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特表2024-518422アレルギーおよび炎症状態を治療するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】アレルギーおよび炎症状態を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240423BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240423BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/10 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 14/33 20060101ALN20240423BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20240423BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K38/08
A61K31/64
A61K31/10
A61K31/355
A61K38/48
A61P37/08
C07K14/33
C07K14/54
C07K14/47
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568451
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022028151
(87)【国際公開番号】W WO2022236107
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,912
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】501102988
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ -オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh PA 15260,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ファロ ジュニア.,ルイーズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コルクマズ,エムルラー
(72)【発明者】
【氏名】サンプター,ティナ エル.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA17
4C084DC09
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB131
4C084ZB132
4C086AA01
4C086BA09
4C086DA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZB13
4C206AA01
4C206JA32
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZB13
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書では、対象に薬学的有効量の肥満細胞脱感作組成物を投与することを含む、対象の炎症を軽減する組成物および方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の炎症を治療する方法であって、前記対象に、薬学的有効量の肥満細胞脱感作組成物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
対象におけるI型過敏症反応を治療する方法であって、前記対象に、薬学的有効量の肥満細胞脱感作組成物を投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記I型過敏症反応が、喘息、鼻炎、結膜炎および皮膚炎からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記皮膚炎が乾癬、湿疹または脂漏性皮膚炎である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記湿疹がアトピー性皮膚炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記I型過敏症反応が、アナフィラキシー、蕁麻疹および血管浮腫からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記対象に1つまたは複数のI型過敏症反応抗原を投与することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数のI型過敏症反応抗原が、前記肥満細胞脱感作組成物と同じ皮膚微小環境に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記I型過敏症反応が食物アレルギーまたは薬物アレルギーである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記I型過敏症反応がピーナッツアレルギーであり、前記I型過敏症反応抗原がピーナッツ抗原である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記肥満細胞が結合組織肥満細胞である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記肥満細胞が粘膜肥満細胞である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記肥満細胞脱感作組成物がABCA1阻害剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ABCA1阻害剤が、グリブリド、プロブコール、トコフェルソランおよびビタミンEの群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ABCA1阻害剤がグリブリドである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記肥満細胞脱感作組成物がニューロキニンAを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ニューロキニンAが、HKTDSFVGLM(配列番号2)の配列またはその機能的断片を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記肥満細胞脱感作組成物がボツリヌス毒素Aである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象にIL-10を投与することをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が皮内または経皮である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
投与が1つまたは複数のマイクロニードルを介して行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数のマイクロニードルが溶解可能である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮出願第63/185,912号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所により支援される、助成金番号AR068249;AR071277およびAR067250に基づく政府支援を受けてなされたものである。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、アレルギーおよび炎症性疾患を処置するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
肥満細胞(MC)は、皮膚を含む脈管組織において免疫応答を開始および増幅する。皮膚常在MCは、定常状態ではFcεRI結合IgEでプライミングされており、多価性の抗原(Ag)に応答する用意ができている。Agに暴露されると、FcεRIによって開始されたシグナル伝達が、エキソサイトーシス依存的および非依存的な機構を介して、あらかじめ形成された、顆粒化プロテアーゼおよびサイトカイン、ならびに脂質メディエータの即時放出を誘導する。下流のSTAT5およびNFκBの活性化は、TNFおよびIL-13を含む炎症性サイトカインおよびTh2促進サイトカインの合成を促進する。累積的に、この応答は抗蠕虫および抗細菌免疫応答を開始し、アレルギー性炎症を持続させる。
【0005】
皮膚MCはCGRPまたはPGP-5感覚神経線維に近接して存在する。MC-神経シナプス内では双方向の情報伝達があり、局所的なIgE誘発免疫応答の結果を歪めている。この点に関して、感覚神経線維はサブスタンスP(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、およびニューロキニンA(NKA)を含む神経ペプチドを放出する。SPおよびCGRPはMCおよび皮膚で広く研究されているが、NKAの免疫機能についてはほとんど知られていない。
【0006】
ニューロキニンAはTac1遺伝子から転写され、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)であるNK2Rと相互作用する。NKAおよびNK2Rは炎症促進作用および抗炎症作用を有することが報告されている。粘膜組織では、NK2Rシグナル伝達は炎症と関連している。しかし、皮膚では、NK2R拮抗作用はアレルギー性接触過敏症(CHS)を増強し、NKA投与はCHSを遮断する。MCに特異的に、NKAは肺の粘膜MCからのヒスタミン放出を誘導するが、皮膚、心臓、または腹膜MCの結合組織MCからはヒスタミン放出を誘導しないことから、MC活性化におけるNKA/NK2Rの組織特異的役割が示唆される。
【0007】
必要なのは、肥満細胞および/または肥満細胞成分を標的とする、または調節する炎症反応および/またはI型過敏症反応の効果的な治療法である。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、NKAがマウス受動的皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルおよび骨髄(BM)MCおよび腹膜(P)MCを用いてin vitroで、皮膚におけるIgE誘導性MC機能に影響を及ぼすという仮説を検証している。そのデータから、PCA誘導前にNKAを投与することによって、IL-10依存的にin vivoでの脱顆粒関連性浮腫および炎症性サイトカインレベルが低減することが示された。同様に、NKAはin vitroにおいてIL-10依存的にMCの活性化を阻害した。本明細書では、BMMCおよびPMCの両方が、グリブリド感受性ABCA1を介してIL-10分解プロテアーゼであるカルパインを放出し、この経路がNKAによって阻害されることが示された。その結果、NKAはIL-10の分解を阻害し、それによって微小環境におけるIL-10の利用可能性を延長させた。重要なことに、本明細書において、NKAをバイパスしてABCA1を直接標的とすることが、in vitroおよびin vivoでMC活性化を阻害するのに十分であることが実証された。
【0009】
したがって、本明細書において提供されるのは、対象における炎症を治療する方法、および対象に薬学的有効量の肥満細胞脱感作組成物を投与することを含む、対象におけるI型過敏症反応を治療する方法である。
【0010】
いくつかの実施形態において、I型過敏症反応は、喘息、鼻炎、結膜炎、および皮膚炎からなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、皮膚炎は乾癬、湿疹または脂漏性皮膚炎である。
【0012】
いくつかの実施形態において、湿疹はアトピー性皮膚炎である。
【0013】
いくつかの実施形態において、I型過敏症反応は、アナフィラキシー、蕁麻疹、および血管浮腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本方法は、対象に1つまたは複数のI型過敏症反応抗原を投与することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原は、肥満細胞脱感作組成物と同じ皮膚微小環境に投与される。
【0015】
いくつかの実施形態において、I型過敏症反応は、食物アレルギーまたは薬物アレルギーである。
【0016】
いくつかの実施形態において、I型過敏症反応は食物アレルギーであり、本方法は、対象に食物の抗原を投与することをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、食物はピーナッツである。
【0018】
いくつかの実施形態において、肥満細胞は結合組織肥満細胞である。
【0019】
いくつかの実施形態において、肥満細胞は粘膜肥満細胞である。
【0020】
いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ABCA1阻害剤を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、ABCA1阻害剤は、グリブリド、プロブコール、トコフェルソラン、およびビタミンEの群から選択される。いくつかの実施形態において、ABCA1阻害剤は、グリブリドである。
【0022】
いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ニューロキニンAを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、ニューロキニンAは、HKTDSFVGLM(配列番号2)の配列またはその機能的断片を有する。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ボツリヌス毒素Aである。
