(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20240423BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240423BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240423BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240423BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240423BHJP
A61K 35/28 20150101ALN20240423BHJP
A61K 35/545 20150101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K35/12
A61P25/00
A61P25/16
A61P9/00
A61P21/00
A61P25/08
A61P25/28
C12N5/071
A61K35/28
A61K35/545
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568152
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2022006429
(87)【国際公開番号】W WO2022235088
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0058171
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523170644
【氏名又は名称】エスアンドイー、バイオ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】S&E BIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ジヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ウンキョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA12
4B065BA30
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB44
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA06
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA36
4C087ZA94
(57)【要約】
本発明は、新規な製造方法により製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進組成物および神経再生促進方法に関するものである。本発明の新規な方法により製造された細胞外小胞は、神経新生、神経分化または神経回路回復を誘導し、神経可塑性を向上させることができるため、神経再生を必要とする様々な疾患の治療に有用に活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を含む、神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項2】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞、万能幹細胞、誘導万能幹細胞および胚幹細胞からなる群から選択されたいずれか一つ以上である、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項3】
前記(a)段階の三次元培養は、静的(static)培養するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項4】
前記(a)段階の三次元培養は、マイクロウェルに間葉系幹細胞を200~600細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項5】
前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞および二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べてmiR-27a、miR-132、miR-146a、およびmiR-146bからなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項6】
前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞および二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べてVEGF(Vascular endothelial growth factor)、BDNF(brain-derived neurotrophic factor)、FGF(brain-derived neurotrophic factor)およびNGF(brain-derived neurotrophic factor)からなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項7】
前記神経系疾患および損傷は、脊髄損傷、パーキンソン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、運動神経損傷、外傷による末梢神経損傷、虚血性脳損傷による神経損傷、新生児低酸素性脳損傷、脳性麻痺、てんかん、難治性てんかん、アルツハイマー病、先天性代謝性神経疾患および外傷性脳損傷(traumatic brain injury)からなる群から選択される1種以上の疾患および損傷である、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物は、神経新生誘導用、神経分化誘導用または神経回路回復誘導用である、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項9】
前記神経回路回復の誘導は、MRI DTI(diffusion-tensor image)から確認されるものである、請求項8に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項10】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経系疾患および損傷の予防または改善用の食品組成物。
【請求項11】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経再生促進用in vitro組成物。
【請求項12】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を含む、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進用組成物の、製造方法。
【請求項13】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞と外胞を分離する段階を通じて三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を製造する段階;および
(c)前記(b)段階を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を必要とするオブジェクトに処理する段階;
を含む神経系疾患および損傷の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な製造方法により製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進組成物および神経再生促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な疾患において、幹細胞、特に間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells;MSC)を用いた治療法と肯定的な臨床結果が報告されてきた。ただし、幹細胞治療剤には、副作用として血管閉塞、腫よう形成、凝固障害などの細胞関連副作用のリスクがあり、臨床試験による効能検証が依然として必要なのが実情である。幹細胞の傍分泌(paracrine)効果により、周辺皮膚細胞の再生と血管再生能力の増進が誘導されることが知られており、特に、細胞外小胞(extracellular vesicles;EV)が主な傍分泌効果の有効性因子として知られている。
【0003】
細胞外小胞とは、大きさによってエクソソーム(exosome)と微小小胞体(microvesicle)に分類されるが、エクソソームは直径30~150nmであり、微小小胞体は100~1,000nmの大きさを有する。細胞外小胞は、細胞膜の一部が血中に放出されたものであり、タンパク質と核成分の両方を含有しており、細胞間コミュニケーションを媒介することが知られている。幹細胞の代わりに細胞外小胞を使用することは、幹細胞の使用による副作用を最小限に抑え、安全性を高めるだけでなく、生体内分布(biodistribution)、生産工程の面でも有利である。
【0004】
脳神経可塑性(brain neuroplasticity)は、神経経路が構造的機能的に変化し、再組織化する現象である。脳梗塞および頭部外傷などの脳損傷だけでなく、認知症および多くの変性神経疾患において、神経経路の損傷または減少が症状の発生を引き起こす。現在までに脳神経経路を回復させるための可能な治療や方法はなく、脳梗塞や認知症などの脳疾患患者に臨床適用されたことがない。現在、物理治療や行動治療などがこれらの患者に適用されているが、その治療効果は制限的である。したがって、神経新生の増進および神経回路の回復による脳神経可塑性の向上は、ほとんどの脳疾患に治療効果を示すことができると期待される。
【0005】
しかし、未だ幹細胞に由来する細胞外小胞を使用するための大量生産および取得方法などが確立されておらず、幹細胞-由来の細胞外小胞の特性を維持しながら、細胞外小胞が持っている効能をさらに増進させることができる方法については研究があまり行われていない。また、特に脳神経可塑性を向上させることができる細胞外小胞については広く研究されていない。
【0006】
したがって、効能がさらに増進された細胞外小胞およびそれを用いた新規な治療剤が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、三次元スフェロイド型細胞凝集体またはこれより由来する細胞外小胞を製造するため、大量生産が可能であり、且つ、培養時間を短縮できる方法を研究し、その結果、マイクロウェルを用いた静的培養により三次元スフェロイド型細胞凝集体(3D-静的-スフェロイド)を製造し、これを用いて細胞外小胞を製造すると、神経再生を促進して神経可塑性を向上させることができる細胞外小胞が製造されることを確認することによって本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、神経再生促進能が向上された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を製造し、これを含む神経系疾患および損傷予防、改善または治療用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を含む、神経系疾患および損傷予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経系疾患および損傷予防または改善用食品組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階; を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経再生促進用in vitro組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進用組成物の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階を通じて三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を製造する段階;および(c)前記(b)段階を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を必要とするオブジェクトに処理する段階;を含む神経系疾患および損傷予防または治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の新規な方法によって製造される細胞外小胞は、神経新生、神経分化、または神経回路の回復を誘導し、神経可塑性を向上させることができるので、神経再生を必要とする様々な疾患の治療に有用に活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】3Dスフェロイド型細胞凝集体を製造し、これより細胞外小胞を分離する過程を図式化して示す図である。
【
図2】Aは3D-動的-PEGスフェロイド培養液が入ったマイクロウェルを観察した図である。Bは3D-静的-スフェロイド培養液が入ったマイクロウェルを観察した図である。Cは3D-動的-PEGスフェロイドとマイクロウェルを用いて製造した3D-静的-スフェロイドの培養期間による凝集体の面積変化を示す図である。
【
図3】3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布(size distribution)を比較した図である。
【
図4】3D-静的-スフェロイドEVの形態を電子顕微鏡で観察した図である。
【
図5】3D-静的-スフェロイドEVの濃度およびサイズ分布を確認するためのNTA(nanoparticle tracking analysis)の結果を示す図である。
【
図6】3D-静的-スフェロイドEVの発現マーカーを確認するため、ELISAおよびウェスタンブロットの結果を示す図である。
【
図7】由来細胞当たり3D-静的-スフェロイドEV、3D-動的-PEGスフェロイドEVおよび2D-EVの生産量を比較した図である。
【
図8】3D-静的-スフェロイドEVで高発現する脳卒中病態の生理およびEV治療効果に関連したmiRNAおよびタンパク質発現を示す図である。
【
図9】2D-EVに比べて3D-静的-スフェロイドEVで高発現する神経再生関連miRNAを示す図である。
【
図10a】2D-EVおよび3D-静的-スフェロイドEV(WJ-3D EV)におけるdonorによるEV生産量、EV大きさ、EVを含むタンパク質量の差を確認した結果を示す図である。
【
図10b】2D培養WJ-MSC、3D培養WJ-MSC、2D-EV及び3D-静的-スフェロイドEVにおけるdonor variation及び神経再生関連miRNA発現量の差を確認した結果を示す図である。
【
図11】神経幹細胞pNSCに3D-静的-スフェロイドEVを処理した後、VEGF、BDNF、GFG、NGF、HGF、ANGP1の発現変化を確認した結果を示す図である。
【
図12】3D-静的-スフェロイドEVが細胞内に内在化することが確認された結果(A)および3D-静的-スフェロイドEVを処理した細胞において、有意にmiR-27a-3pの発現が増加したことが確認された結果(B)を示す。
【
図13】3D-静的-スフェロイドEV神経分化促進能を神経突起長さを測定して確認した結果を示す図である。
図13の左側はこれを顕微鏡で確認した結果であり、
図13の右側は神経突起長さ測定結果を示す図である。
【
図14】脳梗塞動物モデルに対照群としてPBSを、または実験群として3D-静的-スフェロイドEVを処理した後、(a)脳梗塞病変および(b)脳室の体積変化の程度を確認した結果を示す図である。
【
図15】脳梗塞動物モデルに3D-静的-スフェロイドEVを処理した後、神経形成の程度を免疫蛍光染色により確認した結果を示す図である。
【
図16】脳梗塞動物モデルに3D-静的-スフェロイドEVを注入した後、運動機能喪失回復効果を確認した結果を示す図である。(a):internal Capsule、(b):External Capsule.
