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特表2024-518405多相電気機械のコイルを駆動する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】多相電気機械のコイルを駆動する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/16 20060101AFI20240423BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20240423BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240423BHJP
【FI】
H02P25/16
H02P27/08
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568293
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 CA2022050753
(87)【国際公開番号】W WO2022236424
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/188,151
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416254
【氏名又は名称】エクスロ テクノロジーズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】フステット,エリック
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505DD01
5H505DD03
5H505DD05
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA05
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ12
5H505JJ17
5H505KK06
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H770AA05
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA27
5H770JA10X
(57)【要約】
直列モード変調構成及び並列電圧等価変調構成が開示される。直列モード変調構成では、ユニポーラ変調が利用される。ユニポーラ変調は、ゼロベクトルを利用し、2倍の周波数係数で負荷の両端の電圧を生成する。並列電圧等価モード変調構成では、同一の電流で2つのコイルを駆動する2つのHブリッジがある。Hブリッジは、有利なことに、互いに位相をずらして動作させることができる(例えば、互いに位相を180ずらして電流をインターリーブしてリップル電流ストレスを更に低減する)。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相電気機械を駆動するシステムであって、前記多相電気機械は、相毎にそれぞれの複数のコイルを有し、前記システムは、相毎にそれぞれのコイル駆動部を備え、各コイル駆動部は、それぞれ:
前記コイル駆動部のポート間に結合された直流エネルギー蓄積部と;
第1のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第1のノードを有する第1のスイッチ対と;
第2のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第2のノードを有して、第1のコイルに対する第1の交流駆動電流又は第1の交流電圧が前記第1のノードと前記第2のノードとの間に生成される第2のスイッチ対と;
第3のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第3のノードを有する第3のスイッチ対と;
第4のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第4のノードを有して、第2のコイルに対する第2の交流駆動電流又は第2の交流電圧が、前記第3のノードと前記第4のノードとの間に生成される第4のスイッチ対と;
第5のスイッチ対であって、前記第2のノードと前記第3のノードとの間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有する第5のスイッチ対と;
を備え:
第1のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第4のスイッチ対、及び前記第5のスイッチ対がオン状態であり、前記第2のスイッチ対及び前記第3のスイッチ対がオフ状態であり、
第2のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第2のスイッチ対、前記第3のスイッチ対、及び前記第4のスイッチ対がオン状態であり、前記第5のスイッチ対がオフ状態であり、2つのHブリッジを形成し、
前記第1のモードでは、前記第1及び第2の交流電圧は、前記スイッチの駆動変調周波数の2倍の周波数係数を有するシステム。
【請求項2】
前記第1のモードでは、コントローラは、変調器キャリアの角度を変化させてパルス幅変調パターンの各相を駆動する請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項3】
前記第1のモードでは、前記コントローラは、前記変調器キャリアの角度を相毎に±120度及び±60度のうちの一方の分だけ変化させる請求項2に記載のコイル駆動部。
【請求項4】
コントローラは、20kHz及び80kHzの間の高調波数が、20kHz及び80kHzでの高調波数より低い振幅を有するように、前記第1のモードで前記スイッチを駆動する請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項5】
前記第2のモードでは、前記2つのHブリッジが同一の電流を駆動する請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項6】
前記第2のモードでは、2つの前記同一の電流がインターリーブされる請求項5に記載のコイル駆動部。
【請求項7】
前記第2のモードでは、コントローラは、変調器キャリアを変化させて、
60°と120°との間、及び
80°と100°との間
のうちの少なくとも一方のキャリア角度オフセットで各コイルを駆動する請求項5に記載のコイル駆動部。
