に先立ち、カチオン性脂質が、核酸医薬品の送達のための合成材料として広く研究されてきた。これらの早期の取り組みでは、生理的pHで一緒に混合した後、核酸をカチオン性脂質によって凝縮して、リポプレックスとして知られる脂質-核酸複合体を形成した。しかしながら、リポプレックスは不安定であることが証明され、またサブミクロンスケールから数ミクロンの範囲の幅広いサイズ分布によって特徴解析された。Lipofectamine(登録商標)試薬などのリポプレックスは、インビトロトランスフェクションに対するかなりの有用性を見出した。しかしながら、これらの第一世代リポプレックスがインビボで有用であることは証明されていない。大きな粒子サイズ及び正電荷(カチオン性脂質によって付与される)は、急速な血漿クリアランス、溶血性、及び他の毒性、並びに免疫系活性化をもたらす。
【0117】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、式Iの脂質:
【化6】
、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含み、式中、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-であり、mが、4~11であり、L及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、若しくは(CH-O-(CHであり、p及びqが各々独立して、1~3であり、Rは、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンであり、R及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルであり、Xは、O又はSであり、nは、0~2である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に列挙される任意の1つ以上の脂質は、明示的に除外される場合がある。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示は、複数のリガンドを含む脂質ナノ粒子を提供し、各リガンドは独立して、本明細書に記載の化合物であり、複数のリガンドは、自己集合して、内部及び外部を含む脂質ナノ粒子を形成する。
【0120】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の平均サイズは、約100nmである。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の平均サイズは、約100nm未満である。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の平均粒径は、約40nm~約100nmである。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の平均粒径は、約50nm~約90nmである。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の平均粒径は、約55nm~約85nmである。
【0121】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、内部に核酸を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸は、siRNA、mRNA、自己複製RNA、DNAプラスミド、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される。いくつかの実施形態では、核酸は、目的の治療用タンパク質をコードするコード領域を含むmRNA又は自己複製RNAである。いくつかの実施形態では、目的の治療用タンパク質は、酵素、及び抗体、抗原、受容体、又はトランスポーターである。いくつかの実施形態では、目的の治療用タンパク質は、遺伝子編集酵素である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集酵素は、TALEN、CRISPR、メガヌクレアーゼ、又はジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。
【0122】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、内部にsiRNA又はmRNAを更に含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、内部にmRNAを更に含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、以下に記載されるヘルパー脂質を更に含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載のPEG-脂質コンジュゲートを更に含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約45モル%~65モル%の本発明の化合物、約2モル%~約15モル%のヘルパー脂質、約20モル%~約42モル%のコレステロール、及び約0.5モル%~約3モル%のPEG-脂質コンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約50モル%~約61モル%の本発明の化合物、約5モル%~約9モル%のヘルパー脂質、約29モル%~約38モル%のコレステロール、及び約1モル%~約2モル%のPEG-脂質コンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約56モル%~約58モル%の本発明の化合物、約6モル%~約8モル%のDSPC、約31モル%~約34モル%のコレステロール、及び約1.25モル%~約1.75モル%のPEG-脂質コンジュゲートを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約50モル%~61モル%の本発明の化合物、約2モル%~約12モル%のDSPC、約25モル%~約42モル%のコレステロール、及び約0.5モル%~約3モル%のPEG2000-DMGを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約50モル%~約61モル%の本発明の化合物、約5モル%~約9モル%のDSPC、約29モル%~約38モル%のコレステロール、及び約1モル%~約2モル%のPEG2000-DMGを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約56モル%~約58モル%の本発明の化合物、約6モル%~約8モル%のDSPC、約31モル%~約34モル%のコレステロール、及び約1.25モル%~約1.75モル%のPEG2000-DMGを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約50:1~約10:1の総脂質:核酸重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約40:1~約20:1の総脂質:核酸重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約35:1~約25:1の総脂質:核酸重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約32:1~約28:1の総脂質:核酸重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約31:1~約29:1の総脂質:核酸重量比を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約50:1~約10:1の総脂質:mRNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約40:1~約20:1の総脂質:mRNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約35:1~約25:1の総脂質:mRNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約32:1~約28:1の総脂質:mRNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約31:1~約29:1の総脂質:mRNA重量比を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子ナノ粒子は、約7.4のpHのHEPES緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、HEPES緩衝液は、約7mg/mL~約15mg/mLの濃度である。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約2.0mg/mL~約4.0mg/mLのNaClを更に含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、1つ以上の凍結保護剤を更に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の凍結保護剤は、スクロース、グリセロール、又はスクロースとグリセロールとの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約70mg/mL~約110mg/mLの濃度のスクロースと、約50mg/mL~約70mg/mLの濃度のグリセロールとの組み合わせを含む。
【0130】
脂質-核酸製剤
核酸又はその薬学的に許容可能な塩は、脂質製剤(すなわち、脂質系送達ビヒクル)に組み込むことができる。
【0131】
本開示の文脈では、脂質系送達ビヒクルは、典型的に、所望の核酸(siRNA、プラスミドDNA、mRNA、自己複製RNAなど)を標的細胞又は標的組織に輸送するように機能する。脂質系送達ビヒクルは、当技術分野で知られている任意の好適な脂質系送達ビヒクルとすることができる。いくつかの実施形態では、脂質系送達ビヒクルは、リポソーム、カチオン性リポソーム、又は核酸を含有する脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、脂質系送達ビヒクルは、脂質分子及び核酸のナノ粒子又は二重層を含む。いくつかの実施形態では、脂質二重層は、中性脂質又はポリマーを更に含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、液体媒体を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、製剤は、好ましくは、核酸を更に封入する。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、好ましくは、核酸及び中性脂質又はポリマーを更に含む。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、好ましくは、核酸を封入する。
【0132】
本明細書は、脂質製剤内に封入された1つ以上の治療用核酸分子を含む脂質製剤を提供する。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、リポソームを含む。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、カチオン性リポソームを含む。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、脂質ナノ粒子を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、核酸は、脂質製剤の脂質部分内に完全に封入され、これにより脂質製剤中の核酸はヌクレアーゼ分解に対して水溶液中で耐性である。他の実施形態では、本明細書に記載の脂質製剤は、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に非毒性である。
【0134】
本開示の脂質製剤はまた、典型的に、約1:1~約100:1、約1:1~約50:1、約2:1~約45:1、約3:1~約40:1、約5:1~約38:1、約6:1~約40:1、約7:1~約35:1、約8:1~約30:1、約10:1~約25:1、約8:1~約12:1、約13:1~約17:1、約18:1~約24:1、又は約20:1~約30:1の総脂質:核酸比(質量/質量比)も有する。いくつかの好ましい実施形態では、総脂質:核酸比(質量/質量比)は、約10:1~約25:1である。比は、端点を含む、列挙された範囲内の任意の値又はサブ値であってもよい。
【0135】
本開示の脂質製剤は、典型的に、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、又は約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、又は約150nmの平均直径を有し、また実質的に非毒性である。直径は、端点を含めて、列挙された範囲内の任意の値又はサブ値であってもよい。加えて、核酸は、本開示の脂質ナノ粒子中に存在する場合、ヌクレアーゼによる分解に対して水溶液中で耐性である。
【0136】
好ましい実施形態では、脂質製剤は、核酸、カチオン性脂質(例えば、本明細書に記載の1つ以上のカチオン性脂質又はその塩)、リン脂質、及び粒子の凝集を阻害するコンジュゲートされた脂質(例えば、本開示の1つ以上のPEG-脂質コンジュゲート及び/又は他の脂質コンジュゲート)を含む。脂質製剤はまた、コレステロールも含むことができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、PEG-脂質コンジュゲートを更に含む。いくつかの実施形態では、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-DMGである。いくつかの実施形態では、PEG-DMGは、PEG2000-DMGである。
【0138】
核酸脂質製剤では、核酸は製剤の脂質部分内に完全に封入されてもよく、それによって核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。好ましい実施形態では、核酸を含む脂質製剤は、脂質製剤の脂質部分内に完全に封入され、それによって核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。ある特定の事例では、脂質製剤中の核酸は、粒子を37℃で少なくとも20、30、45、又は60分間ヌクレアーゼに曝露した後、実質的に分解されない。ある特定の他の事例では、脂質製剤中の核酸は、37℃で少なくとも30、45、若しくは60分間、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、若しくは36時間の間、血清中の製剤のインキュベーション後、実質的に分解されない。他の実施形態では、核酸は、製剤の脂質部分と複合体化される。
【0139】
核酸との文脈では、完全な封入は、核酸と会合したときに蛍光が強化された染料を使用する、膜不透過性蛍光染料除外アッセイを実施することによって決定され得る。封入は、脂質製剤に染料を添加し、結果として生じる蛍光を測定し、そして少量の非イオン性洗剤の添加時に観察される蛍光と比較することによって決定される。脂質層の洗剤媒介性破壊は、封入された核酸を放出し、膜不透過性染料と相互作用することを可能にする。核酸封入は、E=(I0-I)/I0として計算されてもよく、式中、I及びI0は、洗剤の添加前後の蛍光強度を指す。
【0140】
他の実施形態では、本開示は、複数の核酸-リポソーム、核酸-カチオン性リポソーム、又は核酸-脂質ナノ粒子を含む核酸-脂質組成物を提供する。いくつかの実施形態では、核酸-脂質組成物は、複数の核酸-リポソームを含む。いくつかの実施形態では、核酸-脂質組成物は、複数の核酸-カチオン性リポソームを含む。いくつかの実施形態では、核酸-脂質組成物は、複数の核酸-脂質ナノ粒子を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、製剤の脂質部分内に完全に封入された核酸を含み、これにより、粒子の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、又は少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%(又はその任意の画分若しくはその中の範囲)が、その中に封入された核酸を有する。量は、端点を含めて、列挙された範囲内の任意の値又はサブ値であってもよい。
【0142】
脂質製剤の意図される使用に応じて、構成成分の比率を変化させることができ、また当技術分野で知られているアッセイを使用して、特定の製剤の送達効率を測定することができる。
【0143】
いくつかの実施形態によると、発現可能なポリヌクレオチド、核酸活性剤、及びmRNA構築物は、脂質製剤化することができる。脂質製剤は、好ましくは、リポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子から選択されるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、脂質製剤は、カチオン性リポソーム又は脂質ナノ粒子(LNP)であり、
(a)核酸(mRNA、siRNAなど)と、
(b)カチオン性であり得る本開示の脂質と、
(c)任意選択的に、非カチオン性脂質(中性脂質など)と、
(d)任意選択的に、ステロールと、を含む。
【0144】
カチオン性脂質
脂質製剤は、好ましくは、カチオン性リポソーム又は脂質ナノ粒子を形成するために好適なカチオン性脂質を含む。カチオン性脂質は、負に荷電した膜に結合し、かつ取り込みを誘導することができるため、核酸送達について幅広く研究されている。一般的に、カチオン性脂質は、正の親水性頭部基、2つ(又はそれ以上)の親油性尾部、又はステロイド部分、及びこれらの2つのドメイン間のコネクタを含有する両親媒性物質である。好ましくは、カチオン性脂質は、ほぼ生理的pHにおいて正味の正電荷を担持する。カチオン性リポソームは、従来、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴ、及びsiRNA/小ヘアピンRNA-shRNAを含むオリゴヌクレオチドに最も一般的に使用される非ウイルス送達システムであった。DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びDOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-硫酸メチルアンモニウム)などのカチオン性脂質は、静電相互作用によって負に荷電した核酸と複合体又はリポプレックスを形成し、高いインビトロトランスフェクション効率を提供することができる。
