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特表2024-518423改変された、3Dプリントされた対象物、及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】改変された、3Dプリントされた対象物、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240423BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240423BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/22 20060101ALN20240423BHJP
   A61L 27/02 20060101ALN20240423BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12M3/00 A
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/24
A61L27/38
A61L27/40
C12N5/071
C12N9/50
C12N9/16
A61L27/22
A61L27/02
C07K14/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568452
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022028161
(87)【国際公開番号】W WO2022236116
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,302
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516346377
【氏名又は名称】ラング バイオテクノロジー ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー キング
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ シアー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ ダフィ
(72)【発明者】
【氏名】アマン カー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス アルバレズ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B065AA90X
4B065BC41
4B065CA60
4C081AB11
4C081BA12
4C081BC01
4C081BC02
4C081CA081
4C081CA181
4C081CD112
4C081CD121
4C081CD34
4C081CF26
4C081DC03
4C081DC11
4C081EA02
4C081EA16
4H045AA20
4H045AA50
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA60
(57)【要約】
高分子材料の機械的及び生物学的特性を改変する方法が本明細書に提供される。また、前記特性を有する高分子材料を含む組成物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)部分、及びそれらの混合物を含む、高分子足場を改変する方法であって、前記方法が、
前記高分子足場を提供すること;及び、
前記足場を加水分解剤又はタンパク質分解剤と接触させること;
を含む、方法。
【請求項2】
細胞に対する高分子足場の親和性を高める方法であって、前記高分子足場が、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)部分、及びそれらの混合物を含み、
前記方法が、前記高分子足場を提供すること;及び、前記高分子足場を加水分解剤又はタンパク質分解剤と接触させること;を含む、
方法。
【請求項3】
前記高分子足場が重合ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート部分を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記重合ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート部分がPEGDA3400、PEGDA575、又はそれらの混合物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子足場がさらに重合コラーゲンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合コラーゲンがコラーゲン-メタクリルアミド(colMA)部分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高分子足場がさらに重合ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記高分子足場がさらに重合UV開始剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触工程において、前記足場を加水分解剤に接触させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記加水分解剤が水酸化物イオンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解剤の濃度が、約1mM~約25mM、約25mM~約50mM、約50mM~約100mM、約100mM~約150mM、約150mM~約300mM、約300mM~約500mM、約500mM~約1M、約1M~約5M、又は約5M超である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記足場を、約1分間~約30分間、約30分間~約1時間、約1時間~約2.5時間、約2.5時間~約5時間、約5時間~約7.5時間、約7.5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約24時間~約2日間、約2日間~約4日間、約4日間~約8日間、約8日間~約12日間、約12日間~約30日間、又は約30日間超、前記加水分解剤に接触させる、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程において、前記足場をタンパク質分解剤に接触させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質分解剤がエステラーゼ、コラゲナーゼ、ストロメライシン、ゼラチナーゼ、又は加水分解酵素から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質分解剤の濃度が、約0.1U~約1U、約1U~約2.5U、約2.5U~約5U、約5U~約7.5U、約7.5U~約10U、約10U~約15U、又は約15U超である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記足場を、約1時間、約1時間~約2.5時間、約2.5時間~約5時間、約5時間~約7.5時間、約7.5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約24時間~約2日間、約2日間~約4日間、約4日間~約8日間、約8日間~約12日間、約12日間~約30日間、又は約30日間超、前記タンパク質分解剤に接触させる、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記足場が3Dプリントされた足場である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記足場が中実である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記足場が流路及び壁を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記流路が約200μm~約500μmの幅を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記壁が約150μm~約400μmの幅を有する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記足場の、加水分解剤又はタンパク質分解剤との接触が、細胞に対する前記足場の親和性を高める、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及びそれらの混合物から選択される、請求項2~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項の方法によって生成される、高分子足場。
【請求項25】
加水分解又はタンパク質分解剤;並びに、
重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)部分、及びそれらの混合物を含む、高分子足場;
を含む、組成物。
【請求項26】
さらに細胞を含む、請求項24に記載の高分子足場、又は請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記細胞が肺線維芽細胞(LFN)、ブタ大動脈内皮細胞(PAEC)、小気道上皮細胞(SAEC)、又はそれらの混合物を含む、請求項26に記載の高分子足場又は組成物。
【請求項28】
細胞のアクチン被覆率(actin coverage)を高める方法であって、前記細胞を、請求項24~27のいずれか1項に記載の高分子足場又は組成物に接触させることを含む、方法。
【請求項29】
前記細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及びそれらの混合物から選択される、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年5月6日に出願された米国仮出願第63/185,302号に対する優先権を主張する。参照により、その全体の内容が本明細書に組み込まれたものとする。
【背景技術】
【0002】