【
図17a】3D-静的-スフェロイドEV注入後、神経回路変化をdiffusion tensor tractography(DTT)画像を用いて調査した結果を14日目に示す図である。(a)平面画像および色情報。色は繊維路の主な方向を表す(赤色、左-右;緑色、劣勢;青色、前後)。3D-静的-スフェロイドEVで処理してから14日目に外部カプセル(上部)および内部カプセル(下)ROIからの代表的な繊維トラックグラフである。(b)PBS単独(c)白色の矢印は、3D-静的-スフェロイドEV投与動物において増加した神経線維を示す。
【
図17b】3D-静的-スフェロイドEV注入後、神経回路変化をdiffusion tensor tractography(DTT)画像を用いて調査した結果を28日目に示す図である。(a)平面画像および色情報。色は繊維路の主な方向を表す(赤色、左-右;緑色、劣勢;青色、前後)。3D-静的-スフェロイドEVで処理してから14日目に外部カプセル(上部)および内部カプセル(下)ROIからの代表的な繊維トラックグラフである。(b)PBS単独(c)白色の矢印は、3D-静的-スフェロイドEV投与動物において増加した神経線維を示す。
【
図18】脳卒中を誘導してから28日後、resting state functional MRI結果を示す図である(EV群:3D-静的-スフェロイドEV処理群)。
【
図19】3D-静的-スフェロイドEVの神経回路生成効果による機能回復を確認するために行った、前肢非対称試験(シリンダー試験)と肢損傷試験(グリッド歩行試験)の結果を示す図である。
【
図20】機能的回復とMRIとの間の関連性を確認するために、(a)シリンダー試験と内部カプセルの相対繊維密度(rFD)、(b)シリンダー試験およびinterhemispheric resting state functional connectivity(RSFC)、(c)グリッド歩行試験および内部カプセルのrFD(d)格子歩行試験およびstriatumのinterhemispheric RSFC、(e)striatumのinterhemispheric RSFCおよび内部カプセルのrFDとの相関関係を確認した結果である。
【
図21】3D-静的-スフェロイドEVの製造において、マイクロウェルの直径、深さとウェル当たりの細胞数を異にした後、製造される3Dスフェロイドサイズ、Rundness、Solidityを確認した結果を示す図である。
【
図22】様々な条件で製造された3D-静的-スフェロイドEVと2D-EVで発現されるmiRNA-132の発現量を比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を含む、神経系疾患および損傷予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明における前記細胞は、細胞外小胞を分離可能な細胞であれば、制限なく使用することができ、自然界生物のオブジェクトから分離された細胞であることができる。また、前記細胞は、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む任意の類型の動物、植物に由来するものであってもよく、多様な種類の免疫細胞、腫瘍細胞、幹細胞であってもよく、好ましくは、前記幹細胞は、間葉系幹細胞、万能幹細胞、誘導万能幹細胞または胚幹細胞であってもよい。
【0018】
本発明における前記三次元培養は、試験管内で立体配置の状態で培養されることを意味し、二次元培養とは異なり、三次元培養時、細胞成長は細胞をして生体外(in vitro)であらゆる方向に成長できるようにし、それは生体内(in vivo)での細胞環境とより類似するものであることができる。
【0019】
本発明において、前記(a)段階の三次元培養は、本発明が属する技術分野に知られた全ての三次元細胞培養技術によって行うことができ、例えば、マイクロウェルアレイ培養、多孔性微粒子培養、hanging drop培養、low attachment plate培養、membraneベースcell-detachment培養、thermal lifting培養、遠心分離培養、semisolid medium培養などを用いた細胞培養であってもよい。好ましくは、前記三次元培養は、動的(dynamic)培養または静的(static)培養であってもよく、より好ましくは、静的(static)培養であってもよい。本発明において、(a)段階の三次元培養を静的(static)培養する場合、振とう培養に必要な装置を必要としないため、培養をさらに容易にすることができ、GMP(Good manufacturing practices、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準)製造所で大量培養を可能にする長所がある。
【0020】
本発明において、前記(a)段階における三次元(3 dimension)培養は、1~10日間培養するものであってもよく、好ましくは、2~4日間培養するものであってもよい。本発明において、前記(a)段階における培養を2~4日間培養する場合、三次元スフェロイド型細胞凝集体内に存在する細胞の生存率が高いレベルで維持され、既存の三次元スフェロイド型細胞凝集体の製造過程に比べて培養時間が相対的に短く、迅速に三次元スフェロイド型細胞凝集体およびこれより由来する細胞外小胞を製造することができる。
【0021】
本発明において、前記(a)段階における三次元培養は、マイクロウェルに間葉系幹細胞を100~1000細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものであってもよく、好ましくは、100~600細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものであってもよく、より好ましくは、100~500細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものであってもよい。
【0022】
本発明において、前記(b)段階の細胞外小胞を分離する段階は、細胞または細胞凝集体を含む試料の押出し、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、化学物質処理、機械的分解および外部的に細胞に力を加えた物理的刺激の処理からなる群から選択された方法を用いて製造することができ、好ましくは、タンジェンシャルフローろ過(Tangential Flow filtration、TFF)方法により分離するものであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0023】
本発明において、MicroRNAは、「mir」を前につけて、後ろに「-」と数字を付して命名される。このとき、数字はしばしば命名された順番を表したりすることもあるが、例えば、mir-123は、mir-156よりも先に命名されたもので、より先に発見されたものと予想される。「mir-」は、pre-microRNAを示し、大文字が含まれた「miR」は、mature microRNAを意味する。1つまたは2つの配列を除き、ほぼ同一配列のmicroRNAは、小文字を加えて命名する。例えば、miR-121aとmiR-121bは、それぞれのprecursorであるmir-121aとmir-121bで生成され、配列も非常に類似する。Mature microRNAは同じであるが、ゲノム上の別の部位に位置するpre-microRNAは、さらに「-」と数字を付して命名する。一例として、pre-microRNAであるmir-121-1とmir-121-2は、同じmature microRNA(miR-121)になるが、ゲノム上の別の部位に位置する。種によってmicroRNAの命名は前方に表記する。例えば、hsa-miR-123は、ヒト(Homo sapiens)microRNA、oar-miR-123は、羊(Ovis aries)microRNAである。「v」は、viral(miRNA encoded by a viral genome)、「d」は、Drosophila microRNAを意味する。2つのmature microRNAが同一のpre-microRNAの互いに異なるarms(3'armまたは5'arm)に由来する場合、「-3p」または「-5p」を後方に追加して命名する。miR-142-3pは、3'armに由来するものであり、miR-142-5pは、5'armに由来するものである。MicroRNAの命名法は一般的に前記のような基準に基づくが、例外の場合もある。
【0024】
本発明において、前記細胞外小胞は、臨床的に有意な物質を公知の細胞外小胞と比較して高発現するものであることができ、前記臨床的に有意な物質は、神経再生効果を示す物質であることができる。例えば、好ましくは、本発明の細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞および二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べて神経再生と関連したmiR-27a、miR-132、miR-146a、およびmiR-146bからなる群から選択された1種以上を高発現するものであってもよく、VEGF(Vascular endothelial growth factor)、BDNF(brain-derived neurotrophic factor)、FGF(brain-derived neurotrophic factor)およびNGF(brain-derived neurotrophic factor)からなる群から選択された1種以上を高発現するものであってもよい。より好ましくは、本発明の細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞および二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べて神経再生と関連したmiR-27a、miR-132、miR-146aおよびmiR-146b、VEGF、BDNF、FGFおよびNGFを高発現するものであってもよい。
【0025】
