(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】末梢神経障害を処置するためのHIP/PAPタンパク質又はその誘導体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20240423BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240423BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C07K14/47
A61P25/02 ZNA
A61P3/10
A61K38/16
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568481
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022062369
(87)【国際公開番号】W WO2022234131
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519137349
【氏名又は名称】ザ・ヘルシー・エイジング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE HEALTHY AGING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ブレコット,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アモウヤル,ジル
(72)【発明者】
【氏名】アモウヤル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】サントロ,リセ
(72)【発明者】
【氏名】ロート,ファニー
(72)【発明者】
【氏名】ジャモ,ロール
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA44
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA201
4C084ZA202
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045BA10
4H045CA40
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、個体における末梢神経障害、特に糖尿病又は前糖尿病個体における糖尿病性末梢神経障害を処置又は予防するためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の使用に関する。本発明はまた、個体において末梢神経障害の合併症を予防するための、特に糖尿病性足創傷、特に糖尿病性足潰瘍、及びその転帰を予防するための、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において末梢神経障害を処置及び/又は予防することにおいての使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項2】
特に糖尿病又は前糖尿病の個体において、より具体的には糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害を処置及び/又は予防することにおいての請求項1に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項3】
個体において神経終末の、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を処置及び/又は予防することにおいての使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項4】
個体において末梢神経障害の合併症を予防することにおいての、特に糖尿病又は前糖尿病の個体において末梢神経障害の合併症を予防することにおいての、より具体的には糖尿病又は前糖尿病の個体において、特に糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防することにおいての使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項5】
糖尿病性末梢神経障害の合併症が、足変形;糖尿病性足創傷、及び特に糖尿病性足潰瘍;足感染症;ならびに切断からなる群より選択される、請求項4に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項6】
前記個体が哺乳動物、特にヒトであることにおいて特徴付けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項7】
前記糖尿病個体がII型糖尿病を有することにおいて特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体であって、前記HIP/PAPタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4として示される配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことにおいて特徴付けられる、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体であって、前記誘導体が、配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、ならびに配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と同じ性質の生物活性を有するアミノ酸配列を含む、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項10】
前記HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体が、末梢神経障害の予防及び/又は処置において有用であることが公知の、特にステロイド、抗炎症薬物、免疫抑制薬、及びビタミンDからなる群より選択される少なくとも1つの薬剤との組み合わせにおいて前記個体に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項11】
前記HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体が、特にインスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤及びスルホニル尿素及びチアゾリジンジオンからなる群より選択される、少なくとも1つの抗糖尿病薬剤との組み合わせにおいて前記個体に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項12】
HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体が、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物中にあることにおいて特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項13】
前記組成物が、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、外用、局所、気管内、鼻腔内、又は直腸投与用である、請求項12に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項14】
前記組成物が経口、皮下、静脈内、外用、又は局所投与用である、請求項12又は13に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項15】
前記組成物が、特にステロイド、抗炎症薬物、免疫抑制薬、及びビタミンDからなる群より選択される、末梢神経障害の予防及び/又は処置において有用であることが公知の少なくとも1つの薬剤をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【請求項16】
前記組成物が、特にインスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤及びスルホニル尿素及びチアゾリジンジオンからなる群より選択される少なくとも1つの抗糖尿病薬剤をさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
【0002】
本発明は、個体における末梢神経障害、特に個体における糖尿病性末梢神経障害の処置及び予防における、ならびにそのような末梢神経障害により直接的に起こされる障害、例えば糖尿病性足損傷など、特に、糖尿病性足潰瘍、及びその転帰の予防におけるHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の使用に関する。
【0003】
先行技術
【0004】
末梢神経障害は、中枢神経系(脳及び脊髄)と身体の他の全ての部分の間でシグナルを送る巨大なコミュニケーションネットワークである末梢神経系への損傷を含む状態である。
【0005】
症候性の後天性末梢神経障害は、いくつかの異なる原因から起こり得る:身体的損傷(外傷)、例えば交通事故、転倒、スポーツ、及び医療処置又は関節炎など;糖尿病;血管及び血液の問題;全身性自己免疫疾患;神経だけを攻撃する自己免疫疾患;ホルモンの不均衡;栄養もしくはビタミンの不均衡;アルコール依存症;毒素(一部の薬物、例えば化学療法薬物など)への曝露;一部のがん又は良性腫瘍;又は感染症。
【0006】
糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病の最も一般的な合併症であり、糖尿病患者の50%までに罹患する。それは、1型及び2型糖尿病患者の両方において生じ、2型糖尿病患者におけるより高い有病率を伴う。
【0007】
