(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】トリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/20 20060101AFI20240423BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240423BHJP
A61K 31/4458 20060101ALI20240423BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/36
A61K47/14
A61K31/4458
A61P25/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569930
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022028550
(87)【国際公開番号】W WO2022240849
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517298817
【氏名又は名称】シンギュレイト・セラピューティクス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Cingulate Therapeutics LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ブラムス,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ストローン,アーサー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD24
4C076DD29
4C076DD47
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF31
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA18
(57)【要約】
トリモーダル(すなわち、3種のパルス)放出プロフィールを送達する、トリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤が提供される。前記錠剤は少なくとも3種の賦活薬層を含む。複数の賦活薬層を有する錠剤を単一の錠剤を提供することにより、投与回数が減少し、長時間にわたって医薬有効成分の正確な血中濃度が制御および達成されるため、コンプライアンスの増大が期待できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦活薬の経口投与用のトリモーダルパルス型放出錠剤であって、
(a)(i)前記錠剤中の総賦活薬の約30%~約40%の第1パルスであって、前記第1パルスは、前記錠剤の患者への経口投与後約10分~約45分以内に放出される、前記第1パルスと、(ii)硫酸カルシウムと、(iii)微結晶セルロースと、(iv)コロイド状二酸化ケイ素と、(v)デンプングリコール酸ナトリウムと、(vi)フマル酸ステアリルナトリウムとを含む、第1賦活薬層;
(b)(i)前記錠剤中の総賦活薬の約40%~約50%の第2パルスであって、前記第2パルスの放出は、患者への錠剤の経口投与の約3時間~約5時間後に開始され、かつ前記第2パルスの放出は、約60~約100分間持続する、前記第2パルスと、(ii)硫酸カルシウムと、(iii)ヒプロメロースと、(iv)微結晶セルロースと、(v)コロイド状二酸化ケイ素と、(vi)デンプングリコール酸ナトリウムと、(vii)フマル酸ステアリルナトリウムとを含む、第2賦活薬層;および
(c)(i)前記錠剤中の総賦活薬の約15%~約25%の第3パルスであって、前記第3パルスの放出は、患者への錠剤の経口投与の約6時間~約9時間後に開始され、前記第3パルスと、(ii)硫酸カルシウムと、(iii)微結晶セルロースと、(iv)コロイド状二酸化ケイ素と、(v)デンプングリコール酸ナトリウムと、(vi)フマル酸ステアリルナトリウムとを含む、第3賦活薬層を含み、
ここで、前記錠剤は、前記第1賦活薬層が、前記錠剤の表面として、外側侵食バリア層上に配置され、前記第2賦活薬層が、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層に囲まれるように、前記外側侵食バリア層と前記内側侵食バリア層との間に配置され、前記第3賦活薬層が、前記錠剤の中央で、前記内側侵食バリア層に囲まれるように構築され;
ここで、前記第1賦活薬層は、2.5w/w%~約25w/w%の賦活薬と、約1w/w%以下の硫酸カルシウムと、累積的な約75w/w%~約98w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムを含み;前記第2賦活薬層は、約5w/w%~約50w/w%の賦活薬と、約1w/w%以下の硫酸カルシウムと、約4w/w%~約10w/w%のヒプロメロースと、および累積的な約40w/w%~約90w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムを含み;前記第3賦活薬層は、2.5w/w%~約25w/w%の賦活薬と、約1w/w%以下の硫酸カルシウムと、累積的な約75w/w%~約98w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムを含み;
ここで、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層はそれぞれ、約35重量%~約45重量%のベヘン酸グリセリル、約15重量%~約25重量%のLH-21、約25重量%~約35重量%のLH-32、および約4重量%~約8重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含み;および
ここで、前記賦活薬はメチルフェニデートまたはその医薬上許容される塩である、前記トリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項2】
前記第1ユニットが、前記錠剤中の総賦活薬の約35%を放出する、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項3】
前記第2ユニットが、前記錠剤中の総賦活薬の約45%を放出する、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項4】
前記第3ユニットが、前記錠剤中の総賦活薬の約20%を放出する、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項5】
