(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-エチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルの塩の固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 207/14 20060101AFI20240423BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07D207/14 CSP
A61K31/40
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568486
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 US2022028606
(87)【国際公開番号】W WO2022240886
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501170688
【氏名又は名称】アステックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダヴァール ニプン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マンタティ スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ズンド ジェマ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC07
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(本書面中、化合物Iとして示す)の形態を、固体状態で調製し、特徴付けした。また、化合物Iの形態の製造プロセス及び使用方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、以下のピーク:9.37°±0.2°、14.63°±0.2°及び21.27°±0.2°を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルヘミフマル酸塩(化合物Iの形態I)。
【請求項2】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、4.73°±0.2°、18.86°±0.2°及び20.65°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、4.73°±0.2°、8.18°±0.2°、14.79°±0.2°、18.86°±0.2°、20.41°±0.2°及び20.65°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
前記回折パターンが実質的に
図1Aに示されるとおりである、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項5】
前記結晶形態が、
溶媒中の化合物Iの溶液を、溶媒中のフマル酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
前記スラリーを約50℃の温度に温めることと、
前記スラリーを室温まで冷却することと、
前記スラリーから前記固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
前記濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態Iを得ることと、
を含むプロセスによって調製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項6】
前記溶媒が、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、イソプロパノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記溶媒がイソプロパノールである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、以下のピーク:13.86°±0.2°、19.05°±0.2°及び22.94°±0.2を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルモノシュウ酸塩(化合物Iの形態II)。
【請求項9】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、18.50°±0.2°、22.31°±0.2°及び28.48°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項10】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、15.83°±0.2°、16.32°±0.2°、18.50°±0.2°、18.79°±0.2°、22.31°±0.2°及び28.48°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項11】
前記回折パターンが実質的に
図2に示されるとおりである、請求項8~10のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項12】
前記結晶形態が、
溶媒中の化合物Iの溶液を、溶媒中のシュウ酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
前記スラリーを約50℃の温度に温めることと、
前記スラリーを室温まで冷却することと、
前記スラリーから前記固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
前記濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iのモノシュウ酸塩を得ることと、
前記化合物Iのモノシュウ酸塩をエタノールから再結晶させて化合物Iの形態IIを得ることと、
を含むプロセスによって調製される、請求項8~11のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項13】
前記溶媒が、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、イソプロパノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記溶媒がイソプロパノールである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される以下のピーク:6.24°±0.2°、16.47°±0.2°及び21.20°±0.2°を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルメシル酸塩(化合物Iの形態IIIA)。
【請求項16】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、15.39°±0.2°、16.97°±0.2°及び21.51°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項17】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、8.52°±0.2°、15.39°±0.2°、16.97°±0.2°、17.95°±0.2°及び21.51°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む、請求項16に記載の結晶形態。
【請求項18】
前記回折パターンが実質的に
図3Aに示されるとおりである、請求項15~17のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項19】
約169.3℃で吸熱オンセットを示す示差走査熱量測定(DSC)曲線によって特徴付けられる、請求項15~18のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項20】
前記DSC曲線が実質的に
図3Bに示されるとおりである、請求項19に記載の結晶形態。
【請求項21】
前記結晶形態が、
溶媒中の化合物Iの溶液を、溶媒中のメタンスルホン酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
前記スラリーから前記固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
前記濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態IIIAを得ることと、
を含むプロセスによって調製される、請求項15~20のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項22】
前記溶媒が、アセトニトリル又はイソプロパノールである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶媒がイソプロパノールである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される以下のピーク:6.17°±0.2°、16.86°±0.2°及び20.92°±0.2°を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルエシル酸塩(化合物Iの形態IVA)。
【請求項25】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、8.42°±0.2°、18.99°±0.2°及び21.57°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む、請求項24に記載の結晶形態。
【請求項26】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、8.42°±0.2°、18.99°±0.2°、21.57°±0.2°及び24.26°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む、請求項24に記載の結晶形態。
【請求項27】
前記回折パターンが実質的に
図4Aに示されるとおりである、請求項25又は26に記載の結晶形態。
【請求項28】
約238.5℃で吸熱オンセットを示す示差走査熱量測定(DSC)曲線によって特徴づけられる、請求項24~27のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項29】
前記DSC曲線が実質的に
図4Bに示されるとおりである、請求項28に記載の結晶形態。
【請求項30】
前記結晶形態が、
溶媒中の化合物Iの溶液を溶媒中のエタンスルホン酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
前記スラリーから前記固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
前記濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態IVAを得ることと、
を含むプロセスによって調製される、請求項24~29のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項31】
