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特表2024-518435抗体を産生するための組換え非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】抗体を産生するための組換え非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240423BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20240423BHJP
   A01K 67/0275 20240101ALI20240423BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/13 ZNA
C07K16/10
A01K67/0275
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568507
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022027946
(87)【国際公開番号】W WO2022235988
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/184,384
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/184,385
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523418683
【氏名又は名称】レヴェラージェン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイシェン ヴィクター
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本書は、遺伝子改変動物(例えば、マウス)、ヒト化重鎖抗体、ヒト化ナノボディ、並びにそれを作製及び使用する方法を提供する。例えば、単一ドメイン抗体又はナノボディを生成するために使用することができる重鎖抗体を産生するように設計され得る遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)が提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む核酸配列の欠失を含む生殖細胞系列改変を含む遺伝子組換えマウスであって;
該マウスがIgG重鎖抗体を発現し、その血清中にIgG重鎖抗体を分泌する、
前記遺伝子組換えマウス。
【請求項2】
1つ以上の重鎖C領域遺伝子が、IgM C領域遺伝子(Cμ)、IgD C領域遺伝子(Cδ)、IgE C領域遺伝子(Cε)、IgG3 C領域遺伝子(Cγ3)、IgG2b C領域遺伝子(Cγ2b)、IgG2c C領域遺伝子(Cγ2c)、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項3】
IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失をさらに含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項4】
IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失がエクソン1を含む、請求項3の遺伝子組換えマウス。
【請求項5】
生殖細胞系列改変が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項6】
生殖細胞系列改変が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項7】
エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせである、請求項6に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項8】
生殖細胞系列改変が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列をさらに含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、請求項1~7のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項9】
IgG重鎖抗体がIgG1重鎖抗体を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項10】
IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、請求項9に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項11】
IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、請求項1~10のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項12】
IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項13】
マウスが、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない、請求項1~12のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項14】
マウスが、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない、請求項1~14のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項15】
1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む核酸配列の欠失を含む生殖細胞系列改変を含む遺伝子組換えマウスであって;ヒト化IgG重鎖抗体を発現し、ヒト化IgG重鎖抗体をその血清中に分泌する、前記遺伝子組換えマウス。
【請求項16】
1つ以上の重鎖C領域遺伝子が、IgM C領域遺伝子(Cμ)、IgD C領域遺伝子(Cδ)、IgE C領域遺伝子(Cε)、IgG3 C領域遺伝子(Cγ3)、IgG2b C領域遺伝子(Cγ2b)、IgG2c C領域遺伝子(Cγ2c)又はそれらの組み合わせである、請求項15に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項17】
IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失をさらに含む、請求項15~16のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項18】
IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失がエクソン1を含む、請求項17に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項19】
生殖細胞系列改変が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列をさらに含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項20】
生殖細胞系列改変が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列をさらに含む、請求項15~19のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項21】
エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせである、請求項20に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項22】
生殖細胞系列改変が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列をさらに含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、請求項15~21のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項23】
ヒト化IgG重鎖抗体がヒト化IgG1重鎖抗体を含む、請求項15~22のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項24】
ヒト化IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、請求項23に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項25】
ヒト化IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、請求項15~24のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項26】
ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項15~25のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項27】
マウスが、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、請求項15~26のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項28】
マウスが、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、請求項15~17のいずれか1項に記載の遺伝子組換えマウス。
【請求項29】
内因性IgH遺伝子座に組換え免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含む生殖細胞系列ゲノムを含む組換え非ヒト動物であって;ここで組換えIgHアレルは、内因性重鎖C領域遺伝子を欠如しており;且つ内因性重鎖C領域遺伝子が、Cμ、Cδ、Cε、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c、又はそれらの組み合わせを含む、前記組換え非ヒト動物。
【請求項30】
IgHアレルが、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失を含む、請求項29に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項31】
IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインがエクソン1を含む、請求項30に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項32】
IgH遺伝子座が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を含む、請求項29~31のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項33】
IgH遺伝子座が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を含む、請求項29~32のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項34】
エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせである、請求項33に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項35】
IgH遺伝子座が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列を含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、請求項29~34のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項36】
IgH遺伝子座が内因性V、D、又はJ遺伝子を含む、請求項29~35のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項37】
非ヒト動物が、ヒト化IgG重鎖抗体を発現する、請求項29~35のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項38】
ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒト化IgG1重鎖抗体を含む、請求項37に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項39】
ヒト化IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、請求項37~38のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項40】
ヒト化IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、請求項37~39のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項41】
ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項37~40のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項42】
IgH遺伝子座が、ヒトV、D、又はJ遺伝子を含む、請求項37~41のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項43】
内因性IgH遺伝子座が、外因性核酸配列を含む、請求項37~42のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項44】
外因性核酸配列が、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のJH遺伝子セグメントを含む、請求項43に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項45】
外因性核酸配列が、65個のヒトVH遺伝子セグメントを含む、請求項43~44のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項46】
外因性核酸配列が、27個のヒトDH遺伝子セグメントを含む、請求項43~45のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項47】
外因性核酸配列が、6個のJH遺伝子セグメントを含む、請求項43~46のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項48】
外因性核酸配列が、65個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び6個のJH遺伝子セグメントを含む、請求項43~47のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項49】
外因性核酸配列がバーコードを含む、請求項43~48のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項50】
非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、請求項29~49のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項51】
非ヒト動物が、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、請求項29~50のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項52】
組換え非ヒト動物が、組換えIgHアレルについてホモ接合性である、請求項29~51のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項53】
非ヒト動物が哺乳動物である、請求項29~52のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項54】
哺乳動物がマウス又はラットである、請求項53に記載の組換え非ヒト動物。
【請求項55】
重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物の幹細胞において内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップ;(b) 該幹細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 該胚盤胞を偽妊娠マウスに移植してキメラマウスを得るステップ;(d) 該キメラマウスを野生型マウスに対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 該子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の重鎖C領域遺伝子の欠失を有する創始マウスを同定するステップを含み、ここで前記非ヒト動物は重鎖抗体を産生することができる、前記方法。
【請求項56】
ヒト化重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物の幹細胞において内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップ;(b) 該幹細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 該胚盤胞を偽妊娠マウスに移植してキメラマウスを得るステップ;(d) 該キメラマウスを野生型マウスに対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 該子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の重鎖C領域遺伝子の欠失を有する創始マウスを同定するステップを含み、ここで前記非ヒト動物はヒト化重鎖抗体を産生することができる、前記方法。
【請求項57】
幹細胞が胚性幹細胞である、請求項55~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
請求項55に記載の組換え非ヒト動物において可溶性重鎖抗体を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 該非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 該1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;(d) 該mRNAを配列決定するステップ;(e) 該mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップ;及び(f) 該クローン型の系統発生解析を実施するステップを含み、これにより可溶性重鎖抗体を産生する、前記方法。
【請求項59】
請求項55に記載の組換え非ヒト動物から同定される単一ドメイン抗体(sdAb)を産生する方法であって、(a) 細胞中でV、D及びJを含む重鎖可変(VH)ドメインをコードする核酸配列を発現させるステップであって、該細胞が重鎖可変ドメインを産生する、前記ステップ;及び (b) サンプルから重鎖可変ドメインを単離するステップを含み、これにより単一ドメイン抗体を産生する、前記方法。
【請求項60】
単一ドメイン抗体が、マウスの単一ドメイン抗体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
請求項56~57のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物において可溶性ヒト化重鎖抗体を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 該非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 該1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;(d) 該mRNAを配列決定するステップ;(e) 該mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップ;及び(f) 該クローン型の系統発生解析を実施するステップを含み、これにより可溶性ヒト化重鎖抗体を産生する、前記方法。
【請求項62】
請求項56~57のいずれか1項に記載の組換え非ヒト動物から同定されるヒト化単一ドメイン抗体(sdAb)を産生する方法であって、(a) 細胞中でV、D及びJを含むヒト重鎖可変(VH)ドメインをコードする核酸配列を発現させるステップであって、該細胞がヒト重鎖可変ドメインを産生する、前記ステップ;及び(b) サンプルからヒト重鎖可変ドメインを単離するステップを含み、これにより単一ドメイン抗体を産生する、前記方法。
【請求項63】
単一ドメイン抗体がヒト単一ドメイン抗体である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
細胞が、細菌細胞又はヒト細胞である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
非ヒト動物であって、前記非ヒト動物のゲノムが免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含み、ここで前記IgHアレルは、IgGサブクラスのCH2ドメイン又はCH3ドメインをコードする内因性核酸を含み、前記IgHアレルは、前記IgGサブクラスの内因性CH1ドメインの少なくとも一部をコードする核酸を欠如し、またここで前記IgHアレルは、IgM定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgD定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgE定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、又はIgA定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如している、前記非ヒト動物。
【請求項66】
前記非ヒト動物の前記IgHアレルが、前記IgGサブクラスの前記CH2ドメイン及び前記CH3ドメインをコードする内因性核酸を含む、請求項65に記載の非ヒト動物。
【請求項67】
前記非ヒト動物の前記IgHアレルが、前記IgGサブクラスのヒンジドメインをコードする内因性核酸を含む、請求項65~66のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項68】
前記IgGサブクラスが、IgG2サブクラスである、請求項65~67のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項69】
前記IgGサブクラスが、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスである、請求項65~67のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項70】
前記IgGサブクラスが、IgG1サブクラスである、請求項65~67のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項71】
前記IgHアレルが、IgG2定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、又は、IgG4定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如している、請求項70に記載の非ヒト動物。
【請求項72】
前記IgHアレルが、IgG2a定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG2b定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG2c定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、及びIgG4定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如している、請求項70に記載の非ヒト動物。
【請求項73】
前記IgHアレルが、IgG2定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、又はIgG4定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如している、請求項70に記載の非ヒト動物。
【請求項74】
前記IgHアレルが、IgG2a定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG2b定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG2c定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、又はIgG4定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如している、請求項70に記載の非ヒト動物。
【請求項75】
前記IgHアレルが、IgM定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgD定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgE定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、及びIgA定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~74のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項76】
前記IgHアレルが、IgM定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgD定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgE定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、又はIgA定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~74のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項77】
前記IgHアレルが、IgM定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~74のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項78】
前記IgHアレルが、IgD定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~77のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項79】
前記IgHアレルが、IgE定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~78のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項80】
前記IgHアレルが、IgA CH1定常ドメイン及びCH2定常ドメインをコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~79のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項81】
前記IgHアレルが、前記内因性CH1ドメインをコードする核酸を欠如している、請求項65~80のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項82】
前記IgHアレルが、内因性Eμを含む、請求項65~81のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項83】
前記内因性Eμの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~82のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項84】
前記内因性Eμの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~83のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項85】
前記IgHアレルが、内因性Sμ、内因性Iμプロモーター、内因性Iμエクソン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項65~84のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項86】
前記内因性Sμ、前記内因性Iμプロモーター、又は前記内因性Iμエクソンの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~85のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項87】
前記内因性Sμ、前記内因性Iμプロモーター、又は前記内因性Iμエクソンの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~86のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項88】
前記IgHアレルが内因性3'γ1Eを含む、請求項65~87のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項89】
前記IgHアレルが、前記内因性3'γ1Eの下流の完全長CH2ドメインをコードする内因性核酸を欠如している、請求項65~88のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項90】
前記IgHアレルが内因性5'hsR1を含む、請求項65~89のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項91】
前記内因性5'hsR1の上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~90のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項92】
前記内因性5'hsR1の上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~91のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項93】
前記IgHアレルが内因性3'RRを含む、請求項65~92のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項94】
前記内因性3'RRの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~93のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項95】
前記内因性3'RRの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~94のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項96】
前記IgHアレルが内因性3'CBEを含む、請求項65~95のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項97】
前記内因性3'CBEの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~96のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項98】
前記内因性3'CBEの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列が、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸である、請求項65~97のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項99】
前記ゲノムの少なくとも1つのアレルが、内因性Ig重鎖可変領域の少なくとも一部を欠如している、請求項65~98のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項100】
前記ゲノムの少なくとも1つのアレルが、内因性Ig重鎖可変領域の全てのエクソンを欠如している、請求項65~99のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項101】
前記ゲノムの両アレルが、内因性Ig重鎖可変領域の全てのエクソンを欠如している、請求項65~100のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項102】
前記ゲノムのいずれのアレルも、Ig重鎖可変領域の外因性エクソンを含まない、請求項65~100のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項103】
前記非ヒト動物がIg重鎖を産生しない、請求項102に記載の非ヒト動物。
【請求項104】
前記IgHアレルが、1個以上のヒトIg重鎖可変領域遺伝子セグメントをコードする外因性核酸を含む、請求項65~101のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項105】
前記IgHアレルが、1個以上の外因性ヒトIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項104に記載の非ヒト動物。
【請求項106】
前記IgHアレルが、3個以上のヒトIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項104に記載の非ヒト動物。
【請求項107】
前記IgHアレルが、26個以上のヒトIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項104に記載の非ヒト動物。
【請求項108】
前記IgHアレルが、65個以上のヒトIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項104に記載の非ヒト動物。
【請求項109】
前記IgHアレルが、126個のヒトIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項104に記載の非ヒト動物。
【請求項110】
前記IgHアレルが、13個以上のIg VD遺伝子セグメントを含む、請求項104~109のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項111】
前記IgHアレルが、27個のヒトIg VD遺伝子セグメントを含む、請求項104~109のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項112】
前記IgHアレルが、3個以上のヒトIg VJ遺伝子セグメントを含む、請求項104~111のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項113】
前記IgHアレルが、9個のヒトIg VJ遺伝子セグメントを含む、請求項104~112のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項114】
前記ゲノムが、126個のヒトIg VH遺伝子セグメント、27個以上のヒトIg VD遺伝子セグメント、及び9個のヒトIg VJ遺伝子セグメントを含む、請求項104に記載の非ヒト動物。
【請求項115】
前記非ヒト動物が、ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体を産生する、請求項104~114のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項116】
前記ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体の可変領域ドメインが完全ヒトである、請求項115に記載の非ヒト動物。
【請求項117】
前記IgHアレルが、1個以上のヒトIg軽鎖可変領域遺伝子セグメントをコードする外因性核酸を含む、請求項65~101及び104~116のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項118】
前記IgHアレルが、1個以上の外因性ヒトIgκ可変遺伝子セグメントを含む、請求項117に記載の非ヒト動物。
【請求項119】
前記IgHアレルが、20個以上の外因性ヒトIgκ可変遺伝子セグメントを含む、請求項117~118のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項120】
前記IgHアレルが、40個の外因性ヒトIgκ可変遺伝子セグメントを含む、請求項117~119のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項121】
前記IgHアレルが、1個以上の外因性ヒトIgλ可変遺伝子セグメントを含む、請求項117~120のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項122】
前記IgHアレルが、10個以上の外因性ヒトIgλ可変遺伝子セグメントを含む、請求項117~121のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項123】
前記IgHアレルが、20個の外因性ヒトIgλ可変遺伝子セグメントを含む、請求項117~122のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項124】
前記IgHアレルが、1個以上のヒトIgκ VJ遺伝子セグメントを含む、請求項117~123のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項125】
前記IgHアレルが、5個のヒトIgκ VJ遺伝子セグメントを含む、請求項117~124のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項126】
前記IgHアレルが、1個以上のヒトIgλ VJ遺伝子セグメントを含む、請求項117~125のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項127】
前記IgHアレルが、4個のヒトIgλ VJ遺伝子セグメントを含む、請求項117~126のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項128】
前記IgHアレルが、40個のヒトIgκ可変遺伝子セグメント及び5個のヒトIgκ VJ遺伝子セグメントを含む、請求項117~127のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項129】
前記IgHアレルが、20個のヒトIgλ可変遺伝子セグメント及び4個のヒトIgλ VJ遺伝子セグメントを含む、請求項117~128のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項130】
前記非ヒト動物が、ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体を産生する、請求項117~129のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項131】
前記ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体の可変領域ドメインが軽鎖由来の完全ヒトである、請求項130に記載の非ヒト動物。
【請求項132】
前記非ヒト動物が、第1の非ヒト種の非ヒト動物であり、前記IgHアレルが、前記第1の非ヒト種とは異なる第2の非ヒト種の1個以上のIg重鎖可変領域遺伝子セグメントをコードする外因性核酸を含む、請求項65~101、104~115、及び117~130のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項133】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の1個以上のIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項132に記載の非ヒト動物。
【請求項134】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の10個以上のIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項132に記載の非ヒト動物。
【請求項135】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の全てのIg VH遺伝子セグメントを含む、請求項132に記載の非ヒト動物。
【請求項136】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の3個以上のIg VD遺伝子セグメントを含む、請求項132~135のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項137】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の全てのIg VD遺伝子セグメントを含む、請求項132~136のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項138】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の3個以上のIg VJ遺伝子セグメントを含む、請求項132~137のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項139】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の全てのIg VJ遺伝子セグメントを含む、請求項132~138のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項140】
前記IgHアレルが、前記第2の非ヒト種の全てのIg VH遺伝子セグメント、Ig VD遺伝子セグメント、及びIg VJ遺伝子セグメントを含む、請求項132に記載の非ヒト動物。
【請求項141】
前記非ヒト動物が、前記第1の種及び第2の種のキメラ重鎖抗体を産生する、請求項132~140のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項142】
前記キメラ重鎖抗体の可変領域ドメインが、完全に前記第2の種の可変領域ドメインである、請求項141に記載の非ヒト動物。
【請求項143】
前記第1の種がマウス種である、請求項132~142のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項144】
前記第2の種が、ウシ種、サメ種、又はアルパカ種である、請求項132~143のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項145】
前記IgHアレルが、少なくとも1つの外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含む、請求項65~144のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項146】
前記少なくとも1つの外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列が、前記IgGサブクラスの前記CH2ドメイン又はCH3ドメインをコードする前記内因性核酸の上流に位置する、請求項145に記載の非ヒト動物。
【請求項147】
前記IgHアレルが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含む、請求項145~146のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項148】
前記IgHアレルが、少なくとも3個の異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含む、請求項145~146のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項149】
前記IgHアレルが、少なくとも5個の異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含む、請求項145~146のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項150】
前記異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれが、内因性Eμの上流2.5Mb未満に位置する、請求項147~149のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項151】
前記異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれが、内因性Eμの上流2.0Mb未満、1.5Mb未満、1.0Mb未満、500kb未満、又は250kb未満に位置する、請求項147~149のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項152】
前記異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれが、内因性Eμの上流200kb未満、100kb未満、50kb未満、25kb未満、又は10kb未満に位置する、請求項147~149のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項153】
以下:
(a) 配列番号4、配列番号10、及び配列番号19、又は
(b) 配列番号5、配列番号11、及び配列番号20
を含む可変領域を含む、抗体。
【請求項154】
前記抗体が、SARS-CoV2スパイクポリペプチドに結合する、請求項153に記載の抗体。
【請求項155】
前記抗体が重鎖抗体である、請求項153~154のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項156】
前記抗体が単独ドメイン抗体である、請求項153~154のいずれか1項に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月5日に出願された米国仮出願第63/184,384号及び2021年5月5日に出願された米国仮出願第63/184,385号の利益を主張する。これらの先の出願の開示は、本出願の開示の一部であるとみなされ、その全体が参照により本出願の開示に組み込まれる。
【0002】
背景
1. 技術分野
本書は、抗体(例えば、重鎖抗体及び/又はナノボディとしても知られる単一ドメイン抗体)の産生に関与する方法及び材料に関する。例えば、抗体(例えば、CH1ドメイン及び軽鎖を欠如している重鎖抗体などの重鎖抗体)を産生する能力を有する遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)が提供される。一部の例では、本明細書中に記載されるように得られる重鎖抗体を使用して、単一ドメイン抗体又はナノボディを生成することができる。
【背景技術】
【0003】
2. 背景情報
