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  • 特表-衛生化のための組成物および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】衛生化のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/50 20060101AFI20240423BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240423BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240423BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
G01N30/50
C07K1/22
G01N30/26 A
B01J20/281 R
G01N30/88 J
C07K16/00
C12N9/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568211
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2022028117
(87)【国際公開番号】W WO2022236085
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,786
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ・ピー・クツコ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・エフ・ウォレンサック
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本技術は、酢酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化/殺菌溶液による処理を含む、クロマトグラフィー媒体および支持機器に対する新規の衛生化方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌するための方法であって、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を、カルボン酸および約20%のヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることを含み、カルボン酸の濃度は約40mM~約200mMである、方法。
【請求項2】
クロマトグラフィー媒体に結合した標的分析物を溶出させるための方法であって、クロマトグラフィー媒体を、カルボン酸および約20%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液と接触させることを含み、カルボン酸の濃度は約40mM~約200mMである、方法。
【請求項3】
カルボン酸は、式R-C(=O)-OH(式中、Rは置換または非置換C~C12アルキル、アルケニル、またはアルキニルである)のカルボン酸である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸は酢酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
酢酸の濃度は約65mMである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌するための方法であって、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を、溶液のpHが3.5以下であるようにカルボン酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることを含み、溶液による処理から1時間以内に高度な細菌、胞子、および/またはカビの不活化または死滅をもたらす方法。
【請求項7】
クロマトグラフィー媒体に結合した標的分析物を溶出させるための方法であって、クロマトグラフィー媒体を、緩衝液のpHが3.5以下であるようにカルボン酸およびヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液と接触させることを含み、改善された生成物収率およびピークの鋭さをもたらす方法。
【請求項8】
カルボン酸は式R-C(=O)-OH(式中、Rは置換または非置換C~C12アルキル、アルケニル、またはアルキニルである)のカルボン酸である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
カルボン酸は酢酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酢酸の濃度は約40mM~約200mMである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酢酸の濃度は約65mMである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヘキシレングリコールの濃度は約8%~約80%である、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ヘキシレングリコールの濃度は約20%である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
クロマトグラフィーはアフィニティークロマトグラフィーである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインAまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アフィニティーリガンドは、天然のプロテインAに基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アフィニティーリガンドは、組換えプロテインAに基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
アフィニティーリガンドは、遺伝子操作されたプロテインAに基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
アフィニティーリガンドは、人工のプロテインAに基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインGまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインA/Gまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインLまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
衛生化または殺菌溶液のpHは約3.0~約3.5である、請求項1、3~6、および8~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
衛生化または殺菌溶液のpHは約3.1である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
溶出緩衝溶液のpHは約3.0~約3.5である、請求項2~5および7~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
溶出緩衝溶液のpHは約3.1である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細菌、胞子、および/またはカビの不活化は、衛生化または殺菌溶液による処理から40分以内に達成される、請求項6および8~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
衛生化方法は、ポリペプチドの精製のための工程を含むプロセスにおいて使用される、請求項1、3~6、8~24、および27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
溶出方法は、ポリペプチドの精製のための工程を含むプロセスにおいて使用される、請求項2~5、7~22、25、および26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
クロマトグラフィー媒体の寿命を増加させる方法であって、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む溶液でクロマトグラフィー媒体を衛生化または殺菌することを含み、(i)ガンマ線照射または(ii)水酸化ナトリウムを含む緩衝液のうちの少なくとも1つでクロマトグラフィー媒体を衛生化または殺菌することと比較して、クロマトグラフィー媒体の寿命が少なくとも約10%増加することを可能にする方法。
【請求項31】
クロマトグラフィー媒体は、アフィニティー樹脂、プロテインAまたはそのバリアントに基づく樹脂、プロテインGまたはそのバリアントに基づく樹脂のうちの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
衛生化または殺菌することは、ポリペプチドの精製のための統合された連続的なバイオ製造プロセス内の工程を含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
ポリペプチドは抗体である、請求項28、29、および32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
抗体はモノクローナル抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ポリペプチドは組換え酵素である、請求項28~29および32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
組換え酵素はヒト組換え酵素である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
組換え酵素はリソソームグリコーゲン特異的酵素である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
組換え酵素はヒト酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA)である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
組換え酵素はMyozyme(登録商標)である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
65mMの酢酸および20%のヘキシレングリコールを含む溶液。
【請求項41】
クロマトグラフィー媒体および/または支持機器の衛生化または殺菌のための方法における使用のための、請求項40に記載の溶液。
【請求項42】
