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特表2024-518488アンテナ部品用の熱可塑性複合材及びその複合材を含む物品
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  • 特表-アンテナ部品用の熱可塑性複合材及びその複合材を含む物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】アンテナ部品用の熱可塑性複合材及びその複合材を含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20240423BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240423BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K7/14
C08K3/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569700
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022028069
(87)【国際公開番号】W WO2022240679
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/186,511
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ブラシウス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002DJ037
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD017
4J002GQ00
(57)【要約】
ある態様において、熱可塑性複合材はポリプロピレン;複数のガラス繊維であって;いずれもガラス繊維の総質量に対してホウ酸及びCaOを含む、ガラス繊維;複数のクレイ小板;及び複数クレイロッド;を含み、熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含む。別の態様において、物品はアンテナアレイ;アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層との間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含み、熱可塑性複合材は熱可塑性ポリマー;複数のガラス繊維;複数のクレイ小板;及び複数のクレイロッド;を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセント、又は55~70質量パーセントのポリプロピレン;
熱可塑性複合材の総質量に対して10~45質量パーセント、又は25~35質量パーセントの複数のガラス繊維であって;いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、ガラス繊維;
最大の長さの平均値が、200ナノメートル以下、又は75~150ナノメートルであり;平均の厚さが、1~10ナノメートル、又は1~5ナノメートルである、複数のクレイ小板;及び
長さの平均値が、50~600ナノメートル、又は100~500ナノメートルであり;直径の平均値が、5~70ナノメートル、又は10~50ナノメートルである、複数のクレイロッド;を含む、熱可塑性複合材であって、
熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含む、熱可塑性複合材。
【請求項2】
ASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の熱膨張係数を有する、請求項1に記載の熱可塑性複合材。
【請求項3】
ポリプロピレンがエチレンに由来する繰返し単位を含むコポリマーである、請求項1又は2に記載の熱可塑性複合材。
【請求項4】
ガラス繊維が0.5~50ミリメートル、若しくは1~25mm、若しくは5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し;又はガラス繊維の平均の繊維径が2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであることができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項5】
複数のクレイ(claim)小板又は複数のクレイロッドの少なくとも1つがモンモリロナイトを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項6】
熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項7】
水素終端ナノダイヤモンド、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項8】
アンテナアレイ;
アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及び
アンテナアレイと反射層との間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含む物品であって、
熱可塑性複合材が
ポリオレフィン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリメチルペンテン、又はシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つを含む熱可塑性ポリマー;
複数のガラス繊維;
複数のクレイ小板;及び
複数のクレイロッド;
を含み、
熱可塑性複合材が場合により請求項1から7のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材である、物品。
【請求項9】
熱可塑性複合材がASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又はセルシウス度当たり15~25百万分率の熱膨張係数を有する、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
熱可塑性ポリマーがエチレンに由来する繰返し単位を含むポリプロピレンを含む、請求項8又は9に記載の物品。
【請求項11】
熱可塑性ポリマーが熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセント、又は55~70質量パーセントの熱可塑性ポリマーの量で存在する、請求項8から10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