【0145】
本開示の脂質製剤において、カチオン性脂質としては、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジ-9-シス-オクタデセニルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)(N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド及び1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩としても知られる)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、又は3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)又はその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソル-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(MC3エーテル)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン(MC4エーテル)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。他のカチオン性脂質としては、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3P-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(XTC)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、カチオン性脂質の市販調製物、例えば、リポフェクチン(GIBCO/BRLから入手可能なDOTMA及びDOPEを含む)、及びリポフェクタミン(GIBCO/BRLから入手可能なDOSPA及びDOPEを含む)を使用することができる。
【0146】
他の好適なカチオン性脂質は、国際公開第09/086558号、同第09/127060号、同第10/048536号、同第10/054406号、同第10/088537号、同第10/129709号、及び同第2011/153493号、米国特許公開第2011/0256175号、同第2012/0128760号、及び同第2012/0027803号、米国特許第8,158,601号、並びにLove et al.,PNAS,107(5),1864-69,2010に記載されており、それらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
他の好適なカチオン性脂質としては、アルキル置換基が異なるもの(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-、及びN-プロピル-N-エチルアミノ-)を含む、代替的な脂肪酸基及び他のジアルキルアミノ基を有するものが挙げられる。これらの脂質は、アミノ脂質と呼ばれるカチオン性脂質のサブカテゴリーの一部である。本明細書に記載の脂質製剤のいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、アミノ脂質である。一般に、飽和度が低いアルキル鎖を有するアミノ脂質は、フィルター滅菌の目的で、特に複合体が約0.3ミクロン未満にサイズ設定されなければならない場合に、より簡単にサイズ設定される。C14~C22の範囲の炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸を含有するアミノ脂質が使用されてもよい。他の足場を使用して、アミノ基と、アミノ脂質の脂肪酸又は脂肪アルキル部分を分離することもできる。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、イオン化可能であり、また脂質が生理的pH(例えば、pH7.4)以下のpHで正に荷電し、かつ第2のpH、好ましくは生理的pH以上の中性であるように、少なくとも1つのプロトン化可能又は脱プロトン化可能な基を有する。当然のことながら、pHの関数としてのプロトンの付加又は除去は平衡プロセスであり、また荷電脂質又は中性脂質への言及は、優勢種の性質を指し、脂質の全てが荷電形態又は中性型で存在する必要はない。2つ以上のプロトン化可能基若しくは脱プロトン化可能基を有するか、又は双性イオン性である脂質は、本開示での使用から除外されない。ある特定の実施形態では、プロトン化可能な脂質は、約4~約11の範囲のプロトン化可能な基のpKaを有する。いくつかの実施形態では、イオン性カチオン性脂質は、約5~約7のpKaを有する。いくつかの実施形態では、イオン性カチオン性脂質のpKaは、約6~約7である。
【0149】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、式Iの脂質:
【化7】
、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含み、式中、R及びRは、各々独立して、(CH(CHCH-、(CH(CH)(CH(CHm-1)CH、(CH(CH)(CH(CHm-2)CH、(CH(CHCHCH-、又は(CH(CH)(CH(CHm-1)CHCH-であり、mが、4~11であり、L及びLは、各々独立して、存在しないか、直鎖C1-5アルキレン、若しくは(CH-O-(CHであり、p及びqが各々独立して、1~3であり、Rは、1つ又は2つのメチル基で任意選択的に置換された直鎖C2-5アルキレンであり、R及びRは、各々独立して、H又はC1-6アルキルであり、Xは、O又はSであり、nは、0~2である。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に列挙される任意の1つ以上の脂質は、明示的に除外される場合がある。
【0151】
ヘルパー脂質及びステロール
本開示のmRNA脂質製剤は、ヘルパー脂質を含むことができ、これは、中性脂質、中性ヘルパー脂質、非カチオン性脂質、非カチオン性ヘルパー脂質、アニオン性脂質、アニオン性ヘルパー脂質、又は双性イオン性脂質と称することができる。脂質製剤、特にカチオン性リポソーム及び脂質ナノ粒子は、ヘルパー脂質が製剤中に存在する場合、細胞取り込みが増加していることが見出されている。(Curr.Drug Metab.2014;15(9):882-92)。例えば、一部の研究は、カチオン性脂質よりも融合性が高い(すなわち、融合を促進する)中性脂質及び双性イオン性脂質、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジ-オレオイル-ホスファチジル-エタノアラミン(DOPE)及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)は、カチオン性脂質より融合性(すなわち、融合を容易にする)であることを示しており、脂質-核酸複合体の多型の特徴に影響を与える可能性があり、ラメラ相から六方相への移行を促進し、それゆえに細胞膜の融合及び破壊を誘発する。(Nanomedicine(Lond).2014 Jan;9(1):105-20)。加えて、ヘルパー脂質の使用は、毒性及び免疫原性などの多くの一般的なカチオン性脂質を使用することによるあらゆる潜在的な有害作用を低減するのに役立つ可能性がある。
【0152】
本開示の脂質製剤のために好適な非カチオン性脂質の非限定的な例としては、レシチンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物が挙げられる。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンのリン脂質も使用することができる。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10-C24炭素鎖を有する脂肪酸、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、又はオレオイルに由来するアシル基である。
【0153】
いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、及びホスファチジルコリン(PC)から選択される。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。
【0154】
非カチオン性脂質の追加的な例としては、コレステロールなどのステロール及びその誘導体が挙げられる。ある研究は、ヘルパー脂質として、コレステロールは、核酸と調和する脂質層の電荷の間隔を増加させ、電荷分布を核酸の電荷分布とより密接に一致させると結論付けた。(J.R.Soc.Interface.2012 Mar 7;9(68):548-561)。コレステロール誘導体の非限定的な例としては、5α-コレスタノール、5α-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、及び6-ケトコレスタノールなどの極性類似体、5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5α-コレスタノン、及びデカン酸コレステリルなどの非極性類似体、並びにそれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテルなどの極性類似体である。
【0155】
いくつかの実施形態では、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、1つ以上のリン脂質及びコレステロール又はその誘導体の混合物を含むか、又はそれからなる。他の実施形態では、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、1つ以上のリン脂質、例えば、コレステロールを含まない脂質製剤を含むか、又はそれからなる。なおも他の実施形態では、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、コレステロール又はその誘導体、例えば、リン脂質を含まない脂質製剤を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、コレステロールを更に含む。
【0156】
ヘルパー脂質の他の例としては、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、トリエタノールアミン-ラウリル硫酸、アルキル-アリール硫酸ポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド、セラミド、及びスフィンゴミエリンなどの脂質を含有する非リン性が挙げられる。
【0157】
いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、脂質製剤中に存在する総脂質の約1モル%~約50モル%、約5モル%~約48モル%、約5モル%~約46モル%、約25モル%~約44モル%、約26モル%~約42モル%、約27モル%~約41モル%、約28モル%~約40モル%、又は約29モル%、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、若しくは約39モル%(若しくはその任意の画分若しくはその中の範囲)を構成する。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、約1モル%~約20モル%、約2モル%~約12モル%、約5モル%~約9モル%、又は約6モル%~約8モル%を構成する。
【0158】
いくつかの実施形態では、製剤中のヘルパー脂質の合計は、2つ以上のヘルパー脂質を含み、またヘルパー脂質の総量は、脂質製剤中に存在する総脂質の約20モル%~約50モル%、約22モル%~約48モル%、約24モル%~約46モル%、約25モル%~約44モル%、約26モル%~約42モル%、約27モル%~約41モル%、約28モル%~約40モル%、又は約29モル%、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、若しくは約39モル%(若しくはその任意の画分若しくはその中の範囲)を構成する。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、DSPCとDOTAPの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、DSPCとDOTMAの組み合わせである。
【0159】
脂質製剤中のコレステロール又はコレステロール誘導体は、脂質製剤中に存在する総脂質の最大約40モル%、約45モル%、約50モル%、約55モル%、又は約60モル%を含んでもよい。いくつかの実施形態では、コレステロール又はコレステロール誘導体は、脂質製剤中に存在する総脂質の約15モル%~約45モル%、約20モル%~約40モル%、約30モル%~約40モル%、又は約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、約39モル%、若しくは約40モル%を含む。
【0160】
脂質製剤中に存在するヘルパー脂質の割合は、標的量であり、また製剤中に存在するヘルパー脂質の実際の量は、例えば、±5モル%変化する場合がある。
【0161】
脂質製剤の細胞取り込みのための作用機序
核酸の細胞内送達のための脂質製剤、特にリポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子は、脂質送達ビヒクルの内容物が標的細胞のサイトゾルに送達される標的細胞のエンドサイトーシス機構を利用することによって標的細胞に浸透することによって、細胞取り込みのために設計される。(Nucleic Acid Therapeutics,28(3):146-157,2018)。具体的には、本明細書に記載される核酸脂質製剤の場合、脂質製剤は、受容体介在性エンドサイトーシスを介して細胞に入る。エンドサイトーシスの前に、脂質送達ビヒクルの表面における本開示の脂質コンジュゲートなどの官能化リガンドを表面から脱落させることができ、これは標的細胞への内部移行を誘発する。エンドサイトーシスの間、細胞の原形質膜の一部はベクターを囲み、それを小胞の中へと飲み込み、次いで小胞を挟んで細胞膜から挟み出し、サイトゾルに入り、最終的にエンドリソソーム経路を経る。イオン性カチオン性脂質を含有する送達ビヒクルについては、エンドソームが老化するにつれて酸性度が増加すると、表面上に強い正電荷を有するビヒクルがもたらされる。次いで、送達ビヒクルとエンドソーム膜との間の相互作用は、ペイロードの細胞質性の送達につながる膜融合事象をもたらす。mRNA又は自己複製RNAペイロードについては、細胞自身の内部翻訳プロセスが次にRNAをコードされたタンパク質に翻訳する。コードされたタンパク質は、標的の細胞小器官への輸送又は細胞内の位置を含む、翻訳後処理を更に受けることができる。
【0162】
脂質コンジュゲートの組成物及び濃度を制御することによって、脂質コンジュゲートが脂質製剤から交換する速度、及び次に脂質製剤が融合性になる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の可変要素を使用して、脂質製剤が融合性になる速度を変化及び/又は制御することができる。脂質製剤が融合性になる速度を制御するために使用することができる他の方法は、本開示を読むと当業者には明らかになるであろう。また、脂質コンジュゲートの組成物及び濃度を制御することによっても、リポソーム又は脂質粒子サイズを制御することができる。
【0163】
脂質製剤製造
核酸を含む脂質製剤の調製のためには、多くの異なる方法がある。(Curr.Drug Metabol.2014,15,882-892;Chem.Phys.Lipids 2014,177,8-18;Int.J.Pharm.Stud.Res.2012,3,14-20)。薄膜水和、二重エマルション、逆相蒸発、マイクロ流体調製、二重非対称遠心分離、エタノール注入、洗剤透析、エタノール希釈による自発的な小胞形成、及び予め形成されたリポソームへの封入の技法を、本明細書において簡潔に説明する。
【0164】
薄膜水和
薄膜水和法(TFH)又はバンガム法では、脂質は有機溶媒中に溶解され、次いでロータリーエバポレータの使用を通して蒸発して、薄い脂質層の形成をもたらす。搭載される化合物を含有する水性緩衝溶液による層水和の後、多層小胞(MLV)が形成され、これは、膜を通して押出成形することによって、又は開始MLVの超音波処理によって、サイズを減少させて、小型単層小胞(LUV)又は大型単層小胞(SUV)を生成することができる。
【0165】
二重エマルション
脂質製剤はまた、水/有機溶媒混合物中の脂質溶解を伴う二重エマルション技法を通しても調製することができる。水滴を含有する有機溶液を過剰な水媒体と混合し、水中油中水型(W/O/W)二重エマルション形成をもたらす。機械的に激しく振とうした後、水滴の一部が崩壊し、大型単層小胞(LUV)が得られる。
【0166】
逆相蒸発
逆相蒸発(REV)法はまた、核酸を搭載したLUVを達成することもできる。この技法では、有機溶媒及び水性緩衝液中のリン脂質溶解によって二相系が形成される。次いで、得られた懸濁液を、混合物が透明な一相分散液になるまで短時間超音波処理する。脂質製剤は、減圧下での有機溶媒蒸発後に達成される。この技法は、核酸を含む異なる大きい親水性分子及び小さい親水性分子を封入するために使用される。
【0167】
マイクロ流体調製