クロマトグラフィー媒体に結合した標的分析物を溶出させるための方法における使用のための、請求項40に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮出願第63/185,786号の優先権を主張する。上述の仮出願の内容は、その全体において参照によって本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品の高い商業的需要は、製造に関連する費用を制御しながら、生産性および製品品質を最大化することに重きを置く製薬会社を結果としてもたらした。アフィニティークロマトグラフィーは、高度に特異的な結合を提供し、目的の分析物を粗製混合物から精製するのに必要とされる工程の全体的な数を減らすので、この効率向上への動きは、アフィニティークロマトグラフィーが最前線に立つことを可能にした。アフィニティークロマトグラフィー樹脂は、伝統的な精製技術と比較した場合、改善された収率および純度標準を提供する。
【0003】
アフィニティークロマトグラフィーを含む任意のバイオプロセスクロマトグラフィーの適用は、夾雑物および不純物の除去に対する高度な制御を必要とする。これらの夾雑物は、タンパク質、炭水化物、脂質、リポ多糖(例えば内毒素)、リポタンパク質、核酸、および/または微生物種を含むが、これらに限定されない。高分子不純物、例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸などは、多くの場合、様々な分子間力を利用し、クロマトグラフィー操作の洗浄および溶出段階中に標的分析物を不純物から分離することによって対処される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、微生物汚染は、現代的な製造に関連する延長された樹脂寿命の間に増殖するその能力ゆえに、例外的な脅威を任意のクロマトグラフィー操作にもたらす。実際、微生物汚染は、クロマトグラフィー工程が連続捕捉のためのバイオリアクターに統合されるプロセスにおいて、さらにより高いリスクをもたらす。伝統的に、クロマトグラフィー樹脂の汚染除去法は、水酸化ナトリウムおよび/またはガンマ線照射による処理を含む。しかし、アフィニティー樹脂(例えば、ペプチドベースのリガンドにコンジュゲートした樹脂)は、水酸化ナトリウムまたはガンマ線照射に曝露された場合、それほど安定ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本開示は、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌するための方法であって、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を、カルボン酸および約20%のヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることを含み、カルボン酸の濃度は約40mM~約200mMである、方法を提供する。
【0006】
別の態様では、本開示は、クロマトグラフィー媒体に結合した標的分析物を溶出させるための方法であって、クロマトグラフィー媒体を、カルボン酸および約20%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝溶液と接触させることを含み、カルボン酸の濃度は約40mM~約200mMである、方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本開示は、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌するための方法であって、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を、溶液のpHが3.5以下であるようにカルボン酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることを含み、溶液による処理から1時間以内に高度な細菌、胞子、および/またはカビの不活化または死滅をもたらす方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、クロマトグラフィー媒体に結合した標的分析物を溶出させるための方法であって、クロマトグラフィー媒体を、溶液のpHが3.5以下であるようにカルボン酸およびヘキシレングリコールを含む溶出緩衝溶液と接触させることを含み、改善された生成物収率およびピークの鋭さをもたらす方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本開示は、クロマトグラフィー媒体の寿命を増加させるための方法であって、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む溶液でクロマトグラフィー媒体を衛生化または殺菌することを含み、(i)ガンマ線照射または(ii)水酸化ナトリウムを含む緩衝液のうちの少なくとも1つでクロマトグラフィー媒体を衛生化または殺菌することと比較して、クロマトグラフィー媒体の寿命が少なくとも約10%増加することを可能にする方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様では、本開示は、65mMの酢酸および20%のヘキシレングリコールを含む溶液を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、カルボン酸は、式R-C(=O)-OH(式中、Rは置換または非置換C~C12アルキル、アルケニル、またはアルキニルである)のカルボン酸である。一部の実施形態では、カルボン酸は酢酸である。一部の実施形態では、酢酸の濃度は40~200mMである。一部の実施形態では、酢酸の濃度は65mMである。一部の実施形態では、ヘキシレングリコールの濃度は8~80%である。一部の実施形態では、ヘキシレングリコールの濃度は20%である。
【0012】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーはアフィニティークロマトグラフィーである。
【0013】
一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインAまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、天然のプロテインAに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、組換えプロテインAに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、遺伝子操作されたプロテインAに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、人工のプロテインAに基づく。
【0014】
一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインGまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインA/Gまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインLまたはその任意のバリアントに基づく。
【0015】
一部の実施形態では、衛生化溶液のpHは3.0~3.5の間である。一部の実施形態では、衛生化溶液のpHは3.1である。
【0016】
一部の実施形態では、細菌、胞子、および/またはカビの不活化は、衛生化溶液による処理から40分以内に達成される。
【0017】
一部の実施形態では、衛生化方法は、ポリペプチドの精製のために使用される。一部の実施形態では、ポリペプチドは抗体である。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0018】
一部の実施形態では、ポリペプチドは組換え酵素である。一部の実施形態では、組換え酵素はヒト組換え酵素である。一部の実施形態では、組換え酵素はリソソームグリコーゲン特異的酵素である。一部の実施形態では、組換え酵素はヒト酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA)である。一部の実施形態では、組換え酵素はMyozyme(登録商標)である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】アフィニティークロマトグラフィー樹脂の結合容量に対する様々な衛生化方法の影響を表すプロットを示す図である。
図2】樹脂寿命に対する様々な衛生化方法の影響を表すプロットを示す図である。
図3A】樹脂寿命に対する65mMの酢酸および20%のヘキシレングリコールを含む溶液(AAH衛生化溶液)の影響を表すプロットを示す図である。
図3B】樹脂寿命に対する65mMの酢酸および20%のヘキシレングリコールを含む溶液(AAH衛生化溶液)の影響を表すプロットを示す図である。
図4】実施例4に記載される微生物死滅研究の結果を示す表である。
図5】グリコールを含まないか、20%のエチレングリコールを含むか、または20%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液中のMyozyme(登録商標)の溶出プロファイルを表すプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本技術の構成、目的、および利点は、以下の詳細な説明において明らかである。しかし、詳細な説明は、本技術の実施形態および態様を示すが、限定ではなく実例としてのみ与えられることが理解されるべきである。本技術の範囲内の様々な変更および修正は、詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【0021】
この明細書で使用されるようなある特定の用語の定義は下記に提供される。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、全体として、この本技術が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0022】
定義
下記の部分は、置換または非置換であり得る。「置換」は、重水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、カルボキシ、シアノ、アシル、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、ニトロ、ホスフィン、ホスフィネート、ホスホネート、スルフェート、=O、=S、または他のR基などの1つまたはそれ以上の追加のR基での分子またはR基の水素原子の置換えを指す。特に示されない限り、場合により置換されている基は、基の各置換可能な位置に置換基を有し得る。本明細書で企図される置換基の組合せは、好ましくは、安定な(例えば、水分または他の化学的に反応性の条件の非存在下で40℃以下の温度で維持された場合、1週間以上実質的に変わらない)または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。
【0023】
