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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両のための加熱及び冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20240423BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240423BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240423BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20240423BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/04 Z
B60K1/00
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/663
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568040
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 GB2022051130
(87)【国際公開番号】W WO2022234269
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2106393.8
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516017189
【氏名又は名称】イクイップメイク・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EQUIPMAKE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モチェク,アレクサンダー・ドミニク
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC20
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC15
3D235FF25
3D235FF38
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
車両のための加熱及び冷却システムは、第一の熱交換器(HED2)と第二の熱交換器(HED3)とを有し、及び第一の熱交換器で熱エネルギを受け取り、熱エネルギを第一の熱交換器から第二の熱交換器に伝達し、且つ第二の熱交換器で熱エネルギを出力するように構成された熱伝達アセンブリ(20)を含む。システムは、第一の液体貯蔵容器のための低温タンク(24)と、第二の液体貯蔵容器のための高温タンク(26)と、流体導管のネットワークであって、低温タンクを第一の熱交換器に、高温タンクを第二の熱交換器に、且つ低温及び高温タンクを、車両内における、タンクからの液体を使用して加熱又は冷却される場所に連結する流体導管のネットワークとを有する液体冷媒分配システム(22)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための加熱及び冷却システムであって、
第一の熱交換器と第二の熱交換器とを有し、及び前記第一の熱交換器で熱エネルギを受け取り、熱エネルギを前記第一の熱交換器から前記第二の熱交換器に伝達し、且つ前記第二の熱交換器で熱エネルギを出力するように構成された熱伝達アセンブリと、
液体冷媒分配システムであって、
第一の液体貯蔵容器のための低温タンクと、
第二の液体貯蔵容器のための高温タンクと、
流体導管のネットワークであって、
前記低温タンクを前記第一の熱交換器に、
前記高温タンクを前記第二の熱交換器に、及び
前記低温及び高温タンクを、前記車両内における、前記タンクからの液体を使用して加熱又は冷却される場所に
連結する流体導管のネットワークと
を含む液体冷媒分配システムと
を含む加熱及び冷却システム。
【請求項2】
前記熱伝達アセンブリは、
第一及び第二の流体入口と第一及び第二の流体出口とを有する第三の熱交換器であって、熱エネルギを、前記第一の入口から前記第一の出口に流れる流体から、前記第二の入口から前記第二の出口に流れる流体に伝達するように配置される第三の熱交換器と、
膨張装置と、
圧縮器と、
液体を、前記第三の熱交換器の前記第一の出口から前記膨張装置を介して前記第一の熱交換器に、且つその後、前記第三の熱交換器の前記第二の入口に搬送するように配置された流体導管の第一のループと、
液体を、前記第三の熱交換器の前記第二の出口から前記圧縮器を介して前記第二の熱交換器に、且つその後、前記第三の熱交換器の前記第一の入口に搬送するように配置された流体導管の第二のループと
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
熱伝達アセンブリであって、
第一の熱交換器及び第二の熱交換器であって、前記アセンブリは、前記第一の熱交換器で熱エネルギを受け取り、熱エネルギを前記第一の熱交換器から前記第二の熱交換器に伝達し、且つ前記第二の熱交換器で熱エネルギを出力するように構成される、第一の熱交換器及び第二の熱交換器と、
