(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】自動化された自己完結型生物学的分析のためのシステム、方法、および装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20240423BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240423BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20240423BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240423BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z
C12M1/00 A ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568447
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 US2022027476
(87)【国際公開番号】W WO2022235673
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523416678
【氏名又は名称】コ-ダイアグノスティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】アボット・リチャード・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ・コナー
(72)【発明者】
【氏名】ポリッツ・マーク・アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ライリー・カーク・エム
(72)【発明者】
【氏名】サーストン・クリストファー・エム
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・デレク
(72)【発明者】
【氏名】サンドストロム・クレイグ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029FA03
4B063QA01
4B063QA05
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS40
(57)【要約】
PCR検査を含む、増幅に基づく分析を実施するためのシステム、装置および方法。1つの例示的な実施形態では、システムは、検査コンテナアセンブリと、検査ユニットと、を含み得る。検査コンテナアセンブリは、サンプル収集ポートと、サンプル調製チャンバと、反応チャンバと、を含み得る。サンプル収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を含むことができる。使用時、検査コンテナアセンブリは、蓋で閉じられたサンプル収集ポートにサンプルを入れた状態で、検査ユニットの座部内に置かれ得る。プランジャが栓部材を外し、サンプルがサンプル調製チャンバ内に引き込まれ得る。サンプル調製が完了すると、チャネルが開かれ得、調製されたサンプルが反応チャンバに流れ込み、反応チャンバは次に封止される。次に、増幅反応を含む検査が行われ得、その後、反応チャンバ内の蛍光発光を検出することにより、検出が行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的アッセイを実施するためのシステムであって、
検査コンテナアセンブリであって、
栓部材によって封止された底部開口部を有するサンプル収集ポートと、
前記底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバと、
反応チャンバと、
を含む、検査コンテナアセンブリと、
前記サンプル収集ポートを閉じるように構成された蓋アセンブリであって、前記蓋アセンブリは、前記蓋アセンブリが前記サンプル収集ポートに固定されたときに前記栓部材に接触する可動プランジャを含む、蓋アセンブリと、
前記検査コンテナアセンブリを受容するための座部を含む検査ユニットであって、
前記検査コンテナアセンブリが前記座部内に配置されたときに前記サンプル調製チャンバと伝導的に接触する第1の温度制御デバイスと、
前記検査コンテナアセンブリが前記座部内に配置されたときに前記反応チャンバと伝導的に接触する第2の温度制御デバイスと、
前記検査コンテナアセンブリが前記座部内に配置されたときに前記反応チャンバ内の状態をモニターするように配置された検出器アセンブリと、
を含む、検査ユニットと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記サンプル収集ポートは、前記サンプル調製チャンバの上方に配置されたカップ状部材として形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記検査コンテナアセンブリは、
上面および反対側の底面を有する基部部材本体と、
前記底面の一部に接着された可撓性底部封止シートであって、前記サンプル調製チャンバの下端部の少なくとも一部と前記反応チャンバの少なくとも一部は、前記底面と前記底部封止シートとの間の空間によって画定されている、可撓性底部封止シートと、
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記反応チャンバは、前記基部部材本体の前記上面に形成された検出窓を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出窓は、可撓性材料から形成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記サンプル調製チャンバは、前記蓋アセンブリが固定される際に前記栓部材が前記可動プランジャによって前記底部開口部から押されるまで、真空下で維持される、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記サンプル調製チャンバと前記反応チャンバとの間に延びる反応チャネルをさらに含み、前記反応チャネルは、前記底面と前記底部封止シートとの間の空間によって画定されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記底部シートと前記基部部材の前記底面との間の壊れやすい封止部が、使用時まで前記反応チャネルを封止する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記底面は、使用中に前記壊れやすい封止部を開く点を画定する応力集中部を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記検査ユニットは、前記可動プランジャに接触してこれを前進させ、前記サンプル調製チャンバ内の流体を変位させ、前記壊れやすい封止部を開く、プランジャ機構をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記検査ユニットは、前記反応チャンバを閉じるために前記底部シートの一部を前記底面に封止するためのヒートシーラーをさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出器アセンブリは、マルチチャネル分光計と、レーザーダイオードおよび発光ダイオードからなる群から選択される光源と、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記検出器アセンブリは、前記光源からの光の照明を前記反応チャンバ上に集中させるように配置された少なくとも第1のボールレンズをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記検出器アセンブリは、前記反応チャンバからの放出光を前記マルチチャネル分光計に集中させるように配置された第2のボールレンズをさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
サンプルを分析する方法であって、
サンプルをコンテナアセンブリのサンプル収集ポートに入れることであって、前記サンプル収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有する、ことと、
蓋アセンブリを前記サンプル収集ポートに固定し、前記サンプル収集ポートを閉じることであって、前記蓋アセンブリは、可動プランジャアセンブリを含む、ことと、
前記栓部材を前記プランジャアセンブリと接触させて前記栓部材を外し、前記底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバに前記サンプルが入ることを可能にすることと、
封止部を開いて、前記サンプルが前記サンプル調製チャンバから反応チャンバに流れることを可能にすることと、
前記サンプル中に存在し得る目的の生物学的マーカーを増幅する反応を実行することと、
前記反応チャンバ内の増幅された目的の生物学的マーカーの存在を検出することと、
を含む、方法。
【請求項16】