糖尿病性末梢神経障害は、慢性的に高い血糖値により起こされる神経損傷の結果として、末梢神経軸索の進行性の遠位から近位への変性、疼痛及び感覚の喪失により特徴付けられる。それは、足、脚、又は手において、しびれ、感覚の喪失、及び時折、疼痛に導く。結果として、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病患者の生活の質を悪化させ、糖尿病患者の死亡の最も大きな原因である。
【0008】
さらに、糖尿病性末梢神経障害は、慢性疼痛;足変形;足損傷、及び特に足潰瘍;足感染症;及び切断を含む、広範な合併症を起こし得る。実際に、足内在筋の神経支配への損傷は、罹患した足の屈曲と伸展の間の不均衡に導く。これによって、解剖学的な足変形が産生され、それは、異常な骨隆起及び圧力点を作り、それは、徐々に皮膚の破壊及び潰瘍を起こす。さらに、自律神経障害は、減少した発汗に導き、それは、覆っている皮膚の乾燥、亀裂に対する増加する感受性、及びその後の感染症の発生に導く。末梢神経障害の一部としての感覚の喪失によって、潰瘍の発生が悪化する。外傷が患部に生じるため、患者は彼らの下肢への損傷を検出することができない。結果として、多くの損傷は気づかれずに進行性に悪化する。なぜなら、患部が歩行及び体重負荷からの反復的な圧力及び剪断力に継続的に供されるためである。さらに、自律神経叢切離は、血管平滑筋の障害を介して骨の脱ミネラル化に導き、それは、結果的な骨溶解を伴う骨への血流における増加に導く(Sharad P. Pendsey. Int J Diabetes Dev Ctries. 2010 Apr-Jun;30(2): 75-79)。
【0009】
糖尿病性足潰瘍の推定される世界的な有病率は6%であり、高サイズ、高齢、より低い体格指数、糖尿病のより長い持続期間、高血圧、糖尿病性網膜症、及び喫煙を含む主要なリスク因子を伴う(Global epidemiology of diabetic foot ulceration: a systematic review and meta-analysis. Zhang P. et al. Ann Med. 2017 Mar;49(2):106-116.)。糖尿病を伴う人々の約25%が、彼らの生涯の間に足潰瘍を発生し、それは、感染症、及び重篤な場合では四肢切断に進行し得る。糖尿病患者における全ての切断のうち、85%は足潰瘍により先行され、それは、その後に重度の壊疽又は感染症まで悪化する。例えば、糖尿病性足潰瘍の最も高い有病率が報告されている米国では、糖尿病が主要な切断の83%を占める。アメリカにおける糖尿病性足疾患を処置するための総医療費は90億ドルから130億ドルの範囲であり、糖尿病に関連付けられる追加費用である(Rice JB et al. Burden of diabetic foot ulcers for medicare and private insurers. Diabetes Care. 2014;37:651-8)。
【0010】
高血糖と神経障害の進行の間での相関関係は十分に確立されており、血糖の管理が保たれていない糖尿病患者における糖尿病性末梢神経障害の高い罹患率を描写する多くの試験により明らかにされているため、血糖を管理することは、糖尿病性末梢神経障害の予防の主要な方法として認識されている(N Engl J Med 1993;329:977-86)。しかし、この方法によって、その限度が実証されており、大半の糖尿病患者は、彼らの血糖の管理を保つことができない。
【0011】
他の解決策が、治療剤の形態下で試験されてきた。例えば、アルファリポ酸、アルドースレダクターゼ阻害剤、及びガンマリノール酸。α-リポ酸(チオクト酸)は、抗酸化剤であり、神経細胞の死に導く高血糖誘発性酸化ストレスを低下させ、それにより、糖尿病性神経障害の病因を遮断するとして特定されている。アルドースレダクターゼ阻害剤は、グルコースが神経細胞中のポリオール経路に入るのを防止し、それによって、ソルビトールの蓄積を抑制し、神経細胞損傷に導き、糖尿病性神経障害の進行を遮断する。しかし、これらの有効成分の大半の開発が、副作用及び不十分な有効性に起因して途中で中止された。Y-リノレン酸は、神経膜リン脂質の成分及びプロスタグランジンEの成分の両方であり、神経細胞中での血流の恒常性において重要な役割を果たしており、糖尿病性神経障害の一部の症状を寛解させることが見出されている。
【0012】
しかし、疾病管理予防センターにより示されているように、糖尿病患者における血糖の管理は、確立された神経障害、特に末梢神経障害における神経損傷の進行を遅らせる際に役立つだけである。
【0013】
神経障害、及び特に糖尿病性神経障害において神経に起こった損傷は不可逆的であると広く考えられている(例えば、Richard A C Hughes, BMJ. 2002 Feb 23;324(7335): 466-469ならびにG. Sloan et al., Nature Reviews Endocrinology volume 17, pages 400-420 (2021)を参照のこと)。
【0014】
Sloanら(Pathogenesis, diagnosis and clinical management of diabetic sensorimotor peripheral neuropathy, Nature Reviews Endocrinology volume 17, pages 400-420 (2021))は、特に、苦しめる有痛性の神経障害性症状(DSPN)を伴う患者のホリスティックな管理が、症状(例えば神経障害性疼痛、併存する気分障害、不眠症、自律神経症状、不安定感、及び転倒など)の処置、DSPNの進行の予防(心臓代謝リスク因子の管理)及び足の合併症に対処することを目的とした戦略を含むだけであることを示す。
【0015】
同様に、3,867名の2型糖尿病患者での英国の前向き糖尿病試験(UKPDS)では、神経障害の有病率に対するグルコース管理の効果(HbA1cの0.9%低下程度)は見出されなかったのに対し、網膜症及び腎症についてのリスクにおいて有意な低下があった(英国前向き糖尿病試験(UKPDS)グループ 1998)。
【0016】
したがって、糖尿病の個体における糖尿病の処置は、既に存在する神経障害性障害を処置することを可能にせず、特に損傷した神経、特に損傷した終神経を処置/修復せず、即ち、損傷した神経終末の活性を回復することを可能にしない。
【0017】
さらに、上に示すように、末梢神経障害に罹患している、又はそれに罹患するリスクのある個体の有意な割合は、糖尿病ではない、即ち、肥満又は非肥満の前糖尿病又は正常血糖の個体である。B. C. Callaghanら(Mayo Clin Proc. 2020 Jul;95(7): 1342-1353)は、例えば、138名の肥満の個体及び46名の痩せた個体を募集した後、神経障害の有病率が、痩せた対照において2.2%、正常血糖を伴う肥満の参加者において12.1%、前糖尿病を伴う肥満の参加者において7.1%、及び糖尿病を伴う肥満の参加者において40.8%であるとして決定されたことを示した。O. H. Nienov(Rev Assoc Med Bras (1992). 2017 Apr;63(4):324-331)は、さらに、グレードII及びIIIの肥満(Ob-II、III)を伴う対象における末梢多発神経障害(PPN)の有病率を評価し、非糖尿病の肥満グレードII及びIIIのメタボリックシンドローム(MetS)患者218名のうち、合計24名が末梢多発神経障害(PPN)を有することを決定した。
【0018】
特に糖尿病に関連付けられる末梢神経障害の症例の数及び有病率は、過去数十年間にわたり世界中で着実に増加しており、世界保健機関により推定される糖尿病に苦しむ患者の推定数は4億2,000万人をはるかに上回っており(糖尿病に直接的に起因する毎年160万人を上回る死亡を伴う)、末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害を予防及び処置するための新たな解決策を見出すことは、公衆衛生の観点から重要な目標のままである。
【0019】
従って、末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害を予防及び/又は処置できる新規活性物質についての増加する必要性が存在する。
【0020】
さらに、末梢神経障害の合併症、より具体的には糖尿病性末梢神経障害の合併症の予防、特に足創傷、ならびに特に足潰瘍;足感染症;及びその切断の予防についての増大する必要性が存在する。
【0021】
したがって、特に末梢神経障害を伴う、又は伴いやすい個体において、損傷した神経、特に損傷した感覚及び/又は運動神経を予防及び/又は処置する、より具体的には神経終末の損傷、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を予防及び/又は処置することができる新規活性物質についての増加する必要性がある。
【0022】
確かに、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末を修復する、特に感覚及び/又は運動神経終末を修復できる新規活性物質についての必要性がある。
【0023】
確かに、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末の活性を回復する、特に感覚及び/又は運動神経終末の活性を回復することができる新規活性物質についての必要性がある。
【0024】
発明の概要
【0025】
出願人は、驚くべきことに、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体によって、患者において末梢神経障害を予防及び/又は処置する、特に糖尿病又は前糖尿病患者において糖尿病性末梢神経障害を予防及び/又は処置することが可能になることを実証した。HIP/PAPタンパク質は、従って、以下のために有利に使用され得る:
-患者において末梢神経障害、特に糖尿病又は前糖尿病患者において糖尿病性末梢神経障害を処置又は予防すること;及び
-末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防すること、特に糖尿病性足創傷、より具体的には糖尿病性足潰瘍形成を予防すること。
【0026】
本発明は、したがって、以下の事項に関する:
【0027】
