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特表2024-518489その後の金属化のための非金属基板を処理する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】その後の金属化のための非金属基板を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569706
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022025214
(87)【国際公開番号】W WO2022238010
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21173139.3
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・バイエル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・メルシュキー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ウェイス
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA14
4K022AA15
4K022AA17
4K022AA18
4K022AA19
4K022AA20
4K022AA21
4K022AA23
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA14
4K022CA03
4K022CA06
4K022CA14
4K022CA15
4K022CA19
4K022DA01
(57)【要約】
本発明は、その後の金属化のための非金属基板を処理する方法、及びそれぞれの使用であって、方法が工程(A)、任意の工程(B)、及び工程(C)を含み、工程(C)が1つ又は複数のマンガン種を含む酸性処理組成物を接触させる工程を含み、基板が3D印刷基板であることを特徴とする、方法、及びそれぞれの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その後の金属化のための非金属基板を処理する方法であって、前記方法が、
(A)基板を供給する工程、
(B)任意に、(A)で供給された基板を前処理組成物と接触させて、前処理基板を得る工程であって、前記前処理組成物が
(B-a)1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物を含む、工程、及び
(C) (A)で供給された基板又は(B)の後に得られた前処理基板を処理区画で酸性処理組成物と接触させて、その後の金属化のための処理基板を得る工程であって、前記酸性処理組成物が
(C-a)1つ又は複数のマンガン種を含む、工程を含み、
前記基板が3D印刷基板であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(A)において供給する工程が
(A-1)3D印刷して、3D印刷基板を得る工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)において3D印刷基板が、(i)溶融フィラメント製造基板、(ii)光重合基板、(iii)粉末床溶融基板、及び材料噴出基板からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)において3D印刷基板が、少なくとも、アクリロニトリルブタジエンスチレン、カーボネート、エポキシ、アクリレート、ウレタン、アミド、プロピレン、それらのオリゴマー、それらのポリマー、それらの混合物、及び/又はそれらの複合材料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性処理組成物が6.5以下、より好ましくは5以下、更により好ましくは3.5以下、そのうえ更により好ましくは2.5以下、最も好ましくは1.5以下、更に最も好ましくは0.5以下のpHを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性処理組成物において(C-a)が酸性処理組成物の合計容積に基づきマンガン元素に基づいて0.001mol/L~1.8mol/Lの範囲、好ましくは0.002mol/L~1.4mol/Lの範囲、より好ましくは0.01mol/L~1.1mol/Lの範囲、最も好ましくは0.05mol/L~0.9mol/Lの範囲の総濃度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性処理組成物において1つ又は複数のマンガン種が、過マンガン酸イオン及び/又は酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性処理組成物が
(C-b)1つ又は複数の酸、好ましくは1つ又は複数の無機酸、最も好ましくは硫酸、リン酸、及び硝酸からなる群より選択される、1つ又は複数の無機酸を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性処理組成物が
(C-c)好ましくはチタン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅、銀、パラジウム、亜鉛、及びカドミウムからなる群より選択される、マンガンとは異なる1つ又は複数の遷移金属イオン種を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸性処理組成物がHFを実質的に含まず、好ましくは含まず、好ましくは、フッ化物イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性処理組成物が3価クロムイオン及び6価クロム化合物を実質的に含まず、好ましくは含まず、好ましくは、クロムを含むあらゆるイオン及び化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(C)において接触が25℃~80℃、好ましくは30℃~75℃、更により好ましくは35℃~70℃、最も好ましくは40℃~60℃の範囲の温度で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(C)の後、
(D)処理基板を活性化組成物と接触させて、活性化基板を得る工程、及び/又は
(E)処理基板若しくは活性化基板を第1の金属化組成物と接触させて、第1の金属層若しくは金属合金層がそこに堆積されて第1の金属化基板となる工程を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(D)又は(E)の後、
(F)活性化基板又は第1の金属化基板を第2の金属化組成物と接触させて、第2の金属層又は金属合金層がそこに堆積されて第2の金属化基板となる工程を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
その後の金属化のための3D印刷基板の処理のための
(C-a)1つ又は複数のマンガン種を含む酸性処理組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その後の金属化のための非金属基板を処理する方法、及びそれぞれの使用であって、方法が工程(A)、任意の工程(B)、及び工程(C)を含み、工程(C)が1つ又は複数のマンガン種を含む酸性処理組成物を接触させる工程を含み、基板が3D印刷基板であることを特徴とする、方法、及びそれぞれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非金属基板、例えばプラスチック基板の金属化は、近代技術において長い歴史を有する。典型的な用途は、自動車産業及び衛生用品で見られる。
【0003】
しかしながら、プラスチック基板を金属層受容可能なものにすることは多大な努力を有することである。典型的には、それぞれの方法は基板表面の表面改質から始まり、これは典型的にはエッチングとして知られている。通常、一方で十分な粗面処理を保証し、他方でひどすぎる欠陥を引き起こさないようにするためには微妙なバランスが必要とされる。