封止部を開いて、前記サンプルが前記サンプル調製チャンバから前記反応チャンバに流れることを可能にすることは、前記可動プランジャを前進させて前記サンプル調製チャンバ内の流体を変位させ、壊れやすい封止部を開くことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル調製チャンバ内で前記サンプルを加熱して前記サンプル中の酵素を失活させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプル中に存在し得る目的の生物学的マーカーを増幅する前記反応を実行する前に、前記反応チャンバを封止することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記目的の生物学的マーカーは、少なくとも1つの核酸標的であり、前記反応チャンバは、前記サンプル中に存在し得る1つ以上の核酸標的を増幅するように構成されたプライマーを収容する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記反応チャンバは、乾燥した増幅試薬および検出試薬をその中に収容する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥した増幅試薬および検出試薬は、空気乾燥により調製される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記反応チャンバ内の増幅された目的の生物学的マーカーの存在を検出することは、蛍光色素からの蛍光発光信号を検出することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記反応チャンバ中の増幅された目的の生物学的マーカーの存在を検出することは、融解曲線分析を実施することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
サンプル中の核酸を検出する方法であって、
複数の流体接続されたチャンバを有する容器を提供することであって、前記複数の流体接続されたチャンバは、
サンプル調製ゾーンと、
増幅ゾーンと、
前記チャンバを流体接続する1つ以上の封止可能なポートであって、前記封止可能なポートは、前記容器の外部から前記チャンバへの唯一のアクセスを提供する、1つ以上の封止可能なポートと、
を含む、ことと、
収集ポートを介して前記サンプルを第1のチャンバに導入することであって、前記収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有する、ことと、
蓋アセンブリを前記収集ポートに固定し、前記収集ポートを閉じることであって、前記蓋アセンブリは、可動プランジャアセンブリを含む、ことと、
前記栓部材を前記プランジャと接触させて前記栓部材を外し、前記底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバに前記サンプルが入ることを可能にすることと、
封止部を開いて、前記サンプルが前記サンプル調製チャンバから反応チャンバに流れることを可能にすることと、
前記反応チャンバを封止することと、
前記サンプル中の前記核酸を、1つ以上の標的を増幅するように構成されたプライマーを含むPCR成分と混合することと、
前記標的核酸を増幅することと、
前記増幅ゾーン内の蛍光色素からの蛍光発光信号を検出することであって、
蛍光はレーザーダイオードによって励起され、
発光は、約350nm~1000nmの波長において少なくとも4つのスペクトルチャネルを並行して処理することができるマルチチャネル分光計によって検出される、ことと、
蛍光データを、携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムを介して、クラウドまたはローカルCPUに通信することと、
携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムによって、前記クラウドまたはローカルCPUから分析結果を受信することと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記増幅ゾーンは、前記サンプル中に存在し得る1つ以上の核酸標的を増幅するように構成されたプライマーを収容する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの核酸標的が、ウイルス、細菌、および真菌からなる群から選択される病原体に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスは、コロナウイルス、アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA、インフルエンザB、ライノウイルス、および非HRVエンテロウイルスからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、およびHKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
複数のSARS-CoV-2変異体が検出される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸標的は、ヒトの核酸配列である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記増幅ゾーンは、乾燥した増幅試薬および検出試薬をその中に備える、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記乾燥した増幅試薬および検出試薬は、空気乾燥により調製される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記増幅ゾーンは、融解曲線分析を行う手段をさらに備える、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記レーザーダイオードは、ボールレンズと共に使用される、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記分光計は、ボールレンズと共に使用される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物を検出するためのPCR検査を含む、生物学的分析を実施するためのシステム、方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、サンプル中の病原体を高感度かつ特異的に検出するための、一般的に好まれる方法になってきている。PCRによる病原体由来の核酸の検出は、現在、多くの感染症の診断のための権威ある方法である。COVID-19のパンデミックの間に生じた1つの課題は、症例の検出、接触者追跡(contract tracing)、およびサーベイランスを実施して疾患を効果的に抑制し制御することができるように、このような分析を広いコミュニティ規模で迅速に行い、結果をほぼリアルタイムで伝達する能力であった。現在、多くのPCRベースの検査プラットフォームが存在し、それらは、クローズドなサンプル・トゥ・アンサー(sample-to-answer)デザインを提供し、1~2時間の所要時間で最小限のオペレーターの介入しか必要としない。しかし、これらのデザインは、複雑な機構および消耗品を伴い、高価になるため、その設置は主に臨床検査室、医療提供者、政府施設、および、他の専門家組織に限定されている。他のPCRシステムでは、消費者が自分自身のサンプルを収集することができるが、実際の検査および分析は、サンプルが送られる集中型研究所(centralized lab)で行われ、結果までの時間は24時間を超えることが多い。
【0003】
操作が簡単な生物学的分析を実施するためのシステムまたはプロセスは、当技術分野における改善であろう。使用のために最小限のサンプル処理しか必要としない、そのようなシステムは、当技術分野におけるさらなる改善であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、PCR検査を含む、増幅に基づく分析を実施するためのシステム、装置、および方法に向けられている。本開示の第1の態様の1つの例示的な実施形態では、システムは、検査コンテナアセンブリと、検査コンテナアセンブリを受容するための座部を有する検査ユニットと、を含み得る。いくつかの実施形態では、検査コンテナアセンブリは、1回使用の使い捨てユニットとして形成され得る。
【0005】
検査コンテナアセンブリは、サンプル収集ポート、サンプル調製チャンバ、および反応チャンバを含むことができる。サンプル収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有する漏斗形状のカップ部材として形成され得る。サンプル調製チャンバは、真空下で維持され、底部開口部と流体接続していてよい。反応チャンバも同様に真空下で維持され得る。サンプル調製チャンバおよび反応チャンバはそれぞれ、任意の必要な反応成分を収容することができる。検査ユニットは、検査コンテナアセンブリの様々なチャンバと整列し、分析の実行を可能にする構成要素を含むことができる。
【0006】
本開示の別の態様では、サンプルを分析する例示的な方法が提供され、この方法は、検査コンテナアセンブリを提供することと、サンプルをその収集ポートに入れることと、を含み得、この収集ポートは、次いで、可動プランジャを含み得る蓋アセンブリで閉じられる。検査コンテナアセンブリは、検査ユニットの座部内に配置され得る。プランジャは、栓部材を外すことができ、サンプルが真空によりサンプル調製チャンバ内に引き込まれることを可能にする。いくつかの実施形態では、これは、蓋アセンブリを収集ポートに固定することにより達成され得る。他の実施形態では、プランジャを前進させて栓を外すことができる。サンプル調製チャンバと伝導的に接触している温度制御デバイスが、サンプル調製反応を実行または終了するために作動され得る。反応チャンバと連通しているチャネルが、次に開かれて、調製されたサンプルを反応チャンバに流し込むことができる。反応チャンバは、その後、封止され得、反応チャンバと伝導的に接触している温度制御デバイスを作動させることにより、PCRなどの反応が実行される。反応中および/または反応後、目的の反応生成物が存在するときに作動される反応チャンバ内の蛍光色素からの蛍光発光を検出することにより、検出が行われ得る。特定の分析物または分析物の特定の変異体の存在または非存在を確認するために、反応中および/または反応後に、融解曲線分析がオプションとして実施され得る。いくつかの実施形態では、検査ユニットは光源としてレーザーを含むことができ、マルチチャネル分光計が検出のために使用され得る。
【0007】