項目1:個体において末梢神経障害を処置及び/又は予防することにおいての使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0028】
項目2:特に糖尿病又は前糖尿病の個体において、より具体的には糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害を処置及び/又は予防することにおいての、項目1に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0029】
項目3:個体において神経終末の、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を処置及び/又は予防することにおいての使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0030】
項目4:個体において末梢神経障害の合併症を予防する、特に糖尿病又は前糖尿病の個体において末梢神経障害の合併症を予防する、より具体的には糖尿病又は前糖尿病の個体において、特に糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防することにおいての使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0031】
項目5:糖尿病性末梢神経障害の合併症が、足変形;糖尿病性足創傷、特に糖尿病性足潰瘍;足感染症;及び切断からなる群より選択される、項目4に記載のHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0032】
項目6:個体が哺乳動物、特にヒトであることにおいて特徴付けられる、項目1~5のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0033】
項目7:糖尿病の個体がII型糖尿病を有することにおいて特徴付けられる、項目1~6のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0034】
項目8:HIP/PAPタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4として示される配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことにおいて特徴付けられる、項目1~7のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0035】
項目9:項目1~8のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体であって、当該誘導体が、配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列ならびに配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列と同じ性質の生物活性を含む、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0036】
項目10:項目1~9のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体であって、当該HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体が、特にステロイド、抗炎症薬物、免疫抑制薬及びビタミンDからなる群より選択される、末梢神経障害の予防及び/又は処置において有用であることが公知の少なくとも1つの薬剤との組み合わせにおいて当該個体に投与される、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0037】
項目11:項目1~10のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体であって、当該HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、特にインスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤及びスルホニル尿素及びチアゾリジンジオンからなる群より選択される、少なくとも1つの抗糖尿病薬剤との組み合わせにおいて当該個体に投与される、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0038】
項目12:HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体が、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物中にあることにおいて特徴付けられる、項目1~11のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0039】
項目13:組成物が経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、外用、局所、気管内、鼻腔内又は直腸投与用である、項目12に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0040】
項目14:組成物が経口、皮下、静脈内、外用又は局所投与用である、項目12又は13に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0041】
項目15:組成物が、特に、ステロイド、抗炎症薬物、免疫抑制薬及びビタミンDからなる群より選択される、末梢神経障害の予防及び/又は処置において有用であることが公知の少なくとも1つの薬剤をさらに含む、項目12~14のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【0042】
項目16:組成物が、特にインスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤及びスルホニル尿素及びチアゾリジンジオンからなる群より選択される、少なくとも1つの抗糖尿病薬剤をさらに含む、項目12~15のいずれか一項に記載の使用のためのHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、糖尿病足分類システムに関する国際コンセンサスに従って評価された感染症の重症度を表す表である。
【
図2】
図2は、実施例2において実施及び詳述されるプロトコルを表す。
【
図3】
図3は、プラセボvs.ALF-5755処置GKラットにおけるホットプレート潜時を表す。縦軸:ホットプレート潜時(秒)横軸(左から右へ):プラセボ及びALF-5755処置ラット(1.25mg/kg)。対応のないt検定*p<0.05。
【
図4】
図4は、プラセボvs.ALF-5755処置GKラットにおけるCMAP振幅を表す。縦軸:振幅(mV)横軸(左から右へ):プラセボ及びALF-5755処置ラット(1.25mg/kg)。対応のないt検定*p<0.05。
【0044】
発明の詳細な説明
【0045】
定義
【0046】
本発明の文脈において、用語「予防する」、「予防」、及び「予防している」は、所与の現象の発生のリスク又は確率のより低い程度までの低下、すなわち、本発明における、末梢神経障害及び/又はその合併症、特に糖尿病性足潰瘍、足感染症及び切断からなる群より選択される合併症の発生の予防を意味する。用語「予防する」、「予防」及び「予防している」はまた、当該所与の現象の悪化を予防すること、進行の速度を低下させること、又はその再発を予防することを含む。
【0047】
本明細書中で使用されるように、用語「処置している」、「処置」又は「処置する」は、特定の障害もしくは状態に関連付けられる症状の軽減及び/又は当該症状の除去、すなわち、本発明における、糖尿病性末梢神経障害の処置を含む。
【0048】
「糖尿病」個体は、この用語の一般的に受け入れられている定義、即ち、インスリンの不十分な産生又は利用を含み、しばしば高血糖及び排尿により特徴付けられる、炭水化物代謝の進行性疾患に罹患している個体を指す。
【0049】
「前糖尿病」個体により、糖尿病において典型的に観察される特徴、症状及び同様のものを有さず、しかし、未処置で放置された場合に糖尿病に進行し得る特徴、症状及び同様のものを有する個体を指す。これらの状態の存在は、例えば、空腹時血漿グルコース(FPG)テスト又は経口ブドウ糖負荷テスト(OGTT)のいずれかを使用して決定することができる。FPGテストでは、対象の血液中グルコースを絶食の終了後に測定する;一般的に、対象は一晩絶食し、血液中グルコースを、対象が食べる前に、朝に測定する。健常な対象は一般的に、約90mg/dLと約100mg/dLの間のFPG濃度を有するであろう、「前糖尿病」を伴う対象は一般的に、約100mg/dLと約125mg/dLの間のFPG濃度を有するであろう、及び「糖尿病」を伴う対象は一般的に、約126mg/dLを上回るFPGレベルを有するであろう。OGTTでは、対象の血液中グルコースが、絶食後測定され、及びグルコースに富む飲料を飲んだ2時間後に再び測定される。グルコースに富む飲料の摂取後2時間に、健常な対象は一般的に、約140mg/dLを下回る血液中グルコースを有し、前糖尿病の対象は一般的に、約140mg/dL~約199mg/dLの血液中グルコースを有し、及び糖尿病の対象は一般的に、約200mg/dL又はそれ以上の血液中グルコースを有する。
【0050】
本発明に従った「末梢神経障害の合併症」は、末梢神経障害により起こされる医学的問題である。そのような末梢神経障害の合併症の例は、皮膚及び四肢の外傷又は火傷である。なぜなら、個体は、温度又は疼痛への変化した感受性を有し、特に糖尿病性の皮膚及び四肢の外傷又は火傷;足変形;心臓及び血液循環の問題;足創傷、特に糖尿病性足創傷、より具体的には糖尿病性足潰瘍;壊疽;ならびに足感染症及び四肢、特に下肢の切断を有し得る。
【0051】
本発明に従って、「足創傷」は、外傷(即ち、外力、例えば、運動及び/又は感覚神経への損傷に起因する事故(例えば、転倒)の結果)、又は基礎となる(このように、内部の)病因/病理による組織の徐々の障害(例えば上で説明される糖尿病性足潰瘍の場合においてなど)のいずれかに起因する足の皮膚上の創傷である。
