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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】成熟肝細胞を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240423BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240423BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20240423BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/07
A61K35/407
A61P1/16
A61P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568329
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022027776
(87)【国際公開番号】W WO2022235869
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,735
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074523
【氏名又は名称】アステラス インスティテュート フォー リジェネラティブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ダレッシオ アナ
(72)【発明者】
【氏名】キンブレル エリン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD39
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB52
4C087NA05
4C087NA14
(57)【要約】
本発明は、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させることによって成熟肝細胞を作製する方法、およびそれらの組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟肝細胞を作製する方法であって、
核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階であって、それにより成熟肝細胞を作製する、段階
を含む、方法。
【請求項2】
転写因子がNFIXである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
転写因子がNFICである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
転写因子がNFIXおよびNFICである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
NFICが、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである、請求項1、3、または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント3である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
デキサメタゾン、8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
培養する段階が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
8-Br-cAMPの濃度が、少なくとも0.1 mM、0.2 mM、0.4 mM、0.6 mM、0.8 nM、または1 mMである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
デキサメタゾンの濃度が、少なくとも5 nM、10 nM、20 nM、40 nM、60 nM、80 nM、または100 nMである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階が、未成熟肝細胞を少なくとも1種の転写因子と接触させることを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
未成熟肝細胞が、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
発現ベクターがウイルスベクターである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
発現ベクターが非ウイルスベクターである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
発現ベクターが誘導性発現ベクターである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
発現ベクターが、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
プロモーターが内因性プロモーターである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プロモーターが人工プロモーターである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階が、少なくとも1種の転写因子をコードするウイルスベクターを用いて未成熟肝細胞に形質導入することを含む、請求項1~16および18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階が、少なくとも1種の転写因子をコードする発現ベクターを用いて未成熟肝細胞にトランスフェクションすることを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
未成熟肝細胞が、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2、3、4、または5日間培養される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
未成熟肝細胞が、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間培養される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
NFIXの発現を増加させることが、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項1~2または4~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
NFICの発現を増加させることが、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項1または3~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
成熟肝細胞が、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、および/またはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)の発現増加を示す、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
CYP1A2の発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
CYP3A4の発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
TATの発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
UGT1A1の発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
成熟肝細胞が、未成熟肝細胞と比較して、αフェトプロテイン(AFP)の発現減少を示す、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
AFPの発現減少が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍、または4倍の減少分を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
成熟肝細胞が、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)の分泌増加、AFPの分泌減少、および/またはCYP1A2の活性増加を示す、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ALBの分泌増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、または25%の増加分を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
AFPの分泌減少が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、20%、40%、または60%の減少分を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
CYP1A2の活性増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、または400倍の増加分を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階が、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
未成熟肝細胞が多能性幹細胞に由来する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
多能性幹細胞が胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階が、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を使用することを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
遺伝子スイッチ構築物が、転写の遺伝子スイッチ構築物であるか、または転写後の遺伝子スイッチ構築物である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
発現ベクターが自己切断配列をさらに含む、請求項15~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
多能性幹細胞に由来する成熟肝細胞を作製する方法であって、
(a) 多能性幹細胞を未成熟肝細胞へと分化させる段階であって、多能性幹細胞が、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、段階、ならびに
(b) 発現ベクターからの少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階であって、それにより成熟肝細胞を作製する、段階
を含む、方法。
【請求項47】
多能性幹細胞が胚性幹細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
未成熟肝細胞が肝芽細胞を含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
未成熟肝細胞が肝幹細胞を含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
転写因子がNFIXである、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
転写因子がNFICである、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
転写因子がNFIXおよびNFICである、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
NFICが、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである、請求項46~50または52~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント3である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階をさらに含む、請求項46~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
デキサメタゾン、8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階をさらに含む、請求項46~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
培養する段階が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間実施される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
8-Br-cAMPの濃度が、少なくとも0.1 mM、0.2 mM、0.4 mM、0.6 mM、0.8 nM、または1 mMである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
デキサメタゾンの濃度が、少なくとも5 nM、10 nM、20 nM、40 nM、60 nM、80 nM、または100 nMである、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
未成熟肝細胞が、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、請求項46~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
発現ベクターがウイルスベクターである、請求項46~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
発現ベクターが非ウイルスベクターである、請求項46~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
発現ベクターが誘導性発現ベクターである、請求項46~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
発現ベクターが、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む、請求項46~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
プロモーターが内因性プロモーターである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
プロモーターが人工プロモーターである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階が、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において誘導することを含む、請求項46~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において誘導することが、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を使用することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
遺伝子スイッチ構築物が、転写の遺伝子スイッチ構築物であるか、または転写後の遺伝子スイッチ構築物である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
発現ベクターが自己切断配列をさらに含む、請求項46~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
多能性幹細胞が、少なくとも1種の転写因子をコードするウイルスベクターを用いて形質導入される、請求項46~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
多能性幹細胞が、少なくとも1種の転写因子をコードする発現ベクターを用いてトランスフェクトされる、請求項46~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
段階(a)が、アクチビンAを含む第1の分化培地、BMP4およびFGF2のうちの少なくとも1種を含む第2の分化培地、ならびにHGFを含む第3の分化培地において多能性幹細胞を培養し、それにより未成熟肝細胞を作製することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項78】
第1の分化培地、第2の分化培地、および第3の分化培地でそれぞれ、少なくとも5日間培養される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
未成熟肝細胞が、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2、3、4、または5日間培養される、請求項46~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
未成熟肝細胞が、肝細胞増殖因子(HGF)を含む培養培地において培養される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
未成熟肝細胞が、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間培養される、請求項46~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
未成熟肝細胞が、オンコスタチンM(OSM)を含む培養培地において培養される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
NFIXの発現を増加させることが、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項46~51または53~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
NFICの発現を増加させることが、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項46~50または52~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
成熟肝細胞が、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、および/またはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)の発現増加を示す、請求項46~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
CYP1A2の発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
CYP3A4の発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
TATの発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
UGT1A1の発現増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
成熟肝細胞が、未成熟肝細胞と比較して、αフェトプロテイン(AFP)の発現減少を示す、請求項46~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
AFPの発現減少が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍、または4倍の減少分を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
成熟肝細胞が、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)の分泌増加、AFPの分泌減少、および/またはCYP1A2の活性増加を示す、請求項46~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
ALBの分泌増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、または25%の増加分を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
AFPの分泌減少が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、20%、40%、または60%の減少分を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
CYP1A2の活性増加が、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、または400倍の増加分を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階が、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる、請求項46~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
請求項1~96のいずれか一項に記載の方法によって作製された成熟肝細胞集団を含む、組成物。
【請求項98】
請求項1~96のいずれか一項に記載の方法によって作製された成熟肝細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項99】
肝細胞集団を含む組成物であって、該肝細胞集団が、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現レベルの、該肝細胞集団における該転写因子の内因性の発現レベルと比較しての増加を含む、組成物。
【請求項100】
転写因子がNFIXである、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
転写因子がNFICである、請求項99に記載の組成物。
【請求項102】
転写因子がNFIXおよびNFICである、請求項99に記載の組成物。
【請求項103】
NFICが、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである、請求項99または101~102のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項104】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1である、請求項103に記載の組成物。
【請求項105】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント3である、請求項103に記載の組成物。
【請求項106】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である、請求項103に記載の組成物。
【請求項107】
肝細胞が、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現レベルの、該肝細胞集団における該1種または複数種の転写因子の内因性の発現レベルと比較しての増加をさらに含む、請求項99~106のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項108】
発現増加が、少なくとも1種の転写因子の外因性の発現を含む、請求項99~107のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項109】
肝細胞が、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、請求項99~108のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項110】
発現ベクターがウイルスベクターである、請求項109に記載の組成物。
【請求項111】
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
発現ベクターが非ウイルスベクターである、請求項109に記載の組成物。
【請求項113】
非ウイルスベクターが、プラスミドDNA、線状2本鎖DNA(dsDNA)、線状1本鎖DNA(ssDNA)、ナノプラスミド、ミニサークルDNA、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、DDNAオリゴヌクレオチド、1本鎖mRNA(ssRNA)、および2本鎖mRNA(dsRNA)からなる群より選択される、請求項112に記載の組成物。
【請求項114】
非ウイルスベクターが、ネイキッド核酸、リポソーム、デンドリマー、ナノ粒子、脂質・ポリマーシステム、固体脂質ナノ粒子、および/またはリポソーム・プロタミン/DNAリポプレックス(LPD)を含む、請求項112に記載の組成物。
【請求項115】
発現ベクターが誘導性発現ベクターである、請求項109~114のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項116】
発現ベクターが、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む、請求項109~115のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項117】
プロモーターが内因性プロモーターである、請求項116に記載の組成物。
【請求項118】
プロモーターが人工プロモーターである、請求項116に記載の組成物。
【請求項119】
プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項116~118のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項120】
発現ベクターが、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を含む、請求項109~119のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項121】
遺伝子スイッチ構築物が、転写の遺伝子スイッチ構築物であるか、または転写後の遺伝子スイッチ構築物である、請求項120に記載の組成物。
【請求項122】
発現ベクターが自己切断配列をさらに含む、請求項109~121のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項123】
自己切断配列が、T2A、P2A、E2A、およびF2Aからなる群より選択される、請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
NFIXの発現増加が、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項99~100または102~123のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項125】
NFICの発現増加が、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む、請求項99または101~124のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項126】
肝細胞集団が未成熟肝細胞集団である、請求項99~125のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項127】
肝細胞集団が成熟肝細胞集団である、請求項99~125のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項128】
肝細胞以外の細胞をさらに含む、請求項99~126のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項129】
肝細胞集団がオルガノイドの形態である、請求項99~128のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項130】
肝細胞が多能性幹細胞に由来する、請求項99~129のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項131】
多能性幹細胞が胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である、請求項130に記載の組成物。
【請求項132】
肝細胞集団が少なくとも106個の肝細胞を含む、請求項99~131のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項133】
請求項99~132のいずれか一項に記載の肝細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項134】
発現ベクターを含む多能性幹細胞集団を含む組成物であって、発現ベクターが、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む、組成物。
【請求項135】
転写因子がNFIXである、請求項134に記載の組成物。
【請求項136】
転写因子がNFICである、請求項134に記載の組成物。
【請求項137】
転写因子がNFIXおよびNFICである、請求項134に記載の組成物。
【請求項138】
NFICが、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである、請求項134または136~137のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項139】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1である、請求項138に記載の組成物。
【請求項140】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント3である、請求項138に記載の組成物。
【請求項141】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である、請求項138に記載の組成物。
【請求項142】
多能性幹細胞が、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターをさらに含む、請求項134~141のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項143】
発現ベクターがウイルスベクターである、請求項134~142のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項144】
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、請求項143に記載の組成物。
【請求項145】
発現ベクターが非ウイルスベクターである、請求項134~142のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項146】
非ウイルスベクターが、プラスミドDNA、線状2本鎖DNA(dsDNA)、線状1本鎖DNA(ssDNA)、ナノプラスミド、ミニサークルDNA、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、DDNAオリゴヌクレオチド、1本鎖mRNA(ssRNA)、および2本鎖mRNA(dsRNA)からなる群より選択される、請求項145に記載の組成物。
【請求項147】
非ウイルスベクターが、ネイキッド核酸、リポソーム、デンドリマー、ナノ粒子、脂質・ポリマーシステム、固体脂質ナノ粒子、および/またはリポソーム・プロタミン/DNAリポプレックス(LPD)を含む、請求項145に記載の組成物。
【請求項148】
発現ベクターが誘導性発現ベクターである、請求項134~147のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項149】
発現ベクターが、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む、請求項134~148のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項150】
プロモーターが内因性プロモーターである、請求項149に記載の組成物。
【請求項151】
プロモーターが人工プロモーターである、請求項149に記載の組成物。
【請求項152】
プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項149~151のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項153】
発現ベクターが、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を含む、請求項134~152のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項154】
遺伝子スイッチ構築物が、転写の遺伝子スイッチ構築物である、請求項153に記載の組成物。
【請求項155】
遺伝子スイッチ構築物が、転写後の遺伝子スイッチ構築物である、請求項153に記載の組成物。
【請求項156】
発現ベクターが自己切断配列をさらに含む、請求項137~155のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項157】
自己切断配列が、T2A、P2A、E2A、およびF2Aからなる群より選択される、請求項156に記載の組成物。
【請求項158】
多能性幹細胞が胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である、請求項134~157のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項159】
多能性幹細胞集団が少なくとも106個の多能性幹細胞を含む、請求項134~158のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項160】
それを必要とする対象において疾患を処置する方法であって、
請求項97に記載の組成物、請求項99~132のいずれか一項に記載の組成物、または請求項98もしくは133のいずれか一項に記載の薬学的組成物の有効量を、該対象に投与する段階であって、それにより該対象において疾患を処置する、段階
を含む、方法。
【請求項161】
疾患が、任意の原因に起因する劇症肝不全、ウイルス性肝炎、薬物性肝障害、肝硬変、遺伝性肝機能不全(たとえば、ウィルソン病、ジルベール症候群、またはα1-アンチトリプシン欠乏症)、肝胆道癌、自己免疫性肝疾患(たとえば、自己免疫性慢性肝炎または原発性胆汁性肝硬変)、尿素サイクル異常症、第VII因子欠乏症、糖原病1型、小児レフサム病、フェニルケトン尿症、重症小児シュウ酸症、肝硬変、肝障害、急性肝不全、肝胆道癌、肝細胞癌、遺伝性胆汁うっ滞症(PFICおよびアラジール症候群)、遺伝性ヘモクロマトーシス、チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症(ASL)、クリグラー・ナジャール症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー、非典型溶血性尿毒症症候群-1、原発性高シュウ酸尿症1型、メープルシロップ尿症(MSUD)、急性間欠性ポルフィリン症、凝固障害、GSD Ia型(代謝制御におけるもの)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症、有機酸尿症、ならびに肝機能障害を引き起こす任意の他の病態からなる群より選択される、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
請求項97に記載の組成物、請求項99~159のいずれか一項に記載の組成物、または請求項98もしくは133のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項163】
核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、キット。
【請求項164】
転写因子がNFIXである、請求項163に記載のキット。
【請求項165】
転写因子がNFICである、請求項163に記載のキット。
【請求項166】
転写因子がNFIXおよびNFICである、請求項163に記載のキット。
【請求項167】
NFICが、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである、請求項163または165~166のいずれか一項に記載のキット。
【請求項168】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1である、請求項167に記載のキット。
【請求項169】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント3である、請求項167に記載のキット。
【請求項170】
NFIC選択的スプライスバリアントがNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である、請求項167に記載のキット。
【請求項171】
RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターをさらに含む、請求項163~170のいずれか一項に記載のキット。
【請求項172】
NFIXが、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項173】
NFICが、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項174】
NFIXが、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項175】
NFICが、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項176】
NFIXが、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項177】
NFICが、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項178】
NFIXが、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項179】
NFICが、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項180】
NFIXが、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項181】
NFICが、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項182】
NFIXが、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項183】
NFICが、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項184】
NFIXが、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項134に記載の組成物。
【請求項185】
NFICが、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項134に記載の組成物。
【請求項186】
NFIXが、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項134に記載の組成物。
【請求項187】
NFICが、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項134に記載の組成物。
【請求項188】
NFIXが、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項163に記載のキット。
【請求項189】
NFICが、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項163に記載の組成物。
【請求項190】
NFIXが、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項163に記載の組成物。
【請求項191】
NFICが、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む、請求項163に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C.§119(e)のもとで、2021年5月7日に提出された「成熟肝細胞を作製する方法(METHODS OF GENERATING MATURE HEPATOCYTES)」との名称を有する米国特許仮出願第63/185,735号の恩典を主張するものであり、該仮出願の全ての内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0002】
本発明の分野
本発明は、成熟肝細胞を作製する方法およびその組成物に関連する。
【背景技術】
【0003】
背景
肝細胞は薬剤代謝を行い、かつ身体からの生体異物排除の制御も行っている(Gebhardtら 2003, Drug Metab Rev 35, 145-213(非特許文献1);およびHewittら 2007, Drug Metab Rev 39, 159-234(非特許文献2))。肝細胞は、薬剤、生体異物、および内因性基質の解毒において重要な機能を有しているために、薬剤の毒性スクリーニングおよび開発プログラムに使用されている。しかしながら、インビトロで培養されると、ヒト初代肝細胞はその機能をすぐに喪失してしまう。さらに、ヒト初代肝細胞の薬剤代謝能力は、それぞれの個人の間で顕著な差異を示す(Byersら 2007, Drug Metab Lett 1, 91-95(非特許文献3))。
【0004】
肝細胞は、薬剤を試験するための新規なプラットフォームを提供することに加えて、肝疾患を有する患者のための、潜在力がある新規な治療法をもたらすものである。肝移植は、末期の肝疾患のための効果的な処置を提供するものであるが、生体ドナー臓器が不足しているために、肝細胞を用いて処置可能な患者集団は限定されている(Kawasakiら 1998, Ann Surg 227, 269-274(非特許文献4);およびMiroら 2006, J Hepatol 44, 5140-145(非特許文献5))。肝細胞移植、および肝細胞を用いて開発されたバイオ人工肝装置は、特異的なタイプの肝疾患を有する患者の命を救う、また別の選択肢となる治療法である。肝細胞の重要な機能的役割と、ある特定の薬剤を代謝する能力は個人間で異なり得るという事実とを考慮すると、成熟しかつ機能的な肝細胞を入手する手段が必要とされている。
