(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】投与レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/02
A61K31/506
A61K31/496
A61K31/5025
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568475
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2022054321
(87)【国際公開番号】W WO2022238884
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ドッド,ステファニー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ウルカデ-プテルレット,フロレンス
(72)【発明者】
【氏名】フート,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】クインラン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ザック,ジュリア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB27
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC42
4C086BC50
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド又はその薬学的に許容される塩を含む投与レジメン及び組み合わせ、並びに切断点クラスター領域-エーベルソンタンパク質(BCR-ABL)によって媒介される疾患又は障害の治療のためのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組み合わせを投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法であって、(i)治療有効量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)治療有効量の少なくとも1種の更なる治療剤を含み、前記医薬組み合わせが食物と共に投与される方法。
【請求項2】
前記BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、前記1種の更なる治療剤に対するアドオン組み合わせ療法で使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、単回用量で約40mg又は60mgの1日総投与量で前記患者に投与される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1種の更なる治療剤が、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1種の更なる治療剤がイマチニブである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
イマチニブが、単回用量で約400mgの1日総用量で前記患者に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記食物が低脂肪食である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組み合わせが、順次又は同時に共に投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
単回用量で約40mg若しくは60mgのアシミニブ又はその薬学的に許容される塩の1日総用量と、単回用量で約400mgのイマチニブの1日総用量とを投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法であって、前記単回用量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩と、前記単回用量のイマチニブとが、低脂肪食と共に投与される方法。
【請求項11】
アシミニブ又はその薬学的に許容される塩の前記用量とイマチニブの前記用量とが同時に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、アドオン組み合わせ療法で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
食物を伴わずに治療有効量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法。
【請求項14】
食物を伴うアシミニブ又はその薬学的に許容される塩の前記投与が、食物を伴わないアシミニブ又はその薬学的に許容される塩の前記投与と比較して、前記対象のバイオアベイラビリティの低下をもたらす、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、分割用量で約80mgの1日総投与量で前記患者に投与される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド又はその薬学的に許容される塩を含む投与レジメン及び組み合わせ、並びに切断点クラスター領域-エーベルソンタンパク質(BCR-ABL)によって媒介される疾患又は障害の治療のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ABL1タンパク質のチロシンキナーゼ活性は、通常は厳密に調節されており、SH3ドメインのN末端キャップ領域が重要な役割を果たしている。1つの調節メカニズムでは、ミリストイル化され、次いでSH1触媒ドメイン内のミリスチン酸結合部位と相互作用するN末端キャップのグリシン-2残基が関与している。慢性骨髄性白血病(CML)の際立った特徴としては、造血幹細胞におけるt(9,22)の相互の染色体転座によって形成されるフィラデルフィア染色体(Ph)がある。この染色体は、N末端キャップを欠き、構成的に活性なチロシンキナーゼドメインを有するキメラBCR-ABL1タンパク質をコードする、BCR-ABL1癌遺伝子を保持している。
【0003】
Gleevec(登録商標)/Glivec(登録商標)(イマチニブ)、Tasigna(登録商標)(ニロチニブ)及びSprycel(登録商標)(ダサチニブ)などの、ATP競合メカニズムによりBCR-ABL1のチロシンキナーゼ活性を阻害する薬剤は、CMLの治療に有効であるが、SH1ドメインが変異することで阻害剤の結合性を損なう薬剤耐性クローンが出現することによって再発してしまう患者もいる。Tasigna(登録商標)及びSprycel(登録商標)は、多くのグリベック耐性変異型のBCR-ABL1に対して有効性を維持しているが、スレオニン315残基がイソロイシンに置換された変異(T315I)により、3つの薬剤のいずれに対しても非感受性のままであり、その結果としてCML患者が治療に対する耐性を発現する可能性がある。従って、T315IなどのBCR-ABL1変異を阻害することは、依然としてアンメットメディカルニーズのままである。CMLに加えて、BCR-ABL1融合タンパク質は、一定割合の急性リンパ性白血病の原因であり、また、この指摘においてABLキナーゼ活性を標的とする薬剤が有用である。
【0004】
ミリストイル結合部位を標的とする薬剤(いわゆるアロステリック阻害剤)は、BCR-ABL1障害を治療するための可能性を秘めている(Zhang et.al.,Targeting BCR-ABL by combining allosteric with ATP-binding-site inhibitors.Nature 2010;463:501-6)。ATP阻害剤及び/又はアロステリック阻害剤の使用による薬剤耐性の出現を妨げるために、BCR-ABL1関連疾患又は障害を治療するのに両方のタイプの阻害剤を使用する組み合わせ治療が開発され得る。特に、ATP結合部位、ミリストイル結合部位、又は両部位を組み合わせることによってBCR-ABL1及びBCR-ABL1変異体の活性を阻害する、低分子又はこれらの組み合わせが必要とされている。
【0005】
本明細書では、現在利用可能なATP部位である第2及び第3世代のTKIとは別の部位で活性を有するBCR-ABL阻害剤が提供され、この阻害剤は、阻害の代替メカニズムを提示することができ、組み合わせて使用する場合に、結合部位のうちの1つで獲得される点変異の獲得による耐性の発現を妨げ、これによってCML、ALL、及びAMLを含むBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療することを含むアンメットメディカルニーズに対処することができる。
【発明の概要】
【0006】
BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害の治療に使用するためのBCR-ABL阻害剤、特に化合物Iを使用して対象を治療する方法が本明細書に記載される。治療有効量のBCR-ABL阻害剤、特に食物を伴わずに投与される化合物Iを、それを必要とする対象に投与することにより、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法も本明細書に記載される。
【0007】
式
【化1】
の化合物であるN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド、すなわち化合物I、化合物Iの調製、及び化合物Iの医薬組成物は、元々は国際公開第2013/171639 A1号パンフレットの実施例9として記載されている。化合物Iは、(R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-6-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ニコチンアミド、又はアシミニブとしても公知である。(R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-6-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ニコチンアミド(下記左の構造)は、(R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-6-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-5-(1H-ピラゾール-3-イル)ニコチンアミド(下記右の構造)の互変異性体であり、逆もまた同様である。
【化2】
【0008】
国際公開第2013/171639 A1号パンフレットには、化合物Iがエーベルソンタンパク質(ABL1)、エーベルソン関連タンパク質(ABL2)及び関連するキメラタンパク質、特にBCR-ABL1のチロシンキナーゼ酵素活性の阻害に反応する疾患の治療に有用であるものとして記載されている。
【0009】
更に、本明細書に記載されるBCR-ABL阻害剤、特に化合物Iの方法又は使用のための特定の用量レジメンが本明細書に提供される。
【0010】
加えて、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害の治療に使用するための、a)化合物I及びb)少なくとも1種の更なる治療剤を、任意選択により薬学的に許容される担体の存在下で含む医薬組み合わせ、並びにそれらを含む医薬組成物が本明細書に記載される。好ましくは、1種の更なる治療剤は、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択され、より好ましくはイマチニブである。一実施形態では、医薬組み合わせは、食物、好ましくは低脂肪食と共に投与される。
【0011】
記載される方法及び使用の更なる特徴及び利点は、下記の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のアシミニブ(2×20mgフィルムコーティング錠剤)の(A)溶解及び(B)人工脂質膜の透過に及ぼす(絶食時(FaSSIF)及び満腹時(FeSSIF)の腸内状態を模した)胆汁成分濃度の変動の影響を評価するインビトロフラックス試験を示す。
【
図2】実施例2に詳細に記載される治療プロトコールの図式的概略を示す。
【
図3】アシミニブ単独及びアシミニブ+イマチニブによる(A)アシミニブ及び(B)イマチニブの算術平均(SD)血漿濃度-時間プロファイルを示す(DDI群)。
【
図4】絶食下、低脂肪食条件下、及び高脂肪食条件下で投与した場合のアシミニブの算術平均(SD)血漿濃度-時間プロファイルを示す(FE群)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
化合物Iは、現在、単剤としてCML患者を対象に、第1相ヒト初回用量設定試験(NCT02081378))では確立したCML治療薬であるイマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブとのTKIの組み合わせレジメンとして、第3相ランダム化対照試験(ASCEMBL;NCT03106779)では単剤として、深い分子反応が得られなかった患者(1年以上のフロントラインのイマチニブ(ASC4MORE;NCT03578367)による国際的報告スケール[IS]で0.01%以下のBCR-ABL1転写値として定義される)を対象とした第2相試験ではフロントラインのイマチニブに対するアドオン療法として調査されている。
【0014】
単剤での化合物Iの場合、CML患者における推奨される第3相の用量は、1日2回40mgとして確立されている(絶食状態;CML患者において1日2回の最大で200mgの用量では最大耐量に到達しなかった)。以前の2種以上のTKIでこれまでに治療されたことのある慢性期のCML患者(BCR-ABL1のT315I変異を保有しない)を対象とした第3相ASCEMBL試験では、化合物Iの単剤療法(1日2回40mg)は、24週時点の主要評価項目である主要分子反応(ISでBCR-ABL1≦0.1%)に関して、ATP競合型BCR-ABL1阻害剤であるボスチニブ(1日1回500mg)と比較して、統計学的に有意且つ臨床的に意味がある優位性を示し(25.5%対13.2%;差異12.2%;95%CI、2.19~22.3):P=0.029)、好ましい安全性プロファイルを有していた。