【請求項8】
前記第2のモードでは、コントローラは、変調器キャリアを変化させて、90°のキャリア角度オフセットで各相を駆動する請求項5に記載のコイル駆動部。
【請求項9】
前記第2のモードでは、制御回路は、20kHzの高調波が除去されるように前記スイッチを駆動する請求項8に記載のコイル駆動部。
【請求項10】
制御回路は、卓越高調波が80kHzであるように前記スイッチを駆動する請求項7に記載のコイル駆動部。
【請求項11】
前記第2のモードでは、制御回路は、2*F_PWM高調波が除去されるように前記スイッチを駆動する請求項8に記載のコイル駆動部。
【請求項12】
制御回路は、卓越高調波が8*F_PWMであるように前記スイッチを駆動する請求項7に記載のコイル駆動部。
【請求項13】
前記多相電気機械は、誘導モータである請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項14】
多相電気機械を駆動する方法であって、前記多相電気機械は、相毎にそれぞれの複数のコイルを有し、システムは、相毎にそれぞれのコイル駆動部を備え、各コイル駆動部は、少なくとも、第1のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第1のノードを有する第1のスイッチ対と;第2のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第2のノードを有して、第1のコイルに対する第1の交流駆動電流又は第1の交流電圧が前記第1のノードと前記第2のノードとの間に生成される第2のスイッチ対と;第3のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第3のノードを有する第3のスイッチ対と;第4のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第4のノードを有して、第2のコイルに対する第2の交流駆動電流又は第2の交流電圧が、前記第3のノードと前記第4のノードとの間に生成される第4のスイッチ対と;第5のスイッチ対であって、前記第2のノードと前記第3のノードとの間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有する第5のスイッチ対と、を備え、該方法は、
第1のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第4のスイッチ対、及び前記第5のスイッチ対をオン状態に切り換え、前記第2のスイッチ対及び前記第3のスイッチ対をオフ状態に切り換えることと、
第2のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第2のスイッチ対、前記第3のスイッチ対、及び前記第4のスイッチ対をオン状態に切り換え、前記第5のスイッチ対をオフ状態に切り換え、2つのHブリッジを形成することと、を含み、
前記第1のモードでは、前記第1及び第2の交流電圧は、前記スイッチの駆動変調の2倍の周波数係数を有する方法。
【請求項15】
多相電気機械を駆動するシステムの動作方法であって、前記多相電気機械は、相毎にそれぞれの複数のコイルを有し、前記システムは、相毎にそれぞれのコイル駆動部を備え、多相電気機械の相毎に、該方法は、
前記多相電気機械の相毎にそれぞれの前記コイル駆動部を切り換えて、直列モード及び並列モードのうちの一方で前記多相電気機械の相毎にそれぞれの前記コイルを駆動することを含み、
前記直列モードは、
相毎にそれぞれの複数のコイルを駆動することを含み、
前記並列は、
それぞれのHブリッジ回路によって同一の電流で相毎に複数のコイルをそれぞれ駆動することを含み、
第1のモードでは、前記第1及び第2の交流電圧は、前記スイッチの駆動変調の2倍の周波数係数を有する方法。
【請求項16】
前記直列モードでは、±120度及び±60度のうちの一方の分だけシフトさせる信号によって各相を駆動することを含む請求項15に記載のコイル駆動部変調方法。
【請求項17】
前記並列モードでは、各相の各Hブリッジ対の変調器の間に、60°及び120°のうちの少なくとも一方と、追加の90°との間の角度オフセットを有するキャリアで各相を駆動することを含む請求項15に記載のコイル駆動部変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との対応関係]
本願は、2021年5月13日に出願された米国仮特許出願第63/188,151号の利益を主張し、その内容は、参照全体によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、一般に、多相電気機械(例えば、電気モータ、誘導モータ、発電機)のコイル又は巻線を駆動する方法及び装置に関し、特に、コイル駆動部変調技術を採用する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[従来技術の説明]
電圧源インバータ(VSI)は、直流リンク上の蓄電素子を利用して、低交流インピーダンスの所定の直流電圧をスイッチング素子に供給する。蓄電素子は、一般にコンデンサであるが、他の種類の蓄電素子、例えば、電圧源、例えば一次又は二次化学電池(例えば、リチウムイオン電池)等であってもよい。ここで、直流電圧は、スイッチを介して負荷に印加され、可変オン時間、固定周波数、即ち、デューティ・サイクル、又はあまり一般的でないが、可変オン時間と可変周波数の組み合わせによって所望の出力電圧を生成する。スイッチは、一般に半導体スイッチ(例えば、Metal Oxide Field Effect Transistors(MOSFETs)、Insulated Gate Bipolar Transistors(IGBTs))である。
【0004】
アナログ制御も可能であるが、ほとんどのインバータは、特別に設計されたタイマ/カウンタ・ブロックを有するマイクロコントローラを使用したパルス幅変調(PWM)パターンを採用する。PWM技術の主な原理は、スイッチ(例えば、半導体スイッチ)のオン/オフ制御を通じて、同じ振幅で異なる幅を有する一連のパルスを出力ポートに生成し、一般的に使用される正弦波やその他の波形に置き換えることである。出力波形のデューティ・サイクルは、一定の規則で変調する必要があり、その結果、インバータの出力電圧と出力周波数との両方を調整することができる。
【0005】
最も一般的なアプローチは、「センター・アラインPWM」と呼ばれ、様々な位相(例えば、3相)の全てのパルスが同じ「タイマー・トップ」を使用する。別のアプローチは、「エッジ・アラインPWM」と呼ばれ、全ての相(例えば3相)が立ち上がりエッジを共有するが、相毎に所望の平均電圧を生成するために異なるタイミングでオフにされる。
