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特表2024-518532コンクリートを冷却するための装置および方法
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  • 特表-コンクリートを冷却するための装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】コンクリートを冷却するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
E04G21/02 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570091
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2021062470
(87)【国際公開番号】W WO2022237969
(87)【国際公開日】2022-11-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523426921
【氏名又は名称】ポーラー テクノロジー エスエージーエル
【氏名又は名称原語表記】POLAR TECHNOLOGY SAGL
【住所又は居所原語表記】Via Alla Torre, 2, 6850 Mendrisio, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バッファ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ドゥージ,マルコ
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172AA20
2E172BA01
2E172BA25
(57)【要約】
所定量の水を含むコンクリートを冷却するための装置は、気密容器(20)を備え、その内部に所望の量のコンクリートを収容するように意図されたチャンバ(1)と、チャンバ(1)内へのコンクリートのための入口開口部(2)と、チャンバ(1)と連通し、チャンバ(1)からチャンバ(1)とは反対側のパイプ(3)の一端において気密容器(20)内に画定されたコンクリートのための出口開口部(5)まで延在するパイプ(3)とが画定されている。パイプ(3)は、チャンバ(1)から出口開口部(5)に向かってコンクリートを搬送するように構成される。装置は、コンクリートからの水の蒸発を少なくとも部分的にもたらすようにチャンバ内の減圧度を調整するためにチャンバ(1)に接続された真空ポンプ(10)と、蒸発した水を凝縮させるためにチャンバ(1)内に配置された凝縮器(12)とをさらに備える。凝縮器(12)は、凝縮した水がチャンバ(1)および/またはパイプ(3)の内部のコンクリートに流入するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の水を含むコンクリートを冷却するための装置(100)であって、
・気密容器(20)であって、その内部に所望の量のコンクリートを収容するように意図されたチャンバ(1)と、前記チャンバ(1)内への前記コンクリートの流入用の入口開口部(2)と、前記チャンバ(1)と連通し、前記チャンバ(1)から前記チャンバ(1)とは反対側の前記パイプ(3)の一端において前記気密容器(20)内に画定された前記コンクリートのための出口開口部(5)まで延在するパイプ(3)と、が画定された気密容器(20)であり、前記パイプ(3)が、前記チャンバ(1)から前記出口開口部(5)に向かって前記コンクリートを搬送するように構成された気密容器(20)と、
・前記コンクリートからの前記水の蒸発を少なくとも部分的にもたらすように前記チャンバ(1)内の減圧度を調整するために前記チャンバ(1)に接続された真空ポンプ(10)と、
・前記蒸発した水を凝縮させるために前記チャンバ(1)の内部に配置され、前記凝縮した水が前記チャンバ(1)および/または前記パイプ(3)の内部の前記コンクリートに流入するように構成された凝縮器(12)と、
を備える装置(100)。
【請求項2】
前記パイプ(3)が、前記パイプ(3)を通過する際に前記パイプ(3)を通って前記出口開口部(5)から前記チャンバ(1)に向かう空気の通過を防止する前記コンクリートによって、前記出口開口部(5)から前記チャンバ(1)を気密に封止するように構成される、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記パイプ(3)が、作動構成において、前記チャンバ(1)から下方に延在する、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記パイプ(3)が、作動構成において、実質的に垂直に延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記パイプ(3)が、作動構成において、少なくとも3メートルの垂直方向のレベル差を満たし、好ましくは3~6メートルの垂直方向のレベル差を満たし、さらにより好ましくは4~5メートルの垂直方向のレベル差を満たす、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記パイプ(3)が、前記出口開口部(5)を通る前記コンクリートの流れを調整するための調整装置(9)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記チャンバ(1)が、前記パイプ(3)に向かって先細になっている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記凝縮器(12)が、前記チャンバ(1)の内部で前記パイプ(3)の反対側に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記入口開口