本開示は、3Dプリントされた対象物の後加工処理として、化学的手段及び加水分解酵素の両者を用いて、その生体適合性及び機械特性を調整することを含む。これらの処理は、(水酸化物塩(NaOH又はKOH)などの塩基による、エステラーゼ酵素による、又はプロテアーゼを用いたタンパク質分解による)加速された加水分解の結果、細胞接着にとって有利な化学部分(chemical moieties)が生成されることを前提とする。これらの処理の効果により、材料の架橋密度の変化ももたらされる。3Dプリントされた対象物の後処理を行い、その特性を改変することができれば、あらかじめ所望の特性を有する出発原料で材料を3Dプリントすること、あるいは材料の特性を変えるためにプリント方法自体を改変することに対する、代替手段が提供されることとなる。
【0003】
材料を用いて高分子足場を提供し、それを本明細書に記載のように処理して活性化することで足場に細胞を引き付け、その足場を利用して、足場の周囲に細胞の集団から組織を増殖させることができる。
【発明の概要】
【0004】
一態様は、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)部分、及びそれらの混合物を含む、高分子足場を改変する方法であって、前記方法が、前記高分子足場を提供すること;及び、前記足場を加水分解剤又はタンパク質分解剤と接触させること;を含む方法である。
【0005】
一態様は、細胞に対する高分子足場の親和性を高める方法であって、前記高分子足場が、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)部分、及びそれらの混合物を含み、前記方法が、前記高分子足場を提供すること;及び、前記高分子足場を加水分解剤又はタンパク質分解剤と接触させること;を含む、方法である。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記高分子足場は、重合ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート部分を含む。いくつかの実施形態において、前記重合ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート部分は、PEGDA3400、PEGDA575、又はそれらの混合物を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記高分子足場は、さらに重合コラーゲンを含む。いくつかの実施形態において、前記重合コラーゲンは、コラーゲン-メタクリルアミド(colMA)部分を含む。いくつかの実施形態において、前記高分子足場は、さらに重合ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)を含む。いくつかの実施形態において、前記高分子足場は、さらに重合UV開始剤を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記接触工程において、前記足場を加水分解剤と接触させる。いくつかの実施形態において、前記加水分解剤は、水酸化物イオンを含む。いくつかの実施形態において、前記加水分解剤の濃度は、約1mM~約25mM、約25mM~約50mM、約50mM~約100mM、約100mM~約150mM、約150mM~約300mM、約300mM~約500mM、約500mM~約1M、約1M~約5M、又は約5M超である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記足場を、約1分間~約30分間、約30分間~約1時間、約1時間~約2.5時間、約2.5時間~約5時間、約5時間~約7.5時間、約7.5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約24時間~約2日間、約2日間~約4日間、約4日間~約8日間、約8日間~約12日間、約12日間~約30日間、又は約30日間超、前記加水分解剤に接触させる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記接触工程において、前記足場をタンパク質分解剤と接触させる。いくつかの実施形態において、前記タンパク質分解剤は、エステラーゼ、コラゲナーゼ、ストロメライシン、ゼラチナーゼ、又は加水分解酵素から選択される。いくつかの実施形態において、前記タンパク質分解剤の濃度は、約0.1U~約1U、約1U~約2.5U、約2.5U~約5U、約5U~約7.5U、約7.5U~約10U、約10U~約15U、又は約15U超である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記足場を、約1時間、約1時間~約2.5時間、約2.5時間~約5時間、約5時間~約7.5時間、約7.5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約24時間~約2日間、約2日間~約4日間、約4日間~約8日間、約8日間~約12日間、約12日間~約30日間、又は約30日間超、前記タンパク質分解剤に接触させる。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記足場は3Dプリントされた足場である。いくつかの実施形態において、前記足場は中実(solid)である。いくつかの実施形態において、前記足場は流路及び壁を有する。いくつかの実施形態において、前記流路は約200μm~約500μmの幅を有する。いくつかの実施形態において、前記壁は約150μm~約400μmの幅を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記足場の、加水分解剤又はタンパク質分解剤との接触は、細胞に対する前記足場の親和性を高める。いくつかの実施形態において、前記細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及びそれらの混合物から選択される。
【0014】
一態様において、本明細書のいずれかの実施形態の方法によって製造された高分子足場が提供される。
【0015】
一態様において、加水分解又はタンパク質分解剤;並びに、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)部分、及びそれらの混合物を含む、高分子足場;を含む、組成物が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記高分子足場又は組成物は、さらに細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記高分子足場又は組成物の細胞は、肺線維芽細胞(LFN)、ブタ大動脈内皮細胞(PAEC)、小気道上皮細胞(SAEC)、又はそれらの混合物を含む。
【0017】
一態様において、細胞のアクチン被覆率(actin coverage)を高める方法であって、前記細胞を本明細書のいずれかの実施形態の高分子足場又は組成物に接触させることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記高分子足場又は組成物においては、前記細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及びそれらの混合物から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、左から右に向かって、5U/mLコレステロールエステラーゼ、PBS、又は50mM NaOHで処理した、プリントされたインクAの円板を示す。
図2図2A~2Cは、円板内に垂直支柱を有する、プリントされたフィッシャー円板(fischer disc)である。図2Aはコンピューター生成モデル、図2Bは明視野像、図2Cは円板のマイクロCTスキャンである。
図3図3A~3Cは、インクAで作成したプリントされた円板を、エステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに、及びガラス対照に、接着したヒト肺線維芽細胞(培養1日後)である。図3Aは、細胞被覆率の定量である。図3Bは、細胞伸展の定量である。図3Cは、細胞密度の定量である。
図4図4A~4Bは、インクAで作成したプリントされた円板をエステラーゼ、NaOH、及びPBSで処理したものに、及びガラス対照に、接着したヒト肺線維芽細胞(培養1日目の後(図4A)及び4日目の後(図4B))である。
図5図5A~5Cは、インクAで作成したプリントされた対象物をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに、及びガラス対照に、接着したヒト肺線維芽細胞(培養4日後)である。図5Aは、細胞被覆率の定量である。図5Bは細胞伸展の定量である。図5Cは細胞密度の定量である。
図6図6は、インクAで作成したプリントされた対象物をNaOH(左)及びPBS(右)で処理したものに接着したヒト肺線維芽細胞(培養4日後)である。
図7図7A~7Cは、インクAで作成したプリントされた円板をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに圧縮試験を行った結果である。図7Aはヤング率を示す。図7Bは極限ひずみ(ultimate strain)を示す。図7Cは極限応力(ultimate stress)を示す。
図8図8A~8Cは、インクAで作成したプリントされたドッグボーン(dog bones)をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに引張試験を行った結果を示す。図8Aはヤング率を示す。図8Bは極限引張ひずみを示す。図8Cは極限引張応力を示す。
図9図9は、実施例1の引張試験で用いた装置及び被検試料を示し、プリントされた対象物インクAをNaOHで処理したものを伸長して図8A~8Cの結果を得た際の様子である。
図10図10は、実施例1の引張試験で用いた装置及び被検試料を示し、インクAでプリントされた対象物のPBS処理済試料を伸長して図8A~8cの結果を得た際の様子である。
図11図11は、インクA又はCで作成したプリントされた円板をPBS又はNaOHで処理したものに、及びガラス対照に、接着したヒト肺線維芽細胞(培養1日後)を示す。
図12図12A~12Cは、インクA及びインクCで作成したプリントされたダイブド(dived)をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに、及びガラス対照に、接着したヒト肺線維芽細胞(培養1日後)を示す。図12Aは細胞被覆率の定量である。図12Bは細胞伸展の定量である。図12Cは細胞密度の定量である。
図13図13は、インクA及びCで作成したプリントされた対象物をNaOH又はPBSで処理したものに接着したヒト肺線維芽細胞(培養4日後)を示す。