【0004】
クロム酸を含む組成物を含む、様々な方法及びエッチング組成物が知られている。クロム酸は腐食性が高く、強力な酸化剤である。従って、クロム酸はプラスチック基板を非常に効率的に且つ強力にエッチングする。結果として、クロム酸エッチングは多くの場合、それぞれの基板をその後の金属化のために受容可能にするためのなお最先端の処理である。
【0005】
US10,197,708B2は、少なくとも1つのめっき領域及び少なくとも1つの非めっき領域を有する構造を製造する方法について言及している。
【0006】
CN103805972Bは、鋳型法及びその調製方法を用いることにより超軽量中空管を組み立てるためのマイクロラティス金属材料について言及している。
【0007】
US2020/331196A1は、構成されたパターンでそこに分散した無電解の金属の堆積を促進する物質を有する3次元物体の積層造形の方法について言及している。
【0008】
しかしながら、クロム酸エッチング組成物は持続可能なものではなく、環境面で非常に問題がある。例えば、特定の非金属基板、例えば3D印刷基板について、クロム酸エッチング組成物の代替品が利用できないか又は不満足な/不十分な結果のみを提供する場合、このことは特に問題である。その化学的性質において3D印刷基板は伝統的に製造された非金属基板と基本的に同一であるように見えるが、多くの実際の試験において、伝統的に製造された非金属基板にとってうまく機能する処理組成物は、3D印刷非金属基板について同一の結果を示さず、むしろ劣る結果を示すことが多いことが分かった。このような異なる挙動の理由が何であるかについては現在完全には理解されていない。
【0009】
しかしながら、6価クロム種を用いることなく、その後に堆積する金属層による均一な被覆が得られるように3D印刷非金属基板を処理することが強く求められており、特に工業的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US10,197,708B2
【特許文献2】CN103805972B
【特許文献3】US2020/331196A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、(i)環境面で問題のある6価クロム種、例えばクロム酸を利用しない、その後の金属化のための非金属3D印刷基板を処理する方法を提供することである。更に、その後に堆積する金属層による均一な被覆が得られるように基板表面の全体にわたって均等に分布した処理結果を得ることも目的とする。最も好ましくは、熱処理後にそのような金属層の気泡が観察されないことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的は、その後の金属化のための非金属基板を処理する方法であって、方法が、
(A)基板を供給する工程、
(B)任意に、(A)で供給された基板を前処理組成物と接触させて、前処理基板を得る工程であって、前処理組成物が
(B-a)1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物を含む、工程、及び
(C) (A)で供給された基板又は(B)の後に得られた前処理基板を処理区画で酸性処理組成物と接触させて、その後の金属化のための処理基板を得る工程であって、酸性処理組成物が
(C-a)1つ又は複数のマンガン種を含む、工程を含み、
基板が3D印刷基板であることを特徴とする、方法により解決される。
【0013】
本発明は、主に、非金属3D印刷基板の金属化の前に、1つ又は複数のマンガン種を含む酸性処理組成物が非常に良好な処理結果を与えるという研究結果に基づく。マンガン系処理組成物は環境面であまり気にかけなくてもよいことから、それらはクロム酸エッチング組成物の優れた代替品をもたらす。更に、本文を通して規定されたような典型的なマンガン系処理組成物は、改善した結果までももたらすことが多い(以下の実施例参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
工程(A)
本発明の方法の工程(A)では、非金属基板である基板が供給される。
【0015】
本発明に照らせば、用語「3D印刷基板」は、用語「積層造形(AM)基板」と同一に理解される。これらの用語は同一の意味を有するものと見なされる。
【0016】
更に、本発明に照らせば、非金属基板が3D印刷基板である、即ちそのような製造方法により製造されたことが妥当である。非金属基板が本発明の方法のなかで製造されるか(即ち直接的、好ましくは工程(A)の部分工程として)、又は非金属基板が本発明の方法の前に異なる場所及び/又は時間で製造され、次いで本発明の方法が行われる前に再配置及び/又は保管されるか(即ち間接的)は好ましくは関係しない。好ましくは、3D印刷基板を製造するプロセスは、そのような基板が供給される限り、本発明の方法からは独立している。事実問題として、非金属3D印刷基板を基本的に同じ材料の伝統的に製造された非金属基板に対して区別する方法はまだ完全には理解されていない。
【0017】
しかしながら、いくつかの場合には、工程(A)において供給する工程が
(A-1)3D印刷して、3D印刷基板を得る工程を含む、本発明の方法が好ましい。
【0018】
通常、工程(A)において供給する工程が
(A-1)3D印刷して、3D印刷基板を得て、工程(A)において直接的又は間接的に供給する工程を含む、本発明の方法が好ましい。
【0019】
本発明に照らせば、その3D印刷基板は、好ましくは、その基板を形成するために好ましくは層きざみで徐々に操作された材料を含む。最も好ましくは、その3D印刷基板はデジタル3Dコンピューターモデルに対応するものである。
【0020】
その3D印刷基板が3D印刷プラスチック基板である、本発明の方法が好ましい。
【0021】
工程(A)において3D印刷基板が鋳造基板ではなく、且つ射出成形基板ではない、本発明の方法が好ましい。
【0022】
工程(A)において3D印刷基板が、(i)溶融フィラメント製造基板、(ii)光重合基板、(iii)粉末床溶融基板、及び(iv)材料噴出基板からなる群より選択される、本発明の方法が好ましい。
【0023】
溶融フィラメント製造基板が熱溶解積層(FDM)基板を含む、本発明の方法が好ましい。
【0024】
光重合基板が光造形(SLA)基板、デジタルライトプロセッシング(DLP)基板、及び/又は連続デジタルライトプロセッシング(CDLP)基板を含む、本発明の方法が好ましい。
【0025】
粉末床溶融基板がマルチジェット溶融(MJF)基板及び/又は選択的レーザー焼結(SLS)基板を含む、本発明の方法が好ましい。
【0026】
更に、工程(A)で供給された基板が、工程(C)の前にクロム種を含むいずれの組成物とも接触されない、本発明の方法が好ましい。
【0027】
化学的観点からは、工程(A)において3D印刷基板が、少なくとも、アクリロニトリルブタジエンスチレン、カーボネート、エポキシ、アクリレート、ウレタン、アミド、プロピレン、それらのオリゴマー、それらのポリマー、それらの混合物、及び/又はそれらの複合材料を含む、本発明の方法が好ましい。
【0028】
工程(A)において3D印刷基板が熱可塑性基板を含む、本発明の方法が好ましい。好ましい熱可塑性基板は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)を含む。
【0029】
工程(A)において3D印刷基板がブタジエン部分、好ましくはポリブタジエンを含む、本発明の方法よりが好ましい。
【0030】
工程(A)において3D印刷基板がニトリル部分、好ましくは重合ニトリル部分を含む、本発明の方法もまた好ましい。
【0031】
工程(A)において3D印刷基板がアクリル部分、好ましくは重合アクリル部分を含む、本発明の方法もまた好ましい。
【0032】
工程(A)において3D印刷基板が重合スチレン部分を含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0033】