【0015】
アシミニブとイマチニブの組み合わせは、他のTKIに抵抗性又は不耐性であったCML患者を対象としたヒト初回第1相試験において忍容性が良好であり、有望な予備的有効性を示した。アシミニブ及びイマチニブ間の潜在的な薬物間相互作用(DDI)を評価するこの集団での予備的なPK解析から、食物を伴う1日1回40mgのアシミニブと1日1回400mgのイマチニブは(食物と共に服用した場合、イマチニブの忍容性がより良好となるため)、絶食状態での推奨されるアシミニブ単剤療法の用量で達成される曝露量と同等のアシミニブの曝露量がもたらされることが判明した。ヒト初回試験では、初期のアシミニブ錠剤製剤を使用したが、この製剤では、絶食状態と比較して食物と共に摂取した場合、アシミニブのバイオアベイラビリティに中程度の低下が生じることが示されている(低脂肪食では曝露量が30~31%低下し、高脂肪食では曝露量が63~64%低下した)。化合物Iを商業的に使用するために、わずかに改造した錠剤製剤(市販予定製剤[FMI])を開発し、商業的なバッチサイズへの規模拡大性を確保した。そのため、イマチニブ及び化合物I間のDDIをより特性評価し、市販されている化合物Iの錠剤製剤における食物の影響(FE)を確認するために更なる調査が必要であった。
【0016】
本明細書では、有効量の化合物I又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することにより、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法が記載される。
【0017】
従って、一態様では、有効量の化合物I又はその薬学的に許容される塩を、食物を伴わずにそれを必要とする対象に投与することを含む、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法が提供される。更なる態様では、食物を伴う化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与は、化合物I又はその薬学的に許容される塩の食物を伴わない投与と比較して、対象のバイオアベイラビリティの低下をもたらす。更なる態様では、食物を伴う化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与は、食物を伴わない場合と比較して、AUCが30%~60%低下する。
【0018】
別の態様では、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害の治療及びそれらを含む医薬組成物で使用するために、有効量の化合物I又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組み合わせ、及び有効量の少なくとも1種の更なる治療剤を、任意選択により薬学的に許容される担体の存在下でそれを必要とする対象に投与することを含む、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法が提供される。好ましくは、1種の更なる治療剤は、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択され、より好ましくはイマチニブである。更なる態様では、医薬組み合わせは、食物、好ましくは低脂肪食と共に投与される。更なる態様では、食物を伴う医薬組み合わせの投与は、食物と共に摂取された化合物Iと比較して、化合物Iの全身曝露量(AUCinf及びAUClast)が約2倍増加し、化合物IのCmaxが約1.6倍増加する結果となる。
【0019】
定義
本明細書をより容易に理解することができるように、最初に特定の用語を定義する。本明細書全体を通じて、更なる定義が記載される。
【0020】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語には、「含む(including)」及び「からなる(consisting of)」が包含され、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなるか、又は何らかの追加要素を含み得る(例えば、X+Y)。
【0021】
本明細書で使用する場合、冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指す。
【0022】
「又は」という用語は、本明細書では、文脈から別段明確に指示されない限り、「及び/又は」という用語を意味するために使用され、且つ「及び/又は」という用語と互換的に使用される。
【0023】
本明細書で使用する場合、言及される数値及びその文法上の等価物に対する「約」という用語は、その数値自体、及びその数値からプラス又はマイナス10%の値の範囲を含み得る。例えば、「約10」という量は、10及び9~11の任意の量を含む。例えば、言及される数値に関する「約」という用語は、その値からプラス又はマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の値の範囲も含み得る。いくつかの場合では、その数値に「約」という用語が特に言及されていなくても、全体を通して記載される数値は「約」となり得る。
【0024】
本明細書で使用する場合、「ベースライン」という用語は、記載される方法及び使用に従って、治療前、例えば化合物の投与前、例えば任意選択により少なくとも1種の更なる治療剤と組み合わせた化合物Iの投与前に観察される対象の状態、又は症状、例えば疾患の程度、又は患者の状態に関連する1つ以上のパラメーターを指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、化合物、例えば、任意選択により少なくとも1種の更なる治療剤と組み合わせた化合物Iに関する「投与する」という用語は、任意の送達経路によるその化合物の送達を指すために使用される。このような送達は、例えば、静脈内投与又は経口投与であり得る。また、このような投与は、例えば、皮下投与であり得る。
【0026】
本明細書で使用する場合、「食物と共に投与された」若しくは「食物と共に」又は「満腹状態」若しくは「満腹条件」若しくは「満腹」という用語は、食物、例えば、カロリーを含有する固体又は液体の任意の食品を摂取した状態を指す。「食物」という用語は、例えば、連邦食品・医薬品・化粧品法第201条(f)に定義されるような食物を指し、原材料及び成分を含む。好ましくは、食物は、胃の中ですみやかに溶解及び吸収されることのない十分な嵩及び脂肪含有量を含む固形食物である。化合物Iの用量は、例えば、食物を摂取する30分前から摂取後約2時間までの間に対象に投与され得る。実施形態では、化合物Iの投与の約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、又は約30分前に食物が摂取されている。好ましくは、化合物Iの投与は、食物を摂取した直後の、摂取後最大約30分までに行われ得る。
【0027】
本明細書で使用する場合、「食物を伴わずに」又は「絶食状態」若しくは「絶食条件」若しくは「絶食した」という用語は、例えば、このような摂取の約1時間以上前から約2時間以上までに、固形食物を摂取していない状態を指す。いくつかの実施形態では、化合物Iの投与の約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、又は約30分前に食物を摂取していない。いくつかの実施形態では、化合物Iの投与の約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、又は約30分後に食物を摂取していない。
【0028】
本明細書で使用する場合、「低脂肪食」という用語は、Assessing the Effects of Food on Drugs in INDs and NDAs(FDA 2019)における草案のガイドライン(Assessing the Effects of Food on Drugs in Investigational New Drug Applications and New Drug Applications-Clinical Pharmacology Considerations;Draft Guidance for Industry;Availability,84 Fed.Reg.6151(February 26,2019)も参照されたい)における米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)による定義を指す。低脂肪食の例は、脂肪が20%未満で約400カロリーの食物となる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「低脂肪食と共に投与された」又は「低脂肪食と共に」という用語は、化合物Iを投与する前の一定時間以内に、化合物Iの投与と共に低脂肪食を摂取した状態を意味するものと定義される。化合物Iの用量は、例えば、低脂肪食を摂取する30分前から摂取後約2時間までの間に対象に投与され得る。実施形態では、化合物Iの投与の約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、又は約30分前に低脂肪食が摂取されている。好ましくは、化合物Iの投与は、低脂肪食を摂取した直後の、摂取後最大約30分までに行われ得る。
【0030】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、活性成分の生物活性の有効性に実質的に干渉することのない非毒性物質を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「患者」という用語は、「対象」という用語と互換的に使用され、あらゆるヒト又は非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語には、あらゆる脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳類が含まれる。特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物、方法、及び使用は、ヒト患者又はヒト対象に関するものである。
【0032】
本明細書で使用する場合、対象が問題の状態(すなわち、疾患、障害、又は症候群)に罹患しており、そのような治療から生物学的に、医学的に、又は生活の質において利益を受けることになる場合、そのような対象は治療を「必要とする」。
【0033】
本明細書で使用する場合、「BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害」という用語は、CNS疾患、特に神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィー、自己免疫疾患及び炎症性疾患(糖尿病及び肺線維症)、ウイルス感染症、プリオン病などの非悪性疾患又は障害を含む、野生型ABL1の異常に活性化されたキナーゼ活性に関連する疾患又は障害である。好ましくは、疾患又は障害は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病である。
【0034】
GLEEVEC(登録商標)(イマチニブメシル酸塩)は、KIT(CD117)陽性の切除不能及び/又は転移性の消化管間質性腫瘍(GIST)患者の治療のために指示される。また、KIT(CD117)陽性GISTを全切除した後の成人患者を治療するためにも指示される。また、新たに診断された慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML)の成人及び小児患者、並びにインターフェロンα療法失敗後の急性転化(BC)、加速期(AP)、又は慢性期(CP)のPh+ CML患者の治療にも指示される。また、GLEEVEC(登録商標)は、治療選択が限定される以下の稀な障害を治療するための標的薬としても使用することができる:再発性又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL);血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)遺伝子再編成に関連する骨髄異形成/骨髄増殖性疾患(MDS/MPD);D816V c-KIT変異を伴わない、又はc-KIT変異状態不明の侵襲的全身性肥満細胞症(ASM);過好酸性症候群/FIP1L1-PDGFRα融合キナーゼを伴う(CHIC2アレル欠失の変異解析又はFISH実証)慢性好酸球性白血病(HES/CEL)並びにFIP1L1-PDGFRα融合キナーゼ陰性又は不明のHES及び/又はCEL患者;並びに切除不能、再発性及び/又は転移性隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)。
【0035】
TASIGNA(登録商標)(ニロチニブ)は、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML)と新たに診断された成人患者の治療のために指示される。TASIGNA(登録商標)は、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))を含む他の治療でもはや効果が得られない、若しくは不耐性の成人、又はイマチニブ(GLEEVEC)を含む他の治療を受けたことがあるが、それらに忍容性のない可能性のある成人を治療するために使用することができる。
【0036】
SPRYCEL(登録商標)(ダサチニブ)は、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)と新たに診断された成人、及び他の治療でもはや効果が得られない、若しくは不耐性の成人、並びにALL患者を治療するために使用される処方薬である。
【0037】