マイクロ流体法は、他のバルク技法とは異なり、脂質水和プロセスを制御する可能性を与える。方法は、流れが操作される方法に従って、連続流マイクロ流体及び液滴ベースのマイクロ流体に分類することができる。連続流モードで動作するマイクロ流体力学的集束(MHF)法では、脂質はイソプロピルアルコール中に溶解され、イソプロピルアルコールは、2つの水性緩衝液流の間のマイクロチャネルクロスジャンクション中で流体力学的に集束される。小胞サイズは、流量を調節することによって制御することができ、したがって脂質溶液/緩衝液希釈プロセスを制御することができる。方法は、3つの入口ポート及び1つの出口ポートからなるマイクロ流体装置を使用することによって、オリゴヌクレオチド(ON)脂質製剤を生成するために使用することができる。
【0168】
二重非対称遠心分離
二重非対称遠心分離(DAC)は、それ自体の垂直軸の周りの追加の回転を使用するため、より一般的な遠心分離とは異なる。効率的な均質化は、作成された2つのオーバーレイ移動によって達成される。すなわち、試料は、通常の遠心分離器のように外向きに押され、その後、追加の回転によってバイアルの中心に向かって押される。脂質とNaCl溶液を混合することによって、粘稠な小胞リン脂質ゲル(VPC)が達成され、次いで、これを希釈して脂質製剤分散液を得る。脂質製剤サイズは、DACスピード、脂質濃度、及び均質化時間を最適化することによって調節することができる。
【0169】
エタノール注入
エタノール注入(EI)法は、核酸封入のために使用することができる。この方法は、脂質が溶解されたエタノール溶液の、針の使用を通して封入される核酸を含有する水媒体の中への迅速な注入を提供する。リン脂質が媒体全体を通して分散されると、小胞が自発的に形成される。
【0170】
洗剤透析
洗剤透析法を使用して、核酸を封入することができる。簡潔に述べると、脂質及びプラスミドは、適切なイオン強度の洗剤溶液中で可溶化され、透析によって洗剤を除去した後、安定化された脂質製剤が形成される。次いで、封入されていない核酸をイオン交換クロマトグラフィーによって除去し、小胞をスクロース密度勾配遠心分離によって空にする。この技法は、カチオン性脂質含有量及び透析緩衝液の塩濃度に非常に敏感であり、この方法の規模拡大もまた困難である。
【0171】
エタノール希釈による自発的な小胞形成
安定した脂質製剤はまた、エタノール希釈による自発的な小胞形成法を介して生成することができ、この方法において、段階的又は滴加的なエタノール希釈は、核酸を含有する急速に混合する水性緩衝液へのエタノール中に溶解した脂質の制御された添加によって、核酸を搭載した小胞の自発的な形成を提供する。
【0172】
V.医薬組成物及び送達方法
インビボでの核酸活性(例えば、mRNA発現、又はASO若しくはsiRNAによるノックダウン)を促進するために、本明細書に記載の脂質製剤の送達ビヒクルは、1つ以上の追加の核酸、担体、標的化リガンド、若しくは安定化試薬と組み合わされ得るか、又はそれが好適な賦形剤と混合される薬理学的組成物中にあり得る。薬剤の製剤化及び投与の技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.,Easton,Pa、最新版)に見出され得る。
【0173】
本開示の脂質製剤及び医薬組成物は、対象の臨床状態、投与部位及び投与方法、投与スケジュール、対象の年齢、性別、体重、並びに当業者に関連する他の要因を考慮して、現在の医療行為に従って投与及び投薬されてもよい。本明細書の目的のための「有効量」は、実験臨床研究、薬理学、臨床、及び医療技術の当業者に既知であるような関連する考慮事項によって決定され得る。いくつかの実施形態では、投与される量は、当業者によって疾患進行、退行、又は改善の適切な尺度として選択される症状及び他の指標の少なくともいくらかの安定化、改善、又は除去を達成するために有効である。例えば、適切な量及び投与レジメンは、少なくとも一過性タンパク質(例えば、酵素)の産生を引き起こすものである。
【0174】
本明細書に記載の医薬組成物は、吸入可能な組成物とすることができる。好適な投与経路としては、例えば、気管内、吸入、又は鼻腔内が挙げられる。いくつかの実施形態では、投与は、肺上皮細胞への核酸の送達をもたらす。いくつかの実施形態では、投与は、他のタイプの肺細胞及び気道の細胞よりも肺上皮細胞に対する選択性を示す。
【0175】
本明細書に開示される医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を使用して、(1)安定性を増加させる、(2)細胞トランスフェクションを増加させる、(3)徐放性又は遅延放出(例えば、核酸のデポ製剤から)を許容する、(4)生体内分布を変更する(例えば、核酸を特定の組織又は細胞型に標的化する)、(5)インビボで、それらから発現される核酸又はタンパク質の活性を増加させる、及び/又は(6)インビボで、核酸又はコードされたタンパク質の放出プロファイルを変化させるように製剤化することができる。
【0176】
好ましくは、脂質製剤は、全身的ではなく局所的な様態で投与されてもよい。局所送達は、標的とされる組織に応じて、様々な方法で影響を与えることができる。例えば、本開示の組成物を含有するエアロゾルは、(鼻、気管、又は気管支送達のために)吸入することができる。
【0177】
医薬組成物は、任意の所望の組織に投与され得る。いくつかの実施形態では、本開示の脂質製剤又は組成物によって送達される核酸は、脂質製剤及び/又は組成物が投与された組織において活性である。いくつかの実施形態では、核酸は、脂質製剤及び/又は組成物が投与された組織とは異なる組織で活性である。核酸が送達され得る組織の例としては、肺、気管、及び/又は鼻腔、筋肉、肝臓、眼、又は中枢神経系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の技術分野で既知又は今後開発される任意の方法によって調製されてもよい。一般に、こうした調製方法は、活性成分(すなわち、核酸)を賦形剤及び/又は1つ以上の他の副成分と会合させる工程を含む。本開示による医薬組成物は、単回単位用量として、及び/又は複数の単回単位用量として、バルクで調製、包装、及び/又は販売されてもよい。
【0179】
医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤を追加的に含んでもよく、これは、本明細書で使用される場合、望ましい特定の剤形に適したありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散剤又は懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又はその他の液体ビヒクル、分散剤若しくは懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤などの従来の賦形剤に加えて、本開示の賦形剤としては、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、一次DNA構築物でトランスフェクトされた細胞、又はmRNA(例えば、対象への移植のための)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体及びそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0181】
したがって、本明細書に記載の製剤は、各々が脂質製剤中の核酸の安定性を一緒に増加させる量、核酸(例えば、mRNA又はsiRNA)による細胞トランスフェクションを増加させる量、コードされたタンパク質の発現を増加させる量、及び/又はコードされたタンパク質の放出プロファイルを変更する量、又は標的天然核酸のノックダウンを増加させる量で、1つ以上の賦形剤を含むことができる。更に、核酸は、自己組織化核酸ナノ粒子を使用して製剤化されてもよい。
【0182】
医薬組成物を製剤化するための様々な賦形剤、及び組成物を調製するための技法は、当該技術分野で既知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,Md.,2006を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。従来の賦形剤媒体の使用は、本開示の実施形態の範囲内で企図され得るが、任意の従来の賦形剤媒体が、何らかの望ましくない生物学的効果を生じさせること、又は別の方法で医薬組成物の任意の他の成分と有害な様態で相互作用することなどによって、物質又はその誘導体と不適合であり得る場合を除く。
【0183】
本開示の組成物の剤形は、投与前に液体中で再構成することができる、固体とすることができる。固体は、粉末として投与することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥された核酸脂質製剤を含む。
【0184】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物の剤形は、本明細書に記載の核酸脂質ナノ粒子の液体懸濁液とすることができる。いくつかの実施形態では、液体懸濁液は、緩衝溶液中にある。いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、HEPES、MOPS、TES、及びTRISからなる群から選択される緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約7.4のpHを有する。いくつかの好ましい実施形態では、緩衝液はHEPESである。いくつかの更なる実施形態では、緩衝溶液は、凍結保護剤を更に含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、糖及びグリセロール、又は糖及びグリセロールの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、糖は二量体糖である。いくつかの実施形態では、糖はスクロースである。いくつかの好ましい実施形態では、緩衝液は、7.4のpHでHEPES、スクロース、及びグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、懸濁液は、保存中は凍結され、そして投与前に解凍される。いくつかの実施形態では、懸濁液は、約-70℃未満の温度で凍結される。いくつかの実施形態では、懸濁液は、吸入可能な投与の前に滅菌水で希釈される。いくつかの実施形態では、吸入可能な投与は、懸濁液を約1体積~約4体積の滅菌水で希釈することを含む。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された核酸-脂質ナノ粒子製剤は、本明細書に記載される緩衝液中で再懸濁することができる。
【0185】
本開示の組成物及び方法は、鼻腔内及び/又は肺内を含む様々な粘膜投与モードによって対象に投与されてもよい。本開示の一部の態様では、粘膜組織層は上皮細胞層を含む。上皮細胞は、肺、気管、気管支、肺胞、鼻腔、及び/又は口腔とすることができる。本開示の組成物は、機械的スプレー装置などの従来のアクチュエータ、並びに加圧、電気的に作動する、又は他のタイプのアクチュエータを使用して投与することができる。
【0186】
本開示の組成物は、鼻腔スプレー又は肺スプレーとして水溶液中で投与されてもよく、当業者に既知の様々な方法によってスプレー形態で分注されてもよい。本開示の組成物の肺送達は、例えば、エアロゾル化、霧化、又は噴霧化することができる、液滴、粒子、又はスプレーの形態で組成物を投与することによって達成される。組成物、スプレー、又はエアロゾルの粒子は、液体又は固体形態のいずれか、例えば、凍結乾燥された脂質製剤とすることができる。鼻腔スプレーとして液体を分注するための好ましいシステムは、米国特許第4,511,069号に開示されている。こうした製剤は、本開示による組成物を水中に溶解して水溶液を生成し、当該溶液を滅菌することによって好都合に調製され得る。製剤は、多剤容器内、例えば、米国特許第4,511,069号に開示されている密閉された分注システム内で示され得る。他の好適な鼻腔スプレー送達システムは、TRANSDERMAL SYSTEMIC MEDICATION,Y.W.Chien ed.,Elsevier Publishers,New York,1985及び米国特許第4,778,810号に記載されている。追加のエアロゾル送達形態は、例えば、圧縮空気式、ジェット式、超音波式、及び圧電式のネブライザーを含んでもよく、これは、核酸脂質製剤を送達するか、又は薬学的溶媒、例えば、水、エタノール、又はそれらの混合物中に懸濁される。
【0187】
本開示の鼻腔及び肺スプレー溶液は、典型的に、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート-80)などの表面活性剤、及び1つ以上の緩衝液で任意選択的に製剤化された核酸を含むが、ただし、界面活性剤の含有は脂質製剤の構造を破壊しないことを条件とする。本開示のいくつかの実施形態では、鼻腔スプレー溶液は、噴射剤を更に含む。鼻腔スプレー溶液のpHは、pH6.8~7.2であってもよい。用いられる医薬溶媒はまた、pH4~6のわずかに酸性の水性緩衝液とすることもできる。保存剤、界面活性剤、分散剤、又はガスを含む他の成分を添加して、化学的安定性を強化又は維持してもよい。
【0188】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の組成物を含有する溶液と、肺、粘膜、又は鼻腔内スプレー又はエアロゾル用のアクチュエータと、を含む、医薬品を提供する。
【0189】
本開示の組成物の剤形は、液体、液滴若しくはエマルションの形態、又はエアロゾルの形態とすることができる。
【0190】
本開示の組成物の剤形は、投与前に液体中で再構成することができる、固体とすることができる。固体は、粉末として投与することができる。固体は、カプセル、錠剤、又はゲルの形態とすることができる。
【0191】
本開示内の肺送達のための組成物を製剤化するために、核酸脂質製剤は、様々な薬学的に許容可能な添加剤、並びに核酸脂質製剤の分散のための塩基又は担体と組み合わせることができる。添加剤の例としては、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸、及びそれらの混合物などのpH調整剤が挙げられる。他の添加剤としては、局所麻酔薬(例えば、ベンジルアルコール)、等張剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着阻害剤(例えば、Tween 80)、溶解性促進剤(例えば、シクロデキストリン及びその誘導体)、安定剤(例えば、血清アルブミン)、及び還元剤(例えば、グルタチオン)が挙げられる。粘膜送達のための組成物が液体である場合、1として取られる0.9%(w/v)生理食塩水溶液の張性を参照して測定される製剤の張性は、典型的に、投与部位で粘膜に実質的に不可逆的な組織損傷を誘発しない値に調整される。一般的に、溶液の張性は、1/3~3、より典型的には1/2~2、ほとんどの場合は3/4~1.7の値に調整される。
【0192】
核酸脂質製剤は、核酸脂質製剤及び任意の所望の添加剤を分散する能力を有する親水性化合物を含む場合がある、塩基又はビヒクル中に分散されてもよい。塩基は、幅広い範囲の好適な担体から選択されてもよく、ポリカルボン酸又はその塩のコポリマー、他のモノマー(例えば、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸など)とのカルボン酸無水物(例えば、無水マレイン酸)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの親水性ビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、及びキトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸及びそれらの非毒性金属塩などの天然ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。生分解性ポリマーは、しばしば、例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸-グリコール酸)コポリマー、及びそれらの混合物などの塩基又は担体として選択される。別の方法として又は追加的に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステルなどの合成脂肪酸エステルを担体として用いることができる。親水性ポリマー及び他の担体は、単独で又は組み合わせて使用することができ、構造的完全性の向上は、部分結晶化、イオン結合、架橋などによって担体に付与することができる。担体は、鼻粘膜に直接適用するための流体又は粘性溶液、ゲル、ペースト、粉末、マイクロスフェア、及びフィルムを含む、様々な形態で提供することができる。この文脈における選択された担体の使用は、核酸脂質製剤の吸収の促進をもたらす場合がある。
【0193】
あるいは、本開示の組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、並びに湿潤剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、及びそれらの混合物などの生理学的条件に近似させるために必要とされる薬学的に許容可能な担体物質を含有してもよい。固体組成物については、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む、従来の非毒性の薬学的に許容可能な担体を使用することができる。
【0194】
本開示のある特定の実施形態では、核酸脂質製剤は、時間放出製剤、例えば、徐放性ポリマーを含む組成物で投与されてもよい。核酸脂質製剤は、急速放出から保護する担体、例えばポリマー、マイクロカプセル化送達システム、又は生体接着ゲルなどの制御放出ビヒクルを用いて調製することができる。本開示の様々な組成物における核酸脂質製剤の長期間送達は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムハイドロゲル及びゼラチンなどの吸収を遅延させる組成物剤中に含むことによってもたらすことができる。
【0195】
核酸は、核酸組成物の液体懸濁液の気管内投与、及び液体ネブライザーによって生成されるエアロゾルミストの吸入、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,780,014号に記載されるものなどの乾燥粉末設備の使用によって、肺に送達され得る。