前記溶媒が、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記溶媒がイソプロパノールである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される以下のピーク:6.18°±0.2°、17.41°±0.2°及び19.34°±0.2°を含む化合物Iの形態IIIAのX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルマレイン酸塩(化合物Iの形態V)。
【請求項34】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、18.10°±0.2°、22.20°±0.2°及び24.14°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む、請求項33に記載の結晶形態。
【請求項35】
前記回折パターンが、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、12.78°±0.2°、18.10°±0.2°、22.20°±0.2°、24.14°±0.2°及び25.87°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む、請求項33に記載の結晶形態。
【請求項36】
前記回折パターンが実質的に
図5Aに示されるとおりである、請求項33~35のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項37】
約139.9℃で吸熱オンセットを示す示差走査熱量測定(DSC)曲線によって特徴付けられる、請求項33~36のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項38】
前記DSC曲線が実質的に
図5Bに示されるとおりである、請求項37に記載の結晶形態。
【請求項39】
前記結晶形態が、
溶媒中の化合物Iの溶液を溶媒中のマレイン酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
前記スラリーから前記固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
前記濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態Vを得ることと、
を含むプロセスによって調製される、請求項33~38のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項40】
前記溶媒が、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、イソプロパノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記溶媒がイソプロパノールである、請求項39に記載のプロセス。
【請求項42】
前記結晶形態が実質的に純粋な形態にある、請求項1~41のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載の化合物Iの結晶形態と、1種以上の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項44】
前記化合物Iの少なくとも99%が結晶形態にある、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記化合物Iの少なくとも95%が結晶形態にある、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
哺乳動物におけるリジン特異的ヒストン脱メチル化酵素1A(LSD-1)関連疾患又は状態を治療する方法であって、治療上有効量の、請求項1~42のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項43に記載の組成物を、前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項47】
前記LSD-1関連疾患又は状態が癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記癌が悪性腫瘍である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記癌が、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨肉腫、軟部組織肉腫、白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄増殖性疾患、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍、又は中皮腫である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記癌が、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、白血病、又は骨髄異形成症候群である、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は2021年5月11日付けで出願された米国仮特許出願第63/187,125号に対する米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、この内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、概して、リジン特異的ヒストン脱メチル化酵素1A(LSD1)を調節する化合物の固体形態、その医薬組成物、その治療的使用、及び固体形態を作製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
化合物4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(本明細書において化合物Iという)は有効なLSD1阻害剤であり、抗腫瘍薬、又は癌の予防及び/又は治療のための作用薬として使用される。
【0004】
このようなLSD1阻害剤は、医薬製剤に使用した場合に安定性を示すことが望まれる。
【0005】
また、容易に取り扱うことができるようなLSD1阻害剤を開発することが望まれている。生物学的に活性な化合物の吸湿性が、有効な医薬組成物へのその組み込みの際の化合物の取り扱いに影響することが知られている。吸湿性化合物には、周囲環境中に存在する水の量に応じて化合物の質量に変動をもたらす吸湿による問題があり、化合物の生物学的有効性を正確に評価すること、及び、化合物を含む医薬組成物の均一性を保証することを困難にする。更に吸湿性化合物は粘着性が高く、加工中に問題を引き起こすことがある。したがって、低い吸湿性及び/又は粘着性を有する固体形態が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、化合物I並びにその塩、共結晶、溶媒和物及び水和物の多形及び/又は非晶質形態を提供する。また、本明細書には、化合物Iの形態、化合物Iの形態を含む医薬組成物を作製するプロセス、及びLSD1によって媒介される疾患の治療におけるかかる形態及び医薬組成物を使用するための方法も記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】化合物Iの形態IのX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)である。
【
図2】化合物Iの形態IIのX線粉末ディフラクトグラムである。
【
図3】
図3Aは、化合物Iの形態IIIAのX線粉末ディフラクトグラムである。
図3Bは、化合物Iの形態IIIの示差走査熱量計(DSC)曲線である。
【
図4】
図4Aは、化合物Iの形態IVAのX線粉末ディフラクトグラムである。
図4Bは、化合物Iの形態IVの示差走査熱量計(DSC)曲線である。
【
図5】
図5Aは、化合物Iの形態VのX線粉末ディフラクトグラムである。
図5Bは、化合物Iの形態Vの示差走査熱量計(DSC)曲線である。
【
図6】
図6Aは、化合物Iの形態VIのX線粉末ディフラクトグラムである。
図6Bは、化合物Iの形態VIIの偏光顕微鏡検査(PLM)画像である。
【
図7】
図7Aは、化合物Iの形態IのPLM画像である。
図7Bは、化合物Iの形態IIのPLM画像である。
【
図8】
図8Aは、化合物Iの形態IIIBのX線粉末ディフラクトグラムである。
図8Bは、化合物Iの形態IIICのX線粉末ディフラクトグラムである。
【
図9】
図9Aは、化合物Iの形態IIIDのX線粉末ディフラクトグラムである。
【
図10】
図10Aは、化合物Iの形態IVBの示差走査熱量計(DSC)曲線である。
図10Bは、化合物Iの形態IVBのX線粉末ディフラクトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
化合物4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(本明細書において化合物Iと示す)は、以下の式を有する:
【化1】
【0009】
化合物Iは、LSD1の阻害剤である。その合成及び使用方法は、PCT国際出願公開である国際公開第2017/090756号に記載されており、その出願はその全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0010】
1.定義
本明細書において使用される場合、以下の語句は、それらが使用される文脈が他に示す範囲を除き、一般に以下に示すような意味を有することが意図される。
【0011】
「含む(comprise)」、及びその変形である「含む(comprises)」及び「含む、含んでいる(comprising)」等の用語は、開放的で包括的な意味で、すなわち、「含むが、それに限定されない」として解釈されるものとする。さらに、文脈上明確に複数であることを示さない単数形(the singular forms "a," "an," and "the")は、文脈が明確に指示しない限り、複数の参照先を含む。したがって、「化合物(the compound)」への言及には、複数のそのような化合物が含まれ、「アッセイ(the assay)」への言及には、当業者に知られる1つ以上のアッセイ及びその等価物への言及が含まれる。
【0012】
本明細書において、或る値又はパラメータに関する「約」への言及は、その値又はパラメータ自体に向けられた実施形態を含む(及び説明する)。或る特定の実施形態において、「約」という用語は、表示量±10%を含む。他の実施形態において、「約」という用語は、表示量±5%を含む。或る特定の他の実施形態において、「約」という用語は、表示量±2.5%を含む。或る特定の他の実施形態において、「約」という用語は、表示量±1%を含む。また、「約X」という用語は、「X」の記載も含む。
【0013】
本開示を通して数値範囲の記載は、範囲を定義する値を含む範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法として機能することを意図しており、各個別の値は、個別に本明細書に記載されているかのように本明細書の一部をなす。
【0014】
化合物I、又はその塩、共結晶、溶媒和物若しくは水和物の形態が本明細書において提供される。1つの実施形態において、化合物I、又はその塩、共結晶、溶媒和物若しくは水和物の形態への言及は、組成物中に存在する化合物I、又はその塩、共結晶、溶媒和物若しくは水和物の少なくとも50%~99%(例えば、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%)が、指定された形態にあることを意味する。例えば、1つの実施形態において、化合物Iの形態Iへの言及は、組成物中に存在する化合物Iの少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%が、形態Iにあることを意味する。