前記第2パルスの放出が、前記錠剤の患者への経口投与の約3~約4時間後に開始される、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項6】
前記第3パルスの放出が、前記錠剤の患者への経口投与の約7~約8時間後に開始される、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項7】
前記第2パルスが約90分間持続する、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項8】
前記外側侵食バリア層および前記内側侵食バリア層がそれぞれ、約37.5%~約42.5%のベヘン酸グリセリル、約20重量%~約23重量%のLH-21、約27.5重量%~約32.5重量%のLH-32、および約5重量%~約7重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項9】
前記ヒドロキシプロピルセルロースがヒドロキシプロピルセルロースL型である、請求項8記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項10】
前記外側侵食バリア層および前記内側侵食バリア層がそれぞれ、約1重量%以下のコロイド状二酸化ケイ素を含む、請求項9に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項11】
前記第1賦活薬層が約600ミクロンの厚さであり、第2賦活薬層が約750ミクロンの厚さであり、第3賦活薬層が、平坦なR形状縁を有する約2.03mmの厚さである、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項12】
前記第2賦活薬層が前記第1賦活薬層と前記第3賦活薬層との間に配置される、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項13】
前記第3賦活薬層が前記第1賦活薬層と前記第2賦活薬層との間に配置される、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項14】
前記錠剤の総賦活薬用量が50mgであり;
前記第1賦活薬層は、17.5~23.0w/w%の賦活薬と、1w/w%以下の硫酸カルシウムと、累積的な76.0~82.0w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウム、およびフマル酸ステアリルナトリウムとを含み;
前記第2賦活薬層は、43.0~47.0w/w%の賦活薬と、1w/w%以下の硫酸カルシウムと、4.0~10.0w/w%のヒプロメロースと、累積的な44.0~48.0w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウム、およびフマル酸ステアリルナトリウムとを含み;ならびに
前記第3賦活薬層は、17.5~23.0w/w%の賦活薬と、1w/w%以下の硫酸カルシウムと、累積的な76.0~82.0w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウム、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む、請求項1に記載のトリモーダルパルス型放出錠剤。
【請求項15】
賦活薬の治療持続時間を延長する方法であって、
請求項1~14のいずれか1項に記載の錠剤を、それを必要とする患者に投与することを含み、前記賦活薬の前記治療持続時間は、前記錠剤の患者への経口投与後少なくとも14時間有効である、前記方法。
【請求項16】
一般的に賦活薬が適応とされる障害、状態または疾患の処置方法であって、請求項1~14のいずれか1項に記載の錠剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記処置方法。
【請求項17】
前記障害、状態、または疾患がADHDである、請求項16に記載の処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
3種のパルス型放出プロフィールを送達するトリモーダル(または、三峰性:trimodal)高精度タイミング(または、高精度時間同期:precision-timed)パルス型(または、パルス)放出錠剤(または、タブレット:tablet)が提供される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
注意欠陥多動性障害(ADHD)のごとき疾患の治療用の放出調節(または、改変放出もしくは修飾放出:modified-release)賦活薬投与形態が導入されて以来、1日2~3回の即時放出投与形態の投与の1日1回投与への必要性が低下している。例えば、患者は、2種の異なるパルス-投与時に生じる第1パルスおよび3~5時間後に生じる第2パルスとして賦活薬(または、賦活物質、賦活薬もしくは刺激物質:stimulant)を放出する1日1回の錠剤またはカプセルに応答し得る。かかる改変された投与形態は、典型的には、患者への投与後8~12時間、治療上有効な適用範囲(coverage)を提供する。しかしながら、多数の患者は、1日を通して適切な治療範囲を維持するために、午後にさらなる「ブースター(または、追加:booster)」)用量を依然として必要とする。さらに、1日の後半に血中の賦活薬濃度が低下するにつれて、患者は、臨床症状が悪化したり、過敏性のごとき他の効果を生じかねないクラッシュ効果またはリバウンド効果を経験し得る。
【0003】
患者の活動日にわたり安全でかつ効果的な治療応答を提供する方法で賦活薬を送達する、1日1回投与の経口投与形態についての必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
3種のパルス型放出(または、遊離:release)プロフィールを送達するトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤が提供される。一実施形態によれば、錠剤は最終錠剤の内部(inside)に3種の賦活薬層を含む。複数の賦活薬層を有する単一の錠剤を提供することにより、投与頻度が減少し、コンプライアンスが増大し、医薬品有効成分(API;例えば、賦活薬)の正確な血中濃度が長期間にわたって達成される。
【0005】
本明細書に開示されるトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤は、第1賦活薬層を介して所望の薬理学的応答を引き起こすために薬学的に正確な量の賦活薬を初期に患者に提供し、第2および第3の賦活薬層を介して残存する所定量の賦活薬を送達して、単一のジモーダル(または、二峰性:dimodal)薬物製剤(即時放出後の第2遅延放出(または、遅延型放出:delayed release))から期待される時間を超える期間、有効な治療薬理学的活性を維持する。