特に指定されない限り、本明細書で使用されるような用語「カルボン酸」は、式R-C(=O)-OH(式中、Rは、水素、重水素、ハロ、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、フリル、ニトロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、アシルオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、チオアルコキシ、ハロチオアルコキシ、アルカノイル、ハロアルカノイル、チオアルカノイル、ハロチオアルカノイル、カルボキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、カルボニルチオ、ハロカルボニルチオ、チオカルボニルオキシ、ハロチオカルボニルオキシ、チオカルボニルチオ、ハロチオカルボニルチオである)、および-S(O)11(n=0~2、R11はSに直接連結している)であり、ここで、R11は、水素、重水素、ハロ、アミノ、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、アシルオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、チオアルコキシ、ハロチオアルコキシ、アルカノイル、ハロアルカノイル、チオアルカノイル、ハロチオアルカノイル、カルボキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、カルボニルチオ、ハロカルボニルチオ、チオカルボニルオキシ、ハロチオカルボニルオキシ、チオカルボニルチオ、およびハロチオカルボニルチオからなる群から選択される、の化合物を指す。一部の実施形態では、カルボン酸は、酢酸、クエン酸、コハク酸、およびギ酸からなる群から選択される。
【0024】
特に指定されない限り、本明細書で使用されるような用語「グリコール」は、式(R)(R)-C(OH)-C(OH)-(R)(R)(式中、R、R、R、およびRは各々独立して、水素、重水素、ハロ、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、フリル、ニトロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、アシルオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、チオアルコキシ、ハロチオアルコキシ、アルカノイル、ハロアルカノイル、チオアルカノイル、ハロチオアルカノイル、カルボキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、カルボニルチオ、ハロカルボニルチオ、チオカルボニルオキシ、ハロチオカルボニルオキシ、チオカルボニルチオ、ハロチオカルボニルチオである)、および-S(O)11(n=0~2、R11はSに直接連結している)であり、ここで、R11は、水素、重水素、ハロ、アミノ、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、アシルオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、チオアルコキシ、ハロチオアルコキシ、アルカノイル、ハロアルカノイル、チオアルカノイル、ハロチオアルカノイル、カルボキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、カルボニルチオ、ハロカルボニルチオ、チオカルボニルオキシ、ハロチオカルボニルオキシ、チオカルボニルチオ、およびハロチオカルボニルチオからなる群から選択される、の化合物を指す。
【0025】
本明細書で使用されるような用語「衛生化」は、所与の環境における微生物汚染を減少および/または不活化させるプロセスを指す。一部の実施形態では、本開示による衛生化は、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を汚染し得る微生物の不活化を含み得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、静微生物性とみなされる。
【0026】
本明細書で使用されるような用語「殺菌」は、所与の環境における全ての微生物を破壊または排除するプロセスを指す。一部の実施形態では、殺菌は、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を汚染し得る微生物の完全な排除である。一部の実施形態では、殺菌は、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を汚染し得る微生物の6logを超える減少である。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、殺微生物性とみなされる。
【0027】
本明細書で使用されるような用語「不活化」は、微生物の複製を減少させるまたは阻害する任意のプロセスを指す。
【0028】
本明細書で使用されるような用語「死滅」は、細胞がもはや生存することも繁殖することもできないように、生命維持に必要な細胞プロセスの永久的な終わりを引き起こす任意の方法を指す。本明細書で使用されるような用語「完全な死滅」は、培養菌を殺菌溶液に接種し、インキュベートし(死滅が生じる)、次いで、微生物の成長に好都合な環境において平板培養した場合、何も成長せず、これにより、元のスパイクにおける生物は、殺菌溶液への曝露を生き延びなかったことを示す状況を指す。
【0029】
本明細書で使用されるような用語「バリアント」は、宿主細胞または非天然宿主細胞において組換え発現される特定のタンパク質の任意の形態を包含する。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、その天然のDNA配列から組換え発現されたタンパク質を指す。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、コドン最適化DNA配列から組換え発現されたタンパク質を指す。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、組換え発現された全長タンパク質を指す。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、組換え発現されたタンパク質の切断型を指す。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、組換え発現された変異体タンパク質を指す。一部の実施形態では、変異体タンパク質は、そのアミノ酸配列における1つまたはそれ以上の位置での点変異を含有する。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、組換え発現された操作されたタンパク質、例えば、遺伝子操作されたタンパク質を指す。一部の実施形態では、用語「バリアント」は、組換え発現された人工タンパク質を指す。
【0030】
衛生化/殺菌溶液
一部の実施形態では、本技術は、カルボン酸およびグリコールを含む衛生化または殺菌溶液に関する。
【0031】
一部の実施形態では、本技術は、酢酸を含む衛生化または殺菌溶液に関する。一部の実施形態では、溶液は約40~200mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、溶液は、約40~200mM、約50~190mM、約60~180mM、約70~170mM、約80~160mM、約90~150mM、約100~140mM、または約110~130mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、溶液は、約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150(または前述の値のうちの任意の2つの間の任意の数字)mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、溶液は約65mMの酢酸を含む。
【0032】
一部の実施形態では、本技術は、ヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液に関する。一部の実施形態では、溶液は約8~80%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、溶液は、約10~70%、約12~60%、約14~50%、約16~40%、約18~30%、または約20~25%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、溶液は、約8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、溶液は約20%のヘキシレングリコールを含む。
【0033】
一部の実施形態では、本技術は、酢酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液に関する。一部の実施形態では、本技術は、約40~200mMの酢酸および約8~80%のヘキシレングリコール、約50~190mMの酢酸および約10~70%のヘキシレングリコール、約60~180mMの酢酸および約12~60%のヘキシレングリコール、約70~170mMの酢酸および約14~50%のヘキシレングリコール、約80~160mMの酢酸および約16~40%のヘキシレングリコール、約90~150mMの酢酸および約18~30%のヘキシレングリコール、約100~140mMの酢酸および約20~25%のヘキシレングリコール、または約110~130mMの酢酸および約20~25%のヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液に関する。
【0034】
一部の実施形態では、本技術は、約40mMの酢酸および約8%のヘキシレングリコール、約50mMの酢酸および約10%のヘキシレングリコール、約60mMの酢酸および約12%のヘキシレングリコール、約70mMの酢酸および約14%のヘキシレングリコール、約80mMの酢酸および約16%のヘキシレングリコール、約90mMの酢酸および約18%のヘキシレングリコール、約100mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコール、約110mMの酢酸および約25%のヘキシレングリコール、約120mMの酢酸および約30%のヘキシレングリコール、約130mMの酢酸および約40%のヘキシレングリコール、約140mMの酢酸および約50%のヘキシレングリコール、約150mMの酢酸および約60%のヘキシレングリコール、約160mMの酢酸および約70%のヘキシレングリコール、約170mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、約180mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、約190mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、または約200mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液に関する。一部の実施形態では、本技術は、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液に関する。
