(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両シートを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20240423BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20240423BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/75
B60R21/207
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568691
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022061108
(87)【国際公開番号】W WO2022238113
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021002469.9
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オエツトゥルク アブドゥルカディル
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レッシ フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】コフラー デジリー
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3D054AA07
3D054AA21
3D054EE20
(57)【要約】
本発明は、シートバック(1.1)と座面を形成するシートクッション(1.2)とを含む、車両シート(1)を備えた車両(F)に関する。ガスを充填可能及び排出可能な、アームレスト(A)を形成するための空気室(2.1)を有するエアクッション(2)がシートバック(1.1)の側部領域に配置され、空気室(2.1)が、通常動作において分離され、ガスを装填されず、かつガス発生器に流体的に結合された追加の空気室セクションと、エアクッション(2)が、ガス発生器に流体的に結合され、通常動作において空気室(2.1)から分離された、車両(F)の衝突発生時に装填するための別の空気室(2.2)との少なくとも何れかを有し、空気室セクション及び/又は別の空気室(2.2)はガス発生器のガスを装填することによって、車両シート(1)上の乗員と車両(F)のトリム部分との間、乗員と別の乗員との間で少なくとも部分的に展開する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック(1.1)と座面を形成するシートクッション(1.2)とを含む、車両シート(1)を備えた車両(F)において、
-ガスを充填可能及び排出可能な、アームレスト(A)を形成するための少なくとも1つの空気室(2.1)を有する少なくとも1つのエアクッション(2)が前記シートバック(1.1)の少なくとも1つの側部領域に配置され、
-前記少なくとも1つの空気室(2.1)が、通常動作において分離されて、ガスを装填されず、かつ少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された少なくとも1つの追加の空気室セクションを有し、並びに/或いは
-前記エアクッション(2)が、前記少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された、かつ少なくとも前記通常動作において前記空気室(2.1)から分離された、前記車両(F)の衝突発生時にガスを装填するための少なくとも1つの別の空気室(2.2)を有し、
-前記空気室セクション及び/又は前記別の空気室(2.2)は、前記少なくとも1つのガス発生器のガスを装填することによって、前記車両シート(1)上の乗員と前記車両(F)のトリム部分との間、及び/又は前記乗員と別の乗員との間で少なくとも部分的に展開する
ことを特徴とする、車両(F)。
【請求項2】
前記追加の空気室セクションは、前記エアクッション(2)の前記通常動作において、流体密に形成された引き裂き継目によって前記少なくとも1つの空気室(2.1)から分離されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両(F)。
【請求項3】
装填状態において前記エアクッション(2)に形状付与するための多数の保持ストラップ(3)が前記少なくとも1つの空気室(2.1)に配置されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両(F)。
【請求項4】