【0006】
一実施形態によれば、錠剤は、最終錠剤中の賦活薬の総投与量または表示クレーム(label claim)が100%になるように、錠剤中の総賦活薬の約25%~約45%の第1パルスの賦活薬を有する第1賦活薬層;錠剤中の総賦活薬の約35%~約55%の第2パルスの賦活薬を有する第2賦活薬層;および錠剤中の総賦活薬の約10%~約30%の第3パルスの賦活薬を有する第3賦活薬層を含む。
【0007】
一実施形態によれば、錠剤は、第1賦活薬層が錠剤の外側および外側侵食バリア層上に配置され;第2賦活薬層が外側侵食バリア層と内側侵食バリア層との間に、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層に囲まれるように配置され;および第3賦活薬層が錠剤の中央(または、中心:center)に配置され、内側侵食バリア層に囲まれるように構築される。
【0008】
第1賦活薬層を錠剤の外側に配置することにより、第1賦活薬パルスは、患者への投与後約10分~約45分以内に放出できる。第2および第3の賦活薬層を浸食バリア層で囲むことにより、第2および第3の賦活薬パルスを遅延放出させることができる。錠剤の患者への投与の約3時間~約5時間後まで、第2賦活薬パルスの送達を遅延させることができる。錠剤の患者への経口投与の約6時間~約10時間後まで、第3賦活薬パルスの送達を遅延させることができる。
【0009】
外側浸食バリア層および内側浸食バリア層はそれぞれ、約30重量%~約50重量%のベヘン酸グリセリル、約40重量%~約60重量%の2以上の等級(grade)の低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、および約4重量%~約8重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含む。2以上の等級のL-HPCは、LH-21およびLH-32であることができる。
【0010】
本明細書に記載の錠剤は、種々の障害、状態、および疾患を治療または予防するために、患者に1日1回、医薬上有効な量を経口投与される。一実施形態によれば、少なくとも1つの賦活薬の投与は、現在または将来において賦活薬が一般的に適応とされるいずれかの障害、状態、または疾患を治療するために実施できる。かかる障害、状態、疾患は、例えば、ADHD、ナルコレプシー、急性うつ病、肥満、過食性障害(binge eating disorder)を含めた他の摂食障害を含む。また、賦活薬は、AIDSもしくはAIDS関連疾患を伴う認知機能低下、または外傷性脳損傷(TBI)、がんのごとき疾患に罹患している末期患者の気分高揚、慢性疲労、更年期実行機能、認知テンポ低下(SCT:sluggish cognitive tempo)、自閉症スペクトラム障害、うつ病、行為障害、衝動制御障害、化学療法誘発性嗜眠(chemotherapy-induced lethargy)、線維筋痛症に苦しむ個人の処置に用い得る。
【0011】
本明細書に記載の錠剤は、賦活薬の治療持続期間(または、持続期間もしくは期間:duration)を延長する方法に有効でることができる。かかる方法において、賦活薬の治療持続時間は、錠剤の患者への経口投与の12時間を超え16時間まで有効であり得る。
【0012】
提供された錠剤により送達される適切な賦活薬は、提供される障害の治療に適したいずれの種々の賦活薬も含む。特に適切な賦活薬は、メチルフェニデート系薬剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本明細書に開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤の一実施形態の上面図である。
【
図1B】
図1Bは、本明細書に開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤の一実施形態の透視図(perspective view)である。
【
図2】
図2は、本明細書に開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤の一実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、本明細書に開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤のもう一つの実施形態のコンピュータ断層撮影である。
【
図4】
図4は、浸食バリア層を構成する顆粒の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、本明細書で開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤-対-Focalin XRの比較における、経時的な血漿中のデクスメチルフェニデート濃度を示す。
【
図6】
図6は、本明細書に開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤-対-Focalin XRとのもう一つの比較における、経時的な血漿中のデクスメチルフェニデート濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用された単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでない限りは、複数の参照を含む。
【0015】
「有効成分(または、活性成分:active ingredient)」および「薬理学的有効成分(または、薬理学的活性成分:pharmacologically active ingredient)」は、本明細書において、所望の薬理学的効果を誘導する化学物質または化合物をいう。
【0016】
本明細書で用いた「賦活薬(または、賦活物質、賦活薬もしくは刺激物質:stimulant)」は、精神機能または身体機能のいずれか、または双方における一時的な改善を誘導するために投与されるいずれの医薬品有効成分もいう。
【0017】
本明細書に用いた「メチルフェニデート」は、その化合物のすべての4つの光学異性体(d-スレオ-メチルフェニデート、l-スレオ-メチルフェニデート、d-エリスロ-メチルフェニデートおよびl-エリスロ-メチルフェニデート)、ならびにd-スレオメチルフェニデートおよびl-スレオメチルフェニデートのラセミ混合物および塩酸メチルフェニデート(または、メチルフェニデート塩酸塩:methylphenidate hydrochloride)を含めた、そのすべての医薬上許容される塩、代謝物およびプロドラッグを含む。
【0018】
