(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6571 20060101AFI20240423BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240423BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240423BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20240423BHJP
H01G 11/20 20130101ALI20240423BHJP
【FI】
C07F9/6571
H01M10/052
H01M10/0567
H01G11/64
H01G11/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568733
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2022094100
(87)【国際公開番号】W WO2022253007
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202110598341.3
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523024990
【氏名又は名称】深▲セン▼市研一新材料有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】岳敏
(72)【発明者】
【氏名】余意
【テーマコード(参考)】
4H050
5E078
5H029
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB91
4H050BC10
4H050BC18
4H050BC19
4H050BC35
4H050WA15
4H050WA23
5E078AB06
5E078DA14
5E078DA15
5E078DA18
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AM02
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】本願は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、その調製方法および使用を開示する。
【手段】前記調製方法は、塩化オキサリルと六フッ化リン酸リチウムと非水溶媒とを混合させ、シロキサンを加え、反応させてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得するステップ(1)と、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液に貧溶媒を加えて晶析処理を行い、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを取得するステップ(2)とを含み、本願は、六フッ化リン酸リチウム、塩化オキサリルおよびヘキサメチルジシロキサン等の原料を用いてジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩を調製し、本願に係る方法は、副反応が少なく、不純物が少なく、製品の純度が高く、工業的生産を実現しやすい。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法であって、
塩化オキサリルと六フッ化リン酸リチウムと非水溶媒とを混合させ、シロキサンを加え、反応させてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得するステップ(1)と、
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液に貧溶媒を加えて晶析処理を行い、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを取得するステップ(2)と、を含む、
ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の非水溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、またはアセトニトリルのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載の非水溶媒の純度は99.9%よりも大きい、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(1)に記載の非水溶媒の含水量は10ppm未満である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(1)に記載の非水溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比は(10~20):1である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(1)に記載のシロキサンは、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ジフルオロテトラメチルジシロキサン、ジフルオロテトラエチルジシロキサン、ジクロロテトラメチルジシロキサン、またはジクロロテトラエチルジシロキサンのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、前記シロキサンを加える方法は滴下を含み、
好ましくは、ステップ(1)に記載の六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとシロキサンとのモル比は、1:(2.0~2.4):(4.0~4.5)である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(1)に記載の反応は撹拌を含み、
好ましくは、前記反応の温度は30~60℃であり、
好ましくは、前記反応の時間は6~12hであり、
好ましくは、ステップ(1)に記載の混合は不活性雰囲気下で行われ、
好ましくは、ステップ(1)およびステップ(2)はいずれも不活性雰囲気下で行われ、
好ましくは、前記不活性雰囲気でのガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、およびアルゴンガスの少なくとも1種を含み、
好ましくは、前記不活性雰囲気の水分含有量は10ppm未満である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)に記載の貧溶媒は、n-ヘキサン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、トルエン、またはエチルベンゼンのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、前記貧溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比は(8~30):1である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ(1)の後、ステップ(2)で晶析処理を行う前に、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を濾過し、