【0006】
図3は、センター・アラインされた3相PWMパターンを示している。3相(A相、B相、C相)は全てタイマー・センターを中心に配置される。3相のそれぞれは、オン状態とオフ状態とを共有している。各相のデューティ・サイクルは異なるが、各相は、図に示すようにタイマー・センターを中心に配置される。言い換えれば、パルス中心は、時間窓の中心に固定され、各パルスの両エッジは、変動して、対応するパルスの幅を圧縮又は拡張する。
【0007】
従来の3相インバータでは、生成される3つのライン電圧間の相互作用により、所望の電圧を生成するために出力に適用されるデューティ・サイクルの方法を変える柔軟性があまりない。
【0008】
直流リンク上のエネルギー蓄積素子が電流を供給し、スイッチがPWM周波数で動作して所望の出力電圧/電流を生成する。所望の出力電圧/電流の生成は、蓄電素子に大きなリップル電流ストレスを掛ける。一般的な経験則では、直流リンク蓄電素子のワーストケースの二乗平均平方根(RMS)リップル電流暴露は、RMS相電流の約0.6倍である。例として、1相あたり100A RMSのインバータは、直流リンク蓄電素子に約60A RMSのリップル電流を生成する。
【発明の概要】
【0009】
直流リンク蓄電素子に要求される大きなRMS電流は、コスト及びサイズ/重量の両方を上昇させる。従って、RMS電流を低減することは、モータ駆動のコスト及びサイズ/重量の低減をもたらす。
【0010】
本明細書で説明するPWM駆動方式は、1対のハーフブリッジ(Hブリッジ)及び直列スイッチからなるインバータトポロジーと組み合わせて、直流蓄電素子に掛かるRMSリプル電流ストレスを有利に大幅に低減することができる。説明したモータ駆動トポロジーでは、相間にPWM又は電圧相互作用が本質的にないため、PWMパターンを変更して蓄電素子のリップル電流ストレスを低減することができる。
【0011】
変調器角度が、各HブリッジのPWMを生成する鋸歯状キャリアの角度を示すことに留意すべきである。この鋸歯状キャリアは、コンパレータによるデマンドとの比較に使用されるアナログ電圧、又はカウント・アップ/ダウン・タイマとカウンタとの比較によって生成される波形とすることができる。
【0012】
従来の3相インバータと比較して、開示された変調方法を利用する開示されたコイル駆動部は、リップル電流、ピーク・ツー・ピーク電流が非常に低く、高調波コンテンツの次数を上げる。これにより、コンデンサ及びEMIフィルタの設計が大幅に簡素化され、それらのサイズ/重量が低減される。
【0013】
一態様によれば、装置は、多相電気機械の各相のコイル駆動部として要約され:
コイル駆動部のポート間に結合された直流エネルギー蓄積部と;
第1のスイッチ対であって、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子を有し、少なくとも2つのスイッチ素子間に第1のノードを有する第1のスイッチ対と;
第2のスイッチ対であって、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子を有し、少なくとも2つのスイッチ素子間に第2のノードを有して、第1のコイルに対する第1の交流駆動電流又は交流電圧が第1のノードと第2のノードとの間に生成される第2のスイッチ対と;
第3のスイッチ対であって、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子を有し、少なくとも2つのスイッチ素子間に第3のノードを有する第3のスイッチ対と;
第4のスイッチ対であって、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子を有し、少なくとも2つのスイッチ素子間に第4のノードを有して、第2のコイルに対する第2の交流駆動電流又は交流電圧が、第3のノードと第4のノードとの間に生成される第4のスイッチ対と;
第5のスイッチ対であって、第2のノードと第3のノードとの間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子を有する第5のスイッチ対と;を備え、
ここで:
第1のモードでは、第1のスイッチ対、第4のスイッチ対、及び第5のスイッチ対がオンであり、第2のスイッチ対及び第3のスイッチ対がオフであり、
第2のモードでは、第1のスイッチ対、第2のスイッチ対、第3のスイッチ対、及び第4のスイッチ対がオンであり、第5のスイッチ対がオフであり、
第1のモードでは、第1及び第2の交流電圧は、スイッチの駆動変調周波数の2倍の周波数係数を有する。
【0014】
一態様によれば、第1のモードでは、変調器キャリアの角度が変化してパルス幅変調パターンの各相を駆動する。
【0015】
一態様によれば、第1のモードでは、変調器キャリアの角度が相毎に±120度及び±60度のうちの一方の分だけ変化する。
【0016】
一態様によれば、第2のモードでは、2つのHブリッジが同一の電流を駆動する。
【0017】
一態様によれば、第2のモードでは、2つの同一の電流がインターリーブされる。
【0018】
一態様によれば、第2のモードでは、変調器キャリアが変化して少なくとも60°と120°との間のキャリア角度オフセットで各相を駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面において、同一の参照番号は同様の要素又は作用を識別する。図面中の要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも縮尺通りに図示されていない。例えば、様々な要素及び角度の形状は、必ずしも縮尺通りに図示されず、これらの要素の一部は、図面の読み易さを向上させるために、任意に拡大され、配置される場合がある。更に、図示された要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関する情報を伝えることを意図したものではなく、図面において認識し易くするためにのみ選択されている場合がある。
図1A】電気機械及びコントローラを含むシステムの概略図である。
図1B】少なくとも1つの図示された実施態様による単相コイル駆動部を示す概略図である。
図2】3相システムの各相のそれぞれの電流を示すグラフである。
図3】センター・アラインPWMアプローチを示すグラフである。
図4】センター・アライン3相PWMパターンを示すグラフである。
図5】3相等価負荷のデルタ接続の概略図である。