従来のIgG抗体は、4つのポリペプチド:2対の同一の重鎖及び軽鎖からなる。IgGの重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を含み、2つの鎖は、CH1とCH2の間のヒンジ領域(H)においてジスルフィド結合を介して結合している。2つの軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)と1つの定常(CL)ドメインを含み、CLドメインは、ジスルフィド結合を介して重鎖のCH1ドメインに結合し、四量体IgGを形成する。VH-CH1とVL-CLで構成される2つの抗体アーム(FAb)は独立して抗原に結合することが可能であり、定常領域(Fc)はエフェクター機能に関与する。抗体の生成は、多様なVHを生成するための、免疫グロブリン重鎖遺伝子(IgH)のVDJ組換えを介したV(可変部)遺伝子セグメント、D(多様性)遺伝子セグメント、及びJ(結合部)遺伝子セグメントの構築によるプレB細胞におけるB細胞受容体(BCR)の発現により開始する。VDJはIgMの定常エクソンへとスプライシングされ、これがその後、細胞表面上で代替軽鎖λ6及びVpreBと会合し、プレBCRを形成する。これに、免疫グロブリン軽鎖遺伝子(IgK及びIgL、いずれもD遺伝子を欠如している)のVJ組換え、及びCLを有する多様なVLの産生が続く。IgMの軽鎖と重鎖との対合は、未成熟B細胞上の完全BCRとしてのIgM発現をもたらす。V(D)J組換えは、重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座の両アレル上で起こるが、アレル排除は、単一B細胞中の2つのアレルのうちの1つからの1つの機能的重鎖及び1つの機能的軽鎖のみの発現を確実にする。成功裏の組換え事象を有するB細胞は、その後、体細胞超変異、抗原選択、親和性成熟、及びクラススイッチ組換えを受け、異なるアイソタイプの抗体(IgG、IgE、及びIgA)を発現する。
【0004】
ラクダ類では、可変ドメインを有する2つの同一の重鎖(可変重鎖ホモ二量体、VHH)のみで構成されているが、CH1ドメイン及び関連の軽鎖は欠如しているIgGのサブセットが同定されている。これらの重鎖のみ抗体(HCAb)は、通常は軽鎖のCLに結合する定常領域のCH1ドメインをコードするCH1エクソンを消失させる、重鎖遺伝子におけるスプライス部位変異から生じる。同様の軽鎖のHCAb欠如(devoid)は、軟骨魚類にも見られる(免疫グロブリン新抗原受容体、IgNAR)。ラクダ類のHCAb-VHH及び軟骨魚類のVNARにおける可変ドメインは、独立した抗原結合単位として機能することが可能であり、従来の抗体と同等の結合親和性を有し得る。これらの単一ドメイン抗体(sdAb)は、最小の抗原結合抗体フラグメントであり、このため、ナノボディ(Nb)と呼ばれる場合がある。sdAbの多くの独特の特性、例えば、それらの小さなサイズ(四量体抗体の150kDaと比較して、11~15KDa)、厳密な単量体性、高可溶性、効率的なフォールディング/リフォールディング、優れた安定性、無比の標的接近性、効果的な組織浸透、迅速な血中クリアランス、優れた製造可能性、及び低生産コストなどにより、それらは、新規な治療剤及び診断剤を開発するための説得力のある候補となる。従来の抗体を上回るsdAbの最も有利な特性のうちの1つは、それらのモジュール性であり、これは、多量体及び多重特異性バイオ医薬品をより容易に操作するための重要な特性である。
【0005】
ヒト足場に由来する可変ドメイン(VH及びVL)が合成sdAbディスプレイライブラリにおいて産生され、in vitroで多数の標的に対して試験された(Belanger et al., Protein Eng. Des. Sel., (34):gzab012 (2021))。体細胞超変異の結果として高親和性を有する免疫化動物から得られる天然sdAbとは逆に、非免疫ディスプレイライブラリに由来するsdABは、通常は低親和性であり、凝集する傾向があり、多くの場合、親和性及び機能の改善のためのさらなる変異を必要とする。両問題に対する解決策は、ヒト化HCAbを産生するマウスを遺伝子操作することであり、このマウスを目的の標的で免疫し、in vivoでの抗原選択及び親和性成熟から生じる高可溶性且つ高親和性の機能的ヒトsdAbを単離することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Belanger et al., Protein Eng. Des. Sel., (34):gzab 012 (2021)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本書は、単一ドメイン抗体又はナノボディ(例えば、マウス単一ドメイン抗体若しくはマウスナノボディ、又はヒト化単一ドメイン抗体若しくは、ヒト化ナノボディ)を産生する組換え非ヒト動物(例えば、マウス)、並びにこのような組換え非ヒト動物(例えば、マウス)を作製する方法、及びこのような組換え非ヒト動物(例えば、マウス)を使用する方法に関する。例えば、本書は、単一ドメイン抗体又はナノボディを生成するために使用することができる重鎖抗体を産生するように設計され得る遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)を提供する。一部の例では、遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)は、CH1ドメイン及び軽鎖を欠如しており且つ単一ドメイン抗体又はナノボディ(例えば、完全マウス単一ドメイン抗体又は完全マウスナノボディ)を生成するために使用し得る重鎖抗体(例えば、完全マウス重鎖IgG抗体)を産生するように設計することができる。例えば、図1を参照のこと。一部の例では、遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)は、CH1ドメイン及び軽鎖を欠如しており且つ同様にキメラであり得るか若しくは完全に1つの種で構成され得る単一ドメイン抗体又はナノボディを生成するために使用し得るキメラ重鎖抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ重鎖IgG抗体)を産生するように設計することができる。例えば、遺伝子組換えマウスは、CH1ドメイン及び軽鎖を欠如しているが、一方でヒト可変ドメイン及びマウス定常ドメインを有するヒト-マウスキメラ重鎖IgG抗体を産生するように設計することができる。このようなマウスから得られるこのようなヒト-マウスキメラ重鎖IgG抗体は、完全ヒト単一ドメイン抗体又はヒトナノボディを生成するために使用することができる。例えば、図6を参照のこと。本明細書中に記載される組成物(例えば、本明細書中で提供される組換え非ヒト動物(例えば、マウス)から生成される1つ以上の抗体を含む組成物)を使用して、疾患又は障害、例えば、炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0008】
本明細書中に記載されるとおり、遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)は、CH1ドメイン及び軽鎖を欠如している重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体、例えば、ヒト-マウスキメラ重鎖抗体、ウシ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体、アルパカ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体又はサメ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体など)を産生するように設計することができる。このような重鎖抗体は、単一ドメイン抗体又はナノボディ(例えば、本明細書中でマウスナノボディとも呼ばれるマウス単一ドメイン抗体、本明細書中で非マウスナノボディとも呼ばれる非マウス単一ドメイン抗体、本明細書中でヒト化ナノボディとも呼ばれるヒト化単一ドメイン抗体、本明細書中でヒトナノボディとも呼ばれるヒト単一ドメイン抗体、本明細書中でウシ-ヒトキメラナノボディとも呼ばれるウシ-ヒトキメラ単一ドメイン抗体、本明細書中でアルパカ-ヒトキメラナノボディとも呼ばれるアルパカ-ヒトキメラ単一ドメイン抗体、又は本明細書中でサメ-ヒトキメラナノボディとも呼ばれるサメ-ヒトキメラ単一ドメイン抗体)を生成するために使用することができる。
【0009】
同様に本明細書中に記載されるとおり、本明細書中で提供される組換え非ヒト動物(例えば、マウス)を使用して、単一ドメイン抗体(例えば、マウス単一ドメイン抗体又は、非マウス単一ドメイン抗体、例えば、ヒト化単一ドメイン抗体又はヒト単一ドメイン抗体)を生成するために使用し得る重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体)を得ることができる。
【0010】
一実施形態において、本書は、1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む核酸配列の欠失を含む生殖細胞系列改変を含む遺伝子組換えマウスであって;上記マウスがIgG重鎖抗体を発現し、且つその血清中にIgG重鎖抗体を分泌する、上記遺伝子組換えマウスを提供する。
【0011】
一部の実施形態において、1つ以上の重鎖C領域遺伝子は、IgM C領域遺伝子(Cμ)、IgD C領域遺伝子(Cδ)、IgE C領域遺伝子(Cε)、IgG3 C領域遺伝子(Cγ3)、IgG2b C領域遺伝子(Cγ2b)、IgG2c C領域遺伝子(Cγ2c)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
一部の実施形態において、遺伝子組換えマウスは、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失をさらに含む。一部の実施形態において、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失は、エクソン1を含む。
【0013】
一部の実施形態において、生殖細胞系列改変は、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列をさらに含む。
【0014】
一部の実施形態において、生殖細胞系列改変は、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列をさらに含む。一部の実施形態において、エンハンサーは、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
一部の実施形態において、生殖細胞系列改変は、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)及びIμプロモーターを含む天然核酸配列をさらに含み、ここでIμはCH1ドメインが切断されたIgG1(IgG1ΔCH1)の構成的発現を駆動する。
【0016】
一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は、IgG1重鎖抗体を含む。一部の実施形態において、IgG1重鎖抗体は、IgG1ΔCH1タンパク質である。一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は軽鎖を欠如している。一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0017】
一部の実施形態において、マウスは、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。一部の実施形態において、マウスは、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0018】
別の実施形態において、本書は、内因性IgH遺伝子座に組換え免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含む生殖細胞系列ゲノムを含む組換え非ヒト動物であって;上記組換えIgHアレルが内因性重鎖C領域遺伝子を欠如しており;且つ上記内因性重鎖C領域遺伝子がCμ、Cδ、Cε、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c又はそれらの組み合わせを含む、上記組換え非ヒト動物を提供する。
【0019】
一部の実施形態において、IgHアレルは、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失を含む。一部の実施形態において、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインは、エクソン1を含む。
【0020】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を含む。
【0021】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を含む。一部の実施形態において、エンハンサーは、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせを含む。
【0022】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)及びIμプロモーターを含む天然核酸配列を含み、ここでIμは、CH1ドメインが切断されたIgG1(IgG1ΔCH1)の構成的発現を駆動する。
【0023】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、IgG重鎖抗体を発現する。一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は、IgG1重鎖抗体を含む。
【0024】
一部の実施形態において、IgG1重鎖抗体は、IgG1ΔCH1タンパク質である。
【0025】
一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は、軽鎖を欠如している。
【0026】
一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0027】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0028】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、内因性V、D、又はJ遺伝子を含む。
【0029】
一部の実施形態において、組換え非ヒト動物は、組換えIgHアレルについてホモ接合性である。
【0030】
一部の実施形態において、内因性IgH遺伝子座は、外因性核酸配列を含まない。
【0031】
一部の実施形態において、内因性IgH遺伝子座は、外因性核酸配列を含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、バーコードを含む。
【0032】
別の実施形態において、本書は組換え非ヒト動物を提供し、ここで非ヒト動物は哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物はマウスである。
【0033】
別の実施形態において、本書は、重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物の幹細胞において内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップ;(b) 上記幹細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 上記胚盤胞を偽妊娠マウスに移植してキメラマウスを得るステップ;(d) 上記キメラマウスを野生型マウスに対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 上記子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の重鎖C領域遺伝子の欠失を有する創始マウスを同定するステップを含み、ここで前記非ヒト動物が重鎖抗体を産生することができる、上記方法を提供する。
【0034】
一部の実施形態において、幹細胞は胚性幹細胞である。
【0035】
一部の実施形態において、1つ以上の重鎖C領域遺伝子は、Cμ、Cδ、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c、Cε、又はそれらの組み合わせを含む。
【0036】
一部の実施形態において、本方法は、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメイン及びCγ1のCH1エクソンをコードする核酸配列を欠失させるステップをさらに含む。一部の実施形態において、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失は、エクソン1を含む。
【0037】
一部の実施形態において、本方法は、IgG1(Cγ1)のヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、及び重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を保存するステップをさらに含む。
【0038】
一部の実施形態において、本方法は、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含む。一部の実施形態において、エンハンサーは、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせを含む。
【0039】
一部の実施形態において、本方法は、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)、及びIμプロモーターを含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含み、ここでIμは、CH1ドメインが切断されたIgG1(IgG1ΔCH1)の構成的発現を駆動する。
【0040】
一部の実施形態において、重鎖抗体は、IgG重鎖抗体である。一部の実施形態において、IgG重鎖抗体は、IgG1重鎖抗体を含む。一部の実施形態において、IgG1重鎖抗体は、IgG1ΔCH1タンパク質である。
【0041】
一部の実施形態において、IgG1重鎖抗体は軽鎖を欠如している。
【0042】
一部の実施形態において、IgG1重鎖抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0043】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0044】
一部の実施形態において、非ヒト動物は哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物はマウスである。
【0045】
一部の実施形態において、1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップは、CRISPR/Cas9ゲノム編集を含む。
【0046】
一部の実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は繁殖性である。一部の実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は、正常なB細胞の発達及び成熟を有する。
【0047】
一部の実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0048】
別の実施形態において、本書は、組換え非ヒト動物において可溶性重鎖抗体を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 上記非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 上記1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;(d) 上記mRNAを配列決定するステップ;(e) 上記mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップ;及び(f) 上記クローン型の系統発生解析を含み、これにより可溶性重鎖抗体を産生する、上記方法を提供する。
【0049】
一部の実施形態において、非ヒト動物は哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物はマウスである。
【0050】
別の実施形態において、本書は、組換え非ヒト動物から同定される単一ドメイン抗体(sdAb)を産生する方法であって、細胞中でV、D及びJを含む重鎖可変(VH)ドメインをコードする核酸配列を発現させるステップであって、上記細胞が重鎖可変ドメインを産生する上記ステップ、及びサンプルから重鎖可変ドメインを単離するステップを含み、これにより単一ドメイン抗体を産生する、上記方法を提供する。一部の実施形態において、単一ドメイン抗体は、マウスの単一ドメイン抗体である。
【0051】
一部の実施形態において、単一ドメイン抗体は、IgG1重鎖抗体に由来するIgG1単一ドメイン抗体である。一部の実施形態において、IgG1単一ドメイン抗体は、IgG1ΔCH1重鎖抗体に由来するIgG1ΔCH1ナノボディである。
【0052】
別の実施形態において、本書は、1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む核酸配列の欠失を含む生殖細胞系列改変を含む遺伝子組換えマウスであって;上記マウスがヒト化IgG重鎖抗体を発現し、且つその血清中にヒト化IgG重鎖抗体を分泌する、上記マウスを提供する。
【0053】
一部の実施形態において、1つ以上の重鎖C領域遺伝子は、IgM C領域遺伝子(Cμ)、IgD C領域遺伝子(Cδ)、IgE C領域遺伝子(Cε)、IgG3 C領域遺伝子(Cγ3)、IgG2b C領域遺伝子(Cγ2b)、IgG2c C領域遺伝子(Cγ2c)、又はそれらの組み合わせである。
【0054】
一部の実施形態において、遺伝子組換えマウスは、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失をさらに含む。一部の実施形態において、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失は、エクソン1を含む。
【0055】
一部の実施形態において、生殖細胞系列改変は、IgG1(Cγ1)のヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、及び重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列をさらに含む。
【0056】
一部の実施形態において、生殖細胞系列改変は、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列をさらに含む。一部の実施形態において、エンハンサーは、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1、又はそれらの組み合わせである。
【0057】
一部の実施形態において、生殖細胞系列改変は、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)及びIμプロモーターを含む天然核酸配列をさらに含み、ここでIμは、CH1ドメインが切断されたIgG1(IgG1ΔCH1)の構成的発現を駆動する。
【0058】
一部の実施形態において、ヒト化IgG重鎖抗体は、ヒト化IgG1重鎖抗体を含む。一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、IgG1ΔCH1タンパク質である。
【0059】
一部の実施形態において、ヒト化IgG重鎖抗体は、軽鎖を欠如している。
【0060】
一部の実施形態において、ヒト化IgG重鎖抗体は、IgG1(Cγ1)のヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0061】
一部の実施形態において、マウスは、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。一部の実施形態において、マウスは、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0062】
別の実施形態において、本書は、内因性IgH遺伝子座に組換え免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含む生殖細胞系列ゲノムを含む組換え非ヒト動物であって;上記組換えIgHアレルが内因性重鎖C領域遺伝子を欠如しており;且つ上記内因性重鎖C領域遺伝子がCμ、Cδ、Cε、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c又はそれらの組み合わせを含む、上記組換え非ヒト動物を提供する。
【0063】
一部の実施形態において、IgHアレルは、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失を含む。一部の実施形態において、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインは、エクソン1を含む。
【0064】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、IgG1(Cγ1)のヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、及び重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を含む。
【0065】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を含む。一部の実施形態において、エンハンサーは、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1、又はそれらの組み合わせである。
【0066】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)及びIμプロモーターを含む天然核酸配列を含み、ここでIμは、CH1ドメインが切断されたIgG1(IgG1ΔCH1)の構成的発現を駆動する。
【0067】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、ヒト化IgG重鎖抗体を発現する。一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、ヒト化IgG1重鎖抗体を含む。一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、IgG1ΔCH1タンパク質である。
【0068】
一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、軽鎖を欠如している。
【0069】
一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0070】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。一部の実施形態において、非ヒト動物は、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0071】
一部の実施形態において、IgH遺伝子座は、ヒトV、D、又はJ遺伝子を含む。
【0072】
一部の実施形態において、組換え非ヒト動物は、組換えIgHアレルについてホモ接合性である。
【0073】
一部の実施形態において、内因性IgH遺伝子座は、外因性核酸配列を含む。
【0074】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、2個以上のヒトVH遺伝子セグメント、2個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び2個以上のJH遺伝子セグメントを含む。
【0075】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、又は126個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、51~55、56~60、又は60~65個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、51~55、56~60、60~65、66~70、71~75、76~80、81~85、86~90、91~95、96~100、101~105、106~110、111~115、116~120、又は121~126個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、実質的に全てのヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、約10、約20、約30、約40、約50、又は約60個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、又は約120個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1個超、10個超、20個超、30個超、40個超、50個超、又は60個超のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1個超、10個超、20個超、30個超、40個超、50個超、60個超、70個超、80個超、90個超、100個超、110個超、又は120個超のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、65個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、126個のヒトVH遺伝子セグメントを含む。
【0076】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、又は27個のヒトDH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1~5、6~10、11~15、16~20、21~25、又は26~27個のヒトDH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、実質的に全てのヒトDH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、約5個、約10個、約15個、約20個、又は約25個のヒトDH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1個超、5個超、10個超、15個超、20個超、又は25個超のヒトDH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、27個のヒトDH遺伝子セグメントを含む。
【0077】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1、2、3、4、5、又は6個のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1~6個のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1~9個のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、実質的に全てのヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、約5個のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、約9個のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1個超、2個超、3個超、4個超、又は5個超のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、7個超、又は8個超のヒトJH遺伝子セグメントを含む。一部の実施形態において、外因性核酸配列は、6個のJH遺伝子セグメントを含む。
【0078】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、65個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び6個のJH遺伝子セグメントを含む。
【0079】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、127個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び9個のJH遺伝子セグメントを含む。
【0080】
一部の実施形態において、外因性核酸配列は、バーコードを含む。
【0081】
一部の実施形態において、非ヒト動物は哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物は、マウス又はラットである。
【0082】
別の実施形態において、本書は、ヒト化重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物の幹細胞において内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップ;(b) 上記幹細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 上記胚盤胞を偽妊娠マウスに移植してキメラマウスを得るステップ;(d) 上記キメラマウスを野生型マウスに対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 上記子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の重鎖C領域遺伝子の欠失を有する創始マウスを同定するステップを含み、ここで前記非ヒト動物が、ヒト化重鎖抗体を産生することができる、上記方法を提供する。
【0083】
一部の実施形態において、幹細胞は、胚性幹細胞である。
【0084】
一部の実施形態において、1つ以上の重鎖C領域遺伝子は、Cμ、Cδ、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c、Cε、又はそれらの組み合わせを含む。
【0085】
一部の実施形態において、本方法は、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列を欠失させるステップをさらに含む。一部の実施形態において、IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失は、エクソン1を含む。
【0086】
一部の実施形態において、本方法は、IgG1(Cγ1)のヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を保存するステップをさらに含む。
【0087】
一部の実施形態において、本方法は、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含む。一部の実施形態において、エンハンサーは、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせである。
【0088】
一部の実施形態において、本方法は、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)及びIμプロモーターを含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含み、ここでIμは、CH1ドメインが切断されたIgG1(IgG1ΔCH1)の構成的発現を駆動する。
【0089】
一部の実施形態において、ヒト化重鎖抗体は、ヒト化IgG1重鎖抗体である。一部の実施形態において、ヒト化IgG重鎖抗体は、ヒト化IgG1重鎖抗体を含む。一部の実施形態において、IgG1重鎖抗体は、IgG1ΔCH1タンパク質である。
【0090】
一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、軽鎖を欠如している。
【0091】
一部の実施形態において、ヒト化IgG1重鎖抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0092】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0093】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物はマウスである。
【0094】
一部の実施形態において、1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップは、CRISPR/Cas9ゲノム編集を含む。
【0095】
本実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は繁殖性である。
【0096】
一部の実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は、実質的に正常なB細胞の発達及び成熟を有する。
【0097】
一部の実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0098】
別の実施形態において、本書は、組換え非ヒト動物において可溶性ヒト化重鎖抗体を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 上記非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 上記1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;(d) 上記mRNAを配列決定するステップ;(e) 上記mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップ;及び(f) 上記クローン型の系統発生解析を含み、これにより可溶性ヒト化重鎖抗体を産生する、上記方法を提供する。
【0099】
一部の実施形態において、非ヒト動物は哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物は、マウス又はラットである。
【0100】
別の実施形態において、本書は、組換え非ヒト動物から同定されるヒト化単一ドメイン抗体(sdAb)を産生する方法であって、細胞中でV、D及びJを含むヒト重鎖可変(VH)ドメインをコードする核酸配列を発現させるステップであって、上記細胞がヒト重鎖可変ドメインを産生する上記ステップ;及びサンプルからヒト重鎖可変ドメインを単離するステップを含み、これにより単一ドメイン抗体を産生する、上記方法を提供する。
【0101】
一部の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。一部の実施形態において、単一ドメイン抗体は、IgG1単一ドメイン抗体である。一部の実施形態において、IgG1単一ドメイン抗体は、IgG1ΔCH1ナノボディである。
【0102】
一部の実施形態において、単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠如している。
【0103】
一部の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを欠如している。
【0104】
一部の実施形態において、細胞は、細菌細胞又はヒト細胞である。
【0105】
別の態様において、本書は、非ヒト動物を特徴とし、ここで、上記非ヒト動物のゲノムは免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含み、上記IgHアレル(又はゲノム)は、IgGサブクラスのCH2ドメイン又はCH3ドメインをコードする内因性核酸を含み、上記IgHアレル(又はゲノム)は、IgGサブクラスの内因性CH1ドメインの少なくとも一部をコードする核酸を欠如しており、またここで上記IgHアレル(又はゲノム)は、IgM定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgD定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgE定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、又はIgA定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如している。非ヒト動物のIgHアレル(又はゲノム)は、IgGサブクラスのCH2ドメイン及びCH3ドメインをコードする内因性核酸を含み得る。非ヒト動物のIgHアレル(又はゲノム)は、IgGサブクラスのヒンジドメインをコードする内因性核酸を含み得る。IgGサブクラスは、IgG2サブクラスであり得る。IgGサブクラスは、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスであり得る。IgGサブクラスは、IgG1サブクラスであり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgG2定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、又はIgG4定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgG2a定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG2b定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG2c定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、及びIgG4定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgG2定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、又はIgG4定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgG2a定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG2b定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG2c定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgG3定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、又はIgG4定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgM定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgD定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、IgE定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸、及びIgA定常ドメインの少なくとも一部をコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgM定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgD定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、IgE定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸、又はIgA定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgM定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgD定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgE定常ドメインのそれぞれをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、IgA CH1定常ドメイン及びCH2定常ドメインをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性CH1ドメインをコードする核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性Eμを含み得る。内因性Eμの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG CH2ドメインをコードする核酸であり得る。内因性Eμの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸であり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性Sμ、内因性Iμプロモーター、内因性Iμエクソン、又はそれらの組み合わせを含み得る。内因性Sμ、内因性Iμプロモーター、又は、内因性Iμエクソンの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG CH2ドメインをコードする核酸であり得る。内因性Sμ、内因性Iμプロモーター、又は、内因性Iμエクソンの下流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸であり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性3'γ1Eを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性3'γ1Eの下流の完全長CH2ドメインをコードする内因性核酸を欠如し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性5'hsR1を含み得る。内因性5'hsR1の上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG CH2ドメインをコードする核酸であり得る。内因性5'hsR1の上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸であり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性3'RRを含み得る。内因性3'RRの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG CH2ドメインをコードする核酸であり得る。内因性3'RRの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸であり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、内因性3'CBEを含み得る。内因性3'CBEの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG CH2ドメインをコードする核酸であり得る。内因性3'CBEの上流の完全長CH2ドメインをコードする第1の核酸配列は、IgG1 CH2ドメインをコードする核酸であり得る。ゲノムの少なくとも1つのアレルは、内因性Ig重鎖可変領域の少なくとも一部を欠如し得る。ゲノムの少なくとも1つのアレルは、内因性Ig重鎖可変領域の全てのエクソンを欠如し得る。ゲノムの両アレルは、内因性Ig重鎖可変領域の全てのエクソンを欠如し得る。ゲノムのいずれのアレルも、Ig重鎖可変領域の外因性エクソンを含み得ない。非ヒト動物は、Ig重鎖を産生しない非ヒト動物であり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上のヒトIg重鎖可変領域遺伝子セグメントをコードする外因性核酸を含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上の外因性ヒトIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、3個以上のヒトIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、26個以上のヒトIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、65個以上のヒトIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、126個のヒトIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、13個以上のIg VD遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、27個のヒトIg VD遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、3個以上のヒトIg VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、9個のヒトIg VJ遺伝子セグメントを含み得る。ゲノムは、126個のヒトIg VH遺伝子セグメント、27個以上のヒトIg VD遺伝子セグメント、及び9個のヒトIg VJ遺伝子セグメントを含み得る。非ヒト動物は、ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体を産生し得る。ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体の可変領域ドメインは、完全ヒトであり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上のヒトIg軽鎖可変領域遺伝子セグメントをコードする外因性核酸を含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上の外因性ヒトIgκ可変遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、20個以上の外因性ヒトIgκ可変遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、40個の外因性ヒトIgκ可変遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上の外因性ヒトIgλ可変遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、10個以上の外因性ヒトIgλ可変遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、20個の外因性ヒトIgλ可変遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上のヒトIgκ VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、5個のヒトIgκ VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1個以上のヒトIgλ VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、4個のヒトIgλ VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、40個のヒトIgκ可変遺伝子セグメント及び5個のヒトIgκ VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、20個のヒトIgλ可変遺伝子セグメント及び4個のヒトIgλ VJ遺伝子セグメントを含み得る。非ヒト動物は、ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体を産生することができる。ヒト-非ヒトキメラIg重鎖抗体の可変領域ドメインは、軽鎖由来の完全ヒトであり得る。非ヒト動物は、第1の非ヒト種の非ヒト動物であり得、IgHアレル(又はゲノム)は、第1の非ヒト種とは異なる第2の非ヒト種の1個以上のIg重鎖可変領域遺伝子セグメントをコードする外因性核酸を含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の1個以上のIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の10個以上のIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の全てのIg VH遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の3個以上のIg VD遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の全てのIg VD遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の3個以上のIg VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の全てのIg VJ遺伝子セグメントを含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、第2の非ヒト種の全てのIg VH遺伝子セグメント、Ig VD遺伝子セグメント、及びIg VJ遺伝子セグメントを含み得る。非ヒト動物は、第1の種と第2の種とのキメラ重鎖抗体を産生することができる。キメラ重鎖抗体の可変領域ドメインは、完全に第2の種の可変領域ドメインであり得る。第1の種は、マウス種であり得る。第2の種は、ウシ種、サメ種、又はアルパカ種であり得る。IgHアレル(又はゲノム)は、少なくとも1つの外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含み得る。少なくとも1つの外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列は、IgGサブクラスのCH2ドメイン又はCH3ドメインをコードする内因性核酸の上流に位置し得る。IgHアレル(又はゲノム)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、少なくとも3個の異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含み得る。IgHアレル(又はゲノム)は、少なくとも5個の異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列を含み得る。異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれは、内因性Eμの2.5Mb未満上流に位置する。異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれは、内因性Eμの2.0Mb未満、1.5Mb未満、1.0Mb未満、500kb未満、又は250kb未満上流に位置する。異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれは、内因性Eμの200kb未満、100kb未満、50kb未満、25kb未満、又は10kb未満上流に位置する。異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれは、内因性Eμの500kb未満上流に位置し得る。異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれは、内因性Eμの250kb未満上流に位置し得る。異なる外因性リコンビナーゼ部位認識核酸配列のそれぞれは、内因性Eμの200kb未満上流に位置し得る。