BOSULIF(登録商標)(ボスチニブ)は、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)と新たに診断された成人、及び他の治療でもはや効果が得られない、又は不耐性の成人、並びにALL患者を治療するために使用される処方薬である。
【0038】
「治療」という用語は、例えば、疾患を治癒するために、又は疾患の退行若しくは疾患の進行の遅延に影響を及ぼすために、化合物I若しくはその薬学的に許容される塩、又は、化合物I若しくはその薬学的に許容される塩と、本明細書に記載されるような少なくとも1種の更なる治療剤との組み合わせを、そのような治療を必要とする温血動物、特にヒトに治療的に投与することを含む。任意の疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、疾患又は障害を寛解すること(例えば、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発現を遅らせる、又は抑止する、又は軽減すること)を指し、疾患又は障害の発症又は発現若しくは進行を防止する、又は遅らせることを指す。より具体的には、1種の更なる治療剤は、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択され、より好ましくはイマチニブである。
【0039】
「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、対象が障害又は他のリスク因子を発現するリスクを軽減させる治療的治療、予防的治療及び適用を含む。治療は、障害を完治させる必要はなく、症状又は根底にあるリスク因子の軽減を包含する。
【0040】
「治療する」という用語は、疾患、状態、障害、若しくは症候群(例えば、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害)の症状、合併症、若しくは生化学的徴候の発症を防止若しくは遅らせ、症状を緩和するか、又は疾患、状態、障害、若しくは症候群の更なる発現若しくは出現を阻止若しくは阻害するために、任意選択により少なくとも1種の更なる治療剤と組み合わせた化合物、例えば化合物Iを投与することを含む。
【0041】
本明細書で使用する場合、「賦形剤」又は「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体又は固体の充填剤、希釈剤、担体、溶媒又はカプセル化材料を意味する。一実施形態では、各成分は、医薬製剤の他の成分と適合性があるという意味で「薬学的に許容される」ものであり、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又は他の問題若しくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織又は器官と接触させて使用するのに好適なものである。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.;Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009;Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照されたい。
【0042】
本明細書で使用する場合、「BCR-ABL阻害剤」という用語は、エーベルソンタンパク質(ABL1)、エーベルソン関連タンパク質(ABL2)及び関連するキメラタンパク質、特にBCR-ABL1のチロシンキナーゼ酵素活性を阻害する化合物である。
【0043】
本明細書で使用する場合、「式Iの化合物」又は「化合物I」は互換的に使用され、下記に示される構造を有し、当技術分野で公知の手順を使用して合成することができ、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2013/171639号パンフレットに記載されている化合物を意味する。
【化3】
【0044】
本明細書に示される任意の化学式はまた、化合物の非標識形態及び同位体標識形態を表すことが意図される。同位体標識化合物は、1つ以上の原子が、選択された原子質量又は質量数を有する原子で置換されていることを除き、本明細書に示される式によって示される構造を有する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体としては、例えば、3H、11C、13C、14C、及び15Nなどの水素、炭素、窒素、及び酸素の同位体が挙げられる。従って、本発明の方法は、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体、又は2H及び13Cなどの非放射性同位体が存在するものを含む、前述の同位体のいずれかの1つ以上を組み込む化合物を含むことができるか、又は含み得ることを理解すべきである。そのような同位体標識化合物は、薬剤若しくは基質組織分布アッセイ、又は患者の放射性治療を含む、代謝研究(14Cによる)、反応速度論研究(例えば2H又は3Hによる)、検出又はイメージング技術、例えば陽電子放出断層撮影(PET)又は単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)において有用である。一般に、同位体標識化合物は、当業者に公知の従来技術により、例えば、これまでに用いられていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して調製することができる。
【0045】
本発明は、本明細書に提供される、本発明による有用な化合物の全ての薬学的に許容される塩を含む実施形態を包含する。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、存在する酸部分又は塩基部分をその塩形態に変換することによって親化合物が修飾されている、開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性無機酸又は非毒性有機酸に由来する、形成された親化合物の従来の非毒性塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基部分又は酸部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は遊離塩基形態を、水若しくは有機溶媒、又はその2つの混合物(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい)中の化学量論的な量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。好適な塩のリストは、その各々が全体として参考により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に見出される。例えば、好ましい薬学的に許容される塩としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、塩は、塩酸塩であり得る。
【0046】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書で使用する場合、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、そのような化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【0047】
別段の指示がない限り、本明細書で使用する場合、BCR-ABL阻害剤、例えば、化合物Iの「用量」すなわち量は、化合物の遊離塩基又は遊離酸形態の量を指す。塩形態のBCR-ABL阻害剤の場合、実際の量は使用される塩形態に基づいて調整される。
【0048】
「有効量」は、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量を指す。例えば、治療量は、所望の治療的効果を達成する量である。この量は、疾患、状態、障害若しくは症候群、又は関連する症状の発症を防止するのに必要な量である予防有効量と同じであっても異なってもよい。有効量は、1回以上の投与、適用又は用量で投与され得る。治療化合物の「治療有効量」(すなわち有効用量)は、選択される治療化合物に依存する。組成物は、1日1回以上から毎週1回以上まで投与することができ、例えば、本明細書に記載されるようなより頻度の少ない投与も含まれる。当業者であれば、疾患、状態、障害又は症候群の重症度、前治療、対象の全体的な健康状態及び/又は年齢、並びに他の併発する疾患、状態、障害又は症候群を含むがこれらに限定されない特定の因子が、対象を効果的に治療するのに必要な用量及びタイミングに影響を与える可能性があることを理解するであろう。更に、治療有効量の本明細書に記載される治療化合物による対象の治療は、単回治療又は一連の治療を含み得る。
【0049】
本明細書で使用する場合、本明細書に記載される化合物の「治療有効量」という用語は、対象の生物学的又は医学的反応、例えば、症状の寛解、状態の緩和、疾患の進行の遅延若しくは延期、又は疾患、状態、障害、症状若しくは症候群などの防止を誘発する化合物の量を指す。1つの非限定的な実施形態では、「治療有効量」という用語は、対象に投与されるときに、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害(例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病)を少なくとも部分的に緩和、阻害、防止及び/又は寛解するのに効果的な、本明細書に記載される化合物の量を指す。
【0050】
本明細書で定義されるように、「組み合わせ」とは、1つの単位剤形(例えば、カプセル、錠剤、小袋又はバイアル)での固定組み合わせ、自由(すなわち、非固定)組み合わせ、又は化合物I及び1つ以上の追加の治療剤が同時に独立して、若しくは時間間隔内で、具体的には組み合わせのパートナーが共同的効果、例えば相乗効果を示すことが可能なそのような時間間隔内で別々に投与され得る組み合わせ投与のための部品のキットのいずれかを指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、「アドオン」又は「アドオン療法」とは、治療に使用される治療剤の集合体を意味し、療法を受ける対象は、療法に使用される治療剤の全てを同時に開始しないように、1種以上の治療剤の第1の治療レジメンを開始してから、第1の治療レジメンに加えて1種以上の異なる治療薬の第2の治療レジメンを開始する。例えば、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブなどの少なくとも1種の更なる治療剤を既に受けている患者に、化合物IなどのBCR-ABL阻害剤を追加する。イマチニブ及びニロチニブと比較して、アシミニブのアドオン療法では、48週目に高いMR4.5率(0.0032%以下のBCR-ABL1/ABL比率は4.5logの減少(MR4.5)と同一のものと見なされる)を達成することができることが示された。アシミニブのアドオン療法を、1Lのイマチニブに対するアシミニブのアドオンと、イマチニブを継続した場合と、ニロチニブに切り替えた場合とを比較する第2相多施設非盲検ランダム化試験(NCT03578367)で検証した。累積MR4.5率は、イマチニブ及びニロチニブよりもアシミニブのアドオン療法の方で早く、且つ高く生じた。第48週までのMR4.5率は、1日1回40mgのアシミニブのアドオンで19.0%、1日1回60mgのアシミニブのアドオンで28.6%、イマチニブで0%、及びニロチニブで14.3%であった。
【0052】
「共投与」又は「組み合わせ投与」などの用語は、本明細書で使用する場合、それを必要とする単一対象(例えば、患者)への追加の治療剤の投与を包含することを意味し、追加の治療剤は、化合物I及び追加の治療剤が必ずしも同一の投与経路で及び/又は同時に投与されるわけではない治療レジメンを含むことが意図される。本明細書に記載される組み合わせの成分の各々は、同時に又は順次投与されてもよく、任意の順序で投与されてもよい。共投与には、同時投与、順次投与、重複投与、間欠投与、及び/又は連続投与、並びにそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「医薬組み合わせ」という用語は、2種以上の活性成分の組み合わせ(例えば、混合)から生じる医薬組成物を意味し、活性成分の固定組み合わせと自由組み合わせとの両方を含む。
【0054】
「固定組み合わせ」という用語は、活性成分が単一体又は単一用量の形態で対象に同時に投与されることを意味する。
【0055】
「自由組み合わせ」(非固定組み合わせ)という用語は、本明細書に定義されるような活性成分が、特定の時間に限定されることなく、任意の順序で、同時に、平行して、又は順次のいずれかで別個の存在として対象に投与されることを意味し、このような投与により、患者の体内で治療に効果的なレベルの化合物が提供される。特に、本明細書(例えば、本明細書の実施形態のいずれか又は請求項のいずれか)で使用する場合、a)化合物I及びb)少なくとも1種の追加の治療剤を含む組み合わせについての言及は、「非固定組み合わせ」を指すものであり、これらは同時に独立して、又は時間間隔内で別々に投与されてもよい。
【0056】
「同時投与」とは、本明細書で定義されるような活性成分を同日投与することを意味する。有効成分は同時投与することもでき(固定組み合わせ若しくは自由組み合わせの場合)、又は一度に1つずつ投与することができる(自由組み合わせの場合)。
【0057】
「順次投与」という用語は、2日以上の連続的な共投与の期間中に、本明細書で定義されるような有効成分の1種のみが任意の所与の日に投与されることを意味し得る。
【0058】
「重複投与」とは、2日以上の連続的な共投与の期間中に、少なくとも1日の同時投与があり、本明細書で定義されるような有効成分が1種のみの場合は少なくとも1日で投与されることを意味する。
【0059】
「連続投与」とは、任意の空白日のない共投与の期間を意味する。連続投与は、上記に記載されるように、同時投与、順次投与、又は重複投与であってよい。
【0060】