前記空気室(2.1)、前記追加の空気室セクション、及び/又は前記別の空気室(2.1)はそれぞれ、圧力に依存して制御される、時間に依存して制御される、及び/又は、能動的に制御可能である、少なくとも1つの流出開口(S)を有する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項5】
前記エアクッション(2)の前記少なくとも1つの空気室(2.1)は、調節可能な、かつ所定のガス容積を有するガス供給ユニットに流体的に結合されている
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項6】
前記ガス供給ユニットは、車両室内に配置された操作要素に結合されている
ことを特徴とする、請求項5に記載の車両(F)。
【請求項7】
前記エアクッション(2)は、アームレスト(A)を形成するための多数の空気室(2.1)を含み、前記空気室(2.1)は、前記装填状態において、シートバック設定及び/又はシートクッション設定に依存して様々に充填されている
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項8】
前記エアクッション(2)は、少なくとも部分的に、前記車両(F)の前記シートバック(1.1)及び前記シートクッション(1.2)に沿って延びる
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項9】
前記アームレスト(A)を形成するための前記少なくとも1つの空気室(2.1)の前記流出開口(S)は、前記車両シート(1)の直近の領域において車両ドアが開いた場合に開くように形成されている
ことを特徴とする、請求項4、及び請求項4に従属する請求項5~8のいずれか一項に記載の車両(F)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックと座面を形成するシートクッションとを含む車両シートを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102008029339号公報から、自動車のための車両シートが知られている。車両シートは、少なくとも1つの詰め物領域に、この領域の体積を変更できる少なくとも1つの調整要素を含む。通常動作において、着座する乗員が座席の輪郭を変更するために設けられたこの調整要素は、自動車の衝突前又は衝突時には自動的に保護構成にすることができる。
【0003】
独国特許出願公開第19950702号公報には、座面が中央部分の上面と、中央部分に対してわずかに上方に突き出た2つの側面部とによって形成される詰め物入りの座席部分と、もたれ面が中央部の前面と中央部に対してわずかに前方に突き出た2つの側面部とによって形成される詰め物入りのバックレストと、を備えた自動車シートが記載されている。側面衝突時には、自動車シートに着座する車両乗員をより良く拘束し、侵入物による負傷からより良く保護するために、それぞれの中央部分の突出を大きくするべくシート部分の側面部及び/又はバックレストのうちの少なくとも1つを膨らませることができることが企図されている。
【0004】
少なくとも1つの車両シート、特に運転席を備えた車両が、独国特許出願公開第102014016351号公報に開示されている。車両シートは、車両の垂直軸を中心に少なくとも部分的に回転可能に支持され、かつ乗員保護手段として形成されたアームレストを有する。アームレスト及び/又はアームレストの少なくとも1つの構成要素は、乗員保護のためにアームレスト及び/又は少なくとも1つの構成要素を車両シート上の乗員に対して初期位置から作用位置に位置決めできるように制御可能である。
【0005】
更に、独国特許出願公開第102018124649号公報は、1つのシートバックレストと2つのアームレストセクションと2つのエアバッグとを備えたシートを開示している。各アームレストセクションは、前方方向に延びる収納位置からシートバックレストの前に延びる繰り出し位置へ垂直軸を中心に回転可能にシートバックに結合されている。各エアバッグはアームレストセクションの1つに固定されており、シートバックレストに対して一方のエアバッグが他方のエアバッグの前に配置される膨らみ位置まで膨らませることができる。
【0006】
米国特許出願公開第2003/0184061号公報から、車両の側面衝突時に乗員と車両の側壁との間でエアバッグを作動させて乗員を保護するサイドエアバッグ装置が知られている。サイドエアバッグ装置は、第1のエアバッグと第2のエアバッグとを備えている。第1のエアバッグは管状に形成され、一端が車両シートのシートバックに取り付けられ、他端が車両シートのシートクッションの一箇所に取り付けられている。第2のエアバッグは管状に形成され、第2のエアバッグの一端は車両のシートバックに取り付けられ、他端はシートクッションに取り付けられている。このサイドエアバッグ装置では、第2のエアバッグの端の位置が、第1のエアバッグの端の位置よりも高いところに配置されている。
