(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】パルスLIDARシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20240423BHJP
G01S 17/95 20060101ALI20240423BHJP
G01P 5/26 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/95
G01P5/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568309
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2022050782
(87)【国際公開番号】W WO2022234212
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロンバール,ロラン
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AB08
5J084BA36
5J084BB31
5J084BB40
5J084CA05
5J084DA01
5J084DA08
5J084DA09
5J084EA01
(57)【要約】
パルスLIDARシステム(100)は、連続的に放出される2つのパルス(I)がスペクトル的に分離され、異なるそれぞれの中心波長値に関連付けられるように構成された伝送経路(10)を有する。このようにして、ヘテロダイン検出信号の信号対雑音比が改善される。この種のLIDARシステムは光ファイバを使用して実施することができ、大気速度測定に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスLIDARシステム(100)であり、前記システムによって標的(T)に向かって連続的に放出される一連の放射線パルス(I)によって受けるドップラー効果周波数シフト(ν
Doppler)の値を、前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルスの一部(RI)と、前記システムによって放出される前記パルスとの間で決定し、前記周波数シフトについて決定された前記値に基づいて、前記システムの光放出方向に平行な前記標的の速度成分(VT)の推定値を提供するように適合されたシステムであって、
前記システム(100)は、
前記一連のパルス(I)を生成するように構成された伝送経路(10)と、
前記標的(T)上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルス部分(RI)を検出し、前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出信号を生成するように構成された検出経路(20)と、
前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出寄与から前記周波数シフト(ν
Doppler)の値が生じるように、前記ヘテロダイン検出信号のスペクトル分析を実行するように適合されたスペクトル分析モジュール(30)と、を備え、
前記伝送経路(10)は、標的(T)に向かって連続的に放出される2つのパルス(I)が、スペクトル的に分離され、異なるそれぞれの中心波長値に関連付けられるようにさらに構成され、
前記スペクトル解析モジュール(30)によって決定される前記周波数偏移(ν
Doppler)の前記値が、前記スペクトル的に分離されたパルスにそれぞれ対応し、かつ前記中心波長値が異なっているいくつかのヘテロダイン検波寄与の組合せから生じるように、前記システム(100)が適合される、ことを特徴とするシステム(100)。
【請求項2】
前記システムは、前記標的(T)を形成する懸濁粒子を含む雰囲気の部分に向かって前記放射線パルス(I)を放出するように向けられたときに、空気流速成分の推定値を提供するように適合され、前記粒子は、前記放射線を後方散乱させるものである、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項3】
前記伝送経路(10)は、連続的に放出される任意の二つの放射線パルス(I)が、少なくとも10MHz、好ましくは少なくとも20MHz、最大で2000MHzだけスペクトル的に分離されるようにさらに構成される、請求項1または2に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項4】
前記伝送経路(10)は、前記一連のパルス(I)が、前記パルスの中心波長値の一定の配列を繰り返すようにさらに構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項5】
前記伝送経路(10)は、前記繰り返し配列内の連続的に放出されるパルス(I)のペアに関連する前記中心波長値間の差が一定であるようにさらに構成される、請求項4に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項6】
前記伝送経路(10)は、前記一連のパルス(I)についての複数の異なる中心波長値が2と16との間であるようにさらに構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項7】
前記伝送経路(10)は、連続して放出されるパルス(I)間の持続時間が前記一連のパルスの過程にわたって変化するようにさらに構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項8】
前記伝送経路(10)が、
初期レーザ放射線(R
0)を生成するように適合されたレーザ放射源(11)と、
少なくとも1つの制御入力に印加される変調信号に従って、前記初期レーザ放射線(R
0)を修正するように構成される、少なくとも1つの変調器と、
前記少なくとも1つの制御入力に前記変調信号を印加するように接続された制御器(18)と、を含み、
前記変調信号は、前記初期レーザ放射線(R
0)が前記変調器(17)によって前記一連のパルス(I)に変換され、2つの連続するパルスがスペクトル的に分離され、中心波長値が異なっており、
ヘテロダイン検出に使用される前記検出経路(20)の基準入力は、前記レーザ放射源(11)と前記変調器(17)との間に位置する前記伝送経路(10)の二次出力(16)に接続される、請求項1~7のいずれか一項に記載のLIDARシステム(100)。
【請求項9】
前記変調器(17)が位相変調器であり、
前記変調信号は、線形位相シフトランプの時間的に離散した配列(S)から構成される位相変調信号であり、
前記線形位相シフトランプは、各配列内で同一で連続し、異なる配列間で異なる勾配を有するものであり、
前記線形位相シフトランプの配列は、前記LIDARシステム(100)によって放出される前記パルス(I)に1対1で対応する、請求項8に記載のLIDARシステム(100)。
【請求項10】
前記変調器(17)が、