ガラス繊維が純粋なシリカガラス繊維又は石英繊維の少なくとも1つを含み;又はガラス繊維が、いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
ガラス繊維が0.5~50ミリメートル、若しくは1~25mm、若しくは5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し;又はガラス繊維の平均の繊維径が2~50マイクロメートル、又は10~15マイクロメートルであることができる、請求項8から12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
複数の小板又は複数のクレイロッドの少なくとも1つがモンモリロナイトを含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
小板の最大の長さの平均値が200ナノメートル以下、若しくは75~150ナノメートルであり;又はクレイ小板の平均の厚さが1~10ナノメートル、若しくは1~5ナノメートルである、請求項8から14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
クレイロッドの長さの平均値が50~600ナノメートル、若しくは100~500ナノメートルであり;又はクレイロッドの直径の平均値が5~70ナノメートル、若しくは10~50ナノメートルである、請求項8から15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
熱可塑性複合材が熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含む、請求項8から16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
熱可塑性複合材が熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有する、請求項8から17のいずれか一項に記載の物品。
【請求項19】
水素終端ナノダイヤモンド、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを更に含む、請求項8から18のいずれか一項に記載の物品。
【請求項20】
アンテナアレイ;
アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及び
アンテナアレイと反射層との間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含む物品であって、
熱可塑性複合材が
55~70質量パーセントのポリプロピレン;
25~35質量パーセントの複数のガラス繊維であって;0.5~50ミリメートル、若しくは1~25mm、若しくは5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し、又は平均の繊維径が2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであることができ;いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、ガラス繊維;
最大の長さの平均値が200ナノメートル以下、若しくは75~150ナノメートルであり;又は平均の厚さが1~10ナノメートル、若しくは1~5ナノメートルである、複数のクレイ小板;及び
長さの平均値が50~600ナノメートル、若しくは100~500ナノメートルであり;又は直径の平均値が5~70ナノメートル、若しくは10~50ナノメートルである、複数のクレイロッド;
を含み、
熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含み;
熱可塑性複合材がASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の熱膨張係数を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2021年5月10日に出願された米国仮特許出願第63/186,511号の利益を主張する。この関連出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示はアンテナのスペーサー層(spacer layer)として使用することができる熱可塑性複合材(thermoplastic composite)に関する。
【背景技術】
【0003】
スペーサーはアンテナアレイと外側反射スキンとの間に一定の隙間を維持するためにアンテナに使用されている。スペーサーとして使用されるかかる材料の開発は、スペーサー層の材料がアンテナアレイを構成する銅クラッディングと調和する低い熱膨張係数(CTE)、低い誘電率、及び大きい多チャンネルのモールドキャビティーを満たすための高い溶融流動性をもたなければならないので困難な課題である。このスペーサー層に対して様々なポリマーが考えられているが、それらは望ましい仕様の1つ又は複数を満たさないことが多い。例えば、ポリエチレンは低い誘電率を有するが、200百万分率/セルシウス度(ppm/℃)の高いCTEを有し、これは銅の17ppm/℃よりずっと高い。逆に、Eガラス充填材を含むポリフェニレンエーテルは低下したCTE値を示したが、これらの組成物は一般に所望の誘電率又は流動特性をもたない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従ってアンテナのスペーサー層として使用することができる改良された熱可塑性複合材が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書にはスペーサー層として使用することができる熱可塑性複合材が開示される。
【0006】
ある態様において、熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセントのポリプロピレン;熱可塑性複合材の総質量に対して10~45質量パーセントの複数のガラス繊維;複数のクレイ小板(platelet);及び複数のクレイロッド(rod);を含み、ガラス繊維は、いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上のホウ酸(B)及び15質量パーセント以下のCaOを含み;小板の最大の長さの平均値は200ナノメートル以下であり;クレイ小板の平均の厚さは1~10ナノメートルであり;クレイロッドの長さの平均値は50~600ナノメートルであり;クレイロッドの直径の平均値は5~70ナノメートルであり;熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含む。