【0106】
別の態様において、本書は、遺伝子改変非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含むDNAであって、上記遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如している、上記DNAを特徴とする。上記DNAは、生殖細胞系列ゲノムDNAであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのCH1定常ドメインを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。IgGサブクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含み得る。IgGサブクラスは、IgG1サブクラスであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、CH1切断型IgG1定常ドメイン(IgG1ΔCH1)をコードする核酸配列(Cγ1-ΔCH1)を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのヒンジ(H)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸配列を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG2定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Eμ、3'γ1E、5'hsR1、3'RR、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性エンハンサーを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Iμプロモーター、Iμエクソン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含み得る。IgG1発現は、Eμ、Iμプロモーター、Sμ、又はそれらの任意の組み合わせにより駆動され得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Sγ3、Sγ1、Sγ2b、Sγ2c、Sε、Sα、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性スイッチ領域を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、以下の成分を含み得る(5'から3'へ):Eμ、Iμプロモーター、Iμエクソン、Sμ、Cγ1-ΔCH1、3'γ1E、5'hsR1、及び3'RR。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、フリッパーゼ認識標的(frt)部位を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1個の内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、ドッキングカセットを含み得る。ドッキングカセットは、左及び右ホモロジーアーム、frt部位、attB部位、プロモーター、loxP部位、選択マーカーをコードする核酸配列、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。ドッキングカセットは、選択マーカーをコードする核酸配列を含み得る。選択マーカーは、ジェネティシン、ハイドロマイシン(hydromycin)、ピューロマイシン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG重鎖抗体をコードし得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、外因性V遺伝子セグメント、外因性D遺伝子セグメント、外因性J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメント、マウス遺伝子セグメント、ラット遺伝子セグメント、ウシ遺伝子セグメント、アルパカ遺伝子セグメント、及びサメ遺伝子セグメントからなる群から選択することができる。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、120、又は126個のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、15、20、25、又は27個のヒトDH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、126個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のウシ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、L1エクソン、IGHV1-7のL2エクソン、IGHD8-2のコーディングセグメント、IGHJ2-4のコーディング配列、IGH2-4スプライスドナー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、IGHD4-1、IGHD5-3、IGHD8-2、IGHD1-3、IGHD7-3、IGHD7-4、IGHD6-3、IGHD3-3、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、配列番号42~49及び57から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のアルパカ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のアルパカ遺伝子セグメントは、VHH3-1、VHH3-S1、VHH3-S2、VHH3-S9、VHH3-S10、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。アルパカ遺伝子セグメントは、配列番号50~54から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のサメ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のサメ遺伝子セグメントは、VNAR-L38968、VNAR-L38967、又はその両方を含み得る。サメ遺伝子セグメントは、配列番号55~56から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルはIgG重鎖抗体をコードし得、上記IgG重鎖抗体は、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトラムダ軽鎖(LV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトLV遺伝子セグメントは、CH17-262M19、CH17-329P5、CH17-238D3、CH17-261A15、CH17-264L24、CH17-117C7、RP11-1040J16、CH17-320F4又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトカッパ軽鎖(KV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトKV遺伝子セグメントは、CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。
【0107】
別の態様において、本書は、遺伝子改変非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含むDNAを含む遺伝子改変細胞であって、上記遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如している、上記遺伝子改変細胞を特徴とする。DNAは、生殖細胞系列ゲノムDNAであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのCH1定常ドメインを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。IgGサブクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含み得る。IgGサブクラスは、IgG1サブクラスであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、CH1切断型IgG1定常ドメイン(IgG1ΔCH1)をコードする核酸配列(Cγ1-ΔCH1)を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのヒンジ(H)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸配列を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG2定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Eμ、3'γ1E、5'hsR1、3'RR、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性エンハンサーを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Iμプロモーター、Iμエクソン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含み得る。IgG1発現は、Eμ、Iμプロモーター、Sμ、又はそれらの任意の組み合わせにより駆動され得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Sγ3、Sγ1、Sγ2b、Sγ2c、Sε、Sα、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性スイッチ領域を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、以下の成分を含み得る(5'から3'へ):Eμ、Iμプロモーター、Iμエクソン、Sμ、Cγ1-ΔCH1、3'γ1E、5'hsR1、及び3'RR。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、フリッパーゼ認識標的(frt)部位を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1個の内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、ドッキングカセットを含み得る。ドッキングカセットは、左及び右ホモロジーアーム、frt部位、attB部位、プロモーター、loxP部位、選択マーカーをコードする核酸配列、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。ドッキングカセットは、選択マーカーをコードする核酸配列を含み得る。選択マーカーは、ジェネティシン、ハイドロマイシン(hydromycin)、ピューロマイシン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG重鎖抗体をコードし得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、外因性V遺伝子セグメント、外因性D遺伝子セグメント、外因性J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメント、マウス遺伝子セグメント、ラット遺伝子セグメント、ウシ遺伝子セグメント、アルパカ遺伝子セグメント、及びサメ遺伝子セグメントからなる群から選択することができる。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、120、又は126個のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、15、20、25、又は27個のヒトDH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、126個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のウシ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、L1エクソン、IGHV1-7のL2エクソン、IGHD8-2のコーディングセグメント、IGHJ2-4のコーディング配列、IGH2-4スプライスドナー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、IGHD4-1、IGHD5-3、IGHD8-2、IGHD1-3、IGHD7-3、IGHD7-4、IGHD6-3、IGHD3-3又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、配列番号42~49及び57から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のアルパカ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のアルパカ遺伝子セグメントは、VHH3-1、VHH3-S1、VHH3-S2、VHH3-S9、VHH3-S10、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。アルパカ遺伝子セグメントは、配列番号50~54から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のサメ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のサメ遺伝子セグメントは、VNAR-L38968、VNAR-L38967、又はその両方を含み得る。サメ遺伝子セグメントは、配列番号55~56から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルはIgG重鎖抗体をコードし得、上記IgG重鎖抗体は、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトラムダ軽鎖(LV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトLV遺伝子セグメントは、CH17-262M19、CH17-329P5、CH17-238D3、CH17-261A15、CH17-264L24、CH17-117C7、RP11-1040J16、CH17-320F4又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトカッパ軽鎖(KV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトKV遺伝子セグメントは、CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。細胞は、非ヒト動物細胞であり得る。細胞は、哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物細胞は、マウス、ラット、ウシ、アルパカ、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、サル、又はチンパンジーの細胞であり得る。細胞は、マウス細胞であり得る。細胞は、サメ細胞であり得る。細胞は、ヒト細胞であり得る。細胞は、幹細胞であり得る。幹細胞は、胚性幹細胞(ESC)又は人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。細胞は、B細胞であり得る。
【0108】
別の態様において、本書は、遺伝子改変非ヒト動物を特徴とし、ここで上記遺伝子改変非ヒト動物は、前段落の細胞を含む。非ヒト動物は、哺乳動物であり得る。哺乳動物は、マウス、ラット、ウシ、アルパカ、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、サル、又はチンパンジーであり得る。非ヒト動物は、マウスであり得る。遺伝子改変非ヒト動物は、IgG重鎖抗体を発現する細胞を含み得る。IgG重鎖抗体は、遺伝子改変非ヒト動物の血清中に分泌され得る。IgG重鎖抗体は、CH1切断型IgG1重鎖抗体(IgG1ΔCH1)であり得る。IgG重鎖抗体は、軽鎖を欠如し得る。IgG重鎖抗体は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。IgG重鎖抗体を発現する細胞は、IgM抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG3抗体、IgG2b抗体、IgG2c抗体、IgA抗体又はそれらの任意の組み合わせを発現しない細胞であり得る。IgG重鎖抗体は、ヒトIgG重鎖抗体であり得る。IgG重鎖抗体は、ヒト可変ドメイン、マウス可変ドメイン、ラット可変ドメイン、ウシ可変ドメイン、アルパカ可変ドメイン及びサメ可変ドメインからなる群から選択される外因性可変ドメインを含み得る。IgG重鎖抗体は、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含み得る。
【0109】
別の態様において、本書は、遺伝子改変非ヒト動物を作製するための方法を特徴とする。上記方法は、(a) 非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルから1つ以上の核酸配列を欠失させるステップであって、ここで欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードし、これにより生殖細胞系列ゲノムDNAにおいて遺伝子改変非ヒトIgHアレルを生成する、上記ステップ;(b) 上記生殖細胞系列ゲノムDNAを含む細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 上記胚盤胞を偽妊娠非ヒト動物に移植してキメラ非ヒト動物を得るステップ;(d) 上記キメラ非ヒト動物を野生型非ヒト動物に対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 上記子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の核酸配列の欠失を有し且つ重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を同定するステップ、を含む。遺伝子改変非ヒト動物は、前段落の遺伝子改変非ヒト動物であり得る。1つ以上の核酸配列を欠失させるステップは、CRISPR/Casゲノム編集系を使用するステップを含み得る。CRISPR/Casゲノム編集系は、内因性重鎖C領域遺伝子を標的とする少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とCasタンパク質とを含み得る。Casタンパク質は、Cas9タンパク質を含み得る。上記欠失される1つ以上の核酸配列は、IgG1のCH1定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgM定常ドメイン、及びIgD定常ドメインをコードし得る。上記欠失される1つ以上の核酸配列は、IgG2定常ドメイン及びIgA定常ドメインをコードし得る。核酸配列を欠失させるステップは、Flpリコンビナーゼの一過性発現を用いて非ヒトIgHアレルから選択マーカーを除去するステップを含み得る。上記欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、及びIgA定常ドメインをコードし得る。上記方法は、非ヒトIgHアレルから核酸配列を欠失させるステップを含み得、ここで上記核酸配列は、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含む。上記方法は、ドッキングカセットを挿入するステップを含み得る。上記方法は、ドッキングカセットと細菌人工染色体(BAC)を接触させるステップを含み得、ここで上記BACは、外因性VH、DH、及びJH遺伝子セグメントを含む核酸配列を含む。上記方法は、外因性遺伝子セグメントをドケッティングカセット(docketing cassette)に挿入するステップを含み得る。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントであり得る。
【0110】
別の態様において、本書は遺伝子改変非ヒト動物を特徴とし、ここで遺伝子改変非ヒト動物は、前段落の方法を用いて作製された。
【0111】
別の態様において、本書は、生殖細胞系列ゲノムDNAを調製するための方法を特徴とし、ここで上記方法は、非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルから1つ以上の核酸配列を欠失させるステップであって、ここで上記欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードし、これにより生殖細胞系列ゲノムDNAにおいて遺伝子改変非ヒトIgHアレルを生成する、上記ステップを含む。生殖細胞系列ゲノムDNAは、遺伝子改変非ヒトIgHアレルを含むDNAを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのCH1定常ドメインを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。IgGサブクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含み得る。IgGサブクラスは、IgG1サブクラスであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、CH1切断型IgG1定常ドメイン(IgG1ΔCH1)をコードする核酸配列(Cγ1-ΔCH1)を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのヒンジ(H)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸配列を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG2定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Eμ、3'γ1E、5'hsR1、3'RR、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性エンハンサーを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Iμプロモーター、Iμエクソン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含み得る。IgG1発現は、Eμ、Iμプロモーター、Sμ、又はそれらの任意の組み合わせにより駆動され得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Sγ3、Sγ1、Sγ2b、Sγ2c、Sε、Sα、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性スイッチ領域を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、以下の成分を含み得る(5’から3’へ):Eμ、Iμプロモーター、Iμエクソン、Sμ、Cγ1-ΔCH1、3'γ1E、5'hsR1、及び3'RR。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、フリッパーゼ認識標的(frt)部位を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1個の内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、ドッキングカセットを含み得る。ドッキングカセットは、左及び右ホモロジーアーム、frt部位、attB部位、プロモーター、loxP部位、選択マーカーをコードする核酸配列、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。ドッキングカセットは、選択マーカーをコードする核酸配列を含み得る。選択マーカーは、ジェネティシン、ハイドロマイシン(hydromycin)、ピューロマイシン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG重鎖抗体をコードし得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、外因性V遺伝子セグメント、外因性D遺伝子セグメント、外因性J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメント、マウス遺伝子セグメント、ラット遺伝子セグメント、ウシ遺伝子セグメント、アルパカ遺伝子セグメント、及びサメ遺伝子セグメントからなる群から選択することができる。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、120、又は126個のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、15、20、25、又は27個のヒトDH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、126個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のウシ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、L1エクソン、IGHV1-7のL2エクソン、IGHD8-2のコーディングセグメント、IGHJ2-4のコーディング配列、IGH2-4スプライスドナー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、IGHD4-1、IGHD5-3、IGHD8-2、IGHD1-3、IGHD7-3、IGHD7-4、IGHD6-3、IGHD3-3、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、配列番号42~49及び57から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のアルパカ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のアルパカ遺伝子セグメントは、VHH3-1、VHH3-S1、VHH3-S2、VHH3-S9、VHH3-S10、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。アルパカ遺伝子セグメントは、配列番号50~54から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のサメ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のサメ遺伝子セグメントは、VNAR-L38968、VNAR-L38967、又はその両方を含み得る。サメ遺伝子セグメントは、配列番号55~56から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG重鎖抗体をコードし得、上記IgG重鎖抗体は、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトラムダ軽鎖(LV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトLV遺伝子セグメントは、CH17-262M19、CH17-329P5、CH17-238D3、CH17-261A15、CH17-264L24、CH17-117C7、RP11-1040J16、CH17-320F4又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトカッパ軽鎖(KV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトKV遺伝子セグメントは、CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。IgG定常ドメインは、IgGサブクラスの定常ドメインを含み得る。IgGサブクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含み得る。
【0112】
別の態様において、本書は、遺伝子改変非ヒト動物においてIgG重鎖抗体を産生する方法を特徴とする。上記方法は、(a) 前段落のいずれかの遺伝子改変非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 上記遺伝子改変非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 上記1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;及び(d) IgG重鎖抗体を産生するステップを含む。遺伝子改変非ヒト動物は、遺伝子改変非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含むDNAであって、上記遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如している、上記DNAを含み得る。DNAは、生殖細胞系列ゲノムDNAであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのCH1定常ドメインを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。IgGサブクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含み得る。IgGサブクラスは、IgG1サブクラスであり得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、CH1切断型IgG1定常ドメイン(IgG1ΔCH1)をコードする核酸配列(Cγ1-ΔCH1)を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgGサブクラスのヒンジ(H)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸配列を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG2定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Eμ、3'γ1E、5'hsR1、3'RR、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性エンハンサーを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Iμプロモーター、Iμエクソン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含み得る。IgG1発現は、Eμ、Iμプロモーター、Sμ、又はそれらの任意の組み合わせにより駆動され得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、Sγ3、Sγ1、Sγ2b、Sγ2c、Sε、Sα、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性スイッチ領域を欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、以下の成分を含み得る(5'から3'へ):Eμ、Iμプロモーター、Iμエクソン、Sμ、Cγ1-ΔCH1、3'γ1E、5’hsR1、及び3'RR。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、フリッパーゼ認識標的(frt)部位を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1個の内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを欠如し得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、ドッキングカセットを含み得る。ドッキングカセットは、左及び右ホモロジーアーム、frt部位、attB部位、プロモーター、loxP部位、選択マーカーをコードする核酸配列、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。ドッキングカセットは、選択マーカーをコードする核酸配列を含み得る。選択マーカーは、ジェネティシン、ハイドロマイシン(hydromycin)、ピューロマイシン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルはIgG重鎖抗体をコードし得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、外因性V遺伝子セグメント、外因性D遺伝子セグメント、外因性J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメント、マウス遺伝子セグメント、ラット遺伝子セグメント、ウシ遺伝子セグメント、アルパカ遺伝子セグメント、及びサメ遺伝子セグメントからなる群から選択することができる。外因性遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、120、又は126個のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも10、15、20、25、又は27個のヒトDH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、126個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び9個のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のウシ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、L1エクソン、IGHV1-7のL2エクソン、IGHD8-2のコーディングセグメント、IGHJ2-4のコーディング配列、IGH2-4スプライスドナー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、IGHD4-1、IGHD5-3、IGHD8-2、IGHD1-3、IGHD7-3、IGHD7-4、IGHD6-3、IGHD3-3、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。1個以上のウシ遺伝子セグメントは、配列番号42~49及び57から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のアルパカ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のアルパカ遺伝子セグメントは、VHH3-1、VHH3-S1、VHH3-S2、VHH3-S9、VHH3-S10、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。アルパカ遺伝子セグメントは、配列番号50~54から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上のサメ遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のサメ遺伝子セグメントは、VNAR-L38968、VNAR-L38967、又はその両方を含み得る。サメ遺伝子セグメントは、配列番号55~56から選択される核酸配列を含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、IgG重鎖抗体をコードし得、上記IgG重鎖抗体は、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトラムダ軽鎖(LV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトLV遺伝子セグメントは、CH17-262M19、CH17-329P5、CH17-238D3、CH17-261A15、CH17-264L24、CH17-117C7、RP11-1040J16、CH17-320F4又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。遺伝子改変非ヒトIgHアレルは、1個以上の外因性ヒトカッパ軽鎖(KV)遺伝子セグメントを含み得る。1個以上のヒトKV遺伝子セグメントは、CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。DNAは、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含み得る。DNAは、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含み得る。上記方法は、1つ以上のB細胞から単離されたmRNAを配列決定するステップを含み得る。上記方法は、上記mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップを含み得る。上記方法は、上記クローン型の系統発生解析を実施するステップを含み得る。IgG重鎖抗体は、ヒト化IgG重鎖抗体であり得る。IgG重鎖抗体は、ヒト可変領域と非ヒト定常領域とを含むIgG重鎖抗体であり得る。
【0113】
別の態様において、本書は、IgG重鎖抗体を特徴とし、ここでIgG重鎖抗体は、前段落の方法により産生される。
【0114】
別の態様において、本書は、Casタンパク質と少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含むCRISPR/Casゲノム編集系をコードする少なくとも1つの核酸構築物を含む組換えベクター系を特徴とし、ここで上記Casタンパク質と少なくとも1つのgRNAは非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルから1つ以上の核酸配列を欠失させる複合体を形成し、上記欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする。
【0115】
別の態様において、本書は、(a) 配列番号4、配列番号10、及び配列番号19、又は(b) 配列番号5、配列番号11、及び配列番号20を含む可変領域を含む抗体を特徴とする。抗体は、SARS-CoV2スパイクポリペプチドに結合し得る。抗体は、重鎖抗体であり得る。抗体は、単独ドメイン抗体であり得る。
【0116】
別の態様において、本書は、(a) 配列番号4、配列番号10、及び配列番号19(配列番号19は最初のC残基と最後のW残基を欠如することが予想される)、又は(b) 配列番号5、配列番号11、及び配列番号20(配列番号20は、最初のC残基と最後のW残基を欠如することが予想される)を含む可変領域を含む抗体を特徴とする。抗体は、SARS-CoV2スパイクポリペプチドに結合し得る。抗体は、重鎖抗体であり得る。抗体は、単独ドメイン抗体であり得る。
【0117】
別段に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学的用語は、本開示が関連する技術分野における当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。方法及び材料は、本開示において使用するために本明細書中に記載され;他の、当技術分野で公知の好適な方法及び材料も使用することができる。材料、方法及び実施例は例示のみであり、限定することを意図するものではない。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が優先する。
【0118】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の明細書において示される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1図1A~1Dは、Singularity Musculusマウスからの重鎖のみ抗体の産生を示す。(図1A) 野生型マウスのIgh遺伝子座のゲノム構造。マウスVH、DH、及びJH、並びにCH遺伝子は、楕円中のイントロン性エンハンサーEμ及びスーパーエンハンサー3'RRと共に、暗色又は明色のボックスで示される。(図1B) IgG1の全ての他のCH遺伝子並びにCH1エクソンが欠失されている組換えSingularity Musculus(SM)アレル。(図1C) WTアレルから産生される四量体マウスIgG1。(図1D) Singularity MusculusアレルからCH1切断型重鎖のみIgG1が産生され、これからナノボディを誘導することができる。
図2図2は、マウスIghの例示的なゲノム遺伝子座を示す。指示される調節エレメントを含む約220kb CH領域の模式図が示される。
図3図3A~3Eは、Singularity Musculusアレルの生成を示す。図3Aは、マウス野生型IgH遺伝子座を示す。図3Bは、マウスIgH遺伝子座の定常領域を示す。第1ラウンドの組換えで欠失させる領域は、点線のボックスで示される。図3Cは、CRISPR媒介NHEJによるIghm-Ighg1 CH1エクソンの欠失を示す。第2ラウンドの組換えで欠失させる領域は、点線のボックスで示される。図3Dは、CRISPR媒介HDRによるIghg2b-Ighaエクソン1~3の欠失を示す。図3Eは、Flpリコンビナーゼの発現による選択カセットの除去を示す。