【0005】
肝細胞の成熟化を制御する調節経路がほとんど理解されていないという事実に起因して、再現性がありかつ効率の良い成熟肝細胞の作製は、現在まで難題となっている。ほぼ全てのアプローチは、分化培養において、肝臓の発生の重要なステージを反復することを試みており、該分化培養には、胚体内胚葉の誘導、該内胚葉の肝臓運命への特定化、および肝前駆体の産生が含まれる。これらの初期の段階はある程度十分に立証されているが、肝細胞の成熟化を増進する条件は十分に理解されているわけではない。さらに、異なるプロトコルを用いて作製された集団は、それらの成熟状態が大幅に異なっており、かつ未成熟肝細胞に相当する。
【0006】
したがって、当技術分野においては、成熟肝細胞を作製するための、簡便であってかつ効果的な方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gebhardtら 2003, Drug Metab Rev 35, 145-213
【非特許文献2】Hewittら 2007, Drug Metab Rev 39, 159-234
【非特許文献3】Byersら 2007, Drug Metab Lett 1, 91-95
【非特許文献4】Kawasakiら 1998, Ann Surg 227, 269-274
【非特許文献5】Miroら 2006, J Hepatol 44, 5140-145
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させることによって成熟肝細胞を作製するための、効率的かつ効果的な方法を提供することによって、当技術分野における上述の必要性に応えるものである。1つの局面において、本発明は、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させることによって成熟肝細胞を作製するための、新規であってかつ効果的な方法を提供する。
【0009】
本発明の方法は、簡便であって効率的かつ効果的のいずれでもあり、かつ、本明細書に開示されるさまざまな用途に、たとえば肝疾患の処置などに使用可能な、成熟肝細胞の産生をもたらす。
【0010】
1つの局面において、本発明は、成熟肝細胞を作製する方法を提供し、該方法は以下の段階を含む:核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階であって、それにより成熟肝細胞を作製する、段階。
【0011】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。
【0012】
いくつかの態様において、転写因子はNFICである。
【0013】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0014】
いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント3である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。
【0015】
いくつかの態様において、方法は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階を、さらに含む。
【0016】
いくつかの態様において、方法は、デキサメタゾン、8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階を、さらに含む。いくつかの態様において、培養する段階は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間実施される。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は、少なくとも0.1 mM、0.2 mM、0.4 mM、0.6 mM、0.8 nM、または1 mMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は、少なくとも5 nM、10 nM、20 nM、40 nM、60 nM、80 nM、または100 nMである。
【0017】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、未成熟肝細胞を少なくとも1種の転写因子と接触させることを含む。
【0018】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。いくつかの態様において、発現ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様において、発現ベクターは非ウイルスベクターである。いくつかの態様において、発現ベクターは誘導性発現ベクターである。いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは内因性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは人工プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0019】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子をコードするウイルスベクターを用いて未成熟肝細胞に形質導入することを含む。
【0020】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子をコードする発現ベクターを用いて未成熟肝細胞にトランスフェクションすることを含む。
【0021】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2、3、4、または5日間培養される。
【0022】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間培養される。
【0023】
いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0024】
いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0025】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、および/またはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)の発現増加を示す。いくつかの態様において、CYP1A2の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、CYP3A4の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、TATの発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、UGT1A1の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0026】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、αフェトプロテイン(AFP)の発現減少を示す。いくつかの態様において、AFPの発現減少は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍、または4倍の減少分を含む。
【0027】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)の分泌増加、AFPの分泌減少、および/またはCYP1A2の活性増加を示す。いくつかの態様において、ALBの分泌増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、または25%の増加分を含む。いくつかの態様において、AFPの分泌減少は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、20%、40%、または60%の減少分を含む。いくつかの態様において、CYP1A2の活性増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、または400倍の増加分を含む。
【0028】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。
【0029】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は多能性幹細胞に由来する。いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である。
【0030】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を使用することを含む。いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写の遺伝子スイッチ構築物であるか、または転写後の遺伝子スイッチ構築物である。
【0031】
いくつかの態様において、発現ベクターは自己切断配列をさらに含む。
【0032】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
別の局面において、本発明は、多能性幹細胞由来成熟肝細胞を作製する方法を提供し、該方法は以下の段階を含む:(a) 多能性幹細胞を未成熟肝細胞へと分化させる段階であって、多能性幹細胞が、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、段階、ならびに(b) 発現ベクターからの少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階であって、それにより成熟肝細胞を作製する、段階。
【0037】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞である。
【0038】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は人工多能性幹細胞である。
【0039】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は肝芽細胞を含む。
【0040】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は肝幹細胞を含む。
【0041】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。
【0042】
いくつかの態様において、転写因子はNFICである。
【0043】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0044】
いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント3である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。
【0045】
いくつかの態様において、方法は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階を、さらに含む。
【0046】
いくつかの態様において、方法は、デキサメタゾン、8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階を、さらに含む。いくつかの態様において、培養する段階は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間実施される。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は、少なくとも0.1 mM、0.2 mM、0.4 mM、0.6 mM、0.8 nM、または1 mMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は、少なくとも5 nM、10 nM、20 nM、40 nM、60 nM、80 nM、または100 nMである。
【0047】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。
【0048】
いくつかの態様において、発現ベクターはウイルスベクターである。
【0049】
いくつかの態様において、発現ベクターは非ウイルスベクターである。
【0050】
いくつかの態様において、発現ベクターは誘導性発現ベクターである。
【0051】
いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは内因性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは人工プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0052】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において誘導することを含む。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において誘導することは、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を使用することを含む。いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写の遺伝子スイッチ構築物であるか、または転写後の遺伝子スイッチ構築物である。
【0053】
いくつかの態様において、発現ベクターは自己切断配列をさらに含む。
【0054】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードするウイルスベクターを用いて形質導入される。
【0055】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードする発現ベクターを用いてトランスフェクトされる。
【0056】
いくつかの態様において、方法の段階(a)は、アクチビンAを含む第1の分化培地、BMP4およびFGF2のうちの少なくとも1種を含む第2の分化培地、ならびにHGFを含む第3の分化培地において多能性幹細胞を培養し、それにより未成熟肝細胞を作製することを含む。いくつかの態様において、第1の分化培地、第2の分化培地、および第3の分化培地ではそれぞれ、少なくとも5日間培養される。
【0057】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2、3、4、または5日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、肝細胞増殖因子(HGF)を含む培養培地において培養される。
【0058】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、オンコスタチンM(OSM)を含む培養培地において培養される。
【0059】
いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0060】
いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0061】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、および/またはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)の発現増加を示す。いくつかの態様において、CYP1A2の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、CYP3A4の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、TATの発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、UGT1A1の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0062】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、αフェトプロテイン(AFP)の発現減少を示す。いくつかの態様において、AFPの発現減少は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍、または4倍の減少分を含む。
【0063】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)の分泌増加、AFPの分泌減少、および/またはCYP1A2の活性増加を示す。いくつかの態様において、ALBの分泌増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、または25%の増加分を含む。いくつかの態様において、AFPの分泌減少は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、20%、40%、または60%の減少分を含む。いくつかの態様において、CYP1A2の活性増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、または400倍の増加分を含む。
【0064】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。
【0065】
別の局面において、本発明は、本明細書に開示される方法のいずれか1つまたは複数によって作製される成熟肝細胞集団を含む組成物を提供する。
【0066】
別の局面において、本発明は、本明細書に開示される方法のいずれか1つまたは複数によって作製される成熟肝細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0067】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0068】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0069】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0070】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0071】
別の局面において、本発明は、肝細胞集団を含む組成物であって、該肝細胞集団が、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現レベルの、該肝細胞集団における該転写因子の内因性の発現レベルと比較しての増加を含む、組成物を提供する。
【0072】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。
【0073】
いくつかの態様において、転写因子はNFICである。
【0074】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0075】
いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント3である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。
【0076】
いくつかの態様において、肝細胞は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現レベルの、肝細胞集団における該1種または複数種の転写因子の内因性の発現レベルと比較しての増加を、さらに含む。
【0077】
いくつかの態様において、発現増加は、少なくとも1種の転写因子の外因性の発現を含む。
【0078】
いくつかの態様において、肝細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。
【0079】
いくつかの態様において、発現ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0080】
いくつかの態様において、発現ベクターは非ウイルスベクターである。いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、プラスミドDNA、線状2本鎖DNA(dsDNA)、線状1本鎖DNA(ssDNA)、ナノプラスミド、ミニサークルDNA、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、DDNAオリゴヌクレオチド、1本鎖mRNA(ssRNA)、および2本鎖mRNA(dsRNA)からなる群より選択される。いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、ネイキッド核酸、リポソーム、デンドリマー、ナノ粒子、脂質・ポリマーシステム、固体脂質ナノ粒子、および/またはリポソーム・プロタミン/DNAリポプレックス(LPD)を含む。
【0081】
いくつかの態様において、発現ベクターは誘導性発現ベクターである。
【0082】
いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは内因性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは人工プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0083】
いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を含む。いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写の遺伝子スイッチ構築物であるか、または転写後の遺伝子スイッチ構築物である。
【0084】
いくつかの態様において、発現ベクターは自己切断配列をさらに含む。いくつかの態様において、自己切断配列は、T2A、P2A、E2A、およびF2Aからなる群より選択される。
【0085】
いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0086】
いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0087】
いくつかの態様において、肝細胞集団は未成熟肝細胞集団である。
【0088】
いくつかの態様において、肝細胞集団は成熟肝細胞集団である。
【0089】
いくつかの態様において、組成物は、肝細胞以外の細胞をさらに含む。
【0090】
いくつかの態様において、肝細胞集団はオルガノイドの形態である。
【0091】
いくつかの態様において、肝細胞は多能性幹細胞に由来する。いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である。
【0092】
いくつかの態様において、肝細胞集団は少なくとも106個の肝細胞を含む。
【0093】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載されるいずれか1種または複数種の組成物の肝細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0094】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0095】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0096】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0098】
別の局面において、本発明は、発現ベクターを含む多能性幹細胞集団を含む組成物を提供し、ここで発現ベクターは、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む。
【0099】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。
【0100】
いくつかの態様において、転写因子はNFICである。
【0101】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0102】
いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント3である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。
【0103】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを、さらに含む。
【0104】
いくつかの態様において、発現ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0105】
いくつかの態様において、発現ベクターは非ウイルスベクターである。いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、プラスミドDNA、線状2本鎖DNA(dsDNA)、線状1本鎖DNA(ssDNA)、ナノプラスミド、ミニサークルDNA、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、DDNAオリゴヌクレオチド、1本鎖mRNA(ssRNA)、および2本鎖mRNA(dsRNA)からなる群より選択される。いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、ネイキッド核酸、リポソーム、デンドリマー、ナノ粒子、脂質・ポリマーシステム、固体脂質ナノ粒子、および/またはリポソーム・プロタミン/DNAリポプレックス(LPD)を含む。
【0106】
いくつかの態様において、発現ベクターは誘導性発現ベクターである。
【0107】
いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは内因性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは人工プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0108】
いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を含む。いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写の遺伝子スイッチ構築物である。いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写後の遺伝子スイッチ構築物である。
【0109】
いくつかの態様において、発現ベクターは自己切断配列をさらに含む。いくつかの態様において、自己切断配列は、T2A、P2A、E2A、およびF2Aからなる群より選択される。
【0110】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である。
【0111】
いくつかの態様において、多能性幹細胞集団は少なくとも106個の多能性幹細胞を含む。
【0112】
別の局面において、本発明は、それを必要とする対象において疾患を処置する方法を提供し、該方法は以下の段階を含む:本開示の組成物または薬学的組成物の有効量を対象に投与する段階であって、それにより対象において疾患を処置する、段階。
【0113】
いくつかの態様において、疾患は、以下からなる群より選択される:任意の原因に起因する劇症肝不全、ウイルス性肝炎、薬物性肝障害、肝硬変、遺伝性肝機能不全(たとえば、ウィルソン病、ジルベール症候群、またはα1-アンチトリプシン欠乏症)、肝胆道癌、自己免疫性肝疾患(たとえば、自己免疫性慢性肝炎または原発性胆汁性肝硬変)、尿素サイクル異常症、第VII因子欠乏症、糖原病1型、小児レフサム病、フェニルケトン尿症、重症小児シュウ酸症、肝硬変、肝障害、急性肝不全、肝胆道癌、肝細胞癌、遺伝性胆汁うっ滞症(PFICおよびアラジール症候群)、遺伝性ヘモクロマトーシス、チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症(ASL)、クリグラー・ナジャール症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー、非典型溶血性尿毒症症候群-1、原発性高シュウ酸尿症1型、メープルシロップ尿症(MSUD)、急性間欠性ポルフィリン症、凝固障害、GSD Ia型(代謝制御におけるもの)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症、有機酸尿症、ならびに肝機能障害を引き起こす任意の他の病態。
【0114】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載される組成物または薬学的組成物を含むキットを、提供する。
【0115】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0116】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0117】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0118】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0119】
別の局面において、本発明は、発現ベクターを含むキットを提供し、ここで発現ベクターは、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む。
【0120】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。
【0121】
いくつかの態様において、転写因子はNFICである。
【0122】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0123】
いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント3である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。
【0124】
いくつかの態様において、キットは、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを、さらに含む。
【0125】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0126】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 2~SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0127】
いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 40に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0128】
いくつかの態様において、NFICは、SEQ ID NO: 41~SEQ ID NO: 45に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0129】
本発明は、以下の詳細な説明および図面によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1図1は、本発明の転写因子(TF)を選択することについての概略図を示す。
図2図2Aは、がん細胞株(HepG2、HuH7、およびHepaRG)、幹細胞由来肝細胞(幹細胞/iPSC-Heps)、ならびに初代ヒト肝細胞(PHH)の、使いやすさ 対 生理学的適合性の概略図を示す。図2Bは、図2Aに示される細胞の主成分分析を示す。PHH-AQL、PHH-TLY、およびPHH-NESは成人の肝細胞である。PHH-BVIは死産児の肝細胞である。「胎児」とは、ヒト胎児初代肝細胞を意味する。Br-cAMPおよびデキサメタゾンを用いたさらなる処理を受けなかったGMP1 iPSCから分化した肝細胞(「GMP1対照」)、ならびに、Br-cAMPおよびデキサメタゾンを用いた5日間のさらなる処理を受けたGMP1 iPSCから分化した肝細胞(「GMPDex」)と、HuH7細胞はクラスターを形成しているため、該HuH7細胞が、転写因子をスクリーニングするためのHuH7細胞株を構築するために使用される。図2Cは、本発明の転写因子をスクリーニングするために使用されたHuH7細胞株(HuH7-Tet-On3G)の構築についての概略図を示す。図2Dは、HuH7-Tet-On3G細胞株がドキシサイクリン誘導に対して応答性であることを示す。
図3図3は、HuH7-Tet-On3G細胞においてさまざまな転写因子の発現を増加させた際の、成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2(図3A)およびCYP3A4(図3B)の発現を示す、棒グラフのパネルである。転写因子を用いた形質導入は、感染多重度(MOI)を10として実施された。矢印は、CYP1A2およびCYP3A4の発現レベルを上方制御した転写因子を示す。NFIC転写バリアント1および3(NFIC-1+3)とは、それぞれ、転写因子NFICの選択的スプライスバリアントである、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)(NCBI参照配列番号(NCBI Reference Sequence No.):NM_001245002)、およびNFIC転写バリアント3(NFIC-3)(NCBI参照配列番号:NM_001245004)の混合物を指し、これらを用いて、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)およびNFIC転写バリアント3(NFIC-3)のそれぞれについてMOIを5として形質導入が行われた。
図4図4Aは、NFIC選択的スプライスバリアントである、NFIC転写バリアント1(NFIC-1);およびNFIC転写バリアント3(NFIC-3)の概略図である。図4Bは、HuH7-Tet-On3G細胞において、NFIC選択的スプライスバリアントである、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)、NFIC転写バリアント3(NFIC-3)、ならびにそれらの組み合わせ(NFIC転写バリアント1および3(NFIC-1+3))の発現を増加させた際の、成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびCYP3A4の発現増加を示す、棒グラフのパネルである。HuH7-Tet-On3G細胞は、NFIC転写バリアント1および3(NFIC-1+3)のレンチウイルス粒子、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)のレンチウイルス粒子、ならびにNFIC転写バリアント3(NFIC-3)のレンチウイルス粒子を用いて、MOIを5として形質導入された。
図5図5は、デキサメタゾンおよび8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)を含む培養培地においてHuH7-Tet-On3G細胞を培養すると、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)の発現を増加させた際に、成熟肝細胞マーカーである、CYP1A2(図5A)、TAT(図5B)、およびUGT1A1(図5C)の発現がさらに増加することを示す、棒グラフのパネルである。
図6図6は、HuH7-Tet-On3G細胞においてさまざまな転写因子の発現を増加させた際の、未成熟肝細胞マーカーであるAFP(図6A)、ならびに成熟肝細胞マーカーである、CYP1A2(図6B)、TAT(図6C)、およびCYP3A4(図6D)の発現を示す、棒グラフのパネルである。細胞は、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)(MOIは10)を用いて、およびさまざまな転写因子をコードする個々のレンチウイルスを用いてMOIを10として、形質導入された。形質導入後、細胞は、1 mM 8-Br-cAMPおよび100 nM デキサメタゾンを含む培養培地において培養された。
図7図7Aは、人工多能性幹細胞(iPSC)から肝細胞様細胞への、ステージ4つの段階的な分化の概略図を示す。形質導入は、Tet-On3GについてMOIを5として、かつそれぞれの転写因子(TF)についてMOIを3として、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に実施された。続いて細胞は、1 mM 8-Br-cAMPおよび100 nM デキサメタゾンの非存在下または存在下で、培養培地において5日間培養された。図7Bは、iPSC由来未成熟肝細胞において、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)、NFIX、およびそれらの組み合わせの発現を増加させた際の、成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびTATの発現増加を示す、棒グラフのパネルである。
図8図8Aは、人工多能性幹細胞(iPSC)から肝細胞様細胞への、ステージ4つの段階的な分化の概略図を示す。形質導入は、Tet-On3GについてMOIを5として、かつそれぞれの転写因子(TF)についてMOIを3として、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に実施された。続いて細胞は、1 mM 8-Br-cAMPおよび100 nM デキサメタゾンの非存在下または存在下で培養培地において培養され、そして細胞培養の第20日および第24日に採取された。図8Bは、iPSC由来未成熟肝細胞において、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)、NFIX、およびそれらの組み合わせの発現を増加させた際の、未成熟肝細胞マーカーであるAFPの発現減少、および成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2の発現増加を示す、棒グラフのパネルである。
図9図9Aは、iPSC由来未成熟肝細胞において、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)、NFIX、およびそれらの組み合わせの発現を増加させた際に、iPSC由来未成熟肝細胞のトランスクリプトームの30~34%が、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行することを示すグラフである。図9Bは、図9Aのグラフの括弧1の拡大図を示すグラフである。図9Cは、図9A~9Bに示される試料の一覧である。
図10図10は、iPSC由来未成熟肝細胞において、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)、NFIX、およびそれらの組み合わせの発現を増加させた際の、CYP1A2活性(図10A)、アルブミン(ALB)分泌(図10B)、αフェトプロテイン(AFP)分泌(図10C)、および尿素分泌(図10D)を同定するための機能アッセイの結果を示す、棒グラフのパネルである。形質導入は、Tet-On3GについてMOIを5として、かつそれぞれの転写因子についてMOIを3として、分化の第15日に実施された。続いて細胞は、1 mM 8-Br-cAMPおよび100 nM デキサメタゾンの非存在下または存在下で、培養培地において培養された。機能アッセイは、細胞培養の第20日(20d)および第24日(24d)に実施された。
図11図11Aは、組み合わせ実験に使用された転写因子を示す。図11Bは、HuH7-Tet-On3G細胞においてさまざまな転写因子の発現を増加させた際の、成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびCYP3A4の発現を示す、棒グラフのパネルである。
図12図12は、iPSC由来未成熟肝細胞において、NFIC転写バリアント1(NFIC-1);NFIX;およびそれらの組み合わせを強制発現させた後の、成熟肝細胞マーカーである、ALB(図12A)、CYP3A4(図12B)、およびUGT1A1(図12C)の発現の経時的解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0131】
詳細な説明
本発明は、効率的かつ効果的な、成熟肝細胞を作製する方法を提供する。該方法は以下の段階を含む:核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階であって、それにより成熟肝細胞を作製する、段階。これらの方法によって作製された組成物もまた、該組成物を使用する方法と同様に、本発明によって提供される。
【0132】
1つの局面において、本発明は、多能性幹細胞から成熟肝細胞を作製するための方法を提供し、ここで該多能性幹細胞は、たとえば、ヒト胚性幹(hES)細胞、胚由来細胞、および人工多能性幹細胞(iPS細胞)などである。本発明の方法は、効率的かつ効果的であり、かつ、本明細書に開示されるさまざまな用途に、たとえば肝疾患の処置などに使用可能な、成熟肝細胞の産生をもたらす。
【0133】
以下の詳細な説明は、本発明をどのように作製するか、およびどのように使用するかを開示する。
【0134】
本発明のより容易な理解を目的として、いくつかの用語が最初に定義される。パラメーターについて、値かまたは値の範囲が記載される場合は常に、記載される値の中間にある値および範囲もまた本発明の一部であることが意図されることにも、注意が払われるべきである。
【0135】
以下の説明においては、本発明の完全な理解を提供することを目的として、ある特定の数値、材料、および構成が説明のために記載されている。しかしながら、それら特定の細目を用いずとも本発明が実施され得ることは、当業者には明らかであろう。いくつかの例においては、本発明を不明瞭にしないために、周知の特色が省略または簡略化されている場合がある。さらに、本明細書における、たとえば「1つの態様(one embodiment)」または「1つの態様(an embodiment)」などの表現への言及は、該態様に関して記載される、ある特定の特色、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。本明細書においてはさまざまな場所で、たとえば「1つの態様」などの表現が現れるが、該表現は必ずしも全てが同じ態様を指しているわけではない。
【0136】
定義
別途指定されない限り、以下の用語のそれぞれは、本セクションに記載の意味を有する。
【0137】
不定冠詞である「1つの(a)」および「1つの(an)」とは、少なくとも1つの、それに続く名詞を指し、かつ、「少なくとも1つの」および「1つまたは複数」との用語と互換性をもって使用される。
【0138】
接続詞である「または」および「および/または」は、非排他的選言として、互換性をもって使用される。
【0139】
「肝細胞」との用語は、本明細書において使用される場合、肝実質細胞を指す。肝細胞は、肝臓の細胞質の量の大部分を構成しており、かつ以下に関与している:タンパク質の合成および蓄積;糖質の代謝;コレステロール、胆汁酸塩、およびリン脂質の合成;ならびに外因性物質および内因性物質の解毒、改変、および排泄。肝細胞には、成熟肝細胞の特徴の全てではないがいくつかを示す、未成熟肝細胞が含まれるとともに、成熟しておりかつ完全に機能的な肝細胞であって、形態によって、マーカー発現によって、ならびにインビトロおよびインビボでの機能アッセイによって決定されるような肝細胞の全特徴を有する肝細胞も含まれる。
【0140】