「パルス型(pulsed)放出」、「パルス型(pulsed)放出薬物送達システム」、「パルス型(pulsatile)放出」、「パルス(pulsatile)高精度タイミング放出」または「パルス(pulsatile)薬物送達システム」は、プログラムされたパターンで、すなわち、有効成分放出フリー(または、を有しない:free)間隔またはラグタイムにより区切られた適切な所定の時間に、適切な所定の量で、1つまたは複数の有効成分を複数のパルスで放出することを目的とする単一の錠剤をいう。
【0019】
本明細書で提供された薬剤の「有効量」または「医薬上有効な量」は、所望の治療効果を提供するのに十分な量の有効成分をいうことを意味する。
【0020】
「第1」、「第2」、「第3」、「頂部(または、上部:top)」、「底部(または、下部:bottom)」、「上部」、「下部」のごとき用語は、明確性および、一つの要素または物体をもう一つのものから区別する目的で最初に(foremostly)適用されることに留意されるべきである。かかる用語、特に「頂部」、「底部」、「上部」および「下部」は、相対的であり、物体(例えば、錠剤)の方向に依存し、その方向は、本明細書に提供された図に示される同じ物体の方向と同じまたは異なり得る。
【0021】
図1Aおよび
図1Bはそれぞれ、錠剤100の実施形態の上面図および透視図を提供する。
図1Aは丸い両凸の錠剤を示す。
図1Bに示すごとく、錠剤(100)は、錠剤(100)の中央の周囲に円筒形中央バンド部(または、中央帯域:central band section)(102)または「腹曲げ部(belly bend)」を含む。錠剤(100)の
図1Bでそれぞれ左および右に配向した頂部(101)および底部(103)は、複数の半径の凸部として示され、錠剤(100)に対称的な外観を提供している。各凸部は同一特徴を有するため、特記しない限りは、一方の凸部の構造に関する言及は、他方の凸部に関する言及とみなし得る。凸部の各端部は、凸部の平坦面までバンド部(102)から離れるように湾曲している。
図1Bに示すごとく、「ブレンドランド(または、配合領域:blended land)」として同定される第1賦活薬層(104)の部分は、カップおよび腹帯の間の平坦部である。ブレンドランドのサイズは、錠剤の構造的完全性に役立つ。適切なサイズの「ランド」がないと、侵食バリア層(または、防止層:barrier layer)にわたる圧縮力が均一でなくなり、圧縮後の緩和力が剥離/分裂を引き起こし、放出タイミングに影響を与えかねない。
【0022】
錠剤(100)の直径は、約9.00mm~約13.00mm、または約10.00mm~約12.00mmであることができる。一実施形態において、
図1Aおよび
図1Bに示すごとく、直径は11.00mmである。
【0023】
錠剤(100)の全体の厚さを規定する各凸部の中央(すなわち、錠剤の頂部(101)および底部(103)のピーク点AおよびB)間の距離は、約5.00mm~約8.00mm、または約6.00mm~約7.00mmである。一実施形態において、
図1Bに示すごとく、ピーク点AとBとの間の距離は約6.30mmである。中央バンド(102)の幅は、ピーク点AとBとの間の距離の約40%~約60%、または約45%~約55%、または約50%であることができる。一実施形態において、
図1Bに示すごとく、中央バンド(102)の幅は、ピーク点AとBとの間の距離の50%、すなわち3.15mmである。
【0024】
図2に示すごとく、錠剤(100)は、侵食バリア層(外側侵食バリア層(120)および内側侵食バリア層(122))によって分離された、それぞれ3種の賦活薬層(104)、(106)および(108)を含むことができる。この3種の賦活薬層は、錠剤(100)内で互いに分離して離れて配置され;例えば、錠剤内の特定の制御された位置に配置される。
図2に示すごとく、第1賦活薬パルスを含む第1賦活薬層(104)は、錠剤(100)の外側、すなわち頂部(101)に配置される。第1賦活薬層(104)直下のユニットは、外側浸食バリア層(120)である。第2賦活薬パルスを含む第2賦活薬層(106)は、第2賦活薬層(106)が外側侵食バリア層および内側侵食バリア層によって完全に囲まれるように、外側侵食バリア層(120)と内側侵食バリア層(122)との間に配置される。第3賦活薬パルスを含む第3賦活薬層(108)は、錠剤の中心またはコアに配置される。内側侵食バリア層(122)は、第3賦活薬層(108)を完全に囲んでいる。
図2に示すごとく、第2賦活薬層は、第1賦活薬層と第3賦活薬層の間に配置される。代替的な配置が
図3に示され、そこでは、第1賦活薬層は、第3賦活薬層が第1賦活薬層と第2賦活薬層との間に配置されるように、外側浸食バリア層の底部に配置されている。
【0025】
第1賦活薬層(104)は、錠剤(100)の患者への経口投与直後に第1賦活薬パルスを放出するように設計されている(すなわち、即時放出またはIR)。IRは、錠剤の患者への経口投与後約10分~約45分以内、または錠剤の患者への経口投与後約20分~約30分以内に実質的に完了できる。一実施形態において、IRは、錠剤の患者への経口投与後30分以内に実質的に完了する。この文脈において、「実質的に完了」とは、第1パルスの90%以上の放出を意味することができる。
【0026】
第2および第3の賦活薬層(106)および(108)は、それぞれ第2および第3の賦活薬パルスの遅延放出のために設計されている。遅延放出は、侵食バリア層と、錠剤内の第2および第3賦活薬層の配置によって達成される。
【0027】
第1賦活薬層(104)は第1賦活薬パルスを直ちに放出するように設計されているので、第1賦活薬層(104)は錠剤(100)の外側、例えば、頂部(101)に配置される。その結果、第1賦活薬層(104)は、患者に投与した直後に容易に溶解可能であり、それにより第1賦活薬パルスを放出する。第1賦活薬層の底面(bottom surface)は、外側侵食バリア層(120)によって縁取られ(隣接され:border)ている。
【0028】
第1賦活薬層は、厚さ約549~600ミクロンであり、外側の錠剤表面(101)の輪郭(contour)に沿って錠剤(100)の頂面全体を覆う。
【0029】
一実施形態によれば、第1賦活薬層(104)は、錠剤中の総賦活薬の約25%~約45%、または約30%~約40%、または約35%を放出する。
【0030】
第2賦活薬層(106)は、錠剤の患者への投与の約2時間~約5時間後に開始される第2賦活薬パルスの放出(すなわち、遅延放出またはDR)のために設計される。もう一つの実施形態によれば、第2賦活薬パルスの放出は、錠剤の患者への投与の約3時間~約5時間後に開始される。一実施形態によれば、第2賦活薬パルスの放出は、錠剤の患者への投与の約3時間~約4時間後に開始される。一実施形態によれば、第2賦活薬パルスの放出は、錠剤の患者への投与の約3時間後に開始される。もう一つの実施形態によれば、第2賦活薬パルスの放出は、錠剤の患者への投与の約3.5時間後に開始される。第2賦活薬層の厚さは、約549~750ミクロンであり得る。
