(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】親水性及び導電性に優れた鋼板
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240423BHJP
H01M 8/021 20160101ALI20240423BHJP
C22C 38/28 20060101ALN20240423BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
H01M8/021
C22C38/28
C21D9/46 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569767
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2022007507
(87)【国際公開番号】W WO2022255731
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069653
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジオン
(72)【発明者】
【氏名】キム, クァンミン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ボソン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジンソク
【テーマコード(参考)】
4K037
5H126
【Fターム(参考)】
4K037EA04
4K037EA05
4K037EA12
4K037EA15
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EA32
4K037EB03
4K037FA02
4K037FF03
4K037FG03
4K037JA07
5H126AA12
5H126DD05
5H126DD18
5H126GG08
5H126JJ01
5H126JJ02
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】燃料電池分離板用として活用できる親水性及び導電性に優れた鋼板を提供する。
【解決手段】本明細書では、親水性及び導電性に優れた鋼板について開示する。開示される一例による親水性及び導電性に優れた鋼板は、鋼板上にピッチ間の間隔が1~500nmの微細突起が面積分率で20%以上含まれる継手構造を含み、
前記微細突起のうち、角状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、前記角状微細突起は、面積が同一または異なる多角形からなる3つの互いに異なる面が1つの頂点を共有し、各面での法線ベクトル間の角度がすべて0°超過180°未満の形状の微細突起であり、
前記1つの頂点を共有する3つの互いに異なる面のうち最も広い面の面積が40,000nm
2未満であり、3つの面の総面積が60,000nm
2未満であることを特徴とする。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板上にピッチ間の間隔が1~500nmの微細突起が面積分率で20%以上含まれる継手構造を含むことを特徴とする親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項2】
前記微細突起のうち、角状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、前記角状微細突起は、面積が同一または異なる多角形からなる3つの互いに異なる面が1つの頂点を共有し、各面での法線ベクトル間の角度がすべて0°超過180°未満の形状の微細突起であり、
前記1つの頂点を共有する3つの互いに異なる面のうち最も広い面の面積が40,000nm
2未満であり、3つの面の総面積が60,000nm
2未満であることを特徴とする請求項1に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項3】
前記微細突起のうち棒状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、前記棒状微細突起は、円形または多角形の底面及び円形または多角形の周りから垂直延長された側面からなる棒状を有し、前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度が0~90°の微細突起であり、
前記側面の高さが50nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項4】
前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、0~30°であることを特徴とする請求項3に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項5】
前記微細突起のうち針状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、針状微細突起は、1つの頂点から鋼板側に連続して放射延長される各曲線または直線からなる立体であり、放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、90°超過180°以下の微細突起であり、
前記頂点から鋼板表面までの鉛直距離が50nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項6】
前記放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は150~180°であることを特徴とする請求項5に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項7】