「初代肝細胞」との用語は、本明細書において使用される場合、生体組織、たとえば生体肝組織などから直接採取された肝細胞のことである。いくつかの態様において、初代肝細胞の機能性は、たとえば、アルブミン産生、尿素生成、およびさまざまな代謝酵素活性などによって示され得、かつこれは、成熟肝細胞の特徴を有し得る。いくつかの態様において、初代肝細胞は初代ヒト肝細胞(「PHH」)である。
【0141】
「未成熟肝細胞」との用語は、本明細書において使用される場合、成熟肝細胞の特徴および/または機能性を獲得するためには成熟化を経験する必要がある、肝細胞または肝前駆細胞を指す。いくつかの態様において、未成熟肝細胞とは、成熟肝細胞の特徴の全てではないがいくつかを示す、肝細胞様細胞である。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、以下のうちの1種または複数種を、検出可能なレベルで発現していない:アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、およびUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、検出可能なレベルのαフェトプロテイン(AFP)を発現する。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、成熟肝細胞または初代肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)の分泌減少、AFPの分泌増加、および/またはCYP1A2の活性減少を示す。いくつかの態様において、未成熟肝細胞には、肝幹細胞および/または肝前駆細胞が含まれる。
【0142】
「肝前駆体」、「肝前駆細胞」、「肝芽細胞(hepatoblast)」、または「肝芽細胞(hepatoblast cell)」との用語は、本明細書において使用される場合、肝細胞または胆管細胞へと分化する能力を有する細胞を指す。いくつかの態様において、肝前駆細胞は、少なくとも1種の肝関連マーカーを発現することによって定義され、該マーカーはたとえば、Hex、HNF4、αフェトプロテイン(AFP)、サイトケラチン19(CK18)、サイトケラチン19(CK19)、肝細胞核内因子6(HNF6)、およびアルブミン(ALB)などである。いくつかの態様において、肝前駆細胞は、幹細胞遺伝子、たとえば、Nanog、Oct4、およびckitなどの、発現レベルの減少を有する。
【0143】
「肝幹細胞」との用語は、本明細書において使用される場合、インビボまたはインビトロで、自己複製することが可能であり、かつ肝細胞および胆管細胞へと分化することが可能である細胞を指す。1つの態様において、肝幹細胞は、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役型受容体5(LGR5)、および/または上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現する。
【0144】
「成熟肝細胞」とは、本明細書において使用される場合、(i) 未成熟肝細胞の遺伝子発現プロファイルよりも、初代肝細胞もしくは公知の成熟肝細胞のものにより類似する遺伝子発現プロファイルを含み、かつ/または(ii) 成熟肝細胞の1種もしくは複数種の特徴を示す、肝細胞を指す。成熟肝細胞を区別するのに有用な細胞マーカーの非限定的な例には、以下が含まれる:アルブミン、アシアロ糖タンパク質受容体、α1-アンチトリプシン、α-フェトプロテイン、apoE、アルギナーゼI、apoAI、apoAII、apoB、apoCIII、apoCII、アルドラーゼB、アルコールデヒドロゲナーゼ1、カタラーゼ、CYP3A4、グルコキナーゼ、グルコース-6-ホスファターゼ、インスリン増殖因子1および2、IGF-1受容体、インスリン受容体、レプチン、肝特異的有機アニオントランスポーター(LST-1)、L型脂肪酸結合タンパク質、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、トランスフェリン、レチノール結合タンパク質、エリスロポエチン(EPO、アルブミン、α1-アンチトリプシン、アシアロ糖タンパク質受容体、サイトケラチン8(CK8)、サイトケラチン18(CK18)、CYP3A4、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(FAH)、グルコース-6-リン酸、チロシンアミノトランスフェラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、ならびにトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ。
【0145】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、および/またはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)の発現増加を示す。いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、αフェトプロテイン(AFP)の発現減少を示す。
【0146】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)の分泌増加、AFPの分泌減少、および/またはCYP1A2の活性増加を示す。
【0147】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞を含む細胞集団と比較して、ALB、CPS1、G6P、TDO、CYP2C9、CYP2D6、CYP7A1、CYP3A7、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、NAT2、TAT、ASGPR-1、およびUGT1A1からなる群より選択される少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、またはそれより多い遺伝子またはタンパク質の発現増加を含む。
【0148】
さらなる別の態様において、成熟肝細胞は、肝細胞の成熟化を示す包括的遺伝子発現プロファイル(global gene expression profile)を示す。包括的遺伝子発現プロファイルは、初代肝細胞または公知の成熟肝細胞についての該プロファイルと比較されてよく、かつ、当技術分野において公知の任意の方法によって、たとえばトランスクリプトーム解析またはマイクロアレイ解析などによって、入手されてよい。
【0149】
1つの態様において、成熟肝細胞の1種または複数種の特徴には以下が含まれるが、これらに限定されない:上皮性の形態、極性化、倍数体化、遺伝子発現、CYP活性、トランスフェラーゼ活性、トランスポーター活性、胆汁酸合成、グリコーゲン蓄積、血清タンパク質合成、コレステロール代謝、脂質の取り込み、尿素代謝、凝固因子、生着および再増殖、肝機能の回復、ならびに腫瘍形成性。たとえば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるChenら Gastroenterology 2018;154:1258-1272を参照されたい。
【0150】
「発現増加」との用語は、本明細書において使用される場合、本明細書に開示される転写因子をコードする核酸、たとえばRNAもしくはDNAなどのレベルおよび/もしくは活性が、ならびに/または、本明細書に開示される転写因子のレベルおよび/もしくは活性が、該転写因子についての内因性の核酸レベルおよび/またはタンパク質レベルと比較して、増加することを指す。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、細胞(たとえば、未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞)を、少なくとも1種の転写因子と接触させることを含む。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子をコードするウイルスベクターを用いて、細胞(たとえば、未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞)に形質導入することを含む。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子をコードする発現ベクターを用いて、細胞(たとえば、未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞)にトランスフェクションすることを含む。
【0151】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現増加は、細胞(たとえば、未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞)における該少なくとも1種の転写因子の内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現増加は、細胞(たとえば、未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞)における該少なくとも1種の転写因子の内因性の発現レベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、または1000%の増加分を含む。
【0152】
「内因性」との用語は、本明細書において使用される場合、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、遺伝子、ペプチド、またはポリペプチドの、細胞内でのその天然の位置における、または細胞のゲノム内でのその天然の位置における、天然の形態を指す。
【0153】
「成熟化」との用語は、本明細書において使用される場合、細胞、たとえば未成熟肝細胞などが、より特定化されている状態および/またはより機能的である状態になるのにプロセスを指し、これはたとえば、インビボでのその機能的状態および/もしくは表現型上の状態に類似しているか、または既知の成熟肝細胞または初代肝細胞の機能的状態および/もしくは表現型上の状態に類似している状態になるのに、必要とされるプロセスである。1つの態様において、それによって未成熟肝細胞が成熟肝細胞になるプロセスが、成熟化と称される。
【0154】
本明細書において使用される場合、「多能性幹細胞」、「PS細胞」、または「PSC」との用語には、該多能性幹細胞を生じさせた方法にかかわらず、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、および胚由来多能性幹細胞が含まれる。多能性幹細胞は、以下のとおりである幹細胞として、機能的に定義される:(a) 免疫不全(SCID)マウスに移植された際に、テラトーマを誘導することが可能であり;(b) 3種類全ての胚葉の細胞型に分化することが可能(たとえば、外胚葉、中胚葉、および内胚葉の細胞型に分化することが可能)であり;(c) 胚性幹細胞のマーカーの1種または複数種を発現(たとえば、OCT4、アルカリホスファターゼ、SSEA-3表面抗原、SSEA-4表面抗原、NANOG、TRA-1-60、TRA-1-81、SOX2、REX1等を発現)しており;かつd) 自己複製することが可能である。「多能性」との用語は、身体または体細胞(すなわち胚本体)の全ての細胞系譜を形成する、細胞の能力を指す。たとえば、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞は、3種の胚葉:外胚葉、中胚葉、および内胚葉のそれぞれに由来する細胞を形成することが可能であるタイプの、多能性幹細胞である。多能性とは、発生上の能力の連続体であって、これは、完全な生物を生じさせることができない、不完全なまたは部分的な多能性細胞と、完全な生物を生じさせることができる、より原始的でより多能性の細胞(たとえば胚性幹細胞)との間に広がっている。例示的な多能性幹細胞は、たとえば、当技術分野において公知の方法を用いるなどして、作製することが可能である。例示的な多能性幹細胞には以下が含まれるが、これらに限定されない:胚盤胞期の胚の内部細胞塊に由来する胚性幹細胞;卵割期または桑実胚期の胚の、1つまたは複数の割球に由来する(その際任意で、胚の残りの部分は破壊されない)胚性幹細胞;体細胞を多能性状態へとリプログラミングすることによって作製された人工多能性幹細胞;ならびに胚性生殖(EG)細胞から作製された多能性細胞(たとえば、FGF-2、LIF、およびSCFの存在下で培養することによる)。そのような胚性幹細胞は、受精によって、または無性的な手段によって生じた胚材料から作製することができ、ここで無性的な手段には、体細胞核移植(SCNT)、単為生殖、および雄性生殖が含まれる。
【0155】
1つの態様において、多能性幹細胞は、たとえば、寿命や、能力や、ホーミングを増加させるために、免疫応答を予防するかもしくは減少させるために、またはそのような多能性細胞から入手される細胞(たとえば肝細胞)において望ましい因子を送達するために、遺伝子操作されてよく、あるいはそのように改変されてもよい。たとえば、多能性幹細胞、およびしたがって、それからもたらされる分化した細胞は、β2ミクログロブリン、HLA-A、HLA-B、HLA-C、TAP1、TAP2、タパシン、CTIIA、RFX5、TRAC、および/またはTRABの遺伝子の発現を欠如させるように、またはそれらの発現減少を有するように、操作されてよく、あるいはそのように改変されてもよい。それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2012145384号および国際公開公報第2013158292号に記載されるように、いくつかの態様において、細胞、これはたとえば、多能性幹細胞、およびそれからもたらされる分化した細胞、たとえば肝細胞などであるが、これらの細胞は、遺伝子操作による、β2ミクログロブリン(B2M)遺伝子の妨害を含む。いくつかの態様において、細胞は、単鎖融合ヒト白血球抗原(HLA)クラスIタンパク質をコードすることが可能であるポリヌクレオチドをさらに含み、ここで該タンパク質は、HLA-1α鎖の少なくとも一部と、直接かまたはリンカー配列を介してのいずれかで共有結合している、B2Mタンパク質の少なくとも一部を含む。いくつかの態様において、HLA-1α鎖は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、およびHLA-Gより選択される。いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作による、ヒト白血球抗原(HLA)クラスII関連遺伝子の妨害を含む。いくつかの態様において、HLAクラスII関連遺伝子は、以下から選択される:調節因子X関連アンキリン含有タンパク質(RFXANK)、調節因子5(RFX5)、調節因子X関連タンパク質(RFXAP)、クラスIIトランス活性化因子(CIITA)、HLA-DPA(α鎖)、HLA-DPB(β鎖)、HLA-DQA、HLA-DQB、HLA-DRA、HLA-DRB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DOA、およびHLA-DOB。いくつかの態様において、細胞は、単鎖融合HLAクラスIIタンパク質かまたはHLAクラスIIタンパク質をコードする、1種または複数種のポリヌクレオチドを含む。
【0156】
多能性幹細胞、およびそれからもたらされる分化した細胞は、ある遺伝子の発現が増加するように操作されてよく、あるいはそのように改変されてもよい。1つの態様において、多能性幹細胞は、本発明の転写因子の1種または複数種を発現するように、または該転写因子の1種または複数種の発現が増加するように、操作されてよい。1種または複数種の遺伝子(またはタンパク質)の発現を変化させるように細胞を操作するための、さまざまな技術が存在しており、該技術には以下が含まれる:ゲノムを操作するための、たとえばAAVベクターなどといったウイルスベクターの使用、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の使用、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用、およびCRISPR/Casベースの方法の使用;ならびに、たとえばアンチセンスおよびRNA干渉(これらは、安定的に組み込まれるベクターおよびエピソーマルベクターを用いて達成することが可能である)などといった転写阻害物質および翻訳阻害物質の使用。
【0157】
「胚」または「胚性」との用語は、母親宿主の子宮膜に着床していない、発生中の細胞塊を意味する。「胚細胞」とは、胚から単離されたか、または胚に含まれる細胞である。この用語にはまた、早ければ2細胞期に入手された割球、または採取後に凝集した割球も含まれる。
【0158】
「胚由来細胞」(EDC)との用語は、本明細書において使用される場合、以下を幅広く指す:内部細胞塊、胚盾、もしくはエピブラストの細胞を含めた、桑実胚由来細胞や胚盤胞由来細胞;または、原始内胚葉、原始外胚葉、および原始中胚葉、ならびにそれらから誘導された細胞を含めた、初期胚の他の多能性幹細胞。「EDC」にはまた、発生のさまざまなステージからの凝集した単一の割球または胚由来の、割球および細胞塊が含まれるが、細胞株として継代培養されたヒト胚性幹細胞は除外される。
【0159】
「胚性幹細胞」、「ES細胞」、または「ESC」との用語は、本明細書において使用される場合、胚盤胞または桑実胚の内部細胞塊から単離された細胞、および細胞株として連続的に継代培養されている細胞を、幅広く指す。該用語にはまた、胚の1つまたは複数の割球から、好ましくは胚の残りの部分を破壊せずに、単離された細胞が含まれる(たとえば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Chungら Cell Stem Cell. 2008 Feb 7;2(2): 1 13-7;米国特許出願公開第20060206953号;米国特許出願公開第2008/0057041号を参照されたい)。ES細胞は、精子もしくはDNAを用いた卵子の受精や、核移植や、単為生殖に由来するものであってよく、またはHLA領域においてホモ接合性を有するES細胞を作製する任意の手段に由来するものであってもよい。ES細胞はまた、以下によって作製された、接合子、割球、または胚盤胞期の哺乳動物胚に由来する細胞をも指すことがある:精子および卵子の融合、核移植、単為生殖、または、細胞を作製する目的での、クロマチンのリプログラミング、およびそれに続く、リプログラムされたクロマチンの細胞膜への組み込み。1つの態様において、胚性幹細胞は、ヒト胚性幹細胞(または「hES細胞」)であってよい。1つの態様において、ヒト胚性幹細胞は、受精から14日超経過した胚に由来するものではない。別の態様において、ヒト胚性幹細胞は、インビボで発生した胚に由来するものではない。別の態様において、ヒト胚性幹細胞は、インビトロ受精によって作製された着床前胚に由来する。
【0160】
「人工多能性幹細胞」または「iPS細胞」とは、本明細書において使用される場合、概して、体細胞をより低分化の状態へとリプログラミングすることによって入手された多能性幹細胞を指す。iPS細胞は、体細胞において、因子(「リプログラミング因子」)の組み合わせを発現させることによって、または該組み合わせの発現を誘導することによって、作製され得、該因子はたとえば、OCT4(OCT 3/4と称されることもある)、SOX2、MYC(たとえば、c-MYCまたは任意のMYCバリアント)、NANOG、LIN28、およびKLF4などである。1つの態様において、リプログラミング因子は、OCT4、SOX2、c-MYC、およびKLF4を含む。別の態様において、リプログラミング因子は、OCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28を含む。ある態様において、少なくとも2種のリプログラミング因子が体細胞において発現して、該体細胞が成功裏にリプログラムされる。他の態様において、少なくとも3種のリプログラミング因子が体細胞において発現して、該体細胞が成功裏にリプログラムされる。他の態様において、少なくとも4種のリプログラミング因子が体細胞において発現して、該体細胞が成功裏にリプログラムされる。別の態様において、少なくとも5種のリプログラミング因子が体細胞において発現して、該体細胞が成功裏にリプログラムされる。さらなる別の態様において、少なくとも6種のリプログラミング因子が体細胞において発現し、これはたとえば、OCT4、SOX2、c-MYC、NANOG、LIN28、およびKLF4である。他の態様において、さらなるリプログラミング因子が同定され、そしてそれが単独で、または1種もしくは複数種の公知のリプログラミング因子と組み合わせて使用されて、体細胞が多能性幹細胞へとリプログラムされる。
【0161】
iPS細胞は、胎児の、出生後の、新生児の、幼体の、または成体の、体細胞を用いて作製されてよい。体細胞には以下が含まれ得るが、これらに限定されない:線維芽細胞、角化細胞、脂肪細胞、筋細胞、器官および組織の細胞、ならびに、造血細胞(たとえば造血幹細胞)が含まれるがこれらに限定されない、さまざまな血液細胞。1つの態様において、体細胞は線維芽細胞、たとえば、皮膚線維芽細胞、滑膜線維芽細胞、もしくは肺線維芽細胞などであり、または体細胞は、線維芽細胞でない体細胞である。
【0162】
iPS細胞は、細胞バンクから入手されてよい。あるいはiPS細胞は、当技術分野において公知の方法によって、新たに作製されてよい。iPS細胞は、特定の患者由来の材料を用いて特異的に作製されてよく、または、組織に適合する細胞を作製するという目的にかなうドナー由来の材料を用いて特異的に作製されてもよい。1つの態様において、iPS細胞は、免疫原性を実質的に有さない、ユニバーサルドナーの細胞であってよい。
【0163】
人工多能性幹細胞は、体細胞において、1種または複数種のリプログラミング因子を発現させることによって、または該リプログラミング因子の発現を誘導することによって、作製され得る。リプログラミング因子は、ウイルスベクター、たとえばレトロウイルスベクターなどを用いる感染によって、体細胞において発現させてよく、またはリプログラミング因子は、他の遺伝子編集技術、たとえば、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)などによって、体細胞において発現させてもよい。また、リプログラミング因子は、非組み込み型ベクター、たとえばエピソーマルプラスミドなどを用いて、もしくはRNA、たとえば合成mRNAなどを用いて、体細胞において発現させてよく、またはリプログラミング因子は、RNAウイルス、たとえばセンダイウイルスなどを介して、体細胞において発現させてもよい。非組み込み型ベクターを用いてリプログラミング因子を発現させる場合、該因子は、体細胞における該ベクターを用いたエレクトロポレーションか、トランスフェクションか、または形質転換を使用して、細胞において発現させてよい。たとえばマウス細胞においては、組み込み型ウイルスベクターを用いて4種の因子(OCT3/4、SOX2、c-MYC、およびKLF4)を発現させると、体細胞をリプログラムすることができる。ヒト細胞においては、組み込み型ウイルスベクターを用いて4種の因子(OCT3/4、SOX2、NANOG、およびLIN28)を発現させると、体細胞をリプログラムすることができる。
【0164】
リプログラミング因子の発現は、リプログラミング因子の発現を誘導する少なくとも1種の作用物質、たとえば有機性の低分子作用物質などと体細胞を接触させることによって、誘導されてよい。
【0165】
体細胞はまた、コンビナトリアルアプローチを用いてリプログラムされてもよく、該アプローチにおいては、リプログラミング因子を(たとえば、ウイルスベクター、プラスミド等を用いて)発現させ、そして該リプログラミング因子の発現が(たとえば有機性の低分子を用いて)誘導される。
【0166】
リプログラミング因子が細胞において発現するかまたは誘導されたら、細胞は培養されてよい。ESの特徴を有する細胞は、培養皿において徐々に出現してくる。細胞は、たとえば、ES細胞の形態に基づいて、または選択可能であるかもしくは検出可能であるマーカーの発現に基づいて、選択されてよく、かつ継代培養されてよい。細胞は、ES細胞に類似した細胞の培養物を作製するために、培養されてよい。
【0167】
iPS細胞の多能性を確認するために、細胞は、多能性に関する1種または複数種のアッセイにおいて試験されてよい。たとえば、細胞は、ES細胞マーカーの発現に関して試験されてよく;細胞は、SCIDマウスに移植された際にテラトーマを生じさせる能力に関して評価されてよく;細胞は、3種類全ての胚葉の細胞型を産生するように分化する能力に関して評価されてよい。
【0168】
iPS細胞は、任意の生物種由来であってよい。上述のiPS細胞は、マウス細胞およびヒト細胞を用いて成功裏に作製されている。さらに、胚の組織、胎児の組織、新生児の組織、および成体の組織を用いても、iPS細胞は成功裏に作製されている。そのため、任意の生物種由来のドナー細胞を用いて、容易にiPS細胞を作製することが可能である。したがって、任意の生物種からiPS細胞が作製されてよく、該生物種には以下が含まれるが、これらに限定されない:ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(マウス、ラット)、有蹄類(ウシ、ヒツジ等)、イヌ(イエイヌおよび野生のイヌ類)、ネコ(イエネコ、および野生のネコ類、たとえば、ライオン、トラ、チーターなど)、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ゾウ、パンダ(ジャイアントパンダが含まれる)、ブタ、アライグマ、ウマ、シマウマ、海洋哺乳動物(イルカ、クジラ等)など。
【0169】
「接触させる」との用語(たとえば、細胞、たとえば未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞)を、本発明による転写因子と接触させる)には、転写因子を細胞へと導入する任意の様式、および/または転写因子と細胞をともにインビトロでインキュベートする(たとえば、培養下で転写因子を細胞に添加する)任意の様式が含まれることが意図される。いくつかの態様において、「接触させる」との用語に、本明細書に開示される転写因子への細胞のインビボでの曝露であって、対象において天然に生じる可能性のある曝露が含まれることは、意図されない。本明細書に開示される、細胞を転写因子と接触させる段階は、任意の適切な様式で実施することが可能である。細胞は、接着培養または浮遊培養において処理されてよく、かつ転写因子は、実質的に同時に(たとえば、カクテルとしてまとめて)添加することが可能であり、または転写因子は、連続的に(たとえば、第1の転写因子を添加して1時間以内に、1日以内に、もしくはより長く経過してから)添加することも可能である。本明細書に開示される転写因子と接触させた細胞はまた、該細胞を安定化するために、または該細胞をさらに分化させるために、同時かまたは続けて別の作用物質と接触させることも可能であり、該別の作用物質は、たとえば、増殖因子か、または分化をもたらす他の作用物質もしくは環境などであることが理解される。1つの態様において、細胞を転写因子と接触させることには、転写因子をコードする核酸を含むベクターを用いて細胞に形質導入すること、または転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて細胞にトランスフェクションすることが含まれ、かつ、細胞を転写因子と接触させることには、たとえば実施例にさらに記載されるように、たとえば多能性細胞または分化した細胞を培養するために、当技術分野において公知の条件下で細胞を培養することが含まれてよい。
【0170】
本明細書において使用される場合、「分化」との用語は、それによって、特定化されていない(「コミットされていない」)細胞か、または特定化があまり進んでいない細胞が、特定化された細胞の特色、たとえば肝細胞などの特色を獲得する、プロセスである。分化した細胞とは、細胞系譜内でより特定化された位置にある細胞である。たとえば、hES細胞を、より分化したさまざまな細胞型へと分化させることが可能であり、該細胞型には肝細胞が含まれる。ある態様において、細胞の分化はインビトロで実施され、かつこれは、インビボでの分化を除外するものである。
【0171】
本明細書において使用される場合、「培養された」または「培養する」との用語は、何よりもまず、培養される細胞の生命を持続させるのに必要な栄養分を含み、任意の特異的な添加物質をも含む培地に、細胞を置くことを指す。細胞がそこで維持される培地が、特異的な物質を含んでいる場合、そのような細胞は、そのような特異的な物質の「存在下」で培養されている。培養は、細胞が培地に曝露された状態を維持することが可能である、任意の容器または装置において行うことが可能であり、該容器または装置には以下が含まれるが、これらに限定されない:ペトリ皿、培養皿、採血バッグ、ローラーボトル、フラスコ、試験管、マイクロタイターウェル、中空糸カートリッジ、または当技術分野において公知の任意の他の装置。
【0172】
本明細書において使用される場合、「継代培養する(subculturing)」または「継代培養する(passaging)」との用語は、一部もしくは全ての細胞を、以前の培養物から新鮮な増殖培地へと移し、かつ/または細胞を新しい培養皿にプレーティングし、そして、さらに培養することを指す。継代培養は、培養物において、たとえば、寿命を延伸するために、所望の細胞集団を富化するために、および/または細胞数を増やすために、行われてよい。たとえば、該用語には、細胞の増殖を可能にするより低い細胞密度において、一部または全ての細胞を、新しい培養容器へと移すこと、該容器で培養すること、または該容器にプレーティングすることが含まれる。
【0173】
本明細書において使用される場合、「投与」、「投与する」、およびそれらの異形は、組成物または作用物質を対象に導入することを指し、かつ該用語には、組成物または作用物質の、同時または連続的な導入が含まれる。「投与」とは、たとえば、治療上の、薬物動態学上の、診断上の、研究上の、プラセボとしての、および実験上の、方法を指し得る。「投与」にはまた、インビトロでの処置およびエクスビボでの処置も包含される。投与には、自己投与および他者による投与が含まれる。投与は、任意の適切な経路によって実施することが可能である。適切な投与経路は、組成物または作用物質が、その意図される機能を発揮することを可能にするものである。たとえば、適切な経路が静脈内経路である場合、組成物または作用物質を対象の静脈内に導入することによって、組成物は投与される。
【0174】
本明細書において使用される場合、「対象」、「個体」、「宿主」、および「患者」との用語は、本明細書において互換性をもって使用され、かつ該用語は、診断、処置、または治療が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療および獣医学的用途の両方に適用可能である。いくつかの態様において、対象は哺乳動物であり、かつある特定の態様において、対象はヒトである。
【0175】
本明細書において使用される場合、活性な作用物質(たとえば肝細胞)の「治療的量」、「治療的有効量」、「有効量」、または「薬学的有効量」との用語は、処置からの意図される恩恵を提供するのに十分である量を指すために、互換性をもって使用される。しかしながら、投与レベルはさまざまな因子に基づくものであり、該因子には以下が含まれる:損傷のタイプ;患者の年齢、体重、性別、医学的状態;病態の重症度;投与経路;予測される細胞生着;長期生存率;および/または利用される特定の活性な作用物質。したがって、投与レジメンは大幅に変化し得るが、医師はこれを、通常の作業として標準的な方法を用いて決定することが可能である。加えて、「治療的量」、「治療的有効量」、および「薬学的有効量」との用語には、記載される本発明の組成物の、予防的(prophylactic)量または予防的(preventative)量が含まれる。記載される本発明の予防的(prophylactic)用途または予防的(preventative)用途において、薬学的組成物または医薬は、疾患、異常、または病態について、それらのリスクを消失もしくは減少させるのに十分な量か、それらの重症度を軽減させるのに十分な量か、またはそれらの発症を遅延させるのに十分な量で、該疾患、異常、または病態に対して感受性であるかあるいはそれらのリスクを有する患者へと投与され、ここで該疾患、異常、または病態には、該疾患、異常、もしくは病態の、生化学的症状、組織学的症状、および/または行動学的症状;それらの合併症;ならびに該疾患、異常、もしくは病態の進行の過程において現れる、病理学上の中間的な表現型が含まれる。一般的には、何らかの医学的判断にしたがった最大安全量である、最大用量が使用されることが好ましい。「用量」および「投与量」との用語は、本明細書において互換性をもって使用される。
【0176】
本明細書において使用される場合、「治療効果」との用語は、その結果が望ましくかつ有益であると判断される、処置の帰結を指す。治療効果には、疾患症状の、直接的または間接的な、停止、低減、または消失が含まれ得る。治療効果にはまた、疾患症状の進行の、直接的または間接的な、停止、低減、または消失も含まれ得る。
【0177】
本明細書に記載される治療剤(たとえば肝細胞)に関し、治療的有効量は、最初に予備的なインビトロ試験および/または動物モデルから決定されてよい。治療的有効用量はまた、ヒトのデータから決定されてもよい。適用される用量は、投与される化合物の相対的なバイオアベイラビリティおよび有効性に基づいて調整されてよい。上述の方法および他の周知の方法に基づく、最大の効力を達成するための用量の調整は、当業者の能力の範囲内である。
【0178】
薬物動態学の原理は、許容できない有害作用を最小限に抑えつつ所望の程度の治療的効力を得る目的で投与レジメンを改変するための、基礎を提供するものである。作用物質の血漿濃度が測定可能であってかつ治療濃度域に関連し得る状況においては、投与量を変化させるための追加の指標が入手可能である。
【0179】
本明細書において使用される場合、「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、および/または「処置(treatment)」との用語には、病態の進行を阻止すること、実質的に阻害すること、減速すること、もしくは逆転させること、病態の臨床的症状を実質的に改善すること、または、病態(たとえば、病理学上の病態)の臨床的症状の出現を実質的に防止すること、有益な臨床結果または望ましい臨床結果を得ることが含まれる。処置する、とは、以下のうちの1つまたは複数を達成することをさらに指す:(a) 異常の重症度を低減させること;(b) 処置している異常に特徴的な症状の進行を、制限すること;(c) 処置している異常に特徴的な症状の悪化を、制限すること;(d) 以前に異常を有していた患者において、該異常の再発を制限すること;および(e) 以前には異常について無症状であった患者において、症状の再発を制限すること。
【0180】
有益な臨床結果または望ましい臨床結果、たとえば薬理学的効果および/または生理学的効果などには、以下が含まれるが、これらに限定されない:疾患、異常、または病態が生じやすい可能性があるが、該疾患の症状をまだ経験しておらず示してもいない対象における、該疾患、異常、または病態の発生の予防(予防的処置);疾患、異常、または病態の、症状の緩和;疾患、異常、または病態の、程度の軽減;疾患、異常、または病態の、安定化(すなわち悪化させない);疾患、異常、または病態の、拡大の予防;疾患、異常、または病態の、進行の遅延または減速;疾患、異常、または病態の、改善または一次的緩和;およびそれらの組み合わせ、ならびに、処置を受けなかった場合に予想される生存期間と比較しての、生存期間の延長。
【0181】
I. 本発明の方法
本発明はある方法の発見に基づいており、該方法は、肝細胞の成熟化を増進するために、NFICおよびNFIXからなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階を含み、かつそれにより、成熟しかつ機能的な肝細胞の作製を可能にするものである。本発明の方法は、効率的かつ効果的であり、かつ、たとえば多能性幹細胞からの、成熟肝細胞の作製をもたらすものであり、該成熟肝細胞は、本明細書に開示されるさまざまな用途に、たとえば肝疾患の処置などに使用可能である。
【0182】
いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0183】
いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0184】
いくつかの態様において、方法は、デキサメタゾン、8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において、未成熟肝細胞を培養する段階をさらに含む。
【0185】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。
【0186】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において誘導することを含む。
【0187】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、多能性幹細胞、たとえば胚性幹細胞または人工多能性幹細胞などに由来する。多能性細胞を未成熟肝細胞へと分化させるための任意の方法が使用されてよい。たとえば、未成熟肝細胞は、本明細書に記載されるように多能性幹細胞を分化させることによって、入手されてよい。
【0188】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含むように操作されてよい。いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸に機能的に連結されている、プロモーター、たとえば内因性プロモーター、人工プロモーター、または誘導性プロモーターなどを含む。
【0189】
肝細胞を作製するための細胞
本発明のある態様において、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させることによって成熟肝細胞を作製するための、方法および組成物が開示される。いくつかの態様において、成熟肝細胞および未成熟肝細胞は多能性幹細胞に由来し、該多能性幹細胞は、たとえば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、胎児幹細胞、および/または成体幹細胞などである。さらなる態様において、成熟肝細胞および未成熟肝細胞は体細胞に由来してよい。
【0190】
A. 幹細胞
発生中の胚において、幹細胞は、特定化された胚組織の全てへと分化することが可能である。成体の生物において、幹細胞および前駆細胞は、特定化された細胞を補充するという、身体の修復システムとして働くが、これら細胞はまた、再生性の器官、たとえば、血液、皮膚、または腸組織などの、正常なターンオーバーも維持している。
【0191】
多能性幹細胞、たとえばヒト胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)などは、インビトロで長期間増殖させることが可能である一方で、未成熟肝細胞を含め、身体の全ての細胞型へと分化する潜在能力を保持している。したがってこれらの細胞は、医薬品開発および移植療法の両方に関して、患者に特異的である機能的な肝細胞の、無制限の供給源を提供する潜在能力を有し得る。インビトロにおける多能性幹細胞の肝細胞への分化は、分化のさまざまなステージにおいてさまざまな増殖因子を添加することを伴ってよく、かつこれは、約15~20日間の分化を必要とし得る(たとえば、図5Aおよび6Aを参照されたい)。インビトロで多能性幹細胞を肝細胞へと分化させる際の課題の1つは、該肝細胞が、機能的には、胎児肝細胞、たとえば未成熟肝細胞などに、より類似しているようであること、および、成熟肝細胞、たとえば初代ヒト肝細胞(PHH)などの、完全な機能スペクトルをまだ示していないことである。無制限の増殖能力を有する多能性幹細胞、たとえばヒトESC/iPSCなどは、肝細胞への分化のための出発細胞集団として、体細胞を上回る利点を提供する。
【0192】
多能性幹細胞、たとえば胚性幹(ES)細胞またはiPS細胞などは、開示される本方法の出発材料となり得る。本明細書における態様の任意のものにおいて、多能性幹細胞はヒト多能性幹細胞(hPSC)であってよい。多能性幹細胞(PSC)は、当技術分野において公知の任意の様式で培養されてよく、これはたとえば、フィーダー細胞の存在下または非存在下での培養などである。加えて、任意の方法を用いて作製されたPSCを、肝細胞を作製するための出発材料として使用することが可能である。たとえば、hES細胞は、卵子および精子をインビトロ受精させた産物である、胚盤胞期の胚に由来してよい。あるいは、hES細胞は、初期の卵割期の胚から分離された1つまたは複数の割球に由来してよく、その際任意で、胚の残りの部分は破壊されない。さらなる他の態様において、hES細胞は、核移植を用いて作製されてよい。さらなる1つの態様において、iPSCが使用されてよい。出発材料として、以前に凍結保存されたPSCが使用されてよい。別の態様において、凍結保存されたことがないPSCが使用されてよい。
【0193】
本発明の1つの局面において、フィーダー条件下またはフィーダーフリー条件下で、PSCは細胞外マトリックス上にプレーティングされる。1つの態様において、PSCは細胞外マトリックス上で培養され得、該細胞外マトリックスには、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、マトリゲル、CellStart、コラーゲン、またはゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、細胞外マトリックスは、e-カドヘリンを有するかまたは有さないラミニンである。いくつかの態様において、ラミニンは、ラミニン521、ラミニン511、またはiMatrix511を含む群より選択されてよい。いくつかの態様において、フィーダー細胞はヒトフィーダー細胞であり、これはたとえば、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)などである。他の態様において、フィーダー細胞はマウス胚線維芽細胞(MEF)である。
【0194】
ある態様において、PSCを培養する際に使用される培地は、PSCを培養するのに適した任意の培地から選択されてよい。いくつかの態様において、PSCの培養を支援することが可能な任意の培地が使用されてよい。たとえば、当業者は、市販の培地または独自の培地の中から選択してよい。
【0195】
多能性を支援する培地は、当技術分野において公知の、任意のそのような培地であってよい。いくつかの態様において、多能性を支援する培地はNutristem(商標)である。いくつかの態様において、多能性を支援する培地はTeSR(商標)である。いくつかの態様において、多能性を支援する培地はStemFit(商標)である。他の態様において、多能性を支援する培地はKnockout(商標)DMEM(Gibco)であり、これには、Knockout(商標)血清代替物(Gibco)、LIF、bFGF、または任意の他の因子が添加されてよい。これらの例示的な培地のそれぞれは、当技術分野において公知であり、かつ市販されている。さらなる態様において、多能性を支援する培地には、bFGFか、または任意の他の因子が添加されてよい。1つの態様において、bFGFは低濃度(たとえば4 ng/mL)で添加されてよい。別の態様において、bFGFはより高い濃度(たとえば100 ng/mL)で添加されてよく、これは、分化するようにPSCをプライミングし得る。
【0196】
本発明の作製方法において使用されるPSCの濃度は、特異的に限定されるわけではない。たとえば、10 cmの培養皿が使用される場合、培養皿1つにつき1 x 104~1 x 108個の細胞が、好ましくは培養皿1つにつき5 x 104~5 x 106個の細胞が、より好ましくは培養皿1つにつき1 x 105~1 x 107個の細胞が、使用される。