工程(A)において3D印刷基板がウレタン部分、好ましくは重合ウレタン部分を含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0034】
工程(A)において3D印刷基板がエポキシ部分、好ましくは重合エポキシ部分を含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0035】
工程(A)において3D印刷基板がカーボネート部分、好ましくは重合カーボネート部分を含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0036】
工程(A)において3D印刷基板がアミド部分、好ましくは重合アミド部分を含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0037】
工程(A)において3D印刷基板がプロピレン部分、好ましくは重合プロピレン部分を含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0038】
工程(A)において基板が、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、それらの混合物、及び/又はそれらの複合体、好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、それらの混合物、及び/又はそれらの複合体を含む、本発明の方法が最も好ましい。そのようなプラスチック基板、特にABS及びABS-PCは、典型的には、装飾用途、例えば自動車部品に用いられる。
【0039】
ポリアミド(PA)が、PA6、PA66、PA11、PA12、及びそれらの混合物からなる群より選択されるポリアミドを含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0040】
ポリエーテルケトン(PEK)がポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及び/又はそれらの混合物を含み、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、及び/又はそれらの混合物を含む、本発明の方法が好ましい。
【0041】
いくつかの場合には、工程(A)において3D印刷基板が複合材料、好ましくは繊維及び/又は粒子を含む複合材料、最も好ましくはガラス繊維及び/又はガラス繊維粒子を含む複合材料を含む、本発明の方法が好ましい。
【0042】
本発明に照らせば、任意の工程(B)に加えて、工程(A)の後且つ工程(C)の前に更なる工程が排除されないことが好ましい。そのような更なる工程は、好ましくは、3D印刷基板の製造後の1つ又は複数の後処理工程を含む。好ましい後処理工程は、化学的及び/又は機械的な研磨工程を含む。別の又は更なる典型的な後処理工程は必ずしも排除されない。本発明に照らせば、そのようなそれぞれの(即ち1つ又は複数の後処理工程により既に処理された)3D印刷基板は、工程(A)で既に供給されるか、又は典型的な後処理工程により処理されていない3D印刷基板が工程(A)で供給され、1つ又は複数のそれぞれの後処理工程が本発明の方法の工程(C)の前に任意に行われるかのいずれかである。
【0043】
工程(B)
本発明に照らせば、工程(B)は任意であり、従って、必ずしも必要とされない。しかしながら、いくつかの場合には、工程(B)が含まれる、本発明の方法が好ましい。
【0044】
任意の工程(B)は、1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物を含む前処理組成物を利用する。そのような前処理の結果として、前処理基板、即ち前処理された非金属3D印刷基板が得られる。本発明に照らせば、用語「界面活性化合物」は、「界面活性剤」及び「湿潤剤」と同等である(従って、相互交換可能である)。本発明の目的のために、全てのこれらの用語が完全に同一の意味を有すると考えられる。
【0045】
最も好ましくは工程(B)が行われる場合に、前処理基板が工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流されない、本発明の方法が好ましい。
【0046】
独自の実験により、前処理組成物に含まれる1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物によって、前処理基板の表面が十分に濡れたままであることが示された。従って、工程(B)の後に(B-a)の少なくとも一部が基板に残存し、一方で基板が工程(C)に移動させられる、本発明の方法が好ましい。
【0047】
基板に残存するフッ素を含まない界面活性化合物は、(本文を通して規定されるような)その後の工程(C)における処理に十分な量で存在して、複雑な形状を有する場合であっても非金属3D印刷基板を見事に処理する。工程(C)における接触の前に表面が界面活性化合物で既に覆われている場合、非常に有益なようである。好ましくは、そのような条件下でエッチング組成物において界面活性化合物が追加で全く必要とされない。結果として、酸性処理組成物における界面活性化合物の総濃度は最低限に保たれる。
【0048】
最も好ましくは工程(B)が行われる場合に、工程(C)で利用される酸性処理組成物がフッ素含有界面活性化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0049】
前処理組成物が水を含み、好ましくは水性前処理組成物である、本発明の方法が好ましい。
【0050】
前処理組成物が前処理組成物の合計重量に基づき50wt.-%以上の水、好ましくは60wt.-%以上、より好ましくは70wt.-%以上、更により好ましくは80wt.-%以上、そのうえ更により好ましくは90wt.-%以上、最も好ましくは95wt.-%以上を含む、本発明の方法が好ましい。
【0051】
水が前処理組成物における唯一の溶媒である、本発明の方法が好ましい。
【0052】
しかしながら、いくつかの他の場合には、前処理組成物が前処理組成物の合計重量に基づき50wt.-%未満の水を含むことが好ましい。好ましくは、前処理組成物が先に規定されたような量の水を含むかどうかは、エッチング組成物における酸の合計重量に依存する。いくつかの場合には、前処理組成物における水の量がエッチング組成物における水の量とおおよそ同一であることが好ましい。従って、前処理組成物における水の量が、エッチング組成物における水の量の±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の範囲である、本発明の方法が好ましい。しかしながら、このことは本発明の方法を特に限定しない。他の場合には、前処理組成物がエッチング組成物よりもはるかに多い量の水を含むことが好ましい。
【0053】
いくつかの場合には、前処理組成物及び酸性処理組成物が同一の酸、好ましくは同一の無機酸を含む、本発明の方法が好ましい(酸性処理組成物における酸に関しては以下の本文を参照)。
【0054】
前処理組成物は、(B-a)、即ち1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物を含む。従って、これらの化合物は、完全にも部分的にもフッ素化されていない。
【0055】
前記1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物が飽和している、本発明の方法が好ましい。より好ましくは、1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物は、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる。
【0056】
前記1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物が直鎖状である、本発明の方法が好ましい。従って、それらは分岐状化合物ではないことが好ましく、最も好ましくは、前処理組成物は、分岐状界面活性化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0057】
