(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】CD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240423BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240423BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240423BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240423BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240423BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568334
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2022006521
(87)【国際公開番号】W WO2022235127
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0059596
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523178145
【氏名又は名称】イミューンオンシア セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョン クク
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ア-ラ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヒョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジ-ヘ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒウク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジイェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,スン グァン
(72)【発明者】
【氏名】キム,フン テ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ホ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB50
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は二重特異性抗体に関する。本発明の二重特異性抗体はPD-L1および/またはCD47を発現する腫瘍細胞に高い結合力を有することによって優秀な抗腫瘍効果を発揮し、最小化された血球凝集副作用を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD47に特異的に結合する第1抗原結合ドメインおよびPD-L1に特異的に結合する第2抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であって、
前記第1抗原結合ドメインは
配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、
前記第2抗原結合ドメインは
配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記第1抗原結合ドメインは配列番号1の重鎖可変領域および配列番号3の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記第2抗原結合ドメインは(i)配列番号5の重鎖可変領域および配列番号7の軽鎖可変領域を含むか(ii)配列番号9の単鎖可変フラグメント(scFv)を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記二重特異性抗体はFcドメイン、CD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1抗体フラグメントおよびPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2抗体フラグメントを含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記第1抗体フラグメントはFabフラグメントであり、前記第2抗体フラグメントは単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項4に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記第2抗体フラグメントはペプチドリンカーを通じて前記FcドメインのC-末端に融合される、請求項4に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記二重特異性抗体はFcドメイン、CD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2個のFabフラグメントおよびPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2個のscFvフラグメントを含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記二重特異性抗体はPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む単鎖可変フラグメント(scFv)を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記二重特異性抗体はCD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントを含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
前記二重特異性抗体はIgG1の重鎖不変領域(CH)から由来したFc領域を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記Fc領域はIgG1から由来した重鎖不変領域CH1、CH2およびCH3を含み、CH3は配列番号11を基準としてE239DおよびM241Lのアミノ酸置換を含む、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記Fc領域はエフェクター細胞(effector cell)に作用して免疫活性化効果を示す、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記二重特異性抗体は前記PD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗体フラグメントを含み、前記抗体フラグメントはペプチドリンカーを通じて前記FcドメインのC-末端に融合される、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記単鎖可変フラグメント(scFV)は配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記Fc領域は配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
前記二重特異性抗体はPD-L1、CD47、または両方をすべて発現する癌細胞に特異的に結合する、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫およびT-細胞誘導されたリンパ腫からなる群から選択された癌腫の予防または治療に使うための、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体を含む癌の予防または治療のための、薬学組成物。
【請求項19】
前記癌は卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経母細胞-誘導されたCNS腫瘍、単球性白血病、B-細胞誘導された白血病、T-細胞誘導された白血病、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫、および肥満細胞誘導された腫瘍からなる群から選択されるものである、請求項18に記載の薬学組成物。
【請求項20】
前記癌は乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫およびT-細胞誘導されたリンパ腫からなる群から選択される、請求項18に記載の薬学組成物。
【請求項21】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体を含む腫瘍細胞成長の抑制に使うための、薬学組成物。
【請求項22】
前記二重特異性抗体は抗癌化学療法剤、放射線治療および/または他の免疫抗癌剤とともに使用または併用投与される、請求項18に記載の薬学組成物。
【請求項23】
乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫およびT-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防または治療に使うための、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体の用途。
【請求項24】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体の有効量を癌の予防または治療を必要とする対象体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法。
【請求項25】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体の有効量を腫瘍細胞を有する対象体に投与する段階を含む、対象体で腫瘍細胞の成長を抑制する方法。
【請求項26】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体を暗号化する、ポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項26に記載されたポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項28】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載された二重特異性抗体を製造する方法であって、