「用量」という用語は、一度に投与される薬物の特定の量を指す。用量は、例えば、製品パッケージ又は製品情報の説明書で公表され得る。
【0061】
列挙される実施形態(実施形態1~21):
実施形態1:医薬組み合わせを投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法であって、(i)治療有効量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)治療有効量の少なくとも1種の更なる治療剤を含み、医薬組み合わせが食物と共に投与される方法。
【0062】
実施形態2:BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病である、実施形態1に記載の方法。
【0063】
実施形態3:アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、1種の更なる治療剤に対するアドオン組み合わせ療法で使用される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0064】
実施形態4:アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、単回用量で約40mg又は60mgの1日総投与量で患者に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態5:1種の更なる治療剤が、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態6:1種の更なる治療剤がイマチニブである、請求項5に記載の方法。
【0067】
実施形態7:イマチニブが、単回用量で約400mgの1日総用量で患者に投与される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態8:食物が低脂肪食である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態9:医薬組み合わせが、順次又は同時に共に投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態10:単回用量で約40mg若しくは60mgのアシミニブ又はその薬学的に許容される塩の1日総用量と、単回用量で約400mgのイマチニブの1日総用量とを投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法であって、単回用量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩と、単回用量のイマチニブとが、低脂肪食と共に投与される方法。
【0071】
実施形態11:アシミニブ又はその薬学的に許容される塩の用量とイマチニブの用量とが同時に投与される、実施形態10に記載の方法。
【0072】
実施形態12:アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、イマチニブに対するアドオン組み合わせ療法で使用される、実施形態10又は11に記載の方法。
【0073】
実施形態13:食物を伴わずに治療有効量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法。
【0074】
実施形態14:食物を伴うアシミニブ又はその薬学的に許容される塩の投与が、食物を伴わないアシミニブ又はその薬学的に許容される塩の投与と比較して、対象のバイオアベイラビリティが低下する結果をもたらす、実施形態13に記載の方法。
【0075】
実施形態15:BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病である、実施形態13又は14に記載の方法。
【0076】
実施形態16:アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、分割用量で約80mgの1日総用量で患者に投与される、実施形態13~15のいずれか1つに記載の方法。食物を伴わずに治療有効量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法。
【0077】
実施形態17:(i)治療有効量のアシミニブ又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)治療有効量の少なくとも1種の更なる治療剤を患者に投与することを含む、それを必要とする患者のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法であって、アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、1種の更なる治療剤に対するアドオン組み合わせ療法で使用される方法。
【0078】
実施形態18:1種の更なる治療剤が、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択される、実施形態17に記載の方法。
【0079】
実施形態19:1種の更なる治療剤がイマチニブである、実施形態17又は18に記載の方法。
【0080】
実施形態20:アシミニブ又はその薬学的に許容される塩が、単回用量で約40mg又は60mgの1日総用量で患者に投与される、実施形態17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態21:イマチニブが、単回用量で約400mgの1日総用量で患者に投与される、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
使用及び方法
本明細書に記載される方法及び使用の様々な実施形態は、下記及び本明細書の他の箇所に含まれる。各実施形態に明記される特徴は、他の明記された特徴と組み合わされて、更なる実施形態が提供され得ることが認識されるであろう。
【0083】
一実施形態では、有効量の化合物I、又はその薬学的に許容される塩を、食物と共に投与することを含む、それを必要とする対象のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法が本明細書に提供される。一実施形態では、食物を伴わずに、それを必要とする対象のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療するのに使用される、化合物I又はその薬学的に許容される塩が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、食物を伴わずに、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害の治療のための医薬を製造するための、化合物Iの使用が本明細書に提供される。
【0084】
別の実施形態では、食物と共に有効量の化合物I、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、それを必要とする対象の慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病の症状を治療又は軽減する方法が本明細書に提供される。一実施形態では、食物を伴わずに、それを必要とする対象の慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病を治療するのに使用される、化合物I又はその薬学的に許容される塩が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、食物を伴わずに、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病の治療のための医薬を製造するための、化合物Iの使用が本明細書に提供される。
【0085】
別の実施形態では、(i)有効量の化合物I、又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)有効量の少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせを投与することを含む、それを必要とする対象のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療する方法が本明細書に提供される。一実施形態では、それを必要とする対象のBCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療するのに使用される、化合物I又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害の治療のための医薬を製造するための、化合物I又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせの使用が本明細書に提供される。
【0086】
別の実施形態では、(i)有効量の化合物I、又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)有効量の少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせを投与することを含む、それを必要とする対象の慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病を治療する方法が本明細書に提供される。一実施形態では、それを必要とする対象の慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病を治療するのに使用される、化合物I又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病の治療のための医薬を製造するための、化合物I又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせの使用が本明細書に提供される。
【0087】
別の実施形態では、食物、好ましくは低脂肪食と共に、(i)有効量の化合物I、又はその薬学的に許容される塩、並びに(ii)イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択される有効量の少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせを投与することを含む、それを必要とする対象の慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病を治療する方法が本明細書に提供される。一実施形態では、食物、好ましくは低脂肪食と共に、それを必要とする対象の慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病を治療するのに使用される、化合物I又はその薬学的に許容される塩、並びにイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択される少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、食物、好ましくは低脂肪食と共に、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される白血病の治療のための医薬を製造するための、化合物I又はその薬学的に許容される塩、並びにイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ及びバフェチニブから選択される少なくとも1種の更なる治療剤の医薬組み合わせの使用が本明細書に提供される。
【0088】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物I又はその薬学的に許容される塩は、単回用量又は分割用量で、非塩当量(non-salt equivalent)で測定した場合に約20mg~約400mgの1日総用量で患者に投与され得る。特定の実施形態では、化合物Iは、単回用量又は分割用量で約80mgの1日総用量で患者に投与される。更なる特定の実施形態では、化合物Iは、約40mgの用量で1日2回患者に投与される。
【0089】
いくつかの実施形態では、化合物I又はその薬学的に許容できる塩、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が本明細書に提供される。特定の実施形態では、医薬組成物は錠剤である。更なる特定の実施形態では、医薬組成物は、完全な錠剤又は粉砕された錠剤として投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、各単位用量中に約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、又は約100mg含まれる。
【0090】
本明細書に記載される実施形態のいずれかで使用される、化合物I又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0091】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物I又はその薬学的に許容できる塩が、それを必要とする対象に経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物Iは、完全な錠剤であるか、又は更に分割された、すなわち投与前に粉砕されて投与される錠剤の形態である。特定の実施形態では、化合物Iは、例えば患者が嚥下することができない場合に、経鼻胃管を介して投与され得る。
【0092】
医薬組成物
化合物Iは、薬学的に許容される担体と組み合わせた場合、医薬組成物として使用され得る。このような組成物は、化合物Iに加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、安定剤、可溶化剤及び他の公知の材料を含有し得る。担体の特性は投与経路に依存することになる。本明細書に記載される組成物、使用、及び方法に使用される医薬組成物はまた、特定の標的となる障害、疾患、状態、又は症候群を治療するための少なくとも1種以上の追加の治療剤を含有し得る。化合物Iとの相乗効果をもたらすために、このような追加の因子及び/又は薬剤を医薬組成物に含有してもよい。