【0007】
更に、独国特許出願公開第102017010794号公報は、初期位置から作用位置へ位置決め可能であり、アームレストから展開する少なくとも1つのエアバッグを有する乗員保護装置を備えた車両シートを開示している。アームレストは、駐車位置においてシートバックの側面部に配置されていて、エアバッグは、車両シートが車両の長手方向で前方に向いた状態で車両シート上の乗員と車両部品との間で展開し、アームレストは、車両シートが車両の長手方向で前方とは異なる方向を向いた状態で側面部から倒れた位置において、アームレストにあるエアバッグ出口開口を所定の条件に応じて車両シート上の乗員に対して向きを合わせることができるように自動的に位置決め可能である。
【0008】
独国特許出願公開第10345677号公報から、輸送手段におけるシートにアームレストを旋回可能に支持するための旋回軸受が知られている。旋回軸受は、少なくともアームレストが所定の旋回位置にあるとき、アームレスト側の膨張するエアバッグの力の作用下で、少なくとも長手方向平面に対して垂直の平面上でのアームレストの更なる旋回運動を可能にするように形成されている。
【0009】
更に、米国特許出願公開第2004/0075254号公報は、車両乗員の一方の側に折り畳まれた状態で配置され、車両の側面衝突時にインフレータの発生するガスによって車両側面の内面と乗員との間で展開する複数のエアバッグを備えたサイドエアバッグ装置を開示している。個々のエアバッグの内圧は異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008029339号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第19950702号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第102014016351号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第102018124649号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0184061号公報
【特許文献6】独国特許出願公開第102017010794号公報
【特許文献7】独国特許出願公開第10345677号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0075254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、車両シートを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明に基づき、請求項1に記載される特徴を有する車両シートを備えた車両によって解決される。
【0013】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0014】
車両は、シートバックと座面を形成するシートクッションとを有する車両シートを備えている。本発明によれば、ガスを充填可能及び排出可能な、アームレストを形成するための少なくとも1つの空気室を有する少なくとも1つのエアクッションがシートバックの少なくとも1つの側部領域に配置されることが企図されている。この少なくとも1つの空気室は、通常動作において分離されて、ガスを装填されず、かつ少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された少なくとも1つの追加の空気室セクションを有する。代替的又は追加的に、エアクッションは、少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された、かつ少なくとも通常動作において空気室から分離された、車両の衝突発生時にガスを装填するための少なくとも1つの別の空気室を有し、空気室セクション及び/又は別の空気室は、少なくとも1つのガス発生器のガスを装填することによって、車両シート上の乗員と車両のトリム部分との間、及び/又は乗員と別の乗員との間で少なくとも部分的に展開する。
【0015】
このように形成された車両シートは、エアクッションによって形成されたアームレストにより、快適機能を、追加の空気室セクション及び/又は衝突発生時に装填可能な少なくとも1つの別の空気室に基づく安全機能と組み合わせる。
【0016】