【0015】
「固体形態」という用語は、非晶質及び結晶形態を含む固体状態の物質の種類を指す。「結晶形態」という用語は、多形体及び溶媒和物、水和物等を指す。「多形体」という用語は、X線回折、融点等の特定の物理的特性を有する特定の結晶構造を指す。
【0016】
「共結晶」という用語は、非共有結合相互作用を介して結合された、本明細書に開示される化合物と、1種以上の非イオン化共結晶形成体との分子複合体を指す。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される共結晶は、化合物Iの非イオン化形態(例えば、化合物Iの遊離形態)及び1種以上の非イオン化共結晶形成体を含むことができ、この場合、非イオン化化合物Iと共結晶形成体(複数の場合もある)とは非共有結合性相互作用を介して結合されている。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される共結晶は、化合物Iのイオン化形態(例えば、化合物Iの塩)及び1種以上の非イオン化共結晶形成体を含むことができ、この場合、イオン化化合物Iと共結晶形成体(複数の場合もある)とは非共有結合性相互作用を介して結合されている。共結晶は更に、無水形態、溶媒和形態、又は水和形態で存在することができる。或る特定の場合には、共結晶は、親形態(即ち、遊離分子、両性イオン等)又は親化合物の塩と比較して、改善された特性を有することができる。改善された特性とは、高められた溶解度、高められた溶解性、高められたバイオアベイラビリティ、高められた用量反応、低減された吸湿性、高められた安定性、通常は非晶質の化合物の結晶形態、塩になり難い又は塩にならない化合物の結晶形態、低減された形態多様性、より望ましいモルフォロジー等であり得る。共結晶を作製し、特徴付ける方法は当業者に知られている。
【0017】
「共結晶形成体」又は「共形成体」という用語は、化合物I又は本明細書に開示される任意の他の化合物と関連した、本明細書に開示される1種以上の薬学的に許容される塩基又は薬学的に許容される酸を指す。
【0018】
「溶媒和物」という用語は、溶媒分子と溶質の分子又はイオンとの組合せによって形成される複合体を指す。溶媒は、有機化合物、無機化合物、又は両者の混合物であり得る。本明細書において使用される場合、「溶媒和物」という用語は、「水和物」(すなわち、水分子と溶質の分子又はイオンとの組合せによって形成される複合体)、半水和物、チャネル水和物等を含む。溶媒の幾つかの例としては、限定されるものではないが、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及び水が挙げられる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲に包含される。
【0019】
「脱溶媒和」という用語は、本明細書に記載の溶媒和物であって、溶媒分子が部分的又は完全に除去された化合物Iの形態を指す。脱溶媒和形態を生成するための脱溶媒和技術としては、限定されないが、化合物Iの形態(溶媒和物)の真空への曝露、溶媒和物を高温におくこと、溶媒和物を空気若しくは窒素等のガス流に曝露すること、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。したがって、脱溶媒和化合物Iの形態は、無水である、即ち溶媒分子を完全に含まないものであるか、又は溶媒分子が化学量論的若しくは非化学量論的な量で存在する部分的に溶媒和されたものであることができる。
【0020】
「非晶質」という用語は、物質が分子レベルにおける長距離秩序を有さず、温度に応じて、固体又は液体の物理的特性を示すことができる状態を指す。典型的には、このような物質は特有のX線回折パターンを示さず、固体の特性を示すが、より形式的には液体として記載される。加熱の際には、固体特性から液体特性への変化が生じ、これは相の変化、典型的には二次(ガラス転移)によって特徴付けられる。
【0021】
化合物Iを含む、本明細書にある任意の式又は構造は、化合物の標識化しない形態及び同位体で標識化した形態を表すことも意図される。任意の所与の原子について、同位体が原則的にその自然発生に応じた比率で存在することができること、又は当業者に知られている合成方法を使用して、1つ以上の特定の原子を1種以上の同位体に対して高められることができることが理解される。即ち、水素は、例えば、1H、2H、3Hを含み、炭素は、例えば、11C、12C、13C、14Cを含み、酸素は、例えば16O、17O、18Oを含み、窒素は、例えば13N、14N、15Nを含み、硫黄は、例えば、32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sを含み、フッ素は、例えば、17F、18F、19Fを含み、塩素は、例えば、35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clを含む等である。
【0022】
本明細書において使用される場合、「治療する(treat)」、「治療(treating)」、「療法("therapy," "therapies,")」という用語及び同様の用語は、疾患又は状態の1つ以上の症状、即ち徴候を予防、軽減又は改善するために、及び/又は治療される対象の生存を延長するために有効な量で物質、例えば、本明細書に記載の化合物Iの任意の1種以上の固体、結晶又は多形体を投与することを指す。
【0023】
「投与」という用語は、対象への、経口投与、座薬としての投与、局所接触、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、鼻腔内投与若しくは皮下投与、又は徐放性デバイス、例えばミニ浸透圧ポンプの移植を指す。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、頬、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸又は経皮)を含む任意の経路による。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内(intra-arteriole)、皮内、皮下、腹腔内、脳室内及び頭蓋内が挙げられる。他の送達方式としては、限定されないが、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチ等の使用が挙げられる。
【0024】
本明細書において使用される場合、「調節」又は「調節する」という用語は、生物活性、特にLSD1等の特定の生体分子に関連する生物活性を変化させる影響を指す。例えば、特定の生体分子のアゴニスト又はアンタゴニストは、生体分子の活性を増加させる(例えば、アゴニスト、活性化剤)か、又は減少させる(例えば、アンタゴニスト、阻害剤)かのいずれかによって、その生体分子、例えばLSD1の活性を調節する。このような活性は、典型的には、例えばLSD1に関して、阻害剤又は活性化剤それぞれについての化合物の阻害濃度(IC50)又は励起濃度(EC50)に関して示される。
【0025】
本明細書において使用される場合、「LSD1媒介疾患又は状態」という用語は、その任意の突然変異を含むLSD1の生物学的機能が、疾患又は状態の発症、経過及び/又は症状に影響を与える疾患又は状態、及び/又はLSD1の調節が疾患又は状態の発症、経過及び/又は症状を変化させる疾患又は状態を指す。LSD1媒介疾患又は状態には、LSD1調節が治療効果を提供する疾患又は状態が含まれ、例えば、この場合、本明細書に記載の化合物Iの1種以上の固体、結晶又は多形体を含む化合物(複数の場合もある)を用いた治療は、疾患又は状態に罹っているか、又はそのリスクがある対象に治療効果を提供する。
【0026】
本明細書において使用される場合、「組成物」という用語は、その任意の固体形態を含む、少なくとも1種の薬学的に活性な化合物を含む、治療目的での意図される対象への投与に適した医薬調製物を指す。組成物は、化合物の改善された製剤を提供するために、適切な担体又は賦形剤等の少なくとも1種の薬学的に許容される成分を含むことができる。
【0027】
本明細書において使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、本明細書に記載の化合物を用いて治療される生体を指し、これには、限定されないが、ヒト、他の霊長類、スポーツ動物、牛等の商業的関心がある動物、馬等の家畜、又は犬及び猫等のペット等の任意の哺乳動物が含まれる。
【0028】
「薬学的に許容される」という用語は、示された物質が、治療される疾患又は状態及びそれぞれの投与経路を考慮して、合理的に賢明な医師が患者への物質の投与を避けるであろう特性を有していないことを示す。例えば、注射剤用では、そのような物質は原則的に無菌であることが一般に要求される。
【0029】
本願の文脈において、「治療上有効」又は「有効量」という用語は、物質又は物質の量が、疾患又は病態の1つ以上の症状を予防、軽減又は改善するために、及び/又は治療される対象の生存を延長するために有効であることを示す。治療上有効量は、化合物、障害又は状態及びその重篤度、並びに治療される哺乳動物の年齢、体重等に応じて変化するであろう。例えば、有効量は、有効な又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、単回投与で一度に全てを提供することも、数回の投与で有効量を提供する複数の分割量で提供することもできる。何が有効量とみなされるであろうかの正確な決定は、対象のサイズ、年齢、傷害、及び/又は治療される疾患又は傷害、及び傷害が発生した又は疾患が始まってからの時間量を含む、各対象に個別の要因に基づくことができる。当業者は、当該技術分野において日常業務であるこれらの考慮に基づいて、所与の対象に対する有効量を決定することができるであろう。
【0030】
幾つかの実施形態において、「図に実質的に示される」という語句は、X線粉末ディフラクトグラムに適用される場合、±0.2°2θ又は±0.1°2θの変動を含むことを意味し、DSCサーモグラムに適用される場合、±3℃の変動を含むことを意味し、熱重量分析(TGA)に適用される場合、重量損失における±2%の変動を含むことを意味する。
【0031】
「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも99.9%が言及される多形体であることを意味する。「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも99.5%が言及される多形体であることを意味する。「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも99%が言及される多形体であることを意味する。「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも98%が言及される多形体であることを意味する。「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも97%が言及される多形体であることを意味する。「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも96%が言及される多形体であることを意味する。「(多形体の)実質的に純粋な形態」とは、幾つかの実施形態において、言及される物質において、物質の少なくとも95%が言及される多形体であることを意味する。調節剤である、又は調節剤である可能性のある化合物の使用、試験、又はスクリーニングの文脈において、「接触」という用語は、化合物(複数の場合もある)を、特定の分子、複合体、細胞、組織、器官、又は、他の特定の物質であって、化合物と他の特定の物質との間で有効な結合相互作用及び/又は化学反応が生じることができる他の特定の物質に対して十分近くに存在させること意味する。