前記二重特異性抗体の発現に適合した条件下で請求項27に記載された宿主細胞を培養する段階および培養物から前記二重特異性抗体を回収する段階を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重特異性抗体に関する。具体的には、本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体、その用途および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内免疫機能は抗原認知と同時に起こる同時刺激(co-stimulatory)と同時抑制(co-inhibitory)の信号を通じて調節される。ところで、癌細胞は腫瘍微細環境を変化させるか免疫機能を抑制して免疫攻撃を回避する。このような回避戦略の一つとして、免疫関門機能を変化させて免疫細胞の機能を抑制する。例えば、癌細胞はPD-L1またはCD47のような特定細胞表面蛋白質を発現し、これらはT細胞または大食細胞のような免疫細胞と結合して免疫細胞の機能を抑制することになる。
【0003】
このようなメカニズムが明らかになったことにより、前記特定細胞表面蛋白質のような免疫関門蛋白質の活性を遮断して免疫細胞を活性化させて癌細胞を攻撃する免疫関門抑制剤の開発が活発になされており、PD-L1抑制剤としてテセントリク(Atezolizumab)、イミフィンジ(Durvalumab)、バベンチオ(Avelumab)などの多様な抗-PD-L1単クローン抗体がFDA許可を得て市販中にあるか臨床段階にある。また、多くの抗-CD47単クローン抗体が研究されているか臨床段階にある。
【0004】
しかし、免疫関門抑制剤は患者反応率が充分でないか副作用と低い生体利用率を示す問題点があり、新しい免疫関門抑制剤の開発が依然として要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述した問題点をすべて解決することをその目的とする。
【0006】
本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体を提供することを一目的とする。
【0007】
本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体の癌予防または治療用の用途を提供することを他の目的とする。
【0008】
本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体の癌予防または治療用薬剤の製造のための用途を提供することをさらに他の目的とする。
【0009】
本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体を含む薬学組成物を提供することをさらに他の目的とする。
【0010】
本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体を対象に投与する段階を含む癌の予防または治療のための方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0011】
本発明はCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体を製造するためのポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞または方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0012】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明でより明確となり、特許請求の範囲に記載された手段およびその組み合わせで実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための本発明の代表的な構成は次の通りである。
【0014】
本発明の一態様によると、CD47に特異的に結合する第1抗原結合ドメインおよびPD-L1に特異的に結合する第2抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1抗原結合ドメインは配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、前記第2抗原結合ドメインは配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体が提供される。
【0015】
特定の態様によると、二重特異性抗体は配列番号1の重鎖可変領域および配列番号3の軽鎖可変領域を含む第1抗原結合ドメイン、および配列番号5の重鎖可変領域および配列番号7の軽鎖可変領域を含む第2抗原結合ドメインを含む。
【0016】
特定の態様によると、二重特異性抗体はFcドメイン、CD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント)およびPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2抗体フラグメント(例えば、scFvフラグメント)を含む。
【0017】
特定の態様によると、二重特異性抗体で、第2抗体フラグメント(例えば、scFvフラグメント)はペプチドリンカーを通じてFcドメインのC-末端に融合される。
【0018】
特定の態様によると、二重特異性抗体はFcドメイン、CD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2個のFabフラグメントおよびPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2個のscFvフラグメントを含む。
【0019】
特定の態様によると、二重特異性抗体はPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む単鎖可変フラグメント(scFv)を含む。
【0020】
特定の態様によると、二重特異性抗体はCD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントを含む。
【0021】
特定の態様によると、二重特異性抗体はIgG1の重鎖不変領域(CH)から由来したFc領域を含む。
【0022】
特定の態様によると、二重特異性抗体のFc領域はIgG1から由来した重鎖不変領域CH1、CH2およびCH3を含み、CH3は配列番号11を基準としてE239DおよびM241Lのアミノ酸置換を含む。前記Fc領域はエフェクター細胞(effector cell)に作用して免疫活性化効果、特に増加した免疫活性化効果を示すことができる。
【0023】
特定の態様によると、二重特異性抗体は前記PD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗体フラグメントを含み、前記抗体フラグメントはペプチドリンカーを通じて前記FcドメインのC-末端に融合される。
【0024】
特定の態様によると、二重特異性抗体の単鎖可変フラグメント(scFV)は配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0025】
特定の態様によると、二重特異性抗体のFc領域は配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0026】
特定の態様によると、二重特異性抗体はPD-L1、CD47、または両方をすべて発現する癌細胞に特異的に結合する。
【0027】
本発明の他の態様によると、本発明の二重特異性抗体の乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防または治療に使うための用途が提供される。
【0028】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体を含む乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防または治療のための薬学組成物が提供される。
【0029】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体は抗癌化学療法、放射線治療および/または他の免疫抗癌剤と併用され得る。
【0030】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体の有効量を乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防または治療を必要とする対象体に投与する段階を含む乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防または治療方法が提供される。
【0031】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体の有効量を腫瘍細胞を有する対象体に投与する段階を含む対象体で腫瘍細胞の成長を抑制する方法が提供される。
【0032】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体を暗号化するポリヌクレオチドが提供される。
【0033】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体を暗号化するポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。