好ましくは、ステップ(2)に記載の晶析処理の後、濾過、洗浄および乾燥を行い、
好ましくは、前記乾燥は真空乾燥を含み、
好ましくは、前記乾燥の温度は40~120℃であり、60~100℃であることが好ましく、
好ましくは、前記乾燥の時間は2~12hであり、4~8hであることが好ましい、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法により製造される、
ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム。
【請求項11】
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの塩素イオン含有量は0~5ppmである、
請求項10に記載のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム。
【請求項12】
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの金属不純物イオンは0~10ppmである、
請求項10に記載のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム。
【請求項13】
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの水分含有量は0~10ppmであり、7.5ppm以下であることが好ましく、
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの酸価は0~10ppmであり、
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの純度≧99.9%である、
請求項10に記載のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム。
【請求項14】
請求項10に記載のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含む、
電解液。
【請求項15】
請求項14に記載の電解液を含む、
リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は化学合成技術分野に関し、例えば、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、主に正極、負極、セパレータ、電解液等で構成され、電解液は、主に電解質および有機溶媒で構成され、電解液は、正極と負極を繋ぐ活性成分であり、電池性能に関する重要な要素である。電解液添加剤は、電解質および有機溶媒以外のリチウムイオン電池の電解液における最も重要な成分であり、適当な添加剤は、リチウム電池性能を増強する重要な作用を果たすことができる。ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムは、主にリチウムイオン電池、リチウムイオンコンデンサ等の非水電解液に適用される。ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムは、電解液の耐高温性能を向上させることができ、且つ正極材料でより安定な固体電解質界面膜(SEI膜)を形成し、電池のサイクル充放電性能を向上させることができる。
【0003】
現在、開示されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法のうち、多くの調製方法は、六フッ化リン酸リチウムおよび四塩化ケイ素を原料として反応させることで調製するが、六フッ化リン酸リチウムは、反応過程において、五フッ化リンに部分的に分解したり、他の酸素含有系物質と反応してジフルオロリン酸リチウムを生成したりしやすく、不純物を除去しにくく、それとともに、シリコン系助剤を用いた反応過程において、大量の四フッ化ケイ素および塩化水素ガスが発生し、分離および利用しにくく、技術案の安全リスクが高く、大きな産業化困難をもたらす。
【0004】
CN102216311Bは、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液の製造方法を開示し、ヘキサフルオロリン酸と、シュウ酸リチウムと、四塩化ケイ素とを原料としてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを調製し、それに記載の方法は大量の塩化水素およびフッ化ケイ素が発生し、これらの高腐食性酸性ガスは、デバイスに対する要求が非常に高く、製品と分離しにくく、製品内の塩素イオン含有量および酸価を制御しにくく、該方法は、安全性および信頼性で懸念やリスクが存在する。
【0005】
CN111690010Aは、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムおよびジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法を開示し、六フッ化リン酸リチウムと、シュウ酸と、シラザンとを反応させてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを調製し、それに記載の方法は、分離しにくいアンモニアガスとフルオロシランとの2種のガスを生成し、後処理が煩雑で、三廃の生成量が多く、工業的生産に不利である。
【0006】
上記方案には、安全性が低く、信頼性が悪く、または三廃の生成量が多いという問題が存在し、工業的生産に不利であるため、安全性および信頼性が高く、環境に優しく、工業的生産に有利なジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法の開発は、非常に必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下は、本文について詳細に説明する主題の概要である。本概要は、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0008】
本願の一実施例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、その調製方法および使用を提供し、前記調製方法は、(1)塩化オキサリルと六フッ化リン酸リチウムと非水溶媒とを混合させ、シロキサンを加え、反応させてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得することと、(2)前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液に貧溶媒を加えて晶析処理を行い、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを取得することとを含み、本願は、六フッ化リン酸リチウム、塩化オキサリル、ヘキサメチルジシロキサン等の原料を用いてジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩を調製し、本願に係る方法は、副反応が少なく、不純物が少なく、製品の純度が高く、工業的生産を実現しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