【0032】
更に、本明細書において使用される略語は、以下のそれぞれの意味を有する。
【0033】
【0034】
2.化合物Iの形態
上記で概説したように、本開示は、化合物4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(以下、「化合物I」の「化合物」)、及びその塩、共結晶、溶媒和物又は水和物の結晶形態を提供する。化合物I及びその塩、共結晶、溶媒和物又は水和物の結晶形態、及び化合物I及びその塩、共結晶、溶媒和物又は水和物の他の形態(例えば、非晶質形態)を、本明細書においては集合的に「化合物Iの形態」を指す。
【0035】
幾つかの実施形態において、化合物Iは遊離塩基である。幾つかの実施形態において、化合物Iは塩又は共結晶である。幾つかの実施形態において、化合物Iは、薬学的に許容される塩又は共結晶である。幾つかの実施形態において、化合物Iは溶媒和物である。幾つかの実施形態において、化合物Iは水和物である。幾つかの実施形態において、化合物Iは無水物である。
【0036】
幾つかの実施形態において、化合物Iは非晶質形態にある。
【0037】
結晶形態及び非晶質形態を特徴付けるための技術としては、限定されないが、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、単結晶X線回折、振動分光法、例えば、赤外(IR)及びラマン分光法、固体状態及び溶液核磁気共鳴(NMR)分光法、光学顕微鏡法、ホットステージ光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法(SEM)、電子結晶構造解析及び定量分析、粒径分析(PSA)、表面積分析、溶解度測定、溶解測定、元素分析及びカールフィッシャー分析が挙げられる。特徴的な単位格子パラメータは、限定されないが、単結晶回折及び粉末回折を含む、X線回折及び中性子回折等の1種以上の技術を使用して決定することができる。粉末回折データを分析するために有用な技術としては、例えば、2種以上の固相を含むサンプル中の単一相に関連する回折ピークを分析するために使用できる、リートベルト精密化等のプロファイル精密化が挙げられる。粉末回折データを分析するために有用な他の方法としては、当業者が結晶粉末を含むサンプルから単位格子パラメータを決定できる単位格子指数付けが挙げられる。
【0038】
化合物Iの形態I-ヘミフマル酸塩
1つの実施形態において、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、以下のピーク:9.37°±0.2°、14.63°±0.2°及び21.27°±0.2°を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルヘミフマル酸塩(化合物Iの形態I)が本明細書に提供される。
【0039】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Iの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、4.73°±0.2°、18.86°±0.2°及び20.65°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Iの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、4.73°±0.2°、8.18°±0.2°、14.79°±0.2°、18.86°±0.2°、20.41°±0.2°及び20.65°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Iの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、4.73°±0.2°、8.18°±0.2°、9.37°±0.2°、14.63°±0.2°、14.79°±0.2°、18.86°±0.2°、20.41°±0.2°、21.27°±0.2°及び20.65°±0.2°から選択されるピークを含む。
【0042】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Iの回折パターンは、実質的に
図1に示されるとおりである。
【0043】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Iは、
溶媒中の化合物Iの溶液を、溶媒中のフマル酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
スラリーを約50℃の温度に温めることと、
スラリーを室温まで冷却することと、
スラリーから固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態Iを得ることと、
を含むプロセスによって調製される。
【0044】
幾つかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、イソプロパノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される。幾つかの実施形態において、溶媒はイソプロパノールである。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Iは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。
【0045】
化合物Iの形態II-モノシュウ酸塩
1つの実施形態において、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、以下のピーク:13.86°±0.2°、19.05°±0.2°及び22.94°±0.2を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルモノシュウ酸塩(化合物Iの形態II)が本明細書に提供される。
【0046】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、18.50°±0.2°、22.31°±0.2°及び28.48°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、15.83°±0.2°、16.32°±0.2°、18.50°±0.2°、18.79°±0.2°、22.31°±0.2°及び28.48°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、13.86°±0.2°、15.83°±0.2°、16.32°±0.2°、18.50°±0.2°、18.79°±0.2°、19.05°±0.2°、22.31°±0.2°、22.94°±0.2°及び28.48°±0.2°から選択されるピークを含む。
【0049】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIの回折パターンは、実質的に
図2に示されるとおりである。
【0050】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIは、
溶媒中の化合物Iの溶液を、溶媒中のシュウ酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
スラリーを約50℃の温度に温めることと、
スラリーを室温まで冷却することと、
スラリーから固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iのモノシュウ酸塩を得ることと、
化合物Iのモノシュウ酸塩をエタノールから再結晶させて化合物Iの形態IIを得ることと、
を含むプロセスによって調製される。
【0051】
幾つかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、イソプロパノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される。幾つかの実施形態において、溶媒はイソプロパノールである。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。
【0052】
化合物Iの形態IIIA~IIID-メシル酸塩
1つの実施形態において、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される以下のピーク:6.24°±0.2°、16.47°±0.2°及び21.20°±0.2°を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルメシル酸塩(化合物Iの形態IIIA)が本明細書に提供される。
【0053】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、15.39°±0.2°、16.97°±0.2°及び21.51°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、8.52°±0.2°、15.39°±0.2°、16.97°±0.2°、17.95°±0.2°及び21.51°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む。
【0055】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、6.24°±0.2°、8.52°±0.2°、15.39°±0.2°、16.47°±0.2°、16.97°±0.2°、17.95°±0.2°、21.20°±0.2°及び21.51°±0.2°から選択されるピークを含む。
【0056】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAの回折パターンは、実質的に
図3Aに示されるとおりである。
【0057】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAの示差走査熱量測定(DSC)曲線は、約169.3℃で吸熱オンセットを示す。
【0058】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAのDSC曲線は、実質的に
図3Bに示されるとおりである。
【0059】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAは、
溶媒中の化合物Iの溶液を、溶媒中のメタンスルホン酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
スラリーから固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態IIIAを得ることと、
を含むプロセスによって調製される。
【0060】
幾つかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリルである。幾つかの実施形態において、溶媒はイソプロパノールである。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIAは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。幾つかの実施形態において、溶媒がアニソールであった場合、同様のプロセスにより化合物Iの形態IIIBが提供された。幾つかの実施形態において、溶媒がブタノール、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン又はトルエンであった場合、同様のプロセスにより化合物Iの形態IIICが提供された。幾つかの実施形態において、溶媒がトリフルオロトルエン又はイソプロパノールであった場合、同様のプロセスにより化合物Iの形態IIIDが提供された。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IIIB、IIIC、IIIDは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。