部(2)に接続されたコンクリート供給パイプ(14)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記供給パイプ(14)が、作動構成において、前記入口開口部(2)から下方に延在する、請求項9に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記パイプ(3)および前記供給パイプ(14)が、作動構成において、実質的に同一の垂直方向のレベル差を満たす、請求項9または10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記供給パイプ(14)が、前記コンクリートを外部から前記入口開口部(2)に向かって搬送すると同時に、前記供給パイプ(14)を通過する際に前記供給パイプ(14)を通って前記外部から前記入口開口部(2)に向かう空気の通過を防止する前記コンクリートによって外圧に対して前記チャンバ(1)を気密に封止するように構成される、請求項9から11のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(100)によって所定量の水を含むコンクリートを冷却するための方法であって、
・前記入口開口部(2)を介して前記チャンバ(1)内に前記コンクリートを初期温度(Ti)で供給することと、
・前記コンクリートを前記チャンバ(1)から前記パイプ(3)に搬送することと、
・前記コンクリートからの前記水の蒸発を少なくとも部分的にもたらし前記初期温度(Ti)よりも低い最終温度(Tf)に前記コンクリートを結果的に冷却するような減圧度に達するように、前記チャンバ(1)内の圧力(Po)を調整することと、
・前記チャンバ(1)内の前記コンクリートから蒸発した前記水を凝縮させることと、
・前記コンクリートに前記凝縮した水を流入させることと、
・前記パイプ(3)から前記出口開口部(5)を通って前記最終温度(Tf)で前記コンクリートを除去することと、を含む方法。
【請求項14】
前記パイプ(3)を通過する際に、前記パイプ(3)を通って前記出口開口部(5)から前記チャンバ(1)への空気の通過を防止する前記コンクリートによって、前記出口開口部(5)から前記チャンバ(1)を気密封止することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記供給パイプ(14)を通って前記コンクリートを前記外部から前記入口開口部(2)に向かって搬送することを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記供給パイプ(14)を通過する際に、前記供給パイプ(14)を通って前記外部から前記入口開口部(2)への空気の通過を防止する前記コンクリートによって、外圧に対して前記入口開口部(2)を気密封止することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パイプ(3)および/または前記供給パイプ(14)を通過する前記コンクリートが、少なくとも1気圧の圧力を加えるような高さを有するそれぞれの柱を形成する、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の蒸発潜熱を有利に利用することによってコンクリートを冷却するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設中、コンクリートは流動状態で打設され、コンクリートの硬化として知られる反応に従って剛性状態に徐々に変化する。
【0003】
この段階の間、セメントの水和の完全なプロセスが行われ、その結果、コンクリートが良好な機械的および抵抗特性を有することを確実にするために、コンクリートは可能な限り湿潤環境に留まる必要がある。
【0004】
同時に、硬化段階中、コンクリートは、熱応力を防止するために許容される最高温度未満に保たれなければならない。
【0005】
この問題は、低温コンクリートの打設が高温および/または低湿度の環境で行われる場合、および/または打設が例えば堤防および基礎などの大規模な作業を目的とする場合に特に認められる。実際、そのような場合、セメント材料の水和プロセスによって生成される温度の上昇は、微小亀裂を生成する可能性がある。
【0006】
このような微小亀裂の形成は、打設時の冷却コンクリートの温度を制限することによって防止することができる。実際、敷設する間10℃以下の温度を必要とし得る冷却コンクリートの温度に関する厳格な基準が存在する。
【0007】
これらの要件を満たすために、これまで様々な機構が採用されてきた。
【0008】
コンクリートを形成するために、コンクリートの成分、特に建築用骨材を混合する前にそれらを別々に冷却する方法が提案され、使用されてきた。
【0009】
コンクリートを水または空気で形成するために、例えば、混合前に建築用骨材を冷却することが知られている。
【0010】
この目的のための既知のシステムは、氷および冷水を使用する。このシステムでは、熱分散を補償し、コンクリート自体を直接冷却するために、すぐに使える冷水の蓄えおよび氷の蓄えを維持する必要性から、かなりの所与の量のエネルギーが消費される。さらに、氷および冷水は、冷却能力を有する混合物の唯一の成分であるが、混合物全体の重量の約5から8%しか構成しないため、このシステムで達成することができる冷却度は強く制限される。その結果、冷却されないコンクリートの平均温度が約40℃である典型的な場合、氷と冷水のみを使用するシステムでは、建築用骨材またはコンクリートを約28℃未満の温度に冷却することはできない。
【0011】