【0031】
ある種の実施形態によれば、第2パルスは、錠剤中の総賦活薬の約35%~約55%、または約40%~約50%、または約45%~約50%である。一実施形態において、第2パルスは錠剤中の総賦活薬の約45%である。
【0032】
第2パルスは、ある時間にわたって放出される(すなわち、持続放出(もしくは、徐放性:sustained release)またはSR)。一実施形態によれば、第2パルス型放出は約30分~約135分間持続する。もう一つの実施形態によれば、第2パルスの放出は約45分~約120分間持続する。もう一つの実施形態によれば、第2パルスの放出は約60分~約100分間持続する。もう一つの実施形態によれば、第2パルスは約100分の時間にわたり放出される。もう一つの実施形態によれば、第2パルスの放出は約90分間持続する。
【0033】
第3賦活薬層(108)は、錠剤の中央に配置できる第3賦活薬パルスを含む遅延即時放出である。第3賦活薬放出層は、平坦なR形状縁(または、フラットフェース・ラジアスエッジ:flat-faced radius edge)を有する厚さ約1.97~2.03mm×直径4.95~5.05mmである。
【0034】
一実施形態によれば、第3賦活薬層(108)は、錠剤の患者への経口投与後約5時間~約10時間まで放出が遅延される第3パルスを含む。もう一つの実施形態によれば、第3パルスの放出は、錠剤の患者への経口投与の約6時間~約9時間後に開始される。もう一つの実施形態によれば、第3パルスの放出は、錠剤の患者への経口投与の約7時間~約8時間後に開始される。もう一つの実施形態によれば、第3賦活薬パルスの放出は、錠剤の患者への経口投与後約8時間まで遅延される。もう一つの実施形態によれば、第3パルスの放出は、錠剤の患者への経口投与の約9時間後に開始される。第3賦活薬パルスは、遅延即時放出のパルスであることができる。
【0035】
一実施形態によれば、第3パルスは錠剤(100)中の総APIの約5%~約20%、または約10%~約20%、または約15%~約20%である。もう一つの実施形態によれば、第3パルスは錠剤中の総賦活薬の約20%であることができる。
【0036】
外側侵食バリア層および内側侵食バリア層(120)および(122)は、「侵食バリア層」と総称されるが、同じ組成を有することができる。外側侵食バリア層(120)および内側侵食バリア層(122)は、
図2において別個の構造として示されているが、侵食バリア層が同じ組成を有する実施形態において、完成した錠剤において侵食バリア層の間に明確な物理的境界または区別(または、差異:distinction)は存在しなくてもよい。
【0037】
外側浸食バリア層および内側浸食バリア層はそれぞれ、ベヘン酸グリセリル、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)とヒドロキシプロピルセルロースのブレンドを含むことができる。L-HPCは水に不溶性であり、ヒドロキシプロピル基により最小限の範囲まで置換されたグルコース骨格を含む。この化学(chemistry)はL-HPCの溶解を防ぐが、水の存在下では膨潤する。ある種の実施形態において、侵食バリア層は、LH-21およびLH-32のごとき2つ以上の等級のL-HPCを含むことができる。LH-21は中程度の繊維質であり、45μmの平均粒子サイズを有する。LH-21は約120、000の分子量および約11%のヒドロキシプロピル含量を有する。LH-32は微粉化され、平均粒子サイズは20μmである。LH-32は115,000の分子量、および8%のヒドロキシプロピルセルロース含有量を有する。
【0038】
一実施形態において、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層はそれぞれ、約30重量%~約50重量%のベヘン酸グリセリル、約35重量%~約45重量%のベヘン酸グリセリル、または約37.5重量%~約42.5重量%のベヘン酸グリセリルを含む。一実施形態において、ベヘン酸グリセリルはCompritol ATO 888であることができる。
【0039】
外側浸食バリア層および内側浸食バリア層はそれぞれ、約40重量%~約60重量%、または約45重量%~約55重量%、または約47.5重量%~約52.5重量%の2つ以上の等級のL-HPCの総重量を含むことができる。一実施形態において、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層はそれぞれ、約15重量%~約25重量%の第1等級のL-HPC、例えば、LH-21、および約25重量%~約35重量%の第2等級のL-HPC、例えば、LH-32;約20重量%~約23重量%のLH-21および約27.5重量%~約32.5重量%のLH-32を含む。
【0040】
外側侵食バリア層および内側侵食バリア層はそれぞれ、約4重量%~約8重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含むことができる。ある種の実施形態において、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層はそれぞれ、約5重量%~約7重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含むことができる。ある種の実施形態において、外側および内側侵食バリア層のヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロースタイプL型であることができる。
【0041】
浸食バリア層は、二酸化ケイ素、例えば、Aerosil 200 Pharmaのごときコロイド状二酸化ケイ素をさらに含み得る。ある種の実施形態において、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層はそれぞれ、約1重量%以下のコロイド状二酸化ケイ素、約0.2重量%~約0.8重量%のコロイド状二酸化ケイ素、または約0.2重量%~約0.6重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0042】
記載された錠剤のパルス(または、脈動もしくはパルス型:pulsatile)放出プロフィールは、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層の組成に部分的に起因する。
図4は、走査型電子顕微鏡を用いた、外側浸食バリア層および内側浸食バリア層の顆粒を示す。