【0034】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体を製造する方法であって、二重特異性抗体の発現に適合した条件下で二重特異性抗体を暗号化するポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養する段階および培養物から二重特異性抗体を回収する段階を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、CD47および/またはPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体は乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防または治療に効果的に使われ得る。具体的には、本発明の二重特異性抗体は抗-CD47抗体および/または抗-PD-L1抗体と比較して優秀な抗原結合能、特にCD47抗原に対して遥かに高い結合能を有しつつ、RBCに対する低い結合能を維持した。これにより、本発明の二重特異性抗体はCD47および/またはPD-L1を発現する腫瘍細胞に高い結合力を有することによって優秀な抗腫瘍効果を発揮したし、赤血球(RBC)結合能は低くて最小化された血球凝集副作用を示すことが確認された。また、本発明の二重特異性抗体はADCC(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)活性評価を通じてPD-L1および/またはCD47を発現する細胞での癌抑制効果とNK細胞およびT細胞活性化効果を示す。さらに、本発明の二重特異性抗体は後天性免疫細胞が欠如したBALB/cヌードマウスを利用した乳癌細胞株XenograftモデルとBALB/c-hPD-1/hSIRPαマウスを利用した大腸癌CT26-hPD-L1/hCD47細胞株Syngeneicモデルで癌成長抑制効果があり、メモリーT細胞の生成による腫瘍再誘発抑制効果も証明された。したがって、本発明に係る二重特異性抗体は癌成長抑制効果と免疫細胞活性化効果を通じて、乳癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫を含む多様な癌腫の予防、改善または治療に効果的に使われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るCD47およびPD-L1に対する二重特異性抗体の概略的な模式図を示す。
【0037】
【
図2】実施例1.2で製造された抗体の4%~20%変性、還元および非還元、SDS-PAGE分析結果を示す。分子量マーカーはキロダルトンで表示されている。
【0038】
【
図3】実施例1.2で製造された抗体に対して観察された分析用ゲル-濾過溶離プロファイルを示す(カラム:Superdex 200 increase 10/300 GL;吸収波長:214nm;緩衝液:ホスフェート緩衝食塩水(PBS);温度(℃):19;流量(ml/min):0.75;使われたSOP/WI:WI PP 24.0;ロット番号:120520)。
【0039】
【
図4A-B】それぞれCD47およびPD-L1に対する二重特異性抗体の単一および二重リガンド結合力をELISAによって分析した結果を示す。
【0040】
【
図5】それぞれPD-L1豊富(enriched)腫瘍細胞およびCD47豊富腫瘍細胞に対する二重特異性抗体の結合力を示す。
【0041】
【
図6A-D】それぞれMDA-MB-231のWT、PD-L1ノックアウト(KO)、CD47 KO、およびPD-L1/CD47二重KO細胞に対する二重特異性抗体の結合力を示す。
【0042】
【
図7】二重特異性抗体に対してRBC結合検定を遂行した結果を示す。
【0043】
【
図8】二重特異性抗体に対して血球凝集(hemagglutination)検定を遂行した結果を示す。
【0044】
【
図9】4種の細胞(MDA-MB-231、H1975、RajiおよびSR786)に対する二重特異性抗体の食菌作用(phagocytosis)結果を示す。
【0045】
【
図10A-B】二重特異性抗体に対してそれぞれRaji細胞およびMDA-MB-231細胞でADCC NFAT-Luc検定を遂行した結果を示す。
【0046】
【
図11】二重特異性抗体に対してMDA-MB-231細胞でNK細胞のADCC検定を遂行した結果を示す。
【0047】
【
図12】二重特異性抗体のT細胞活性化効果確認のためにMLR分析を遂行した結果を示す。
【0048】
【
図13】実施例3.1~実施例3.3で言及されたマウスの腫瘍接種部位を示す。
【0049】
【
図14】ヒトMDA-MB-231細胞株を移植したBALB/cヌードマウスで二重特異性抗体の癌成長抑制を確認した効能研究結果である。
【0050】
【
図15】CT26-hPD-L1/hCD47腫瘍同種移植BALB/c-hPD-1/hSIRPαマウスで二重特異性抗体の癌成長抑制を確認した効能研究結果である。
【0051】
【
図16】実施例3.3の再誘発研究に関連した、BALB/c-hPD-1/hSIRPαマウスのCT26-hPD-L1/hCD47腫瘍同種移植モデルの処理における腫瘍体積曲線を示す。データは平均±SEMで提示される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
後述する本発明についての詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の具現例に関して特定図面を参照して記述されるであろうが、本発明はこれに限定されず、適切に説明されるのであれば、その請求項が主張するのと均等なすべての範囲とともに、添付された請求項によってのみ限定される。本明細書に使われた技術および学術用語は、別途に定義されない限り、本発明が属する分野で一般的に使われるものと同一の意味を有する。本明細書を解釈する目的で下記の定義が適用され、単数で使われた用語は適切な場合には複数型を含み、その反対も同様である。
【0053】
定義
【0054】
本明細書で使われる用語「抗原結合分子」は抗原決定因子に特異的に結合する分子を意味する。抗原結合分子の例には抗体、抗体フラグメントおよびスキャフォールド抗原結合蛋白質を含むがこれに制限されない。
【0055】
用語「抗体」とは、最も広い意味で使われて多様な抗体構造物、例えば非制限的に単クローン抗体、多クローン抗体、単一特異性または多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、抗原結合活性を有する抗体フラグメントおよび抗体融合体(例えば抗体と(ポリ)ペプチドの融合体または抗体と化合物の融合体)を含む。本明細書で、接頭辞「抗-」は抗原に関連した場合、該当抗体が該当抗原と反応性であることを意味する。特定抗原と反応性である抗体はファージまたは類似するベクターで組換え抗体ライブラリーの選別のような合成および/または組換え方法によって、または抗原または抗原-コード核酸を使った動物の免疫化によって生成され得るが、これに制限されない。代表的なIgG抗体は二硫化結合によって結合される2個の同一の重鎖および2個の同一の軽鎖で構成される。それぞれの重鎖および軽鎖は不変領域および可変領域を含む。重鎖可変領域(HVR)および軽鎖可変領域(LVR)はそれぞれ「相補性決定領域「(「CDR」)または「超可変領域」と称される3個の切片を含み、これは主に抗原エピトープとの結合に関与する。これらはN-末端から順次数字が付けられて通常CDR1、CDR2およびCDR3と指称される。CDR外部の可変領域の中で、よりよく保存された領域は「骨格領域」(「FR」)と指称される。本明細書で抗体は、例えば動物抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体であり得る。
【0056】
用語「単クローン抗体」は実質的に同種である抗体の集団から収得される抗体を意味する。すなわち、前記集団に含まれる個別的な抗体は、微量で存在する可能な変異体抗体(例えば、単クローン抗体製造時に天然的に発生する突然変異を有する抗体)を除いて、互いに同一であり/同一であるか同一のエピトープに結合する。典型的に異なる決定因子(エピトープ)に対して誘導された異なる抗体を含む多クローン抗体製剤とは対照的に、単クローン抗体製剤の各単クローン抗体は抗原上の単一の決定因子に対して誘導される。
【0057】
用語「単一特異性」抗体は各結合部位が同じ抗原の同じエピトープに結合する一つ以上の結合部位を有する抗体を意味する。「二重特異性」という用語は、抗原結合分子が2個以上の別個の抗原決定因子に特異的に結合できることを意味する。通常、二重特異性抗原結合分子は2個の抗原結合部位を含み、これらはそれぞれ異なる抗原決定因子に特異的である。一部の具現例で、二重特異性抗原結合分子は2個の抗原決定因子、例えば2個の別個の細胞上で発現された2個の抗原決定因子に同時に結合することができる。また、本願に記載された二重特異性抗原結合分子は多重特異性抗体の一部を形成することができる。
【0058】
用語「抗体フラグメント」は抗原に対する特異的結合能を有する抗体の一部またはこれを含むポリペプチドを意味する。抗体フラグメントの例にはFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、クロス-Fabフラグメント、線状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、抗体フラグメントと単一ドメイン抗体で形成された多重特異性抗体が含まれるがこれに限定されはしない。
【0059】
用語「単鎖可変フラグメント」または「scFv」は免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域が共有結合で連結されてVH-VL異種二量体を形成した融合蛋白質を指称する。前記重鎖(VH)および軽鎖(VL)は直接連結されるか、VHのN-末端とVLのC-末端を連結するか、VHのC-末端とVLのN-末端を連結するペプチドリンカーによって連結される。
【0060】
用語「抗原結合ドメイン」は抗原決定因子に特異的に結合する抗原結合分子の部分を意味する。抗原結合ドメインは例えば一つ以上の可変領域によって提供され得る。好ましくは、抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域および抗体重鎖可変領域を含むことができる。
【0061】
用語「Fc領域」は免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を示し、それぞれの鎖でヒンジ領域の一部、CH2およびCH3ドメインからなる同種二量体を意味する。Fc領域は酵素パパインを使った消化によって生産された無損傷抗体(例えば、IgGの一部)を示す。一具現例で、「Fc領域」は天然配列Fc領域または変異体Fc領域であり得る。「天然配列Fc領域」は自然で一般的に発見されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を示す。本発明でFc領域は天然型と実質的に同等であるか向上した効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除いて、一部または全体重鎖不変領域1(CH1)および/または軽鎖不変領域1(CL1)を含んだ拡張されたFc領域であり得る。また、CH2および/またはCH3に該当する非常に長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。例えば、本発明でFc領域は、1)CH1、CH2およびCH3、2)CH1およびCH2、3)CH1およびCH3、4)CH2およびCH3、5)CH1~CH3のうち1個または2個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)の組み合わせ、または6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であり得る。また、本発明でFc領域は天然型アミノ酸配列だけでなく、この配列の変異体を含む。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列のうち一つ以上のアミノ酸残基が結実、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を有することを意味する。