【0196】
ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、対象への投与前又は投与時にエアロゾル化されるか、又は別の方法で微粒子液体若しくは固体として送達されてもよいように製剤化されてもよい。こうした組成物は、こうした固体又は液体微粒子組成物(例えば、エアロゾル化した水溶液又は懸濁液など)を投与して、対象によって簡単に呼吸可能又は吸入可能な粒子を発生させるための1つ以上の好適な装置の助けを借りて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、こうした装置(例えば、定量吸入器、ジェット式ネブライザー、超音波式ネブライザー、乾燥粉末吸入器、噴射剤ベースの吸入器、又は気腹装置)は、対象への所定の質量、体積、又は用量(例えば、用量当たり約0.010~約0.5mg/kgの核酸)の組成物の投与を容易にする。例えば、ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、組成物及び好適な噴射剤を含む懸濁液又は溶液を含有する定量吸入器を使用して対象に投与される。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、吸入のために意図された微粒子粉末(例えば、呼吸に適した乾燥粒子)として製剤化されてもよい。ある特定の実施形態では、呼吸に適した粒子として製剤化された本開示の組成物は、対象によって呼吸に適する場合があるか、又は好適な装置を使用して送達されてもよいように、適切にサイズ決めされる(例えば、約500μm、400μm、300μm、250μm、200μm、150μm、100μm、75μm、50μm、25μm、20μm、15μm、12.5μm、10μm、5μm、2.5μm又はそれ未満の平均D50又はD90粒子サイズ)。更に他の実施形態では、本開示の組成物は、1つ以上の肺界面活性剤(例えば、層状体)を含むように製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、体重1kg当たり少なくとも0.010mg/kg、少なくとも0.015mg/kg、少なくとも0.020mg/kg、少なくとも0.025mg/kg、少なくとも0.030mg/kg、少なくとも0.035mg/kg、少なくとも0.040mg/kg、少なくとも0.045mg/kg、少なくとも0.05mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1.0mg/kg、少なくとも2.0mg/kg、少なくとも3.0mg/kg、少なくとも4.0mg/kg、少なくとも5.0mg/kg、少なくとも6.0mg/kg、少なくとも7.0mg/kg、少なくとも8.0mg/kg、少なくとも9.0mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも30mg/kg、少なくとも35mg/kg、少なくとも40mg/kg、少なくとも45mg/kg、少なくとも50mg/kg、少なくとも55mg/kg、少なくとも60mg/kg、少なくとも65mg/kg、少なくとも70mg/kg、少なくとも75mg/kg、少なくとも80mg/kg、少なくとも85mg/kg、少なくとも90mg/kg、少なくとも95mg/kg、又は少なくとも100mgの濃度が単回投与で投与されるように、対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1.0mg、少なくとも2.0mg、少なくとも3.0mg、少なくとも4.0mg、少なくとも5.0mg、少なくとも6.0mg、少なくとも7.0mg、少なくとも8.0mg、少なくとも9.0mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも40mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも55mg、少なくとも60mg、少なくとも65mg、少なくとも70mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg又は少なくとも100mgの総量の核酸が一回以上の用量で投与されるように、対象に投与される。
【0197】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、月に2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、月に3回対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、月に4回対象に投与される。
【0198】
本開示によれば、提供される組成物の治療的に有効な用量は、定期的に投与される場合、治療前のベースライン活性レベルと比較して、対象における核酸活性レベルの増加をもたらす。典型的に、活性レベルは、血液、血漿若しくは血清、尿、又は固形組織抽出物などの対象から得られた生体試料中で測定される。ベースラインレベルは、治療直前に測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物を投与することにより、生体試料(例えば、血漿/血清又は肺上皮スワブ)中の核酸活性レベルは、治療前のベースラインレベルと比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%増加する結果をもたらす。いくつかの実施形態では、提供される組成物を投与することにより、生体試料(例えば、血漿/血清又は肺上皮スワブ)の核酸活性レベルは、治療前のベースラインレベルと比較して、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、少なくとも約72時間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、又は少なくとも約15日間、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%増加する結果をもたらす。
【0199】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0200】
いくつかの実施形態では、本開示は、核酸の送達を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、方法は、治療有効量の核酸を、本明細書に記載の脂質ナノ粒子に封入することと、脂質ナノ粒子を対象に投与することと、を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、本開示は、mRNAの送達を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、方法は、治療有効量のmRNAを、本明細書に記載の脂質ナノ粒子に封入することと、脂質ナノ粒子を対象に投与することと、を含む。
【0202】
VI.治療方法
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、方法は、治療有効量の、本明細書に記載の化合物、本明細書に記載の脂質ナノ粒子、又は本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、化合物又は脂質ナノ粒子は、静脈内又は筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、化合物又は脂質ナノ粒子は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、化合物又は脂質ナノ粒子は、筋肉内投与される。
【0203】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象において疾患を治療する方法が提供され、方法は、本明細書に記載される脂質組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、静脈内又は筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、筋肉内投与される。
【0204】
いくつかの実施形態では、哺乳動物対象における疾患又は障害を治療する方法が提供される。本明細書に開示される脂質、特にカチオン性脂質、核酸、両親媒性物質、リン脂質、コレステロール、及びPEG結合コレステロールを含む組成物の治療有効量が、組成物によって低減され得る、減少し得る、下方制御され得る、又はサイレンシングされ得る遺伝子の発現又は過剰発現に関連する疾患又は障害を有する対象に投与され得る。本明細書に記載の組成物は、がん又は炎症性疾患を治療するための方法で使用され得る。疾患は、中枢神経系障害、末梢神経系障害、筋萎縮、筋ジストロフィー、免疫障害、がん、腎疾患、線維性疾患、遺伝的異常、炎症、及び心血管障害からなる群から選択されるものであり得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、本開示は、標的細胞においてタンパク質又はポリペプチドを発現する方法を提供し、方法は、標的細胞を、本明細書に記載の脂質ナノ粒子、又は本明細書に記載の医薬組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質又はポリペプチドは、抗原であり、抗原の発現は、インビボ免疫原性応答を提供する。
【実施例
【0206】
VII.実施例
実施例1.ATX-193の合成
【化8】
一般スキーム:
【化9】
【0207】
ATX-193-1の合成
【化10】
【0208】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した1Lの三つ口丸底フラスコに、1,3シクロヘキサンジオン(20g、1.00当量)及びジメチルホルムアミド(200mL)を入れた。アクリル酸エチル(21.45g、1.20当量)及びCsCO(35.00g、0.60当量)を添加し、得られた溶液を80℃で16時間撹拌した。次いで、600mLの水/氷を添加することによって、反応をクエンチした。溶液のpH値を、HCl(1mol/L)で6に調整した。得られた溶液を2×1Lの酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせた。合わせた有機層を2×1Lのブラインで洗浄した。有機層を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。これにより、29g(78%)の3-(2,6-ジオキソシクロヘキシル)プロパン酸エチルを黄色固体として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 1.01分、m/z(計算値)212.10、(実測値)213.10(M+H)。
【0209】
ATX-193-2の合成
【化11】
【0210】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した1Lの三つ口丸底フラスコに、3-(2,6-ジオキソシクロヘキシル)プロパン酸エチル(29g、1.00当量)及びHCl(1mol/L、300mLの水溶液)を入れた。得られた溶液を、95℃で16時間撹拌した。得られた混合物を真空下で濃縮した。残渣を1LのEtOAc中に溶解した。未溶解固体を濾過して除去した。得られたEA相を真空下で濃縮乾固した。これにより、23g(粗製)の5-オキソノナン二酸を黄色固体として得た。
【0211】
ATX-193-3の合成
【化12】
【0212】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した1Lの三つ口丸底フラスコに、5-オキソノナン二酸(23g、1.00当量)及びDCM(345mL)を室温で入れた。これに続いて、ペンタデカン-8-オール(62g、2.2当量)及びDMAP(13g、1.00当量)を室温で添加し、次いで、EDCI(52g、2.20当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、75mLのHCl水溶液(1mol/L)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を2×1LのDCMで抽出し、有機層を合わせた。有機層を2×1Lのブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で約500mLまで濃縮した。これに、100gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)を添加し、混合物を真空下で濃縮した。このシリカゲルをシリカゲルカラム(1Kg、タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)上に適用し、生成物をPE/EA、1/0~80/1の勾配で溶出した。画分を収集し、生成物画分を真空下で濃縮した。これにより、26g(38%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-オキソノナンジオエートを黄色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 2.99分、m/z(計算値)623.02、(実測値)645.35(M+Na)。
【0213】
ATX-193-4の合成
【化13】
【0214】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した500mLの三つ口丸底フラスコに、1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-オキソノナンジオエート(18g、1.00当量)及びTHF/HO(10:1、180mL)を添加した。これに続いて、NaBH(1.08g、1.00当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で4時間撹拌した。次いで、200mLの水/氷を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を3×300mLの酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせた。有機層を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。これにより、17.3g(95%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-ヒドロキシノナンジオエートを淡黄色油として得た。
【0215】
ATX-193-6の合成
【化14】
【0216】
1Lの四つ口丸型ボトルフラスコに、N下で機械的に撹拌しながら、THF(180mL)中の486mLのブロモ(ヘプチル)マグネシウム(1mol/L)を25℃で充填した。ギ酸エチル(18.00g、1.00当量)を、0℃において30分で撹拌しながら滴下して充填する。得られた溶液を室温で15時間撹拌した。次いで、500mLの飽和NHCl水溶液を添加することによって、反応をクエンチした。相を分離し、水層を2×500mLの酢酸エチルで抽出した。次いで、合わせた有機層を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。固体残渣は、60mLのCHCN中のスラリーであった。固体を濾過によって収集し、真空乾燥させた。これにより、50g(78%)のペンタデカン-8-オールを白色粉末として得た。これを、次の反応工程でそのまま使用した。
【0217】
ATX-193の合成
【化15】
【0218】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した250mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(180mL)中の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-ヒドロキシノナンジオエート(17.3g、1.00当量)の溶液を室温で入れた。4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(5.58g、1.20当量)及びDMAP(0.69g、0.20当量)を室温で添加し、続いて、EDCI(6.39g、1.20当量)を0℃で少量ずつ添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、300mLのHCl(1mol/L)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を2×500mLのDCMで抽出し、有機層を合わせた。有機層を2×500mLのブラインで洗浄した。得られた有機層を真空下で濃縮し、得られた40gの粗生成物を80gのシリカゲルに吸着させた。残渣を、DCM/ME、100:0~90:10の勾配を用いたシリカゲルカラム(800g、タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)で精製した。画分を含有する生成物を真空下で濃縮した。次いで、生成物をヘプタン(300mL、20V)中に溶解し、次いで、有機層をMeOH/HO(3:1)300mL(20V)で洗浄した。ヘプタン相を真空下で濃縮した。これにより、10.5g(49%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-[[4-(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ]ノナンジオエートを無色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 2.76分、m/z(計算値)737.6、(実測値)738.5(M+H);H-NMR:(300MHz,クロロホルム-d,ppm):δ 4.881(h,3H),2.332(dt,8H),2.241(s,6H),1.812(m,2H),1.710-1.413(m,16H),1.282(s,40H),0.952-0.844(m,12H).