図6】相電流/コイル電流を示すグラフである。
図7】直流リンク上のリップル電流ストレスを示すグラフである。
図8】直流リンクにおけるリップル電流のスペクトルを示すグラフである。
図9】キャリア及び生成されたPWM信号を示すグラフである。
図10】キャリア角度がリップル電流に与える影響を示すグラフである。
図11】直列動作モードにおける直流リンクリップルを示すグラフである。
図12】直列動作モードにおける直流リンクリップルのリップル電流スペクトルを示すグラフである。
図13】並列電圧等価動作モードにおいて各相のHブリッジ間のキャリア角度を変化させた場合の直流リンクリップルへの影響を示すグラフである。
図14】所定の相に対する120°のオフセットと、Hブリッジ対のインターリーブとの影響を示すグラフである。
図15】コイル電流を示すグラフである。
図16】並列電圧等価動作モードで動作するときの直流リンク電流を示すグラフである。
図17】並列電圧等価動作モード時の直流リップル電流の高調波コンテンツを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、様々な開示された実施形態の十分な理解を提供するために、ある特定の詳細が示される。しかしながら、関連技術分野の当業者であれば、これらの特定の詳細のうち1つ以上を用いずに、又は他の方法、構成要素、材料等を用いて、実施形態が実施され得ることを認識するであろう。
【0021】
文脈上異なる意味を要求しない限り、本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、用語「含む(comprise)」及びその変化形、例えば、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」は、開放的で包括的な意味で、即ち、「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである。
【0022】
本明細書を通して、「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な箇所で「一実施形態(one embodiment)において」又は「実施形態(an embodiment)において」という語句が現れるが、必ずしも全てが同じ実施形態を示すわけではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な手法で組み合わせることができる。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上異なる意味を明らかに要求しない限り、複数の参照語を含む。また、用語「又は(or)」は、文脈上異なる意味を明らかに要求しない限り、「及び/又は」を含む意味で通常使用されることに留意すべきである。
【0024】
本明細書で提供される開示の見出し及び要約は、便宜上のものに過ぎず、実施形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0025】
図1Aは、少なくとも1つの図示された実施態様による、電気機械110(例えば、電気モータ、誘導モータ、発電機)及び制御サブシステム120を含むシステム100を示す。
【0026】
電気機械100は、例えば、3相電気モータ(例えば、3相永久磁石(PM)モータ)、誘導モータ等の多相電気機械の形態をとることができる。電気機械100は、例えば、複数の永久磁石がその周囲に配列されたロータと、複数のコイル又は巻線がその周囲に配列されたステータとを含むことができる。ロータは、例えば、コイル又は巻線における磁界の選択的励磁に応じてステータに対して回転するように取り付けられる。
【0027】
制御システム120は、本明細書で詳細に説明するように、例えば、コイル又は巻線における磁界の選択的励磁を制御するための様々なスイッチの操作を介して、1つ以上の制御線130によって電気機械を制御するように結合されている。制御システム120は、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSPs)、グラフィック処理ユニット(GPUs)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、プログラマブルロジックユニット(PLUs)、モータコントローラ、又は他の制御回路)を含むことができる。制御システムは、1つ以上の非一過性の記憶媒体、例えば、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、FLASHメモリ)又は他の媒体(例えば、磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ)を含むことができ、それはプロセッサ実行可能命令を記憶し、それが1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに、例えば、本明細書に記載されるように、電気機械の動作を制御するための論理を実行させる。制御システムは、1つ以上のセンサ140を含むことができ、又は1つ以上のセンサ140、例えば、1つ以上の電流センサ、電圧センサ、位置若しくは回転エンコーダ、ホール効果センサ、又はリードスイッチから情報を受信することができ、これにより電気機械及び制御回路の動作を監視することができる。
【0028】
図1Bは、少なくとも1つの図示された実施態様による、電気機械(例えば、電気モータ)の単相のための回路200の概略図である。電気機械の各相は、2つ以上のコイル又は電気機械の相のためのコイル又は巻線の別個の部分若しくはセグメントを有し、図1BではL1及びL2と称される。回路200は、図示された回路200がコイル、巻線、又はコイル若しくは巻線の一部若しくはセグメントを含むにも拘らず、本明細書及び特許請求の範囲において、単相コイル駆動部として示され、又は単にコイル駆動部として示されることがある。多相電気機械(例えば、3相永久磁石(PM)モータ)の場合、多相電気機械の相毎にそれぞれの回路200が存在する。
【0029】
図1Bにおいて、L1及びL2は単相のモータコイルを示し、C1は直流リンクエネルギー蓄積素子である。スイッチS1、S2、S3、S4、S6、S7、S8及びS9はインバータのPWMスイッチとして機能し、S5は直列スイッチである。通常、スイッチは、例えば、シリコン又はシリコンカーバイドMOSFET、IGBT等の1つ以上の半導体デバイスで構成される。コントローラ210は、1本以上の制御線CL1~CL4によってスイッチに結合され、スイッチを駆動する。コントローラ210は、マイクロコントローラ等とすることができる。