再結合マッハツェンダ干渉計(170)と、前記再結合マッハツェンダ干渉計の2つの別々の光伝播経路上にそれぞれ1つずつ配置され、以下の位相シフトを適用するための手段を備える2つの2次マッハツェンダ干渉計(171、172)とを含み、
前記2つの2次マッハツェンダ干渉計(171、172)のうちの第1のものの2つの別々の光伝搬経路の間に適用され、時間の関数として正弦波的に変化するπと第1の位相シフト成分との和に等しい、第1の位相シフトと、
前記2つの2次マッハツェンダ干渉計(171、172)のうちの第2のものの2つの別個の光伝搬経路の間に適用され、時間の関数として正弦波的に変化するπと第2の位相シフト構成要素との和に等しく、共通周波数を有する時間の関数として正弦波的に変化し、互いに直角位相である、第2の位相シフトと、
前記再結合マッハツェンダ干渉計(170)の前記2つの光伝搬経路の間に適用され、πの±半減に等しい、第3の位相シフトと、を含み、
前記第1及び第2の位相シフト構成要素の共通周波数が、前記放射線パルス(I)の前記中心波長値と、前記レーザ放射源(11)によって生成される初期レーザ放射線(R
0)の波長値との間の差分を決定する時間の関数として正弦波的に変化する、請求項8に記載のLIDARシステム(100)。
【請求項11】
前記伝送経路(10)および/または前記検出経路(20)が、前記伝送経路および/または前記検出経路の構成要素を相互接続するために、光ファイバ技術によって実装される、請求項1~10のいずれか一項に記載のLIDARシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルスLIDARシステムに関し、特に、大気速度測定を実行するように適合されたLIDARシステムに関する。LIDARはLight Detection And Rangingの頭字語であるが、LIDARシステムは離れて速度測定を実行するのに非常に適している。
【背景技術】
【0002】
離れて風速を決定することは、多くの分野、特に航空機の安全性において有用であり、例えば、空港滑走路付近の乱気流の存在を検出するために、または航空機の構造上の突風によって引き起こされる早すぎる摩耗の影響を補償するために、飛行中の航空機に乗っているときに風の突風を検出するために有用である。そのような知識が有用である他の分野は、ウィンドファームサイトの調査及び管理、又は天気予報のための宇宙からの大気流の測定である。
【0003】
公知の方法では、パルスLIDARシステムが、LIDARシステムの放射方向に平行な標的の速度成分、ならびにLIDARシステムから標的を分離する距離を測定することを可能にする。特に、大気速度測定のために構成されたパルスLIDARシステムは、LIDARシステムの放出方向に平行な風速成分の推定値を、この放出方向に沿って測定された分離距離の関数として得ることを可能にする。しかし、このような大気速度測定では、LIDARシステムによって検出され、風速の測定結果が得られる信号は、空気中に浮遊する粒子によって引き起こされる放出パルスの後方散乱によって生成される。これらの検出信号は非常に低い強度を有するので、それらに関連する信号対雑音比を改善することが重要である。
【0004】
また、既知の方法で、パルスLIDARシステムがヘテロダイン検出を使用するとき、すなわち、システムが放射と検出との間でコヒーレントであるとき、その信号対雑音比はE・PRF1/2に比例し、ここで、Eは後方散乱され、次いで検出されるそれぞれのパルスのエネルギーであり、PRFはパルス繰り返し周波数(pulse repetition frequency)である。したがって、エネルギーEおよび周波数PRFの値を増加させるための努力がなされる。
【0005】
エネルギーEの増加は、LIDARシステムによって放出される各パルスのエネルギーを増加させることによって達成することができる。実際、放射線は最初はレーザ放射源によって生成され、レーザ放射源自体は外部に向かって放出される放射線のパワーに制限を課さない。しかしながら、光ファイバ接続技術を使用することによるLIDARシステムの実装は、かなりの利点、特に、システムのロバスト性の増大、およびシステムの光学部品を互いに対して位置合わせするための機構の排除を提供する。しかし、光ファイバ内で発生する誘導ブリルアン散乱(SBS)という既知の現象は、各放出パルスが有することができるピークパワー値を制限する。
【0006】
さらに、周波数PRFは、LIDARシステムの範囲によって制限される。実際、標的に向かって放出される放射線のパルスは、検出された各放射線部分をパルス放出の正しいモーメントと相関させて、これから標的から離れている距離の値を推定するために、次のパルスが放出される前に戻って検出されることが必要である。言い換えれば、周波数PRFは、式:PRF<C/(2・L)(式中、Cは光速である)に従ってLIDARシステムに対して規定される範囲Lによって制限される。
【0007】
したがって、ヘテロダイン検出信号の信号対雑音比の結果として生じる結果のために、放出されたパルスのエネルギーおよびパルスの繰り返し周波数に対するこれらの制限は、測定結果、特に大気速度測定結果の精度を向上させることを妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この状況に基づいて、本発明の1つの目的は、検出信号の信号対雑音比が改善される新しいパルスLIDARシステムを提案することである。
【0009】
本発明の補足的な目的は、そのようなLIDARシステムがLIDARシステム内の光学部品を相互接続するための光ファイバの使用と互換性があることである。
【0010】
本発明の別の補足的な目的は、このようなLIDARシステムを大気速度測定に適合させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらまたは他の目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明の一態様が提供するパルスLIDARシステムは、前記システムによって標的に向かって連続的に放出される一連の放射線パルスによって受けるドップラー効果周波数シフトの値を、前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られるパルスの部分と、前記システムによって放出される同じパルスとの間で決定するように適合される。次に前記システムは、前記周波数シフトについて決定された値に基づいて、前記システムの光放出方向に平行な前記標的の速度成分の推定値を提供する。この目的のために、前記システムは、
-前記一連のパルスを生成するように構成された伝送経路と、
-前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルス部分を検出し、前記一連のパルスに対応するヘテロダイン検出信号を生成するように構成された検出経路と、
-前記一連のパルスに対応するヘテロダイン検出寄与から前記周波数シフト(νDoppler)の値が生じるように、前記ヘテロダイン検出信号のスペクトル分析を実行するように適合されたスペクトル分析モジュールと、を備える。
前記スペクトル分析を実行するための複数のパルスの使用は、信号対雑音比の初期改善を提供し、前記LIDARシステムによって提供される測定結果の精度は、それに応じて改善される。