図14図14A~14Cは、インクA及びインクCで作成したプリントされた円板をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに、及びガラス対照に、接着したヒト肺線維芽細胞(培養4日後)を示す。図14Aは細胞被覆率の定量である。図14Bは細胞伸展の定量である。図14Cは細胞密度の定量である。
図15図15A~15Dは、プリントされたドッグボーンをインクAで作成して0.1M NaOHで処理したもの(n=6)(図15A)、インクAで作成してPBSで処理したもの(n=6)(図15B)、インクCで作成して0.1M NaOHで処理したもの(n=4)(図15C)、及び、インクCで作成してPBSで処理したもの(n=6)(図15D)についての、引張ひずみ変位に対する引張応力のプロットを示す。この引張ひずみ変位に対する引張応力のプロットは、図9及び10に記載の装置を用いて得られた。
図16図16は、インクA及びインクCで作成したプリントされたドッグボーンをNaOH又はPBSで処理した場合のヤング率を示す。ヤング率は、図15A、15B、15C、及び15Dで得られた引張ひずみ変位に対する引張応力のプロットを使用して得られた。
図17図17A~17Bは、NaOH又はPBSで処理したインクA及びインクC試料の引張機械特性の変化を示す。図17Aは極限引張ひずみを示し、図17Bは極限引張応力を示す。引張機械特性は、図15A、15B、15C、及び15Dで得られた引張ひずみ変位に対する引張応力のプロットを使用して得られた。
図18図18は、プリントされたインクAのフィッシャー円板をNaOH、エステラーゼ、及びPBSで処理したものに対する、及びガラス対照に対する、ヒト肺動脈内皮細胞の接着(4日目の後)を示す。
図19図19A~19Cは、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに対する、又はガラス対照に対する、ヒト肺動脈内皮細胞の接着(培養4日後)を示す。図19Aは細胞伸展の定量である。図19Bは細胞伸展の定量である。図19Cは細胞被覆率の定量である。
図20図20は、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をNaOH、エステラーゼ、及びPBSで処理したものに対する、及びガラス対照に対する、ヒト小気道上皮細胞の接着(培養4日後)を示す。
図21図21A~21Cは、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに対する、又はガラス対照に対する、ヒト小気道上皮細胞の接着(4日目の後)を示す。図21Aは細胞伸展の定量である。図21Bは細胞密度の定量である。図21Cは細胞被覆率の定量である。
図22図22は、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をNaOH、エステラーゼ、及びPBSで処理したものに対する、及びガラス対照に対する、ヒト肺動脈内皮細胞の接着(培養7日後)を示す。
図23図23A~23Cは、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに対する、又はガラス対照に対する、ヒト肺動脈内皮細胞の接着(培養7日後)を示す。図23Aは細胞伸展の定量である。図23Bは細胞密度の定量である。図23Cは細胞被覆率の定量である。
図24図24は、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をNaOH、エステラーゼ、及びPBSで処理したものに対する、及びガラス対照スライドに対する、小気道上皮細胞のヒトの接着(7日目の後)を示す。
図25図25A~25Cは、インクAで作成したプリントされたフィッシャー円板をエステラーゼ、NaOH、又はPBSで処理したものに対する、又はガラス対照に対する、小気道上皮細胞のヒトの接着(7日目の後)を示す。図25Aは細胞伸展の定量である。図25Bは細胞密度の定量である。図25Cは細胞被覆率の定量である。
図26図26A~26Cは、酵素への曝露を行わなわず、水酸化ナトリウムへの曝露を行い、コレステロールエステラーゼへの曝露を行った実施例4の、プリントされたインクAのフィッシャー円板の圧縮機械特性を示す。図26Aはヤング率を示す。図26Bは極限ひずみを示す。図26Cは極限応力を示す。
図27図27は、酵素への曝露を行わなわず、NaOHへの曝露を行った実施例における、プリントされたインクAのフィッシャー円板上に播種されたヒト肺線維芽細胞の実施形態を示す。
図28図28は、酵素への曝露を行わなわず、コレステロールエステラーゼへの曝露を行った実施例における、プリントされたインクAのフィッシャー円板上に播種されたヒト肺線維芽細胞の実施形態を示す。
図29図29は、酵素への曝露を行わなわず、NaOHへの曝露を行った実施例における、プリントされたインクCのフィッシャー円板上に播種されたヒト肺線維芽細胞の実施形態を示す。
図30図30A~30Cは、酵素への曝露を行わなわず、コレステロールエステラーゼへの曝露を行った実施例における、インクA、C、及びDのプリントされた対象物の圧縮機械特性を示す。図30Aはヤング率を示す。図30Bは極限ひずみを示す。図30Cは極限応力を示す。
図31図31は、流路厚の異なるフィッシャー円板インクAの表面ネットワークの走査電子顕微鏡像を示す。
図32図32A~32Cは、水酸化ナトリウムがコレステロールエステラーゼよりもインクAフィッシャー円板上へのヒト肺線維芽細胞の接着を増加させることを示す。細胞は、実施例2に記載されるものと同一の手順に従って播種した:手順、工程1~7、ただし、2.5mL/円板ではなく円板あたり2mLの溶液を用いた。
図33図33A~33Cは、より架橋されたインクのための流路が存在する場合、水酸化ナトリウム又はコレステロールエステラーゼによる加水分解で圧縮機械特性がより低下することを示す。特性は、実施例2に記載される機械的評価手順に従って試験した。
図34図34は、各種壁厚と及び流路厚のフィッシャー足場を示す。赤い四角は、調査対象の足場の壁と流路厚を示す。
図35図35A~35Dは、100μm(図35A)、300μm(図35B)、400μm(図35C)、及び500μm(図35D)の各流路を有する、本開示の足場の代表的なインクAフィッシャー円板の明視野像を示す。インクAフィッシャー円板で正確にプリントするためには300μmの流路が必要である。
図36図36A~36Cは、300μmの流路と200μmの壁(図36A)、400μmの流路と200μmの壁(図36B)、又は500μmの流路と200μmの壁(図36C)を有する、インクAで作成した円板のモデル(上段)及びマイクロCTスキャン像(下段)を示す。
図37図37A~37Cは、中実、300μm流路、400μm流路、及び500μm流路の、プリントされたフィッシャー円板の圧縮機械特性を示す。図37Aはヤング率を示す。図37Bは極限ひずみを示す。図37Cは極限応力を示す。
図38図38A~38Cは、100μm、200μm、300μm、及び400μmの壁を有する、インクAのプリンターフィッシャー円板の圧縮機械特性を示す。図38Aはヤング率を示す。図38Bは極限ひずみを示す。図38Cは極限応力を示す。
図39図39A~39Bは、PBS(図39A)又はNaOH(図39B)で処理した、プリントされた複数のインク組成物の円板の膨潤率を示す。
図40図40A~40Cは、水酸化ナトリウムが、複数のインクに関してフィッシャー円板の圧縮機械特性を低下させることを示す。図40Aはヤング率を示す。図40Bは極限ひずみを示す。図40Cは極限応力を示す。
図41図41A~41Cは、水酸化ナトリウムが、複数のインクに関してフィッシャードッグボーンの引張機械特性を低下させることを示す。図41Aはヤング率を示す。図41Bは極限ひずみを示す。図41Cは極限応力を示す。
図42図42A~42Cは、コレステロールエステラーゼが、複数のインクに関してフィッシャー円板の圧縮機械特性を低下させることを示す。図42Aはヤング率を示す。図42Bは極限ひずみを示す。図42Cは極限応力を示す。
図43図43A~43Cは、水酸化ナトリウムが、より架橋されていないインクに関してLFN細胞の接着を増加させることを示す。図43Aはアクチン面積率を示す。図43Bはアクチン面積を示す。図43Cは細胞密度を示す。
図44図44は、各種インク、処理、及び構造について、圧縮機械特性(極限ひずみ及び極限応力)、引張機械特性(極限引張ひずみ及び極限引張応力)、細胞接着(LFN、PAEC、及びSAEC)、及び膨潤が、しきい値を上回るか、適合するか、又は下回るかを示す表を示す。各試験パラメータのしきい値の概略を下段に示す。
図45図45A~45Dは、100μmの壁(図45A)、200μmの壁(図45B)、300μmの壁(図45C)、及び400μmの壁(図45D)を有する、プリントされたインクAのフィッシャー円板の代表像を示す。インクAフィッシャー円板で正確にプリントするためには200μmの壁が必要である。
図46図46A~46Cは、垂直支柱がインクAフィッシャー円板上でヤング率を減少させた一方で(図46A)、極限応力を増加させることを示す(図46C)。極限ひずみを図46Bに示す。特性は、実施例2に記載される機械的評価手順に従って試験した。
図47図47A~47Cは、各種流路サイズを有するフィッシャー円板の加水分解酵素処理の、各種流路厚の加水分解対象材料の圧縮ヤング率(図47A)、圧縮極限ひずみ(図47B)、及び圧縮極限応力(図47C)に対する影響を示す。特性は、実施例2に記載される機械的評価手順に従って試験した。
図48図48は、実施例に従った引張試験のためのドッグボーン試料を示す。
図49図49A~49Bは、引張強度試験におけるドッグボーン試料を示す。図49Aは装置に固定した試料を示し、図49Bは装置によって力を加えた際に破断した試料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
出願者は、ポリエチレンオキシドジアクリレート及びタンパク質含有インクを含むインク組成物で作成された高分子足場などのプリントされた対象物が、水酸化ナトリウム又はコレステロールエステラーゼに曝露された場合に、強化された細胞接着性と改変された機械特性とを示すことを見出した。したがって、本開示の方法は、非生物活性3D対象物の3Dプリントに使用することができ、その対象物は特定の化学物質を用いて生物活性にし、その膨潤及び機械特性を調節したものであってよい。
【0020】