図4図4は、野生型マウスIgHアレルと、組換えSingularity Musculusアレル及び組換えSingularity HyperDockアレルの例示的なゲノム構造を示す。
図5図5A~5Dは、Singularity HyperDockアレルの生成を示す。図5Aは、Singularity Musculusアレルを示す。(図5B) Singularity HyperDockアレルは、全てのマウスVH、DH、JH遺伝子(2.58Mb)を欠失させ、CRISPR媒介HDRによる連続RMCEのためのドッキングカセットを挿入することにより生成される。図5Cは、Flpリコンビナーゼの発現を介したSingularity HyperDockアレルのシンテニーバリデーションを示す。図5Dは、ΦC31リコンビナーゼの発現を介した選択マーカーの除去を示す。
図6図6A~6Bは、例示的なSingularity Sapiensマウスからのヒト-マウスキメラ重鎖のみ抗体の産生を示す。図6Aは、ヒトVHナノボディを生成するために使用することができる例示的なヒトVH-マウスIgG1-ΔCH1キメラ抗体の模式図である。図6Bは、Singularity HyperDockアレルへのヒトV、D、J遺伝子の連続導入により産生されるSingularity Sapiensマウスの例示版を示す。上記Singularity SapiensマウスからヒトVH-CH1切断型重鎖のみIgG1が産生され、これからヒトVHナノボディを誘導することができる。
図7図7A~7Dは、Singularity Sapiensアレルシリーズ(SSV1-3)の生成を示す。Singularity Sapiensアレルシリーズは、異種特異的lox部位のリストを用いる連続RMCEを介して組換えヒトIGH BAC1~3を挿入し、Creリコンビナーゼの発現の際に代替選択カセット(neo及びhyg)を交換することにより生成される。
図8図8A~8Dは、ヒトIGH-BAC1、ヒトIGH-BAC2、及びヒトIGH-BAC3を含むクローンへのRMCEを介したヒトIGH-BAC4及びIGH-BAC5の連続組込み、それに続くΦC31リコンビナーゼの発現を介することによる選択マーカーカセットの除去を示す、Singularity Sapiensアレルシリーズ(SSV4-5)の模式図である。
図9図9は、可変重鎖(IGHV)、多様性重鎖(IGHD)、結合重鎖(IGHJ)、並びに定常重鎖IGHM及びIGHDについてのヒト遺伝子セグメントを示す、IGH遺伝子座のヒトゲノムGRCh38/hg38アセンブリGENCODE Genes Track(第36版、2020年10月)に基づくヒトIGH BACを示す。ヒトIGHV、IGHD、及びIGHJ遺伝子セグメントを有する5つのBAC構築物(hIGH BAC1~5、境界は点線のボックスで示される)を、組換えにより対応するソースBAC(実線のボックス)を用いて組換えた。次いで、組換えBACを使用し、本明細書中に記載されるRMCEを介してSingularity HyperDockアレル中に全ヒトV-D-Jゲノム領域を再構築した。各組換えBAC構築物中に含まれるV、D及びJ遺伝子セグメントの数が示される。
図10図10は、BAC組換えの例を示す。ソースBACを細菌相同組換え(recombineering)により改変し、適切な選択可能マーカー及び組換え部位を所望の位置に組み込む。hIgH-BAC1の組換え過程を示す。
図11図11は、IGH遺伝子座に組み込まれた37個の機能的ヒトVHエクソンを含むSingularity Sapiens(SSV4)のPCRベースのバリデーションを示す、VHエクソンバリデーションを示す。PCR結果を、Qiagen Qiaxel DNA High resolution cartridge上で走らせた。上部及び下部のバンドは、Qiagen QXサイズマーカー100bp~2.5kb(カタログNo. 929559)と並行して走らせたQiagen QXアライメントマーカー15bp/3kb(カタログNo. 929522)を表した。PCR産物をサンガー配列決定により検証し、対応するVH遺伝子を一致させた。
図12図12は、複合BAC組換えの例示的方法を示す。ソースBACを細菌相同組換え(recombineering)により連続的に改変し、適切な選択可能マーカー及び組換え部位を所望の位置に組み込む。3つのソースBACからのhIGH-BAC5の組換え過程についての例を示す。
図13図13A~13Bは、カッパ軽鎖を欠如している変異マウスの組換えを示す。図13Aは、CRISPR媒介HDRによるマウスIGカッパの欠失及びドッキング部位の挿入を示す模式図である。図13Bは、F1マウスにおけるIGK HyperDock/KOアレルを確認する遺伝子型決定PCR結果である。
図14図14A~14Bは、ラムダ軽鎖を欠如している変異マウスの組換えを示す。図14Aは、CRISPR媒介NHEJによるマウスIGラムダ遺伝子座全体の欠失を示す模式図である。図14Bは、ES細胞におけるIGL KOアレルの生成を確認するPCR結果である。
図15図15A~15Dは、Singularity Musculusマウスが、CH1切断型IgG1のみのHcAbを産生することを示す。WTマウス(図15A)及びSMマウス(図15B)におけるIgh遺伝子座の模式図。Singularity Musculusマウスのバリデーションは、RT-PCR(脾臓)(図15C)及びウェスタンブロット(血漿)(図15D)により示される。
図16図16A~16Dは、Singularity Sapiensマウスが、ヒト-マウスキメラ重鎖IgG1を産生することを示す。図16Aは、Singularity Musculusアレルを示す。図16Bは、Singularity Sapiens V1アレルを示し、これは全てのヒトJH遺伝子、全てのヒトDH遺伝子、及び3つのヒトVH遺伝子を含む。(図15C)RT-PCRは、Singularity Sapiens V1マウスにおけるヒト-マウスキメラIgG1ΔCH1転写産物の特異的発現を示す。図16Dは、配列決定が、ヒト-マウスキメラ転写産物(配列番号36)の産生を検証したことを示す。
図17図17Aは、ヒトVHナノボディを生成するために使用し得る例示的なヒトVH-マウスIgG1-ΔCH1キメラ抗体の模式図である。図17Bは、免疫したWTマウス及びSingularity Sapiensマウス(SSV1)におけるIgM及びIgG1のウェスタンブロットを示す。
図18図18A~18Bは、Singularity Musculusマウスにおける脾臓形態並びにB細胞におけるIgM発現及びIgG発現を示す。図18Aは、野生型マウス及びSingularity Musculusマウスの脾臓を示す。図18Bは、CD19陽性B細胞におけるIgMの不存在、しかし正常なIgG発現を示す脾細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
図19図19A~19Bは、Singularity SapiensマウスにおけるB細胞マーカーを示す。図19Aは、野生型マウスにおけるIgM+IgD+ B細胞の存在、しかしSingularity Sapiensマウス(SSV2)におけるそれらの不存在を示すフローサイトメトリー分析を示す。図19Bは、野生型マウス及びSingularity Sapiensマウス(SSV2)におけるIgG1+ B細胞の差次的存在量を示すフローサイトメトリー分析を示す。
図20図20A~20Bは、Singularity Musculusマウスが、抗原チャレンジを受けるとロバストな体液性免疫応答を開始することを示す。図20Aは、予め出血させた野生型動物及びSingularity Musculus動物から得られた血漿サンプルのELISA結果を示す。図20Bは、SARS-CoV2スパイクタンパク質S1サブユニットに対する市販の対照抗体(S1 mAb対照)と比較した、SARS-CoV2スパイク活性三量体タンパク質(SAT)で免疫した同じ動物の28日目の致死採血(terminal bleed)から得られた血漿サンプルのELISA結果を示す。
図21図21A~21Bは、Singularity Musculusマウス及びSingularity Sapiensマウスが、様々な抗原チャレンジを受けるとロバストな体液性免疫応答を開始することを示す。図21Aは、SATに対する抗原チャレンジを受けたときの、野生型(WT)動物、Singularity Musculus(SM)動物、及びSingularity Sapiens(SSV1)動物の51日目の致死採血から得られた血漿サンプルのELISA結果を示す。図21Bは、市販のヒトPD-L1抗体と比較した、ヒトPD-L1で免疫化した動物の51日目の致死採血から得られた血漿サンプルのELISA結果を示す。
図22図22は、WTマウス及びSingularity MusculusマウスのIgG1転写産物、及び次世代シーケンシング解析のための5'RACE増幅のためのプライマー位置を示す模式図である。
図23図23A~23Cは、Singularity Musculusマウスが、野生型マウスと同等の抗体多様性を示すことを示す。SATで免疫した2匹の野生型マウス及び2匹のSingularity Musculusマウスから同定された全てのクロノタイプのVH多様性(図23A);JH多様性(図23B);及びCDR3長多様性(図23C)が示される。
図24A図24A~24Cは、WTマウス及びSMマウスにおいて同定されたクロノタイプのIGHV多様性を示す。図24Aは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHV使用を示す。図24Bは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHV使用を示す。(図24C)SMマウスは、WTマウスより多くのIGHVセグメントを利用することができる。
図24B図24A~24Cは、WTマウス及びSMマウスにおいて同定されたクロノタイプのIGHV多様性を示す。図24Aは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHV使用を示す。図24Bは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHV使用を示す。(図24C)SMマウスは、WTマウスより多くのIGHVセグメントを利用することができる。
図24C図24A~24Cは、WTマウス及びSMマウスにおいて同定されたクロノタイプのIGHV多様性を示す。図24Aは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHV使用を示す。図24Bは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHV使用を示す。(図24C)SMマウスは、WTマウスより多くのIGHVセグメントを利用することができる。
図25図25A~25Bは、WTマウス及びSMマウスにおけるIGHJ利用を示す。図25Aは、指示される抗原で免疫したSMマウスにおけるIGHJ使用を示す。(図25B) SMマウスでは、WTマウスと比較して異なる特定のIGHJセグメントの使用が観察された。
図26図26A~26Bは、WTマウス及びSMマウスにおけるCDR3長分布を示す。図26Aは、指示される抗原に対して応答するSMマウス及びWTマウスにおけるクロノタイプ間のCDR3長の分布を示す。図26Bは、SMマウス及びWTマウスにおいて観察された平均CDR3長を示す。
図27図27は、Singularity Musculusマウスにおける体細胞超変異を示す。ヒストグラムは、1匹のナイーブなSingularity Musculusマウス及びSATで免疫した3匹のSingularity Musculusマウスから同定された上位100個の最も豊富なナノボディクロノタイプについての、対応する生殖細胞系列配列と比較した、重鎖可変領域中の各位置におけるアミノ酸変化の数を示す。VH残基位置のナンバリングは、IMGTスキームに基づく。CDR領域において最も顕著な変化が生じた。
図28図28は、例示的なNGSガイド下の単一細胞非依存性ナノボディ発見工程のフローチャートを示す。
図29図29は、SATで免疫したSingularity MusculusマウスのHcAbレパートリーの次世代シーケンシングにより同定した、選択されたクロノタイプの系統樹を示す。(存在量に基づいて)トップランクのクロノタイプを、各免疫化動物について、ハイスループット合成、クローニング、発現、及び抗原親和性についてのELISAスクリーニング、それに続くスパイク-ACE2受容体結合に対する阻害(中和)活性についての競合的ELISAのために選択した。抗原特異的クローンは灰色の陰影で示され、中和クローンはアスタリスクで示される。
図30A図30A~30Bは、ナノボディを発現させるために使用されるベクターを示す。図30Aは、pFUSE-hIgG1-Fc2発現ベクターのプラスミドマップ及びVH配列を挿入するための制限部位(EcoRI及びNcoI)を示す。図30Bは、pFUSE-hIgG1-Fc2発現ベクターから生成され得る例示的なNb-ヒトFc融合体を示す。
図30B図30A~30Bは、ナノボディを発現させるために使用されるベクターを示す。図30Aは、pFUSE-hIgG1-Fc2発現ベクターのプラスミドマップ及びVH配列を挿入するための制限部位(EcoRI及びNcoI)を示す。図30Bは、pFUSE-hIgG1-Fc2発現ベクターから生成され得る例示的なNb-ヒトFc融合体を示す。
図31図31は、免疫したWTマウス及びSMマウスにおけるバインダーについてスクリーニングするELISAを示す。指示される抗原による免疫後にWTマウス及びSMマウスからスクリーニングされたクロノタイプの数及びWTマウス及びSMマウスから同定されたバインダーの数が提供される。各クロノタイプについての結合結果(ELISA結果 OD450)が提供される。
図32図32は、WTマウス及びSMマウスから得られた、指示される結合親和性を有するバインダーの割合を示す、図31のデータに由来する円グラフを含む。各グラフは、指示される抗原に結合するナノボディのELISAにより決定されたバインダーの割合を示す。
図33図33A~33Bは、WT IgG1及びNb-ヒトFc融合体の非還元条件下及び還元条件下での例示的な抗体構造(図33A)、並びにS1 mAb対照(WT四量体IgG1)及び精製SATナノボディ-Fc融合体(重鎖のみIgG1)のSDS-PAGEゲルによるサイズ低下の確認(図33B)を示す。発現されるNb-Fcヒト融合体はホモ二量体である。
図34図34A~34Bは、精製SATヒトナノボディ-ヒトFc融合体(重鎖のみIgG1)のSDS-PAGEゲルを示す。図34Aは、非還元条件下のゲルランを示す。図34Bは、還元条件下のゲルランを示す。発現されるヒトNb-ヒトFc融合体は、ホモ二量体として観察される。
図35図35は、2つのヒトナノボディ-ヒトFc融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィーを示す。SAT抗原に対する精製ヒトNb-ヒトFc融合タンパク質を、サイズ排除カラムを通して走らせ、タンパク質凝集について評価した。
図36図36A~36Bは、抗原結合親和性についての精製SAT Nb-ヒトFc融合体の特性決定及びRBD Nb-Fc対照(HAb8-S)に対するSARS-CoV2中和力価の特性決定を示す。図36Aは、結合親和性についてのEC50値を示す。図36Bは、中和力価についてのIC50値を示す。
図37図37A~37Bは、2つのSARS-CoV2中和ナノボディ(アスタリスクで示される)を用いて同定された、密接に関連したVH配列の系統発生関係(図37A)及び体細胞超変異分析(図37B)を示す。密接に関連した、低存在量クロノタイプを、高親和性及び高力価のナノボディについての二次スクリーニング用に同定した。図37Bにおける、最上部から最下部までのナノボディクローンの配列は、それぞれ配列番号25~35で示される。
図38図38は、マウス及びヒトSATナノボディ-ヒトFc融合分子の結合動態を示す表である。組換えSATタンパク質に対するマウス及びヒトNb-ヒトFc融合タンパク質の結合を、Octetを使用してバイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry)(BLI)によりアッセイした。これらの結果は、本明細書中で提供される組換えマウスを使用して、高親和性マウスナノボディ及び高親和性ヒトナノボディを得ることができることを示す。
図39図39は、例示的なヒトナノボディ-ヒトFc融合分子の結合動態を示す。組換えSATの存在下での精製ヒトNb-ヒトFc融合タンパク質のBLIにより得られたセンソグラム。
図40図40は、ヒトナノボディ-ヒトFc融合分子の融解ピークを示す。精製ヒトSAT Expi293F細胞中のpFUSE-hIgG1-Fc2発現ベクターを介してNb-ヒトFc融合タンパク質の融解曲線を生成した。これらの結果は、ヒトNb-ヒトFc分子が、公知の天然ナノボディと同様の熱安定性を示し得ることを示す。
図41図41A~41Bは、マウスナノボディ-ヒトFc融合分子及びヒトナノボディ-ヒトFc融合分子の細胞結合アッセイ結果を示す。図41Aは、精製マウス又はヒトNb-ヒトFc融合タンパク質の存在下でインキュベートしたHEK293発現SARS-Cov2スパイクタンパク質(上パネル)又はHEK293(下パネル)の陽性対照及び陰性対照を示す、例示的な結果である。Nb-Fc分子のFC領域に対する蛍光二次抗体を使用して、細胞結合を評価した。図41Bは、マウス及びヒトNb-ヒトFc融合タンパク質についての細胞結合データの集計結果を示す。
図42図42は、図41A~41Bの全てのNb-ヒトFc融合体についての細胞結合結果を示すグラフを含む。上パネル、マウスNb-ヒトFc;下パネル、ヒトNb-ヒトFc。
図43図43A~43Bは、ヒトVLセグメントを含むように設計されたSingularity Sapiens-Lアレルシリーズの例示的構造を示す。図43Aは、IGH、IGK(カッパ)、及びIGL(ラムダ)のヒト遺伝子座の可変セグメントに関連する12RSS(12ntスペーサー)及び23RSS(23ntスペーサー)についてのRAG1/RAG2媒介組換えシグナル配列を示す。(図43B) 全てのヒトDHセグメント及びJHセグメントを含むSingularity Sapiens DJ dockアレルは、染色体22のヒトIGラムダ遺伝子座に由来のヒト可変軽鎖セグメントを含む一連のBACを連続RCMEにより組み込むためのプラットフォームとして使用される。結果として得られるSingularity Sapiens VL含有アレルは、ヒトDHセグメント及びヒトJHセグメントとそれに続くマウス定常領域(例えば、マウスIgG1ΔCH1領域)に隣接するヒト可変軽鎖セグメントを含む抗体を産生することができる。
図44図44A~44Bは、ヒトVKセグメントを発現するSingularity Sapiens-Kアレルシリーズの2つの異なるセットの例示的構造を示す。図44Aは、Singularity HyperDockアレルが、染色体2上のヒトIGカッパ遺伝子座由来のヒトVKセグメント及びJKセグメントを含む一連のhIGKVJ-BACを連続RCMEにより組み込むためのプラットフォームとして使用し得ることを示す模式図である。結果として得られるSingularity Sapiens VK-JK含有アレルは、ヒトカッパJセグメントとそれに続くマウス定常領域(例えば、マウスIgG1ΔCH1領域)に隣接するヒト可変カッパセグメントを含む抗体を産生することができる。図44Bは、全ヒトJHセグメントを含むSingularity Sapiensアレルが、染色体2のヒトIGカッパ遺伝子座由来のヒトVKセグメントを含む一連の組換えhIGKV-BACを連続RCMEにより組み込むためのプラットフォームとして使用し得ることを示す模式図である。結果として得られるSingularity Sapiens VK-JH含有アレルは、ヒトJHセグメントとそれに続くマウス定常領域(例えば、マウスIgG1ΔCH1領域)に隣接するヒト可変カッパセグメントを含む抗体を産生することができる。
図45図45A~45Cは、Singularity Longhornの例示的な組換え設計を示す。図45Aは、プロモーター、5'UTRセグメント、L1エクソン、イントロン、IGHV1-7のL2エクソン、IGHD8-2のコーディングセグメント、IGHJ2-4のコーディング配列、及びIGH2-4スプライスドナーを含むように合成的に構築されたウシDNA配列(Bos Taurus)を含む遺伝子構築物(Longhorn VDJ)の模式図である。図45Bは、異なるloxPエレメント及びハイグロマイシン選択マーカーに隣接するこの合成構築物を示す模式図である。この構築物を、Singularity HyperDockアレルのIgH遺伝子座にRCMEにより組み込み、Singularity Longhornアレルを作出した。図45Cは、Singularity Longhornアレルを有するマウスのPCR確認を示す。
図46図46は、Singularity Minotaurの例示的な組換え設計を示す。ウシDHセグメント(例えば、8個の最長の雌牛IGVD、ボックスの内側に示される)を含むように合成的に構築されたDNA配列を含む遺伝子構築物の(Minotaur DHアレイ)模式図が示される。VDJ組換えが確実に起こるようにするため、12RSSシグナルを含む元のヒトIVDの上流及び下流の配列(それぞれ対応するウシIGVDの下にラベルした)を含めたG。この合成構築物(Minotaur DHアレイ)は、例えば、CRISPR/Cas9標的化により任意の適切な数(又は全て)のヒトVH、全てのヒトDH、及び全てのヒトJHを含むSingularity Sapiensアレル(例えば、SSV5)のIgh遺伝子座に組み込まれて、ヒトIGVD遺伝子座を合成Minotaur DHアレイで置換することができる。
図47図47A~47Bは、Singularity Sapacosの例示的な組換え設計を示す。図47Aは、遺伝子足場としてヒトVHエレメントを使用するように設計されたアルパカ(Vicugna pacos)の5個のVHHを含む遺伝子構築物(Sapacos VHHアレイ)の模式図である。個々のVHHエレメントを、調節エレメント(例えば、TATAボックス、オクタマー、及びヘプタマー)、リーダーエクソン1、イントロン、リーダーエクソン2、及び組換えシグナル配列(例えば、23RSS)を含む上流プロモーター(例えば、250bp上流プロモーター)を含む選択的ヒトVHのフレームワーク上にグラフト化した。図47Bは、隣接する異なるloxエレメント及び選択マーカーを含むこの合成構築物(Sapacos VHHアレイ)が、RMCEを介して全てのヒトVDエレメント及びヒトVJエレメントを含むSingularity SapiensアレルのIgH遺伝子座に組み込まれ得ることを示す模式図である。
図48図48A~48Bは、Singularity Savnarsの例示的な組換え設計を示す。図48Aは、遺伝子足場としてヒトVHエレメントを使用するように設計されたテンジクザメ由来の2つの生殖細胞系列VNARを含む遺伝子構築物(Savnars VNARアレイ)の模式図である。個々のVNARエレメントを、調節エレメント(例えば、TATAボックス、オクタマー、及びヘプタマー)、リーダーエクソン1、イントロン、リーダーエクソン2、及び組換えシグナル配列(例えば、23RSS)を含む上流プロモーター(例えば、250bp上流プロモーター)を含む選択的ヒトVHのフレームワーク上にグラフト化した。図48Bは、隣接する異なるloxエレメント及び選択マーカーを含むこの合成構築物(Savnars VNARアレイ)が、RMCEを介して全てのヒトVDエレメント及びヒトVJエレメントを含むSingularity SapiensアレルのIgH遺伝子座に組み込まれ得ることを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
詳細な説明
本書は、重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体、ヒト化重鎖抗体、又はキメラ重鎖抗体)を産生する遺伝子改変又は組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子改変又は組換えマウス)、及びそれらを作製する方法に関する。例えば、本書は、同じ種の重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体)を産生する特定の種(例えば、マウス種)の遺伝子組換え非ヒト動物を提供する。別の例では、本書は、キメラ重鎖抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ重鎖抗体、ウシ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体、アルパカ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体、又はサメ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体)を産生する遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)を提供する。
【0121】
一部の例では、本明細書中で提供される遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)から得られるか又は同定される重鎖抗体は、マウス単一ドメイン抗体、非マウス単一ドメイン抗体、ヒト化単一ドメイン抗体、ヒト単一ドメイン抗体、又はキメラ単一ドメイン抗体(例えば、ウシ-ヒトキメラ単一ドメイン抗体、アルパカ-ヒトキメラ単一ドメイン抗体、又はサメ-ヒトキメラ単一ドメイン抗体)などの単一ドメイン抗体を生成するために使用することができる。
【0122】
本書は、一般的に、これらの遺伝子改変マウス由来のナノボディ組成物及びナノボディ組成物の他の供給源にも関する。本明細書中に記載される組成物を使用して、疾患又は障害を治療又は予防することができる。
【0123】
本明細書中に記載されるとおり、本書は、in vivoで哺乳動物の単一ドメイン抗体(ナノボディとしても知られる)を産生するための方法を提供する。例えば、改変マウス内因性IgHアレルは、定常領域CHがCH1切断型IgG1遺伝子(IgG1ΔCH1)のみを含み、他のIgクラス又はサブタイプの全てが除去されるように構築することが可能であり、重鎖のみIgG1抗体の産生をもたらす。この改変により、IgG1-ΔCH1遺伝子は、Eμエンハンサー、Iμプロモーター、Iμエクソン、及びSμスイッチ反復領域の直下流に再配置され、γ1E、5'hsR1、3'RR及び3'CBEエンハンサーを含む他の調節エレメントは、内因性IgHアレルにおいてインタクトに保持される。その結果、各Igサブタイプについての天然調節エレメントからの誘導性発現の代わりにIgG1ベースの重鎖抗体(IgG1 HCAb)の構成的な高レベル発現を達成することが可能であり、抗原型に関わらずIgG1 HCAbを産生するために全VHレパートリーが利用可能となる。本明細書中に記載される組換え非ヒト(例えば、マウス)内因性IgHアレルはSingularityと命名することが可能であり、全ての非ヒト(例えば、マウス)内因性可変エクソンを除去し且つヒト又は他の哺乳動物種(又はそれらの組み合わせ)由来の可変エクソンで置換してIgG1 HCAbプラットフォームベースのキメラ抗体を産生することを可能とするドッキング部位を導入することによってさらに改変され得、これを使用して、種特異的単一ドメイン抗体を導出することができる。本明細書において、上記ドッキング部位上に連続的に長いゲノムDNA断片を導入するための極めて効率的な方法が提供される。本明細書中に示されるとおり、これらの方法は、可能な抗体多様性を最大化するために、91個のヒトVHエクソンを含むSingularity Sapiensアレルの成功裏の生成をもたらし得る。一部の例では、VHエクソンの代わりに(又はそれに加えて)IgK及びIgLアレル由来の可変エクソン(VK、VL)を使用して、軽鎖ベースの単一ドメイン抗体を生成することができる。同様に、他の種由来のVHセグメント、多様性DH、及び/又は結合JH(又はそれらの組み合わせ)に対応する遺伝子エレメントを設計して合成し、Singularityアレル
中に配置して固有の特性を有する単一ドメイン抗体を作製するために使用し得る重鎖抗体を産生することができる。
【0124】
本明細書中に記載される組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、正常なB細胞発達を示し、抗原チャレンジを受けると強力な体液性免疫応答を開始することができる。本明細書中に記載されるハイスループット配列駆動アプローチを使用して、免疫抗原に対して高親和性を示すIg(例えば、IgG1)HCAbを産生することができる。抗原免疫化が完了すると、全Igレパートリーをリンパ器官(例えば脾臓)から増幅して次世代シーケンシング(NGS)に供し、系統発生解析用のクロノタイプを得ることができる。候補クロノタイプは、コドン最適化し、合成し、発現ベクター中にクローン化し、96ウェル形式でナノボディ-Fc融合体及び/又はナノボディとして発現させることができる。上清をELISAスクリーニングに使用して、大規模生産、精製、及び/又は特性決定用の抗原特異的重鎖抗体及び/又はナノボディを同定することができる。精製したナノボディ、ナノボディ-Fc融合体、及び/又は重鎖抗体は、高レベルの熱安定性、抗原親和性、細胞結合、及び遮断活性を示し得る。
【0125】
本明細書中に記載されるとおり、非ヒト動物(例えば、マウス)は、重鎖のみ抗体(HCAb)を産生するように設計することができる。一部の例では、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas9)を使用して、CH1切断型IgG(例えば、IgG1-ΔCH1)をコードする定常領域中にIgG遺伝子(例えば、Ighg1遺伝子)のみを含むSingularityアレル(例えば、Singularity Musculusアレル)を生成するための内因性IgHアレルを編集することができる。一部の例では、他の抗体アイソタイプ(IgM、IgD、IgE、及びIgA)、及びIgGサブタイプ(IgG2b、IgG2c、及びIgG3)をコードする全ての内因性遺伝子を除去することができる。一部の例では、内因性IgHアレルからの変異IghG1遺伝子の効率的且つ忠実な転写を可能とするために、1つ以上の内因性調節エレメントを維持することができる。このため、これらのSingularity非ヒト動物(例えば、マウス)においては、IgG1-ΔCH1の発現を損なう可能性のある任意の潜在的な機構を回避し、且つ抗体の発見及び精製を容易にするために、クラススイッチ組換えを無効にすることができる。結果として得られるSingularity非ヒト動物(例えば、Singularity Musculusマウス)は、明らかな異常を有することなく生存可能であり且つ繁殖力を有し得、抗原チャレンジを受けるとロバストな体液性免疫応答を開始し、高親和性を有するIgG1-ΔCH1重鎖抗体を産生することができる。重鎖-軽鎖対合の知識は必要とされないため、本明細書中に記載されるはるかに速く且つ費用対効果の高い脾細胞のバルクRNAシーケンシング(RNA-seq)分析由来のNGS駆動抗体発見パイプラインを使用して、抗原特異的モノクローナル重鎖抗体を同定することが可能であり、ここで全工程(例えば、抗原免疫化、B細胞単離、抗体レパートリーのバルクシーケンシング、抗体配列クロノタイピング、ハイスループットクローニング、発現、及び抗原結合アッセイ)は3ヶ月以内に達成することができる。
【0126】
また同様に本明細書中に記載されるとおり、組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、治療ナノボディを同定するために使用し得るヒト及び/又はキメラ重鎖抗体を産生するように設計することができる。例えば、Singularityアレル(例えば、Singularity Musculusアレル)は、全てのマウスVDJ(H)遺伝子を欠如し、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を用いるDNA断片の連続導入のためのドッキング部位を有するSingularity HyperDockアレルを生成するようにさらに編集することができる。一部の例では、ヒトVDJ(H)フラグメントを含むクローン(例えば、BACクローン)は、代替選択カセットと異種特異的lox部位とを組み込み重複するゲノム断片は切り取られるように細菌相同組換えによって組換えることができる。一部の例では、組換えBACを連続RMCEに使用して、マウスIgH Eμエンハンサーの上流にヒトVDJ遺伝子を段階的に構築することができる。これは、全ヒトVDJゲノム領域の完全な再構築が得られるまでVH多様性が増加した一連のSingularity Sapiensアレル(例えば、SSV1~SSV5)の生成をもたらし得る。
【0127】
同様に、一連のSingularity非ヒト動物(例えば、Singularityマウス)は、様々な診断用途及び治療用途のための固有の特性の種特異的ナノボディの産生を可能とするように生成することができる。
【0128】
定義
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原に特異的に結合するか又はそれと免疫学的に反応し、少なくとも重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインを含み、また一部の例では、少なくとも免疫グロブリンの重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインを含み得る分子を指す。抗体及びそれらの抗原結合フラグメント、変異体、又は誘導体としては、例えば、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化(primatized)抗体、又はキメラ抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二特異性抗体、三特異性抗体及び四特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ)、単一ドメイン抗体(sdAb)、エピトープ結合フラグメント、例えば、Fab、Fab'及びF(ab')2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、組換えIgG(rlgG)、単鎖抗体(例えば、重鎖抗体又は軽鎖抗体)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLドメイン又はVHドメインのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリにより産生されるフラグメント、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体などが挙げられる。本明細書中に記載される抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、又はサブクラスの抗体分子であり得る。さらに、別段に示されない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、標的タンパク質に特異的に結合することができるインタクトな分子並びに抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント及びF(ab')2フラグメントなど)の両方を包含することが意図される。Fabフラグメント及びF(ab')2フラグメントは、インタクトな抗体のFcフラグメントを欠如している。「抑制抗体」という用語は、標的抗原に結合してその機能を阻害又は低減する及び/又は抗原により媒介される1つ以上のシグナル伝達経路を減弱することができる抗体を指す。例えば、抑制抗体は、受容体のリガンド結合ドメインに結合して遮断することができるか、又は膜貫通タンパク質の細胞外領域に結合することができる。細胞に侵入する抑制抗体分子は、酵素抗原又はシグナル伝達分子抗原の機能を遮断することができる。抑制抗体は、少なくとも10%(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%以上)、抗原機能を阻害若しくは低減し及び/又は1つ以上の抗原媒介性シグナル伝達経路を減弱する。「アゴニスト抗体」という用語は、標的抗原に結合してその活性又は機能を増加させることが可能な、例えば、抗原により媒介される1つ以上のシグナル伝達経路を増加又は活性化させることができる抗体を指す。例えば、アゴニスト抗体は、膜貫通タンパク質の細胞外領域に結合して刺激することができる。細胞に侵入するアゴニスト抗体分子は、酵素抗原又はシグナル伝達分子抗原の機能を高めることができる。アゴニスト抗体は、抗原機能及び/又は1つ以上の抗原媒介性シグナル伝達経路を、少なくとも10%(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%又はそれ以上)活性化又は増加させる。
【0129】
本明細書中で使用される場合、「抗原」という用語は、MHC分子により提示された場合、抗体又はT細胞受容体(TCR)により結合され得る分子を指す。本明細書中で使用される「抗原」という用語は、T細胞エピトープも包含する。T細胞エピトープは、赤血球を除く身体の全ての細胞上に存在するMHCクラスI、又は免疫細胞及び特に抗原提示細胞上に存在するクラスIIに関連して、T細胞受容体により認識される。この認識事象が、T細胞の活性化、及びその後のエフェクター機構、例えばT細胞の増殖、サイトカイン分泌、パーフォリン分泌等をもたらす。抗原はさらに、免疫系により認識されることが可能であり、並びに/又は、Bリンパ球及び/若しくはTリンパ球の活性化につながる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしこれは、少なくとも特定の場合、抗原が、TH細胞エピトープを含むか又はTH細胞エピトープに結合しており且つアジュバント中で与えられることを必要とする。抗原は、1つ以上のエピトープ(Bエピトープ及びTエピトープ)を有し得る。上記で言及される特異的反応は、抗原が、典型的には極めて選択的にその対応する抗体又はTCRと好ましく反応し、他の抗原により誘発され得る多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意味する。本明細書中で使用される抗原は、いくつかの個々の抗原の混合物であってもよい。本明細書中で使用される場合、抗原としては、例えば、限定するものではないが、アレルゲン、自己抗原、ハプテン、がん抗原(すなわち、腫瘍抗原)、及び感染性疾患抗原、並びに小有機分子、例えば乱用薬物(ニコチンなど)と、それらのフラグメント及び誘導体などが挙げられる。さらに、本開示のために使用される抗原は、ペプチド、タンパク質、ドメイン、糖、アルカロイド、脂質又は小分子、例えば、ステロイドホルモン並びにそれらのフラグメント及び誘導体、自己抗体及びそれ自体のサイトカインなどであり得る。
【0130】
「抗原」は、宿主の免疫系を刺激して、体液性及び/又は細胞性抗原特異的応答を生じさせる1つ以上のエピトープ(線状、高次構造のいずれか、又はその両方)を含む分子(例えば、ペプチド、タンパク質、又は非ペプチド)も指す。この用語は、「免疫原」という用語と互換的に使用される。通常、B細胞エピトープは少なくとも約5アミノ酸を含むが、3~4アミノ酸もの小ささでもあり得る。CTLエピトープなどのT細胞エピトープは少なくとも約7~9アミノ酸を含み、ヘルパーT細胞エピトープは少なくとも約12~20アミノ酸を含む。通常、エピトープは、約7~15アミノ酸、例えば、9、10、12、又は15アミノ酸を含む。この用語は、タンパク質が本明細書中で定義される免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、天然配列と比較して、欠失、付加、及び置換などの修飾(一般的には天然に保存的な修飾)を含むポリペプチドを包含する。これらの修飾は、部位特異的変異誘発によるような意図的な修飾であってもよく、又は抗原を産生する宿主の変異によるような偶発的な修飾であってもよい。
【0131】
本明細書中で使用される「抗原結合フラグメント」という用語は、標的抗原に特異的に結合する能力を保持する免疫グロブリンの1つ以上のフラグメントを指す。免疫グロブリンの抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより発揮され得る。抗体フラグメントは、Fab、F(ab')2、scFv、SMIP、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体であり得る。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、例えば、限定するものではないが、(i) Fabフラグメント(VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii) F(ab')2フラグメント、(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント);(iii) VHドメインとCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv) 抗体の単一アームのVLドメインとVHドメインからなるFvフラグメント;(v) VHドメインとVLドメインとを含むdAb(Ward et al., Nature, 341:544-546 (1989));(vi) VHドメインからなるdAbフラグメント;(vii) VHドメイン又はVLドメインからなるdAb;(viii) 単離された相補性決定領域(CDR)、及び(ix) 任意選択的に合成リンカーで結合されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組み合わせなどが挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLとVHとは別々の遺伝子によりコードされているが、これらは、組換え法を用いて、これらがVL領域とVH領域のペアが一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる)として作製されることを可能とするリンカーにより結合され得る。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得ることが可能であり、上記フラグメントは、インタクトな抗体と同様に有用性についてスクリーニングすることができる。抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術、インタクトな免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断、又は、特定の場合、当技術分野で公知の化学的ペプチド合成手順により産生され得る。
【0132】
本明細書中で使用される「抗原性製剤」又は「抗原性組成物」という用語は、対象、例えば哺乳動物に投与される場合、免疫応答を誘導する調製物を指す。
【0133】
本明細書中で使用される「生物学的サンプル」という用語は、対象から単離された試料(例えば、血液、血液成分(例えば、血清又は血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば生検)、膵液、絨毛膜絨毛サンプル、及び細胞)を指す。
【0134】
本明細書中で使用される「組み合わせ療法」又は「組み合わせて投与される」とは、2つ(又はそれ以上の)異なる薬剤又は治療が、特定の疾患又は状態のための規定の治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンは、別々の薬剤が対象に与える効果が重なるように各薬剤の用量及び投与の周期性を規定する。一部の実施形態において、2つ以上の薬剤の送達は同時であるか又は並行しており、これらの薬剤は共製剤化することもできる。他の実施形態において、2つ以上の薬剤は共製剤化されず、規定のレジメンの一部として連続様式で投与される。一部の実施形態において、2つ以上の薬剤又は治療の組み合わせの投与は、症状、又は障害に関連する他のパラメーターの低下が、単独で又は他方の不存在下で送達される1つの薬剤又は治療により観察されるであろう低下を上回るような投与である。2つの治療の影響は、部分的に相加的であるか、完全に相加的であるか、又は相加的を上回る(例えば、相乗的である)可能性がある。各治療剤の連続的な又は実質的に同時の投与は、任意の適切な経路、例えば、限定するものではないが、経口経路、静注経路、筋肉内経路及び粘膜組織を介した直接吸収などにより影響を受ける可能性がある。治療剤は、同じ経路で投与することも可能であり、又は異なる経路で投与することもできる。例えば、組み合わせの第1の治療剤を静脈注射で投与し、一方で組み合わせの第2の治療剤は経口投与してもよい。
【0135】
本明細書中で使用される、本明細書中に記載される組成物の「有効量」、「治療上有効量」及び「十分量」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象に投与する場合、例えば、細胞レベル、組織レベルでの効果又は臨床的結果などの有利な又は所望の結果をもたらすのに十分な量を指し、したがって「有効量」又はその同義語は、それが適用される文脈によって決まる。例えば、がんの治療の文脈において、「有効量」は、組成物、抗体、ベクター構築物、ウイルスベクター、又は細胞の投与なしで得られる応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物の量である。このような量に相当する、本明細書中に記載される所与の組成物の量は、様々な因子、例えば所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患又は障害のタイプ、対象のアイデンティティ(例えば、年齢、性別、体重)又は治療される宿主などによって変動するが、それにも関わらず当業者により日常的に決定され得る。同様に、本明細書中で使用される、本明細書中に記載される組成物の「治療上有効量」は、対照と比較して、対象に有利な又は所望の結果をもたらす量である。本明細書中で定義される、本明細書中に記載される組成物の治療上有効量は、当業者が当技術分野で公知の日常的な方法で容易に決定することができる。投与レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。
【0136】
本明細書中で使用される「重鎖抗体(heavy chain antibody)」、「重鎖抗体(heavy-chain antibody)」、「重鎖のみ抗体」、及び「HCAb」という用語は互換的に使用することが可能であり、従来の抗体において典型的に見られる、軽鎖を欠如している抗体を指す。重鎖抗体は、免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座に由来する任意の抗体、例えば1つ以上の重鎖定常ドメインを含む抗体であり得る。例えば、重鎖抗体は、1つの軽鎖可変ドメインVLと1つ以上の重鎖定常ドメインを含む抗体であり得る。
【0137】
本明細書中で使用される「ハイブリッド」又は「キメラ」という用語は、少なくとも2つの異なるタンパク質に由来するそれらの一部を含む分子(例えば、タンパク質又はVLP)を指す。例えば、ハイブリッドインフルエンザHAタンパク質は、インフルエンザHAタンパク質(例えば、1つ以上の抗原決定基を含む部分)の少なくとも一部と、異種タンパク質(例えば、異なるインフルエンザタンパク質又は異なるウイルスタンパク質の細胞質及び/又は膜貫通ドメイン、例えば、RSV又はVSVタンパク質)の部分とを含むタンパク質を指す。本明細書中に記載されるハイブリッド分子が、さらなる異種ポリペプチド(それらの完全長又は一部)に融合した完全長タンパク質、並びにさらなる異種ポリペプチドに融合したタンパク質の一部(それらの完全長又は一部)を含み得ることが明らかであろう。ハイブリッドが、異種ドメインのいずれか1つ、幾つか又は全ての野生型配列又は変異配列を含み得ることも明らかであろう。
【0138】
本明細書中で使用される「増加する」及び「減少する」という用語は、それぞれ、参照と比較した測定基準(metric)の機能、発現、又は活性のより多くの量又はより少ない量をもたらす調節(modulating)を指す。例えば、本明細書中に記載される抗体の投与の後、本明細書中に記載される測定基準のマーカー(例えば、がん細胞死又は標的部位のDNAメチル化)の量は、対象において、投与前のマーカーの量と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%以上増加してもよく、又は減少してもよい。一般的に、測定基準は、投与後に投与が記載の効果を有したときに、例えば、治療レジメンが開始した後、少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月で測定される。
【0139】