【0012】
本発明によれば、前記LIDARシステムは、以下の追加の特徴を有する。
【0013】
-前記伝送経路は、同時に放出され、スペクトル的に離散し、異なる中心波長値に1対1で関連する複数のパルススペクトル成分の重ね合わせとしてパルスの各々を形成するようにさらに構成され、
-前記システムは、前記スペクトル分析モジュールによって決定される前記周波数シフトの値が、中心波長値が異なるスペクトルな分離パルスにそれぞれ対応する複数のヘテロダイン検出寄与の貢献から生じるように適合される。
【0014】
本発明の文脈において、スペクトル的に互いに分離されたパルスはそれぞれのスペクトルが重複しないパルスを意味するものと理解され、これはいくつかのパルスのそれぞれのスペクトル強度がパルスのそれぞれの最大スペクトル強度値の1%よりも大きい波長間隔がないことを意味する。
【0015】
したがって、本発明のLIDARシステムによって連続的に放出される2つのパルスは、異なるそれぞれのスペクトル間隔によって区別される。その場合、同じ区別が標的上での再帰反射または後方散乱の後に受信されるパルス部分の間に存在し、その結果、システムは別のパルスがその間に放出されたという事実とは無関係に、再帰反射または後方散乱の後に受信される各パルス部分を、それに対応する放出パルスに割り当てることができる。このように、連続するパルス間に導入されるスペクトル差分の手段によって、パルス繰り返し周波数PRFは、LIDARシステムの温度範囲Lを減少させることなく増加させることができる。
【0016】
さらに、各パルスは、誘導ブリルアン散乱に適した閾値をちょうど下回るピークパワー値を依然として有することができる。そして、周波数シフト値の決定に関して、スペクトル的に互いに分離されたパルスにそれぞれ対応し、中心波長値が異なるヘテロダイン検出寄与を組み合わせることは、繰り返し周波数PRFを増加させることと等価である。本発明のLIDARシステムの動作によって提供される繰り返し周波数PRFの増加の平方根に比例する、ヘテロダイン検出信号に対する信号対雑音比のさらなる改善結果が得られる。それに応じて、ドップラー効果周波数シフトについて得られる値の精度が高められる。別の観点によれば、温度範囲Lの一定の値について、測定結果において同一の精度を維持しながら、本発明のLIDARシステムは、ヘテロダイン検出信号のための蓄積時間を、パルスのための異なる中心波長値の数に等しい係数だけ低減することを可能にすることができる。
【0017】
各パルスのピーク電力値が誘導ブリルアン散乱しきい値を下回ったままであるという事実は、その伝送経路を実現するために光ファイバ技術を使用することを可能にする。
【0018】
さらに、スペクトル的に独立したパルスにそれぞれ対応し、中心波長値が異なるすべてのヘテロダイン検出寄与は、標的の動きによって生成されるドップラー効果に起因する周波数シフトの値を得ることに寄与することができる。したがって、本発明のシステムは、LIDARシステムの温度範囲Lに対して変化しない値を維持しながら、事実上反復周波数PRFにパルスの異なる中心波長値の数を乗算する動作を有することができる。
【0019】
したがって、本発明は、ヘテロダイン検出信号に存在する複数のスペクトル寄与に基づいてドップラー効果周波数シフトの値を決定するLIDARシステムを提供する。ヘテロダイン検出信号内のスペクトル的に別個の構成要素とちょうど同じ数の成分を構成するこれらのスペクトル寄与は、2つの連続するパルス間で異なる、標的に向かって放出されるパルスの中心波長値に1対1で対応する。例えば、他のヘテロダイン検出スペクトル寄与とは無関係に、各ヘテロダイン検出スペクトル寄与に基づいてドップラー効果周波数シフトについて基本値を決定することができ、次いで、基本値を平均することによってドップラー効果周波数シフトについての最終値を計算することができる。
【0020】
一般に、本発明について、本発明のLIDARシステムの伝送経路は、
-初期レーザ放射線を生成するように適合されたレーザ放射源であって、この初期レーザ放射線は好ましくは単色または準単色であるレーザ放射源と、
-この変調器の少なくとも1つの制御入力に印加される変調信号に従って初期レーザ放射線を修正するように構成された少なくとも1つの変調器と、
-変調器の少なくとも1つの制御入力に変調信号を印加するように接続された制御器と、を含む。
【0021】
次いで、変調信号は、初期レーザ放射線が変調器によって、2つの連続するパルスがスペクトル的に互いに分離され、異なる中心波長値を有する一連のパルスに変換されるようになっている。さらに、ヘテロダイン検出に使用される検出経路の基準入力は、レーザ放射源と変調器との間に位置する伝送経路の二次出力に接続することができる。ヘテロダイン検出のために使用される光基準信号は、次いで、単色であり得る。検出経路によって生成されるヘテロダイン検出信号では、スペクトル的に互いに分離されたパルスから生じ、中心波長値が異なるヘテロダイン検出寄与が次いで、互いに対してスペクトル的にシフトされる。言い換えれば、これらのヘテロダイン検出寄与は、やはり異なるそれぞれの中心周波数値を有する。次いで、スペクトル分析モジュールは、ヘテロダイン検出寄与のためのこれらの異なる中心周波数値すべてからドップラー効果周波数シフトの値を推定する。
【0022】
代替的に、しかしあまり好ましくないやり方で、ヘテロダイン検出を得るために検出経路の基準入力が接続される伝送経路の二次出力は、伝送経路における放射の伝播方向に対して変調器の下流に位置することができる。
【0023】
本発明の第1の実施形態では、伝送経路がスペクトル的に互いに分離され、中心波長値が異なる連続パルスを、セロダイン変調によって生成するように構成されてもよい。これを達成するために、変調器は位相変調器であってもよく、変調信号は、線形位相シフトランプの時間的に互いに独立した配列から構成される位相変調信号であってもよく、線形位相シフトランプは各配列内で同一で連続し、異なる配列間で異なる勾配を有する。次いで、線形位相シフトランプの配列は、LIDARシステムによって放出されるパルスに1対1で対応する。セロダイン変調を伴うそのような第1の実施形態の場合、使用される位相変調器は、電気光学タイプの変調器であり得る。
【0024】
本発明の第2の実施形態では、透過経路がスペクトル的に互いに分離され、中心波長値が異なるI/Q変調によって、連続するパルスを生成するように構成することができる。これを達成するために、変調器は、再結合マッハツェンダ干渉計と、再結合マッハツェンダ干渉計の2つの別個の光伝搬経路上にそれぞれ1つずつ配置された2つの二次マッハツェンダ干渉計とを備えることができる。次に、以下の位相シフトを適用するための手段をさらに備える。
【0025】
-2つの二次マッハツェンダ干渉計のうちの第1のものの2つの別個の光伝搬経路の間に適用され、時間の関数として正弦波的に変化するπと第1の位相シフト構成要素との和に等しい、第1の位相シフトと、
-2つの二次マッハツェンダ干渉計のうちの第2のものの2つの別個の光伝搬経路の間に適用され、時間の関数として正弦波的に変化するπと第2の位相シフト構成要素との和に等しく、共通周波数を有する時間の関数として正弦波的に変化し、互いに対して直角位相である第1および第2の位相シフト構成要素と、