第一及び第二の流体入口と第一及び第二の流体出口とを有する第三の熱交換器であって、熱エネルギを、前記第一の入口から前記第一の出口に流れる流体から、前記第二の入口から前記第二の出口に流れる流体に伝達するように配置される第三の熱交換器と、
膨張装置と、
圧縮器と、
液体を、前記第三の熱交換器の前記第一の出口から前記膨張装置を介して前記第一の熱交換器に、且つその後、前記第三の熱交換器の前記第二の入口に搬送するように配置された流体導管の第一のループと、
液体を、前記第三の熱交換器の前記第二の出口から前記圧縮器を介して前記第二の熱交換器に、且つその後、前記第三の熱交換器の前記第一の入口に搬送するように配置された流体導管の第二のループと
を含む熱伝達アセンブリ。
【請求項4】
前記第三の熱交換器は、その第一の入口がその第一の出口より高いように配置される、請求項2に記載のシステム又は請求項3に記載の熱伝達アセンブリ。
【請求項5】
前記第三の熱交換器は、その第二の入口がその第二の出口より低いように配置される、請求項2若しくは4に記載のシステム又は請求項3若しくは4に記載の熱伝達アセンブリ。
【請求項6】
前記第三の熱交換器は、その第二の入口がその第二の出口より高いように配置され、及び前記第二の出口と前記圧縮器との間で前記流体導管の第二のループによって画定される流体経路は、前記第二の入口と少なくとも同じ高さの部分を含む、請求項2若しくは4に記載のシステム又は請求項3若しくは4に記載の熱伝達アセンブリ。
【請求項7】
前記タンク間で液体を搬送するために前記低温及び高温タンク間に連結されたタンク液面調整導管を含む、請求項1、2又は4~6の何れか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記車両の外部の大気からの熱エネルギを前記低温タンクからの液体に伝達するために前記低温タンクに流体連結された第一の液体-空気熱交換器を含む、請求項1、2又は4~7の何れか1項に記載のシステム。
【請求項9】
熱エネルギを前記高温タンクからの液体から前記車両の外部の大気に伝達するために前記高温タンクに流体連結された第二の液体-空気熱交換器を含む、請求項1、2又は4~8の何れか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第一の流体-空気熱交換器は、熱エネルギを前記高温タンクからの液体から前記車両の外部の大気に伝達するために前記高温タンクにも流体連結される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記低温及び高温タンクは、前記タンクからの液体と、前記車両の使用者によって占有される前記車両の内部領域内における又はそれに供給される空気との間で熱エネルギを交換するための液体-空気熱交換器に流体連結される、請求項1、2又は4~10の何れか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記低温及び高温タンクは、前記タンクからの液体と、前記車両に電力供給するためのバッテリを保持するための前記車両の内部領域内における又はそれに供給される空気との間で熱エネルギを交換するための液体-空気熱交換器に流体連結される、請求項1、2又は4~11の何れか1項に記載のシステム。
【請求項13】
車両駆動モータを冷却するための液体を前記低温及び/又は高温タンクから供給するように配置される、請求項1、2又は4~12の何れか1項に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1、2又は4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法であって、熱エネルギを、前記低温タンクから前記高温タンクに前記熱伝達アセンブリを介して伝達するステップを含む方法。
【請求項15】
熱エネルギを、前記車両の外部の大気から、前記低温タンクに供給される液体に液体-空気熱交換器を介して伝達するステップを含む、請求項1、2若しくは4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
熱エネルギを、前記高温タンクから前記車両の外部の大気に液体-空気熱交換器を介して伝達するステップを含む、請求項1、2若しくは4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法又は請求項14に記載の方法。
【請求項17】
熱エネルギを前記車両内の場所から前記低温タンクに伝達するステップを含む、請求項1、2若しくは4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法又は請求項14~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
熱エネルギを前記車両内の場所と前記高温タンクとの間で伝達するステップを含む、請求項1、2若しくは4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法又は請求項14~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