【0061】
化合物Iの形態IVA及びIVB-エシル酸塩
1つの実施形態において、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される以下のピーク:6.17°±0.2°、16.86°±0.2°及び20.92°±0.2°を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルエシル酸塩(化合物Iの形態IVA)が本明細書に提供される。
【0062】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、8.42°±0.2°、18.99°±0.2°及び21.57°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、8.42°±0.2°、18.99°±0.2°、21.57°±0.2°及び24.26°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、6.17°±0.2°、8.42°±0.2°、16.86°±0.2°、18.99°±0.2°、20.92°±0.2°、21.57°±0.2°及び24.26°±0.2°から選択されるピークを含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAの回折パターンは、実質的に
図4Aに示されるとおりである。
【0066】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAの示差走査熱量測定(DSC)曲線は、約238.5℃で吸熱オンセットを示す。
【0067】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAのDSC曲線は、実質的に
図4Bに示されるとおりである。
【0068】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAは、
溶媒中の化合物Iの溶液を溶媒中のエタンスルホン酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
スラリーから固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態IVAを得ることと、
を含むプロセスによって調製される。
【0069】
幾つかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVAは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。幾つかの実施形態において、溶媒がTHF又はイソプロパノールであった場合、同様のプロセスにより化合物Iの形態IVBが提供された。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態IVBは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。
【0070】
化合物Iの形態V-マレイン酸塩
1つの実施形態において、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される以下のピーク:6.18°±0.2°、17.41°±0.2°及び19.34°±0.2°を含む化合物Iの形態IIIAのX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルマレイン酸塩(化合物Iの形態V)が本明細書に提供される。
【0071】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、18.10°±0.2°、22.20°±0.2°及び24.14°±0.2°から選択される1つ以上のピークを更に含む。
【0072】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、12.78°±0.2°、18.10°±0.2°、22.20°±0.2°、24.14°±0.2°及び25.87°±0.2°から選択される2つ以上のピークを更に含む。
【0073】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vの回折パターンは、Cu K-α(λ=1.5406Å)放射線を使用して決定される2θ角として表される、6.18°±0.2°、12.78°±0.2°、17.41°±0.2°、18.10°±0.2°、19.34°±0.2°、22.20°±0.2°、24.14°±0.2°及び25.87°±0.2°から選択されるピークを含む。
【0074】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vの回折パターンは、実質的に
図5Aに示されるとおりである。
【0075】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vの示差走査熱量測定(DSC)曲線は、約139.9℃で吸熱オンセットを示す。
【0076】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態VのDSC曲線は、実質的に
図5Bに示されるとおりである。
【0077】
幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vは、
溶媒中の化合物Iの溶液を溶媒中のマレイン酸の溶液と室温で接触させてスラリーを得ることと、
スラリーから固体を濾過して濾過ケーキを得ることと、
濾過ケーキを乾燥させて、化合物Iの形態Vを得ることと、
を含むプロセスによって調製される。
【0078】
幾つかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、アニソール、ブタノール、イソプロパノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンから選択される。幾つかの実施形態において、溶媒はイソプロパノールである。幾つかの実施形態において、化合物Iの形態Vは、実施例部分に記載される一連の工程によって調製される。
【0079】
3.医薬組成物、キット及び投与方式
本明細書に記載の化合物Iの形態は、医薬組成物において投与することができる。即ち、本明細書においては、本明細書に記載の化合物Iの1種以上の形態と、担体、アジュバント及び賦形剤等の1種以上の薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物が提供される。適切な薬学的に許容されるビヒクルとしては、例えば、不活性固体希釈剤及び増量剤、滅菌水溶液及び種々の有機溶媒を含む希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤及びアジュバントが挙げられる。このような組成物は、製薬分野において既知のやり方で調製される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Co., Philadelphia, Pa. 17th Ed. (1985)及びModern Pharmaceutics, Marcel Dekker, Inc. 3rd Ed. (G.S. Banker & C.T. Rhodes, Eds.)を参照されたい。医薬組成物は、単独で、又は他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0080】
幾つかの実施形態は、治療上有効量の本明細書に記載の化合物Iの固体形態を含む医薬組成物に関する。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、化合物Iの形態I、化合物Iの形態II、化合物Iの形態IIIA、化合物Iの形態IVA及び/又は化合物Iの形態Vから選択される固体形態と、1種以上の薬学的に許容される担体とを含む。
【0081】
幾つかの実施形態は、本明細書に記載の化合物Iの結晶形態又は非晶質形態と、1種以上の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が本明細書に記載の結晶形態にある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が本明細書に記載の非晶質形態にある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が形態Iにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が形態IIにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が形態IIIAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が形態IVAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも95%が形態Vにある。
【0082】
1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの97%以上が本明細書に記載の結晶形態にある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも97%が形態Iにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも97%が形態IIにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも97%が形態IIIAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも97%が形態IVAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも97%が形態Vにある。
【0083】
1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99%が本明細書に記載の結晶形態にある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99%が形態Iにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99%が形態IIにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99%が形態IIIAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99%が形態IVAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99%が形態Vにある。
【0084】
1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.5%が本明細書に記載の結晶形態にある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.5%が形態Iにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.5%が形態IIにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.5%が形態IIIAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.5%が形態IVAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.5%が形態Vにある。