これらのインクを用いて3Dプリントされた対象物について、出願者は、対象物の水酸化ナトリウム処理によって細胞接着が強化され、機械特性及び膨潤も大きく変化した一方で、コレステロールエステラーゼは対象物への細胞接着を強化しながらも機械特性及び膨潤の変化が最小限であったことを見出した。架橋の程度を、材料の特性の調節に使用することもできた。より架橋されたインクでは、NaOH及びエステラーゼ処理を行った場合に中実円板(solid discs)の機械特性の減少が少なかった。3Dプリントされた試料の流路が大きく、壁厚が小さい場合、処理の際に極限ひずみが増加し、ヤング率及び極限応力が減少する。3Dプリントされた対象物をNaOH処理した結果、実施例でさらに詳しく述べるように、肺線維芽細胞(LFN)、ブタ大動脈内皮細胞(PAEC)、及び小気道上皮細胞(SAEC)の細胞接着が増加した。
【0021】
高分子足場組成物
本開示の特定の実施形態は、式(I):
【化1】
[式中、
各RはH又はCHから独立に選択され;
各XはO又はNHから独立に選択され;
nは1~500である]
の重合部分を1つ以上含む、組成物、3Dプリントされた対象物、又は高分子足場を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記重合部分の1つはRが両者ともHである。いくつかの実施形態において、前記重合部分の1つはRが両者ともCHである。いくつかの実施形態において、前記重合部分の1つはXが両者ともOである。いくつかの実施形態において、前記重合部分の1つはXが両者ともNHである。いくつかの実施形態において、前記重合部分の1つは、一方のXがOであり、他方のXがNHである。いくつかの実施形態において、各重合部分のnは独立に1~10、10~25、25~50、50~75、75~100、又は100~150である。
【0023】
いくつかの実施形態において、足場は、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタ)アクリルアミド部分、及びそれらの混合物を含む。
【0024】
これらの部分中の各種官能基としては、異なった反応を示すエーテル類、アミド類、及びエステル類が挙げられる。スキーム1に示すように、エーテル類は酸化により分解されやすく、エステル類は加水分解されやすく、アミド類は生体安定性である。PEGDAはエーテル骨格の酸化によってではなく、末端基エステル結合の加水分解によって主に分解される。
【化2】
【0025】
いくつかの実施形態において、足場、対象物、又は組成物は、さらにコラーゲン及び/又は重合(メタ)アクリル化コラーゲン(ColMA(メタクリル化コラーゲン))を含む。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリル化コラーゲンは、遊離アミン、例えばリジンに対応する部位に(メタ)アクリルアミドを含むコラーゲンを含む。いくつかの実施形態において、コラーゲンは(メタ)アクリレート部分で官能化されたアミンを含み、官能化されたアミンにおいて(メタ)アクリルアミドを有する。いくつかの実施形態において、官能化度、すなわち官能化されたコラーゲンのアミン基の割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%である。
【0026】
いくつかの実施形態において、重合部分のいずれか1つ以上は、足場、組成物、又はプリントされた対象物の総重量に対する重量換算で、約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、又は約90%~約100%存在してよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、コラーゲン及び/又は重合(メタ)アクリル化コラーゲンは、足場、組成物、又はプリントされた対象物の総重量に対する重量換算で、約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、又は約90%~約100%存在してよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記足場は3Dプリントされた足場である。当業者は、当該分野で公知のプリント法を理解するであろう。その限定されない例としては、選択的レーザー焼結(SLS)法、熱溶解積層(FDM)法、3Dインクジェット印刷法、デジタルライトプロセッシング(DLP)法、及びステレオリソグラフィー法が挙げられる。熱溶解積層(FDM)法においては、CADファイルによって定義された工具経路をたどる押出ヘッドによってインクが積層される。材料は25μm厚の微細な層として積層され、下から上へ一度に1層ずつ部分が組み立てられる。いくつかの実施形態において、層は10μm~約50μmの厚みである。熱溶解積層モデリング法を基盤とするいくつかの3Dプリンターは、2つの異なる材料を押し出すことが可能なデュアル印刷ノズルヘッドを備え、その一方の材料は構築材料(building material)であり、もう一方は支柱などの支持材である。この支持材は水で洗浄することができる。
【0029】
3Dインクジェット印刷は、スピード、コスト、解像度、及び使いやすさにおいて、効果的に最適化されており、工学的設計の概念段階から初期機能試験までの期間における視覚化に適したものである。インクジェット印刷法における複雑な3D品は、インク組成物から、噴射(jetting)とその後のUV/Vis光を用いて製造される。インクジェット印刷法における光硬化インクは、CADファイルによって定義されるパターンでいくつかのノズルから構築プラットフォーム上に噴射されるものであってよい。
【0030】
3D印刷技術の中でも最も効率的な技術として、デジタルライトプロセッシング(DLP)法及びステレオリソグラフィー(SLA)が挙げられる。DLP又はSLA法を用いた3Dプリンターでは、インク材料をバット上に積層するか、又はシート上に拡げ、インクの所定の範囲又は表面を、デジタルマイクロミラー装置又は回転鏡で制御された紫外-可視(UV/Vis)光に曝露する。DLP法では、追加の層を繰り返し又は連続で積層して各層を硬化させ、これを所望の3D品が形成されるまで行う。SLA法はDLP法と異なり、インクを放射ビーム(radiation beam)のラインによって固化する。3D印刷の他の方法は、3D Printing Techniques and Processes by Michael Degnan, Dec 2017, Cavendish Square Publishing, LLCに見出すことができる。この開示は、参照により本明細書に組み込まれたものとする。
【0031】
特定の実施形態において、足場は実質的に中実である(例えば、流路を含まない、又は特別な内部パターン無しにプリントされる)。他の実施形態において、前記足場は実質的に中実ではない。例えば、足場が実質的に中実ではない場合、足場は、流路及びそれら流路を定義する壁などを有しうる。いくつかの実施形態において、これらの流路及び壁は、その特定の流路及び壁の3D印刷によって形成されたものである。流路を含む特定の実施形態において、流路は約200~約500μm(例えば、約200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、又は500μm)の幅を有する。いくつかの実施形態において、流路は複数の幅を有することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、流路の少なくとも50、60、70、80、90、95、98、99、又は100%が本明細書の実施形態で議論される幅を有する。壁を含む特定の実施形態において、壁は約150~約400μm(例えば、約150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、又は400μm)の幅を有する。いくつかの実施形態において、壁は複数の幅を有することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、壁の少なくとも50、60、70、80、90、95、98、99、又は100%が本明細書の実施形態で議論される幅を有する。いくつかの実施形態において、足場は実質的に中実の部分と実質的に中実でない部分とを含む。これらの実施形態には、例えば、上記実施形態のような、流路及びそれら流路を定義する壁を含む、実質的に中実でない部分が含まれる。
【0032】
特定の実施形態の高分子足場は、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート部分、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリルアミド部分、重合ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタ)アクリルアミド部分、又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、前記高分子足場は、重合ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート部分を含む。いくつかの実施形態において、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリルアミド、又はポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタ)アクリルアミドの重量平均分子量(M)は、約400Da~約20,000Da(例えば約500Da~約10,000Da、又は約500Da~約5000)である。いくつかの実施形態において、前記Mは、約400Da、500Da、600Da、700Da、800Da、900Da、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、6000Da、6100Da、6200Da、6300Da、6400Da、6500Da、7000Da、7500Da、8000Da、8500Da、9000Da、9500Da、10,000Da、15,000Da、又は20,000Daである。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示の足場、対象物、又は組成物は、架橋ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、前記ポリマーは、ポリマー中の架橋可能な部分に対する割合として、約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、又は約90%~約100%架橋されている。架橋可能な部分としては、(メタ)アクリレート基などが挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示の足場、対象物、又は組成物は、それを通る複数の実質的に平行な支柱を有する。支柱はフィッシャーフォーム(Fischer foam)を回転させ、スライスすることによって生成してよい。