【0024】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象にIL-10を投与することをさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、投与は、皮内または経皮である。
【0026】
いくつかの実施形態において、投与は、1つまたは複数のマイクロニードルを介して行われる。
【0027】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のマイクロニードルは溶解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1-1】図1(A-G)は、NKAがPCAの初期段階および後期段階を阻害することを示す。WT(C57BL/6)マウスの耳に、d0にビヒクルまたはIgEを注射した。d1にマウスに架橋Agを注射(i.v.)した。(A)Ag投与24時間後にマウスを安楽死させ、Ag投与24時間後の組織でNKAを検出した。データはそれぞれ2~4匹のマウスによる2回の独立した実験からの平均±1 SEMを示す。(B)皮膚切片におけるNK2Rの発現を免疫蛍光顕微鏡で評価した。(C-G)マウスを、架橋Ag投与の3時間前にビヒクル(PBS)またはNKA(10mg、i.d.)で前処理した。(C)d0と比較したAg投与後の指示された時間における耳厚の変化。データはそれぞれ4~6匹のマウスを用いた2~3回の独立した実験による12~15匹のマウスの平均±SEMである。(D、F)PCA誘導後2時間および24時間の皮膚切片からの顕微鏡像。画像は各群3匹のマウスの代表的なものである。H&E、200倍(E)架橋Ag投与の90分後に組織から抽出したエバンスブルー色素、各群3匹のマウスによる3回の独立した実験。(G)皮膚ホモジネートにおけるサイトカインの半定量的発現。ヒートマップは、3回の独立した実験からの、ビヒクル対照に対して正規化したタンパク質の相対発現を示す。表は、IgEで処理した皮膚とNKAで前処理した皮膚(IgE+NKA)とを比較した統計的有意性を示す。p値は、2元配置分散分析(2-way ANOVA)およびボンフェローニ事後分析、または対応ありt検定によって決定した。
図1-2】(図1-1の続き)
図1-3】(図1-2の続き)
図1-4】(図1-3の続き)
図2-1】図2(A-F)は、NKAがSTAT5転写サイトカインの放出を阻害することを示す。BMMCにIgE(1.0mg/mL)を負荷した後、架橋Ag(DNP-HSA 100ng/mL)を用いて、NKA(指示通りまたは1000nM)の併用または非併用で活性化した。(A)活性化の22~24時間後に回収した細胞非含有上清中のIL-13およびTNFレベル。(B)60分間活性化した細胞からのIL13またはTNF RNA。データは3回の独立した実験からの平均発現を示す。(C-D)pTyr694-STAT5は、Ag(上のパネル)を用いた、NKA(下のパネル)併用または非併用で示された時間活性化した後、フローサイトメトリーで検出した。(C)は代表的なフロープロットを示し、数字は平均蛍光強度(MFI)を示し、網掛けヒストグラムは未刺激細胞からのpTry694-STAT5を示す。(D)は3回の独立した実験からのpTyr694-STAT5のMFIを要約する。(E-F)ImageStreamで評価したSTAT5Bの核局在。(E)NKAの存在下または非存在下で60分間活性化した後の5細胞からの代表的解析。(F)3回の独立した実験からの類似性スコア(Similarity Score)の平均値±1 SEM。p値は、2way ANOVAおよびボンフェローニ事後分析、または対応ありt-検定によって決定した。
図2-2】(図2-1の続き)
図2-3】(図2-2の続き)
図2-4】(図2-3の続き)
図2-5】(図2-4の続き)
図3-1】図3(A-I)は、IL-10がNKAがin vitroおよびin vivoでFceRI誘導性MC活性化を抑制するのに必要であることを示している。(A-D)MCを図2と同様に活性化した。(A)20~24時間後に回収した上清からのELISAによるIL-10。(B)60分間活性化した細胞からのIL10 RNA。(C-D)活性化から20~24時間後に回収した(C)BMMCまたは(D)PMCからの上清で検出されたサイトカイン。(E)ビヒクル対照またはNKAを、MC欠損マウス(Mcpt5 Crex Rosa26 DTA)またはMC充足マウス(Mcpt5 Cre x Rosa26 DTA)のいずれかに注射し、3時間後にIL10発現を評価した。データは各群2~3匹のマウスを用いた2回の実験を示す。(F-H) Mcpt5 Cre x IL10WTおよびMcpt5Cre x IL10fl/flマウスにおいてPCAを誘導した。(F)は2時間後と24時間後の耳の測定値を示し、(H)は24時間後にELISAによって皮膚で検出されたサイトカインを示す。(I) WT B6皮膚、IL-10 KOマウス、またはIgE注射時にIL-10(1.0 ng/耳)で処理したB6マウスの皮膚ホモジネート中のニューロキニンAをPCA後24時間のELISAで検出した。データは各群2~3匹のマウスを用いた2回の独立した実験による平均±SEMである。2回の独立した実験での、NKA ELISAについては、1実験当たり2~3匹のマウス、B6およびIL10 KOについては、B6+IL10については1つの実験から3匹のマウスの平均±SEM。p値は、2-way ANOVAおよびボンフェローニ事後分析、または対応ありt検定によって決定した。
図3-2】(図3-1の続き)
図3-3】(図3-2の続き)
図3-4】(図3-3の続き)
図3-5】(図3-4の続き)
図3-6】(図3-5の続き)
図3-7】(図3-6の続き)
図4-1】図4(A-H)は、NKAがMCセクレトームを変化させることを示している。(A-D)IgEを負荷したMCを、架橋Ag(IgE+Ag)で活性化するか、またはビヒクル(対照)と共に30分間培養した。(A)BMMCおよび(B)PMCについて、LAMP-1およびアビジン染色を示す代表的なフロープロットが図示されている。(C、F)3回の独立した実験からの平均陽性率±1 SEMを要約した。(E-H)BMMCを60分間活性化した。上清をMS/MSで分析した。ベン図は、検出された特有のペプチドおよび重複ペプチドの数を示す。(F)Pathway解析はPantherで行った。(G)3回の独立したランからのカバレッジエリアの半定量的表現。(H)3回の独立した実験からの定量。p値は、2-way ANOVAおよびボンフェローニ事後分析によって決定した。
図4-2】(図4-1の続き)
図4-3】(図4-2の続き)
図4-4】(図4-3の続き)
図4-5】(図4-4の続き)
図4-6】(図4-5の続き)
図4-7】(図4-6の続き)
図5-1】図5(A-H)は、NKAがIL-10分解酵素であるカルパインの放出を阻害することを示している。(A-B)IgE+Agを用いて、NKAの併用または非併用で60分間活性化した(A)BMMCまたは(B)PMCにおいてカルパイン活性を評価した。(C-D)組換え(r)カルパインは、rIL-10と共に60分間インキュベートした。IL-10はウェスタンブロットで検出した。(C)は代表的なブロットを示し、(D)は3回の独立した実験から、IL-10+カルパインのデンシトメトリーをIL-10単独に対して正規化することにより算出したIL-10分解の比率を要約したものである。(E)IgEで活性化したBMMCの細胞非含有上清を指示した時間に回収し、IL-10およびカルパイン活性をアッセイした。(F)活性化10分後に上清を回収した後、ELISAでIL-10をアッセイする前にAc-cal(20mg/mL)で30分間パルスした。2~3回の実験から回収したIL-10の量を示す。(G)3回の独立した実験からBMMCを活性化してから60分後に回収されたIL-10。(H)活性化30分後に上清を回収した後、rIL-10で30分間パルスした。ELISAで回収したIL-10の量を、IL-10でパルスした培地から回収したIL-10の量に対して正規化した。データは3回の独立した実験の、指示した点における平均±SEMを示す。p値は、2-way ANOVAおよびボンフェローに事後分析により決定した。
図5-2】(図5-1の続き)
図5-3】(図5-2の続き)
図5-4】(図5-3の続き)
図6-1】図6(A-H)は、ABCA1排出チャネルの阻害が、in vitroおよびin vivoでのNKAの効果と重複することを示している。(A-B)ビヒクル対照(PBS)またはNKA(1000nM)の存在下でのIgE誘導性活性化から30分後のBMMCまたはPMC表面上のABCA1の発現。(A)は代表的なフロープロットを示し、数値はABCA1細胞の割合を示し、(B)は3回の独立した実験からのIgE誘導性活性化後のABCA1細胞の割合の平均±SEMを要約する。(C)BMMCは、活性化前にビヒクル対照(「0」、0.0125%DMSO)またはグリブリドで10分間処理した。活性化30分後に上清を回収し、カルパイン活性およびIL-10についてアッセイした。(D)BMMCまたはPMCをビヒクルまたはグリブリド(50mM)で前処理した後、IgEで30分間活性化し、抗LAMP-1またはアビジンで染色した。グラフは陽性細胞の割合の平均±SEMを示す。(E)BMMCまたはPMCをIgE活性化し、ビヒクル対照(0.0125%DMSO)またはグリブリド(BMMCについては示す通り、PMCについては50mM)およびNKA(1000nM)の存在下で20~24時間培養した。上清はELISAでアッセイした。(F-H)誘導の3時間前にグリブリド(2.5 mg/kg)で前処理したマウスにおいてPCAを誘導した。グリブリドの効果は、(F)耳厚、(G)エバンスブルー色素の血管外漏出、または(H)PCA誘導後24時間の皮膚で検出されたサイトカインの関数として測定した。In vitroのデータは、3回の独立した平均±SEMを要約したものである。In vivoのデータは、それぞれ1群につき2-3匹のマウスを用いた2回の独立した実験を示す。p値は、2-way ANOVAおよびボンフェローニ事後分析または対応ありt検定により決定した。
図6-2】(図6-1の続き)
図6-3】(図6-2の続き)
図6-4】(図6-3の続き)
図6-5】(図6-4の続き)
図6-6】(図6-5の続き)
図6-7】(図6-6の続き)
図6-8】(図6-7の続き)
図7-1】図7(A-D)は、MCがin vivoでニューロキニンAに応答する態勢を整えていることを示している。(A)フローサイトメトリーにより検出されたナイーブ皮膚MC上のNK2Rの発現。ヒストグラム上の値は、6匹のマウス(2匹ずつ3回の独立した実験)の平均陽性率+1SDである。(B)皮膚ホモジネート中のミエロペルオキシダーゼ活性をPCA誘導24時間後に検出した。データは各群2~3匹のマウスを用いた3回の実験から得られた。(C)サイトカインアレイは、NKAの存在下または非存在下の、PCA誘導24時間後にマウスの皮膚から単離したタンパク質で行った。陽性対照スポットは四角形内である。(D)は代表的なアレイのセットを示す。バーは、3回の独立した実験から得られた、陽性対照に対して正規化した示されたサイトカインの相対的デンシトメトリーの平均+1 SEMを示す。*は対応ありt検定によるp<0.05を示す。
図7-2】(図7-1の続き)
図7-3】(図7-2の続き)
図8-1】図8(A-C)は、in vitroで分化したMCがNK2Rを発現することを示す。(A)BMMC(左)およびPMC(右)の純度およびNK2R発現を示す。割合は最低3回の実験からの平均±SDである。(B-C)NKA(1000nM)存在下、IgEおよびAg(100ng/mL DNP-HASまたは示す通り)で活性化したBMMC(B)またはPMC(C)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。バーは、3回の独立した実験からの平均放出割合±1 SEMを示す。
図8-2】(図8-1の続き)
図9-1】図9(A-C)は、ニューロキニンAが肥満細胞においてIL-10-GFP発現を誘導することを示す。IL-10-GFPの誘導を、PCAの誘導の前にNKAまたはビヒクル対照で前処理したVERT-Xマウスにおいて評価した。(A)は、皮膚ホモジネート中のMCを同定するために使用したゲーティング戦略を示す。上部パネルはVERT-Xマウス、下部パネルはMC欠損Mcpt5Cre X Rosa26DTAマウスを示す。(B)IL-10-GFPMCを示す代表的プロット。数字は陽性率を示す。(C)1群につき1~2匹のマウスを用いた、3回の独立した実験から得られたIL-10-GFP+MCの割合を要約したものである。ナイーブ対照は各実験に含まれた。
図9-2】(図9-1の続き)
図10-1】図10(A-C)は、グリブリドがアトピー性皮膚炎のマウスモデルにおいて皮膚炎症を軽減することを示す。アトピー性皮膚炎は、耳をMC903(4nmol/耳、毎日)で処理することにより誘導した。対側の耳はMC903のビヒクルによって処理した。マウスはグリブリド(2.5 mg/kg、i.p.、毎日)またはビヒクル対照のいずれかで処理した。(A)耳厚を毎日測定した。(B-C)11日目にマウスを安楽死させ、耳組織を包埋切片化し、細胞浸潤を評価するために(B)H & Eで、または肥満細胞を評価するために(C)アビジン(AvRho)で染色した。(A)は1群3~4匹のマウスを用いた2回の実験による平均±SEMを示す。(B-C)は2回の実験で3~7匹のマウスから得られた代表的な画像を示す。
図10-2】(図10-1の続き)
図11-1】図11(A-C)は、マイクロニードルアレイによって皮膚微小環境に送達されたグリブリドおよびピーナッツ抗原が、ピーナッツアレルギーに対するアレルギーを減感作することを示している。マウスは、完全ピーナッツ抽出物(CPE、マウス1匹当たり100 mg、毎週、6週間)で表皮感作された。感作はCPE(i.p, 10 mg/マウス)によるチャレンジで確認した。感作マウスを精製ピーナッツ抽出物(PE)またはPEと共にグリブリドを負荷したマイクロニードルアレイによって1週間間隔で2回処理した。1週間後、マウスをCPEでチャレンジした。(A)アナフィラキシーは、チャレンジの40分後に2人の独立した研究者が標準尺度を用いてスコア化した。(B)温度の変化は、チャレンジ60分後のTmからチャレンジ直前のTmを差し引いて計算した。(C)総血清IgEをELISAで評価した。データは、1回の実験から得られた1群当たり3~4匹のマウスを示す。
図11-2】(図11-1の続き)