【0062】
用語「CD47」は癌細胞の表面にある蛋白質として知られており、大食細胞のSIRPαと結合して「Do-not-eat-me」信号を送ることによって大食細胞の食菌作用を遮断するものとして知られている蛋白質を指称する。
【0063】
用語「PD-L1」は癌細胞の表面にある蛋白質として知られており、T細胞の表面にある蛋白質であるPD-1と結合してT細胞が癌細胞を攻撃できないようにする蛋白質を指称する。
【0064】
用語「リンカー」は1~100個、具体的には2~50個、より具体的には5~30個のアミノ酸の長さのペプチドリンカーを指称し得る。前記リンカーは、例えば、Gly、Asn、Ser、Thr、Ala、Aspなどからなる群から選択された1種以上のアミノ酸を含むものであり得るが、これに限定されない。一例として、前記リンカーは(GGGGS)nで表現されるものであり得、前記nは(GGGGS)単位体の反復回数であって、二重特異性抗体の効能を考慮して、1~10、具体的には1~5であり得る。さらに他の例として、前記リンカーは抗体フラグメントドメインを連結できるものとして知られているペプチドフラグメントであり得、例えば、GGGGSGGGGSGGGGSのアミノ酸配列を有することができる。
【0065】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」という用語は相互に交換可能に使われ、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体を利用して生成されたDNAまたはRNAの類似体(例えば、ペプチド核酸および非自然発生ヌクレオチド類似体)、およびこれらのハイブリッドを含む。核酸分子は一本鎖または二本鎖であり得る。一具現例で、本発明の核酸分子は抗体、またはこのフラグメント、誘導体、ミューテインまたは変異体をエンコードする連続的なオープンリーディングフレームを含む。
【0066】
用語「対象体」は「患者」と相互交換的に使われ、癌の予防または治療を必要とする哺乳動物、例えば、霊長類(例:ヒト)、伴侶動物(例:犬、猫など)、家畜動物(例:ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)および実験室動物(例:ラット、マウス、ギニーピッグなど)であり得る。本発明の一具現例で、対象体はヒトである。
【0067】
用語「治療」は、一般的に目的とする薬理学的効果および/または生理学的効果を収得することを意味する。このような効果は疾病および/またはこのような疾病による副作用を部分的にまたは完全に治癒する点で治療的効果を有する。好ましい治療的効果は疾患の発生または再発防止、症状の好転、疾患の任意の直接または間接的な病理学的結果の縮小、転移の防止、疾患進行速度の減少、疾患状態の好転または緩和、および快方または改善された予後を含むがこれに制限されない。好ましくは、「治療」はすでに現れた疾患または障害の医療的介入を意味し得る。
【0068】
用語「予防」は予防的治療、すなわち疾病を治療するよりは予防するための効果を収得することを意味する。「予防」は疾病またはこの症状を部分的にまたは完全に予防するという観点で、目的とする予防的な薬理学的効果および/または生理学的効果を収得することを意味する。
【0069】
用語「投与」は、対象体に予防的または治療的目的を達成するための物質(例えば、本発明の二重特異性抗体)を提供することを意味する。
【0070】
本発明の二重特異性抗体
【0071】
本発明はCD47に特異的に結合する第1抗原結合ドメインおよびPD-L1に特異的に結合する第2抗原結合ドメインを含む新規の二重特異性抗体を提供する。前記抗体はCD47、PD-L1、または両方をすべて発現する癌細胞に特異的に結合することができ、結合親和度、生物学的活性、免疫細胞活性化、標的化効能、腫瘍再誘発抑制能および減少した副作用のような特に有利な特徴を有する。
【0072】
本発明の一態様によると、CD47に特異的に結合する第1抗原結合ドメインおよびPD-L1に特異的に結合する第2抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1抗原結合ドメインは配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、前記第2抗原結合ドメインは配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体が提供される。
【0073】
一部の具現例で、CD47に特異的に結合する第1抗原結合ドメインは配列番号1の重鎖可変領域および配列番号3の軽鎖可変領域を含み/含むか、PD-L1に特異的に結合する第2抗原結合ドメインは配列番号5の重鎖可変領域および配列番号7の軽鎖可変領域を含むことができる。特に、PD-L1に特異的に結合する第2抗原結合ドメインは配列番号9の単鎖可変フラグメント(scFv)を含むことができる。
【0074】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体はFc領域、前記CD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1抗体フラグメント、および前記PD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2抗体フラグメントを含むことができる。
【0075】
一部の具現例で、前記第1抗体フラグメントはFabフラグメントであり得る。
【0076】
一部の具現例で、前記第2抗体フラグメントは単鎖可変フラグメント(scFv)であり得る。
【0077】
一部の具現例で、前記Fc領域はエフェクター細胞(effector cell)に作用して免疫活性化効果を示すことができる。好ましくは、前記Fc領域はIgG1の重鎖不変領域(CH)から由来し得る。より好ましくは、前記Fc領域はIgG1から由来した重鎖不変領域CH1、CH2およびCH3、またはIgG1から由来した重鎖不変領域CH2およびCH3を含むことができる。最も好ましくは、前記Fc領域のCH3は配列番号11を基準としてE239DおよびM241Lのアミノ酸置換を含むことができる。
【0078】
一部の具現例で、前記Fc領域は配列番号11のアミノ酸配列を含むことができる。
【0079】
一部の具現例で、前記第2抗体フラグメントは前記Fc領域のC-末端に融合され得る。より具体的には、前記第2抗体フラグメントは重鎖可変領域を通じて(すなわち、第2抗体フラグメントのN-末端が)Fc領域のC-末端に融合され得る(
図1参照)。この時、第2抗体フラグメントはリンカーを通じてFc領域のC-末端に融合され得る。前記リンカーはペプチドリンカーであり得、例えばGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGSまたはGSGSGSGSGSGSGSGSGSのアミノ酸配列を有することができる。
【0080】
一部の具現例で、前記第2抗体フラグメントは重鎖可変領域と軽鎖可変領域がリンカーを通じて連結された可変領域(例えば、単鎖可変フラグメントscFv)を含むことができる。一例として、前記リンカーは(GGGGS)nで表現されるペプチドリンカーであり得、前記nは(GGGGS)単位体の反復回数であって、二重特異性抗体の効能を考慮して、1~10、具体的には1~5であり得る。好ましくは、前記第2抗体フラグメントはscFvフラグメントであり得る。より好ましくは、前記scFvフラグメントは配列番号9のアミノ酸配列を含むことができる。
【0081】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体はFcドメイン、CD47に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2個のFabフラグメント、およびPD-L1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2個のscFvフラグメントを含むことができる。この時、各scFvフラグメントはそのフラグメントの重鎖可変ドメインがペプチドリンカーを通じて(各Fabフラグメントの重鎖に連結された)FcドメインのC末端に融合され得る。
【0082】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体はCD47に特異的に結合し、2個の抗体重鎖および2個の抗体軽鎖を含む全長抗体およびPD-L1に特異的に結合する重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体フラグメント(例えば、scFvフラグメント)を含み、前記抗体フラグメントの重鎖可変領域が前記全長抗体の重鎖のC-末端に直接またはペプチドリンカーを通じて融合され得る。
【0083】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体は前記CDR配列、重鎖可変領域配列および/または軽鎖可変領域配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0084】