態様1において、本願の一実施例は、
塩化オキサリルと六フッ化リン酸リチウムと非水溶媒とを混合させ、シロキサンを加え、反応させてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得するステップ(1)と、
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液に貧溶媒を加えて晶析処理を行い、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを取得するステップ(2)と、を含む、
ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法を提供する。
【0010】
本願は、六フッ化リン酸リチウム、塩化オキサリル、ヘキサメチルジシロキサン等の原料を用いてジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩を調製することにより、他の関連方法と比べ、副反応が少なく、不純物が少なく、製品の純度が高く、工業的生産を実現しやすく、前記反応の過程は以下のとおりである。
【0011】
【0012】
本反応において、シロキサンは、六フッ化リン酸リチウム内のフッ素原子と非常に強く結合し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの形成に酸素原子を提供することができ、アンモニアガス等の廃ガスが発生することがなく、三廃が少ない。
【0013】
好ましくは、ステップ(1)に記載の非水溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、またはアセトニトリルのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)に記載の非水溶媒の純度は99.9%よりも大きく、例えば、99.9%、99.92%、99.95%、99.98%、または100%等である。
【0015】
好ましくは、ステップ(1)に記載の非水溶媒の含水量は10ppm未満であり、例えば、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、7ppm、または9ppm等である。
【0016】
前記非水溶媒の純度が99.9%より低いと、それによる不純物が多すぎ、製品の純度の低下につながり、前記非水溶媒の含水量が10ppmより高いと、六フッ化リン酸リチウムが部分的に分解し、酸価が増加し、収率が低下する。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)に記載の非水溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比は(10~20):1で、例えば、10:1、12:1、15:1、18:1、または20:1等である。
【0018】
好ましくは、ステップ(1)に記載のシロキサンは、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ジフルオロテトラメチルジシロキサン、ジフルオロテトラエチルジシロキサン、ジクロロテトラメチルジシロキサン、またはジクロロテトラエチルジシロキサンのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0019】
好ましくは、前記シロキサンを加える方法は滴下を含む。
【0020】
本願は、シロキサンを徐々に滴下して撹拌することにより、激しいガス発生を防止することができる。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)に記載の六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとシロキサンとのモル比は、1:(2.0~2.4):(4.0~4.5)で、例えば、1:2:4、1:2.2:4、1:2.3:4.4、1:2.1:4.3、1:2.3:4.5、または1:2.4:4.5等である。
【0022】
六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとシロキサンとのモル比を上記範囲に制御することにより、性能が良いジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを製造することができる。1.0molの六フッ化リン酸リチウムに対しては、塩化オキサリルのモル量が2.0molより小さいと、六フッ化リン酸リチウムの反応が不完全になり、六フッ化リン酸リチウムの価格が高いため、調製コストが増加し、且つ除去しにくく、分解して不純物を生成する可能性があり、塩化オキサリルのモル量が2.4molより大きいと、塩化オキサリルの使用量が多すぎるため、除去しにくく、製品の純度に影響を及ぼし、シロキサンのモル量が4.0molより小さいと、六フッ化リン酸リチウムおよび塩化オキサリルが過剰となり、調製コストが増加し、製品の純度が低下し、シロキサンのモル量が4.5molより大きいと、シロキサンが過剰となり、反応収率が更に上昇しなかった。
【0023】
好ましくは、ステップ(1)に記載の反応は撹拌を含む。
【0024】
好ましくは、前記反応の温度は30~60℃で、例えば、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、または60℃等である。
【0025】
好ましくは、前記反応の時間は6~12hで、例えば、6h、7h、8h、9h、10h、11h、または12h等である。
【0026】
反応温度が30℃より低いと、反応が不完全になり、転化率が低く、製品の収率および純度に影響を及ぼし、反応温度が60℃より高いと、六フッ化リン酸リチウムの分解が加速し、五フッ化リンおよびフッ化水素が発生し、製品酸価が増加し、副反応が増加する。反応時間が6hより低いと、反応が不完全になり、12時間より高いと、反応収率が更に増加しておらず、コストが上昇する。
【0027】
好ましくは、ステップ(1)に記載の混合は不活性雰囲気下で行われる。
【0028】
好ましくは、ステップ(1)およびステップ(2)はいずれも不活性雰囲気下で行われる。
【0029】
好ましくは、前記不活性雰囲気におけるガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、およびアルゴンガスの少なくとも1種を含む。
【0030】