図12-1】図12(A-D)は、マイクロニードルアレイによってピーナッツ抗原と共に送達されたボツリヌス毒素A(BOTOX)が、IL-33発現を減少させ、ピーナッツアレルゲンに対するアレルギーを減感作することを示す。(A)ピーナッツ抽出物またはピーナッツ抽出物とBOTOXを負荷したMNAをマウスの皮膚に塗布した。12時間後、マウスを安楽死させ、RNAを抽出し、IL33の発現をqRT-PCRで決定した。(B-D)マウスを完全ピーナッツ抽出物で表皮感作した(1週間間隔で6回)。感作はCPEチャレンジにより確認した。1週間後にMNAを塗布した。MNA塗布の1週間後、マウスをCPEでチャレンジした。(B)はチャレンジ60分後の温度変化を示す。(C-D)ELISAにより血清中にピーナッツ特異的抗体を検出した。
図12-2】(図12-1の続き)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において開示されるのは、治療有効量の肥満細胞脱感作組成物を対象に投与することを含む、対象における炎症を予防または軽減するための組成物および方法である。いくつかの実施形態において、投与は、対象におけるI型過敏症反応を治療する。
【0030】
本出願を通じて使用される用語は、当技術分野の当業者にとって通常および典型的な意味で解釈される。しかしながら、本出願人は、以下の用語が以下に提供されるような特定の定義を与えられることを望む。
【0031】
用語
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数形の参照を含む。例えば、「細胞」という用語は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0032】
本明細書において、量、割合などの測定可能な値に言及する際に使用される「約」という用語は、測定可能な値から±20%、±10%、±5%、または±1%の変動を包含することを意味する。
【0033】
「活性化すること」、「活性化すること」、および「活性化」は、活性、反応、状態、または他の生物学的パラメータを増加させることを意味する。これは、例えば、活性、応答、または状態が、天然または対照レベルと比較して10%増加することも含む。したがって、増加は、天然または対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量であり得る。
【0034】
対象への「投与」には、薬剤(例えば、肥満細胞脱感作組成物)を対象に導入または送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮膚、皮下、経皮、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻内、直腸内、膣内投与、吸入による投与、植込みリザーバーを介する投与、または経皮パッチを介する投与など、任意の適切な経路によって実施することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、皮内または経皮投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、マイクロニードルまたはマイクロニードルアレイを介して皮内または経皮投与される。いくつかの実施形態において、マイクロニードル(複数可)は溶解可能である。いくつかの実施形態において、本発明で使用されるマイクロニードル(複数可)は、米国特許第8,834,423号明細書、国際公開第2017/120322号パンフレット、米国特許出願公開第2018/0304062号明細書、米国特許出願公開第2020/0353235号明細書、および国際公開第2021/178879号パンフレットのうちの1つまたは複数に記載されているものから選択される。投与には、自己投与および他者による投与が含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、組成物および方法が言及された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図する。組成物および方法を定義するために使用される場合、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」とは、組合せにとって本質的な意義を有する他のいかなる要素を除外することを意味する。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離精製法および薬学的に許容される担体、例えばリン酸緩衝生理食塩水、保存剤などからの微量汚染物を除外するものではない。「~からなる(consisting of)」は、本発明の組成物を投与するための他の成分および実質的な方法工程の微量要素を超えるものを除外することを意味するものとする。これらの各移行用語で定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0036】
「対照」は、比較目的で実験に使用される代替的な対象または試料である。対照は「陽性」または「陰性」であり得る。
【0037】
「断片」は、他の配列に結合しているか否かに関わらず、特定の領域または特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、または他の選択された修飾を含むことができるが、ただし、断片の活性は非修飾ペプチドまたはタンパク質と比較して有意に変化または損なわれないことを条件とする。これらの修飾は、例えば、ジスルフィド結合が可能なアミノ酸を除去または付加する、生物学的寿命を増加させる、分泌特性を変化させるなど、何らかの付加的な特性を提供することができる。いずれの場合においても、断片は、肥満細胞脱感作性のような、それが由来する配列の生物活性特性を有していなければならない。
【0038】
「同一性」、「と同一である」、および「相同性」という用語は、配列を整列させ、配列全体について最大同一性比率を達成するために必要であればギャップを導入した後の、任意の保存的置換を配列同一性の一部として考慮せずに、比較される対応する配列の塩基または残基と同一である候補配列中のヌクレオチド塩基またはアミノ酸残基の割合を意味すると解釈されるものとする。N末端およびC末端の延長も挿入も、同一性または相同性を低下させるものと解釈してはならない。他の配列に対して一定の割合(例えば、80%、85%、90%、または95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)は、その全長にわたって整列した場合に、2つの配列を比較して、その割合の塩基(またはアミノ酸)が同じであることを意味する。この整列およびパーセント相同性または配列同一性は、当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。一実施形態では、デフォルトのパラメータが整列に使用される。一実施形態において、BLASTプログラムが、デフォルトパラメータと共に使用される。一実施形態において、BLASTプログラムBLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメータ: 遺伝子コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート順=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIRで使用される。
【0039】
本明細書で使用する「増加した(increased)」または「増加(increase)」という用語は、一般的に、静的に有意な量の増加を意味し;あらゆる疑念を回避するために、「増加した(increased)」は、参照レベルと比較した少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較した少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の増加、または少なくとも約90%、または100%までの増加、または10~100%の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍以上の任意の増加を意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「炎症」は、対象の領域における免疫細胞の浸潤、白血球の浸潤、毛細血管の拡張、発赤、熱感および疼痛のうちの1つまたは複数を指す。
【0041】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」は、活性、反応、状態、疾患、または他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これには、活性、反応、状態、または疾患の完全な消失が含まれ得るが、これらに限定されない。また、例えば、活性、反応、状態、または疾患が、天然または対照レベルと比較して10%減少することも含まれ得る。したがって、減少は、天然または対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の減少であり得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「肥満細胞脱感作組成物」は、FcεR1によって開始される肥満細胞の活性化を減少させ、および/または肥満細胞によるメディエータ組成物の産生もしくは放出を減少させる組成物を指す。肥満細胞メディエータ組成物としては、カルパイン、ヒスタミン、β-ヘキソサミニダーゼ、キマーゼ、トリプターゼ、カルボキシペプチダーゼAおよびサイトカインが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、肥満細胞によるカルパイン1の産生または放出を減少させる。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、肥満細胞ABAC1ポリペプチドの活性または機能性を減少させる。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ニューロキニンAを含む。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、グリブリドを含む。いくつかの実施形態において、肥満細胞減感作性組成物は、ボツリヌス毒素を含む。
【0043】
「薬学的に許容される」成分は、生物学的または他の点で望ましくない成分ではない成分を指していてもよく、すなわち、成分は、重大な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる製剤の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、本発明の薬学的製剤に組み込まれ、本明細書に記載されるように対象に投与され得る。ヒトへの投与に関して使用される場合、本用語は一般的に、その成分が毒物学的および製造試験の必要な基準を満たしていること、または米国食品医薬品局によって作成されたInactive Ingredient Guideに含まれていることを意味する。
【0044】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と称することもある)とは、一般的に安全で無毒な医薬組成物または治療組成物の調製に有用な担体または賦形剤を意味し、動物用および/またはヒト用の医薬用途または治療用途に許容される担体を含む。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(油/水または水/油エマルジョンなど)および/または様々な種類の湿潤剤を含み得るが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、医薬製剤に使用するための当技術分野で周知の任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、脂質、安定化剤、または他の材料を包含する。組成物中で使用するための担体の選択は、組成物の意図される投与経路に依存する。薬学的に許容される担体およびこれらの材料を含む製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 21st Edition, ed. University of the Sciences in Philadelphia, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2005に記載されている。生理学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、グリセロール、DMSO、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、および他の有機酸を有する緩衝剤などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー; グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;および/またはTWEEN(商標)(ICI,Inc. Bridgewater,New Jersey)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)(BASF;Florham Park,NJ)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。所望の治療処置のためのこのような投与量の投与を提供するために、本明細書に開示される組成物は、好都合には、担体または希釈剤を含む全組成物の重量に基づいて、1つまたは複数の対象化合物の合計の約0.1重量%~99重量%を含み得る。
【0046】
「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドモノマーから構成される一本鎖または二本鎖ポリマーを指す。
【0047】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって結合したD-もしくはL-アミノ酸の一本鎖、またはD-およびL-アミノ酸の混合物から構成される化合物を指す。
【0048】