従来技術による別の冷却システムは、冷水、氷および冷蔵サイロ内に吹き出される冷気を使用する。この技術により、粗骨材の予冷は可能となるが、細骨材の予冷はできない。実際、この技術は、骨材自体の寸法が、高出力ファンによって駆動される方法で空気が石自体の間を移動することを可能にする「多孔質」集団を構成するほど大きいことを必要としている。しかし、コンクリート混合物の合計の約45%を構成する砂およびセメントの両方をこのように予冷することはできない。したがって、非冷却コンクリートの平均温度が約40℃である典型的な場合、冷水、氷および冷気を使用するシステムでは、建築用骨材またはコンクリートを22℃未満の温度に冷却することはできない。さらに、水および氷のみが使用される場合に記載した問題に加えて、ファンに供給するために必要な電力レベルが高く、実際の場合には生産設備の公称容量が1m/h当たり1kW程度となり得るという事実による追加の問題がある。
【0012】
さらに、水および空気による冷却は、寸法の小さい建築用骨材の場合に使用するのに適していない。実際、最も微細な粒子は、洗い流されたり、吹き飛ばされたりして冷却プロセスの出口で冷却された材料の特性を変える。最後に、微細な骨材の堆積物は、低い気孔率を有するため、粒子間の冷気の流れが実質的に妨げられる。
【0013】
より洗練された既知のシステムでは、冷水および氷の使用に加えて、より粗い骨材(砂利)が、ゆっくりと進行しながら砂利自体に噴霧される冷水の噴射によってコンベアベルト上で冷却される設備がある。しかし、砂は、冷気の流れが砂の流れと反対方向に吹き付けられる回転シリンダを通過させられる。このシステムは精巧ではあるが、コンクリートを12℃未満の温度に冷却することができない。さらに、この解決策は追加の構成要素を伴うことになり、コストおよび装置の複雑さの増加の一因となることは明らかである。
【0014】
上記の欠点に加えて、上記の方法は、コンクリートが混合されるまで冷却後に建築用骨材を低温に維持する必要があるため、かなりのエネルギーの消費を伴う。したがって、冷却プロセスと使用との間に経過する全時間中、建築用骨材の温度を所望のレベルに維持するために必要な追加の冷却電力を供給する必要がある。さらに、コンクリートの生産および分配ラインの下流の装置のうちの1つの故障中に、冷却された建築用骨材を保管するのには費用がかかる。実際、上流または下流の装置の停止または故障の場合、高温骨材のサイロ全体の冷却には1日を超える時間がかかる可能性があるため、温度の維持を中断することはできない。
【0015】
このような方法に関連するエネルギー消費がどれほど高いかは明らかである。
【0016】
さらに、出願人は、上記の冷却システムが、過度に長く、数時間続く可能性がある冷却時間を課すことを立証した。
【0017】
他の既知のシステムでは、建築用骨材を冷却するために減圧を使用することができる。そのようなシステムでは、建築用骨材は濡らされ、減圧チャンバに供給され、そこで減圧されて所与の量の水の蒸発が起こり、その結果として建築用骨材を冷却することになる。
【0018】
このようにして冷却された建築用骨材は、次いでコンクリート混合物を形成するためにセメントを受け取る。
【0019】
したがって、冷却コンクリートを得るためには、事前に冷却されていないセメントが添加される結果として熱が供給されるのを補償するように、建築用骨材を過冷却する必要がある。しかし、この過冷却は、費用がかかることに加えて、十分に冷却された、どんな場合でも所望の温度のコンクリート混合物を得ることができないため、非効率的でもある。
【0020】
さらに、減圧下で寸法の異なる建築用骨材を冷却するために適用される既知の技術は、特に不十分である。実際、大きな直径を有する石は、小さな石よりも大きな体積と表面積との間の関係を有する。その結果、表面積と体積との間の関係が高い結果として急速に冷却される傾向がある小さな石とは異なり、大きな石を濡らす水の蒸発は、その内部体積が所望の温度まで冷却されることなく消費される。
【0021】
減圧下で建築用骨材を冷却するための既知のシステムは、本出願人によって試験されており、15℃未満のコンクリートの温度に達することを極めて困難にする様々な技術的および熱力学的限界に直面している。
【0022】
実際、セメントが冷却されないと、使用される減圧技術に適合しないレベルまで骨材は過冷却される。したがって、これらの冷却装置に予冷骨材を供給することが必要になる。骨材のこの予冷のため、追加の投資および電気エネルギーの消費を伴う冷却された断熱ホッパが使用される。実際の実験では、建築用骨材の予冷の場合、熱分散が、生産設備の公称容量として各m/h当たり約1kWであることが示されている。
【0023】
さらに、従来技術による冷却プロセスは、得られる混合物中の残留水量の制御を保証せず、したがってコンクリートの正確な水/セメント比を保証しない。
【0024】
この比率は、所定の混合物設計に従ってコンクリート混合物を特徴づけ、設計者の要求および使用される原材料の特性に基づきコンクリートに必要な性能レベルを確保するのに適切でなければならないため、変更されてはならない。
【0025】
さらに、水/セメント比は、混合物の正確な流動度と、特にコンクリートの最終抵抗との両方を確保するために重要である。
【0026】
従来技術による冷却システムでは、水の割合または水/セメント比に関する不確実性の問題は、そのようなシステムがより多くの水量で動作するため悪化する。
【0027】
さらに、従来技術による蒸発によって減圧下で冷却するシステムは、混合時間および規格によって規定される製品を計量するための精度を遵守することができず、特に、コンクリート形成後のいわゆるコンクリートの分離のリスクを防止することができない。
【0028】
さらに、従来技術による蒸発によって減圧下で冷却するためのシステムは、冷却プロセスに必要なエネルギーと時間の両方の点で不十分である。
【0029】
さらに、既知のシステムで得ることができる建築用骨材の冷却は、打設の所望の温度に達するには不十分であることが多い。
【0030】