好ましくは、前記不活性雰囲気の水分含有量は10ppmよりも小さく、例えば、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、7ppm、または9ppm等である。
【0031】
前記不活性雰囲気の水分含有量は低ければ低いほど良く、10ppmより高いと、六フッ化リン酸リチウムと反応しやすく、酸価を増加させ、収率を低減させる。
【0032】
好ましくは、ステップ(2)に記載の貧溶媒は、n-ヘキサン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、トルエン、またはエチルベンゼンのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0033】
好ましくは、前記貧溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比は(8~30):1で、例えば、8:1、10:1、15:1、20:1、25:1、または30:1である。
【0034】
前記貧溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比が8:1より低いと、濃縮液内のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの晶析が不完全になり、製品の収率の低下につながり、前記貧溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比が30:1より高いと、貧溶媒が過剰となり、コストが増加し、且つ収率が更に増加しなかった。
【0035】
好ましくは、ステップ(1)の後、ステップ(2)で晶析処理を行う前に、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を濾過する。
【0036】
好ましくは、ステップ(2)に記載の晶析処理の後、濾過、洗浄および乾燥を行う。
【0037】
好ましくは、前記乾燥は真空乾燥を含む。
【0038】
好ましくは、前記乾燥の温度は40~120℃であり、例えば、40℃、50℃、80℃、100℃、または120℃等であり、60~100℃であることが好ましい。
【0039】
好ましくは、前記乾燥の時間は2~12hであり、例えば、2h、5h、8h、10h、または12h等であり、4~8hであることが好ましい。
【0040】
前記乾燥温度が低すぎると、乾燥が不十分となり、残りの原料、水分および溶媒を除去することができず、乾燥の温度が高すぎると、製品が高温条件で部分的に分解する。乾燥時間が短すぎると、乾燥が不十分になり、残りの原料、水分および溶媒を除去することができず、乾燥時間が長すぎると、水分含有量等が更に低下せず、調製コストが高くなる。
【0041】
態様2において、本願の一実施例は、態様1に記載の方法により製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供する。
【0042】
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの塩素イオン含有量は0~5ppmで、例えば、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、または5ppm等である。
【0043】
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの金属不純物イオンは0~10ppmで、例えば、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、7ppm、または9ppm等である。
【0044】
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの水分含有量は0~10ppmで、例えば、1ppm、3ppm、5ppm、8ppm、または10ppm等であり、7.5ppm以下であることが好ましい。
【0045】
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの酸価は0~10ppmで、例えば、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、7ppm、または9ppm等である。
【0046】
好ましくは、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの純度≧99.9%で、例えば、99.9%、99.92%、99.95%、99.98%、または100%等である。
【0047】
態様3において、本願の一実施例は、態様2に記載のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含む電解液を提供する。
【0048】
態様4において、本願の一実施例は、態様3に記載の電解液を含むリチウムイオン電池を更に提供する。
【発明の効果】
【0049】
関連技術に対し、本願の実施例は、以下の有益な効果を有する。
【0050】
(1)本願の実施例に係る方法は、安価な原料を用いてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを調製し、前記方法は、操作しやすく、反応工程が少なく、不純物が少なく、他の方法の操作が複雑で製品の不純物が多いという欠点を回避し、製品の純度および品質を確保し、高品質かつ高純度の製品を取得することができ、工業的生産に適する。
【0051】
(2)本願の実施例に係る方法により製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率が89.2%以上に達することができ、本願に係る方法により製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの純度が99.55%以上に達することができ、製品の水分含有量が19ppm以下に達することができ、遊離酸の含有量が22.1ppm以下に達することができ、塩素イオン含有量が30.2ppm以下に達することができ、金属不純物イオンの含有量が10.8ppm以下に達することができ、各成分配合比および反応条件を調整することにより、製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムは、収率が91.5%以上に達することができ、純度が99.94%以上に達することができ、製品の水分含有量が7.5ppm以下に達することができ、遊離酸の含有量が8.8ppm以下に達することができ、塩素イオン含有量が4.8ppm以下に達することができ、金属不純物イオンの含有量が8.9ppm以下に達することができる。
【0052】
図面および詳細な説明を閲読して理解してから、他の態様も理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、具体的な実施形態により本願の技術案について更に説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解するためのものに過ぎず、本願の具体的な制限と見なされるべきではない。
【0054】