「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、1つのアミノ酸のカルボキシル基が他のアミノ酸のαアミノ基に結合した2つ以上のアミノ酸を含む天然または合成分子を指すために互換的に使用される。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「減少すること(reducing)」、「減少する(reduce)」、および他の文法的変形は、一般的に、統計的に有意な量の減少を意味する。しかしながら、疑いを避けるために、「減少すること」、「減少する」、または「減少した(reduced)」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の減少、または少なくとも約90%、または100%までの減少(すなわち、基準サンプルと比較して不在のレベル)、または10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0050】
「対象」という用語は、本明細書において、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むがこれらに限定されない哺乳類などの動物を含むように定義される。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0051】
組成物(例えば、肥満細胞脱感作組成物を含む組成物)の「治療有効量」または「治療有効用量」は、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象における炎症の予防または軽減である。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象におけるI型過敏症反応の予防または軽減である。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原に対する全身性寛容である。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象における喘息、鼻炎、結膜炎、または皮膚炎の予防または軽減である。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象におけるアナフィラキシー、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、または薬物アレルギーの予防または軽減である。肥満細胞脱感作組成物を含む組成物の治療有効量は、典型的には、治療される障害または疾患の種類および重症度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因に関して変化する。この用語はまた、癌の軽減などの所望の治療効果を促進するのに有効な、治療剤の量、または治療剤の送達速度(例えば、経時的な量)を指す場合もある。 正確な所望の治療効果は、治療される状態、対象の寛容、投与される薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療剤の効力、製剤中の薬剤濃度など)、および当技術分野の当業者に理解される様々な他の要因によって変化する。いくつかの例において、所望の生物学的または医学的応答は、数日、数週間、または数年にわたる複数用量の組成物の対象への投与後に達成される。
【0052】
本明細書で使用される用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」、およびその文法的変形は、障害または状態の1つまたは複数の随伴症状の強度を部分的にまたは完全に遅延させる、緩和する、軽減する、または低減すること、および/または障害または状態の1つまたは複数の原因を緩和する、軽減する、または妨げることを含む。本発明による治療は、防止的、予防的、緩和的または治療的に適用され得る。予防的治療は、発症前(例えば、I型過敏症反応の明らかな徴候の前)、発症初期(例えば、I型過敏症反応の初期徴候および症状の発現時)、またはI型過敏症反応の確立された発症後に対象に投与される。予防的投与は、疾患(例えば、I型過敏症反応)の症状発現の数日から数年前に起こり得る。
【0053】
「I型過敏症反応」は、本明細書において、肥満細胞上のIgE受容体に結合したIgEが関与するか、またはIgEによって媒介される免疫反応を指す。結合したIgEへの抗原の結合は、肥満細胞表面上のIgEの架橋をもたらし、細胞脱顆粒および肥満細胞メディエータ組成物の放出を引き起こす。IgEに結合し、I型過敏症反応を開始または引き起こす抗原を、本明細書では「I型過敏症反応抗原」と称する。
【0054】
組成物および方法
本明細書において開示されるのは、治療有効量の肥満細胞脱感作組成物を対象に投与することを含む、対象における炎症を予防または軽減するための組成物および方法である。いくつかの実施形態において、投与は、対象におけるI型過敏症反応を治療する。I型過敏症反応は、肥満細胞上のIgE受容体に結合したIgEが関与するか、またはIgEによって媒介される免疫反応である。肥満細胞には、結合組織肥満細胞および粘膜肥満細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、肥満細胞は結合組織肥満細胞である。他の実施形態では、肥満細胞は粘膜肥満細胞である。いくつかの実施形態において、IgEに結合し、I型過敏症反応を開始または引き起こす抗原は、本明細書において「I型過敏症反応抗原」と称し、肥満細胞脱感作組成物に加えて対象に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上のI型過敏症反応抗原、言い換えれば、異なるI型過敏症反応抗原が対象に投与される。1つまたは複数のI型過敏症反応抗原は、肥満細胞脱感作組成物の前、同時または後に投与することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原は、肥満細胞脱感作組成物と同じ皮膚微小環境に投与される。本明細書で使用される場合、「同じ皮膚微小環境」とは、第1の投与部位内の領域の約12インチ未満、約11インチ未満、約10インチ未満、約9インチ未満、約8インチ未満、約7インチ未満、約6インチ未満、約5インチ未満、約4インチ未満、約3インチ未満、約2インチ未満、約1インチ未満、約0.5インチ未満、約0.25インチ未満、約0.1インチ未満、または約0.001インチ未満内にある対象上の領域を指す。
【0055】
いくつかの態様において、I型過敏症反応は、喘息、鼻炎、結膜炎、および皮膚炎からなる群から選択される。したがって、本明細書に含まれるのは、治療有効量の肥満細胞脱感作組成物を対象に投与することを含む、対象における喘息の治療法である。
【0056】
また、治療有効量の肥満細胞脱感作組成物を対象に投与することを含む、対象における皮膚炎の治療法も含まれる。いくつかの実施形態において、皮膚炎は乾癬または湿疹である。いくつかの実施形態において、湿疹はアトピー性皮膚炎である。いくつかの実施形態において、皮膚炎は、接触皮膚炎、おむつ皮膚炎、異汗性皮膚炎、神経皮膚炎、貨幣状皮膚炎、口腔周囲皮膚炎または脂漏性皮膚炎である。
【0057】
さらに、治療有効量の肥満細胞脱感作組成物を対象に投与することを含む、対象における鼻炎の治療法が含まれる。治療有効量の肥満細胞脱感作組成物を対象に投与することを含む、対象における結膜炎の治療法がさらに含まれる。
【0058】
他のまたはさらなる実施形態において、I型過敏症反応は、アナフィラキシー、蕁麻疹、および血管浮腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、I型過敏症反応は食物アレルギーである。食物アレルギーとしては、セロリアレルギー、小麦アレルギー、甲殻類アレルギー、卵アレルギー、魚アレルギー、ルピナスアレルギー、牛乳および乳製品アレルギー、軟体動物(ムール貝および牡蠣など)アレルギー、マスタードアレルギー、ピーナッツアレルギー、木の実アレルギー、ゴマアレルギー、および大豆アレルギーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、食物アレルギーはピーナッツアレルギーである。いくつかの実施形態において、I型過敏症反応は薬物アレルギーである。本発明は、I型過敏症反応が食物アレルギーであり、方法が対象に食物の抗原を投与することをさらに含む態様を含む。食物抗原は、肥満細胞脱感作組成物の前、同時または後に投与することができる。
【0059】
本方法に従って対象に投与される肥満細胞減感作性組成物は、FcεR1によって開始される肥満細胞の活性化を減少させ、および/または肥満細胞によるメディエータ組成物の産生もしくは放出を減少させる組成物である。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ABCA1阻害剤を含む。用語「ABCA1」は、本明細書において、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー1とも呼ばれ、ヒトではABCA1遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、ABCA1ポリペプチドは、以下の1つまたは複数の公に利用可能なデータベース:HGNC:29、Entrez Gene:19、Ensembl:ENSG00000165029、OMIM:600046、UniProtKB:O95477において同定されるものである。いくつかの実施形態において、ABCA1ポリペプチドは、配列番号1の配列、または配列番号1と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、または配列番号1の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号1のABCA1ポリペプチドは、成熟ABCA1ポリペプチドの未成熟形態または前処理形態を表していてもよく、したがって、本明細書中に含まれるのは、配列番号1のABCA1ポリペプチドの成熟部分または処理部分である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「ABAC1阻害剤」は、肥満細胞ABAC1ポリペプチドの活性または機能性を低下させる組成物を指す。いくつかの実施形態において、ABCA1阻害剤は、グリブリド、プロブコール、トコフェソラン、およびビタミンEからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ABCA1阻害剤は、グリブリド(グリベンクラミドとしても知られる)またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは誘導体である。いくつかの実施形態において、グリブリドは、以下の構造:
【0061】
【化1】
を有する。
【0062】
いくつかの実施形態において、ABCA1阻害剤は、プロブコールまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは誘導体である。いくつかの実施形態において、プロブコールは、以下の構造:
【0063】
【化2】
を有する。
【0064】
いくつかの実施形態において、ABCA1阻害剤は、トコフェソランまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは誘導体である。いくつかの実施形態において、トコフェルソランは、以下の構造:
【0065】
【化3】
を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ニューロキニンAを含む。いくつかの態様において、ニューロキニンAは、HKTDSFVGLM(配列番号2)のアミノ酸配列を含むペプチド、その機能的断片、または配列番号2と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するペプチドである。いくつかの実施形態において、ニューロキニンAは、HKTDSFVGLM(配列番号2)のアミノ酸配列からなるペプチドである。
【0067】
いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、ボツリヌス毒素Aを含む。ボツリヌス毒素Aは、米国特許出願公開第2007/0026019号明細書、米国特許出願公開第2021/0024913号明細書、米国特許第8,501,196号明細書、米国特許第9,629,904号明細書、または米国特許第10,064,921号明細書、およびそれらに引用された特許文献および雑誌文献において「A型ボツリヌス毒素」または「ボツリヌス毒素A型」と称されるものを含む。これらの材料は、そこに記載された用量範囲を含め、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物は、肥満細胞カルパイン1阻害剤を含む。用語「カルパイン」は、本明細書において、カルシウム活性化中性プロテイナーゼ1とも呼ばれ、ヒトではCAPN1遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、カルパイン1ポリペプチドは、以下の1つまたは複数の公に利用可能なデータベース:HGNC:1476、Entrez Gene:823、Ensembl:ENSG0000014216、OMIM:114220、UniProtKB:P07384において同定されるものである。いくつかの実施形態において、カルパイン1ポリペプチドは、配列番号3の配列、または配列番号3と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、または配列番号3の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号3のカルパイン1ポリペプチドは、成熟カルパイン1ポリペプチドの未成熟または前処理形態を表していてもよく、したがって、本明細書に含まれるのは、配列番号3のカルパイン1ポリペプチドの成熟または処理部分である。本明細書で使用される場合、「カルパイン1阻害剤」は、肥満細胞カルパイン1ポリペプチドの活性または機能性を低下させる組成物を指す。
【0069】