三重周期最小表面(triple period minimal surface)をいくつか並べて直線中実トンネル(straight-line solid tunnels)を形成することができ、その結果、支柱の形成が可能となる。支柱は、極限ひずみ又はヤング率に影響することなく、極限応力を増加させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、足場、インク、又は組成物は、さらなる重合部分、又は、少なくとも1つの、水と相溶性のある有機ポリマー、アルコールと相溶性のある有機ポリマー、他の添加物、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される他の添加物をさらに含んでいてよい。前記ポリマーは、ホモポリマー又は(例えばクロスポリマー(cross-polymer)もしくは任意のコモノマー分布の共重合体などであるが限定されない)ヘテロポリマーであってよく、直鎖ポリマー、分岐鎖ポリマー、超分岐ポリマー、デンドリマー、又は任意の程度架橋したポリマーであってよい。適したポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン);ポリカプロラクトン;ポリビニルアルコール;ゼラチン;メチルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリエチレンオキシド;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;ポリアクリル酸の塩類;ポリメタクリル酸の塩類;ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリビニルアルコール;ポリ(メタクリル酸)無水物、ポリ(アクリル酸)無水物、及びポリセバシン酸無水物などのポリ酸無水物;コラーゲン;ポリ(ヒアルロン酸);ヒアルロン酸含有ポリマー及びコポリマー;ポリペプチド;デキストラン;硫酸デキストラン;キトサン;キチン;アガロースゲル;フィブリンゲル;大豆由来ヒドロゲル、及びポリ(アルギン酸ナトリウム)などのアルギン酸系ヒドロゲル;並びにこれらの組み合わせ;が挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は、さらに重合ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、又はリチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、添加物は光開始剤を含む。光開始剤は特に限定されない。いくつかの実施形態においは、例えば、0~60秒間の開始時間を可能とするものであってよい。いくつかの実施形態において、光開始剤は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、トリメチルベンゾイル系光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュアクラスのフォトイニシエータ、ルテニウム、及びリボフラビン、又はそれらの混合物を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、足場又は組成物は、さらに1種以上の、UV381A、UV381B、UV382A、又はUV386Aなどの追加の紫外可視色素を含む。3桁の数字は、色素を可視化する波長を示す。光活性色素は300nm~420nmの間の吸光度スペクトルを持つUV色素であってよい。光活性色素は300nm~400nmの波長域を有するものであってよい。光活性色素は非細胞毒性であってよい。光活性色素は分子構造にベンザイン環を含んでいてよい。光活性色素はキノロンイエロー、UV色素、又はそれに類似した分子構造を有する色素であってよい。光活性色素はUV386A色素であってよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、足場又は組成物は、さらに追加の免疫抑制薬又は生物学的製剤、例えばプレドニゾン、タクロリムス(プログラフ)、シクロスポリン(ネオーラル)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、イムラン(アザチオプリン)、又はラパミューン(ラパマイシン、シロリムス)などを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記のさらなる重合部分又は添加剤のいずれか1つ以上は、それぞれの例において独立に、足場、組成物、又はプリントされた対象物の総重量に対する重量換算で、約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、又は約90%~約100%存在してよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、組成物又は足場はさらに細胞を含み、それらは足場に接着されてもよい。細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及びそれらの混合物から選択されてよい。いくつかの実施形態において、前記足場は3Dプリントされた足場である。いくつかの実施形態において、高分子足場は、実質的に円板、球、円筒、角柱、立方体、直方柱、三角錐、四面体、又は円錐の形状である。いくつかの実施形態において、高分子足場は、臓器又は臓器の断片と実質的に同じ形状、サイズ、及び/又は同一の相対寸法を有していてよく、臓器の例として、腎臓、心臓、肝臓、肺、脾臓、脳、血管、胆嚢、胃、膵臓、膀胱、骨格骨、軟骨、皮膚、毛包、腸、筋肉、喉頭、又は咽頭が挙げられる。
【0041】
方法
一態様において、本明細書に開示される高分子足場を改変する方法が提供される。この方法は、足場に加水分解剤又はタンパク質分解剤を接触させることを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、足場の改変は細胞に対する足場の親和性を高める。
【0042】
他の態様において、細胞のアクチン被覆率を高める方法の方法が提供される。この方法は、細胞を本明細書に開示される高分子足場と接触させることを含む。細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及びそれらの混合物から選択されてよい。
【0043】
加水分解剤は、水酸化物又は水酸化物源(例えば、LiOH、NaOH、Be(OH)、Mg(OH)、KOH、B(OH)、Fe(OH)、NHOH、又はAl(OH))から選択してよい。いくつかの実施形態において、足場に接触させる溶液中の前記加水分解剤の濃度は、約1mM~約25mM、約25mM~約50mM、約50mM~約100mM、約100mM~約150mM、約150mM~約300mM、約300mM~約500mM、約500mM~約1M、約1M~約5M、又は約5M超である。
【0044】
いくつかの実施形態において、加水分解剤は触媒又は金属添加物を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、Ce(IV)、Co(II)、Co(III)、Cu(II)、Fe(III)、Ln(III)、Ni(II)、Mo(IV)、Pd(II)、Zn(II)、Zr(IV)、Eu(III)、Hf(IV)、Ce(III)、Eu(III)、La(III)、Tb(III)、Y(III) Lu(III)、Tb(III)、Tm(III)、Yb(III)、セリウム(IV)、KZn[Fe(CN)・HO、NiMo/γ-Al、Ni(NO・6HO、(NHMo24・7HO、PIリポソームにおけるY(III)、及びPIを含む(PI-laden)赤血球膜中のLa(III)、を含む錯体又は化合物を含んでいてよい。
【0045】
タンパク質分解剤は、コレステロールエステラーゼなどのエステラーゼを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、加水分解酵素、コラゲナーゼ、ストロメライシン、プロテイナーゼK、ペプチダーゼ(すなわちエキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ペプチジルジペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ)、プロテアーゼ(すなわちアスパラギン酸プロテアーゼ[すなわちペプシン及びカテプシンD]、システインプロテアーゼ[すなわちブロメライン、パパイン、フィカイン、ライノウイルス3C、TEVプロテアーゼ、及びTVMVプロテアーゼ]、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ[すなわちエンドプロテイナーゼ、asp-n、サーモリシン、コラゲナーゼ、及びジパーゼ(dipase)]、アスパラギン酸プロテアーゼ、並びにセリンプロテアーゼ[すなわちトリプシン、キモトリプシン、エンテロキナーゼ、WNVプロテアーゼ、エンドプロテイナーゼ、エラスターゼ、スブチリシン、プロテイナーゼK、トロンビン、及び第Xa因子)スレオニンプロテアーゼ、プロテイナーゼ、又はゼラチナーゼを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質分解剤は、活性エステラーゼ加水分解酵素、コラゲナーゼ、ストロメライシン、もしくはゼラチナーゼ断片;エステラーゼ加水分解酵素、コラゲナーゼ、ストロメライシン、もしくはゼラチナーゼ誘導体;又は、エステラーゼ加水分解酵素、コラゲナーゼ、ストロメライシン、もしくはゼラチナーゼの機能的等価物;を含む。いくつかの実施形態において、前記タンパク質分解剤は足場に接触させる溶液中に存在し、溶液中のタンパク質分解剤の濃度は、約0.1U~約1U、約1U~約2.5U、約2.5U~約5U、約5U~約7.5U、約7.5U~約10U、約10U~約15U、又は約15U超である(UはU/mLである)。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記接触は、約1時間~約2.5時間、約2.5時間~約5時間、約5時間~約7.5時間、約7.5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約24時間~約2日間、約2日間~約4日間、約4日間~約8日間、約8日間~約12日間、約12日間~約30日間、又は約30日間超である。
【0047】
定義