本文脈において、「コンクリート」という用語は、建築用骨材(例えば、砂、砂利、砕石)を水および水の存在で活性化される結合剤(例えば、セメント)と適切な割合で混合することによって得られる、好ましくは流体状態での建築用の集合体を意味することに留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明によって対処される技術的課題は、上記の従来技術を参照して記載された1つまたは複数の欠点を少なくとも部分的に克服するために構造的および機能的に構成されたコンクリートを冷却するための装置および方法を提供することである。
【0032】
特に、本発明の第1の目的は、ポンプ圧送可能なコンクリートを冷却するための装置および方法を提供することである。
【0033】
この文脈において、「ポンプ圧送可能なコンクリート」という用語は、粒度分布および凝集力の結果としてポンプ圧送に適したコンクリートを指すことに留意されたい。このタイプのコンクリートは、好ましくは30または32mm以下、さらにより好ましくは25mm以下の直径を有する骨材を含有する。
【0034】
本発明の第2の目的は、コンクリートを連続的に冷却するための装置および方法を提供することである。
【0035】
本発明の別の目的は、短時間でコンクリートを冷却するための装置および方法を提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、容易に輸送可能なコンクリートを冷却するための装置を提供することである。
【0037】
本発明の別の目的は、打設の場所(現場打ちコンクリート)で、またはその直近でコンクリートを冷却するための装置および方法を提供することである。
【0038】
さらに、本発明の目的は、低コストでかつ簡単な構造のコンクリートを冷却するための装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
好ましくは添付の1つまたは複数の請求項に従って実施されるコンクリートを冷却するための装置および方法による本発明によって、この問題が解決され、これらの目的が、達成される。
【0040】
本発明の一態様では、所定量の水を含むコンクリート(好ましくはポンプ圧送可能タイプの)を冷却するための装置が提供される。
【0041】
装置は、気密容器を備え、その内部に、所望の量のコンクリートを収容するように意図されたチャンバと、チャンバ内へのコンクリートのための入口開口部と、チャンバと連通し、チャンバからチャンバとは反対側のパイプの一端においてその容器内に画定されたコンクリートのための出口開口部まで延在するパイプと、が画定される。パイプは、チャンバから出口開口部に向かってコンクリートを搬送するように構成される。
【0042】
本文脈において、「気密」という用語は、好ましくは実質的に気密であることを意味し、入口および出口開口部が封止されている容器の状態を指すことに留意されたい。さらに好ましくは、気密容器は、気密容器内の減圧に耐えるのに構造的に適していることを意味する。
【0043】
装置は、コンクリートからの水の蒸発を少なくとも部分的にもたらすようにチャンバ内の減圧度を調整するためにチャンバに接続された真空ポンプと、蒸発した水を凝縮させるためにチャンバ内に配置された凝縮器とをさらに備える。
【0044】
一作動構成では、パイプは、好ましくはチャンバから下方に延在し、さらにより好ましくは実質的に垂直に延在する。さらに作動構成を参照すると、パイプは、好ましくは少なくとも3メートル、さらにより好ましくは3~6メートルの垂直方向のレベル差を満たす。
【0045】
非常に好ましい実施形態では、作動構成において、パイプは、少なくとも4メートル、有利には4~5メートルの垂直方向のレベル差を満たす。この構成により、動作中、パイプを通過する間に、少なくとも1気圧の圧力を加えるような高さを有する(流体の)コンクリートの柱が形成されることが可能となり、それによってチャンバ内の負圧を調整する可能性を確保する。
【0046】
凝縮器は、好ましくは、パイプの反対側でチャンバの内部に配置され、凝縮水が、好ましくは重力の結果として、例えば滴下によって、チャンバおよび/またはパイプの内部のコンクリートに流入するように構成されると有利である。有利なことに、この構成により、コンクリート混合物設計によって確立された水/セメント比が実質的に変わらない状態に維持するように、冷却プロセスの開始時にコンクリートに含まれた水量の回復または少なくとも実質的な回復が可能となる。
【0047】
凝縮物、およびより一般的にはチャンバからパイプに向かうコンクリートの流れを容易にするために、チャンバはパイプに向かって先細になっていてもよい。
【0048】
別の有利な態様によれば、パイプは、パイプを通過する際にパイプを通って出口開口部からチャンバに向かう空気の通過を防止するコンクリートによって、出口開口部からチャンバを気密に封止するように構成される。
【0049】
この文脈において、「封止」は、好ましくは、気密または実質的に気密になるようにしっかりと閉じることを意味することに留意されたい。
【0050】
この構成により、コンクリートを排出するために出口開口部が開いているときにチャンバ内で減圧を維持することも可能となり、それによって冷却されたコンクリートの連続的な流れを生成する可能性が確保される。
【0051】
パイプが、出口開口部を通るコンクリートの流れを調整するための調整装置を備えることが好ましいことが理解されるであろう。調整装置は、例えば、弁もしくはポンプ、または出口開口部を通るコンクリートの流れを調整するのに適した別の手段を備えてもよく、またはそれらで構成されてもよい。
【0052】
好ましい実施形態では、装置は、入口開口部に接続されたコンクリート供給パイプを備える。
【0053】
作動構成では、供給パイプは、好ましくは入口開口部から下方に延在し、さらにより好ましくは、もう一方のパイプと実質的に同一の垂直方向のレベル差を満たす。
【0054】
有利には、供給パイプは、コンクリートを外部から入口開口部に向かって搬送すると同時に、供給パイプを通過する際に供給パイプを通って外部から入口開口部に向かう空気の通過を防止するコンクリートによって外圧に対してチャンバを気密に封止するように構成される。