【0093】
特定の実施形態では、化合物Iは、1種以上の従来の医薬賦形剤と組み合わせて投与され得る。薬学的に許容される賦形剤としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸などの自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)、Tween、ポロキサマー又は他の類似のポリマー送達マトリックスなどの医薬剤形において使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、トリスなどの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウムなどの塩又は電解質、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。α-、β-及びγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、又は2-及び3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学修飾誘導体、又は他の可溶化誘導体も、本明細書に記載される化合物の送達を増強させるために使用され得る。本明細書に記載されるような化学物質を0.005%~100%の範囲で含み、その残りは非毒性の賦形剤で構成される剤形又は組成物を調製してもよい。意図される組成物は、本明細書で提供される化学物質を0.001%~100%、一実施形態では0.1~95%、別の実施形態では75~85%、更なる実施形態では20~80%含有し得る。このような剤形を調製する実際の方法は当業者に公知であるか又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition(Pharmaceutical Press、London,UK.2012)を参照されたい。
【0094】
投与経路及び組成物成分
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化学物質又はその医薬組成物は、任意の許容される投与経路により、それを必要とする対象に投与することができる。許容される投与経路としては、口腔、皮膚、頸管内、洞内、気管内、腸内、硬膜外、間質、腹腔内、動脈内、気管支内、包内、脳内、嚢内、冠動脈内、皮内、腺管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、卵巣内、腹腔内、前立腺内、肺内、洞内、髄腔内、滑液嚢内、精巣内、くも膜下腔内、管内、腫瘍内、子宮内、血管内、静脈内、経鼻、経鼻胃管、経口、非経口、経皮、硬膜外、直腸、呼吸(吸入)、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経粘膜、経気管、尿管、尿道及び膣が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、好ましい投与経路は、非経口(例えば、腫瘍内)である。
【0095】
組成物は非経口投与用に製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、又は腹腔内経路による注射用に製剤化することができる。一般的には、このような組成物は注射剤として、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして調製してもよく、また、注射の前に液体を添加して溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに好適な固体形態を調製してもよく、これらの調製物を乳化してもよい。このような製剤の調製は、本開示を踏まえれば、当業者には公知であろう。
【0096】
注射剤での使用に好適な医薬形態としては、滅菌水溶液又は分散液、ゴマ油、ピーナッツ油又は含水プロピレングリコールを含む製剤及び滅菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、この形態は無菌でなければならず、容易に注射し得る程度の流動性がなければならない。また、製造及び保存条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。
【0097】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、並びに植物油を含有する溶媒又は分散媒でもあり得る。例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用すること、分散体の場合に必要とされる粒径を維持すること、及び界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物で使用することによってもたらすことができる。
【0098】
無菌の注射溶液は、必要に応じて、上記に列挙した種々の他の成分と共に、必要量の活性化合物を適切な溶媒に加えた後、濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、基本の分散媒と上記に列挙した成分に由来する所望の他の成分とを含有する無菌のビヒクルに、滅菌された様々な活性成分を加えることによって調製される。無菌の注射溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥手法であり、これにより、その予め滅菌濾過した溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分との粉末が得られる。
【0099】
腫瘍内注射は、例えば、Lammers et al.,“Effect of Intratumoral Injection on the Biodistribution and the Therapeutic Potential of HPMA Copolymer-Based Drug Delivery Systems”Neoplasia.2006,10,788-795に記載されている。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書に記載される化学物質又はその医薬組成物は、消化管又はGI管への局所投与、例えば、直腸投与に好適である。直腸組成物としては、限定はされないが、注腸剤、直腸ゲル、直腸フォーム、直腸エアロゾル、座薬、ゼリー座薬及び注腸剤(例えば、停留注腸剤)が挙げられる。
【0101】
ゲル、クリーム、注腸剤又は肛門坐剤として直腸組成物中で使用可能な薬理学的に許容される賦形剤としては、限定はされないが、ココアバターグリセリド、ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマー、PEG(PEG軟膏など)、グリセリン、グリセリン化ゼラチン、水素化植物油、ポロキサマー、種々の分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールワセリンの脂肪酸エステルとの混合物、脱水ラノリン、サメ肝油、サッカリン酸ナトリウム、メントール、スイートアーモンド油、ソルビトール、安息香酸ナトリウム、アノキシドSBN、バニラ精油、エアロゾル、フェノキシエタノール中のパラベン、p-オキシ安息香酸メチルナトリウム塩、p-オキシ安息香酸プロピルナトリウム塩、ジエチルアミン、カルボマー、カーボポール、メチルオキシベンゾエート、マクロゴールセトステアリルエーテル、ココイルカプリロカプレート、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、流動パラフィン、キサンタンガム、カルボキシメタ重亜硫酸塩、エデト酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グレープフルーツ種子抽出物、メチルスルホニルメタン(MSM)、乳酸、グリシン、ビタミンA及びビタミンEなどのビタミン類並びに酢酸カリウムのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0102】
特定の実施形態では、坐剤は、本明細書に記載される化学物質を、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、従って直腸で溶融して活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックスなどの好適な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって調製することができる。他の実施形態では、直腸投与用の組成物は、注腸剤の形態である。
【0103】
他の実施形態では、本明細書に記載される化合物又はその医薬組成物は、経口投与(例えば、固形又は液体剤形)による消化管又はGI管への局所送達に好適である。
【0104】
経口投与用の固形剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、及び顆粒剤が挙げられる。このような固形剤形では、化学物質は、1種以上の薬学的に許容される、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムなどの賦形剤、並びに/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸などの充填剤若しくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリン及びベントナイトクレーなどの吸収剤、並びにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、並びにこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。ラクトース又は乳糖のような賦形剤や高分子量のポリエチレングリコールなどを使用したソフト及びハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤として、類似したタイプの固形組成物も利用され得る。
【0105】
一実施形態では、組成物は丸剤又は錠剤などの単位剤形の形態をとり、従って、組成物は、本明細書で提供される化学物質と共に、ラクトース、スクロース、第二リン酸ジカルシウムなどの希釈剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及びデンプン、アカシア・ガム、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体などの結合剤を含み得る。別の固形剤形では、粉末、マルメ(marume)、溶液又は懸濁液(例えば、炭酸プロピレン、植物油、PEG、ポロキサマー124又はトリグリセリドにおける)は、カプセル(ゼラチン又はセルロース系カプセル)中にカプセル化される。本明細書で提供される1種以上の化学物質又は追加の活性剤が物理的に分離される単位剤形、例えば、各薬剤の顆粒を含むカプセル(又はカプセル中の錠剤)、2層錠剤、2区画ゲルキャップなども意図される。また、腸溶性コーティング又は遅延放出性の経口剤形も意図される。
【0106】
他の生理学的に許容される化合物としては、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は微生物の増殖若しくは作用を防止するのに特に有用な防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤がよく知られており、例えばフェノール及びアスコルビン酸が挙げられる。
【0107】
特定の実施形態では、賦形剤は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来のよく知られた滅菌手法によって滅菌することができる。錠剤及びカプセル剤などの種々の経口剤形の賦形剤には、無菌性は要求されない。通常ではUSP/NF規格で十分である。
【0108】
特定の実施形態では、固形経口剤形は、化学物質が胃又は下部GI(例えば、上行結腸及び/又は横行結腸及び/又は遠位結腸及び/又は小腸)に送達されるように組成物を化学的及び/又は構造的に予め処理する1つ以上の成分を更に含み得る。例示的な製剤化技術は、例えば、Filipski,K.J.,et al.,Current Topics in Medicinal Chemistry,2013,13,776-802に記載されており、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0109】
例としては、上部GI標的化手法、例えば、Accordion Pill(Intec Pharma)、フローティングカプセル、及び粘膜壁に接着し得る材料が挙げられる。
【0110】
他の例としては、下部GI標的化手法が挙げられる。腸管の様々な領域を標的化するために、いくつかの腸溶性/pH応答性コーティング及び賦形剤が利用可能である。これらの材料は、通常、所望の薬物放出のGI領域に基づいて選択される特定のpH範囲で溶解又は浸食されるように設計されたポリマーである。これらの材料は、酸に不安定な薬物を胃液から保護するか、又は活性成分が上部GIを刺激する恐れがある場合に曝露を制限するようにも機能する(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートシリーズ、Coateric(ポリビニルアセテートフタレート)、セルロースアセテートフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragitシリーズ(メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー)及びMarcoat)。他の手法としては、GI管内の局所微生物叢に応答する剤形、腸内圧崩壊型大腸デリバリーカプセル及びPulsincapが挙げられる。
【0111】