熱エネルギを車両駆動モータから前記低温又は高温タンクに伝達するステップを含む、請求項1、2若しくは4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法又は請求項14~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
熱エネルギを、前記車両に電力供給するためのバッテリを保持するための前記車両の内部領域から前記低温タンクに伝達するステップ又は熱エネルギを前記高温タンクから前記内部領域に伝達するステップを含む、請求項1、2若しくは4~13の何れか1項に記載のシステムを動作させる方法又は請求項14~19の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、車両内の温度制御に関する。より具体的には、本開示は、車両内の温度を制御するためのエネルギ使用の効率を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
輸送の環境影響を軽減することが継続的に求められている。車両の内部温度の制御では、相当な量のエネルギが消費され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
開示の概要
本開示は、車両のための加熱及び冷却システムであって、
第一の熱交換器と第二の熱交換器とを有し、及び第一の熱交換器で熱エネルギを受け取り、熱エネルギを第一の熱交換器から第二の熱交換器に伝達し、且つ第二の熱交換器で熱エネルギを出力するように構成された熱伝達アセンブリと、
液体冷媒分配システムであって、
第一の液体貯蔵容器のための低温タンクと、
第二の液体貯蔵容器のための高温タンクと、
流体導管のネットワークであって、
低温タンクを第一の熱交換器に、
高温タンクを第二の熱交換器に、及び
低温及び高温タンクを、車両内における、タンクからの液体を使用して加熱又は冷却される場所に
連結する流体導管のネットワークと
を含む液体冷媒分配システムと
を含む加熱及び冷却システムを提供する。
【0004】
システムは、液体の2つのタンク又は貯蔵容器と組み合わせて熱伝達アセンブリ又はヒートポンプを含む。タンクの一方(「高温タンク」)は、液体を、他のタンク(「低温タンク」)内に保持される液体より高い温度で保持するために提供される。熱伝達アセンブリは、熱エネルギを低温タンクから高温タンクに伝達するように動作可能である。それにより、タンクは、液体熱伝達媒質の供給源を2つの異なる温度で提供する。
【0005】
システムの動作中、液体は、システムの異なる部品間で熱エネルギを伝達して、車両の様々な領域の温度を制御するために使用され得る。液体(水、グリコールと混合した水又は他の冷媒流体)を熱伝達媒質として使用することにより、代わりに空気を使用した場合と比較して熱伝達速度が高くなり得る。それにより、システムは、車両による温度制御のためのエネルギ使用効率を向上させることを容易にする。
【0006】
車両のための既知の温度制御システムでは、空気冷却を提供するために、空気がエアコンの蒸発器に直接吹き付けられる。本願のシステムを用いると、熱エネルギは、液体を使用して車両の領域に伝達されるか又はそこから抽出され得る。熱伝達は、その後、関係する領域内で液体-空気熱交換を利用して行われ得、及び/又は液体熱伝達媒質とコンポーネントとの間の熱交換は、直接接触を介して行われ得る(空気循環を使用する場合と異なる)。
【0007】
本発明者は、バスの客室の温度を制御するために使用されるエネルギの量が、周囲の外気温に応じて、バスを駆動するのに消費される量と同程度になり得ることを実証した。同時に、本発明者は、バス内の他の領域でも温度管理が必要であることを認識した。例えば、電力を利用して駆動されるバスは、電気モータ、バッテリパック及びインバータを有し、これらは、動作のためのある程度の温度制御と、場合によりその効率を最適化するためのより厳しい温度制御とを必要とする。
【0008】
例えば、一部の周囲条件では、バスの客室は、15~20℃に暖房する必要があり得るのに対して、他の領域、例えばバッテリパックは、15~5℃に冷却する必要があり得る。
【0009】
旅客車両の温度制御で考慮すべき他の要素は、乗客が1人当たり約100Wの熱エネルギを放出し得る点である。したがって、90人乗りの2階建てバスの場合、客室内で乗客から最大9kWの熱を受け得る。典型的な1日においてバスが運ぶ乗客の人数は、毎回大きく異なり得、そのため、客室の暖房又は冷房需要もその日の時間により大きく異なり得る。
【0010】
本開示による加熱及び冷却システムは、車両内の温度分布を多目的且つ効率的に管理することができる。
【0011】
低温タンクは、第一の熱交換器に流体連結されて、熱エネルギを、低温タンクから引き出された液体から第一の熱交換器に伝達することを可能にし得る。その後、この液体は、低温タンクに戻り得る。
【0012】
高温タンクは、第二の熱交換器に流体連結されて、熱エネルギを、第二の熱交換器から、高温タンクから引き出された液体に伝達することを可能にし得る。この液体は、その後、高温タンクに戻され得る。
【0013】
低温及び高温タンクの一方又は両方は、車両内の場所に流体連結されて、タンクからの液体を使用してその場所の冷却及び/又は加熱を容易にし得る。液体は、その後、それが引き出されたタンクに戻され得る。
【0014】