【0007】
別の態様において、物品はアンテナアレイ;アンテナアレイの表面に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層の間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含み、熱可塑性複合材はポリオレフィン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリメチルペンテン、又はシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つ;複数のガラス繊維;複数のクレイ小板;及び複数のクレイロッド;を含む、熱可塑性ポリマーを含む。
【0008】
上記及びその他の特徴を以下の図、詳細な説明、及び特許請求の範囲により例示する。
【0009】
以下の図は本開示を説明するために提供される例示的な実施形態であり、本開示に従って作製されるデバイスを本明細書に記載される材料、条件、又はプロセスパラメーターに限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スペーサー層を含むアンテナの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
熱可塑性ポリマー、複数のガラス繊維、並びに複数の小板及び複数のロッドを含むクレイを含む熱可塑性複合材が、アンテナのスペーサー層として使用することができるように良好なバランスのとれた特性を示すことが発見された。熱可塑性複合材はクレイの混合形態に起因する流動性の向上及びガラス繊維に起因する誘電特性の改良を示し、結果として10GHzの優れた誘電特性を有する容易な流動性の熱可塑性複合材となる。重要なことに、熱可塑性複合材はASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の銅とより緊密に調和する熱膨張係数を達成することができる。
【0012】
本開示はアンテナに使用されるスペーサー層に焦点を当てているが、この熱可塑性複合材は低い熱膨張係数(CTE)、低い誘電率、及び良好な溶融流動特性が必要とされる他の用途に同様に使用することができることに留意されたい。例えば、熱可塑性複合材はブロー成形又は射出成形用途で使用することができる。熱可塑性複合材はレンズ又はレードームであってもよい。
【0013】
熱可塑性ポリマーはポリオレフィン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリメチルペンテン、又はシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つを含み得る。ポリメチルペンテン又はシンジオタクチックポリスチレンを含ませると熱可塑性複合材の熱抵抗を増大することができる。熱可塑性ポリマーはポリオレフィン、ポリメチルペンテン、又はシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つを含み得る。熱可塑性ポリマーはASTM D1238-20に従って230℃の温度及び2.16キログラム(kg)の質量で測定して0.3~70グラム/10分(g/10min)、又は10~30g/10minのメルトフローインデックスを有し得る。
【0014】
熱可塑性ポリマーはポリオレフィンを含み得る。ポリオレフィンは、少なくとも1つのホモポリマー(例えば、ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、又はアルファ-オレフィンポリマー(例えばC3~10アルファ-オレフィンポリマー)、エチレン、プロピレン、若しくはC3~10アルファ-オレフィン単位の少なくとも2種を含むコポリマー、又は以上のいずれかの部分的若しくは完全にハロゲン化されたアナログを含み得る。ポリオレフィンはポリプロピレンを含み得る。ポリプロピレンはポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つを含み得る。ポリプロピレンコポリマーはランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又は異相コポリマーの少なくとも1つを含み得る。異相プロピレンコポリマーはポリプロピレンマトリックスに分散したエラストマー性プロピレンコポリマー(E)を含み得る。
【0015】
ポリプロピレンは酸又は酸無水物変性ポリプロピレンを含み得る。小量の酸又は酸無水物変性ポリプロピレンの組込みはポリプロピレンの総質量に対して1~10質量パーセントの酸又は酸無水物変性ポリプロピレンを含み得る。
【0016】
ポリプロピレンは清澄化(clarified)ポリプロピレンを含み得る。清澄化ポリプロピレンは、一般にポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンブロックコポリマーと比較してより透明なポリプロピレンである。清澄化ポリプロピレンは1~5mol%のエチレンに由来する繰返し単位を含み得る。清澄化ポリプロピレンは清澄化ポリプロピレンの結晶化度を抑制又は低減することができる少なくとも1つの清澄化性(clarifying)添加剤又は核生成阻害剤を含み得る。
【0017】
熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して、50~80質量パーセント(wt%)、又は55~70質量パーセントの熱可塑性ポリマーを含み得る。
【0018】
熱可塑性複合材は複数のガラス繊維を含み得る。ガラス繊維はチョップドガラス繊維を含み得る。ガラス繊維は0.5~50ミリメートル(mm)、又は1~25mm、又は5~10mmの平均長さを有し得る。ガラス繊維の平均繊維径は2~50マイクロメートル、又は10~15マイクロメートルであってもよい。複数のガラス繊維は少なくとも1つのNEガラス、Dガラス、純粋なシリカガラス、又は石英繊維を含み得る。
【0019】
複数のガラス繊維は12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)を含み得る。複数のガラス繊維は15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含み得る。かかるガラス繊維の例にはNEガラス及びDガラスの両方がある。NEガラス及びDガラスは、一般に5~10質量パーセントのホウ酸、16~25質量パーセントのCaO、及び0~5質量パーセントのMgOを含む伝統的なEガラスと比べてより低い含有量のアルカリ土類金属(例えばCaO及びMgO)及びより高い量のホウ酸を含み得る。その結果、NEガラス及びDガラスは伝統的なEガラスと比較してより低い誘電率及びより低い誘電正接を有し得る。NEガラスは1ギガヘルツで5未満の誘電率又は0.002未満の誘電正接の少なくとも1つを有し得る。Dガラスは10ギガヘルツで4.5未満の誘電率又は0.0032未満の誘電正接の少なくとも1つを有し得る。