可能な一実施形態では、追加の空気室セクションは、エアクッションの通常動作において、流体密に形成された引き裂き継目によって少なくとも1つの空気室から分離されている。この引き裂き継目は、少なくとも1つの空気室が更に装填されたとき、及び/又は車両の衝突発生時に空気室セクションが装填されたときに裂開する。その場合、空気室セクションが追加的に充填されることによりエアクッションが拡大し、それにより車両シート上の乗員、及び場合によっては隣接する車両シート上の別の乗員の保護作用を実現することができる。
【0017】
別の可能な実施形態では、装填状態において、エアクッションに形状付与するためのいくつかの保持ストラップが少なくとも1つの空気室に配置されている。保持ストラップによって、エアクッションは、装填状態において少なくとも1つの空気室がアームレストの形状を有し、このアームレストに乗員の腕を快適に置くことができ、少なくとも1つの空気室は、装填状態において実質的に一定の圧力レベルを有し、それにより乗員は、車両の走行運転が比較的長い場合でも圧力損失なしにアームレストを利用することができる。
【0018】
一発展形態では、空気室、追加の空気室セクション、及び/又は別の空気室はそれぞれ、圧力依存制御され、時間依存制御、及び/又は能動的に制御可能な少なくとも1つの流出開口を有する。1つ又は複数の流出開口によって、例えば衝突発生時に衝突エネルギーを吸収するために、空気室、追加の空気室セクション及び/又は別の空気室の圧力を的確に低下させることができる。これによって、乗員を可能な限り保護すること、及び衝突に起因する荷重値を低減することが可能である。
【0019】
一実施形態は、エアクッションの少なくとも1つの空気室が調節可能な、かつ所定のガス容積を有するガス供給ユニットに流体的に結合されていることを企図する。特に、エアクッションの少なくとも1つの空気室は、ガス供給ユニットによって可逆的に充填することができ、それにより、アームレストを形成するために少なくとも1つの空気室にガス供給ユニットのガスを充填することができる。例えば、ガスは、乗員によって意図的に排出される場合、少なくとも1つのガス供給ユニットに再び供給可能であり、したがって少なくとも1つの空気室及びガス供給ユニットは閉じた系をなす。
【0020】
更に、別の実施形態では、ガス供給ユニットは、車両室内に配置された操作要素に結合されている。乗員は、腕を下ろしたい場合、操作要素を操作することができ、それによりガス供給ユニットを作動させることができる。再び作動した場合、対応する流出開口を制御することができ、それにより空気が少なくとも1つの空気室から逃げる。これに代えて、ガス供給ユニットを作動させ、このガス供給ユニットが少なくとも1つの空気室からガスを吸い出し、それによって空気室が空にされる。
【0021】
別の可能な実施形態では、エアクッションは、アームレストを形成するための多数の空気室を含み、空気室は、装填状態において、シートバック設定及び/又はシートクッション設定に依存して様々に充填されている。特に、個々の空気室は充填度が様々に異なり、それによりアームレストはシートバック及び/又はシートクッションの着座位置に適した設定と倒伏位置に適した設定の両方で乗員のためにアームレストとして機能することができる。
【0022】
このために、一発展形態では、エアクッションは、少なくとも部分的に、車両のシートバック及びシートクッションに沿って延び、エアクッションは、アームレストを形成するべく、その安定性のためにシートバック及び/又はシートクッションに取り付けられていてもよい。
【0023】
それに加えて、別の可能な実施形態は、アームレストを形成するための少なくとも1つの空気室の流出開口は、車両シートの直近の領域において車両ドアが開いた場合に開くように形成されていることを企図する。特に、少なくとも1つの空気室の流出開口が開き、それによりこの空気室が空になり、それによって車両の降車及び乗車が容易になる。したがって、乗員は、妨げられることなく車両シートから離れるか、又は車両シートに腰かけることができる。
【0024】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】シートバック及びシートクッションのそれぞれの側部領域に一体化されたアームレストを形成するためのエアクッションを備えた車両及び車両シートの模式的側面図である。
【
図2】
図1に示す車両シートの模式的正面図である。
【
図3】エアクッションによって形成されるアームレストを備えた車両シートの模式的正面図である。
【
図4】エアクッションによって形成されるアームレストを備えた車両シートの模式的側面図である。
【
図5】エアクッションによって形成されるアームレストを備えた、倒伏位置にある車両シートの模式的側面図である。
【
図6】形成されたアームレストと充填された別の空気室とを備えた車両シートの模式的側面である。
【
図7】エアクッションが火工技術で装填され、別の空気室が装填された一実施形態による車両シートの模式的正面図である。