-再結合マッハツェンダ干渉計の2つの光伝搬経路の間に適用され、πの±半減に等しい第3の位相シフトと、を備える。
【0026】
次いで、時間の関数として正弦波状に変化する第1および第2の位相シフト構成要素の共通周波数は、放出パルスの中心波長値と、レーザ放射源によって生成される初期レーザ放射線の波長値との間の差を決定する。I/Q変調を有するそのような実施形態では、再結合マッハツェンダ干渉計および2つの二次マッハツェンダ干渉計が集積光回路から構成され得る。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つを、単独で、または組み合わせて、任意に再現することができる。
【0028】
-LIDARシステムはシステムが標的を形成する懸濁粒子を含む雰囲気の一部分に向けて放射パルスを放出するように向けられたときに、空気流速成分の推定値を提供するように適合されてもよく、粒子は放射のための後方散乱器である。
【0029】
-各パルスは、単色または準単色であってもよい。
【0030】
-任意の2つの連続して放出されるパルスが少なくとも10MHz、好ましくは少なくとも20MHz、最大でも2000MHzだけスペクトル的に互いに分離するように、伝送経路をさらに構成することができる。
【0031】
-送信経路は、一連のパルスがパルスの中心波長値の一定の配列を繰り返すようにさらに構成されてもよい。さらに、繰り返し配列内で、連続して放出されるパルスのペアに関係する中心波長値間の差は一定であることができる。
【0032】
-前記伝送経路はさらに、前記直列のパルスに対する多数の異なる中心波長値が2以上16以下の間であるように構成されてもよい。
【0033】
-連続して放出されるパルス間の持続時間が一連のパルスの過程にわたって変化するように、伝送経路をさらに構成することができる。このようにして、伝送経路の光学部品上での放射パルスの反射によって妨害される測定領域をなくすことができる。
【0034】
-伝送経路および/または検出経路はこの伝送経路および/または検出経路の構成要素を相互接続するために、光ファイバ技術によって実装され得る。
【0035】
本発明の特徴および利点は、いくつかの非限定的な例示的実施形態の以下の詳細な説明において、添付の図面を参照して、より明確に明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1a】従来技術から知られているようなヘテロダイン検出を有するパルスLIDAR装置のブロック図である。
【
図1b】
図1aのLIDARシステムの動作に関連する2つのスペクトル図をグループ分けする。
【
図2】本発明によるLIDARシステムの動作のための可能なスペクトル分布を示すタイミング図である。
【
図3a】本発明によるLIDARシステムの可能な実施形態についての
図1aに対応する。
【
図4】本発明の第1の実施形態で使用される変調信号の可能な時間的変化を示す2つの図と、対応するスペクトル図との二つの図のグループである。
【
図5】本発明の第2の実施形態で使用可能なI/Q変調器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
これらの図において、全ての構成要素は記号的に表され、異なる図において示される同一の参照符号は、同一であるか又は同一の機能を有する要素を示す。明瞭にするために、LIDARシステムにおけるその使用が当業者に知られており、本発明に直接関係しない構成要素は、以下では説明しない。そのような場合、本発明に対するそれらの可能な適応は、当業者の範囲内である。[
図1a]および[
図3a]において、使用される以下の参照は、ここに示される意味を有する。
100 ヘテロダイン検出を用いたパルスLIDARの一般名称
10 伝送経路
11 LASERと表示されるレーザ放射源
12 MAOと表示される周波数シフトおよびパルス分離変調器
13 AMPLと表示される光増幅器
14 光サーキュレータ
15 OPTと表示される発光光学系
16 伝送経路の二次出力
20 検出経路
21 DETECTと表示されるヘテロダイン検出器
30 スペクトル分析モジュール(ANALYS)
図1aは、本発明の前に知られていたシステム100を示す。
【0038】
伝送経路10は、レーザ放射源11と、変調器12と、光増幅器13と、光サーキュレータ14と、放出光学系15とを備える。レーザ放射源11は例えば、約1550nm(ナノメートル)の放出波長および600μJ(マイクロジュール)のパワーでの、連続放出源であってもよい。したがって、それは、単色または準単色である初期レーザ放射線R0を生成する。初期レーザ放射線R0は変調器12に伝送される。変調器12は、音響光学タイプの変調器であってもよい。それは、受け取った放射線から、例えば10kHz(キロヘルツ)であり得るパルス繰り返し周波数PRFを用いて、個々の持続時間が200ns(ナノ秒)~800nsであり得る同一のパルスIを形成するように制御される。同時に、変調器12は、例えば100MHz(メガヘルツ)に等しくすることができる周波数シフトΔν0を適用することによって、放射線の光周波数をシフトするように制御することができる。変調器12によって生成されたパルスIは、増幅器13によって増幅され、そして、光サーキュレータ14を介して放出光学系15に伝送される。放出光学系15は、例えば望遠鏡構造を有することができる。増幅されたパルスIはしたがって、LIDARシステム100の外部にあり、システム100の放出方向に沿って測定される、それから距離Dに位置する標的Tに向かって伝送される。原則として、分離距離Dはシステム100の範囲L未満であり、その範囲は、一例として、おそらく約15km(キロメートル)に等しい。
【0039】
このように[
図1a]のシステム100によって放出される全てのパルスIは同一であり、単色または準単色である。
【0040】
二次出力16は、レーザ放射源11とパルスIのシフト及び分離専用の変調器12との間の伝送経路10に配置される。
【0041】
検出経路20は、伝送経路10と放出光学系15および光サーキュレータ14を共有し、さらにヘテロダイン検出器21を備える。検出経路20内で、光学系15の1つの機能は標的Tによって再帰反射または後方散乱されたパルスIの部分RIを収集することである。ヘテロダイン検出器21は、光学系15によって収集された再帰反射または後方散乱されたパルスの部分RIを光サーキュレータ14を介して受け取り、この伝送経路の二次出力16を介して伝送経路10から収集された光基準信号RRを同時に受け取るように光学的に結合される。言い換えれば、二次出力16は、検出経路20専用の光サーキュレータ14の出力に加えて、ヘテロダイン検出器21に光学的に結合される。ヘテロダイン検出器21はフォトダイオード、特に超高速フォトダイオードであってもよく、その上に、二次出力16から来る光基準信号RRと、標的Tから来るパルス部分RIとが集束される。
【0042】