また、前記細胞外小胞は、細胞に処理時、細胞内に混入して内在化(internalization)するものであることができ、細胞内に混入して内在化する場合、細胞外小胞で高発現する臨床的に有意な物質を細胞に効果的に送達し、細胞内で高発現するものであることができる。
【0026】
本発明において、神経再生促進効果を示す三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、「3D-静的-スフェロイド-EV」と相互交換的に使用されることができる。また、これと比較して三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、「3D-動的-PEG-スフェロイド-EV」と相互交換的に使用されることができる。
【0027】
本発明における「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞」は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体から分離した細胞外小胞であれば、制限なく含むものであってもよく、好ましくは、韓国登録特許(出願番号10-2016-0053026、幹細胞に由来の細胞外小胞体の生産方法)に開示された細胞外小胞であってもよい。
【0028】
本発明における「二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞」は、幹細胞を通常の二次元培養方法に従って培養し、通常の細胞外小胞の分離方法によって分離された細胞外小胞であれば、制限なく含むことができる。本発明の一実施例では、前記通常の二次元培養方法をセルスタック(Cell stack)で3日間培養した幹細胞をPBS洗浄し、無血清培地に交換し、さらに2日間培養する方法で実施した。
【0029】
本発明における前記三次元スフェロイド型細胞凝集体は、平均直径が74.43±7.756μmであってもよく、好ましくは、大きさ55~95.0μmの範囲を有し、155個の前記三次元スフェロイド型細胞凝集体のサイズ分布を測定した結果、平均直径が74.43μm、変動係数(CV)が9.59%であってもよい。本発明における三次元スフェロイド型細胞凝集体は、サイズ分布の尖度が「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体」に比べて高いものであることができる。したがって、前記三次元スフェロイド型細胞凝集体の大きさは、「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体」と比較して大きさが小さく、相対的に均一なサイズ分布を有するものであることができる。
【0030】
本発明において、前記マイクロウェルは、TMSPMA(3-(Trimetoxysily)propylmethacrylate)、HEA(Hydroxyethyl acrylate)、GMA(Glycidyl methacrylate)、EGDMA(diethyleneglycol dimethacrylate)、THFA(Tetrahydrofurfuryl acrylate)、HMAA(Hydroxymethul acrylamide)、PEA(Phenyl epoxyacrylate)、HOFHA(6-Hydroxy-2,2,3,3,4,4,5,5-octafluoro)、EOPT(Polyethoxylated(4)pentaerythritoltetraacrylate)、HPA(Hydroxypropyl acrylate)、BMA(Buthylmethacrlate)、PETIA(Pentaerythritol triacrylate)、HDDA(Hexan diol diacrylate)、EGPEA(Ethyleneglycol phenyletheracrylate)、BM(Benzylmethacrylate)、HPPA(Hydroxyphenoxypropyl acrylate)、BHPEA(2-(4-Benzoyl-3-hydroxyphenoxy)ethylacrylate)、HEMA(Hydroxyethyl methacrylate)、HPMA(N-(2-Hydroxypropyl) methacrylamide)およびMPC(2-Methacryloyloxyethyl Phosphorylcholine Polymer)からなる群から選択されたいずれかでコーティングされたものであってもよく、好ましくは、MPC(2-Methacryloyloxyethyl Phosphorylcholine Polymer)でコーティングされたものであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0031】
本発明における前記マイクロウェルは、直径が200~800μmであることができ、好ましくは300~800μm、より好ましくは400~800μmの直径を有するものであることができる。
【0032】
また、前記マイクロウェルは、深さのない平坦な構造のマイクロウェルである、または深さを形成するマイクロウェルの場合、100~1000μm、好ましくは100~900μm、より好ましくは200~900μmである構造を有するものであることができる。
【0033】
前記構造により培養される間葉系幹細胞が培養時間経過後にも高い水準で生存率を維持するものであることができる。好ましくは、前記マイクロウェルを1,000個~100,000個含むマイクロアレイを作製し、細胞凝集体の生産収率を増加させることができる。
【0034】
本発明における前記「三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法」により細胞外小胞を製造すれば、静的培養による製造上の利点に加え、臨床適用性、特に神経新生、神経分化および神経回路回復のような神経再生能が向上された細胞外小胞を迅速かつ効率的に大量生産することができる。特に、「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞」の製造方法または「二次元培養した間葉幹系幹細胞に由来の細胞外小胞」の製造方法のような、従来の細胞外小胞の製造方法がGMPに不適切であるのとは異なり、本発明の細胞外小胞の製造方法は、GMP適用に適しているという特徴があるので、神経系損失および損傷または治療用医薬組成物の製造に特に適合し得る。
【0035】
本発明において、神経可塑性とは、神経経路が構造機能的に変化し、再組織化する現象を意味する。本発明によれば三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の処理により神経再生、神経新生の誘導、神経分化の誘導が効果的に達成されるため、神経可塑性を向上させることができる。
【0036】
したがって、本発明の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、多様な神経神経系および神経損傷、神経再生が必要な状態に適用可能であり、本発明の細胞外小胞が適用できる疾患の種類は、これらに制限されるものではないが、脊髄損傷、パーキンソン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、運動神経損傷、外傷による末梢神経損傷、虚血性脳損傷による神経損傷、新生児低酸素性脳損傷、脳性麻痺、てんかん、難治性てんかん、アルツハイマー病、先天性代謝性神経疾患および外傷性脳損傷(traumatic brain injury)からなる群から選択される1種以上の疾患または損傷であることができる。また、特に本発明の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、神経新生誘導用、神経分化誘導用または神経回路回復誘導用であることができる。
【0037】
本発明では、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞が神経回路の回復を誘導できるかどうかを確認するために、動物モデルに三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を投与し、MRI DTI(diffusion-tensor image)分析を行い、その結果、神経回路が再生され、神経線維の増加が促進されることを確認した。
【0038】
本発明の医薬組成物は、前記有効成分の他に、医薬組成物の製造に通常使用される適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含み得る。本発明の医薬組成物は、その他に医薬活性成分や活性混合物をさらに含み得る。
【0039】
本発明の医薬組成物は、それぞれ常法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射用溶液の形態に剤形化して使用され得る。組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、前記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム(Calcium carbonate)、スクロース(Sucrose)またはラクトース(Lactose)、ゼラチン等を混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0040】
経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射用エステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプソール(Witepsol)、マクロゴール、ツイン(Tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0041】
本発明の医薬組成物の好ましい投与量は、患者の病態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択され得る。投与は1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記の投与量は、いかなる点でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