システムは、液体を低温及び高温タンクの何れか一方から(冷却又は加熱の何れかが必要な場合)車両内の複数の場所の1つ又は複数に選択的に循環させることができるように構成され得る。
【0015】
好ましくは、熱伝達アセンブリは、
第一及び第二の流体入口と第一及び第二の流体出口とを有する第三の熱交換器であって、熱エネルギを、第一の入口から第一の出口に流れる流体から、第二の入口から第二の出口に流れる流体に伝達するように配置される第三の熱交換器と、
膨張装置と、
圧縮器と、
液体を、第三の熱交換器の第一の出口から膨張装置を介して第一の熱交換器に、且つその後、第三の熱交換器の第二の入口に搬送するように配置された流体導管の第一のループと、
液体を、第三の熱交換器の第二の出口から圧縮器を介して第二の熱交換器に、且つその後、第三の熱交換器の第一の入口に搬送するように配置された流体導管の第二のループと
を含む。
【0016】
この熱伝達アセンブリ構成は、熱伝達を高効率で提供し得る。
本開示は、熱伝達アセンブリであって、
第一の熱交換器及び第二の熱交換器であって、アセンブリは、第一の熱交換器で熱エネルギを受け取り、熱エネルギを第一の熱交換器から第二の熱交換器に伝達し、且つ第二の熱交換器で熱エネルギを出力するように構成される、第一の熱交換器及び第二の熱交換器と、
第一及び第二の流体入口と第一及び第二の流体出口とを有する第三の熱交換器であって、熱エネルギを、第一の入口から第一の出口に流れる流体から、第二の入口から第二の出口に流れる流体に伝達するように配置される第三の熱交換器と、
膨張装置と、
圧縮器と、
液体を、第三の熱交換器の第一の出口から膨張装置を介して第一の熱交換器に、且つその後、第三の熱交換器の第二の入口に搬送するように配置された流体導管の第一のループと、
液体を、第三の熱交換器の第二の出口から圧縮器を介して第二の熱交換器に、且つその後、第三の熱交換器の第一の入口に搬送するように配置された流体導管の第二のループと
を含む熱伝達アセンブリをさらに提供し得る。
【0017】
第三の熱交換器をこのように含めることにより、熱伝達アセンブリによるある電力消費レベルで熱伝達アセンブリによって実現可能な熱伝達速度を実質的に高め得る(おそらくほぼ2倍となる)。
【0018】
膨張装置は、流体圧力を低下させるように構成される。これは、例えば、毛細管、圧力制御弁、電気膨張装置又は温度自動若しくは温度式膨張弁の形態であり得る。
【0019】
本明細書で開示される熱伝達アセンブリは、第三の熱交換器の第一の入口が第一の出口より高いように配置され得、及び/又はその第二の入口は、その第二の出口より低くし得る。これにより、その第一の出口から冷却剤が気体の形態で出て、且つ/又はその第二の出口から冷却剤が液体の形態で出る可能性が低下し得る。これは、熱伝達アセンブリの効率を改善しやすい。
【0020】
さらなる例では、第三の熱交換器は、その第二の入口がその第二の出口より高いように配置され得る。この場合、第二の出口と圧縮器との間の流体経路は、第二の入口と少なくとも同じ高さの部分を含むことが好ましい。
【0021】
幾つかの実装形態では、タンク間で液体を搬送するために、タンク液面調整導管が低温及び高温タンク間に連結され得る。これにより、必要に応じてタンク内の液面を調整することが容易になる。
【0022】
システムは、車両の外部の大気からの熱エネルギを低温タンクからの液体に伝達するために低温タンクに流体連結された第一の液体-空気熱交換器を含み得る。したがって、低温タンク内の液体の温度が所定の閾値より下がると、その温度は、大気から熱エネルギを引き出すことによって上昇され得る。
【0023】
熱エネルギを高温タンクからの液体から車両の外部の大気に伝達するために、第二の液体-空気熱交換器が高温タンクに流体連結され得る。そのため、高温タンク内の液体の温度が所定の閾値より高くなると、その温度は、熱エネルギを大気に散逸させることによって低下され得る。
【0024】
好ましい例において、第一の流体-空気熱交換器は、熱エネルギを車両の外部の大気から、低温タンクからの液体に輸送し、且つ熱エネルギを高温タンクからの液体から大気に伝達するために、低温タンク及び高温タンクの両方に流体連結され得る。
【0025】
低温及び高温タンクは、タンクからの液体と、車両の使用者によって占有される車両の内部領域内における又はそれに供給される空気との間で熱エネルギを交換するための液体-空気熱交換器に流体連結され得る。システムは、それにより、車両の客室内の温度をその車両の他の領域の温度とは別に制御することを容易にし得る。
【0026】
低温及び高温タンクは、タンクからの液体と、車両に電力供給するためのバッテリを保持するための車両の内部領域内における又はそれに供給される空気との間で熱エネルギを交換するための液体-空気熱交換器に流体連結され得る。システムは、それにより、車両のバッテリコンパートメント内の温度をその車両の他の領域の温度とは別に制御することを容易にし得る。
【0027】
システムは、車両の駆動モータを冷却するための液体を低温及び/又は高温タンクから供給するように配置され得る。システムは、それにより、車両の駆動モータの温度を車両の他の領域の温度とは別に制御し得る。加えて、本システムを用いることでモータのより大幅な冷却が実現可能となり、それにより特に大気温度が高いときのモータの性能を改善し得る。
【0028】