スペクトル分析モジュール30は、システム100の動作中に検出器21によって生成されたヘテロダイン検出信号をスペクトル分析するように構成される。これは、このスペクトル分析から、光基準信号RRとパルス部分RIとの間に存在する周波数シフトの値を推定するように構成される。このようにして得られた周波数シフトの値を、システム100の放出方向に平行な、標的Tについての速度成分値VTに変換するようにさらに構成される。公知の方法では、VT=-λ0・(νm-Δν0)/2であり、ここで、
λ0はレーザ放射源11の波長を示し、上述の例示では約1550nmに等しく、
Δν0はさらに、変調器12によって適用される周波数シフトを示し、上述の例示では100MHzに等しく、
νmは、ヘテロダイン検出信号のスペクトル分解における最大強度位置または中心ピーク位置に関連する、無線周波数領域またはRF領域内の周波数である。
【0043】
システム100は、好ましくは光ファイバ技術を使用して実装される。そのような場合、光増幅器13は、「エルビウムドープファイバ増幅器」のためにEDFAによって指定されるタイプのものとすることができる。初期レーザ放射線R0は、第1の光ファイバセグメントS1によってレーザ放射源11から変調器12に伝送され、そして、第2の光ファイバセグメントS2を介して増幅器13に伝送される。さらに、光学系15によって収集された再帰反射または後方散乱されたパルス部分RIは、それらをヘテロダイン検出器21に伝達するために、光サーキュレータ14の出力で第3の光ファイバセグメントS3に注入される。並行して、伝送経路10の二次出力16は、光ファイバカプラによって実装され、第4の光ファイバセグメントS4によってヘテロダイン検出器21に接続される。
【0044】
再帰反射点標的を有する直前に説明したシステム100の動作のために、ヘテロダイン検出信号は、周波数ν
mで正弦波変動を有する。[
図1b]の上側の図は、ヘテロダイン検出器21によって受け取られた放射線のスペクトル組成を示す。[
図1b]のこの上側の図の横軸は、λで表され、ナノメートル(nm)で表される、光領域における波長値を識別する。縦軸は、任意の単位で、スペクトル強度値を識別する。ヘテロダイン検出器21によって受け取られる放射線は二次出力16から伝達される光基準信号RRから構成される第1の寄与と、標的Tによって再帰反射されたパルス部分RIに対応する第2の寄与とを備える。[
図1a]のシステム100について、光基準信号RRは初期レーザ放射線R
0の一部であり、その結果、[
図1b]の上側の図における対応する寄与はRRと示される非常に狭いピークである。標的Tがシステム100の放出方向に沿った単一の位置に位置するとき、第2の寄与も、RIと示される狭いピークの形状を有する。[
図1b]の下側の図は、上側の図に示されるように検出器21によって受け取った放射線のスペクトル組成に対応するヘテロダイン検出信号のスペクトル組成を示す。ヘテロダイン検出信号は単一のピークからなり、その周波数はν
m=Δν
0+ν
Dopplerであり、ν
Doppler≒-2・V
T/λ
1、λ
1は、LIDARシステム100によって放出される放射線の波長である。[
図1b]の下側の図の横軸は、fで示され、メガヘルツ(MHz)で表される、RF領域における周波数値を識別する。縦軸はまた、ヘテロダイン検出信号のスペクトル強度値を識別するための任意の単位である。
【0045】
大気速度測定専用のシステム100の動作について、パルスIは、放出光学系15から出発して、システム100の外部のパルスビームの経路に沿って分布する多数の標的によって後方散乱される。空気中に浮遊する粒子またはエアロゾルから構成されるこれらの標的は、ビームの経路内の各位置に存在する空気移動の局所速度の関数として沿って引っ張られる。当業者は一般に、標的のそのような分布を、「拡張標的」、「分布標的」、または「体積標的」と呼ぶ。したがって、光学系15によって収集され、そして検出器21に伝送されるパルス部分RIは、パルスIの部分的な後方散乱が生じる、システム100の放出方向に沿った異なる分離距離に対応して、経時的に広がる。さらに、それらは、部分的な後方散乱がそれぞれ生じる場所での放出方向に平行な局所的な風速に応じて変化するように周波数シフトされる。そしてヘテロダイン検出信号は、より複雑な時間的変動を有する。モジュール30によって実行されるスペクトル分析は既知であると想定され、その結果として、分離距離Dの異なる値に1対1で割り当てられる一連の速度値V
Tを提供する。既知の方法では分離距離Dにおける分解能が、放出されたパルスIの個々の持続時間によって決定され、この個々の持続時間をLIDARシステム100の外部のパルス伝播速度の2倍で除算したものに等しい。[
図1b]の図と比較して、検出器21によって受け取られた放射線のスペクトル組成におけるパルス部分RIに対応するピークが拡大される。RF領域におけるヘテロダイン検出信号のスペクトル組成のピークは、相関的に広げられる。
【0046】
[
図2]の図の横軸はtで示される時間を特定し、その縦軸は、本考案によるLIDARシステム100の瞬間発光波長λ
1を特定する。波長λ
1は、ナノメートル(nm)で表される。この図によれば、LIDARシステム100によって放出される一連のパルスIはいくつかのパルスIの配列Sの反復、例えば100反復から構成され得る。例えば、配列Sは100μS(マイクロ秒)の持続時間を有することができ、それぞれ0.5μSであり得る個々の持続時間を有する10個のパルスIから構成され得る。配列S内では、パルスIが有利には2つの連続するパルス間で可変である分離持続時間で分配される。実際に、検出経路20と共有される伝送経路10の終端部分における特定の光学構成要素上での各パルスIの反射のために、各パルスIの発光は、非常に高い強度が検出器21の飽和を引き起こす検出信号を生成する。この検出信号はシステム100内の内部反射によるものであり、一般にナルシッサス信号と呼ばれる。その持続時間の間、それは検出器21によって受信されたパルス部分RIの検出を、このナルキッサス信号と同時に防止し、それは以前に放出されたパルスIに対応し、その後、標的によって再帰反射または後方散乱される。このため、連続して放出されるパルス間の分離時間が全て同一である場合、ナルシッサス信号は、ブラインドインターバルと呼ばれる、放出の方向に沿って一定のインターバル内に位置する標的に関する速度を測定することを防止する。配列S内で連続するパルスを分離する時間を変化させることにより、システム100の範囲内の任意の位置に位置する標的の速度測定値を得ることが可能になり、パルスの一部は、他のパルスによって引き起こされるブラインド間隔を埋めることが可能になる。各パルスIは、単色または準単色である。したがって、記載された配列Sは、発光波長λについての10個の異なる値に対応する。これらの10個の波長値がシステム100によって生成される順序は、2つの連続して放出されるパルスが異なる波長値を有する限り、問題にならない。さらに、これらの波長値間の差は、配列Sの任意の2つのパルスがスペクトル的に十分に分離され、その結果、再帰反射または後方散乱パルス部分RIが有する周波数シフトが配列Sの異なるパルス間の全ての分離間隔内に含まれる限り、任意の値とすることができる。説明のために、[
図2]では、連続するパルスIがΔλ