【0020】
熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して10~45質量パーセント、又は25~35質量パーセントのガラス繊維を含み得る。
【0021】
熱可塑性複合材はクレイを含み得る。クレイは有機親和性のフィロケイ酸塩を含み得る。クレイはベントナイトを含み得る。クレイはカオリンを含み得る。クレイはモンモリロナイトを含み得る。クレイはサポナイト、ノントロナイト、バイデライト、又はヘクトライトの少なくとも1つを含み得る。クレイは表面処理を含まないことができる。
【0022】
クレイは複数のクレイ小板及び複数のクレイロッドを含み得る。両方のクレイ小板及びクレイロッドの平均の最大長さは600ナノメートル以下、又は500ナノメートル以下であってもよい。クレイ小板の最大の長さの平均値は50~600ナノメートル、又は50~200ナノメートル、又は75~150ナノメートルであってもよい。クレイ小板は1~10ナノメートル、又は1~5ナノメートルの平均の厚さを有してもよい。クレイロッドの長さの平均値は50~600ナノメートル、又は100~500ナノメートルであってもよい。クレイロッドの直径の平均値は5~70ナノメートル、又は10~50ナノメートルであってもよい。
【0023】
熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含み得る。
【0024】
熱可塑性複合材は空隙のない固体材料であってもよい。逆に、熱可塑性複合材は、例えば、熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有する発泡体(フォーム)であってもよい。発泡体は化学的に発砲した発泡体、物理的に発砲した発泡体、又は複数の中空球を含むシンタクチックフォームの少なくとも1つを含み得る。
【0025】
発泡剤を使用するならば、発泡剤は物理的発泡剤又は化学的発泡剤の少なくとも1つを含み得る。物理的発泡剤は炭化水素(例えば、C1~6炭化水素、例えば直鎖状C1~6アルカン、分岐C1~6アルカン、環状C1-6アルカン、エーテル、又はエステル)、部分的にハロゲン化された炭化水素(例えば、直鎖状、分岐、又は環状C1~6フルオロアルカン)、窒素、酸素、アルゴン、又は二酸化炭素の少なくとも1つを含み得る。具体的な物理的発泡剤としてはクロロフルオロカーボン(例えば、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロ-エタン、モノクロロジフルオロメタン、又は1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン);フルオロカーボン(例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2,4,4-テトラフルオロブタン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチルプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,4,4-ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、又はペンタフルオロエタン);フルオロエーテル(例えば、メチル-1,1,1-トリフルオロエチルエーテル又はジフルオロメチル-1,1,1-トリフルオロエチルエーテル);又は炭化水素(例えば、n-ペンタン、イソペンタン、又はシクロペンタン)がある。物理的発泡剤は二酸化炭素又は窒素の少なくとも1つを含み得る。
【0026】
化学的発泡剤の例には分解してガスを形成するものがある。化学的発泡剤は水、アゾイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド(例えば、アゾ-ビス-ホルムアミド)、アゾジカルボン酸バリウム、置換ヒドラジン(例えば、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホヒドラジド、4,4’-ヒドロキシ-ビス-(ベンゼンスルホヒドラジド)、トリヒドラジノトリアジン、又はアリール-ビス-(スルホヒドラジド))、セミカルバジド(例えば、p-トリレンスルホニルセミカルバジド又は4,4’-ヒドロキシ-ビス-(ベンゼンスルホニルセミカルバジド))、トリアゾール(例えば、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール)、N-ニトロソ化合物(例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン又はN,N-ジメチル-N,N’-ジニトロソフタルミド)、又はベンゾキサジン(例えば、イサト酸無水物)の少なくとも1つを含み得る。化学的発泡剤は吸熱性発泡剤、例えば、クエン酸一ナトリウム又は重炭酸ナトリウムの少なくとも1つを含み得る。
【0027】
発泡体は中空の粒子、特に球又は中空のナノチューブ(例えば、中空のカオリンナノチューブ)で満たされた固体材料を意味するシンタクチックフォームを含み得る。中空の粒子はセラミック中空粒子、ポリマー性中空粒子、又はガラス中空粒子(例えばアルカリホウケイ酸ガラス製のもの)の少なくとも1つを含み得る。シンタクチックフォームは発泡体層の総容積に対して1~70vol%、又は5~70vol%、又は10~50vol%の中空粒子を含み得る。微小粒子は300マイクロメートル以下、又は15~200マイクロメートル、又は20~70マイクロメートルの平均直径を有し得る。他の種類の発泡体と比較して、シンタクチックフォームはより良好な機械的安定性、ビア材料と調和するより良好な熱膨張係数、又は低下した吸湿の1つ又は複数を有し得る。
【0028】
熱可塑性複合材は1つ又は複数の任意選択の添加剤を含み得る。添加剤は多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、誘電性充填材(例えば、シリカ(例えば、コロイド又はヒュームドシリカ)又はウォラストナイト)、水素終端ナノダイヤモンド、グラフェン、安定剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤)、酸捕捉剤、抗酸化剤、金属不活性化剤、スリップ剤、着色剤、難燃剤、又は離型剤の少なくとも1つを含み得る。添加剤は水素終端ナノダイヤモンド、グラフェン、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを含み得る。
【0029】