抗原又は組成物に対する「免疫学的応答」は、対象における目的の組成物中に存在する抗原に対する体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答の発生である。本書の目的のため、「体液性免疫応答」は、抗体分子により媒介される免疫応答を指し、一方で、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球及び/又は他の白血球により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な態様は、細胞溶解性T細胞(CTL)による抗原特異的応答を包含する。CTLは、主要組織適合複合体(MHC)によりコードされ且つ細胞の表面上に発現されるタンパク質と共に提示されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊を誘導して促進することを補助するか、又はこのような微生物に感染した細胞の溶解を補助する。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を包含する。ヘルパーT細胞は、表面上にMHC分子と共にペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性に集中するのを補助するように作用する。「細胞性免疫応答」は、活性化T細胞及び/又は他の白血球により産生されるサイトカイン、ケモカイン及び他のこのような分子、例えば、CD4+T細胞及びCD8+T細胞由来のものなどの産生も指す。したがって、免疫学的応答としては、以下の効果の1つ以上を挙げることができる:B細胞による抗体の産生;並びに/又は抗原若しくは目的の組成物又はワクチン中に存在する抗原に特異的に向けられるサプレッサーT細胞及び/若しくはγδT細胞の活性化。これらの応答は、感染性を中和し及び/又は抗体補完性又は抗体依存性の細胞毒性(ADCC)を媒介して、免疫される宿主に対する保護を提供する役割を果たし得る。このような応答は、当技術分野で周知の標準的なイムノアッセイ及び中和アッセイを用いて決定することができる。
【0140】
「免疫原性組成物」は抗原性分子を含む組成物であり、ここで対象への組成物の投与は、対象における目的の抗原性分子に対する体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答の発生をもたらす。
【0141】
本明細書中で使用される「多価」という用語は、複数のタイプ又は株の感染性薬剤、例えば抗原、抗体又はウイルス様粒子(VLP)に対する複数の抗原性タンパク質を有する化合物を指す。
【0142】
本明細書中で使用される「粒子形成ポリペプチド」は、特定のウイルスタンパク質、例えば、完全長又はほぼ完全長のウイルスタンパク質、並びにそのフラグメント、又はVLP形成に有利な条件下でVLPを形成する能力を有する内部欠損を有するウイルスタンパク質などから誘導することができる。したがって、ポリペプチドは、参照分子の完全長配列、フラグメント、切断型配列及び部分配列、並びに類似体形態及び前駆体形態を含み得る。したがって、この用語は、ポリペプチドがVLPを形成する能力を保持する限り、その配列に対する欠失、付加、及び置換を包含する。このため、この用語は、ウイルス分離体間で多くの場合コートタンパク質における変異が生じるため、特定されるポリペプチドの自然変異を包含する。この用語は、タンパク質がVLPを形成する能力を保持する限り、参照タンパク質において天然には起こらない欠失、付加、及び置換も包含する。好ましい置換は、天然に保存的な置換、すなわち、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。具体的には、アミノ酸は、一般的に4つのファミリーに分けられる:(1) 酸性 - アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2) 塩基性 - リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3) 非極性 - アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4) 非荷電極性 - グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸として分類される場合がある。
【0143】
本明細書中で使用される「軽鎖可変領域」及び「重鎖可変領域」という用語は、抗体の軽鎖及び重鎖それぞれに由来する可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)、及び「フレームワーク領域」(FR)として知られる別個の明確に規定されるサブ領域で構成され、一般的にはアミノ末端からカルボキシル末端までFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順番で含む。一実施形態において、FRはヒト化されている。「CL」という用語は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」又は「軽鎖定常領域」、すなわち、抗体軽鎖由来の定常領域を指す。「CH」という用語は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」又は「重鎖定常領域」を指し、これは、抗体アイソタイプに応じて、CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3(IgA、IgD、及びIgGについて)、又はCH1、CH2、CH3、及びCH4ドメイン(IgE及びIgMについて)にさらに分けることができる。
【0144】
本明細書中で使用される「医薬組成物」又は「医薬調製物」は、疾患の軽減、治療若しくは予防、及び/又はその最終的な剤形若しくは製剤において薬理活性又は他の直接的な効果を有し、ヒト用途に適応される組成物又は調製物である。
【0145】
本明細書中で使用される「参照(reference)」という用語は、比較目的のために使用されるレベル、発現レベル、コピー数、サンプル又は標準を指す。例えば、参照サンプルは、健常な個体(例えば、がんを有していない個体)から得ることができる。参照レベルは、1つ以上の参照サンプルの発現のレベルであり得る。例えば、複数の個体(例えば、健常な個体又はがんを有していない個体)間の平均発現(例えば、平均値発現又は中央値発現)は、参照レベルであり得る。他の例では、例えば、参照レベルは、例えばそうでない場合は経験的アッセイにより決定される、機能的発現に基づく所定の閾値レベルであり得る。
【0146】
本明細書中で使用される「対象」及び「患者」という用語は、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)を指す。本明細書中に記載される方法にしたがって治療される対象は、特定の状態と診断された対象、又はこのような状態を発症するリスクを有する対象であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の方法又は技術により実施することができる。当業者であれば、本開示にしたがって治療される対象が、標準的な試験を受けた可能性があるか、又は試験を受けることなく、疾患又は状態に関連する1つ以上のリスク因子の存在により、リスクを有する対象であると同定された可能性があることを理解するであろう。
【0147】
本明細書中で使用される「治療」及び「治療する」とは、疾患、病態、又は障害を改善する、寛解させる、安定化させる(すなわち、悪化させない)、予防するか又は治癒させる意図による対象の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療(疾患、病態、又は障害の改善に向けられた治療)、原因治療(関連の疾患、病態、又は障害の原因に向けられた治療)、緩和療法(症状の軽減のために設計された治療)、予防的治療(関連の疾患、病態、又は障害の発症を最小化するか又は部分的に若しくは完全に阻害することに向けられた治療)、及び支持療法(別の療法を補うために利用される治療)を包含する。治療はまた、検出可能であるか又は検出不可能であるかに関わらず、疾患又は状態の程度の減少;疾患又は状態の伝播の予防;疾患又は状態の進行の遅延又は緩徐化;疾患又は状態の寛解又は緩和;及び緩解(部分的であるか又は全体であるかに関わらず)も包含する。疾患又は状態を「寛解させる」又は「緩和する」とは、治療の不存在下での程度又は時間的経過と比較して、疾患、障害、又は状態の程度及び/又は望ましくない臨床症状が減少する、及び/又は進行の時間的経過が遅くなるか又は延長されることを意味する。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間の延長も意味し得る。治療を必要とする者は、状態又は障害を既に有する者、並びに状態又は障害を有する傾向がある者、又は状態又は障害を予防すべき者を含む。
【0148】
本書におけるいくつかのパラメーターについて記載する全ての数値境界、例えば「約」、「少なくとも」、「・・・未満」及び「・・・超」について、記載は、記載の値により境界される任意の範囲も必然的に包含することが理解されるべきである。したがって、例えば、「少なくとも1、2、3、4、又は5」との記載は、とりわけ、範囲1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5、及び4~5などについても記載する。
【0149】
本明細書中で使用される「a」及び「an」という用語は、別段に示されない限り、列挙される成分の「1つ以上」を指すことも理解されるべきである。選択肢(例えば「又は」)の使用は、選択肢のいずれか1つ、両方、又はそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0150】
Singularity非ヒト動物(例えば、Singularityマウス)
本書は、抗体(例えば、マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体などの重鎖抗体)を産生するための遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、マウスなどの非ヒト哺乳動物)を提供する。例えば、重鎖抗体を産生するための遺伝子組換え非ヒト動物は、ヒト化IgG重鎖を有する(例えば、ヒト化IgG重鎖を有するように組換えられた)非ヒト動物であり得る。一部の例では、重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体などの重鎖抗体)を産生するための非ヒト動物は、そのゲノムが、IgG1 C領域遺伝子(例えば、Cγ1)のCH1ドメインをコードする内因性核酸配列中に1つ以上の破壊を有する(例えば、1つ以上の破壊を有するように遺伝子組換えされている)非ヒト動物であり得る。一部の例では、非ヒト動物(例えば、マウス)は、CH1ドメインを欠如し且つ軽鎖を欠如した重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体などの重鎖抗体)を産生するように設計することができる。同様に、本明細書中に記載される非ヒト動物を作製し且つ使用するための方法及び材料が本明細書中で提供される。
【0151】
一部の例では、1つ以上の遺伝子生殖細胞系列改変を実施して、本明細書中に記載される非ヒト動物を作出することができる。遺伝子改変により、非ヒト動物(例えば、マウス)にIgG重鎖抗体を発現させ、その血清中にIgG重鎖抗体を分泌させることができる。一部の例では、IgG重鎖抗体は、ヒト化することができる。例えば、IgG重鎖抗体の可変領域はヒト可変領域であり得、IgG重鎖抗体の定常領域はマウス定常領域であり得る。一部の例では、本明細書中に記載される非ヒト動物(例えば、マウス)は、IgG1重鎖抗体、IgG2重鎖抗体、IgG3重鎖抗体、又はIgG4重鎖抗体を産生するように設計することができる。一部の例では、本明細書中に記載される非ヒト動物(例えば、マウス)は、(a) IgG1重鎖抗体、(b) IgG2重鎖抗体、(c) IgG3重鎖抗体及び(d) IgG4重鎖抗体の2つ以上の任意の組み合わせを産生するように設計することができる。
【0152】
一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物は、IgG C領域のCH1ドメイン(例えば、IgG1 C領域のCH1ドメイン、IgG2a C領域のCH1ドメイン、IgG2b C領域のCH1ドメイン、及び/又は、IgG3 C領域のCH1ドメイン)をコードする核酸の欠失を有するように設計することができる。CH1ドメインは、複数のエクソンを含み得る。一部の例では、IgG C領域のCH1ドメインのエクソン1は、組換え非ヒト動物(例えば、マウス)が、IgGΔCH1重鎖抗体を産生するように欠失され得る。
【0153】
組換え非ヒト動物がIgGΔCH1重鎖抗体を産生するように、CH1ドメイン(例えば、IgG1 C領域のCH1ドメイン、IgG2a C領域のCH1ドメイン、IgG2b C領域のCH1ドメイン、及び/又はIgG3 C領域のCH1ドメイン)をコードする核酸の全て又は一部を欠失させる1つ以上の遺伝子改変を作製する場合、ヒンジドメイン、重鎖CH2ドメイン、及び重鎖CH3ドメインをコードする内因性核酸はインタクトなままであり得る。例えば、IgG1ΔCH1重鎖抗体を産生するマウスを作製するため、そのマウスのゲノムは、IgG1のヒンジドメイン、重鎖CH2ドメイン、及び重鎖CH3ドメインを発現するために必要とされる内因性マウス核酸を保持したままIgG1のCH1ドメインのエクソン1(及び/又は付加部分)を欠如することが可能であり、これによりIgG1ΔCH1重鎖抗体を産生することができるマウスを生じさせる。
【0154】
本明細書中で提供される非ヒト動物を作出するために非ヒト動物(例えば、マウス)のゲノムから欠失させることができるさらなる内因性核酸成分としては、限定するものではないが、IgM定常ドメイン(例えば、μ定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及び/又はエクソン、IgD定常ドメイン(例えば、δ定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及び/又はエクソン、IgE定常ドメイン(例えば、ε定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及び/又はエクソン、及び/又はIgA定常ドメイン(例えば、α定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及び/又はエクソンなどが挙げられる。例えば、本明細書中で提供される非ヒト動物は、IgM定常ドメイン(例えば、μ定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及びエクソン、IgD定常ドメイン(例えば、δ定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及びエクソン、IgE定常ドメイン(例えば、ε定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及びエクソン、並びにIgA定常ドメイン(例えば、α定常ドメイン遺伝子座)のイントロン及びエクソンを欠如するように設計することができる。
【0155】
一部の例では、IgG1ΔCH1重鎖抗体のみを産生する非ヒト動物(例えば、マウス)を設計する場合、その非ヒト動物のゲノムは、(μ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、δ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、ε定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、並びにα定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソンの欠如に加えて)、Igγ3定常ドメイン(例えば、γ3定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2a定常ドメイン(例えば、γ2a定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2b定常ドメイン(例えば、γ2b定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、並びにIgγ2c定常ドメイン(例えば、γ2c定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソンを欠如するように設計することができる。IgG1ΔCH1重鎖抗体のみを産生するマウスを作出するための遺伝子組換えアプローチの例は、図3A~3Eに示される。
【0156】
一部の例では、IgG2aΔCH1重鎖抗体のみを産生するための非ヒト動物(例えば、マウス)を設計する場合、非ヒト動物のゲノムは、(μ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、δ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、ε定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、並びにα定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソンの欠如に加えて)、Igγ3定常ドメイン(例えば、γ3定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ1定常ドメイン(例えば、γ1定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2b定常ドメイン(例えば、γ2b定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、並びにIgγ2c定常ドメイン(例えば、γ2c定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソンを欠如するように設計することができる。
【0157】
一部の例では、IgG2bΔCH1重鎖抗体のみを産生するための非ヒト動物(例えば、マウス)を設計する場合、非ヒト動物のゲノムは、(μ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、δ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、ε定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、並びにα定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソンの欠如に加えて)、Igγ3定常ドメイン(例えば、γ3定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2a定常ドメイン(例えば、γ2a定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ1定常ドメイン(例えば、γ1定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、並びにIgγ2c定常ドメイン(例えば、γ2c定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソンを欠如するように設計することができる。
【0158】
一部の例では、IgG2cΔCH1重鎖抗体のみを産生するための非ヒト動物(例えば、マウス)を設計する場合、非ヒト動物のゲノムは、(μ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、δ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、ε定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、並びにα定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソンの欠如に加えて)、Igγ3定常ドメイン(例えば、γ3定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2a定常ドメイン(例えば、γ2a定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2b定常ドメイン(例えば、γ2b定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、並びにIgγ1定常ドメイン(例えば、γ1定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソンを欠如するように設計することができる。
【0159】
一部の例では、IgG3ΔCH1重鎖抗体のみを産生するための非ヒト動物(例えば、マウス)を設計する場合、非ヒト動物のゲノムは、(μ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、δ定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、ε定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソン、並びにα定常ドメイン遺伝子座の内因性イントロン及び/又はエクソンの欠如に加えて)、Igγ1定常ドメイン(例えば、γ1定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2a定常ドメイン(例えば、γ2a定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、Igγ2b定常ドメイン(例えば、γ2b定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソン、並びにIgγ2c定常ドメイン(例えば、γ2c定常ドメイン遺伝子座)の内因性(内因的に存在する場合)イントロン及び/又はエクソンを欠如するように設計することができる。
【0160】
本明細書中に記載されるとおり、非ヒト動物の特定の内因性エンハンサー又は調節エレメントの新たな位置の保持及び/又は創出により、多数の及び多量の多様な重鎖抗体(例えば、マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体などの重鎖抗体)を効率的に産生する、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)を生じさせることができる。例えば、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、μエンハンサー(Eμ)、μスイッチ領域(Sμ)、及び/又はIgM定常ドメインをコードする核酸の上流に内因的に見られるI-エクソン(Iμ)を含むμプロモーターを保持するように設計することができる。一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、保持される内因性Eμ、Sμ、及び/又はIμエレメントが、完全長内因性Ig定常ドメインをコードする上記保持されるEμ、Sμ、及び/又はIμエレメントの下流の第1の核酸配列がCH2ドメインをコードする核酸配列(例えば、完全長IgG1 CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2a CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2b CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2c CH2ドメインをコードする核酸、又は完全長IgG3 CH2ドメインをコードする核酸)であるようなゲノム位置に存在するように設計することができる。このゲノム構造の例は、図1B及び図3Cに示され、ここで内因性マウスEμ、Sμ、及びIμエレメントの核酸は、内因性IgG1 CH2ドメインをコードする核酸の上流にあるように再配置される。
【0161】
別の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、IgA定常ドメインをコードする核酸の下流に内因的に見られる3'RR及び/又は3'CBEエレメントを保持するように設計することができる。一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、保持される内因性3'RR及び/又は3'CBEエレメントが、完全長内因性Ig CH2定常ドメインをコードする上記保持される3’RR及び/又は3’CBEエレメントの上流の第1の核酸配列が、IgG CH2ドメインをコードする核酸配列(例えば、完全長IgG1 CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2a CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2b CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2c CH2ドメインをコードする核酸、又は完全長IgG3 CH2ドメインをコードする核酸)であるようなゲノム位置にあるように設計することができる。このゲノム構造の例は図2B及び図3Eに示され、ここで内因性マウス3'RRエレメントの核酸は、完全長IgG CH2ドメインをコードする他の核酸が内因性IgG1 CH2ドメインをコードする核酸と内因性マウス3'RRエレメントの核酸との間に位置しないように、内因性IgG1 CH2ドメインをコードする核酸の下流にあるように再配置される。
【0162】
一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、例えば、IgG1遺伝子座とIgG2b遺伝子座との間に内因的に見られる3'γ1Eエレメントを保持するように設計することができる。一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、保持される内因性3'γ1Eエレメントが、2つ、1つ又はゼロの完全長内因性Ig CH2ドメインをコードする核酸が保持される内因性3'γ1Eエレメントと保持される内因性3’RRエレメント及び/又は保持される内因性3'CBEエレメントとの間に位置するようなゲノム位置にあるように設計することができる。このゲノム構造の例は図3Eに示され、ここで内因性マウス3'γ1Eエレメントの核酸は、完全長IgG CH2ドメインをコードする他の核酸が、内因性マウス3'γ1Eエレメントと内因性3’RRエレメントの間に位置しないように、保持される内因性3'RRエレメントの上流にあるように再配置される。
【0163】
一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、IgA定常ドメイン遺伝子座中に内因的に見られる5'hsR1エレメントを保持するように設計することができる。一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、保持される内因性5'hsR1エレメントが、完全長内因性Ig CH2定常ドメインをコードする上記保持される5'hsR1エレメントの上流の第1の核酸配列がIgG CH2ドメインをコードする核酸配列(例えば、完全長IgG1 CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2a CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2b CH2ドメインをコードする核酸、完全長IgG2c CH2ドメインをコードする核酸、又は完全長IgG3 CH2ドメインをコードする核酸)であるようなゲノム位置にあるように設計することができる。このゲノム構造の例は図3Eに示され、ここで内因性マウス5'hsR1エレメントの核酸は、完全長IgG CH2ドメインをコードする他の核酸が、内因性IgG1 CH2ドメインをコードする核酸と内因性マウス5'hsR1エレメントの核酸との間に位置しないように、内因性IgG1 CH2ドメインをコードする核酸の下流にあるように再配置される。
【0164】
一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、マウス)は、(a) 可変領域遺伝子座(例えば、マウス可変領域遺伝子座、非マウス可変領域遺伝子座、ヒト可変領域遺伝子座、又はキメラ可変領域遺伝子座、例えば、ウシ-ヒトキメラ可変領域遺伝子座、アルパカ-ヒトキメラ可変領域遺伝子座、又はサメ-ヒトキメラ可変領域遺伝子座)、それに続く(b) 内因性Eμエレメント及び/又は内因性エレメントIμ及び/又は内因性Sμエレメント、それに続く(c) そのIgGの内因性CH1ドメインの不存在下で内因性IgGヒンジ、CH2ドメイン及びCH3ドメインをコードする核酸と、それに続く(e) 内因性3'γ1Eエレメント、内因性3'RRエレメント、及び内因性3'CBEエレメントを有し、一方でIgM、IgD、IgE、及びIgAのそれぞれの少なくとも1つの完全長CH2ドメイン又はCH3ドメインをコードする内因性核酸を欠如するように設計することができる。このゲノム構造の例は、図3Eに示される。図7、8、43B、44、45B、47B、及び48Bも参照のこと。
【0165】
一部の例では、本明細書中に記載される内因性エンハンサー又は調節エレメントを保持する代わりに、1つ以上の外因性エンハンサー又は調節エレメントを、非ヒト動物(例えば、マウス)中に組換えることができる。例えば、一部の例では、マウスは本明細書中に記載されるとおりに設計することが可能であり、ここで内因性マウスEμエレメントは除去され、ヒトEμエレメントで置換される。
【0166】
一部の例では、本明細書中で提供される組換え非ヒト動物は、非ヒト動物の内因性可変領域遺伝子座である可変領域遺伝子座を有するように設計することができる。例えば、本明細書中で提供される組換えマウスは、内因性マウス可変領域遺伝子座を有するように設計することができる。このような組換えマウスのIgH遺伝子座の例は、図1Bに示される。
【0167】
一部の例では、本明細書中で提供される組換え非ヒト動物は、その非ヒト動物に対して内因性ではない可変領域遺伝子座を有するように設計することができる。例えば、本明細書中で提供される組換えマウスは、非マウス可変領域遺伝子座(例えば、ヒト可変領域遺伝子座、アルパカ可変領域遺伝子座、サメ可変領域遺伝子座、ウシ可変領域遺伝子座、ヤギ可変領域遺伝子座、ヒツジ可変領域遺伝子座、イヌ可変領域遺伝子座、ネコ可変領域遺伝子座、ラット可変領域遺伝子座、ニワトリ可変領域遺伝子座、又はウサギ可変領域遺伝子座)を有するように設計することができる。このような組換えマウスのIgH遺伝子座の例は、図6Bに示される。
【0168】
一部の例では、本明細書中で提供される組換え非ヒト動物は、その非ヒト動物に対して内因性ではない可変領域遺伝子座を、それが上記非ヒト動物の可変領域成分とは異なる2つ以上の異なる種由来の可変領域成分を含むように有するように設計することができる。例えば、本明細書中で提供される組換えマウスは、ヒト及びアルパカ、ヒト及びウシ、ヒト及びサメ、サメ及びウシ、アルパカ及びウシ、ヒト及びヤギ、ヒト及びヒツジ、ヒト及びイヌ、ヒト及びネコ、ヒト及びラット、ヒト及びニワトリ、又はヒト及びウサギの可変領域成分を含む非マウス可変領域遺伝子座を有するように設計することができる。このような組換えマウスのIgH遺伝子座の例は、図43、44、47、及び48に示される。
【0169】
一部の例では、本明細書中で提供される組換え非ヒト動物は、重鎖可変領域遺伝子座とは対照的に、軽鎖の可変領域遺伝子座(例えば、カッパ軽鎖遺伝子座可変領域又はラムダ軽鎖遺伝子座可変領域)である可変領域遺伝子座を有するように設計することができる。例えば、本明細書中で提供される組換えマウスは、軽鎖遺伝子座の可変領域遺伝子座(例えば、カッパ又はラムダ軽鎖のヒト可変領域遺伝子座)を有するように設計することができる。このような組換えマウスのIgH遺伝子座の例は、図43B、44A、及び44Bに示される。
【0170】
本書はまた、本明細書中で提供される抗体(例えば、CH1ドメインを欠如した重鎖抗体)を産生する非ヒト動物を作出するために使用し得る組換え非ヒト動物も提供する。例えば、本書は、重鎖遺伝子座の内因性可変領域のエクソンの全セットを欠如し、その本明細書中に記載される既に組換えられた定常領域の上流の位置にクローニング核酸セグメントを含む組換え非ヒト動物を提供する。このような組換えマウスのIgH遺伝子座の例は、図4、5D、及び6Bに示され、これは非ヒトSingularity HyperDock動物又はSingularity HyperDockマウスと呼ぶことができる。任意の適切なクローニング核酸セグメントを使用して、本明細書中で提供される非ヒトSingularity HyperDock動物(例えば、Singularity HyperDockマウス)を作製することができる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のリコンビナーゼ部位認識配列(例えば、表1を参照)を含むように設計されたクローニング核酸セグメントを使用して、本明細書中で提供される非ヒトSingularity HyperDock動物(例えば、Singularity HyperDockマウス)を作製することができる。一部の例では、本明細書中で提供される非ヒトSingularity HyperDock動物(例えば、Singularity HyperDockマウス)は、任意のIg重鎖を産生する能力を欠如している。
【0171】
【表1】
【0172】
任意の適切な方法を使用して、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、本明細書中に記載されるIgG1ΔCH1重鎖抗体などの重鎖抗体を産生するように設計される非ヒト動物、及び非ヒトSingularity HyperDock動物、例えば本明細書中に記載されるSingularity HyperDockマウス)を作製することができる。例えば、遺伝子編集技術(例えば、CRISPR/Cas遺伝子編集、TALEN遺伝子編集、及び/又はジンクフィンガベースの遺伝子編集)、組換え技術(例えば、連続リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE))、及びそれらの組み合わせを使用して、本明細書中で提供される非ヒト動物を作製することができる。一部の例では、実施例に記載されている遺伝子組換え技術を使用して、本明細書中で提供される非ヒト動物を作製することができる。
【0173】
本書はまた、ヒトナノボディ、ヒト化ナノボディ、CH1ドメインを欠如した重鎖抗体(例えば、CH1ドメインを欠如した完全マウス重鎖抗体)、及びキメラ重鎖抗体(例えば、CH1ドメインを有するか又は有さないヒト-マウスキメラ重鎖抗体)も提供する。例えば、本書は、本明細書中に記載される非ヒト動物から産生されるか又はそれに由来する完全ヒトナノボディを提供する。別の例として、本書は、CH1ドメインを欠如している完全マウス重鎖抗体を提供する。別の例として、本書は、キメラ重鎖抗体を提供する。このようなキメラ重鎖抗体は、本明細書中に記載されるCH1ドメインを欠如し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、ヒト、アルパカ、サメ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、ニワトリ、又はウサギである1つ以上の可変領域成分と、異なる種(例えばマウス)の定常領域成分とを含み得る。例えば、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、ヒト可変領域とマウス定常領域とを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、アルパカ可変領域とマウス定常領域とを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、サメ可変領域とマウス定常領域とを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、ウシ可変領域とマウス定常領域とを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、アルパカの少なくとも一部の可変領域とヒト及びマウスの定常領域の少なくとも一部とを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、サメの少なくとも一部の可変領域とヒト及びマウスの定常領域の少なくとも一部とを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供されるキメラ重鎖抗体(例えば、IgGΔCH1重鎖抗体)は、ウシの少なくとも一部の可変領域とヒト及びマウスの定常領域の少なくとも一部とを有し得る。
【0174】
本明細書中で提供されるヒトナノボディ、ヒト化ナノボディ、CH1ドメインを欠如した重鎖抗体(例えば、CH1ドメインを欠如した完全マウス重鎖抗体)、及びキメラ重鎖抗体(例えば、CH1ドメインを有するか又は有さないヒト-マウスキメラ重鎖抗体)は、任意の適切な方法を用いて得ることができる。例えば、本明細書中で提供される重鎖抗体は、本明細書中で提供される非ヒト動物の血漿から得ることができる。一部の例では、本明細書中で提供されるヒトナノボディ、ヒト化ナノボディ、CH1ドメインを欠如した重鎖抗体(例えば、CH1ドメインを欠如した完全マウス重鎖抗体)、及びキメラ重鎖抗体(例えば、CH1ドメインを有するか又は有さないヒト-マウスキメラ重鎖抗体)は、本明細書中で提供される非ヒト動物により産生される重鎖抗体をベースとするか又はこれに由来するナノボディ又は重鎖抗体を発現するように設計された核酸ベクターを用いて得ることができる。例えば、本明細書中で提供される非ヒト動物により産生されるヒト-マウスIgGΔCH1重鎖抗体は、目的の標的抗原(例えば、SARS-CoV-2抗原)に結合する能力を有すると同定することが可能であり、且つ配列決定することができる。その配列を使用して、その同じヒト-マウスIgGΔCH1重鎖抗体、又はヒトナノボディとしてのその同じヒト-マウスIgGΔCH1重鎖抗体のヒト可変領域を発現する能力を有する核酸ベクターを設計することができる。一部の例では、その配列を使用して、それ自体で使用し得るか、又は完全ヒト軽鎖と組み合わせて完全四量体抗体を作出することができる完全ヒト完全長重鎖抗体を発現し得る核酸ベクターを設計することができる。
【0175】
一部の例では、本明細書中で提供される非ヒト動物は、非ヒト動物が抗原に対する抗体を産生するように目的の抗原(例えば、SARS-CoV-2抗原)で免疫することができる。産生される重鎖抗体をコードする核酸(例えば、CH1ドメインを欠如している重鎖抗体)は、単離することができる。例えば、PCR又は5'RACEなどの増幅技術を使用して、非ヒト動物が産生した異なる重鎖抗体の可変領域の少なくとも一部(例えば、1つ以上のCDR、3つ全てのCDR、又は全可変領域)をコードする多量の核酸を得ることができる。単離された核酸配列を(前の配列決定を伴うか又は伴わずに)発現ベクター中にクローン化して、所望の特性(例えば、結合特性、中和特性、及び/又は溶解特性)について評価し得る任意の適切なタイプの抗体(例えば、ナノボディ、重鎖抗体又は完全抗体)に関連して得られた核酸配列を発現させることができる。所望の特性を有する抗体をコードする能力を有する核酸配列を使用して、ナノボディなどの任意のタイプの抗体を作出することができる。
【0176】
ナノボディを含む血漿は、本明細書中に記載される抗原で免疫された可能性がある対象から、又はヒト化免疫系を有する非ヒト動物から採取することができる。ヒト化免疫系を有する非ヒト動物由来のナノボディは、それを必要とするヒト対象の治療において使用することができる。
【0177】
一部の例では、本明細書中に記載されるナノボディを生成するために使用し得るキメラ重鎖抗体を含む血漿は、本明細書中に記載される抗原で免疫された可能性がある対象から、又は本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物)から採取することができる。
【0178】
ナノボディを含む血漿は、例えば、血漿交換を介して採取することができる。一部の例では、本明細書中に記載されるキメラ重鎖抗体を含む血漿は、例えば、血漿交換を介して採取することができる。血漿は、同じ対象から複数回、例えば、免疫化後所与の期間毎に複数回、免疫化後複数回、免疫化の間に複数回、又はそれらの任意の組み合わせで採取することができる。
【0179】
血漿は、本明細書中に記載される非ヒト動物から又はヒト対象から、免疫化、例えば最初の免疫化、最も最近の免疫化、又は中間免疫化の後の、任意の好適な時間量で採取することができる。血漿は、免疫化後少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも22日間、少なくとも23日間、少なくとも24日間、少なくとも25日間、少なくとも26日間、少なくとも27日間、少なくとも28日間、少なくとも29日間、又は少なくとも30日間、又はそれ以降に採取することができる。一部の実施形態において、血漿は、免疫化後最大2日間、最大3日間、最大4日間、最大5日間、最大6日間、最大7日間、最大8日間、最大9日間、最大10日間、最大15日間、最大20日間、最大21日間、最大22日間、最大23日間、最大24日間、最大25日間、最大26日間、最大27日間、最大28日間、最大29日間、最大30日間、最大35日間、最大42日間、最大49日間、又は最大56日間採取される。一部の実施形態において、血漿は、免疫化後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、17、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、又は42日間以上採取される。一部の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、本明細書中に記載される免疫原性組成物/抗原の投与後に採取される血漿を含み得る。
【0180】
血漿は、凍結することができる(例えば、凍結保存又は凍結輸送することができる)。一部の実施形態において、血漿は新鮮に維持され、又は抗体(例えば、重鎖抗体又はナノボディ)は、新鮮な血漿から精製される。
【0181】
ナノボディは、当業者に公知の技術を用いて、例えば、親和性精製により血漿から精製される。一部の例では、本明細書中に記載されるキメラ重鎖抗体は、親和性精製による技術などの任意の適切な技術を用いて血漿から精製することができる。
【0182】
一部の例では、本明細書中で提供されるタンパク質(例えば、ヒトナノボディ、ヒト化ナノボディ、CH1を欠如している完全マウス重鎖抗体、又はCH1を有するか又は有していないキメラ重鎖抗体)を産生するための方法は、哺乳動物細胞における発現を含み得るが、組換えタンパク質は、適切なプロモーターの制御下で、昆虫細胞、酵母、細菌、又は他の細胞を用いて産生することもできる。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、重鎖抗体又はナノボディ)は、原核生物宿主、例えば、大腸菌(E. coli)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ラクトバチルス・ゼアエ/カゼイ(Lactobacillus zeae/casei)、又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)において組換え産生することができる。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、重鎖抗体又はナノボディ)は、真核生物宿主、例えば、酵母(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセニュラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュワニオマイセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、又はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、トリコデルマ(Trichoderma)属(例えば、トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei))及びアスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、アスペルギルス・ニガー(A. niger)及びアスペルギルス・オリザエ(A. oryzae))の糸状菌、リーシュマニア・タレントラ(Leishmania tarentolae)などの原虫類、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Per.C6細胞、マウス骨髄腫NS0細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、又はヒト胚性腎細胞株HEK293などの哺乳動物細胞株)において組換え産生することができる。例えば、Frenzel et al.の参考文献(Front Immunol., 4:217 (2013))を参照されたい。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、好適なプロモーター及びエンハンサーなどの非転写エレメント、並びに他の5'又は3'隣接非転写配列、及び5'又は3'非翻訳配列、例えば、必須のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、並びに終結配列を含み得る。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えば、SV40起点、早期プロモーター部位、エンハンサー部位、スプライス部位、及びポリアデニル化部位を使用して、異種DNA配列の発現に必要とされる他の遺伝子エレメントを提供し得る。細菌、真菌、酵母、及び哺乳動物細胞宿主と共に使用するための適切なクローニング及び発現ベクターは、Green & Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第4版), Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)に記載されており、本明細書中で提供される抗体(例えば、ヒトナノボディ、ヒト化ナノボディ、CH1を欠如している完全マウス重鎖抗体、又はCH1を有するか又は有していないキメラ重鎖抗体)を産生するために使用することができる。
【0183】
様々な哺乳動物細胞培養系を利用して、本明細書中で提供される組換えタンパク質又は抗体(例えば、ヒトナノボディ、ヒト化ナノボディ、CH1を欠如している完全マウス重鎖抗体、又はCH1を有するか又は有していないキメラ重鎖抗体)を発現させ、製造することができる。使用し得る哺乳動物の発現系の例としては、例えば、限定するものではないが、CHO細胞、COS細胞、HeLA、及びBHK細胞株などが挙げられる。使用し得るタンパク質治療薬の製造のための宿主細胞培養の方法は、例えば、Zhou and Kantardjieff(編), Mammalian Cell Cultures for Biologics Manufacturing (Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology), Springer (2014)に記載されている。タンパク質治療薬の精製はFranks, Protein Biotechnology: Isolation, Characterization, and Stabilization, Humana Press (2013);及びCutler, Protin Purification Protocols (Methods in Molecular Biology), Humana Press (2010)に記載されている。タンパク質治療薬の製剤は、Meyer(編), Therapeutic Protein Drug Products: Practical Approaches to formulation in the Laboratory, Manufacturing, and the Clinic, Woodhead Publishing Series (2012)に記載されている。本明細書中に記載される組成物は、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターなどのベクター、組換えタンパク質をコードするアデノウイルス又はアデノ関連ウイルスを含み得る。一部の実施形態において、ベクター、例えばウイルスベクターは、組換えタンパク質をコードする核酸を含み得る。一部の例では、本明細書中に記載される方法は、いくつかの品質管理及び十分なインフラストラクチャー並びにクロスコンタミネーションを回避するための活動の分離を含む、適正製造基準(Good Manufacturing Practices)(GMP)について規定される標準を満たすように設計することができる。最終的に、組成物はラベルされ、世界中に流通させることができる。
