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特表2024-518541補体成分1q(C1q)に対する抗体の結合を判定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】補体成分1q(C1q)に対する抗体の結合を判定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240423BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 U
G01N33/536 D
G01N33/542 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570131
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022062793
(87)【国際公開番号】W WO2022238486
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21305617.9
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514064671
【氏名又は名称】シスビオ バイオアッセイズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ドゥエリー, ナジム
(72)【発明者】
【氏名】マンサット, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ルー, トマ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラゲ, ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】トリンケ, エリック
(57)【要約】
本発明は、補体成分1q(C1q)に対する抗体の結合を判定するための新規な方法に関する。本発明によるプロセスは、ホモジニアスプロキシミティアッセイ(HAS)においてC1qに対する抗体の結合を測定することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するためのインビトロ方法であって、
a)測定媒体に、
被験抗体、
ビオチン化抗Fabリガンドであって、上記被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
HPA(ホモジニアスプロキシミティアッセイ)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、及び
HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q
を接触させる工程と、
b)上記測定媒体中のHPAシグナルを測定する工程であって、HPAシグナルの存在が上記C1qに対する上記被験抗体の結合を表す、工程と
を含む方法。
【請求項2】
上記HPAが、(i)化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(ALPHA)などの化学増幅型発光酸素チャネリングイムノアッセイ(LOCI)、(ii)共鳴エネルギー移動(RET)、及び(iii)空間近接分析試薬捕捉ルミネッセンス(SPARCL)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記被験抗体が、IgG、例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4、好ましくはIgG1又はIgG2である、請求項1及び2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
上記ビオチン化抗Fabリガンドが、ビオチン化抗Fab抗体又は抗体断片、例えばビオチン化抗Fabマウス抗体又は抗体断片、例えばビオチン化抗Fabマウス抗体又は抗体断片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記ビオチン化抗Fabリガンドが、ビオチン化抗原又は抗原断片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記ストレプトアビジンが、RETパートナーのペアの第1のメンバー又はLOCIパートナーのペアの第1のメンバーなどのHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記C1qが、RETパートナーのペアの第2のメンバー又はLOCIパートナーのペアの第2のメンバーなどのHPAパートナーのペアの第2のメンバーで標識された抗C1qリガンドで間接的に標識されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記HPAがRETであり、上記ドナーが、
ユーロピウムクリプテート、ユーロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、量子ドット、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、及びニトロベンゾオキサジアゾールから選択されるFRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)ドナー、又は
ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼの変異体(Rluc8)、及びホタルルシフェラーゼから選択されるBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)ドナー
などの発光ドナー化合物又は蛍光ドナー化合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記HPAがRETであり、上記アクセプターが、
アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、及びeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、及びYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるFRETアクセプター、又は
アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、及びeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、及びYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるBRETアクセプター
などの蛍光アクセプター化合物又は非蛍光アクセプター化合物(クエンチャー)から選択される、請求項8及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記HPAがLOCIであり、上記ドナーがフタロシアニンである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
上記HPAがLOCIであり、上記アクセプターが(i)チオキセン、アントラセン、及びルブレン、又は(ii)チオキセン及びユーロピウムキレートを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)及び工程(b)が各種の濃度の上記被験抗体を用いて繰り返され、好ましくは、上記方法が、上記C1qに対する上記被験抗体の結合の解離定数(Kd)及び/又はEC50を決定する追加工程(c)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記測定媒体のオスモル濃度が、250mOsm/L~500mOsm/Lである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するための試薬キットであって、
(i)ビオチン化抗Fabリガンドと、
(ii)ストレプトアビジン、又はHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されたストレプトアビジンと、
(iii)C1q、又はHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されたC1qと、
(iv)上記ストレプトアビジンがHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識された抗ストレプトアビジンリガンドと、