(B-a)において1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物が非イオン性界面活性剤、好ましくは非イオン性アルキルポリエチレングリコールエーテル、より好ましくは非イオン性アルコールアルコキシレート、最も好ましくは非イオン性脂肪アルコールエトキシレートを含む、本発明の方法が好ましい。
【0058】
非イオン性アルコールアルコキシレートにおいてアルコールが6~20個、好ましくは7~18個、より好ましくは8~16個、更により好ましくは9~14個、最も好ましくは10~12個の炭素原子を含む、本発明の方法がより好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0059】
非イオン性アルコールアルコキシレートにおいてアルコキシレートが10~30個、好ましくは12~28個、より好ましくは14~26個、更により好ましくは16~24個、最も好ましくは18~22個の炭素原子を含む、本発明の方法が好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0060】
非イオン性アルコールアルコキシレートが合計で20~40個、好ましくは22~38個、より好ましくは24~36個、更により好ましくは26~34個、最も好ましくは28~32個の炭素原子を含む、本発明の方法が好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0061】
非イオン性アルコールアルコキシレートが合計で28~34個の炭素原子を含み、そのアルコールが10~12個の炭素原子を、アルコキシレートが18~22個の炭素原子を含む、本発明の方法が非常に好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0062】
前記1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物が工程(B)を通して、好ましくは工程(B)及び(C)を通して利用される唯一の界面活性化合物である、本発明の方法が最も好ましい。
【0063】
前処理組成物において(B-a)が前処理組成物の合計重量に基づき0.01wt.-%~40wt.-%、好ましくは0.1wt.-%~30wt.-%、更により好ましくは0.2wt.-%~20wt.-%、そのうえ更により好ましくは0.3wt.-%~10wt.-%、最も好ましくは0.4wt.-%~5wt.-%の範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、(B-a)が上記に規定されたような前記好ましいフッ素を含まない界面活性化合物を含むという条件で、これらの総濃度が適用される。
【0064】
上述したように、前処理組成物は、水を含むことが好ましい。多くの場合、前処理組成物において水及び(B-a)が共に前処理組成物の合計重量の98wt.-%以上、好ましくは98.5wt.-%以上、より好ましくは99wt.-%以上、更により好ましくは99.5wt.-%以上、そのうえ更により好ましくは99.9wt.-%以上、最も好ましくは99.99wt.-%以上を形成する、本発明の方法が好ましい。
【0065】
いくつかの場合には、前処理組成物が(本質的に)水及び(B-a)からなる、本発明の方法が好ましい。
【0066】
工程(B)において前処理組成物が1~9、好ましくは1.5~7.5、より好ましくは2~6.5、更により好ましくは2.5~5.5、最も好ましくは3~5の範囲のpHを有する、本発明の方法が好ましい。pHが酸性であることが通常は好ましい。
【0067】
いくつかの場合には、工程(B)において前処理組成物がエッチング組成物のpHの±3、好ましくは±2、より好ましくは±1.5、更により好ましくは±1、最も好ましくは±0.5の範囲のpHを有する、本発明の方法が好ましい。
【0068】
前処理組成物及び酸性処理組成物のpHが酸性であり、好ましくは酸性であり、且つ実質的に同一である、本発明の方法が最も好ましい。
【0069】
工程(B)において接触が20秒~15分、好ましくは1分~10分、最も好ましくは2分~6分の範囲の時間行われる、本発明の方法が好ましい。
【0070】
工程(B)において接触が20℃~70℃、好ましくは22℃~60℃、より好ましくは25℃~50℃、最も好ましくは30℃~40℃の範囲の温度で行われる、本発明の方法が好ましい。
【0071】
工程(C)
本発明の方法の工程(C)では、(A)で供給された基板又は(B)の後に得られた前処理基板が、その後の金属化のための処理基板が得られるように処理区画で酸性処理組成物と接触させられる。酸性処理組成物は(C-a)、即ち1つ又は複数のマンガン種を含む。
【0072】
本発明に照らせば、酸性処理組成物によるその後の金属化のための処理は、好ましくは、エッチングを含む。
【0073】
工程(C)における酸性処理組成物がクロム酸エッチング組成物ではない、本発明の方法が好ましい。更に、工程(C)における酸性処理組成物がクロム酸及び三酸化クロムのそれぞれを実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0074】
酸性処理組成物が3価クロムイオン及び6価クロム化合物を実質的に含まず、好ましくは含まず、好ましくは、クロムを含むあらゆるイオン及び化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0075】
酸性処理組成物がHFを実質的に含まず、好ましくは含まず、好ましくは、フッ化物イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0076】
本発明に照らせば、酸性処理組成物に存在する1つ又は複数のマンガン種は活性マンガン種を含み、そのため前処理基板は、工程(C)において処理される。言い換えれば、これらのマンガン種は、前処理基板が工程(C)においてその後の金属化のために処理されるような方法で3D印刷基板と相互作用する。
【0077】
好ましくは、理論により結び付けられることは望まないが、活性マンガン種(好ましくは酸と併せて、酸については以下の本文を参照)は、典型的には3D印刷基板の材料を酸化し、一方でそれら自体は、典型的には前より低い酸化数を有する(不活性又は低活性の)マンガン種に還元される。このプロセスの間に、3D印刷基板に処理パターンが形成される。いくつかの場合には、工程(C)において酸性処理組成物における1つ又は複数のマンガン種が電流により少なくとも部分的に形成される、本発明の方法が好ましい。電流が不活性種から活性マンガン種を形成するため(再利用)に用いられる場合、このことは最も好ましく適用される。
【0078】
酸性処理組成物が6.5以下、より好ましくは5以下、更により好ましくは3.5以下、そのうえ更により好ましくは2.5以下、最も好ましくは1.5以下、更に最も好ましくは0.5以下のpHを有する、本発明の方法が好ましい。
【0079】
酸性処理組成物が-1以上、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、最も好ましくは1以上のpHを有し、好ましくは、酸性処理組成物が-1以上、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、最も好ましくは1以上のpHを有する、本発明の方法が好ましい。
【0080】
酸性処理組成物が-1~6.5、好ましくは0~6、より好ましくは0.5~5の範囲のpHを有する、本発明の方法が好ましい。
【0081】