結晶粒の大きさは、1~35μmであることを特徴とする請求項1に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【請求項8】
結晶粒間の高さの差は、0.1~1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の親水性及び導電性に優れた鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性及び導電性に優れた鋼板に係り、より詳しくは、燃料電池分離板用として活用できる親水性及び導電性に優れた鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素の化学反応によって生じる化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる高効率の環境に優しい電池である。燃料電池は、電解質とアノード(anode)電極及びカソード(cathode)電極からなる膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の両側に気体拡散層と分離板が積層された単位電池構造からなっており、このような複数の単位電池が直列に連結されて構成されたものを燃料電池スタックという。
【0003】
分離板は、燃料電池電極にそれぞれ燃料(水素あるいは改質ガス)と酸化剤(酸素と空気)を供給し、電気化学反応物である水を排出するための流路が形成されており、膜電極集合体と気体拡散層を機械的に支持する機能と隣接する単位電池との電気的連結機能を行う。
【0004】
このような分離板素材として従来は黒鉛素材を使用したが、近年では、製作コスト、重量などを考慮してステンレス鋼を多く適用している。適用されるステンレス鋼素材は、燃料電池作動環境である強い酸性環境内で腐食性に優れていなければならず、軽量化、小型化、量産性の観点から耐食性及び伝導性に優れたステンレス鋼を使用しなければならない。
【0005】
しかし、従来のステンレス鋼は、不動態皮膜で高い抵抗値を示すので、燃料電池性能において抵抗損失を示すことがあり、さらに金(Au)や炭素、ナイトライド(nitride)などの伝導性物質をコーティングする工程が提案されてきた。しかし、前記のような方法は、貴金属やコーティング物質をコーティングするためのさらなる工程によって製造コスト及び製造時間が増加し、生産性が低下するという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0836480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、燃料電池分離板用として活用できる親水性及び導電性に優れた鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するための手段として本発明の親水性及び導電性に優れた鋼板は、鋼板上にピッチ間の間隔が1~500nmの微細突起が面積分率で20%以上含まれる継手構造を含んでもよい。
【0009】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、前記微細突起のうち、角状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、前記角状微細突起は、面積が同一または異なる多角形からなる3つの互いに異なる面が1つの頂点を共有し、各面での法線ベクトル間の角度がすべて0°超過180°未満の形状の微細突起であり、前記1つの頂点を共有する3つの互いに異なる面のうち最も広い面の面積が40,000nm2未満であり、3つの面の総面積が60,000nm2未満であってもよい。
【0010】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、前記微細突起のうち棒状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、前記棒状微細突起は、円形または多角形の底面及び円形または多角形の周りから垂直延長された側面からなる棒状を有し、前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度が0~90°の微細突起であり、前記側面の高さが50nm以上であってもよい。
【0011】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、0~30°であってもよい。
【0012】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、前記微細突起のうち針状微細突起が面積分率で20%以上含まれ、針状微細突起は、1つの頂点から鋼板側に連続して放射延長される曲線または直線からなる立体であり、放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、90°超過180°以下の微細突起であり、前記頂点から鋼板表面までの鉛直距離が50nm以上であってもよい。
【0013】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、前記放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、150~180°であってもよい。
【0014】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、結晶粒の大きさは、1~35μmであってもよい。
【0015】
本発明の各親水性及び導電性に優れた鋼板において、結晶粒間の高さの差は、0.1~1000nmであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、継手構造を含めて燃料電池分離板用として活用できる親水性及び導電性に優れた鋼板を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の鋼板の表面SEM写真である(倍率50,000)。