眼用組成物としては、限定はされないが、以下のいずれかの1つ以上を挙げることができる:ビスコゲン(viscogen)(例えば、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール);安定剤(例えば、Pluronic(トリブロックコポリマー)、シクロデキストリン);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、ETDA、SofZia(ホウ酸、プロピレングリコール、ソルビトール及び塩化亜鉛;Alcon Laboratories,Inc.)、Purite(安定化オキシクロロ錯体;Allergan,Inc.))。
【0112】
局所組成物としては、軟膏及びクリームを挙げることができる。軟膏は、一般的には、ワセリン又は他の石油派生物に基づく半固形製剤である。選択された活性剤を含有するクリームは、一般的には、粘稠な液体又は半固形エマルションであり、多くの場合水中油型又は油中水型である。クリーム基剤は一般的には水洗可能であり、油相、乳化相及び水相を含有する。油相は、「内」相とも呼ばれることもあるが、一般に、ワセリン及び脂肪アルコール(例えば、セチル又はステアリルアルコール)から構成され、水相は通常、必ずしもそうではないが、体積が油相を上回り、一般に湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は一般に、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性界面活性剤である。他の担体又はビヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性、安定、非刺激性及び非感作性でなければならない。
【0113】
前述の実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載される医薬組成物は、以下の1つ以上を含み得る:脂質、二分子膜間架橋多重膜ベシクル、生分解性ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)[PLGA]系又はポリ無水物系ナノ粒子又は微粒子及びナノ多孔質粒子支持脂質二重層。
【0114】
投与レジメン及び投与方式
投与レジメンは、所望される最適応答(例えば、治療的応答)をもたらすように調整される。使用される化合物、標的となる疾患、状態、障害、又は症候群、及びそれらの関連する段階に応じて、化合物Iを含む医薬組成物の投与レジメン、すなわち、投与される用量及び/又は頻度は変動する可能性がある。使用される化合物、疾患、状態、障害、又は症候群、及びそれらの関連する段階に応じて、a)化合物I及びb)少なくとも1種の更なる治療剤を含む医薬組み合わせの投与レジメン、すなわち、投与される用量及び/又は頻度は変動する可能性がある。
【0115】
BCR-ABLによって媒介される疾患又は障害を治療するための方法で化合物Iを投与する場合、投与量は、対象の体重の約0.0001~約100mg/kg、更に通常では約0.01~約30mg/kgの範囲である。特定の実施形態では、化合物Iは、約20mg~約400mg、約40mg~約300mg、約80mg~約240mg、約40mg~約80mg、約80mgの1日用量で投与される。特定の実施形態では、化合物Iは、約20mg、約40mg、約80mg、又は約100mgの1日用量で投与される。特定の実施形態では、化合物Iは1日1回投与される。他の実施形態では、化合物Iは、1日2回、3回、又は4回投与される。好ましい実施形態では、化合物Iは、約80mgの1日総用量で投与され、1回又は2回の分割用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物Iは、2回の分割用量で80mgの1日用量で投与される。別の実施形態では、化合物Iは、40mgの1日用量で1日1回投与される。
【0116】
キット
本明細書では、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストーム症候群を治療又は予防するための方法に使用されるキットも包含され、これらには、液体若しくは凍結乾燥形態の化合物I、又は化合物Iを含む医薬組成物が含まれ得る。加えて、このようなキットは、化合物Iを投与するための手段(例えば、シリンジ及びバイアル、プレフィルドシリンジ、プレフィルドペン)と使用説明書とを含み得る。これらのキットは、例えば、化合物Iと組み合わせて送達するための追加の治療剤(本明細書の他の箇所で記載されている)を含み得る。
【0117】
「投与するための手段」という語句は、限定はされないが、ドロッパー、プレフィルドシリンジ、バイアル及びシリンジ、注射ペン、自動注入装置、静脈内点滴及びバッグ、ポンプなどを含めた、薬物を患者に全身投与するための任意の利用可能な実施手段を指すために使用される。このような物品により、患者が薬剤を自己投与する(すなわち、自分自身で薬剤を投与する)こともでき、介護者が患者に薬剤を投与することもでき、又は医師若しくは他の医療専門家が薬剤を投与することもできる。
【0118】
キットの各構成要素は、通常、個別の容器内に封入されており、全ての種々の容器は、使用説明書と共に単一のパッケージ内にある。
【0119】
各実施形態は、そのような組み合わせが実施形態の説明と矛盾しない程度に、1つ以上の他の実施形態と組み合わせてもよいことが理解されよう。更に、上記で提供された実施形態は、全ての実施形態を含むものと理解され、実施形態の組み合わせから生じた結果としてそのような実施形態を含むことが理解されよう。
【0120】
記載される方法及び使用の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【実施例】
【0121】
以下の実施例にて、本明細書に記載される方法及び使用を説明する。これらは、しかしながら、記載される方法及び使用の範囲をいかなる形であっても限定することを意図しない。実施形態の他の変形形態は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
【0122】
実施例1:フラックス解析
アシミニブ(ABL001)の食物の影響(FE)に関する更なる情報を提供するため、40mgの用量のアシミニブの溶解及び人工脂質膜の透過に及ぼす胆汁成分の影響を測定する実験的なインビトロ試験を行った。
【0123】
方法
米国薬局方の方法II(USP II)の溶解装置(Distek corporation;New Jersey、United States)のドナー区画に、低濃度の胆汁酸塩(絶食条件を模したもの;絶食時人工腸液[FaSSIF];3mMのタウロコール酸/タウロデオキシコール酸、0.2mMのリン脂質/リゾリン脂質、pH5.8)、高濃度の胆汁酸塩(満腹の腸の状態を模したもの;摂食時人工腸液[FeSSIF];10mMのタウロコール酸/タウロデオキシコール酸、2mMのリン脂質/リゾリン脂質、0.8/5.0mMのオレイン酸/モノオレイン酸グリセロール、pH6.0)を含むか、又は胆汁酸塩を含まずに(対照;pH 6.5)、900mLのマレイン酸緩衝液を充填した。FaSSIF及びFeSSIFは、製造業者の指示(Biorelevant、Biorelevant.com(2021年3月にアクセスされた)において利用可能)に従って調製した。3つの構成の各々で、2錠のフィルムコーティング錠剤のアシミニブ20mg(40mgの総用量を実現するため)を緩衝液に添加し、絶えず撹拌しながら(100rpm)37℃に維持した。次いで、0.45μmのポリフッ化ビニリデン膜及び人工脂質膜によって密閉され、難溶性分子を高濃度に可溶化するのを促進する登録商標のアクセプター緩衝液(pION,Inc;Massachusetts、USA)12mLを含有するレシーバー区画を、ドナー区画に挿入した。アシミニブの溶解速度とフラックス速度は、光ファイバープローブを使用してドナー区画とレシーバー区画のアシミニブ濃度を測定することによって求めた。条件毎に2回の反復を行った。
【0124】
考察及び結果
脂肪の取り込みは、排泄される胆汁酸のレベルと正の相関関係があることが示されており、そのため、この胆汁の組成の差異は、満腹条件と絶食条件を反映することを目的するものであった(Trefflich et al.Associations between Dietary Patterns and Bile Acids-Results from a Cross-Sectional Study in Vegans and Omnivores.Nutrients 2019;12(1))。アシミニブの溶解速度は、満腹状態を模した胆汁酸塩、酸及び脂質の組成物を含む緩衝液(FeSSIF)で最も速く、絶食状態を模した緩衝液(FaSSIF)ではそれより遅く、胆汁成分を含まない対照緩衝液では最も遅かった(
図1A)。逆に、アシミニブのフラックス速度、又は人工脂質膜の透過は、満腹状態の緩衝液(FeSSIF;0.44μg/分;94.2%の溶解)で最も低く、絶食状態の緩衝液(FaSSIF;1.45μg/分;93.1%の溶解)ではそれより高く、対照緩衝液(2.66μg/分;82.3%の溶解)で最も高かった(
図1B)。
【0125】
実施例2:健康なボランティアを対象としたABL001(アシミニブ)の薬物動態に及ぼすイマチニブ及び食物の影響を評価する第I相単施設2群非盲検試験
非盲検単施設第I相試験では、薬物間相互作用(DDI)試験群と食物の影響(FE)試験群の別々の2つの群の健康なボランティアを対象とした。2つの試験群を互いに独立して組み入れた。
図2は、治療プロトコールの図式的概略である。
【0126】
本試験の主目標は以下の通りである:
DDI試験群
・低脂肪食条件下の健康な対象で、単回用量のアシミニブの薬物動態に及ぼすイマチニブ400mgの定常状態における1日1回の反復投与の影響を評価すること。
FE試験群
・食物条件の変動下の健康な対象で、単回用量のアシミニブの経口バイオアベイラビリティにおけるFEを評価すること。
【0127】
主目標の評価項目(EP)は以下の通りである:
・主要薬物動態パラメーター:アシミニブのCmax、AUCinf、及びAUClast
・副次的薬物動態パラメーター:vのTmax、Tlast、AUC0-96h、ラムダ_z、T1/2、CL/F、Vz/F。
【0128】
本試験の副次的目的は以下の通りである:
DDI試験群
・健康な対象における低脂肪食条件下で400mgのイマチニブと同時に投与されたアシミニブの安全性及び忍容性を評価すること。
・健康な対象における低脂肪食条件下で単回用量のアシミニブと組み合わせて投与する場合の、1日1回の400mgのイマチニブの定常状態の薬物動態を評価すること。
FE試験群
・食物条件の変動下で健康な対象に投与される単回経口用量のアシミニブの安全性及び忍容性を評価すること。
【0129】
副次的目的の評価項目(EP)は以下の通りである:
・有害事象及び重篤な有害事象の発生、血液学的及び血液化学値の変化、生命徴候並びに心電図などの安全性パラメーター。
・副次的薬物動態パラメーター:DDI試験群におけるイマチニブのTmax、Tlast、AUC0-96h、ラムダ_z、T1/2、CL/F、Vz/F。
【0130】
【0131】
試験デザイン
本試験は第I相単施設非盲検2群デザインである。各対象は、スクリーニング期間(-22日目~-2日目)、治療前期間(ベースライン、-1日目)、治療期間、治療終了時の来院、及び30日の安全性追跡調査(電話)を受けた。
【0132】
試験群1(DDI試験群)
DDI試験群は、アシミニブの薬物動態(PK)に及ぼす、低脂肪食と共に投与された反復用量のイマチニブ400mgの影響を評価した単一順序非ランダム化群であった。この群は、最大21日間のスクリーニング期間、ベースライン期間(-1日目)、及び13日間の治療期間(1日目~13日目)、並びに最終投与後の30日の更なる安全性期間からなるものであった。
【0133】
DDI群に組み入れられた最初の3人の対象は、治療終了の来院後に更に3日間の安全性段階を受けるように計画した。最初の3人の対象に安全性所見が認められなかった場合、本試験では、残りの20人の対象の組み入れを継続することとした。3人の対象のうち1人に基準を満たす安全性所見が認められた場合、更に3人の対象を組み入れ、試験の更なる組み入れを継続する前に、最短期間の17日で観察するように計画した。
【0134】
試験群1の各対象の治療順序を表1に示す。
・1日目:絶食して少なくとも10時間後、対象にFDA低脂肪食を提供した。食事を開始して30分±5分後、単回用量のアシミニブ40mgを投与した。
・5~8日目:イマチニブ400mgを食物とコップ1杯の水と共に1日1回投与した。
・5日目、イマチニブの投与前にアシミニブ測定用の血液試料を採取した。
・9日目:絶食して少なくとも10時間後、対象にFDA低脂肪食を提供した。食事を開始して30分±5分後、単回用量のイマチニブ400mgとアシミニブ40mgを投与した。
・10~12日目:イマチニブ400mgを食物とコップ1杯の水と共に1日1回投与した。
【0135】
【0136】
試験群2(FE試験群)
FE試験群は、アシミニブのPKに及ぼす様々な食物条件の影響を評価するクロスオーバーランダム化群であった。本試験は、最大21日間のスクリーニング期間、3つのベースライン期間(各治療期間の前に1つのベースライン期間)、及び3つの治療期間(各々が7日の休薬によって隔てられている)、並びに最終投与後の30日の更なる安全性期間からなるものであった。各対象は3回の治療期間を受けるが、この期間に、アシミニブが絶食条件下で、低脂肪食と共に、又は高脂肪食と共に投与された。
【0137】
対象を6つの治療順序のうちの1つにランダム化し、それぞれの治療順序に約4人の対象とした。各対象は、前回の治療期間の投与日から始まり、次の期間のベースライン日まで(ベースライン日を含む)に、7日間の休薬に隔てられた3つの治療期間を受けた。試験治療の最終用量の投与から3日後に、治療終了(EOT)評価を実施した。最終投与の30日後に、電話による安全性追跡調査を設定した。
【0138】
試験群2の各対象の治療順序を表2に示す。
【0139】
1日目、8日目及び15日目に、様々な食物条件下で単回経口用量のアシミニブ錠40mgを全ての対象に投与することとした。全ての対象が、1日目、8日目及び15日目に、3回の用量のアシミニブを受けた。
【0140】
【0141】
食事要件及び治療投与