1で示される波長値に対して一定の増分を伴って、配列S内で経時的に増大するそれぞれの波長値を有する。波長増分Δλ
1は、-CΔλ
1/λ
0
2に等しい周波数増分Δν
1に対応する。この後者の増分は、例えばRFドメインにおいて200MHzに等しくすることができる。しかしながら、一般に、パルス波長値間の差は、隣接する値の1つのペアから別のペアへ不変であり得る。
【0047】
ここで説明した実施例では、配列Sの繰り返し周波数は10kHzに等しく、一方、目標速度を測定するために有効なパルス周波数、すなわち周波数PRFは、配列Sのこの繰り返し周波数と配列内のパルス数、すなわち100kHzとの積に等しい。
【0048】
本発明によるこのような動作は[
図3a]に示すように、LIDARシステム100によって行うことができる。このシステムは、伝送経路10がMODで示される追加の変調器17と、CTRLで示される制御器18とをさらに備えることを除いて、[
図1a]のものと同様のハードウェアアーキテクチャを有する。変調器17は、レーザ放射源11と電気音響変調器12との間の第1の光ファイバセグメントS1に挿入される。変調器17の2つの可能な構成を以下に説明する。変調器17は、制御器18に関連して、初期レーザ放射線R
0を、[
図2]に関連して上述したように可変波長を有する一連の単色パルスに変換する。制御器18は、連続するパルス間に可変分離持続時間を生成するように変調器12を同時に制御する。さらに、変調器12は、変調器17によって生成されたパルスの各々に周波数シフトΔν
0を適用する。
【0049】
再帰反射されると、各パルスIは、ドップラー効果によってスペクトル的にシフトされる。周波数増分Δν1が波長λ0に対応する光周波数よりもはるかに低いと仮定すると、全てのパルスは、同じドップラー効果周波数シフトνDopplerを受ける。加えて、周波数増分Δν1は、周波数シフトΔν0に加えられたドップラー効果周波数シフトνDopplerについて実現可能に予想される全ての数値よりも大きくなるように選択される。
【0050】
伝送経路10の二次出力16は、レーザ放射源11と変調器17との間に配置される。このようにして、ヘテロダイン検出器21に伝達される光学基準シグナルRRは、依然として、初期レーザ放射線R0の部分から構成される。特に、それは依然として単色である。
【0051】
[
図3b]の上側の図に示されるように、ヘテロダイン検出器21によって受信される放射のスペクトル組成はレーザ放射源11からの発光に対応するピークRRを依然として含むが、光学系15によって再帰反射または後方散乱され、次いで収集されたパルス部分に対応するいくつかの追加のピークRIも含む。これらのピークRIは、放出パルスIのすべての波長値から生じ、測定情報を含む。それらは、光周波数に関して、ν
DopplerのパルスIに対してスペクトル的にシフトされる。ヘテロダイン検出中、各ピークRIは、ピークRRと干渉を形成する。[
図3b]の下の図に示すように、ヘテロダイン検波信号は、パルスIの波長値が異なっている限り多くのピークから構成されている。[
図3b]の2つの図がパルスIの波長値が一定の周波数増分Δν
1に従って分離されていることに対応している。そして、スペクトル解析部30は、ヘテロダイン検波信号の全てのピークについて測定された高周波数値に基づいて、ドップラー効果周波数シフトν
Dopplerの値を決定する。例えば、ヘテロダイン検波信号の各ピークの中心周波数値に基づいてν
Dopplerの基本値を求め、これらの基本値を平均することによりν
Dopplerの最終値を算出する。ヘテロダイン検出信号中の全てのピークが互いにインコヒーレントな寄与に対応すると仮定すると、ヘテロダイン検出信号はn
1/2の因子だけ増加される信号対雑音比値を有し、ここで、nは、パルスIについての様々な波長値の数である。
【0052】
本発明の第1の実施形態では、配列S内の可変波長値を有する単色パルスIがセロダイン変調によって生成することができる。この場合、変調器17は電気光学タイプの変調器とすることができ、制御器18は、変調器17の制御入力にセロダイン変調信号を印加するように適合される。そのような変調の原理は、当業者に知られていると仮定される。必要に応じて、「New coherent Doppler Lidar engine integrating optical transceiver with FPGA signal processor」(安藤俊之、原口英介(a))および大野人見(Hitomi Ono(a))、第18回コヒーレントレーザレーダ会議((2016年))と題する論文を参照することができる。[
図4]の最初の2つの図によれば、この変調信号は放出される放射のパルスIごとに、同一で時間的に結合された一連の線形位相ランプから構成される。各位相ランプは、0から2πまで個々に変化する。位相ランプの連続は、パルスの持続時間全体を占める。これらの位相ランプは放射の位相の変動の速度の増加を引き起こし、したがって、問題のパルスのための所望の光周波数シフトを生成する。この光周波数シフトは、2πで除算された位相ランプ勾配に直接的に等しい。各パルスIの持続時間に対して一定であるこの位相ランプ勾配は、2つの連続するパルスの間で変化する。これは、変調器17からの出力におけるパルスの波長が初期レーザ放射線R
0の波長λ
0よりも小さいか又は大きいかに応じて、正又は負とすることができる。[
図4]の上の図は、このようなセロダイン変調信号を示している。横軸は時間tを示し、縦軸は変調によって生成される位相シフトを示し、ph.で表され、ラジアンで表される。I1で示される第1のパルスは、初期レーザ放射線R
0の光周波数に対して40MHzに等しい光周波数偏移に対応することができる。このために、その位相ランプの勾配は2π40MHzに等しい。I2で示される第2のパルスの位相ランプはパルスI1の位相ランプの2倍急峻であり、パルスI2の対応する光周波数シフトは、80MHzに等しい。同様に、I3で示される第3のパルスの位相ランプはパルスI1の位相ランプの3倍急峻であり、パルスI3の光周波数シフトは120MHzに等しい、等である。[
図4]の図において明確にするために、配列Sの10個のパルスのうちの3個のみが表されている。[
図3a]のLIDARシステム100の動作において、変調器12によって生成されたシフトΔν
0は、変調器17によって生成された前のシフトに加えられる。[
図4]の中間図は、セロダイン変調が変調器17によって送信される放射の振幅を変更しないことを示す。この中間図の横軸は時間tを再度特定し、縦軸は放射線の強度に対して変調器17によって生成される減衰の減衰係数を任意の単位(a.u.)で特定し、これは、Aと表される。この係数が実質的に定数であり、1つの単位に可能な限り近い。最後に、[
図4]の下図は、得られたヘテロダイン検出信号の周波数分布を示している。この下図の横軸はRF領域における周波数fの値を特定し、縦軸は、ヘテロダイン検出信号のパワースペクトル密度を特定する。したがって、パルスI1に対応するピークは放出パルスの配列Sの全ての反復において、値40MHz + Δν
0 + ν
Dopplerを中心とし、パルスI2に対応するピークは値80MHz + Δν