熱可塑性複合材は多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン(一般に「POSS」とされ、本明細書では「シルセスキオキサン」ともいう)を含み得る。シルセスキオキサンは表面に反応性の官能基を有し得るシリカコアをもつナノサイズの無機材料である。シルセスキオキサンは頂点にあるケイ素原子及び相互に連結する酸素原子を含む立方体又は立方体様構造を有し得る。ケイ素原子の各々はペンダントのR基と共有結合することができる。オクタ(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサン(RSi12)のようなシルセスキオキサンは8個のペンダントR基を有するコアの周りにケイ素及び酸素原子のケージを含む。各R基は独立して水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルケン基であってもよく、ここでR基は1~12個の炭素原子及び1個又は複数のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、リン、ケイ素、又はハロゲン)を含み得る。各R基は独立して少なくとも1個の反応性の基、例えばアルコール、エポキシ基、エステル、アミン、ケトン、エーテル、又はハライドを含み得る。各R基は独立して少なくとも1つのシラノール、アルコキシド、又はクロライドを含み得る。シルセスキオキサンはトリシラノールフェニルPOSS、ドデカフェニルPOSS、オクタイソブチルPOSS、又はオクタメチルPOSSの少なくとも1つを含み得る。シルセスキオキサンはトリシラノールフェニルPOSSを含み得る。シルセスキオキサンは熱可塑性複合材の総質量に対して0.05~5質量パーセント、又は0.5~2質量パーセントの量で存在してもよい。
【0030】
熱可塑性複合材はASTM-D1238-20に従って230℃の温度及び2.16キログラム(kg)の質量で測定して20グラム/10分(g/10min)以上、又は20~30g/10minの重量測定メルトフローインデックス(MFI)を有し得る。
【0031】
熱可塑性複合材はASTM-D1238-20に従って230℃の温度及び2.6キログラムの質量で決定して10分当たり15立方センチメートル(cc/10min)以上、又は15~30cc/10minのメルト容積フローレート(MVR)を有し得る。
【0032】
熱可塑性複合材はASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で0.40インチ(1.02ミリメートル)の厚さの試料に対して流れ方向で決定してセルシウス度当たり30百万分率(ppm/℃)以下、又はセルシウス度当たり15~25百万分率の熱膨張係数を有し得る。
【0033】
熱可塑性複合材は10ギガヘルツ(GHz)で1.5~10、又は1.5~4、又は1.5~3、又は1.5~2.8の誘電率(Dk)を有し得る。熱可塑性複合材は0.005以下、又は0.0005~0.005の誘電正接(Df)を有し得る。誘電特性はASTM D3380-14に従って10ギガヘルツ(GHz)で決定することができる。
【0034】
物品は熱可塑性複合材を含み得る。物品はアンテナであってもよく、熱可塑性複合材はアンテナのスペーサー層として使用することができる。例えば、物品はアンテナアレイ;アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層の間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層を含み得る。図1はアンテナアレイ20;アンテナアレイ20の表面22上に位置する反射層40;及びアンテナアレイ20と反射層40との間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層30を含むかかる物品10の図である。
【0035】
熱可塑性複合材は熱可塑性ポリマー(例えばポリプロピレン)、複数のガラス繊維、複数のクレイ小板、及び複数のクレイロッドを含み得る。熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセント、又は55~70質量パーセントのポリプロピレンを含み得る。熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して10~45質量パーセント、又は25~35質量パーセントの複数のガラス繊維を含み得る。ガラス繊維は、いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含み得る。クレイ小板は200ナノメートル、又は75~150ナノメートルの小板の最大の長さの平均値を有し得る。クレイ小板は1~10ナノメートル、又は1~5ナノメートルのクレイ小板の平均の厚さを有し得る。クレイロッドは50~600ナノメートル、又は100~500ナノメートルのクレイロッドの長さの平均値を有し得る。クレイロッドは5~70ナノメートル、又は10~50ナノメートルのクレイロッドの直径の平均値を有し得る。熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含み得る。熱可塑性複合材はASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の熱膨張係数を有し得る。ポリプロピレンはエチレンに由来する繰返し単位を含むコポリマーであってもよい。ガラス繊維は0.5~50ミリメートル、又は1~25mm、又は5~10mmの平均の長さの少なくとも1つを有し;又はガラス繊維の平均の繊維径は2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであってもよい。複数のクレイ小板又は複数のクレイロッドの少なくとも1つはモンモリロナイトを含み得る。熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有し得る。熱可塑性複合材は水素終端ナノダイヤモンド、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを更に含み得る。
【0036】