【
図2a】本発明の鋼板の表面SEM写真である(倍率50000)。
【
図2b】本発明の鋼板の表面SEM写真である(倍率50000)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の親水性及び導電性に優れた鋼板は、鋼板上にピッチ間の間隔が1~500nmの微細突起が面積分率で20%以上含まれる継手構造を含んでもよい。
【0019】
以下、本発明について説明する。しかし、本発明の実施形態は、様々な異なる形態に変形されてもよく、本発明の技術思想が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0020】
本出願で使用される用語は、単に特定の例示を説明するために使用されるものである。したがって、例えば、単数の表現は、文脈上明らかに単数でなければならないものでない限り、複数の表現を含む。さらに、本出願で使用される「含む」または「備える」などの用語は、明細書上に記載された特徴、段階、機能、構成要素、またはそれらを組み合わせたものが存在することを明確に指すために使用されるものであり、他の特徴や段階、機能、構成要素またはそれらを組み合わせたものの存在を予備的に排除するために使用されるものではないことに留意しなければならない。
【0021】
一方、特に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を持つものとみなすべきである。したがって、本明細書で明確に定義しない限り、特定の用語が過度に理想的または形式的な意味で解釈されるべきではない。例えば、本明細書において単数の表現は、文脈上、明らかに例外のない限り、複数の表現を含む。
【0022】
また、本明細書において「約」、「実質的に」などは、言及した意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近い意味で使用され、本発明の理解を助けるために正確かつ絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0023】
本発明者らは、本発明の課題を解決するための実験を様々な条件で繰り返し行った結果、鋼板上に継手構造があれば鋼材の親水性及び導電性が著しく向上することを見出した。
【0024】
「継手構造」とは、微細突起のピッチ間の間隔が1~500nmで連続的に分布している構造を指す。ここで、「ピッチ間の間隔」とは、鋼板の厚さ方向断面において、互いに隣接する微細突起の最も高い地点間の間隔を意味する。
【0025】
「鋼板上に」とは、鋼板の上という位置関係を指し、特に言及しない限り、鋼板の他の位置関係を排除するものではないことに留意する必要がある。一実施例によれば、鋼板、鋼板上に継手構造、継手構造上に酸化物層順の位置関係も含む。
【0026】
一実施例による鋼板は、鋼板上にピッチ間の間隔が1~500nmの微細突起が面積分率で20%以上含まれる継手構造を有してもよい。微細突起が面積分率で20%未満で含まれると、十分な親水性及び導電性を確保できず、燃料電池分離板用などとして活用するには不適合となるおそれがある。好ましい実施例による鋼板は、前記微細突起の面積分率が30%以上含まれる継手構造を有してもよい。より好ましい実施例による鋼板は、前記微細突起の面積分率が50%以上含まれる継手構造を有してもよい。
【0027】
一実施例によれば、微細突起は、角状、棒状、針状のうち少なくとも1つの形態を有する。
【0028】
「角状」とは、同一または異なる多角形からなる互いに異なる3つの面が1つの頂点を共有し、各面における法線ベクトル間の角度がすべて0°超過180°未満の図形を意味する。「角状」の代表的な例としては、1つの頂点から見た直方体、立方体の形状が挙げられる。
【0029】
角状微細突起の一実施例によれば、1つの頂点を共有する互いに異なる3つの面のうち最も広い面の面積は40,000nm2未満であり、3つの面の総面積は60,000nm2未満であってもよい。最も広い面積を有する面の広さが40,000nm2以上であるか、または3つの面の総面積が60,000nm2以上であれば、角状微細突起が過度に粗大に形成され、十分な親水性及び導電性を確保できないおそれがある。
【0030】
一実施例によれば、前記角状微細突起は、面積分率で20%以上含まれてもよい。
【0031】
「棒状」とは、円形または多角形の底面及び円形または多角形の周りから垂直延長された側面からなる棒状であり、前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度が0~90°の図形を意味する。「棒状」の代表的な例としては、円柱、三角柱、四角柱などが挙げられる。
【0032】
棒状微細突起の一実施例によれば、側面の高さは50nm以上であってもよい。側面の高さが大きいほど親水性及び導電性を向上させるのに有利であり、このような効果を考慮して側面の高さは50nm以上であることが好ましい。
【0033】
棒状微細突起の一実施例によれば、前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度が0~30°であってもよい。底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度が小さいほど親水性及び導電性を向上させるのに有利であり、このような効果を考慮して底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度は0~30°であることが好ましい。
【0034】
一実施例によれば、前記棒状微細突起は、面積分率で20%以上含まれてもよい。
【0035】