図4は顆粒の形状を示す。顆粒の形状は、顆粒間の空隙量を低下させることにより、水の浸入を低下させるのを助け、外側浸食バリア層および内側浸食バリア層の吸水成分または膨潤成分が疎水性の難溶性成分でコーティングされることを確実にできる。これにより、外側侵食バリア層および内側侵食バリア層が、第2および第3パルスが水性媒体に曝露され、錠剤の患者への経口投与後、所望の時間に放出が開始されるように制御された速度で侵食/剥離(shed)される。
【0043】
ある種の実施形態において、トリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤は、約200~300mg、約225~275mg、約230~260mg、または約235~245mgの外側侵食バリア層を含む。ある種の実施形態において、パルス型放出錠剤は、約100~150mg、約115~135mgまたは約120~130mgの内側侵食バリア層を含む。
【0044】
ある種の実施形態において、外側浸食バリア層の厚さは約574~888ミクロンである。
【0045】
ある種の実施形態において、内側浸食バリア層の厚さは約862~1071ミクロンである。
【0046】
第1賦活薬層と第3賦活薬層との(104、108)間の距離は約1,436~1,906ミクロンである。
図2に示すごとく、第1賦活薬層と第3賦活薬層との(104、108)間の距離は約1,567~1,932ミクロンである。
【0047】
同様に、第2賦活薬層と第3賦活薬層との(106、108)間の距離は約862~1071ミクロンである。
図2および
図3に示すごとく、第2賦活薬層と第3賦活薬層との(106、108)間の距離は約862~1071ミクロンである。
【0048】
ある種の実施形態において、各賦活薬層は、賦活薬材料に加えて、賦形剤および希釈剤を含む。各賦活薬層中の賦形剤および希釈剤の量は、錠剤中の賦活薬の総量に依存する。例示的な賦形剤として、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはHPMC)、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。一実施形態において、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムは、Prosolv(登録商標)EASYtab SP(JRS Pharma Rosenberg、ドイツ)のごとき単一の複合賦形剤として提供できる。一実施形態において、さらなる希釈剤は硫酸カルシウムである。
【0049】
ある種の実施形態において、第1賦活薬層は、約2.5w/w%~約25w/w%の賦活薬(有効成分、例えば、メチルフェニデート)を含むことができる。一実施形態において、第1賦活薬層は、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウム(例えば、Prosolv(登録商標)EASYtab SP)を含む賦形剤の約75w/w%~約98w/w%を含むことができる。もう一つの実施形態において、第1賦活薬層は、約3w/w%以下の希釈剤(例えば、硫酸カルシウム)を含むことができる。希釈剤の量は1w/w%にでき、硫酸カルシウムであることができる。
【0050】
ある種の実施形態において、第2賦活薬層は、約5w/w%~約50w/w%の賦活薬(有効成分、例えば、メチルフェニデート)を含むことができる。一実施形態において、第2賦活薬層は、合計約40w/w%~約90w/w%の微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウム(例えば、Prosolv(登録商標)EASYtab SP)、ならびに約4w/w%~約10w/w%のヒプロメロースの含むことができる。もう一つの実施形態において、第2賦活薬層は、約3w/w%以下の希釈剤(例えば、硫酸カルシウム)を含むことができる。希釈剤量は1w/w%であることができ、硫酸カルシウムであることができる。
【0051】
ある種の実施形態において、第3賦活薬層は、約2.5w/w%~約25w/w%の賦活薬(有効成分、例えば、メチルフェニデート)(またはラセミ体メチルフェニデートでは2倍)を含むことができる。一実施形態において、第3賦活薬層は、合計約75w/w%~約98w/w%の微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウム(例えば、Prosolv(登録商標)EASYtab SP)を含むことができる。もう一つの実施形態において、第3賦活薬層は、約3w/w%以下の希釈剤(例えば、硫酸カルシウム)を含むことができる。希釈剤の量は1w/w%であることができ、硫酸カルシウムであることができる。
【0052】
加えて、錠剤の第3放出の低比例用量は、血漿中の賦活薬濃度の制御された低下を創生する。制御された低下は、デュアルリリース(または、二重放出:dual-release)のFOCALIN(登録商標)XR、Concerta(登録商標)、Adderall XR(登録商標)に一般的に関連するクラッシュ症状またはリバウンド症状を軽減または最小化することができるという点で有利である。かかるデュアルリリース薬を服用した患者は、薬を服用後約5~7時間に不快なクラッシュ症状を頻繁に訴える。その一般的な症状は、吐き気、消化器系不快感、抑うつ感情、エネルギーまたは疲労の欠如、過敏性、不安増大などを含む。加えて、一般的なリバウンド(rebound)症状は、ベースラインの中核的なADHD症状を模倣するが、より強い強度のものである。これは、集中力の低下、多動性の悪化、衝動性を含む。かかる薬物切れ(drug wear-off)のエピソードは危険で、医療上の緊急事態を示しかねない。
【0053】
本明細書に開示された錠剤は、少なくとも1つの賦活薬およびその塩の有効量の送達に適する。少なくとも1つの他の有効成分が、錠剤内の単一の賦活薬層で賦活薬と組み合わせることもでき、または錠剤内の1つ以上の賦活薬層がさらなる有効成分を含み得る。本錠剤と組み合わせて使用される有効成分の塩は、商業的に得ることもでき、有機合成化学の当業者に知られた標準的手順を用いて調製することもできる。適切な賦活薬は、限定されるものではないが、メチルフェニデートを含む。本明細書に提供される賦活薬は、医薬上許容される塩、プロドラッグ、または他の誘導体もしくは活性代謝物の形態であり得る。特定の実施形態によれば、賦活薬はデクスメチルフェニデートまたはその医薬上許容される塩である。もう一つの実施形態によれば、賦活薬は塩酸デクスメチルフェニデート(または、デクスメチルフェニデート塩酸塩:dexmethylphenidate hydrochloride)、(例えば、ラセミ体塩酸メチルフェニデートのd-スレオ-エナンチオマー)である。
【0054】
トリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤に含まれる任意(optional)成分は、限定されるものではないが、さらなる結合剤、滑沢剤、崩壊剤、安定剤、界面活性剤、着色剤、コーティング剤および希釈剤を含む。適切な希釈剤は、限定されるものではないが、リン酸二カルシウム二水和物、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ、タルク、微結晶性セルロースおよび粉砂糖を含む。適切な結合剤は、限定されるものではないが、デンプン(コーンスターチおよびアルファー化デンプン(または、前ゼラチン化デンプン:pregelatinized starch)を含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトース、ソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然および合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびビーガム(Veegum))、ならびにポリメタクリレートおよびポリビニルピロリドンのごとき合成ポリマーを含む。適切な滑沢剤は、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸およびポリエチレングリコールを含む。適切な崩壊剤は、限定されるものではないが、デンプン、クレー(clay)、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマーを含む。適切な界面活性剤は、限定されるものではないが、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンのごときカチオンと会合した(または、結合した:associated)カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオンを含むもの;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのごとき長鎖アルキルスルホン酸塩およびアルキルアリールスルホン酸塩;ビス(2-エチルヘキシル)-スルホコハク酸ナトリウムのごときジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウムのごときアルキル硫酸塩を含む。また、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤および保存剤のごとき非毒性補助物質は、錠剤中または個々の薬物含有賦活薬層中に含み得る。
【0055】
一実施形態において、トリモーダルパルス型放出錠剤はフィルムコーティング錠剤である。適切なフィルムコーティングは、Opadry(登録商標)II(Colorcon社、ハーレーズビル、PA)のごとき水性フィルムコーティングを含む。
【0056】
本明細書に記載のトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤は、それを必要とする患者にトリモーダルパルス型放出錠剤を投与することにより、一般的に賦活薬が指示される障害、状態または疾患の処置方法に有用であることができる。一実施形態において、障害、状態または疾患はADHDである。
【0057】
本明細書に記載されるトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤は、その錠剤を必要とする患者に投与することにより賦活薬の治療持続期間を延長する方法に有用であることができる。賦活薬の均整の取れたトリパルス型放出の結果として、賦活薬の治療持続時間は、患者への錠剤の経口投与後、12時間より長く、少なくとも14時間、最大16時間有効である。
【0058】
本明細書で開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤は、治療緊急有害事象(TEAE)の低減に有用である。トリモーダルパルス型性放出錠は、動悸、頻脈、多幸感のごときTEAEを含め、Focalin XRのごとき現在の処置と比較して、TEAE数およびTEAEのタイプを低下し得る。
【0059】
本明細書に記載されたトリモーダルパルス型放出錠剤は、一連の錠剤内圧縮操作を介して製造できる。例えば、第3賦活薬層は圧縮され、次いで、内側侵食バリア層で囲まれるか覆われる。次いで、第2賦活薬層は内側侵食バリア層上に圧縮され、次いで、外側侵食バリア層で囲まれるか、覆われる。次いで、第1賦活薬層は、第2賦活薬層が第1賦活薬層と第3賦活薬層との間に配置されるように、外側浸食バリア層上に圧縮される。もう一つの実施形態において、第2賦活薬層は、第3賦活薬層が第1賦活薬層と第2賦活薬層との間に配置されるように、内側浸食バリア層の底部上で圧縮される。
【0060】
錠剤の製造のさらなる例として、内側侵食バリア層材料はパンチ(または、ポンチ:punch)に圧縮される。次いで、第3賦活薬層の従前に圧縮されたコアは、内側侵食バリア層充填材の表面に置かれ、圧縮される。次いで、内側のEBL材料の残りが頂部上に、続いて、第2賦活薬層上に配置される(put on)。
【0061】
下部のパンチは、再度、外側の浸食バリア層材料によって充填される。従前に圧縮された実体(entity)は外側の浸食バリア層で包まれ、第1賦活薬層が頂部で圧縮される。
【0062】
次いで、錠剤は完成し、コーティングの準備が整う。
【0063】
実施例1
本明細書に記載されたトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠のバイオアベイラビリティをFocalin XRと比較した。Focalin XR(塩酸デクスメチルフェニデート)徐放カプセルは、デクスメチルフェニデートの徐放性製剤であり、二峰性(ビモーダル:bi-modal)の放出プロフィールを有する。各ビーズ充填(bead-filled)Focalin XRカプセルは、用量の半分を即時放出ビーズとして、半分を腸溶性コーティングされた遅延放出ビーズとして含有し、かくして、デクスメチルフェニデートの即時放出およびデクスメチルフェニデートの第2遅延放出を提供する。
【0064】
図1A、
図1Bおよび
図2に示されるもののごとく、トリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤は、本明細書に提供された装置および工程を用いて製造し得る。パルス型放出錠剤は、合計6.25mgの塩酸デクスメチルフェニデートを含み得る。
【0065】
トリモーダルパルス型放出錠剤の3種の賦活薬層は、以下の組成を有し得る:
【0066】
第1賦活薬層は、錠剤中の総賦活薬用量の約35%である第1賦活薬パルスを含む。第2賦活薬層は、錠剤中の総賦活薬用量の約45%である第2賦活薬パルスを含む。第3賦活薬層は、錠剤中の総賦活薬用量の約20%である第3賦活薬パルスを含む。
【0067】