本発明の医薬組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与することができる。投与のすべての方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳室内(Intracerebroventricular)注射によって投与され得る。
【0043】
本発明の前記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、着香料等の用語の定義は、当業界に公知の文献に記載されたものであって、その機能等が同一ないし類似するものを含む。
【0044】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を3次元(3D、3 dimension)培養し、3次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階を通じて、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を製造する段階;および(c)前記(b)段階により製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を必要とするオブジェクトに処理する段階;を含む神経系疾患および損傷または治療方法を提供する。
【0045】
前記オブジェクトは、ヒトを含む哺乳類であることが好ましく、神経系疾患治療を必要とする患者であって神経損傷または神経系疾患治療中の患者、神経損傷または神経系疾患の治療を受けたことのある患者、神経損傷または神経系疾患の治療を受ける必要のある患者を全て含み、神経損傷または神経系疾患治療のために外科的手術を受けた患者もまた含まれることができる。
【0046】
また、本発明は、この他の既存の神経損傷または神経系疾患の治療のための薬物または治療方法と併用して処理することができる。本発明を併用処理する場合、これは神経損傷または神経系疾患の治療のための薬物または治療方法と同時にまたは順次処理することができる。
【0047】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を3次元(3D、3 dimension)培養し、3次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経系疾患および損傷予防または改善用食品組成物を提供する。
【0048】
前記食品組成物は、医薬組成物に関する説明をすべて同様に引用することができる。前記食品は、特に健康機能食品を含む。本発明で定義される「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて、製造し加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節又は生理学的作用等のような健康用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。前記健康機能食品は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤のいずれかの形態を有することができる。
【0049】
また、本発明の食品組成物は、各種食品や飲料等に機能性成分を添加した形態の食品組成物であってもよい。前記食品は、例えば、飲料、粉末飲料、固形物、チューインガム、茶、ビタミン複合体、食品添加剤のいずれかの形態を有することができる。
【0050】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を3次元(3D、3 dimension)培養し、3次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経再生促進用in vitro組成物に関するものである。
【0051】
本発明の神経再生促進用in vitro組成物は、実験目的で用いられることができ、神経損傷により神経再生を必要とする単離された細胞、組織に処理するための目的の組成物であることができる。本発明の神経再生促進用in vitro組成物は、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む培地組成物であることができ、前記培地は当分野における通常の技術者に公知の培地を制限なく含むことができ、例えば、血清(例えば、ウシ胎児血清、ウマ血清およびヒト血清)が含有された培地である。本発明で用いられ得る培地は、例えば、RPMIシリーズ、EMEM、MEM、Iscove's MEM、199培地、CMRL 1066、RPMI 1640、F12、F10、DMEM、DMEMとF12の混合物、Way-mo、McCoy's 5A、または神経再生を必要とする細胞を培養するのに適した当技術分野に公知の培地を含み得る。前記神経再生は、神経新生誘導用、神経分化誘導用、または神経回路回復誘導用を全部含むという意味で使用することができる。
【0052】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を3次元(3D、3 dimension)培養し、3次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進用組成物の製造方法を提供する。
【0053】
前記製造方法によれば、神経再生促進効果に優れた3次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞をGMP基準に合わせて、迅速に大量生産することができる。
【0054】
重複する内容は、本明細書の複雑性を考慮して省略するものとし、本明細書において特に断りのない用語は、本発明が属する技術分野で通常使用される意味を有するものである。
【0055】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
ウェスタンブロット
細胞および細胞外小胞を放射線免疫沈降アッセイ(radioimmunoprecipitation assay、RIPA)緩衝剤(25mM Tris-HCl、pH7.6、150mMのNaCl、0.5%のtriton X-100、1%のNa-deoxycholate、0.1%のsodium dodecyl sulfate(SDS)およびタンパク質分解酵素阻害剤)に溶解させた。計20μgのタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)に移した。その次に、ニトロセルロース膜をヒストンH2A.Z、ヒストンH3、ラミンA/C、フロチリン-1(1:1,000、Cell signaling technology、ビバリー、MA、USA)またはカルレティキュリン(1:1,000、ThermoFisher Scientific、Inc.、Rockford、IL、USA)に対する一次抗体と共に4℃で一晩培養した。Tris-緩衝生理食塩水-Tween 20(Tris-buffered saline-Tween 20)で洗浄した後、ニトロセルロース膜を西洋わさびペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase、HRP)-結合二次抗体(1:1,000、抗-ウサギ、Cell Signaling Technology、ビバリー、MA、USA)と共に2時間培養した。タンパク質をThermoFisher Scientific、Inc.(Waltham、MA、USA)の化学発光基質を用いて検出した。標識タンパク質をX-線フィルム(Agfa、Mortsel、Belgium)を通じて視覚化した。
【0057】
ELISA
ELISAは、個々のメーカーのマニュアルに従って商用キットで行った。次のようなELISAキットを使用した:ゲンタマイシン(5111GEN、EuroProxima、Arnhem、Nederland)、ウシアルブミン(8100、Alpha Diagnostic、San Antonio、TX、USA)、Hsp70(Abcam、Cambridge、UK)、CD63、CD9およびCD81(System Biosciences、Palo Alto、CA、USA)、ヒストンH2A.Z.(Mybiosource、San Diego、CA、USA)、カルレティキュリン(Mybiosource)およびシトクロムC(ThermoFisher Scientific、Inc.)。全てのキットには、標準タンパク質が含まれている;したがって、タンパク質および細胞外小胞の量は、各キットの標準曲線に基づいて決定される。
【0058】
qPCR
EVでTrizolTMを用いてメーカーの指針に従ってRNAを抽出し、ナノドロップ(nanodrop)でRNAを定量した。RNAは、逆転写反応 (reverse transcription;RT)過程を経て、cDNAで作り、それぞれのmiRNAおよびmRNAに適したTaqman probeを用いてメーカーのマニュアルに従ってReal Time PCRを進めた。
【0059】
EVラベリングおよび細胞による吸収
精製されたEVをメーカーの指針に従って、CFSE(5-(and-6)-Carboxyfluorescein Diacetate、Succinimidyl Ester)ラベリング染料(c-1157、Invitrogen)で染色した。1時間100.000gの条件で超遠心分離し、過剰な染料を除去した。標識されたEV(0.4μg/ml)をヒトNSC細胞株(ReNcells)に処理し、24時間培養した。処理後、細胞をPBSで2回洗浄し、通常の免疫細胞化学プロトコルを用いて染色した。細胞をマウス抗-SMA(1:100、Sigma aldrich)抗体と共に4℃で一晩培養した。その後、細胞をPBSで洗浄し、2次抗体であるDyLight標識された抗マウスIgG(1:200、594nm、Abcam)抗体と共に培養した。1.5μg/mL4'-6'diamidino-2-phenylindole(DAPI)(Vector Laboratories)と共にVectashieldTMを用いて核染色した後、共焦点顕微鏡(LSM 700、Carl Zeiss、Germany)を用いて細胞をイメージ化した。
【0060】
実施例1.間葉系幹細胞の三次元培養を通じた細胞外小胞の分離
1.1 間葉系幹細胞の準備