独自の実験により、酸性処理組成物が典型的にアルカリ性処理組成物よりも良好な結果を示すことが示された。このことは、特に過マンガン酸イオンを含む本発明の方法において利用される処理組成物に最も好ましく適用される。過マンガン酸イオンは酸性環境でかなり不安定であるが、多くの場合、更なる処理工程において利益が得られる。好ましく望ましい利益は、その後の活性化工程(更なる情報については以下の本文の工程(D)について参照)において典型的には少量のパラジウムのみが活性化に必要とされることである。このことは、パラジウムコロイドによる活性化に最も好ましく適用される。更に、本発明の方法は、非常に広範な様々な3D印刷基板に適用することができる(本文の以下の実施例参照)。従って、本発明の方法は高い柔軟性を可能にする。アルカリ性マンガン系処理組成物はいくつかの3D印刷基板に対していくつかの有用な結果をもたらし得るが、本発明の方法は広範に適用可能である。更に、多くの場合、アルカリ性マンガン系処理組成物による処理後には、熱処理後に望ましくない気泡が観察された。
【0082】
酸性処理組成物において(C-a)が酸性処理組成物の合計容積に基づきマンガン元素に基づいて0.001mol/L~1.8mol/Lの範囲、好ましくは0.002mol/L~1.4mol/Lの範囲、より好ましくは0.01mol/L~1.1mol/Lの範囲、最も好ましくは0.05mol/L~0.9mol/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。本発明に照らせば、総濃度は(好ましくは本文を通して規定された好ましい濃度も)、活性マンガン種及び不活性マンガン種のそれぞれを含む。しかしながら、産業用途では、供給及びブリード方法によるか又は再利用手順により、好ましくは電流を加えることによる再利用手順により、活性マンガン種の定常流が典型的には供給される。このことはまた、本発明の方法に照らして好ましい。
【0083】
いくつかの場合には、酸性処理組成物において(C-a)が酸性処理組成物の合計容積に基づきマンガン元素に基づいて0.0025mol/L~0.3mol/Lの範囲、好ましくは0.004mol/L~0.2mol/Lの範囲、より好ましくは0.007mol/L~0.1mol/Lの範囲、最も好ましくは0.009mol/L~0.05mol/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。酸性処理組成物が過マンガン酸イオン及び最も好ましくは更にリン酸(酸については以下の本文を参照)を含む場合に、このことは最も好ましく適用される。
【0084】
他の場合には、酸性処理組成物において(C-a)が酸性処理組成物の合計容積に基づきマンガン元素に基づいて0.1mol/L~1.8mol/Lの範囲、好ましくは0.2mol/L~1.6mol/Lの範囲、より好ましくは0.3mol/L~1.4mol/Lの範囲、最も好ましくは0.4mol/L~1.2mol/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。酸性処理組成物が過マンガン酸イオン及び更に硫酸、好ましくは過マンガン酸イオン及び更に0.005mol/L~0.6mol/Lの硫酸を含む場合に、このことは最も好ましく適用される(以下の実施例欄、第1組の例を比較)。
【0085】
酸性処理組成物において1つ又は複数のマンガン種が、過マンガン酸イオン及び/又は酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種を含む、本発明の方法が好ましい。
【0086】
好ましくは、いくつかの場合には、酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種がMn(IV)イオンである。
【0087】
好ましくは、いくつかの場合には、酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種がコロイド状である。好ましくは、酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種がMnO2、好ましくはコロイド状MnO2を含む。
【0088】
多くの場合、酸性処理組成物において1つ又は複数のマンガン種が過マンガン酸イオンを含む、本発明の方法が好ましい。
【0089】
それに対し、いくつかの他の場合には、酸性処理組成物が過マンガン酸イオンを実質的に含まず、好ましくは含まず、好ましくは、過マンガン酸イオンを実質的に含まず、好ましくは含まないが代わりに(好ましくは上述したような)酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種を含む、本発明の方法が好ましい。より好ましくは、そのような場合には、エッチング組成物が更に、酸化数+II及び/又は(好ましくは及び)+IIIのマンガン元素を含むマンガン種を含む。
【0090】
既に指摘したように、工程(C)で利用される処理組成物は酸性であり、従って、1種又は複数の酸を含むことが好ましい。従って、酸性処理組成物が
(C-b)1つ又は複数の酸、好ましくは1つ又は複数の無機酸、最も好ましくは硫酸、リン酸、及び硝酸からなる群より選択される1つ又は複数の無機酸を更に含む、本発明の方法が好ましい。
【0091】
本明細書の以下に記載されるような特定の酸が存在すること及び存在しないことに関しては、以下の例もまた参照され、好ましくはまた、本発明の方法に一般的に適用される。
【0092】
いくつかの場合には、1つ又は複数の無機酸が少なくともリン酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0093】
いくつかの場合には、1つ又は複数の無機酸が少なくとも硫酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0094】
いくつかの場合には、1つ又は複数の無機酸が硫酸を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が非常に好ましい。更に、1つ又は複数の無機酸が硫酸を実質的に含まず、好ましくは含まず、そうではなくてリン酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0095】
いくつかの場合には、1つ又は複数の酸が有機酸を含まない、本発明の方法が好ましい。
【0096】
通常、工程(C)の酸性処理組成物が0.9g/cm3~1.9g/cm3、好ましくは0.95g/cm3~1.7g/cm3の範囲の密度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0097】
いくつかの場合には、酸性処理組成物が温度25℃を参照して1.50g/cm3~1.90g/cm3、好ましくは1.55g/cm3~1.80g/cm3、より好ましくは1.60g/cm3~1.70g/cm3、最も好ましくは1.61g/cm3~1.68g/cm3の範囲の密度を有する、本発明の方法が好ましい。これは、酸性処理組成物がかなりの量の酸、好ましくは1つ又は複数の無機酸、より好ましくは硫酸及びリン酸、最も好ましくは硫酸及びリン酸を含み、リン酸の合計モル量が硫酸の合計モル量よりも大きい場合に、最も好ましい場合となる。
【0098】
いくつかの他の場合には、酸性処理組成物が温度25℃を参照して1.15g/cm3~1.49g/cm3、好ましくは1.22g/cm3~1.41g/cm3、より好ましくは1.24g/cm3~1.39g/cm3、最も好ましくは1.26g/cm3~1.38g/cm3の範囲の密度を有する、本発明の方法が好ましい。これは、酸性処理組成物がかなりの量のリン酸を、最も好ましくは酸性処理組成物の合計容積に基づき7mol/L~12mol/Lの範囲の合計量で含む場合に、最も好ましい場合となる。
【0099】
更にいくつかの他の場合には、酸性処理組成物が温度25℃を参照して0.9g/cm3~1.3g/cm3、好ましくは0.93g/cm3~1.2g/cm3、より好ましくは0.95g/cm3~1.1g/cm3の範囲の密度を有する、本発明の方法が好ましい。これは、酸性処理組成物が硫酸を、最も好ましくは酸性処理組成物の合計容積に基づき0.02mol/L~1mol/L、好ましくは0.04mol/L~0.7mol/L、より好ましくは0.06mol/L~0.6mol/L、更により好ましくは0.07mol/L~0.5mol/L、最も好ましくは0.08mol/L~0.4mol/Lの範囲の合計量で含む場合に、最も好ましい場合となる。
【0100】
酸性処理組成物が