【0052】
本発明に従った「糖尿病性足創傷」は、糖尿病の個体において生じ、上で説明される糖尿病性末梢神経障害の結果である、上で定義される足創傷である。本発明に従った糖尿病性足創傷は、特に糖尿病性足潰瘍である。
【0053】
糖尿病性足潰瘍の発生は、通常3段階中である。初期段階は仮骨の発生であり、それは、糖尿病性末梢神経障害から起因する。神経障害は、足の物理的変形及び感覚喪失を起こし、それは、継続的な外傷に導く。神経障害による皮膚の乾燥がまた、別の寄与因子である。最後に、仮骨の頻繁な外傷は皮下出血を招き、それは侵食されて潰瘍になる。
【0054】
本発明に従った「糖尿病性足感染症」は、足感染症、即ち、糖尿病個体による、関連付けられる炎症反応を伴う又は伴わない組織損傷を起こす微生物の増殖を伴う組織の浸潤である。
【0055】
糖尿病性足感染症の診断は、臨床的である。感染症の診断は、以下の徴候の少なくとも2つの存在に基づいている:腫脹、硬結、病変周囲の紅斑、局所的な圧痛又は疼痛、局所的な熱感、又は膿の存在。感染症の重症度は、糖尿病足分類システムに関する国際コンセンサスに従って評価される(
図1を参照のこと)。
【0056】
本発明に従った「切断」は、糖尿病患者の身体部分の手術による除去、特に下肢の切断である。
【0057】
切断手術が、時折、重度の深部感染症及び/又は創傷の場合において、唯一の選択肢のままである。切断のレベルの選択は、プロステーシスによるかかとの体重負荷を保存するためのすべての努力を払いながら、血管状態に依存する。糖尿病を伴う人々において最も一般的な切断は、足指、足、及び下肢である。特に、大きな切断が、重篤な敗血症又は広範囲の前足壊疽もしくは差し迫った足指喪失を伴う深部区画膿瘍を伴う患者において要求される。切断の目的は、四肢の長さを保存することである。なぜなら、断端が長いほどリハビリテーションの結果は良好であるからである。
【0058】
用語「抗糖尿病薬剤」は、糖尿病を伴う人が、血液中のグルコースのレベルを管理することを助ける物質を指す。抗糖尿病薬剤の例は、例えば、インスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤及びスルホニル尿素及びチアゾリジンジオンからなる群より選択される抗糖尿病薬剤であり得る。
【0059】
ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤は、高い血液中グルコースレベルを下げる薬物のクラスで、2型糖尿病の処置において使用され得る。サクサグリプチン、シタグリプチン、アログリプチン、及びリナグリプチンに言及し得る。
【0060】
グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストは、また、GLP-1受容体アゴニスト又はインクレチン模倣物として公知であり、2型糖尿病の処置のために使用されるGLP-1受容体のアゴニストである。エキセナチド、リキシセナチド、リラグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、及びセマグルチドに言及し得る。
【0061】
ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤は、2型糖尿病を伴う人々において高い血液中グルコースレベルを下げるために使用される薬物のクラスである。エルツグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、及びダパグリフロジンに言及し得る。
【0062】
用語「生理学的に許容可能な媒体」は、当該組成物を投与しなければならない個体の身体に適合する媒体を意味することを意図する。それは、例えば、非毒性の溶媒、例えば水などである。特に、当該媒体は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、外用、局所、気管内、鼻腔内又は直腸投与、より具体的には経口、皮下、静脈内、外用、又は局所投与に適合する。
【0063】
本明細書中で使用されるように、2つのアミノ酸配列間の「同一性のパーセンテージ」は、両方の最適に整列された配列を、比較ウィンドウを通じて比較することにより決定される。
【0064】
したがって、比較ウィンドウ中のアミノ酸配列の一部は、参照配列(これらの付加又はこれらの欠失を含まない)と比較して、両方の配列間で最適なアライメントが得られるように、付加又は欠失(例えば、「ギャップ」)を含み得る。
【0065】
用語「配列相同性」又は「配列同一性」又は「相同性」又は「同一性」は、本明細書中では互換的に使用される。本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列の配列相同性又は配列同一性のパーセンテージを決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させることが本明細書で定義される。2つの配列間のアライメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにおいてギャップを導入してもよい。そのようなアラインメントは、比較される配列の全長にわたって行うことができる。あるいは、アラインメントは、より短い長さにわたって、例えば、約20、約50、約100又はそれ以上の核酸/塩基性又はアミノ酸にわたって行われ得る。配列同一性は、報告された整列領域にわたる2つの配列間での同一マッチのパーセンテージである。
【0066】
配列の比較及び2つの配列間での配列同一性のパーセンテージの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。当業者は、いくつかの異なるコンピュータプログラムが、2つの配列を整列させ、2つの配列間の同一性を決定するために利用可能であるという事実を認識するであろう(Kruskal, J. B. (1983) An overview of sequence comparison In D. Sankoff and J. B. Kruskal, (ed.), Time warps, string edits and macromolecules: the theory and practice of sequence comparison, pp. 1-44 Addison Wesley)。
【0067】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性パーセントは、2つの配列のアラインメントについてのNeedleman及びWunschアルゴリズムを使用して決定され得る(Needleman, S. B. and Wunsch, C. D. (1970) J. Mol. Biol. 48, 443-453)。両方のアミノ酸配列をアルゴリズムにより整列させることができる。Needleman-Wunschアルゴリズムは、コンピュータプログラムNEEDLEにおいて実装されている。
【0068】
本発明の目的のために、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用した(バージョン2.8.0以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite (2000) Rice, P. Longden J. and Bleasby, A. Trends in Genetics 16, (6) pp276-277、http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列について、EBLOSUM62を置換マトリックスのために使用する。使用されるオプションパラメーターは、ギャップ開始ペナルティ10及びギャップ拡張ペナルティ0.5である。エンドギャップペナルティは加えられない。出力セクションにおいて、「はい」が、質問「簡単な同一性及び類似性」への反応において示されており、「SRS ペアワイズ」が、出力アライメントフォーマットとして示されている。
【0069】
上に記載されるプログラムNEEDLEによるアラインメント後、クエリ配列と本発明の配列の間での配列同一性のパーセンテージを、以下のとおりに算出する:アライメント中のギャップの総数の減算後でのアライメントの全長により割った、両方の配列中で同一のアミノ酸を示すアラインメント中の対応する位置の数。本明細書中で定義される同一性は、NOBRIEFオプションを使用することによりNEEDLEから得ることができ、プログラムの出力において「最も長い同一性」としてラベル付けされる。
【0070】
アミノ酸配列の類似性、即ち、配列同一性のパーセンテージは、いくつかの他の当技術分野で公知のアルゴリズムを使用して、好ましくはKarlin及びAltschulの数学的アルゴリズム(Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877)を用いて、hmmalign(HMMERパッケージ、http://hmmer.wustl.edu/)を用いて、又はCLUSTALアルゴリズム(Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673-80)(例、https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/で利用可能)又はGAPプログラム(アイオワ大学の数学的アルゴリズム)又はMyers及びMillerの数学的アルゴリズム(1989 - Cabios 4: 11-17)又はClone Manager 9を用いて、配列アラインメントを介して決定することができる。使用される、好ましいパラメータはデフォルトパラメータであり、それらは、https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/で設定されているとおりである。
【0071】