5継代培養(passage 5)段階のヒト臍帯由来の間葉系幹細胞(以下、WJ-MSC、Samsung medical center、ソウル、韓国)を分譲を受け、37℃、5%のCO2培養器で培養した。成長培地は、10%のウシ胎児血清(FBS)(GIBCO、NY、USA)および50μg/mLゲンタマイシン(GIBCO、NY、USA)を含有するα-modified eagle's medium(α-MEM、GIBCO、NY、USA)を使用した。6継代培養(passage 6)段階のWJ-MSCを3Dスフェロイド型細胞凝集体の作製に使用した。
【0061】
1.2 3Dスフェロイド型細胞凝集体培養液の作製
前記実施例1.1にて作製した6継代培養(passage 6)段階のWJ-MSCをPBSに洗浄し、トリプシン(TrypLETM Express、GIBCO、NY、USA)処理し、CO2培養器で5分間反応させた。その後、新たな無血清培地を入れ、トリプシンを中和させ、細胞を回収し、遠心分離機を用いて細胞ペレットを取得した。その次に、新しい無血清培地を入れ、細胞懸濁液を製造し、細胞を計数した。細胞計数後、MPC(2-Methacryloyloxyethyl Phosphorylcholine Polymer)でコーティングされた直径と深さがそれぞれ500μm×200μmのマイクロウェルを約69,000個余り含むマイクロアレイに60mlの細胞懸濁液を400cell/wellの密度になるように、均一に分注し、静的な状態を維持し、自発的スフェロイド型細胞凝集体の形成を誘導し、計4日間37℃のCO2培養器で培養し、3Dスフェロイド型細胞凝集体培養液(以下、3D-静的-スフェロイド培養液)を製造した。
【0062】
1.3 3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の分離
実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイド培養液を回収し、細胞 残屑を除去するため、2,500gで10分間遠心分離し、0.22μmシリンジフィルターで濾過した。その後、3D-静的-スフェロイド培養液をタンジェンシャルフローろ過(Tangential Flow filtration、TFF)システムを用いて300kDaのhollow fiber membrane(Pall、NY、USA)を経て、タンパク質を除去し、細胞外小胞を1次分離し、生理食塩水でもう一度精製し、純度の高い本発明の3D-静的-スフェロイドに由来の細胞外小胞(以下、3D-静的-スフェロイドEV)が得られた。
【0063】
前記実施例1.1~1.3の過程を図式化して
図1に示した。
【0064】
実施例2.3Dスフェロイド型細胞凝集体の特性の分析
前記実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイド培養液内に存在する3Dスフェロイド型細胞凝集体(以下、3D-静的-スフェロイド)の特性を分析した。実験群として、実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイド培養液を用いており、比較群として、韓国登録特許(出願番号10-2016-0053026、幹細胞由来の細胞外小胞体の生産方法)に開示された動的3D細胞培養方法に従って、5日間間葉系幹細胞を培養し、製造した3D間葉系幹細胞スフェロイド型細胞凝集体(以下、3D-動的-PEGスフェロイド)培養液を使用した。光学顕微鏡で、それぞれの培養液が入ったマイクロウェルを観察し、これを
図2A、2Bに示し、培養初期と比較して培養後、スフェロイド型細胞凝集体の面積変化を
図2Cに示した。
【0065】
図2に示すように、実験群である3D-静的-スフェロイドと比較群である3D-動的-PEGスフェロイドの面積を比較した結果、細胞が緻密に凝縮され、スフェロイドを形成する特性に応じて3D-動的-PEGスフェロイドと比較した3D-静的-スフェロイドは、培養初期のスフェロイド対面積が統計的に有意に減少する結果が示された(p=0.0011)。
【0066】
実施例3.3Dスフェロイド型細胞凝集体の大きさの分析
実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイドと実施例2にて製造した3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布(size distribution)を測定し、測定されたサイズ分布のデータを土台に、変動係数、歪度(skewness)、尖度(kurtosis)を分析した。
【0067】
歪度は、中央値の推移から分布が傾いた方向と程度を知ることができるパラメータであり、1に近いほど右側に長く裾をひく分布を示し、-1に近いほど左側に長く裾を引いた分布を示す。正規分布の場合の歪度は、0である。
【0068】
尖度は、資料分布の尖り具合を示すパラメータであって、値が正の数の場合、中央部分に相対的に多数のデータポイントが集積していることを意味し、負の数の場合、中央部分に相対的に少数のデータポイントが集積していることを意味する。正規分布の場合、尖度は0である。
【0069】
測定したサイズ分布データを
図3に示し、これを分析した結果を表1に示した。
【0070】
【0071】
図3および表1に示すように、3D-静的-スフェロイドの平均の大きさが74.43um、変動係数(CV)が9.59%であることが確認された。これとは対照的に、3D-動的-PEGスフェロイドは、平均サイズが148.66um、変動係数(CV)が14.1%であることが確認された。
【0072】
測定した変動係数を比較検定するため、Feltz and Miller's(1996)asymptotic testを実施した結果、p value値が0.01765604として算出され、Krishnamoorthy and Lee's(2014)modified signed-likelihood ratio testを実施した結果、p value値が0.01853969として算出された。したがって、二つのテスト全部において3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布が統計的に有意な程度に相異する様相を示すことが確認された。
【0073】
3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布を比較した結果、3D-静的-スフェロイドのサイズ分布の尖度値が相対的に大きいことが確認され、本発明の3D-静的-スフェロイドのサイズ分布は、中央値に多く集中した様相を示すことが確認された。このような結果から、本発明の3D-静的-スフェロイドの製造方法により3Dスフェロイドを製造すると、大きさが相対的に一定した3Dスフェロイドの製造が可能であることが確認された。
【0074】
実施例4.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞形態の分析
実施例1.3にて分離した3D-静的-スフェロイドEVの形態を観察するため、電子顕微鏡(transmission electron microscopy、TEM)を用いて撮影した。具体的に、3D-静的-スフェロイドEVを0.1Mホスフェート緩衝液(PB)に溶解された1%のOsO
4で2時間固定させた。EMグリッドを細胞外小胞の液滴上にフォルムバール(formvar)側面を下に向けて1分間吸着させた。その後、濾紙でブロッティングし、15秒間2%のウラニルアセテートと反応させた。過量のウラニルアセテートを除去し、EMグリッドをTEM(JEM-1011、JEOL、Japan)を用いて観察し、観察画像を
図4に示した。
【0075】
図4に示すように、3D-静的-スフェロイドEVは、典型的な細胞外小胞の形態である丸い形状であることが確認された。
【0076】
実施例5.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の濃度および大きさの分析
実施例1.3にて分離した3D-静的-スフェロイドEVの濃度およびサイズ分布を確認するため、NanoSight NS300(Malvern、Worcestershire、UK)を用いたNTA(nanoparticle tracking analysis)を実施した。最適な分析のため、3D-静的-スフェロイドEVを小胞(vesicle)のないホスフェート緩衝液(PBS)に予め希釈した。平均サイズおよび濃度(particle/mL)は、3個の記録を統合して計算し、結果を
図5に示した。
【0077】
図5に示すように、3D-静的-スフェロイドEVの平均粒子径は、182.5nmであり、モード径は、106.1nmであることが確認された。
【0078】
実施例6.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の発現マーカーの分析
実施例1.3にて分離した3D-静的-スフェロイドEVの発現マーカーを確認するための実験を行った。対照群として細胞ライセート(cell lysate)と分泌物(secretome)を使用した。細胞ライセートは、3D-静的-スフェロイドをPBS洗浄し、トリプシンを処理した後、細胞を回収し、回収された細胞を遠心分離機を用いて細胞ペレットが得られる方法により準備した。分泌物は、前記細胞ペレットを得た後、上澄み液である培養培地で実施例1.3の工程を通じてEVを分離し、残った培養分泌物を得る方式により用意した。マーカー分析は、ELISAを用いて細胞外小胞特異的な陽性マーカーCD9、CD63、CD81およびHSP70を定量し、特定汚染タンパク質マーカーであるカルレティキュリン、ヒストンH2A.Z、シトクロムC、アルブミン、抗生剤を定量した。また、ウェスタンブロットを用いて細胞外小胞の特定汚染タンパク質マーカーであるヒストンH2A.Z、ヒストンH3、ラミンA/C、カルレティキュリンを定量し、細胞外小胞陽性マーカーであるフロチリン-1を定量した。ELISA分析の結果およびウェスタンブロットの結果を
図6に示した。
【0079】