別の態様では、検査ユニットは、検査手順を実行するためにその様々な構成要素を制御するCPUと、ブルートゥースまたは他の無線通信構成要素などの通信ゲートウェイと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、検査ユニットは、特定のアッセイ要件を指示し、検査ユニットによって収集されたデータを受信および分析して結果を決定する遠隔システムと通信することができる。いくつかの実施形態では、システムは、通信をルーティングするために、ユーザーのスマートフォンなどの携帯用デバイスを利用することができ、結果をユーザーに報告するためにこのデバイス上のアプリを使用することができる。
【0008】
本開示の別の態様では、本開示によるシステム、およびコンテナの例示的な実施形態は、サンプル中の核酸を検出する方法と共に使用され得る。そのような方法では、サンプル調製ゾーンおよび増幅ゾーンを含む複数の流体接続されたチャンバを有し、1つ以上の封止可能なポートがそれらのチャンバを流体接続している、コンテナまたは容器が、提供され得る。封止可能なポートは、容器の外部からチャンバへの唯一のアクセスを提供し得ることが理解されるであろう。サンプルは、収集ポートを介して第1のチャンバに導入され得、収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有する。可動プランジャアセンブリを有する蓋アセンブリが収集ポートに固定されている場合、栓部材は、プランジャと接触して、栓部材を外すことができ、サンプルは底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバに入ることができる。
【0009】
オプションとして、サンプルは次に、サンプル中の酵素を失活させるために加熱することによって、または、サンプル調製チャンバ内に収容された反応物質により、サンプル調製チャンバ内で処理され得る。封止部が開かれて、サンプルをサンプル調製チャンバから反応チャンバに流すことができる。いくつかの実施形態では、これは、サンプルを加圧し、封止部を破砕するために、プランジャをサンプル調製チャンバ内に前進させることによって実行され得る。次いで、反応チャンバが封止され得る。反応チャンバ内で、サンプル中の核酸は、1つ以上の標的を増幅するように構成されたプライマーを含むPCR成分と混合されてもよく、標的核酸は増幅され得る。
【0010】
増幅ゾーン内の蛍光色素からの蛍光発光信号が検出され得、蛍光はレーザーダイオードによって励起され、発光はマルチチャネル分光計によって検出される。約350nm~1000nmの波長において少なくとも4つのスペクトルチャネルを並行して処理することができるマルチチャネル分光計が、使用され得る。蛍光データは、携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムを介して、クラウドまたはローカルCPUに通信され得る。データは、その後、分析され得、分析結果は、携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムによって、クラウドまたはローカルCPUから受信され得る。
【0011】
当業者であれば、種々の図面は例示のみを目的としていることが理解されよう。本開示の性質、ならびに本開示に従った他の実施形態は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、およびいくつかの図面を参照することによって、より明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本開示の原理に従った検査コンテナアセンブリのための本体の第1の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図1B】本開示の原理に従った検査コンテナアセンブリのための本体の第1の例示的な実施形態の底面図である。
【
図1C】本開示の原理に従った検査コンテナアセンブリのための本体の第1の例示的な実施形態の側面図である。
【
図1D】本開示の原理に従った検査コンテナアセンブリのための本体の第1の例示的な実施形態の上面図である。
【
図1E】本開示の原理に従った検査コンテナアセンブリのための本体の第1の例示的な実施形態の断面図である。
【
図2】
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリと共に使用するための例示的な栓部材の側面図である。
【
図3A】
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリと共に使用するための1つの例示的な蓋部材の底面斜視図である。
【
図3B】
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリと共に使用するための1つの例示的な蓋部材の断面側面図である。
【
図4B】
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリならびに
図3Aおよび
図3Bの蓋部材と共に使用するための1つの例示的なプランジャ部材の断面側面図である。
【
図6A】本開示の原理に従った検査ユニットの1つの例示的な実施形態の座部内の正しい位置にある
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリの部分切り取り側面図である。
【
図6B】照明および蛍光信号の収集を集中させるために球面レンズを使用する、
図6に描かれているものと同様の検出アセンブリの例示的な実施形態を描いた断面図である。
【
図6C】本開示の原理に従った検査ユニットの第2の例示的な実施形態の座部内の正しい位置にある本開示の原理に従った検査コンテナの第2の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図7】検査コンテナアセンブリ内での乾燥増幅試薬を用いたヒト遺伝子標的の増幅中に、リアルタイムで検査ユニット内においてモニターされた3つの波長での蛍光を示す。
【
図8A】検査コンテナアセンブリの増幅ゾーンで実施されたアンプリコン融解の結果であり、3色の蛍光が融解中にリアルタイムでモニターされた(
図8A)。
【
図8B】検査コンテナアセンブリの増幅ゾーンで実施されたアンプリコン融解の結果であり、融解中にリアルタイムでモニターされた3色の蛍光(
図8A)から、微分融解曲線が、本開示の原理に従って検査ユニットと通信している外部CPUによって計算およびレンダリングされ(
図8B)、Fは蛍光、Tは温度、dF/dTは微分係数である。
【
図9】本開示に従った検査コンテナアセンブリ内で2本の二本鎖DNA断片を用いて検査ユニット内での融解中に同時に6つの波長でモニターされている蛍光から計算された微分融解曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、PCR検査を含む生物学的分析の実施に関連する装置、システム、および方法に関する。本明細書に記載される実施形態は、例示的ではあるが、本開示または添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことが、当業者には理解されよう。また、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に提示した実施形態の様々な組み合わせまたは改変を行い得ることを理解するであろう。そのような代替の実施形態はすべて、本開示の範囲内である。
【0014】
本開示は、PCR検査を含む生物学的分析を実施するためのシステム、装置、および方法に向けられている。PCRは本明細書の実施例において使用される増幅方法であるが、信号または標的のいずれが増幅されるかにかかわらず、プライマーを使用する任意の増幅方法が適切であり得ると理解されることが、認識されるであろう。実際、抗原を検出するための信号増幅のためのアッセイを含む、当業者に既知である、任意の近接度に基づいた増幅アプローチが使用され得る。いくつかの適切な手順は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);核酸配列に基づく増幅(NASBA);カスケードローリングサークル増幅(CRCA)、DNAのループ媒介等温増幅(LAMP);等温キメラプライマー核酸増幅(isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acids)(ICAN);標的に基づいたヘリカーゼ依存性増幅(HDA);転写媒介増幅(TMA)、CRISPR-Cas9トリガー鎖置換増幅、免疫PCRなど、を含み得る。増幅方法は、融解曲線分析などの分析をさらに含み得る。したがって、PCRという用語が使用される場合、他の代替増幅方法および増幅産物の分析を含むことを理解されたい。プロトコルはそれに応じて調整する必要があることが理解される。
【0015】
理解のために、本明細書におけるシステムおよび方法は、ヒトに対するCOVID-19検査のような、唾液サンプルまたは鼻腔拭いサンプル中のコロナウイルスに対する例示的なPCRに基づく分析に関連して議論される。様々なサンプル、ならびに異なる試薬および反応パラメーターを使用する種々の条件に対する種々のアッセイが使用され得ることが理解されるであろう。可能性のある生物学的物質を含有する環境サンプルおよび農業サンプルを使用することもできる。そのようなすべてのバリエーションは、本開示の範囲内である。
【0016】
例示的な一実施形態では、本発明によるシステムは、検査コンテナと、検査コンテナアセンブリを受容するための座部を有する検査ユニットと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、検査コンテナアセンブリは、1回使用の使い捨てユニットとして形成され得る。
【0017】
図1A、
図1B、
図1C、
図1Dおよび