【0055】
この文脈において、「外圧」は、好ましくは、気密容器の外側の大気圧を意味することに留意されたい。
【0056】
一態様では、本発明は、上述の装置によって所定量の水を含むコンクリート(好ましくはポンプ圧送可能タイプの)を冷却するための方法に関する。本方法は、
・入口開口部を介してチャンバ内にコンクリートを初期温度で供給することと、
・コンクリートをチャンバからパイプに搬送することと、
・コンクリートからの水の蒸発を少なくとも部分的にもたらし初期温度よりも低い最終温度にコンクリートを結果的に冷却するような減圧度に達するように、チャンバ内の圧力を調整することと、
・チャンバ内のコンクリートから蒸発した水を凝縮させることと、
・凝縮した水をコンクリート中に流入させることと、
・パイプから出口開口部を通って最終温度でコンクリートを除去することと、を含む。
【0057】
好ましい実施形態では、出口開口部の下流(したがって、気密容器の外側)の圧力は大気圧に等しいことに留意しなければならない。
【0058】
好ましいことに、本方法により、パイプを通過する際に、パイプを通って出口開口部からチャンバに向かう空気の通過を防止するコンクリートによって、出口開口部からチャンバを気密封止することが可能になる。これにより、装置からコンクリートを排出するために排出開口部が外部に向かって開いている場合でも、チャンバ内で減圧を維持することができる。このようにして、上流の冷却プロセスを中断することなく、コンクリートを出口開口部から連続的に(または、該当する場合、好ましくは一定の時間間隔で)除去することができる。
【0059】
有利なことに、本方法により、該当する場合、コンクリートをポンプ圧送するのに適したポンプによって、供給パイプを通ってコンクリートを外部から入口開口部に向かって搬送することが可能になる。この場合、好ましいことに、供給パイプを通過する際に、供給パイプを通って外部から入口開口部に向かう空気の通過を防止するコンクリートにより外圧に対して入口開口部を気密封止することも可能になる。
【0060】
別の有利な態様によれば、チャンバ内の大気圧未満の圧力を調整するために、上述のパイプを通過するコンクリートは、少なくとも1気圧の圧力を加えるような高さを有するそれぞれの(流体の)柱を形成する。
【0061】
本発明の特徴および利点は、添付の図面の単独の図、すなわち本発明によるコンクリートを冷却するための装置の概略図である図1を参照すると非限定的な例として示されている好ましい実施形態の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明によるコンクリートを冷却するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1において、参照番号100は、コンクリートを冷却するための装置を示す。
【0064】
装置100は、減圧に耐えるのに適した気密容器20を備え、その中には、所望の量のコンクリートを収容するように意図されたチャンバ1、チャンバ1内へのコンクリート流入用の入口開口部2、チャンバ1に結合されたパイプ3の口部4を介してチャンバ1に連通するパイプ3、およびチャンバ1と対向する側でパイプ3の端部に画定された、パイプ3からのコンクリート用の出口開口部5が画定されている。
【0065】
コンクリートは、チャンバ1を介し、次いでパイプ3を貫いて通過することによって、入口開口部2から出口開口部5に流れるように意図されている。
【0066】
好ましくは、パイプ3は軸Xに沿って長手方向に延在し、さらにより好ましくは、チャンバ1は軸に沿ってパイプ3と一致して延在する。
【0067】
いくつかの実施形態では、入口開口部2は軸Xに対して半径方向に向けられているが、出口開口部5は軸Xに合わせて向けることができる。いくつかの実施形態では、出口開口部5も軸Xに対して半径方向に向けることができることが理解されるであろう。
【0068】
チャンバ1は、パイプ3に対する接続部分6、接続部分6と対向する側の上壁7、および接続部分6から上壁7まで延在する少なくとも1つの側壁8によって範囲が定められる。
【0069】
好ましくは、接続部分6は、パイプ3の口部4に向かって先細になっている。好ましい実施形態では、接続部分6は円錐台を画定し、その先端はパイプ3に向けられている。
【0070】
いくつかの実施形態では、チャンバ1は軸Xに関して軸対称である。上壁7は実質的に平面であってもよいが、側壁8は好ましくは円筒形である。チャンバ1の構成は、生産能力の要求およびシステムの異なる用途によって与えられる空間要件に関する制限に適合させることができることが理解されるであろう。
【0071】
好ましい実施形態では、入口開口部2は、接続部分6または側壁8を貫通して、またはこれらの間の境界に、好ましくは上壁7とパイプ3の口部4との間の中間位置に画定される。
【0072】
有利には、パイプ3は、パイプ3を通過する間に、(少なくとも)1気圧の圧力を加えるような高さを有するコンクリートの柱を受けるのに適した長さLを有する。
【0073】
コンクリートの密度は、一般に2200~2600kg/mの間であることに留意されたい。したがって、非常に好ましい実施形態では、パイプ3の長さLは少なくとも3メートルであり、好ましくは3~6メートルである。さらにより好ましくは、長さLは少なくとも4メートルであり、有利には4~5メートルである。
【0074】
好ましい実施形態では、パイプ3は中空円形断面を有する。有利には、その直径は、パイプ3を通るコンクリートの所望の流量および所望の通過速度を確保するように選択される。この目的のために、パイプ3の直径は一定であってもよく、またはパイプ自体の長手方向の伸長にわたり可変であってもよい。
【0075】