(C-c)好ましくはチタン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅、銀、パラジウム、亜鉛、及びカドミウムからなる群より選択される、1つ又は複数のマンガンとは異なる遷移金属イオン種を更に含む、本発明の方法が好ましい。
【0101】
酸性処理組成物において、(C-c)は、好ましくは、酸性処理組成物を安定化するか及び/又は工程(C)の処理を加速させる。例えば、酸性処理組成物におけるパラジウムイオンは、パラジウムイオンを含まない酸性処理組成物と比べてその後のパラジウム活性化工程において効率的且つ十分な活性化のために比較的低い濃度のパラジウムが必要とされる点において、処理品質に影響を与える。更に、パラジウムイオンが存在する場合、処理直後の処理品質それ自体もまた典型的には改善される。
【0102】
好ましくは、(C-c)は少量のみ存在する。
【0103】
(C-c)がニッケル、銅、パラジウム、及び銀からなる群より選択され、より好ましくは(C-c)が銅イオン及び/又は銀イオンを含み、最も好ましくは(C-c)が銀イオンを含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0104】
酸性処理組成物において(C-c)(好ましくは銅イオン及び銀イオンを共に、最も好ましくは銀イオン)が、酸性処理組成物の合計容積に基づき0.1mmol/L~150mmol/L、好ましくは0.3mmol/L~120mmol/L、より好ましくは0.5mmol/L~100mmol/L、更により好ましくは0.8mmol/L~80mmol/L、そのうえ更により好ましくは1mmol/L~60mmol/L、最も好ましくは1.5mmol/L~40mmol/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0105】
酸性処理組成物はまた、界面活性化合物を含むことができる。
【0106】
前処理組成物における1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物が、前処理組成物から少なくとも部分的に引き出されて酸性処理組成物に引き込まれる、本発明の方法が好ましい。これは主に、工程(B)と(C)との間に好ましくは洗い流しが適用されない、即ち前処理基板がプロセス工程(B)からプロセス工程(C)に好ましくは直接移動させられるために可能である。
【0107】
酸性処理組成物におけるあらゆる全ての量のフッ素を含まない界面活性化合物が前処理組成物に由来する、本発明の方法がより好ましい。
【0108】
工程(C)において酸性処理組成物においてフッ素を含まない界面活性化合物がエッチング組成物の合計重量に基づいて0.01wt.-%~1wt.-%、好ましくは0.02wt.-%~0.5wt.-%、より好ましくは0.03wt.-%~0.2wt.-%、最も好ましくは0.04wt.-%~0.1wt.-%の範囲の平均総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。平均は、通常の連続的操作の間に継続的に界面活性化合物がエッチング組成物に引き込まれ、且ついくらかが引き出されるか及び/又は分解されるようなことを意味する。
【0109】
工程(C)において酸性処理組成物が69mN/m以下、好ましくは68mN/m以下、より好ましくは66mN/m以下、更により好ましくは63mN/m以下、そのうえ更により好ましくは59mN/m以下、ほとんど最も好ましくは55mN/m以下、最も好ましくは50mN/m以下の表面張力を有する、本発明の方法がいくつかの場合には好ましい。
【0110】
工程(C)において基板を処理するために電流が加えられない、本発明の方法が好ましい。これは3D印刷基板を処理するプロセスそれ自体が完全に化学に基づいたものであり、電流は含まれないことを意味する。このことは、より低い酸化数のマンガン種をより高い酸化数のマンガン種に再酸化(再利用)するのに利用される電流を除外しない。
【0111】
工程(C)において接触が1分~120分、好ましくは2分~80分、より好ましくは3分~60分、更により好ましくは5分~45分、そのうえ更により好ましくは6分~30分、最も好ましくは8分~15分の範囲の時間行われる、本発明の方法が好ましい。8分~15分の範囲の接触が、ABS及び/又はABS-PCを含む基板にとって最も好ましい。基板がポリエーテルケトン(PEK)を含む場合はより長い接触が典型的には好ましく、好ましくは約60分以下である。
【0112】
工程(C)において接触が25℃~80℃、好ましくは30℃~75℃、更により好ましくは35℃~70℃、最も好ましくは40℃~60℃の範囲の温度で行われる、本発明の方法が好ましい。
【0113】
既に上述したように、工程(B)が行われる場合、本発明の方法では、一般的に用いられるフッ素化界面活性化合物が用いられず、完全に防止することができる。従って、前処理組成物及び酸性処理組成物がフッ素化界面活性化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0114】
前処理組成物及び酸性処理組成物が同一のフッ素を含まない界面活性化合物を含む、本発明の方法がより好ましい。しかしながら、それらは、好ましくはその濃度は著しく異なる。最も好ましくは、それらの両方が、同一のフッ素を含まない界面活性化合物のみ(即ち界面活性化合物に関して)を含む。
【0115】
処理区画が槽、好ましくは酸性処理組成物に対する耐薬品性を有する槽である、本発明の方法が好ましい。より好ましくは、処理区画はエッチング区画、好ましくはエッチング槽である。
【0116】
(A)で供給された基板又は(B)の後に得られた前処理基板が、好ましくは本文を通して規定されたような期間、その基板を処理組成物に浸漬することにより工程(C)で接触させられる、本発明の方法が好ましい。
【0117】
工程(C)の後、
(D)処理基板を活性化組成物と接触させて、活性化基板を得る工程を更に含む、本発明の方法が好ましい。
【0118】
このようにする場合、本発明の方法は、その後の金属化のための非金属3D印刷基板を処理する方法であるだけでなく、更に、そのような基板を活性化する方法も含む。
【0119】
多くの場合、より好ましくは水によって工程(C)と(D)との間に洗い流すことが好ましい。いくつかの場合には、工程(C)の後、基板上の残存量の1つ又は複数のマンガン種を(より)可溶性のマンガン種に化学的に還元するために還元剤含有組成物との接触が行われることが好ましい。
【0120】
好ましくは、洗い流しが行われ、工程(C)に由来するあらゆる残ったマンガン種が容易に除去される。
【0121】
本発明の方法では、好ましくは、工程(C)は工程(D)から分離された独立した工程である。言い換えれば、工程(C)で利用される酸性処理組成物は、工程(D)で利用される活性化組成物ではない。このことは工程(B)及び(C)に準用する、即ち工程(C)で利用される酸性処理組成物は、工程(B)で利用される前処理組成物ではない。
【0122】
工程(D)において活性化組成物がパラジウム、好ましくは溶解したパラジウムイオン又はパラジウムコロイド、最も好ましくはパラジウムコロイドを含む、本発明の方法が好ましい。好ましくは、パラジウムコロイドは更にスズを含む。
【0123】
工程(D)において活性化組成物が活性化組成物の合計容積に基づき5mg/L~200mg/L、好ましくは10mg/L~150mg/L、より好ましくは15mg/L~80mg/L、更により好ましくは17mg/L~50mg/L、最も好ましくは20mg/L~40mg/Lの範囲の総濃度でパラジウムを含む、本発明の方法が好ましい。好ましくは、この総濃度は溶解したパラジウムイオン及びパラジウムコロイドの両方、好ましくはパラジウムコロイドに適用される。濃度はパラジウム元素に基づく。
【0124】
工程(D)において活性化組成物が25℃~70℃、好ましくは28℃~60℃、より好ましくは30℃~55℃、更により好ましくは32℃~50℃、最も好ましくは35℃~46℃の範囲の温度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0125】