配列同一性(配列マッチング)のグレードは、例えば、BLAST、BLAT、又はBlastZ(又はBlastX)を使用して算出され得る。同様のアルゴリズムが、Altschul et al (1990) J. Mol. Biol. 215, 403-410のBLASTN及びBLASTPプログラム中に組み入れられる。BLASTポリヌクレオチド検索は、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施され、関連タンパク質をコードする核酸と相同であるポリヌクレオチド配列が得られる。
【0072】
BLASTタンパク質検索は、SHCポリペプチドと相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTPプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施される。比較目的のためのギャップ付きアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al (1997) Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402において記載されるように利用する。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータが使用される。配列マッチング分析は、Shuffle-LAGAN(Brudno M., Bioinformatics 2003b, 19 Suppl 1: 154-162)又はマルコフランダムフィールドのような、確立された相同性マッピング技術により補足され得る。配列同一性のパーセンテージが、本出願において言及される場合、これらのパーセンテージは、他に具体的に示されない場合、より長い配列の全長に関して算出される。
【0073】
特定の実施形態では、2つの配列間の同一性%は、CLUSTAL O(バージョン1.2.4)を使用して決定される。
【0074】
本明細書中で使用されるように、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基を含み、5つを上回るアミノ酸残基を含む分子を指す。アミノ酸は、1文字又は3文字のいずれかの指定により特定される。本明細書中で使用される用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」と同義であり、また、2つ又はそれ以上のポリペプチドを指し得る。したがって、用語「タンパク質」、「ペプチド」、及び「ポリペプチド」は、互換的に使用することができる。ポリペプチドは、場合により、機能性を加えるために修飾(例、グリコシル化、リン酸化、アシル化、ファルネシル化、プレニル化、スルホン化など)され得る。
【0075】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質及びその誘導体
【0076】
HIP/PAPタンパク質は、肝細胞に対するその抗アポトーシス活性及び分裂促進活性について公知である(US13/032,521、WO2004/112824、Simon et al., FASEB J. 2003 Aug;17(11):1441-50)。
【0077】
また、Reg IIIaファミリー(HIP/PAP)から由来する15アミノ酸のペプチドであるHIP(ヒトプロ膵島ペプチド(Human proIslet Peptide))ペプチドは、膵島に対する再生活性を有し、したがって、インスリン産生を刺激することが示されている(US2010/0093605)。
【0078】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4として示される配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0079】
アミノ酸配列の配列番号1は、配列の配列番号4のHIP/PAPタンパク質に対応し、そこから、当該タンパク質のN末端26アミノ酸シグナルペプチドが欠失されている。
【0080】
特定の実施形態では、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質は、配列番号4として示されるアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。
【0081】
特定の実施形態では、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。
【0082】
アミノ酸配列の配列番号2は、HIP/PAPタンパク質の短縮形態に相当し、アミノ酸配列の配列番号1と比較して、欠失されたN末端位置において11アミノ酸プロペプチドを有している。
【0083】
特定の実施形態では、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質は、配列番号2において示されるアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。
【0084】
配列の配列番号3は、配列の配列番号1に対応し、それに対して、メチオニンがN末端位置において加えられている。配列の配列番号3のHIP/PAP誘導体はまた、rcHIP/PAP又はALF5755と呼ばれる。この誘導体は、特に大腸菌細胞において組換えにより産生され得る。12アミノ酸のN末端プロペプチド(11アミノ酸+追加のメチオニンのプロペプチド)を、HIP/PAPタンパク質の短い形態(配列番号2)を得るために、切断してもよい。
【0085】
特定の実施形態では、本発明に従ってHIP/PAPタンパク質は、配列番号3として示されるアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。
【0086】
本発明に従って、HIP/PAPタンパク質又はその誘導体の短い又は長い形態を、区別なく使用してもよい。
【0087】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質の誘導体は、配列の配列番号1~4のいずれか1つのHIP/PAPタンパク質の生物学的に活性な誘導形態を指定する。用語「生物学的に活性な」は、HIP/PAPタンパク質の誘導体が、配列の配列番号1~4のいずれか1つのHIP/PAPタンパク質と同じ生物学的活性を有することを意味する。
【0088】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質の誘導体は、配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ならびに配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と同じ性質の生物学的活性を含む、又はそれらからなる。
【0089】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質と同じ性質の生物学的活性は、以前に記載されたとおりであり、即ち、個体において末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害を処置及び/又は予防し、したがって、個体において末梢神経障害の合併症、特に本文中の他で詳述されている合併症を予防する能力である。
【0090】
本明細書中に記載されるように、参照アミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列は、当該参照アミノ酸配列と少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%のアミノ酸同一性、ならびに、また、当該参照アミノ酸配列と同じ性質の生物学的活性を有するアミノ酸配列を包含する。
【0091】
特定の実施形態では、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、非HIP/PAP部分との非共有結合により会合又は結合され得る。例えば、HIP/PAPタンパク質又はその誘導体は、リポソーム粒子と会合することができる。リポソームの型に、又は産生過程に依存して、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、リポソームの表面で会合する、又は当該リポソームの内部にカプセル化され得る。
【0092】
HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体はまた、共有結合により非HIP/PAP部分と会合し得る。そのような非HIP/PAP部分は、タンパク質又は非タンパク質化合物、例えば、ポリエチレングリコールから選択してもよく、このように、PEG化HIP/PAP誘導体を形成する。
【0093】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質の誘導体はまた、それらが患者に投与された場合にのみ生物学的に活性になる誘導体を含む。
【0094】
最後に、HIP/PAPタンパク質の誘導体はまた、キメラタンパク質又は融合タンパク質を含む。そのようなタンパク質は、非HIP/PAPポリペプチドと融合される。後者をN又はC末端部分と融合させてもよい。典型的には、HIP/PAPタンパク質又はその誘導体を、組換えタンパク質の精製を促進させるために、それらのC末端部分のレベルでGST配列と融合させてもよい。
【0095】
本発明の特定の実施形態では、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、当業者に公知の技術に従って、細菌細胞又は、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む動物細胞において組換え産生される。
【0096】
他の実施形態では、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、公知の精製技術により細胞から又は組織から単離され得る。
【0097】
HIP/PAPタンパク質及びその誘導体はまた、化学合成により産生され得る。
【0098】
本文中では、用語「HIP/PAPタンパク質」は、HIP/PAPタンパク質自体、及び、また、上に記載されるその誘導体を包含する。
【0099】
組成物
【0100】