【0035】
一部の実施形態では、本技術は、約3.5のpHを有する衛生化または殺菌溶液に関する。一部の実施形態では、溶液は、約3.4、約3.3、約3.2、または約3.1、約3.0、または約2.9のpHを有する。一部の実施形態では、溶液は約3.0のpHを有する。
【0036】
一部の実施形態では、溶液は、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含み、約3.0のpHを有する。
【0037】
衛生化/殺菌の方法
一部の実施形態では、本開示は、カルボン酸およびグリコールを含む衛生化または殺菌溶液による処理を含む、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器に対する衛生化または殺菌方法を提供する。本技術によって対処される潜在的な微生物夾雑物は、限定なしに、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫を含む。一部の実施形態では、本方法は、高度な細菌、胞子、および/またはカビの不活化または死滅をもたらす。
【0038】
一部の実施形態では、微生物夾雑物は、ウイルス、例えば、DNAウイルス、RNAウイルス、エンベロープウイルス、または非エンベロープウイルスである。ウイルス夾雑物の非限定的な例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、およびウエストナイルウイルスを含む。一部の実施形態では、微生物夾雑物は、細菌、例えば、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、および/またはバイオフィルム形成細菌である。細菌夾雑物の非限定的な例は、梅毒トレポネーマ、淋菌、クラミジア・トラコマチス、化膿レンサ球菌、結核菌、ブルセラ・メリテンシス、ブルセラ・メリテンシス、エーリキア属、ブドウ球菌、レンサ球菌、および緑膿菌を含む。一部の実施形態では、微生物夾雑物は真菌である。真菌夾雑物の非限定的な例は、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属およびアルテルナリア属を含む。一部の実施形態では、微生物夾雑物は寄生虫である。寄生虫夾雑物の非限定的な例は、アメーバ属、プラスモジウム属、クルーズトリパノソーマおよびバベシア・ミクロティを含む。
【0039】
一部の実施形態では、本開示は、媒体および/または機器を、本開示に記載される衛生化または殺菌溶液と接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、衛生化または殺菌溶液は、カルボン酸およびグリコールを含む。
【0040】
一部の実施形態では、本技術は、媒体および/または機器を、酢酸を含む衛生化または殺菌溶液と接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、溶液は約40~200mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、溶液は、約40~200mM、約50~190mM、約60~180mM、約70~170mM、約80~160mM、約90~150mM、約100~140mM、または約110~130mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、溶液は、約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150(または前述の値のうちの任意の2つの間の任意の数字)mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、溶液は約65mMの酢酸を含む。
【0041】
一部の実施形態では、本技術は、媒体および/または機器を、ヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、溶液は約8~80%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、溶液は、約10~70%、約12~60%、約14~50%、約16~40%、約18~30%、または約20~25%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、溶液は、約8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、溶液は約20%のヘキシレングリコールを含む。
【0042】
一部の実施形態では、本技術は、媒体および/または機器を、酢酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、溶液は、約40~200mMの酢酸および約8~80%のヘキシレングリコール、約50~190mMの酢酸および約10~70%のヘキシレングリコール、約60~180mMの酢酸および約12~60%のヘキシレングリコール、約70~170mMの酢酸および約14~50%のヘキシレングリコール、約80~160mMの酢酸および約16~40%のヘキシレングリコール、約90~150mMの酢酸および約18~30%のヘキシレングリコール、約100~140mMの酢酸および約20~25%のヘキシレングリコール、または約110~130mMの酢酸および約20~25%のヘキシレングリコールを含む。
【0043】
一部の実施形態では、本技術は、媒体および/または機器を、約40mMの酢酸および約8%のヘキシレングリコール、約50mMの酢酸および約10%のヘキシレングリコール、約60mMの酢酸および約12%のヘキシレングリコール、約70mMの酢酸および約14%のヘキシレングリコール、約80mMの酢酸および約16%のヘキシレングリコール、約90mMの酢酸および約18%のヘキシレングリコール、約100mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコール、約110mMの酢酸および約25%のヘキシレングリコール、約120mMの酢酸および約30%のヘキシレングリコール、約130mMの酢酸および約40%のヘキシレングリコール、約140mMの酢酸および約50%のヘキシレングリコール、約150mMの酢酸および約60%のヘキシレングリコール、約160mMの酢酸および約70%のヘキシレングリコール、約170mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、約180mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、約190mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、または約200mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコールを含む衛生化または殺菌溶液と接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、溶液は、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む。
【0044】
一部の実施形態では、本技術は、媒体および/または機器を、約3.5のpHを有する衛生化または殺菌溶液と接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、溶液は、約3.4、約3.3、約3.2、または約3.1、約3.0、または約2.9のpHを有する。一部の実施形態では、溶液は約3.0のpHを有する。
【0045】
一部の実施形態では、本開示の衛生化溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物(例えば、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫など)を、この溶液による処理から約10時間以内に不活化する。一部の実施形態では、本開示の衛生化溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、溶液による処理から約0~10時間、約0~9時間、約0~8時間、約0~7時間、約0~6時間、約0~5時間、約0~4時間、約0~3時間、約0~2時間、または約0~1時間以内に不活化する。一部の実施形態では、本開示の衛生化溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、溶液による処理から約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、または約1時間で不活化する。一部の実施形態では、本開示の衛生化溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、溶液による処理から約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分で不活化する。一部の実施形態では、本開示の衛生化溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、この溶液による処理から約40分以内に不活化する。一部の実施形態では、本衛生化方法は、衛生化された媒体および/または機器が、その後、治療的投与のための材料の検出、精製、および/または調製において利用されることを可能にするのに十分である。
【0046】
一部の実施形態では、本開示の殺菌溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物(例えば、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫など)を、この溶液による処理から約10時間以内に死滅させる。一部の実施形態では、本開示の殺菌溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、溶液による処理から約0~10時間、約0~9時間、約0~8時間、約0~7時間、約0~6時間、約0~5時間、約0~4時間、約0~3時間、約0~2時間、または約0~1時間以内に死滅させる。一部の実施形態では、本開示の殺菌溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、溶液による処理から約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、または約1時間で死滅させる。一部の実施形態では、本開示の殺菌溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、溶液による処理から約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分で死滅させる。一部の実施形態では、本開示の殺菌溶液は、全ての植物性、バイオフィルム形成、胞子形成、および/またはカビ形成微生物を、この溶液による処理から約40分以内に死滅させる。一部の実施形態では、本殺菌方法は、殺菌された媒体および/または機器が、その後、治療的投与のための材料の検出、精製、および/または調製において利用されることを可能にするのに十分である。