物品はアンテナアレイ;アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層の間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含み得る。熱可塑性複合材はポリオレフィン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリメチルペンテン、又はシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つを含む熱可塑性ポリマー;複数のガラス繊維;複数のクレイ小板;及び複数のクレイロッド;を含み得る。熱可塑性複合材は上に記載した熱可塑性複合材であってもよい。熱可塑性複合材はASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又はセルシウス度当たり15~25百万分率の熱膨張係数を有し得る。熱可塑性ポリマーはエチレンに由来する繰返し単位を含むポリプロピレンを含み得る。熱可塑性ポリマーは熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセント、又は55~70質量パーセントの熱可塑性ポリマーの量で存在してもよい。ガラス繊維は純粋なシリカガラス繊維又は石英繊維の少なくとも1つを含み得る。ガラス繊維は、いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含み得る。ガラス繊維は0.5~50ミリメートル、又は1~25mm、又は5~10mmの平均の長さの少なくとも1つを有し得る。ガラス繊維の平均の繊維径は2~50マイクロメートル、又は10~15マイクロメートルであってもよい。複数の小板又は複数のクレイロッドはモンモリロナイトを含み得る。小板の最大の長さの平均値は200ナノメートル、又は75~150ナノメートルであってもよい。クレイ小板の平均の厚さは1~10ナノメートル、又は1~5ナノメートルであってもよい。クレイロッドの長さの平均値は50~600ナノメートル、又は100~500ナノメートルであってもよい。クレイロッドの直径の平均値は5~70ナノメートル、又は10~50ナノメートルであってもよい。熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含み得る。熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有し得る。熱可塑性複合材は水素終端ナノダイヤモンド、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを更に含み得る。
【0037】
物品はアンテナアレイ;アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層の間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含む。熱可塑性複合材は55~70質量パーセントのポリプロピレン;25~35質量パーセントの複数のガラス繊維であって;ガラス繊維は0.5~50ミリメートル、又は1~25mm、又は5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し、又はガラス繊維の平均の繊維径は2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであってもよく;いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、ガラス繊維;複数のクレイ小板であって;小板の最大の長さの平均値は200ナノメートル以下、又は75~150ナノメートルであり;又はクレイ小板の平均の厚さは1~10ナノメートル、若しくは1~5ナノメートルである、複数のクレイ小板;複数のクレイロッドであって;クレイロッドの長さの平均値は50~600ナノメートル、又は100~500ナノメートルであり;又はクレイロッドの直径の平均値は5~70ナノメートル、若しくは10~50ナノメートルである、複数のクレイロッド;を含むことができ、熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含み;熱可塑性複合材はASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の熱膨張係数を有する。
【0038】
熱可塑性複合材の形成は特に限定されない。例えば、形成はメルトミキサーでの混合又は押出を含み得る。熱可塑性複合材は少なくとも熱可塑性ポリマー、複数のガラス繊維、及び複数のクレイ小板;及び複数のクレイロッドを含む組成物を押し出すことにより調製することができる。押出は多数の材料供給口を備えた二軸押出機を用いて行なうことができる。方法は押出機の主要な供給口を介して熱可塑性ポリマーを供給して溶融体を形成し、複数のクレイ小板及び複数のクレイロッドを溶融体に供給し、ガラス繊維を溶融体に供給することを含み得る。ガラス繊維の供給はそれぞれのクレイの供給の下流で行なうことができる。ガラス繊維の供給はダイアダプターの上流で行なうことができる。ナノクレイの下流でのガラス繊維の添加及び任意選択の安定剤はナノクレイの凝集又はガラス繊維の破損の少なくとも1つを最少にすることができる。熱可塑性複合材は、例えばダイプレートに通して押し出し、水浴中で冷却し、強制空気乾燥し、ペレットに切断することによりストランドに形成することができる。
【0039】
熱可塑性複合材は成型して所望の大きさ及び形状の物品を形成することができる。例えば、熱可塑性複合材のストランド又はペレットは射出成形機に供給することができ、そこで溶融し、圧縮され、モールドキャビティーに押し込まれて物品を形成することができる。
【0040】
本開示を例示するために以下の実施例を提供する。実施例は単に説明のためのものであり、本開示に従って作製されるデバイスを実施例に明記される材料、条件、又はプロセスパラメーターに限定する意図はない。
【実施例
【0041】
実施例において、ミリグラム(mg)単位の混合トルクは4分、230セルシウス度(℃)の温度、及び75毎分回転数(rpm)の混合速度で測定した。
【0042】
重量測定メルトフローインデックス(MFI)はASTM D1238-20に従って230℃の温度及び2.16キログラム(kg)の質量で測定した。メルト容積フローレート(MVR)はASTM D1238-20に従って230℃の温度及び2.16キログラムの質量で決定した。溶融流動特性はTinius Olsen Extrusion Plastometer Model MP600で測定した。
【0043】
セルシウス度当たり百万分率単位の熱膨張係数はASTM E1545-11(2016)に従って決定した。CTE実験は圧縮成型プラークに対して誘導流れ方向で行ない、TA Instruments TMA450を用いて-40℃~110℃で試験した。
【0044】
誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は圧縮成型プラークに対してLong Strip Line(LSL)法ASTM D3380-14により決定した。
【0045】
実施例で使用した成分をTable 1(表1)示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1~5)