本明細書で使用される「ポリ(エチエレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタ)アクリルアミド」という語は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分を含む部分であって、前記PEG部分が一方の末端において(メタ)アクリレートで置換しており、他方の末端において(メタ)アクリルアミドで置換している、部分のことを指す。例えば、次の式の化合物である:
【化3】
式中、各Rは独立にH又はCHである。
【0048】
本明細書で使用される「重合コラーゲン-メタクリルアミド」又は「ColMA」という語は、重合コラーゲンタンパク質であって、前記タンパク質のアミンがアクリル基に置換しており、アクリルアミド部分を有する、重合コラーゲンタンパク質のことを指す。例えば、コラーゲンのリジン及びヒドロキシリジン残基は、そのアミン基が(メタ)アクリル酸無水物と反応して(メタ)アクリルアミド部分をコラーゲン上に生成していてもよい。
【0049】
本明細書で使用される「ヒドロキシプロピルアクリレート」(HPA)という語は、1-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、又は3-ヒドロキシプロピルアクリレートのことを指していてもよい。HPAが重合される場合、それは、前述のいずれのヒドロキシプロピルアクリレートの混合物を含むポリマーのことを指していてもよい。
【0050】
本明細書で使用される「LAP」という語は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネートのことを指し、これは3D印刷中にバイオインクの重合を可能にする光開始剤である。
【0051】
本明細書で「官能化度」という語は(メタ)アクリル化コラーゲン(ColMA)を参照して使用される。
【0052】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き、複数形の参照を含む。本明細書全体においては、特に断りのない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は排他的ではなく包括的に用いられる。「又は(or)」という語は、「いずれか(either)」などによって修飾されない限り、包括的である。したがって、文脈又は明示的な記載からそうではないことが明らかな場合を除き、「又は(or)」という語は、特定のリストのいずれか1つの要素のことを意味し、また、そのリストの要素の任意の組み合わせをも包含する。実施例内を除き、また特に断りのない限り、本明細書に用いられる成分の量又は反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において、「約」という語によって修飾されていると理解すべきである。
【0053】
「約(about)」という語は、当業者によって理解されるであろう。また、その語が使用される文脈によってある程度異なりうる。「約」が用いられる文脈において、その使用が当業者にとって不明確である場合、「約」はその特定の語の±10%までのことを意味する。例えば、いくつかの実施形態において、それは特定の語±5%を意味する。本明細書においては、「約」という語を前に付けた数値によって特定の範囲が表される。本明細書において、「約」という語は、その語に続く正確な数に対する字義通りの支持を提供するために、また、その語に続く数と近い、又はほぼ同じ数に対する支持を提供するためにも、用いられる。ある数が具体的に記載された数と近い、又はほぼ同じであるか決定する際、提示された文脈において、その記載されていない、近い又はほぼ同じ数は、具体的に記載された数と実質的に同等な量を提供する数であってよい。
【0054】
見出しは便宜のためにのみ提供するのであって、本発明をいかなるやり方でも限定すると解釈されるべきではない。別段の定義がない限り、本明細書で使用されている全ての技術的及び科学的用語は、当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を持つ。本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、本発明の範囲を制限することを意図したものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。本開示がより容易に理解できるように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義として、全ての数値表記、例えばpH、パーセンテージ、温度、時間、濃度、及び分子量(範囲含む)は、((+)又は(-))1、5、又は10%ずつ変化する近似値である。常に明示的に述べられているわけでなくとも、全ての数値表記の前に「約」という語が付いていると理解されるべきである。また、常に明示的に述べられているわけでなくとも、本明細書に記載されている試薬は単なる例示であり、それらと同等のものが当該技術で公知であり、詳細な説明全体に記載されていると理解されるべきである。
【0055】
数値の範囲が提供される場合、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き、その範囲の上限と下限との間における、下限の単位の小数第1位までの各中間値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載値もしくは中間値は、本発明に包含されるものと理解される。これらのより狭い範囲の上限及び下限は、独立して、前記のより狭い範囲内に含まれてもよく、記載された範囲における任意の具体的に除外された限度に従って、やはり本発明に包含される。記載された範囲が上下限の一方又は両方を含む場合、それら包含される限界のいずれか又は両方を除いた範囲もまた、本開示に含まれる。
【0056】
本明細書で使用される「処理(treatment)」又は「処理(treating)」という語は、足場、インク、プリントされた対象物、又は組成物を、その物理的又は生物学的特性を変化させる薬剤、例えば、NaOHなどの加水分解剤又はタンパク質分解剤で処理することを意味する。
【0057】
本明細書で使用される「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という語は、組成物及び方法が記載された要素を含むが、他を除外しないということを意図する。「~から本質的になる(consisting essentially of)」という語が組成物及び方法を定義するために使用される場合、記載された目的のための組み合わせに対して本質的に重要な他の要素をいずれも除外することを意味する。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、請求された発明の基本的及び新規特徴に実質的に影響を及ぼさない他の材料又は工程を除外しない。「~からなる」という語は、微量元素を超える他の成分及び実質的な方法工程を超える工程を除外することを意味する。これらの移行句それぞれによって定義される実施形態は本発明の範囲内である。ある実施形態がこれらの語のいずれか(例えば「含む(comprising)」)によって定義される場合、この開示は、当該実施形態の「~から本質的になる」及び「~からなる」などの代替的な実施形態も含むと理解されるべきである。
【0058】
「実質的に(substantially)」又は「本質的に(essentially)」という語は、「ほぼ全体的に」又は「ほぼ完全に」を意味し、例えば、何らかの特定の量の95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを超える量を意味する。
【0059】
本明細書に記載される実施形態を以下の実施例によってさらに説明するが、実施形態は決して以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0060】
実施例1:加速加水分解及びタンパク質分解を用いた後処理された足場の生物学的及び機械的評価
本実施例で試験した配合の組成物は、インクAであった。インクA~Dの配合は次の通り。
インクA:ColMA(官能化度100)、PEGDA3400、PEGDA575。
インクB:PEGDA3400、PEGDA575。
インクC:ColMA(官能化度50)、PEGDA3400、PEGDA575。
インクD:ColMA(官能化度30)、PEGDA3400、HPA。
【0061】
手順:
1.24枚の円板を上記条件でプリントし、DPBS-/-中で一晩、37℃で保存した。
2.調査試料をロッカー(rocker)内で適切な溶液に対してインキュベートし、TCルームDELIインキュベーター(TC room DELI incubator)内で8時間、37℃で保存した。
a.溶液比率
I.円板あたり2.5mLの溶液(0.0142mL/mm
II.ドッグボーンあたり5mLの溶液
b.回転ロッカー(Rotational Rocker)
I.速度=45rpm
II.回転=90°
3.インキュベート後、試料を取り出し、DPBS-/-とともに24ウェルプレート内に入れる。
4.試料をDPBS--で3回(10分間)、室温にて洗浄し、5X P/S(PBS中)溶液内に1時間保存する。
5.試料を細胞の播種のために24ウェルプレートに移した。
6.細胞の播種、固定、及び染色を添付のプロトコルに従って行い、共焦点顕微鏡を使用した画像の取得を添付のプロトコルに従って行う。
7.72時間試料に対しても同一手順を繰り返す。
【0062】
試験手順:
1.24枚の円板と12枚のドッグボーンを上記の条件を用いてプリントし、DPBS-/-中で室温にて一晩保存した。
2.円板の重量を測定する。円板に樹脂が残っている場合、重量測定前にキムワイプで拭き取る。
3.調査試料をロッカー内で適切な溶液に対してインキュベートし、TCルームDELIインキュベーター内で8時間、37℃で保存した。
a.溶液比率
I.円板あたり2.5mLの溶液(0.0142mL/mm
II.ドッグボーンあたり5mLの溶液
b.回転ロッカー
I.速度=45rpm
II.回転=90°
4.インキュベート後、円板を取り出し、DPBS-/-とともに24ウェルプレート内に入れる。ドッグボーンを取り出し、シャーレに入れる。円板及びドッグボーンがDPBS-/-で完全に覆われていることを確認する。
5.円板の重量を測定する。円板に樹脂が残っている場合、重量測定前にキムワイプで拭き取る。
6.DMA850(Waters、TA Instruments社、デラウェア州ニューキャッスル)メカニカルアナライザーを使用し、円板の圧縮評価の試験を行う。
7.以下に示す引張試験プロトコルを使用し、ドッグボーンの引張評価の試験を行う。
【0063】
DMA850プロトコル