【0184】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される治療用ナノボディ調製物は、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物を、本明細書中に記載される抗原で免疫することにより産生され得る。一部の例では、本明細書中に記載される治療用ナノボディ調製物は、本明細書中に記載される組換え非ヒト動物を本明細書中に記載される目的の抗原で免疫することにより産生することができる。
【0185】
ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、有蹄動物、例えば、ロバ、ヤギ、ウマ、雌牛、又はブタ;齧歯類、例えば、ウサギ、ラット又はマウスであり得る。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、雌牛(ウシ)である。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、ニワトリである。非ヒト動物はヒト化免疫系を有し、例えば、その免疫系は、ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座、又は複数のヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座を含む。一部の実施形態において、ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、ヒト免疫グロブリンの生殖細胞系列配列を含み、非ヒト動物がヒト化抗体(例えば、完全ヒト抗体)を産生することを可能とする。一部の実施形態において、本開示のヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座を有する非ヒトB細胞を含む。ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、B細胞発達中にVDJ組換えを受け、これにより多様な抗原結合特異性を有するB細胞の生成を可能とする。本明細書中に記載される1つ以上の免疫原性組成物により免疫すると、複数のB細胞クローンがそれらの各同種抗原に応答し、複数の結合特異性を有するポリクローナル抗体の生成をもたらす。
【0186】
本明細書中で提供される非ヒト動物は、任意のタイプの非ヒト動物であり得る。例えば、キメラ重鎖抗体を発現するように設計された非ヒト動物は、有蹄動物、例えば、ロバ、ヤギ、ウマ、雌牛、又はブタ;齧歯類、例えば、ウサギ、ラット、又はマウスであり得る。一部の実施形態において、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、キメラ重鎖抗体を発現するように設計される非ヒト動物)は、雌牛(ウシ)であり得る。一部の実施形態において、本明細書中で提供される非ヒト動物(例えば、キメラ重鎖抗体を発現するように設計される非ヒト動物)は、ニワトリであり得る。
【0187】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される1つ以上の免疫原性組成物による本開示の非ヒト動物の免疫化は、非ヒト動物において、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも100個の非ヒトB細胞クローンを活性化する。一部の実施形態において、本明細書中に記載される1つ以上の免疫原性組成物による本開示の非ヒト動物の免疫化は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも100個の本明細書中に記載される免疫原性組成物の抗原に特異的に結合する抗体(例えば、キメラ重鎖抗体)を含むポリクローナル抗血清の産生をもたらす。
【0188】
非ヒト動物(例えば、免疫用の非ヒト動物)のゲノムを改変するための様々な技術を利用して、抗体(例えば、ヒト化抗体、完全マウス重鎖抗体又はキメラ重鎖抗体)を産生し得る動物を生じさせることができる。非ヒト動物は、トランスジェニック動物、例えば、ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座の全て又は実質的に一部を含むトランスジェニック動物であり得る。非ヒト動物は、トランス染色体性動物、例えば、ヒト人工染色体又は酵母人工染色体を含む非ヒト動物であり得る。
【0189】
ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、ベクター、例えば、ヒト人工染色体又は酵母人工染色体(YAC)上に存在し得る。ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座を含むヒト人工染色体(HAC)は、動物に導入することができる。ベクター(例えば、HAC)は、ヒト抗体重鎖遺伝子(ヒト染色体14由来)及びヒト抗体軽鎖遺伝子の生殖細胞系列レパートリー、例えば、カッパ(ヒト染色体2由来)及びラムダ(ヒト染色体22由来)の1つ又はその両方を含み得る。HACを非ヒト動物種の細胞中に移行させて、体細胞核移植によりトランスジェニック動物を産生することができる。またトランスジェニック動物を繁殖させて、ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座を含む非ヒト動物を産生することもできる。
【0190】
一部の実施形態において、ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、非ヒト動物のゲノム中に組み込まれる。例えば、相同組換え又は相同組換え修復を含む技術を利用して、動物のゲノムを、ヒトヌクレオチド配列を導入するように改変することができる。CRISPR/Cas、TALEN、及びZnフィンガーヌクレアーゼなどのツールを使用して、標的組込みすることができる。
【0191】
ヒト化免疫系を有する非ヒト動物を生成する方法(例えば、ヒト化免疫系を有する免疫用の非ヒト動物)が開示されている。例えば、ヒト人工染色体を生成し、目的の付加的なゲノム改変(例えば、内因性非ヒト免疫系遺伝子の欠失)を含む細胞中に移行させ、この細胞を、トランスジェニック非ヒト動物を生成するための核ドナーとして使用することができる。
【0192】
一部の実施形態において、ヒト化免疫系は1つ以上のヒト抗体重鎖を含み、ここで抗体重鎖をコードする各遺伝子は、クラススイッチ調節エレメントに機能的に結合される。「機能的に結合される」とは、第1のDNA分子(例えば、重鎖遺伝子)が、第2のDNA分子(例えば、クラススイッチ調節エレメント)に結合していることを意味し得、ここで第1のDNA分子と第2のDNA分子は、第1のDNA分子が第2のDNA分子の機能に影響を与えるように配置される。この2つのDNA分子は、単一の連続DNA分子の一部であってもよく、一部でなくてもよく、且つ隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。例えば、プロモーターは、そのプロモーターが転写可能なDNA分子の転写又は翻訳に影響を与えることができる場合、転写可能なDNA分子に機能的に結合されている。
【0193】
一部の実施形態において、ヒト化免疫系は、1つ以上のヒト抗体軽鎖を含む。一部の実施形態において、ヒト化免疫系は、1つ以上のヒト抗体代替軽鎖を含む。
【0194】
一部の実施形態において、ヒト化免疫系は、非ヒト動物に由来するアミノ酸配列、例えば、重鎖定常領域又はその一部などの定常領域を含む。一部の実施形態において、ヒト化免疫系は、非ヒト動物由来のIgG(例えば、IgG1)重鎖定常領域(例えば、有蹄動物由来のIgG(例えば、IgG1)重鎖定常領域)を含む。一部の実施形態において、1つ以上のヒト抗体重鎖をコードする遺伝子の少なくとも1つのクラススイッチ調節エレメントは、非ヒト(例えば、有蹄動物由来の)クラススイッチ調節エレメントで置換され、例えば、非ヒト動物中で本開示の抗原及び/又はエピトープに対して抗体が惹起される場合、抗体クラススイッチングを可能とする。
【0195】
ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、非ヒト動物との適合性のために組み込まれる非ヒトエレメントを含み得る。一部の実施形態において、非ヒトエレメントは、非ヒト動物の免疫系の任意の残りのエレメントによる認識を低下させるためにヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座に存在し得る。一部の実施形態において、免疫グロブリン遺伝子は、非ヒト動物由来のアミノ酸配列で部分的に置換することができる。一部の実施形態において、非ヒト調節エレメントは、非ヒト動物中での遺伝子座の発現及び調節を容易にするためにヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座に存在し得る。
【0196】
ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、ヒトDNA配列を含み得る。ヒト化免疫グロブリン遺伝子遺伝子座は、非ヒト動物における包含される遺伝子(例えば、抗体遺伝子)の発現を容易にするためにコドン最適化され得る。
【0197】
ヒト化免疫系を有する非ヒト動物(例えば、ヒト化免疫系を有する免疫用の非ヒト動物)は、内因性非ヒト免疫系成分を含み得るか、又は欠如し得る。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、非ヒト抗体を欠如し得る(例えば、非ヒト抗体を産生する能力を欠如する)。ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、例えば、1つ以上の非ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子、1つ以上の非ヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子、又はそれらの組み合わせを欠如し得る。
【0198】
ヒト化免疫系を有する非ヒト動物(例えば、ヒト化免疫系を有する免疫用の非ヒト動物)は、例えば、非ヒト免疫細胞を保持し得る。ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、非ヒト自然免疫系成分(例えば、細胞、補体、抗菌ペプチド等)を保持し得る。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、非ヒトT細胞を保持し得る。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、非ヒトB細胞を保持し得る。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、非ヒト抗原提示細胞を保持し得る。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物は、非ヒト抗体を保持し得る。
【0199】
一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物(例えば、ヒト化免疫系を有する免疫用の非ヒト動物)は、米国特許出願公開第2017/0233459号(この文献はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に開示される任意の特徴又は任意の特徴の組み合わせ又は任意の作製方法を含む。一部の実施形態において、ヒト化免疫系を有する非ヒト動物(例えば、ヒト化免疫系を有する免疫用の非ヒト動物)は、Kuroiwa et al., Nat. Biotechnol., 27(2):173-81 (2009);Matsushita et al., PLos ONE, 9(3):e90383 (2014);Hooper et al., Sci. Transl. Med., 6(264):264ra162 (2014);Matsushit et al., PLoS ONE, 10(6): e0130699 (2015);Luke et al., Sci. Transl. Med., 8(326):326ra21 (2016);Dye et al., Sci. Rep., 6:24897 (2016);Gardner et al., J. Virol., 91(14) (2017);Stein et al., Antiviral Res., 146:164-173 (2017);Silver, Clin. Infect. Dis., 66(7):1116-1119 (2018);Beigel et al., Lancet Infect. Dis., 18(4):410-418 (2018);Luke et al., J. Inf. Dis., 218(suppl_5):S636-S648 (2018)(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に開示される任意の特徴又は任意の特徴の組み合わせ又は任意の作製方法を含む。
【0200】
本書はまた、本明細書中に記載されるCDR(例えば、表2、図37、又は配列番号1~24に記載される)を含む抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)も提供する。このような抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はマウス抗体となるように構成することができる。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、本明細書中に記載される(例えば、表2、図37、又は配列番号1~24に記載される)CDRを含み得、且つモノクローナル抗体(例えば、モノクローナルナノボディ又はモノクローナル重鎖抗体)であり得る。
【0201】
一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、3つのCDRを含み得る。第1のCDRは、配列番号1~7、又は1、2、又は3個のアミノ酸修飾(例えば、付加、欠失、又は置換)を有する配列番号1~7からなる群から選択することができる。第2のCDRは、配列番号8~15、又は1、2、又は3個のアミノ酸修飾(例えば、付加、欠失、又は置換)を有する配列番号8~15からなる群から選択することができる。第3のCDRは、配列番号16~24、又は1、2、又は3個のアミノ酸修飾(例えば、付加、欠失、又は置換)を有する配列番号16~24からなる群から選択することができる。
【0202】
【表2】
【0203】
一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR3を有する重鎖可変ドメインであり得るか、又はその重鎖可変ドメインを有し得る。
【0204】
一部の例では、表2に示されるCDR3は最初のC残基を欠如し得、且つ最後のW残基を欠如し得る。
【0205】
本明細書中に示されるとおり、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、アミノ酸修飾(例えば、連結数のアミノ酸修飾)を含み得る。このようなアミノ酸修飾としては、例えば、限定するものではないが、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。一部の例では、アミノ酸修飾は、抗原との結合及び/若しくは接触を改善するため、並びに/又は本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)の機能的活性を改善するために行うことができる。一部の例では、連結配列識別子中のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であり得る。例えば、保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸残基を、類似側鎖を有する別のアミノ酸残基と置換することにより行うことができる。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖 (例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を挙げることができる。
【0206】
一部の例では、連結配列識別子中のアミノ酸置換は、非保存的アミノ酸置換であり得る。非保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸残基を、非類似側鎖を有する別のアミノ酸残基と置換することにより行うことができる。非保存的置換の例としては、例えば、限定するものではないが、(a) 親水性残基(例えば、セリン又はトレオニン)を疎水性残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、又はアラニン)と置換すること;(b) システイン又はプロリンを任意の他の残基と置換すること;(c) 塩基性側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニン、又はヒスチジン)を、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)を有する残基と置換すること;及び(d) かさ高い側鎖(例えば、フェニルアラニン)を有する残基を、グリシン又は小側鎖を有する他の残基と置換することなどが挙げられる。
【0207】
アミノ酸配列変異体(例えば、連結配列識別子に関して1つ以上の修飾を含むアミノ酸配列)を生成する方法としては、抗体又はそのフラグメントをコードする核酸の部位特異的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発(例えば、PCRによる)などを挙げることができる。例えば、Zoller, Curr. Opin. Biotechnol. 3: 348-354 (1992)を参照のこと。本明細書中で提供されるアミノ酸配列変異体を生成するために、天然アミノ酸と非天然アミノ酸(例えば、人工的に誘導体化されたアミノ酸)の両方を使用することができる。
【0208】
本書はまた、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)のいずれかを含み得る医薬組成物又は医薬製剤も提供する。上記医薬組成物又は医薬製剤のいずれかは、さらなる細胞又は細胞成分も含み得る。
【0209】
本明細書中に記載されるとおり、抗原を本明細書中で提供される非ヒト動物に投与し、抗体(例えば、キメラ重鎖抗体などの重鎖抗体)を産生させることができる。一部の実施形態において、抗原は、対象(例えば哺乳動物、例えば、ヒト、雌牛、ウマ、非ヒト霊長類、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ブタ、マウス、ラット)に対して内因性の抗原又は自己抗原である。
【0210】
一部の実施形態において、抗原は脂質である。一部の実施形態において、脂質は、膜脂質及び可溶性脂質である。膜脂質の例としては、限定するものではないが、ジアシルグリセロール(DAG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PtdIns)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PtC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、スフィンゴミエリン、ホスホリルコリン(PC)、及びカルジオリピンなどが挙げられる。可溶性脂質の例としては、限定するものではないが、低密度リポタンパク質(LDL)、マロンジアルデヒド-LDL(MDA-LDL)、酸化LDL(oxLDL)、終末糖化産物-LDL(AGE-LDL)、MDA、及びリソホスファチジルコリン(LPC)などが挙げられる。
【0211】
一部の実施形態において、抗原は免疫細胞に関連する(例えば、抗原は、免疫細胞上の細胞表面タンパク質である)。免疫細胞の例としては、限定するものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)、マクロファージ、T細胞、樹状細胞、好中球、及び単球などが挙げられる。
【0212】
一部の実施形態において、抗原は、免疫細胞と結合するペプチド、タンパク質、脂質、分子、又は他の生物学的化合物である。
【0213】
一部の実施形態において、抗原は、損傷細胞、死細胞、又は死にゆく細胞(dying cell)に関連する。細胞損傷及び/又は死は、任意の基礎病態、例えば、アポトーシス、ネクローシス、虚血等により引き起こされ得る。
【0214】
一部の実施形態において、抗原は別の免疫グロブリン、例えば、IgGなどである。
【0215】
一部の実施形態において、抗原は、表3に列挙される抗原であり得る。
【0216】
【表3】
【0217】
本書はまた、疾患又は障害を治療又は予防するための方法も提供する。一部の実施形態において、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)を、疾患又は障害の治療又は予防のために使用することができる。例えば、疾患又は障害は、炎症性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、又は神経変性疾患であり得る。一部の実施形態において、疾患又は障害は、糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、強皮症、クローン病、潰瘍性大腸炎、混合結合組織疾患、シェーグレン症候群、又は多発性筋炎、皮膚筋炎であり得る。
【0218】
一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)を含む組成物は、疾患又は障害(例えば、自己免疫疾患又は炎症性障害)の予防及び/又は治療において使用されることが意図され得る。したがって、本書は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)とそのための薬学的に許容される担体を含む医薬製剤をさらに提供する。この医薬製剤は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy 2005, Lippincott, Williams & Wilkinsに記載されているとおり、従来技術により調製することができる。
【0219】
薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤などが挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、湿潤剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用し得る1種以上の賦形剤であり得る。
【0220】
同様に、使用の少し前に経口投与用の液体形態の調製物に変換されることが意図される固体形態の調製物も含まれる。このような液体形態としては、溶液剤、懸濁液剤、及びエマルション剤などが挙げられる。これらの調製物は、例えば、他の箇所(Gervasi et al., Eur. J. Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 131:8-24 (2018))に記載されているとおり、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定化剤、緩衝剤、人工甘味料及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0221】
本明細書中で提供される医薬組成物を作製するために使用し得る薬学的に許容される担体の例としては、例えば、限定するものではないが、水、乳酸、クエン酸、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はポロキサマー188)、デキストラン40、又は糖(例えば、ソルビトール、マンニトール、スクロース、デキストロース、又はトレハロース)、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0222】
本明細書中で提供される医薬組成物中に含まれ得る他の成分としては、例えば、限定するものではないが、グリシン又はアルギニンなどのアミノ酸、アスコルビン酸、メチオニン、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの抗酸化剤、エンザルタミド、イマニチブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ(erlotinib)、スニチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、テムシロリムス、エベロリムス、パゾパニブ、クリゾチニブ、ルキソリチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、イブルチニブ、トラメチニブ、ペリフォシン、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、バチマスタット、ガネテスピブ、オバトクラックス、ナビトクラックス、タキソール、パクリタキセル、又はベバシズマブなどの抗がん剤、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0223】
一部の例では、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)は、非経口投与用に製剤化することが可能であり、アンプル、予め充填されたシリンジ、少容量点滴中で、又は複数回用量容器中で、任意選択的に付加される保存剤と共に、単位剤形で提供され得る。上記組成物は、油性又は水性のビヒクル中の懸濁剤、溶液剤、又はエマルション剤、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液剤などの形態を採り得る。油性又は非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油、及び注射可能な有機エステルなどが挙げられ、保存剤、湿潤剤、乳化剤若しくは懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの薬剤を含み得る。一部の例では、製剤は、約0.5重量%~75重量%の活性成分(1種又は複数種)を、本明細書中に記載される好適な医薬賦形剤からなる残りの部分と共に含み得る。
【0224】
本明細書中で提供される組成物は、並行して、同時に、又は薬学的に許容される担体又は希釈剤と一緒に、特に且つ好ましくはその医薬組成物の形態で、経口経路、直腸経路、又は非経口(皮下を含む)経路によるか否かに関わらず、有効量で投与することができる。
【0225】
本書はまた、B細胞(例えば、本明細書中で提供される非ヒト動物から単離されるB細胞)、モノクローナル抗体(例えば、モノクローナル重鎖抗体又はモノクローナルナノボディ)、及び/又はポリクローナル抗体(例えば、ポリクローナル重鎖抗体又はポリクローナルナノボディ)を含む医薬組成物も提供する。このような医薬組成物は、アジュバント、緩衝剤、塩又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0226】
アジュバントは、他の薬剤の効果を改変する薬理学的及び/又は免疫学的薬剤である。一部の実施形態では、より大量の抗体及び/又はより長く持続する保護を与えるように免疫応答をブーストすることによって免疫応答を改変し、このようにして注射される抗原性材料の量を最小限にするために、組成物にアジュバントを添加することができる。組成物のタイプに依存して、免疫系の特定の細胞型に対する免疫応答を破壊することを補助することにより(例えば、抗体分泌B細胞の代わりにT細胞を活性化させることによって)組成物の効力を高めるために、アジュバントを使用することもできる。一実施形態において、組成物は、少なくとも1種のアジュバントを含み得る。別の実施形態において、アジュバントはアルミニウムベースであり得る。アルミニウムアジュバントは、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、非晶質リン酸水素硫酸アルミニウム及び/又はそれらの組み合わせであり得る。他のアジュバントも含まれ得る。
【0227】
別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含み得る。一実施形態において、緩衝剤は、PBS及び/又はヒスチジンベースであり得る。別の実施形態において、緩衝剤は、6.0~7.5のpHを有し得る。一実施形態において、緩衝剤は等張性、例えば、0.6%~1.8% NaClの緩衝剤であり得る。
【0228】
乳化剤(「エマルジェント(emulgent)」としても知られる)は、エマルションの動力学的安定性を増加させることによりエマルションを安定化させる物質である。乳化剤の1つのクラスは、「表面活性剤」すなわち界面活性剤として知られている。ポリソルベートは、いくつかの医薬品及び食品調製物において使用される乳化剤のクラスである。ポリソルベートの一般的なブランド名としては、Alkest、Canarcel、及びTweenが挙げられる。ポリソルベートのいくつかの例は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80である。一実施形態において、本明細書中で提供される組成物は、上記のポリソルベートのうちの1つなどの乳化剤を含み得る。一実施形態において、組成物は、0.001~0.02%のポリソルベート80を含み得る。他のポリソルベート又は乳化剤も、本明細書中に記載されるとおりに使用することができる。
【0229】
一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)と薬学的に許容される担体とを含み得る。一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)、薬学的に許容される担体、及び緩衝剤を含み得る。一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)、薬学的に許容される担体、及び乳化剤を含み得る。一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)、薬学的に許容される担体、及びアジュバントを含み得る。一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)、薬学的に許容される担体、緩衝剤、及びアジュバントを含み得る。一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)、薬学的に許容される担体、乳化剤、及びアジュバントを含み得る。一部の例では、本明細書中で提供される医薬組成物は、本明細書中で提供される抗体(例えば、ナノボディ又は重鎖抗体)、薬学的に許容される担体、乳化剤、緩衝剤、及びアジュバントを含み得る。
【0230】
任意の適切な方法を使用して、本明細書中に記載される核酸及びポリペプチド剤を設計及び構築することができる。一般的に、組換え法を使用することができる。一般的には、Smales & James(編), Therapeutic Proteins: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology), Humana Press (2005);及びCrommelin, Sindelar & Meibohm(編), Pharmaceutical Biotechnology: Fundamentals and Applications, Springer (2013)を参照のこと。核酸組成物を設計し、調製し、評価し、精製し、操作する方法は、Green and Sambrook(編), Molecular Cloning:A Laboratory Manual (第4版), Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)に記載されている。
【0231】
本書はまた、本明細書中で提供される抗体(例えば、重鎖抗体又はナノボディ)を含む組成物(例えば、本明細書中で提供される医薬組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、疾患又は障害を治療する方法も提供する。例えば、本明細書中で提供される1つ以上の抗体を含む組成物(例えば、本明細書中で提供される医薬組成物)を、炎症性疾患を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を治療することができる。一部の例では、本明細書中で提供される1つ以上の抗体を含む組成物(例えば、本明細書中で提供される医薬組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、組成物を投与されなかった哺乳動物(例えば、ヒト)と比較して、哺乳動物中の炎症性疾患の重症度を低減する、及び/又は炎症性疾患に罹患している哺乳動物の生存期間を増加させることができる。
【0232】
本明細書中に記載される組成物は、任意の送達様式、例えば、非経口注射(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、又は組織の間質空間への注射)により、又は、直腸投与、経口投与(例えば、錠剤、スプレー剤)、膣内投与、局所投与、経皮(transdermal)投与(例えば、国際PCT特許出願公開公報第WO99/27961号を参照のこと)、又は経皮(transcutaneous)投与(例えば、国際PCT特許出願公開公報第WO02/074244号及び国際PCT特許出願公開公報第WO02/064162号を参照)、鼻腔内投与(例えば、国際PCT特許出願公開公報第WO03/028760号を参照)、眼内投与、耳内投与、肺投与又は他の粘膜投与などにより、対象に投与することができる。複数回用量を同じ経路又は異なる経路で投与することができる。
【0233】
本明細書中で提供される組成物(例えば、本明細書中で提供される非ヒト動物から産生される重鎖抗体及び/又はナノボディを含む組成物)は、他の治療剤の送達の前に、それと同時に、又はその後に投与することができる。同様に、投与部位は、投与される他の治療剤と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0234】
本明細書中で提供される組成物による投与治療は、単一用量スケジュールであってもよく、又は複数用量スケジュールであってもよい。複数用量スケジュールは、ワクチン投与の初期コースが、1~10の別々の用量と、それに続く、免疫応答を維持及び/又は増強するために選択される後続の時間間隔で、例えば、第2の用量については1~4ヶ月で、また必要に応じて、数ヶ月後の後続用量で与えられる他の用量によるものであり得るスケジュールである。また投与レジメンは、少なくとも部分的には、モダリティの有効性、利用される送達、対象のニーズにより決定され、施術者の判断によって決まるであろう。
【0235】
上記の実施形態を組み合わせて、上述の機能的特性を達成することができる。これは、例示的な組み合わせ及び達成される機能的特性を示す以下の実施例によっても示される。
【実施例
【0236】
実施例1 - Singularityマウスの遺伝子組換え
遺伝子組換え手順
129S6マウスとC57BL/6Nマウスとの交配から単離された胚盤胞を用いて、LVGN-YF ES細胞株(40個、XY)を確立し、全ての遺伝子組み換えに使用した。このF1ハイブリッドES細胞株は、複数ラウンドの遺伝子改変後にロバストな生殖細胞系列コンピテンスを示し、F1ハイブリッドES細胞株の使用は、同じ染色体上で生じた連続遺伝子改変を同定するための株特異的SNPの使用も可能とした。ES細胞を、20%ES細胞適格性ウシ胎児血清(FBS)、0.1mM MEM非必須アミノ酸、0.1mM 2-メルカプトエタノール、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM GlutaMAX-Iサプリメント、100単位/mLペニシリン-ストレプトマイシン、25nM MEK阻害剤PD98059(Sigma)、3nM GSK-3阻害剤CHIR99021(Sigma)、及びフィーダー細胞上の1,000単位/mLマウス白血病抑制因子(LIF、Sigma社)を補充したノックアウトDMEM中で培養した。hygro(登録商標)/neo(登録商標)/puro(登録商標)三重耐性フィーダー細胞株LVGN-SHNPLを、SNL76/7フィーダー細胞株から操作し、10%ES細胞適格性FBS、0.1mM MEM非必須アミノ酸、0.1mM 2-メルカプトエタノール、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM GlutaMAX-Iサプリメント、及び100単位/mLペニシリン-ストレプトマイシンを補充したノックアウトDMEM中で維持した。フィーダー細胞は、増殖細胞(proliferating cell)を10mg/mL Mitomycin C(Sigma)で3時間処理することによって調製した。
【0237】
全てのトランスフェクションは、Lipofectamine LTX(ThermoFisher)を使用するリポフェクションによるか、又はBio-Rad Gene Pulser II装置を使用するエレクトロポレーションにより行った。リポフェクションについては、0.1~1×106個の解離したES細胞を、0.5~2.5μgのプラスミドDNA-リポフェクタミン複合体と、製造者により提供される使用説明書に従ってOpti-MEM中で混合し、成長培地中で一晩培養し、必要に応じて24時間後に抗生物質選択を適用した。エレクトロポレーションについては、0.5~1.5×107個のES細胞を、10~30μgのプラスミド及び/又はBAC DNAとPBS中で混合し、4mmギャップキュベット中250V/500μFで電気穿孔し、成長培地中で一晩培養し、必要に応じて24時間後に抗生物質選択を適用した。選択のために使用した抗生物質濃度は、ジェネティシン(G418)について250μg/mL、ハイグロマイシンBについて200μg/mL、及びピューロマイシンについて5μg/mLであった。CRISPR媒介遺伝子編集のため、Cas9及びsgRNAが別々のプラスミドとして送達され、これらは、形質転換体について富化するために、PGK-puro遺伝子又はPGK-hygro遺伝子と一緒に共トランスフェクトされて対応する抗生物質で2日間で選択されたか、又は安定的にトランスフェクトされたクローンを導出するために、HDRテンプレートと一緒に共トランスフェクトされて対応する抗生物質で10~14日間で選択された。組換え部位(lox-lox、frt-frt、又はattB-attP)に隣接する選択マーカーカセットを除去するため、ES細胞を、対応するリコンビナーゼ又はインテグラーゼ(それぞれCre、Flp、又はφC31)を発現するプラスミドで一次的にトランスフェクトし、低密度でプレーティングして個々のクローンを単離した。リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)のため、ES細胞をRMCE構築物及びCre発現プラスミドで共トランスフェクトし、対応する抗生物質で10~14日間選択した。ES細胞コロニーを、増殖のために96ウェルプレートにピックし、PCRで遺伝子型を同定して所望の変異についてスクリーニングし、その後サンガー配列決定した。配列検
証した陽性クローンを96ウェルプレートから24ウェルプレートに増殖させ、その後6ウェルプレートに増殖させて凍結保存した。
【0238】
組換え変異を有する陽性ES細胞株を使用し、標準的な手順に従ってキメラを産生した。手短に言えば、過排卵C57BL/6N雌から胚盤胞を3.5dpcに単離し、ES細胞を微量注入し、その後、移植のために2.5dpc偽妊娠Swiss Webster雌の子宮に移した。組換え変異の生殖細胞系列伝達のために、高率キメラ雄をC57BL/6N雌と交配させた。ヘテロ接合体F1マウスを、生検から単離したゲノムDNAから接合部PCRにより同定した。次いで、F1マウスを交雑させ、同一変異についてホモ接合性であるF2マウスを生成するか、又は必要に応じて他の系統と交配した。全ての組換えマウスを、混合129S6及びC57BL/6Nバックグラウンドで維持した。
【0239】
Singularity Musculusアレルの生成
Ighは、染色体12q腕の右端の近くの数メガベース(Mb)にわたるマウスゲノム中の最大の遺伝子座のうちの1つである。これは、実質的に無限の抗体の多様性の生成に関与する多数の異なるエレメントをコードする。上記の遺伝子座は、抗体多様性の大部分に関与する何百もの遺伝子セグメントをコードする2.5Mb超の可変領域と、いくつかの抗体クラス及びサブタイプについての発現をコードするそれよりはるかに小さな220kbの定常CH領域とを含む(図1A)。CH領域は、異なるIgアイソタイプ:Cμ(Ighm)、Cδ(Ighd)、Cγ3(Ighg3)、Cγ1(Ighg1)、Cγ2b(Ighg2b)、Cγ2a/2c(Ighg2a/2c)、Cε(Ighe)、及びCα(Igha)をコードする8つのCH遺伝子を有する。隣接しさらにこの領域全体を通して位置する調節エレメントは、アイソタイプのクラススイッチ組換え(CSR)及びタイミングのよい発現に関与する(図2)。
【0240】
上記のエレメントに加えて、各Igアイソタイプ(IgDを除く)の上流には、Iプロモーター/エクソンとSスイッチ領域が位置している。後者はCSRに関与し、前者はその対応するIgアイソタイプの生殖細胞系列転写に関与する。Igアイソタイプの転写は高度に調節されている。休眠B細胞では、生殖細胞系列転写(GLT)は、Eμエンハンサー及び構成的Iμプロモーターにより駆動されるCμのGLTに限定されている。抗原遭遇及びサイトカインに応答した活性化B細胞では、下流のIgアイソタイプの転写は、各応答エレメントを含むそのIプロモーターにおいて活性化される。活性化IgアイソタイプのIμプロモーター及び下流のIプロモーターにおける同時転写は、AID媒介CSRをもたらす。
【0241】
段階的な工程を使用して、Singularity Musculusアレルを生成した(図1B)。野生型(WT)マウスにより産生される正常な四量体抗体(図1C)とは異なり、このアレルについてホモ接合性のマウスはHCAb(図1D)のみを産生し、その遺伝子構成及び多様性は、完全にマウスの自然免疫レパートリーから誘導される。
【0242】
Singularity Musculusアレルの生成は、LVGN-YF ES細胞における3ラウンドの遺伝子組換えを介して達成された(図3)。これらのES細胞のIgh遺伝子座は、BALB/c系におけるCγ2aよりもむしろC57BL/6Nマウスにおいて見出されるCγ2cと類似のCγ2cをコードした(図3A)。第1ラウンドの改変は、CRISPR媒介非相同末端結合(NHEJ)を介して行われ、これはCμ、Cδ、Cγ3、及びCγ1の第1エクソン(IgG1のCH1ドメインをコードする)にわたる92.6KbのゲノムDNA断片を欠失させた(図3B)。sgRNAは、Cμスイッチ領域(Sμ)の直下流とCγ1の第2エクソン(IgG1のヒンジドメインをコードする)の上流を切断し、これにより切断型Cγ1遺伝子をIμプロモーター及びSμの直接制御下に配置し、このような配置でない場合はサイトカイン誘導性のIgG1の転写を、WTアレルにおけるIgMの場合と同様に構成的にするように設計された。第2ラウンドの改変は、CRISPR媒介相同組換え修復(HDR)を介して行われ、これはCγ2b、Cγ2c、Cε、及びCαの最初の3つのエクソンにわたる63.2KbのゲノムDNA断片を除去し、一方でfrt部位に隣接する選択マーカーカセット(PGK/Em7-neo)を導入した(図3C)。Cγ1の下流の3'γ1EエレメントとCαのイントロン3中の5'hsR1エレメントの除去を回避するようにCRISPR切断部位を選択した。第3ラウンドの組換えはFlpリコンビナーゼの一過性発現を利用し、これは選択マーカーカセットを除去し、後の改変のシンテニー検証に使用するための単一のfrt部位を残した(図3D)。内因性IghアレルからのCH1切断型IgG1(IgG1ΔCH1)の高レベルの構成的転写を可能とするため、調節エレメント(Eμ、Iμ、Sμ、3'γ1E、5'hsR1、3'RR、及び3'CBEを含む)をインタクトに保持した(図2及び3E)。このため、結果として得られたSingularity MusculusマウスはIgG1サブタイプのHCAbのみを産生し;全ての他の抗体クラス(IgM、IgD、IgE、及びIgA)、並びにIgGサブタイプ(IgG2b、IgG2c、及びIgG3)は、HCAb産生を損なう任意の潜在的な機構を回避し、ナノボディ発見、発現、及び精製を容易にするために除去された。
【0243】
Singularity HyperDockアレルの生成
Singularityプラットフォームの多用途性を拡張し他の種由来のHCAbを生成するため、全てのマウスVH、DH、及びJH遺伝子を含む2.58MbのゲノムDNA断片(Ighv86-1の上流からIghj4の下流まで)を欠失させ、CRISPR媒介HDRを介してEμの上流に連続RMCE用のドッキングカセットを挿入することにより、Singularity HyperDockアレルを生成した(図4及び5)。HDRテンプレートは、左ホモロジーアーム、frt部位、attB部位、PGKプロモーター、loxP部位、Em7-neoカセット、attP部位、及びlox2272部位とそれに続く右ホモロジーアームを含んでいた。導入されたRMCEドッキングカセットが、Flpリコンビナーゼの発現時にSingularity Musculusアレルと同じ染色体(C57BL/6N)上にあることを検証するために、frt部位を組み込んだ。他の異種特異的lox部位の代わりに野生型loxP部位を選択してPGKプロモーターとEm7-neoカセットの間に配置し、選択マーカースワッピングを介した極めて効率的なRMCE事象を可能とした。これらの改変は、BAC、クローン化構築物、あるいはヒト又は他の種由来の重鎖アレル又は軽鎖アレルのV、D、又はJ遺伝子の任意の組み合わせ断片を含む合成断片の連続導入のためのRMCEドッキング部位を含むマウスVDJヌルSingularity HyperDockアレルをもたらした(図5)。
【0244】
Singularity Sapiensアレルシリーズの生成
ヒトVH、DH、及びJH遺伝子を含む組換えBACをSingularity HyperDockアレルに導入し、Singularity Sapiensアレルシリーズを生成した(図6~8)。CH17 BACライブラリ及びRPCI-11ライブラリ(BACPACリソース)由来の重複するIGH BACクローン(図9及び表4)を、選択マーカースワッピングを可能とするためにEm7-hygカセット又はEm7-neoカセットのいずれかを組み込み、一方で連続RMCE用のゲノム断片に隣接する対応する異種特異的lox部位(表1)を導入するように、細菌相同組換え(recombineering)により両端で改変した。手短に言えば、適切なlox部位及び抗生物質耐性カセットに隣接する2つの75~150塩基対(bp)のホモロジーアームを含む合成gBlock(IDT又はTwist)を、Bio-Rad GenePulser II装置を1.75kV、25μF、及び200オームで使用して、1mmギャップを有するエレクトロポレーションキュベット中で、熱誘導性Redリコンビナーゼを含むE. coli株に電気穿孔法で導入した。次に、1.0mL SOC培地を各キュベットに加え、次いでマイクロチューブに移し、その後振盪しながら(200rpm)32℃で1時間インキュベートした。細胞を、その後、対応する抗生物質を有するLBアガープレート上にプレーティングした。結果として得られたコロニーを、PCRによりジャンクショナルプライマーでスクリーニングし、その後検証のためサンガー配列決定した。組換え工程は、第1導入BAC(hIGH-BAC1)について図10に示され、これは、3つのヒトVH遺伝子(2つの機能的遺伝子;IGHV1-2及びIGHV6-1)、27個のヒトDH遺伝子、及び9個のヒトJH遺伝子を含んでいた。loxP-Em7-hyg-attP-lox5171カセットを、元のBACクローンの5'末端においてヒトIGHV1-2遺伝子の直上流で組換えることにより導入し、その後、3'末端においてヒトIGHJ6遺伝子の直下流にlox2272-aadAカセットを導入した。次いで、組換えBACを第1ラウンドのRMCE(loxPとlox2272との間)に使用して、3つのヒトVH遺伝子、全てのヒトDH遺伝子、及び全てのヒトJH遺伝子を、マウスIghイントロン性エンハンサーEμの直上流に導入し、一方で、次のラウンドのRMCE(図7A~7B)のために異なる異種特異的lox部位(lox5171)を導入した。後続の重複するBACを、代替選択マーカー(Em7-neo及びEm7-hyg)及び異なる異種特異的lox部位を使用してではあるが、同様に改変し、重複する断片を切り取ってヒトVDJゲノム領域を段階的に構築した(図7C~7D及び8)。完全ヒトVDJ領域を再構築するために使用した元のBACクローン及び異種特異的lox部位は、それぞれ表4及び表1に見出すことができる。高い組換え効率を示す野生型loxP部位を各ラウンドのRMCEに使用し、異なる異種特異的lox部位と対にした。全ての組換えBACは、ES細胞へのトランスフェクションの前にPacBio SMRT配列決定により確認された。遺伝子間領域におけるいくつかのSNP及び小さな挿入欠失(indel)を除いて、顕著な変異は見られなかった。連続RMCE工程は、高められたVH多様性を有する一連のヒト化singularityアレル(SSV1~5)の生成をもたらした。VH特異的プライマーによるSSV4マウスのPCR分析とそれに続くサンガー配列決定は、37個の機能的VHエレメント全ての組込みを確認した(図11)。hIGH-BAC5は、3つのソースBAC由来の配列を含むように組換えられ(図12)、RMCEを介してSSV4 ESに導入され、完全ヒトVHレパートリー(126個のVH遺伝子、27個のDH遺伝子、及び9個のJH遺伝子)を含むように設計されたSSV5の構築を完了した。