炎症性反応またはI型過敏症反応の時期はしばしば予測できないため、本明細書に記載の疾患または障害を治療、予防、軽減、および/または阻害する開示された方法は、疾患または障害またはその症状を治療、予防、阻害、および/または軽減するために、疾患または障害の発症前または発症後に使用できることを理解されたい。一態様において、開示された方法は、疾患または障害の発症の30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2年前、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2カ月前、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3日前、60、48、36、30、24、18、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2時間前、60、45、30、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1分前;または疾患または障害の発症の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、90、105、120分後、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、24、30、36、48、60時間後、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、 18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日後、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月後、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60年またはそれ以上の後に使用し得る。
【0070】
先行するいずれかの局面の組成物の投与頻度としては、少なくとも1年毎に1回、2年毎に1回、3年毎に1回、4年毎に1回、5年毎に1回、6年毎に1回、7年毎に1回、8年毎に1回、9年毎に1回、10年毎に1回、少なくとも2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回、少なくとも1カ月毎に1回、3週間毎に1回、2週間毎に1回、1週間毎に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日8回、1日9回、1日10回、1日11回、1日12回、12時間毎に1回、10時間毎に1回、8時間毎に1回、6時間毎に1回、5時間毎に1回、4時間毎に1回、3時間毎に1回、2時間毎に1回、1時間毎に1回、40分毎に1回、30分毎に1回、20分毎に1回、または10分毎に1回が挙げられるが、これらに限定されない。投与はまた、連続的であり得、化合物のレベルを任意の所望の指定された範囲内に維持するように調整され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のサイトカインが、肥満細胞脱感作組成物の前、同時、または後に対象に投与される。いくつかの態様において、サイトカインはIL-10である。「IL-10」という用語は、本明細書では、サイトカイン合成阻害因子またはCSIFとも呼ばれ、ヒトではIL10遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、IL-10ポリペプチドは、以下の1つまたは複数の公に利用可能なデータベース:HGNC:5962、Entrez Gene:3586、Ensembl:ENSG00000136634、OMIM:124092、UniProtKB:P22301において同定されるものである。いくつかの実施形態において、IL-10ポリペプチドは、配列番号4の配列、または配列番号4と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、または配列番号4の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号4のIL-10ポリペプチドは、成熟IL-10ポリペプチドの未成熟または前処理形態を表していてもよく、したがって、配列番号4のIL-10ポリペプチドの成熟または処理部分が本明細書中に含まれる。また、肥満細胞脱感作組成物およびIL-10を含むキットが本明細書中に含まれる。
【0072】
上述したように、肥満細胞脱感作組成物の「治療有効量」または「治療有効用量」は、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象における炎症の予防または軽減である。炎症の軽減は、参照または対照レベルと比較して少なくとも10%の軽減、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の軽減、または少なくとも約90%、または100%までの軽減であり得る。いくつかの実施形態において、参照または対照レベルは、未治療の対象または集団から得られるレベルである。
【0073】
いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象におけるI型過敏症反応の予防または軽減である。I型過敏症反応の軽減は、参照または対照レベルと比較して少なくとも10%の軽減、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の軽減、または少なくとも約90%、または100%までの軽減であり得る。いくつかの実施形態において、参照または対照レベルは、未治療の対象または集団から得られるレベルである。いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原に対する全身性寛容である。
【0074】
いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象における喘息、鼻炎、結膜炎、または皮膚炎の予防または軽減である。喘息、鼻炎、結膜炎、または皮膚炎の軽減は、参照または対照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の軽減、または少なくとも約90%、または100%までの軽減であり得る。いくつかの実施形態において、参照または対照レベルは、未治療の対象または集団から得られるレベルである。
【0075】
いくつかの実施形態において、所望の治療結果は、対象におけるアナフィラキシー、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、または薬物アレルギーの予防または軽減である。アナフィラキシー、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、または薬物アレルギーの軽減は、参照または対照レベルと比較して少なくとも10%の軽減、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の軽減、または少なくとも約90%、または100%までの軽減であり得る。いくつかの実施形態において、参照または対照レベルは、未治療の対象または集団から得られるレベルである。
【0076】
本明細書に記載される肥満細胞脱感作組成物および/またはサイトカイン組成物の治療有効量は、当技術分野の当業者によって決定されてもよく、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約0.5~約200mgの哺乳動物に対する例示的な投与量を含み、これは、単回投与で、または1日当たり1~4回などの個々の分割投与の形態で投与され得る。あるいは、投与量は、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約0.5~約150mg、1日当たりの活性化合物が体重1kg当たり約0.5~約100mg、1日当たりの活性化合物が体重1kg当たり約0.5~約75mg、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約0.5~約50mg、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約0.5~約25mg、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約1~約20mg、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約1~約10mg、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約20mg、1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約10mg、または1日当たりの活性組成物が体重1kg当たり約5mgである。
【0077】
いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原、および/または1つまたは複数のサイトカインは、皮内または経皮投与される。いくつかの実施形態において、肥満細胞減感作性組成物、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原、および/または1つまたは複数のサイトカインは、マイクロニードルまたはマイクロニードルアレイを介して皮内または経皮投与される。いくつかの実施形態において、マイクロニードル(複数可)は溶解可能である。いくつかの実施形態では、本発明で使用されるマイクロニードル(複数可)は、米国特許第8,834,423号明細書、国際公開第2017/120322号パンフレット、米国特許出願公開第2018/0304062号明細書、米国特許出願公開第2020/0353235号明細書、および国際公開第2021/178879号パンフレットのうちの1つまたは複数に記載されているものから選択される。
【0078】
肥満細胞脱感作組成物、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原、および1つまたは複数のサイトカインのうちの2つ以上を同時または連続して投与することができることは理解されたい。肥満細胞脱感作組成物、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原、および/または1つまたは複数のサイトカインのそれぞれは、異なる投与経路または同じ投与経路を介して投与することができる。連続投与において、肥満細胞脱感作組成物、1つ以上のI型過敏症反応抗原、および/または1つ以上のサイトカインは、任意の順序で投与することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原の第1の投与と、肥満細胞脱感作組成物を含む組成物の第2の投与とを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原が最初に投与され、続いて肥満細胞脱感作組成物および1つまたは複数のサイトカインが投与される。いくつかの実施形態において、肥満細胞脱感作組成物、1つまたは複数のI型過敏症反応抗原、および/または1つまたは複数のサイトカインは、対象の同じ皮膚微小環境に投与される。
【0079】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、および刊行物は、全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
【実施例
【0080】
以下の実施例は、開示された主題による組成物、方法、および結果を例示するために以下に記載される。これらの実施例は、本明細書に開示される主題の全ての態様を包含することを意図するものではなく、むしろ代表的な方法および結果を例示することを意図する。これらの実施例は、当技術分野の当業者に明らかな本発明の等価物および変形物を除外することを意図していない。
【0081】
[実施例1]
方法
マウス
雌C57BL/6 、B6.129P2-IL10tm1Cgn(IL10 KO)(6~8週齢)マウスはJackson Laboratoriesから購入した。C57BL/6-Mcpt5Cre x Rosa26 DTAマウス(Axel Roers(Institute for Immunology, University of on Technology Dresden, Medical Faculty Carl-Gustav Carus, Dresden, Germany)提供)はピッツバーグ大学で飼育した。Mcp5tCreマウスをIL10 fl/flマウス(Louise D’Cruz、ピッツバーグ大学より供与)と自家交配し、Mcpt5Cre x IL10 fl/flマウスを得た。
【0082】
C6(Cg)-IL10tm1.1.Karp/J (VERT-X) マウス(Jackson Laboratories)をピッツバーグ大学で飼育した。d0に、マウスは片耳をビヒクル、対側の耳をIgEで処理された。1日目に、マウスは両耳をNKA(10mg/50mL)または両耳をビヒクルで処理した。3時間後、PCAを誘導した。2日目にマウスを安楽死させた。摘出した耳組織は、コラゲナーゼD(Sigma、1.0mg/mL)およびDNAase(Roche、1.0mg/mL)を含むIMDM培地(Life Technologies)中で、37℃で45分間消化した。単一細胞ホモジネートをFcBlockでブロッキングし、染色した。いくつかの実験では、アビジンAlexaFluro488を皮内注射し、in vivoで皮膚肥満細胞を標識した。マウスは注射の7日後に安楽死させた。
【0083】
全てのin vivo試験には、年齢および性別を一致させたマウスを使用した。全ての実験はGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに準拠し、ピッツバーグ大学のInstitutional Animal Care and Use Committeeの承認を得た。
【0084】
マウスMCの培養および活性化
肥満細胞は記載されているようにマウス骨髄から分化させた。簡単に言えば、雌マウスの大腿骨および脛骨から骨髄を摘出した。培養物は、使用前に組換えマウスIL-3(25ng/mL、Peprotech)を含む完全MC/9培地で4~6週間維持した。腹膜MC(PMC)は、IL-3(25ng/mL)およびSCF(Peprotech、10ng/mL)を添加したMC/9培地で21日間、腹膜洗浄物から増殖させた。BMMCおよびPMCの純度は95%超であることが確認された(図8A)。