型の準備:圧縮及び引張試験のための全ての試料をPDMS型に鋳造した。レーザー切断機を使用し、所望のサイズと形状のネガ型(negative mold)を切断した。ポリカーボネート製ネガ型を底シャーレ(bottom petri dishes)に置き、1:10(W/W%)の割合の樹脂と硬化剤で調製されたPDMS溶液をシャーレに注いだ。シャーレをPDMSの脱気のために1時間デシケーターに置いた。その後、シャーレをオーブンに移し、80℃で1時間、PDMSを硬化させる。
【0064】
試料調製:配合溶液は、1000μLピペットを使用して、各PDMSリザーバーに穏やかに添加する必要がある。圧縮試料及び引張試料用の各リザーバーの容量は260μL及び240μLでである。PDMS型を、波長365nmのUVクロスリンカーの中心に2分間配置し、試料を硬化させる。
【0065】
硬化:PDMS型を、波長365nmのUVクロスリンカーの中心に2分間配置し、試料を硬化させる。
【0066】
引張試験プロトコル(引張試験)
図48に示すように試料をドッグボーン形状に切断し、ASTM D1708-13「微小引張試料を用いたプラスチックの引張特性のための標準試験法」に従って試験する。試料はDPBS中でリンスする必要がある(Mg不含、Ca不含):
・オプション1:37℃にて最短2時間
・オプション2:一晩浸漬することが好ましい。37℃
【0067】
図49Aに示すように、タブの非常に小さな部分が各グリップから見えるようにする。試料がわずかに湾曲している場合、これは材料の一部がグリップから押し出されていることが原因である可能性が最も高い。試料の伸長がプリロードまで進むと、たるみが除去される。湾曲は最小限であることが望ましいが、グリップは試料が滑り出るのを防ぐのに充分なタイトさであるため、完全に湾曲を回避する必要はない。次に、変位をゼロにする必要がある。残留力(residual force)はそのままにする。これは、試料を押す又は引く実際の力である。
【0068】
試料は、プログラムされたプリロードが達成されるまで伸長させる必要がある。この荷重に達すると、ひずみ値(strain value)がオートバランスされ、データがグラフ上にプロットされる。許容される破壊モード - 試料は、図49Bに示すように、グリップ接触面ではなく、ネック領域で破壊される必要がある。
【0069】
結果:機械的評価では、5U/mLコレステロールエステラーゼと50mM NaOHの両方で、DMA圧縮試験のヤング率と極限応力が減少した。ドッグボーンは多孔質領域(porous region)より上で破断したため、極限引張応力及びひずみは示唆できない。引張試験のための全てのグループでヤング率に有意差は無かった。
【0070】
生物学的評価では、50mM NaOH処理群は、4日目の全ての変数についてガラス対照と有意差が無い。5U/mLコレステロールエステラーゼは、4日目の全ての変数について、PBS対照と有意差が無い。
【0071】
50mM NaOH及びガラス対照は、どちらもアクチン繊維が重なり合う密なネットワークを形成したため、細胞伸展に差は無い。4日目は、50mM NaOHで処理した試料はばらつきが大きい。これは、細胞が剥離し、結果として細胞接着性が最小限になったことを示唆する。
【0072】
実施例2:インクC及びインクAの後加工処理による生物学的及び機械的評価
本実施例の目的は、アルカリ条件を用いた加速加水分解下のインクCの生物学的及び機械特性を評価し、実施例1で記載したインクAと比較することである。
【0073】
3種の試験条件を用いた。
・対照(DPBS-/-)
・100mM NaOH(脱イオン水中)
・ガラスカバースリップ(Glass cover slips)(陽性対照)
【0074】
手順:
1.バイオインクあたり16枚の円板を、上記の条件を使用してプリントし、DPBS-/-で3回洗浄した。
2.調査試料をロッカー内で適切な溶液に対してインキュベートし、TCルームDELIインキュベーター内で4時間、37℃で保存した。
a.溶液比率
I.円板あたり2.5mLの溶液(0.0142mL/mm
b.回転ロッカー
I.速度=45
II.回転=90
3.インキュベート後、試料を取り出し、DPBS-/-とともに24ウェルプレート又はシャーレ内に入れる。ヒドロゲルがDPBS-/-で完全に覆われていることを確認する。
4.試料をDPBS--で3回(10分間)、室温にて洗浄し、5X P/S(PBS中)溶液内に1時間保存する。
5.割り当てられた試料を細胞の播種のために24ウェルプレートに移す。適切な細胞播種のため、ヒドロゲルの基層がウェルプレート内で確実に下向きになるようにする。
6.細胞播種、固定、及び染色
a.播種密度を10,000細胞/ウェルに減らす必要がある。
b.膨潤のため、3Dプリントされた円板のための染色液を1mLに増やす必要がある
c.1mL/ウェルの細胞懸濁溶液を、24ウェルプレートの円板に加える。
7.実施例1のように画像を取得する。
【0075】
機械的評価の手順:
2種の試験条件:
・対照(DPBS-/-)
・100mM NaOH(脱イオン水中)
【0076】
手順:
1.バイオインクあたり12枚のドッグボーンを上記の条件を用いてプリントし、DPBS-/-中で室温にて一晩保存した。
2.調査試料をロッカー内で適切な溶液に対してインキュベートし、TCルームDELIインキュベーター内で4時間、37℃で保存した。
a.溶液比率
I.ドッグボーンあたり18.725mLの溶液(0.0142mL/mm
b.回転ロッカー
I.速度=45
II.回転=90
3.インキュベート後、ドッグボーンを取り出し、DPBS-/-sとともにシャーレに入れる。ドッグボーンが完全であることを確認する。
4.上記引張試験プロトコルを使用し、ドッグボーンの引張評価の試験を行う。
【0077】
膨潤率
2種の試験条件:
・対照(DPBS-/-)
・100mM NaOH(脱イオン水中)
【0078】
手順:
1.バイオインクあたり8枚の円板を、上記の条件を使用してプリントし、DPBS-/-で3回洗浄した。
2.調査試料をロッカー内で適切な溶液に対してインキュベートし、TCルームDELIインキュベーター内で4時間、37℃で保存した。
a.溶液比率
I.円板あたり2.5mLの溶液(0.0142mL/mm
b.回転ロッカー
I.速度=45
II.回転=90
3.円板の重量を測定する。必要に応じて拭き取りと乾燥により、余分な液体を除去する。
4.試料をDPBS-/-とともに24ウェルプレートに入れる。ヒドロゲルがDPBS-/-で完全に覆われていることを確認する。
5.プレートを37℃で24時間保存する。
6.円板の重量を測定する。必要に応じて拭き取りと乾燥により、余分な液体を除去する。
7.24時間後に膨潤が安定化していなかった場合、より多くの時点で重量測定を継続する。
【0079】
結果:処理により、細胞接着が増加し、インクCの機械特性が減少した。これらは、インクAで実証されたものと同様な結果である。機械特性が著しく低下したため、インクCの機械完全性が損なわれる結果となる。
【0080】
実施例3:加速加水分解を受けたインクAのPAEC及びSAEC生物学的評価
この研究の目的は、水酸化ナトリウム及びコレステロールエステラーゼによる加速加水分解を受けたインクAの、PAEC及びSAECに対する生体適合性を評価することであった。
【0081】
生物学的評価
5種の試験条件:
・インクA PBS
・インクA 0.1M NaOH
・インクA 5U/mLコレステロールエステラーゼ
【0082】
手順:
1.48枚の円板を上記条件を使用してプリントし、DPBS-/-で3回洗浄した。
2.調査試料をロッカー内で適切な溶液に対してインキュベートし、TCルームDELIインキュベーター内で37℃で保存した。
a.インキュベート時間
I.4時間=PBS、0.1M NaOH
II.6時間=コレステロールエステラーゼ
b.溶液比率
I.円板あたり2.0mLの溶液(0.0114mL/mm
b.回転ロッカー
I.速度=45
II.回転=90
3.インキュベート後、試料を取り出し、24ウェルプレート又はシャーレ内に入れる。
4.試料をDPBS--で3回、室温にて洗浄し、5X P/S(PBS中)溶液内に37℃で一晩保存する。
5.細胞の播種、固定、及び染色を以下のプロトコルに従って行う。
a.PAECの場合は20,000細胞/ウェルまで、SAECの場合は40,000細胞/ウェルまでの播種密度が必要。
b.1mL/ウェルの細胞懸濁溶液を、融解凍結保存試料に対する24ウェルプレートの円板に添加する。
6.実施例1のように画像を取得する。
7.7D試料に対しても同一手順を繰り返す。
播種、固定、及び染色プロトコル
【表1】
【0083】
架橋(又は架橋が不要な場合はPBS洗浄)の後、円板を50mLコニカル(単一プリントの8枚全ての円板を1個のディッシュに入れることができる)に移し、DPBS++洗浄を行う必要がある。円板は、37℃、速度60、回転90のローテーター上で、少なくとも30分間(20分間超でもよいが、洗浄時間によらず2回洗浄が必要)、2回洗浄する必要がある。
【0084】
円板は、37℃のインキュベーター内、ローテーター(速度60、回転90)上の5×抗抗溶液(DPBSで希釈した100×抗生物質抗真菌剤)内に一晩置く必要がある。5×抗抗溶液を置き換えるため、2回のPBS洗浄をそれぞれ少なくとも30分間行う(ローテーター上でも:速度60、回転90)。
【0085】
光学96ウェルプレートを使用して、3ウェルにそれぞれ200μLの洗浄液を入れる。SpectraMax i3x(又は同等品)を使用して、これら3ウェルから洗浄液の平均384nm吸光度を測定する。複数のプリントの洗浄を同時に行う場合は、同一プレート上で複数の洗浄液を評価できる。洗浄液は384nmの吸光度が0.1を超えてはならない。いずれかのバッチで洗浄液の384nmの吸光度が0.1を超える場合、洗浄を繰り返して再試験を行う。
【0086】
3DP円板上へのLFNの播種:トリプシン-EDTA、トリプシン中和溶液、及びびLFN GMを37℃のビーズバス(beads bath)に入れる。培地の加温中に対照カバースリップを用意する。滅菌ピンセットを使用し、4枚のガラスの18mmカバースリップを24ウェルプレートに移す(各時点につき1枚のプレートを用意する)。「浸出」研究対照も使用する場合、各インクに対して追加の4枚のガラスカバースリップ/カラムを配置し、ウェルプレートの蓋を外し、バイオセーフティキャビネットを閉じ、UVライトを15分間点灯して、カバースリップを確実に滅菌する(付属の包装は技術的には無菌ではない)。3D円板の洗浄を終了し、まだの場合は48ウェルプレートにまとめる。注1:プリンターや洗浄サイクルなどの違いから生じうるばらつきを減少させるため、各時点には、各プリント反復(print iteration)に由来する円板をほぼ等しく混合したものを含める必要がある。注2:固定日ごとに試料をまとめる。1日あたり最低4試料が推奨される。