特定の具現例で、本発明の二重特異性抗体のアミノ酸配列変異体が考慮される。例えば、抗体の結合親和度および/または他の生物学的特性を改善することが好ましいと言える。抗体のアミノ酸配列変異体は分子をエンコードするヌクレオチド配列内に適切な変形を導入することによって、またはペプチド合成によって製造され得る。そのような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の結実、および/またはそのようなアミノ酸配列内への残基の挿入および/またはそのようなアミノ酸配列内での残基の置換を含む。最終構成物に到達するように、結実、挿入および置換を含む多様な変更の任意の組み合わせが遂行され得るが、最終構成物は所望する特性、例えば、抗原-結合特性を保有しなければならない。置換突然変異誘発のための関心がある部位は重鎖可変領域(HVR)および骨格領域(FR)を含む。保存的置換は表1に「好ましい置換」という項目の下に提供されており、以下にアミノ酸側鎖部類(1)~(6)に関連して追加で記述されている。アミノ酸置換は関心がある分子および所望する活性、例えば、維持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCあるいはCDCに対してスクリーニングされた生成物に導入され得る。
【0085】
【0086】
アミノ酸は通常の側鎖の性質により次のようにグループ化され得る:
【0087】
(1)疏水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
【0088】
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
【0089】
(3)酸性:Asp、Glu;
【0090】
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
【0091】
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
【0092】
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe.
【0093】
非-保存的置換はこのような部類のうち一つの構成員を他の部類に交換することを伴う。
【0094】
本明細書で用語「アミノ酸配列変異体」は、母抗体結合分子(例えば、ヒト化あるいはヒト抗体)の一つ以上の超可変領域残基にアミノ酸置換が存在する実質的な変異体を含む。一般的に、追加研究のために選択された生成された変異体は母抗体結合分子に比べて特定の生物学的特性の変形、例えば改善(例えば、増加した親和度、減少した免疫原性)を有し/有するか、母抗原結合分子の特定の生物学的特性を実質的に維持するであろう。例示的な置換変異体は親和度成熟抗体であり、これは、例えば、当業界で公知のファージディスプレイ-基盤親和度成熟技法を利用して便利に生成され得る。簡略に言うと、一つ以上のHVR残基が突然変異され、変異体抗原結合分子がファージ上にディスプレイされて特定生物学的活性(例えば、結合親和度)がスクリーニングされる。特定の具現例で、置換、挿入または結実は、そのような変更が抗原に結合する抗原結合分子の能力を実質的に減少させない限り、一つ以上のHVR内で起こり得る。例えば、結合親和度を実質的に減少させない保存的変更(例えば、本明細書に提供されたような保存的置換)がHVRでなされ得る。
【0095】
アミノ酸配列挿入は、単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入だけでなく、長さが一つの残基から百個以上の残基を含むポリペプチドに達する範囲であるアミノ-末端および/またはカルボキシル-末端融合を含むことができる。末端挿入の例には、N-末端メチオニル残基を有する抗体を含む。分子の他の挿入変異体は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドのN-末端またはC-末端への融合を含むことができる。また、分子の他の挿入変異体は脳血管障壁(blood-brain barrier、BBB)の通過を容易にするためのポリペプチドのN-末端またはC-末端への融合を含むことができる。
【0096】
核酸、ベクター、宿主細胞および製造方法
【0097】
本発明の二重特異性抗体は当業界で知られている任意の抗体生成技術によって製造され得る。
【0098】
本発明の他の態様によると、本発明で記述された二重特異性抗体またはそのフラグメントを暗号化する単離された核酸(例えば、ポリヌクレオチド)が提供される。このような核酸は前記二重特異性抗体の重鎖可変領域または重鎖CDR領域が含まれたアミノ酸配列および/または軽鎖可変領域または軽鎖CDR領域が含まれたアミノ酸配列を暗号化することができる。
【0099】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体は全体抗原結合分子を暗号化する単一ポリヌクレオチドまたは共同-発現される複数のポリヌクレオチドによって発現され得る。複数のポリヌクレオチドによって暗号化されるポリペプチドは、例えば二硫化結合や機能的抗原結合分子を形成する他の手段を通じて結合することができる。例えば、免疫グロブリンの軽鎖部分は免疫グロブリンの重鎖部分から分離したポリヌクレオチドによって暗号化され得る。共同-発現される場合、前記重鎖ポリペプチドは免疫グロブリンを形成するための軽鎖ポリペプチドと結合するであろう。
【0100】
一具現例で、前記ポリヌクレオチドは配列番号2の配列および配列番号4の配列を含むことができる。また、前記ポリヌクレオチド配列は配列番号12の配列を含むことができる。
【0101】
他の具現例で、前記ポリヌクレオチドは配列番号6の配列および配列番号8の配列を含むことができる。また、前記ポリヌクレオチド配列は配列番号10の配列を含むことができる。
【0102】
さらに他の具現例で、前記ポリヌクレオチドは配列番号15の配列および/または配列番号16の配列であり得るかこれらを含むことができる。
【0103】
さらに他の具現例で、前記ポリヌクレオチドは本発明の二重特異性抗体を暗号化するポリヌクレオチドと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または約100%の同一性を有する核酸配列を含むことができる。
【0104】
他の具現例で、前記ポリヌクレオチドは本発明に係る二重特異性抗体に含まれたポリペプチドを暗号化することができる。
【0105】
本発明のさらに他の態様によると、前記核酸が含まれた一つまたはそれ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。用語「ベクター」は核酸に連結されたさらに他の核酸を細胞に導入させるのに使われ得る核酸である。ベクターの一類型は追加核酸セグメントが結紮され得る線状または円形の二本鎖DNA分子を指称する「プラスミド」である。さらに他の類型のベクターはウイルスベクター(例えば、複製不能レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ-関連ウイルス)であり、この場合、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに導入され得る。特定ベクターはこれらが導入される宿主細胞内で自主的に複製することができる(例えば、バクテリア複製原点を含むバクテリアベクターおよびエピゾーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピゾーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞に導入時、宿主細胞のゲノムに統合されて前記宿主ゲノムとともに複製される。「発現ベクター」は選択されたポリヌクレオチドの発現を誘導できるベクターの一類型である。
【0106】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体を暗号化する一つ以上のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。前記宿主細胞は原核または真核細胞であり得る。例えば、前記宿主細胞はチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞またはリンパ球細胞であり得る。糖化などが必要でない場合、バクテリアで抗体が作られ得る。
【0107】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体の発現に適合した条件下で前記宿主細胞を培養する段階、および培養物から二重特異性抗体を回収する段階を含む本発明の二重特異性抗体を製造する方法が提供される。
【0108】
二重特異性抗体の組換え生産のために、例えば前記に記述された二重特異性抗体を暗号化するポリヌクレオチドを分離し、宿主細胞内で追加クローニングおよび/または宿主細胞内部での発現のために一つまたはそれ以上のベクター内に挿入される。このような核酸は当業界で知られている通常の過程を利用して分離またはシーケンシングすることができる。
【0109】
前記形質転換された細胞を培養する方法は当業界で広く知られている方法を利用して遂行できる。例えば、前記形質転換体を栄養培地で培養することによって二重特異性抗体を大量で生産することができ、培地と培養条件は宿主細胞により慣用のものを適切に選択することができる。培養時、細胞の生育と蛋白質の大量生産に適合するように温度、培地のpHおよび培養時間などの条件を適切に調節することができる。
【0110】
前記二重特異性抗体を回収するために、免疫グロブリンの精製のために当業界で公知の任意の方法、例えばクロマトグラフィー(イオン交換、親和性(例:protein A)、大きさ排除など)、遠心分離、差別溶解度または蛋白質精製のための他の標準技術が使われ得る。
【0111】
予防または治療方法
【0112】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体は予防または治療方法で利用され得る。
【0113】
一部の具現例で、治療される疾患は増殖性障害であり、特に癌であり得る。特に、本発明の二重特異性抗体は癌の増殖、生存、転移および再発を抑制するために利用され得る。
【0114】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体の有効量を腫瘍細胞を有する対象体に投与する段階を含む対象体で腫瘍細胞の成長を抑制する方法が提供される。一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体の有効量を癌の予防または治療を必要とする対象体に投与する段階を含む癌の予防または治療のための方法が提供される。
【0115】
一部の具現例で、前記癌は固形癌または血液癌であり得る。
【0116】
一部の具現例で、前記癌は卵巣癌、結腸癌、大腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経母細胞-誘導されたCNS腫瘍、単球性白血病、B-細胞誘導された白血病、T-細胞誘導された白血病、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫、および肥満細胞誘導された腫瘍からなる群から選択され得るが、これに制限されない。好ましくは、前記癌は卵巣癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫およびT-細胞誘導されたリンパ腫からなる群から選択されたいずれか一つであり得る。