本願の実施例および比較例で使用される原料または試薬は、いずれも市場の主流メーカーから購入し、メーカーが明記されていないもの、または濃度が明記されていないものは、いずれも通常の入手可能な分析用純度(Analytical Reagent)の原料または試薬であり、所期の作用を果たすことができれば、特に制限はない。本願の実施例および比較例で使用されるグローブボックス等の設備機器は、いずれも市場の主なメーカーから購入し、所期の作用を果たすことができれば、特に制限はない。本願の実施例および比較例で具体的な技術または条件が明記されていない場合、本分野内の文献で説明された技術または条件に従い、または製品の説明書に従って行う。
【0055】
[実施例1]
本実施例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供し、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法は、以下のとおりである。
【0056】
(1)水分含有量が10ppmより小さい窒素雰囲気のグローブボックスで、8ppmまで脱水したジメチルカーボネート250gを三口反応フラスコに加えるとともに、六フッ化リン酸リチウム15.19g(0.1mol)および塩化オキサリル25.38g(0.2mol)を加え、三口反応フラスコをグローブボックスから外に取り出し、恒温磁気撹拌装置に置き、30℃に加熱し、定圧滴下ロートを用いてヘキサメチルジシロキサン64.95g(0.4mol)を三口反応フラスコに滴下し、六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとヘキサメチルジシロキサンとのモル比が1:2:4であり、十分に撹拌して反応させ、反応過程で発生したトリメチルフルオロシランガスが水酸化カリウム溶液等のアルカリ液に導入されて吸収され、6時間反応してから反応を終了し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得した。
【0057】
(2)反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、大部の溶媒およびトリメチルクロロシランを除去し、得られた濃縮液に150gのジクロロメタンを加えて晶析を行い、濾過し、50gのジクロロメタンで2回洗浄し、相対真空度-0.09MPaで、60℃で8h乾燥し、製品であるジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを23.13g(0.0918mol)取得し、製品の収率が91.8%であった。
【0058】
[実施例2]
本実施例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供し、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法は、以下のとおりである。
【0059】
(1)水分含有量が10ppm未満である窒素雰囲気のグローブボックスで、7ppmまで脱水したジエチルカーボネート152gを三口反応フラスコに加えるとともに、六フッ化リン酸リチウム15.19g(0.1mol)および塩化オキサリル30.46g(0.24mol)を加え、三口反応フラスコをグローブボックスから外に取り出し、恒温磁気撹拌装置に置き、60℃に加熱し、定圧滴下ロートを用いてヘキサメチルジシロキサン73.07g(0.45mol)を三口反応フラスコに滴下し、六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとヘキサメチルジシロキサンとのモル比が1:2.4:4.5であり、十分に撹拌して反応させ、反応過程で発生したトリメチルフルオロシランガスが水酸化カリウム溶液等のアルカリ液に導入されて吸収され、12時間反応してから反応を終了し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得した。
【0060】
(2)反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、大部の溶媒およびトリメチルクロロシランを除去し、得られた濃縮液に300gの1,2-ジクロロエタンを加えて晶析を行い、濾過し、80gの1,2-ジクロロエタンで2回洗浄し、相対真空度-0.08MPaで、100℃で4h乾燥し、製品であるジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを23.60g(0.0937mol)取得し、製品の収率が93.7%に達した。
【0061】
[実施例3]
本実施例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供し、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法は、以下のとおりである。
【0062】
(1)水分含有量が10ppm未満である窒素雰囲気のグローブボックスで、6ppmまで脱水したエチルメチルカーボネート300gを三口反応フラスコに加えるとともに、六フッ化リン酸リチウム15.19g(0.1mol)および塩化オキサリル27.92g(0.22mol)を加え、三口反応フラスコをグローブボックスから外に取り出し、恒温磁気撹拌装置に置き、40℃に加熱し、定圧滴下ロートを用いてヘキサメチルジシロキサン68.20g(0.42mol)を三口反応フラスコに滴下し、六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとヘキサメチルジシロキサンとのモル比が1:2.2:4.2であり、十分に撹拌して反応させ、反応過程で発生したトリメチルフルオロシランガスが水酸化カリウム溶液等のアルカリ液に導入されて吸収され、8時間反応してから反応を終了し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得した。
【0063】
(2)反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、大部の溶媒およびトリメチルクロロシランを除去し、得られた濃縮液に160gのジクロロメタンを加えて晶析を行い、濾過し、60gのジクロロメタンで2回洗浄し、相対真空度-0.09MPaで、70℃で7h乾燥し、製品であるジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを23.25g(0.0923mol)取得し、製品の収率が92.3%に達した。
【0064】
[実施例4]
本実施例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供し、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法は、以下のとおりである。
【0065】