【0047】
一部の実施形態では、クロマトグラフ媒体および/または支持機器は、約0℃~約40℃の温度で、本開示の衛生化または殺菌溶液に曝露される。一部の実施形態では、クロマトグラフ媒体および/または支持機器は、約0℃~約25℃の温度で溶液に曝露される。一部の実施形態では、クロマトグラフ媒体および/または支持機器は、約0℃~約15℃の温度で溶液に曝露される。一部の実施形態では、クロマトグラフ媒体および/または支持機器は、約0℃~約10℃の温度で溶液に曝露される。一部の実施形態では、温度は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、または約40℃である。一部の実施形態では、温度は約20℃である。一部の実施形態では、温度は約4℃である。
【0048】
一部の実施形態では、本開示は、媒体および/または支持機器を、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む約pH3の溶液と、約20℃の温度で、少なくとも約1時間接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、媒体および/または支持機器を、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む約pH3の溶液と、約20℃の温度で、少なくとも約40分間接触させることによって、クロマトグラフ媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法に関する。
【0049】
限定ではなく例として、一部の実施形態では、クロマトグラフ媒体は、カラムに充填された任意の材料を指す。一部の実施形態では、材料は、樹脂または粒子である。一部の実施形態では、樹脂は、ポリマー支持体またはベースマトリックスである。一部の実施形態では、ポリマー支持体またはベースマトリックスは、アフィニティーリガンドとカップリングする。一部の実施形態では、ポリマー支持体またはベースマトリックスは、限定なしに、アガロース、セルロース、セファロース、ポリメタクリレート、またはポリビニルエーテルを含み得る。一部の実施形態では、クロマトグラフ媒体は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)または陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、ゲル濾過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても公知)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)、順相クロマトグラフィー(NPC)、逆相クロマトグラフィー(RPC)、キャピラリー液体クロマトグラフィー、電気クロマトグラフィー、膜クロマトグラフィー、モノリスクロマトグラフィー、およびナノまたはキャピラリー液体クロマトグラフィーにおける使用のために設計される。
【0050】
限定ではなく例として、一部の実施形態では、支持機器は、クロマトグラフカラム、ポンプ、注入器、相互接続チューブ、検出器、サンプル収集器、混合機、流量制限器、インラインフィルター、弁、泡トラップ、および全ての他の液体接触表面からの1つまたはそれ以上の選択物である。
【0051】
一部の実施形態では、本技術は、クロマトグラフィー樹脂の機能を損なわず、樹脂の寿命性能を縮めない。加えてまたは代替的に、一部の実施形態では、本開示の衛生化または殺菌溶液は、低い毒性を有し、非可燃性であり、タンパク質凝集を引き起こさず、および/またはペプチドアフィニティーリガンドに対して低刺激性である。一部の実施形態では、本開示の衛生化または殺菌溶液は、バイオフィルムを貫通する。一部の実施形態では、本開示の衛生化または殺菌溶液は高い濡れ性を有し、高い濡れ性は、クロマトグラフィー媒体そのもの、すなわち、クロマトグラフィービーズおよびビーズ孔の全体への効率的な分布を可能にする。
【0052】
サンプル調製
一部の実施形態では、本技術は、生体サンプルまたは環境サンプルなどの任意のソースサンプルからの目的の1つまたはそれ以上の分析物の精製および/または検出に適用される。一部の実施形態では、生体サンプルは、ヒト、動物、植物、微生物、または細胞および組織培養物などの任意の生きている細胞小器官、組織生検材料、全血、乾燥血液スポット、血漿、脱タンパク質血漿、血清、脱タンパク質血清、腹水、精液、痰、尿、便、汗、唾液、胆汁、涙、脳脊髄液、身体部位からのスワブ、皮膚、ならびに毛に由来し得る。一部の実施形態では、環境サンプルは、空気サンプル、土壌サンプル、水サンプル、食物サンプル、および任意の材料サンプルであり得る。一部の実施形態では、ソースサンプルは細胞培養物から得られる。一部の実施形態では、ソースサンプルは、細胞培養上清から得られる。一部の実施形態では、ソースサンプルは細胞溶解物から得られる。
【0053】
一部の実施形態では、目的の分析物は、例えば、原薬などの小分子ならびにポリペプチド、ペプチド、核酸、脂質または脂肪酸、炭水化物、リポタンパク質、リポ多糖(例えば内毒素)、ホルモン、ビタミン、ステロイド、および代謝産物などの高分子であり得る。一部の実施形態では、目的の分析物はポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチドは治療用ポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチドは、酵素または組換え酵素である。一部の実施形態では、組換え酵素はヒト組換え酵素である。限定ではなく例として、一部の実施形態では、組換え酵素は、リソソームグリコーゲン特異的酵素、ヒト酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アルグルコシダーゼアルファ、アバルグルコシダーゼアルファ(neoGAA)、Myozyme(登録商標)、Lumizyme(登録商標)、Fabrazyme(登録商標)、Cerezyme(登録商標)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、または酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、非酵素タンパク質、例えば、構造タンパク質(例えばコラーゲン)、輸送タンパク質(例えばヘモグロビン)、調節タンパク質(例えばペプチドホルモン)、モータータンパク質(例えばミオシン)、または免疫タンパク質(例えば抗体)である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、抗体、例えば、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、二重特異性抗体(BsAb)、三重特異性抗体(TsAb)、それらの抗原結合断片、または抗体融合タンパク質である。一部の実施形態では、抗体は組換えモノクローナル抗体である。本明細書で使用されるような用語「抗原結合断片」は、部分が由来する全抗体と同じ抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたはそれ以上の断片を指す。「抗原結合断片」の例は、限定なしに、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、単離された相補性決定領域(CDR)、scFv、およびダイアボディを含む。
【0054】
一部の実施形態では、夾雑物および干渉物質の大部分は、クロマトグラフィー法をソースサンプルに適用する前に除去される。一部の実施形態では、目的の分析物は、濾過、沈殿、遠心分離、抽出、希釈、またはそれらの組合せによって富化および単離される。一部の実施形態では、目的の分析物は、固相抽出(SPE)によってソースサンプルから富化される。SPEは、サンプル調製カートリッジを使用することによって、目的の分析物を富化する。分析物を含有するSPE抽出物は、乾燥され、クロマトグラフィー系に適合する溶媒系において再構成される。
【0055】
一部の実施形態では、目的の分析物は、液液抽出(LLE)によってソースサンプルから抽出される。LLEは、2つの非混和性または部分的に混和性の液体、通常は水のような極性溶媒および非極性有機溶媒中での分析物の相対的な溶解性に基づいて分析物を分離するために使用される。標的分析物は、初めに溶媒によって分配され、その後、抽出、濃縮、および希釈される。
【0056】
一部の実施形態では、目的の分析物は、固体支持液液抽出(SLE)によってソースサンプルから抽出される。SLEにおいて、ソースサンプルの水溶液は、珪藻土を含む支持体にロードされる。支持体内へのサンプル吸収後、支持体はメチルtert-ブチルエーテルなどの有機抽出溶媒で数回洗浄される。目的の分析物は、有機相に分配された後、乾燥によって濃縮されてからクロマトグラフィー系に適合する溶媒中で再構成される。
【0057】
目的の分析物がタンパク質である一部の実施形態では、それらはタンパク質沈殿抽出(PPE)によってソースサンプルから富化される。タンパク質沈殿法は、脱塩、等電点沈殿、および有機溶媒抽出を含み得る。例として、ソースサンプルは、クロマトグラフィー系へのローディングのために脱塩によって調製される。このタンパク質沈殿技術は、硫酸アンモニウムなどの中性塩の濃度を増加させることに応答して、溶液から「塩析」されるタンパク質に依存する。一部の実施形態では、ソースサンプルは等電点沈殿によって調製され;この方法は、標的タンパク質よりもむしろ夾雑物タンパク質を沈殿させるために使用される。等電点(pI)は、タンパク質の正味の一次電荷がゼロになるpHである。ほとんどのタンパク質について、pIは、4~6のpH範囲にある。一部の実施形態では、塩酸および硫酸などの無機酸は沈殿剤として使用される。等電点沈殿の潜在的な欠点は、無機酸によって引き起こされる不可逆的変性である。
【0058】
クロマトグラフィー
一部の実施形態では、ソースサンプルが、例えば、遠心分離および/または濾過によって加工されたら、浄化されたサンプルは、クロマトグラフィー系、例えば液体クロマトグラフィー系にロードされる。
【0059】
液体クロマトグラフィー(LC)は、流体溶液(移動相)が、ポンプ作用、圧力、および/または重力によって微細物質(固定相)のカラムに染み渡り、クロマトグラフィー媒体の細孔内および細孔を通る拡散を達成するときに、流体溶液の1つまたはそれ以上の成分を選択的に保持するプロセスである。固定相による流体溶液中の選択的成分の保持は、移動相よりも固定相への成分の高いアフィニティーに起因する。一部の実施形態では、使用される液体クロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィー(AC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)、順相クロマトグラフィー(NPC)、逆相クロマトグラフィー(RPC)、キャピラリー液体クロマトグラフィー、電気クロマトグラフィー、膜クロマトグラフィー、モノリスクロマトグラフィー、ナノまたはキャピラリー液体クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、この技術において使用される液体クロマトグラフィー系は、アフィニティークロマトグラフィー(AC)である。