【
図8】エアクッションが火工技術で装填され、別の空気室が装填された車両シートの模式的側面図である。
【
図9】エアクッションが火工技術で装填され、別の空気室が装填された、倒伏位置にある車両シートの模式的側面図である。
【
図10】アームレストを形成するためのエアクッションの一実施形態の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
互いに対応する部分は、すべての図において同じ符号が付けられている。
【0027】
図1は、大きく簡略化して示した車両F、並びにシートバック1.1及び車両シート1の座面をなすシートクッション1.2の側部領域に一体化されたエアクッション2を備えた車両シート1の側面図である。シートバック1.1にはヘッドレスト1.3が更に配置されている。
【0028】
【0029】
特に、自動走行運転支援システムを備える車両Fでは、車両シート1の調節可能な性能によって快適な着座位置が提供される。その場合、シートバック1.1は、例えば作業のために、比較的直立に位置決めすることができるか、又は、例えばリラックスするためにシートバック1.1を斜めに位置決めすることができる。
【0030】
シートバック1.1の位置決めに加えて、
図3~
図9に詳しく示されるアームレストAは、車両シート1の快適な側面を表している。車両シート1にアームレストAがある場合、特に車両Fの側面衝突時にアームレストAによる負傷のリスクが高くなるおそれがある。
【0031】
車両Fの側面衝突時に車両シート1上の乗員の負傷のリスクが実質的に高くないアームレストAを利用する可能性を車両シート1上の乗員に提供するために、車両シート1は以下に説明するように形成されている。
【0032】
このために、車両シート1は、エアクッション2として形成されたアームレストAを含み、アームレストAは、機能したときに比較的形状安定であるとともに可逆的に使用可能であり、車両Fの衝突発生時に車両シート1上の乗員に対する保護機能を提供することができる。これらのエアクッション2は、アームレストAとしての機能、及び/又は、車両シート1上の乗員の横方向安定化という通常の機能を超える追加の機能を有することができる。
【0033】
図1~
図9に示される実施例によれば、それぞれ1つのエアクッション2が、シートバック1.1及びシートクッション1.2のそれぞれの側部領域に配置されている。
【0034】
それぞれのエアクッション2は、
図4~
図6及び
図8~
図10に例示的に、かつ大きく簡略化して示されるいくつかの空気室2.1を備え、これらは
図1及び
図2では空の状態、すなわち非装填状態で示されている。特に、エアクッション2は、車両Fの乗車及び降車が妨げられずにできるようにするため、車両Fのイグニッションがオフにされている場合には充填されない。
【0035】
図3~
図6は、充填状態にあるエアクッション2を示し、アームレストAは、例えばガス又はガス混合物、特に空気が充填されたエアクッション2によって形成されている。
【0036】
それぞれのエアクッション2、すなわち、それぞれの空気室2.1は所定の幾何学的形状を有し、装填のために、詳細には示されないガス供給ユニットに流体的に結合されている。例えば、ガス供給ユニットはエアクッション2に接続されている。複数のガス供給ユニットが設けられるようにするすることもでき、それにより、例えばそれぞれ1つのガス供給ユニットがエアクッション2に流体的に結合されている。
【0037】
車両シート1にアームレストAを形成するためエアクッション2に装填するために、1つ又は複数のガス供給ユニットが、それらのそれぞれの作動のために車両室内に配置された操作要素に結合されている。
【0038】
車両シート1に着座する乗員がアームレストAを必要とする場合、乗員は操作要素を操作する。これによって、1つ又は複数のガス供給ユニットが作動し、それによりエアクッション2に特に空気が装填される。例えばタッチ感知表示ユニットのスイッチ面としてのそれぞれ1つの操作要素がエアクッション2に割り当てられ、乗員は、割り当てられた操作要素を操作することによって、どのエアクッション2に空気を充填するのかを選択でき、それによりアームレストAが形成され、それによって場合により車両シート1上の乗員の側面支持力が高められる。
【0039】
エアクッション2によって形成されるアームレストAは、相応に形状付与されることによって所定のアームレスト輪郭を有する。
【0040】
アームレストAは、
図4に示されるようなシートバック1.1の直立位置と、