【0117】
本発明に係る二重特異性抗体は局所または全身治療が要望されるかどうかおよび治療される領域により多様な方式で投与され得る。二重特異性抗体を対象体に投与する方法は、投与目的、発病部位、対象体の状態などにより変わり得る。投与経路は非経口、吸入、局所または局部投与(例えば病変内投与)であり得る。例えば非経口投与は静脈内、皮下、腹腔内、肺内、動脈内、筋肉内、直腸、膣内、関節内、前立腺内、鼻内、眼球内、膀胱内、脊椎腔内投与または心室内投与(例えば脳室内投与)を含むことができるがこれに制限されない。また、併用される場合、本発明の二重特異性抗体と追加免疫抗癌剤は同じ経路で投与され得るか互いに異なる経路で投与され得る。
【0118】
前記方法で、本発明に係る二重特異性抗体の有効量は個体(患者)の年齢、性別、体重により変わり得、一般的には体重kg当り約0.01mg~100mg、または5mg~約50mgが1日1回~数回に分けて投与され得る。しかし、投与経路および期間、疾病の重症度、性別、体重、年齢などによって増減され得るため、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0119】
一部の具現例で、本発明の二重特異性抗体は抗癌化学療法剤、放射線治療および/または他の免疫抗癌剤(例えば、抗PD-1、抗CTLA-4抗体など)とともに使用または併用投与され得る。このような併用治療法は併用投与(2個以上の治療的製剤が同一または別個の組成物に含まれる投与)および個別投与を含み、そのような場合、二重特異性抗体の投与が追加治療剤/治療法の適用/使用以前に、同時に、および/または続けて起こり得る。
【0120】
薬学組成物
【0121】
本発明のさらに他の態様によると、本発明の二重特異性抗体を含む薬学組成物が提供される。前記二重特異性抗体は組成物に予防的または治療的有効量で含まれ得る。
【0122】
一部の具現例で、前記薬学組成物は癌の増殖、生存、転移および再発を抑制するために対象体に投与され得る。したがって、前記薬学組成物は癌の予防または治療のために対象体に投与され得る。この時、前記薬学組成物は抗癌化学療法剤、放射線治療および/または他の免疫抗癌剤(例えば、抗PD-1、抗CTLA-4抗体など)とともに使用または併用投与され得る。このような併用治療法は併用投与(2個以上の治療的製剤が同一または別個の組成物に含まれる投与)および個別投与を含み、そのような場合、二重特異性抗体の投与が追加治療剤/治療法の適用/使用以前に、同時に、および/または続けて起こり得る。
【0123】
一部の具現例で、前記癌は固形癌または血液癌であり得る。
【0124】
一部の具現例で、前記癌は卵巣癌、結腸癌、大腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経母細胞-誘導されたCNS腫瘍、単球性白血病、B-細胞誘導された白血病、T-細胞誘導された白血病、B-細胞誘導されたリンパ腫、T-細胞誘導されたリンパ腫、および肥満細胞誘導された腫瘍からなる群から選択されるが、これに制限されない。好ましくは、前記癌は卵巣癌、肺癌、B-細胞誘導されたリンパ腫およびT-細胞誘導されたリンパ腫からなる群から選択されたいずれか一つであり得る。
【0125】
本発明の薬学組成物を製造するために、本発明の二重特異性抗体は製薬上許容される坦体および/または賦形剤と混合され得る。薬学組成物は凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で製造され得る。例えば、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984)]を参照する。
【0126】
許容される坦体および/または賦形剤(安定化剤を含む)は使われる容量および濃度で対象体に無毒性であり、バッファー(例えばホスフェート、シトレートまたは他の有機酸);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはメチオニン);防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10以下の残基)ポリペプチド;蛋白質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性重合体(例えばポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン);単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤(例えばEDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成反対イオン(例えばナトリウム);金属錯体(例えばZn-蛋白質錯体);および(または)非イオン系界面活性剤(例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG))を含むことができ、これに制限されない。
【0127】
本発明の薬学組成物はその投与経路により当業界で公知の適合した形態で製剤化され得る。
【0128】
本明細書で用語「予防的または治療的有効量」または「有効量」は対象体の癌を予防または治療するのに有効な組成物の有効成分の量であって、医学的処置に適用可能な合理的な特典/危険割合で癌を予防または治療するのに充分であり副作用を起こさない程度の量を意味する。前記有効量の水準は患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬品の活性、薬品に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、配合または同時使用される薬品を含んだ要素およびその他医学分野で広く知られている要素により決定され得る。この時、前記の要素をすべて考慮して最小限の副作用または副作用なしに最小限の量で最大の効果を得られる量を投与することが重要であり、これは通常の技術者によって容易に決定され得る。
【0129】
具体的には、本発明の薬学組成物で有効成分の有効量は個体(患者)の年齢、性別、体重により変わり得、一般的には体重kg当り約0.0001mg~100mg、0.001~50mg、または5mg~約50mgが1日1回~数回に分けて投与され得る。しかし、投与経路および期間、疾病の重症度、性別、体重、年齢などによって増減され得るため、本発明の範囲はこれに限定されない。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳細に説明する。下記の実施例は本発明の理解を助けるために提示されたもので、いずれの方式であれ、この範囲を制限しようとする意図ではなく、制限しようとするものとして解釈されてはならない。
【0131】
実施例1.CD47およびPD-L1に対する二重特異性抗体の製造
【0132】
実施例1.1.CD47およびPD-L1に対する二重特異性抗体の製造に使われた配列およびこれを含有するベクターの作製
【0133】
図1に示したような構造を有する抗体の製造のために、このような抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号15)および軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号16)をそれぞれ含有するベクターの作製をFusion Antibodies plc.(北アイランドベルファスト素材)に依頼した。
【0134】
実施例1.2.CD47およびPD-L1に対する二重特異性抗体の生産および精製
【0135】
実施例1.1で作製されたベクターの一時的トランスフェクションをチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞株で遂行した。回分式培養後、発現した抗体を細胞培養上清液から精製した。引き続き、下記の表2に示したような指定された基準を充足するかどうかを確認するために、精製された抗体に対して品質制御(QC)分析を完了した。
【0136】
【0137】
前記トランスフェクション、精製および品質制御分析に対する具体的な手続きは次の通りである。実施例1.1で作製されたベクターを哺乳類一時発現プラスミドであるpETE V2(Fusion antibodies)にクローニングした。抗体をCHO基盤一時発現システムを使って発現させ、生成された抗体含有細胞培養上清液を遠心分離および濾過によって精製した。抗体を親和度クロマトグラフィーを通じて細胞培養上清液から精製した(最新AKTAクロマトグラフィー装備を使用)。精製された抗体をホスフェート緩衝食塩水溶液内に緩衝液交換した。抗体の純度は還元および変性ソディウムドデシルサルフェートポリアクリルアミドゲルによって判断される通り、>95%であると確認された(
図2)。
図2で、それぞれのレーンは下記の表3に示した通りである。
【0138】
【0139】
抗体を大きさ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析してクロマトグラムを得た(
図3)。クロマトグラムは一つの主要ピークを示した(総面積は95%を超過する)。
図3に示したクロマトグラムに対する積分結果を下記の表4に示した(対照蛋白質の滞留体積(データは提示されない)を基準とする)。単量体分画に相応するピークは>98%であった。
【0140】
【0141】
バクテリア内毒素水準はEndosafe(登録商標)-PTSシステムおよびEndosafe(登録商標)-PTSカートリッジ(Charles River Laboratories)を使って決定した。抗体濃度は280nmで吸光度を測定したし、1.0mg/ml=1.63のA280である理論的吸光係数を利用して計算することによって決定した。提供された精製抗体生成物に関する詳細な事項を表5に要約した。
【0142】
【0143】
表5から分かるように、所望する抗体が指定された基準に符合する程度に成功裏に発現し精製されたことが分かる。このように製造されたCD47およびPD-L1に特異的に結合する二重特異性抗体は、以下「IMC-201」とも指摘される。
【0144】
このように製造された抗体は次のような重鎖および軽鎖可変およびCDR配列を有する。Fc領域は配列番号11のアミノ酸配列を有する(配列目録参照)。
【0145】