0 + ν
Dopplerを中心とし、パルスI3に対応するピークは値120MHz + Δν等を中心とする。このセロダインモジュレーションは、周波数増分Δν
1=40MHzに対応する。
【0053】
本発明の第2の実施形態では、可変波長値の単色パルスIがI/Q変調によって生成することができる。このケースでは、変調器17は、Alexandre Motte、Nicolas Bourriot and Jerome Hauden、Photline Technologies、ZI Les Tilleroyes-Trepillot、16 rue Auguste Jouchoux、25000 Besancon、Franceによる「LiNbO
3 I/Q Modulatorsに基づく調整可能な周波数移」と題する論文、またはIzutsu Masayuki、Shinsuke Shikama and Tadasi Suetaによる「Integrated optical SSB modulator/Frequency Shifter」IEEE Journal of Quantum Electronicsと題する論文のタイプであり得る。それは再結合干渉計とも呼ばれるマッハツェンダ型の主干渉計から構成され、それは、入力としてレーザ放射源11からの初期レーザ放射線R
0を受け取るように接続され、出力において音響光学変調器12の光入力に接続される。[
図5]によれば、この再結合干渉計は符号170で示すように、光源11と変調器12との間に並列に配置された2つの光伝播経路、すなわち経路A
1A
2A
3A
4と経路A
1A
5A
6A
4とを有する。経路A
1A
2A
3A
4は点A
1と点A
2との間の電気光学変調器M5と、点A
2と点A
3との間の別のマッハツェンダ干渉計とを備え、これは二次干渉計と呼ばれ、基準171によって指定される。二次干渉計171自身は、点A
2と点A
3との間に並列に配置された2つの光伝播経路を備える。二次干渉計171のこれらの2つの経路の各々は、電気光学変調器、それぞれM1およびM2を備える。経路A
1A
5A
6A
4は、経路A
1A
2A
3A
4と同じ構成になっている。それは点A
1と点A
5との間の別の電気光学変調器M6と、点A
5と点A
6との間の別の二次マッハツェンダ干渉計とを備え、これは符号172で示される。二次干渉計172自身は、点A
5と点A
6との間に並列に配置された2つの光伝播経路を備える。これらの最後の2つの経路のそれぞれは、電気光学変調器、それぞれM3およびM4を備える。このような変調器17は、それぞれの電極に関連するニオブ酸リチウム(LiNbO
3)の部分に基づいて実装される電気光学変調器M1~M6を有する集積光回路の形態で実装することができる。集積光回路のためのいくつかの技術が当業者に知られており、それらは本発明によるLIDARシステム100のそのような実施形態のために使用することができる。
【0054】
制御器18は電気光学変調器M1~M6のそれぞれの電極に電圧を印加し、その結果、これらの各々は、それが透過する初期レーザ放射線R0の部分に対して光位相ずれを生成する。したがって、変調器Miは光位相偏移φiを生成し、ここで、iは、1から6まで変化する自然整数指数である。これらの条件下で、二次マッハツェンダ干渉計171は、点A2と点A3とを接続する2つの光伝播経路の間に第1の位相ずれを適用する。この第1の位相ずれはΦ1=φ1-φ2である。同様に、二次マッハツェンダ干渉計172は点A5と点A6:Φ2=φ3-φ4とを接続する2つの光伝播経路の間に、第2の位相シフトΦ2を印加する。最後に、再結合マッハツェンダ干渉計170は、2つの光伝播経路A1A2A3A4とA1A5A6A4:Φ3=φ5-φ6との間に第3の位相ずれΦ3を印加する。したがって、変調器17は制御器18が電気光学変調器M1~M6に電圧を印加するときに、初期レーザ放射線R0のための光周波数シフト機能を有する。
【0055】
ΦΦ1=φ1-φ2=π+α・sin(Δν1・t)、
ΦΦ2=φ3-φ4=π+α・sin(Δν1・t+±π/2)、および
ΦΦ3=φ5-φ6=±π/2。
【0056】
したがって、位相シフトΦΦ1およびΦΦ2は、上記で導入された、高周波領域に属する光周波数シフトΔν1に等しいことが意図される周波数に従って、時間tに応じて正弦波変動を有する。電気光学変調器M1~M6のための制御電圧を生成するために、制御器18は、「任意波形発生器」のための、AWGタイプの発電機を組み込むことができる。
【0057】
距離分解能の実装はサンプリングされた分離距離値に関する速度測定結果を得るために、上記で提示された本発明の実装形態に関連して説明されていないが、そのような距離分解能を得る原理は[
図1a]のシステム100について説明されたように使用され得る。
【0058】
本発明のすべての実施形態では、各パルスが、光ファイバセグメントS1およびS2ならびに光増幅器13、光サーキュレータ14、ならびにこれらの間にあり、発光学系15に至る光ファイバセグメントにおいて生じる誘導ブリルアン散乱の閾値をちょうど下回る個々のピークパワー値を有することができる。システム100の温度範囲Lについて同一の値ではパルスの総数に、パルスについての異なる波長値の数nを乗算するが、各パルスの個々のエネルギーは本発明の前に使用されたものと同一とすることができる。これにより、ヘテロダイン検波を用いたLIDARシステムの動作に対して、n因子の1/2の改良が得られる。したがって、本発明によるヘテロダイン検出を有するパルスLIDARシステムは、再帰反射または後方散乱パルス部分が低電力または非常に低電力を有する測定条件に特に適している。したがって、これらは、大気速度測定を実行するのに特に適している。
【0059】
本発明は引用された利点の少なくともいくつかを保持しながら、上で詳細に説明された実施形態の二次的態様を修正しながら再現され得ることが理解される。特に、以下のような変形が可能である。
【0060】
記載された実施形態において使用される構成要素のいくつかは、他の構成要素によって、または同等の機能を生成する構成要素の組合せによって置き換えることができる。例えば、各音響光学変調器は、変調器として使用される半導体光増幅器、又はSOAに置き換えることができる。
【0061】
[
図3a]のLIDARシステムアーキテクチャに関して、伝送経路10の二次出力16は、電気光学変調器17と電気音響変調器12との間を移動することができる。ヘテロダイン型検出の動作は、この新しい位置において検出経路20の基準入力を二次出力16に接続することによって依然として得られる。次いで、ヘテロダイン検出信号は、パルス繰り返し周波数PRFによって制限されるLIDARシステムの温度範囲L内に存在する1つまたは複数のターゲットの検出に対応する1つまたは複数の一次ピークと、主に一連のパルス間のスペクトル差に従ってシフトされ、温度範囲Lを超えて存在する1つまたは複数の追加の標的に対応し、追加の標的のうちの1つによって後方散乱された各パルス部分を生じさせた1つに続く少なくとも1つの後続のパルスの発光後に後方散乱されるパルス部分とからなる。
【0062】