図1Eを見ると、概して10で示される1つの例示的な検査コンテナアセンブリが描かれている。本明細書で使用される検査コンテナアセンブリという用語は、本開示に従って処理するためのサンプルおよび反応物質を収容するための1つ以上の容器またはエンクロージャを含むアセンブリを指し、コンテナアセンブリという用語と互換的に使用されることが理解されよう。描かれている実施形態では、検査コンテナアセンブリ10は、概して剛性の材料で形成された本体100を含み得、これは、サンプル収集ポート1000、サンプル調製チャンバ1100、および反応チャンバ1200を画定する。本体100は、特定の実施形態で実施されている特定の反応およびアッセイに適合する材料から構成され得ることが理解されよう。例えば、PCR反応物質および基質と非反応性である射出成形可能なポリマー材料が使用され得る。描かれている実施形態では、基部1001が、上面1003および反対側の下面1004を有する概ね平坦な部材として形成され得る。
【0018】
サンプル調製チャンバ1100は、基部1001内に配置され、基部1001から立ち上がり上部開口部1103に向かって収束する側壁1101によって画定され得る。下端部では、サンプル調製チャンバ1100は、下面1004を貫通する開放ポート1102を有することができる。
【0019】
サンプル調製チャンバ1100の上端部には、サンプル収集ポート1000が配置され得る。描かれているように、サンプル収集ポート1000は、底部開口部1013に向かってテーパー状になる周囲の側壁1011によって画定される漏斗形状のカップとして形成され得る。側壁1011は、蓋をこれに固定することを可能にするねじ山付き上方部分1017または他の構造を含むことができる。
【0020】
描かれているように、底部開口部1013および上部開口部1103は、整列され、周囲の側壁によって画定されたボア1015の上端部を画定することができる。
【0021】
使用するために、ボア1015は、サンプル収集ポート1000の底部およびサンプル調製チャンバ1100の上部を封止する栓部材を収容することができる。
図2に描かれているように、栓部材は、ボア1015の直径1016に対応するようにサイズ決めされたボールベアリング200であってもよい。いくつかの実施形態では、ボールベアリングは、ボアの直径よりもわずかに大きい直径を有していてもよく、側壁の材料が栓部材を圧縮してこれを正しい位置に保持する。いくつかの他の実施形態では、栓部材は、異なる形状を有し得るか、またはボア1015を横断する壊れやすい栓として形成され得ることが理解されよう。追加の実施形態では、壊れやすい封止部は、ボア1015内に提供される貫通可能な栓または封止部であってもよい。
【0022】
反応チャンバ1200は、サンプル調製チャンバ1100から離間した場所で基部1001を貫通するボアとして形成され得る。反応チャンバ1200の上端部は、検出窓1203として機能するように、実行されるアッセイを検出する際に使用される波長に対して十分に透明である材料によって封止され得る。検出窓1203は、チャンバが満たされたときに窓がドーム形状を形成するように撓むことを可能にする可撓性材料で形成され得る。
【0023】
基部1001の底面1004は、下面1004に形成された一連のチャネルを含むことができる。描かれているように、反応チャネル1302が、サンプル調製チャンバ1100から反応チャンバ1200に通じることができる。他のチャネルは、チャンバまたはチャネルから真空ポート1300に通じることができる。
【0024】
底面1004は、可撓性材料の底部封止シート1400(
図5B)によって覆われ得る。可撓性材料は、可撓性プラスチックフィルム、または他の可撓性材料、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、およびこれらの混合物であってよく、これは、押出し加工、プラズマ蒸着、および積層を含む、当技術分野で既知の任意のプロセスによって製造することができる。シートは、熱処理または適切な接着剤によって底面の縁部および/または他の部分に接着され得るが、サンプル調製チャンバ1100、反応チャンバ1200および様々なチャネルを覆うエリアでは可撓性を維持することができる。いくつかの実施形態では、検出窓1203および底部シート1400は、同様の材料から形成され得ることが理解されよう。底部封止シート1400は、特定の実施形態で実施されている特定の反応およびアッセイに適合する材料から構成され得ることが理解されよう。
【0025】
サンプル調製チャンバ1100および反応チャンバ1200は、真空下で維持され得る。いくつかの実施形態では、真空は、真空ポート1300を使用して適用され得る。いくつかの実施形態では、真空の適用により、底部封止シート1400を底面1004に引き寄せることができ、この接触により、底部封止シート1400と底面との間に、サンプル調製チャンバ1100と反応チャンバ1200とを互いから封止する壊れやすい封止部を形成することができる。他の実施形態では、底部封止シート1400と底面1004との間の壊れやすい封止部は、熱を加えることによって形成され得る。当業者に既知の、底部封止シート1400と底面との間に壊れやすい封止部を形成する任意の方法が使用され得ることが理解されよう。真空ポート1300は、その後、封止されてもよいし、真空引きを可能にする封止部材を収容することもできる。真空ポート1300は、基部101から突出した延長部上に配置されてもよいし、基部1001上に直接置かれてもよい。
【0026】
図1Bに最もよく描かれているように、サンプル調製チャンバ1100は、本明細書の他の箇所で論じるように、壊れやすい封止部の開放を容易にする応力集中部機構を含むことができる。描かれている実施形態では、サンプル調製チャンバ1100は、応力集中部1112によって分割された細長いセクション1110を含み、応力集中部1112は、細長いセクションを2つの「ポケット」に分割する点までテーパー状になる底面の一部として現れる。サンプル調製チャンバ1100が加圧されると、ポケットはサンプルで満たされ、それによって膨張し、テーパー状の点は、壊れやすい封止部が開かれるときに底部封止シート1400が底面1300から剥離するための開始点として機能する。
【0027】
サンプル収集ポート1000、サンプル調製チャンバ1100、および反応チャンバ1200はそれぞれ、そのようなチャンバに配置され、その中に封止される乾燥形態の反応物質を含む、任意の必要な反応成分を収容し得ることが理解されるであろう。乾燥形態の反応成分は、凍結乾燥のための様々な既知の方法(例えば、それぞれの内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる、Babonneau et al, (2015) Development of a Dry-Reagent-Based qPCR to Facilitate the Diagnosis of Mycobacterium ulcerans Infection in Endemic Countries.PLoS Negl Trop Dis 9(4): e0003606. https://doi.org/10.1371/journal.pntd.0003606、および、Panokaらの米国特許第8,900,525号)、または空気乾燥のための様々な既知の方法(例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる、Metzlerらの米国特許第8,652,811号、およびRombach, et al, (2014) Real-time stability testing of air-dried primers and fluorogenic hydrolysis probes stabilized by trehalose and xanthan, BioTechniques 57:151-155 . doi 10.2144/000114207)によって調製することができる。例えば、サンプル収集ポート1000は、その下方部分において側壁上に配置されたペレットまたはフィルムの形態で、サンプル調製手順を開始するための試薬を収容することができる。サンプル調製チャンバ1100も同様に、サンプル調製成分を収容することができる。
【0028】
1つの可能性のある試薬は、プロテアーゼ、例えばプロテイナーゼKであり、これは、DNAもしくはRNAを分解するか、または別様にPCRを阻害する可能性のあるヒトサンプル中のタンパク質を消化するのに使用され得る。あるいは、またはさらに、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)またはNAC(N-アセチルシステイン)が、唾液または鼻腔酵素中に存在するジスルフィド結合を切断し、それらを変性しやすくするために使用され得る。特定の成分および/または試薬は、実施されるアッセイによって異なり得ることが理解されよう。いくつかの実施形態では、鉱油、パラフィンワックス、または鉱油とパラフィンワックスとの組み合わせが、第1のチャンバ内に存在し得る。使用中、これらは、充填および/または加熱ステップの間、水層の上方に浮き上がり、それによって泡を減少させ、サンプルがヒーターに最も接近するのを確実にすることができる。パラフィンワックスは、上部出口を塞ぎ、サンプルを第2のチャンバ内に封止するように作用することもできる。
【0029】
反応チャンバ1200は、色素、着色剤などの分析成分とともに、アッセイ成分および反応物質を収容することができる。いくつかの実施形態では、反応チャンバ1200を封止する上部フィルムは、その上に凍結乾燥または空気乾燥された酵素(ポリメラーゼもしくは転写酵素を含む)、ヌクレオチドおよび/または緩衝液を有することができる。下部封止フィルムは、その上に空気乾燥または凍結乾燥されたプライマー、オリゴヌクレオチドおよび/または色素を有することができる。いくつかの実施形態では、乾燥は、材料を適切な場所に堆積させるために可撓性フィルム自体の上で実施され得るが、他の実施形態では、予備乾燥された材料が所定の場所に堆積され得ることが理解されよう。
【0030】
図6Bおよび