【0146】
製造例1.抗-PD-L1単クローン抗体および抗-CD47単クローン抗体の製造
【0147】
本製造例で製造された単クローン抗体は内在性汚染物質を含まない同種性組換えポリペプチドを指称する。
【0148】
まず、抗-PD-L1単クローン抗体の製造のために、アメリカ特許第10,118,963号の可変領域配列(配列番号1および配列番号2)を使った。ヒトIgG1不変領域配列を連結して軽鎖および重鎖抗体配列を完成し、当業界で公知の任意の発現システムを使って前記抗体を製造した。具体的には、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞株で抗体をエンコードする核酸を含む組換え発現ベクターを使って一時的発現を通じて宿主細胞から回収した上清液をProtein A精製して前記抗体を製造した。
【0149】
次に、抗-CD47単クローン抗体の製造のために、アメリカ特許第10,035,855号の公開された可変領域配列(配列番号22および配列番号8)を使った。ヒトIgG4不変領域配列を連結して軽鎖および重鎖抗体配列を完成し、当業界で公知の任意の発現システムを使って前記抗体を製造した。具体的には、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞株で抗体をエンコードする核酸を含む組換え発現ベクターを使って一時的発現を通じて宿主細胞から回収した上清液をProtein A精製して前記抗体を製造した。
【0150】
このように製造された抗-PD-L1単クローン抗体および抗-CD47単クローン抗体は、以下でそれぞれ「IMC-001」および「IMC-002」と指称される。
【0151】
実施例2.IMC-201の抗原結合能および活性評価(in vitro)
【0152】
実施例2.1.ELISAによるリガンド結合能の確認
【0153】
まず、IMC-201の単一リガンド(PD-L1)結合力を、次のようにELISAで測定した。IMC-201およびIMC-001を連続希釈し(0.01~600ng/ml、3倍希釈)、75ng/wellでプレートに事前コーティングされた組換えヒトPD-L1と共にインキュベーションした。HRP-接合抗-ヒトIgG Fcγフラグメント特異的抗体(Peroxidase AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ fragment specific(#109-035-098)、Jackson IR Lab)をIMC-201およびIMC-001の検出に使った。
【0154】
引き続き、IMC-201の単一リガンド(CD47)結合力をELISAで測定した。IMC-201およびIMC-002を連続希釈し(0.01~600ng/mL、3倍希釈)、50ng/wellでプレートに事前コーティングされた組換えヒトCD47と共にインキュベーションした。HRP-接合抗-ヒトIgG Fcγフラグメント特異的抗体をIMC-201およびIMC-002の検出に使った。
【0155】
次に、IMC-201の二重リガンド(PD-L1とCD47)同時結合力を次のようにELISAで測定した。IMC-201、IMC-001およびIMC-002を連続希釈し(0.09~1800ng/ml、3倍希釈)、それぞれ100μL当たり50ng/wellでプレートに事前コーティングされた組換えヒトCD47-fcとともにインキュベーションした。洗浄後50ng/wellの濃度で組換えヒトPD-L1-hisとともにインキュベーションし、HRP-接合抗-hisフラグメント特異的抗体をIMC-201、IMC-001およびIMC-002の検出に使った。
【0156】
その結果、PD-L1単クローン抗体であるIMC-001のEC
50値(ng/ml)は0.989と測定され、IMC-201は7.240と測定された(
図4aの左側の図)。また、CD47単クローン抗体であるIMC-002のEC
50値は2.769と測定され、IMC-201は4.091と測定された(
図4aの右側の図)。一方、IMC-201の二重リガンド同時結合力の測定結果、IMC-201二重抗体のみ特異的にCD47およびPD-L1に同時にすべて結合することが確認された(EC
50:17.380ng/ml、
図4b)。結論的に、IMC-201は単クローン抗体であるIMC-001およびIMC-002と類似する結合能を示すことを確認した。
【0157】
実施例2.2.腫瘍細胞に対する結合能の確認
【0158】
腫瘍細胞に対するIMC-201の細胞結合力を次のように測定した。
【0159】
PD-L1発現が高いH1975細胞株(ATCC #CRL-5908)およびCD47発現が高いJurkat細胞株(ATCC #TIB-152)を、それぞれ3倍希釈されたIMC-201、IMC-001およびIMC-002とともに4℃で1時間の間インキュベーションし、これらの結合強度をフローサイトメトリー(BD #LSRFortessa X-20)で測定した。
【0160】
その結果、ELISA結果とは異なって細胞に対する結合力はIMC-201がIMC-001およびIMC-002と比較して優勢であると確認された(
図5)。
【0161】
実施例2.3.ノックアウト(KO)細胞株に対する結合能の確認
【0162】
ノックアウト安定細胞株に対するIMC-201の細胞結合力を次のように測定した。
【0163】
MDA-MB-231(ATCC #HTB-26)とCRISPR-Cas9を利用してノックアウトさせることによって得たPD-L1(Sigma)KO、CD47(Sigma)KO、およびPD-L1およびCD47二重KO細胞を、それぞれ3倍希釈されたIMC-201、IMC-001およびIMC-002とともに4℃で1時間の間インキュベーションした。結合強度をフローサイトメトリーで測定した。
【0164】
その結果、CD47 KO細胞ではIMC-201の結合能が母抗体であるIMC-001と類似するように測定されたが、PD-L1 KO細胞ではIMC-201の結合能が母抗体であるIMC-002に比べて顕著に高く測定された。結論的に、前記実施例2.2で確認されたように、IMC-201がIMC-001およびIMC-002対比腫瘍細胞に対する結合力が優勢な理由はIMC-201のCD47に対する結合能がCD47に対する単クローン抗体より遥かに高い結合力を有するためであることを確認することができた(
図6a~
図6d)。
【0165】
実施例2.4.RBC結合能検定
【0166】
ヒト赤血球(RBC)に対するIMC-201の細胞表面結合を次のように測定した。この時、抗-CD47抗体であるIMC-002およびHu5F9(文献[Liu J、et al.Pre-clinical development of a humanized anti-CD47 antibody with anti-cancer therapeutic potential. PLoS One.2015;10(9):e0137345]により製造)を比較抗体で使った。
【0167】
健康な供与者(n=3)から得たヒトRBC(5×105細胞)を3倍希釈されたIMC-201または他の比較抗体(IMC-002およびHu5F9)と共にインキュベーションし、これらの結合強度をフローサイトメトリーを利用して抗-ヒトIgG(H+L)2次抗体の幾何学的平均蛍光強度(MFI)を測定することによって決定した。アイソタイプ対照群としてhIgG1(Sigma #I5029)およびhIgG4(Biolegend #403702)を300μg/ml濃度で処理した。各供与者に対する実験を2重で実行し、3人の供与者からのMFIの平均をエラーバーを使ってグラフで示した。EC50値をGraphPad Prism 5で非線形回帰を通じて計算した。
【0168】
その結果、比較抗体であるHu5F9は高いRBC結合力を示すのに反して、IMC-201はRBC結合力を殆ど示さず、これはアイソタイプ対照群および単クローン抗体であるIMC-002と差がなかった。したがって、IMC-201は癌細胞に対する結合力は高いが(
図5)、RBCに対する結合力は低いと確認された(
図7)。
【0169】
実施例2.5.血球凝集検定
【0170】
健康な供与者(n=3)からのヒト赤血球を1X DPBSで10分の1に希釈し、表示された濃度のIMC-201および他の比較抗体(IMC-002およびHu5F9)と共に37℃で一晩中インキュベーションした。
【0171】
その結果、比較抗体であるHu5F9は高い血球凝集度を示すのに反して、IMC-201は血球凝集度を殆ど示さなかった。対照群であるブランク、アイソタイプ対照群と比較時にも類似する結果であり、単クローン抗体であるIMC-002とも類似する結果であることを確認した。前記実施例2.4で確認されたようなRBCに対する低い結合力を反映しているかのように、IMC-201は血球凝集度を殆ど示さないと確認された(
図8)。
【0172】
実施例2.6.食菌作用(phagocytosis)確認
【0173】
単球由来大食細胞(monocyte-derived macrophage、MDM)を抗体の存在下で2時間の間、1:1の比でCFSE-標識MDA-MB-231、H1975、Raji(ATCC#CCL-86)およびSR786(DSMZ#ACC369)細胞とそれぞれ共同培養した。MDA-MB-231細胞の場合、IMC-002およびIMC-201は5、10μg/ml濃度で処理したし、H1975細胞の場合IMC-002およびIMC-201は0.37、1.11、3.33μg/ml濃度で処理した。Raji細胞の場合にはIMC-002およびIMC-201は0.04、0.12、0.37μg/ml濃度で処理し、R786細胞の場合にはIMC-002およびIMC-201は0.01、0.04、0.12μg/ml濃度で処理した。
【0174】
腫瘍細胞に対する大食細胞食菌作用を試験抗体の存在下でフローサイトメトリーによって評価した。大食細胞は生きている単一CD11b+細胞と定義される。食菌作用%はCFSE+である大食細胞の百分率で定義される。
【0175】
その結果、4種の細胞においてすべてがIMC-201の食菌作用はIMC-002対比同等であるかそれ以上であると確認され、特にMDA-MB-231細胞とH1975細胞ではIMC-201の食菌作用が顕著に高く示された(
図9)。
【0176】
実施例2.7.腫瘍細胞のADCC活性評価
【0177】