【0197】
いくつかの態様において、PSCは、約1,000~100,000細胞/cm2の細胞密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、PSCは、約5000~100,000細胞/cm2、約5000~50,000細胞/cm2、または約5000~15,000細胞/cm2の細胞密度でプレーティングされる。他の態様において、PSCは、約10,000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。
【0198】
いくつかの態様において、多能性を支援する培地、たとえばStemFit(商標)または他の同様の培地は、細胞を未成熟肝細胞へと分化させるために、分化培地と交換される。いくつかの態様において、多能性を支援する培地から分化培地への培地交換は、PSCの細胞培養の過程のさまざまなタイムポイントにおいて実施されてよく、かつ該交換は、PSCの最初のプレーティング密度に応じて変化し得る。いくつかの態様において、培地の交換は、多能性培地においてPSCを3~14日間培養した後で実施することが可能である。いくつかの態様において、培地の交換は、第3日、第4日、第5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第11日、第12日、第13日、または第14日に実施されてよい。
【0199】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法に有用な幹細胞には以下が含まれるが、これらに限定されない:胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、骨髄由来幹細胞、造血幹細胞、軟骨細胞前駆細胞、表皮幹細胞、消化管幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、膵前駆細胞、毛包幹細胞、内皮前駆細胞、および平滑筋前駆細胞。
【0200】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法のために使用される幹細胞は、臍帯、胎盤、羊水、絨毛膜絨毛、胚盤胞、骨髄、脂肪組織、脳、末梢血、消化管、臍帯血、血管、骨格筋、皮膚、肝臓、および月経血から単離される。
【0201】
さまざまな供給源からヒト幹細胞を単離するための詳細な手順は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる"Current Protocols in Stem Cell Biology" (2007)に記載されている。さまざまな供給源から幹細胞を単離および培養する方法はまた、米国特許第5,486,359号、同第6,991,897号、同第7,015,037号、同第7,422,736号、同第7,410,798号、同第7,410,773号、同第7,399,632号にも記載されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0202】
B. 体細胞
本発明のある局面において、分化転換させる方法、すなわち、ある1種の体細胞型を別の細胞型へと直接的に変換する方法もまた提供され得、これにより、たとえば、他の体細胞から肝細胞を生じさせる。分化転換は、肝細胞へと分化させる転写因子の遺伝子または遺伝子産物を使用して、肝細胞を作製するために体細胞においてそのような遺伝子の発現レベルを増加させることを伴ってよい。
【0203】
しかしながら、ヒト体細胞、特に生体ドナー由来のものは、供給が限定されている可能性がある。肝細胞への分化のための出発細胞の、無制限の供給源を提供する目的で、体細胞は、不死化遺伝子または不死化タンパク質の導入、たとえばhTERTおよび/または他のがん遺伝子などの導入によって不死化されてよい。細胞の不死化は可逆的(たとえば、除去可能な発現カセットを用いる)であってよく、または誘導性(たとえば、誘導性プロモーターを用いる)であってもよい。
【0204】
体細胞は、本発明のある局面において、初代細胞(不死化されていない細胞)、たとえば動物から新鮮単離された細胞などであってよく、または細胞株(不死化された細胞)に由来していてもよい。細胞は、対象から単離された後において細胞培養で維持されてよい。ある態様において、細胞は、本発明の方法において使用される前に、1回または複数回(たとえば、2~5回、5~10回、10~20回、20~50回、50~100回、またはそれより多く)継代培養される。いくつかの態様において、細胞は、本発明の方法において使用される前に、1回以下、2回以下、5回以下、10回以下、20回以下、または50回以下しか継代培養されない。
【0205】
本明細書において使用されるかまたは記載される体細胞は、天然の体細胞であってよく、または操作された体細胞、すなわち遺伝学的に変化させた体細胞であってもよい。本発明の体細胞は、典型的には哺乳動物細胞であり、これはたとえば、ヒト細胞、霊長類細胞、またはマウス細胞などといったものである。これら細胞は周知の方法によって入手されてよく、かつ、生きている体細胞を含む任意の臓器または任意の組織から、たとえば、血液、骨髄、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃、腸、心臓、生殖器、膀胱、腎臓、尿道、および他の泌尿器等から、入手されてよい。
【0206】
本発明において有用な哺乳動物体細胞には以下が含まれるが、これらに限定されない:セルトリ細胞、内皮細胞、顆粒膜上皮細胞(granulosa epithelial cell)、ニューロン、膵島細胞、表皮細胞、上皮細胞、肝細胞、毛包細胞、角化細胞、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(Bリンパ球およびTリンパ球)、赤血球、マクロファージ、単球、単核細胞、心筋細胞、ならびに他の筋細胞等。
【0207】
本明細書に記載される方法は、1種または複数種の体細胞、たとえば体細胞のコロニーまたは集団を、肝細胞へとプログラムするために使用され得る。いくつかの態様において、本発明の細胞集団は、少なくとも90%の細胞が関心対象の表現型または特徴を示す点において、実質的に均一である。いくつかの態様において、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、99.95%の、またはそれより多い細胞が、関心対象の表現型または特徴を示す。本発明のある態様において、体細胞は分裂する能力を有する、すなわち体細胞は分裂終了細胞ではない。
【0208】
体細胞は部分的または完全に分化していてよい。本明細書に記載されるように、部分的に分化した体細胞および完全に分化した体細胞は両方とも、肝細胞を作製するために分化させることが可能である。
【0209】
本発明の方法において使用するための転写因子
成熟肝細胞は、本明細書に記載される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させることによって作製することが可能である。肝細胞への分化、肝細胞の成熟化、または肝細胞の機能を増進するのに重要な任意の転写因子が使用されてよく、これはたとえば、表1に記載される転写因子から選択される、少なくとも1種の転写因子である。表1に列挙される転写因子のアイソフォームおよびバリアントの全てが、本発明に包含され得る。本発明の転写因子のうちの、いくつかのアイソフォームまたはバリアントのアクセッション番号の非限定的な例が、表1に記載される。
【0210】
(表1)成熟肝細胞を作製するための転写因子
【0211】
いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子は、NFIX、NFIC、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される。
【0212】
いくつかの態様において、転写因子は核内因子I X(NFIX)である。本明細書において使用される場合、「NFIX」とは、周知のその遺伝子およびタンパク質を指す。NFIXは、核内因子I X、核内因子1 X型、NF1-X、またはNF-I/Xとしても知られている。NFIX遺伝子によってコードされるタンパク質は、ウイルスプロモーターおよび細胞プロモーターにおいて、ならびにアデノウイルス2型の複製起点において、パリンドローム配列である
に結合する転写因子である。NFIXタンパク質は、転写および複製を単独で活性化することが可能である。ヒトNFIXのmRNA転写物の配列は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のRefSeqアクセッション番号NM_002501.4(SEQ ID NO: 1)に見いだすことが可能である。NFIXのmRNA配列のさらなる例は、一般公開されているデータベース、たとえば、GenBank、UniProt、およびOMIMなどを用いて、容易に利用可能である。
【0213】
NFIXの例示的な配列には、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、NFIXは、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0214】
いくつかの態様において、本発明の方法は、NFIXの発現を、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の分増加させることを指向する。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも20倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも50倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも100倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも200倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも500倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10,000倍の増加分を含む。
【0215】
いくつかの態様において、転写因子は核内因子I C(NFIC)である。本明細書において使用される場合、「NFIC」とは、周知のその遺伝子およびタンパク質を指す。NFICとの用語には、選択的スプライスバリアントまたは転写バリアント(たとえば、NFIC転写バリアント1~5)、およびタンパク質アイソフォームが含まれる。NFICは、核内因子I C、CTF、核内因子1 C型、NF1-C、またはNF-I/Cとしても知られている。NFIC遺伝子によってコードされるタンパク質は、CTF/NF-Iファミリーに属する。これらは二量体のDNA結合タンパク質であり、かつ、細胞内での転写因子として、およびアデノウイルスのDNA複製のための複製因子として、機能する。NFICタンパク質は、ウイルスプロモーターおよび細胞プロモーターに存在する、ならびにアデノウイルス2型の複製起点に存在する、パリンドローム配列である
を認識し、かつこれに結合する。NFICタンパク質は、転写および複製を単独で活性化することが可能である。NFIC遺伝子は、選択的スプライスバリアントをコードする。いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1である。ヒトNFIC転写バリアント1のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001245002(SEQ ID NO: 2)に見いだすことが可能である。いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント2である。ヒトNFIC転写バリアント2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_205843(SEQ ID NO: 3)に見いだすことが可能である。いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント3である。ヒトNFIC転写バリアント3のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001245004(SEQ ID NO: 4)に見いだすことが可能である。いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント4である。ヒトNFIC転写バリアント4のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001245005(SEQ ID NO: 5)に見いだすことが可能である。いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント5である。ヒトNFIC転写バリアント5のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_005597(SEQ ID NO: 6)に見いだすことが可能である。いくつかの態様において、NIFICは、NFIC転写バリアント1~5の任意の組み合わせである。いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。NFICのmRNA配列のさらなる例は、一般公開されているデータベース、たとえば、GenBank、UniProt、およびOMIMなどを用いて、容易に利用可能である。
【0216】
NFIC転写バリアント1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 2のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIC転写バリアント1は、SEQ ID NO: 2のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。別の態様において、NIFC転写バリアント1は、SEQ ID NO: 2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0217】
NFIC転写バリアント2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIC転写バリアント2は、SEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NFIC転写バリアント2は、SEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0218】
NFIC転写バリアント3の例示的な配列には、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIC転写バリアント3は、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NFIC転写バリアント3は、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0219】
NFIC転写バリアント4の例示的な配列には、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIC転写バリアント4は、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NFIC転写バリアント4は、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0220】
NFIC転写バリアント5の例示的な配列には、SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIC転写バリアント5は、SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NFIC転写バリアント5は、SEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0221】
いくつかの態様において、本発明の方法は、NFICの発現を、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の分増加させることを指向する。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも20倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも50倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも100倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも200倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも500倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、未成熟肝細胞におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10,000倍の増加分を含む。
【0222】
いくつかの態様において、転写因子はRORCである。ヒトRORCのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_005060.3(SEQ ID NO: 7)に見いだすことが可能である。RORCの例示的な配列には、SEQ ID NO: 7のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、RORCは、SEQ ID NO: 7のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、RORCは、SEQ ID NO: 7のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0223】
いくつかの態様において、転写因子はNR0B2である。ヒトNR0B2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_021969.2(SEQ ID NO: 8)に見いだすことが可能である。NR0B2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 8のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NR0B2は、SEQ ID NO: 8のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NR0B2は、SEQ ID NO: 8のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0224】
いくつかの態様において、転写因子はESR1である。ヒトESR1のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001291230.1(SEQ ID NO: 9)に見いだすことが可能である。ESR1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ESR1は、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ESR1は、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0225】
いくつかの態様において、転写因子はTHRSPである。ヒトTHRSPのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_003251.3(SEQ ID NO: 10)に見いだすことが可能である。THRSPの例示的な配列には、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、THRSPは、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、THRSPは、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0226】
いくつかの態様において、転写因子はTBX15である。ヒトTBX15のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_152380(SEQ ID NO: 11)に見いだすことが可能である。TBX15の例示的な配列には、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、TBX15は、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、TBX15は、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0227】
いくつかの態様において、転写因子はHLFである。ヒトHLFのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_002126.4(SEQ ID NO: 12)に見いだすことが可能である。HLFの例示的な配列には、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、HLFは、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、HLFは、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0228】
いくつかの態様において、転写因子はATOH8である。ヒトATOH8のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_032827.7(SEQ ID NO: 13)に見いだすことが可能である。ATOH8の例示的な配列には、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ATOH8は、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ATOH8は、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0229】
いくつかの態様において、転写因子はNR1I2である。ヒトNR1I2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_003889.3(SEQ ID NO: 14)に見いだすことが可能である。NR1I2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 14のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NR1I2は、SEQ ID NO: 14のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NR1I2は、SEQ ID NO: 14のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0230】
いくつかの態様において、転写因子はCUX2である。ヒトCUX2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_015267.3(SEQ ID NO: 15)に見いだすことが可能である。CUX2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 15のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、CUX2は、SEQ ID NO: 15のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、CUX2は、SEQ ID NO: 15のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0231】
いくつかの態様において、転写因子はZNF662である。ヒトZNF662のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001134656.1(SEQ ID NO: 16)に見いだすことが可能である。ZNF662の例示的な配列には、SEQ ID NO: 16のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ZNF662は、SEQ ID NO: 16のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ZNF662は、SEQ ID NO: 16のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0232】
いくつかの態様において、転写因子はTSHZ2である。ヒトTSHZ2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_173485.5(SEQ ID NO: 17)に見いだすことが可能である。TSHZ2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 17のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、TSHZ2は、SEQ ID NO: 17のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、TSHZ2は、SEQ ID NO: 17のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0233】
いくつかの態様において、転写因子はATF5である。ヒトATF5のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001193646.1(SEQ ID NO: 18)に見いだすことが可能である。ATF5の例示的な配列には、SEQ ID NO: 18のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ATF5は、SEQ ID NO: 18のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ATF5は、SEQ ID NO: 18のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0234】
いくつかの態様において、転写因子はNFIAである。ヒトNFIAのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001134673.3(SEQ ID NO: 19)に見いだすことが可能である。NFIAの例示的な配列には、SEQ ID NO: 19のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIAは、SEQ ID NO: 19のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NFIAは、SEQ ID NO: 19のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0235】
いくつかの態様において、転写因子はNFIBである。ヒトNFIBのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_005596.3(SEQ ID NO: 20)に見いだすことが可能である。NFIBの例示的な配列には、SEQ ID NO: 20のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NFIBは、SEQ ID NO: 20のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NFIBは、SEQ ID NO: 20のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0236】
いくつかの態様において、転写因子はNPAS2である。ヒトNPAS2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号XM_005263953.2(SEQ ID NO: 21)に見いだすことが可能である。NPAS2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 21のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NPAS2は、SEQ ID NO: 21のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NPAS2は、SEQ ID NO: 21のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0237】
いくつかの態様において、転写因子はFOSである。ヒトFOSのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_005252.3(SEQ ID NO: 22)に見いだすことが可能である。FOSの例示的な配列には、SEQ ID NO: 22のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、FOSは、SEQ ID NO: 22のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、FOSは、SEQ ID NO: 22のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0238】
いくつかの態様において、転写因子はONECUT2である。ヒトONECUT2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_004852.2(SEQ ID NO: 23)に見いだすことが可能である。ONECUT2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 23のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ONECUT2は、SEQ ID NO: 23のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ONECUT2は、SEQ ID NO: 23のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0239】
いくつかの態様において、転写因子はPROX1である。ヒトPROX1のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001270616.2(PROX1転写バリアント1;SEQ ID NO: 24)、またはNM_002763.5(PROX1転写バリアント2;SEQ ID NO: 39)に見いだすことが可能である。PROX1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 24のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、PROX1は、SEQ ID NO: 24のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、PROX1は、SEQ ID NO: 24のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。PROX1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 39のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、PROX1は、SEQ ID NO: 39のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、PROX1は、SEQ ID NO: 39のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0240】
いくつかの態様において、転写因子はNR1H4である。ヒトNR1H4のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001206979.1(SEQ ID NO: 25)に見いだすことが可能である。NR1H4の例示的な配列には、SEQ ID NO: 25のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NR1H4は、SEQ ID NO: 25のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NR1H4は、SEQ ID NO: 25のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0241】
いくつかの態様において、転写因子はMLXIPLである。ヒトMLXIPLのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_032951.2(SEQ ID NO: 26)に見いだすことが可能である。MLXIPLの例示的な配列には、SEQ ID NO: 26のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、MLXIPLは、SEQ ID NO: 26のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、MLXIPLは、SEQ ID NO: 26のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0242】
いくつかの態様において、転写因子はETV1である。ヒトETV1のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001163147(SEQ ID NO: 27)に見いだすことが可能である。ETV1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 27のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ETV1は、SEQ ID NO: 27のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ETV1は、SEQ ID NO: 27のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0243】
いくつかの態様において、転写因子はARである。ヒトARのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_000044.3(SEQ ID NO: 28)に見いだすことが可能である。ARの例示的な配列には、SEQ ID NO: 28のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ARは、SEQ ID NO: 28のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ARは、SEQ ID NO: 28のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0244】
いくつかの態様において、転写因子はCEBPBである。ヒトCEBPBのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_005194.3(SEQ ID NO: 29)に見いだすことが可能である。CEBPBの例示的な配列には、SEQ ID NO: 29のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、CEBPBは、SEQ ID NO: 29のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、CEBPBは、SEQ ID NO: 29のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0245】
いくつかの態様において、転写因子はNR1D1である。ヒトNR1D1のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_021724.4(SEQ ID NO: 30)に見いだすことが可能である。NR1D1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 30のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、NR1D1は、SEQ ID NO: 30のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、NR1D1は、SEQ ID NO: 30のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0246】
いくつかの態様において、転写因子はHEY2である。ヒトHEY2のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_012259.2(SEQ ID NO: 31)に見いだすことが可能である。HEY2の例示的な配列には、SEQ ID NO: 31のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、HEY2は、SEQ ID NO: 31のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、HEY2は、SEQ ID NO: 31のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0247】
いくつかの態様において、転写因子はARID3Cである。ヒトARID3CのmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001017363.1(SEQ ID NO: 32)に見いだすことが可能である。ARID3Cの例示的な配列には、SEQ ID NO: 32のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、ARID3Cは、SEQ ID NO: 32のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ARID3Cは、SEQ ID NO: 32のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0248】
いくつかの態様において、転写因子はKLF9である。ヒトKLF9のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_001206.2(SEQ ID NO: 33)に見いだすことが可能である。KLF9の例示的な配列には、SEQ ID NO: 33のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、KLF9は、SEQ ID NO: 33のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、KLF9は、SEQ ID NO: 33のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0249】
いくつかの態様において、転写因子はDMRTA1である。ヒトDMRTA1のmRNA転写物の配列は、NCBIのRefSeqアクセッション番号NM_022160.2(SEQ ID NO: 34)に見いだすことが可能である。DMRTA1の例示的な配列には、SEQ ID NO: 34のヌクレオチド配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列が含まれる。いくつかの態様において、DMRTA1は、SEQ ID NO: 34のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、DMRTA1は、SEQ ID NO: 34のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0250】
転写因子の発現増加
本発明の転写因子をコードする核酸を送達するためのベクターは、本発明の細胞において転写因子を発現するように構築されてよく、該細胞はたとえば、未成熟肝細胞、肝前駆細胞、または、たとえば胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞である。いくつかの態様において、核酸はDNAである。いくつかの態様において、核酸はRNAである。いくつかの態様において、核酸は改変DNAである。いくつかの態様において、核酸は改変RNAである。
【0251】
加えて、本発明の方法において転写因子の発現をもたらすために、タンパク質導入組成物もしくはまたはタンパク質導入方法もまた使用されてよい。
【0252】
A. 核酸の送達システム
当業者であれば、標準的な組み換え技術によってベクターを構築するために必要な能力を十分に身に着けているであろう(たとえば、Sambrookら 2001;Ausubelら 1996;Maniatisら 1988;およびAusubelら 1994を参照されたい;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。本開示の少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含むベクターには、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、および/または誘導性発現ベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0253】
ベクターはまた、遺伝子送達および/または遺伝子発現をさらに変化させるか、あるいは有益な特性を標的細胞に提供する、他の構成要素または機能的要素をも含むことが可能である。そのような他の構成要素には、たとえば以下が含まれる:細胞との結合または細胞の標的化に影響を与える構成要素(細胞型特異的または組織特異的な結合を媒介する構成要素が含まれる);ベクター核酸の細胞による取り込みに影響を与える構成要素;取り込まれた後で、細胞でのポリヌクレオチドの局在化に影響を与える構成要素(たとえば、核局在化を媒介する作用物質など);およびポリヌクレオチドの発現に影響を与える構成要素。
【0254】
そのような構成要素にはまた、マーカーも含まれてよく、これはたとえば、ベクターによって送達される核酸を取り込みそしてそれを発現する細胞を、検出または選択するために使用可能な、検出可能マーカーおよび/または選択マーカーなどである。そのような構成要素は、ベクターの天然の特色として提供されてよく(たとえば、結合および取り込みを媒介する構成要素もしくは機能的要素を有する、ある種のウイルスベクターの使用)、またはベクターは、そのような機能的要素を提供するように改変されてもよい。当技術分野においては、多種多様なそのようなベクターが公知であり、かつ広く利用可能である。ベクターが宿主細胞において維持される際、ベクターは、自律型の構造体として、有糸分裂の過程で細胞によって安定に複製されるか、宿主細胞のゲノムに組み込まれるか、または宿主細胞の核もしくは細胞質において維持されるかの、いずれかであってよい。
【0255】
1. ウイルスベクター