本発明はまた、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物中での、以前に定義されたHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の実装に関する。
【0101】
生理学的に許容可能な媒体は、以前に本文中で定義されたが、所望の医薬的形態及び投与の様式に従って、当業者に公知である通常の賦形剤より選ばれ得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A ed., 1980を参照のこと)。
【0102】
例として、本発明に従った組成物は、治療適応及びHIP/PAPタンパク質又はその誘導体に従って、以下を含み得る:
a)HIP/PAPタンパク質又はその誘導体;ならびに
b)pHを最大安定範囲中に、好ましくは1~9、より具体的には4~8、さらにより具体的には6~7.5に維持することが可能な緩衝液;ならびに/あるいは
c)撹拌により誘導される凝集に対してタンパク質又はポリペプチドを安定化させる洗剤(detergent)又は界面活性剤(surfactant);ならびに/あるいは
d)等張剤(isotonic);ならびに/あるいは
e)例えば、フェノール、ベンジルアルコール、ベンゾテリウムハライド及びクロライドからなる群より選ばれる保存剤;ならびに/あるいは
f)水。
【0103】
使用される洗剤又は界面活性剤が非イオン性である場合、それは、ポリソルベート、PLURONIC(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポロクサマーから選ばれ得る。
【0104】
等張剤によって、組成物の等張性を維持することが可能になり、典型的には、単独又は組み合わせにおいて使用される、多価アルコール、例えばグリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール又はマンニトールなどを含む。あるいは、塩化ナトリウム及び/又は他の無機塩を等張剤として使用してもよい。
【0105】
緩衝液は、所望のpHに依存して、例えば、酢酸、クエン酸、コハク酸、リン酸緩衝液、又は他の無機緩衝液であり得る。
【0106】
フェノール、ベンジルアルコール、ベンゾテリウムハライド及びクロライド型の保存剤は、公知の抗菌剤である。典型的な保存剤は、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベンなど、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾールを含む。
【0107】
追加の賦形剤はまた、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニンなど、キレート剤、例えばEDTAなど、糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなどを含み得る。
【0108】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、医薬的に許容可能な塩の形態であり得る。これは、有機及び無機の塩及び酸を含む、医薬的に許容可能な非毒性の酸又は医薬的に許容可能な非毒性の塩基から調製される塩を意味することを意図する。例として、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩)、アンモニウム塩、有機塩基の塩(ピリジン塩又はトリエチルアミン塩)、無機酸の塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩)及び有機酸の塩(酢酸塩、シュウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩)に言及され得る。
【0109】
本発明に従って実装される組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、外用、局所、気管内、鼻腔内又は直腸投与用、特に経口、皮下、静脈内、外用又は局所投与用であり得る。
【0110】
好ましい一実施形態に従って、HIP/PAPタンパク質は有効量、即ち、本発明の予想される効果を得るために要求される量において投与される。HIP/PAPタンパク質のそのような量は、一般的には、処置される対象及びその病理学的状態に従って、経験的に決定されるであろう。有効量はまた、想定される投与の様式に依存するであろう。最大の治療効果を得るための有効量を決定するために要求される調整は、臨床医にとってルーチン的である技術に相当する。
【0111】
HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の有効量は、例えば、それが投与されなければならない個体の0.1μg/日/kg体重と100mg/日/kg体重の間であり得る。特定の実施形態では、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の有効量は10mg/kg超に達し得るが、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の有効量は一般的に、5mg/kg体重未満であるが、それは、4.5mg/kg、4mg/kg、3.5mg/kg、3mg/kg、2.5mg/kg又は2000μg/kg未満の量を含む。より具体的には、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体の有効量は、それが投与される、又は投与されなければならない個体の体重に対して、少なくとも1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、6μg/kg、7μg/kg、8μg/kg、9μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、40μg/kg、50μg/kg、60μg/kg、70μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg又はそれ以上の量を含む。
【0112】
特定の実施形態に従って、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、体重に対して10~5000μg/kgの間、好ましくは100~2000μg/kgの間の投与量に従って投与される。
【0113】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、外用、局所、気管内又は鼻腔内又は直腸投与のための本発明の組成物において、活性成分(HIP/PAPタンパク質又はその誘導体)は単位投与形態において、医薬品賦形剤との混合物として投与され得る。
【0114】
組成物が経口投与用である場合、当該組成物は、食品、飲料、医薬品、栄養補助食品、食品添加物、食物サプリメント、及び乳製品からなる群より選択され得る。
【0115】
好ましい投与の様式は、経口、皮下、静脈内、外用又は局所経路、より具体的には皮下、静脈内、外用又は局所経路である。
【0116】
本発明の化合物又は組成物の投与は、例えば、シース、パッチ、パッド、湿布、包帯、テープ、ガーゼベースの包帯、織布もしくは不織布スポンジ又はシリンジの使用を通して実施してもよい。
【0117】
HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、インビボ投与の前に滅菌され得る。滅菌は、凍結乾燥又は再構成の前又は後に、滅菌濾過膜上での濾過により得てもよい。全身的に投与されるHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、有利には、凍結乾燥される、又は溶液中で保存され得る。凍結乾燥形態では、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は一般的に、使用の時に適した希釈剤での再構成を可能にする賦形剤との組み合わせにおいて製剤化され得る。
【0118】
HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、所望の治療効果が得られるまで、毎日1つの摂取において、又は分割された様式(例えば、1日2~3回)において投与され得る。それはまた、慢性的に投与され得る。
【0119】
HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体はまた、コースの形態、例えば、15日から3ヶ月の範囲のコースにおいて投与され得るが、場合により、所定の用量及び時間間隔で1~6回反復され得る。
【0120】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体は、末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害を処置及び/又は予防するために、あるいは個体において末梢神経障害の合併症を予防するために、特に糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防するために、他の化合物との多剤療法の状況において組み合わせてもよい。
【0121】
したがって、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物は、以前に定義された個体、特に前糖尿病又は糖尿病の個体、特に糖尿病の個体に、末梢神経障害の予防及び/又は処置において、特に糖尿病性末梢神経障害の予防及び/又は処置において有用であることが公知の少なくとも1つの薬剤との組み合わせにおいて投与され得る。
【0122】
そのような薬剤は、当業者により公知であり、例えば、ステロイド、抗炎症薬物、免疫抑制薬、ビタミンD、抗てんかん薬、例えばガバペンチン及びカルバマゼピンなど、アミトリプチリン、プレガバリン、デュロキセチン、ベンラファクシン、ノトリプチリン、デシプラミン、抗コリン薬、抗けいれん薬からなる群より選択することができ、より具体的には、ステロイド、抗炎症薬物、免疫抑制薬及びビタミンDからなる群より選択される。
【0123】