別の有利な態様によれば、パイプの出口開口部5を通るコンクリートの流れを調整するための調整装置9が提供される。好ましくは、調整装置9は、出口開口部5を(密閉して)閉じたままにし、所望の量の冷却されたコンクリート(例えば、300から400リットルの範囲の量)を除去することが望ましいときに一時的に開くように構成される。いくつかの実施形態では、調整装置9は、所望の頻度の一定の時間間隔で出口開口部5を開くように構成される。供給流量に対して調整装置9を適切に調整することによって、冷却されたコンクリートの取り出しも連続的に行われ得ることが理解されるであろう。
【0076】
取り出されるコンクリートの量は固定されており、調整装置9が出口開口部5を開く頻度は、パイプ3を通るコンクリートの流量に依存することに留意する必要がある。したがって、パイプ3は、調整装置9が出口開口部5を開く所望の頻度に応じて有利に寸法決めされる。この目的のために、出口開口部5および調整装置9のすぐ上流のパイプ3の端部分30は、パイプ3の残りの部分に対してより大きな断面(例えば、直径または表面積の点で)を有することができることが想定される。この構成により、調整装置9によって制御される出口開口部5が開かれるたびに所望の量のコンクリートが排出され、同時にパイプ3の内部に所望の高さのコンクリートの柱を維持するように、端部分30に十分な容積の排出の拡張部を形成することが可能になる。
【0077】
装置100は、チャンバ1の内部に減圧を生成し維持するために、吸気パイプ11によってチャンバ1に接続された真空ポンプ10をさらに備える。
【0078】
この文脈において、「減圧」という用語は、大気圧未満の圧力状態を指すことに留意されたい。
【0079】
好ましい実施形態では、真空ポンプ10は、10~100ミリバール、または場合によっては30~70ミリバールの動作範囲である。
【0080】
好ましくは、吸気パイプ11は、パイプ3の口部4とは反対側においてチャンバ1に接続される。例えば、吸気パイプ11は、上壁7または側壁8の領域に接続することができる。
【0081】
装置100は、チャンバ1の内部、好ましくはパイプ3の口部4の反対側に配置された凝縮器12をさらに備える。いくつかの実施形態では、凝縮器12は上壁7に取り付けられている。
【0082】
この文脈において、「凝縮器」という用語は、好ましくは熱交換器を指すことに留意されたい。
【0083】
有利には、凝縮器12はチューブ型である。この構成により、チャンバ1内の凝縮器の接続部への空気の導入を最小限に抑えることが可能となる。別の有利な態様によれば、凝縮器12に接続されて凝縮器12を通過する冷却流体を提供する冷却器13が設けられる。
【0084】
好ましい実施形態では、装置100は、入口開口部2へのコンクリート用供給パイプ14を備える。
【0085】
いくつかの実施形態では、入口開口部2は、例えば接続部分6もしくは側壁8の領域内、またはこれら2つの間の境界、好ましくは上壁7とパイプ3の口部4との間の中間位置においてチャンバ1に接続された供給パイプ14の端部で画定される。
【0086】
いくつかの実施形態では、入口開口部2を画定する供給パイプ14の端部は、好ましくはチャンバ自体の対称軸Xに達するまで、チャンバ1の内部に突出する。さらにより好ましくは、チャンバ1の内部に突出する供給パイプ14の端部は、接続部分6に向かって、またはいずれにせよ凝縮器12とは反対側に向けられる。この構成により、コンクリートの流れを入口開口部2からパイプ3に向けることができる。
【0087】
有利には、供給パイプ14は、好ましくは当該供給パイプ自体の長手方向の全長にわたって一定である中空の円形断面を有する。
【0088】
供給パイプ14は、周囲温度および/または周囲圧力でよい中で、コンクリート、好ましくはポンプ圧送可能なコンクリートを収容するタンク15から引き出すことができる。好ましい実施形態では、供給パイプ14は、その長手方向の全長の少なくとも一部にわたって、パイプ3と実質的に平行である。好ましくは、供給パイプ14の一部は、少なくとも3メートル、さらにより好ましくは3~6メートルの長さL’を有する。非常に好ましい実施形態では、長さL’は少なくとも4メートルであり、有利には4~5メートルである。非常に好ましい実施形態では、長さL’はパイプ3の長さLに実質的に等しいことに留意されたい。
【0089】
有利には、コンクリートをポンプ圧送するのに適しており、タンク15から入口開口部2に圧力下でコンクリートを供給するために供給パイプ14に接続されたポンプ16が設けられている。この目的のために、ポンプ16は、システムの定期的な供給を適切なマージンで保証する動作範囲を有する。
【0090】
コンクリートの冷却プロセスのパラメータを制御するために、装置100は、圧力センサ17、温度センサ18、レベルセンサ19、および流量センサ21から選択することができる1つまたは複数のセンサを含むことができ、これらはチャンバ1および/またはパイプ3および/または凝縮器12に接続することができる。
【0091】
好ましい実施形態では、好ましくはパイプ3の口部4の反対側において、チャンバ1に接続された少なくとも1つの圧力センサ17が設けられる。
【0092】
好ましい実施形態では、チャンバ1(好ましくは接続部分6の領域内)および/またはパイプ3(好ましくは口部4の領域内)に、またはチャンバ1とパイプ3との間の境界に接続される少なくとも1つの温度センサ18が設けられる。
【0093】
好ましくは、凝縮器12に接続された少なくとも1つの温度センサ18が設けられる。さらにより好ましくは、一方が凝縮器12の入口に接続され、他方が凝縮器の出口に接続された2つの温度センサ18が設けられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、チャンバ1および/またはパイプ3の長手方向の範囲にわたって分散され、チャンバ1および/またはパイプ3内のコンクリートのレベルをそれぞれ測定するように構成された複数のレベルセンサ19が設けられている。
【0095】