3つの熱可塑性複合材を調製した。熱可塑性複合材は、Table 2(表2)に示す成分を、ローラーミキシングブレードと共にスリーピースの50立方センチメートル(cc)ミキシングボウルを用いてCW BRABENDER Intelli-Torqueレオメーターでコンパウンディングすることにより調製した。ミキサー温度は75毎分回転数(rpm)のミキサーブレード速度で220℃に設定した。ポリプロピレンコポリマーをミキサー内で溶融させた後、存在する場合はガラス及びナノクレイを添加した。5分間混合した後、ミキサーを止め、分解し、溶融した組成物を取り出し、冷却して熱可塑性複合材を形成した。
【0048】
【表2】
【0049】
熱可塑性複合材の特性を測定し、Table 3(表3)に示す。これらの特性を実施例4及び5で2つの市販の材料と比較する。実施例4で、熱可塑性組成物はSABIC社から市販されているNORYL PPX 630であった。実施例5で、熱可塑性組成物はAsahi Kasei社から市販されているTHERMYLENE P6-4OFG-0100であった。Table 3(表3)の値は開示されている試験法を用いて測定したか又はそれぞれのデータシートからとった。
【0050】
【表3】
【0051】
実施例3を実施例1及び2と比較すると、Table 3(表3)は、小量のナノクレイを熱可塑性複合材に組み込むとCTEが顕著に低下することを示している。実施例3を実施例4及び5の市販の製品と比較すると、実施例3はより低いCTE値及び10ギガヘルツでの低下した誘電率を有することが分かる。
【0052】
(実施例6~11)
実施例6~11の熱可塑性複合材をTable 4(表4)に示す量で調製し、それぞれの熱可塑性複合材の特性を測定した。
【0053】
【表4】
【0054】
Table 4(表4)は、実施例4の熱可塑性複合材が最も低いCTE値を示しつつ良好な流動特性及び10ギガヘルツでの良好な誘電特性を維持していたことを示している。NEガラス繊維の代わりにEガラス繊維を含む実施例7と比較して、実施例3のCTE値は殆ど40%低下した。Max CTナノクレイの代わりにCloisite 20ナノクレイを含む実施例10と比較して、実施例3のCTE値は殆ど75%低下した。
【0055】
以下、本開示の非限定的な態様を列挙する。
【0056】
態様1:熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセント、又は55~70質量パーセントのポリプロピレン;熱可塑性複合材の総質量に対して10~45質量パーセント、又は25~35質量パーセントの複数のガラス繊維であって;いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)及び15質量パーセント以下又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、ガラス繊維;最大の長さの平均値が200ナノメートル以下、又は75~150ナノメートルであり;平均の厚さが1~10ナノメートル、又は1~5ナノメートルである、複数のクレイ小板;及び長さの平均値は50~600ナノメートル、又は100~500ナノメートルであり;直径の平均値が5~70ナノメートル、又は10~50ナノメートルである、複数のクレイロッドを含む、熱可塑性複合材であって、熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含む、熱可塑性複合材。
【0057】
態様2:ASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の熱膨張係数を有する、態様1の熱可塑性複合材。
【0058】
態様3:ポリプロピレンがエチレンに由来する繰返し単位を含むコポリマーである、先行する態様のいずれかの熱可塑性複合材。
【0059】
態様4:ガラス繊維が0.5~50ミリメートル、若しくは1~25mm、若しくは5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し;又はガラス繊維の平均の繊維径が2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであることができる、先行する態様のいずれかの熱可塑性複合材。
【0060】
態様5:複数の小板又は複数のクレイロッドの少なくとも1つがモンモリロナイトを含む、先行する態様のいずれかの熱可塑性複合材。
【0061】
態様6:熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有する、先行する態様のいずれかの熱可塑性複合材。
【0062】
態様7:水素終端ナノダイヤモンド、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを更に含む、先行する態様のいずれかの熱可塑性複合材。
【0063】
態様8:アンテナアレイ;アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層の間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含む、物品であって、熱可塑性複合材がポリオレフィン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリメチルペンテン、又はシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つを含む熱可塑性ポリマー;複数のガラス繊維;複数のクレイ小板;及び複数のクレイロッド;を含み、熱可塑性複合材が場合により上述の態様のいずれか1つの熱可塑性複合材である、物品。
【0064】
態様9:熱可塑性複合材がASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又はセルシウス度当たり15~25百万分率の熱膨張係数を有する、態様8の物品。
【0065】
態様10:熱可塑性ポリマーがエチレンに由来する繰返し単位を含むポリプロピレンを含む、態様8~9のいずれか1つの物品。
【0066】
態様11:熱可塑性ポリマーが熱可塑性複合材の総質量に対して50~80質量パーセント、又は55~70質量パーセントの熱可塑性ポリマーの量で存在する、態様8~10のいずれか1つの物品。
【0067】
態様12:ガラス繊維が純粋なシリカガラス繊維又は石英繊維の少なくとも1つを含み;又はガラス繊維が、いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸(B)及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、態様8~11のいずれか1つの物品。
【0068】