【0219】
実施例2.ATX-200の合成
【化16】
一般スキーム:
【化17】
【0220】
ATX-200-4の合成
【化18】
【0221】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した500mLの四つ口丸底フラスコに、臭化メチルトリフェニルホスファニウム(4540.31mg、12.456mmol、1.60当量、98%)、THF(150.00mL、99%)を入れた。これに続いて、t-BuOK(1323.54mg、11.677mmol、1.50当量、99%)を0℃において10分で、いくつかのバッチで添加した。これに、THF(25ml)中の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-オキソノナンジオエート(5.00g、7.785mmol、1.00当量、97%)を0℃において20分で添加した。得られた溶液を25℃で18時間撹拌した。得られた混合物を濃縮した。残渣を、酢酸エチル/石油エーテル(1:50)とともにシリカゲルカラム上に適用した。これにより、3.7g(75.00%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-メチリデンノナンジオエートを無色油として得た。
【0222】
ATX-200-5の合成
【化19】
【0223】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの四つ口丸底フラスコに、1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-メチリデンノナンジオエート(3.7g、5.779mmol、1.00当量、97%)、THF(3.70mL)を入れた。これに続いて、9-BBN(14.90mL、NaNmmol、1.25当量)を18℃において20分で、撹拌しながら滴下した。混合物を18℃で18時間撹拌した後、水(1mL)及び3N NaOH(5mL)を連続的に添加した。次いで、温度を50℃未満に維持しながら、30%H(10mL)を滴下した。室温で18時間撹拌した後、得られた溶液を2×50mLの酢酸エチルで抽出した。得られた混合物を3×50mLのブラインで洗浄した。混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣を、酢酸エチル/石油エーテル(1:20)とともにシリカゲルカラム上に適用した。これにより、2.6g(68.29%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-(ヒドロキシメチル)ノナンジオエートを白色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 3.19分、m/z(計算値)638.5、(実測値)661.5(M+Na)。
【0224】
ATX-200の合成
【化20】
【0225】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの四つ口丸底フラスコに、1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-(ヒドロキシメチル)ノナンジオエート(2.60g、3.946mmol、1.00当量、97%)、THF(15.00mL)を入れた。これに続いて、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(633.88mg、4.736mmol、1.20当量、98%)を0℃において10分で、いくつかのバッチで添加した。これに、EDCI(926.37mg、4.736mmol、1.20当量、98%)を0℃において10分で、いくつかのバッチで添加した。混合物に、DMAP(98.39mg、0.789mmol、0.20当量、98%)を0℃において10分で、いくつかのバッチで添加した。得られた溶液を18℃で18時間撹拌した。得られた混合物を濃縮した。残渣を、エチルDCM:MeOH(30:1)とともにシリカゲルカラム上に適用した。粗生成物を、以下の条件を有するFlash-Prep-HPLC(IntelFlash-1)によって精製した:カラム、C18シリカゲル;移動相、30以内に2-プロパノール:HO=60:40から、2-プロパノール:HO=80:20に増加、検出器、蒸発光。生成物を得た。次いで、生成物をヘプタン(30mL、20V)中に溶解し、次いで、有機層をMeOH/HO(3:1)(20V)で洗浄した。ヘプタン相を真空下で濃縮した。これにより、1.5g(50.02%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-([[4-(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ]メチル)ノナンジオエートを淡黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 3.19分、m/z(計算値)751.67、(実測値)752.50(M+H);H-NMR:(400MHz,クロロホルム-d,ppm):4.847-4.909(m,2H),4.001-4.015(m,2H),2.241-2.380(m,14H),1.392-1.845(m,69H).
【0226】
実施例3.ATX-201の合成
【化21】
一般スキーム:
【化22】
【0227】
ATX-201-1の合成
【化23】
【0228】
三つ口丸底フラスコに、EtOH(25mL、5V)及びATX-201-SM(5g、1当量)を室温で添加し、撹拌した。6N NaOH(25mL、5V)を0℃で混合物にゆっくり添加した。得られた溶液を60℃で2時間撹拌し、TLCは、ATX-201-SMの完全な消費を示した。ブライン(10重量%、50mL、10V)及びDCM(50mL、10V)を混合物に添加し、10分間撹拌し、相を切断し、水相を収集し、pHを3N HClで3~4に調整した。混合物をDCM(100mL、20V)で抽出した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。濃縮し、真空下で乾燥させて、ATX-205-1(3.2g、収率84.6%)を淡黄色固体として得た。
【0229】
ATX-201-2の合成
【化24】
【0230】
三つ口丸底フラスコに、DCM(100mL、10V)、ATX-201-1(3.2g、1当量)、及びエタン-1,2-ジチオール(2.1g、1.2当量)を室温で添加した。BF EtO(2.5当量)を0℃で混合物にゆっくり添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌し、TLCは、ATX-201-1の完全な消費を示した。固体を濾過によって収集した。固体を真空下で乾燥させて、ATX-201-2(4g、収率88%)を淡黄色固体として得た。これを、次の反応でそのまま使用した。
【0231】
ATX-201-3の合成
【化25】
【0232】
三つ口丸底フラスコに、DCM(80mL、20V)、ATX-201-2(4g、1.0当量)、ATX-193-6(8g、2.2当量)、及びDMAP(2g、1当量)を連続的に添加した。EDCI(6.7g、2.2当量)を、0℃で少量ずつ反応混合物に添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌し、TLCは、ATX-201-2の完全な消費を示した。反応系を、10%クエン酸溶液(40mL、10V)でクエンチした。有機相を収集し、有機相を10%クエン酸溶液(40mL、10V)で洗浄し、ブライン(40mL、10V)で洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。粗生成物を20gのシリカゲルに吸着させ、100:0~99:1のPE/EA勾配で溶出する100gのシリカゲルカラム(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w.)で精製した。適格な画分を合わせ、濃縮し、真空下で乾燥させて、ATX-201-3(8g、収率75%)を無色油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.86(p,J=6.2Hz,2H),3.26(s,4H),2.67-2.56(m,4H),2.30-2.15(m,4H),1.50(t,J=6.3Hz,8H),1.28(d,J=11.2Hz,41H),0.88(d,J=6.3Hz,12H).
【0233】
ATX-201-4の合成
【化26】
【0234】
三つ口丸底フラスコに、アセトン(160mL、20V)、ATX-201-3(8g、1.0当量)を連続的に添加した。NBS(4.25g、2当量)を、0℃で少量ずつ反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、TLCは、ATX-201-3の完全な消費を示した。溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を20gのシリカゲルに吸着させ、Combi-flashシステムを使用して、100gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w.)カラムで精製した。生成物を、100:0~97:3のPE/EA勾配で溶出した。適格な生成物をプールし、真空下で濃縮して、ATX-201-4(2.5g、収率35%)を無色油として得た。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 4.84(p,J=6.3Hz,2H),2.76(t,J=6.7Hz,4H),2.59(t,J=6.7Hz,4H),1.50(q,J=6.4,6.0Hz,8H),1.31-1.21(m,40H),0.91-0.84(m,12H).
【0235】
ATX-201-5の合成
【化27】
【0236】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した500mLの四つ口丸底フラスコに、臭化メチルトリフェニルホスファニウム(1.9g、1.6当量)、THF(75mL、30V)を入れた。これに続いて、t-BuOK(0.7g、1.5当量)を0℃において10分で、いくつかのバッチで添加した。これに、THF(25ml)中のATX-201-4(2.5g、1当量)を0℃において20分で添加した。得られた溶液を25℃で18時間撹拌した。得られた混合物を濃縮した。生成物を5gのシリカゲルに吸着させ、100:0~99:1のPE/EA勾配で溶出することによって、Combi-Flashシステム上の25gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w.)カラムで精製した。適格な生成物を合わせ、濃縮し、真空下で乾燥させて、ATX-201-5(1.9g、収率76%)を無色油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.88(p,J=6.2Hz,2H),4.78(s,2H),2.47(ddd,J=8.5,6.2,1.8Hz,4H),2.37(dd,J=8.6,5.9Hz,4H),1.53(s,8H),1.27(,40H),0.88(m,12H).
【0237】
ATX-201-6の合成
【化28】
【0238】
三つ口丸底フラスコに、ATX-201-5(1.9g、1当量)、THF(3.70mL)を連続的に添加した。これに続いて、THF(8mL、1.25当量)中の0.5molの9-BBNを18℃において20分で、撹拌しながら滴下した。混合物を18℃で18時間撹拌した後、水(0.47mL、0.25V)及び3N NaOH(2.8mL、1.5V)を連続的に添加した。次いで、温度を50℃未満に維持しながら、30%H(4.75ml、2.5V)を滴下した。室温で18時間撹拌した後、得られた溶液を2×20mLの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を3×20mLのブラインで洗浄した。混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。生成物を5gのシリカゲルに吸着させ、PEで溶出することによって、Combi-Flashシステム上の25gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w.)カラムで精製した。適格な生成物を合わせ、濃縮し、真空下で乾燥させて、ATX-201-6(1.4g、収率76%)を無色油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.87(p,J=6.3Hz,2H),4.12(q,J=7.1Hz,1H),3.52(d,J=4.8Hz,2H),2.40-2.27(m,4H),1.75-1.61(m,3H),1.51(d,J=6.4Hz,9H),1.27(t,J=3.7Hz,40H),1.23(m,40H),0.87(m,12H).
【0239】
ATX-201の合成
【化29】
【0240】
三つ口丸底フラスコに、DCM(28mL、20V)、ATX-201-6(1.4g、1.0当量)、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(380mg、1当量)、及びDMAP(168mg、0.6当量)を連続的に添加した。EDCI(526mg、1.2当量)を、0℃で少量ずつ反応混合物に添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌し、TLCは、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸の完全な消費を示した。反応混合物を、10%クエン酸溶液(14mL、10V)でクエンチした。有機相を収集し、10%クエン酸溶液(14mL、10V)で洗浄し、ブライン(14mL、10V)で洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。生成物を5gのシリカゲルに吸着させ、100:0~95:5のDCM/MeOH勾配で溶出することによって、Combi-Flashシステム上の25gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w.)カラムで精製した。適格な生成物を合わせ、濃縮し、真空下で乾燥させて、ATX-201(1.3g、収率78%)を淡黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CH3CN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 3.19分、m/z(計算値)723.6、(実測値)724.7 H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.831(p,J=6.2Hz,2H),4.013(d,J=4.5Hz,2H),3.000-2.881(m,2H),2.70(s,6H),2.464(t,J=6.7Hz,2H),2.310(t,J=7.5Hz,4H),2.112(dq,J=13.7,6.8Hz,2H),1.653(t,J=7.2Hz,5H),1.492(d,J=6.3Hz,8H),1.242(m,40H),0.910-0.762(m,12H).
【0241】
実施例4.ATX-202の合成
【化30】
一般スキーム:
【化31】
【0242】
ATX-202-5の合成
【化32】
【0243】
250mLの四つ口丸型ボトルフラスコに、N下で機械的に撹拌しながら、DCM(50mL)中の5gの1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-ヒドロキシノナンジオエートを0℃で充填した。これに続いて、TEA(1.6g、2当量)及びMsCl(1.35g、1.5当量)を0℃で撹拌しながら滴下した。得られた溶液を室温で5時間撹拌した。次いで、100mLのHOを添加することによって、反応をクエンチした。相を分離し、水層を1×100mLのDCMで抽出した。次いで、有機層を合わせた。溶媒を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。これにより、4.8g(85%)のジ(ペンタデカン-8-イル)5-((メチルスルホニル)オキシ)ノナンジオエートを得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 4.76分、m/z(計算値)703.12、(実測値)725.3(M+Na)。
【0244】
ATX-202-6の合成
【化33】
【0245】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの三つ口丸底フラスコに、DMF(48mL)中の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-オキソノナンジオエート(4.8g、1.00当量)を入れた。これに続いて、NaHS(2g、5.00当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で5時間撹拌した。次いで、200mLの水/氷を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を3×100mLの酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせた。混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。これにより、2.8g(64%)のジ(ペンタデカン-8-イル)5-メルカプトノナンジオエートを淡黄色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 4.84分、m/z(計算値)640.5、(実測値)663.4(M+Na+H)。
【0246】
ATX-202の合成
【化34】
【0247】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(28mL)中のジ(ペンタデカン-8-イル)5-メルカプトノナンジオエート(2.8g、1.00当量)の溶液を入れた。4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(0.87g、1.20当量)、DMAP(0.1g、0.20当量)を添加し、続いて、EDCI(0.95g、1.20当量)を0℃で少量ずつ添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、100mLのHCl(1mol/L)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を2×100mLのDCMで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を2×100mLのブラインで洗浄した。得られた混合物を真空下で濃縮し、6gの粗生成物を得た。生成物を30mLのDCM中に溶解し、10gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)を添加した。混合物を真空下で濃縮した。残渣を、DCM/ME、1/0~30/1の勾配で、大気圧シリカゲルカラム(800g、タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)上に適用し、生成物溶出液(50/1~30/1)を収集した。収集した生成物相を真空下で濃縮した。次いで、生成物をヘプタン(30mL、20V)中に溶解し、次いで、有機層をMeOH/HO(3:1)30mL(20V)で洗浄した。ヘプタン相を真空下で濃縮した。これにより、1.3g(45%)の1,9-ビス(ペンタデカン-8-イル)5-[[4-(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ]ノナンジオエートを無色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 2.83分、m/z(計算値)754.25、(実測値)754.45(M);H-NMR(300MHz,クロロホルム-d,ppm):δ 4.83-4.87(m,2H),3.51-3.54(s,1H),2.55-2.60(m,2H),2.21-2.30(m,12H),1.40-1.91(m,19H),1.11-1.30(m,41H),1.28(s,40H),0.82-0.91(m,12H).