(1)水分含有量が10ppmより小さい窒素雰囲気のグローブボックスで、9ppmまで脱水した酢酸エチル250gを三口反応フラスコに加えるとともに、六フッ化リン酸リチウム15.19g(0.1mol)および塩化オキサリル25.38g(0.2mol)を加え、三口反応フラスコをグローブボックスから外に取り出し、恒温磁気撹拌装置に置き、50℃に加熱し、定圧滴下ロートを用いてヘキサエチルジシロキサン106.01g(0.43mol)を三口反応フラスコに滴下し、六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとヘキサエチルジシロキサンとのモル比が1:2:4.3であり、十分に撹拌して反応させ、10時間反応してから反応を終了し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得した。
【0066】
(2)反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、大部の溶媒、トリエチルフルオロシラン液体およびトリエチルクロロシラン液体を除去し、得られた濃縮液に180gのジクロロメタンを加えて晶析を行い、濾過し、70gのジクロロメタンで2回洗浄し、相対真空度-0.09MPaで、80℃で6h乾燥し、製品であるジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを23.20g(0.0921mol)取得し、製品の収率が92.1%に達した。
【0067】
[実施例5]
本実施例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供し、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法は、以下のとおりである。
【0068】
(1)水分含有量が10ppm未満である窒素雰囲気のグローブボックスで、5ppmまで脱水したジメチルカーボネート250gを三口反応フラスコに加えるとともに、六フッ化リン酸リチウム15.19g(0.1mol)および塩化オキサリル25.38g(0.2mol)を加え、三口反応フラスコをグローブボックスから外に取り出し、恒温磁気撹拌装置に置き、50℃に加熱し、定圧滴下ロートを用いてジクロロテトラメチルジシロキサン81.28g(0.4mol)を三口反応フラスコに滴下し、六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとジクロロテトラメチルジシロキサンとのモル比が1:2:4であり、十分に撹拌して反応させ、反応過程で発生したジメチルフルオロクロロシランガスが水酸化カリウム溶液等のアルカリ液に導入されて吸収され、10時間反応してから反応を終了し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム溶液を取得した。
【0069】
(2)反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、大部の溶媒およびジクロロジメチルシランを除去し、得られた濃縮液に210gのジクロロメタンを加えて晶析を行い、濾過し、80gのジクロロメタンで2回洗浄し、相対真空度-0.09MPaで、90℃で5h乾燥し、製品であるジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを23.05g(0.0915mol)取得し、製品の収率が91.5%に達した。
【0070】
[実施例6]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(1)に記載の塩化オキサリルの添加量が22.842g(0.18mol)である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0071】
[実施例7]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(1)に記載の塩化オキサリルの添加量が31.725g(0.25mol)である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0072】
[実施例8]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(1)に記載のヘキサメチルジシロキサンの添加量が61.7g(0.38mol)である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0073】
[実施例9]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(1)に記載のヘキサメチルジシロキサンの添加量が77.94g(0.48mol)である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0074】
[実施例10]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(1)に記載の反応温度が25℃である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0075】
[実施例11]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(1)に記載の反応温度が70℃である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0076】
[実施例12]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(2)において、得られた濃縮液に120gのジクロロメタンを加えて晶析を行った点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0077】
[実施例13]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(2)に記載の乾燥の温度が30℃である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0078】
[実施例14]
本実施例と実施例1との相違点は、ステップ(2)に記載の乾燥の温度が130℃である点のみであり、その他の条件およびパラメータは実施例1と全く同じである。
【0079】
[比較例1]
本比較例は、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを提供し、前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法は、以下のとおりである。
【0080】
(1)水分含有量が10ppm未満である窒素雰囲気のグローブボックスで、6ppmまで脱水したジメチルカーボネート250.0gを三口反応フラスコに加えるとともに、シュウ酸18.02g(0.20mol)を加え、更にヘキサメチルジシラザン32.3g(0.2mol)を加え、30min撹拌して均一に混合させ、6ppmまで脱水したジメチルカーボネート50.0gをフラスコに入れ、撹拌しながら15.2g(0.1mol)の六フッ化リン酸リチウムを加え、十分に溶解させ、六フッ化リン酸リチウム溶液を調製し、三口反応フラスコをグローブボックスから外に取り出し、恒温磁気撹拌装置に置き、60℃に加熱し、定圧滴下ロートを用いてフラスコ内の六フッ化リン酸リチウム溶液を上記三口反応フラスコに徐々に滴下し、十分に撹拌して反応させ、反応で発生したガスが水酸化カリウム溶液等のアルカリ液に導入されて吸収され、6時間反応してから反応を終了した。