本開示は、本明細書で開示される車両の加熱及び冷却システムを動作させる方法も提供し、この方法は、熱エネルギを、低温タンクから高温タンクに熱伝達アセンブリを介して伝達するステップを含む。これにより、タンク内に保持される液体の貯蔵容器を大きく異なる温度に維持して、車両内での温度制御のための熱エネルギの効率的な使用を容易にすることができる。
【0029】
本明細書で開示される車両の加熱及び冷却システムを動作させる方法は、熱エネルギを、車両の外部の大気から、低温タンクに供給される液体に流体-空気熱交換器を介して伝達するステップ及び/又は熱エネルギを、高温タンクからの液体から車両の外部の大気に流体-空気熱交換器(又はその流体-空気熱交換器)を介して伝達するステップを含み得る。
【0030】
本明細書で開示される車両の加熱及び冷却システムを動作させる方法は、熱エネルギを車両内の場所から低温タンクに伝達するステップ及び/又は熱エネルギを車両内の場所と高温タンクとの間で伝達するステップを含み得る。
【0031】
本明細書で開示される車両の加熱及び冷却システムを動作させる方法は、熱エネルギを、車両を駆動するための車両駆動モータから低温又は高温タンクに伝達するステップを含み得る。
【0032】
本明細書で開示される車両の加熱及び冷却システムを動作させる方法は、熱エネルギを、車両に電力供給するためのバッテリを保持するための車両の内部領域から低温タンクに伝達するステップ又は熱エネルギを高温タンクから前記内部領域に伝達するステップを含み得る。
【0033】
図面の簡単な説明
ここで、添付の概略的な図面を参照して本開示の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】冷却システムを表す図である。
図2A】本開示のある例による加熱及び冷却システムの2つの部分を示す図である。
図2B】本開示のある例による加熱及び冷却システムの2つの部分を示す図である。
図3】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図4】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図5】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図6】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図7】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図8】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図9】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図10】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
図11】本開示によるシステムの動作モードの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
冷却システムは、そのようなシステムの特徴を例示するために図1に示されている。冷却剤の蒸気が圧縮器CP1に供給される。その後、圧縮器は、蒸気を圧縮して、その体積を約7~12の係数で縮小させる。圧縮器は、圧縮器の入口及び出口の蒸気圧を監視するデュアル圧力コントローラPS1によって制御される。その後、圧縮された蒸気は、圧縮器から凝縮器C1に進み、そこで、これは、気体から液体に凝縮される。凝縮器は、周囲空気を凝縮器の表面に吹き付けるファン10によって冷却される。
【0036】
凝縮器によって排出された液体は、冷却剤タンクRC1に供給され、これは、液体を、残っている気体があればそれから分離する。タンクRC1の下流にサービス連結部SC1があり、これにより冷却剤の圧力の監視及び冷却剤の除去又は追加が容易になる。連結部SC1の後、冷却剤及び冷却剤の状態を点検できる点検窓から水分を取り除くフィルタ及び乾燥器FD1が続く。
【0037】
その後、液体は、温度自動膨張弁EED1(TEV)の形態の電気膨張装置に供給され、これは、高圧の液体を、冷却剤が気化される低圧蒸発器E1に噴霧する。TEVは、蒸発器の下流にある温度センサT1に応答する。第二のファン12は、空気を蒸発器の表面に吹き付け、それが蒸発器の外面によって冷却される。第二のサービス連結部SC2は、蒸発器の下流に提供される。その後、蒸気は、圧縮器CP1に供給される。
【0038】
本開示による加熱及び冷却システムの例が図2A及び2Bに示されている。システムの熱伝達アセンブリ又はヒートポンプ部20が図2Aに示され、システムの熱分配部22が図2Bに示される。
【0039】
図2Aの熱伝達アセンブリ20は、熱エネルギを熱交換装置HED2から熱交換装置HED3に伝達するように構成される。これらの2つの装置は、図2Bに示される分配システムの一部も形成する。
【0040】
図2Aの熱伝達アセンブリでは、冷却剤の蒸気が圧縮器CP1に供給される。その後、圧縮器は、蒸気を圧縮して、その体積を約5~7の係数で縮小させる。
【0041】
圧縮器の入口及び出口管(VIB1及びVIB2)は、好ましくは、圧縮器のその動作中の振動を吸収するための振動吸収管である。VIB1及びVIB2は、圧縮器CP1と平行に接続され、安全圧力弁SPV1を含むバイパス導管14を介して相互に流体連結される。加えて、VIB1の上流に別の安全圧力弁SPV2が含められ、これは、排気管16によって大気に連結される。