図6Cに描かれているように、外側シュラウド605Aが、アセンブリ10または10Aを補強および保護するために使用され得る。シュラウド605Aは、使用中の取り扱いを容易にし、補強を提供するために、基部1001に固定され、サンプル収集ポート1000本体、サンプル調製チャンバ1100、および基部1001の上面の一部を取り囲むことができる、適切な材料から形成された本体を含むことができる。ロック機構603が、本明細書でさらに議論されるように、蓋300を固定するために上面においてシュラウド605A上に配置され得る。
【0031】
図3Aおよび
図3Bに目を向けると、
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリと共に使用するための1つの例示的な蓋部材300が描かれている。描かれている実施形態では、蓋300はキャップとして形成され、キャップは、側壁3004の内側に配置されたねじ切り3006を使用して、
図5Aおよび
図5Bに描かれているように、サンプル収集ポート1000のねじ山付き上方部分1017に取り付けられ、キャップの上方部分3002がサンプル収集ポート1000の開放された上部を閉じる。いくつかの実施形態では、ロックタブ3007などの1つ以上のロック構造体が、サンプル収集ポート1000上またはシュラウド605A上の対応するロック構造体1007に接続することができる。この特定の閉じ方は単に例示的なものであり、当業者に既知の任意の適切な配置が使用され得ることが理解されよう。
【0032】
プランジャボア3010が、蓋部材300内に配置され得る。描かれている実施形態では、プランジャボア3010は、蓋の上方部分3002の下面から下方に底部開口部3014まで延びる細長い管3011として形成され得る。蓋の上方部分3002の上部開口部3012が、同様に、ボア3010と整列する。ボア3010は、3016で示される直径を有し、この直径は、キャップの上方部分3002から下方に概ね不変であってよく、キャップの上方部分3002を貫通する部分は、プランジャ400に停止部を提供するために狭くなっている。
【0033】
プランジャ400は、
図4Aおよび
図4Bに最もよく描かれている。描かれているように、プランジャ400は、平坦な上端部4002および概ね平坦な下端部4004を有する概ね柱状の形状を有する、シャフト部材400として形成され得る。シャフト4000の本体は、凹部または段部4006を形成するために、より小さい直径を有する下方部分を含むことができる。プランジャおよびキャップ部分の特定のサイズおよび形状は、本明細書でさらに議論される機能を提供するために、異なる実施形態では様々であり得ることが理解されよう。
【0034】
図5Aおよび
図5Bは、蓋部材300およびプランジャ部材400(
図5B)を備えた
図1A~
図1Eの検査コンテナアセンブリを描いている。描かれているように、プランジャ本体4000の、より大きな直径は、蓋300の蓋がサンプル収集ポート1000に固定されたときに、その側面がボア1015に接して封止し、より小さな遠位端部が反応チャンバ1200内に入るように、ボア1015の直径に対応することができる。プランジャ400は、ボア1015を封止し、サンプル調製チャンバ1100に容積制御を提供するために、注射器プランジャのように作用し得ることが理解されよう。
【0035】
図6Aは、本開示の原理に従った検査ユニット60の1つの例示的な実施形態における座部600内の正しい位置にある検査コンテナアセンブリ10を描いている。座部600は、検査ユニット600の構成要素がアッセイの実施を可能にするように整列された状態で、コンテナアセンブリの基部1001を受容するための表面として形成され得る。表面602は、基部が適切に整列され、正しい位置に維持されることを可能にする、タブまたは凹部などの整列特徴部を含むことができる。構成要素が使用中にコンテナアセンブリ10の一部を覆って配置される場合、座部600は、ユニット60のチャンバ内に配置され得、そのような構成要素はユニット60の開閉に伴って移動可能であり、ユーザーがコンテナアセンブリ10を座部600内に容易に配置することを可能にする。座部600は、反応チャンバ1200内の溶液中の気泡が検出窓1203の中心から離れるのを促進するために、水平面から少なくともわずかに離れて角度を付けられるかまたは傾斜した位置で基部1001を受容することができる。
【0036】
座部600は、使用のためにサンプル調製チャンバ1100と熱伝導接触している第1の温度制御素子610を含むことができる。描かれている実施形態では、第1の温度制御素子はペルチェ素子であり、伝導性部材612が、これと接触して配置されて、伝導性部材612は、コンテナアセンブリ10が座部600内に配置されたときにサンプル調製チャンバ1100の底部と整列する。描かれているペルチェ素子は単に例示的なものであり、冷却または加熱された流体の循環用のチューブ、抵抗加熱素子などを含む、当業者に既知の任意の温度制御アセンブリを使用できることが理解されよう。
【0037】
同様に、座部600は、使用のために反応チャンバ1200と熱伝導接触している第2の温度制御素子614を含むことができる。描かれている実施形態では、第2の温度制御素子はペルチェ素子であり、伝導性部材616が、これと接触して配置されて、伝導性部材616は、コンテナアセンブリ10が座部600内に配置されたときに反応チャンバ1200の底部と整列する。描かれているペルチェ素子は単に例示的なものであり、冷却または加熱された流体の循環用のチューブ、抵抗加熱素子などを含む、当業者に既知の任意の温度制御アセンブリを使用できることが理解されよう。
【0038】
ヒートシーラー618のような格納式封止ユニットは、コンテナアセンブリ10が座部600内に配置されたときに反応チャネル1302の下に存在するように座部600内に位置付けられ得る。格納式封止ユニットは、作動されて上方に移動し、必要に応じて加熱して、チャネル1302を通して封止シート1400を溶融させ、それによって、本明細書でさらに議論されるように、反応チャンバ1200を封止して隔離することができる。
【0039】
描かれている実施形態では、検出アセンブリ620が座部600の近くに位置付けられ得る。検出アセンブリ620は、エネルギー源およびセンサを含む、検出窓1203を通して検出を実行するために必要な構成要素を含み得る。蛍光発光の検出が使用される場合には、励起用のエネルギー源が存在し得る。描かれている実施形態では、このエネルギー源はレーザー630である。レーザーを使用することで、予め定義された単一の波長付近でのエネルギー入力が可能となり、これにより、いくつかの既知の検出システムで必要とされる導波管および/またはフィルタの必要性を排除することができる。1つの適切なレーザーアセンブリは、OSRAM Opto Semiconductors Inc.から市販されているPL-450Bタイプのレーザーとすることができ、これは、約450nmの波長の光を発する金属缶パッケージに入った青色レーザーダイオードである。任意の適切なレーザーが使用され得ることが理解されよう。あるいは、LEDが、ガラスまたはバンドパス/干渉フィルタの使用と組み合わせて、エネルギー源のための費用対効果の高いオプションとして使用されてもよい。センサは、マルチチャネル分光計などの光学検出器640とすることができる。1つの適切なセンサは、AMS社から市販されているAS7341-DLGTであり、これは、分光応答が約350nm~1000nmの波長で定義されている11チャネル分光計である。任意の適切なセンサを使用できることが理解されよう。マルチチャネル分光計を使用することで、複数の波長の、放出された蛍光を検出することができる。
【0040】
図6Bは、本開示に従った検査ユニットのための検出アセンブリ620Aの別の例示的な実施形態の断面を、検査ユニットの座部内に位置付けられたコンテナアセンブリの基部1001内の反応チャンバ1200に関連して描いている。検出アセンブリ620Aは、検出アセンブリ620と同様であり、レーザー630などのエネルギー源およびマルチチャネル分光計640などの光学検出器を含む、検出窓1203を通して検出を実行するために必要な構成要素を含み得る。さらに、第1の球面レンズ650Aがレーザー630の前に位置付けられ得、第2の球面レンズ650Bが検出器640の前に位置付けられて、反応チャンバ1200の検出窓1203を通る(点線矢印652Aおよび652Bによって描かれる)照明および蛍光信号の収集を集中させることができる。
【0041】
球面レンズ652Aおよび652Bは、ボールレンズであってもよく、これは、透明球として形成され得る。適切な材料は、小型化された適用または微小光学適用で使用するためにレーザーおよび蛍光信号を集中させることができる、小さな直径の球体の使用を可能にする適切な屈折率を有するシリカガラスまたは別の透明性の高い材料を含むことができる。
【0042】
検出アセンブリ620は移動可能であってよいことが理解されよう。これにより、検出アセンブリ600をユニット60の開閉に伴って後退させることができ、ユーザーがコンテナアセンブリ10を座部600内に容易に配置し、その後、使用のために必要なときにコンテナアセンブリ10の収集窓1203と相互作用するように正しい位置にレーザー630および検出器640を配置することを可能にする。光源と検出器の配置は単に例示的なものであり、励起のためのエネルギーを反応チャンバ内に集中させ、放出された信号を反応チャンバから検出することを可能にする任意の配置が使用され得ることが理解されるであろう。例えば、光源と検出器の位置を入れ替えてもよいし、それらを他の場所に配置してもよい。
【0043】
検査ユニット60は、検査手順を実行するためにその様々な構成要素を制御するCPUと、ブルートゥースまたは他の無線通信構成要素などの通信ゲートウェイと、をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、検査ユニットは、自己診断または較正プロトコルを実行することができ、あるいは、特定のアッセイ要件を指示し、検査ユニットによって収集されたデータを受信および分析して結果を決定する遠隔システムと通信してもよい。いくつかの実施形態では、システムは、通信をルーティングするために、ユーザーのスマートフォンなどの携帯用デバイスを利用してもよく、結果をユーザーに報告するためにそのデバイス上のアプリを使用してもよい。