【0085】
1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.9%が本明細書に記載の結晶形態にある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.9%が形態Iにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.9%が形態IIにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.9%が形態IIIAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.9%が形態IVAにある。1つの実施形態において、医薬組成物は化合物Iを含み、この場合、化合物Iの少なくとも99.9%が形態Vにある。
【0086】
本明細書に記載の化合物Iの任意の結晶形態は、微粉化後に又は微粉化されずに、種々の形態の医薬組成物、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、細粒、粉末医薬品、ドライシロップ及び同様の経口調製物、座薬、吸入薬、点鼻薬、軟膏、パッチ、エアゾール等に加工することができる。
【0087】
幾つかの実施形態において、組成物は、増量剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、錯化剤、可溶化剤及び界面活性剤等の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含み、これらは、特定の経路による化合物の投与を容易にするために選択することができる。担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース又はスクロース等の種々の糖、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、脂質、リポソーム、ナノ粒子等が挙げられる。担体としては、例えば、注射用水(WFI)の滅菌溶液、生理食塩水、グルコース溶液、ハンクス液、リンガー液、植物油、鉱油、動物油、ポリエチレングリコール、流動パラフィン等を含む、溶媒として又は懸濁液用に生理学的に適合する液体も挙げられる。賦形剤としては、例えば、コロイド二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、巨大結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、syloid、stearowet C、酸化マグネシウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水添植物油、水添綿実油、ヒマシ油、鉱油、ポリエチレングリコール(例えばPEG4000-8000)、ポリオキシエチレングリコール、ポロキサマー、ポビドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カゼイン、メタクリル酸ジビニルベンゼンコポリマー、ドクサートナトリウム、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-δ-シクロデキストリン)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、セトリミド、TPGS(d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸塩)、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールのジ脂肪酸エステル、又はポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルTween(商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸、ステアリン酸又はパルミチン酸等の脂肪酸からのソルビタン脂肪酸エステル、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトース、ラクトース、ラクトース一水和物又はラクトース噴霧乾燥物、スクロース、フルクトース、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート(dextrates)、デキストラン、デキストリン、デキストロース、酢酸セルロース、マルトデキストリン、シメチコン、ポリブドウ糖(polydextrosem)、キトサン、ゼラチン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース等も挙げられる。
【0088】
医薬製剤は、単位投与量当たり所定量の活性成分を含む単位投与形態で存在することができる。このような単位は、治療される状態、投与経路、及び患者の年齢、体重及び状態に依存して、例えば、0.5mg~1g、好ましくは1mg~700mg、より好ましくは5mg~100mgの本開示の化合物を(遊離酸、溶媒和物(水和物を含む)又は塩として、任意の形態で)含むことができる。好ましい単位投与製剤は、活性成分の1日投与量、1週投与量、1月投与量、副投与量又はその適切な少量部分を含むものである。更に、このような医薬製剤は、薬学分野において既知のいずれかの方法によって調製することができる。
【0089】
化合物I及び本明細書に記載のその形態のいずれか1つは、通常、医薬組成物の形態で投与される。したがって、本明細書においては、1種以上の化合物Iと、本明細書に記載のその形態のいずれか1つと、担体、アジュバント及び賦形剤から選択される1種以上の薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物も提供される。適切な薬学的に許容されるビヒクルは、例えば、不活性固体希釈剤及び増量剤、滅菌水溶液及び種々の有機溶媒を含む希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤、並びにアジュバントを含むことができる。このような組成物は、製薬分野で既知のやり方で調製される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Co., Philadelphia, Pa. 17th Ed. (1985)及びModern Pharmaceutics, Marcel Dekker, Inc. 3rd Ed. (G.S. Banker & C.T. Rhodes, Eds.)を参照されたい。
【0090】
医薬組成物は、単回投与又は多回投与のいずれかで投与することができる。医薬組成物は、例えば、直腸経路、頬経路、鼻腔内経路及び経皮経路を含む種々の方法によって投与することができる。或る特定の実施形態において、医薬組成物は、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口、局所、又は吸入剤として投与することができる。
【0091】
投与の1つの方式は、例えば注射による非経口である。本明細書に記載の医薬組成物を注射による投与のために組み込むことができる形態としては、例えば、水性若しくは油性の懸濁液、又は、ゴマ油、コーン油、綿実油若しくは落花生油を用いた乳濁液に加えて、エリキシル剤、マンニトール、デキストロース、又は滅菌水溶液、及び同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0092】
注射液を調製する場合には、必要に応じて、化合物Iの結晶形態に、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加することができ、得られる混合物は常法に従って皮下注射液、筋肉注射液及び静脈注射液に製剤化することができる。
【0093】
使用可能なpH調整剤及び緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。使用可能な安定化剤の例としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸及びチオ乳酸が挙げられる。使用可能な局所麻酔薬の例としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。使用可能な等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、グルコース、D-マンニトール、グリセリン等が挙げられる。
【0094】
経口投与は、本明細書に記載の化合物の別の投与経路であることができる。投与は、例えば、カプセル又は腸溶性コーティング錠剤を介して行うことができる。本明細書に記載の少なくとも1種の化合物、又は、その薬学的に許容される塩、同位体濃縮類似体、立体異性体、立体異性体の混合物又はそのプロドラッグを含む医薬組成物を製造する際、活性成分は通常、賦形剤によって希釈され、及び/又は、カプセル、サッシェ、紙又は他の収容体の形態にあることができるような担体中に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、これは固体、半固体又は液体物質の形態にあることができ、これは活性成分用のビヒクル、担体又は媒体として機能する。したがって、組成物は、錠剤、丸薬、粉末、トローチ剤、サッシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアゾール(固体として又は液体媒体中)、軟膏、軟及び硬ゼラチンカプセル、滅菌注射液、並びに滅菌パッケージ化粉末の形態であることができる。
【0095】
経口固体調製物は以下のように調製することができる。任意選択で結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、味マスキング剤又は着香剤等とともに、賦形剤を化合物Iの結晶形態に添加した後、得られた混合物を錠剤、コーティング錠剤、顆粒、粉末、カプセル剤等に当該技術分野で知られている方法により製剤化する。
【0096】
賦形剤の例としては、ラクトース、スクロース、D-マンニトール、グルコース、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース及び無水ケイ酸等が挙げられる。結合剤の例としては、水、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、単シロップ、液体グルコース、液体α-デンプン、液体ゼラチン、D-マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、セラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤の例としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、粉末寒天、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトース等が挙げられる。滑沢剤の例としては、精製タルク、ステアリン酸塩ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。着色剤の例としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。味マスキング剤又は着香剤の例としては、スクロース、苦橙皮、クエン酸、L-酒石酸等が挙げられる。製剤は更に湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル等の防腐剤を含むことができる。