【0085】
FcεRIを介したシグナル伝達を開始するために、MCにIgE(1.0μg/ml、クローンSPE-7、Sigma)を1時間以上負荷した後、ジニトロフェニル-ヒト血清アルブミン(DNP-HAS、100 ng/mLまたは示す通り)を用いて架橋した。NKA(LifeTein (Summerset,NJ)またはPhoenix Pharmaceuticals (Burlingham,CA)のいずれか)のストック溶液を組織培養グレードの水で調製し(100μM)、-20℃で最長30日間保存した。グリブリド(Cayman Chemical)はDMSOで調製した後、PBSで希釈した。
【0086】
フローサイトメトリーおよびImageStream
MCを回収し、0.5%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBSで洗浄した。非特異的結合はFcBlock(2.0%ヤギ血清および0.25 mg/mLの抗CD16/32(クローン2.4G2、BD Biosciences)を含むPBS)を用いて阻害した。表面染色は、抗CD117 eFluor450(クローン2B8、ThermoFisher)、抗FcεRI FITC(クローンMAR-1、ThermoFisher)および抗ABCA1 Alexa Fluor 647(クローン5A1-1422、BioRad)で行った。細胞はWash Buffer(0.5%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄した。細胞表面の顆粒化タンパク質の違いを検出するため、IgEを負荷したMCを、Tyrode緩衝剤中で、NKAを含むまたは含まないDNP-HSAで30分間活性化し、Wash Bufferで洗浄した後、Avidin Alexa Fluor488(Invitrogen、Av488、0.8μg/5 x10細胞)および抗LAMP-1 PE(クローンeBio 1D48, ThermoFisher)で染色した。データはLSRIIまたはFortessa(BD BioSciences)のいずれかで取得した。解析はFlowJo v10.4(BD Biosciences)を用いて行った。
【0087】
phospho-Stat5Tyr694を検出するために、MCを血清およびサイトカイン非含有のRPMI中でIgEを負荷した。ニューロキニンA(1.0M)またはビヒクル対象とDNP-HSA(100ng/mL)を同時に添加した。指示された時間に、細胞を2.0%パラホルムアルデヒドで10分間固定した後、90%メタノールを用いて-20℃で一晩透過処理した。細胞をモノクローナル抗phospho-Stat5 Tyr694 Alexa Fluor 647(クローンC71E5, Cell Signaling Technology)で室温で60分間染色した。核の共局在はImageStream(Amnis)を用いて評価した。活性化BMMCを2.0%パラホルムアルデヒドで固定し、3%FBSおよび0.1%Triton X-100を含むPermeabilization Wash Bufferで透過処理し、抗STAT5B Alexa Fluor 488(クローンEPR16671、Abcam)およびDAPIで染色した。データはIDEAS(v6.2)のCo-localization Wizardを用いて解析した。STAT5BおよびDAPIを発現する単一細胞の共局在は、対応する画像の画素強度を対数変換したピアソンの相関係数である類似性スコア(Similarity Score)として定量化した。
【0088】
他の方法では、5~7週間(BMMC)または3~4週間(PMC)分化させた肥満細胞を回収し、FcBlockでブロッキングし、抗FceRI PE(クローンMAR-1、Biolegend)、抗CD117 eFluor 450クローン2B8、ThermoFisher)、抗NK2R Alexa Fluor 647またはウサギIgG Alexa Fluor 647アイソタイプ対照(Cell Signaling Technology)で染色した。皮膚からの単一細胞ホモジネートを抗CD45 BUV 395(クローン 30-F11、BD Biosciences)、抗FceRI Alexa Fluor 647(クローン MAR-1、Biolegend)、抗CD117 eFluor 450およびFixable Viability Dye eFluor 780(ThermoFisher)で4℃で20分間染色し、洗浄後、2.0%パラホルムアルデヒドで固定し、BD FortessaまたはLSR IIサイトメーターのいずれかで取得した。
【0089】
BMMC放出物のMS/MS
BMMC(4×10)をBSA(500μl)無添加のTyrode緩衝剤中で1時間活性化した。Protease Inhibitor Cocktail(Sigma、アプロチニン、ベスタチン、E-64、ロイペプチン、ペプスタチンAを含む)を細胞遊離上清に添加した。上清はAmicon Ultra Centrifugal Filters-3K(EMD Millipore)を用いて濃縮した。タンパク質濃度は、BCA Protein Assay Kit (ThermoFisher)を用いて定量化した。トリプシンペプチドをフィルタ補助サンプル調製法で生成し、C18スピンカラムで脱塩し、speedvacで乾燥させた。ペプチドを96:4水:アセトニトリル中の0.5%ギ酸で再構成し、Waters nanoACQUITY UPLCとQ-Exactive質量分析計(ThermoFisher)でインラインで構成されるシステムを使用して液体クロマトグラフィータンデム質量分析計で分離した。移動相として溶媒A(水中0.1%ギ酸、Burdick & Jackson)および溶媒B(アセトニトリル中0.1%ギ酸、Burdick & Jackson)を使用した。次いでキャピラリーカラム(内径100μm×長さ100mm; ACQUITY UPLC M-Class Peptide BEH C18 Column、1.7μm 粒子サイズ、300Å(Waters))からペプチドを溶出し、0.9μL/分の流速で100分間の勾配(4~33%Bで90分間、33~80%Bで2分間、80%Bで6分間一定、その後80~0%Bで2分間によりカラムを平衡化)を用いて分離した。データは陽イオン化モードで収集した。PEAKSXソフトウェアを用いて、UniProtマウスデータベースを用いた偽発見率1.0%のデコイサーチを使用して、各サンプル中のペプチドの配列決定および同定を行った。ラベルフリー定量化は、PEAKSXソフトウェアの定量モジュールを用いて行った。MSプロテオミクスデータはPRIDEパートナーリポジトリを介してProteomeXchange Consortiumにデータセット識別子PXD021377で寄託された。発現タンパク質の経路(Pathway)解析は、Panther Classification Systemを用いて行った。
【0090】
カルパインアッセイおよびELISA
カルパイン活性は、Calpain-Glo Protease Assay (Promega)を用いて細胞非含有上清から検出した。上清は発光検出の前に基質と共に10分間インキュベートした。いくつかの実験では、Agの10分前にグリブリドまたはビヒクル(0.1%DMSO)を細胞に添加した。eBioscience(IL-13)、BioLegend(TNFおよびIL-10)またはRayBiotech(NKA)のELISAキットを製造者の推奨に従って使用した。データは1×10細胞当たりのpg/mLを示す。
【0091】
IL-10分解アッセイ
初期のIL-10放出を検出するため、IgEを負荷しDNP-HSA(100ng/mL)で活性化する前に、4 x 10細胞を血清非含有RPMI中で最低3時間インキュベートした。上清を回収し、1.0%のBSAでブロッキングし、250 pg/mLのトップスタンダードを用いて、製造者の推奨に従ってIL-10を検出した。検出下限は7.8 pg/mLであった。カルパインとIL-10の関係の役割を評価するために、活性化後10分後に細胞非含有上清を回収し、Ac-カルパスタチン(Ac-Cal; 20μg/mL, Cayman)またはビヒクル対照と共にインキュベートした。Ac-Calを含む上清は、ELISAによるIL-10の定量化前にさらに30分間インキュベートした。IL-10のタンパク質分解を直接試験するために、MCを45分間活性化し、細胞非含有上清を回収し、組換えIL-10(Biolegend、250 pg/mL)でパルスした。
【0092】
カルパインのIL-10分解能、組換えマウスIL-10(Peprotech)をヒトカルパインI(Athens Research and Technology)と37℃で60分間インキュベートした後、Laemelli Buffer(BioRad)で変性させ、10%Tris-Glycine SDS-PAGEゲル(BioRad)で分離させた。タンパク質を40μm PVDF膜(BioRad)に移し、Odyssey Blocking Buffer(LI-COR)で1時間ブロッキングし、ヤギ抗マウスIL-10抗体(RnD Systems)で一晩プローブした。抗IL10抗体はロバ抗ヤギ 800CW (LI-COR)で検出し、LI-COR Imaging System で可視化した。デンシトメトリーはImageStudioLite v5.2.5 (Licor)を用いて計算した。値は(rIL-10 +カルパイン)/ rIL-10 単独)*100で表示する。
【0093】
RT-PCR
NKA注射の3時間後に、MCまたはマウス耳組織のいずれかから全RNAを単離した。組織はNavy RINOチューブ(Next Advance)内で、Bullet Blender Storm(Next Advance)でホモジナイズした。RNAはTrizol(Invitrogen)を用いて標準的な方法で抽出した。cDNAはQuantitech Reverse Transcription Kit(Qiagen)を用いて逆転写した。PCR産物は、StepOne Plus Cycler(BioRad)上で、Fast SybrGreen(ABI)を用いて以下のプライマーを用いて増幅した:TNF F: CCGATGGGTTGTACCTTGTC(配列番号5)、TNF R:CGGACTCCGCAAAGTCTAAG(配列番号6);IL13 F:CCTGGCTCTTGCTTGCCTT(配列番号7)、IL13 R:GGTCTTGTGTGATGTTGCTCA(配列番号8);IL10 F:GCTGGACAACATACTGCTAACC(配列番号9);IL10 R:ATTTCCGATAAGCTTGGCAA(配列番号10);Bアクチン F:GGCTGTATTCCCCTCCATCG(配列番号11);Bアクチン R:CCAGTTGGTAACAATGCCATGT(配列番号12)。データは、β-アクチンをハウスキーピング遺伝子として用い、未処理細胞またはナイーブ対照マウスのいずれかに対して正規化した2-ΔΔCTとして示す。
【0094】
受動的皮膚アナフィラキシー
マウスの耳をマイクロメーターで測定し、フィルタ滅菌PBS中のIgE(Sigma、クローンSPE-7、20 ng/50μl/耳)またはビヒクル対照で感作した。24時間後、Ag(DNP-HSA 100 μg、200μl、生理食塩水で静脈内)投与の3時間前に、NKA(10μg/耳、皮内)またはビヒクル(PBS)でマウスを処理した。データはベースラインと指示された時間との間の耳厚の変化として示されている。指示された場合、マウスはIgE注射時に組換えマウスIL-10(Peprotech、1.0 ng/耳)で処理されるか、またはAg投与の3時間前にグリブリド(2.5 mg/kg、i.p)で処理された。
【0095】
浮腫は、組織学的およびエバンスブルー色素の血管外漏出量の関数として評価した。組織学的評価のために、マウスはPCA誘導の2時間後に安楽死させた。パラホルムアルデヒド(4.0%)で固定した耳をヘマトキシリン・エオジン染色に供した。病理学的評価は、落射蛍光およびデジタルカメラ(AxioCam;Zeiss)を備えたAxiostar plus顕微鏡を用いて盲検下で行った。色素の血管外漏出については、Agを1.0%エバンスブルー色素中で送達した。90分後にマウスを安楽死させ、耳を切除した。色素はDriSolv(EMD Millipore)で抽出し、OD650 nmでの吸光度として定量化した。データはOD650/組織1mgとして示す。
【0096】
PCA誘導24時間後に皮膚におけるサイトカイン発現を調べた。マウスを安楽死させ、耳を切除し、組織をProtease Inhibitor Cocktail(Sigma)を含むT-PER(ThermoFisher)中でホモジナイズした。タンパク質濃度はBCA Protein Assay(Pierce)を用いて定量化した。皮膚ホモジネートのタンパク質プロファイルは、C-Series Mouse Cytokine Antibody Array C1 (RayBiotech)を用いて特徴付けた。個々のスポット領域からバックグラウンド中央値を差し引いたデンシトメトリー値は、ImageStudioLite v5.2.5で計算した。各サイトカインスポットのデンシトメトリー値を陽性対照スポットの平均デンシトメトリー値で割り、相対的なタンパク質発現量を求めた。各実験のデータは、(相対的発現[処理]/相対的発現[ビヒクル])として正規化した。いくつかの実験では、ELISAを皮膚ホモジネートで行った。
【0097】
ミエロペルオキシダーゼ活性アッセイ
好中球流入をミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の関数として評価した。MPO活性を検出するために、50mMのヘキサデイルトリメチルアンモニウムを含む50mMのKPO中で、Next Advance Bullet Homogenizerを用いて組織をホモジナイズした。ホモジネートを、0.005% Hを含むODP(Sigma)と共に30分間インキュベートした。酵素反応は1N塩酸で停止させ、450nMで吸光度を読み取った。データはMPO活性/組織1mgを示す。
【0098】
b-ヘキソサミニダーゼアッセイ