【0060】
一部の実施形態では、目的の分析物は、固定相によって保持され、その後溶出される。一部の実施形態では、目的の分析物は、保持されずに固定相を流れる。一部の実施形態では、溶出液または流出物中の分析物は、保持時間、ピーク強度、およびピーク面積に基づいて、UV、蛍光、屈折率、光散乱、および電気伝導率を含む様々な手段によってモニタリングされる。一部の実施形態では、分析物のさらに詳細な分析は、質量分析法などの技術を用いて行われる。
【0061】
一部の実施形態では、LC溶媒は、限定なしに、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、エーテル、ヘキサン、ヘキシレングリコール、酢酸エチル、ならびに炭化水素溶媒(例えば、脂肪族および芳香族溶媒)、酸素化溶媒(例えば、アルコール、グリコール、ケトン、アルデヒド、グリコールエーテル、エステル、およびグリコールエーテルエステル)、およびハロゲン化溶媒(例えば、塩素化および臭素化炭化水素)などの有機溶媒を含む。一部の実施形態では、LC溶媒は、緩衝され、当技術分野で日常的に使用される様々な塩および緩衝剤、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどを含有し得る。一部の実施形態では、LC溶媒は、Tween、SDSなどの界面活性剤も含む。
【0062】
アフィニティークロマトグラフィー(AC)
一部の実施形態では、使用される液体クロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィーである。アフィニティークロマトグラフィーは、分子間の特異的な生物学的相互作用を利用する。アフィニティークロマトグラフィーにおいて一般的に活用される生物学的相互作用の種類は、限定なしに、抗原-抗体相互作用、タンパク質-免疫グロブリン相互作用、酵素-基質/補因子/阻害剤相互作用、核酸-核酸結合タンパク質相互作用、レクチン-多糖/糖タンパク質相互作用、アビジン-ビオチン相互作用、カルモジュリン-カルモジュリン結合パートナー相互作用、グルタチオン-GST融合タンパク質相互作用、金属イオン-ポリヒスチジン融合タンパク質相互作用、および受容体-ホルモン相互作用を含む。
【0063】
一部の実施形態では、粗製抽出物がカラムを通り過ぎるときに、リガンドに対して特異的な結合アフィニティーを有するそれらの分子(標的分析物)が吸着されるように、生物特異的リガンド(アフィニティーリガンド)は、カラム内の固体支持体(例えば、セルロース、アガロース、またはポリアクリルアミド)に化学的に固定される。他の夾雑物が洗い流された後、結合した分析物は支持体から溶出され、元のサンプルからのその精製に至る。一部の実施形態では、使用されるアフィニティークロマトグラフィーは、イムノアフィニティークロマトグラフィー(IAC)、プロテインA、プロテインG、もしくはプロテインLアフィニティークロマトグラフィー、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、色素-リガンドアフィニティークロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、またはボロン酸アフィニティークロマトグラフィーである。一部の実施形態では、使用されるアフィニティークロマトグラフィーはプロテインAクロマトグラフィーである。
【0064】
アフィニティークロマトグラフィー樹脂は、化学的にカップリングしたアフィニティーリガンドを有するポリマー支持体を含む。アフィニティーリガンドは、生物学的および合成リガンドを含む。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、生物学的リガンド、例えば、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(核酸)、補酵素、ビタミン、レクチン、および抗体である。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは合成リガンドである。合成リガンドは、新規合成または既存の分子構造の修飾(例えば、トリアジニルヌクレオチド模倣物、プリンおよびピリミジン誘導体、非天然ペプチド、トリアジニル色素、他のトリアジンに基づくリガンド、オリゴ糖、およびボロン酸類似体)のどちらかによって生成される。
【0065】
一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、ペプチド、小分子、タンパク質、または酵素に結合する。一部の実施形態では、酵素は組換え酵素である。一部の実施形態では、組換え酵素はヒト組換え酵素である。限定ではなく例として、一部の実施形態では、組換え酵素は、リソソームグリコーゲン特異的酵素、ヒト酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アルグルコシダーゼアルファ、アバルグルコシダーゼアルファ(neoGAA)、Myozyme(登録商標)、Lumizyme(登録商標)、Fabrazyme(登録商標)、Cerezyme(登録商標)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、または酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)である。
【0066】
一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインAまたはそのバリアントに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインGまたはそのバリアントに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインA/Gまたはそのバリアントに基づく。一部の実施形態では、アフィニティーリガンドは、プロテインLまたはそのバリアントに基づく。
【0067】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、それらの抗原結合断片、および抗体融合タンパク質の精製のために広く使用される。それは、ベースマトリックスに架橋したプロテインAリガンドを含むプロテインAアフィニティー樹脂を固定相として使用して、目的の1つまたはそれ以上の抗体を移動相から捕捉する。用語「プロテインAリガンド」は、天然のプロテインAまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを指す。42kDaの細胞表面タンパク質であるブドウ球菌プロテインA(SpA)は、その5つの相同的な免疫グロブリン結合ドメイン(E、D、A、B、およびC)を使用して、免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンGまたはIgG)のFc部分に結合する。
【0068】
プロテインGアフィニティークロマトグラフィー
プロテインGアフィニティークロマトグラフィーは、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、それらの抗原結合断片、および抗体融合タンパク質の精製のために広く使用される。それは、ベースマトリックスに架橋したプロテインGリガンドを含むプロテインGアフィニティー樹脂を固定相として使用して、目的の1つまたはそれ以上の抗体を移動相から捕捉する。用語「プロテインGリガンド」は、天然のプロテインGまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを指す。2つ(または3つ)のGAドメインおよび2つ(または3つ)のBドメインを含む細胞壁タンパク質であるレンサ球菌プロテインGは、免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンGまたはIgG)のFcおよびFab部分に結合する。しかし、プロテインGおよびFabの間の相互作用は、Fcとのその相互作用よりはるかに弱い。
【0069】
プロテインA/Gアフィニティークロマトグラフィー
プロテインA/Gアフィニティークロマトグラフィーは、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、それらの抗原結合断片、および抗体融合タンパク質の精製のために広く使用される。それは、ベースマトリックスに架橋したプロテインA/Gリガンドを含むプロテインA/Gアフィニティー樹脂を固定相として使用して、目的の1つまたはそれ以上の抗体を移動相から捕捉する。用語「プロテインA/Gリガンド」は、組換えプロテインA/Gまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを指す。プロテインA/Gは、ブドウ球菌プロテインAおよびレンサ球菌プロテインGの抗体結合ドメインを併せ持つ約51kDaの組換え融合タンパク質である。プロテインA/Gは、プロテインAからの4つのFc結合ドメインおよびプロテインGからの2つのFc結合ドメインを含有する。プロテインA/Gは、様々な種からポリクローナルまたはモノクローナル抗体を精製するために使用される。
【0070】
プロテインLアフィニティークロマトグラフィー
プロテインLアフィニティークロマトグラフィーは、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、それらの抗原結合断片、および抗体融合タンパク質の精製のために広く使用される。それは、ベースマトリックスに架橋したプロテインLリガンドを含むプロテインLアフィニティー樹脂を固定相として使用して、目的の1つまたはそれ以上の抗体を移動相から捕捉する。プロテインLは、元はペプトコッカス・マグナス(Peptococcus magnus)から単離された約95kDaの細胞表面免疫グロブリン結合タンパク質である。用語「プロテインLリガンド」は、大腸菌または任意の他の非天然宿主細胞において組換え発現された組換えプロテインLまたはその任意のバリアントに基づくアフィニティーリガンドを指す。
【0071】
標的分析物精製方法
一部の実施形態では、本開示は、細胞培養物からの高分子分析物(例えば、抗体、酵素、ホルモン、成長因子、DNA/RNA、レクチン、治療用非エンベロープウイルスなど)の精製に関する。一部の実施形態では、標的分析物は抗体であり、精製プロセスは、以下の工程を含む:
(i)衛生化工程-全てのクロマトグラフィー媒体および支持機器は、AAH衛生化溶液で事前に衛生化され、衛生化方法は、媒体および機器とAAH衛生化溶液を0~40℃、好ましくは15~25℃で、少なくとも1時間接触させる工程を含む。
(ii)収集工程-細胞、細胞片、および他の不純物は、遠心分離、深層濾過、精密濾過、および/または交互タンジェンシャルフローを行うことによって、細胞培養上清から分離される。
(ii)アフィニティークロマトグラフィー工程-標的抗体は、事前に衛生化され、平衡化されたアフィニティークロマトグラフィー樹脂上で、中性pHで、細胞培養上清から捕捉され、洗浄され、酸性pHで溶出される。