スクリーニング過程中や試験期間全体を通して、激しい運動及びサウナを避けること、CYP3A4を阻害することが知られている、アルコール、ケシの実を含有する食品、カフェイン入りの食品及び飲料、並びに果物(例えば、グレープフルーツ、スターフルーツ、クランベリー、パメロ、ザクロ、及びセルビアオレンジ)を避けることを対象に伝え、これらを制限するように注意喚起した。
【0142】
試験群1(DDI試験群)
・一晩10時間以上絶食した後の朝、FDAの低脂肪の朝食を開始して30±5分後に、240mLの水と共にアシミニブを投与した。
・朝、食物(標準的な)及び約200mLの水と共にイマチニブを投与した。
・9日目、低脂肪の朝食を開始して30±5分後に、240mLの水と共にイマチニブとアシミニブを投与し、イマチニブを最初に服用し、その直後にアシミニブを服用した。
・アシミニブ、及びアシミニブ+イマチニブの投与後の少なくとも4時間、並びにイマチニブを単独で受けた日で少なくとも1時間は、食物を取ることを許可しなかった。
【0143】
試験群2(FE試験群)
・一晩10時間以上絶食した後の朝、絶食条件下(すなわち、朝食を抜いて)、低脂肪の朝食を開始して30±5分後、又は高脂肪の朝食を開始して30±5分後、240mLの水と共にアシミニブを投与した。
・3つの食物条件の全てにおいて、参加者はアシミニブ投与後に4時間絶食することが求められた。
【0144】
高脂肪食及び低脂肪食の組成は、高脂肪食が800~1000カロリー、約50%の脂肪、約35%の炭水化物、及び約15%のタンパク質から構成され、低脂肪食が400カロリー以下、20%未満の脂肪から構成される、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)のガイダンスに基づくものである(FDA Guidance on Food Effect Studies,Dec 2002)。
【0145】
投与前の1時間から投与後の1時間までは、投与前に朝食と共に摂取した水分と、試験薬を服薬するために摂取した水を除き、水分の摂取を許可しなかった。それ以外であれば、要求通りに水を摂取させた。
【0146】
参加者は、30分以内に提供された食物の内容全てを摂取することが義務づけられ、食物の摂取が不完全なあらゆる事象を記録した。アシミニブとイマチニブは、フィルムコーティング錠剤として投与された。
【0147】
集団
組み入れ基準及び除外基準を満たす約47人の健康な成人男性及び女性対象を、本試験に組み入れるように計画した。
【0148】
主な組み入れ基準
肥満度指数(BMI)が18.0~29.9kg/m2であり、病歴、身体検査、生命徴候及び心電図(ECG)、並びに臨床検査から臨床的に重大な所見がないと判断されるような、健康状態の良好な18~55歳の成人男性及び/又は女性(生殖不能か又は閉経後の)対象を本試験に組み入れた。
【0149】
主な除外基準
心臓又は心再分極異常、免疫不全疾患の病歴、試験治療薬の吸収、分布、代謝又は排泄を阻害する可能性のある任意の外科的又は医学的状態、任意の臓器系の悪性病変(皮膚の限局性皮膚基底細胞癌又は上皮内子宮頸癌以外)の病歴、及び喫煙。
【0150】
薬物動態サンプリング及び評価
・DDI群では、アシミニブの血中濃度を1~5日目及び9~13日目にわたって評価し、投与前と、投与後0.5、1、2、3、4、6、8、10及び12時間(1日目及び9日目)と、投与後24及び36時間(2日目及び10日目)と、投与後48、72及び96時間(3~5日目及び11~13日目)とで試料を採取した。
・イマチニブのPKを9~10日目及び12~13日目にわたって評価し、投与前と、投与後の0.5、1、2、3、4、5、6、8、10及び12時間(9日目及び12日目)と、投与後24時間(10日目及び13日目)とで試料を採取した。
・FE群では、アシミニブのPKを3つの治療期間のそれぞれの1~4日目にわたって評価し、投与前と、投与後0.5、1、2、3、4、6、8、10及び12時間(1日目)と、投与後24及び36時間(2日目)と、投与後48及び72及び96時間(3~4日目)とで試料を採取した。
・アシミニブ及びイマチニブの血漿濃度を、アシミニブの場合は1.00~5000ng/mL、イマチニブの場合は20.0~10,000ng/mLのダイナミックレンジで、有効性の確認された液体クロマトグラフィータンデム質量分析アッセイ(LC-MS/MS)を使用して測定した。この方法は、特異性、感度、マトリックス効果、回収率、直線性、正確度と精密度、希釈の完全性、バッチサイズ、及び安定性に関して有効性が確認されている。
・アシミニブの分析の場合、LLOQ(1.00ng/mL)の正確度と精密度は、それぞれバイアスが±5.0%以内であり、≦8.0%CVであった。日中評価及び日間評価を基準とすると、他の内部標準溶液試料の正確度(%バイアス)は-2.0~5.3%の範囲であり、精密度は2.8~6.2%CVであった。
・イマチニブの分析の場合、LLOQ(20.0ng/mL)の正確度と精密度は、それぞれバイアスが±1.5%以内であり、≦8.8%CVであった。日中評価及び日間評価を基準として、他の内部標準溶液試料の正確度(%バイアス)は-5.0%~1.8%の範囲であり、精密度は3.4%~7.4%CVであった。
【0151】
統計解析
アシミニブの主要なPKパラメーターの対象内の変動性を30%と仮定すると(これまでに報告されたデータ17に基づく)、1群当たり18人の参加者の症例数が、対数スケールにおける試験パラメーター及び参照パラメーター間の差異に対して90%CIの十分な精密度をもたらすものと推定され、観察された平均値の差異に対する許容誤差は、DDI群で0.170、FE群で0.166であった(両側α水準が0.10の対応のあるt検定に基づく)。潜在的な20%の中断率を考慮して、DDI群には23人の参加者、FE群には24人の参加者を組み入れることとした。
・PK解析は、少なくとも1つの評価可能なPKプロファイルを有する全ての参加者を基準とした。
・DDI群では、参加者が5~9日目に計画された全用量のイマチニブ(9日目のプロファイル)を受けた場合、5~9日目に計画された全用量のイマチニブと10~12日目に計画された少なくとも2用量のイマチニブ(12日目のプロファイル)とを受けた場合、対応する日に計画された用量のアシミニブを受けた場合、事前に規定された絶食要件を満たした場合、アシミニブ及び/又はイマチニブの投与後4時間以内に嘔吐しなかった場合、並びにアシミニブの少なくとも1つの一次PKパラメーター(アシミニブPKプロファイル)又はイマチニブの少なくとも1つの一次PKパラメーター(イマチニブPKプロファイル)を提供した場合、参加者のPKプロファイルを評価可能であると見なした。
・FE群では、参加者が計画された治療のうちの1つを受け、それぞれの摂食治療用の食物の少なくとも75%を摂取し、事前に規定された治療投与要件を満たし、少なくとも1つの一次アシミニブPKパラメーターを提供し、事前に規定された絶食要件を満たし、アシミニブ投与後の4時間以内に嘔吐しなかった場合、参加者のアシミニブのPKプロファイルを評価可能であると見なした。
・両群の安全性対象集団は、試験治療の用量を1回以上受けた全ての参加者から構成されていた。Phoenix WinNonlin(登録商標)(Pharsight、Mountain View、CA)ソフトウェアバージョン6.4を用いるノンコンパートメント法を用いて、個々の血漿濃度-時間プロファイルからPKパラメーターを算出した。PKパラメーターは、幾何平均(Gmean)、幾何学的変動係数(GCV%)、中央値、最小値、及び最大値を用いて集計した。ベースライン特性は、カテゴリーデータでは度数及び百分率で、連続データでは中央値、最小値、及び最大値として表される。欠測値及びLLOQ未満の値は、Gmean及びGCV%の計算において欠測として処理した。Cmax、AUCinf、及びAUClastの一次アシミニブPKパラメーターについて正式な統計比較を行った。DDI群では、アシミニブ単独(参照)に対するアシミニブ+イマチニブ(試験)の正式な統計比較を評価した。治療を固定因子、参加者をランダム因子として含め、対数変換したPKパラメーターに線形混合モデルをフィッティングした。FE群では、絶食時(参照)に対する低脂肪食(試験)、及び絶食時(参照)に対する高脂肪食(試験)の正式な統計比較を評価した。治療、期間及び順序を固定因子として含み、参加者をランダム因子として順序内にネストした、対数変換したPKパラメーターに線形混合モデルをフィッティングした。比較の全てに対して、試験及び参照間の差異の点推定及び対応する両側90%信頼区間(CI)を算出した。幾何平均(Gmean)比の推定値及び90%CIを元のスケールで得るために、この点推定及びCIを真数変換した。二次PKパラメーターの特性は記述的のみである。Statistical Analysis System(SAS)バージョン9.4を用いて全ての解析を行った。
【0152】
安全性
・身体検査、生命徴候、身長及び体重、検査機関評価、心臓評価、食事記録を評価し、同様に来院毎に有害事象(AE)を収集することによってモニターする。
○AEは、医薬品規制用語集(MedDRA)第20.1版及びAEの有害事象共通用語規準[CTCAE]第4.03版を用いてコード化した。
・全ての臨床試料分析(血液学的、血液化学的分析)は、現地検査機関で実施した。
【0153】
結果
参加者の内訳及びベースライン特性
全体として、47人の参加者が本試験に組み入れられ、そのうち、DDI群には23人の参加者、FE群には24人の参加者が組み入れられた。
・DDI群では、組み入れられた最初の3人の参加者が、治療終了の来院後に更に3日間の安全性段階を受けた(センチネル投与)。これらの3人の参加者には安全性所見が認められられず、これにより、残りの20人の参加者が組み入れられた。22人の参加者がDDI試験を完了し、22人の参加者全員が、1日目及び9日目に計画された全用量のアシミニブを受け、5~12日目に全8用量のイマチニブを受けた。1人の参加者がイマチニブを投与して4時間以内に嘔吐したため(グレード1の嘔吐)5日目に試験を中断し、プロトコールに従ってイマチニブのPK解析対象集団から除外した。
・FE群では、組み入れられた24人の参加者全員(6つの順序毎に4人の参加者)が試験を完了し、全ての参加者が計画された全用量のアシミニブを受けた。1人の参加者が、治療期間の1つの期間中に食事を開始した後の30±5分以内にアシミニブを受けておらず、PK解析から除外した。
・DDI群では、ベースライン時の年齢中央値は47.0歳(範囲:23~55歳)であり、肥満度指数(BMI)の中央値は25.3(範囲:19.1~29.5)であり、87.0%(20/23人)の参加者が男性であり、95.7%(22/23人)が白人であり、1人の参加者がアフリカ系アメリカ人であった。
・FE群では、年齢中央値(範囲)は44.5歳(21~54歳)であり、BMI中央値は24.65(範囲19.7~29.4)であり、参加者の95.8%(23/24人)が男性であり、参加者全員が白人であった。
・DDI群の1人の参加者は、5日目及び6日目に頭痛のためパラセタモール(1日1回500mg)を併用して受けていた。FE群では併用薬は投与されなかった。
【0154】
DDI群のPK解析
アシミニブの血漿濃度-時間プロファイルから、アシミニブを単独で投与した場合と比較して、アシミニブを定常状態でイマチニブと共に投与した場合に、より高い曝露量となったことが明らかとなった(
図3A)。
・どちらのレジメンでも、Cmaxに到達した後に、急速な吸収に続いて二相性の低下が観察された。
・記述的PKパラメーターから、アシミニブ単剤療法よりもイマチニブと組み合わせて投与された場合のアシミニブでより高い曝露量となったことを示した(表1)。Tmax中央値は、アシミニブを単独で投与したか(3.00時間;1.01~6.00時間の範囲)、又はイマチニブと共に投与したか(3.00時間;1.94~4.00時間の範囲)に関わらず同等であった。T1/2のGmeanは、イマチニブと組み合わせたアシミニブ(15.3時間)とイマチニブと組み合わせなかったアシミニブ(13.7時間)との間で同等であった。アシミニブのクリアランスのGmeanは、アシミニブをイマチニブと共に投与した場合では5.19L/時間であったが、アシミニブを単独で投与した場合ではそれより高く、11.1L/時間であった。
・一次アシミニブPKパラメーターの統計比較から、アシミニブ+イマチニブでは、アシミニブ単独と比較して、全身的なアシミニブ曝露量が約2倍に増加した(アシミニブ+イマチニブとアシミニブを比較したGmean比[90% CI]、AUCinfが2.08[1.93;2.24];AUClastが2.07[1.92;2.23])、及びCmaxが1.6(Gmean比[90% CI]1.59[1.45;1.75])(表3)。
・AUCinfとAUClastの対象間変動率(GCV%)は、アシミニブ単独及びアシミニブ+イマチニブ間で同等であり(31.7~31.8%に対して27.0~28.0)であり、Cmaxではアシミニブ+イマチニブよりもアシミニブ単独の方が高かった(33.4%に対して16.1%)(表4)。
【0155】
イマチニブの血漿濃度-時間プロファイルから、アシミニブとイマチニブを共投与した場合、イマチニブを単独で投与した場合と比較して、イマチニブの曝露量がわずかに低く、且つわずかに遅延したことが示された。
・この効果は、主に吸収相の間に観察され、アシミニブの存在下でイマチニブの吸収が遅延した(
図3B)。
・アシミニブ+イマチニブに対してイマチニブ単独を比較したイマチニブのPKパラメーターは、AUClastのGmeanがそれぞれ29,600ng×h/mL(GCV%は27.3%)に対して33,600ng×h/mL(GCV%は28.6%)であり、AUC0-24hのGmeanがそれぞれ30,100ng×h/mL(GCV%は27.4%)に対して33,600ng×h/mL(GCV%は28.6%)であり、CmaxのGmeanがそれぞれ2020ng/mL(GCV%は26.9%)に対して2340ng/mL(GCV%は29.5%)であった。イマチニブのTmax中央値は、イマチニブをアシミニブと共に投与したか(3.01[範囲1.95~5.00]時間)又は単独で投与したか(3.00[範囲0.993~5.95]時間)に関わらず同等であった。
【0156】