好ましい実施形態では、チャンバ1に(好ましくは、パイプ3に向かう側で)接続された少なくとも1つのレベルセンサ19と、パイプ3に(好ましくは、口部4と出口開口部5との間の中間位置において)接続された別のレベルセンサ19とが設けられる。
【0096】
好ましい実施形態では、チャンバ1に、好ましくは接続部分6の領域に接続された2つのレベルセンサ19が設けられる。さらに好ましくは、2つのレベルセンサ19のうちの一方は、パイプ3とは反対側の接続部分6に接続され、他方は、パイプ3に向かう側(例えば、口部4の領域において)の接続部分6に接続される。
【0097】
レベルセンサ19は、連続型であってもよく、または定義された閾値に対するレベルセンサであってもよい。有利には、定義された閾値のレベルセンサは、例えば、容量性抵抗、マイクロ波、レーダ、超音波または重量などの様々な測定方法で動作することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、凝縮器12に接続され、単位時間当たりの冷却流体の流量を測定するように構成された少なくとも1つの流量センサ21が設けられている。
【0099】
有利には、センサ17によって測定された圧力に応じてチャンバ1内の減圧度を調整するために、チャンバ1の少なくとも1つの圧力センサ17に動作的に接続された真空ポンプ10用の制御ユニットが設けられる。
【0100】
別の有利な態様によれば、センサ18によって測定されたコンクリートの温度に従って凝縮器12から除去される熱量を調整するために、少なくとも1つの温度センサ18に動作的に接続された冷却器13用の制御ユニットが設けられる。凝縮器12によって除去される熱量は、冷却流体の量(有利には流量センサ21によって測定される)および凝縮器の入口および出口における温度差(有利には温度センサ18によって測定される)に依存することが理解され得る。
【0101】
別の有利な態様によれば、ポンプ16および調整装置9のための制御システムが設けられ、これは、センサ19によって測定されたコンクリートのレベルに従って、装置を通過するコンクリートの流量を調整するために、1つまたは複数のレベルセンサ19に接続される。この構成により、工程の連続性を確保するのに適したコンクリートの流量およびレベルを調整することができる。
【0102】
作動構成では、装置100は、パイプ3がチャンバ1から下方に延在するように構成される。好ましくは、作動構成において、供給パイプ14はまた、チャンバ1から下方に延在する。さらに好ましくは、その作動構成において、供給パイプ14は、入口開口部2から下方に延在する。
【0103】
この構成では、好ましくは、チャンバ1は、支持構造によって(地面に対して)高い位置に配置され、好ましくは、パイプ3の(およびチャンバ1の)軸Xは、実質的に垂直に向けられる。
【0104】
作動構成では、チャンバ1はパイプ3と共に、水路で使用されるタイプのサージタンクの構造と同様の構造を形成することに留意されたい。
【0105】
場合によっては、パイプ3は、口部4から出口開口部5まで、パイプ3の長手方向の伸長が垂直方向のレベル差を満たすという条件の下で、地面に対して斜め方向に向けてもよいことが理解されるであろう。好ましくは、このレベルの差は少なくとも3メートルであり、さらにより好ましくは3~6メートルである。非常に好ましい実施形態では、このレベルの差は少なくとも4メートルであり、有利には4~5メートルである。
【0106】
作動構成では、供給パイプ14もまた、好ましくは、その長手方向の伸長の少なくとも一部にわたって実質的に垂直に向けられる。タンク15内の引き出し位置から入口開口部2まで、供給パイプ14が垂直方向のレベル差、好ましくはパイプ3によって満たされるレベル差に実質的に等しい垂直方向のレベル差を満たすという条件の下に、供給パイプ14は地面に対して斜めの向きに持ち上げるができ、および/またはその長手方向の伸長に沿って曲線を形成することができることが理解されるであろう。好ましくは、供給パイプ14によって満たされる垂直方向のレベル差は、少なくとも3メートルであり、さらにより好ましくは、3~6メートルである。非常に好ましい実施形態では、供給パイプ14によって満たされる垂直方向のレベル差は、少なくとも4メートルであり、有利には、4~5メートルである。この構成は、動作中、供給パイプ14を通過するコンクリートの柱が、パイプ3を通過するコンクリートの柱の高さと実質的に等しい高さを有することを意味する。
【0107】
装置100の動作を以下に説明する。
【0108】
好ましくはポンプ圧送可能タイプであり、所定量の水を含有するコンクリートは、真空ポンプ10によって加えられる負圧の効果の結果として、および/またはコンクリートに対して送出ポンプ16によって加えられる正圧の効果の結果として、供給パイプ14および入口開口部2を通って初期温度Ti(例えば、周囲温度)でタンク15から装置100に投入される。
【0109】
チャンバ1の内部で、コンクリートは、好ましくは重力の結果として、接続部分6からパイプ3の口部4に向かって下降するように案内される。
【0110】
コンクリートは、好ましくは重力の結果として、口部4からパイプ3を通って下降し続け、パイプ3内に蓄積し、パイプ3を通過する間にコンクリートの柱を形成する。好ましい実施形態では、そのような柱は、パイプ3をその全長Lにわたって充填する。パイプ3を通るコンクリートの流れは、出口開口部5からのコンクリートの排出を遮断する調整装置9によって調整される。
【0111】
有利には、調整装置9および送出ポンプ16は、互いに同期しているか、またはどんな場合でも、所望の高さを有するコンクリートの柱をパイプ3内に維持するように協働する。
【0112】
調整装置9が出口開口部5を開くと、コンクリートは出口開口部5を通ってパイプ3から自由に排出されるが、パイプ3を通過するコンクリートの柱は、出口開口部5が開いたままの期間中に出口開口部5からチャンバ1への空気の導入を防止する蓋のような障壁または閉塞を生じさせるような高さと凝集力を有するため、チャンバ1は依然として外圧(大気圧)に対して封止されたままである。