工程(D)において接触が1分~15分、好ましくは2分~12分、より好ましくは2.5分~9分、最も好ましくは3分~7分の範囲の時間行われる、本発明の方法が好ましい。
【0126】
工程(D)が
(D-1)活性化基板を促進剤組成物と接触させて活性化基板を改質する工程であって、促進剤組成物が
工程(D)において活性化組成物がパラジウムコロイドを含む場合は、還元剤ではなく、少なくとも1つのスズイオン用錯化剤、又は
工程(D)において活性化組成物がパラジウムイオンは含むがパラジウムコロイドは含まない場合は、パラジウムイオンを金属パラジウムに還元するための還元剤を含む、工程を含む、本発明の方法が好ましい。
【0127】
工程(D-1)において促進剤組成物が還元剤ではなく少なくとも1つのスズイオン用錯化剤を含み、且つ酸性であり、好ましくは更に硫酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0128】
工程(D)の後、
(E)活性化基板を第1の金属化組成物と接触させて、第1の金属層又は金属合金層がそこに堆積されて第1の金属化基板となる工程を更に含む、本発明の方法が好ましい。
【0129】
このようにする場合、本発明の方法は、3D印刷基板を処理及び活性化する方法であるだけでなく、更に、そのような基板を金属化する方法でもある。
【0130】
工程(C)の後、
(D)処理基板を活性化組成物と接触させて、活性化基板を得る工程、及び/又は
(E)処理基板若しくは活性化基板を第1の金属化組成物と接触させて、第1の金属層若しくは金属合金層がそこに堆積されて第1の金属化基板となる工程を更に含む、本発明の方法がより好ましい。
【0131】
いくつかの場合には、第1の金属層又は金属合金層が処理基板に直接堆積される(直接金属化)、本発明の方法が好ましく、他の場合には、第1の金属層又は金属合金層が活性化基板に堆積される、本発明の方法が好ましい。
【0132】
通常、第1の金属化組成物との接触が電流なしで行われる、本発明の方法が好ましい。これは、この接触が好ましくは無電解であることを意味する。
【0133】
第1の金属化組成物がニッケルイオン、及び好ましくはそのニッケルイオンの還元剤を含む、本発明の方法が好ましい。従って、好ましくは、第1の金属層又は金属合金層はそれぞれニッケル層又はニッケル合金層である。
【0134】
工程(D)又は(E)の後、
(F)活性化基板又は第1の金属化基板を第2の金属化組成物と接触させて、第2の金属層又は金属合金層がそこに堆積されて第2の金属化基板となる工程を更に含む、本発明の方法が好ましい。
【0135】
第2の金属化組成物との接触が電流の存在下で行われる、本発明の方法が好ましい。これは、この接触が好ましくは電解接触であることを意味する。
【0136】
第2の金属化組成物が銅イオンを含み、好ましくは酸性である、本発明の方法が好ましい。従って、好ましくは、第2の金属層又は金属合金層はそれぞれ銅層又は銅合金層である。
【0137】
本発明は、その後の金属化のための3D印刷基板の処理のための
(C-a)1つ又は複数のマンガン種を含む(好ましくは本発明の方法に利用されるような)酸性処理組成物の使用に更に言及する。
【0138】
その好ましい特徴を含む本発明の方法に関する上述した事項は、好ましくは、本発明の使用に同様に適用される。
【0139】
本発明はここで、以下の限定されない例を参照して説明される。
【実施例
【0140】
以下の例を通して、「E」は本発明に従う例を示し、「CE」は本発明に従わない比較例を示す。
【0141】
第1組の例
以下の例では、表1に規定するような基板材料を試験した。第1組の例に従う例は、比較的多量の過マンガン酸塩を含むが酸の合計量はかなり低い処理組成物の代表である。
【0142】
プレエッチング組成物: 300ml/LのEDGA
プレエッチングパラメーター:プレエッチング時間:2~5分(表1参照)
プレエッチング温度: 35℃
【0143】
このプレエッチングは、任意の工程(B)の前処理組成物による前処理には対応しない。
【0144】
処理組成物:100g/Lの過マンガン酸カリウム(約0.6mol/L)、
11g/Lの硫酸(約0.1mol/L)及び
安定剤としての銅イオン
処理パラメーター:10~15分(表1参照)
70℃、及び
適度な空気パージ
【0145】
処理(好ましくはエッチング)後、粒子状マンガン種を還元して可溶性形態にするために処理基板を還元組成物で更に処理した。
【0146】
その後、その後の無電解ニッケルめっき及び続いての電気銅めっきのために還元基板をパラジウムコロイドを含む活性化組成物で処理した(約5分、45℃、80mg/L未満のPd)。
【0147】
銅めっき基板を視覚的に検査した。銅による被覆はそれぞれの場合で良好であった。更に、典型的には熱処理(70℃で1時間)後も気泡は見られなかった。
【0148】
【表1】
【0149】
表1において略語は以下の意味を有する。
CDLP 連続デジタルライトプロセッシング(光重合法)
SLA 光造形(光重合法)
MJF マルチジェット溶融(粉末床溶融法)
FDM 熱溶解積層(材料押出し法)
【0150】
例E1~E4を、比較の目的で一般的に知られているクロム酸エッチング(約380g/Lのクロム酸、380g/Lの硫酸、10分、68℃)により比較例(それぞれCE1、CE2、CE3、及びCE4)として繰り返した。多くの場合、クロム酸エッチング後の良好な被覆がまた得られた(表1参照)。しかしながら、比較例CE2(ポリアクリレート、SLA)では全体的に不十分な被覆が得られた。更に、全ての比較例において望ましくない気泡が観察された。
【0151】
第1組の例を以下のように要約することができる。まず、本発明に従う例は、今までのところ依然として参照方法と考えられる有害なクロム酸エッチング組成物に対する非常に良好な代替品となる。従って、有害なクロム酸を、本発明の方法により、即ち比較的少量の硫酸で多量の過マンガン酸イオンを含む酸性処理組成物を利用することにより、効果的に回避することができる。第2に、多くの場合、クロム酸エッチングにより得られた結果に比べて更に良好な結果が得られた。被覆が良好な全ての比較例において、クロム酸エッチングの後、めっき直後又は少なくとも熱処理後のいずれかに望ましくない気泡が観察された。これに対して、第1組の例の本発明に従う例では、そのような気泡は典型的に生じなかった。
【0152】
例E3において特に優れた結果が得られ、良好な被覆だけでなく、PA11及びPA12の両方について更に並外れた高いピール強度を示した。更に、E2はポリアクリレートを良好な被覆が得られるように処理することができることを示すが、比較例CE2はクロム酸エッチングによる適切な被覆を可能にしない。このことは、本発明の方法の様々な3D印刷基板に対する広範な利用を確かなものとする。
【0153】
第2組の例
以下の例では、表2に規定するような基板材料を試験した。第2組の例においては、(i)プレエッチング及び(ii)可溶性マンガン種を形成するための粒子状マンガン種の化学的な還元を必要とすることなく、処理を試験した。従って、第2組の例に従う例は、必要なプロセス工程が少なく、例えば比較的スペースの少ない施設において用いることができる。第2組の例に従う例は、基本的に過マンガン酸塩を含まない処理組成物の代表であるが、むしろ他のマンガン種を供給する。
処理組成物:合計5~6g/Lのマンガン種、少なくとも約2g/LのコロイドMn(IV)種、1g/LまでのMn(III)種、及び0.7g/LまでのMn(II)種を含む、
約4mol/Lの硫酸、
約9mol/Lのリン酸、
5~20mmol/Lの銀イオン、及び
界面活性化合物無し、且つパラジウムイオン及び過マンガン酸イオン無し
処理パラメーター:10~20分(表2参照)、
40℃、及び
適度な空気パージ
【0154】
処理(好ましくはエッチング)後、洗い流し工程において処理基板を水で洗い流した。粒子状マンガン種を可溶性形態へと化学的に還元するための還元剤含有組成物による処理は必要としなかった。粒子状マンガン種が存在した場合、それらは洗い流し工程で洗い流した。