「針状」とは、1つの頂点から鋼板側に連続して放射延長される曲線または直線からなる立体図形であり、放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、90°超過180°以下である。「針状」の代表的な例としては、円錐、四角錐などが挙げられる。
【0036】
針状微細突起の一実施例によれば、頂点から鋼板表面までの鉛直距離が50nm以上であってもよい。鋼板表面から頂点までの距離が大きいほど親水性及び導電性を向上させるのに有利であり、このような効果を考慮して鋼板表面から頂点までの距離は、50nm以上であることが好ましい。
【0037】
針状微細突起の一実施例によれば、放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、150~180°であってもよい。放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度が大きいほど親水性及び導電性を向上させるのに有利であり、このような効果を考慮して放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は、150~180°であることが好ましい。
【0038】
一実施例によれば、前記針状微細突起は、面積分率で20%以上含まれてもよい。
【0039】
継手構造内の微細突起は、角状、棒状、針状のいずれかの形態のみを有するわけではないことに留意する必要がある。様々な実施例によれば、継手構造内の微細突起は、角状微細突起単独、棒状微細突起単独、針状微細突起単独、角状と棒状微細突起混合、角状と針状微細突起混合、棒状と針状微細突起混合、角状と棒状と針状の微細突起混合から構成されてもよい。
【0040】
継手構造の理解を助けるために、図面に基づいてその形状について詳細に説明する。ただし、添付の図面は、本発明の理解のために添付されており、特に言及しない限り、本発明の継手構造が図面に限定されて解釈されないことに留意する必要がある。
【0041】
【0042】
図2a、bに示す通り、従来の鋼板とは異なり、本発明例は、継手構造を有する。
図2aに示す通り、互いに異なる配向性を有する2つの角状微細突起群が分布してもよい。
図2bに示す通り、角状微細突起と棒状微細突起が混在した組織を有してもよい。
【0043】
鋼板は、結晶粒の大きさが1~35μmであってもよい。結晶粒の大きさが1μm未満であれば、接触表面積が減少して表面抵抗が高くなるおそれがある。逆に、結晶粒の大きさが35μm超過であれば、接触不良により、むしろ表面抵抗が高くなるおそれがある。
【0044】
鋼板は、結晶粒間の高さの差が0.1~1000nmであってもよい。結晶粒間の高さの差が0.1nm未満の場合、接触表面積が減少して表面抵抗が高くなるおそれがある。逆に、結晶粒間の高さの差が1000nm超過であれば、接触不良により、むしろ表面抵抗が高くなるおそれがある。
【0045】
上述した継手構造を満たす鋼板は、親水性及び導電性に優れる。一実施例によれば、微細突起の面積分率が20%以上の継手構造を有する鋼板は、5mΩ・cm2以下の接触抵抗及び80°以下の接触角を有する。好ましい実施例によれば、微細突起の面積分率が30%以上の継手構造を有する鋼板は、4mΩ・cm2以下の接触抵抗及び60°以下の接触角を有する。より好ましい実施例によれば、微細突起の面積分率が50%以上の継手構造を有する鋼板は、3.5mΩ・cm2以下の接触抵抗及び50°以下の接触角を有する。
【0046】
上述した継手構造を形成する一実施例として、スケールブレーカーを活用して高圧水を鋼材に強く噴射すると、鋼材の表面エネルギーが凝縮し、これは後続の酸洗工程においてエネルギーが凝縮された表面の金属原子が格子単位で母材から落ちるように誘導する。金属原子が落ちて残った鋼板の表面は、ピッチ間の間隔が1~500nmであり、角状、棒状、針状のいずれかの形態を有する微細突起が連続的に分布している継手構造を含んでもよい。
【0047】
本発明による鋼板は、継手構造を有する場合、親水性及び導電性に優れており、本発明の主な課題である親水性及び導電性を達成するために合金組成は特に限定する必要がない。しかし、一実施例による好ましい合金組成を示すと、以下の通りである。しかし、以下の成分組成は、本発明に対する理解を助けるための例示であり、本発明の技術思想を制限するものではないことに留意する必要がある。
【0048】
一実施例による鋼板は重量%で、C:0%超過0.02%以下、N:0%超過0.02%以下、Si:0%超過0.25%以下、Mn:0%超過0.2%以下、P:0%超過0.04%以下、S:0%超過0.02%以下、Cr:18~34%を含み、残りがFe及びその他の不可避な不純物からなってもよい。以下、特に言及しない限り、単位は、重量%(wt%)である。
【0049】
C:0%超過0.02%以下、N:0%超過0.02%以下
【0050】
CとNは鋼中Crと結合して安定したCr炭窒化物を形成し、その結果、Crが局所的に欠乏した領域が形成されて耐食性が低下するおそれがあるので、両元素の含量は低いほど好ましい。したがって、本発明においてC、Nの含量は、C:0%超過0.02%以下、N:0%超過0.02%以下で添加されてもよい。
【0051】
Si:0%超過0.25%以下
【0052】
Siは、脱酸に有効な元素である。しかし、過剰添加時に靭性、成形性を低下させ、焼鈍工程中に生成されるSiO2酸化物は電気伝導性、親水性を低下させる。これを考慮して、本発明においてSiの含量は、Si:0%超過0.25%以下で添加されてもよい。
【0053】
Mn:0%超過0.2%以下
【0054】
Mnは、脱酸に有効な元素である。しかし、Mnの介在物であるMnSは耐食性を減少させるので、本発明においてMnの含量は、0%超過0.2%以下で添加されてもよい。
【0055】
P:0%超過0.04%以下
【0056】
Pは、耐食性だけでなく靭性を低下させるので、本発明においてPの含量は、0%超過0.04%以下で添加されてもよい。
【0057】
S:0%超過0.02%以下