本発明の少なくとも1種の転写因子をコードするウイルスベクターは、本開示のいくつかの局面において提供され得る。ウイルスベクターとは、核酸および場合によりタンパク質を細胞へと導入するためにウイルス配列を利用するという種類の、発現構築物である。本発明のいくつかの局面の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの非限定的な例が、以下に説明される。
【0256】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは非組み込み型ウイルスベクターである。本開示の例示的な非組み込み型ウイルスベクターは、以下からなる群より選択される:アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、たとえば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV3B、AAV-2i8、RhlO、Rh74等;アデノウイルス(Ad)ベクター、たとえばAd7、Ad4、Ad2、Ad5等であって、それらの複製可能型、複製不能型、およびガットレス型を含めたもの;シミアンウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳腺腫瘍ウイルスベクター、またはラウス肉腫ウイルスベクター。
【0257】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは組み込み型ウイルスベクターであり、これはたとえば、レトロウイルスベクターなどである。レトロウイルスは、その遺伝子を宿主ゲノムに組み込むその能力に起因して、遺伝子送達ベクターとして有望であり、これは、外来の遺伝学的物質を大量に輸送し、広範囲にわたる生物種および細胞型に感染し、かつ特定の細胞株においてパッケージングされる。
【0258】
いくつかの態様において、組み込み型ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター(たとえば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNV等)に由来するか、レンチウイルスベクター(たとえば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIV等に由来するもの)に由来するか、またはそれらに由来するベクターに由来する。
【0259】
組み換えベクターはまた、非分裂細胞に感染することも可能であり、かつ、インビボおよびエクスビボの両方で、遺伝子を輸送するために、および核酸配列を発現させるために、本発明の方法において使用することが可能である。たとえば、非分裂細胞に感染可能な組み換えレンチウイルスは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,994,136号に記載されており、その適した宿主細胞(すなわち、本開示の肝細胞ではない、ウイルス産生細胞)は、パッケージング機能を担持する、すなわちgag、pol、およびenv、ならびにrevおよびtatを担持する、2種以上のベクターを用いてトランスフェクトされる。
【0260】
2. エピソーマルベクターおよび他の非ウイルスベクター
プラスミドベースまたはリポソームベースの染色体外ベクター(すなわちエピソーマルベクター)の使用もまた、本発明のある局面において提供され得る。そのようなエピソーマルベクターには、たとえば、oriPベースのベクター、および/またはEBNA-1の誘導体をコードするベクターが含まれ得る。これらのベクターは、大きなDNA断片を細胞に導入しそして染色体外で維持し、該断片を細胞周期ごとに1回複製し、該断片を娘細胞に効率的に分配しつつ、実質的に免疫応答を誘発しないことを、可能にし得る。
【0261】
他の染色体外ベクターには、リンパ球向性ヘルペスウイルスに基づく他のベクターが含まれる。例示的なリンパ球向性ヘルペスウイルスには、EBV、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV);ヘルペスウイルス・サイミリ(HS)、およびマレック病ウイルス(MDV)が含まれるが、これらに限定されない。また、エピソームベースのベクターの他の供給源として、たとえば、酵母ARS、アデノウイルス、SV40、またはBPVなどが意図される。
【0262】
いくつかの態様において、ベクターは非ウイルスベクターである。いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、プラスミドDNA、線状2本鎖DNA(dsDNA)、線状1本鎖DNA(ssDNA)、ナノプラスミド、ミニサークルDNA、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、DDNAオリゴヌクレオチド、1本鎖mRNA(ssRNA)、および2本鎖mRNA(dsRNA)からなる群より選択される。
【0263】
いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、ネイキッド核酸、リポソーム、デンドリマー、ナノ粒子、脂質・ポリマーシステム、固体脂質ナノ粒子、および/またはリポソーム・プロタミン/DNAリポプレックス(LPD)を含む。
【0264】
いくつかの態様において、非ウイルスベクターはmRNAを含む。いくつかの態様において、mRNAは、たとえばスクロース・クエン酸緩衝液中または生理食塩水中にある、改変されたネイキッドmRNAとして送達されてよい。他の態様において、非ウイルスベクターは、トランスフェクション試薬と複合体を形成しているmRNAを含み、該試薬はたとえば、Lipofectamine 2000、jetPEI、RNAiMAX、および/またはInvivofectamineなどである。ヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護し、かつその負電荷を遮蔽するために、アミンを含有する物質もまた、非ウイルスベクターとして一般的に使用されている。最も開発が進んでいる、mRNAを送達するための方法の1つは、脂質ナノ粒子(LNP)との合剤である。LNP製剤は、典型的には以下から構成される:(1) ポリアニオン性のmRNAを封入するための第3級アミンまたは第4級アミンを担持しており、イオン化可能であるかまたはカチオン性である、脂質またはポリマー性物質;(2) 細胞膜中の脂質に類似している両イオン性脂質(たとえば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DOPE]);(3) LNPの脂質二重層を安定化させるためのコレステロール;および(4) ナノ粒子を水和した層にさせ、コロイドの安定性を改善し、かつタンパク質の吸収を減少させるための、ポリエチレングリコール(PEG)脂質。mRNAを含む非ウイルスベクターの例示的なものは、Kowalksiら 2019, Mol Ther.; 27(4): 710-728に記載されている;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0265】
3. トランスポゾンベースのシステム
ある特定の態様では、核酸の導入は、トランスポゾン・トランスポザーゼシステムを使用してよい。使用されるトランスポゾン・トランスポザーゼシステムは、周知のスリーピングビューティー(Sleeping Beauty)やフロッグプリンス(Frog Prince)のトランスポゾン・トランスポザーゼシステム(後者の説明としては、たとえばEP1507865を参照されたい)であってよく、またはTTAA特異的トランスポゾンであるpiggyBacシステムであってもよい。
【0266】
トランスポゾンは、ある1つの細胞のゲノム内でさまざまな位置へと動き回ること、これは転移と呼ばれるプロセスであるが、これが可能なDNA配列である。該プロセスにおいて、トランスポゾンは変異を引き起こすことが可能であり、かつゲノムにおけるDNA量を変化させることが可能である。さまざまな可動遺伝因子が存在しており、かつ、その転移機構に基づいて、該因子を分類することが可能である。クラスIの可動遺伝因子、またはレトロトランスポゾンは、最初にRNAへと自身を転写し、次に逆転写酵素によってそれをDNAへと逆転写し、そして次にそれをゲノム上の別の位置に挿入することで、自身をコピーする。クラスIIの可動遺伝因子は、自身を「切り貼り」するトランスポザーゼを用いて、ゲノム内においてある位置から別の位置へと直接移動する。
【0267】
4. 相同組み換え
相同組み換え(HR)は標的型のゲノム改変技術であり、これは1980年代の中頃から、哺乳動物細胞においてゲノムを操作するための標準的な方法となっている。メガヌクレアーゼ、またはホーミングエンドヌクレアーゼ、たとえばI-SceIなどは、HRの効率を上げるために使用されている。天然のメガヌクレアーゼと、改変されたターゲティング特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼの両方が、HRの効率を上げるために利用されている。HRの効率を上げるための別の道筋として、プログラマブルなDNA特異性ドメインを有するキメラエンドヌクレアーゼの操作が行われている。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)はそのようなキメラ分子の一例であり、これにおいては、ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ、たとえばFokIなどの触媒ドメインと融合している。そのような特異性分子の別のクラスには、IIS型制限エンドヌクレアーゼ、たとえばFokIなどの触媒ドメインと融合させた、転写活性化因子様エフェクター(TALE)のDNA結合ドメインが含まれる。標的型のゲノム改変を容易にする、別のクラスのそのような分子には、CRISPR/Casシステムが含まれ、これはたとえば、Ranら 2013; Nature Protocols 8:2281-2308に記載されている;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0268】
B. 調節エレメント
ベクターに含まれる真核の発現カセットは、好ましくは(5'から3'への方向で)、タンパク質のコーディング配列に機能的に連結されている真核の転写プロモーター、介在配列を含めたスプライスシグナル、および転写終結配列/ポリアデニル化配列を含む。
【0269】
1. プロモーター/エンハンサー
「プロモーター」とは、そこにおいて転写の開始および速度が制御される核酸配列の領域である、制御配列である。これには、調節タンパク質および調節分子、たとえばRNAポリメラーゼおよび他の転写因子などがそこに結合して、ある核酸配列に対して特異的な転写を開始させ得る、遺伝学的エレメントが含まれ得る。「機能的に配置されている」、「機能的に連結されている(operatively linked)」、「機能的に連結されている(operably linked)」、「制御下」、および「転写制御下」との表現は、プロモーターが、その転写の開始および/またはその発現を制御する核酸配列に対して、正確であって機能的な位置および/または方向にあることを意味する。
【0270】
プロモーターは概して、RNA合成の開始部位を定めるように機能する配列を含む。さらなるプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節するものである。典型的には、これらは開始部位の上流30~110位に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示されている。コーディング配列を、あるプロモーターの「制御下」に置くには、転写リーディングフレームの転写開始部位の5'末端を、選択された該プロモーターの「下流」(すなわち3'側)に配置する。「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、かつ、コードされるRNAの発現を増進する。
【0271】
プロモーターエレメント間の間隔は、多くの場合柔軟性を有しており、したがって、エレメントが互いに対して反転または移動した場合にも、プロモーターの機能は保たれる。tkプロモーターにおいては、プロモーターエレメント間の間隔を、活性が低下し始める前に、50離れるまで増加させることが可能である。プロモーターによって異なるが、転写を活性化するために、協力してまたは独立してのいずれかで個々のエレメントが機能することが可能であるように見受けられる。プロモーターは、「エンハンサー」とともに使用されてよく、またはそのように使用されなくてもよく、ここで「エンハンサー」とは、核酸配列の転写の活性化に関与する、シス作用性の調節配列を指す。
【0272】
本明細書に開示される組成物に関し、プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成により作製することに加えて、配列は、PCR(商標)を含め、組み換えクローニング技術および/または核酸増幅技術を用いて作製されてもよい(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照されたい)。さらに、核以外のオルガネラ、たとえばミトコンドリア、葉緑体等の中での配列の転写および/または発現を指向する制御配列もまた、同様に利用可能であることが意図される。
【0273】
利用されるプロモーターは、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指向するのに適切な条件下において、構成的である、組織特異的である、誘導性である、および/または有用である、プロモーターであってよく、これはたとえば、組み換えタンパク質および/またはペプチドの大スケールでの作製において好都合なものなどである。プロモーターは人工のものであってよく、または内因性のものであってもよい。
【0274】
いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。「誘導性プロモーター」との用語は、当技術分野において公知であり、かつある刺激への応答においてのみ活性であるプロモーターを指す。誘導性プロモーターは、内因性もしくは外因性の刺激、たとえば化合物(化学的インデューサー)などの存在に応答して、または、環境上のシグナル、ホルモン性のシグナル、化学的シグナル、および/もしくは発生上のシグナルに応答して、核酸分子を選択的に発現する。誘導性プロモーターには、たとえば、以下によって誘導または調節されるプロモーターが含まれる:光、熱、ストレス(たとえば塩ストレスもしくは浸透圧ストレス)、植物ホルモン、損傷、または化学物質、これはたとえば、エタノール、アブシシン酸(ABA)、ジャスモン酸、サリチル酸、もしくはセーフナーなど。いくつかの態様において、誘導性プロモーターはEF1aプロモーターである。いくつかの態様において、誘導性プロモーターはPGKプロモーターである。
【0275】
加えて、プロモーター/エンハンサーの任意の組み合わせ(たとえば、ワールドワイドウェブ上で「epd.isb-sib.ch/」にあるEukaryotic Promoter Data Base、EPDBのとおりのもの)もまた、発現を駆動するのに使用され得る。プロモーターの非限定的な例には以下が含まれる:構成的なEF1αプロモーター;初期ウイルスプロモーターまたは後期ウイルスプロモーター、これはたとえば、SV40の初期プロモーターまたは後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)の最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の初期プロモーターなど;真核細胞プロモーター、これはたとえば、βアクチンプロモーター、GADPHプロモーター、メタロチオネインプロモーターなど;ならびに連結型応答エレメントプロモーター、これはたとえば、環状AMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)、および最小TATAボックス近傍の応答エレメントプロモーター(tre)など。
【0276】
肝特異的な遺伝子のためのエンハンサー配列がいくつか記述されている。たとえば、PCT公報である国際公開公報第2009130208号は、肝特異的な調節性エンハンサー配列をいくつか記載しており、かつ該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。PCT公報である国際公開公報第95/011308号は、プロモーターおよび導入遺伝子に連結されている肝細胞特異的制御領域(hepatocyte-specific control region)(HCR)エンハンサーを含む遺伝子療法ベクターを記載しており、かつ該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。PCT公報である国際公開公報第01/098482号は、特異的ApoEエンハンサー配列またはその短縮型バージョンと、肝臓プロモーターとの組み合わせを教示しており、該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0277】
2. 開始シグナル、内部リボソーム結合部位、および自己切断配列
コーディング配列を効率的に翻訳するために、特異的な開始シグナルもまた使用されてよい。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外因性の翻訳制御シグナルを提供することが必要である場合がある。当業者であれば、そのような必要性を決定すること、および必要なシグナルを提供することが、容易に可能であろう。インサート全体を確実に翻訳するためには、所望のコーディング配列のリーディングフレームに対して開始コドンが「インフレーム」にある必要があることは、周知である。外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれかであってよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントを包含させることによって向上し得る。
【0278】
本発明のある態様において、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントが、多重遺伝子、またはポリシストロン性のメッセンジャーを作製するのに使用される。IRESエレメントは、5'メチル化キャップ依存性翻訳というリボソームスキャニングモデルを回避すること、および配列内の部位において翻訳を開始することが可能である。IRESエレメントは、異種性のオープンリーディングフレームに連結することが可能である。複数のオープンリーディングフレームを、まとめて転写すること、IRESによってそれぞれに分離することが可能であり、それによってポリシストロン性のメッセンジャーが作製される。IRESエレメントによって、効率的な翻訳のために、それぞれのオープンリーディングフレームにリボソームが接近することが可能となる。1つのメッセンジャーを転写するための1つのプロモーター/エンハンサーを用いて、複数の遺伝子を効率的に発現させることが可能である(米国特許第5,925,565号および同5,935,819号を参照されたい;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0279】
いくつかの態様において、遺伝子を共発現させるために、自己切断配列を使用することが可能である。「自己切断配列」との用語は、本明細書において使用される場合、単一のシストロンを形成するようにオープンリーディングフレームを連結しており、かつ翻訳の過程でリボソームスキッピングを誘導する配列を指す。自己切断配列によって連結された2つのコーディング配列は、リボソームスキッピングによって、2つの別々のペプチドへと翻訳される。たとえば、自己切断配列である2Aは、本開示に提供される構築物において、複数の遺伝子の連結発現または共発現を引き起こすために使用することが可能である。例示的な自己切断配列には、表2に記載されるT2A、P2A、E2A、およびF2Aが含まれるが、これらに限定されない。
【0280】
(表2)例示的な2A配列
【0281】
いくつかの態様において、T2Aは、SEQ ID NO: 35のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列か、またはそのようなアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0282】
いくつかの態様において、P2Aは、SEQ ID NO: 36のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列か、またはそのようなアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0283】
いくつかの態様において、E2Aは、SEQ ID NO: 37のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列か、またはそのようなアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0284】
いくつかの態様において、F2Aは、SEQ ID NO: 38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列か、またはそのようなアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0285】
3. 複製起点
宿主細胞においてベクターを増やす目的で、ベクターは、そこで複製が開始される特別な核酸配列である、複製起点(しばしば「ori」と呼ばれる)を1つまたは複数含んでよく、これはたとえば、上述のEBVのoriPか、またはプログラミングにおいて類似もしくは亢進した機能を有する遺伝子操作されたoriPに対応する、核酸配列である。あるいは、上述の染色体外で複製する他のウイルスの複製起点、または自律複製配列(ARS)が利用可能である。
【0286】
4. 選択マーカーおよびスクリーニング可能なマーカー
本発明のある態様において、本発明の核酸構築物を含む細胞は、発現ベクター中にマーカーを包含させることによって、インビトロまたはインビボで同定され得る。そのようなマーカーは、同定可能な変化を細胞に付与し得るので、発現ベクターを含む細胞を容易に同定することが可能になる。一般的には選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するものである。正の選択マーカーは、該マーカーの存在によってその選択が可能になるものであり、一方で負の選択マーカーは、該マーカーの存在によってその選択が防止されるものである。正の選択マーカーの一例は、薬剤抵抗性マーカーである。
【0287】
一般的に、薬剤選択マーカーを包含させることで、形質転換体のクローニングおよび同定が容易になり、たとえば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールなどに対する抵抗性を付与する遺伝子は、有用な選択マーカーである。ある条件を実施することに基づいて形質転換体を識別することを可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、他のタイプのマーカーもまた意図され、これには、たとえばGFPといった、その原理が比色分析であるスクリーニング可能なマーカーが含まれる。
【0288】
あるいは、スクリーニング可能な酵素が利用されてよく、これはたとえば負の選択マーカーなどである。ある態様において、負の選択マーカーは1種または複数種の自殺遺伝子を含み、これは、プロドラッグを投与した際に、遺伝子産物を、その宿主細胞を死滅させる化合物へと変化させる。本開示についての例示的な自殺遺伝子には、誘導性カスパーゼ9(またはカスパーゼ3もしくは7)、CD20、CD52、EGFRt、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、HER1、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本開示において使用され得る、当技術分野において公知のさらなる自殺遺伝子には、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、シトクロムp450酵素(CYP)、カルボキシペプチダーゼ(CP)、カルボキシルエステラーゼ(CE)、ニトロレダクターゼ(NTR)、グアニンリボシルトランスフェラーゼ(XGRTP)、グリコシダーゼ酵素、およびチミジンホスホリラーゼ(TP)が含まれる。
【0289】
当業者であれば、免疫学的マーカーを、場合によってはFACS解析と組み合わせて、どのようにして利用するかについても承知しているであろう。使用されるマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現させることが可能である限り、重大な影響力を有するものではないと考えられる。選択マーカーおよびスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。本発明の1つの特色には、転写因子が肝細胞において所望の変化をもたらした後で肝細胞を選択するために、選択マーカーおよびスクリーニング可能なマーカーを使用することが含まれる。
【0290】
本発明のある態様において、本発明の核酸構築物を含む細胞は、発現ベクター中にマーカーを包含させることによって、インビトロまたはインビボで同定され得る。そのようなマーカーは、同定可能な変化を細胞に付与し得るので、発現ベクターを含む細胞を容易に同定することが可能になる。一般的には選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するものである。正の選択マーカーは、該マーカーの存在によってその選択が可能になるものであり、一方で負の選択マーカーは、該マーカーの存在によってその選択が防止されるものである。正の選択マーカーの一例は、薬剤抵抗性マーカーである。
【0291】
一般的に、薬剤選択マーカーを包含させることで、形質転換体のクローニングおよび同定が容易になり、たとえば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールなどに対する抵抗性を付与する遺伝子は、有用な選択マーカーである。ある条件を実施することに基づいて形質転換体を識別することを可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、他のタイプのマーカーもまた意図され、これには、たとえばGFPといった、その原理が比色分析であるスクリーニング可能なマーカーが含まれる。
【0292】
C. 核酸の送達
ある態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階は、細胞、たとえば、多能性幹細胞、未成熟肝細胞、または肝前駆細胞などを、少なくとも1種の転写因子と接触させることを含む。いくつかの態様において、細胞、たとえば、多能性幹細胞、未成熟肝細胞、または肝前駆細胞などは、少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。
【0293】
核酸、たとえば、DNA、RNA、改変DNA、または改変RNAなどを、本発明の細胞、たとえば、多能性幹細胞、未成熟肝細胞、または肝前駆細胞などへと導入するには、本明細書に記載されるような、または当業者に公知であるような、細胞の形質転換のために核酸を送達するための任意の適切な方法が使用されてよい。そのような方法には、たとえば、以下のようなDNAの直接送達が含まれるが、これらに限定されない:エクスビボトランスフェクション(Wilsonら 1989、Nabelら 1989;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;マイクロインジェクション(HarlandおよびWeintraub, 1985;米国特許第5,789,215号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)を含めた、注入(米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;エレクトロポレーション(米国特許第5,384,253号;Tur-Kaspaら 1986;Potterら 1984;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;リン酸カルシウム沈殿(GrahamおよびVan Der Eb, 1973;ChenおよびOkayama, 1987;Rippeら 1990;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;DEAE-デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用するもの;直接的な音波負荷(Fechheimerら 1987;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;リポソーム媒介性トランスフェクション(NicolauおよびSene, 1982;Fraleyら 1979;Nicolauら 1987;Wongら 1980;Kanedaら 1989;Katoら 1991;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの、ならびに受容体媒介性トランスフェクション(WuおよびWu, 1987;WuおよびWu, 1988;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;マイクロプロジェクタイルボンバードメント(PCT出願である国際公開公報第94/09699号および同95/06128号;米国特許第5,610,042号;同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号、および同第5,538,880号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;炭化ケイ素繊維とのかくはん(Kaepplerら 1990;米国特許第5,302,523号および同第5,464,765号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;アグロバクテリウム媒介性形質転換(米国特許第5,591,616号および同第5,563,055号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの;乾燥/阻害を介するDNAの取り込み(Potrykusら 1985;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によるもの、ならびに、そのような方法の任意の組み合わせ。上述のような技術を適用することによって、オルガネラ、細胞、組織、または生物を、安定的または一過性に形質転換することが可能である。
【0294】
本発明のある態様において、核酸は、脂質複合体の中に、たとえばリポソームなどの中に、封入されてよい。リポソームとは、リン脂質二重層の膜と内部の水性媒体とによって特徴付けられる、小胞状の構造体である。多重層リポソームは、水性媒体によって区切られた複数の脂質層を有する。これは、リン脂質を過剰量の水性溶液に懸濁した際に、自然に形成される。脂質成分は、閉じた構造体を形成する前に自己再配置を行い、そして脂質二重層の間に水と溶解した溶質とを封入する。Lipofectamine(Gibco BRL)またはSuperfect(Qiagen)と複合体を形成している核酸もまた、意図される。使用されるリポソームの量は、使用されるリポソームおよび細胞の性質によって変化し得るものであり、たとえば、100万~1000万個の細胞に対し約5~約20 μgのベクターDNAが意図され得る。
【0295】
本発明のある態様において、核酸は、エレクトロポレーションによって、オルガネラ、細胞、組織、または生物へと導入される。エレクトロポレーションは、細胞およびDNAの懸濁液を、高電圧の放電に曝露することを伴う。レシピエント細胞は、機械的に損傷させることで、形質転換に対してより感受性にさせることが可能である。ここでもまた、使用されるベクターの量は、使用される細胞の性質によって変化し得るものであり、たとえば、100万~1000万個の細胞に対し約5~約20 μgのベクターDNAが意図され得る。
【0296】
本発明の他の態様において、核酸は、リン酸カルシウム沈殿を用いて細胞へと導入される。
【0297】
別の態様において、核酸は、DEAE-デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用することによって、細胞へと送達される。
【0298】
本発明のさらなる態様には、直接的な音波負荷によって核酸を導入することが含まれる。
【0299】
マイクロプロジェクタイルボンバードメント技術もまた、少なくとも1種の、オルガネラ、細胞、組織、または生物へと核酸を導入するのに使用することが可能である(米国特許第5,550,318号;同5,538,880号;同5,610,042号;およびPCT出願である国際公開公報第94/09699号;該文献はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。該方法は、DNAがコートされたマイクロプロジェクタイルを高速に加速する能力を利用しており、これにより、細胞を死滅させることなく、該マイクロプロジェクタイルが細胞膜を貫通しそして細胞に進入することが可能になる(Kleinら 1987;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。当技術分野においては、多種多様なマイクロプロジェクタイルボンバードメント技術が公知であり、これらは本発明の方法において使用するのに適している。
【0300】
D. 遺伝子スイッチ
いくつかの態様において、本開示の細胞、たとえば、多能性幹細胞または未成熟肝細胞などは、本発明の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を含むように操作される。遺伝子スイッチ構築物は、複合型の遺伝子回路を構築するための、基本的な構成要素を提供するものであり、これは細胞を、生物医学的用途のために有用な、細胞ベースのマシンへと変換する。リガンド応答性の遺伝子スイッチ構築物は、ある特定のシグナルを処理して遺伝子産物という応答を生じさせることが可能な、細胞センサーである。これらを複合型の遺伝子回路に取り入れることで、電子工学を思わせる精巧な回路トポロジーがもたらされ、これは、イベントを記憶する能力を有し、タンパク質産生を開始・停止させる能力を有し、かつ複合型の情報処理タスクを実施する能力を有する操作された細胞を、提供することが可能である(Auslanderら 2016; Cold Spring Harb Perspect Biol.; 8(7): a023895を参照されたい;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。遺伝子スイッチ構築物の設計戦略に基づいて、さまざまな合成システムとともに本開示の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物を含むように、本開示の細胞、たとえば多能性幹細胞または未成熟肝細胞を操作することが可能であり、ここで該合成システムは、さまざまなリガンドインプットを感知するものであり、該リガンドインプットは次に、本開示の転写因子をコードする遺伝子スイッチ構築物の発現を媒介する。
【0301】
1. 転写の遺伝子スイッチ
いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写の遺伝子スイッチ構築物である。いくつかの態様において、転写の遺伝子スイッチ構築物は、転写調節因子タンパク質に融合している原核の調節因子タンパク質の使用を含み、これは、リガンドに対して応答性の様式で遺伝子スイッチ構築物の発現を制御する、DNAオペレーター配列に結合する。いくつかの態様において、転写の遺伝子スイッチ構築物は、原核の調節因子タンパク質とリガンド誘導性または光誘導性の二量体化システム(DS)との組み合わせの使用を含み、これは、転写調節因子タンパク質の、シグナル依存性の動員を可能にする。いくつかの態様において、転写の遺伝子スイッチ構築物は、真核細胞の表面に位置するGタンパク質共役型受容体(GPCR)の使用を含み、これは、細胞外シグナルを感知し、そしてシグナル伝達経路を介したシグナル伝達を始動させて、遺伝子スイッチ構築物の発現を制御する。いくつかの態様において、転写の遺伝子スイッチ構築物は、操作されたジグアニル酸シクラーゼ(DGCL)の使用を含み、これは、赤色光に対して応答性の様式で、二次情報伝達物質である環状ジGMPを合成して、下流のシグナル伝達経路を始動させ、そして遺伝子スイッチ構築物の転写活性化を引き起こす。いくつかの態様において、転写の遺伝子スイッチ構築物は、Auslanderら 2016に記載される合成システムの任意のものを含む;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0302】
2. 転写後の遺伝子スイッチ
いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、転写後の遺伝子スイッチ構築物である。いくつかの態様において、転写後の遺伝子スイッチ構築物は、一次マイクロRNA(pri-miRNA)分子に融合しているアプタザイムの使用を含み、これは、pri-miRNAプロセシングのリガンド応答性の制御、および転写後の標的遺伝子の制御を、可能にする。いくつかの態様において、転写後の遺伝子スイッチ構築物は、メッセンジャーRNA(mRNA)に組み込まれている、タンパク質応答性のアプタザイムの使用を含み、これは、タンパク質リガンドの存在または非存在に応じて、メッセンジャーRNAの安定性を調節する。いくつかの態様において、転写後の遺伝子スイッチ構築物は、タンパク質結合アプタマーとのタンパク質結合の使用を含み、ここで該タンパク質結合アプタマーは、低分子ヘアピンRNA(shRNA)に組み込まれていてかつshRNAのプロセシングを阻害しており、かつ、遺伝子スイッチ構築物の、タンパク質によって制御される発現を可能にする。いくつかの態様において、転写後の遺伝子スイッチ構築物は、mRNAの5'非翻訳領域(UTR)に組み込まれた、タンパク質結合アプタマーの使用を含み、これは、タンパク質依存性の様式で翻訳の開始を制御する。いくつかの態様において、転写後の遺伝子スイッチ構築物は、スプライシング部位の近くへの、タンパク質結合アプタマーの組み込みの使用を含み、これは、タンパク質に対して応答性である、選択的スプライシングの調節を可能にする。いくつかの態様において、転写後の遺伝子スイッチ構築物は、テオフィリン応答性アプタマーと組み合わせられたATetR結合アプタマーの使用を含み、これは、TetR結合アプタマーの、テオフィリン依存性の折りたたみを可能にする。その近縁なアプタマーに結合した際に、TetRタンパク質はDNAオペレーターに結合するその能力を失い、そして転写レベルにおいて、遺伝子発現に影響を及ぼす。
【0303】
インテグラーゼもまた、遺伝学的スイッチの機能的な制御因子として作用することが可能であり、これは、コーディング配列を、または真核細胞において作動するように設計されているプロモータースイッチを、活性化させる。インテグラーゼは、その部位認識および組み換えプロセスにおいて正確性を示すものであり、かつ細胞毒性を有さない。いくつかの態様において、遺伝子スイッチ構築物は、Gomideら 2020, Commun Biol.;3(1):255に記載されるセリンインテグラーゼによって制御される遺伝学的スイッチの使用を含む;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0304】
E. タンパク質導入
ある態様において、本開示の細胞、たとえば未成熟肝細胞などは、成熟肝細胞を作製するのに十分な量のポリペプチドを含む転写因子と、接触させてよい。タンパク質導入は、細胞への高分子の送達を増強するための方法として使用されている。転写因子ポリペプチドまたはその機能的断片を細胞へと直接導入するために、タンパク質導入ドメインが使用されてよい。
【0305】
「タンパク質導入ドメイン」または「PTD」とは、生体膜、特に細胞膜を横断することが可能なアミノ酸配列である。異種性のポリペプチドに連結された場合に、PTDは、異種性ポリペプチドが生体膜を横切って移動するのを増強することが可能である。PTDは典型的には、異種性のDNA結合ドメインに(たとえばペプチド結合によって)共有結合している。たとえば、PTDおよび異種性のDNA結合ドメインは、1本の核酸によってコードされてよく、たとえば、共通のオープンリーディングフレーム内において、または共通の遺伝子の1つもしくは複数のエキソン内において、1本の核酸によってコードされてよい。例示的なPTDは、10~30アミノ酸を含んでよく、かつ両親媒性ヘリックスを形成してよい。多くのPTDは塩基性の性質である。たとえば、塩基性のPTDは、少なくとも4、5、6、または8個の塩基性残基(たとえばアルギニンまたはリジン)を含んでよい。PTDは、細胞壁を欠く細胞への、またはある特定の生物種の細胞への、ポリペプチドの移動を増強することが可能であり得、該細胞はたとえば哺乳動物細胞であり、これはたとえば、ヒト、サル、マウス、ウシ、ウマ、ネコ、またはヒツジの細胞などである。
【0306】
PTDは、たとえば柔軟性のあるリンカーなどを用いて、人工的な転写因子に連結することが可能である。柔軟性のあるリンカーは、自由な回転を可能にする、1つまたは複数のグリシン残基を含んでよい。たとえば、PTDは、転写因子のDNA結合ドメインから少なくとも10、20、または50アミノ酸離れていてよい。PTDは、DNA結合ドメインに対してN末端側またはC末端側に位置してよい。ある特定のドメインに対してN末端側またはC末端側に位置する、とは、該特定のドメインに隣接することを必要とするわけではない。たとえば、あるDNA結合ドメインに対してN末端側のPTDは、スペーサーおよび/または他のタイプのドメインによって、DNA結合ドメインから隔てられていてよい。PTDは化学的に合成されてよく、その後、別に調製されたDNA結合ドメインと化学的にコンジュゲートされてよく、その際リンカーペプチドを用いてよく、または用いなくてもよい。人工的な転写因子はまた、複数のPTDを含んでもよく、これはたとえば、複数の別々のPTDであるか、または1種類のPTDの少なくとも2コピーである。
【0307】
いくつかのタンパク質および短いペプチドは、古典的な受容体介在型またはエンドサイトーシス介在型の経路から独立して、形質導入を行うかまたは生体膜を通過する能力を有する。これらのタンパク質の例には、HIV-1のTATタンパク質、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)のDNA結合タンパク質VP22、およびドロソフィラ(Drosophila)のアンテナペディア(Antp)ホメオティック転写因子が含まれる。これらのタンパク質由来の短いタンパク質導入ドメイン(PTD)は、他の高分子、ペプチド、またはタンパク質を細胞へと成功裏に輸送するために、それらと融合させることが可能である。これらのタンパク質由来の導入ドメインの配列アラインメントは、塩基性アミノ酸(LysおよびArg)の高含有量を示し、そのため、これらの領域と膜中の負荷電脂質との相互作用が促進され得る。二次構造解析により、全3つのドメインの間で構造は一致しないことが示されている。
【0308】
これらの導入ドメインの融合体を使用する利点は、タンパク質の進入が迅速であって濃度依存性である点、および困難な細胞型を用いてもタンパク質の進入が行われるように見受けられる点である。PTDは、米国特許出願公開第2003/0082561号;米国特許出願公開第2002/0102265号;米国特許出願公開第2003/0040038号にさらに記載されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0309】