さらに、以前に言及されたように、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物は、以前に定義された個体、特に前糖尿病又は糖尿病の個体、より具体的には糖尿病の個体に、少なくとも1つの抗糖尿病薬剤との組み合わせにおいて投与され得る。
【0124】
当該抗糖尿病薬剤は、インスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤及びスルホニル尿素及びチアゾリジンジオンからなる群より選択され得る。
【0125】
ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤は、サクサグリプチン、シタグリプチン、アログリプチン、及びリナグリプチンからなる群より選択され得る。
【0126】
グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストは、エキセナチド、リキシセナチド、リラグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、及びセマグルチドからなる群より選択され得る。
【0127】
ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤は、エルツグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン及びダパグリフロジンからなる群より選択され得る。
【0128】
組み合わせにおいて投与されることにより、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物が、他の化合物と比較して、特に少なくとも1つの抗糖尿病薬剤と比較して、同時に又は連続的に投与され得ることを意味する。それらが別々の組成物中である場合、本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、その誘導体を含む組成物、及び少なくとも1つの抗糖尿病薬剤を含む組成物は、同じ経路を通じて又は異なる経路を通じて投与することができる。
【0129】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、又はその誘導体及び少なくとも1つの抗糖尿病薬剤は、同じ組成物中で又は別々の組成物中で投与することができる。
【0130】
同時に、組成物を同時に、又は同じ日もしくは数日までに投与することができることが理解される。
【0131】
連続的に、組成物を少なくとも数日、例えば、異なる少なくとも2日に投与することができることが理解される。
【0132】
HIP/PAPタンパク質及び/又はその誘導体の実装
【0133】
以前に言及されたように、HIP/PAPタンパク質、又はその誘導体、ならびにそれを含む組成物は、以下における使用のためである:
-個体における末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害の処置及び/又は予防;ならびに/あるいは
-個体における末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害の合併症の予防;ならびに/あるいは
-特に末梢神経障害を伴う、又は伴いやすい個体において、損傷した神経、特に損傷した感覚及び/又は運動神経を予防及び/又は処置する、より具体的には神経終末の損傷、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を予防及び/又は処置すること;ならびに/あるいは
-特に末梢神経障害を伴う個体において神経終末を修復すること、特に感覚及び/又は運動神経終末を修復すること;ならびに/あるいは
-特に末梢神経障害を伴う個体において神経終末の活性を回復させること、特に感覚及び/又は運動神経終末の活性を回復させること;
特に、糖尿病又は前糖尿病の個体、より具体的には糖尿病の個体において。
【0134】
以前に示されたように、末梢神経障害、特に糖尿病性末梢神経障害の合併症は、皮膚及び四肢の外傷又は火傷、特に糖尿病性の皮膚及び四肢の外傷又は火傷;足変形;心臓及び血液循環の問題;足創傷、特に糖尿病性足創傷、より具体的には糖尿病性足潰瘍;壊疽;ならびに足感染症及び四肢、特に下肢の切断からなる群より選択され得る。
【0135】
本発明に従った糖尿病性末梢神経障害の合併症は、特に、足変形、糖尿病性足創傷、特に糖尿病性足潰瘍、足感染症及び切断からなる群より選択され得る。
【0136】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又は組成物が投与される個体、特に糖尿病の個体は、特に哺乳動物、特にヒトであり得る。
【0137】
本発明に従ったHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又は組成物は、末梢神経障害及び/又は末梢神経障害の合併症、より具体的には糖尿病性末梢神経障害及び/又は糖尿病性末梢神経障害の合併症のための標準医療との組み合わせにおいて投与することができる。
【0138】
本発明はまた、個体における末梢神経障害を処置及び/又は予防するための、特に、糖尿病個体における糖尿病性末梢神経障害を処置及び/又は予防するための方法に関し、当該個体にHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物を投与することを含む。
【0139】
本発明はまた、特に末梢神経障害、特に損傷した感覚及び/又は運動神経を伴う、又は伴いやすい個体において損傷した神経を処置及び/又は予防するための、より具体的には、神経終末の損傷、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を予防及び/又は処置するための方法に関し、HIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物を当該個体に投与することを含む。
【0140】
本発明はまた、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末を修復するための、特に感覚及び/又は運動神経終末を修復するための方法に関し、当該個体にHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物を投与することを含む。
【0141】
本発明はまた、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末の活性を回復させるための、特に感覚及び/又は運動神経終末の活性を回復させるための方法に関し、当該個体にHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物を投与することを含む。
【0142】
本発明はさらに、個体において末梢神経障害を処置及び/又は予防するための、特に糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害を処置及び/又は予防するための、HIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0143】
本発明はさらに、特に末梢神経障害、特に損傷した感覚及び/又は運動神経を伴う、又は伴いやすい個体において、損傷した神経を処置及び/又は予防するための、より具体的には、神経終末の損傷、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を予防及び/又は処置するための、HIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0144】
本発明はさらに、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末を修復するための、特に感覚及び/又は運動神経終末を修復するための、HIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0145】
本発明はさらに、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末の活性を回復させるための、特に感覚及び/又は運動神経終末の活性を回復させるための、HIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0146】
本発明はさらに、個体において末梢神経障害を処置及び/予防するための、特に糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害を処置及び/予防するための薬物の製造のためのHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0147】
本発明はさらに、特に末梢神経障害、特に損傷した感覚及び/又は運動神経を伴う、又は伴いやすい個体において、損傷した神経を処置及び/又は予防するための、より具体的には、神経終末の損傷、特に感覚及び/又は運動神経終末の損傷を予防及び/又は処置するための薬物の製造のためのHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0148】
本発明はさらに、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末を修復するための、特に感覚及び/又は運動神経終末を修復するための薬物の製造のためのHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0149】
本発明はさらに、特に末梢神経障害を伴う個体において、神経終末の活性を回復させるための、特に感覚及び/又は運動神経終末の活性を回復させるための薬物の製造のためのHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0150】
本発明はまた、個体において末梢神経障害の合併症を予防するための、特に、糖尿病又は前糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防するための方法に関し、当該個体にHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物を投与することを含む。