肥満細胞(5×10~1×10)にIgE(1.0mg/mL)をTyrode緩衝剤中で最低3時間負荷した。ニューロキニンA(1.0mM)をDNP-HSA(Sigma、示す通りまたは100ng/mL)と共に37℃で40分間添加した。細胞および上清を回収し、凍結融解によって細胞ペレットをTyrode緩衝剤中で溶解した後、クエン酸緩衝剤(0.04M、pH4.5)に溶解したp-ニトロフェニル N-アセチル β-D-グルコサミニド(EMB Millipore、5mM)と共に90分間インキュベートした。酵素反応はグリシン(0.4M、pH10.7)で停止させた。450 nMでの吸光度を読み取った。3つ組値からのb-ヘキソサミニダーゼ放出の平均割合は、(OD上清/OD上清+ OD溶解物)×100(%)として計算した。
【0099】
統計
データは、Prism GraphPad (v 8.0)を用いて、t検定または2-way ANOVAおよびボンフェローニ事後分析のいずれかによって分析した。
【0100】
[実施例2]
ニューロキニンAは肥満細胞活性化後の皮膚において増加する
ニューロキニンAは末梢感覚ニューロンから放出され、ヒトおよびラットの皮膚で検出されているが、マウス皮膚での発現は報告されていない。マウス皮膚における発現を確認し、MC活性化とNKA発現の潜在的関係を評価するために、マウス皮膚ホモジネート中のNKAレベルを、定常状態および受動的皮膚アナフィラキシーモデル(PCA)を用いたIgE誘導性肥満細胞活性化後に調べた。NKAのベーサルレベルは検出不可能に近かった。しかし、MC活性化の24時間後、NKAレベルは上昇した(図1A)。MC上のNK2R発現は、免疫蛍光顕微鏡法(図1B)およびフローサイトメトリー(図7A)により確認された。これらのデータは、MCの活性化により誘導される炎症が局所NKAレベルを調節すること、およびMCが微小環境におけるNKAの変化に応答する能力を備えていることを示唆する。
【0101】
[実施例3]
外因性ニューロキニンAはPCAにおけるMC機能を下方制御する
ニューロキニンAは、MCの浸潤および活性化を特徴とするアレルギー性CHSのモデルにおいて炎症を阻害する。本明細書において、PCAにおいてNKAが上方制御されることが実証され、NKAは当然MCの活性化を阻害し得るという仮説が立てられた。この仮説を検証するために、CHSを阻害する濃度でPCA誘導の3時間前にNKAでマウスを前処理した。ニューロキニンA前処理は、耳厚の減少、組織切片の浮腫の減少、およびエバンスブルー色素の血管外漏出の減少として見られるPCAの初期(1~2時間)段階を阻害した(図1C~E)。ニューロキニンA前処理はまた、耳厚の減少、組織切片に見られる好中球流入の減少、およびミエロペルオキシダーゼ活性の減少に反映されるPCAの後期段階(24時間)を低減させた(図1B、1F、図7B)。後期PCAに対するNKA前処理の効果は、炎症性サイトカインを評価するタンパク質アレイを用いてさらに特徴付けられた。IgE処理した皮膚をPCA誘導24時間後にビヒクル処理した皮膚と比較すると、MC生存(IL-3)、Th2免疫(IL-13、IL-4)、走化性(MCP1、およびRANTES)および自然炎症(TNF、G-CSF、IL-6)に関連するサイトカインが有意に増加した(図1G図7C、D)。ニューロキニンA前処理は、IgE処理皮膚におけるIL-3、IL-6、IL-13、MCP1、RANTESおよびTNFを有意に減少させた。統計学的に有意ではなかったが、IFNγレベルは、NKA処理皮膚において増加し、これは肺におけるNKAによるIFNγ誘導を示す報告と一致している。
【0102】
[実施例4]
ニューロキニンAは、BMMCにおけるSTAT5の活性化およびそれに続く転写を阻害する
PCAにおいて、NKAはT細胞によって産生されると考えられるIL-3の放出ならびにMC産生サイトカインのパネル:IL-6、IL-13、TNF、RANTES、McP1を阻害した。MCおよび他の細胞では、これらのサイトカインやケモカインの産生はSTAT5の活性化と関連している。したがって、NKAはSTAT5のリン酸化を阻害し、アレルギーおよび炎症に関連する因子の下流の転写を阻害する可能性があるとという仮説が立てられた。この仮説を検証するために、FcεRIで活性化されたBMMCに対するNKAの効果を直接評価するin vitroアプローチを利用した。in vitroで容易に増殖するIgE活性化BMMCが利用され、皮膚のMCをよりよく反映するが増殖があまり堅固ではない結合組織型PMCを用いた主要な知見が確認された。NK2Rの発現はBMMCおよびPMCの両方で同等であった(図8A)。
【0103】
最初に、NKAがMC由来のサイトカインの放出を阻害するというin vivo所見が確認された。TNFおよびIL-13のレベルは、MCの自然およびアレルギー性炎症機能を代表するものとして注目された。NKA存在下、IgE+Agで一晩活性化した後、活性化から60分後に転写を行った。IL-13およびTNFの放出(図2A)ならびに転写(図2B)は、いずれもNKAによって阻害された。FcεRIで活性化されたMCでは、STAT5のリン酸化および核移行がIL13およびTNFの転写の上流にある。したがって、IgEをAgで架橋した15分後、フローサイトメトリーで検出されたpTyr695-STAT5は、対照のBMMCでピークに達し、NKA存在下でMCを活性化させた場合は減少した(図2C~D)。MCにおける支配的なSTAT5であるSTAT5Bの核内転位は、イメージングフローサイトメトリーで評価した。STAT5BはIgE架橋の30分後および60分後に増加し、NKA存在下で活性化されたBMMCでは有意に減少した(図2E~F)。これらのデータを総合すると、NKAはSTAT5の活性化、転写、および炎症促進性サイトカインでありTh2に傾くサイトカインであるIL-13およびTNFの放出を阻害することが示唆される。
【0104】
[実施例5]
NKAはIL-10依存的機構によりMCの活性化を阻害する
IL-10のような免疫調節性サイトカインは、FcεRI誘導性のSTAT5のリン酸化を阻害する。NKAと共に一晩培養した後に活性化したBMMCの上清中のIL-10を評価すると、活性化60分後にIL-10タンパク質の有意な増加およびIL10 RNAの増加が認められた(図3A~B)。NKAを介した抑制におけるIL-10の機能的役割について、IL-10 KO BMMCを用いて検討した。IgE誘導性の活性化に応答して、IL-10 KO BMMCはWT BMMCと比較して有意に低いレベルのIL-13およびTNFを放出し、これは過去の報告と一致している(図3C)。IL-10の自己分泌がない場合、NKAはIL-13またはTNFの放出を阻害しなかった(図3D)。この観察は、Mcpt5Cre x IL10WTおよびMC特異的CreがIL-10欠失を駆動するMcpt5Cre x IL10fl/flマウスから増殖させたPMCを用いて確認された。BMMCで観察されたように、NKAは対照Mcpt5Cre x IL10WTのPMCからのIL-13とTNF放出を阻害した(図3E)。PMC由来のIL-10がない場合、NKAの効果は逆転した。これらのデータを総合すると、自己分泌IL-10が、NKAがFcεRI誘導性MC活性化を阻害するのに必要であることが実証される。
【0105】
[実施例6]
MC由来のIL-10は、NKA誘導性のPCAの阻害に必要である
次に、PCAにおけるNKAおよびIL-10の関係を調べた。MCに関するin vitro観察とは対照的に、全皮膚ホモジネートにおいて、IL-10タンパク質は、NKA前処理マウスでは増加しなかった(図7E)。しかし、このような広範なスクリーニングでは、自己分泌のMC由来IL-10の寄与は、皮膚の他の細胞によってマスクされた可能性がある。あるいは、MC由来のIL-10がより早い時点で重要である可能性もある。NKAがMC由来のIL-10を調節する能力をより具体的に評価するために、IL10-eGFPレポーターマウスを用いた。この系統は転写レポーターであるが、eGFPの発現はタンパク質と相関する。この方法で検出されたIL10-eGFPの割合は、ナイーブマウス由来のMCでは低く、PCA誘導後に増加した。ニューロキニンAは、PCA誘導の有無に関わらず、IL10-eGFP MCの割合を2倍に特異的に増加させた(図9A~C)。この所見を裏付けるために、ビヒクルまたはNKAで処理したMC充足マウス(Mcpt5Cre x Rosa26DTA)およびMC欠損マウス(Mcpt5Cre x Rosa26DTA)の皮膚でIL10 mRNAを評価した(図3E)。 NKAはMC充足マウスではIL10 mRNAレベルを有意に増加させたが、MC欠損マウスではIL10 mRNAに差がなかったことから、NKAはMC依存的に皮膚のIL-10を増加させることが示唆された。
【0106】
NKA媒介性のPCA抑制における自己分泌IL-10の機能をMcpt5Cre x IL10WTおよびMcpt5Cre x IL10fl/flマウスを用いて評価した。Mcpt5Cre x IL10WTマウスおよびMcpt5CrexIL10fl/flマウスのCD45細胞およびMCの数は同等であった(示さず)。NKAの免疫調節能は、PCA誘導後2時間および24時間で消失した(図3F)。NKAはMcpt5CrexIL10WTマウスではエバンスブルー色素の血管外漏出を阻害したが、Mcpt5Cre x IL10fl/flマウスでは血管外漏出に影響を及ぼさなかった(図3G)。サイトカインアレイにより、IL-13およびTNFはPCA中に上方制御し、NKAにより下方制御された。Mcpt5 CrexIL10WTマウスにおいて、これらのタンパク質がNKAによって有意に下方制御されることを、ELISAを用いて確認した(図3H)。MC由来のIL-10の非存在下では、NKAの投与は皮膚におけるIL-13およびTNFを増加させた。これらのデータを総合すると、MC由来のIL-10がNKAの阻害効果に必要であることが示唆される。
【0107】
[実施例7]
内因性NKAは皮膚においてIL-10により調節される
本明細書のデータは、NKAがIL-10依存的にMC活性化を阻害することを示している。皮膚におけるNKAの調節についてはほとんど知られていない。そこで次に、in vivoでIL-10とNKAの間に関係があるかどうかを調べた。これに対処するために、WTマウスおよびIL-10 KOマウスの定常状態およびPCA誘導後のNKAレベルをELISAにより評価した。WTマウスの皮膚ホモジネートでは、NKAレベルは定常状態では低く、PCA後に有意に増加した(図1B図3I)。IL-10 KOマウスの皮膚ホモジネートでは、PCA誘導後もNKAは低いままであった。逆に、外因性組換えIL-10を投与すると、PCA誘導なしに定常状態のNKAが有意に増加した(図3I)。合わせると、このデータは、IL-10とNKAとの間の周期的関係を示している。
【0108】
[実施例8]
NKAは、BMMCおよびPMCにおける顆粒放出に対して異なる効果を有する
ニューロキニンAは、脱顆粒関連浮腫を含むPCAを完全に阻害した。次に、in vitroにおけるIgE誘発脱顆粒に対するNKAの効果を調べた。古典的な研究から、NKA単独ではMCの細胞内カルシウムフラックス、β-ヘキソサミニダーゼ、またはヒスタミン放出に影響を与えないことが示唆されている。この観察と一致して、NKAとインキュベートした、またはNKAの存在下でIgEおよび抗原で活性化したBMMCまたはPMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出に違いは見られなかった(図8Bおよび8C)。NKAは、脱顆粒の他の経路に影響するという仮説が立てられた。この仮説を検証するために、活性化から30分後に細胞表面から出芽した顆粒状タンパク質をアビジンで標識し、細胞膜と融合したエキソサイトーシス小胞を抗LAMP1で標識した。NKAの有無に関わらず、活性化されたBMMCは細胞表面に同量のアビジン顆粒およびLAMP-1を発現した(図4A~B)。対照的に、NKAは、対照と比較して、アビジンおよびLAMP-1PMCの割合を減少させた(図4C~D)。
【0109】
[実施例9]
ショットガンプロテオミクスによってMC活性化中にNKAによって影響を受ける経路を同定した
ニューロキニンAは、BMMCおよびPMCの両方からIL-10依存的にサイトカイン放出を阻害したが、エキソサイトーシスに対する作用は異なっていた。NKAは、従来の脱顆粒の特徴とは独立した、活性化の初期に共有される経路に影響を与えるという仮説が立てられた。NKAが調節するタンパク質を同定するため、FcεRI-活性化によって開始されるメディエータ放出におけるNKAの役割をより深く理解するためのショットガンプロテオミクスを行った。BMMCは、PMCよりも大量に増殖し、この種のスクリーニングに必要な量のタンパク質を容易に供給することから、このスクリーニングに選択した。この広範なスクリーニングで、IgE活性化上清中に232個のタンパク質が特異的に放出され、94個のタンパク質がNKAによって上方制御された(図4E、各条件で放出されたタンパク質の上位20個を表1~2に要約)。活性化後に検出されたタンパク質の経路(Pathway)解析から、NKAは2つの経路に関連するタンパク質の放出を阻害することが示唆された:ミトコンドリアタンパク質を含む代謝と、プロテアーゼを含む細胞機能であり、従来はIgE活性化MCによって放出される(図4F)。神経ペプチドとミトコンドリアタンパク質の放出の関係は、以前に報告されている。したがって、分析は、活性化上清から同定されたタンパク質のカバー面積を対照に対して正規化し、プロテアーゼについて半定量的分析を行った、タンパク質の後の分類に焦点を当てた(図4G)。β-ヘキソサミニダーゼ、MCカルボキシペプチダーゼ、カテプシンDおよびキマーゼを含むBMMC活性化に一般的に関連するプロテアーゼの放出は、NKAによって変化しなかった(図4H)。しかしながら、システインプロテアーゼの触媒サブユニットであるカルパイン1は、IgE+Agで活性化されたBMMCから様々なレベルで検出されたが、NKA存在下で活性化されたBMMCからは検出されなかった。
【0110】
[実施例10]
細胞外カルパインはNKAによって調節される
プロテオミクススクリーニングの目的は、FcεRIで活性化されたMCから放出され、NKAによって制御される候補分子(複数可)を同定することであった。このワイドスクリーニングは、細胞外カルパインがNKAによって調節されている可能性を示唆した。この観察は、IgEの活性化後の細胞非含有上清中のカルパイン活性を評価することで確認された。MCを活性化すると、BMMCからの細胞外カルパイン活性が増加したが、これはNKAによって有意に下方制御された(図5A)。重要なことに、カルパイン活性はPMC上清中にも検出され、NKAによって有意に低下した(図5B)。BMMCおよびPMCで評価した場合、NKAはエキソサイトーシスの従来のマーカーに異なる効果を示したが、カルパインの放出の下方制御能については同様の効果を示した。