【0030】
図1Bに示されたコイル駆動部は、直列モードと並列モードとの2つの動作モードを有する。直列モードでは、S5がオンで、S3、S4、S6及びS7が「オフ」であって、S1、S2、S8及びS9が「PWM」モードで、直列接続されたコイルを駆動するアクティブな「Hブリッジ」を形成する。直列モードでは、各相のコイル対が直列に切り換えられ、相毎に1つのHブリッジによって駆動される。並列モードでは、S5は 「オフ」であって、S1~S4及びS6~S9は「PWM」モードであり、L1及びL2を個別のコイルとして駆動する2つのHブリッジが形成される。並列モードでは、コイル対は、それぞれのHブリッジによって個別に駆動され、その結果、相毎に2つのHブリッジが形成される。
【0031】
図1Bに示す多相電気機械の各相のコイル駆動部は、コイル駆動部のポートB+及びB-の間に結合された直流エネルギー蓄積部C1と、4つのスイッチ対と、直列スイッチとを含む。第1のスイッチ対は、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子S1,S2を有し、少なくとも2つのスイッチ素子S1,S2の間に第1のノードを有する。第2のスイッチ対は、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子S3,S4を有し、少なくとも2つのスイッチ素子S3,S4の間に第2のノードを有する。第1のコイルL1のための第1の交流駆動電流又は交流電圧は、第1のノードと第2のノードとの間に生成される。第3のスイッチ対は、コイル駆動部のポート間に直列に接続され、少なくとも2つのスイッチ素子S6,S7の間に第3のノードを有する。第4のスイッチ対は、コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチ素子S8,S9を有し、少なくとも2つのスイッチ素子間に第4のノードを有する。第2のコイルL2のための第2の交流駆動電流又は交流電圧は、第3のノードと第4のノードとの間で生成される。第5のスイッチS5は、第2のノードと第3のノードとの間に直列に接続される。
【0032】
リップル電流低減のために異なる機会を提供する2つの異なる動作モードがある。直列モードでは、各相のコイル対は、直列に切り換えられ、相毎に1つのHブリッジで駆動される。並列モードでは、コイル対は、それぞれ個別のHブリッジで駆動され、その結果、相毎に2つのHブリッジとなる。
【0033】
2つの動作モードはそれぞれ異なり、リップル電流低減のために異なる機会を提供する。
【0034】
提示した変調方式の効果を比較するため、以下のシミュレーションでは、インバータ及びコイル駆動部の動作点を一定に保つように調整した。変調の深さ、電流角度等が直流リンクリップル電流に大きな影響を与えることは当該技術分野でよく知られているため、負荷及び動作電圧は、これらを同じに保つように調整される。これは学術的な理由でなされるに過ぎないことに留意すべきであり、実際には直列モード及び並列モードは、機械をより広い範囲の速度及びトルクに亘って動作させることができ、その結果、動作条件が大きく変化する。特に、直列及び並列での動作点は、定義上、同じになり得ない。
【0035】
図2は、3相システムの各相の電流を示している。図2の電流は平衡している。平衡3相システムの数学的特性は、任意の瞬間の量、例えば、3つの電流の全ての和がゼロになることである。換言すれば、
la+lb+lc=0 (式1)。
【0036】
提案された変調方法の一態様は、3相量の特性を利用して、最大電流相殺が発生するようにPWMを調整する。
【0037】
本発明の一態様は、コンデンササイズを小さくすることである。コンデンサのサイズに影響を与える係数の一つは周波数である。従って、変調方式は、電流高調波を周波数上昇させ、キャパシタンス要件を低減し、EMIフィルタ要件を簡素化する効果がある。
【0038】
図3及び図4は、センター・アラインPWMを示している。センター・アラインPWMは、各相のそれぞれのデューティ・サイクルを変化させながら、すべての「オン」時間をオーバーラップさせる。ベースライン条件は、同じコイルインピーダンスで、同じ変調指数で同じコイル電流を供給する3相インバータである。コイル駆動部は、コイルにフル直流リンクを印加するため、最良な比較は、デルタ接続された負荷を有する3相駆動部である。この手法では、コイル又はデルタのレグ電流は同じで、コイルはそれぞれ同じインダクタンス/抵抗を有する。コイル駆動部は、2つのコイルを直列又は並列で駆動できるため、3相比較のためにデルタで並列接続されたコイルは、直列モードのリップル電流を評価するために用いられる。動作上、直列モードでは2つのコイルを直列にし、その結果、インダクタンス及び抵抗が4倍に増加する。また、直列モードでは、これにより、コイルの両端の交流電圧が、駆動変調周波数の2倍の周波数係数を有する。他の条件はすべて同じ:直流リンク電圧及び寄生成分(ESR/ESL)、機械内の誘起電圧、力率(又は電流角度、即ち、id/iq)である。選択された動作点は、q軸電流(即ち、誘起電圧と同位相)のみを示す。コイルの電流角度は同じであり、デルタ接続の性質上、相電流の電流角度はコイル電流に対して30°の角度を有することに留意すべきである。
【0039】
図5は、3相等価負荷のデルタ接続である。図示のように、コイルV1,2、W1,2、U1,2は、デルタ構成で接続されている。相電流/コイル電流の関係を図6に示し、直流リンク上のリップル電流ストレスを図7に示す。
【0040】
一例では、各コイルのピーク電流は100Aである。言い換えれば、並列な2つのコイルは、デルタのレグ電流がピークで200Aであることを意味する。相電流に対するデルタのレグは、√3の関係を有し、特に、
i*√3=ipeak (式2)。
【0041】
所定の例では、200*√3=346Apkであり、これは244A RMSに相当し、計算結果と一致する。
【0042】
この動作ポイントでは、3相駆動部が、約160ArmsのRMSリップル応力を発生する。この値は、3相インバータの経験則と一致し、それは、
RMSripple=0.6*IphaseRMS (式3)
【0043】
従って、直流リンクRMSリップルは、245*0.6=147Armsと計算される。
【0044】
更に、直流リンクのピーク電流ストレスは、+130A~-270Aであり、又は約400Aのピーク・ツー・ピークである。ピーク・ツー・ピーク量は、より大きなdi/dtを示し、システムのインダクタンスに起因して大きな過電圧を発生させる傾向があるため、重要である。