【0248】
実施例5.ATX-209の合成
【化35】
一般スキーム:
【化36】
【0249】
ATX-209-1の合成
【化37】
【0250】
三つ口丸底フラスコに、DMSO(38mL、15V)、ATX-209-SM1(2.5g、1当量)、及び1((イソシアノメチル)スルホニル)-4-メチルベンゼン(1g、0.5当量)を室温で添加した。混合物に、NaH(0.30g、1.2当量)及びヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.37g、0.1当量)を0℃で連続的にゆっくり添加した。得られた溶液を60℃で2時間撹拌し、TLCは、ATX-209-SM1の完全な消費を示した。次いで、25mLの水を添加することによって、反応をクエンチした。溶液をDCM(3×25mL)で抽出した。有機相を2×25mLの飽和ブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過し、濃縮し、真空下で乾燥させて、ATX-209-1(3.2g、収率60%)を無色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2.00分、0.7分保持):RT 0.84分、m/z(計算値)535.30、(実測値)558.20(M+Na)。
【0251】
ATX-209-2の合成
【化38】
【0252】
三つ口丸底フラスコに、DCM(30mL、10V)、ATX-209-1(3g、1当量)を室温で一度に添加した。HCl(6ml、2V)を0℃で混合物にゆっくり添加し、得られた溶液を0℃で2時間撹拌し、TLCは、ATX-209-1の完全な消費を示した。次いで、30mLの重炭酸ナトリウムを添加することによって、反応をクエンチした。有機相を2×30mLの飽和ブラインで洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。濾液に、5gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w)を添加し、温度を35℃未満に維持しながら、真空下で画分がなくなるまで濃縮した。25gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w)をカラムに充填し、続いて、最終工程で調製された乾燥シリカゲルを充填し、これが反応混合物を吸収した。Combi-flashを使用して、生成物を精製する。DCM/MeOH(体積比)で溶出した。(100:0~20:1の勾配、100±50mL毎に収集)。TLC分析のために試料を採取した。適格な生成物を合わせた。真空下で濃縮乾固して、ATX-209-2(1.15g、収率80%)を白色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6) δ 2.36(t,J=7.2Hz,4H),2.16(t,J=7.3Hz,4H),1.43(,8H),1.21-1.12(m,4H).
【0253】
ATX-209-3の合成
【化39】
【0254】
三つ口丸底フラスコに、DCM(20mL、20V)、ATX-209-2(1g、1.0当量)、ATX-209-5(1.71g、2.2当量)、及びDMAP(0.47g、1当量)を連続的に添加した。EDCI(1.63g、2.2当量)を、0℃で少量ずつ反応混合物に添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌し、TLCは、ATX-209-2の完全な消費を示した。反応系を、10%クエン酸溶液(10mL、10V)でクエンチした。有機相を収集し、有機相を10%クエン酸溶液(10mL、10V)で洗浄し、ブライン(10mL、10V)で洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。濾液に、5gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w)を添加し、温度を35℃未満に維持しながら、真空下で画分がなくなるまで濃縮した。25gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w)をカラムに充填し、続いて、最終工程で調製された乾燥シリカゲルを充填し、これが反応混合物を吸収した。Combi-flashを使用して、生成物を精製する。PE/EA(体積比)で溶出した。(100:0~50:1の勾配、20±10ml毎に収集)。TLC分析のために試料を採取した。適格な生成物を合わせる。真空下で濃縮乾固して、ATX-209-3(1.68g、収率70%)を無色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、5.00分、0.7分保持):RT 4.83分、m/z(計算値)622.55、(実測値)645.3(M+Na)。
【0255】
ATX-209-4の合成
【化40】
【0256】
100mlの三つ口フラスコに、MeOH(20ml、10V)、ATX-209-3(2g、1当量)を室温で添加した。NaBH(0.18g、1.5当量)を、0℃で少量ずつ反応混合物に添加した。得られた溶液を0℃で2時間撹拌し、TLCは、ATX-209-3の完全な消費を示した。次いで、20mLの水を添加することによって、反応をクエンチした。系を、METB(2×10ml、10V)で再び抽出した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。真空下で濃縮乾固して、ATX-209-3(1.5g、収率75%)を無色油として得た。LCMS(Schimadzu 2020;ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、5.50分、0.7分保持):RT 4.83分、m/z(計算値)624.57、(実測値)647.35(M+Na)。
【0257】
ATX-209-5の合成
【化41】
【0258】
100mlの四つ口丸型ボトルフラスコに、N下で機械的に撹拌しながら、THF(10mL)中のATX-209-SM2(1mol/L、31ml)を25℃で添加した。ギ酸エチル(1g、1.00当量)を、0℃で撹拌しながら滴下した。得られた溶液を室温で15時間撹拌した。次いで、NHCl溶液(20mL、20V)を添加することによって、反応をクエンチした。相を分離し、水層を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。次いで、有機層を合わせた。溶媒を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、真空下で濃縮した。残渣を6mLのACNでスラリー化した。固体を濾過によって収集した。これにより、ATX-209-5(2g、収率74%)を白色粉末として得た。
【0259】
ATX-209の合成
【化42】
【0260】
三つ口丸底フラスコに、DCM(30mL、20V)、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(0.45g、1.1当量)、ATX-209-4(1.5g、1当量)、及びDMAP(0.29g、1当量)を連続的に添加した。EDCI(0.60g、1.3当量)を、0℃で少量ずつ反応混合物に添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌し、TLCは、ATX-209-4の完全な消費を示した。反応系を、10%クエン酸溶液(15mL、10V)でクエンチした。有機相を収集し、有機相を10%クエン酸溶液(15mL、10V)で洗浄し、ブライン(15mL、10V)で洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。濾液に、5gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w)を添加し、温度を35℃未満に維持しながら、真空下で画分がなくなるまで濃縮した。25gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、8.00w/w)をカラムに充填し、続いて、最終工程で調製された乾燥シリカゲルを充填し、これが反応混合物を吸収した。Combi-flashを使用して、生成物を精製する。PE/EA(体積比)で溶出する。(100:0~50:1の勾配、20±10ml毎に収集)。TLC分析のために試料を採取する。適格な生成物を合わせる。真空下で濃縮乾固して、ATX-209(1.2g、収率75%)を無色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、5.50分、0.7分保持):RT 4.83分、m/z(計算値)737.5、(実測値)738.3(M+H);H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.860(t,J=6.2Hz,3H),2.370-2.201(m,14H),1.801(q,J=7.4Hz,2H),1.611-1.470(m,16H),1.272(m,40H),0.920-0.821(m,12H).
【0261】
実施例6.ATX-210の合成
【化43】
一般スキーム:
【化44】
【0262】
ATX-210-4の合成
【化45】
【0263】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した1Lの三つ口丸底フラスコに、5-オキソノナン二酸(6g、1.00当量)、DCM(90mL)を入れた。これに続いて、ペンタデカン-8-オール(6.77g、.0当量)、DMAP(0.72g、0.2当量)を添加し、これに、EDCI(6.84g、1.2当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、75mLのHCl(1mol/L)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を2×100mlのDCMで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を2×100mlのNaClで洗浄した。有機層を真空下で濃縮した。生成物を60mLのDCM中に溶解し、40gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)を添加した。混合物を真空下で濃縮した。残渣を、MeOH/DCM、0/1~1/10の勾配で、大気圧シリカゲルカラム(400g、タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)上に適用し、生成物溶出液(1/20~1/10)を収集した。収集した生成物相を真空下で濃縮した。これにより、7.2g(58.8%)のATX-210-4を黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2分、0.7分保持):RT 1.60分、m/z(計算値)412.32、(実測値)435.15(M+Na)。
【0264】
ATX-210-5の合成
【化46】
【0265】
1Lの四つ口丸型ボトルフラスコに、N下で機械的に撹拌しながら、THF(200mL)中の540mLの臭化ペンチルマグネシウム(1mol/L)を25℃で充填した。ギ酸エチル(20.0g、1.0当量)を0℃で撹拌しながら滴下して充填した。得られた溶液を室温で15時間撹拌した。次いで、500mLのNHClを添加することによって、反応をクエンチした。相を分離し、水層を2×500mLの酢酸エチルで抽出した。次いで、有機層を合わせた。溶媒を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、真空下で濃縮した。これにより、38.9g(83.6%)のウンデカン-6-オールを黄色油として得た。
【0266】
ATX-210-6の合成
【化47】
【0267】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した1Lの三つ口丸底フラスコに、ATX-210-4(7.2g、1.00当量)、DCM(108mL)を入れた。これに続いて、ウンデカン-6-オール(3.0g、1.0当量)、DMAP(0.43g、0.2当量)を添加し、これに、EDCI(4.1g、1.2当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、75mLのHCl(1mol/L)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を2×100mlのDCMで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を2×100mlのNaClで洗浄した。混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。これにより、10g(99.9%)のATX-210-6を黄色油として得て、更に精製することなく次の工程に直接使用した。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、5分、0.7分保持):RT 3.62分、m/z(計算値)566.49、(実測値)589.40(M+Na)。
【0268】
ATX-210-7の合成
【化48】
【0269】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した250mLの三つ口丸底フラスコに、ATX-210-6(10g、1.0当量)、THF/HO(10:1、100mL)を入れた。これに続いて、NaBH(1.34g、2.0当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、100mLの水/氷を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を3×100mLの酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を2×100mlのNaClで洗浄した。次いで、混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機層を真空下で濃縮した。生成物を10mLのDCM中に溶解し、40gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)を添加した。混合物を真空下で濃縮した。残渣を、1/0~10/1の勾配のPE/EAで、大気圧シリカゲルカラム(400g、タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)上に適用し、生成物溶出液(20/1~10/1)を収集した。収集した生成物相を真空下で濃縮した。これにより、7.1g(70.7%)のATX-210-7を黄色油として得て、更に精製することなく次の工程に直接使用した。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、5分、0.7分保持):RT 3.64分、m/z(計算値)568.50、(実測値)591.35(M+Na)。
【0270】
ATX-210の合成
【化49】
【0271】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(50mL)中のATX-210-7(3.3g、1.00当量)の溶液を入れた。4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(1.16g、1.20当量)、DMAP(0.14g、0.20当量)を添加し、続いて、EDCI(1.34g、1.20当量)を0℃で少量ずつ添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、50mLのNaHCO(1mol/L)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を3×50mLのDCMで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を2×50mLのブラインで洗浄した。有機層を真空下で濃縮した。生成物を5mLのDCM中に溶解し、15gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)を添加した。混合物を真空下で濃縮した。残渣を、1/0~10/1の勾配のPE/EAで、大気圧シリカゲルカラム(150g、タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ)上に適用し、生成物溶出液(20/1~10/1)を収集した。収集した生成物相を真空下で濃縮した。生成物をヘプタン(60mL、20V)中に溶解し、ヘプタン相を真空下で濃縮した。これにより、2.3g(60.0%)のATX-210を黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2分、0.7分保持):RT 1.84分、m/z(計算値)681.59、(実測値)682.40(M+H);H-NMR-PH-ARC-脂質-210-0:(300MHz,クロロホルム-d):δ 4.821-4.904(3H,m),2.235-2.357(8H,m),2.187-2.204(6H,s),1.571-1.831(16H,m),1.261(32H,s),0.855-0.899(12H,m).
【0272】
実施例7.ATX-230の合成
【化50】
一般スキーム:
【化51】
【0273】
ATX-230-1の合成
【化52】
【0274】
100mLの三つ口丸底フラスコに、THF(50mL、20V)中のATX-230-SM(2.5g、1.0当量)を添加した。NaH(560mg、鉱油中60%、1.2当量)を、0℃で数回にわけて反応混合物に添加し、30分間撹拌した。臭化ベンジル(2.4g、1.0当量)及びヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAI)(1.5g、0.1当量)を、0℃で反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、HPLCは、ATX-230-SMの完全な消費を示した。氷水をこの系に注意深く添加することによって、反応をクエンチし、10分間撹拌した。有機溶媒を真空中で蒸発させ、水相をDCM(2×25mL、20V)で抽出した。有機溶媒を真空下で濃縮した。残渣をTHF(25mL、10V)中に溶解し、6mol/LのHCl水溶液(25mL、10V)を室温で添加した。得られた溶液を室温で30分間撹拌した。溶液のpH値を、NaHCO水溶液で7~8に調整した。得られた溶液をエチルエーテル(2×25mL、20V)で抽出した。有機層を合わせ、無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。濾液に、8gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、3.20w/w)を充填し、温度を20℃未満に維持しながら、真空下で画分がなくなるまで濃縮した。40gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、16.00w/w.)をカラムに充填し、続いて、最終工程で調製された乾燥シリカゲルを充填し、これが反応混合物を吸収した。Combi-flashを使用して、生成物を精製する。PE/EAで溶出する。(体積比、100:0~95:5の勾配)。生成物画分を真空下で濃縮して、ATX-230-1(1.5g、収率60%)を白色固体として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 95:5~5:95 A/B、2分、0.7分保持):RT 0.79分、m/z(計算値)182.09、(実測値)205.10(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-1:(300MHz,クロロホルム-d):δ 7.40-7.29(5H,m),4.66(2H,s),3.83-3.71(4H,m),3.64-3.58(1H,m).