【0044】
図6Bおよび
図6Cは、本開示の原理に従った検査ユニット60Aの別の例示的な実施形態における座部600A内の正しい位置にあるシュラウド605Aを含む、検査コンテナアセンブリ10Aを描く。座部600Aは、コンテナアセンブリの基部1001を受容するための表面として形成され得、整列壁601Aを含み得、アッセイを実施できるように検査ユニット60Aの構成要素が整列される。座部600Aは、
図6Aの座部600に関連して本明細書で議論される様々な特徴部および構成要素を含み得る。検査ユニット60Aはまた、データ収集を容易にするために反応チャンバ1200内のガス気泡を減少させるかまたは別の場所に移すためのシステムを含むことができる。
【0045】
泡減少システム611は、ドライバアセンブリから遠位突き当たり端部(distal striking end)6003まで延びるロッカーアーム6002を含み得る。描かれている実施形態では、ドライバアセンブリは、ロッカーアーム6002を作動させるためのバイブレータ6004と、戻しばね6005と、を含む。バイブレータ6004は、電気モータ(図示せず)によって、または当技術分野で別様に知られているように、作動させることができる。ロッカーアーム6002を作動させるための任意の適切なドライバアセンブリが使用され得ることが理解されるであろう。
【0046】
ロッカーアーム6002の突き当たり端部6003は、検査コンテナアセンブリが座部600内の正しい位置にあるとき、基部1001の一部の下に位置するように配置され得る。座部600Aは、ロッカーアーム6002が中を延びる凹部、および/または使用中に突き当たり端部6003が出てくることができる開口部を含むことができる。突き当たり端部6003は、遠位端部にさらに近い基部1001の一部の下に存在するように位置付けられ得る。突き当たり端部は、使用時に反応チャンバ1200と係合しないように位置付けられ得る。
【0047】
使用のために、コンテナアセンブリ10または10Aは、プランジャ400を収容する蓋アセンブリ300と共に、検査キットの一部として、ユーザーに提供され得る。これらの構成要素は、使用される構成要素の無菌性を維持する真空封止封筒のような、封止されたパッケージに入れて提供され得る。説明書またはサンプル収集用品などの他の材料が、このようなキットにおいて提供されてもよい。ヒト唾液中のコロナウイルスの存在に関するPCRに基づく検査の例示的な実施形態では、口内すすぎ溶液(swishing solution)の封止されたコンテナおよび説明書一式が提供され得る。
【0048】
その後、サンプルを収集することができる。ヒト唾液中のコロナウイルスの存在に関する検査の例示的な実施形態では、ユーザーは、提供された溶液を口の中でごろごろ回し、収集ポート1000に吐き出すことができる。あるいは、ユーザーは、収集用綿棒で前鼻孔(鼻)検体を収集し、収集ポート1000に既に分配されているか、または、別のコンテナに分配された溶液中で綿棒を旋回させることができ、別のコンテナは、その後、収集ポート1000に検体溶液を注ぐのに使用される。その後、収集ポート1000は、蓋アセンブリ300によって閉じられ得、蓋アセンブリが固定されると、プランジャの遠位端部4004が栓部材200に接触してこれを外すことができ、サンプルが真空によって凹部4006の周囲のサンプル調製チャンバ1100内に引き込まれる。検査コンテナアセンブリ10は、蓋が固定される前またはその後に、検査ユニット60の座部600内に配置することができる。長手方向の溝が存在する場合、栓部材200が外れる際に圧力変化の排出が可能である。
【0049】
座部60内に配置されると、第1の温度制御デバイス610は、サンプル調製チャンバ1100と伝導的に接触し、所望のサンプル調製反応を実行または終了するように作動され得る。例えば、サンプルは、唾液中に天然に存在し得るプロテアーゼ、ヌクレアーゼおよび他の酵素を失活させるために、十分な温度で十分な時間にわたり加熱され得る。特定のアッセイのための必要な前処理が望まれる場合、反応物質は、サンプルによって再構成される乾燥形態として、サンプル調製チャンバ1100内に存在してよく、温度制御デバイス610によって適切な条件が提供され得る。前処理が完了したら、温度制御デバイス610を用いてサンプルを、さらなる処理のための適切な温度にすることができる。
【0050】
前処理が完了すると、ユニット60は、可撓性シート1400と底面1004との間の壊れやすい封止部を、少なくとも反応チャネル1302のエリアにおいて、開放させ、前処理されたサンプルが反応チャネル1302に沿って反応チャンバ1200まで流れることを可能にすることができる。描かれている実施形態では、これは、蓋300の上部開口部3012を通してピストンをボア3010内に前進させ、そこで上部開口部がピストン400の上端部4002に接触し、遠位端部4004をサンプル調製チャンバ1100内に前進させ、ボア1015を封止し、流体サンプルを変位させて可撓性シート1400を加圧し撓ませて、反応チャネル1302を開くことによって行われ得る。
【0051】
十分な量の前処理されたサンプルが反応チャンバ1200に到達すると、格納式封止ユニット618は、伸長され、封止シート1400を底面に封止し、それによって反応チャンバ1200を隔離することができる。描かれている実施形態では、このような封止は、概ね1114(
図1B)で示されているエリアでチャネルを閉じるために行われ得る。その後、診断反応を行うことができる。特定の反応のための反応物質は、サンプルによって再構成された乾燥形態として、反応チャンバ1200内に存在することができ、第2の温度制御デバイス614によって適切な条件が提供され得る。
【0052】
ヒト唾液中のコロナウイルスの存在に関するPCRに基づく検査の例示的な一実施形態では、必要な反応物質が存在し得る。一実施形態では、必要な前処理ステップを減らすために、UNG酵素が交差汚染および偽陽性を減らすために存在し得る。PCRのための適切な温度サイクリングは、コロナウイルスゲノム特異的領域を増幅するために提供され得る。いくつかの実施形態では、サーモサイクリング(thermocycling)中に増幅産物に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブに連結された蛍光色素を使用することができる。
【0053】
存在する場合、泡減少システムは、反応チャンバ内の任意の気泡またはガス気泡を減少させるために作動され得る。描かれている実施形態では、バイブレータ6004が作動され、アームが戻しばね6005によって拘束されると、駆動部が作動されて、ロッカーアーム6002を振動させることができる。突き当たり端部6003は、設定された回数、または設定された時間、基部1001に繰り返し接触し、反応溶液中の気泡を破裂または移動させるエネルギーを提供する。基部が傾斜面上に着座している場合、残存する泡は、チャンバの側方に向かって移動し、検出窓1203の中心から遠ざかり得る。実施形態では、ロッカーアームが作動されるにつれて基部1001が撓み得る場合、センサアセンブリ620は、泡減少作動の間、コンテナアセンブリから離れて位置付けられ得る。
【0054】
反応が十分に完了すると、検出が行われ得、例示的な実施形態では、レーザー630が使用されて、第1の波長で反応チャンバにエネルギーを供給し、センサ640が使用されて、様々なチャネル上の様々な波長での放出を読み取る。適切な場合、センサアセンブリ620は、検出が実行されることを可能にする位置に移動され得る。
【0055】
例示的な実施形態では、検査ユニット60内のCPUは、検査手順を実行するためにその様々な構成要素を制御するために使用され得る。通信ゲートウェイにより、CPUは、特定のアッセイ要件を指示し、検査ユニットによって収集されたデータを受信し分析して結果を決定する遠隔システムと通信することができる。例示的な一実施形態では、ユニット60は、ソフトウェアアプリケーションすなわちアプリを操作するスマートフォンなどのユーザーの携帯用モバイルデバイスと関連して使用され得る。ユーザーは、そのようなデバイスを通じてユニット60を通信状態に置く。一実施例では、キット内の説明書が、スキャン可能なコードを含み得、または、スキャン可能なコードがコンテナアセンブリ10上に存在し得る。このコードは、特定の検査に特有であり、モバイルデバイス上のコントロールパネルを開く。遠隔システムは、手順が実施されるように制御指示をユニットに提供し、センサ640によって収集されたデータは、遠隔システムに送信され得る。その後、遠隔システムは、データ補正および標準化を行い、目的の増幅された配列産物の存在または非存在を決定するために複数のチャネルを使用することによって、データを分析することができる。その結果は、その後、アプリでユーザーに返送することができる。
【0056】
データ送信は、暗号化されるか、匿名化されるか、または適用されるプライバシー法に準拠した方法で行われてよいことが理解されよう。さらに、陽性の検査結果を、地方保健局またはCDCなどの関係当局に提供する必要がある場合は、遠隔システムがそれを行うことができる。
【0057】
本明細書に開示されたシステム、方法、および装置は、単一の条件に限定されないことがさらに理解されよう。種々のプライマー、酵素および/または種々の反応条件を必要とする種々の分析物を検出するために使用される反応が、使用され得る。遠隔システムまたは検査ユニット自体は、そのような検査を実施するために特定の条件を変えることができる。マルチチャネル分光計によって検出される複数の発光波長を使用することにより、複数の分析物が、単一の反応チャンバ内で同時に試験されることもできる。マルチチャネル分光計センサの携帯性と経済性、および遠隔データ分析により、システムはこのような様々な検査を処理することができ、ユニットは、訓練された人員を有する医療検査ラボを必要とする代わりに、住宅またはオフィス環境で動作することができる。コンテナアセンブリが複数の反応チャンバを含み、検査ユニットがそれらの反応チャンバのための関連する構成要素を収容する実施形態は、多重検査の実施を可能にするために企図されていることがさらに理解されるであろう。