【0087】
2回目のDPBS洗浄を行い、微量色素/PIが許容レベルで残っていないことを確認した後、500μLのLFN GMを各ウェル(3D円板及びガラスカバースリップ対照)に加える。浸出研究対照については、滅菌メスを使用して2個の円板を半分に切断し、ガラスカバースリップとともにウェルに移す。注:カバースリップへの播種が完了するまで、円板をウェルに移さないこと。
【0088】
LFNのフラスコを37℃インキュベーターからバイオセーフティキャビネットに移す(又は、必要量のLFNをクライオタンクから取り出し、ビーズバス内で解凍する)。
【0089】
フラスコ細胞の場合:清浄な血清アスピレーターチップで培地を吸引除去し、充分なDPBS--を加えてフラスコの底部を洗浄する。DPBSを吸引除去し、充分なトリプシン-EDTを加えて細胞を被覆する。フラスコにキャップをかぶせ、2~4分間インキュベーターに戻して細胞を剥離させる。細胞がトリプシン処理されている間、フード内に15mLコニカルを用意し、細胞懸濁物を移し、細胞の計数に1.5mLの滅菌微量遠心チューブを用意する。微量遠心チューブに10μLのトリパンブルーを加え、位相差顕微鏡で細胞の剥離を確認する。細胞が剥離している場合、バイオセーフティキャビネットに入れて手順を進める。トリプシン-EDTAと同量のトリプシン中和溶液をフラスコに入れる。血清ピペットを使用して、フラスコの底に残った全ての細胞の「洗い落とし」(5~8回)を継続し、15mLコニカルに移す。
【0090】
遠心分離に先立ち、ここで細胞をカウントしてよい。遠心分離の前に細胞をカウントする場合、細胞懸濁物を5回以上、上下にピペッティングして細胞を確実に均一に分布させる。遠心分離の後に細胞をカウントする場合、細胞ペレットから不要物を吸引し、細胞を約5mLの培地に再懸濁し、10~20回強くピペッティングして細胞ペレットを分散させてからカウントを行う。
【0091】
10μLの細胞懸濁物を1.5mL微量遠心チューブにトリパンブルーとともに移し、トリパンブルーを含む細胞混合物10μLをLuna細胞計数スライドの各面に移す。
【0092】
クライオセルの場合:必要な個数の細胞をクライオタンクから取り出す(必要なバイアル数の算出には60~70%の生存率を仮定する)。クライオチューブをビーズバスに入れて可能な限り速やかに解凍を行い、最後に残った氷が無くなり次第取り出す。微量遠心チューブに10μLのトリパンブルーを加える。クライオ細胞を、少なくとも同量の培地中(15mLコニカル内)に再懸濁する。融解後の細胞を10~20回上下にピペッティングして再懸濁した後、10μLの細胞懸濁物を取ってトリパンブルーとともに微量遠心チューブに移し、トリパンブルーを含む細胞混合物10μLをLuna細胞計数スライドの各面に移す。細胞懸濁物を入れた15mL遠心チューブにキャップをし、遠心分離機のスイングバケットホルダーに入れる。150Gで5分間回す。
【0093】
細胞懸濁物が遠心分離機にある間に、Lunaスライドカウンターを使用して細胞をカウントする(あるいは遠心分離後にこれを行ってもよい)。平均生存細胞/mLに細胞懸濁物の総量を乗じて、総細胞数を求める。生体適合性スクリーニング用に10,500/cmで、48ウェルプレート内の円板用に10,000細胞/ウェルで、24ウェルプレート内の対照用に20,000セル/ウェルで、細胞を播種する。
【0094】
細胞を、次のように再懸濁してよい。遠心分離した細胞を1x10細胞/mLの密度に再懸濁する。実験に必要な量の細胞を新しいチューブに移し、細胞が1x10細胞/mLの密度で懸濁されるように培地を加える。100μL/ウェルを48ウェルプレート円板に、200μL/ウェルを24ウェルプレート対照に加え、最終的に48ウェルプレート内で10,000/ウェル、対照内で20,000/ウェルの播種とする(全試料において10,500/cm)。細胞は確実にウェルの上から加え、細胞が円板又はカバースリップ上に沈むようにする。播種の過程で細胞が沈降しないよう、血清ピペットを使用して細胞懸濁物を一定の間隔で混合すること(15~20試料ごとに約1回)。ウェルプレートを前後左右に動かし、旋回させてから、インキュベーターに移す。2~3日ごとに培地を新しくする(500μL/ウェル)。
【0095】
固定及び染色:ケミカルドラフトで10%ホルマリン溶液を調製する。ガラス対照用に300μL/ウェル、3D円板用に500μL/ウェルを調製する。10%ホルマリン溶液に0.1%Triton X100(1:1000)を加える。37℃のビーズバス中で、10%ホルマリンのコニカルとDPBS++のボトルを15~20分間加温する。注:材料への細胞の接着にはカルシウムイオンとマグネシウムイオンが必要であるため、DPBS++が細胞接着を補助する。
【0096】
固定成分を加温後、DPBS++洗浄を行う。10%ホルマリン+0.1% Triton X100を、対照に300μL/ウェル、3D円板に500μL/ウェル加える。室温で15分間インキュベートする。固定液を手動で吸引して廃液容器に移し、DPBS--で試料を洗浄する(3×5分間洗浄)。洗浄後、残りの工程はケミカルドラフトの外で行うことができる。
【0097】
染色溶液を1:20,000 SytoxOrange;3:400ファロイジン488で、24ウェルプレート用に200μL/ウェル、3d円板用に500μL/ウェル調製する。3回目のDPBS洗浄の後に染色液をウェルに加える。染色中の光退色を防ぐため、試料をアルミホイルで覆う。ロッカー上に60RPMで45分間~1時間置く。染色後、3×5分間、DPBS洗浄を行う。画像取得前に4℃で保存する際、試料は最後の洗浄液中に(ホイルで光から保護したまま)残しておくことができる。
【0098】
結果:水酸化ナトリウムは、インクAに対するPAEC及びSAECの細胞接着を増加させる。コレステロールエステラーゼは、PBSとの比較において、PAEC又はSAECの細胞接着の増加を示さなかった。水酸化ナトリウム、コレステロールエステラーゼ、及びPBSでは4日目~7日目のSAEC細胞接着は増加しなかった。水酸化ナトリウム及びガラス対照では、4日目~7日目のPAEC細胞接着が増加した。
【0099】
実施例4:NaOH又はエステラーゼ処理後の機械特性の変化及び細胞接着性を試験したインク
以下のインクを用いて本開示の実施形態を生成した。各インクは、光開始剤、紫外(UV)吸収色素、及び脱イオン水も含む。
【0100】
図30は、酵素への曝露を行わず、コレステロールエステラーゼへの曝露を行った実施例における、インクA、C、及びDのプリントされた対象物の圧縮機械特性を示す。図30Aはヤング率を示す。図30Bは極限ひずみを示す。図30Cは極限応力を示す。実施例に記載のようにDMA850引張試験機を使用して得られたものである。
【0101】
図31は、流路厚の異なるフィッシャー円板インクAの表面ネットワークの走査電子顕微鏡像を示す。
【0102】
実施例5:支柱を有する3Dプリントされた対象物
支柱を有する3Dプリントされた対象物を、実施例2の手順に従って試験した。ヤング率、極限応力、及び極限ひずみの評価を行った。図46は、垂直支柱がインクAフィッシャー円板上でヤング率を減少させた一方で(図46A)、極限応力を増加させることを示す(図46C)。極限ひずみを図46Bに示す。
【0103】
以下の各文書の全体が参照により本願に組み込まれたものとする:(a)2021年5月6日に出願された「USE OF FUNCTIONALIZED AND NON-FUNCTIONALIZED ECMS, ECM FRAGMENTS, PEPTIDES AND BIOACTIVE COMPONENTS TO CREATE CELL ADHESIVE 3D PRINTED OBJECTS」と題する米国仮出願第63/185,293号、並びに2022年5月6日に出願された同一名称の米国通常(U.S. non-provisional)及び/又はPCT出願;(b)2021年5月6日に出願された「CONTROLLING THE SIZE OF 3D PRINTING HYDROGEL OBJECTS USING HDROPHILIC MONOMERS, HYDROPHOBIC MONOMERS, AND CROSSLINKERS」と題する米国仮出願第63/185,300号、並びに2022年5月6日に出願された同一名称の米国通常及び/又はPCT出願;(c)2021年5月6日に出願された「PHOTOCURABLE REINFORCEMENT OF 3D PRINTED HYDROGEL OBJECTS」と題する米国仮出願第63/185,305号、並びに2022年5月6日に出願された同一名称の米国通常及び/又はPCT出願;(d)2021年5月6日に出願された「ADDITIVE MANUFACTURING OF HYDROGEL TUBES FOR BIOMEDICAL APPLICATIONS」と題する米国仮出願第63/185,299号、並びに2022年5月6日に出願された同一名称の米国通常及び/又はPCT出願;並びに、(e)2021年5月6日に出願された「MICROPHYSIOLOGICAL 3-D PRINTING AND ITS APPLICATIONS」と題する米国仮出願第63/185,298号、並びに2022年5月6日に出願された同一名称の米国通常及び/又はPCT出願。
【0104】
上記では特定の好ましい実施形態に言及しているが、本発明はそれらに限定されないことが理解されるであろう。当業者は、開示された実施形態に各種改変を加えてもよいこと、及び、このような改変が本発明の範囲内であると意図されることを、理解するであろう。
【0105】
本明細書に引用されている全ての出版物、特許出願、及び特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。さらなる実施形態を以下の特許請求の範囲に記載する。
図1
図2A-2C】
図3A-3C】
図4A-4B】
図5A-5C】
図6
図7A-7C】
図8A-8C】
図9
図10
図11
図12A-12C】
図13
図14A-14C】
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17A-17B】
図18
図19A-19C】
図20
図21A-21C】
図22
図23A-23C】
図24
図25A-25C】
図26A-26C】
図27
図28
図29
図30A-30C】
図31
図32A-32C】
図33A-33C】
図34
図35A-35D】
図36A-36C】
図37A-37C】
図38A-38C】
図39A-39B】
図40A-40C】
図41A-41C】
図42A-42C】
図43A-43C】
図44
図45A-45D】
図46A-46C】
図47A-47C】
図48
図49A-49B】
【国際調査報告】