【0042】
圧縮器から出た蒸気は、熱交換装置HED3に供給される。HED3から排出された流体(これは、液体と蒸気の形態の流体1~10%からなり得る)は、その後、熱交換装置HED3から圧力センサSVP2を介して別の熱交換装置HED1の第一の入口I1に進む。液体は、HED1内の第一の入口I1に流体に連結された第一の出口O1によって熱交換装置HED1から出る。
【0043】
液体インジケータ18は、安全のためにHED1のI1からO1への流体の流れと平行に連結される。例えば、これは、液体の有無を示すための上側及び下側点検窓、それぞれSG2及びSG3を含み得る。
【0044】
HED1の後、液体は、したがって、サービス弁SSV1及び点検窓SG1を通して流れる。
【0045】
その後、液体は、温度自動膨張弁EED1(TEV)の形態の電気膨張装置に流れる。弁は、高圧の液体を熱交換装置HED2に噴霧し、そこで、これは、熱エネルギを吸収して気化する。圧力センサSVP1及び点検弁SSV3は、したがって、HED2の下流に位置付けられる。HED2から出た蒸気は、その後、熱交換装置HED1の第二の入口I2に供給される。蒸気は、HED1から第二の出口O2を通して出て、圧縮器CP1に供給される。
【0046】
HED1の第一の入口I1から第一の出口O1に流れる流体は、第二の入口I2から第二の出口O2に流れる流体と反対方向に流れる。装置HED1により、熱エネルギを、第一の入口I1を介して入る流体から、第二の入口I2を介して入る流体に伝達することが容易になる。
【0047】
好ましくは、熱伝達アセンブリ20のコンポーネントを相互接続する流体管は、比較的大きい内部断面積を有して流体流に対する抵抗を減らし、それにより熱伝達アセンブリの効率が向上する。例えば、管の直径は、約7/8~1 3/8インチであり得、好ましくは5/8インチ未満である。
【0048】
図2Aに示される熱伝達アセンブリの構成によって多くの利点が提供される。HED1の入口I1は、関連する出口O1より高い位置にある。これは、液体のみが出口から引き出されることを確実にするのに役立ち得、それは、液体が重力によってHED1の出口側のより下側の部分に集まる傾向があるためである。したがって、これは、液体を蒸気が残っていれば、それから分離することを支援する。
【0049】
HED1の第一の入口I1からその出口O1に流れる流体から、第二の入口I2から第二の出口O2に流れる流体によって熱エネルギが引き出されるため、熱交換装置HED1は、I1とO1との間の別の凝縮ステージを形成する。
【0050】
さらに、HED1の第二の入口I2からその第二の出口O2に流れる流体は、第一の入口I1から第一の出口O1に進む流体から熱エネルギを受けるため、HED1は、I2とO2との間の別の蒸発ステージを構成し、残っている液滴を蒸気に変換する。第二の出口は、第二の入口より高いため、蒸気のみがHED1からその出口O2を介して出る傾向があり、これは、蒸気が重力によってHED1の出口側のより上側の部分に集まるためである。これは、圧縮器CP1の効率を向上させることになり、これは、蒸気が、それがHED1内でI2からO2に通過する際に加熱された結果として上昇した蒸気圧によって圧縮比がより小さくて済む(したがって性能係数が高くなる)ことによる。また、圧縮器に到達する液体の量が少なくなり、さもなければ、これは、その性能及び効率を損なう可能性がある。さらに、HED1によって実現される熱伝達により、出口O2から出る蒸気圧が上昇し、その結果、圧縮器が冷却剤を所望の温度まで圧縮するために行う必要のある仕事が少なくなる。
【0051】
代替的な構成では、入口I2は、出口O2より高い位置にあり得る。そのため、図2Aに示される例では、入口I2は、HED1に対して、図2AでO2が接続される位置で接続され得、その逆も同様である。O2を圧縮器CP1に連結する流体導管が何れかの地点で入口I2と同じ高さ又はそれより高い位置になった場合、このように同程度であることは、圧縮器が動作していない期間にHED1による熱伝達率が低下したとしても、蒸気のみが圧縮器に到達する傾向があることを意味する。
【0052】
I2及びO2に関するこの代替的な構成は、圧縮器が油分分離器を有しない場合にも望ましいことがあり、これは、それにより冷却剤の油成分が圧縮器に戻る流れを促進し得るからである。冷却剤の気化した成分の速度によって油分が出口O2から外に運ばれて、それは、HED1と圧縮器との間の導管の高い部分を通して持ち上げられる傾向がある。そうでなければ、油分は、HED1に溜まる可能性がある。
【0053】
好ましくは、HED1の熱伝達面積は、HED2の熱伝達面積の少なくとも75%である。
【0054】
比較的大型の熱交換器をHED1として使用することが好ましい。これにより、熱交換器は、高い熱交換率を提供することができる。熱交換器が、入口I1と出口O1との間に溜まり得る液体を貯めておき、入口I2と出口O2との間に溜まり得る気体を貯めておくことも可能となる。例えば、システムのパワー10kWごとに、HED1は、好ましくは、その2つの流路の各々について少なくとも1.5lの内部容積を有する。システムパワーは、例えば、性能係数(COP)と圧縮器の電力定格との積によって定義され得る。HED1のそれぞれの側の内部容積は、例えば、比較的小型のシステムの1~10lから、より大型のシステムの10l超の範囲であり得る。