【0245】
【表4】
【0246】
軽鎖なしSingularityマウスを産生するためのIgkノックアウト及びIglノックアウトの生成
Singularityマウスにおける軽鎖とHCAbの生成との説明できない干渉を防止するため、マウスの軽鎖を、IgK遺伝子座及びIgL遺伝子座からV遺伝子セグメント及びJ遺伝子セグメントを欠失させることにより除去した。
【0247】
カッパ軽鎖を除去するため、全マウスVK遺伝子セグメント及びJK遺伝子セグメントを含む3.17MbのゲノムDNA断片を、CRISPR/Cas9媒介HDRにより欠失させ、ドッキングカセットで置換した(図13A)。IghアレルにおけるSingularity HyperDockと同様に、組換えIgK HyperDock/KOアレルは、マウスCK遺伝子の5'末端に位置する5'エンハンサーエレメントの上流にattB部位、PGKプロモーター、loxP部位、Em7-neoカセット、attP部位、及びlox2272部位を含み、このようにしてIgkアレルにおける連続RMCEを可能とする。組換えIgk HyperDock/KOマウスを生成し、PCR及び配列決定により確認した(図13B)。
【0248】
ラムダ軽鎖を除去するため、VL1、VL2、VL3遺伝子セグメント、並びにJL及びCL遺伝子セグメントの全てを含む全λ遺伝子座を含むOlfr164とGm10086との間の約200kbのゲノムDNA断片を、CRISPR/Cas9媒介NHEJにより欠失させた(図14A)。Igl KO ES細胞を生成し、PCR及び配列決定により確認した(図14B)。
【0249】
実施例2 - Singularityマウスの特性決定
Singularityマウスは、CH1切断型IgG1の重鎖抗体のみを構成的に発現する
Igアイソタイプの完全パネルを発現することができるWTマウス(図15A)とは異なり、Singularity MusculusマウスがIgG1-ΔCH1のみを発現する(図15B)ことを確認するため、異なるIgクラス及びサブタイプの転写を分析した。全RNAを、Trizol試薬を使用してWTマウス及びSingularity Musculusマウスの脾臓から単離し、RNAの濃度及び品質をBioanalyzerで決定した。逆転写は、Superscript IV Reverse Transcriptase(ThermoFisher)及びオリゴ(dT)20プライマーを、製造業者の使用説明書に従って使用して実施した。全てのIgクラス及びサブタイプの転写を、標準的な手順に従って、マウスB細胞マーカーCd19を内部対照としてRT-PCRにより分析した。Ighm、Ighd、Ighg3、Ighg1、Ighg2b、Ighg2c、Ighe、及びIghaは全てWTマウスにおいて検出されたが、Singularity Musculusマウスは、低減されたサイズのIghg1転写産物のみを発現し(図15C)、配列決定で検証されたとおりにCH1配列を欠如していた。
【0250】
Singularity SapiensマウスにおけるIghg1の転写について調べるため、Singularity Sapiens(SSV1)マウスの全脾臓RNAから逆転写されたcDNA上でRT-PCRを行った。Singularity Musculusプラットフォームから誘導されるSSV1(図16A)を、ヒトDH及びDJの完全パネルと2つの機能的ヒトVH(IGHV6-1、IGHV1-2)を含むように設計した(図16B)。ヒトIGHV6-1、IGHV1-2、及びIGHJ3に特異的なフォワードプライマーと、マウスIghg1 CH2に特異的なリバースプライマーのセットを有するPCRプライマーを設計した。Singularity Sapiens(SSV1)マウスにおいてはヒトVDJ-マウスIghg1-ΔCH1によるキメラ転写産物が検出されたが、Singularity Musculusマウスにおいては検出されず(図16C)、配列決定により正しくスプライシングされていることがさらに検証された(図16D)。
【0251】
異なるIgクラス及びサブタイプのタンパク質発現を調べるため、免疫した野生型マウス及びSingularity Musculusマウスの血漿サンプル中の免疫グロブリンを、タンパク質A/G磁気ビーズで精製し、還元SDS-PAGEで分離し、標準的な手順に従って、Immobilon(登録商標)-P膜(Millipore Sigma)上に電気泳動的に移した。HRP-コンジュゲート化二次抗体と強化化学発光を用いて免疫検出を行い、ECLウェスタンブロッティング試薬を用いてオートラジオグラフィを行った。約40kDaの切断型IgG1をSingularity Musculusマウスにおいて検出した(野生型マウスにおける約50kDaの完全長IgG1と比較して)が、IgM及びIgG2bは検出することができなかった(図15D)。同様に、ヒトVDJ-マウスIgG1-ΔCH1に対応する約40kDaの切断型IgG1が、免疫したSingularity Sapiensマウス(SSV1)において検出されたが、このマウスは、野生型マウスでは見られたような、IgM又は完全長IgG1は発現しなかった(図17)。
【0252】
SingularityマウスのB細胞においてアップレギュレートされたIgG発現
Singularity Musculusマウスの脾臓は、野生型マウスの脾臓と同様の形及びサイズであった(図18A)。B細胞膜上のIgM及びIgGの発現を調べるため、脾臓から単一細胞懸濁液を調製し、ACK溶解緩衝剤で処理して赤血球を除去し、Fcブロッカーでブロックし、FACS緩衝剤(1%FBSを有するPBS)中で、ラット-抗マウスIgM(PE-Cy7)、ラット-抗マウスIgG(BV421)、及びラット-抗マウスCD19(AF700)により染色した。染色後、細胞をフローサイトメトリー(BD LSR II)により分析した。Singularity MusculusマウスにおいてIgM+ B細胞は検出されなかったが、IgG+ B細胞は、野生型マウスにおけるIgG+ B細胞と比較して、有意に高い割合で検出され、IgG1の構成的な高レベルの生殖細胞系列転写に起因する発現レベルの増加と一致していた(図18B)。同様に、Singularity Sapiensマウス(SSV2)及び野生型マウス由来の脾細胞のFACS分析を、上記の手順を用いて、ラット-抗マウスIgM(APC)、ラット-抗マウスIgG1(APC)、ラット-抗マウスIgD(FITC)、及びラット-抗マウスB220(PerCP-Cy5.5)を用いて行った。この分析は、SSV2マウスにおいてはIgM+ B細胞又はIgD+ B細胞を検出しなかったが、これらは野生型マウスにおいて豊富であることが見出された(図19A)。IgG1+細胞は、SSV2マウスにおいて有意に高い割合で検出された(図19B)。
【0253】
Singularityマウスにおけるロバストな体液性免疫応答
タンパク質抗原(表3)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製し、滑らかなエマルションが形成されるまで2つの結合されたシリンジを繰り返し通過させることにより、完全フロイントアジュバント(SigmaカタログNo. 5881、プライミング注射用)又は不完全フロイントアジュバント(SigmaカタログNo. 5506、ブースティング注射用)のいずれかと新たに1:1(v/v)混合した。1mLシリンジと27ゲージニードルを用いて、4~12週齢の雄又は雌マウスに注射を行った。プライミング注射とブースティング注射は、10~25μg抗原タンパク質/マウスにて2週間間隔で、左鼠径部と右鼠径部に皮下的に各(50μL)及び/又は100μL腹腔内で行った。各注射の前に尾静脈採血を採取した。最終ブーストは、アジュバントを伴わない抗原タンパク質により、4週目又は6週目に腹腔内で行った。動物は、致死採血(terminal bleed)及び組織摘出のために3~4日後に屠殺した。標準的な手順に従って血液サンプルを血漿に加工した。
【0254】
血漿中の抗体力価についてアッセイするため、ELISAプレートを、PBS中で希釈した1μg/mL抗原タンパク質で、4℃にて一晩コーティングした。PBST(PBS+0.05% Tween-20)で繰り返し洗浄し、Super Block(Thermo Fisher)でブロックした後、血漿サンプルを希釈バッファー中で連続希釈し、プレートに適用した。複数回の洗浄を通して未結合のタンパク質を除去した後、対応するHRP-コンジュゲート化二次抗体を用いて結合したタンパク質を検出し、3,3',5,5'テトラメチルベンジジン(TMB)基質(BMブルー、Sigma)で発色させ、50μLの1M H2SO4で停止させた。吸光度を450nmで読んだ。Singularity Musculusマウスでは、SAT免疫の4週間後(D28)に、野生型マウスにおける体液性免疫応答と同等のロバストな体液性免疫応答が観察され(図20A及び20B)、6週間後(D51)には、Singularity MusculusマウスとSingularity Sapiensマウス(SSV1)の両方について、有意に高い力価が得られた(図21A)。PD-L1など他の免疫原により、同様の結果が得られた(図21B)。
【0255】
SingularityマウスにおけるVHレパートリーのNGS解析
異なる抗原で免疫した野生型マウス又はSingularity Musculusマウスの脾臓からTrizol試薬により全RNAを単離し、BioanalyzerでRNAの品質及び濃度を決定した。野生型マウス又はSingularityマウスの組換えられた可変領域配列(VH)を、次世代シーケンシング(NGS)のためにcDNA末端の5'急速増幅(5'RACE)により増幅した。手短に言えば、Superscript IVリバーストランスクリプターゼ、オリゴ(dT)20プライマー、並びに5'RACEアダプター及び分子バーコード(unique molecular identifier)(UMI)配列(5'-CTACA-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTNNNNNNNNNNNNrGrGrGrGrG-3';配列番号37)を含むテンプレートスイッチプライマーを用いて逆転写を行った。次いで、テンプレートスイッチ逆転写の産物を、5'RACEアダプターフォワードプライマー(5’-CTACACTC-TTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3';配列番号38)と、IgG1 CH2ドメインに特異的なリバースプライマー(5’-GGTGGTTGTGCAGGCCCTCATG-3’;配列番号39)を用いて、PCR反応の第1ラウンドで増幅した。精製産物を、5'RACEアダプターフォワードプライマーと、IgG1 CH1ドメイン(野生型IgG1転写産物用の5'-CCATGGAGTTAGTTTGGGCAGCA-3';配列番号40)又はIgG1ヒンジドメイン(Singularity IgG1転写産物用の5'-CAAGGCTTACAACCACAATCCCT-3';配列番号41)のいずれかに特異的なリバースプライマーを用いて、PCRの第2ラウンドでさらに増幅し、両マウス系統が約600bpのアンプリコンを生成したことを確実にした(図22)。結果として得られた入れ子PCR産物を第3ラウンドのPCR反応においてさらに増幅してNGS用のIllumina P5及びP7アダプター配列及びバーコードを組み込み、サンプル多重化を可能とした。最終5'RACEライブラリを精製し、Illumina MiSeqで2X 300bpペアエンドランを用いて配列決定した。
【0256】
fastq形式のペアエンド配列リードを処理し、K-mer連鎖アルゴリズム(Liao et al., Nucleic Acids Res., 41(10):e108 (2013))の特殊版であるKAlignerを用いて、国際ImMunoGeneTics情報システム(IMGT、World Wide Webにおいてimgt.org)からのアノテーションに基づくVH、DH、及びJHの参照生殖細胞系列遺伝子に対して整列させ、CDR領域を同定した。配列間でCDR3が同一であり、ミスマッチヌクレオチド残基が2個以下であった場合、完全長インフレーム配列をさらにクロノタイプに構築した。低品質の配列は構築から除外した。各動物由来のクロノタイプを、それらの存在量に従って順位付けし、5カウント未満のクロノタイプは、さらなる解析に含めなかった。
【0257】
SARS-Cov2スパイク活性三量体SAT(R&D Systems;カタログNo. 10549-CV)、PD-L1(R&D Systems;カタログNo. 156-B7)、ウサギIgG(ThermoFisher;カタログNo. 02-6102)、ラットIgG(ThermoFisher;カタログNo. 31933)、又はヤギIgG(ThermoFisher;カタログNo. 31245)で免疫した野生型マウス及びSingularity Musculusマウス由来の合計で18個のサンプルをNGS用に処理し、それらの対応するVHレパートリーを決定した。1サンプル当たり百万超のリードを全サンプルにおいて回収し、その約半分を、Igh遺伝子座に対して成功裏に整列させた(表3)。注目すべきことに、Singularity Musculusマウスにおける全ての試験された抗原に対するクロノタイプの数は、WTマウスにおいて見られたクロノタイプの数より有意に高く、数倍~20倍超にわたっていた。さらに、WTマウスにおいてはこれらの抗原に対して79~99個のIGHV遺伝子セグメントが利用されたが、Singularity Musculusマウスにおいては有意に高い数のIGHV(103~122)が利用され、理論的限界(マウスゲノムGRCm38/mm10アノテーションに基づく125個の機能的IGHV)にほぼ近かった(図23A及び24並びに表3)。Singularity Musculusマウスの、WTと比較してより多数のIGHVセグメントを利用する能力は、いくつかの試験した抗原にわたって極めて有意であり(図24)、この能力は、WTマウスにおけるIgG1 GLTの誘導可能なサイトカイン依存性の発現と比較した、Singularity Musculusマウスにおける高レベルのIgG1 GLT、並びに全ての他のIgクラス及びサブタイプの除去から生じ、これにより、免疫原に関わらずIgG1の単独の発現が可能となった可能性がある。
【0258】
VH配列の解析は、WTマウスと比較して、Singularityマウスが、同様のIGHV遺伝子セグメントの多様な使用(図23A及び24A~24B)を示したことを示した。野生型においてより豊富なクロノタイプまたはより少ないクロノタイプをもたらしたIGHV遺伝子セグメントは、Singularity Musculusマウスにおいても同様であった(図24A~24B)。4個全てのIghJセグメントが使用されたが、Singularity Musculusマウスにおいては、IGHJ3が区別される一方でIGHJ4が好まれ、おそらくはHCAb形成のための構造的選好に起因していた(図23B及び25)。クロノタイプ間でCDR3サイズ分布において有意な差は観察されず、野生型マウスとSingularity Musculusマウスの両方について、平均サイズは約14であった(CDR3境界の不変のC残基及びW残基を含む)(図23C及び26)。
【0259】
体細胞超変異を同定するため、ナイーブであるか又はSATで免疫された各Singularity Musculusマウス由来の上位100位のクロノタイプ配列を、IgBlastを用いて対応する生殖細胞系列IGHV配列に対して整列させた(World Wide Webにおいてncbi.nlm.nih.gov/igblast/)。IMGTナンバリングスキームに従って各残基位置における変異率を計算し、プロットした(図27)。ナイーブマウスにおいては低レベルの変異率が観察されたが、免疫マウスは有意に高いレベルの体細胞超変異を示し、これらはCDR領域において高度に富化されていた(図27)。これは、検証されたナノボディバインダーの完全VH配列の、後の解析においてさらに確認された(図37)。
【0260】
実施例3 - Singularityマウスによるナノボディ発見
ナノボディバインダーについての配列駆動型ハイスループットスクリーニング
次世代シーケンシング(NGS)及びバイオインフォマティクス解析を行って、免疫したSingularityマウス由来のVH配列(クロノタイプ)をプロファイリングして選択し、その後、遺伝子合成、クローニング、発現、及びELISAスクリーニングを行ってナノボディバインダーを同定した(図28)。あるいは、ナノボディバインダーは、他の方法、例えば、限定するものではないが、ハイブリドーマ、単一B細胞クローニング、単一B細胞配列決定、並びに様々なディスプレイアプローチ、例えば細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイ、及びファージディスプレイなどにより同定することができる。
【0261】
ナノボディ発現及びバインダースクリーニングのための候補クロノタイプについて選択するため、各動物由来のクロノタイプを、それらの存在量及び体細胞超変異率に従って順位付けした。Clustal Omega(World Wide Webにおいてebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo)によりクロノタイプ配列の系統発生解析を実施し、異なる枝から代表的配列を選択した(図29)。最初に、SATで免疫したSingularityマウス由来の候補クロノタイプ配列(VH)をヒト-コドン最適化し、クローニングアダプターを隣接させ、eBlock遺伝子フラグメント(IDT)として合成した。次いで、合成したeBlockを、NEBuilder HiFi DNAアセンブリによりpFuse-hIgG1-Fc2ベクター(Invivogen)中にクローン化し、IL-2シグナルペプチド、VH、及びヒトIgG1のFcドメイン(ヒンジ-CH2-CH3)のインフレーム融合体を生成した(図30A~30B)。次いで、配列検証された発現構築物を、Expi293F細胞(ThermoFisher)に96ウェル形式でトランスフェクトして、製造業者の使用説明書に従って分泌ナノボディ-Fc融合体を産生し、培養上清をトランスフェクションの6日後に回収し、ELISAスクリーニングに使用して抗原特異的バインダーを同定した。
【0262】
SATで免疫したSingularity Musculusマウスから選択された92個のクロノタイプのスクリーニングにより21個(23%)のバインダー(ELISA OD>0.5)が同定され、この中でも11個(52%)が高レベルの結合(ELISA OD>3.0)を示した(図31~32)。次いで、これらのVH配列を使用して、系統発生解析により元のクロノタイプ配列ライブラリを検索(query)して相同VH配列を同定し、その後これをヒットエクスパンション(hit expansion)のための二次スクリーニングに使用した。スクリーニングされた30個のクロノタイプのうち15個(50%)(大部分は低存在量であったため一次スクリーニングには含めなかった)はバインダーであり、この中でも11個(73%)が高親和性を示した(図31~32)。対照的に、同じ基準(高存在量及び超変異率)の後に選択された野生型マウス由来のクロノタイプを用いた対照スクリーニングは、バインダーを全く同定することができず(0/29)、機能的ナノボディはSingularityマウスにおいて産生されたHCAbからのみ誘導され得るが、野生型マウスにおいて産生される従来のH2L2抗体からは誘導することができないことを示唆していた(図31~32)。Singularity Sapiensマウス(SSV2)によるSATナノボディバインダースクリーニングは、ヒトVH配列の14/41個(34%)のNb-Fcバインダーを同定し、機能的HCAbが、同じ機構に従ってヒト化マウスにおいて産生されたことを示唆していた(図31~32)。
【0263】
PD-L1、ヤギIgG、ウサギIgG、及びラットIgGに対するナノボディについてのELISAスクリーニングは、対応する抗原に対する33%~61%のバインダーを同定し、高効率のNGS駆動スクリーニング法についてさらに実証し、ナノボディ発見には比類なく適していた(図31~32)。HCAbの単鎖の性質により、同定された各クロノタイプは特有の抗体を表し、これは任意の単一細胞アプローチを用いることなくバルクRNA-seqにより同定された。
【0264】
精製Nb-Fcの生物物理学的及び生化学的特性
ELISA陽性SAT Nb-Fc構築物の選択されたセット(マウスVH配列とヒトVH配列の両方に由来;表5)を使用して、30mL Expi293F細胞培養物をトランスフェクトしてナノボディ-Fc融合体を産生させ、次いでこれを、標準的な手順に従ってタンパク質Aアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製した。手短に言えば、トランスフェクションの6日後、細胞培養上清を回収し、0.22μmフィルターで濾過し、PBSで予め平衡にした0.5mLタンパク質Aカラム(MabSelect SuRe, Cytiva)上にロードした。2mLのPBSで洗浄した後、結合したタンパク質を4mLクエン酸緩衝剤(25mMクエン酸(citrated acid)、150mM塩化ナトリウム、pH3.5)でカラムから溶出し、1M Tris-HCl(pH 8.8)の添加により中和した。Vivospin Turbo(30,000 MWCO PES)により最終緩衝剤をPBSに交換した。SDS-PAGE解析は、2つの重鎖(約50kDa)と2つの軽鎖(約25KDa)を有する従来の抗体(約150kDa)とは対照的に、精製Nb-Fc融合体が非還元条件下に約80kDaで、また還元条件下に約40kDaで移動したことを示し、これはホモ二量体としてのVH-ベースのNb-Fcの予想サイズと一致していた(図33~34)。
【0265】
【表5】
【0266】
精製Nb-Fcの品質を調べるため、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行った。手短に言えば、2~10μLの精製Nb-Fcサンプルを、ACQUITY UPLC(Waters) Protein BEH SEC 200、1.7μm、4.6 x 150mmカラムに、流速0.3mL/分で10分間注入した。50mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl、pH6.2の移動相を使用した。生成した高率のNb-Fcは、凝集の傾向を示さなかった(代表的なSECを図35にプロットする)。
【0267】
精製SAT Nb-Fc融合体の結合親和性を評価するため、SAT抗原に対する連続希釈タンパク質サンプルによりELISAアッセイを行った。試験した全てのNb-Fcは、ヒトSAT Nb-Fc対照VH-Ab-8(HAb8-S)(Li et al., Cell, 183:429 (2020))と同等の、ナノモル範囲及びサブナノモル範囲のELISA EC50を示した(図36A及び表5)。それらの中和力価を利用する(access)ため、製造業者の使用説明書に従って、COVID-19スパイク-ACE2結合アッセイキット(Raybiotech)により競合的ELISAアッセイを行った。多くのNb-Fcが、スパイク-Ace2結合に対する強力な中和力価を示し、IC50は、HAb8-SのIC50と同等であった(図36B;表5)。興味深いことに、これらの多くは、一次スクリーニングから同定された2つの強力なSAT中和ナノボディ(LVGN-S3205及びLGVN-S52135)を用いた二次スクリーニングから同定され、配列駆動型ナノボディ発見パイプラインの能力をさらに実証していた(図31及び37)。
【0268】
SAT結合に対するNb-Fcの動態を、表面プラズモン共鳴(SPR)及び/又はバイオレイヤー干渉法(BLI)により分析した(表5)。BLIについては、Octet HTX上で、25℃で結合実験を実施した。抗体を抗ヒトFc Capture(AHC)センサー上にロードし、その後、抗原の連続希釈液(333nMで開始、1:3希釈、5ポイント)に浸した。参照サンプルウェル(緩衝剤)をデータ分析に使用した。一価(1:1)結合モデルを用いて速度定数を計算した。代表的な動力学及びセンサーグラムが図38~39に示される。大部分のNb-Fcは1桁又は2桁ナノモル(10-8-10-9M)のKDを示し、HAb8-SのKDと同等であった(表5)。
【0269】
熱安定性を評価するため、示差走査蛍光定量法(DSF)を使用して、精製Nb-Fcの融解温度(Tm)を測定した。手短に言えば、Nb-Fcを、1μg/mLの最終濃度のためにThermal Shift(商標)Dye(ThermoFisher)と混合し、10μL/ウェル混合物を384ウェルプレートに移した。このプレートをMicroAmp(登録商標)Optical Adhesiveで密封し、Roche LightCycler(登録商標)480装置上にロードした。温度が0.06℃/秒で20℃から85℃に増加するに従って、蛍光シグナルを収集した。最も精製されたNb-Fcは高い熱安定性を示し、平均Tm1=64.28±0.64℃(PBS、pH7.4)であった(表5)。代表的な融解曲線を図40に示した。
【0270】
FACSベースの細胞結合アッセイを行って、細胞表面上のスパイクタンパク質に対するNb-Fcの結合特性を調べた(図41~42)。HEK293親細胞及び不活性化furin部位を有するSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質を発現するHEK293-スパイク細胞(293-SARS2-S-dfur、Invivogen No. 293-cov2-sdf)を、1μg/mLの個々のNb-Fcと共に4℃で1時間インキュベートし、洗浄し、その後、DyLight 594(ThermoFisher)と結合したヤギ抗ヒトIgG-Fcと共に4℃で1時間インキュベートした。これらのサンプルのFACS分析をBD LSR II上で行い、幾何平均蛍光強度(GMFI)をFlowJo V10で計算した。ELISA形式のSATに結合する18個のNb-Fcのうち12個はバックグラウンドを上回る細胞表面SAT結合も示し、GMFI比は4.0~42.9であった(図41~42)。
【0271】
実施例4 - さらなるSingularityベースの非ヒト動物
Singularity Sapiens-L及び-Kアレルシリーズの生成
可変軽鎖(VL)遺伝子セグメントは、従来の四量体抗体の免疫多様性に寄与する。ヒト四量体抗体は、カッパ(κ)軽鎖又はラムダ(λ)軽鎖のいずれかを含む。ヒト免疫グロブリン軽鎖は、2つの別個の遺伝子座:染色体2及び22上のIGK及びIGLからそれぞれ誘導される。IGH遺伝子座と同様に、各遺伝子座は、多数のVL遺伝子セグメントをコードする。しかし、IGH遺伝子座とは異なり、上記の軽鎖遺伝子座は多様性D遺伝子セグメントを欠如し;軽鎖遺伝子座における組換えはRAG1/RAG2タンパク質を必要とするが、VLセグメントのJLセグメントとの直接的な結合を伴う。
【0272】
VL遺伝子セグメントの固有の特性を利用し、Singularity Sapiensプラットフォームの免疫レパートリーを拡大するため、2つの別々のアプローチを使用して、軽鎖可変遺伝子セグメントにより提供される多様性を利用した。第1に、IGLV遺伝子セグメントは、IGHV遺伝子セグメントの23RSSシグナルと類似の23RSSシグナルに隣接しているため、これらは、RAG1/RAG2により好まれる「12/23規則」を満たすIGHD遺伝子セグメントの直上流の12RSSシグナルと正確に対になり得る(図43A)。ラムダ軽鎖遺伝子については、最初に、SSV1アレルからCRISPR-Cas9 遺伝子編集を用いてヒトIGHVセグメントを除去し、ヒトIGHDセグメント及びIGHJセグメントのみを残すことによって、Singularity Sapiens DJ-dockアレルを生成した。次に、一連のヒトBAC由来のIGLV遺伝子セグメントのパネル(CH17-262M19、CH17-329P5、CH17-238D3、CH17-261A15、CH17-264L24、CH17-117C7、RP11-1040J16、CH17-320F4)が改変され(hLGLV-BAC)、前に記載されたのと同様に、RMCEを介して連続的に組み込まれる(図43B)。
【0273】
第2に、IGKV遺伝子セグメントは、IGHDセグメントとは適合しない12RSSシグナルに隣接しているため、カッパ軽鎖遺伝子をSingularityアレルに導入するためには異なるアプローチが必要とされる。最初に、Singularity HyperDockアレルを、一連のVKセグメント及びJKセグメント(CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15)を含む改変ヒトBAC(hIGKVJ-BAC)の組込みのためのプラットフォームとして使用する(図44A)。あるいは、Singularity Sapiens J dock アレルを、SSV1アレルから、CRISPR-Cas9遺伝子編集を用いてヒトIGHVセグメント及びIGHDセグメントを除去し、ヒトIGHJセグメントのみを残すことによって生成した。次に、CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15から誘導される組換えヒトBAC(hIGKV-BAC)由来のIGKV遺伝子セグメントのパネルが、連続RMCEによりIGHJ遺伝子セグメントの上流に組み込まれ、個々のIGKVの、上流に23RSSシグナルが隣接するIGHJ遺伝子セグメントのそれぞれとの組換えを可能にする(図44B)。
【0274】
Singularity Longhorn及びMinotaurアレルの生成
ウシ抗体は、超長相補性決定領域(CDR)の存在により区別される(Berens et al., Int. Immunol., 9(1):189-199 (1997))。これらの超長CDRは、自律的実体(autonomous entities)としてのそれらの抗原に堅固に結合することができる抗体ノブドメインを有し、これは、サイズ約3~5kDaの超小型ナノボディを生成することができた(MacPherson et al., PLoS Biol., 18(9):e3000821 (2020))。ヒト及びマウスにおける6~20アミノ酸にわたるCDR-H3は、雌牛においては50~70残基もの長さであり得る。超長CDR-H3は、部分的には、ウシ生殖細胞系列ゲノムにおいてコードされる非常に長い重鎖多様性(DH)遺伝子セグメントから生じる(Shojaei et al., Mol. Immunol., 40(1):61-7 (2003);及びMa et al., J. Immunol., 196(10):4358-4366 (2016))。例えば、IGHD8-2は149個のヌクレオチドを有し、最長の既知のDHの1つであり、少なくとも50アミノ酸残基はウシCDR-H3に寄与し、IGHV1-7、IGHD8-2、及びIGHJ2-4の組み合わせは、主に単離された超長CDR3ウシ抗体において見られた(MacPherson et al., PLoS Biol., 18(9):e3000821 (2020))。
【0275】
Singularityプラットフォーム上で構築する際、合成の3252bpの遺伝子フラグメントを構築し、これは約2.5kbのプロモーターとウシ(Bos Taurus)IGHV1-7の上流の5'UTR領域、全IGHV1-7リーダーエクソン、イントロン、及びコーディング配列、それに続くIGHD8-2、IGHJ2-4及び、スプライスドナー配列を含むIGHJ2-4領域の直下流の250bpの配列を含んでいた(図45A)。この構築物は、RMCEを介してSingularity HyperDockアレルに組み込まれ、Singularity Longhornと呼ばれるマウスを生じさせた(図45B)。PCR遺伝子型判定及び配列決定は、F1マウスにおけるSingularity Longhornアレルの適切な組込み及び伝達を確認し(図45C)、ここからウシVDJ-マウスIgG1ΔCH1転写産物が検出された。
【0276】
【0277】
Singularity Longhornマウスが、最長の既知のDH遺伝子セグメントを有するウシ-マウスキメラ重鎖抗体を発現し得たことを示す成功裏の結果に基づいて、8個の最長のウシDH遺伝子セグメント(IGHD4-1、IGHD5-3、IGHD8-2、IGHD1-3、IGHD7-3、IGHD7-4、IGHD6-3、及びIGHD3-3)で構成される合成アレイを構築し、Singularity SapiensマウスのヒトIGHD成分と置換した。ヒトフレームワークの配列はIGHD4-4の550bp上流からIGHD4-17の550bp下流にわたるゲノム領域に基づき、ヒトDH遺伝子の介在コーディング配列はウシ対応物で置換され、一方で、12RSSシグナルを含む全てのヒト遺伝子エレメントを保存していた(図46)。合成ヒト-ウシDHアレイは、Singularity SapiensアレルにおけるヒトIGHD遺伝子フラグメントをCRISPR/Cas9媒介HDRにより置換するために使用した、以下の配列を含んでいた。ヒト-雌牛ハイブリッドについてSingularity Minotaurと呼ばれる、これらの遺伝子組み換えから生成されるマウスは、Bos Taurus由来の超長CDR-H3を有するヒトナノボディを産生するように設計される。
【0278】
【0279】
Singularity Sapacos アレルシリーズの生成
Singularityプラットフォームの性能を、アルパカ(Vicugna pacos)の5つの既知のVHHを含む合成アレイ(Sapacos VHH)を構築することにより拡張した(Achour et al., J. Immunol., 181(3):2001-2009 (2008))。個々のVHHエレメントを、VH転写に関与する調節エレメント(例えば、TATAボックス、オクタマー、及びヘプタマー)を含む約250bpの上流ヒトプロモーター、ヒトリーダーエクソン1及び2、ヒトイントロン、及びヒト組換えシグナル配列(RSS)を含む選択されたヒトVH成分のフレームワーク上にグラフト化した(図47A)。ヒトVHを、ヒトモデル及びヒト化齧歯類モデル(例えば、ラット及びマウス)におけるそれらの高利用率の証拠(evidence)に基づいて選択した。Sapacos VHHアレイを、RMCEによるSingularity Sapiens IgH遺伝子座へのその標的化組込みを容易にするため、隣接する異なるloxエレメントを含むように設計した(図47B)。Syn Sapacosアレイ(以下の配列を参照)は、RMCEを介してSingularity Sapiens DJ dockアレルに挿入される(図47B)。この遺伝子組み換えから生成されるマウスは、Singularity Sapacosマウスと呼ばれ、それらがアルパカ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体(例えば、アルパカ-ヒト-マウスキメラ重鎖IgG1-ΔCH1抗体)を産生する能力について評価される。
【0280】
Singularity Sapacosマウスから産生されるアルパカ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体は、アルパカの自然に最適化されたナノボディ特性を有し得、ヒトDエレメント及びJエレメントのさらなる免疫多様性を利用することが可能であり、ヒトにおける治療的利用のための迅速なヒト化を可能とする。Sapacos VHHアレイは、アルパカ及び他のラクダ種由来のさらなるVHHを含むアレイの反復ラウンドのRMCE媒介型組込みを介して容易に拡張することができる。
【0281】
【0282】
Singularity Savnarsアレルシリーズの生成
軟骨魚類(例えば、サメ、ガンギエイ、及びエイ)は、可変新抗原受容体(VNAR)として知られる特別なクラスの免疫グロブリン由来の重鎖抗体を産生する(Greenberg et al., Nature, 374(6518):168-73 (1995))。
【0283】
Singularityプラットフォームの性能を、合成サメVNARアレイを構築することにより拡張した。テンジクザメ(Ginglymostoma cirratum)の生殖細胞系列配列から選択した個々のVNARエレメントを、VH転写に関与する調節エレメント(例えば、TATAボックス、オクタマー、及びヘプタマー)を含む約250bpの上流ヒトプロモーター、ヒトリーダーエクソン1及び2、ヒトイントロン、並びにヒト組換えシグナル配列(RSS)を含む選択されたヒトVH成分のフレームワーク上にグラフト化した(図48A)。Savnarsと呼ばれるVNARアレイを合成し、RMCEを介してSingularity Sapiens DJアレルに挿入する(図48B)。この遺伝子組み換えから生成されるマウスは、Singularity Savnarsマウスと呼ばれ、サメ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体(例えば、サメ-ヒト-マウスキメラ重鎖IgG1-ΔCH1抗体)を産生する能力について評価される。
【0284】
Singularity Savnarsマウスから産生されるサメ-ヒト-マウスキメラ重鎖抗体は、VNARの優れた生物物理学的特性を有し得、ヒトDエレメント及びJエレメントのさらなる免疫多様性を利用することが可能であり、ヒトにおける治療的利用のための迅速なヒト化を可能とする。Singularity Savnarsマウスの免疫レパートリーは、他のサメ種由来のさらなるVNARを含むアレイの反復ラウンドのRMCE媒介型組込みを介して容易に拡張することができる。
【0285】
【0286】
実施例5 - 例示的な実施形態
実施形態1A. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む核酸配列の欠失を含む生殖細胞系列改変を含む遺伝子組換えマウスであって;上記マウスがIgG重鎖抗体を発現し、且つその血清中にIgG重鎖抗体を分泌する、上記遺伝子組換えマウス。
実施形態2A. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子が、IgM C領域遺伝子(Cμ)、IgD C領域遺伝子(Cδ)、IgE C領域遺伝子(Cε)、IgG3 C領域遺伝子(Cγ3)、IgG2b C領域遺伝子(Cγ2b)、IgG2c C領域遺伝子(Cγ2c)、又はそれらの組み合わせである、実施形態1Aの遺伝子組換えマウス。
実施形態3A. IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失をさらに含む、実施形態1A~2Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態4A. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失がエクソン1を含む、実施形態3Aの遺伝子組換えマウス。
実施形態5A. 生殖細胞系列改変が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列をさらに含む、実施形態1A~4Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態6A. 生殖細胞系列改変が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列をさらに含む、実施形態1A~5Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態7A. エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsR1又はそれらの組み合わせである、実施形態6Aの遺伝子組換えマウス。
実施形態8A. 生殖細胞系列改変が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列をさらに含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、実施形態1A~7Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態9A. IgG重鎖抗体がIgG1重鎖抗体を含む、実施形態1A~8Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態10A. IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、実施形態9Aの遺伝子組換えマウス。
実施形態11A. IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態1A~10Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態12A. IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1A~11Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態13A. マウスが、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態1A~12Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態14A. マウスが、野生型Ig Aタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態1A~14Aのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態15A. 内因性IgH遺伝子座に組換え免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含む生殖細胞系列ゲノムを含む組換え非ヒト動物であって;上記組換えIgHアレルが内因性重鎖C領域遺伝子を欠如しており;且つ上記内因性重鎖C領域遺伝子がCμ、Cδ、Cε、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c又はそれらの組み合わせを含む、上記組換え非ヒト動物。
実施形態16A. IgHアレルが、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失を含む、実施形態15Aの組換え非ヒト動物。
実施形態17A. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインがエクソン1を含む、実施形態16Aの組換え非ヒト動物。
実施形態18A. IgH遺伝子座が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を含む、実施形態15A~17Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態19A. IgH遺伝子座が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を含む、実施形態15A~18Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態20A. エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsRI又はそれらの組み合わせである、実施形態19Aの組換え非ヒト動物。
実施形態21A. IgH遺伝子座が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列を含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、実施形態15A~20Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態22A. 非ヒト動物がIgG重鎖抗体を発現する、実施形態15A~21Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態23A. IgG重鎖抗体がIgG1重鎖抗体を含む、実施形態22Aの組換え非ヒト動物。
実施形態24A. IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、実施形態22A~23Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態25A. IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態22A~24Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態26A. IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態22A~25Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態27A. 非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態15A~26Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態28A. 非ヒト動物が、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態15A~27Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態29A. IgH遺伝子座が、内因性V、D、又はJ遺伝子を含む、実施形態15A~28Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態30A. 組換え非ヒト動物が、組換えIgHアレルについてホモ接合性である、実施形態15A~29Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態31A. 内因性IgH遺伝子座が外因性核酸配列を含まない、実施形態15A~30Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態32A. 内因性IgH遺伝子座が外因性核酸配列を含む、実施形態15A~30Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態33A. 外因性核酸配列がバーコードを含む、実施形態32Aの組換え非ヒト動物。
実施形態34A. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態15A~33Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態35A. 哺乳動物が、マウス又はラットである、実施形態34Aの組換え非ヒト動物。
実施形態36A. 重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物の幹細胞において内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップ;(b) 上記幹細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 上記胚盤胞を偽妊娠マウスに移植してキメラマウスを得るステップ;(d) 上記キメラマウスを野生型マウスに対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 上記子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の重鎖C領域遺伝子の欠失を有する創始マウスを同定するステップを含み、ここで前記非ヒト動物は重鎖抗体を産生することができる、上記方法。
実施形態37A. 幹細胞が胚性幹細胞である、実施形態36Aに記載の方法。
実施形態38A. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子が、Cμ、Cδ、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c、Cε、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態36A~37Aのいずれか1つの方法。