図6に示すように、3D-静的-スフェロイドEVは、細胞外小胞特異的陽性マーカーであるCD9、CD63、CD81およびHSP70が全部発現され、細胞ライセートおよび分泌物(secretome)から高く発現される汚染タンパク質マーカーであるカルレティキュリン、ヒストンH2A.Z、ヒストンH3、シトクロムC、アルブミン(BSA、bovine serum albumin)、ラミンA/Cおよび抗生剤がほぼ発現されないことが確認された。特に、細胞ライセートから非常に低く発現される細胞外小胞陽性マーカーフロチリン-1(Flotilin-1)が3D-静的-スフェロイドEVで相対的に高く発現されることが確認された。
【0080】
実施例7.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の生産量の分析
実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEV、実施例2の3D-動的-PEGスフェロイドから分離した細胞外小胞(3D-動的-PEGスフェロイドEV)および通常の2D培養方法で培養した幹細胞から分離した細胞外小胞(2D-EV)の生産量を比較するための実験を実施した。2D-EVは、次のような工程により用意した。セルスタック(Cell stack)において3日間培養した幹細胞をPBS洗浄し、無血清培地に交換し、さらに2日間培養する。培養培地を回収し、遠心分離および0.2μmフィルターを用いて細胞残屑を連続して除去する。その後、培養培地をTFFシステムを用いてhollow fiber membraneを経て、タンパク質を除去し、EVを1次分離し、生理食塩水でもう一度精製し、純度の高い2D-EVを得た。用意した3D-静的-スフェロイドEV、3D-動的-PEGスフェロイドEVおよび2D-EVに由来の細胞当たりの生産量を比較し、これを表2および
図7に示した。
【0081】
【0082】
実施例8.3D-静的-スフェロイドEV発現miRNA分析および神経新生効果の確認
8.1 3D-静的-スフェロイドEV内におけるmiRNA発現の分析
実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEV内に含有されているmiRNA成分を分析するための、シーケンシング分析を行い、3D-静的-スフェロイドEV内に含有されたmiRNA成分分析の結果を
図8に示す。
【0083】
図8に示すように、3D-静的-スフェロイドEV内には脳卒中病態の生理および幹細胞/EVの治療効果に関連するmiRNAを含む358個のmiRNAが、normalized RC 4以上の値で検出された。このうち、検出された上位50個の発現miRNAについて、GOとKEGG分析を行った。GO分析は、発現されたmiRNAと細胞内タンパク質の輸送およびリン酸化、軸索誘導、脳の発達、グルタミン酸シナプスおよびニューロンの突出、およびDNA結合転写活性化活性と相当の関連性を示した。3D-静的-スフェロイドEV内に豊富なmiRNAに関連するKEGG経路としては、癌、軸索誘導、シグナル伝達経路、および細胞内移入を含む生物学的機能に関連する経路が確認された。特に、3D-静的-スフェロイドEVには2D-EVに比べてmiRNA-132が多く含まれており、3D-静的-スフェロイドEVが神経幹細胞でMeCP2の発現を阻害することにより、新生神経新生を促進できることが確認された。
【0084】
miRNA発現の変化をsmall RNA sequencing法でプロファイリングした。プロファイリング研究結果をもとに、既存培養法で培養した2D-EVと比較して、3次元培養法で培養した幹細胞から分泌されたEV内の有意な変化を有するmiRNAを検証し、その結果を
図9に示した。
【0085】
図9に示すように、5個ドナーのセルライセート(cell lysate)でTaqManプローブでmiRNA発現変化を確認したところ、有意に発現が増加したmiRNAが確認された。その中で、発現変化レベルの高いmiRNAsについて神経幹細胞(ReNcell)にてin vitro機能を確認した。miR-132は、神経幹細胞に形質転換時、神経幹細胞数の増殖を誘導し、miR-132-3pは、PSD95の発現を阻害し、神経幹細胞の細胞数の増殖に関与することが確認された。miRNA-27a、miR-146aおよびmiR-146bも同様に神経および血管新生に関与することが知られている。本発明の3D-静的-スフェロイドEVは、このように神経再生に関与するmiR-132、miR-27a、miR-146a及びmiR-146bの発現が顕著に高く示されたため、神経再生関連分野に臨床的に有用に使用できる細胞外小胞であることを確認した。
【0086】
8.2.ドナーによるmiRNA発現の分析
幹細胞治療剤は、ドナーによって成分が異に示されるドナーバリエーション(donor variation)の問題があることが知られている。本発明の3D-静的-スフェロイドEVが、ドナーバリエーション(donor variation)の問題なくより一貫性のあるmiRNAプロファイルを示すかを確認するための実験を行った。各ドナーの試料は、Samsung medical center(ソウル、韓国)から分譲を受けて使用した。実施例1.1の2D培養されたWJ-MSCと3D培養されたWJ-MSC、実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEVのドナー別に生産されるEVの数、EVタンパク質の量とmiRNAプロファイルを比較した。miRNAは、Small RNA sequencing法でmiRNAプロファイリングし、その結果を
図10a~
図10bに示した。
【0087】
図10aに示すように、2D培養されたWJ-MSCに由来の2D-EVは、生産されるEVの量、大きさ、EV生産タンパク質の量が各ドナーによってばらつきがみられたが、3D-静的-スフェロイドEVは、ドナーによる大きなばらつきなく、一貫性のある結果を示した。
【0088】
また、
図10bに示すように、2D培養WJ-MSC、2D-EVはドナーによって産生されるmiRNA組成の差が大きいのに対し、3D培養WJ-MSC、3D-静的-スフェロイドEVはドナーによる差が減少することが確認された。特に3D-静的-スフェロイドEVは、ドナーによる差がなく、一貫性のあるmiRNAプロファイルを示すとともに、特に2D-EVと比較して神経再生効果を示すことができるmiRNAであるmiR-27a-3p(1.5倍)、miRNA-146a(2.3倍)およびmiRNA-132 (2.6倍)がより多く均一に含まれていることが確認された。また、その他の神経再生関連miRNAであるmiR-181bも、各ドナー間で均一な程度の発現を示すことが確認された。
【0089】
このような結果は、3D-静的-スフェロイドEVがドナーによる治療有効成分の差を減らし、より優れた治療効果を示すことができることを示す結果である。
【0090】
実施例8.3 神経幹細胞への処理後、神経再生関連タンパク質発現変化の比較
3D-静的-スフェロイドEVの神経再生促進に対する有用性をさらに確認するために、これを標的細胞である神経幹細胞pNSCsに6時間処理した後、神経幹細胞における神経再生に関連するmRNA発現レベルをqPCRにより確認した。
【0091】
図11に示すように、2D-EVを処理した神経幹細胞より3D-静的-スフェロイドEVを処理した神経幹細胞において、VEGF、BDNF、FGF、NGFの遺伝子発現が増加したことが確認され、2D-EVに比べて3D-静的-スフェロイド-EV内にVEGF、BDNF、FGF、NGF mRNAがより多く含有されていることが確認された。
【0092】
上記結果を全て総合した結果、本発明の3D-静的-スフェロイドEVは、WJ-2D-EVや、3D-動的-スフェロイドEVと比較し、神経再生に関連するmiRNAであるmiR-27a、miR-132、miR-146aおよびmiR-146bが有意に増加しており、VEGF、BDNF、FGF、NGF mRNAをより多く含有されているため、既存の報告されたEVに対して神経再生により優れた効果を示すことが期待できることを確認した。
【0093】
実施例9.3D-静的-スフェロイドEVの細胞取り込み能の評価
3D-静的-スフェロイドEVの細胞取り込み能を評価するために、CFSE標識した3D-静的-スフェロイドEVをヒトNSC細胞株(ReNcells)に処理した。24時間培養し、共焦点顕微鏡(LSM 700、Carl Zeiss、Germany)で確認をし、これと共に12時間目にReNcells内miR-27a-3pの発現をqPCRにより確認し、その結果を
図12に示した。
【0094】
図12のAに示すように、3D-静的-スフェロイドEVを細胞に処理すると、細胞に取り込まれて内在化(internalization)することが確認された。また、
図12のBに示すように、対照群に対して3D-静的-スフェロイドEVを処理した細胞において有意にmiR-27a-3pの発現が増加したことが確認された。
【0095】
これにより、3D-静的-スフェロイドEVをターゲット神経細胞に処理すると、miR-27a-3pのような3D-静的-スフェロイドEVで高発現する神経新生促進物質が細胞に効果的に伝達されることが確認された。これは、3D-静的-スフェロイドEVが神経再生のための治療薬として使用されることができることを示す結果である。
【0096】
実施例10.3D-静的-スフェロイドEVの神経分化促進能の確認
二次元培養された幹細胞に由来の細胞外小胞(2D-EV)および3D-静的-スフェロイドEVの神経分化能を調べるために、14.5日目のSDラット(rat)胚から単離した大脳皮質から一次培養された神経幹細胞(NSC)に2D-EVおよび3D-静的-スフェロイドEVを5×10
8/mlずつ処理した後、ベース培地のみを添加した対照群(control)または神経成長因子(nerve growth factor;NGF)処理群と共に神経分化能を比較した。2D-EV、3D-静的-スフェロイドEV、NGF、ベース培地処理による神経分化能を処理培養4日目に顕微鏡で神経突起の長さを測定して確認し、その結果を
図13に示した。
【0097】
図13に示すように、対照群と比べてNGF、2D-EV及び3D-静的-スフェロイドEV処理群において神経突起の長さが増加し、神経分化がなされたことが確認され、特に3D-静的-スフェロイドEV処理群は、NGFまたは2D-EVを処理した群よりも有意なレベルで神経分化を誘導することができることが確認された。
【0098】
実施例11.脳卒中動物モデルに対する3D-静的-スフェロイドEVの効果