【0157】
【0158】
FE群のPK解析
異なる食物条件下でのアシミニブの血漿濃度-時間プロファイルから、絶食条件と比較して、食物と共に投与すると、特に高脂肪食ではアシミニブの曝露量が減少し、Tmaxが遅延したことが示された(
図4)。
・同様に、記述的PKパラメーターから、絶食条件と比較して、高脂肪食又は低脂肪食と共に投与した場合、アシミニブに対する曝露量が少なく、低脂肪食よりも高脂肪食の方で、観察された曝露量がより大きく減少したことが示された(表5)。
・アシミニブのTmax中央値(範囲)は、絶食状態(2.01[1.00~5.00]時間)と比較して、アシミニブを高脂肪食(4.01[1.00~8.00]時間)又は低脂肪食(3.00[0.997~5.00]時間)と共に投与した場合の方が長かった。
【0159】
これらの知見は、アシミニブのPKパラメーターの統計比較で確認され、付随する食物の脂肪含有量が高ければ高いほど、アシミニブに対する曝露量が低いことが示された(表6)。
・例えば、AUCinfのGmean比は、低脂肪食条件下で0.700(90%CI 0.631~0.776)であり、絶食条件と比較して曝露量が30%減少したことを示している。
・高脂肪食条件下では、AUCinfのGmean比は0.377(90%CI 0.341~0.417)であり、絶食状態と比較して曝露量が62.3%減少したことを示している。AUClast及びCmaxでも同様のパターンが観察された。一次PKパラメーターの対象間変動率は、低脂肪食(GCV% AUCinf 29.1%、AUClast 29.0%、Cmax 39.8%)又は絶食条件(GCV% AUCinf 35.5%、AUClast 35.2%、Cmax 39.7%)と比較して、高脂肪食(GCV% AUCinf 43.9%、AUClast 43.8%、Cmax 51.3%)と共にアシミニブを投与した場合の方がわずかに高かった(表5)。
【0160】
健常者におけるアシミニブのPKに及ぼす観察された食物の影響は、40mgの用量のアシミニブが人工脂質膜をどのように溶解して透過するのかについて、異なる胆汁の組成の影響を評価した、実施例1の実験上のインビトロフラックス試験でも裏付けられた。
【0161】
【0162】
【0163】
安全性
どちらの試験群でも、単回用量の40mgのアシミニブは忍容性が良好であった。
・このことは、DDI群におけるアシミニブ+イマチニブのセンチネル投与コホートにも当てはまるため、組み入れ及び治療を全てのDDIコホートに拡大した。
・DDI群では、14人の参加者(60.9%)で少なくとも1件のAEが報告された。最も頻繁に報告されたAE(参加者の5%以上)は、頭痛(n=5、21.7%)並びに関節痛、紅斑、疲労感、熱感、鼻詰まり、鼻咽腔炎、及び嘔吐(各n=2、8.7%)であった。
・FE群では、11人の参加者(45.8%)に少なくとも1つのAEがあり、最も頻繁に報告されたAEは、中咽頭痛及び鼻炎(各n=2、8.3%)であった。
・どちらの試験群でも、AEの全てがCTCAEグレード1又は2であり、重篤なAEはなかった。検査機関評価、生命徴候、又はECGに臨床的に重大な異常はなかった。
・DDI群では、1人の参加者にグレード3の好中球の減少と、グレード2の白血球の減少があった。
・FE群では、1人の参加者が絶食治療期間の2日目にグレード3のトリアシルグリセロールリパーゼの上昇があったが、3日目には正常となるまで改善した。FE群の別の参加者は、低脂肪治療期間の2~6日目及びEOTまでの絶食期間の9日目にグレード2のトリグリセリドの上昇があり、EOTまでの高脂肪治療期間の14日目にグレード2のコレステロールの上昇があったが、31日目に正常に戻り、高脂肪治療期間の16日目にグレード3のリパーゼの上昇があったが、18日目に正常となるまで回復した。DDI群又はFE群のいずれにおいても、グレード3以上の他の血液学的又は生化学的異常は存在しなかった。
【0164】
考察
本第1相試験では、健康なボランティアを対象に、単回用量のアシミニブ40mg(FMI錠剤製剤)のPKに及ぼすイマチニブの定常状態(低脂肪食条件下)又は食物条件の変動の影響を評価した。
・イマチニブ、従ってアシミニブ+イマチニブの組み合わせは、胃の不快感を最小限にするために食物と共に投与する。
・このDDI試験は、同一の標準的なFDAの低脂肪食条件下で服用した場合のイマチニブを伴うアシミニブとイマチニブを伴わないアシミニブとを比較するものであり、従って、この2つの状況間のPKの差は、アシミニブ及びイマチニブ間のDDIを反映するものであることが想定される。
・アシミニブ+イマチニブ(低脂肪食と共に服用)では、単剤のアシミニブ(同一の食物条件下で服用)と比較して、アシミニブの全身曝露量(AUCinf及びAUClast)が2倍に増加し、アシミニブのCmaxが1.6倍に増加する結果となった。
・アシミニブのTmaxは、アシミニブ単独とアシミニブ+イマチニブとの間で実質的に異なるものではなかった。本試験で観察されたイマチニブのPKパラメーターは、CML患者を対象としたイマチニブ単剤用量設定試験で以前報告されたPKパラメーターと同等であり(Peng et.al.,Clinical pharmacokinetics of imatinib.Clin Pharmacokinet 2005;44(9);879-94)、また、CML患者を対象としたイマチニブ+アシミニブにより観察されたPKパラメーターとも同等であり(Cortes et.al..Combination Therapy Using Asciminib Plus Imatinib in Patients With Chronic Myeloid Leukemia:Results From a Phase 1 Study.Presented at the European Hematology Association 24th Annual Congress;2019;Amsterdam,the Netherlands)、このことは、アシミニブがイマチニブのPKに影響を及ぼす可能性が低いことを示している。
【0165】
アシミニブの曝露量に及ぼすイマチニブの観察された効果は、イマチニブがアシミニブの代謝に関与する複数の経路を阻害するという事実に起因し得る。
・アシミニブは、いくつかのUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT;主にUGT2B7及びUGT2B17)を介した直接的なグルクロン酸抱合と、主にCYP3A4を介した酸化とを受け、また、乳癌抵抗性タンパク質(BCRP)の基質でもあり、胆汁分泌がそのクリアランスに寄与する(Tran et al.,Disposition of asciminib,a potent BCR-ABL1 tyrosine kinase inhibitor,in healthy male subjects.Xenobiotica 2020;50(2);150-69)。
・他方では、イマチニブは、CYP3A4、14のインビトロで可逆的な中程度の阻害剤であり、UGT2B17、23に高い効力を有する様々なUGTの阻害剤であり、BCRP及びP糖タンパク質の阻害剤である(D’Cunha et al.,TKI combination therapy;strategy to enhance dasatinib uptake by inhibiting Pgp- and BCRP-mediated efflux.Biopharm Drug Dispos 2016;37(7);397-408)。
【0166】
重要なことに、CML患者を対象とした単剤のアシミニブの最大耐量は、1日2回の最大200mgの用量で到達されなかったため、アシミニブ+イマチニブによる試験で観察された2倍に増加したアシミニブの曝露量が、組み合わせレジメンの安全性プロファイルに悪影響を及ぼすことは想定外である(Hughes et al.,Asciminib in Chronic Myeloid Leukemia after ABL Kinase Inhibitor Failure.N Engl J Med 2019;381(24);2315-26)。
・実際に、CML患者における組み合わせの利用可能な安全性データと共に、センチネル投与コホートのAEデータを含む本試験のAEデータは、アシミニブ+イマチニブは忍容性が良好であり、安全性プロファイルが単剤のアシミニブ9の安全性プロファイルと一致し、且つ新たな安全性シグナルがなかったことを示している。
【0167】
FE分析の結果から、アシミニブを食物と共に投与する場合に、アシミニブの曝露量が減少することが示された。この効果は、食物の脂肪含有量が高ければ高いほどより明らかとなり、アシミニブのAUCinf及びAUClastは、絶食条件と比較して、低脂肪食では30%減少し、高脂肪食では62~63%減少した。また、絶食条件と比較して、アシミニブを食物と共に投与した場合にTmaxの遅延も観察されており、曝露量に関して既に述べたように、Tmaxのシフトは食物の脂肪含有量と共に増加した。恐らく、観察されたアシミニブのFEは、特に、高脂肪食の後などの胃腸管の胆汁酸の濃度が高い場合に、アシミニブが胆汁酸によって隔離されることに関連している。この考えは、緩衝液中の胆汁成分の濃度が高ければ高いほど(すなわち、摂取した食事20の脂肪含有量が高ければ高いほど)、アシミニブのフラックス速度がより低下する(すなわち、Tmaxがより長くなり、インビボにおけるアシミニブの吸収率がより低下する)ことを示したフラックス分析の結果によって裏付けられる。
【0168】
FEの程度と同様に、本試験のアシミニブFMI錠剤製剤で観察されたアシミニブのAUCinf、AUClast及びCmaxの絶対測定値は、初期のアシミニブ製剤を用いたFEにおけるこれまでの結果と一致している。これらの初期のアシミニブ錠剤製剤では、アシミニブの曝露量は、絶食状態と比較して、錠剤の変形形態に関わらず低脂肪食及び高脂肪食によりそれぞれ約30%及び約65%減少した。15これらのFEの知見に基づき、単剤としてのアシミニブ(FMI錠剤製剤)は、絶食状態で投与することとする。
【0169】
結論
本試験により、アシミニブ(FMI錠剤製剤)をイマチニブと共投与すると、同一の食物条件下で服用した場合のアシミニブ単独と比較して、イマチニブの曝露量は変化せずにアシミニブの曝露量が中程度(2倍)に増加する結果となった。従って、イマチニブと組み合わせて(食物と共に)使用する場合、アシミニブは、絶食状態で推奨されるアシミニブ単剤用量の1日2回の40mgの投与と比較して、1日1回40mg又は60mgで投与される(Saglio et al.,Randomized,Open-Label,Multicenter,Phase 2 Study of Asciminib(ABL001)As an Add-on to Imatinib Versus Continued Imatinib Versus Switch to Nilotinib in Patients with Chronic Myeloid Leukemia in Chronic Phase Who Have Not Achieved a Deep Molecular Response with Frontline Imatinib.ASH;2019;2019.p.(Supplement_1);5910)。食物自体、特に高脂肪食では、脂肪含有量に応じてアシミニブの曝露量に中程度(30~60%)の減少がもたらされるが、これは恐らく胆汁酸によるアシミニブの隔離に関係するものである。従って、最適以下の曝露量となることを避けるため、単剤としてのアシミニブは絶食状態で投与することが推奨される。アシミニブ+イマチニブの組み合わせは、健康なボランティアを対象とした本試験において忍容性が良好であり、これはCML患者における予備的臨床経験と一致するものである。全体として、この知見により、1日1回のイマチニブ400mgと1日1回のアシミニブ40mgを低脂肪食条件下で共投与すると、アシミニブの曝露量は、絶食条件下の推奨されるアシミニブ単剤療法の用量(1日2回40mg)でもたらされるアシミニブの曝露量と同様に中程度に増加する結果となり、安全性プロファイルが好ましいものであったことが示された。1日1回の40mg又は60mgのアシミニブは、現在、イマチニブに対するアドオン療法として、第1選択薬のイマチニブを受け、深い分子反応が得られなかった慢性期のCML患者を対象とした第2相ランダム化試験(NCT03578367)で更に調査中である。
【0170】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許文献は、このような刊行物又は文献のそれぞれが具体的且つ個別に参照により本明細書に組み込まれるように指示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明及びその実施形態について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載されるいずれかのプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法、及び/又は工程の特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。本発明の趣旨及び/又は本質的な特徴から逸脱することなく、本開示の材料に様々な変更、置換、及び変形を行うことができる。従って、当業者は、本明細書に記載される実施形態と同じ機能を実質的に実施するか又は同じ結果を実質的に達成する、後の変更形態、置換、及び/又は変形形態が、本発明のそのような関連する実施形態に従って利用され得ることを本発明から容易に理解するであろう。従って、以下の特許請求の範囲は、本明細書に開示されるプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法、及び/又は工程に対する変更形態、置換、及び変形形態をそれらの範囲内に包含することが意図される。特許請求の範囲は、その趣旨が述べられていない限り、記載された順又は要素に限定して解釈すべきではない。添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更が行われ得ることを理解すべきである。
【国際調査報告】