(iii)ウイルス不活化工程-標的抗体が試験pHで安定である場合、低pHレトロウイルス不活化は、通常、低pH(3.3~3.6)で、60分以上の保持時間で行われる。
(iv)陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)工程-宿主細胞タンパク質(HCP)、抗体凝集体、および抗体断片は、サンプルを、事前に衛生化された陽イオン交換カラムに通すことによって除去される。
(v)陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程-DNA、任意の濾されたプロテインA、および他の微量夾雑物は、サンプルを、事前に衛生化された陰イオン交換カラムに通すことによって除去される。
(vi)小ウイルス保持濾過工程-サンプルをウイルスクリアランス工程に供して任意の夾雑物ウイルスを除去する。
(vii)限外濾過工程-標的抗体は、所望の濃度に濃縮され、所望の製剤化緩衝液に緩衝液交換される。
【0072】
一部の実施形態では、標的抗体は、ポリマー支持体、ビーズまたは膜に化学的にコンジュゲートしたプロテインAリガンドを含むプロテインAアフィニティークロマトグラフィー樹脂上に細胞培養上清から捕捉される。一部の実施形態では、プロテインAリガンドは、天然のプロテインAに基づく。一部の他の実施形態では、プロテインAリガンドは、人工のプロテインAに基づく。例えば、人工のプロテインAは、非天然アミノ酸残基を含み得る。一部の実施形態では、プロテインAリガンドは、黄色ブドウ球菌から抽出された天然のプロテインAに基づく。一部の他の実施形態では、プロテインAリガンドは、大腸菌またはブレビバチルス・コシネンシスにおいて組換え発現されたプロテインAまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、プロテインAリガンドは、遺伝子操作されたプロテインA(例えば、BまたはCドメインに由来する繰り返し単位を含有する、アルカリ耐性プロテインAまたはプロテインAバリアント)に基づく。一部の実施形態では、プロテインAリガンドは、変異体プロテインA(例えば、BおよびCドメインにおける点変異を含有するプロテインAバリアント)に基づく。一部の実施形態では、プロテインAリガンドは、切断されたプロテインAに基づく。
【0073】
一部の実施形態では、標的抗体は、ポリマー支持体に化学的にコンジュゲートしたプロテインGリガンドを含むプロテインGアフィニティークロマトグラフィー樹脂上に細胞培養上清から捕捉される。一部の実施形態では、プロテインGリガンドは、天然のプロテインGに基づく。一部の他の実施形態では、プロテインGリガンドは、人工のプロテインGに基づく。例えば、人工のプロテインGは、非天然アミノ酸残基を含み得る。一部の他の実施形態では、プロテインGリガンドは、C群またはG群レンサ球菌から単離された天然のプロテインGに基づく。一部の実施形態では、プロテインGリガンドは、大腸菌において組換え発現されたプロテインGまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、プロテインGリガンドは、遺伝子操作されたプロテインG(例えば、プロテインGの非アルブミン結合型)に基づく。一部の実施形態では、プロテインGリガンドは、変異体プロテインGに基づく。一部の実施形態では、プロテインGリガンドは、切断されたプロテインGに基づく。
【0074】
一部の実施形態では、標的抗体は、ポリマー支持体に化学的にコンジュゲートしたプロテインA/Gリガンドを含むプロテインA/Gアフィニティークロマトグラフィー樹脂上に細胞培養上清から捕捉される。一部の実施形態では、プロテインA/Gリガンドは、大腸菌において組換え発現されたプロテインA/Gまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、プロテインA/Gリガンドは、遺伝子操作されたプロテインA/Gに基づく。一部の実施形態では、プロテインA/Gリガンドは、変異体プロテインA/Gに基づく。一部の実施形態では、プロテインA/Gリガンドは、切断されたプロテインA/Gに基づく。一部の実施形態では、プロテインA/Gリガンドは、人工のプロテインA/Gに基づく。
【0075】
一部の実施形態では、標的抗体は、ポリマー支持体に化学的にコンジュゲートしたプロテインLリガンドを含むプロテインLアフィニティークロマトグラフィー樹脂上に細胞培養上清から捕捉される。一部の実施形態では、プロテインLリガンドは、天然のプロテインLに基づく。一部の他の実施形態では、プロテインLリガンドは、人工のプロテインLに基づく。例えば、人工のプロテインLは非天然アミノ酸残基を含み得る。一部の他の実施形態では、プロテインLリガンドは、ペプトコッカス・マグナスから単離された天然のプロテインLに基づく。一部の実施形態では、プロテインLリガンドは、大腸菌において組換え発現されたプロテインLまたはその任意のバリアントに基づく。一部の実施形態では、プロテインLリガンドは、遺伝子操作されたプロテインLに基づく。一部の実施形態では、プロテインLリガンドは、変異体プロテインLに基づく。一部の実施形態では、プロテインLリガンドは、切断されたプロテインLに基づく。
【0076】
本明細書において特に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例示的な方法および材料が下記に記載されるが、本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料も、本開示の実践または試験において使用され得る。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。全体として、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品および薬化学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法およびそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されるようにまたは本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。さらに、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。この明細書および実施形態全体を通して、単語「有する(have)」および「含む(comprise)」、または「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」、もしくは「含む(comprising)」などの変形は、言及されたものまたはものの群の包含を暗示するが、任意の他のものまたはものの群の排除を暗示しないことが理解される。いくつかの文書が本明細書において引用されるが、この引用は、これらの文書のいずれかが当技術分野における技術常識の一部を形成することを認めることを構成しない。
【0077】
クロマトグラフィー緩衝液
一部の実施形態では、本技術は、カルボン酸およびグリコールを含むクロマトグラフィー緩衝溶液に関する。一部の実施形態では、クロマトグラフィー緩衝液は、結合していないまたは緩く結合した(例えば、非特異的相互作用を介して)タンパク質および/または他の夾雑物を、クロマトグラフィー媒体の表面から洗浄するために使用される洗浄緩衝液である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー緩衝液は、結合した標的分析物(例えば、抗原、抗体、酵素など)をクロマトグラフィー媒体の表面から除去するために使用される溶出緩衝液である。
【0078】
一部の実施形態では、本技術は、酢酸を含む溶出緩衝液または洗浄緩衝液に関する。一部の実施形態では、緩衝液は約40~200mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、緩衝液は、約40~200mM、約50~190mM、約60~180mM、約70~170mM、約80~160mM、約90~150mM、約100~140mM、または約110~130mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、緩衝液は、約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150(または前述の値のうちの任意の2つの間の任意の数字)mMの酢酸を含む。一部の実施形態では、緩衝液は約65mMの酢酸を含む。
【0079】
一部の実施形態では、本技術は、ヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液または洗浄緩衝液に関する。一部の実施形態では、緩衝液は約8~80%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、緩衝液は、約10~70%、約12~60%、約14~50%、約16~40%、約18~30%、または約20~25%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、緩衝液は、約8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%のヘキシレングリコールを含む。一部の実施形態では、緩衝液は約20%のヘキシレングリコールを含む。
【0080】
一部の実施形態では、本技術は、酢酸およびヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液または洗浄緩衝液に関する。一部の実施形態では、本技術は、約40~200mMの酢酸および約8~80%のヘキシレングリコール、約50~190mMの酢酸および約10~70%のヘキシレングリコール、約60~180mMの酢酸および約12~60%のヘキシレングリコール、約70~170mMの酢酸および約14~50%のヘキシレングリコール、約80~160mMの酢酸および約16~40%のヘキシレングリコール、約90~150mMの酢酸および約18~30%のヘキシレングリコール、約100~140mMの酢酸および約20~25%のヘキシレングリコール、または約110~130mMの酢酸および約20~25%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液に関する。
【0081】
一部の実施形態では、本技術は、約40mMの酢酸および約8%のヘキシレングリコール、約50mMの酢酸および約10%のヘキシレングリコール、約60mMの酢酸および約12%のヘキシレングリコール、約70mMの酢酸および約14%のヘキシレングリコール、約80mMの酢酸および約16%のヘキシレングリコール、約90mMの酢酸および約18%のヘキシレングリコール、約100mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコール、約110mMの酢酸および約25%のヘキシレングリコール、約120mMの酢酸および約30%のヘキシレングリコール、約130mMの酢酸および約40%のヘキシレングリコール、約140mMの酢酸および約50%のヘキシレングリコール、約150mMの酢酸および約60%のヘキシレングリコール、約160mMの酢酸および約70%のヘキシレングリコール、約170mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、約180mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、約190mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコール、または約200mMの酢酸および約80%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液または洗浄緩衝液に関する。一部の実施形態では、本技術は、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液に関する。