【0081】
(2)反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、大部の溶媒を除去し、得られた濃縮液に150gのジクロロメタンを加えて晶析を行い、濾過し、50gのジクロロメタンで2回洗浄し、相対真空度-0.09MPaで、60℃で8h乾燥し、製品であるジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを22.43g(0.0890mol)取得し、製品の収率が89.0%に達した。
【0082】
性能テスト:
実施例1~14および比較例1で得られたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを用いて性能テストを行い、イオンクロマトグラフ(930型、メトローム社製)で製品の純度を測定し、水分測定計(917型、メトローム社製)で含水量を測定し、電位滴定装置(888型、メトローム社製)で酸価を測定し、イオンクロマトグラフ(930型、メトローム社製)で塩素イオン含有量を測定し、ICP-OES(PQ-9000型、アナリティクイエナ社製)で金属不純物イオン含有量を測定し、テスト結果は、表1に示すとおりである。
【0083】
【0084】
表1から見られるように、実施例1~14により、本願に係る方法で製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率が89.2%以上に達することができ、本願に係る方法で製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの純度が99.55%以上に達することができ、製品の水分含有量が19ppm以下に達することができ、遊離酸の含有量が22.1ppm以下に達することができ、塩素イオン含有量が30.2ppm以下に達することができ、金属不純物イオンの含有量が10.8ppm以下に達することができ、各成分の配合比および反応条件を調整することにより、製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムは、収率が91.5%以上に達することができ、純度が99.94%以上に達することができ、製品の水分含有量が7.5ppm以下に達することができ、遊離酸の含有量が8.8ppm以下に達することができ、塩素イオン含有量が4.8ppm以下に達することができ、金属不純物イオンの含有量が8.9ppm以下に達することができたことが分かる。
【0085】
実施例1と実施例6~7との比較により、六フッ化リン酸リチウムと塩化オキサリルとの割合を1:(2.0~2.4)に制御することにより、製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率も純度も高く、割合が1:2より小さいと、六フッ化リン酸リチウムの反応が不完全になり、六フッ化リン酸リチウムの価格が高いため、調製コストが増加し、且つ除去しにくく、分解して不純物を生成する可能性があり、割合が1:2.4より大きいと、塩化オキサリルの使用量が多すぎ、除去しにくく、製品の純度に影響を及ぼしたことが分かる。
【0086】
実施例1と実施例8~9との比較により、六フッ化リン酸リチウムとシロキサンとの割合を1:(4.0~4.5)に制御することにより、製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率も純度も高く、割合が1:4より小さいと、六フッ化リン酸リチウムおよび塩化オキサリルが過剰となり、調製コストが増加し、製品の純度が低下し、割合が1:4.5より大きいと、シロキサンが過剰となり、反応収率が更に上昇しなかったことが分かる。
【0087】
実施例1と実施例10~11との比較により、ステップ(1)に記載の反応の温度が製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率および純度に影響を及ぼし、反応温度を30~60℃に制御することにより、収率も純度も高いジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを調製することができたことが分かる。
【0088】
実施例1と実施例12との比較により、加えられた貧溶媒の量が、製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率および純度に部分的に影響を及ぼし、貧溶媒と前記六フッ化リン酸リチウムとの質量比を(8~30):1に制御することにより、コストを安定させるとともに、最大限でジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを晶析させることができたことが分かる。
【0089】
実施例1と実施例13~14との比較により、ステップ(2)に記載の乾燥の温度が、製造されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの収率および純度に影響を及ぼすことができ、乾燥温度を40~120℃に制御することにより、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの分解を回避できるとともに、残りの原料、水分および溶媒を除去できることが分かる。
【0090】
実施例1~5と比較例1との比較により、本願に係る方法で調製されたジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムは、純度、水分含有量、酸価、塩素イオン含有量、金属不純物イオン含有量が、いずれも比較例1よりも優れていることが分かる。
【0091】
本願のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの調製方法において、塩化オキサリル、六フッ化リン酸リチウム、シロキサンを採用して反応させ、塩化オキサリルの反応活性がより良好であるため、反応の進行に有利し、シロキサンは六フッ化リン酸リチウム内のフッ素原子との結合力が強く、かつジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの形成に酸素原子を提供するため、アンモニアガス等の廃ガスが発生せず、三廃が少ない。
【0092】
本願の調製方法は、操作しやすく、反応工程が少なく、転化率が高く、不純物が少なく、他の方法の操作が複雑で不純物が多いという欠点を回避し、製品の純度および品質を確保し、高品質かつ高純度の製品を取得することができ、工業的大規模生産に適する。
【0093】
以上の説明は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者であれば、当業者が本願に開示された技術的範囲内に容易に想到可能な変更または置換は、全て本願の保護範囲および公開範囲内に含まれることを理解すべきであることを出願人より声明する。
【国際調査報告】