【0058】
Sは、鋼中Mnと結合して安定したMnSを形成し、形成されたMnSは、腐食の起点となって耐食性を低下させるので、Sの含量は低いほど好ましい。これを考慮して、本発明においてSの含量は、0%超過0.02%以下で添加されてもよい。
【0059】
Cr:18~34%
【0060】
Crは、耐食性を向上させる元素である。強い酸性環境である燃料電池作動環境での耐食性を確保するために、Crは、積極的に添加される。しかし、過剰添加時に靭性を低下させるので、これを考慮して、本発明においてCrの含量は、18~34%で添加されてもよい。
【0061】
また、一実施例による鋼板は、上述した合金組成の他に必要に応じて選択的合金成分として重量%で、V:0%超過0.6%以下、Ti:0%超過0.5%以下、Nb:0%超過0.5%以下のうち1種以上を含んでもよい。
【0062】
V:0%超過0.6%以下
【0063】
Vは、燃料電池の作動環境でFe溶出を抑制して燃料電池の寿命特性を向上させる元素である。しかし、過剰添加時に靭性が低下されるので、これを考慮して、本発明においてVの含量は、0%超過0.6%以下で添加されてもよい。
【0064】
Ti:0%超過0.5%以下、Nb:0%超過0.5%以下
【0065】
TiとNbは、鋼中C、Nと結合して安定な炭窒化物を形成することにより、Crが局所的に欠乏した領域の形成を抑制して耐食性を向上させる元素である。しかし、過剰添加時に靭性を低下させるので、これを考慮して本発明においてTi、Nbの含量は、Ti:0%超過0.5%以下、Nb:0%超過0.5%以下で添加されてもよい。
【0066】
残りの成分は、鉄(Fe)である。ただし、通常の製造過程では、原料や周囲の環境から意図しない不純物が不可避的に混入するおそれがあるので、これを排除することはできない。前記不純物は、通常の製造過程の技術者であれば誰でも知ることができるので、そのすべての内容を特に本明細書で言及していない。
【0067】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とこれから合理的に類推される事項によって決定されるものであるからである。
【0068】
{実施例}
様々な合金組成を有する鋼種をスラブで製造した後、製造されたスラブを1200℃で熱間圧延を通じて厚さ約4.5mmの熱延鋼板に製造した。熱延鋼板にスケールブレーカーを活用して高圧水を強く噴射した後、酸洗処理した。その後、熱延鋼板を1050℃で加熱した後、冷間圧延と1000℃での焼鈍を繰り返して厚さ約0.15mmの冷延鋼板に製造した。
【0069】
製造された冷延鋼板の微細突起面積分率と接触抵抗を測定し、下記表1に示した。
【0070】
表1の微細突起面積分率は、走査電子顕微鏡(SEM)を活用して測定した。
【0071】
表1の角状微細突起の面積分率は、面積が同一または異なる多角形からなる3つの互いに異なる面が1つの頂点を共有し、各面における法線ベクトル間の角度がすべて0°超過180°未満の形態であり、前記1つの頂点を共有する3つの互いに異なる面のうち最も広い面の面積が40,000nm2未満であり、3つの面の総面積が60,000nm2未満の微細突起の面積を求めた。
【0072】
表1の棒状微細突起の面積分率は、円形または多角形の底面及び円形または多角形の周りから垂直延長された側面からなる棒状を有し、前記底面の法線ベクトルと鋼板表面の法線ベクトル間の角度が0~90°であり、前記側面の高さが50nm以上の微細突起の面積を求めた。
【0073】
表1の針状微細突起の面積分率は、1つの頂点から鋼板側に連続して放射延長される曲線または直線からなる立体であり、放射延長される各曲線または直線と鋼板表面の法線ベクトル間の角度は90°超過180°以下であり、前記頂点から鋼板表面までの鉛直距離が50nm以上である微細突起の面積を求めた。
【0074】
表1の界面接触抵抗の評価は、製造された素材を50cm2面積に切断して2枚準備後、その間にガス拡散層として使用される4cm2面積のカーボンペーパー(SGL-10BA)を間に配置して接触圧力100N/cm2での界面接触抵抗を5回ずつ評価した後、平均を出して導出した。
【0075】
表1の接触角の評価は、製造された鋼板素材を面積20cm2に切断し、KRUSS GmbH社のDSK 10-MK2装備を使用して3μl蒸留水を常温で表面に水滴状に落とし、表面との接触角を測定した。
【0076】
【0077】
表1を参照すると、本発明が限定する継手構造を満たす発明例1~10は、接触抵抗が5mΩ・cm2以下であり、接触角が80°以下で親水性及び導電性に優れていた。また、微細突起の面積分率が高いほど接触抵抗が低くなる傾向を示した。微細突起の面積分率が20%以上の継手構造を有する発明例は、5mΩ・cm2以下の接触抵抗及び80°以下の接触角を確保した。微細突起の面積分率が30%以上の継手構造を有する発明例は、4mΩ・cm2以下の接触抵抗及び60°以下の接触角を確保した。微細突起の面積分率が50%以上の継手構造を有する発明例は、3.5mΩ・cm2以下の接触抵抗及び50°以下の接触角を確保した。しかし、比較例1~4は、本発明が限定する継手構造を満足できず、接触抵抗が5mΩ・cm2を超過し、接触角が80°を超過して親水性及び導電性に劣っていた。
【0078】
以上、本発明の例示的な実施例を説明したが、本発明はこれに限定されず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、以下に記載する請求範囲の概念と範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変更及び変形が可能であることが理解できるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、継手構造を含めて燃料電池分離板用として活用できる親水性及び導電性に優れた鋼板を提供できるので、産業上利用可能性が認められる。
【国際調査報告】