【0097】
経口投与用の液体調製物を調製する場合、本明細書に記載の化合物Iの形態の1つに、味マスキング剤、緩衝剤、安定化剤、着香剤等を添加することができ、得られた混合物は常法に従って経口液体調製物、シロップ、エリキシル剤等に製剤化することができる。
【0098】
この場合、上記のものと同じ味マスキング剤又は着香剤を使用することができる。緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、安定化剤の例としては、トラガカント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。必要に応じて、これらの経口投与用の調製物は、例えば効果の持続を目的として、当該技術分野で知られる方法に従って、腸溶性コーティング又は他のコーティングでコーティングすることができる。このようなコーティング剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール及びTween80(商標)が挙げられる。
【0099】
本明細書に記載の化合物Iの形態の少なくとも1つを含む組成物は、当該技術分野で知られる手順を用いることによって、対象への投与後に活性成分の急速な、持続した、又は遅延した放出を提供するように製剤化することができる。経口投与のための放出制御医薬品送達システムは、浸透圧ポンプシステムと、ポリマーコーティングされた貯留部又は医薬品-ポリマーマトリックス製剤を含む溶解システムとを含む。本明細書に開示される方法に使用される別の製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を用いる。このような経皮パッチは、本明細書に記載の化合物を制御された量で連続的又は不連続的な注入を提供するために使用することができる。治療薬の送達のための経皮パッチの構築及び使用は、当該技術分野で既知である。このようなパッチは、治療薬の連続送達、パルス送達又はオンデマンド送達のために構築することができる。
【0100】
錠剤等の固体組成物を調製するために、主活性成分を医薬賦形剤と混合して、化合物Iと、本明細書に記載のその形態のいずれか1つとの均一な混合物を含む固体予備製剤組成物を形成することができる。これらの予備製剤組成物を均一という場合、活性成分が組成物全体にわたって均等に分散されていることができ、これにより組成物は錠剤、丸薬及びカプセル等の同様に有効な単位剤形に容易に細分化することができる。
【0101】
化合物Iと、本明細書に記載のその形態のいずれか1つとの錠剤又は丸薬は、作用の延長という利点をもたらす剤形を提供するために、又は胃の酸状態から保護するために、コーティングするか又は別のように配合することができる。例えば、錠剤又は丸薬は、内部投与成分及び外部投与成分を含むことができ、後者は前者の上を覆う外膜の形態にある。2つの成分は、胃内での崩壊に抵抗し、内部成分をそのまま十二指腸へと通過させるか又は放出を遅延させることができるように機能する腸溶性層によって分離することができる。このような腸溶性層又はコーティングについては、多数のポリマー酸、及びポリマー酸と、セラック、セチルアルコール及び酢酸セルロース等の物質との混合物を含む種々の物質を使用することができる。
【0102】
別の態様において、本開示は、化合物I及び本明細書に記載のその形態のいずれか1つ、又は本明細書に記載のその医薬組成物のいずれか1つを含むキット又は収容体を提供する。幾つかの実施形態において、化合物又は組成物は、例えばバイアル、ボトル、フラスコ内にパッケージ化させ、これは更に、例えば箱、包み又はバッグ内にパッケージ化させることができる。化合物又は組成物は、哺乳動物、例えばヒトへの投与について米国食品医薬品局又は同様の規制当局によって承認されている。化合物又は組成物は、ブロモドメインタンパク質媒介疾患又は状態のために哺乳動物、例えばヒトへの投与について承認されている。本明細書に開示されるキット又は収容体は、使用のための説明書、及び/又は化合物又は組成物がブロモドメイン媒介疾患又は状態のために哺乳動物、例えばヒトへの投与について適している又は承認されていることを示す他の表示を含むことができる。化合物又は組成物は、単位投与又は単回投与形態、例えば、単回投与の丸薬、カプセル等にパッケージ化させることができる。
【0103】
投与される種々の化合物の量は、化合物の活性(in vitro、例えば、標的に対する化合物のIC50、又は動物有効性モデルにおけるin vivo活性)、動物モデルにおける薬物動態学的結果(例えば生物学的半減期又はバイオアベイラビリティ)、対象の年齢、サイズ、体重、及び対象に関連する障害等の要因を考慮して、標準手順によって決定することができる。これらの及び他の要因の重要性は、当業者には既知である。一般に、1回の投与は、治療される対象の約0.01mg/kg~50mg/kg、また約0.1mg/kg~20mg/kgの範囲であろう。多回投与を使用することもできる。
【0104】
かかる単位剤形のそれぞれに組み込まれる化合物Iの形態のいずれか1つの量は、化合物が投与される患者の状態、剤形等に依存する。一般に、経口薬、注射液、坐剤の場合、本開示の化合物の量は、好ましくは、単位剤形当たりそれぞれ0.05mg~1000mg、0.01mg~500mg、1mg~1000mgである。
【0105】
このような剤形における薬の1日投与量は、患者の状態、体重、年齢、性別等に依存し、一般化することはできない。例えば、成人(体重:50kg~70kg)に対する本明細書に記載の化合物Iの塩の1日投与量は、0.05mg~5000mg、又は0.1mg~1000mgであることができ、1日当たり1回の投与で、又は2回~4回の分割した投与で、又は任意の他の適切な投与スケジュールで投与することができる。
【0106】
4.投与
任意の特定の対象に対する化合物I及び本明細書に記載のその形態のいずれか1つの特定の投与レベルは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、及び、治療を受けている対象における排出速度、医薬品の組合せ及び特定の疾患の重症度を含む種々の要因に依存するであろう。例えば、投与量は、対象の体重1キログラム当たりの本明細書に記載の化合物のミリグラム数(mg/kg)として表すことができる。約0.1mg/kg~150mg/kgの間の投与量が適切であることができる。幾つかの実施形態において、約0.1mg/kg及び100mg/kgが適切であることができる。他の実施形態において、0.5mg/kg~60mg/kgの投与量が適切であることができる。幾つかの実施形態において、1日に付き体重1kg当たり約0.0001mg~約100mg、体重1kg当たり約0.001mg~約50mgの化合物、又は体重1kg当たり約0.01mg~約10mgの化合物の投与量が適切であることができる。例えば、小児及び成人の両方に医薬品を使用する場合又は犬等の非ヒトの対象における有効投与量をヒトの対象に適した投与量に換算する場合に生じる、サイズが大きく異なる対象間で投与量を調整する場合、対象の体重に応じた正規化が特に有用である。
【0107】
5.疾患の表示及びLSD1の調節
本明細書において、哺乳動物におけるリジン特異的ヒストン脱メチル化酵素1A(LSD-1)関連疾患又は状態を治療する方法が提供され、本方法は、治療上有効量の本明細書に記載の化合物Iの結晶形態、又は本明細書に記載の組成物を哺乳動物に投与することを含む。
【0108】
幾つかの実施形態において、LSD-1関連疾患又は状態は癌である。
【0109】
幾つかの実施形態において、癌は悪性腫瘍である。
【0110】
幾つかの実施形態において、癌は、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨肉腫、軟部組織肉腫、白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄増殖性疾患、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍又は中皮腫である。
【0111】
幾つかの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、白血病又は骨髄異形成症候群である。
【0112】
或る特定の実施形態において、本開示は、本明細書に記載の疾患又は状態の治療のための薬物の製造における、化合物I及び本明細書に記載のその形態のいずれか1つ、又は本明細書に記載のその医薬組成物のいずれか1つの使用を提供する。他の実施形態において、本開示は、本明細書に記載の疾患又は状態の治療に使用される、化合物I及び本明細書に記載のその形態のいずれか1つ、又は本明細書に記載のその医薬組成物のいずれか1つを提供する。
【実施例】
【0113】
機器技術
X線粉末回折
X線粉末回折(XRPD)分析は、LynxEye検出器を備えたBrukerのD2 Phaser粉末回折計を使用して実施した。標本には最小限の調製を行ったが、必要に応じて、取得前に乳棒及び乳鉢において軽く粉砕した。標本は、5mmポケット内のシリコンサンプルホルダーの中心に配置した(約5mg~10mg)。データ収集中にサンプルを連続的に回転させ、0.02°2θのステップサイズ(29)を使用して、4°2θ~40°2θの範囲でスキャンした。データは、3分又は20分のいずれかの取得方法を使用して取得した。データはBrukerのDiffrac.Suiteを使用して処理した。
【0114】
示差走査熱量測定及び熱重量分析
Perkin ElmerのPyris Diamond TG/DTA 6300を使用して、30℃~600℃の温度の関数として重量損失を測定した。スキャン速度は毎分10℃であり、パージガスは窒素であった。DSC分析のために、Mettler ToledoのDSC 821機器を使用し、STAReソフトウェアを用いて操作した。分析は、窒素下、40μLの開放アルミニウムパン内で行い、サンプルサイズは1mg~10mgの範囲であった。典型的な分析方法は、10℃/分で20℃~250℃であった。
【0115】
偏光顕微鏡検査
デジタルキャプチャのために使用した機器は、デジタルカメラアタッチメントを備えたオリンパス株式会社のBX41顕微鏡であった。倍率は100倍及び400倍であった。サンプルは平面偏光及び交差偏光の下で観察した。
【0116】
実施例1.化合物Iの合成
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(化合物I)を、国際公開第2017/090756号の実施例37に記載の手順に従って調製した。
【0117】
実施例2.塩スクリーン
化合物Iの遊離塩基をバイアルに分注した。種々の酸対イオンの原液をメタノール中で調製し、1.0当量の対イオンを含め、水分含有量及びアッセイ値について補正し、化学量論量(該当する場合は1.0当量又は0.5当量)をバイアルに充填した。基質の溶解及び塩の形成を促進するために、密封したバイアルを約1時間~2時間振盪した。次に、溶媒の除去を確実にするために、バイアルを減圧下40℃で約20時間オーブン乾燥させた。次いで、スクリーン用に選択した適切なクエンチ溶媒を各バイアルに添加した。バイアルを密閉し、約18時間~20時間振盪した。各バイアルを固体形成について検査した。適切な量の固体を含むバイアルを遠心分離し、上清をデカント除去した。固体ペレットを減圧下で約20時間乾燥させ、XRPDによって分析した。
【0118】
試験した溶媒としては、限定されないが、アセトン、CAN、TBME、MEK、IPA、IPAc、1-ブタノール、メタノール、エタノール、DCM、トルエン、アニソール、酢酸エチル、THF及び/又はこれらの組合せが挙げられる。試験した酸対イオンとしては、限定されないが、硫酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩及び/又は他の同様の対イオンが挙げられる。