【0058】
別の例示的な実施形態では、本開示に従うシステム、およびコンテナは、サンプル中の核酸を検出する方法と共に使用され得る。そのような方法では、サンプル調製ゾーンおよび増幅ゾーンを含む複数の流体接続されたチャンバを有し、1つ以上の封止可能なポートがこれらのチャンバを流体接続している、コンテナまたは容器が、提供され得る。封止可能なポートは、容器の外部からチャンバへの唯一のアクセスを提供し得ることが理解されるであろう。サンプルは、収集ポートを介して第1のチャンバに導入され得、収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有し、蓋アセンブリが収集ポートに固定されると、収集ポートを閉じ、蓋アセンブリは可動プランジャアセンブリを含み、栓部材は、プランジャと接触して栓部材を外し、サンプルが底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバに入ることを可能にすることができる。
【0059】
オプションとして、サンプルは、次に、サンプル中の酵素を失活させるために加熱することによって、または、サンプル調製チャンバ内に収容される反応物質により、サンプル調製チャンバ内で処理され得る。封止部を開いて、サンプルがサンプル調製チャンバから反応チャンバに流れるのを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、これは、サンプルを加圧し、封止部を破砕するために、プランジャをサンプル調製チャンバ内に前進させることによって実行され得る。その後、反応チャンバは封止され得る。
【0060】
反応チャンバ内で、サンプル中の核酸は、1つ以上の標的を増幅するように構成されたプライマーを含むPCR成分と混合され得、標的核酸は増幅され得る。
【0061】
増幅ゾーン内の蛍光色素からの蛍光発光信号が検出され得、蛍光はレーザーダイオードによって励起され、発光はマルチチャネル分光計によって検出される。約350nm~1000nmの波長において少なくとも4つのスペクトルチャネルを並行して処理することができるマルチチャネル分光計を使用することができる。蛍光データは、携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムを介して、クラウドまたはローカルCPUに通信することができる。その後、データは分析され得、分析結果は、携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムによって、クラウドまたはローカルCPUから受信され得る。
【0062】
このような方法では、増幅ゾーンは、サンプル中に存在し得る1つ以上の核酸標的を増幅するように構成されたプライマーを収容し得ることが理解されよう。このような核酸標的は、ウイルス、細菌、および真菌などの病原体に由来し得る。いくつかの例示的な病原性ウイルスには、コロナウイルス、アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA、インフルエンザB、ライノウイルス、および非HRVエンテロウイルスが含まれ得る。いくつかのこのようなコロナウイルス標的には、229E、NL63、OC43、およびHKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2が含まれ得る。本方法は、複数のSARS-CoV-2変異体を検出するように最適化され得る。他の実施形態では、核酸標的は、ヒト核酸配列であってもよい。さらなる実施形態では、標的は、病原体およびヒト分析物の両方からなることができる。増幅ゾーンは、乾燥した増幅試薬および検出試薬を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、増幅ゾーンは、融解曲線分析を行う手段を備えていてもよい。
【0063】
本開示に従った増幅方法による検出結果の第1の非限定的な実施例を
図7に示す。ヒト多型領域(SNP RS1981928、chr2:47445309 + 47445358)の50bp断片を、乾燥した予め計量されたPCR試薬を収容する検査コンテナアセンブリ中で増幅した。この実施例では、2mLの水に溶解した胎盤由来のヒトDNA(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)5ng/μLを、サンプル収集ポート1000に導入した。プランジャ400が係合されると、DNA溶液はサンプル調製チャンバ1100に導入され、続いて反応チャンバ1200に導入され、この反応チャンバ1200は65μLの体積まで満たされた。DNA溶液に溶解されたらそれぞれ0.5μMの最終濃度になる量の、プライマー5’CGAGGTAGTGTATTATTAGTGGGAAG SEQ ID NO. 1、および5’AGGGAGATGATGTAGCACTCA SEQ ID NO. 2(IDT、アイオワ州コーラルビル)と、20μMの最終濃度になるMaverick Blue核酸染色(Idaho Molecular, Inc、ユタ州ソルトレークシティー)とを、反応チャンバの底部内側表面に乾燥形態で付着させた(底部封止シート1400)。Go-Taq DNAポリメラーゼ(0.13U/μL、Promega、ウィスコンシン州マディソン)、0.2mM dNTP、4mM MgCl
2、50mM Tris HCl pH8.5、および0.12mg/mL BSA(すべて最終濃度)を、反応チャンバの上部内側表面に乾燥形態で付着させた(検出窓1203)。増幅は、90℃で0秒間、63℃で4秒間を45サイクル行い、3つの波長チャネル(480nm、515nm、555nm)を用いてリアルタイムで検出窓1203を通してモニターした。これらの3つの波長チャネルは、増幅産物を検出するために使用されたMaverick Blueの蛍光発光の範囲をカバーしていた。この検査ユニットでは、450nmのレーザーダイオードの前とマルチチャネル分光計の前で球面レンズを使用した。
【0064】
増幅後、サンプルを50℃から90℃まで0.35℃/秒のランプ速度で加熱し、その間に蛍光を3つのチャネルを使ってリアルタイムでモニターし(
図8Aに描かれた結果が得られた)、その後、データを
図8Bに示された負の微分融解曲線に変換した。77℃の融解温度により、正しいDNA断片が増幅されたことが確認された。すべてのデータ処理は、ブルートゥースを介して検査ユニットと通信する外部CPUで行われた。
【0065】
別の非限定的な実施例を
図9に示すが、これは、480nm、515nm、555nm、590nm、630nm、および680nmの6つの波長での検出を使用して、検査コンテナアセンブリ内で実行されている融解曲線分析を示している。検査ユニットは、
図7、
図8Aおよび
図8Bについて上述したのと同じ試薬および光学構成ならびに外部CPUを有する。高融点(75℃)および低融点(63℃)の増幅産物を模倣した2つの合成二本鎖DNA断片が、反応チャンバ1200内で融解される。高融点DNAは、配列5’CGGAATCTTGCACGCCCTCGCTCAGGCCTTCGTCACTGGTCCCGCCACC SEQ ID NO.3およびその逆の相補体(reverse compliment)を有するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって作成された二本鎖断片である。低融点DNAは、オリゴヌクレオチド5’
AGTGGAACCTCATCAGGA
A SEQ ID NO.4および5’
CTCCTGATGAGGTTCCAC
CTGGTTT SEQ ID NO.5(ここで、下線を引いた塩基は他方の鎖に相補的塩基を持たない)のハイブリダイゼーションによって作成された二本鎖断片である。両方のDNA断片は二本鎖DNA結合色素Maverick Blueで染色され、最初の3つのカラーチャネル(480nm、515nm、555nm)で検出される。低融点DNA断片は、カルボキシローダミン(carboxyrodamine)(ROX)色素(AGTGGAACCTCATCAGGAA SEQ ID NO.4の5’末端に結合していてもよい)でさらに標識され、Maverick Blueからの蛍光エネルギー移動により可能にされた3つの追加のチャネル(590nm、630nm、680nm)で検出される。
【0066】
本開示は、特定の実施形態を用いて説明されてきたが、その趣旨および範囲内に収めつつ、さらに修正することができる。したがって、本出願は、その一般的な原理を用いた本開示のあらゆる変形体、使用、または適応をカバーすることを意図している。本出願は、本開示が関連する技術分野における既知または慣用の範囲内であり、かつ添付の特許請求の範囲の制限内に入るような、本開示からのあらゆる逸脱をカバーすることが意図されている。
【0067】
〔実施の態様〕
(1) 生物学的アッセイを実施するためのシステムであって、
検査コンテナアセンブリであって、
栓部材によって封止された底部開口部を有するサンプル収集ポートと、
前記底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバと、
反応チャンバと、
を含む、検査コンテナアセンブリと、
前記サンプル収集ポートを閉じるように構成された蓋アセンブリであって、前記蓋アセンブリは、前記蓋アセンブリが前記サンプル収集ポートに固定されたときに前記栓部材に接触する可動プランジャを含む、蓋アセンブリと、
前記検査コンテナアセンブリを受容するための座部を含む検査ユニットであって、
前記検査コンテナアセンブリが前記座部内に配置されたときに前記サンプル調製チャンバと伝導的に接触する第1の温度制御デバイスと、