【0045】
図8は、直流リンクにおけるリップル電流のスペクトルを示す。周波数領域で示されたリップル電流のスペクトルは、200Aに対応する20kHzで、次に75Aに対応する40kHzで、卓越高調波コンテンツを示し、そこから減衰する。
【0046】
ユニポーラ変調(Hブリッジ)又は一般的な3相ブリッジPWM方式における周波数関係は、ハーフブリッジレグのスイッチング周波数を負荷に印加される周波数に対してリンクする次のような関係を有する。
F_load=2*F_PWM (式4)
【0047】
直流リンク蓄電素子は、全てのブリッジレグから合成電流を供給しなければならないため、この蓄電素子は、この同じ周波数2*F_PWMに露出される。
【0048】
[直列モード変調構成]
本発明の一態様は、直列モード変調構成を提供する。Hブリッジでは、駆動変調周波数でスイッチを駆動するユニポーラ変調が利用される。ユニポーラ変調はゼロベクトルを利用し、2倍の周波数係数で負荷の両端の電圧を生成する。言い換えれば、直列モードでは、コイルの両端の交流電圧は、駆動変調周波数の2倍の周波数係数を有する。これは3相ブリッジの変調方法である。動作時、10kHzのハーフブリッジ周波数は、20kHzを負荷に印加する。
【0049】
3相アプリケーションの直列モードでは、コイル駆動部は、3つの独立したHブリッジとして動作する。この構成は、リップルを低減するような手法で各相にPWM信号を配置する。
【0050】
直列モードのコイル駆動部は、直列に接続されたコイルに2倍の電流密度を流し、機械のトルク生成を2倍にする。性能の観点からは、コイル駆動部は、機械の有効巻数が多くなるためにベース速度を低下するが、3相駆動部の2倍のトルクを供給する。更に、直列モードの場合、全体的な負荷特性が変化し、同じコイルを並列接続した場合と比較して、抵抗及びインダクタンスが4倍、誘起電圧が2倍に増加する。
【0051】
3相システムでは、各相が独立しているため、各Hブリッジは独自の変調器を得る。各変調器は、図9に示すように、変調器キャリアの角度がPWM信号を相対的に動かすように調整することができる。直感的には、この例は3相システムであるため、キャリア間の角度は平衡にされ、即ち、±120°であるべきである。n相システムの場合、角度はシステムの特性を示すように調整され、即ち、キャリア角度のシフト=360/(n相)となる。
【0052】
キャリアの角度を0°から180°まで掃引すると、RMSリップル電流への影響が図10に示される。0°又は180°では、システムは通常の3相駆動部のように動作する。±60°のオフセットでも同様の低減を提供することに留意すべきである。RMS電流ストレスの低減に加え、図11はピーク・ツー・ピーク・ストレスも400Aピーク・ツー・ピークから345Aピーク・ツー・ピークまで低減されることを示す。
【0053】
図12に示す直列モード変調のリップル電流スペクトルは、電流の周波数コンテンツへの影響を示す。卓越高調波は、図に示すように20kHzのままであるが、振幅は83A(以前は200A)に過ぎず、40kHz及び60kHzの高調波は抑制され、次に高い高調波は80kHzで約28Aである。
【0054】
[並列モード変調構成]
本発明の一態様は、並列モード変調構成である。並列モードは、直列モード変調の上に構築される。並列モード変調構成では、2つのHブリッジが2つのコイルを同一の電流で駆動する。これらの電流をインターリーブすることで、リップル電流ストレスを更に低減することができる。
【0055】
各Hブリッジはユニポーラ変調を使用する。この変調を生成する一手法では、各ハーフブリッジに同じリファレンスを使用し、180°位相シフトしたキャリアを供給する。つまり、1つのHブリッジに対して、一方のキャリアは0°で、他方のキャリアは180°である。2番目のHブリッジが追加されると、2つのハーフブリッジのキャリアは、最初のHブリッジから-90°及び90°のオフセットがある。その後、各相に対して±120°の回転が、その相の4つの変調器全てに均等に加えられる。
【0056】
図13は、直列変調から+/-120°を除去し、インターリーブ角度を掃引したときのインターリーブのみの影響を調べたときに、並列モードで各相のHブリッジ間のキャリア角度を変化させたときの直流リンクリップルへの影響を示す。直流リンクリップル電流は大幅に減少し、最高の性能が90°のオフセットを中心に得られる。
【0057】
図14は、120°のオフセットとHブリッジ対のインターリーブとの影響を示す。直列モードで使用される120°のオフセットを追加すると、90°で直流リンクリップル電流が僅かに増加する。120°のオフセットとHブリッジ対のインターリーブを追加すると、2つの結果が得られる。第一に、RMSリップル電流は約38A RMSで、160A RMSから減少する。第二に、ピーク・ツー・ピーク電流は約150Aである。直流リンクキャップに印加されるdi/dtを減少させるブリッジで電流相殺が生じ、インダクタンスによる発生電圧が減少することに留意すべきである。図15はコイル電流を示すグラフであり、図16は直流リンク電流を示すグラフである。
【0058】
2つのHブリッジを組み合わせた場合、90°は最適値ではない。図14に示されるように、最小直流リンクリップル電流は80°及び100°で最小になる。この非対称変調角度の副作用として、20kHzの高調波成分が大きく、直流リンクに副高調波があり、この場合のリップル電流のごく僅かな改善は、大きな高調波及び副高調波成分によるマイナスの影響をはるかに上回る。90°の角度の利用では、20kHzの高調波を完全に除去し、全ての直流リンク電流の高調波を周波数において押し上げ、直流リップル電流を約1A RMS増加し、あるいは、より具体的には、3%から増加する。
【0059】
開示された変調方法を組み合わせると、直流リンクリップル電流を、同じ電流を供給する従来のインバータでの160A RMSから、コイル駆動部での40A RMS弱に減少する。また、高調波コンテンツは、周波数において4倍(20kHz~80kHz)である。卓越高調波電流は、従来の変調方式では20kHzであるのに対し、80kHzであり、ブリッジレグのスイッチング周波数を10kHzとする。より一般的には、高調波の含有量は、2*F_PWMから8*F_PWMまで増加する。80kHzでの高調波電流は、リップル電流の劇的な減少と共に、コンデンサ設計を大幅に簡素化する。
【0060】