PTDに加えて、細胞内取り込みシグナルを使用することが可能である。そのようなシグナルは、細胞の受容体または他の表面タンパク質によって特異的に認識されるアミノ酸配列を含む。細胞内取り込みシグナルと細胞との間の相互作用により、細胞内取り込みシグナルを含む人工的な転写因子の内部移行が引き起こされる。いくつかのPTDはまた、細胞の受容体または他の表面タンパク質との相互作用によっても機能し得る。
【0310】
細胞培養
概して、本発明の細胞は培養培地において培養され、ここで培養培地とは、細胞の増殖を持続させることが可能な、栄養分に富む緩衝溶液である。
【0311】
本発明の肝細胞は、本明細書に記載される転写因子の細胞内レベルを、成熟肝細胞の産生を増進するのに十分であるように増加させる条件下で、多能性幹細胞または他の細胞、たとえば未成熟肝細胞などを培地において培養することによって、作製することが可能である。培地はまた、種々の増殖因子のような、肝細胞への分化をもたらす1種または複数種の作用物質をも含んでよい。これらの作用物質は、より成熟化した表現型にコミットするように細胞を誘導するのを支援する - もしくは、成熟細胞の生存を選択的に増進する - のいずれかであり得、またはこれら両方の作用の組み合わせを有し得る。
【0312】
本開示に例示される、肝細胞への分化をもたらす作用物質には、肝細胞系譜の細胞の増殖を増進することが可能な、可溶性の増殖因子(ペプチドホルモン、サイトカイン、リガンド・受容体複合体、および他の化合物)が含まれ得る。そのような作用物質の非限定的な例には以下が含まれるが、これらに限定されない:上皮増殖因子(EGF)、インスリン、TGF-α、TGF-β、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ヘパリン、肝細胞増殖因子(HGF)、オンコスタチンM(OSM)、IL-1、IL-6、インスリン様増殖因子IおよびII(IGF-I、IGF-2)、ヘパリン結合性増殖因子1(HBGF-1)、Wntファミリーメンバー3A(WNT3A)、A83、CHIR、ならびにグルカゴン。当業者であれば、オンコスタチンMが、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)、および毛様体神経栄養因子(CNTF)と構造的に関連していることを、すでに理解しているであろう。
【0313】
いくつかの態様において、本発明の方法は、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現を未成熟肝細胞において増加させる段階、ならびにデキサメタゾン、8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において、未成熟肝細胞を培養する段階を含む。
【0314】
いくつかの態様において、デキサメタゾン、8-Br-cAMP、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、または20日間実施される。いくつかの態様において、デキサメタゾン、8-Br-cAMP、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階は、少なくとも1~3日間実施される。いくつかの態様において、デキサメタゾン、8-Br-cAMP、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階は、少なくとも2~5日間実施される。いくつかの態様において、デキサメタゾン、8-Br-cAMP、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階は、少なくとも3~7日間実施される。いくつかの態様において、デキサメタゾン、8-Br-cAMP、またはそれらの組み合わせを含む培養培地において未成熟肝細胞を培養する段階は、少なくとも5~9日間実施される。
【0315】
いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は、少なくとも0.1 mM、0.2 mM、0.4 mM、0.6 mM、0.8 nM、1 mM、1.5 mM、2 mM、3 mM、5 mM、10 mM、20 mM、30 mM、40 mM、または50 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は、約0.1~0.5 mM、0.2~0.7 mM、0.3~0.9 mM、0.5~1 mM、1~5 mM、5~10 mM、または10~50 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は少なくとも0.1 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は少なくとも0.2 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は少なくとも0.5 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は少なくとも1 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は少なくとも5 mMである。いくつかの態様において、8-Br-cAMPの濃度は少なくとも10 mMである。
【0316】
いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は、少なくとも5 nM、10 nM、20 nM、40 nM、60 nM、80 nM、100 nM、200 nM、300 nM、500 nM、1 mM、5 mM、または10 mMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は、約5~10 nM、20~50 nM、30~90 nM、50~100 nM、200~500 nM、1~3 mM、2~5 mM、または5~10 mMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも5 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも10 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも20 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも50 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも100 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも200 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも500 nMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも1 mMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも5 mMである。いくつかの態様において、デキサメタゾンの濃度は少なくとも10 mMである。
【0317】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、本明細書に開示される少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも5日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも10日間培養される。
【0318】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、本明細書に開示される少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも2日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも5日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも10日間培養される。
【0319】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は多能性幹細胞に由来する。本明細書に記載される方法によって、多能性幹細胞を単離し、拡大させ、そして未成熟肝細胞へと分化させるのに適した培養培地には、高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM/F-15、ライボビッツL-15、RPMI 1640、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、およびOpti-MEM SFM(Invitrogen Inc.)が含まれるが、これらに限定されない。既知組成培地には最小必須培地が含まれ、これはたとえば、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Gibco)であって、これへのヒト血清アルブミン、ヒトEx Cyteリポタンパク質、トランスフェリン、インスリン、ビタミン、必須アミノ酸および非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、ならびにマイトジェンの添加もまた、適切である。本明細書において使用される場合、マイトジェンとは、細胞の細胞分裂を刺激する作用物質を指す。作用物質は、細胞分裂を開始するように細胞に働きかけて有糸分裂を始動させる化学物質であってよく、一般的には何らかの形態のタンパク質であってよい。1つの態様において、無血清培地(米国特許出願第08/464,599号およびPCT公報である国際公開公報第96/39487号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、ならびに完全培地(その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,486,359号)が、本明細書に記載される方法とともに使用されることが意図される。いくつかの態様において、培養培地には、10% ウシ胎児血清(FBS)、ヒト自己血清、ヒトAB血清、またはヘパリン(2 U/ml)添加多血小板血漿が添加される。培養用流体のpHを維持するために、細胞培養はCO2雰囲気下、たとえば5%~12%のCO2雰囲気下で維持されてよく、細胞培養は高湿度の雰囲気下で37度でインキュベートされてよく、かつ、85%未満のコンフルエンスを維持するために、細胞培養は継代培養されてよい。
【0320】
未成熟肝細胞へと分化させようとする多能性幹細胞は、多能性を維持することができる培地において培養されてよい。本発明のある局面において作製される人工多能性幹(iPS)細胞の培養には、霊長類の多能性幹細胞、より具体的には胚性幹細胞を培養するために開発された、さまざまな培地および技術を使用することが可能である(米国特許出願公開第20070238170号および米国特許出願公開第20030211603号;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。たとえば、ヒト胚性幹(hES)細胞のように、iPS細胞は、80% DMEM(Gibco、番号10829-018または番号11965-092)、加熱非働化していない20% 既知組成ウシ胎児血清(FBS)、1% 非必須アミノ酸、1 mM L-グルタミン、および0.1 mM β-メルカプトエタノールにおいて、維持することが可能である。あるいは、ES細胞は、80% Knock-Out DMEM(Gibco、番号10829-018)、20% 血清代替物(Gibco、番号10828-028)、1% 非必須アミノ酸、1 mM L-グルタミン、および0.1 mM β-メルカプトエタノールから作製される無血清培地において、維持することが可能である。
【0321】
いくつかの態様において、多能性幹細胞を培養する方法、および未成熟肝細胞の形成を誘導する方法は、アクチビンAを含む第1の分化培地、BMP4およびFGF2のうちの少なくとも1種を含む第2の分化培地、ならびにHGFを含む第3の分化培地において多能性幹細胞を培養し、それにより未成熟肝細胞を作製することを含む。
【0322】
いくつかの態様において、第1の分化培地、第2の分化培地、および第3の分化培地ではそれぞれ、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、第1の分化培地では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、第2の分化培地では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、第3の分化培地では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。
【0323】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、本明細書に開示される少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも5日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に、肝細胞増殖因子(HGF)を含む培養培地において培養される。
【0324】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、本明細書に開示される少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも2日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも5日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に少なくとも10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる前に、肝細胞増殖因子(HGF)を含む培養培地において培養される。
【0325】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、本明細書に開示される少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも2日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも5日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で少なくとも10日間培養される。いくつかの態様において、未成熟肝細胞は、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させた後で、オンコスタチンM(OSM)を含む培養培地において培養される。
【0326】
多能性幹細胞に由来する未成熟肝細胞を作製する目的で、いくつかの態様において、多能性細胞の単層が採取され、そして、たとえば2 x 105細胞/cm2の密度で、プレーティングされる。分化プロセスのステージ1は、多能性幹細胞を、アクチビンA、BMP4、FGF-2、またはB27のうちの1つまたは複数を含む培養培地において少なくとも1、2、または3日間培養することによって、開始される。この後に、アクチビンAおよびB27のうちの1種または複数種を含む培養培地における、少なくとも1、2、または3日間の細胞の培養が続く。分化プロセスのステージ2は、ステージ1から生じた細胞を、BMP4、FGF-2、またはB27のうちの1種または複数種を含む培養培地において、少なくとも1、2、3、4、または5日間培養することを含む。ステージ3は、ステージ2から生じた細胞を、HGFまたはB27(たとえば、インスリンが添加されているもの)のうちの1種または複数種を含む培養培地において、少なくとも1、2、3、4、または5日間培養することによって開始される。最後のステージ4は、ステージ3から生じた細胞を、オンコスタチン-MまたはSingleQuots(EGF不含)のうちの1種または複数種を含む培養培地において、少なくとも1、2、3、4、または5日間培養することを含む。
【0327】
いくつかの態様において、多能性幹細胞由来肝細胞は、Mallannaら 2013(Curr Protoc Stem Cell Biol.; 26:1G.4.1-1G.4.13;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)において以前に記載されているような、ステージ4つの20日間のプロトコルを用いた、培養皿に由来するものである。
【0328】
肝細胞の特徴
細胞は、いくつかの表現型上および/または機能上の基準にしたがって特徴付けすることが可能である。基準には、発現した細胞マーカーの検出または定量、酵素活性、ならびに、形態上の特色および細胞内シグナル伝達の特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。
【0329】
肝細胞、たとえば、本発明のいくつかの局面において具現化される成熟肝細胞は、天然の肝細胞に特徴的な形態上の特色を有し、天然の肝細胞とはたとえば、臓器提供元由来の初代肝細胞などである。そのような特色は、当業者には容易に理解されるものであり、かつ、該特色には以下のうちの任意のものまたは全てが含まれる:多角形である細胞の形、二核性の表現型、分泌タンパク質合成のための粗面小胞体の存在、細胞内タンパク質をソーティングするための、ゴルジ体・小胞体とリソソームの複合体の存在、ペルオキシソームおよびグリコーゲン顆粒の存在、比較的豊富なミトコンドリア、ならびに胆細管のスペースの形成をもたらす、細胞内のタイトジャンクションを形成する能力。1つの細胞に存在するこれらの特色のいくつかは、肝細胞系譜のメンバーである細胞のものと一致する。
【0330】
本発明の成熟肝細胞はまた、該細胞が、肝細胞系譜の細胞に特徴的な表現型マーカーを発現するかどうかによっても、特徴付けすることが可能である。成熟肝細胞を区別するのに有用な細胞マーカーの非限定的な例には、以下が含まれる:アルブミン、アシアロ糖タンパク質受容体、α1-アンチトリプシン、α-フェトプロテイン、apoE、アルギナーゼI、apoAI、apoAII、apoB、apoCIII、apoCII、アルドラーゼB、アルコールデヒドロゲナーゼ1、カタラーゼ、CYP3A4、グルコキナーゼ、グルコース-6-ホスファターゼ、インスリン増殖因子1および2、IGF-1受容体、インスリン受容体、レプチン、肝特異的有機アニオントランスポーター(LST-1)、L型脂肪酸結合タンパク質、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、トランスフェリン、レチノール結合タンパク質、エリスロポエチン(EPO、アルブミン、α1-アンチトリプシン、アシアロ糖タンパク質受容体、サイトケラチン8(CK8)、サイトケラチン18(CK18)、CYP3A4、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(FAH)、グルコース-6-リン酸、チロシンアミノトランスフェラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、ならびにトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ。
【0331】
成熟肝細胞はまた、肝細胞の成熟化を示す包括的遺伝子発現プロファイルを示してもよい。包括的遺伝子発現プロファイルは、初代肝細胞または公知の成熟肝細胞についての該プロファイルと比較されてよく、かつ、当技術分野において公知の任意の方法によって、たとえば、トランスクリプトーム解析やマイクロアレイ解析などによって、入手されてよく、または実施例に記載されるように入手されてもよい。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも1%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも5%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも10%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも20%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも30%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも40%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。いくつかの態様において、少なくとも1種の転写因子の発現を増加させる段階は、未成熟肝細胞のトランスクリプトームの少なくとも50%を、成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行させる。
【0332】
成熟肝細胞におけるそのようなマーカーの発現レベルの評価は、他の細胞、たとえば未成熟肝細胞などと比較することで、決定することが可能である。成熟肝細胞のマーカーのための陽性対照には、関心対象の生物種の成体の肝細胞、たとえば初代ヒト肝細胞(PHH)などが含まれる。
【0333】
本開示に列挙される、組織特異的(たとえば、肝細胞特異的)なタンパク質決定基およびオリゴ糖決定基は、任意の適切な免疫学的技術を用いて検出することが可能である - これはたとえば、細胞表面マーカーについてのフロー免疫細胞化学的解析、細胞内マーカーまたは細胞表面マーカーについての免疫組織化学的解析(たとえば、固定された細胞または組織切片の免疫組織化学的解析)、細胞抽出物についてのウエスタンブロット解析、および細胞抽出物または培地に分泌された産物についての酵素結合免疫アッセイなどである。標準的な免疫細胞化学的解析またはフローサイトメトリーアッセイにおいて、有意に検出可能な量の抗体が抗原に結合する場合に、細胞による抗原の発現は「抗体によって検出可能」と言われるが、これは任意で、細胞の固定の後であってよく、かつ任意で、標識された二次抗体、または標識を増幅する他のコンジュゲート(たとえばビオチン・アビジンコンジュゲート)を使用してよい。
【0334】
組織特異的な(たとえば成熟肝細胞特異的な)マーカーの発現はまた、ノーザンブロット解析によって、ドットブロットハイブリダイゼーション解析によって、または標準的な増幅法において配列特異的なプライマーを用いたリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)(米国特許第5,843,780号)によって、mRNAレベルで検出することが可能である。本開示において列挙される特定のマーカーの配列データは、公共のデータベース、たとえばGenBankなどから入手することが可能である。典型的な対照実験において標準的な手順にしたがって細胞試料についてアッセイを実施すると、標準的なタイムウィンドウ内において明瞭に識別可能なハイブリダイゼーション産物または増幅産物がもたらされる場合に、mRNAレベルにおける発現は、本開示に記載されるアッセイのうちの1種によって「検出可能」である、と言われる。別途要求されない限り、ある特定のマーカーは、その対応するmRNAがRT-PCRによって検出可能である場合に、その発現が示される。タンパク質レベルまたはmRNAレベルにおいて検出される、組織特異的マーカーの発現は、該レベルが対照細胞のレベルの少なくとも2倍を上回る場合に、かつ好ましくは10倍または50倍を超えて上回る場合に、陽性とみなされ、ここで対照細胞は、たとえば未分化の多能性幹細胞、線維芽細胞、または他の無関係の細胞タイプなどである。
【0335】
成熟肝細胞はまた、該細胞が、成熟肝細胞に特徴的な酵素活性を示すかどうかによっても、特徴付けされる。たとえば、グルコース-6-ホスファターゼ活性についてのアッセイは、Bublitz (1991);Yasminehら (1992);およびOckerman (1968)に記載されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。肝細胞におけるアルカリホスファターゼ(ALP)および5-ヌクレオチダーゼ(5'-Nアーゼ)についてのアッセイは、Shiojiri (1981)に記載されている;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0336】
他の態様において、本発明の成熟肝細胞は、生体異物の解毒を示す活性に関してアッセイされる。シトクロムp450は、モノオキシゲナーゼシステムにおける重要な触媒要素である。シトクロムp450は、生体異物(投与された薬剤)および多くの内因性化合物の酸化代謝を行う、ヘムタンパク質のファミリーを構成している。さまざまなシトクロムが、独特の基質特異性、およびオーバーラップする基質特異性を示す。生体内変換能力の大半は、1A2、2A6、2B6、3A4、2C9~2C11、2D6、および2E1と呼ばれるシトクロムに起因している(Gomes-Lechonら 1997);該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0337】
シトクロムp450酵素活性による生体異物の解毒を測定するための多数のアッセイが、当技術分野において公知である。CYP3A4による解毒は、P450-Glo(商標)CYP3A4 DMSO耐性アッセイ(ルシフェリン-PPXE)、ならびにP450-Glo(商標)CYP3A4細胞ベース/生化学アッセイ(ルシフェリン-PFBE)(Promega Inc、番号V8911および番号V8901)を用いて証明される。CYP1A1および・またはCYP1B1による解毒は、P450-Glo(商標)アッセイ(ルシフェリン-CEE)(Promega Inc.、番号V8762)を用いて証明される。CYP1A2および・またはCYP4Aによる解毒は、P450-Glo(商標)アッセイ(ルシフェリン-ME)(Promega Inc.、番号V8772)を用いて証明され、CYP2C9による解毒は、P450-Glo(商標)CYP2C9アッセイ(ルシフェリン-H)(Promega Inc.、番号V8791)を用いて証明される。
【0338】
別の局面において、本発明の成熟肝細胞の生物学的機能は、たとえばグリコーゲンの蓄積を解析することによって、評価される。グリコーゲンの蓄積は、グリコーゲン顆粒について、過ヨウ素酸シッフ(PAS)による官能基性の染色をアッセイすることによって特徴付けされる。細胞は最初に、過ヨウ素酸によって酸化される。酸化プロセスは、炭素-炭素結合の開裂による、アルデヒド基の形成をもたらす。酸化が行われるためには、遊離のヒドロキシル基が存在する必要がある。酸化は、アルデヒドステージに到達した際に完了する。このアルデヒド基は、シッフ試薬によって検出される。無色の不安定なジアルデヒド化合物が形成され、そしてこれは次に、キノイド発色団基の還元によって、有色の最終生成物へと変換される(Thompson, 1966;SheehanおよびHrapchak, 1987;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。PAS染色は、ワールドワイドウェブ上で「jhu.edu/~iic/PDF jrotocols/LM/Glycogen Staining pdf」および「library.med.utah.edu/WebPath/HISTHTML/MANUALS/PAS.PDF」に記載されるプロトコルにしたがい、肝細胞様細胞のインビトロ培養用にいくつかの改変を加えて実施することが可能である。当業者であれば、適切な改変を行うことが可能であるはずである。
【0339】
別の局面において、本発明の成熟肝細胞は、尿素の産生に関して特徴付けされる。尿素の産生は、Sigma Diagnosticによるキットを用いて比色法によりアッセイすることが可能であり(Miyoshiら 1998;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、これは、尿素およびアンモニアへのウレアーゼによる還元という生化学的反応、ならびにそれに続く、2-オキソグルタル酸からグルタミン酸およびNADを生成する反応に基づいている。
【0340】
別の局面において、胆汁の分泌が解析される。胆汁の分泌は、フルオレセインジアセタートの経時的アッセイによって決定することが可能である。手短に述べると、細胞の単層培養物、たとえば成熟肝細胞の単層培養物は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて3回リンスされ、そしてドキシサイクリンおよびフルオレセインジアセタート(20 μg/ml)(Sigma-Aldrich)が添加された無血清の肝細胞増殖培地において、37度で35分間インキュベートされる。細胞はPBSを用いて3回洗浄され、そして蛍光イメージングが実施される。フルオレセインジアセタートは、フルオレセインの非蛍光性の前駆体である。該化合物が肝細胞様細胞に取り込まれ、そしてフルオレセインへと代謝されたことを決定するために、画像が評価される。いくつかの態様において、該化合物は、細胞単層の細胞間隙へと分泌される。あるいは胆汁分泌は、GebhartおよびWang (1982)に記載される、フルオレセインナトリウムを用いる方法によって決定される;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0341】
さらなる別の局面において、脂質の合成が解析される。成熟肝細胞における脂質の合成は、オイルレッドO染色によって決定することが可能であり、オイルレッドO(ソルベントレッド27、スダンレッド5B、C.I. 26125、C26H24N4O)とは、凍結切片上で中性のトリグリセリドおよび脂質を染色するために、ならびにパラフィン切片上で一部のリポタンパク質を染色するために使用される、リソクロム(脂溶性)ジアゾ色素である。これは赤色粉末の外観を有し、極大吸収は518 nm(359 nm)である。オイルレッドOはスダン染色に使用される色素の1種であり、類似する色素にはスダンIII、スダンIV、およびスダンブラックBが含まれる。染色は、新鮮試料および/またはホルマリン固定試料において実施されるべきである。肝細胞様細胞は、顕微鏡スライド上で培養され、PBS中で3回リンスされ、該スライドは、室温で30~60分間風乾され、氷冷10% ホルマリン中で5~10分間固定され、そして次に、蒸留水を3回交換することで速やかにリンスされる。スライドは次に、オイルレッドOに水を持ち込むのを防ぐため、無水プロピレングリコール中に2~5分間置かれ、そして600度のオーブンにおいて、あらかじめ保温しておいたオイルレッドO溶液中で8分間染色される。スライドは次に、85% プロピレングリコール溶液中に2~5分間置かれ、そして蒸留水を2回交換してリンスされる。当業者であれば、オイルレッドO染色もまた、「library.med.utah.edu/WebPath/HISTHTML/MANUALS/OILRED.PDF」に記載されるプロトコルにしたがい、肝細胞様細胞のインビトロ培養用にいくつかの改変を加えて実施することが可能である。
【0342】
さらなる別の局面において、成熟肝細胞はグリコーゲン合成に関してアッセイされる。グリコーゲンアッセイは、たとえばPassonneauおよびLauderdale (1974)にあるように、当業者に周知である。あるいは、市販のグリコーゲンアッセイを使用することも可能であり、これはたとえば、BioVision, Inc.のカタログ番号K646-100などである。
【0343】
成熟肝細胞はまた、グリコーゲンを蓄積するその能力によっても評価することが可能である。好適なアッセイの1つは、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色を使用するものであり、これは、単糖および二糖とは反応しないが、長鎖のポリマー、たとえばグリコーゲンおよびデキストランなどを染色する。PAS反応は、複合糖質の、ならびに可溶性糖質化合物および膜結合型糖質化合物の、定量的推定を提供する。Kirkebyら (1992)は、糖質化合物および界面活性剤の定量的PASアッセイを記載している。van der Laarseら (1992)は、PAS反応を用いた、グリコーゲンについてのマイクロデンシトメトリー法による組織化学的アッセイを記載している。グリコーゲンを蓄積していることの証拠は、細胞が、対照細胞、たとえば線維芽細胞などのレベルの少なくとも2倍を上回るレベルで、かつ好ましくは10倍を超えて上回るレベルで、PAS陽性である場合に決定され、細胞はまた、標準的な方法によって核型分析を行うことによっても特徴付けすることが可能である。
【0344】
低分子薬剤の、抱合、代謝、または解毒に関与する酵素についても、アッセイが利用可能である。たとえば、成熟肝細胞は、尿路または胆道を経由した排泄に関して、ビリルビン、胆汁酸、および低分子薬剤を抱合する能力によって特徴付けすることが可能である。細胞を適切な基質と接触させ、適切な期間にわたってインキュベートし、そしてその後、培地を(GCMSまたは他の適切な技術によって)解析して、抱合型の産物が形成されたかどうかを決定する。薬剤代謝酵素の活性には、脱エチル化、脱アルキル化、水酸化、脱メチル化、酸化、グルクロン酸抱合、硫酸抱合、グルタチオン抱合、およびN-アセチルトランスフェラーゼ活性が含まれる(A. Guillouzo, "In vitro Methods in Pharmaceutical Research", pp 411-431, Academic Press, 1997;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。アッセイには、フェナセチン(peenacetin)の脱エチル化、プロカインアミドのN-アセチル化、パラセタモールの硫酸抱合、およびパラセタモールのグルクロン酸抱合が含まれる(Chesneら 1988;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0345】
本発明のある細胞集団、たとえば成熟肝細胞集団のさらなる特色は、適切な状況下で該集団が霊長類肝細胞向性の病原体に感受性であることである。そのような病原体には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、およびデルタ型肝炎、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、結核、ならびにマラリアが含まれる。たとえば、B型肝炎の感染性は、培養された成熟肝細胞を、感染性のB型肝炎粒子の供給源(たとえば、ヒトHBVキャリア由来の血清など)と組み合わせることによって、決定することが可能である。その後、免疫組織化学的解析またはRT-PCRによって、ウイルスコア抗原(HBcAg)の合成に関して肝細胞を試験することが可能である。
【0346】
さらなる別の局面において、成熟肝細胞は、対象において生着する、および/または対象において長期間の生存を示す、それらの能力に関して評価することが可能である。1つの態様において、肝細胞がインビボで生存しかつその表現型を維持するかどうかを決定するために、肝細胞は、動物(たとえばSCIDマウス)の、さらなる観察が容易な部位、たとえば、腎被膜下、脾臓内、または肝小葉内などに投与される。組織は数日~数週間かまたはより長い期間の後で採取されて、投与された細胞の存在および表現型が、たとえば、ヒト特異的抗体を用いる免疫組織化学的解析もしくはELISAによって、またはRT-PCR解析によって、評価される。mRNAレベルまたはタンパク質レベルにおいて遺伝子発現を評価するのに適したマーカーは、本開示において提供される。肝機能に対する作用はまた、肝組織において発現するマーカー、たとえばシトクロムp450活性などを評価することによっても、ならびに血中の指標、たとえば、アルカリホスファターゼ活性、ビリルビン抱合、およびプロトロンビン時間などを評価することによっても、決定することが可能である。
【0347】
成熟肝細胞の、対象において生着する、および/または対象において長期間の生存を示す能力を決定するためのアッセイは、たとえば、米国特許第9,260,722号;および米国特許出願公開第2020/0216823号に記載されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0348】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は対象の標的組織に生着する。いくつかの態様において、成熟肝細胞は成熟肝細胞集団を含み、ここで、少なくとも0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の成熟肝細胞が、対象の標的組織に生着する。いくつかの態様において、標的組織は肝臓である。
【0349】
成体または胎児の肝臓組織から単離された初代肝細胞培養物には、典型的には他の細胞型が混入しているが、成熟肝細胞の利点の1つは、そのような他の細胞型を本質的に含まないであろう点であることを、当業者であれば容易に理解するであろう。本発明のある局面によって提供される成熟肝細胞は、それらが示すことが意図されている、細胞ステージの特色のいくつかを有し得る。ある特定の細胞に存在するこれらの特色が多ければ多いほど、該細胞を、肝細胞系譜の細胞として特徴付けできるようになる。これらの特色の少なくとも2、3、5、7、または9個を有する細胞は、それが多いほどより好ましい。培養容器内に存在し得るある特定の細胞集団、または投与用の調製物に関して、細胞間でこれらの特色の発現が均一であることは、しばしば好都合である。この状況においては、その中の少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%の細胞が望ましい特色を有する集団は、それが多いほどより好ましい。
【0350】
本発明のある局面において提供される肝細胞の、他の望ましい特色は、薬剤のスクリーニングアッセイにおいて標的細胞として働く能力であり、かつ、インビボと、体外装置の一部としての両方において、肝機能を再構築する能力である。これらの特色は、以下のセクションにおいてさらに説明される。
【0351】
II. 本発明の細胞および組成物
本発明のさらなる局面は、肝細胞集団を含む組成物を提供し、該集団はたとえば、本明細書に記載される方法の任意のものによって作製される。いくつかの態様において、組成物は、富化された、純化された、または単離された肝細胞集団を含み、該集団はたとえば、本明細書に記載される方法の任意のものによって作製される。富化された、純化された、または単離された肝細胞集団は、シングルセル懸濁液、凝集体、キメラ凝集体、および/または構造体であってよく、ここで構造体には分枝した構造体および/またはシストが含まれる。
【0352】
いくつかの態様において、肝細胞集団は、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子の発現レベルの、該肝細胞集団における該転写因子の内因性の発現レベルと比較しての増加を含む。
【0353】
いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも20倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも50倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも100倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも200倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも500倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFIXの発現増加は、肝細胞集団におけるNFIXの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10,000倍の増加分を含む。
【0354】
いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも0.5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも2倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも5倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも20倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも50倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも100倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも200倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも500倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも1,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、NFICの発現増加は、肝細胞集団におけるNFICの内因性の発現レベルと比較して、少なくとも10,000倍の増加分を含む。
【0355】
いくつかの態様において、肝細胞集団は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子の発現レベルの、該肝細胞集団における該1種または複数種の転写因子の内因性の発現レベルと比較しての増加を、さらに含む。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はRORCである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR0B2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はESR1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTHRSPである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTBX15である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はHLFである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はATOH8である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1I2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はCUX2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はZNF662である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTSHZ2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はATF5である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNFIAである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNFIBである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNPAS2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はFOSである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はONECUT2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はPROX1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1H4である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はMLXIPLである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はETV1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はARである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はCEBPBである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1D1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はHEY2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はARID3Cである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はKLF9である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はDMRTA1である。