【0151】
本発明はさらに、個体において末梢神経障害の合併症を予防するための、特に糖尿病又は前糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防するための、HIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0152】
本発明はさらに、個体において末梢神経障害の合併症を予防するための、特に糖尿病又は前糖尿病の個体において糖尿病性末梢神経障害の合併症を予防するための薬物の製造のためのHIP/PAPタンパク質、その誘導体、又はそれを含む組成物の使用に関する。
【0153】
本発明は、単に例証として与えられる以下の実施例により、以下により詳細に記載される。
【0154】
パーセンテージへの全ての言及は、他に示されない限り重量パーセンテージである。
【0155】
実施例
【0156】
実施例1
【0157】
II型糖尿病のマウスモデルであるdb/dbモデル(Janvier Labs)における末梢神経障害に対するALF-5755(配列の配列番号3の化合物)を用いた2ヶ月の全身処置の効果を評価する。
【0158】
10匹の非糖尿病マウス及び50匹の糖尿病マウスを1期間でテストする。食事及び水は自由に与えられた。
【0159】
A群(10匹の非糖尿病マウス)では、糖血症レベルは1回だけ評価される。処置は、これらのマウスでは実施されない。
【0160】
50匹の糖尿病マウスを、(i)プラセボで皮下処置される、又は(ii)ALF-5755(1.25mg/kg)で皮下処置される10~15匹の動物の4群中に分ける:
B群:D0~D56までプラセボで処置された15匹の糖尿病マウス;
C群:D0~D56までALF-5755で処置された15匹の糖尿病マウス;
D群:D0~D24までプラセボで処置された10匹の糖尿病マウス;
E群:D0~D24までALF-5755で処置された10匹の糖尿病マウス。
【0161】
糖尿病レベルについてチェックするために週に一度実施される糖血症測定に先立つ2時間の間は、動物は食物への接近を有さない。糖血症レベルは尾静脈からの静脈穿刺から得られ、血糖計(AccuCheck、Roche)を使用して古典的にアッセイされる。
【0162】
ALF-5755又はプラセボを動物に毎日投与する。
【0163】
神経障害は、Von Freyフィラメントを使用した接触性アロディニアを通じて及び動物の後肢の機械的刺激への反応の観察を通じて評価される。
【0164】
最初の評価は、A~E群において、A~C群からの動物について、処置前(D-1)、D20に、及び安楽死前55日に実施される。
【0165】
動物を、メッシュ床を伴う個々のプレキシガラスシリンダーに入れる。動物は、行動評価の前日に30分間の馴化セッションを実施する。動物は、脱水を避けるため、シリンダー上に1時間を上回って滞在しない。
【0166】
テストの日、動物はワイヤーグリッドと観察エリアに慣れるために、最低15分間にわたり乱されることなく放置される。接触性アロディニアテストは、後足の足底中央表面に適用されたVon Freyフィラメント(アップダウンVon Frey法)を使用して実施される。
【0167】
「アップダウン」Von Frey法を使用して、LD50sを決定するために使用される統計式に基づいて、動物の50%において足引っ込め反応を誘発するのに要求される機械的力を決定する(Dixon, 1980, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 20, 441-462;Chaplan et al., 1994, J. Neurosci. Methods 53, 55-63)。
【0168】
この方法は、例えば、J. R. Deuis、L. S. Dvorakova、及びI. Vetter(Methods Used to Evaluate Pain Behaviors in Rodents;Front Mol Neurosci. 2017;10: 284)、及びMillsら(Estimating efficacy and drug ED50’s using von Frey thresholds: impact of weber’s law and log transformation;J Pain. 2012 Jun;13(6):519-23)において例証されているように、当業者に周知である。
【0169】
機械的刺激への反応がまた、D55でA、B、及びC群の動物に対して、較正済み鉗子(齧歯動物ピンチャー鎮痛メーター、Bioseb)を使用した痛覚計を用いて評価される。
【0170】
動物は、行動評価の前日に馴化セッションを実施する。
【0171】
テストの当日、動物を、評価前の2時間に実験室に入れる。較正済み鉗子を次に、侵害受容反応が生じるまで、一定速度(2秒毎に200g)で、手で徐々に適用する。侵害受容閾値の測定は、各々の後足に約5秒の間隔で3回反復される。
【0172】
動物の外観及び行動は、インビボ段階の開始から終了まで少なくとも毎日評価される。任意の異常所見を記録する。
【0173】
さらに、D及びE群についてはD24に、B及びC群についてはD56に、全ての動物を安楽死させ、組織を収集する。各々の動物(B~E群)からの2つの後足の足底表面からの皮膚サンプルを収集し、足の皮内神経線維密度の免疫組織化学分析のためにホルマリン中に入れる。
【0174】
これらの組織の表皮神経支配を次に評価する。
【0175】
組織像をNOVAXIA(フランス、サンローランヌーアン)により処理する。後足の足底表面の皮膚は、パラフィンブロック中に含まれる。パラフィン包埋後、1枚の切片を実施し、PGP9.5染色を行って表皮の神経支配を評価する。
【0176】
実施例2
【0177】
非肥満II型糖尿病のラットモデルであるGoto-Kakizaki(GK)ラット(Metabrainにおいて飼育)における末梢神経障害に対するALF-5755を用いた2ヶ月の持続的処置の効果
【0178】
動物
【0179】
動物はMetabrain動物施設において飼育されている。全てのラットに、SAFE(Scientific Animal Food and Engineering - Route de Saint Bris - 89290 AUGY - France)からの通常の食餌113を食べさせ、自由に飲水させた。50日の試験の間に、ALF-5755を、Alzet(登録商標)浸透圧ポンプ(参考:2ML4バッチ10405-19-1時間当たり2.5μL)を使用して1.25mg/kgの用量でラットに送達させる。
【0180】
動物を、追跡調査のために週に一度体重測定する。血漿を、糖血症及びインスリン血症の測定のために非絶食ラットにおいてポンプ移植前(D-1又はD27)及び屠殺前(D46)に収集する。
【0181】
A.疼痛への感受性-ホットプレートテスト
【0182】
テストはホットプレート鎮痛器具で実施される。ラットを、52~55℃に維持されたホットプレート上に個別に置く。最初の後足を舐める又は引っ込めるまでの潜時を、侵害受容閾値の指標として取る。動物を次に、装置から直ちに取り出す。カットオフタイム、一般的には50秒が、加熱表面への長時間の曝露からの組織損傷を持続する動物のリスクを最小限に抑えるために確立されている。
【0183】
結果
【0184】
図3は、ラットがホットプレートから足を引っ込めるまでの時間を測定したホットプレートテストの結果を示す。結果を平均値±SEMとして提示する。
図3中の対応のないt検定は、ALF-5755を用いた47日間の皮下持続処置後、GKラットは、プラセボ処置ラットと比較して改善された熱痛の知覚を呈し、27%の疼痛感受性の改善を伴う(t(18)= 2.4、*p=0.027)(対応のないt検定*p<0.05)。
【0185】
この結果は、本発明に従った分子を用いた処置によって、末梢神経障害が改善されることを実証する。
【0186】
B.電気生理学的評価-複合筋活動電位
【0187】
複合筋活動電位(CMAP)の電気生理学的記録が行われている。
【0188】
麻酔後、ラットの坐骨神経を、股関節及び膝窩のレベルに配置された双極針電極を用いて経皮的に刺激する。記録用双極針電極を腓腹筋腹部中に配置する。共通基準(接地電極)を、尾に基づいて配置する。
【0189】
電気刺激は、周波数1Hz及び持続時間0.2m/sを伴う方形パルスである。刺激電流強度は、過最大強度(最大CMAPを誘発する値を30%上回る電流強度)まで徐々に増加させる。刺激を全ての測定について5回反復して、平均値を記録する。
【0190】
結果
【0191】
神経機能に対する処置の生理学的効果を評価するために、本発明者らは、針電極を使用して坐骨神経を刺激し、腓腹筋において複合筋活動電位(CMAP)を測定した。
【0192】
図4は、ピークからピークまでの振幅が測定されたCMAPテストの結果を示す。結果は平均値±SEMとして提示される。
図4中の対応のないt検定は、ALF-5755を用いた2ヶ月の処置後、GKラットのCMAP振幅が、プラセボと比較して、有意に増加していることを示す(t(16)=2.76、*p=0.014)。
【0193】
この結果は、本発明に従った分子を用いた処置によって、末梢神経障害の寛解を示す電気信号への筋肉反応が改善されることを実証する。
【0194】
配列表
【0195】
配列番号1は、N末端の26アミノ酸シグナルペプチドが欠失したHIP/PAPタンパク質のアミノ酸配列である。
【化1】
【0196】
配列番号2は、N末端の26アミノ酸シグナルペプチド及びN末端位置中の11アミノ酸プロペプチドが欠失したHIP/PAPタンパク質のアミノ酸配列である。
【化2】
【0197】
配列番号3は、N末端の26アミノ酸シグナルペプチドが欠失し、メチオニンがN末端位置に加えられたHIP/PAPタンパク質のアミノ酸配列である。
【化3】
【0198】
配列番号4は、完全なHIP/PAPタンパク質のアミノ酸配列である。
【化4】
【0199】
アミノ酸配列を本明細書中に開示し、参考としての役割を果たす。同じ配列がまた、特許事項の目的のための標準要件に従ってフォーマット化された配列表中に提示されている。標準配列表との任意の配列の不一致の場合では、本明細書中に記載される配列を参照するものとする。
【配列表】
【国際調査報告】