引用された全ての数値は例示の目的のためだけのものであり、ヘテロダイン検出を有するパルスLIDARシステムのために考慮される用途に応じて変更することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスLIDARシステム(100)であり、前記システムによって標的(T)に向かって連続的に放出される一連の放射線パルス(I)によって受けるドップラー効果周波数シフト(ν
Doppler)の値を、前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルスの一部(RI)と、前記システムによって放出される前記パルスとの間で決定し、前記周波数シフトについて決定された前記値に基づいて、前記システムの光放出方向に平行な前記標的の速度成分(VT)の推定値を提供するように適合されたシステムであって、
前記システム(100)は、
前記一連のパルス(I)を生成するように構成された伝送経路(10)と、
前記標的(T)上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルス部分(RI)を検出し、前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出信号を生成するように構成された検出経路(20)と、
前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出寄与から前記周波数シフト(ν
Doppler)の値が生じるように、前記ヘテロダイン検出信号のスペクトル分析を実行するように適合されたスペクトル分析モジュール(30)と、を備え、
前記システム(100)は、前記標的(T)を形成する懸濁粒子を含む雰囲気の部分に向かって前記放射線パルス(I)を放出するように向けられたときに、空気流速成分の推定値を提供するように適合され、前記粒子は、前記放射線を後方散乱させるものであり、
前記伝送路(10)は、標的(T)に向かって連続的に放出される2つのパルス(I)が、スペクトル的に分離され、異なるそれぞれの中心波長値に関連付けられるようにさらに構成され、
他のヘテロダイン検出スペクトル寄与とは無関係に、各ヘテロダイン検出スペクトル寄与に基づいて前記ドップラー効果周波数シフトについて基本値を決定し、次いで、前記基本値を平均することによって前記ドップラー効果周波数シフトについての最終値を計算することによって、前記スペクトル解析モジュール(30)によって決定される前記周波数偏移(ν
Doppler)の前記値が、前記スペクトル的に分離されたパルスにそれぞれ対応し、かつ前記中心波長値が異なっているいくつかのヘテロダイン検波寄与の組合せから生じるように、前記システム(100)が適合される、ことを特徴とするシステム(100)。
【請求項2】
前記伝送経路(10)は、連続的に放出される任意の二つの放射線パルス(I)が、少なくとも10MHz、好ましくは少なくとも20MHz、最大で2000MHzだけスペクトル的に分離されるようにさらに構成される、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項3】
前記伝送経路(10)は、前記一連のパルス(I)が、前記パルスの中心波長値の一定の配列を繰り返すようにさらに構成される、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項4】
前記伝送路(10)は、前記繰り返し配列内の連続的に放出されるパルス(I)のペアに関連する前記中心波長値間の差が一定であるようにさらに構成される、請求項3に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項5】
前記伝送路(10)は、前記一連のパルス(I)についての複数の異なる中心波長値が2と16との間であるようにさらに構成される、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項6】
前記伝送経路(10)は、連続して放出されるパルス(I)間の持続時間が前記一連のパルスの過程にわたって変化するようにさらに構成される、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項7】
前記伝送経路(10)が、
初期レーザ放射線(R
0
)を生成するように適合されたレーザ放射源(11)と、
少なくとも1つの制御入力に印加される変調信号に従って、前記初期レーザ放射線(R
0
)を修正するように構成される、少なくとも1つの変調器と、
前記少なくとも1つの制御入力に前記変調信号を印加するように接続されたコントローラ(18)と、を含み、
前記変調信号は、前記初期レーザ放射線(R
0
)が前記変調器(17)によって前記一連のパルス(I)に変換され、2つの連続するパルスがスペクトル的に分離され、中心波長値が異なっており、
ヘテロダイン検出に使用される前記検出経路(20)の基準入力は、前記レーザ放射源(11)と前記変調器(17)との間に位置する前記伝送経路(10)の二次出力(16)に接続される、請求項1に記載のLIDARシステム(100)。
【請求項8】
前記変調器(17)が位相変調器であり、
前記変調信号は、線形位相シフトランプの時間的に離散した配列(S)から構成される位相変調信号であり、
前記線形位相シフトランプは、各配列内で同一で連続し、異なる配列間で異なる勾配を有するものであり、
前記線形位相シフトランプの配列は、前記LIDARシステム(100)によって放出される前記パルス(I)に1対1で対応する、請求項7に記載のLIDARシステム(100)。
【請求項9】
前記変調器(17)が、
再結合マッハツェンダ干渉計(170)と、前記再結合マッハツェンダ干渉計の2つの別々の光伝播経路上にそれぞれ1つずつ配置され、以下の位相シフトを適用するための手段を備える2つの2次マッハツェンダ干渉計(171、172)とを含み、
前記2つの2次マッハツェンダ干渉計(171、172)のうちの第1のものの2つの別々の光伝搬経路の間に適用され、時間の関数として正弦波的に変化するπと第1の位相シフト成分との和に等しい、第1の位相シフトと、
前記2つの2次マッハツェンダ干渉計(171、172)のうちの第2のものの2つの別個の光伝搬経路の間に適用され、時間の関数として正弦波的に変化するπと第2の位相シフト構成要素との和に等しく、共通周波数を有する時間の関数として正弦波的に変化し、互いに直角位相である、第2の位相シフトと、
前記再結合マッハツェンダ干渉計(170)の前記2つの光伝搬経路の間に適用され、πの±半減に等しい、第3の位相シフトと、を含み、
前記第1及び第2の位相シフト構成要素の共通周波数が、前記放射線パルス(I)の前記中心波長値と、前記レーザ放射源(11)によって生成される初期レーザ放射線(R
0
)の波長値との間の差分を決定する時間の関数として正弦波的に変化する、請求項7に記載のLIDARシステム(100)。
【請求項10】
少なくとも一つの前記伝送経路(10)および前記検出経路(20)が、前記伝送経路および前記検出経路の構成要素をそれぞれ相互接続するために、光ファイバ技術によって実装される、請求項1に記載のLIDARシステム(100)。
【国際調査報告】