【0356】
いくつかの態様において、肝細胞集団は未成熟肝細胞集団である。いくつかの態様において、肝細胞集団は成熟肝細胞集団である。いくつかの態様において、肝細胞集団は、成熟肝細胞および未成熟肝細胞の両方を含む。
【0357】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミン(ALB)、シトクロムP450酵素1A2(CYP1A2)、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、および/またはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A-1(UGT1A1)の発現増加を示す。
【0358】
いくつかの態様において、CYP1A2の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、CYP3A4の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、TATの発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。いくつかの態様において、UGT1A1の発現増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、または10,000倍の増加分を含む。
【0359】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、αフェトプロテイン(AFP)の発現減少を示す。いくつかの態様において、AFPの発現減少は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍、または4倍の減少分を含む。
【0360】
いくつかの態様において、成熟肝細胞は、未成熟肝細胞と比較して、アルブミンの分泌増加、AFPの分泌減少、および/またはCYP1A2の活性増加を示す。いくつかの態様において、ALBの分泌増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、または25%の増加分を含む。いくつかの態様において、AFPの分泌減少は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも5%、10%、20%、40%、または60%の減少分を含む。いくつかの態様において、CYP1A2の活性増加は、未成熟肝細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、または400倍の増加分を含む。
【0361】
いくつかの態様において、肝細胞集団の組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の肝細胞を含む。いくつかの態様において、肝細胞集団の組成物は、少なくとも1 x 105個、1 x 106個、1 x 107個、1 x 108個、1 x 109個、1 x 1010個、1 x 1011個、または1 x 1012個の肝細胞を含む。
【0362】
本明細書においてはまた、肝細胞、たとえば成熟肝細胞または未成熟肝細胞などと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物および薬学的製剤も提供される。
【0363】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の範囲の肝細胞という用量を含む。いくつかの態様において、用量は、約1 x 105個、1 x 106個、1 x 107個、1 x 108個、1 x 109個、1 x 1010個、1 x 1011個、または1 x 1012個の肝細胞である。いくつかの態様において、薬学的組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の範囲の肝細胞という用量を含む。
【0364】
本発明のさらなる局面は、発現ベクターを含む多能性幹細胞集団を含む組成物を提供し、ここで発現ベクターは、本開示の少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む。
【0365】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。いくつかの態様において、転写因子はNFICである。いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0366】
いくつかの態様において、多能性幹細胞集団は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを、さらに含む。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はRORCである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR0B2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はESR1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTHRSPである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTBX15である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はHLFである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はATOH8である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1I2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はCUX2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はZNF662である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTSHZ2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はATF5である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNFIAである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNFIBである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNPAS2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はFOSである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はONECUT2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はPROX1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1H4である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はMLXIPLである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はETV1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はARである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はCEBPBである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1D1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はHEY2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はARID3Cである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はKLF9である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はDMRTA1である。
【0367】
いくつかの態様において、多能性幹細胞集団を含む組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の多能性幹細胞を含む。いくつかの態様において、多能性幹細胞集団を含む組成物は、少なくとも1 x 105個、1 x 106個、1 x 107個、1 x 108個、1 x 109個、1 x 1010個、1 x 1011個、または1 x 1012個の多能性幹細胞を含む。
【0368】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞は人工多能性幹細胞である。
【0369】
本発明のさらなる局面は、発現ベクターを含む未成熟肝細胞集団を含む組成物を提供し、ここで発現ベクターは、本開示の少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む。
【0370】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。いくつかの態様において、転写因子はNFICである。いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0371】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞集団は、RORC、NR0B2、ESR1、THRSP、TBX15、HLF、ATOH8、NR1I2、CUX2、ZNF662、TSHZ2、ATF5、NFIA、NFIB、NPAS2、FOS、ONECUT2、PROX1、NR1H4、MLXIPL、ETV1、AR、CEBPB、NR1D1、HEY2、ARID3C、KLF9、およびDMRTA1からなる群より選択される1種または複数種の転写因子をコードする核酸を含む発現ベクターを、さらに含む。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はRORCである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR0B2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はESR1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTHRSPである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTBX15である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はHLFである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はATOH8である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1I2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はCUX2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はZNF662である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はTSHZ2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はATF5である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNFIAである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNFIBである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNPAS2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はFOSである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はONECUT2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はPROX1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1H4である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はMLXIPLである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はETV1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はARである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はCEBPBである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はNR1D1である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はHEY2である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はARID3Cである。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はKLF9である。いくつかの態様において、1種または複数種の転写因子はDMRTA1である。
【0372】
いくつかの態様において、未成熟肝細胞集団を含む組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の未成熟肝細胞を含む。いくつかの態様において、未成熟肝細胞集団を含む組成物は、少なくとも1 x 105個、1 x 106個、1 x 107個、1 x 108個、1 x 109個、1 x 1010個、1 x 1011個、または1 x 1012個の未成熟肝細胞を含む。
【0373】
本明細書においてはまた、未成熟肝細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物および薬学的製剤も提供される。
【0374】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の範囲の未成熟肝細胞という用量を含む。いくつかの態様において、用量は、約1 x 105個、1 x 106個、1 x 107個、1 x 108個、1 x 109個、1 x 1010個、1 x 1011個、または1 x 1012個の未成熟肝細胞である。いくつかの態様において、薬学的組成物は、約1 x 106個~約1 x 1012個の範囲の未成熟肝細胞という用量を含む。
【0375】
本明細書に記載される薬学的組成物および薬学的製剤は、本開示の細胞、たとえば成熟肝細胞などを、1種または複数種の任意の薬学的に許容される担体と混合することによって、水性溶液の形態として調製することが可能である("Remington's Pharmaceutical Sciences" 第22版 2012;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。薬学的に許容される担体は一般的に、利用される投与量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、かつ該担体には以下が含まれるが、これらに限定されない:緩衝剤、たとえば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸など;抗酸化剤であって、アスコルビン酸およびメチオニンを含めたもの;保存剤(たとえば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、たとえばメチルパラベンもしくはプロピルパラベンなど;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、たとえば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、たとえばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、たとえば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなど;単糖、二糖、および他の糖質であって、グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めたもの;キレート剤、たとえばEDTAなど;糖、たとえば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなど;塩形成対イオン、たとえばナトリウムなど;金属錯体(たとえばZn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、たとえばポリエチレングリコール(PEG)など。本明細書における薬学的に許容される担体の例示的なものには、細胞間質で薬剤を分散させる作用物質がさらに含まれ、これはたとえば、可溶性であって中性で活性なヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)であり、その例としては、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、たとえばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)などである。rHuPH20を含めたいくつかの例示的なsHASEGP、および使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。1つの局面において、sHASEGPは、1種または複数種のさらなるグリコサミノグリカナーゼ、たとえばコンドロイチナーゼなどと組み合わせられる。
【0376】
ある態様において、肝細胞を含む、組成物および薬学的組成物は、実質的に純化された肝細胞集団を含む。たとえば、肝細胞組成物は、肝細胞以外の細胞を、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満しか含まない場合がある。いくつかの態様において、肝細胞組成物は、多能性幹細胞を、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満しか含まない。別の態様において、肝細胞組成物は、多能性幹細胞を有さないか、または多能性幹細胞の検出が不可能である。いくつかの態様において、実質的に純化された肝細胞集団を含む組成物とは、肝細胞が、組成物中の細胞の少なくとも約75%を構成するものである。他の態様において、実質的に純化された肝細胞集団とは、肝細胞が、集団中の細胞の少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、99%、または99%よりもさらに多くを構成するものである。態様の任意のものにおいて、肝細胞は成熟肝細胞であってよい。
【0377】
別の態様において、肝細胞を含む組成物および薬学的組成物は、肝細胞の機能を増大させるかまたは補完するのに有用であり得る、肝細胞以外の細胞を含んでよく、該細胞には以下が含まれるが、これらに限定されない:間葉系幹細胞、内皮細胞、胆管細胞、星細胞、および/またはクッパー細胞。他の態様において、肝細胞を含む組成物および薬学的組成物はオルガノイドを含み、ここでオルガノイドとは、しばしば自己組織化することが可能であり、かつインビボでの、細胞と細胞外マトリックスとの高度な相互作用、および細胞と細胞との高度な相互作用のための環境を提供する、細胞の3次元構造体である。たとえば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるOlgasiら International Journal of Molecular Sciences 21:6215 (2020)を参照されたい。オルガノイドは肝細胞を含み、かつ他の細胞、たとえば、間葉系幹細胞、内皮細胞、胆管細胞、星細胞、およびクッパー細胞などを、さらに含んでもよい。態様の任意のものにおいて、肝細胞は成熟肝細胞であってよい。
【0378】
III. 肝細胞の使用方法
本明細書に記載される方法によって作製される、肝細胞および薬学的組成物は、肝細胞が必要とされるかまたは肝細胞が処置を改善し得る、細胞ベースの処置のために使用されてよい。肝細胞ベースの治療法によって恩恵を受け得るさまざまな病態を処置するために、本発明によって提供される肝細胞を使用する方法が、本明細書に記載される。個別の処置レジメン、投与経路、および任意のアジュバント療法は、個別の病態、病態の重症度、および患者の健康状態全般に基づいて調整される。加えて、ある態様において、肝細胞の投与は、肝機能の喪失または他の症状を、完全に回復させるのに有効であり得る。他の態様において、肝細胞の投与は、症状の重症度を低減させるのに、および/または患者の病態のさらなる悪化を予防するのに、有効であり得る。本発明は、肝細胞を含む組成物の投与が、本明細書に記載される病態の任意のものを処置する(症状の重症度をその全てまたは一部において低減させることが含まれる)ために使用され得ることを意図する。
【0379】
本発明は、本明細書に記載される方法の任意のものを用いて生じさせた肝細胞、これには肝細胞を含む組成物が含まれるが、このような肝細胞が、本明細書に記載される適応症の任意のものの処置に使用され得ることを意図する。さらに本発明は、本明細書に記載される肝細胞を含む組成物の任意のものが、本明細書に記載される適応症の任意のものの処置に使用され得ることを意図する。別の態様において、本発明の肝細胞は、他の治療用細胞または他の治療剤とともに投与されてよい。肝細胞は、複合製剤として、または別々の製剤として、同時にまたは連続して投与されてよい。
【0380】
1つの態様において、本発明は、以下からなる群より選択される疾患または異常を処置する方法を提供する:任意の原因に起因する劇症肝不全、ウイルス性肝炎、薬物性肝障害、肝硬変、遺伝性肝機能不全(たとえば、ウィルソン病、ジルベール症候群、またはα1-アンチトリプシン欠乏症)、肝胆道癌、自己免疫性肝疾患(たとえば、自己免疫性慢性肝炎または原発性胆汁性肝硬変)、尿素サイクル異常症、第VII因子欠乏症、糖原病1型、小児レフサム病、フェニルケトン尿症、重症小児シュウ酸症、肝硬変、肝障害、急性肝不全、肝胆道癌、肝細胞癌、遺伝性胆汁うっ滞症(PFICおよびアラジール症候群)、遺伝性ヘモクロマトーシス、チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症(ASL)、クリグラー・ナジャール症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー、非典型溶血性尿毒症症候群-1、原発性高シュウ酸尿症1型、メープルシロップ尿症(MSUD)、急性間欠性ポルフィリン症、凝固障害、GSD Ia型(代謝制御におけるもの)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症、有機酸尿症、ならびに肝機能障害を引き起こす任意の他の病態。
【0381】
本発明の方法および組成物によって提供される肝細胞はまた、さまざまな用途に使用することが可能でもある。該用途には以下が含まれるが、これらに限定されない:インビボでの肝細胞の移植または埋め込み;細胞毒性化合物、発がん性物質、変異原、増殖因子/調節因子、または薬学的化合物のインビトロスクリーニング;肝疾患および感染のメカニズムの解明;薬剤および/または増殖因子が作動するメカニズムの研究;患者におけるがんの診断およびモニタリング;遺伝子療法;ならびに生物学的に活性な産物の作製。いくつかの態様において、肝細胞は、成熟肝細胞、未成熟肝細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0382】
試験化合物のスクリーニング
本発明の肝細胞は、本明細書に提供される肝細胞の特徴に影響を及ぼす因子(たとえば、溶媒、低分子薬剤、ペプチド、およびポリヌクレオチドなど)、またはそのような環境条件(たとえば、培養条件もしくは操作)をスクリーニングするために、使用することが可能である。
【0383】
いくつかの用途において、肝細胞系譜にしたがった細胞の成熟化を増進するか、または長期間の培養下でそのような細胞の増殖および維持を増進する因子をスクリーニングするために、幹細胞(分化したものまたは未分化のもの)が使用される。たとえば、肝細胞の成熟化因子または肝細胞の増殖因子の候補は、さまざまなウェルにおいてそれら候補を幹細胞に添加し、そして次に、生じた表現型の任意の変化を、細胞のさらなる培養および細胞の使用にとって望ましい基準に照らして決定することによって、試験される。
【0384】
本発明のある特定のスクリーニング用途は、薬剤の研究における薬学的化合物の試験に関連しており、これはたとえば、"In vitro Methods in Pharmaceutical Research", Academic Press, 1997、および米国特許第5,030,015号に記載されるようなものである;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明のある局面において、肝細胞は、短期間の培養下の肝細胞細胞株または初代肝細胞において以前から実施されているような、薬剤の標準的なスクリーニングアッセイおよび毒性アッセイのための、試験細胞としての役割を果たす。薬学的化合物候補の活性の評価は、概して以下を伴う:本発明のある局面において提供される肝細胞を、候補化合物と組み合わせること;細胞の形態、マーカー表現型、または代謝活性の、該化合物に起因する任意の変化を(未処理の細胞と比較して、または不活性な化合物で処理された細胞と比較して)決定すること;および次に、化合物の作用と観察された変化との相関を示すこと。スクリーニングは、化合物が、肝細胞に対する薬学的作用を有するように設計されている点か、または他の部位に対する作用を有するように設計されている化合物が、肝臓に対する意図されていない副作用を有し得る点のいずれかを理由として行われ得る。薬剤間で生じる可能性のある相互作用を検出するために、2種以上の薬剤を併用して(それらを同時にまたは連続してのいずれかで細胞と組み合わせることによって)試験することが可能である。
【0385】
いくつかの用途において、化合物は、肝毒性の潜在性に関して最初にスクリーニングされる(Castellら 1997;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。細胞毒性は、細胞の活力、細胞の生存率、細胞の形態、および培養培地への酵素漏出に対する、その作用によって、最初に決定することが可能である。化合物が、毒性を引き起こすことなく細胞の機能(たとえば、糖新生、尿素生成、および血漿タンパク質の合成)に影響を及ぼすかどうかを決定するために、より詳細な解析が実施される。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は良好なマーカーであるが、これは、肝臓型のアイソエンザイム(V型)が培養条件下で安定であり、12~24時間のインキュベーション後に培養上清において再現性のある測定が可能であるためである。たとえば、ミトコンドリアのグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼおよびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼなどの、酵素の漏出もまた、使用することが可能である。その全体が参照により本明細書に組み入れられるGomez-Lechonら (1996)は、グリコーゲンを測定するためのマイクロアッセイについて記載しており、これは、肝細胞の糖新生に対する薬学的化合物の作用を測定するために使用することが可能である。
【0386】
肝毒性を評価するための他の現行の方法には、以下が含まれる:アルブミン、コレステロール、およびリポタンパク質の、合成ならびに分泌の決定;抱合型の胆汁酸およびビリルビンの輸送;尿素生成;シトクロムp450のレベルおよび活性;グルタチオンのレベル;α-グルタチオンS-トランスフェラーゼの放出;ATP、ADP、およびAMPの代謝;細胞内のK+およびCa2+の濃度;核マトリックスタンパク質またはオリゴヌクレオソームの放出;ならびにアポトーシスの誘導(細胞のラウンディング、クロマチンの凝縮、および核の断片化によって示される)。DNA合成は、[3H]-チミジンまたはBrdUの取り込みとして測定することが可能である。DNAの合成または構造に対する薬剤の作用は、DNAの合成または修復を測定することによって決定することが可能である。[3H]-チミジンまたはBrdUの取り込み、特に、細胞周期において予定外の時期のもの、または細胞の複製に必要とされるレベルを上回るものは、薬剤の作用と一致する。望まれない作用には、姉妹染色分体交換の異常な比率もまた含まれ得、これは中期スプレッドによって決定される。
【0387】
肝臓の治療法および肝移植
本発明はまた、それを必要とする対象において一定の肝機能を回復させるための、本明細書に記載される肝細胞の使用を提供するものでもあり、これはたとえば、急性の、慢性の、または遺伝性の肝機能障害に起因するものである。
【0388】
本明細書において提供される肝細胞が治療用途に適していることを決定するために、該細胞を、適切な動物モデルにおいて最初に試験することが可能である。ある1つのレベルにおいて、細胞は、インビボで生存しかつその表現型を維持する能力について、評価される。本明細書において提供される肝細胞は、免疫不全動物(たとえば、SCIDマウス、または化学的に、もしくは照射により、免疫不全の状態にした動物など)の、さらなる観察が容易な部位、たとえば、腎被膜下、脾臓内、または肝小葉内などに投与される。数日間から数週間かまたはより長い期間の後で、組織が採取され、そして評価される。これは、投与される細胞に検出可能な標識(たとえば緑色蛍光タンパク質またはβ-ガラクトシダーゼなど)を加えることによって;または投与される細胞に特異的な構成的マーカーを測定することによって、実施することが可能である。本明細書において提供される肝細胞が、げっ歯類モデルにおいて試験されている場合、投与された細胞の存在および表現型は、ヒト特異的抗体を用いて、免疫組織化学的解析もしくはELISAによって評価されてよく、または、ヒトポリヌクレオチド配列に特異的な増幅を引き起こすプライマーおよびハイブリダイゼーション条件を用いて、RT-PCR解析によって評価されてもよい。mRNAレベルまたはタンパク質レベルにおいて遺伝子発現を評価するのに適したマーカーは、本明細書において提供される。動物モデルにおいて肝細胞様細胞の運命を決定するための一般的な説明は、たとえば、Grompeら (1999);Peetersら (1997);およびOhashiら (2000)に記載されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0389】
別のレベルにおいて、本明細書において提供される肝細胞は、肝臓の完全な機能を有さない動物において肝臓の機能を回復させる能力について、評価される。その全体が参照により本明細書に組み入れられるBraunら (2000)は、HSV-tk遺伝子についてのトランスジェニックマウスにおける、毒素性肝疾患モデルの概要を示している。それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Rhimら (1995)、およびLieberら (1995)は、ウロキナーゼの発現による肝疾患モデルの概要を示している。その全体が参照により本明細書に組み入れられるMignonら (1998)は、細胞表面マーカーであるFasに対する抗体によって誘導される肝疾患の概要を示している。その全体が参照により本明細書に組み入れられるOverturfら (1998)は、Fah遺伝子の標的型破壊によって、遺伝性チロシン血症I型のマウスにおけるモデルを開発している。2-(2-ニトロ-4-フルオロ-メチル-ベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオン(NTBC)の供給を提供することによって、動物を欠乏症から救済することが可能であるが、NTBCを取りやめると、動物は肝疾患を発症する。急性肝疾患は、Kobayashiら 2000に記載されるように、90%の肝切除によってモデル化することが可能である;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。急性肝疾患はまた、肝毒素、たとえば、ガラクトサミン、CCl4、またはチオアセトアミドなどで動物を処理することによっても、モデル化することが可能である。
【0390】
慢性肝疾患、たとえば肝硬変などは、線維症を誘導するのに十分である長さの期間にわたり、亜致死量の肝毒素で動物を処理することによって、モデル化することが可能である(Rudolphら 2000;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。本明細書において提供される肝細胞が肝機能を再構築する能力の評価は、該細胞をそのような動物に投与すること、および次に、病態の進行について動物をモニタリングしながら、1~8週間の期間かまたはさらに長い期間にわたって生存率を決定することを伴う。肝機能に対する作用は、肝組織において発現するマーカー、シトクロムp450活性、ならびに、血中の指標、たとえば、アルカリホスファターゼ活性、ビリルビン抱合、およびプロトロンビン時間など)を評価することによって、ならびに宿主の生存率を評価することによって、決定することが可能である。これらの基準の任意のものに照らして、生存率、疾患の進行、または肝機能の維持において何らかの改善があれば、それは治療法の有効性に関連しており、かつ、さらなる最適化をもたらし得る。
【0391】
その代謝酵素プロファイルまたは動物モデルにおけるその効力に照らして望ましい機能的特徴が立証される、本発明のある局面において提供される肝細胞(たとえば、成熟肝細胞)もまた、肝機能障害を有するヒト対象へと直接投与するのに適切であり得る。止血を目的として、細胞は、循環へと適切に接近可能である任意の部位に、典型的には腹腔内に、投与することが可能である。いくつかの代謝機能および解毒機能に関しては、細胞が胆道に接近可能であることが好都合である。したがって細胞は、肝臓の近くに投与される(たとえば慢性肝疾患の処置)か、または脾臓の近くに投与される(たとえば劇症肝不全の処置)。1つの方法において、細胞は、留置カテーテルを用いて注入することにより、肝動脈または門脈のいずれかを経由して肝循環へと投与される。門脈にあるカテーテルは、細胞を主に、脾臓もしくは肝臓へと、またはそれら両方の組み合わせへと流すように操作することが可能である。別の方法においては、細胞は、標的臓器に近い腔にボーラスを設置することによって投与され、典型的にはボーラスは、それを所定の位置に保持する賦形剤またはマトリックス中にある。別の方法においては、細胞は、肝葉または脾臓へと直接注入される。
【0392】
本発明のある局面において提供される肝細胞は、肝機能を回復または補完させることを必要とする任意の対象を治療するために、使用することが可能である。そのような治療に適している可能性があるヒトの病態には以下が含まれるが、これらに限定されない:任意の原因に起因する劇症肝不全、ウイルス性肝炎、薬物性肝障害、肝硬変、遺伝性肝機能不全(たとえば、ウィルソン病、ジルベール症候群、またはα1-アンチトリプシン欠乏症)、肝胆道癌、自己免疫性肝疾患(たとえば、自己免疫性慢性肝炎または原発性胆汁性肝硬変)、尿素サイクル異常症、第VII因子欠乏症、糖原病1型、小児レフサム病、フェニルケトン尿症、重症小児シュウ酸症、肝硬変、肝障害、急性肝不全、肝胆道癌、肝細胞癌、遺伝性胆汁うっ滞症(PFICおよびアラジール症候群)、遺伝性ヘモクロマトーシス、チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症(ASL)、クリグラー・ナジャール症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー、非典型溶血性尿毒症症候群-1、原発性高シュウ酸尿症1型、メープルシロップ尿症(MSUD)、急性間欠性ポルフィリン症、凝固障害、GSD Ia型(代謝制御におけるもの)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症、有機酸尿症、ならびに肝機能障害を引き起こす任意の他の病態。ヒトの治療に関し、用量は、一般的には細胞約109~1012個であり、かつ典型的には細胞約5 x 109~5 x 1010個であり、これは、対象の体重、病気の性質および重症度、ならびに投与された細胞の複製能力に関して、調整がなされる。
【0393】
肝補助装置の使用
本発明はまた、バイオ人工肝装置に内包化されているかまたはバイオ人工肝装置の一部である、本明細書に開示される肝細胞の使用方法を提供する。当技術分野においては、たとえば"Cell Encapsulation Technology and Therapeutics", 1999に、内包化のさまざまな形態が記載されている;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明のある局面において提供される肝細胞は、そのような方法によって、インビトロまたはインビボのいずれかでの使用のために内包化されてよい。
【0394】
臨床使用のためのバイオ人工臓器は、肝機能障害を有する個人を支援するように設計されている - これは、長期間にわたる治療法の一部としての支援か、または劇症肝不全と、肝再構築もしくは肝移植との間の期間の橋渡しをするための支援のいずれかである。バイオ人工肝装置は、Macdonaldら "Cell Encapsulation Technology and Therapeutics", pp. 252-286に記載されており、かつ、米国特許第5,290,684号、同第5,624,840号、同第5,837,234号、同第5,853,717号、および同第5,935,849号に例示されている;該文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。懸濁液型のバイオ人工肝臓は、平板型透析器中に懸濁された細胞、適切な基材中にマイクロカプセル化された細胞、または細胞外マトリックスがコートされたマイクロキャリアビーズに結合させた細胞を含む。あるいは肝細胞は、充填層中で固体の支持体上に、マルチプレートフラットベッド中に、マイクロチャネルスクリーン上に、または中空糸毛細管を取り囲むように、配置されてよい。装置は、対象の血液が通過するインレットおよびアウトレットを有し、かつ装置は、細胞に栄養分を供給するための別個のポート一式を有することもある。
【0395】
肝細胞は、本明細書に記載される方法にしたがって調製され、そして次に、適切な基材、たとえばMatrigel(登録商標)またはコラーゲンなどのマトリックス上において、装置へとプレーティングされる。装置の効力は、輸入チャネルにおける血液の組成を、輸出チャネルにおけるものと比較することによって評価することが可能である - これは、輸入フローから除去される代謝物、および輸出フロー中の新規に合成されたタンパク質に関して行われる。この様式の装置は、流体、たとえば血液などを解毒するために使用することが可能であり、該流体は、本発明のある局面において提供される肝細胞が、該流体中の毒素を除去するかまたは改変することを可能にする条件下で、該肝細胞と接触することになる。解毒は、通常は肝臓により処理される少なくとも1種のリガンド、代謝物、または他の化合物(天然および合成のいずれか)を、除去するかまたは変化させることを伴い得る。そのような化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:ビリルビン、胆汁酸、尿素、ヘム、リポタンパク質、糖質、トランスフェリン、ヘモペキシン、アシアロ糖タンパク質、インスリンおよびグルカゴンのようなホルモン、ならびにさまざまな低分子薬剤。装置はまた、合成されたタンパク質を輸出流体において富化させるために使用することも可能であり、該タンパク質はたとえば、アルブミン、急性相反応物質、および無負荷の担体タンパク質などである。装置はまた、このようなさまざまな機能が実施されて、それにより、必要とされる限り多くの肝機能を回復させるように、最適化することが可能である。治療的ケアの状況において、装置は、肝細胞不全の患者からの血流を処理し、そしてその後、血液は患者へと戻る。
【0396】
本発明はまた、本明細書に開示される肝細胞を、たとえば他の細胞型と組み合わせて、オルガノイドとして使用する方法をも提供する。オルガノイドは、肝細胞から樹立させることが可能であり、かつこれは、形態上の、機能上の、および遺伝子発現上の重要な特色を保持しながら、数か月にわたって増殖させることが可能である。たとえば、Huら 2018, Cell; 175(6):1591-1606を参照されたい;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0397】
さらに、製造、販売、および使用の目的のため、本発明の肝細胞は、等張の賦形剤または培養培地において、細胞培養物または細胞懸濁液の形態として供給されてよく、これは任意で、輸送または保管を容易にするために、凍結されてよい。
【0398】
本発明はまた、製造、販売、および使用の過程において常に存続している細胞のセットまたは細胞の組み合わせを含む、さまざまな試薬システムを含む。細胞セットは、本開示に記載される2種以上の細胞集団の任意の組み合わせを含み、これはたとえば、未分化の幹細胞、体細胞由来肝細胞、または他の分化した細胞型と組み合わせられた、成熟肝細胞、その前駆体、およびそのサブタイプなどである。セット中の細胞集団は、同じゲノムか、またはその遺伝学的に改変された型を有していることがある。
【0399】
本発明は、肝細胞、たとえばヒト多能性幹細胞(たとえば、ヒト胚性幹細胞または他の多能性幹細胞)から入手された肝細胞の組成物が、前述の疾患または病態の任意のものを処置するために使用され得ることを意図する。これらの疾患は、成熟度レベルがさまざまである肝細胞を含む、肝細胞組成物を用いて処置されてよく、かつ、成熟肝細胞が富化された肝細胞組成物を用いて処置されてもよい。