【0155】
その後、その後の無電解ニッケルめっき及び電気銅めっきのために洗い流した基板をパラジウムコロイドを含む活性化組成物で処理した(約5分、40℃、80mg/L未満のPd)。
【0156】
銅めっき基板を視覚的に検査した。ここでも銅による被覆はそれぞれの場合で良好であった。
【0157】
【表2】
【0158】
表2において略語は以下の意味を有する。
CDLP 連続デジタルライトプロセッシング(光重合法)
SLA 光造形(光重合法)
FDM 熱溶解積層(材料押出し法)
【0159】
ここでも、第2組の例に従う例も、有害なクロム酸エッチング組成物に対する非常に良好な代替品となる。更に、短縮された一連の工程により典型的には過マンガン酸イオンを含まない処理組成物を利用することにより、良好な被覆も得られた。
【0160】
例E7において特に優れた結果が得られ、良好な被覆だけでなく、更に非常に合理的なピール強度を示した。更に、E8はポリアクリレートをこの処理組成物によっても良好な被覆が得られるように処理することができることを示すが、比較例CE2はそのような材料に対するクロム酸エッチングによる適切な被覆を可能にしない。ここでも本発明の方法の広範な利用を確かなものとする。
【0161】
第3組の例
以下の例では、表3に規定するような基板材料を試験した。ここでも、第3組の例においては、(i)プレエッチング及び(ii)可溶性マンガン種を形成するための粒子状マンガン種の化学的な還元を必要とすることなく、処理を試験した。第3組の例に従う例は、比較的少量の過マンガン酸塩を含むが酸の合計量はかなり多い処理組成物の代表である。
【0162】
処理組成物:5~10mmol/Lの過マンガン酸イオン、
約10mol/Lのリン酸、及び
界面活性化合物なし
処理パラメーター:2~20分、
40℃、及び
適度な空気パージ
【0163】
処理(好ましくはエッチング)後、洗い流し工程において処理基板を水で洗い流した。ここでも、粒子状マンガン種を可溶性形態へと化学的に還元するための還元剤含有組成物による処理は必要としなかった。粒子状マンガン種が存在した場合、それらは洗い流し工程で洗い流した。
【0164】
その後、その後の無電解ニッケルめっき及び電気銅めっきのために洗い流した基板をパラジウムコロイドを含む活性化組成物で処理した(約5分、40℃、80mg/L未満のPd)。
【0165】
銅めっき基板を視覚的に検査した。銅による被覆はそれぞれの場合で良好であった。更に、典型的には熱処理(70℃で1時間)後も気泡は見られなかった。
【0166】
【表3】
【0167】
表3において略語は以下の意味を有する。
CDLP 連続デジタルライトプロセッシング(光重合法)
SLA 光造形(光重合法)
MJF マルチジェット溶融(粉末床溶融法)
FDM 熱溶解積層(材料押出し法)
SLS 選択的レーザー焼結(粉末床溶融法)
【0168】
ここでも、第3組の例に従う例は、有害なクロム酸エッチング組成物に対する非常に良好な代替品となる。更に、短縮された一連の工程により比較的多い酸の合計量で比較的低濃度の過マンガン酸塩を含む処理組成物を利用することにより、良好な被覆も得られた。
【0169】
加えて、典型的に、クロム酸エッチングにより得られた結果に比べて更により良好な結果が得られた。ここでも、被覆が良好な全ての比較例において、クロム酸エッチングの後、めっき直後又は少なくとも熱処理後のいずれかに望ましくない気泡が観察された。これに対して、第3組の例の本発明に従う例では、そのような気泡は典型的に生じなかった。
【0170】
例E16及びE17において特に優れた結果が得られ、良好な被覆だけでなく、PA11及びPA12の両方について更に並外れた高いピール強度を示した。ここでもポリアクリレートについて優れた結果が得られた。
【0171】
本発明に従う全ての例は、本発明の方法で利用された酸性処理組成物が広範な種類の3D印刷基板について良好な結果をもたらすことを示した。このことは、例えば過マンガン酸塩を含むアルカリ性処理組成物に対する重要な利点である。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その後の金属化のための非金属基板を処理する方法であって、前記方法が、
(A)基板を供給する工程、
(B)任意に、(A)で供給された基板を前処理組成物と接触させて、前処理基板を得る工程であって、前記前処理組成物が
(B-a)1つ又は複数のフッ素を含まない界面活性化合物を含む、工程、及び
(C) (A)で供給された基板又は(B)の後に得られた前処理基板を処理区画で酸性処理組成物と接触させて、その後の金属化のための処理基板を得る工程であって、前記酸性処理組成物が
(C-a)1つ又は複数のマンガン種を含む、工程を含み、
前記基板が3D印刷基板であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(A)において供給する工程が
(A-1)3D印刷して、3D印刷基板を得る工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)において3D印刷基板が、(i)溶融フィラメント製造基板、(ii)光重合基板、(iii)粉末床溶融基板、及び材料噴出基板からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)において3D印刷基板が、少なくとも、アクリロニトリルブタジエンスチレン、カーボネート、エポキシ、アクリレート、ウレタン、アミド、プロピレン、それらのオリゴマー、それらのポリマー、それらの混合物、及び/又はそれらの複合材料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性処理組成物が6.5以下のpHを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性処理組成物において(C-a)が酸性処理組成物の合計容積に基づきマンガン元素に基づいて0.001mol/L~1.8mol/Lの範囲の総濃度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性処理組成物において1つ又は複数のマンガン種が、過マンガン酸イオン及び/又は酸化数+IVのマンガン元素を含むマンガン種を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性処理組成物が
(C-b)1つ又は複数の酸を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性処理組成物が
(C-c)マンガンとは異なる1つ又は複数の遷移金属イオン種を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸性処理組成物がHFを実質的に含まない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性処理組成物が3価クロムイオン及び6価クロム化合物を実質的に含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(C)において接触が25℃~80℃の範囲の温度で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(C)の後、
(D)処理基板を活性化組成物と接触させて、活性化基板を得る工程、及び/又は
(E)処理基板若しくは活性化基板を第1の金属化組成物と接触させて、第1の金属層若しくは金属合金層がそこに堆積されて第1の金属化基板となる工程を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(D)又は(E)の後、
(F)活性化基板又は第1の金属化基板を第2の金属化組成物と接触させて、第2の金属層又は金属合金層がそこに堆積されて第2の金属化基板となる工程を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
その後の金属化のための3D印刷基板の処理のための
(C-a)1つ又は複数のマンガン種を含む酸性処理組成物の使用。
【国際調査報告】