【0275】
ATX-230-2の合成
【化53】
【0276】
工程1:次いで、Nを有する乾燥三つ口フラスコ内のDCM(3L、20V)中のペンタデカン-8-オール(150.0g、1.0当量)の溶液に、TEA(266.0g、4.0当量)を一度に添加し、続いて、ブロモアセチルブロミド(526.0g、4.0当量)を0℃で添加した。反応物を室温で3日間撹拌し、飽和NHCl水溶液(10L、66.7V)を0℃で添加することによってクエンチした。粗化合物をDCM(10L*3、200V)で抽出した。合わせた有機画分をブライン(10L、66.7V)で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過した。濾液に、500gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、3.33w/w.)を添加し、温度を35℃未満に維持しながら、真空下で画分がなくなるまで濃縮する。2.5kgのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、16.67w/w.)をカラムに充填し、続いて、最終工程で調製された乾燥シリカゲルを充填し、これが反応混合物を吸収した。Combi-flashを使用して、生成物を精製する。PE/EA(体積比)で溶出する。(100:0の勾配、3±0.5L毎に収集)。TLC(PE:EA=8:1、Rf=0.2)分析のために試料を採取する。適格な画分を合わせ、濃縮乾固する。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80 A/B、3分、0.98分保持):RT 0.98分、m/z(計算値)348.17、(実測値)390.30(M+Na+HO)、H-NMR-PH-ARC-脂質-230-4:(300MHz,クロロホルム-d):δ 5.01-4.87(1H,m),3.81(2H,s),1.57(4H,m),1.34(22H,m),0.88(6H,t).
【0277】
工程2:100mLの三つ口丸底フラスコに、THF(30mL、20V)中のATX-230-1(1.5g、1.0当量)を添加した。t-BuOK(1.38g、1.5当量)を0℃で少量ずつ反応混合物に添加し、30分間撹拌した。ATX-230-4(4.3g、1.5当量)を、0℃で数回にわけて反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。追加のt-BuOK(1.38g、1.5当量)及びATX-230-4(4.3g、1.5当量)を、室温で反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。LCMSは、ATX-230-1の完全な消費を示した。次いで、塩化アンモニウム溶液(15mL、10V)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液をEtO(2*30mL、40V)で抽出した。有機層を合わせ、無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。濾液に、3gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w)を充填し、温度を20℃未満に維持しながら真空下で濃縮して、化合物を吸着させた。この物質を、PE/EA(体積比、100/0~95:5の勾配)を使用して20gのCombi-flashシリカゲルカラムで精製して、生成物を溶出した。画分をプールし、真空下で濃縮して、ATX-230-2(2.1g、収率35.5%)を黄色固体として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80 A/B、3分、2.6分保持):RT 2.62分、m/z(計算値)718.57、(実測値)741.50(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-2:(300MHz,クロロホルム-d):δ 7.39-7.27(5H,m),4.99-4.93(2H,m),4.52(2H,s),4.10(4H,s),3.99-3.68(m,5H),1.53(9H,m),1.49(42H,m),1.26-1.24(12H,t).
【0278】
ATX-230-3の合成
【化54】
【0279】
EA(21mL、10V)中のATX-230-2(2.1g、1.0当量)及び20%Pd(OH)/C(0.63g、30重量%)の溶液を、室温でオートクレーブに充填する。水素雰囲気(50atm)下で、35℃において16時間撹拌した。TLCは、ATX-230-2が完全に変換されたことを示した。反応混合物を濾過し、真空下、40℃で濃縮して、ATX-230-3(1.7g、収率95%)を白色固体として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80 A/B、3分、2.6分保持):RT 1.90分、m/z(計算値)628.53、(実測値)651.50(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-3:(300MHz,クロロホルム-d):δ 4.99-4.91(2H,dd),4.03(4H,s),3.67-3.37(4H,m),1.56-1.49(9H,m),1.29-1.25(40H,m),0.97-0.85(12H,t).
【0280】
ATX-230の合成
【化55】
【0281】
100mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(34mL、20V)中のATX-230-3(1.7g、1.0当量)、4(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(450mg、1.0当量)、及びDMAP(198mg、0.6当量)の溶液を添加した。EDCI(620mg、1.2当量)を、0℃で数回にわけて反応混合物に添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌した。反応系を、10%クエン酸水溶液(17mL、10V)でクエンチし、有機相を収集した。有機溶液を10%クエン酸水溶液(17mL、10V)、続いてブライン(17mL、10V)で洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、濾過した。混合物を5gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.94w/w)に吸着させ、100:0~98:2のDCM/MeOH勾配で溶出することによって、Combi-flashシリカゲルカラム(40g)で精製した。画分を含有する生成物をプールし、真空下で濃縮して、1.2g(収率65%)のATX-230を淡黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80 A/B、3分、2.6分保持):RT 0.96分、m/z(計算値)741.62、(実測値)742.6[M+1];H-NMR-PH-ARC-ATX-230-0:(400MHz,CDCl,ppm)δ 5.181(quint,J=5.0Hz,1H),4.931(quint,J=6.3Hz,2H),4.081(s,4H),3.830-3.700(m,4H),2.341(dt,J=41.4,7.4Hz,4H),2.212(s,6H),1.800(quint,J=7.4Hz,2H),1.530(d,J=3.9Hz,8H),1.25(m,40H),0.900-0.830(m,12H)。
【0282】
実施例8.ATX-231の合成
【化56】
一般スキーム:
【化57】
【0283】
ATX-231-1の合成
【化58】
【0284】
1Lの三つ口丸底フラスコに、アセトン(500mL、10V)中のエチルATX-231-SM1(50.0g、1.0当量)及びヨウ化ナトリウム(180g、.4.4当量)を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水(400mL、8V)で希釈し、ジエチルエーテル(400mL、8V)で抽出した。有機画分を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。ナトリウムエトキシド(10.8g、2.1当量)を絶対エタノール(90mL、2V)中に溶解した。ジエチルアセトンジカルボキシレート(36.0g、1.12当量)を添加し、溶液を加熱還流させた。次いで、6-ヨードカプロン酸エチル(24.0g、1.0当量)をゆっくり添加し、溶液を1時間還流させた。エタノール(90mL、2V)中のナトリウムエトキシド(10.8g、2.1当量)の溶液、続いて6-ヨード吉草酸エチル(24.0g、1.0当量)を添加した。溶液を一晩還流させた。反応混合物を冷却し、水(400mL、8V)で希釈し、ジエチルエーテル(400mL、8V)で抽出した。真空下で濃縮して、47.5g(粗製)のATX-231-1を黄色油として得た。
【0285】
ATX-231-2の合成
【化59】
【0286】
100mLの三つ口丸底フラスコに、クエン酸(40mL、1V)及びHCl(80mL、2V、12mol/L)中のATX-231-1(40.0g、1.0当量)を添加した。反応溶液を一晩還流させた。溶液を冷却し、水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。溶媒を除去し、残渣をアセトンから再結晶させ、真空下で乾燥させて、4g(14%)のATX-231-2を白色固体として得た。ELSD A:水/5mM NHHCO:B:CHCN 80:20~90:10 A/B、2分):RT 0.16分、m/z(計算値)258.15、(実測値)257.30[M+1];H-NMR-PH-ARC-ATX-231-1:(400MHz,CDCl,ppm)δ 2.5-2.49(m,2H),2.42-2.32(m,2H),2.19-2.15(m,4H),2.00-1.98(m,8H),1.51-1.47(m,4H).
【0287】
ATX-231-3の合成
【化60】
【0288】
工程1:
【化61】
【0289】
DCM(300ml、20V)、ATX-209-5(15g、1当量)、及びクロロクロム酸ピリジニウム(PCC、40g、2.5当量)を、500mlの三つ口フラスコに添加した。得られた溶液を室温で5時間撹拌した。TLC観察は、ATX-209-5の完全な変換を示した。溶媒を、真空下で蒸留することによって除去した。粗生成物をシリカゲルカラム上に適用し、生成物を酢酸エチル/石油エーテル(1:10)勾配で溶出して、ATX-231-8(13g、収率88%)を無色の透明油として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6) δ 2.38(t,J=7.3Hz,4H),1.53-1.36(m,4H),1.34-1.15(m,12H),0.89-0.80(m,6H).
【0290】
工程2:
【化62】
【0291】
THF(260ml、20V)及び(メトキシメチ)トリフェニルホスホニウムクロリド(32g、1.6当量)を、500mlの三つ口フラスコに添加し、続いてt-BuOK(11.8、1.6当量)を、0℃においてバッチで混合物に添加した。0℃で1時間撹拌した。ATX-231-8(13g、1当量)を反応混合物に添加した。室温で15時間撹拌した。この系に塩化アンモニウム水溶液(10重量%、260ml、20V)を添加して、クエンチした。MTBE(260ml、20V)を添加し、反応混合物に抽出し、有機相を収集した。有機相の濃縮後、混合物を、酢酸エチル/石油エーテル(2:98)とともにシリカゲルカラム上に適用した。ATX-231-7(10g、収率70%)を油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 5.74(s,1H),3.51(s,3H),2.03(t,J=7.3Hz,2H),1.88-1.81(m,2H),1.42-1.20(m,16H),0.93-0.83(m,6H).
【0292】
工程3:
【化63】
【0293】
THF(50ml、5V)、ATX-231-7(10g、1当量)、及び6N HCl(20ml、2V)を、250mlの三つ口フラスコに室温で添加した。50℃で5時間撹拌した。3N NaOH(40ml、4V)及びMTBE(100ml、10V)を反応混合物に添加し、生成物をエーテル相に抽出した。エーテル相を収集し、真空下で濃縮して、ATX-231-6(6.57g、収率71%)を油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 9.49(d,J=3.1Hz,1H),3.62(m,1H),1.22(m,20H),0.88-0.78(m,6H).
【0294】
工程4:
【化64】
【0295】
MeOH(65ml、10V)及びATX-231-6(6.57g、1当量)を、100mlの三つ口フラスコに室温で添加した。NaBH(1.76、1.5当量)を、0℃においてバッチで反応混合物に添加し、0℃で2時間撹拌した。クエン酸溶液(10重量%、65.7ml、10V)を、反応混合物に0℃で添加した。生成物を、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、65ml、10V)中に抽出し、有機相を収集し、真空下で濃縮して、ATX-231-5(5.2g、収率79%)を油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 3.53(d,J=5.4Hz,2H),3.48(s,1H),1.28(m,20H),0.93-0.83(m,6H).
【0296】
工程5:250mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(60mL、20V)中のATX-231-2(3.0g、1.0当量)、ATX-231-5(4.97g、2.0当量)、及びDMAP(1.42g、1.0当量)を添加した。次いで、EDCI(4.9g、2.2当量)を、0℃で数回にわけて反応混合物に添加した。得られた溶液を20℃で16時間撹拌し、TLCは、ATX-231-2の完全な消費を示した。反応を、10%クエン酸水溶液(30mL、10V)でクエンチした。単離有機相を、10%クエン酸水溶液(30mL、10V)、続いてブライン(30mL、10V)でもう一度洗浄した。有機相を無水MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。粗生成物を、6gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w)に吸着させ、100:0~98:2の石油エーテル/酢酸エチル勾配を使用して、30gのシリカゲルカラムで精製した。TLC分析後の適格な画分(10:1 PE:EA)をプールし、真空下で濃縮乾固して、4g(収率53%)のATX-231-3を無色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80A/B 3.5分):RT 2.89分、m/z(計算値)650.58、(実測値)673.50(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-2:(300MHz,クロロホルム-d):δ 3.97-3.96(d,J=2.4Hz,4H),2.45-2.43(m,4H),2.38-2.28(m,4H),1.66-1.60(9H,m),1.49(48H,m),0.86-0.88(12H,t).
【0297】
ATX-231-4の合成
【化65】
【0298】
100mLの三つ口フラスコに、MeOH(40mL、10V)中のATX-231-3(4.0g、1当量)を室温で添加した。次いで、NaBH(0.34g、1.5当量)を、0℃で数回にわけて反応混合物に添加した。得られた溶液を0℃で2時間撹拌した。TLC分析は、ATX-231-3の完全な消費を示した。水(40mL、10V)を添加することによって、反応をクエンチした。生成物をMTBEで2回抽出した(2×20ml、10V)。有機相を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固して、3.4g(収率85%)のATX-231-4を無色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80A/B 3.5分):RT 3.03分、m/z(計算値)652.60、(実測値)675.50(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-2:(300MHz,クロロホルム-d):δ 4.00-3.98(d,J=7.6Hz,4H),3.59-3.51(m,1H),2.35-2.30(m,4H),1.68-1.63(m,6H),1.55-1.29(m,55H),0.92-0.88(12H,t).