上記の説明では、様々な開示された実施態様を完全に理解するために、ある特定の詳細を示した。しかしながら、関連技術分野の当業者であれば、これらの特定の詳細のうち1つ以上を用いずに、又は他の方法、構成要素、材料等を用いて、実施態様が実施され得ることを認識するであろう。他の例では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ及び/又は通信ネットワークに関連する周知の構造は、実施態様の説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細に示されたり説明されたりしていない。
【0061】
前述の詳細な説明は、ブロック図、概略図及び実施例の使用を通じて、デバイス及び/又はプロセスの様々な実施形態を示した。このようなブロック図、概略図及び実施例が1つ以上の機能及び/又は動作を含む限り、このようなブロック図、フローチャート又は実施例の範囲内の各機能及び/又は動作は、広範囲のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又は実質的にそれらの任意の組み合わせによって、個々に及び/又は集合的に、実装され得ることが当業者には理解されるであろう。一実施形態では、本主題は、特定用途向け集積回路(ASIC)を介して実装され得る。しかしながら、当業者であれば、本明細書に開示された実施形態は、その全体又は一部が、1つ以上のコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムとして(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で実行される1つ以上のプログラムとして)、1つ以上のコントローラ(例えば、 マイクロコントローラ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、ファームウェアとして、又は実質的にそれらの任意の組み合わせとして、標準的な集積回路において同等に実施することができ、回路を設計すること、及び/又は、ソフトウェア及び/又はファームウェアのコードを書くことは、本開示に照らして、当業者の技術の範囲内であろう。
【0062】
加えて、本明細書で教示する機構は、様々な形態でプログラム製品として配布することが可能であり、例示的な実施形態は、実際に配布を実行するために使用される物理的な信号担持媒体の特定のタイプに関係なく等しく適用されることを、当業者であれば理解するであろう。信号担持媒体の例としては、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、CD ROM、デジタルテープ、コンピュータメモリ等の記録可能なタイプの媒体を含むが、これらに限定されない。
【0063】
上述した様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。必要に応じて、本明細書で確認される様々な特許、出願及び公報のシステム、回路及び概念を採用して、実施形態の態様を変更し、更なる実施形態を提供することができる。
【0064】
文脈上異なる意味を要求しない限り、本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」と同義であり、包括的又は開放的である(即ち、追加的な、再現されない要素又は方法作用を排除しない)。
【0065】
本明細書を通して、「一実施態様(one implementation)」、「一態様(one aspect)」又は「実施態様(an implementation)」への言及は、実施態様に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な箇所で「一実施態様(one implementation)において」、「一態様(one aspect)において」又は「実施態様(an implementation)において」という語句が現れるが、必ずしも全てが同じ実施態様を示すわけではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施態様において任意の適切な手法で組み合わせることができる。
【0066】
本明細書において提供される見出し及び要約は、便宜のものに過ぎず、実施態様の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0067】
このように、その好ましい実施態様に適用される本発明の基本的で新規な特徴を示し、説明し、指摘してきたが、図示された装置の形態及び詳細、並びにそれらの動作における様々な省略及び置換並びに変更が、本発明の趣旨を逸脱することなく当業者によってなされ得ることが理解されるであろう。例えば、同じ結果を達成するために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を実行するそれらの要素及び/又は方法作用の全ての組み合わせが本発明の範囲内であることが明示的に意図されている。更に、本発明の任意の開示された形態又は実施形態に関連して示され及び/又は記載された構造及び/又は要素及び/又は方法作用は、設計選択の一般的な問題として、任意の他の開示され又は記載され又は提案された形態又は実施形態に組み込まれ得ることが認識されるべきである。従って、添付の特許請求の範囲によって示されるようにのみ限定されることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相電気機械を駆動するシステムであって、前記多相電気機械は、相毎にそれぞれの複数のコイルを有し、前記システムは、相毎にそれぞれのコイル駆動部を備え、各コイル駆動部は、それぞれ:
前記コイル駆動部のポート間に結合された直流エネルギー蓄積部と;
第1のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第1のノードを有する第1のスイッチ対と;
第2のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第2のノードを有して、第1のコイルに対する第1の交流駆動電流又は第1の交流電圧が前記第1のノードと前記第2のノードとの間に生成される第2のスイッチ対と;
第3のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第3のノードを有する第3のスイッチ対と;
第4のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第4のノードを有して、第2のコイルに対する第2の交流駆動電流又は第2の交流電圧が、前記第3のノードと前記第4のノードとの間に生成される第4のスイッチ対と;