【0111】
[実施例11]
ニューロキニンAはIL-10分解システインプロテアーゼであるカルパインの外在化を調節する
MCでは、細胞内カルパインはIgE誘導性脱顆粒、NFκBの活性化、下流のサイトカイン産生に必要である。しかし、FcεRIライゲーションに反応するBMMCとPMCのMCセクレトームを評価した同様のプロテオミクス研究では報告されているが、MCの生物学における細胞外カルパインの役割については、まだ検討されていない。
【0112】
NKAがin vitroおよびin vivoでIgE誘導性MC応答を調節する能力には、自己分泌IL-10が必要であった。興味深いことに、IL-10はカルパインのようなシステインプロテアーゼによって分解され、バイオインフォマティクス解析によってマウスIL-10のアミノ酸配列におけるカルパインの切断部位が確認された(データは示さず)。カルパインとIL-10の関係を直接調べるために、組換え(r)IL-10を漸増的な濃度の精製カルパインとインキュベートした後、ウェスタンブロットでIL-10を検出した。バイオインフォマティクスの予測と一致して、ウェスタンブロットで検出されたIL-10の量はカルパインの濃度に反比例した(図5CおよびD)。
【0113】
IgE活性化MCからのIL-10放出の初期動態をカルパイン活性との関連で調べた。活性化前に無血清培地で最低3時間休息させたBMMCsを用いた。この休息期間により、MCから放出されたIL-10を蓄積させることができた。活性化後5分以内にIL-10レベルは減少した。逆にカルパイン活性は上昇した(図5E)。次に、活性化後のIL-10の減少が外在化したカルパインに関係しているという仮説を検証した。細胞内カルパイン活性はMCの脱顆粒に必要であるため、MC外在化カルパインとIL-10分解を直接調べるアプローチは限られている。この制限を克服するために、活性化10分後にBMMCから細胞非含有上清を回収し、カルパイン阻害剤Ac-カルパスタチンで30分間パルスした。Ac-カルパスタチンはカルパイン活性を20.1±1.72%阻害した(図示せず、n=3の平均±SEM)。IgE活性化BMMCの上清をAc-カルパスタチンでパルスすると、IL-10レベルが部分的に回復し(図5F)、これはカルパインが自己分泌IL-10を分解することを実証している。これらのデータを総合すると、IgE活性化MCはカルパインを放出し、このカルパインが細胞外IL-10を分解することが示されている。
【0114】
定常状態では、MCは低レベルのIL-10を放出するが、これはカルパイン依存的にIgE活性化後に減少する。NKAはカルパインの放出を阻害するため、NKAと初期のIL-10レベルとの関係を評価した。NKAで活性化されたBMMCからの上清は、有意に多くのIL-10を含んでおり、これは、NKAがIL-10の初期のタンパク質分解を阻害したことを示唆している(図5G)。このことをより具体的に検証するために、BMMCsをNKAあり/なしで活性化し、細胞非含有上清を回収し、次いでrIL-10で30分間パルスし、ELISAで定量化した。IgE+Agで活性化したBMMCの細胞非含有上清から回収されたIL-10は、対照培地のみ、または未処理もしくはNKA処理BMMCのいずれかから回収した「脱顆粒上清」から検出されたIL-10の量と比較すると、有意に少なかった(図5H)。このデータは、BMMCが初期IL-10を分解するカルパインを含むプロテアーゼを放出し、この経路がNKAによって破壊されるという仮説と一致する。
【0115】
[実施例12]
NKAはカルパイン放出ABCA1の表面発現を下方制御する
カルパインは分泌シグナルを欠き、グリブリド感受性ATP結合カセット(ABC)A1チャネルを含むエキソサイトーシス非依存的な手段でT細胞およびメラノーマから外在化される。NKAの存在下または非存在下で、IgE+Agで活性化されたMCの表面ABCA1発現を調べた。IgE誘導性活性化後、ABCA1の発現はBMMCおよびPMCの両方で上方制御した。NKAの存在は、細胞表面で検出されたABCA1のレベルを低下させた(図6A、B)。次に、BMMCを漸増的な濃度のグリブリドで処理し、活性化後のカルパイン活性およびIL-10レベルを測定して、カルパインがMCにおいてはABCA1を通じて放出されることを確認した。グリブリドはカルパイン活性を低下させる一方、IL-10レベルを上昇させ(図6C)、このことは、他の細胞で報告されているように、MCにおいてもカルパインはABCA1を介して放出されることを示唆している。これらのデータを総合すると、MCはABCA1チャネルを通してIL-10分解カルパインを放出し、この経路はNKAによって調節されることが実証された。
【0116】
[実施例13]
ABCA1の阻害はin vitroおよびin vivoでMCの活性化を遮断する
ニューロキニンAは、もっぱらPMCにおけるエキソサイトーシスと顆粒化タンパク質の放出を阻害したが、BMMCでは阻害しなかった。NKAと同様に、グリブリドはIgE誘導性活性化後、LAMP-1およびアビジンPMCの割合を減少させたが、BMMCに対する効果はそれほど強くはなかった(図6D)。ニューロキニンAは、IgE誘導性のIL-13およびTNF放出、ならびにABCA1表面発現を遮断した。グリブリドによるABCA1機能の阻害は、NKAの効果の表現型を模写するという仮説が立てられた。培養20~24時間後、グリブリドは、BMMCとPMCの両方において、NKAの効果を模倣して、IL-10の検出可能なレベルを増加させ、IL-13およびTNFのレベルを減少させた(図6E)。重要なことに、グリブリドはNKA媒介性の阻害をそれ以上増加させることはなく、NKAおよびABCA1の阻害は機能的に冗長であることが示唆された。次いで、PCA誘導の前にABCA1の阻害が、NKAの作用と同様に調節性であるという仮説が立てられた。これを検証するため、PCA誘導の3時間前にマウスをグリブリドで処理した。グリブリドは2時間後および24時間後の耳厚を有意に減少させ、皮膚のIL-13およびTNFのレベルを減少させた(図6F~H)。総合すると、このデータは、NKAがABCA1の発現を減少させ、ABCA1を遮断することによってFcεRI誘導性MC活性化が阻害されることを示唆する。
【0117】
[実施例14]
考察
神経ペプチドは、皮膚炎症を開始および増幅し、またアレルギー性免疫応答を制御することが示されている。したがって、NKAはIL-10依存的にMCの活性化を阻害し、ABCA1依存性のIL-10分解酵素カルパインの放出を減少させ、IL10の転写を増加させる。多層的なIL-10の制御を通して、NKAは微小環境におけるIL-10の利用可能性を延長し、in vitroおよびin vivoでのMCの機能を低下させる。
【0118】
MC媒介性の免疫応答におけるIL-10の役割は、実験モデルによって異なる。in vitroでは、自己分泌IL-10はIgE誘導性MC活性化を阻害し、IL-10の長期処理は、IgEによって開始されるFcεRIの発現、STAT5の活性化およびTNFの放出を阻害するが、IL-13の放出は選択的に促進する。これとは対照的に、IL-10欠損BMMCはTNFとIL-13の放出が障害されており、IL-10の非存在は脱顆粒には影響しない。これらの観察結果に従い、自己分泌IL-10を欠損したPMCおよびBMMCは、IgE誘導性反応が障害されることが、2つの異なる系を用いて本明細書で示された。しかし、NKAがMCの機能を抑制する能力は、in vitroではIL-10に依存していた。これらの研究を総合すると、自己分泌IL-10はin vitroでの免疫活MCの分化には必要であり得るが、FcεRIによる活性化の過程では、自己分泌IL-10は抑制的である可能性が示唆される。
【0119】
In vivoでは、MC生物学におけるIL-10の機能もまた異なっている。粘膜組織では、IL-10はIgE誘導性MC活性化を促進する。しかし、皮膚では、MC由来のIL-10は、紫外線誘導性免疫抑制、接触性皮膚炎、およびCHSのモデルにおける炎症の抑制と関連している。本発明者らの研究は、自己分泌IL-10の非存在はPCAの初期段階には影響しなかったが、TNFレベルはPCAの後期段階で上昇した。重要なことに、NKAがPCAを下方制御する能力にはIL-10が必要であった。これらのデータを総合すると、in vivoにおけるMCとIL-10の関係は組織に依存する可能性があり、皮膚ではIL-10はMC機能を調節していることが示唆される。
【0120】
NKAまたはNKAの天然切断型(NKA(4-10))をMCで研究した以前の研究では、その効果は示されていない。これらの研究は、MC活性化のための読み取りとしてβ-ヘキソサミニダーゼまたはヒスタミン放出に依存していた。これらの研究と一致して、BMMCまたはPMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出に対するNKAの効果は見出されなかった。しかしながら、初期MC活性化の他の特徴を含めるために研究を拡張したところ、NKAはアビジン顆粒の外在化を遮断することが見出されたが、それはPMCにおいてのみであった。BMMCおよびPMCは共に同レベルのNK2Rを発現しており、この差の要因として受容体の利用可能性は除外された。PMCは基本的にBMMCより成熟しており、成熟に関連したシグナル伝達経路がこの違いを考える上で重要かもしれない。この発見は、活性化の下流の初期事象を評価する際に、複数の種類のMCを用いることの重要性を強調している。
【0121】
MCにおいて古典的に評価されているもの以外のNKAによって影響を受ける可能性のあるタンパク質を同定するために、全セクレトームをスクリーニングした。このアプローチによって、カルパインIを含むNKAの存在下におけるMCからの差示的なタンパク質放出が明らかになった。重要なことに、カルパイン活性は、IgE活性化BMMCおよびPMCの両方の上清から容易に検出可能であり、ABCA1を介したカルパインの放出は、成熟状態に関わらず、異なる種類のMCが細胞外環境を調節するために利用する共通の機構であり得る。
【0122】
細胞外環境においてカルパインの基質が利用可能になると、炎症が増大し、免疫応答の結果に広く影響を及ぼす可能性がある。MC上清中のカルパイン活性とIL-10の間に逆相関があることが本明細書で実証されている。同様の関係は、MS患者の末梢血単核球および外傷性脳損傷のげっ歯類モデルでも指摘されている。他の研究では、IL-10はカルパインのようなシステインプロテアーゼによる分解を非常に受けやすく、T細胞上清をカルパインでパルスするとIL-10レベルが低下することが示されている。これらの知見に基づき、カルパインがIL-10を分解することが直接証明されている。この研究において、カルパインの活性とそれに続くIL-10の分解は、MC活性化後の初期事象と後の炎症性メディエータの放出とを結びつけており、外在化したカルパインが炎症を促進するという仮説を支持するものである。
【0123】
NKAは、グリブリド感受性ABCA1チャネルを介したMCからのプロテアーゼ放出の新しいモードを明らかにするために利用された。ABCA1レベルは、IgE誘導性活性化後、MCの細胞表面で増加した。これは、cAMP/PKAおよびPKCを含む、FcεRIの下流にある複数の経路の収束を反映している可能性がある。NKAおよびNK2Rシグナル伝達と細胞表面のABCA1とを結びつける正確な細胞内機構の解明は、本研究の範囲外である。しかし、NK2RのようなGPCRは、特定のGαサブユニットを介して相互作用し、PKAを活性化または調節する。下流のABCA1調節は、MCセクレトームを制御するためにGPCRによって利用される共通の機構である可能性がある。
【0124】
ABCA1は脂質トランスポーターとして最もよく特徴付けされているが、ABCA1活性に関連した免疫機能も記載されている。グリブリドによるABCA1活性の阻害は、インフラマソーム、TNFを含む炎症性メディエータの転写を阻害し、敗血症の糖尿病患者において抗炎症作的および保護的である。MCにおけるABCA1活性を評価する研究は限られているが、ABCA1の細胞表面への移行が脱顆粒および初期のサイトカイン放出に重要である可能性が示唆されている。ABCA1の阻害は、in vitroおよびin vivoでNKAの効果を反映することがここで実証された。ABCA1活性は、in vitroではIL-10の減少、TNFおよびIL-13の増加と関連し、PCAではMC反応の増加と関連していた。総合すると、ABCA1の活性化は炎症と関連しており、この経路を局所的に操作することが臨床的に重要であることが証明されるかもしれない。
【0125】
ニューロキニンAはTRPV1知覚神経線維から放出され、IL-10とカルパインの調節を介してMC反応を阻害する。定常状態では、マウスの皮膚におけるNKAレベルは低く、IL-10依存的にMCの活性化に伴って上方制御される。このフィードバックループは、最終的には炎症を抑制するが、末梢感覚神経線維の反応も抑制する可能性がある。後根神経節(DRG)はIL-10Rを発現しており、IL-10は神経障害性疼痛を抑制し、熱低感受性を低下させる。さらに、DRGはシステインプロテアーゼに直接反応する。MC反応の下方制御に加えて、NKA-カルパイン-IL10経路は、MC-ニューロンシナプス内の侵害受容器の活性化を抑制する可能性がある。この経路を利用することで、アレルギー性炎症を軽減するために、MCおよびニューロンの両方を標的とした新たな治療戦略が開けるかもしれない。
【0126】
参考文献
【0127】
【表1-1】
【0128】
【表1-2】
【0129】
【表1-3】
【0130】
【表1-4】
【0131】
【表1-5】
【0132】
【表1-6】
【0133】
【表1-7】
【0134】
【表1-8】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図6-6】
図6-7】
図6-8】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
【配列表】
2024518422000001.app
【国際調査報告】