【0299】
ATX-231の合成
【化66】
【0300】
100mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(60mL、30V)中のATX-231-4(2.0g、1.0当量)、4-(ジメチル-アミノ)ブタン酸塩酸塩(0.81g、1.6当量)、及びDMAP(0.4g、1.1当量)の溶液を添加した。次いで、EDCI(1.0g、1.7当量)を、0℃で数回にわけて反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌し、TLCは、ATX-231-4の完全な消費を示した。反応を、10%クエン酸水溶液(20mL、10V)でクエンチし、有機相を単離した。有機相を、10%の追加のクエン酸水溶液(20mL、10V)、続いてブライン(20mL、10V)で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過した。粗生成物を、6gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、3.00w/w.)に吸着させ、30gのシリカゲルカラムを使用して、Combi-flashシステムで精製した。生成物を、100:0~98:2の石油エーテル酢酸エチルの勾配で溶出した。画分を分析し(TLC、EA:PE=1:10)、プールし、真空下で濃縮乾固して、1.5g(収率75%)のATX-231を淡黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80A/B 3.5分):RT 1.90分、m/z(計算値)766.25、(実測値)767.23(M+H)。H-NMR-PH-ARC-ATX-231-0:(300MHz,CDCl,ppm)δ 4.892-4.851(m,1H),3.988-3.969(d,J=5.8Hz,4H),2.957-2.905(t,J=8.2Hz,2H),2.713(s,6H),2.445(t,J=6.8Hz,2H),2.308(t,J=7.4Hz,4H),2.117(quint,J=6.9Hz,2H),1.650-1.521(m,10H),1.288(bs,48H),0.921-0.900(m,12H)。
【0301】
実施例9.ATX-232の合成
【化67】
一般スキーム:
【化68】
【0302】
ATX-232-4の合成:
【0303】
工程1:
【化69】
【0304】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した250mLの三つ口丸底フラスコに、EtO(100mL、10V)中のATX-232-SM3(10.0g、1.0当量)を室温で入れた。これに続いて、LiAlH(1.48g、1.0当量)を0℃で入れた。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、氷水(50mL、5V)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液をEA(3*200mL、60V)で抽出し、有機層を合わせた。有機層をブライン(2*100mL、20V)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。これにより、7.0g(収率75%)のATX-232-10を黄色油として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.18-4.11(m,1H),3.57-3.55(d,J=8Hz,2H),1.44-1.28(m,25H),0.93-0.85(m,6H).
【0305】
工程2:
【化70】
【0306】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した250mLの三つ口丸底フラスコに、ATX-210-4(5.0g、1.0当量)及びDCM(75mL、15V)を室温で入れた。これに続いて、ATX-232-10(2.91g、1.0当量)及びDMAP(0.3g、0.2当量)を室温で添加し、次いで、EDCI(2.74g、1.2当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、1mol/L HCl水溶液(25mL、5V)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液をDCM(3*165mL、100V)で抽出し、有機層を合わせた。有機層をブライン(2*150mL、60V)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗混合物を、10gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w.)に吸着させ、100:0~90:10のDCM/MeOH勾配で溶出することによって、100gのシリカゲルカラムで精製した。TLC分析後に画分をプールした。(DCM:MeOH=10:1)、減圧下で濃縮して、5.5g(収率72%)のATX-232-4を黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80A/B 3.5分):RT 2.81分、m/z(計算値)636.57、(実測値)659.55(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-2:(300MHz,クロロホルム-d):δ 4.89-4.85(m,1H),3.99-3.97(d,J=8Hz,2H),2.50-2.46(m,4H),2.36-2.29(m,4H),1.95-1.85(m,4H),1.52-1.51(6H,m),1.28(48H,m),0.91-0.84(m,12H).
【0307】
ATX-232-5の合成
【化71】
【0308】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの三つ口丸底フラスコに、THF/HO(10/1、55mL、10V)中のATX-232-4(5.5g、1.0当量)を室温で入れた。これに続いて、NaBH(0.88g、2.0当量)を0℃においていくつかのバッチで添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、氷水(27.5mL、5V)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液を酢酸エチル(3*90mL、50V)で抽出し、有機層を合わせた。有機層をブライン(2*110mL、40V)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗混合物を、11gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w.)に吸着させ、100:0~90:10のDCM/MeOH勾配で溶出することによって、60gのシリカゲルカラムで精製した。TLC分析後に画分をプールした。(DCM:MeOH=10:1)、減圧下で濃縮して、5.1g(収率93%)のATX-232-5を黄色油として得た。ELSD A:水/0.05%TFA:B:CHCN/0.05%TFA 80:20~20:80A/B 3.5分):RT 2.81分、m/z(計算値)638.58、(実測値)661.55(M+Na);H-NMR-PH-ARC-脂質-230-2:(300MHz,クロロホルム-d):δ 4.93-4.83(m,1H),4.00-3.98(d,J=8Hz,2H),3.66-3.62(m,12H),2.50-2.46(m,4H),2.64-2.69(m,4H),1.88-1.85(m,6H),1.95-1.85(m,4H),1.58-1.52(m,7H),1.47-1.44(m,44H),0.96-0.88(m,12H).
【0309】
ATX-232の合成
【化72】
【0310】
不活性窒素雰囲気でパージ及び維持した100mLの三つ口丸底フラスコに、DCM(80mL、15V)中のATX-232-5(5.1g、1.0当量)を室温で入れた。これに続いて、ATX-232-7(1.6g、1.2当量)及びDMAP(0.21g、0.2当量)を室温で添加し、次いで、EDCI(1.92g、1.2当量)を0℃で添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、氷水(25mL、5V)を添加することによって、反応をクエンチした。得られた溶液をDCM(3*80mL、50V)で抽出し、有機層を合わせた。有機層をブライン(2*100mL、40V)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗混合物を、11gのシリカゲル(タイプ:ZCX-2、100~200メッシュ、2.00w/w.)に吸着させ、100:0~90:10のDCM/MeOH勾配で溶出することによって、60gのシリカゲルカラムで精製した。TLC分析後に画分をプールした。(DCM:MeOH=10:1)、減圧下で濃縮して、1.1g(収率18.3%)のATX-232を黄色油として得た。LC-MS-PH-ARC-ATX-232-0:(ES,m/z):752[M+1];H-NMR-PH-ARC-ATX-232-0:(300MHz,CDCl,ppm):δ 4.997-4.858(m,2H),3.983(d,J=5.7Hz,2H),2.386-2.261(m,6H),2.261(s,6H),1.823(quint,J=7.2Hz,2H),1.799-1.512(m,13H),1.289(s,46H),0.922-0.882(m,12H)。
【0311】
実施例10.本発明の化合物の生物学的データ
本開示の脂質の有効性を評価するために、様々なアッセイを実施した。これらのアッセイの説明が後に続く。
【0312】
第VII因子ノックダウン評価のためのプロトコル
以下に更に説明されるFVII siRNAを含む脂質製剤を、本実施例のプロトコルを使用してノックダウン活性について評価した。FVII評価では、7~8週齢のメスのBalb/CマウスをCharles River Laboratories(Hollister,CA)から購入した。マウスを病原体のない環境で保持し、マウスが関与する全ての手順を、動物実験委員会(IACUC)によって確立されたガイドラインに従って行った。第VII因子siRNAを含有する脂質ナノ粒子を、10mL/kgの用量体積及び2つの用量レベル(0.03mg/kg及び0.01mg/kg)で静脈内投与した。48時間後、マウスをイソフルランで麻酔し、0.109Mクエン酸ナトリウム緩衝液(BD Biosciences、San Diego,CA)でコーティングされたMicrotainer(登録商標)チューブに後眼窩から採血し、血漿に処理した。血漿標本を、第VII因子レベルについて直ちに試験するか、又は後の分析のために-80℃で保存した。血漿中のFVIIタンパク質の測定を、比色分析Biophen VIIアッセイキット(Aniara Diagnostica,USA)を使用して決定した。吸光度を405nmで測定し、連続希釈した対照血漿を使用して較正曲線を生成し、生理食塩水で処置した対照動物と比較して、処置した動物からの血漿中の第VII因子のレベルを決定した。
【0313】
hEPO mRNA発現評価のためのプロトコル
以下のhEPO mRNAを含む脂質製剤を、本実施例のプロトコルに従ってインビボでhEPOを発現する能力について評価した。全ての動物実験は、機関が承認したプロトコル(IACUC)を使用して実施された。このプロトコルでは、少なくとも6~8週齢のメスのBalb/cマウスをCharles River Laboratoryから購入した。マウスに、hEPO-LNPを、2つの用量レベルのhEPO(0.1及び0.03mg/kg)のうちの1つを用いて、尾静脈を介して静脈内注射した。6時間後、血清分離チューブで血液を採取し、遠心分離によって血清を単離した。次いで、ELISAアッセイ(Human Erythropoietin Quantikine IVD ELISA Kit、R&D Systems、Minneapolis,MD)を使用して血清hEPOレベルを測定した。
【0314】
マウス血漿安定性
脂質ストック溶液を、5mg/mLの濃度のイソプロパノール中の脂質の溶解によって調製した。次いで、必要な体積の脂質-イソプロパノール溶液を、50:50(v/v)エタノール/水中で1.0mLの総体積において100μMの濃度に希釈した。37℃に予め加温し、磁気撹拌棒で50rpmにおいて撹拌した1.0mLのマウス血漿(BioIVT、カタログ番号:MSE00PLNHUNN、CD-1マウス、抗凝固剤:ヘパリンナトリウム、濾過せず)に、この100μM溶液の10マイクロリットルを添加した。したがって、血漿中の脂質の開始濃度は、1μMであった。0、15、30、45、60、及び120分の時点で、0.1mLの血漿を反応混合物から取り出し、1μg/mLの選択された内部標準脂質を添加した0.9mLの氷冷4:1(v/v)アセトニトリル/メタノールを添加することによって、タンパク質を沈殿させた。0.45ミクロンの96ウェル濾過プレートを通して濾過した後、濾液を、LC-MS(Thermo FisherのVanquish UHPLC-LTQ XL linear ion trap Mass Spectrometer)、Waters XBridge BEH Shield RP18 2.5μm(2.1×100mm)カラムによって、その一致するガードカラムを用いて分析した。移動相Aは、水中の0.1%ギ酸であり、移動相Bは、1:1(v/v)アセトニトリル/メタノール中の0.1%ギ酸であった。流量は、0.5分/分であった。溶出勾配は、時間0~1分:10%B、1~6分:10%~95%B、6~8.5分:95%B、8.5~9分:95%~10%B、9~10分:10%Bであった。質量分析は、600~1100m/zのポジティブスキャンモードであった。脂質の分子イオンのピークを、Xcaliburソフトウェア(Thermo Fisher)を使用して抽出イオンクロマトグラフィー(XIC)に組み込んだ。T=0と比較した相対ピーク面積を、内部標準のピーク面積による正規化後、各時点で残存する脂質の割合として使用した。T1/2値を、一次減衰モデルを使用して計算した。
【0315】
インビボ生分解性アッセイ
インビボ生分解性アッセイを実施して、LNP中の脂質の生分解性を評価した。簡潔に述べると、マウスに0.1又は0.03mg/Kgの用量のいずれかを注射し、24又は48時間後にマウス肝臓を採取した。マウス肝臓中の脂質の濃度を測定するために、肝臓試料を1~10希釈の適切な緩衝液中で均質化し、同量の安定化血漿と混合した。次いで、試料を、内部標準でスパイクされた有機溶媒と混合して、タンパク質を沈殿させた。遠心分離後、上清を有機溶媒で更に希釈した後、LC-MSによって試料を分析した。LC-MS分析では、正のエレクトロスプレーイオン化を使用し、脂質分析物及び内部標準を特異的に標的化するように、多重反応モニタリング(MRM)パラメータを設定した。較正標準を安定化血漿中で調製し、タンパク質沈殿前に同量の均質化緩衝液と混合した。既知の量の脂質を有する品質管理試料をブランク肝臓ホモジネート中で調製して、アッセイの精度及び正確さを監視した。
【表1】
【表2】
【0316】
化合物-10111は、以下に示され、WO2021/030701の243ページに列挙されている。
【化73】
【0317】
以下の表3は、ATX化合物の計算されたLogD(cLogD)及び計算されたpKa(cpKa)、並びに括弧内の測定されたpKaを示す。cLogD及びcpKa値は、ACD Labs Structure Designer v12.0によって生成される。
【表3】
【0318】
前述の発明は、理解の明確さの目的で、例示及び実例によってある程度詳細に説明されてきたが、当業者であれば、ある特定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることを理解するであろう。更に、本明細書に提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個別に組み込まれるのと同じ程度まで、その全体が参照により組み込まれる。本出願と本明細書に提供される参考文献との間に矛盾が存在する場合、本出願が優先するものとする。
【国際調査報告】