第5のスイッチ対であって、前記第2のノードと前記第3のノードとの間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有する第5のスイッチ対と;
を備え:
第1のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第4のスイッチ対、及び前記第5のスイッチ対がオン状態であり、前記第2のスイッチ対及び前記第3のスイッチ対がオフ状態であり、
第2のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第2のスイッチ対、前記第3のスイッチ対、及び前記第4のスイッチ対がオン状態であり、前記第5のスイッチ対がオフ状態であり、2つのHブリッジを形成し、
前記第1のモードでは、前記第1及び第2の交流電圧は、前記スイッチの駆動変調周波数の2倍の周波数係数を有するシステム。
【請求項2】
前記第1のモードでは、コントローラは、変調器キャリアの角度を変化させてパルス幅変調パターンの各相を駆動する請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項3】
前記第1のモードでは、前記コントローラは、前記変調器キャリアの角度を相毎に±120度及び±60度のうちの一方の分だけ変化させる請求項2に記載のコイル駆動部。
【請求項4】
コントローラは、20kHz及び80kHzの間の高調波数が、20kHz及び80kHzでの高調波数より低い振幅を有するように、前記第1のモードで前記スイッチを駆動する請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項5】
前記第2のモードでは、前記2つのHブリッジが同一の電流を駆動する請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項6】
前記第2のモードでは、2つの前記同一の電流がインターリーブされる請求項5に記載のコイル駆動部。
【請求項7】
前記第2のモードでは、コントローラは、変調器キャリアを変化させて、
60°と120°との間、及び
80°と100°との間
のうちの少なくとも一方のキャリア角度オフセットで各コイルを駆動する請求項5に記載のコイル駆動部。
【請求項8】
前記第2のモードでは、コントローラは、変調器キャリアを変化させて、90°のキャリア角度オフセットで各相を駆動する請求項5に記載のコイル駆動部。
【請求項9】
前記第2のモードでは、制御回路は、20kHzの高調波が除去されるように前記スイッチを駆動する請求項8に記載のコイル駆動部。
【請求項10】
制御回路は、卓越高調波が80kHzであるように前記スイッチを駆動する請求項7に記載のコイル駆動部。
【請求項11】
前記第2のモードでは、制御回路は、2*F_PWM高調波が除去されるように前記スイッチを駆動する請求項8に記載のコイル駆動部。
【請求項12】
制御回路は、卓越高調波が8*F_PWMであるように前記スイッチを駆動する請求項7に記載のコイル駆動部。
【請求項13】
前記多相電気機械は、誘導モータである請求項1に記載のコイル駆動部。
【請求項14】
多相電気機械を駆動するシステムの動作方法であって、前記多相電気機械は、相毎にそれぞれの複数のコイルを有し、前記システムは、相毎にそれぞれのコイル駆動部を備え、各コイル駆動部は、少なくとも、第1のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第1のノードを有する第1のスイッチ対と;第2のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第2のノードを有して、第1のコイルに対する第1の交流駆動電流又は第1の交流電圧が前記第1のノードと前記第2のノードとの間に生成される第2のスイッチ対と;第3のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第3のノードを有する第3のスイッチ対と;第4のスイッチ対であって、前記コイル駆動部のポート間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有し、該少なくとも2つのスイッチ間に第4のノードを有して、第2のコイルに対する第2の交流駆動電流又は第2の交流電圧が、前記第3のノードと前記第4のノードとの間に生成される第4のスイッチ対と;第5のスイッチ対であって、前記第2のノードと前記第3のノードとの間に直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有する第5のスイッチ対と、を備え、該方法は、
第1のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第4のスイッチ対、及び前記第5のスイッチ対をオン状態に切り換え、前記第2のスイッチ対及び前記第3のスイッチ対をオフ状態に切り換えることと、
第2のモードでは、前記第1のスイッチ対、前記第2のスイッチ対、前記第3のスイッチ対、及び前記第4のスイッチ対をオン状態に切り換え、前記第5のスイッチ対をオフ状態に切り換え、2つのHブリッジを形成することと、を含み、
前記第1のモードでは、前記第1及び第2の交流電圧は、前記スイッチの駆動変調の2倍の周波数係数を有する方法。
【請求項15】
多相電気機械を駆動するシステムの動作方法であって、前記多相電気機械は、相毎にそれぞれの複数のコイルを有し、前記システムは、相毎にそれぞれのコイル駆動部を備え、多相電気機械の相毎に、該方法は、
前記多相電気機械の相毎にそれぞれの前記コイル駆動部を切り換えて、直列モード及び並列モードのうちの一方で前記多相電気機械の相毎にそれぞれの前記コイルを駆動することを含み、
前記直列モードは、
相毎にそれぞれの複数のコイルを駆動することを含み、
前記並列は、
それぞれのHブリッジ回路によって同一の電流で相毎に複数のコイルをそれぞれ駆動することを含み、
第1のモードでは、前記第1の交流電圧及び前記第2の交流電圧はそれぞれ、前記スイッチの駆動変調の2倍の周波数係数を有する方法。
【請求項16】
前記直列モードでは、±120度及び±60度のうちの一方の分だけシフトさせる信号によって各相を駆動することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記並列モードでは、各相の各Hブリッジ対の変調器の間に、60°及び120°のうちの少なくとも一方と、追加の90°との間の角度オフセットを有するキャリアで各相を駆動することを含む請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】