【0055】
HED1は、好ましくは、プレート式熱交換器の形態である。熱交換器の外部形状は、例えば、利用可能な空間に適したものとするのと同時に、必要な熱交換面積及び内部容積を保持するために適切な輪郭とし得る。
【0056】
図2Bに示される熱分配機構22は、液体冷媒のそれぞれの貯蔵容器を保持するための低温タンク24及び高温タンク26を含む。
【0057】
熱分配機構の周囲の、管のネットワークを介した冷媒の流れは、図2BにおいてSV1~SV27で示されるソレノイド弁によって制御可能である。様々な場所の温度は、T11~T17として示される温度センサを用いて監視される。
【0058】
加熱及び冷却システムは、ソレノイド弁、ポンプ及びシステムの他のコンポーネントを、温度センサから受け取った信号及び他の制御パラメータに応じて制御するためのコントローラを含み得る。コントローラは、専用のプログラマブルコントローラ又は制御ユニットであり得る(又は複数のコントローラによって形成され得る)。コントローラは、車両の様々な領域で必要とされる範囲内の温度を実現及び/又は保持するために、それらの様々な領域の温度特性、気温及び車両の各コンパートメント内の現在の温度を考慮して、システムを動作させるのに最も適切な方法を特定するように構成され得る。
【0059】
ポンプP1は、低温タンク24と熱交換装置HED2との間に流体連結され、熱分配機構は、低温タンク24とHED2との間で冷媒を循環させることができるように構成される。同様に、ポンプP2は、高温タンク26と熱交換装置HED3との間に流体連結され、高温タンク26とHED3との間で冷媒を循環させることができるように配置される。熱伝達アセンブリ20によるHED2からHED3への熱エネルギ伝達の結果として、それぞれポンプP1及びP2によるHED2及びHED3を介した冷媒の循環は、低温タンク24内に保持される冷媒を冷却し、高温タンク26内に保持される冷媒を加熱する傾向がある。
【0060】
各タンクの容量は、例えば、約1.5~4リットルであり得る。ポンプP1は、例えば、約40リットル/分を送出可能であり得る。
【0061】
流体導管FAL1は、低温タンク24及び高温タンク26を相互に直接連結する。これは、何れかのタンク内において、例えば弁の故障によって所定のレベルが超過された場合、冷媒液体を一方のタンクから他方に伝達するように構成される。
【0062】
低温及び高温タンク24、26の各々は、ラジエータ28の形態の共通の流体-気体熱交換器に流体連結される。ラジエータは、車両の周囲の大気に露出している。ファンF1は、大気をラジエータの表面に吹き付けるように構成される。
【0063】
低温タンク24内の冷媒の温度が所定の閾値より低くなると、システムは、冷媒をタンクからラジエータ28内に循環させて、熱エネルギを大気から冷媒に引き込むように制御され得る。
【0064】
高温タンク内の冷媒の温度が所定の閾値より高くなると、システムは、冷媒を高温タンクからラジエータ28内に循環させて、熱エネルギを冷媒から大気に散逸させるように制御され得る。
【0065】
熱分配機構22は、低温及び高温タンクの各々から車両の様々な領域に且つそれから冷媒を循環させるように構成される。図2Bに示される例では、3種類の領域が示されており、これらは、すなわち、(i)運転席及び客室内にある流体-空気熱交換器、(ii)駆動バッテリコンパートメント内にある流体-空気熱交換器、及び(iii)駆動モータコンパートメントである。
【0066】
図2Bにおいて、客室について6つの流体-空気熱交換器、すなわち2階を暖房又は冷房するための2つの熱交換器30、32、運転席を暖房又は冷房するための2つの熱交換器34、36、1階エリアを暖房又は冷房するための熱交換器38及び2階の後方部分を暖房又は冷房するための熱交換器40が示されている。2つの一方向弁OWV1及びOWV2が含められ、それにより熱交換器の様々な組み合わせの選択が容易となる。それぞれの車両に適した様々な熱交換器の構成を選択し得ることを理解されたい。
【0067】
熱交換器の各々は、それに関連付けられる流量調整装置(それぞれFR1~FR6で示される)を有し、それによりそれらの熱伝達の相対量を制御及び/又は調整することが容易になる。流量調整装置は、例えば、細管、電気制御弁又は温度自動弁であり得る。
【0068】
駆動バッテリコンパートメントには、4つのバッテリ42が格納される。熱分配機構22は、対応するバッテリの付近にそれぞれの流体-空気熱交換器BR1~BR4を含む。ポンプP3は、冷媒を駆動バッテリコンパートメントに送出するために提供される。これは、例えば、最大約1.8リットル/分を送出可能であり得る。熱交換器BR1~BR4の各々は、それに関連付けられる流量調整装置(それぞれFR11~FR14で示される)を有し、それによりそれぞれの熱交換器によって送達される熱伝達の相対量を調整することが容易になる。
【0069】