図5に示されるようなシートバック1.1の傾きを大きくした場合の両方で利用することができる。エアクッション2、特にその空気室2.1には、シートバック1.1及びシートクッション1.2の設定とは無関係に、アームレストAを形成するために空気を装填することができる。それに加えて、車両シート1上の乗員は、例えばそれぞれの操作要素を操作することによって、それぞれのエアクッション2に対して所望の充填度を設定することができる。
【0041】
したがって、それぞれのエアクッション2の空気室2.1の形態と、空気室2.1の異なる充填度によって、アームレストAの異なった高さを設定することができる。
【0042】
可能な一実施形態では、それぞれのエアクッション2、又はそれぞれのエアクッション2の特定の数の空気室2.1は、圧力に依存して制御される、時間に依存して制御される、及び/又は、能動的に制御可能である、少なくとも1つの流出開口Sを有する。
【0043】
車両Fの衝突時に横方向の乗員荷重が作用した場合に、及び/又は衝突により車両シート1上の乗員がエアクッション2から横方向に移動した場合に、これらの流出開口Sによって空気を放出することができる。これによって、対応するエアクッション2の内圧が低下し、それによって、衝突エネルギーを吸収することができ、かつ生じる乗員荷重を低減することができる。
【0044】
車両シート1に着座する乗員の負傷からの保護を高めるために、特に車両Fの衝突発生時にアームレストAに置かれる腕を自動的に位置決めするために、少なくともシートバック1.1に配置されたエアクッション2は、
図6~
図9において充填状態で示される別の空気室2.2を備える。
【0045】
図6は、充填されたエアクッション2と火工技術(火薬)で充填される別の空気室2.2を有する車両シート1の側面図を示し、
図7は正面図を示し、後から説明するように、空気室2.1も火工技術(火薬)で充填することができる。
図8に、シートバック1.1が直立した車両シート1の側面図が示され、
図9に、シートバック1.1の傾きを大きくした側面図が示される。
【0046】
この別の空気室2.2には、アームレストAが形成される場合、すなわち快適機能が作動する場合には、空気が装填されず、したがって、実質的に見えない初期位置に折り畳まれた状態である。
【0047】
別の空気室2.2は、火工技術(火薬)で起動可能な詳しく図示されないガス発生器に流体的に結合されている。このガス発生器は、車両Fの衝突センサ系、特にエアバッグ制御装置に信号技術的に結合されている。
【0048】
検出された信号をもとにして車両Fの衝突が検出されると、所定の閾値を超え、アームレストAを形成するために設けられたエアクッション2に空気が充填され、すなわち快適機能が作動され、その場合、ガス発生器が点火される。ガス発生器によってガスが放出され、このガスが別の空気室2.2に充填され、それによりこの別の空気室2.2の、特に腕を位置決めするための、車両シート1上の乗員の保護作用を実現することができる。
【0049】
特に、車両Fが側面衝突又はスモールオーバーラップを伴う前面衝突に巻き込まれた場合に別の空気室2.2が装填される。
【0050】
別の空気室2.2の代わりに、又はそれに加えて、それぞれのエアクッション2は、通常動作において分離されて、ガスを装填されず、かつ少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された追加の空気室セクションを有することができる。特に、この空気室セクションは、引き裂き継目によってそれぞれの隣接する空気室2.1から分離されている。衝突発生時、追加の空気室セクションは充填され、その作用位置をとる。その場合、引き裂き継目が裂け、それにより空気室セクションがそれぞれ隣接する空気室2.1に流体的に接続され、エネルギー吸収のためにそれぞれの流出開口Sを介して内圧を低下させることができる。
【0051】
別の実施形態では、アームレストAに関して快適機能が作動していない場合、衝突発生時にアームレストAが同様に火工技術(火薬)で充填されるように構成することができる。
【0052】
エアクッション2の所定の、例えば圧力に依存した、及び/又は時間に依存した状態において、流出開口Sが制御され、それによりガスを少なくとも空気室2.1から的確に逃すことができ、それにより衝突エネルギーが吸収される。これによって、乗員を負傷から保護し、乗員荷重を低減することができる。
【0053】
例えば、火工技術(火薬)による装填を、選択された、特に負傷保護に関して最適に配置された空気室2.1に限定することが可能である。しかし、これは保護作用の点で十分であると判断される場合に限り実現される。すなわち、この場合、空気室2.1、2.2を含むエアクッション2の部分領域のみに、衝突作動によりガスが装填される。
【0054】