【0400】
IV. 肝細胞の投与方法
本発明の肝細胞は、処置されている疾患または異常に適した任意の投与経路によって投与されてよい。1つの態様において、本発明の肝細胞は、たとえば、注入によって、または装置もしくはインプラント(たとえば、持続放出インプラント)の一部として、局所(topical)投与されてよく、全身投与されてよく、または局所(local)投与されてもよい。たとえば、本発明の肝細胞は、たとえば以下の異常または疾患を有する患者を処置する際に、外科的処置を用いて、肝細胞が存在すべき空間へと移植されてよい:任意の原因に起因する劇症肝不全、ウイルス性肝炎、薬物性肝障害、肝硬変、遺伝性肝機能不全(たとえば、ウィルソン病、ジルベール症候群、またはα1-アンチトリプシン欠乏症)、肝胆道癌、自己免疫性肝疾患(たとえば、自己免疫性慢性肝炎または原発性胆汁性肝硬変)、尿素サイクル異常症、第VII因子欠乏症、糖原病1型、小児レフサム病、フェニルケトン尿症、重症小児シュウ酸症、肝硬変、肝障害、急性肝不全、肝胆道癌、肝細胞癌、遺伝性胆汁うっ滞症(PFICおよびアラジール症候群)、遺伝性ヘモクロマトーシス、チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症(ASL)、クリグラー・ナジャール症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー、非典型溶血性尿毒症症候群-1、原発性高シュウ酸尿症1型、メープルシロップ尿症(MSUD)、急性間欠性ポルフィリン症、凝固障害、GSD Ia型(代謝制御におけるもの)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症、有機酸尿症、ならびに肝機能障害を引き起こす任意の他の病態。当業者であれば、処置されている疾患または異常のための投与経路を決定することが可能であろう。
【0401】
本発明の肝細胞は、薬学的に許容される製剤として、注入により送達されてよい。注入のための濃度は、本明細書に記載される因子に応じて、有効であってかつ非毒性である任意の量におけるものであってよい。1つの態様において、少なくとも1 x 106個、2 x 106個、5 x 106個、1 x 107個、1 x 108個、または1 x 1010個の肝細胞が、それを必要とする患者に投与されてよい。
【0402】
本発明の作用物質を含む産物およびシステム、たとえば送達ビヒクルなどであって、特に、薬学的組成物として製剤化されているものもまた、本発明の一部であると想定されており、同様に、そのような送達ビヒクルおよび/またはシステムを含むキットもまた、本発明の一部であると想定されている。
【0403】
ある態様において、本発明の治療方法は、インプラントまたは装置を用いて本発明の肝細胞を投与する段階を含む。ある態様において、装置は、本明細書に記載される疾患または病態を処置するための、生体内分解性インプラントである。
【0404】
本明細書に記載される方法によって投与される組成物の量はまた、たとえば、投与様式、肝細胞の数、患者の年齢、ならびに、処置されている疾患のタイプおよび重症度などといった因子に応じても変化する。
【0405】
肝細胞は、患者の生涯にわたって、定期的に1回または複数回送達されてよい。たとえば肝細胞は、1年に1回、6~12か月ごとに1回、3~6か月ごとに1回、1~3か月ごとに1回、または1~4週間ごとに1回送達され得る。あるいは、ある特定の病態または異常については、より高頻度の投与が望ましい場合がある。インプラントまたは装置によって投与される場合、肝細胞は、その特定の患者の必要に応じて、および処置されているその特定の異常または病態の必要に応じて、1回投与されてよく、または患者の生涯にわたって、定期的に1回または複数回送達されてよい。同様に、徐々に変化する治療レジメンもまた意図される。ある態様において、患者には、肝細胞の投与の前か、肝細胞の投与と同時か、または肝細胞の投与の後のいずれかに、免疫抑制療法もまた施される。免疫抑制療法は、患者の生涯にわたって、またはより短い期間にわたって、必要となる可能性がある。免疫抑制療法の例には、以下の1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない:抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BASILIXIMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUXIMAB(登録商標)(抗CD20抗体)、シロリムス、タクロリムス(Prograf(商標))、およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)。
【0406】
ある態様において、本発明の肝細胞は、薬学的に許容される担体とともに製剤化される。たとえば肝細胞は、単独で投与されてよく、または薬学的製剤の構成要素として投与されてもよい。肝細胞は、ヒトの医薬として使用するのに都合の良い任意の様式での投与のために、製剤化されてよい。ある態様において、非経口投与に適した薬学的組成物は、肝細胞を、薬学的に許容され滅菌されていて等張である、水性溶液もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルションか、または、滅菌されていて注入可能な溶液もしくは分散液として使用直前に再構成され得る、薬学的に許容され滅菌されている粉末のうちの、1種または複数種と組み合わせて含んでよく、これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されるレシピエントの血液に対して製剤を等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含んでよい。本発明の薬学的組成物において利用され得る、適切な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合物が含まれる。適切な流動性は、たとえば、コーティング物質、たとえばレシチンなどを使用することによって維持されてよく、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズを維持することによって維持されてよく、かつ、界面活性剤を使用することによって維持されてもよい。
【0407】
V. キット
別の局面において、本発明は、たとえば多能性幹細胞集団、未成熟肝細胞集団、成熟肝細胞集団などの本開示の肝細胞集団、および/または本開示の薬学的組成物を含む、製造物品(article of manufacture)またはキットを提供する。
【0408】
別の局面において、本発明は、発現ベクターを含む、製造物品またはキットを提供し、ここで発現ベクターは、核内因子I X(NFIX)および核内因子I C(NFIC)からなる群より選択される少なくとも1種の転写因子をコードする核酸を含む。
【0409】
いくつかの態様において、転写因子はNFIXである。いくつかの態様において、転写因子はNFICである。いくつかの態様において、転写因子はNFIXおよびNFICである。
【0410】
いくつかの態様において、NFICは、NFIC転写バリアント1;NFIC転写バリアント2;NFIC転写バリアント3;NFIC転写バリアント4;およびNFIC転写バリアント5からなる群より選択される、少なくとも1種のNFIC選択的スプライスバリアントである。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント3である。いくつかの態様において、NFIC選択的スプライスバリアントはNFIC転写バリアント1およびNFIC転写バリアント3である。
【0411】
製造物品またはキットは、使用指示書を含む添付文書をさらに含んでよく、該使用指示書はたとえば、本明細書に開示される任意の疾患を処置するかまたはその進行を遅延させる目的で本発明の肝細胞集団または薬学的組成物を使用するための使用指示書である。製造物品またはキットは、使用指示書とともに、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでよく、これには、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用指示書を伴う添付文書が含まれる。いくつかの態様において、製造物品は、別の作用物質(たとえば化学療法剤)の1種または複数種をさらに含む。該1種または複数種の作用物質に適した容器には、たとえば、ボトル、バイアル、バッグ、およびシリンジが含まれる。
【0412】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み入れられる。不一致のある場合には、定義を含め、本明細書に従うものとする。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、かつこれらは限定することを意図したものではない。
【実施例
【0413】
実施例1:材料および方法
レンチウイルスの作製
Tet-On 3Gウイルス粒子はタカラバイオから購入した(タカラバイオ、カタログ番号0055VCT)。pLVX-TRE3G(タカラバイオ、カタログ番号631187)は、Tet-On誘導性プロモーター下で関心対象の遺伝子を発現させるためのレンチウイルスベクターとして使用され、かつpLVX-TRE3G-ルシフェラーゼは陽性対照として使用された。レンチウイルス粒子は、タカラバイオ(www.takarabio.com)によって開発された一連の製品を用いて作製された。ウイルスのパッケージングは、Lenti-X 293T細胞(タカラバイオ、カタログ番号632180)、ならびにLenti-Xパッケージングシングルショット(タカラバイオ、カタログ番号631275および631276)からなる第4世代レンチウイルスパッケージングシステムを用いて実施された。ウイルスの濃度および量はそれぞれ、Lenti-X(商標)濃縮試薬(タカラバイオ、カタログ番号631231および631232)、ならびにLenti-X qRT-PCRタイター測定キット(タカラバイオ、カタログ番号631235)を用いて決定された。全ての作業は、製造元が推奨するプロトコルを用いて実施された。ウイルスはアリコートに分けられ、そして使用するまで-80度で保管された。
【0414】
GFP限界希釈によるウイルスタイター測定
EF1aプロモーター下のGFP(GeneCopoeia、カタログ番号Lv215)が、GFPウイルス粒子の供給源として使用された。ウイルス粒子は上述のように作製された。ウイルスの感染多重度(MOI)と、1マイクロリットルあたりのコピー数との関係性を決定するために、1.1 x 105個の細胞が、12ウェルプレートにプレーティングされた。プレーティングの1日後、形質導入のために1.2 mLのGFPレンチウイルス連続希釈物が使用された。各濃度のGFPに関し、ポリブレン(6 μg/μl)(Sigma、カタログ番号H9268)、および0.5 mLのウイルス連続希釈物が2連のウェルに加えられ、そして遠心感染が、1時間、室温、2000 rpmで実施された。形質導入の翌日に、培地は1mLの新鮮培地と交換された。形質導入の72時間後に、フローサイトメトリー(Macsquant)を用いてGFP陽性細胞のパーセンテージが決定された。1%~20% GFP+を有するウェルのみが、形質転換単位の算出のために使用された。
【0415】
HuH7細胞の培養条件
ヘパトーマ細胞株であるHuH7は、10% FBS(ThermoFisher、カタログ番号26140-079)を含む低グルコースDMEM(ThermoFisher、カタログ番号11885-084)培地において増殖させた。HuH7細胞は週に2回継代された。解離させるため、細胞は最初にPBS -/-(ThermoFisher、カタログ番号14190-144)中で洗浄され、続いて0.25%トリプシン・0.02% EDTA(Sigma、カタログ番号59428C)が添加され、そして室温で4分間インキュベートされた。細胞は9 mlのHuH7増殖培地中に回収され、そして1000 rpmで5分間遠心された。上清が除去され、そして細胞は、1:4の継代比率で播種された。
【0416】
HuH7-Tet-On3G細胞株の開発
ヘパトーマ細胞株であるHuH7は、構成的なEF1Eαプロモーター下にTet-On3Gトランス活性化因子(Tet-On3G)をコードするレンチウイルス粒子を用いて形質導入された。形質導入は、6 μg/μlのポリブレンの存在下で、1時間、室温、2000 rpmでの遠心感染を用いて実施された。形質導入の翌日に細胞培地は交換された。ウイルスはネオマイシンで選択可能なマーカーを含んでいたが、これは、レンチウイルスの組み込みを含むプールを選択することを可能にするものであった。ネオマイシン(G418)(ThermoFisher、カタログ番号10131027)の、選択のために最適な濃度(1.1 mg/ml)は、4日後に細胞死を誘導するネオマイシンの最小量に基づいて、実験によって決定された。細胞株の検証用に、Tet-On3Gの組み込みを有するHuH7細胞(HuH7-Tet-On3G)が、TRE-ルシフェラーゼ対照レンチウイルス粒子を用いて形質導入された。培地は、ドキシサイクリン(1 μg/ml、Sigma、カタログ番号D3072)の存在下または非存在下で交換された。
【0417】
HuH7-Tet-On3G細胞株における転写因子のスクリーニング
本発明の転写因子を選択することについての概略図は、図1に示される。候補転写因子をコードするレンチウイルス粒子を用いた形質導入は、HuH7-Tet-On3G細胞において、1時間、室温、2000 rpm、10のMOIでの遠心感染を用いて、ポリブレン(6 μg/μl)の存在下で実施された。形質導入の翌日に細胞培地は交換された。ドキシサイクリン(1 μg/ml)の存在下または非存在下での培地交換は、全4~5日間にわたり2日ごとに実施された。
【0418】
幹細胞の培養
ヒトiPSC細胞(「hiPSC-GMP1」または「GMP1 iPSC」)は、PBS -/-中で1/100希釈したビトロネクチン(ThermoFisher、カタログ番号A14700)でコートされたフラスコ中で、mTeSR(商標)1培地(STEMCELL Technologies、カタログ番号85850)において維持された。細胞は、20% O2/5% CO2の条件下で培養され、そして、EDTA(0.5 mM;ThermoFisher、カタログ番号AM9260G)を用いて小さな凝集塊を作らせることによって、3~4日ごとに継代培養された。
【0419】
肝細胞の分化プロトコル
多能性幹細胞由来肝細胞は、Mallannaら 2013(Curr Protoc Stem Cell Biol.; 26:1G.4.1-1G.4.13;該文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)において以前に記載されているようなステージ4つの20日間のプロトコルを用いた、培養皿に由来するものであった。肝細胞を作製するため、多能性細胞の単層は、アキュターゼ(STEMCELL Technologies、カタログ番号07920)を7分間37度で使用して採取され、そして2 x 105細胞/cm2の密度で、LN521(ThermoFisher、カタログ番号A29248)がプレコートされたプレートへと移された。誘導の前に細胞は、mTeSR(商標)1培地を用いて24時間培養された。分化のための基本培地は、1X ペニシリン・ストレプトマイシン(ThermoFisher、カタログ番号15140-122)および1% MEM-NEAA(ThermoFisher、カタログ番号11140-050)を含むRPMI(ThermoFisher、カタログ番号22400-089)を含む。分化プロセスのステージ1は、RPMI培地中に、100 ng/mlのアクチビンA(R&D systems、カタログ番号338-AC-010)、20 ng/mlのBMP4(R&D、カタログ番号314BP)、および10 ng/mlのFGF-2(ThermoFisher、カタログ番号PHG0266)を含み、2%のインスリン不含B27(ThermoFisher、カタログ番号A1895601)を添加されていてもよい培養培地において、多能性幹細胞を2日間培養することによって開始された。この後に、RPMI培地中に100 ng/mlのアクチビンA(R&D systems、カタログ番号338-AC-010)を含み、2%のインスリン不含B27を添加されていてもよい培養培地における、細胞の3日間の培養が続いた。分化プロセスのステージ2は、RPMI培地中に20 ng/mlのBMP4(R&D、カタログ番号314BP)、および10 ng/mlのFGF-2を含み、2%のインスリン不含B27(ThermoFisher、カタログ番号A3582801)を添加されていてもよい培養培地において、ステージ1に由来する細胞を5日間培養することを含んでいた。ステージ3は、RPMI培地中に20 ng/mlのHGF(Peprotech、カタログ番号100-39)を含み、2%のインスリン不含B27を添加されていてもよい培養培地において、ステージ2に由来する細胞を5日間培養することによって開始された。最後のステージ4は、肝細胞培養培地(Lonza、カタログ番号CC-3198)中に20 ng/mlのオンコスタチン-M(R&D systems、カタログ番号295-OM-010)を含み、SingleQuots(EGF不含)を添加されていてもよい培養培地において、ステージ3に由来する細胞を5日間培養することを含んでいた。
【0420】
iPSC由来肝細胞への形質導入
転写因子をコードするレンチウイルス粒子(3のMOIを使用)、およびTet-On3G(5のMOIを使用)レンチウイルス粒子を用いた形質導入は、ポリブレン(6 μg/μl)の存在下で、1時間、室温、2000 rpmでの遠心感染を用いて、分化プロトコルのステージ3の最後(細胞培養の第15~16日)に実施された。形質導入の翌日に培養培地は交換された。ステージ4の間の培地交換は、ドキシサイクリン(1 μg/ml)を含む培養培地を用いて、全5日間または全9日間にわたり毎日実施された(すなわち細胞は、細胞培養の第20日または第24日に採取された)。
【0421】
成熟肝細胞マーカーのリアルタイムPCR解析
培養された細胞の全RNAは、RNeasy Microキット(Qiagen、カタログ番号74004)を用いて単離され、そしてcDNAは、High Capacity RNA-to-cDNA転写システム(ThermoFisher、カタログ番号4387406)を用いて作製された。リアルタイム定量PCR反応は、QuantStudio 7 Flex機器(ThermoFisher)において、TaqmanプローブおよびFast advanceミックス(ThermoFisher、カタログ番号A44360)を用いて実施された。標的遺伝子のcDNAレベルは、比較Ct法を用いて解析されたが、ここでCtとは、RPL13Aに対して正規化された、閾値のサイクル数である。
【0422】
化合物
8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)(Sigma、カタログ番号B7880)は、100 mMの濃度(100X)で、PBS -/-(ThermoFisher、カタログ番号14190-144)に溶解され、また、デキサメタゾン(sigma、カタログ番号D4902)は、100 μMの濃度(1000X)で、DMSOに溶解された。
【0423】
CYP1A2の機能アッセイ
CYP1A2の活性は、Promegaのキット(Promega、カタログ番号V8422)を用いて、製造元の推奨にしたがって測定された。初代ヒト肝細胞(150,000個の生存細胞)は、コラーゲンIがコートされた48ウェルプレートのそれぞれのウェル中の、250 μlのInVitroGRO CP培地(BioIVT、カタログ番号Z99029)にプレーティングされた。細胞はInVitroGRO CP培地中で2日間維持され、その際培地は毎日交換された。CYP1A2の活性は、InVitroGRO HI培地(BioIVT、カタログ番号Z99009)において、100 μM オメプラゾールを用いて2日間誘導され、その際オメプラゾールを含むInVitroGRO HI培地は毎日交換された。オメプラゾールとのインキュベーションの48時間後、細胞は、添加物なしのInVitroGRO KHB培地(BioIVT、カタログ番号Z99074)を用いて2回洗浄され、そして、6 uM ルシフェリン-1A2および3 mM サリチルアミドを含む新鮮KHB培地が、ウェル1つにつき150 μlずつ加えられた。阻害剤対照ウェルには、CYP1A2阻害剤である5 μM a-ナフトフラボンが、ルシフェリン-1A2基質とともに入れられた。バックグラウンドの発光対照として、ルシフェリン-1A2および3 mM サリチルアミドを含む150 μlのKHB培地が、空のウェルに入れられた。20 μlの、付属の2M D-システインが、再構成された10 mlのルシフェリン検出試薬に添加された。37度での60分間のインキュベーション後、50 μlの上清が乳白色アッセイプレート(Costar 3912)に移され、そして50 μlのルシフェリン検出試薬が添加された。室温での20分間のインキュベーション後、ルミノメーターを用いて発光が読み取られた。hiPSC-GMP1は、2 x 105細胞/cm2の密度で48ウェルプレートに播種された。hiPSC-GMP1は、上で詳細に記載したように肝細胞様細胞へと分化させた。上で詳細に記載したように、Teton、NFIC、およびNFIXを用いた形質導入が第15日に実施された。CYP1A2の活性は、製造元の推奨を用いて測定された。第20日のタイムポイントを測定するため、第18日、SingleQuots(EGF不含)を添加された肝細胞培養培地(Lonza)において、肝細胞様細胞は100 μM オメプラゾールと2日間インキュベートされた。オメプラゾールとのインキュベーションの48時間後、細胞は添加物なしのKHB培地を用いて2回洗浄され、そしてCYP1A2活性が上で詳細に記載したように測定された。第24日のタイムポイントに関し、分化の第22日の肝細胞様細胞は、第20日のタイムポイントに関して上で詳細に記載したように処理された。CYP1A2の活性は、細胞数に対して正規化された。
【0424】
培地へのAFP、ALB、および尿素の分泌
初代ヒト肝細胞(150,000個の生存細胞)は、コラーゲンIがコートされた48ウェルプレートのそれぞれのウェル中の、250 μlのInVitroGRO CP培地(BioIVT、カタログ番号Z99029)にプレーティングされた。細胞はInVitroGRO CP培地において2日間維持された。hiPSC-GMP1は、上で詳細に記載したように肝細胞様細胞へと分化させた。上で詳細に記載したように、Teton、NFIC、およびNFIXを用いた形質導入が第15日に実施された。上清は、初代ヒト肝細胞から、プレーティング後の第2日に回収されたか、またはGMP1由来肝細胞様細胞から、分化の第20日もしくは第24日に回収された。これらの上清は、ヒトαフェトプロテイン(AFP)のELISAアッセイ(Abcam、カタログ番号ab108838)、ヒトアルブミン(ALB)のELISAアッセイ(Abcam、カタログ番号ab108788)、または尿素分泌を測定するための酵素アッセイ(Sigma、カタログ番号MAK006)を実施するために使用された。前述のアッセイのそれぞれに関し、作業は製造元の推奨にしたがって実施された。培養培地におけるAFP、ALB、および尿素の分泌は、細胞数に対して正規化された。
【0425】
実施例2:転写因子候補をスクリーニングするためのモデルシステム
主成分分析(PCA)は、がん細胞株(HepG2、HuH7、およびHepaRG)、幹細胞由来肝細胞(幹細胞/iPSC-Heps)、ならびに初代ヒト肝細胞(PHH)に関して実施された(図2A~2B)。PHH-AQL、PHH-TLY、およびPHH-NESは成人の肝細胞である。PHH-BVIは死産児の肝細胞であり、かつ「胎児」とはヒト胎児初代肝細胞を意味する。Br-cAMPおよびデキサメタゾンを用いたさらなる処理を受けなかったGMP1 iPSCから分化した肝細胞(「GMP1対照」)、およびBr-cAMPおよびデキサメタゾンを用いた5日間のさらなる処理を受けたGMP1 iPSCから分化した肝細胞(「GMPDex」)と、HuH7細胞はクラスターを形成しているため、該HuH7細胞が、実施例1に記載されるように、本発明の転写因子をスクリーニングするためのHuH7-Tet-On3G細胞株を構築するために使用された(図2C)。図2Dに示されるように、HuH7-Tet-On3G細胞株はドキシサイクリン誘導に対して応答性であった。HuH7-Tet-On3G細胞株は、ルシフェラーゼの上流にあるTet応答エレメント(TRE-Luc)を含むレンチウイルス粒子を用いて、MOIを0、5、および10として形質導入された。形質導入後、細胞は、1 μg/ml ドキシサイクリンの存在下または非存在下で48時間増殖させた。ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較したルシフェラーゼ発現は、ドキシサイクリン非存在下での非感染対照試料に対して正規化された。本試験は、本発明の転写因子候補をスクリーニングするために使用された例示的なモデルシステムを示すものである。
【0426】
実施例3:未成熟肝細胞におけるさまざまな転写因子の発現増加
肝細胞の成熟化を増進する転写因子のスクリーニングは、HuH7-Tet-On3G細胞株において実施され、該細胞株は、上の実施例1に記載されるように作製されたものであった。転写因子のスクリーニングは、さまざまな転写因子候補を含むレンチウイルス粒子を用いて細胞への形質導入を行った後で、成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2(図3A)およびCYP3A4(図3B)の発現増加を測定することによって実施された。転写因子を用いた形質導入は、感染多重度(MOI)を10として実施された。NFIC転写バリアント1および3(NFIC-1+3)とは、それぞれ、転写因子NFICの選択的スプライスバリアントである、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)(NCBI参照配列番号:NM_001245002)、およびNFIC転写バリアント3(NFIC-3)(NCBI参照配列番号:NM_001245004)の混合物を指し、これらを用いて、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)およびNFIC転写バリアント3(NFIC-3)のそれぞれについてMOIを5として形質導入が行われた。形質導入後、細胞は、1 μg/mlのドキシサイクリンを含むHuH7培地を用いて5日間培養された。成熟肝細胞マーカーの発現は、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aに対してプロットされ、そして非感染細胞に対して正規化された。ロットがAQLおよびTLYである成人の初代ヒト肝細胞(PHH)が、陽性対照として使用された。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。図3A~3Bにおける矢印は、成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびCYP3A4の発現レベルを上方制御した、種々の転写因子を表す。
【0427】
実施例4:未成熟肝細胞において転写因子NFICの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現が増加する
上の実施例1に記載されるように作製されたHuH7-Tet-On3G細胞は、転写因子である、NFIC転写バリアント1および3(NFIC-1+3)か;NFIC転写バリアント1(NFIC-1)か;またはNFIC転写バリアント3(NFIC-3)を含むレンチウイルス粒子を用いて、MOIを5として形質導入された。NFIC転写バリアント1および3(NFIC-1+3)とは、それぞれ、転写因子NFICの選択的スプライスバリアントである、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)およびNFIC転写バリアント3(NFIC-3)の混合物を指す(図4A)。形質導入後、細胞は、1 μg/mlのドキシサイクリンを含む培養培地において5日間培養された。成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびCYP3A4の発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較して決定され、そして非感染(「NI」)細胞に対して正規化された。本試験の結果は、図4Bに示されるように、未成熟肝細胞においてNFICの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現レベルが増加し、そしてその結果、成熟肝細胞産生が増進することを、証明するものである。
【0428】
実施例5:デキサメタゾンおよび8-Br-cAMPの存在下で培養された未成熟肝細胞において転写因子NFICの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現が増加する
上の実施例1に記載されるように作製されたHuH7-Tet-On3G細胞は、転写因子であるNFIC転写バリアント1(NFIC-1)を含むレンチウイルス粒子を用いて、MOIを50として形質導入された。形質導入後、細胞は、1 μg/mlのドキシサイクリンを含む培養培地において、1 mM 8-ブロモアデノシン3',5'-環状一リン酸(8-Br-cAMP)および100 nM デキサメタゾンの存在下または非存在下で5日間培養された。成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2(図5A)、TAT(図5B)、およびUGT1A1(図5C)の発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較して決定され、そして非感染の陰性対照試料(8-Br-cAMPおよびデキサメタゾンの非存在下)に対して正規化された。初代ヒト肝細胞(PHH)の発現値は、PHH-AQLおよびPHH-TLYのロットの発現値の平均に相当する。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。本試験の結果は、図5に示されるように、デキサメタゾンおよび8-Br-cAMPの存在下で培養された未成熟肝細胞においてNFICの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現レベルが増加し、そしてその結果、成熟肝細胞産生が増進することを、証明するものである。
【0429】
実施例6:未成熟肝細胞におけるさまざまな転写因子の発現増加
肝細胞の成熟化を増進する転写因子のスクリーニングは、HuH7-Tet-On3G細胞株において実施され、該細胞株は、上の実施例1に記載されるように作製されたものであった。転写因子のスクリーニングは、さまざまな転写因子候補を含むレンチウイルス粒子を用いた細胞への形質導入の後で、未成熟肝細胞マーカーであるAFP(図6A)の発現減少、ならびに成熟肝細胞マーカーである、CYP1A2(図6B)、TAT(図6C)、およびCYP3A4(図6D)の発現増加を測定することによって実施された。転写因子を用いた形質導入は、感染多重度(MOI)を10として実施された。形質導入後、細胞は、1 μg/ml ドキシサイクリン、1 mM 8-Br-cAMP、および100 nM デキサメタゾンを含む培養培地において培養された。成熟化マーカーの発現は、形質導入の5日後に測定された。成熟化マーカーの相対的発現は、対照としての、1 μg/ml ドキシサイクリンの存在下でのNFIC転写バリアント1(NFIC-1)を用いた形質導入に対して正規化された。初代ヒト肝細胞(PHH)の発現値は、PHH-AQLおよびPHH-TLYのロットの発現値の平均に相当する。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。図6A~6Dにおける矢印は、未成熟肝細胞マーカーであるAFPの発現レベルを下方制御した種々の転写因子、ならびに、成熟肝細胞マーカーである、CYP1A2、TAT、およびCYP3A4の発現レベルを上方制御した種々の転写因子を表す。
【0430】
実施例7:多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現が増加する
多能性幹細胞由来未成熟肝細胞は、実施例1において詳細に記載したように、ステージ4つの段階的な分化プロセスを用いて作製された(図7A)。ステージ3の最後において、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは5)(「TetOn」)、または、転写因子である、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)か;NFIXか;もしくはNFIC転写バリアント1(NFIC-1)およびNFIXと組み合わせた、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは3)、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に、形質導入が実施された(図7A)。続いて細胞は、上の実施例1に記載されるように、1 mMの8-Br-cAMPおよび100 nMのデキサメタゾンの存在下または非存在下で、1 μg/mlのドキシサイクリンを含むステージ4培地において5日間培養された。成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびTAT4の発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較して決定され、そして非感染の陰性対照試料(「NI」)に対して正規化された。初代ヒト肝細胞(PHH)の発現値は、PHH-AQLおよびPHH-TLYのロットの発現値の平均に相当する。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。本試験の結果は、図7Bに示されるように、多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現レベルが増加し、そしてその結果、成熟肝細胞産生が増進することを、証明するものである。
【0431】
実施例8:多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させることによる、成熟肝細胞マーカーの発現の経時的解析
多能性幹細胞由来未成熟肝細胞は、実施例1において詳細に記載したように、ステージ4つの段階的な分化プロセスを用いて作製された(図8A)。ステージ3の最後において、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは5)(「TetOn」)、または、転写因子である、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)か;NFIXか;もしくはNFIC転写バリアント1(NFIC-1)およびNFIXと組み合わせた、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは3)、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に、形質導入が実施された(図8A)。続いて細胞は、上の実施例1に記載されるように、1 mMの8-Br-cAMPおよび100 nMのデキサメタゾンの存在下または非存在下で、1 μg/mlのドキシサイクリンを含むステージ4培地において5日間または9日間培養された。細胞は、細胞培養の第20日および第24日に採取され、そして、未成熟肝細胞マーカーであるAFPの発現レベル、および成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2の発現レベルが、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較して決定され、そしてこれらは、非感染(「NI」)の陰性対照試料に対して正規化された。初代ヒト肝細胞(PHH)の発現値は、PHH-AQLおよびPHH-TLYのロットの発現値の平均に相当する。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。本試験の結果は、図8Bに示されるように、多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、未成熟肝細胞マーカーの発現レベルが減少し、かつ成熟肝細胞マーカーの発現レベルが増加し、そしてその結果、成熟肝細胞産生が増進することを、証明するものである。
【0432】
実施例9:多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、トランスクリプトームが成熟肝細胞のトランスクリプトームへと移行する
主成分分析(PCA)は、多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において実施された。多能性幹細胞由来未成熟肝細胞は、実施例1において詳細に記載したように、ステージ4つの段階的な分化プロセスを用いて作製された。ステージ3の最後において、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは5)、または、転写因子である、NFIC転写バリアント1(NFIC-1)か;NFIXか;もしくはNFIC転写バリアント1(NFIC-1)およびNFIXと組み合わせた、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは3)、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に、形質導入が実施された。続いて細胞は、上の実施例1に記載されるように、1 mMの8-Br-cAMPおよび100 nMのデキサメタゾンの存在下または非存在下で、1 μg/mlのドキシサイクリンを含むステージ4培地において5日間または9日間培養された。細胞は、細胞培養の第20日および第24日に採取された。10名の異なる個人に対応する、10種の異なる初代ヒト肝細胞(PHH)のデータセットが、PCA解析に使用された。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。本試験の結果は、図9に示されるように、多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、トランスクリプトームの30~34%の、初代ヒト肝細胞のトランスクリプトームへの移行が引き起こされることを、証明するものである。
【0433】
実施例10:転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現増加を含む多能性幹細胞由来未成熟肝細胞の機能アッセイ
多能性幹細胞由来未成熟肝細胞(GMP1-Hep)は、実施例1において詳細に記載したように、ステージ4つの段階的な分化プロセスを用いて作製された。ステージ3の最後において、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは5)、または、転写因子である、NFIC転写バリアント1(NFIC)か;NFIXか;もしくはNFIC転写バリアント1(NFIC)およびNFIXと組み合わせた、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは3)、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に、形質導入が実施された(図8A)。続いて細胞は、上の実施例1に記載されるように、1 mMの8-Br-cAMPおよび100 nMのデキサメタゾンの存在下または非存在下で、1 μg/mlのドキシサイクリンを含むステージ4培地において5日間または9日間培養された。細胞は、細胞培養の第20日および第24日に採取された。機能活性アッセイは、CYP1A2活性(図10A)、ALB分泌(図10B)、AFP分泌(図10C)、および尿素分泌(図10D)を決定する目的で、実施例1に詳細に記載されるように実施された。本試験の結果は、図10に示されるように、多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、CYP1A2の活性が増加し、ALBの分泌が増加し、かつAFPの分泌が減少し、そしてその結果、成熟肝細胞産生が増進することを、証明するものである。
【0434】
実施例11:未成熟肝細胞における、さまざまな転写因子の組み合わせの発現増加
上の実施例1に記載されるように作製されたHuH7-Tet-On3G細胞は、図11Aに記載されるさまざまな転写因子を含むレンチウイルス粒子を用いて、MOIを10として形質導入された。形質導入後、細胞は、1 μg/mlのドキシサイクリンを含む培養培地において5日間培養された。成熟肝細胞マーカーであるCYP1A2およびTCYP3A4の発現レベル(図11B)は、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較して決定され、そして非感染(「NI」)の陰性対照試料に対して正規化された。ロットがAQLおよびTLYであるPHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。本試験の結果は、図11Bに示されるように、さまざまな転写因子の組み合わせの発現を増加させても、NFIC単独の発現を増加させた際に観察される増加と比較して、未成熟肝細胞における成熟肝細胞マーカーの発現レベルをさらに増加させるわけではないことを、証明するものである。
【0435】
実施例12:多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させることによる、成熟肝細胞マーカーの発現の経時的解析
多能性幹細胞由来未成熟肝細胞は、実施例1において詳細に記載したように、ステージ4つの段階的な分化プロセスを用いて作製された(図8A)。ステージ3の最後において、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは5)(「TetOn」)、または、転写因子である、NFIC転写バリアント1(NFIC)か;NFIXか;もしくはNFIC転写バリアント1(NFIC)およびNFIXと組み合わせた、Tet-On3Gを含むレンチウイルス粒子を用いて(MOIは3)、肝細胞様細胞へと向かう分化の第15日に、形質導入が実施された(図8A)。続いて細胞は、上の実施例1に記載されるように、1 mMの8-Br-cAMPおよび100 nMのデキサメタゾンの存在下または非存在下で、1 μg/mlのドキシサイクリンを含むステージ4培地において5日間または9日間培養された。細胞は、細胞培養の第20日および第24日に採取され、そして、成熟肝細胞マーカーである、ALB(図12A)、CYP3A4(図12B)、およびUGT1A1(図12C)の発現レベルが、ハウスキーピング遺伝子であるRPL13Aと比較して決定され、そしてこれらは、非感染(「NI」)の陰性対照試料に対して正規化された。初代ヒト肝細胞(PHH)の発現値は、PHH-AQLおよびPHH-TLYのロットの発現値の平均に相当する。PHH細胞はBioIVTから入手したものであり、かつmRNAは凍結バイアルから抽出したものであった。本試験の結果は、図12A~12Cに示されるように、多能性幹細胞由来未成熟肝細胞において転写因子NFICおよび/またはNFIXの発現を増加させると、成熟肝細胞マーカーの発現レベルが増加し、そしてその結果、成熟肝細胞産生が増進することを、証明するものである。
【0436】
略式の配列表
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024518409000001.app
【国際調査報告】