11.1 脳卒中モデルの作製
脳卒中動物モデルを作製するために、光血栓性(Photothrombotic、PT)脳梗塞モデルを作製した。20~25g(8~12週齢)の成人雄C57BL/6Jマウス(Orient Bio Inc.,大韓民国の城南)を用いて、PT脳卒中をマウス右手の感覚運動皮質から誘導した。要するに、ケタミン(100mg/kg、有限洋行、大韓民国ソウル)とキシラジン(10mg/kg、Rompon inj.,ドイツベルリンバイエル)の混合物を腹腔内投与し、マウスを麻酔し、定位固定装置(KOPF Instruments,Tujunga,CA,USA)に配置させた。メスを用いて目から首まで頭皮に沿って中線切開を行い、骨膜を除去した後、頭蓋骨を露出させた。ローズベンガル溶液(30mg/kg、生理食塩水10mg/mL、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を頸静脈を通じて静脈内投与し、5分後、直径3mmの照明を提供する100mW、532nm diode-pumped solid-state green laser(Dongwoo Optron(株)、光州)をbregmaより側面2.5mmに位置させた。レーザーは関心領域(ROI)で15分間活性化され、切開部位を6-0モノフィラメント縫合糸を用いて縫合した。手術中のラットは、37.0~37.5℃の体温を維持するようにした。
【0099】
11.2 animal MRI studyを用いた形態学的分析
実施例11.1にて製造した光血栓性脳梗塞モデルラットに3D-静的-スフェロイドEVを投与した後、MRIによる形態学的変化を調べるために、梗塞病変体積と脳室体積をT2-weighted image(T2WI)画像で測定した。具体的には、光血栓性脳梗塞モデルに3D-静的-スフェロイドEV 6x10
8EV/mouseをラットの血管に注入し、3日(PBS group、n=20;EV group、n=23)、14日(PBS group、n=8; EV group、n=10)、28日(PBS group、n=8;EV group、n=6)後、MRIのT2-weighted image(T2WI)画像を撮影し、実験群と対照群の脳梗塞病変および脳室の体積変化の程度を比較した。その結果を表3および
図14に示す。
【0100】
【0101】
前記表3および
図14から確認できるように、脳梗塞後、3日目に対照群と3D-静的-スフェロイドEV処理群との間に、虚血性病変体積において統計的に有意な差があった(p=0.030)。脳卒中後、14日時点で、3D-静的-スフェロイドEV処置群の病変体積は、対照群と比較して有意に減少した(p=0.034)。ventricle容積は、側面および背側の第三脳室にて測定した。脳卒中後14日、28日時点で、3D-静的-スフェロイドEV群において、対照群と比較して、脳室容積が有意に低かった。
【0102】
11.3 虚血性脳卒中動物モデルの作製
管腔閉塞法を用いて、一時的中脳動脈閉塞(transient middle cerebral artery occlusion,tMCAo)を誘導した。8週齢の雄Sprague-Dawleyラット(270~300g)を1.5%イソプロランで手術中、麻酔させ、加熱パッドを用いて手術および閉塞期間中、ラットの体温を37~37.5℃に維持させた。丸い末端の4-0手術用モノフィラメントナイロン縫合糸を、中大脳動脈の起源を遮断するまで、左総頸動脈から内頸動脈の内腔まで移動させた。tMCAo90分後に再灌流を行った。
【0103】
11.4 免疫蛍光染色を通じた神経新生促進効果の確認
神経新生の効果を確認するために、実施例11.3にて作製した虚血性脳卒中動物に3個のdose(0.3×10
10/rat、1.5×10
10/rat、3.0×10
10/rat)の3D-静的-スフェロイドEVを静脈注射した後、脳卒中から2週間後、脳組織における神経発生観察指標として、神経細胞陽性マーカーであるDCXと細胞増殖マーカーであるKi67を用いて免疫蛍光染色を行った。各投与量実験群の免疫蛍光染色の結果および定量化されたKi67/DCX結果を
図15に示す。
【0104】
図15に示すように、対照群であるPBS投与群と比較して、3D-静的-スフェロイドEVを投与された実験群全部において、神経形成が有意に増加することが確認された。
【0105】
実施例12.3D-静的-スフェロイドEVの神経回路生成効果の確認
実施例11.1にて作製した光血栓性脳梗塞モデルに3D-静的-スフェロイドEV(6×10
8EV/mouse)をラットの血管に注入し、脳微細構造/連結性変化をDTI(diffusion-tensor imaging)を用いて調べた。光血栓性脳梗塞モデルにおいて、3D-静的-スフェロイドEV(6x10
8EV/mouse)をラットの血管に注入し、3日(PBS group、n=20;EV group、n=23)、14日(PBS group、n=8;EV group、n=10)、28日(PBS group、n=8;EV group、n=6)後、MRIのDiffusion tensor imaging(DTI)とfiber tractography画像を撮影し、EC(External Capsule)およびIC(Internal Capsule)ROI(region of interest)からのFA(Fractional anisotropy)およびFD(Fibre density)値の相対的な変化を用いて、脳卒中から14日および28日に治療効果を実証した。DTIおよびfiber tractographyの結果を
図16に示し、Group-averaged rFA(relative fractional aniotrophy)およびrFD(relative fiber density)valuesの結果を表4に示す。
【0106】
【0107】
表4および
図16に示すように、脳卒中から14日時点で、3D-静的-スフェロイドEV群は、対照群と比較したとき、ICおよびECの両方においてrFA値で統計的に有意な増加を示した(それぞれp=0.003及びp=0.045)。28日時点で、ICおよびEC ROIの両方において、3D-静的-スフェロイドEV群のrFA値が対照群と比較して顕著に高い(それぞれp=0.027およびp<0.001)ことが確認され、神経回路回復の程度が高くなったことが確認された。
【0108】
3D-静的-スフェロイドEV(6×10
8 EV/mouse)を、ラットの血管に注入した後の神経回路の変化を、diffusion tensor tractography(DTT)画像を用いて調べた。14日(PBS group、n=8;EV group、n=10)および28日(PBS group、n=8;EV group、n=6)後、MRIのDiffusion tensor tractography(DTT)画像を撮影し、治療群と対照群の神経回路の変化程度を比較した結果を
図17に示す。
【0109】
図17aおよび
図17bに示すように、それぞれ14日および28日の両方において、3D-静的-スフェロイドEV投与により、白色の矢印で表された増加した神経線維が確定された。
【0110】
実施例13 3D-静的-スフェロイドEVの神経回路生成効果の確認:Functioal MRI
細胞外小胞による神経回路の増進を確認するために、実施例11.1にて作製した脳梗塞動物モデルにおいて、脳卒中を誘導してから28日後にresting state functional MRIを確認した。対照群と3D-静的-スフェロイドEV群との間のresting state functional connectivity差分分析は、16個の関心領域について行った。ipsilesionalおよびcontralesionalの側面から、6つの皮質および2つの皮質領域が、分析のために選択された。分析の結果を
図18に示す。
【0111】
図18に示すように、inter-hemispheric striatal functional connectivityが対照群に比べて3D-静的-スフェロイドEV投与群において、有意に増加したことが確認された(p=0,008)。このことは3D-静的-スフェロイドEVが脳梗塞モデルにおいて、神経回路のが増強が誘導されたことを示す結果である。
【0112】
14.3D-静的-スフェロイドEVの神経回路生成による機能回復の確認
実施例11.1にて作製した脳梗塞動物モデルに本発明の3D-静的-スフェロイドEVを注入すると、神経回路生成が効果的に誘導されることを前の実施例によって確認した。このような神経新生により、脳梗塞動物モデルから誘発される運動機能喪失が回復するかどうかを確認するための前肢非対称試験(シリンダー試験)と肢欠損試験(グリッド歩行試験)を行った。より具体的には、作製された光血栓性脳梗塞モデルに3D-静的-スフェロイドEV(6x10
8EV/mouse)をラットの血管に注入し、14日(PBS group、n=8;3D-静的-スフェロイドEV処理群、n=10)、28日(PBS group、n=8;3D-静的-スフェロイドEV処理群、n=6)差分分析を行い、その結果を
図19に示した。
【0113】
図19に示すように、本発明の3D-静的-スフェロイドEVを注入すると、シリンダー試験指標およびグリッド歩行試験指標がいずれも改善されたことが確認された。こうした結果は、本発明の3D-静的-スフェロイドEV処理が脳梗塞動物モデルにおいて神経回路の再生を誘導し、その結果、損傷した運動機能障害が改善されることができることを示す結果である。
【0114】
また、機能的回復とMRIとの間の関連性を確認するために、2つの行動テスト(シリンダー試験およびグリッド歩行テスト)とrs-fMRI結果間の相関分析を行い、その結果を
図20に示す。
【0115】
図20に示すように、脳卒中を誘導してから14日後、行動試験とMRIパラメータとの間に統計的に有意な相関はなかった(p>0.05)。脳卒中を誘導してから28日後,シリンダー試験の結果とIC ROIのrFDとの間に有意な相関があった(r=-0.553、p=0.040)。また、シリンダー試験の結果とstriatumのinterhemisphericとの間の傾向が見出された(r=-0.460、p=0.098)。グリッド歩行試験の肢損傷スコアとIC ROIのrFD(r=-0.684、p=0.007)とstriatumの interhemispheric RSFC RSFC(r=-0.691、p=006)との間に統計的に有意な相関関係が観察された。striatumのinterhemispheric RSFCはさらに内部カプセルのrFDと有意な相関を示した(r=0.776、p=0.001)。