駆動モータコンパートメントには、車両を駆動及び動作させるための、冷却を必要とする各種のコンポーネントが格納される。図2Bでは、あくまでも例として、これらは、ステータ44とロータ46とを有する第一のモータ、それに関連するインバータINV1及びステータ48とロータ50とを有する第二のモータ並びにそれに関連するインバータINV2を含む。各モータは、そのステータ及びロータを冷却する液体を方向付けるように適合され、これは、例えば、本出願人によって製造されるAPM200モータである。駆動モータコンパートメントには、例えば、さらなるインバータINV_DCDC、INV_24、INV3、エアコンプレッサCP2及びギアボックスG1等が格納され得る。
【0070】
流量調整装置FR7~FR10は、駆動モータコンパートメント内において、それぞれロータ46、INV_DCDC、INV_24及びロータ50の直前の流体冷媒の流れ中に配置される。
【0071】
駆動モータコンパートメント内のコンポーネントに且つそれから流体冷媒を搬送する導管は、入力マニホルド60から出力マニホルド62に延びる。マニホルドの温度は、それぞれの温度センサT16及びT17によって検知され、それにより駆動モータコンパートメント内で生じる熱散逸を監視することを容易にする。
【0072】
図2Bに示される導管及び弁の配置は、例として示されているにすぎず、同様の機能性を提供するために他の構成も使用され得ることを理解されたい。例えば、幾つかの地点で幾つかの二方弁の代わりに三方弁を配置し、それにより製作を容易にし、コスト及び重量を低減することができる。
【0073】
本開示によって構成される加熱及び冷却システムは、車両内の温度分布を高効率且つ多目的な方法で管理することができる。例として、ここで、図2A及び2Bに示される例示的なシステムの各種のモードの選択を、図3~11を参照して説明する。
【0074】
図3~11は、図2Bの熱分配機構22の、アセンブリのソレノイド弁の選択的開放及び冷媒ポンプの選択的動作によって示される各種の動作モードを示す。稲妻の記号は、ソレノイド弁が作動されて開かれていることを示すために使用され、円及び交差する対角線からなる記号は、閉じたソレノイド弁を識別するために使用される。矢印は、冷媒の流れを示すために加えられている。
【0075】
図3において、熱分配機構22は、(a)駆動モータコンパートメントを、高温タンクからの冷媒を用いて冷房し、(b)客室を、駆動モータコンパートメント及び熱交換装置HED3を介して循環される冷媒を用いて暖房し、(c)低温タンク内の冷媒の温度を、ラジエータ28を介して循環させることによって上昇させるように動作しているように示されている。このモードでは、駆動モータコンパートメントから抽出される熱エネルギは、客室を暖めるために直接使用することができる。
【0076】
図4に示される動作モードでは、熱分配機構は、(a)客室を、高温タンクからHED3を介して引き出された冷媒を用いて暖房し、(b)駆動モータコンパートメントを、低温タンクからHED2を介して引き出された冷媒を駆動モータコンパートメント内に循環させることによって「急速冷房」モードで(駆動モータコンパートメントが高温タンクからの冷媒を用いて冷却される図3と比較して)より速く冷房している。駆動モータコンパートメントから低温タンクに戻る冷媒は、ラジエータ28を介してそうしているように示されている。このようにして、駆動モータコンパートメントから抽出される熱エネルギの一部は、大気中に放出される。代替的に、還流する冷媒は、ラジエータを通らずに低温タンクに直接戻るように方向付けられることにより、駆動モータコンパートメントから抽出された熱エネルギのより多くの部分を、車両の他の領域の加熱用として車両内に保持し得る。この変形形態は、図5に示されている。熱エネルギは、低温タンク内の冷媒からHED2を介して抽出され、その後、車両の領域の加熱用としてHED3に(熱伝達アセンブリ20を介して)伝達され得る。
【0077】
図6は、(a)客室及び運転席が、低温タンクから引き出された冷媒を用いて冷房され、(b)モータコンパートメントが、高温タンクから引き出され、ラジエータ28を介して高温タンクに戻る冷媒によって冷房されるモードを示す。
【0078】
図7に示される構成では、(a)客室、運転席及び駆動モータコンパートメントは、低温タンクから引き出された冷媒を用いて冷房され、(b)余剰の熱エネルギは、冷媒を高温タンクからラジエータ28を介して循環させることによってシステムから散逸される。
【0079】
図8において、(a)駆動モータコンパートメントは、冷媒を、低温タンクからHED2を介して駆動モータコンパートメント内で循環させることによって「急速冷房」モードで冷房され、(b)余剰の熱エネルギは、冷媒を、高温タンクからラジエータ28を介して循環させることによってシステムから散逸される。
【0080】
図9及び10は、熱分配機構22が、バッテリの性能及び寿命を最適化するために、バッテリコンパートメントを車両の他の領域とは独立して暖房又は冷房するためにどのように構成されるかを示す。図9に示されるモードでは、バッテリコンパートメントは、低温タンクから引き出された冷媒を用いて冷房される一方、図10では、バッテリコンパートメントは、高温タンクから引き出された冷媒を用いて暖められる。
【0081】
図11は、高温タンクから引き出された冷媒を使用した駆動モータコンパートメントの冷房を示し、余剰の熱エネルギは、冷媒を高温タンクにラジエータ28を介して戻すことによってシステムから散逸される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】