それに加えて、それぞれのエアクッション2の衝突作動空気室2.1、2.2が、いわゆるプリセーフ措置として空気圧で可逆的に、又は部分可逆的に、特に1つ又は複数のガス供給ユニットによって事前に起動、すなわち充填されることを企図することができる。それに続いて生じる車両Fの衝突時に、圧力に依存して、及び/又は時間に依存して流出開口Sを開くことによるエネルギー吸収によって、相応の乗員保護を実現することができる。
【0055】
例えば、シートの各側にエアクッション2を用いることで、胸部及び骨盤保護領域を有するサイドエアバッグに置き換えることが可能である。
【0056】
図10において、シートバック1.1に配置されたエアクッション2のうちの1つの断面図が示される。空気室2.1及び形状付与のために配置されたつなぎ帯3が詳細に示される。その場合、つなぎ帯3は、それぞれの端が対応する空気室2.1に取り付けられ、エアクッション2は、装填状態でアームレストの輪郭を有する。
【符号の説明】
【0057】
1 車両シート
1.1 シートバック
1.2 シートクッション
1.3 ヘッドレスト
2 エアクッション
2.1 空気室
2.2 別の空気室
3 つなぎ帯
A アームレスト
F 車両
S 流出開口
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック(1.1)と座面を形成するシートクッション(1.2)とを含む、車両シート(1)を備えた車両(F)において、
-ガスを充填可能及び排出可能な、アームレスト(A)を形成するための少なくとも1つの空気室(2.1)を有する少なくとも1つのエアクッション(2)が前記シートバック(1.1)の少なくとも1つの側部領域に配置され、
-前記少なくとも1つの空気室(2.1)が、通常動作において分離されて、ガスを装填されず、かつ少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された少なくとも1つの追加の空気室セクションを有し、並びに/或いは
-前記エアクッション(2)が、前記少なくとも1つのガス発生器に流体的に結合された、かつ少なくとも前記通常動作において前記空気室(2.1)から分離された、前記車両(F)の衝突発生時にガスを装填するための少なくとも1つの別の空気室(2.2)を有し、
-前記空気室セクション及び/又は前記別の空気室(2.2)は、前記少なくとも1つのガス発生器のガスを装填することによって、前記車両シート(1)上の乗員と前記車両(F)のトリム部分との間、及び/又は前記乗員と別の乗員との間で少なくとも部分的に展開する
ことを特徴とする、車両(F)。
【請求項2】
前記追加の空気室セクションは、前記エアクッション(2)の前記通常動作において、流体密に形成された引き裂き継目によって前記少なくとも1つの空気室(2.1)から分離されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両(F)。
【請求項3】
装填状態において前記エアクッション(2)に形状付与するための多数の保持ストラップ(3)が前記少なくとも1つの空気室(2.1)に配置されている
ことを特徴とする、請求項
1に記載の車両(F)。
【請求項4】
前記空気室(2.1)、前記追加の空気室セクション、及び/又は前記別の空気室(2.1)はそれぞれ、圧力に依存して制御される、時間に依存して制御される、及び/又は、能動的に制御可能である、少なくとも1つの流出開口(S)を有する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項5】
前記エアクッション(2)の前記少なくとも1つの空気室(2.1)は、調節可能な、かつ所定のガス容積を有するガス供給ユニットに流体的に結合されている
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項6】
前記ガス供給ユニットは、車両室内に配置された操作要素に結合されている
ことを特徴とする、請求項5に記載の車両(F)。
【請求項7】
前記エアクッション(2)は、アームレスト(A)を形成するための多数の空気室(2.1)を含み、前記空気室(2.1)は、前記装填状態において、シートバック設定及び/又はシートクッション設定に依存して様々に充填されている
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項8】
前記エアクッション(2)は、少なくとも部分的に、前記車両(F)の前記シートバック(1.1)及び前記シートクッション(1.2)に沿って延びる
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両(F)。
【請求項9】
前記アームレスト(A)を形成するための前記少なくとも1つの空気室(2.1)の前記流出開口(S)は、前記車両シート(1)の直近の領域において車両ドアが開いた場合に開くように形成されている
ことを特徴とする、請求項
4に記載の車両(F)。
【国際調査報告】