実施形態39A. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメイン及びCγ1のCH1エクソンをコードする核酸配列を欠失させるステップをさらに含む、実施形態36A~38Aのいずれか1つの方法。
実施形態40A. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失がエクソン1を含む、実施形態39Aの方法。
実施形態41A. ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を保存するステップをさらに含む、実施形態36A~40Aのいずれか1つの方法。
実施形態42A. 内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含む、実施形態36A~41Aのいずれか1つの方法。
実施形態43A. エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsRI又はそれらの組み合わせである、実施形態42Aの方法。
実施形態44A. スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、実施形態36A~43Aのいずれか1つの方法。
実施形態45A. 重鎖抗体がIgG重鎖抗体である、実施形態36A~44Aのいずれか1つの方法。
実施形態46A. IgG重鎖抗体がIgG1重鎖抗体を含む、実施形態45Aの方法。
実施形態47A. IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、実施形態46Aの方法。
実施形態48A. IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態45A~47Aのいずれか1つの方法。
実施形態49A. IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態45A~48Aのいずれか1つの方法。
実施形態50A. 非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態36A~49Aのいずれか1つの方法。
実施形態51A. 非ヒト動物が、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態36A~50Aのいずれか1つの方法。
実施形態52A. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態36A~51Aのいずれか1つの方法。
実施形態53A. 哺乳動物がマウス又はラットである、実施形態52Aの方法。
実施形態54A. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップが、CRISPR/Cas9ゲノム編集を含む、実施形態36A~53Aのいずれか1つの方法。
実施形態55A. 遺伝子改変非ヒト動物が繁殖性である、実施形態36A~54Aのいずれか1つの方法。
実施形態56A. 遺伝子改変非ヒト動物が、実質的に正常なB細胞の発達及び成熟を有する、実施形態36A~55Aのいずれか1つの方法。
実施形態57A. 遺伝子改変非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態36A~56Aのいずれか1つの方法。
実施形態58A. 実施形態36A~57Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物において可溶性重鎖抗体を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 上記非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 上記1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;(d) 上記mRNAを配列決定するステップ;(e) 上記mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップ;及び(f) 上記クローン型の系統発生解析を実施するステップを含み、これにより可溶性重鎖抗体を産生する、上記方法。
実施形態59A. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態58Aの方法。
実施形態60A. 哺乳動物がマウス又はラットである、実施形態59Aの方法。
実施形態61A. 実施形態36A~57Aのいずれか1つの組換え非ヒト動物から同定される単一ドメイン抗体(sdAb)を産生する方法であって、(a) 細胞中でV、D及びJを含む重鎖可変(VH)ドメインをコードする核酸配列を発現させるステップであって、上記細胞が重鎖可変ドメインを産生する、上記ステップ;及び(b) サンプルから重鎖可変ドメインを単離するステップを含み、これにより単一ドメイン抗体を産生する、上記方法。
実施形態62A. 単一ドメイン抗体がマウスの単一ドメイン抗体である、実施形態61Aの方法。
実施形態63A. 単一ドメイン抗体がIgG1単一ドメイン抗体である、実施形態62Aの方法。
実施形態64A. IgG1単一ドメイン抗体がIgG1ΔCH1ナノボディである、実施形態63Aの方法。
実施形態65A. 単一ドメイン抗体が軽鎖を欠如している、実施形態61A~64Aのいずれか1つの方法。
実施形態66A. 単一ドメイン抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを欠如している、実施形態61A~65Aのいずれか1つの方法。
【0287】
実施形態1B. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む核酸配列の欠失を含む生殖細胞系列改変を含む遺伝子組換えマウスであって;上記マウスがヒト化IgG重鎖抗体を発現し、且つその血清中にヒト化IgG重鎖抗体を分泌する、上記遺伝子組換えマウス。
実施形態2B. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子が、IgM C領域遺伝子(Cμ)、IgD C領域遺伝子(Cδ)、IgE C領域遺伝子(Cε)、IgG3 C領域遺伝子(Cγ3)、IgG2b C領域遺伝子(Cγ2b)、IgG2c C領域遺伝子(Cγ2c)、又はそれらの組み合わせである、実施形態1Bの遺伝子組換えマウス。
実施形態3B. IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失をさらに含む、実施形態1B~2Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態4B. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失が、エクソン1を含む、実施形態3Bの遺伝子組換えマウス。
実施形態5B. 生殖細胞系列改変が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列をさらに含む、実施形態1B~4Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態6B. 生殖細胞系列改変が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列をさらに含む、実施形態1B~5Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態7B. エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsRI又はそれらの組み合わせである、実施形態6Bの遺伝子組換えマウス。
実施形態8B. 生殖細胞系列改変が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列をさらに含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、実施形態1B~7Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態9B. ヒト化IgG重鎖抗体がヒト化IgG1重鎖抗体を含む、実施形態1B~8Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態10B. ヒト化IgG1重鎖抗体がIgG1ΔCH1タンパク質である、実施形態9Bの遺伝子組換えマウス。
実施形態11B. ヒト化IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態1B~10Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態12B. ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1B~11Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態13B. マウスが、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態1B~12Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態14B. マウスが、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態1B~14Bのいずれか1つの遺伝子組換えマウス。
実施形態15B. 内因性IgH遺伝子座に組換え免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルを含む生殖細胞系列ゲノムを含む組換え非ヒト動物であって;上記組換えIgHアレルが内因性重鎖C領域遺伝子を欠如しており;且つ上記内因性重鎖C領域遺伝子がCμ、Cδ、Cε、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c又はそれらの組み合わせを含む、上記組換え非ヒト動物。
実施形態16B. IgHアレルが、IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失を含む、実施形態15Bの組換え非ヒト動物。
実施形態17B. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインがエクソン1を含む、実施形態16Bの組換え非ヒト動物。
実施形態18B. IgH遺伝子座が、ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を含む、実施形態15B~17Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態19B. IgH遺伝子座が、内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を含む、実施形態15B~18Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態20B. エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsRI又はそれらの組み合わせである、実施形態19Bの組換え非ヒト動物。
実施形態21B. IgH遺伝子座が、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列を含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、実施形態15B~20Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態22B. 非ヒト動物が、ヒト化IgG重鎖抗体を発現する、実施形態15B~21Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態23B. ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒト化IgG1重鎖抗体を含む、実施形態22Bの組換え非ヒト動物。
実施形態24B. ヒト化IgG1重鎖抗体が、IgG1ΔCH1タンパク質である、実施形態22B~23Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態25B. ヒト化IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態22B~24Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態26B. ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態22B~25Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態27B. 非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態15B~26Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態28B. 非ヒト動物が、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態15B~27Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態29B. IgH遺伝子座が、ヒトV、D、又はJ遺伝子を含む、実施形態15B~28Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態30B. 組換え非ヒト動物が、組換えIgHアレルについてホモ接合性である、実施形態15B~29Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態31B. 内因性IgH遺伝子座が外因性核酸配列を含む、実施形態15B~30Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態32B. 外因性核酸配列が、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のJH遺伝子セグメントを含む、実施形態15B~31Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態33B. 外因性核酸配列が、65個のヒトVH遺伝子セグメントを含む、実施形態15B~32Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態34B. 外因性核酸配列が、27個のヒトDH遺伝子セグメントを含む、実施形態15B~32Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態35B. 外因性核酸配列が、6個のJH遺伝子セグメントを含む、実施形態15B~32Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態36B. 外因性核酸配列が、65個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び6個のJH遺伝子セグメントを含む、実施形態15B~35Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態37B. 外因性核酸配列がバーコードを含む、実施形態31Bの組換え非ヒト動物。
実施形態38B. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態15B~37Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物。
実施形態39B. 哺乳動物がマウス又はラットである、実施形態38Bの組換え非ヒト動物。
実施形態40B. ヒト化重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物の幹細胞において内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップ;(b) 上記幹細胞を胚盤胞に移植するステップ;(c) 上記胚盤胞を偽妊娠マウスに移植してキメラマウスを得るステップ;(d) 上記キメラマウスを野生型マウスに対して交配し子孫を産生させるステップ;(e) 上記子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び(f) 1つ以上の重鎖C領域遺伝子の欠失を有する創始マウスを同定するステップを含み、ここで前記非ヒト動物はヒト化重鎖抗体を産生することができる、上記方法。
実施形態41B. 幹細胞が胚性幹細胞である、実施形態40Bの方法。
実施形態42B. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子が、Cμ、Cδ、Cγ3、Cγ2b、Cγ2c、Cε、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態40B~41Bのいずれか1つの方法。
実施形態43B. IgG1 C領域遺伝子(Cγ1)のCH1ドメインをコードする核酸配列を欠失させるステップをさらに含む、実施形態40B~42Bのいずれか1つの方法。
実施形態44B. IgG1 C領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失がエクソン1を含む、実施形態43Bの方法。
実施形態45B. ヒンジ(H)ドメイン、重鎖CH2ドメイン、重鎖CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせをコードする天然核酸配列を保存するステップをさらに含む、実施形態40B~44Bのいずれか1つの方法。
実施形態46B. 内因性エンハンサーを含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含む、実施形態40B~45Bのいずれか1つの方法。
実施形態47B. エンハンサーが、Eμ、3'RR、3'γ1E、5'hsRI又はそれらの組み合わせである、実施形態46Bの方法。
実施形態48B. スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む天然核酸配列を保存するステップをさらに含み、ここでSμはIgG1発現を駆動する、実施形態40B~47Bのいずれか1つの方法。
実施形態49B. ヒト化重鎖抗体が、ヒト化IgG重鎖抗体である、実施形態40B~48Bのいずれか1つの方法。
実施形態50B. ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒト化IgG1重鎖抗体を含む、実施形態49Bの方法。
実施形態51B. IgG1重鎖抗体が、IgG1ΔCH1タンパク質である、実施形態50Bの方法。
実施形態52B. ヒト化IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態50B~51Bのいずれか1つの方法。
実施形態53B. ヒト化IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態49B~52Bのいずれか1つの方法。
実施形態54B. 非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態40B~53Bのいずれか1つの方法。
実施形態55B. 非ヒト動物が、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態40B~54Bのいずれか1つの方法。
実施形態56B. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態40B~55Bのいずれか1つの方法。
実施形態57B. 哺乳動物がマウス又はラットである、実施形態56Bの方法。
実施形態58B. 1つ以上の重鎖C領域遺伝子を含む内因性核酸配列を欠失させるステップが、CRISPR/Cas9ゲノム編集を含む、実施形態40B~57Bのいずれか1つの方法。
実施形態59B. 遺伝子改変非ヒト動物が繁殖性である、実施形態40B~58Bのいずれか1つの方法。
実施形態60B. 遺伝子改変非ヒト動物が、実質的に正常なB細胞の発達及び成熟を有する、実施形態40B~59Bのいずれか1つの方法。
実施形態61B. 遺伝子改変非ヒト動物が、野生型IgMタンパク質、野生型IgDタンパク質、野生型IgEタンパク質、野生型IgG3タンパク質、野生型IgAタンパク質、野生型IgG2bタンパク質、野生型IgG2cタンパク質、又はそれらの組み合わせを発現しない、実施形態40B~60Bのいずれか1つの方法。
実施形態62B. 実施形態40B~61Bのいずれか1つの組換え非ヒト動物において可溶性ヒト化重鎖抗体を産生する方法であって、(a) 非ヒト動物に抗原を投与するステップ;(b) 上記非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;(c) 上記1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;(d) 上記mRNAを配列決定するステップ;(e) 上記mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップ;及び(f) 上記クローン型の系統発生解析を実施するステップを含み、これにより可溶性ヒト化重鎖抗体を産生する、上記方法。
実施形態63B. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態62Bの方法。
実施形態64B. 哺乳動物が、マウス又はラットである、実施形態63Bの方法。
実施形態65B. 実施形態40~61のいずれか1つの組換え非ヒト動物から同定されるヒト化単一ドメイン抗体(sdAb)を産生する方法であって、(a) 細胞中でV、D及びJを含むヒト重鎖可変(VH)ドメインをコードする核酸配列を発現させるステップであって、上記細胞がヒト重鎖可変ドメインを産生する、上記ステップ;及び(b) サンプルからヒト重鎖可変ドメインを単離するステップを含み、これにより単一ドメイン抗体を産生する、上記方法。
実施形態66B. 単一ドメイン抗体がヒト単一ドメイン抗体である、実施形態65Bの方法。
実施形態67B. 単一ドメイン抗体がIgG1単一ドメイン抗体である、実施形態66Bの方法。
実施形態68B. IgG1単一ドメイン抗体がIgG1ΔCH1ナノボディである、実施形態67Bの方法。
実施形態69B. 単一ドメイン抗体が軽鎖を欠如している、実施形態65B~68Bのいずれか1つの方法。
実施形態70B. 単一ドメイン抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを欠如している、実施形態65B~69Bのいずれか1つの方法。
実施形態71B. 細胞が、細菌細胞又はヒト細胞である、実施形態65B~70Bのいずれか1つの方法
【0288】
実施形態1C. 遺伝子改変非ヒト免疫グロブリン重鎖(IGH)アレルを含むDNAであって、上記遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如している、上記DNA。
実施形態2C. DNAが生殖細胞系列ゲノムDNAである、実施形態2CのDNA。
実施形態3C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgGサブクラスのCH1定常ドメインを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如している、実施形態1C~2Cのいずれか1つのDNA。
実施形態4C. IgGサブクラスが、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含む、実施形態3CのDNA。
実施形態5C. IgGサブクラスが、IgG1サブクラスである、実施形態3CのDNA。
実施形態6C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、CH1切断型IgG1定常ドメイン(IgG1ΔCH1)をコードする核酸配列(Cγ1-ΔCH1)を含む、実施形態1C~5Cのいずれか1つのDNA。
実施形態7C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgGサブクラスのヒンジ(H)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸配列を含む、実施形態1C~6Cのいずれか1つのDNA。
実施形態8C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgG2定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする1つ以上の核酸配列を欠如している、実施形態1C~7Cのいずれか1つのDNA。
実施形態9C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、Eμ、3'γ1E、5'hsR1、3'RR、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性エンハンサーを含む、実施形態1C~8Cのいずれか1つのDNA。
実施形態10C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、Iμプロモーター、Iμエクソン、又はその両方を含む、実施形態1C~9Cのいずれか1つのDNA。
実施形態11C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、スイッチタンデムリピートエレメント(Sμ)を含む、実施形態1C~10Cのいずれか1つのDNA。
実施形態12C. IgG1発現が、Eμ、Iμプロモーター、Sμ、又はそれらの任意の組み合わせにより駆動される、実施形態1C~11Cのいずれか1つのDNA。
実施形態13C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、Sγ3、Sγ1、Sγ2b、Sγ2c、Sε、Sα、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性スイッチ領域を欠如している、実施形態1C~12Cのいずれか1つのDNA。
実施形態14C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、以下の成分(5'から3'へ):Eμ、Iμプロモーター、Iμエクソン、Sμ、Cγ1-ΔCH1、3'γ1E、5'hsR1、及び3'RRを含む、実施形態1C~13Cのいずれか1つのDNA。
実施形態15C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、フリッパーゼ認識標的(frt)部位を含む、実施形態1C~14Cのいずれか1つのDNA。
実施形態16C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1C~15Cのいずれか1つのDNA。
実施形態17C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、少なくとも1個の内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを欠如している、実施形態1C~16Cのいずれか1つのDNA。
実施形態18C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルがドッキングカセットを含む、実施形態1C~17Cのいずれか1つのDNA。
実施形態19C. ドッキングカセットが、左及び右ホモロジーアーム、frt部位、attB部位、プロモーター、loxP部位、選択マーカーをコードする核酸配列、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態18CのDNA。
実施形態20C. ドッキングカセットが、選択マーカーをコードする核酸配列を含む、実施形態18CのDNA。
実施形態21C. 選択マーカーが、ジェネティシン、ハイドロマイシン(hydromycin)、ピューロマイシン又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態20CのDNA。
実施形態22C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、IgG重鎖抗体をコードする、実施形態1C~21Cのいずれか1つのDNA。
実施形態23C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、外因性V遺伝子セグメント、外因性D遺伝子セグメント、外因性J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1C~22Cのいずれか1つのDNA。
実施形態24C. 外因性遺伝子セグメントが、ヒト遺伝子セグメント、マウス遺伝子セグメント、ラット遺伝子セグメント、ウシ遺伝子セグメント、アルパカ遺伝子セグメント、及びサメ遺伝子セグメントからなる群から選択される、実施形態23CのDNA。
実施形態25C. 外因性遺伝子セグメントがヒト遺伝子セグメントを含む、実施形態23CのDNA。
実施形態26C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、1個以上のヒトVH遺伝子セグメント、1個以上のヒトDH遺伝子セグメント、及び1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~25Cのいずれか1つのDNA。
実施形態27C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、120、又は126個のヒトVH遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~26Cのいずれか1つのDNA。
実施形態28C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、少なくとも10、15、20、25、又は27個のヒトDH遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~27Cのいずれか1つのDNA。
実施形態29C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~28Cのいずれか1つのDNA。
実施形態30C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、126個のヒトVH遺伝子セグメント、27個のヒトDH遺伝子セグメント、及び9個のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~29Cのいずれか1つのDNA。
実施形態31C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、1個以上のウシ遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~30Cのいずれか1つのDNA。
実施形態32C. 1個以上のウシ遺伝子セグメントが、L1エクソン、IGHV1-7のL2エクソン、IGHD8-2のコーディングセグメント、IGHJ2-4のコーディング配列、IGH2-4スプライスドナー、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態31CのDNA。
実施形態33C. 1個以上のウシ遺伝子セグメントが、IGHD4-1、IGHD5-3、IGHD8-2、IGHD1-3、IGHD7-3、IGHD7-4、IGHD6-3、IGHD3-3、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態31C-32Cのいずれか1つのDNA。
実施形態34C. 1個以上のウシ遺伝子セグメントが、配列番号42~49及び57から選択される核酸配列を含む、実施形態31C~33Cのいずれか1つのDNA。
実施形態35C. DNAが、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含む、実施形態32C~34Cのいずれか1つのDNA。
実施形態36C. DNAが、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態32C~35Cのいずれか1つのDNA。
実施形態37C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、1個以上のアルパカ遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~36Cのいずれか1つのDNA。
実施形態38C. 1個以上のアルパカ遺伝子セグメントが、VHH3-1、VHH3-S1、VHH3-S2、VHH3-S9、VHH3-S10、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態37CのDNA。
実施形態39C. アルパカ遺伝子セグメントが、配列番号50~54から選択される核酸配列を含む、実施形態37C~38Cのいずれか1つのDNA。
実施形態40C. DNAが、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含む、実施形態37C~39Cのいずれか1つのDNA。
実施形態41C. DNAが、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態37C~40Cのいずれか1つのDNA。
実施形態42C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、1個以上のサメ遺伝子セグメントを含む、実施形態1C~41Cのいずれか1つのDNA。
実施形態43C. 1個以上のサメ遺伝子セグメントが、VNAR-L38968、VNAR-L38967、又はその両方を含む、実施形態42CのDNA。
実施形態44C. サメ遺伝子セグメントが、配列番号55~56から選択される核酸配列を含む、実施形態42C~43Cのいずれか1つのDNA。
実施形態45C. DNAが、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含む、実施形態42C~44Cのいずれか1つのDNA。
実施形態46C. DNAが、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態42C~45Cのいずれか1つのDNA。
実施形態47C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルがIgG重鎖抗体をコードし、且つ上記IgG重鎖抗体が、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含む、実施形態1C~46Cのいずれか1つのDNA。
実施形態48C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、1個以上の外因性ヒトラムダ軽鎖(LV)遺伝子セグメントを含む、実施形態47CのDNA。
実施形態49C. 1個以上のヒトLV遺伝子セグメントが、CH17-262M19、CH17-329P5、CH17-238D3、CH17-261A15、CH17-264L24、CH17-117C7、RP11-1040J16、CH17-320F4又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態48CのDNA。
実施形態50C. 遺伝子改変非ヒトIgHアレルが、1個以上の外因性ヒトカッパ軽鎖(KV)遺伝子セグメントを含む、実施形態47C~49Cのいずれか1つのDNA。
実施形態51C. 1個以上のヒトKV遺伝子セグメントが、CH17-272M2、CH17-405H5、CH17-140P2、CH17-13E7、CH17-84J8、CH17-53L15、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態50CのDNA。
実施形態52C. DNAが、1個以上のヒトVH遺伝子セグメントを含む、実施形態47C~51Cのいずれか1つのDNA。
実施形態53C. DNAが、1個以上のヒトJH遺伝子セグメントを含む、実施形態47C~52Cのいずれか1つのDNA。
実施形態54C. 実施形態1C~53Cのいずれか1つのDNAを含む、遺伝子改変細胞。
実施形態55C. 細胞が非ヒト動物細胞である、実施形態54Cの細胞。
実施形態56C. 細胞が哺乳動物細胞である、実施形態54Cの細胞。
実施形態57C. 哺乳動物細胞が、マウス、ラット、ウシ、アルパカ、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、サル、又はチンパンジーの細胞である、実施形態56Cの細胞。
実施形態58C. 細胞がマウス細胞である、実施形態54Cの細胞。
実施形態59C. 細胞がサメ細胞である、実施形態54Cの細胞。
実施形態60C. 細胞がヒト細胞である、実施形態54Cの細胞。
実施形態61C. 細胞が幹細胞である、実施形態54C~60Cのいずれか1つの細胞。
実施形態62C. 幹細胞が、胚性幹細胞(ESC)又は人工多能性幹細胞(iPSC)である、実施形態61Cの細胞。
実施形態63C. 細胞がB細胞である、実施形態54C~60Cのいずれか1つの細胞。
実施形態64C. 遺伝子改変非ヒト動物が、実施形態54C~63Cのいずれか1つの細胞を含む、遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態65C. 非ヒト動物が哺乳動物である、実施形態64Cの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態66C. 哺乳動物が、マウス、ラット、ウシ、アルパカ、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、サル、又はチンパンジーである、実施形態65Cの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態67C. 非ヒト動物がマウスである、実施形態64Cの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態68C. 遺伝子改変非ヒト動物が、IgG重鎖抗体を発現する細胞を含む、実施形態64C~67Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態69C. IgG重鎖抗体が、遺伝子改変非ヒト動物の血清中に分泌される、実施形態68Cの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態70C. IgG重鎖抗体が、CH1切断型IgG1重鎖抗体(IgG1ΔCH1)である、実施形態68C~69Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態71C. IgG重鎖抗体が軽鎖を欠如している、実施形態68C~70Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態72C. IgG重鎖抗体が、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態68C~71Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態73C. IgG重鎖抗体を発現する細胞が、IgM抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG3抗体、IgG2b抗体、IgG2c抗体、IgA抗体又はそれらの任意の組み合わせは発現しない、実施形態68C~72Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態74C. IgG重鎖抗体がヒトIgG重鎖抗体である、実施形態68C~73Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態75C. IgG重鎖抗体が、ヒト可変ドメイン、マウス可変ドメイン、ラット可変ドメイン、ウシ可変ドメイン、アルパカ可変ドメイン及びサメ可変ドメインからなる群から選択される外因性可変ドメインを含む、実施形態68C~74Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態76C. IgG重鎖抗体が、カッパ軽鎖可変ドメイン、ラムダ軽鎖可変ドメイン、又はその両方を含む、実施形態68C~75Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態77C. 生殖細胞系列ゲノムDNAを調製するための方法であって、非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルから1つ以上の核酸配列を欠失させるステップを含み、ここで欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードし、これにより生殖細胞系列ゲノムDNAにおいて遺伝子改変非ヒトIgHアレルを生成する、上記方法。
実施形態78C. 生殖細胞系列ゲノムDNAが、実施形態1C~53Cのいずれか1つのDNAを含む、実施形態77Cの方法。
実施形態79C. IgG 定常ドメインが、IgGサブクラスの定常ドメインを含む、実施形態77C~78Cのいずれか1つの方法。
実施形態80C. IgGサブクラスが、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、又はIgG4サブクラスを含む、実施形態79Cの方法。
実施形態81C. 遺伝子改変非ヒト動物を作製するための方法であって、以下のステップ:
(a) 非ヒト免疫グロブリン重鎖(IGH)アレルから1つ以上の核酸配列を欠失させるステップであって、ここで欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードし、これにより生殖細胞系列ゲノムDNAにおいて遺伝子改変非ヒトIgHアレルを生成する、上記ステップ;
(b) 生殖細胞系列ゲノムDNAを含む細胞を胚盤胞に移植するステップ;
(c) 上記胚盤胞を偽妊娠非ヒト動物に移植してキメラ非ヒト動物を得るステップ;
(d) 上記キメラ非ヒト動物を野生型非ヒト動物に対して交配し子孫を産生させるステップ;
(e) 上記子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングするステップ;及び
(f) 1つ以上の核酸配列の欠失を有し且つ重鎖抗体を産生することができる遺伝子改変非ヒト動物を同定するステップ
を含む、上記方法。
実施形態82C. 遺伝子改変非ヒト動物が、実施形態64C~76Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物である、実施形態81Cの方法。
実施形態83C. 1つ以上の核酸配列を欠失させるステップは、CRISPR/Casゲノム編集系を使用するステップを含む、実施形態81C~82Cのいずれか1つの方法。
実施形態84C. CRISPR/Casゲノム編集系が、内因性重鎖C領域遺伝子を標的とする少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とCasタンパク質とを含む、実施形態83Cの方法。
実施形態85C. Casタンパク質が、Cas9タンパク質を含む、実施形態83C~84Cのいずれか1つの方法。
実施形態86C. 欠失される1つ以上の核酸配列が、IgG1のCH1定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgM定常ドメイン、及びIgD定常ドメインをコードする、実施形態81C~85Cのいずれか1つの方法。
実施形態87C. 欠失される1つ以上の核酸配列が、IgG2定常ドメイン及びIgA定常ドメインをコードする、実施形態81C~86Cのいずれか1つの方法。
実施形態88C. 核酸配列を欠失させるステップが、Flpリコンビナーゼの一過性発現を用いて非ヒトIgHアレルから選択マーカーを除去するステップを含む、実施形態81C~87Cのいずれか1つの方法。
実施形態89C. 欠失される1つ以上の核酸配列が、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、及びIgA定常ドメインをコードする、実施形態81C~88Cのいずれか1つの方法。
実施形態90C. 非ヒトIgHアレルから核酸配列を欠失させるステップを含み、上記核酸配列が、内因性V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態81C~89Cのいずれか1つの方法。
実施形態91C. ドッキングカセットを挿入するステップを含む、実施形態81C~90Cのいずれか1つの方法。
実施形態92C. ドッキングカセットと細菌人工染色体(BAC)を接触させるステップを含み、上記BACが、外因性VH、DH、及びJH遺伝子セグメントを含む核酸配列を含む、実施形態91Cの方法。
実施形態93C. 外因性遺伝子セグメントをドッキングカセット(docketing cassette)に挿入するステップを含む、実施形態92Cの方法。
実施形態94C. 外因性遺伝子セグメントがヒト遺伝子セグメントである、実施形態92C~93Cのいずれか1つの方法。
実施形態95C. 実施形態81C~94Cのいずれか1つの方法を使用して作製される、遺伝子改変非ヒト動物。
実施形態96C. 遺伝子改変非ヒト動物においてIgG重鎖抗体を産生する方法であって、以下のステップ:
(a) 抗原を実施形態64C~76Cのいずれか1つの遺伝子改変非ヒト動物に投与するステップ;
(b) 遺伝子改変非ヒト動物から1つ以上のB細胞を単離するステップ;
(c) 1つ以上のB細胞からmRNAを単離するステップ;及び
(d) IgG重鎖抗体を産生するステップ
を含む、上記方法。
実施形態97C. 遺伝子改変非ヒト動物が、実施形態1C~53Cのいずれか1つのDNAを含む、実施形態96Cに記載の方法。
実施形態98C. 1つ以上のB細胞から単離されたmRNAを配列決定するステップを含む、実施形態96C~97Cのいずれか1つの方法。
実施形態99C. mRNA配列に基づいてクローン型を同定するステップを含む、実施形態96C~98Cのいずれか1つの方法。
実施形態100C. クローン型の系統発生解析を実施するステップを含む、実施形態99Cの方法。
実施形態101C. IgG重鎖抗体がヒト化IgG重鎖抗体である、実施形態96C~100Cのいずれか1つの方法。
実施形態102C. IgG重鎖抗体が、ヒト可変領域と非ヒト定常領域とを含むIgG重鎖抗体である、実施形態96C~100Cのいずれか1つの方法。
実施形態103C. 実施形態96C~102Cのいずれか1つの方法により産生される、IgG重鎖抗体。
実施形態104C. Casタンパク質と少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含むCRISPR/Casゲノム編集系をコードする少なくとも1つの核酸構築物を含む組換えベクター系であって、上記Casタンパク質と少なくとも1つのgRNAが、非ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)アレルから1つ以上の核酸配列を欠失させる複合体を形成し、ここで欠失される1つ以上の核酸配列は、IgGサブクラスのCH1定常ドメイン、IgM定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgA定常ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の内因性定常ドメインの少なくとも一部をコードする、上記組換えベクター系。
【0289】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明に関連して記載されているが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであって、この範囲を限定することを意図するものではなく、他の態様、利点、及び改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが理解される。
【0290】
この明細書において言及される全ての参考文献、刊行物、特許、及び特許出願は、参照により、あたかも各個別の刊行物、特許、及び特許出願が具体的に且つ個別に示されて参照により組み込まれるのと同程度に本明細書中に組み込まれる。
【0291】
この開示は、その実施例の実施形態に関連して特に示され且つ記載されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その実施形態において形態及び詳細の様々な変更を行い得ることを理解するであろう。
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【配列表】
2024518435000001.app
【国際調査報告】