態様13:ガラス繊維が0.5~50ミリメートル、若しくは1~25mm、若しくは5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し;又はガラス繊維の平均の繊維径が2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであることができる、態様8~12のいずれか1つの物品。
【0069】
態様14:複数の小板又は複数のクレイロッドの少なくとも1つがモンモリロナイトを含む、態様8~13のいずれか1つの物品。
【0070】
態様15:小板の最大の長さの平均値が200ナノメートル以下、若しくは75~150ナノメートルであり;又はクレイ小板の平均の厚さが1~10ナノメートル、若しくは1~5ナノメートルである、態様8~14のいずれか1つの物品。
【0071】
態様16:クレイロッドの長さの平均値が50~600ナノメートル、若しくは100~500ナノメートルであり;又はクレイロッドの直径の平均値が5~70ナノメートル、若しくは10~50ナノメートルである、態様8~15のいずれか1つの物品。
【0072】
態様17:熱可塑性複合材が熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含む、態様8~16のいずれか1つの物品。
【0073】
態様18:熱可塑性複合材が熱可塑性複合材の総容積に対して1~80容積パーセント、又は10~50容積パーセントの気孔率を有する、態様8~17のいずれか1つの物品。
【0074】
態様19:水素終端ナノダイヤモンド、多面体のオリゴマー性シルセスキオキサン、シリカ、又はウォラストナイトの少なくとも1つを更に含む、態様8~18のいずれか1つの物品。
【0075】
態様20:アンテナアレイ;アンテナアレイの表面上に位置する反射層;及びアンテナアレイと反射層との間に位置する熱可塑性成分を含むスペーサー層;を含む物品であって、熱可塑性複合材が55~70質量パーセントのポリプロピレン;25~35質量パーセントの複数のガラス繊維であって;0.5~50ミリメートル、若しくは1~25mm、若しくは5~10mmの少なくとも1つの平均の長さを有し、又は平均の繊維径は2~50マイクロメートル、若しくは10~15マイクロメートルであってもよく;いずれもガラス繊維の総質量に対して12質量パーセント以上、又は15~25質量パーセントのホウ酸及び15質量パーセント以下、又は0~10質量パーセント、又は0~1質量パーセントのCaOを含む、ガラス繊維;最大の長さの平均値は200ナノメートル以下、若しくは75~150ナノメートルであり;又は平均の厚さは1~10ナノメートル、若しくは1~5ナノメートルである、複数のクレイ小板;及び長さの平均値は50~600ナノメートル、若しくは100~500ナノメートルであり;又は直径の平均値は5~70ナノメートル、若しくは10~50ナノメートルである、複数のクレイロッド;を含み、熱可塑性複合材は熱可塑性複合材の総質量に対して総和で0.5~10質量パーセント、又は1~5質量パーセントの複数のクレイ小板及び複数のクレイナノロッドを含み;熱可塑性複合材はASTM E1545-11(2016)に従って40~100℃で決定されたようにセルシウス度当たり30百万分率以下、又は15~25百万分率の熱膨張係数を有する、物品。
【0076】
組成物、方法、及び物品は二者択一的に、本明細書に開示されたあらゆる適当な材料、工程、又は成分を含む(comprise)、それらからなる(consist of)、又は本質的にそれらからなることができる。組成物、方法、及び物品は、加えて、又は代わりに、他の点では組成物、方法、及び物品の機能又は目的の達成に必要でないいかなる材料(又は種)、工程、又は成分も欠くか、又は実質的に含まないように策定することができる。
【0077】
本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び「少なくとも1つ」は量の限定を意味せず、文脈が明らかに他を示さない限り単数及び複数の両方を網羅ことを意図している。例えば、「要素(an element)」は文脈が明らかに他を示さない限り「少なくとも1つの要素」と同じ意味を有する。用語「組合せ」はブレンド、混合物、合金、反応生成物、等を含む。また、「少なくとも1つ」は、リストが各々の要素を個別に、並びにそのリストの2つ以上の要素の組合せ、及びそのリストの少なくとも1つの要素と明記されていない類似の要素との組合せを含むことを意味する。用語「又は」は文脈によって明らかに他が示されない限り「及び/又は」を意味する。本明細書を通じて「ある態様」、「別の態様」、「いくつかの態様」等への言及は、その態様に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、工程、又は特性)が本明細書に記載されている少なくとも1つの態様に含まれ、また他の態様に存在してもしなくてもよいことを意味する。更に、記載されている要素はいかなる適切なやり方で様々な態様において組み合わせられ得ると理解すべきである。
【0078】
本明細書で特に断らない限り、全ての試験規格はこの出願の出願日、又は優先権が主張されているならばその試験規格が出現する最先の優先権出願の出願日の時点で有効な最新の規格である。
【0079】
同じ成分又は特性に関する全ての範囲の終点はその終点を含み、独立して組み合わせることができ、全ての中間の点及び範囲を含む。例えば、「最大25wt%、又は5~20wt%」の範囲は「5~25wt%」の範囲の終点及び全ての中間の値、例えば10~23wt%、等を含む)。
【0080】
他に定義されない限り、本明細書で使用されている技術及び科学用語はこの開示が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。化合物は標準の命名法を用いて記載されている。
【0081】
引用した全ての特許、特許出願、及び他の参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願中の用語が組み込まれた参考文献中の用語と相反するか又は矛盾する場合は、本出願の用語が組み込まれた参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0082】
特定の実施形態が記載されてきたが、代替、修正、変化、改良、又は現在予測し得ない実質的な等価物が出願人又は他の当業者に生じ得る。従って、出願時及び補正され得る特許請求の範囲は全てのかかる代替、修正、変化、改良、及び実質的な等価物を包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0083】
10 物品
20 アンテナアレイ
22 アンテナアレイの表面
30 スペーサー層
40 反射層
図1
【国際調査報告】