前記検査コンテナアセンブリが前記座部内に配置されたときに前記反応チャンバと伝導的に接触する第2の温度制御デバイスと、
前記検査コンテナアセンブリが前記座部内に配置されたときに前記反応チャンバ内の状態をモニターするように配置された検出器アセンブリと、
を含む、検査ユニットと、
を含む、システム。
(2) 前記サンプル収集ポートは、前記サンプル調製チャンバの上方に配置されたカップ状部材として形成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記検査コンテナアセンブリは、
上面および反対側の底面を有する基部部材本体と、
前記底面の一部に接着された可撓性底部封止シートであって、前記サンプル調製チャンバの下端部の少なくとも一部と前記反応チャンバの少なくとも一部は、前記底面と前記底部封止シートとの間の空間によって画定されている、可撓性底部封止シートと、
をさらに含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記反応チャンバは、前記基部部材本体の前記上面に形成された検出窓を含む、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記検出窓は、可撓性材料から形成されている、実施態様4に記載のシステム。
【0068】
(6) 前記サンプル調製チャンバは、前記蓋アセンブリが固定される際に前記栓部材が前記可動プランジャによって前記底部開口部から押されるまで、真空下で維持される、実施態様3に記載のシステム。
(7) 前記サンプル調製チャンバと前記反応チャンバとの間に延びる反応チャネルをさらに含み、前記反応チャネルは、前記底面と前記底部封止シートとの間の空間によって画定されている、実施態様3に記載のシステム。
(8) 前記底部シートと前記基部部材の前記底面との間の壊れやすい封止部が、使用時まで前記反応チャネルを封止する、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記底面は、使用中に前記壊れやすい封止部を開く点を画定する応力集中部を含む、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記検査ユニットは、前記可動プランジャに接触してこれを前進させ、前記サンプル調製チャンバ内の流体を変位させ、前記壊れやすい封止部を開く、プランジャ機構をさらに含む、実施態様8に記載のシステム。
【0069】
(11) 前記検査ユニットは、前記反応チャンバを閉じるために前記底部シートの一部を前記底面に封止するためのヒートシーラーをさらに含む、実施態様8に記載のシステム。
(12) 前記検出器アセンブリは、マルチチャネル分光計と、レーザーダイオードおよび発光ダイオードからなる群から選択される光源と、を含む、実施態様1に記載のシステム。
(13) 前記検出器アセンブリは、前記光源からの光の照明を前記反応チャンバ上に集中させるように配置された少なくとも第1のボールレンズをさらに含む、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記検出器アセンブリは、前記反応チャンバからの放出光を前記マルチチャネル分光計に集中させるように配置された第2のボールレンズをさらに含む、実施態様13に記載のシステム。
(15) サンプルを分析する方法であって、
サンプルをコンテナアセンブリのサンプル収集ポートに入れることであって、前記サンプル収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有する、ことと、
蓋アセンブリを前記サンプル収集ポートに固定し、前記サンプル収集ポートを閉じることであって、前記蓋アセンブリは、可動プランジャアセンブリを含む、ことと、
前記栓部材を前記プランジャアセンブリと接触させて前記栓部材を外し、前記底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバに前記サンプルが入ることを可能にすることと、
封止部を開いて、前記サンプルが前記サンプル調製チャンバから反応チャンバに流れることを可能にすることと、
前記サンプル中に存在し得る目的の生物学的マーカーを増幅する反応を実行することと、
前記反応チャンバ内の増幅された目的の生物学的マーカーの存在を検出することと、
を含む、方法。
【0070】
(16) 封止部を開いて、前記サンプルが前記サンプル調製チャンバから前記反応チャンバに流れることを可能にすることは、前記可動プランジャを前進させて前記サンプル調製チャンバ内の流体を変位させ、壊れやすい封止部を開くことを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記サンプル調製チャンバ内で前記サンプルを加熱して前記サンプル中の酵素を失活させることをさらに含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記サンプル中に存在し得る目的の生物学的マーカーを増幅する前記反応を実行する前に、前記反応チャンバを封止することをさらに含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記目的の生物学的マーカーは、少なくとも1つの核酸標的であり、前記反応チャンバは、前記サンプル中に存在し得る1つ以上の核酸標的を増幅するように構成されたプライマーを収容する、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記反応チャンバは、乾燥した増幅試薬および検出試薬をその中に収容する、実施態様15に記載の方法。
【0071】
(21) 前記乾燥した増幅試薬および検出試薬は、空気乾燥により調製される、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記反応チャンバ内の増幅された目的の生物学的マーカーの存在を検出することは、蛍光色素からの蛍光発光信号を検出することを含む、実施態様15に記載の方法。
(23) 前記反応チャンバ中の増幅された目的の生物学的マーカーの存在を検出することは、融解曲線分析を実施することを含む、実施態様15に記載の方法。
(24) サンプル中の核酸を検出する方法であって、
複数の流体接続されたチャンバを有する容器を提供することであって、前記複数の流体接続されたチャンバは、
サンプル調製ゾーンと、
増幅ゾーンと、
前記チャンバを流体接続する1つ以上の封止可能なポートであって、前記封止可能なポートは、前記容器の外部から前記チャンバへの唯一のアクセスを提供する、1つ以上の封止可能なポートと、
を含む、ことと、
収集ポートを介して前記サンプルを第1のチャンバに導入することであって、前記収集ポートは、栓部材によって封止された底部開口部を有する、ことと、
蓋アセンブリを前記収集ポートに固定し、前記収集ポートを閉じることであって、前記蓋アセンブリは、可動プランジャアセンブリを含む、ことと、
前記栓部材を前記プランジャと接触させて前記栓部材を外し、前記底部開口部と流体接続しているサンプル調製チャンバに前記サンプルが入ることを可能にすることと、
封止部を開いて、前記サンプルが前記サンプル調製チャンバから反応チャンバに流れることを可能にすることと、
前記反応チャンバを封止することと、
前記サンプル中の前記核酸を、1つ以上の標的を増幅するように構成されたプライマーを含むPCR成分と混合することと、
前記標的核酸を増幅することと、
前記増幅ゾーン内の蛍光色素からの蛍光発光信号を検出することであって、
蛍光はレーザーダイオードによって励起され、
発光は、約350nm~1000nmの波長において少なくとも4つのスペクトルチャネルを並行して処理することができるマルチチャネル分光計によって検出される、ことと、
蛍光データを、携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムを介して、クラウドまたはローカルCPUに通信することと、
携帯電話または他のユーザー制御デバイスもしくはオペレーティングシステムによって、前記クラウドまたはローカルCPUから分析結果を受信することと、
を含む、方法。
(25) 前記増幅ゾーンは、前記サンプル中に存在し得る1つ以上の核酸標的を増幅するように構成されたプライマーを収容する、実施態様24に記載の方法。
【0072】
(26) 少なくとも1つの核酸標的が、ウイルス、細菌、および真菌からなる群から選択される病原体に由来する、実施態様25に記載の方法。
(27) 前記ウイルスは、コロナウイルス、アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA、インフルエンザB、ライノウイルス、および非HRVエンテロウイルスからなる群から選択される、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、およびHKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2からなる群から選択される、実施態様27に記載の方法。
(29) 複数のSARS-CoV-2変異体が検出される、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記核酸標的は、ヒトの核酸配列である、実施態様25に記載の方法。
【0073】
(31) 前記増幅ゾーンは、乾燥した増幅試薬および検出試薬をその中に備える、実施態様25に記載の方法。
(32) 前記乾燥した増幅試薬および検出試薬は、空気乾燥により調製される、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記増幅ゾーンは、融解曲線分析を行う手段をさらに備える、実施態様25に記載の方法。
(34) 前記レーザーダイオードは、ボールレンズと共に使用される、実施態様25に記載の方法。
(35) 前記分光計は、ボールレンズと共に使用される、実施態様25に記載の方法。
【配列表】
【国際調査報告】