ADCC assay kit(Promega_G7018)を利用してADCC活性を評価した。標的細胞Rajiは試験当日、標的細胞MDA-MB-231はプレートに一晩中事前コーティングした。ADCC生物検定標的細胞を抗体(IMC-201、IMC-001、IMC-002またはAvelumab)の存在下で1時間の間4℃で共同インキュベーションした。この時、前記抗体を、Raji細胞は連続4倍、MDA-MB-231細胞では連続7倍希釈で処理した。洗浄を通じてターゲット細胞に結合していない抗体はすべて除去後、エフェクター細胞と6時間の間5%CO2インキュベーターで共同インキュベーションした。Bio-Glo試薬を使ってルシフェラーゼを定量化した。
【0178】
その結果、ADCCはCD47を発現する細胞(Raji)ではIMC-201のみが効果を示す驚くべき結果を示した(
図10a)。また、PD-L1とCD47をすべて発現する細胞(MDA-MB-231)ではIMC-201が最も高い効果を示した(
図10b)。
【0179】
実施例2.8.プライマリNK細胞(primary NK cell)のADCC活性評価
【0180】
CD107a脱顆粒評価でプライマリNK細胞のADCCを評価した。標的細胞であるMDA-MB-231細胞に抗体(IMC-001、IMC-201)を0.1、1、10μg/ml濃度で30分の間事前処理し、CD56+NK細胞(エフェクター細胞)と1:1比率(標的細胞:エフェクター細胞)で4時間の間37℃5%CO2インキュベーターで共同培養した。共同培養を始めてCD107aを染色し、1時間後GolgiStop Protein Transport Inhibitor(モネンシンを含む、購入先:BD Biosciences)を処理した。以後、NK細胞マーカーを染色してフローサイトメトリーで生きているNK細胞(CD3-CD56+)内CD107a%でADCCを評価した。
【0181】
その結果、IMC-201によるNK細胞の活性は競争薬物と同等で(データは提示されない)あり、すべての濃度においてIMC-001対比顕著に優秀であることを確認した(
図11)。NK細胞活性の増加はIMC-201による先天的免疫(innate immunity)活性が増加することを示す。
【0182】
実施例2.9.抗体によるT細胞活性確認(MLR分析)
【0183】
樹状細胞とT細胞を利用したMLR(Mixed Lymphocyte Reaction)分析を通じて抗体によるT細胞の活性を確認した。CD14+単球で単細胞誘導樹状細胞(Monocyte derived dendritic cells、moDC)を分化させ、PBMC(Peripheral blood mononuclear cells)でCD4+T細胞を分離用キット(stem cell#17952)で分離して確保した。5日間IMC-001またはIMC-201(0.001~10μg/mL、10倍希釈)の存在下で単細胞誘導樹状細胞とCD4+T細胞を1:10の割合で共に培養して確保された細胞の培養液でIFN-γ発現をELISAで確認した。
【0184】
その結果、IMC-201の濃度に依存的にIFN-γが増加することを確認した(
図12)。IMC-201は母抗体であるIMC-001と類似する効能を示したし、MLR分析でIFN-γの発現増加は腫瘍微細環境で癌細胞に対する細胞毒性を増加させて癌を抑制する可能性を提示する。
【0185】
実施例3.IMC-201の効果確認(in vivo)
【0186】
実施例3.1.乳癌細胞株Xenograftモデルで癌成長抑制効果
【0187】
IMC-201の生体内効能研究のためにMDA-MB-231乳癌細胞株を解凍および培養し、この細胞を40匹の後天性免疫細胞が欠如されたBALB/cヌードマウス(入手先:Chemon)それぞれに1×10
7細胞/200μlで
図13に示した部位1に皮下接種した。
【0188】
細胞接種後17日目に、平均腫瘍大きさが90.89mm3に到達した時、マウスを無作為で下記の表7に示したように5つのグループに割り当てた。各グループには8匹のマウスが含まれた。試験物質の投与をD0に開始した。試験物質は一週間に一度(総5回)腹腔内投与した。
【0189】
腫瘍体積と体重をD0、D4、D7、D11、D14、D18、D21、D25、D28、D32、D39、D46およびD53に測定した。腫瘍体積は下記の式を使ってmm3で表現した:TV=0.5a×b2(ここで、aとbはそれぞれ腫瘍の長径と短径である)。
【0190】
データは平均±標準誤差(Mean±SEM)で表現した。二つのグループ間の比較のために、独立標本T検定(Independent-Samples T test)を遂行した。すべてのデータはSPSSバージョン18.0で分析した。P<0.05が統計的に有意なものと見なされた。
【0191】
乳癌細胞株を移植した効能研究は次のように設計した:
【0192】
【0193】
効能研究を遂行した結果に関連して、腫瘍成長曲線を基準とした腫瘍成長抑制を
図14に示した。
【0194】
前記結果から次のような事項が確認された。効能研究終点である65日目で、アイソタイプ対照群(G1、IgG1 kappa、21.4 mpk、QWХ5w)と比較して、IMC-001(G2、2.1 mpk、QW×5w)グループで腫瘍体積(TGItv=42.70%)に有意な差がなかった。反面、対照群と比較してIMC-002(G3、2.1 mpk、QW×5w)グループでは腫瘍体積(TGItv=51.12%)に有意な差を示した(P<0.05*)。また、IMC-001とIMC-002の併用-処理グループ(G4、2.1 mpk+2.1 mpk、QWХ5w)およびIMC-201-処理グループ(G5、3 mpk、QWХ5w)でも腫瘍体積に対するTGI値はそれぞれ67.14%、92.78%を示して有意な差を示した(P<0.01**)。特に、IMC-201-処理グループは腫瘍成長抑制効果が最も顕著に示された。
【0195】
実施例3.2.大腸癌細胞株Xenograftモデルで癌成長抑制効果
【0196】
IMC-201の生体内効能研究のための大腸癌細胞株はCT26-hPD-L1/hCD47であり、これはCT26 WT細胞(Kerafast、Cat No:ENH204)のマウスPD-L1およびCD47遺伝子をノックアウトさせ、常時発現するヒトPD-L1およびCD47遺伝子を挿入することによって生成されてフローサイトメトリーによって確認されたものである。
【0197】
CT26-hPD-L1/hCD47細胞を解凍および継代培養し、この細胞を48匹のBALB/c-hPD-1/hSIRPαマウス(購入先:GemPharmatech Co.,Ltd)それぞれに2×10
6細胞/100μLで
図13に示した部位3に皮下接種した。
【0198】
細胞接種後7日目に、平均腫瘍大きさが99.92mm3に到達した時、マウスを無作為で下記の表8に示したように5つのグループに割り当てた。各グループには8匹のマウスが含まれた。グループ化当日は0日目(D0)で表示された。試験物質の投与をD0に始めた。試験物質は一週間に二回(総4回)腹腔内投与した。腫瘍体積と体重をD0、D4、D7、D11、D14、D18、D21、D25、D28、D32、D39、D46およびD53に測定した。腫瘍体積は下記の式を使ってmm3で表現した:TV=0.5a×b2(ここで、aとbはそれぞれ腫瘍の長径と短径である)。
【0199】
データは平均±標準誤差(Mean±SEM)で表現した。二つのグループ間の比較のために、独立標本T検定(Independent-Samples T test)を遂行した。すべてのデータはSPSSバージョン18.0で分析した。P<0.05が統計的に有意なものと見なされた。
【0200】
大腸癌細胞株を移植した効能研究は次のように設計した:
【0201】
【0202】
前記試験物品の中で、アイソタイプ対照群はIgG1 kappa(Crownbio)である。
【0203】
効能研究を遂行した結果に関連して、腫瘍成長曲線を基準とした腫瘍成長抑制を
図15に示した。
【0204】
前記結果から次のような事項が確認された。効能研究終点で、アイソタイプ対照群G1(IgG1 kappa、21.4 mpk、BIW×2w)と比較して、G3(IMC-002投与グループ、2.1 mpk、BIW×2w)の腫瘍体積(TGItv D28=27.08%)および腫瘍重さ(TGItw=21.11%)は有意でない差を示した。また、G1と比較して、G4(IMC-001+IMC-002併用処理グループ、2.1 mpk+2.1 mpk、BIW×2w)の腫瘍体積(TGItv D28=27.37%)および腫瘍重さ(TGItw=26.93%)も有意でない差を示した。反面、G1と比較して、IMC-001処理グループ(G2、2.1 mpk、BIW×2w)の腫瘍体積(TGItv D28=38.60%)および腫瘍重さ(TGItw=41.43%)は有意な差を示した(P<0.05*)。さらにG5(IMC-201、3 mpk、BIW×2w)の腫瘍体積(TGItv D28=83.57%)および腫瘍重さ(TGItw=82.98%)は統計的に有意性が高く示された(P<0.001***)。すべての治療剤投与群で異常体重変化が観察されず、IMC-201投与によって有意な水準で癌成長抑制が観察され、母抗体であるIMC-001およびIMC-002の単独処理群と併用処理群対比高い水準の癌成長抑制効果が確認された。
【0205】
実施例3.3.再誘発研究
【0206】
再誘発研究は、実施例3.2の効能研究グループ化後53日目にCT26-hPD-L1/hCD47腫瘍細胞を各マウスに2×10
6細胞/100μLで
図13に示した部位4に皮下接種することによって遂行した。再誘発研究終点は88日目と推定された。再誘発研究終点で、マウスと腫瘍の写真を撮影し、腫瘍の重さを測定した。再誘発研究を遂行した結果に関連して、多様なグループの時間経過にともなう平均腫瘍体積変化を
図16に示した。
【0207】
前記結果から次のような事項が確認された。研究終点である88日目に、G1(G1:BALB/c-hPD-1/hSIRPαマウス)、G5(3 mpk(BIW×2w)IMC-201処理された腫瘍退行マウス)の平均腫瘍体積はそれぞれ3233.74mm3および0mm3であった。対照群グループ(G1)と比較して、G5(3 mpk(BIW×2w)IMC-201処理された腫瘍退行マウス)グループは有意な腫瘍抑制効果を示した。効能研究グループ化後53日目にIMC-201抗体を投与していないマウス(G1)に対しては腫瘍生成が起きた。反面、IMC-201抗体によって腫瘍が抑制されたマウス(G5)は、既に移植した部位の反対側に癌細胞を再び移植した後、抗体の再投与がなくても腫瘍が生成されないことを確認したし、6匹で完全寛解(Complete Remission、CR)を観察した。
【0208】
これを通じて、IMC-201(3 mpk)は同一腫瘍再誘発研究でメモリーT細胞の生成による腫瘍の再誘発抑制効果があることを確認した。
【配列表】
【国際調査報告】