【0116】
実施例15.製造条件による3D-静的-スフェロイドEV効果の検証
15.1 実験方法および条件
上記の実施例により、本発明の3D-静的-スフェロイドEVの優れた効果を確認した。実施例1の製造方法を同様に行い、マイクロウェル規格及び細胞数の条件を異にして製造されたEVにおいても同様の効果が見られるかどうかを確認するために、マイクロウェル当たりの細胞数の規格を400cell/wellから200cell/wellに変更させたり、マイクロウェルの規格を直径と深さをそれぞれ500μm×200μmの条件から500μm×600μmまたは直径800μmの深さのない平坦なウェルに変化させ、細胞を培養した。
【0117】
実施例1の製造方法にて変更された実験条件を下記表5に示す。
【0118】
【0119】
実施例1.1にて作製した6継代培養(passage 6)段階のWJ-MSCをPBSで洗浄し、トリプシン(TrypLETM Express、GIBCO、NY、USA)処理し、CO2培養器で5分間反応させた。その後、新しい無血清培地を入れ、トリプシンを中和させて細胞を回収し、遠心分離機を用いて細胞ペレットを得た。次いで、新しい無血清培地を入れ、細胞懸濁液を製造し、細胞を計数した。細胞計数後、前記表5と同様の条件でマイクロウェルに均一に分注し、静的な状態を維持し、自発的スフェロイド型細胞凝集体形成を誘導し、計4日間37℃のCO2培養器で培養し、3Dスフェロイド型細胞凝集体培養液を製造した。
【0120】
15.2 3Dスフェロイド型細胞凝集体形態の確認
前記実験例1~3の条件で実施例1と同様にスフェロイドが均一に形成されることが確認され、3Dスフェロイド型細胞凝集体培養液を回収し、実施例1.3の方法でスフェロイドに由来の細胞外小胞を得た。得られた細胞外小胞のサイズ分布(size distribution)を測定し、さらにスフェロイドのRoundnessおよびSolidityを確認し、その結果を
図21に示した。
【0121】
図21に示すように、実験例1~3全部において、製造された3Dスフェロイド型細胞凝集体の大きさが、実施例1にて製造された細胞凝集体の大きさの範囲である55~131μm範囲内の大きさで形成されることが確認され、サイズ分布の平均値が70.34~99.51μmで示されることが確認された。また、RoundnessおよびSolidityを確認した結果、実施例1における3Dスフェロイド型細胞凝集体のRoundness平均値である0.8697(CV2.64%)と同様に実験例1~3におけるスフェロイド型細胞凝集体もまたそれぞれ平均0.8751、0.8669、0.8601のRoundness値を示し、実施例1における3Dスフェロイド型細胞凝集体のSolidityの平均値である0.9488(CV2.64%)と同様に実験例1~3におけるスフェロイド型細胞凝集体もまたそれぞれ平均0.9744、1、0.9752値を示すことが確認された。
【0122】
このような結果は、マイクロウェル当たりの細胞数が200、400に変化し、マイクロウェルの直径が400~800に変化しても、実施例1の方法により同様の形態を有する3Dスフェロイド型細胞凝集体が効果的に形成されることができるを示す結果である。
【0123】
15.3 3Dスフェロイド型に由来のEVのmiRNA発現パターンの比較
実験例1~3の条件でも実施例1と同様の形態を有するスフェロイド型細胞凝集体が製造され得ることが確認されたので、さらにこれらから実施例1.3の方法で細胞外小胞を分離取得し、分離取得されたEVも同様のmiRNA発現パターンを示すかどうかを確認した。miRNA発現パターンの比較は、マイクロウェル条件を異にした実験例1及び2の方法により製造されたスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を用いて確認した。発現miRNA分析は、実施例8と同様のqPCR法により確認した。その結果を
図22に示す。実施例7にて製造した2D-EVとmiRNA発現パターンを比較した。
【0124】
図22に示すように、マイクロウェルの条件を直径500、800μmに変化させても、実施例1にて製造したEVと同様に血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)及び免疫調節に効能を示すmiRNAであるmiR-132、miR-210が既存の2D-EVと比較して顕著な発現増加を示すことが確認された。これらの結果は、直径200~800μmのマイクロウェルを用いて本発明の方法によって得られる三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来のEVがmiRNAマーカー発現特性を共通して示し得ることを示す結果である。したがって、これらはいずれも3D-静的-スフェロイドEVと称する場合がある。
【0125】
上記のような内容を総合すると、本発明の3D-静的-スフェロイドEVは神経新生に関連するmiRNA、神経新生因子が高く発現され、in vitroおよびin vivoに優れた神経新生能、神経回路生成およびそれに伴う脳卒中の改善効果が確認されたところ、神経の損傷および神経再生を必要とする各種疾患の予防または治療において優れた効果を示すことが予想される。
【0126】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ単に好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは自明である 。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を含む、神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項2】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞、万能幹細胞、誘導万能幹細胞および胚幹細胞からなる群から選択されたいずれか一つ以上である、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項3】
前記(a)段階の三次元培養は、静的(static)培養するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項4】
前記(a)段階の三次元培養は、マイクロウェルに間葉系幹細胞を200~600細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項5】
前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞および二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べてmiR-27a、miR-132、miR-146a、およびmiR-146bからなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項6】
前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞および二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べてVEGF(Vascular endothelial growth factor)、BDNF(brain-derived neurotrophic factor)、FGF(brain-derived neurotrophic factor)およびNGF(brain-derived neurotrophic factor)からなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項7】
前記神経系疾患および損傷は、脊髄損傷、パーキンソン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、運動神経損傷、外傷による末梢神経損傷、虚血性脳損傷による神経損傷、新生児低酸素性脳損傷、脳性麻痺、てんかん、難治性てんかん、アルツハイマー病、先天性代謝性神経疾患および外傷性脳損傷(traumatic brain injury)からなる群から選択される1種以上の疾患および損傷である、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物は、神経新生誘導用、神経分化誘導用または神経回路回復誘導用である、請求項1に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項9】
前記神経回路回復の誘導は、MRI DTI(diffusion-tensor image)から確認されるものである、請求項8に記載の神経系疾患および損傷の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項10】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経系疾患および損傷の予防または改善用の食品組成物。
【請求項11】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を通じて製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む、神経再生促進用in vitro組成物。
【請求項12】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmのマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3 dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;
を含む、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞を含む神経再生促進用組成物の、製造方法。
【国際調査報告】