【0119】
実施例3.化合物Iの形態I(ヘミフマル酸塩)
化合物Iの形態Iのヘミフマル酸塩(化合物I:フマル酸の比2:1)を以下のように調製した。IPA(10mL)中の化合物Iの遊離塩基(475mg、1.0mmol、1.0当量)の溶液に、室温でIPA(5mL)中のフマル酸(58mg、0.5mmol、0.5当量)を添加し、得られたスラリーを50℃まで温めた。得られた濁ったスラリーを2時間かけてゆっくりと室温まで冷却した。次いで、スラリーを室温で更に4時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキをIPA(2mL)で洗浄し、真空下40℃で18時間乾燥させて、300mg(53%)の化合物Iの形態Iを得た。形態Iは、充填ラスのモルフォロジーを示し、高度に結晶であった。
図1A、
図1B及び
図7Aは、化合物Iの形態IについてのXRPD、DSC及びPLM画像をそれぞれ示す。
【0120】
実施例4.化合物Iの形態II(モノシュウ酸塩)
モノシュウ酸塩(化合物I:シュウ酸の比1:1)を以下のように調製した。2-プロパノール(10mL)中の化合物Iの遊離塩基(475mg、1.0mmol、1.0当量)の溶液に、室温で2-プロパノール(4mL)中のシュウ酸(100mg、1.1mmol、1.1当量)を添加し、得られた濁ったスラリーを50℃まで温めた。スラリーを2時間かけてゆっくりと室温まで冷却した。スラリーを室温で更に4時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷2-プロパノール(5mL)で洗浄し、真空下、40℃で42時間乾燥させて、280mg(49.5%)の化合物Iのモノシュウ酸塩を得た。
【0121】
化合物Iのモノシュウ酸塩の再結晶化による形態IIの提供:化合物Iのモノシュウ酸塩(100mg、0.17mmol)をエタノール:水(3:2比、10mL)中に懸濁した。得られた懸濁液を80℃に加熱して透明な溶液とした。透明な溶液を室温まで冷却し、2日間保持した。この期間中に、生成物が白色固体として結晶化した。得られた固体を濾過により分離し、濾過ケーキをエタノール:水(3:2比、2mL)で洗浄した。化合物を真空下40℃で18時間乾燥させて、80mg(回収率80%)の化合物Iの形態IIを得た。形態IIは、積層及び板状のモルフォロジーを示し、高度に結晶であった。
図2A及び
図7Bは、化合物Iの形態IIについてのXRPD及びPLM画像をそれぞれ示す。
【0122】
実施例5.化合物Iの形態IIIA~IIID(メシル酸塩)
IPA(5mL)中の化合物Iの遊離塩基(250mg、0.52mmol、1.0当量)の溶液(25mL丸底フラスコ中に分注)に、室温で2-プロパノール(5mL)中のメタンスルホン酸(55.6mg、0.57mmol、1.1当量)の溶液を添加した。添加中に、生成物/塩が結晶化し始め、得られたスラリーを室温で更に4時間撹拌した。生成物を濾過により分離し、濾過ケーキを冷2-プロパノール(5mL)で洗浄した。得られたウェットケーキを減圧下、40℃で72時間かけてオーブン乾燥させた。収量:246mg、82%の化合物Iの形態IIIA。形態IIIAは、クラスター化したラス、板状物及び小球のモルフォロジーを示した。
図3A及び
図3Bは、化合物Iの形態IIIAのXRPD及びDSCをそれぞれ示す。
【0123】
メシル酸塩の多形性を調べるために、化合物I(5g、10.4mmol、1.0当量)をメタンスルホン酸(1.11g、11.4mmol、1.1当量)と共にメタノール(50mL、10容量)中で混合することにより、非晶質の化合物Iのメシル酸塩を調製した。混合物を減圧下で濃縮乾燥させ、更に減圧下40℃で乾燥させた。次いで、非晶質の化合物Iのメシル酸塩(約50mg)を適切な溶媒(1mL、20容量)と混合し、40℃で7日間~10日間撹拌した。混合物を冷却し、濾過により単離し、濾過母液で洗浄し、減圧下40℃で乾燥させた。溶媒がアセトニトリルであった場合、化合物Iの形態IIIAが得られた。溶媒がアニソールであった場合、化合物Iの形態IIIBが得られた。溶媒がブタノール、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン及びトルエンであった場合、化合物Iの形態IIICが得られた。これらの条件下で、溶媒がトリフルオロトルエン又はイソプロパノールであった場合、化合物Iの形態IIIDが得られた。
図8A及び
図8B及び
図9Aは、それぞれ化合物Iの形態IIIB、化合物Iの形態IIIC及び化合物Iの形態IIIDのXRPDを示す。
【0124】
実施例6.化合物Iの形態IVA及びIVB(エシル酸塩)
IPA(5mL)中の化合物Iの遊離塩基(250mg、0.52mmol、1.0当量)の溶液(25mL丸底フラスコ中に分注)に、室温で2-プロパノール(5mL)中のエタンスルホン酸(63.7mg、0.57mmol、1.1当量)の溶液を添加した。添加中に、生成物/塩が結晶化し始め、得られたスラリーを室温で更に4時間撹拌した。生成物を濾過により分離し、濾過ケーキを冷2-プロパノール(5mL)で洗浄した。得られたウェットケーキを減圧下、40℃で72時間かけてオーブン乾燥させた。収量:240mg、78%の化合物Iの形態IVA。形態IVAは、針状葉状で、小管に折り畳まれたモルフォロジーを示した。
図4A及び
図4Bは、化合物Iの形態IVAのXRPD及びDSCをそれぞれ示す。
【0125】
エシル酸塩の多形性を調べるために、種々の溶媒からの結晶化を行った。エシル酸塩の約50mg分を別々のシンチレーションバイアルに充填した。各バイアルに、以下の表に示す適切な溶媒を添加し、完全な溶解が生じるまで懸濁液を加熱した。溶解が達成されない場合は、溶解が達成されるまで、二成分溶媒(水又はメタノールのいずれか)を少量ずつ80℃で加えた。撹拌を中止し、溶液を加熱から除き、ゆっくりと冷却し、そのまま静置した。結晶を示したバイアルを遠心分離し、上清をデカントし、固体ペレットを減圧下40℃で約20時間にわたってオーブン乾燥させた。
【0126】
溶媒としてTHFを使用すると、化合物Iの形態IVBが提供されることが見出された。
図10A及び
図10Bは、それぞれ化合物Iの形態IVBのDSC及びXRPDを示す。化合物Iの形態IVAについての約238℃での融解のオンセットに対し、化合物Iの形態IVBは約196℃での融解事象のオンセットを示す。
【0127】
【0128】
実施例7.化合物Iの形態V(マレイン酸塩)
IPA(5mL)中の化合物Iの遊離塩基(250mg、0.52mmol、1.0当量)の溶液(25mL丸底フラスコ中に分注)に、室温で2-プロパノール(5mL)中のマレイン酸(67.2mg、0.57mmol、1.1当量)の溶液を添加した。添加中に、生成物/塩が結晶化し始め、得られたスラリーを室温で更に4時間撹拌した。生成物を濾過により分離し、濾過ケーキを冷2-プロパノール(2mL)で洗浄した。得られたウェットケーキを減圧下、40℃で72時間かけてオーブン乾燥させた。収量:217mg(70%)の化合物Iの形態V。形態Vは、充填ラスのモルフォロジーを示した。
図5A及び
図5Bは、化合物Iの形態VのXRPD及びDSCをそれぞれ示す。
【0129】
実施例8.化合物Iの形態VI(モノフマル酸塩)
IPA(5mL)中の化合物Iの遊離塩基(250mg、0.52mmol、1.0当量)の溶液に、室温で、IPA(5mL)中のフマル酸(67.1mg、0.57mmol、1.1当量)の溶液を添加し、得られたスラリーを50℃まで温めた。得られた濁ったスラリーを2時間かけてゆっくりと室温まで冷却した。次いで、スラリーを室温で更に4時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキをIPA(5mL)で洗浄し、真空下40℃で72時間乾燥させた。収量:233mg、75%の化合物Iの形態VI。形態VIは、充填ラスが高度に凝集した層状結晶のモルフォロジーを示した。
図6Aは、化合物Iの形態VIのXRPDを示す。
【0130】
実施例9.化合物Iの形態VII(ヘミシュウ酸塩)
2-プロパノール又はエタノール(10mL)中の化合物Iの遊離塩基(475mg)の溶液に、室温で、2-プロパノール又はエタノール中のシュウ酸(0.45当量)を添加し、得られたスラリーを50℃まで温めた。スラリーを2時間かけてゆっくりと室温まで冷却し、室温で更に4時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷2-プロパノール(5容量)で洗浄し、真空下45℃で18時間乾燥させて、化合物Iの形態VIIを得た。形態VIIは、半結晶のモルフォロジーを示した。
図6Bは、化合物Iの形態VIIについてのPLM画像を示す。
【0131】
実施例10.安定性試験
異なる塩の形態の安定性を試験した。塩を20mLシンチレーションバイアルに入れ、キムワイプで覆い、得られたバイアルを40℃、75%RH(相対湿度)に5日間曝露した。サンプルを吸湿について分析した。結果を以下に示す。
【0132】
【0133】
モノフマル酸塩の形態VIは、試験条件下で水分を吸収しなかった。ヘミフマル酸塩(形態I)及びモノシュウ酸塩(形態II)は、試験条件下で1%~4.5%の水分を吸収することが観察された。
【0134】
化合物Iのモノフマル酸塩(形態VI)及びヘミフマル酸塩(形態I)の両方が溶液から結晶化した。モノフマル酸塩(形態VI)は粘着性の固体であり、濾過に長い時間を要した。モノフマル酸塩(形態VI)は板状結晶を生成した。しかし、XRPDによると結晶化度は低かった。
【0135】
ヘミフマル酸塩(形態I)は良好に濾過され、XRPDによる良好な結晶性を有する密な充填ラス又は針状物を生成した。
【0136】
モノシュウ酸塩及びヘミシュウ酸塩(化合物Iの形態VII)の両方が溶液から結晶化した。ヘミシュウ酸塩(形態VII)は粘着性であり、濾過に長い時間を要した。
【0137】
モノシュウ酸塩は良好に濾過された。しかし、IPAから得られたモノシュウ酸塩は、XRPDによると結晶化度が低く、半結晶物質であった。
【0138】
モノシュウ酸塩は、その後にエタノールから再結晶化させたとき(化合物Iの形態II)、良好に濾過され、高度に結晶であった(XRPD)。モノシュウ酸塩(形態II)の粒子は、積層及び板状のモルフォロジーからなるように見えた。
【0139】
全般に、ヘミフマル酸塩の形態Iは結晶であり(XRPD)、残留水分が少なく、d90=143μmの粒径分布(PSD)を有し、わずかに吸湿性であった。形態Iは、密な充填ラス又は針状のモルフォロジーを示した。エタノールから再結晶化させたモノシュウ酸塩(形態II)は結晶であり(XRPD)、d90=50μmのPSDを有し、良好な水溶性を有し、わずかに吸湿性であった。形態IIは、積層及び板状のモルフォロジーを示した。
【0140】
本明細書中に引用されるすべての特許及び他の参照文献は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示すものであり、表及び図を含むその全体が、各参照文献が個別にその全体が引用することにより本明細書の一部をなす場合と同様の程度で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0141】
当業者であれば、本開示が、言及された目的及び利点、並びに本開示に固有のものを得るためによく適合されることを容易に理解するであろう。現時点で好ましい実施形態を代表するものとして本明細書に記載されている方法、変形例及び組成物は例示的なものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。その中の変更及び他の使用が当業者において起こるであろうが、それらは本開示の趣旨に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】