【0082】
一部の実施形態では、本技術は、約3.5のpHを有する溶出緩衝液または洗浄緩衝液に関する。一部の実施形態では、緩衝液は、約3.4、約3.3、約3.2、または約3.1、約3.0、または約2.9のpHを有する。一部の実施形態では、緩衝液は約3.0のpHを有する。
【0083】
一部の実施形態では、溶出緩衝液または洗浄緩衝液は、約65mMの酢酸および約20%のヘキシレングリコールを含み、約3.0のpHを有する。
【0084】
この技術がよりよく理解されるために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、実例の目的だけであり、いかなる仕方でも技術の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0085】
樹脂の安定性に対する衛生化方法の影響を評価するための研究
この実施例は、クロマトグラフ媒体の機能性および寿命/耐久性に対する様々な衛生化方法の初期および継続的影響を評価するためのバッチ結合研究を記載する。
【0086】
方法
化学物質および試薬
クロマトグラフィー媒体は、エポキシ結合によってアガロースベースマトリックスに化学的に架橋したアフィニティーリガンドを含む。
【0087】
時間経過アッセイ
時間経過は、衛生化緩衝液による処理およびガンマ線放射への曝露を含む所望の衛生化条件下で、クロマトグラフィー樹脂のソースプールを50%スラリーに緩衝液交換するによって確立した。この研究において使用された様々な衛生化緩衝液の組成は、下記の表1に記載される。指定の時間で、樹脂1mLをソースプールから取り出し、平衡緩衝液に緩衝液交換し、次いでアルグルコシダーゼアルファ原薬と混合して、15mg/mL樹脂の標的結合容量で結合を試験した。設定された時点での樹脂の結合容量をT0での結合容量に対して正規化し、時間経過にわたってプロットした(図1)。照射は2、7、または25kGy/時のガンマ線照射の線量への単一曝露であったので、ガンマ線照射された樹脂は、T0でのみ評価し、未処理の樹脂と比較した。
【0088】
【表1】
【0089】
結果
この研究は、ガンマ線照射への曝露が、樹脂の結合容量において初期の20%低下をもたらしたことを明らかにした。さらに、水酸化ナトリウム緩衝液へのアフィニティーリガンドの長期曝露は、曝露の持続時間および水酸化ナトリウムの濃度に依存して、20%以上の結合容量の低下をもたらした。驚くべきことに、アフィニティーリガンドは、酸性緩衝液(pH=1.7)においてはるかに安定であり、対照(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.6)に匹敵する、時間経過全体にわたる結合容量の維持を示した。
【実施例2】
【0090】
樹脂寿命に対する衛生化方法の影響を評価するための研究
この実施例は、クロマトグラフ媒体の寿命性能に対する様々な衛生化方法の影響を評価するためのサイクリング研究を記載する。
【0091】
方法
樹脂の寿命に対する衛生化方法の影響を調査するために、サイクリング研究を行った。連続操作条件下で、T0での25kGyまでのガンマ線照射後、1cmのカラムを25回サイクルさせた。加えて、T0での水酸化ナトリウムおよび/またはtweenを含む衛生化緩衝液での処理後、0.66cmのカラムを100回サイクルさせた。
【0092】
結果
ガンマ線照射されたカラムのサイクリングは、未処理未使用の樹脂と比較した場合、結合容量の50%の減少を示した。樹脂自体への重度の構造的損傷を示唆するカラム性能の急速な衰えゆえに、ガンマ線照射された樹脂のサイクリングは、25サイクルで停止した。
【0093】
tween処理された樹脂のサイクリングは、未処理未使用の樹脂と比較した場合、結合容量の23%の減少を示した。アフィニティーリガンドの予想される寿命を表すために、樹脂を100回サイクルさせた。結合容量の23%の減少は、一部は、長い寿命にわたるカラム性能の損失に起因する可能性が高いが、水酸化物曝露にも起因する。樹脂寿命を延ばすために、この寿命研究において、最低の水酸化物曝露を調査した。水酸化物曝露のいかなる増加も、結合容量をさらに低下させるであろう。サイクリング後のカラムの動的結合容量(DBC)は図2に示される。
【実施例3】
【0094】
樹脂寿命に対するAAH衛生化緩衝液の影響を評価するための研究
この実施例は、クロマトグラフィー媒体の寿命性能に対する、酢酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化緩衝液の影響を評価するためのパイロットスケール研究を記載する。
【0095】
方法
アフィニティークロマトグラフィー樹脂の寿命性能に対する、65mMの酢酸および20%のヘキシレングリコールを含む衛生化緩衝液(AAH衛生化緩衝液)の影響を調査するために、2つのパイロットスケール研究を行った。手短に言うと、10cmカラムの樹脂性能を、各サイクルにおいてカラムが衛生化緩衝液2CVに曝露されるように(約40分/サイクル)カラムを70回サイクルさせた後に評価した。
【0096】
結果
設定点条件で操作した場合、46時間(70サイクルの場合)までのAAH衛生化緩衝液への曝露後の回収に変化はなかった。この研究は、AAH衛生化緩衝液がアフィニティーリガンドの寿命性能に対する有害な影響を有しないことを示した(図3Aおよび3B)。
【0097】
このデータは、酢酸およびヘキシレングリコールを含む本技術の溶液が、アフィニティーリガンドの機能を損なわないことを示す。したがって、本技術の溶液は、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を衛生化、再生、および/または殺菌するための衛生化または殺菌方法において有用である。
【実施例4】
【0098】
AAH衛生化溶液の殺微生物効能を評価するための研究
この実施例は、酢酸およびヘキシレングリコールを含む衛生化溶液の殺微生物効能を評価するための微生物死滅研究を記載する。
【0099】
方法
AAH衛生化溶液および他の潜在的な衛生化溶液を使用して、スクリーニングバッチ死滅研究を行った。手短に言うと、微生物スパイキング溶液(10細胞/mL)を調製した。これらの微生物は、大腸菌(ATCC10536;グラム陰性)、黄色ブドウ球菌(ATCC6538;グラム陽性)、O.アンスロピ(自社分離株;グラム陰性)、B.セレウス(自社分離株;グラム陰性)およびB.チューリンゲンシス(自社分離株;胞子形成)を含んだ。異なる衛生化溶液を含有する異なる管にスパイクし、所定の時点後にサンプリングした(T20、T40、T60、およびT24時間)。次いでサンプルをバイオバーデン濃度について分析し、結果を対数値に変換した。T0 PBS対照に基づいて、Log10減少を計算した。
【0100】
さらに、サンプル溶出液中の内毒素の存在を検出するために、パイロットスケール研究を行った。手短に言うと、10cmカラムを開放系として操作し、73サイクルの経過にわたり、サイクルごとにAAH衛生化溶液2CVで処理した。操作の一部として、4カラムサイクルごとに単一の溶出液にプールした(通常、24時間の経過にわたる)。Charles River Endosafe nexgen-PTS内毒素試験キットを使用して、内毒素を測定した。内毒素について溶出液をサンプリングすることに加えて、寿命サイクルの完了後に寿命終了(EoL)樹脂を平衡緩衝液(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.6)に交換し、室温で1週間保持した。保持の終了時に、流出物を内毒素について試験した。
【0101】
結果
下記の図4は、水酸化ナトリウムおよび他の酸性衛生剤と比較して、いくつかの代表的な細菌、胞子、および/またはカビを死滅させることにおけるAAH衛生化溶液の殺微生物有効性を示す。図4の通り、AAH衛生化溶液は、1時間未満で、試験された全ての種の完全な死滅を達成する唯一の溶液であった。0.5MのNaOHなどの苛性衛生剤は、胞子形成微生物夾雑物に対して有効でなかった。この1時間未満での完全な死滅は、AAH衛生化溶液が、より厳しい条件(pH1.7)で作動し、わずかに低下した温度で、試験された胞子形成種を死滅させるのに最低10時間かかる現在のプロテインA酸性衛生剤(2%PAB;Merck-Millipore)より驚くほど優れていることを証明する。したがって、AAH衛生化溶液は、驚くほど少ない時間で(1時間未満)、はるかに温和な条件下で、全ての試験された微生物種を死滅させた。内毒素は、試験された溶出液サンプルのいずれにおいても検出されなかった(全ての内毒素レベルは検出限界未満と報告された)。これは、本衛生化方法がグラム陰性細菌に対する制御を達成したことを示唆する。このデータは、酢酸およびヘキシレングリコールを含む本技術の溶液が殺微生物特性を有することを示す。したがって、本技術の溶液は、クロマトグラフィー媒体および/または支持機器を衛生化または殺菌する方法において有用である。
【実施例5】
【0102】
AAH溶液の溶出効率を評価するための研究
この実施例は、酢酸およびヘキシレングリコールを含む溶液の溶出効率を評価するための2つの研究を記載する。
【0103】
方法
酢酸およびグリコール(例えばヘキシレングリコール)を含む緩衝液の溶出効率を調査するために、様々な溶出緩衝液配合を試験した。この研究において使用された溶出緩衝液の組成、溶出液タンパク質濃度、および標的分析物の活性回収率は、下記の表2に記載される。この研究において使用された標的分析物はMyozyme(登録商標)であった。加えて、溶出緩衝液の溶出効率に対するエチレングリコールの効果とヘキシレングリコールの効果を比較するために、第2の研究を行った。グリコールを含まない溶出緩衝液をこの研究における対照として使用した。
【0104】
結果
表2に示されるように、第1の研究において試験された全ての緩衝液配合は、カラムからの生成物溶出をもたらした。図5は、20%のヘキシレングリコールを含む溶出緩衝液が、グリコールを含まないまたは20%のエチレングリコールを含む溶出緩衝液よりも良好な生成物収率およびピークの鋭さをもたらしたことを実証する。
【0105】
したがって、酢酸およびヘキシレングリコールを含む溶液は溶出緩衝液としても機能することができる。AAH溶液をプロセス工程として統合できることは、その殺微生物能と相まって、バイオプロセシングに対するその価値をさらに高める。
【0106】
【表2】
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】