外側浸食バリア層および内側浸食バリア層は以下の組成を有する:
【0068】
トリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤は、一般的に
図2に示すように構築される。3種の賦活薬層は、錠剤内の特定の制御された位置に組み込まれる。第1賦活薬層は、錠剤の表面として、外側侵食バリア層上に配置される。第2賦活薬層は、外側侵食バリア層と内側侵食バリア層との間に配置される。最後の第3賦活薬層は錠剤の中央に配置され、内側侵食バリア層に囲まれる。錠剤は、240mgの外側侵食バリア層および125mgの内側侵食バリア層を含む。
【0069】
本明細書に記載されたトリモーダルパルス型放出錠剤および、塩酸デクスメチルフェニデート5mgを含有するFocalin XRカプセルは、異なる患者に経口投与される。塩酸デクスメチルフェニデートの血漿中濃度は、患者への経口投与後、定期的に測定された。
図5は経時的な血漿中の賦活薬濃度の曲線を示す。
【0070】
図5に示すごとく、Focalin XRは患者への投与後すぐにデクスメチルフェニデートの第1パルスを放出する。Focalin XRの遅延第2放出は、患者への投与の約3時間後に開始され、約6時間までに完了する。Focalin XRはデクスメチルフェニデートを2種の放出だけを有する。塩酸デクスメチルフェニデート5mgを含有するFocalin XRの治療効果は、患者への投与後約12時間で終了する。
【0071】
図5に示すごとく、トリモーダルパルス型放出錠剤(「CTX-1301」と命名)は、患者への投与後すぐにデクスメチルフェニデートの第1賦活薬パルスを放出する。この第1放出は、実質的に30分以内に完了する。第2賦活薬パルスの遅延放出は、患者への投与の約3時間後に開始され、約5~5.25時間で実質的に完了する。第2放出は、約120~135分間の持続放出である。第3賦活薬パルスは、患者への錠剤の投与後約9時間放出される。第3賦活薬パルスの結果として、本明細書に開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤は、患者にパルス型放出カプセルを投与した後、約16時間まで、Focalin XRと比較して延長されたバイオアベイラビリティを有する。このトリモーダルパルス型放出錠剤によって提供されたデクスメチルフェニデートの一貫したバイオアベイラビリティは、クラッシュ効果およびリバウンド効果の影響を防止または軽減する。
【0072】
実施例2
合計50mgの塩酸デクスメチルフェニデートを有するトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤を、合計40mgの塩酸デクスメチルフェニデートを含有するFocalin XRと比較した。トリモーダルパルス型放出錠剤が製造され、実施例1に記載されたのと同様の構造を有する。外側浸食バリア層および内側浸食バリア層の組成および量は、実施例1に記載したものと同じである。
【0073】
塩酸デクスメチルフェニデートの総量の増加を考慮するため、トリモーダルパルス型放出錠剤の3種の賦活薬層は以下の組成を有することができる:
【0074】
実施例1と同様に、第1賦活薬層は、錠剤中の総賦活薬用量の約35%である第1賦活薬パルスを含む。第2賦活薬層は、錠剤中の総賦活薬用量の約45%である第2賦活薬パルスを含む。第3賦活薬層は、錠剤中の総賦活薬用量の約20%である第3賦活薬パルスを含む。
【0075】
この実施例2に記載されたトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤および、40mgの塩酸デクスメチルフェニデートを含有するFocalin XRカプセルを異なる患者に経口投与する。塩酸デクスメチルフェニデートの血漿濃度は、患者への経口投与後、定期的に測定される。
図6は経時的な血漿中の賦活薬濃度の曲線を示し、実施例1と同様の結果であった。
【0076】
図6に示すごとく、Focalin XRは患者への投与後すぐにデクスメチルフェニデートの第1パルスを放出する。Focalin XRの遅延第2放出は、患者への投与の約3.5時間から開始され、約6時間までに完了する。Focalin XRは二峰性で、デクスメチルフェニデートの2つの放出だけを有する。Focalin XRでのデクスメチルフェニデートのバイオアベイラビリティは、患者への投与後約12時間に治療レベル以下に低下する。
【0077】
図6に示すごとく、この実施例2のトリモーダルパルス型放出錠剤(「CTX-1301」と命名)は、患者への投与後すぐにデクスメチルフェニデートの第1賦活薬パルスを放出する。この第1リリースは、実質的に30分以内に完了する。第2賦活薬パルスの遅延放出は、患者への投与の約3.5時間後に開始され、約5~5.25時間に実質的に完了する。第2放出は、約90~105分間の持続放出である。第3賦活薬パルスは、患者への錠剤の投与後約9時間放出される。実施例1と同様に、本明細書で開示されるトリモーダルパルス型放出錠剤は、Focalin XRと比較して、トリモーダルパルス型放出錠剤の患者への投与後16時間まで、延長された持続的なバイオアベイラビリティを有する。トリモーダルパルス型放出錠剤によって提供されたデクスメチルフェニデートの一貫したバイオアベイラビリティは、クラッシュ効果またはリバウンド効果の影響を防止または軽減する。
【0078】
実施例3
本明細書に記載されたトリモーダルトリモーダル高精度タイミングパルス型放出錠剤に関連するTEAEの発現およびタイプを、Focalin XRに関連するものと比較した。患者は、実施例1および2に記載されたトリモーダルパルス型放出錠剤(賦活薬の総量はそれぞれ6.25mgおよび50mg)、または総賦活薬用量5mgまたは40mgのFocalin XR(また、実施例1および2に記載したとおりである)で処置される。単回投与のTEAEの要約を以下の表2に提供する。表2に示すごとく、実施例1および2のトリモーダルパルス型放出錠剤は、TEAEを経験する患者数の減少(17-対-25)を提供し、これはFocalin XRと比較して28%を超える低下を表す。
【0079】
【0080】
実施例1および2のパルス型放出錠剤の最も一般的なTEAEは、頻脈、悪心、頭痛である。Focalin XRの最も一般的なTEAEは頻脈、動悸、頭痛および多幸感である。表3は、特定のタイプのTEAEの発生頻度を器官別大分類(SOC:system organ class)により特定した:
【0081】
【0082】
表4は、実施例1および2のトリモーダルパルス型放出錠剤およびFocalin XRの総賦活薬用量に関連するTEAEを示す:
【0083】
【0084】
本発明を詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明の概念に逸脱することなく変更を成し得る。
【国際調査報告】