【0113】
チャンバ1はまた、供給パイプ14の領域での外圧に対しても封止されたままであることに留意されたい。実際、供給パイプ14を通過するコンクリートは、パイプ3を通って起きたことと同様にして、外部からチャンバ1に向かう空気の導入を妨げる。
【0114】
この目的のために、パイプ3、14を通して気密性を得るために、ポンプ圧送可能タイプのコンクリートを使用することが特に有利であることを認めることができるが、その理由は、このコンクリートがその凝集力で、多孔性の形成を妨げ、パイプ3、14の摺動面上に空気の導入を防止することができる潤滑層を形成することを確実にするからである。
【0115】
この構成により、チャンバ1を気密に封止することができるため、真空ポンプ10が、吸気パイプ11を介して、チャンバ1自体の内部の圧力Poを調整することができる。
【0116】
動作中、実質的に同じ高さを有するコンクリートの各柱が、パイプ3内および供給パイプ14内を、(少なくとも)1気圧の圧力を加えるように移動することに、注意を払わなければならない。
【0117】
このように、チャンバ1の気密性が確保され、真空ポンプ10によってチャンバ1内で大気圧より低い圧力Poを調整することができる。
【0118】
こうした状況において、真空ポンプ10は、コンクリートからの水の蒸発を少なくとも部分的にもたらすような減圧度をチャンバ1内で調整する。この段階で蒸発した水は、例えば、装置100に投入されたコンクリートに最初に含まれる水の量の10~15%でよい。
【0119】
水の蒸発は、水の蒸発潜熱に対応するエネルギー量の減算を伴い、したがって、コンクリートを初期温度Tiから初期温度Tiよりも低い最終温度Tf(例えば、10℃)までの冷却を伴うことが理解されるであろう。
【0120】
チャンバ1内の圧力Po、したがって減圧度を適切に調整することによって、所望の最終温度Tfを達成することが可能である。例えば、減圧度は、10~100ミリバール、または場合によっては30~70ミリバールであり得る。
【0121】
コンクリートから蒸発した水は、チャンバ1内に留まり、凝縮器12の熱交換面に接触して凝縮する。実際、冷却流体の通過の結果として、凝縮器12はコンクリートから蒸発した水から潜熱を除去する。したがって、コンクリートから蒸発した水は凝縮する、すなわち気体状態から液体状態に変化する。別の有利な態様によれば、このように凝縮された水は、蒸発したコンクリートに戻り、それによって工程全体の間で所定の水/セメント比の遵守を確保する。
【0122】
好ましくは、凝縮水は、重力の結果として、例えば滴下によってコンクリートに戻り、凝縮器12の表面からチャンバ1および/またはパイプ3の内部で下方にあるコンクリートに向かって下降する。
【0123】
有利なことに、コンクリートに戻る凝縮水はコンクリートの分離の現象を発生させないことに注意を払わなければならない。これは、入口開口部2を介したコンクリートのチャンバ1への投入、さらにはチャンバ1内の蒸発プロセスが乱流現象であり、それらがコンクリートの絶え間ない活発な練り直しを確実にするためである。
【0124】
コンクリートからの水の蒸発プロセス、またその結果、それから生じる練り直しは、有利なことに、チャンバ1内を通過するコンクリートと、パイプ3内、少なくともその口部4に存在するコンクリートと、の両方とも含む。
【0125】
さらに、そのような練り直しは、表面だけでなく非常に深い所でもコンクリートの均一な冷却を確実にする。
【0126】
コンクリートがパイプ3を通過するのにかかる時間は1分未満(例えば、30~40秒)でよいが、パイプ自体の流量(例えば、60~100m/h)に依存する。
【0127】
冷却されるコンクリートがチャンバ1に投入されると、冷却されたコンクリートを出口開口部5から除去することができ、冷却プロセスの連続性を確保することができ、したがって、いかなるダウンタイムも無く、間断なくコンクリートを供給することができる。
【0128】
有利なことに、出口開口部5から排出されるコンクリートは、導入されるコンクリートと実質的に同じ量の水と、打設に適した最終温度Tfとを有する。したがって、出口開口部5から排出されるコンクリートは、直接打設されるか、または使用場所への輸送のためにコンクリートミキサーに流し込むことができる。
【0129】
最終温度Tfは、チャンバ1に投入されたコンクリートの熱慣性および量、コンクリートの初期温度Ti、ならびにプロセス中に蒸発/凝縮した水の量などの要因に依存することに留意されてもよい。上記の変数に作用することにより、所望の最終温度Tfを有するコンクリートを得ることができる。
【0130】
本発明は、それにより、以下を含むいくつかの利点を達成しながら、記載された問題を解決する。
【0131】
・コンクリートをダウンタイムなしで連続的に冷却することが可能なエネルギー効率の良いプロセス、
・最良の性能の範囲内で冷却器の使用が可能となるため、エネルギー効率の良いプロセス、
・コンクリートのすべての構成要素に作用するため、エネルギー効率の良いプロセス、
・コンクリートを10℃以下の温度に冷却できること、
・コンクリート混合物設計に従ってコンクリート中に供給される水の量を実質的に変化させないように凝縮物を回収できること、
・製造準備が整っており、短時間でコンクリートを冷却することができる冷却プロセス、
・上流または下流の装置の状態に影響されることなく、かつ建築用骨材の予冷および/またはその温度維持のためのエネルギーを必要とすることなく、コンクリートをリアルタイムで冷却することを可能にする冷却プロセス、
・最小の熱慣性でコンクリートを冷却する装置であって、その装置の予冷または冷却された構成要素の保管および維持を必要とせずに、冷却プロセスを短時間で開始することを可能にする装置、
・簡単でコンパクトな装置、
・コンクリートが打設されている現場に容易に設置することができる移動装置。
図1
【国際調査報告】