(v)上記C1qがHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識された抗C1qリガンドと
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補体成分1q(C1q)に対する抗体の結合を判定するための新規な方法に関する。本発明によるプロセスは、ホモジニアスプロキシミティアッセイ(HAS)においてC1qに対する抗体の結合を測定することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
抗体は、特定の抗原に結合する免疫タンパク質である。ヒトやマウスなどのほとんどの哺乳動物では、抗体は、ペアになったポリペプチド重鎖及び軽鎖から構築される。各鎖は、可変(Fv)領域及び定常(Fc)領域と呼ばれる2つの別個の領域から構成される。軽鎖Fv領域及び重鎖Fv領域は、分子の抗原結合決定基を含み、標的抗原の結合に関与する。Fc領域は、抗体(例えばIgG)のクラス(又はアイソタイプ)を規定する。
【0003】
Fc領域は、Fcガンマ受容体又は補体成分1q(C1q)などのいくつかの天然タンパク質と相互作用して、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)などの重要な生化学的事象を誘発する。C1qに結合するFcは、免疫系の補体カスケードを活性化し、これにより抗体がCDCを媒介する能力が反映される。
【0004】
IgG上のC1q結合部位は、Fc領域のCH2ドメインである。CH2ドメイン上の3つの荷電残基Glu-318、Lys-320、及びLys-322は、IgGに対するC1qの結合に極めて重要である。IgM上のC1q結合部位は、Fc領域のCH3ドメインである。
【0005】
C1qは、各々が(そのFc領域を介して)単一のIgG分子に結合することができる6つの球状頭部を有する。したがって、C1qは6つの抗体に結合することができるが、2つの抗体(例えば、2つのIgG)に対する結合は補体経路を活性化するのに十分である。C1qは、C1r及びC1sセリンプロテアーゼと複合体を形成して、補体経路のC1複合体を形成する。
【0006】
補体経路を活性化するためには、C1qが少なくとも2つの抗体(例えば、2つのIgG)に結合することが必要である。したがって、先行技術においては、IgGを高い親和性でC1qに結合することができる適切なクラスターへと集合させ、その結果、抗体がC1qに結合する能力を測定するために固相が常に使用されている。C1qに対する抗体の結合を評価するために先行技術において一般的に使用される固相法としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)及び表面プラズモン共鳴(SPR)が挙げられる。ELISAプレート又はSPR表面のいずれかの固体表面上でIgGをクラスター化する方法には、(i)抗体を表面にランダムに固定化する(受動的コーティング)[参考文献1]、(ii)抗体をプロテインLを使用して表面に間接的に固定化する[参考文献2]、又は(iii)抗原を表面にコーティングし、次いで抗体を添加する[参考文献3]の3つがある(図26図27、及び図28)。
【0007】
しかしながら、既存の固相法は、六量体IgG/C1q結合モデルには幾何学的制約があり、C1qに高い親和性で結合するための正しいIgGクラスター化を予測することが困難であるため、十分に満足できるものではない[参考文献4]。したがって、結果は常に再現可能であるとは限らず、各データを正規化する必要があることが多い。
【0008】
したがって、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するための効率的で容易に実施可能で再現性のある方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するための新規なインビトロ方法、すなわち、抗体(被験抗体)がCDCを媒介する能力を評価するためのインビトロ方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するためのインビトロ方法であって、
a)測定媒体に、
被験抗体、
ビオチン化抗Fabリガンドであって、上記被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
HPA(ホモジニアスプロキシミティアッセイ)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、及び
HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q、
を接触させる工程と、
b)上記測定媒体中のHPAシグナルを測定する工程であって、HPAシグナルの存在が上記C1qに対する上記被験抗体の結合を表す、工程と
を含む方法に関する。
【0011】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の方法を実施するための試薬キットであって、
(i)ビオチン化抗Fabリガンドと、
(ii)ストレプトアビジン、又はHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されたストレプトアビジンと、
(iii)C1q、又はHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されたC1qと、
(iv)上記ストレプトアビジンがHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識された抗ストレプトアビジンリガンドと、
(v)上記C1qがHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識された抗C1qリガンドと
を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ビオチン化抗ヒトFab抗体、及びドナーで間接的に標識されたC1qを使用してヒトC1qタンパク質に対するIgGの結合を判定するために実施されたTR-FRETサンドイッチアッセイを示す。このアッセイは、HTRF(R)技術に基づいており、Eu3+クリプテート(ドナー)にコンジュゲートされた抗C1q抗体、及びd2(アクセプター)で標識されたストレプトアビジンを使用する。被験抗体がヒトC1qに結合すると、それはドナーをアクセプターに近接させる。光源(UV領域)によるドナーの励起は、アクセプターに向かうエネルギー移動を引き起こし、次いで特異的蛍光(TR-FRETシグナル)が放出される。
図2図2は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対する各種のアイソタイプのIgG抗体の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。A)組換えヒトIgGアイソタイプ対照(IgG1、IgG2、及びIgG4)で得られた結果。B)治療用抗体リツキシマブ(IgG1)並びにそのアイソタイプ変異体IgG2及びIgG4で得られた結果。C)治療用抗体セツキシマブ(IgG1)及びそのアイソタイプ変異体IgG2で得られた結果。D)治療用抗体イピリムマブ(IgG1)及びそのアイソタイプ変異体IgG2で得られた結果。
図3図3は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対する治療用抗体及びそれらの非グリコシル化又は非フコシル化変異体の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。A)リツキシマブ(グリコシル化抗体)並びにその非フコシル化及び非グリコシル化変異体で得られた結果。B)セツキシマブ(グリコシル化抗体)及びその非グリコシル化変異体で得られた結果。
図4図4は、ヒトC1qに対する治療用I型及びII型抗CD20抗体リツキシマブ及びオビヌツズマブ(GA101)の結合プロファイルを示す。A)図1に記載のTR-FRET法を使用して得られた結果。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。B)ELISAアッセイを使用して得られた文献からのデータ([参考文献5]から適合させたもの)。結合曲線は、[抗体](μg/mL)対ELISAシグナル(405nmでのOD)を表す。
図5図5は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対する治療用抗体アテゾリズマブ(IgG1)及びスパルタリズマブ(IgG4)の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。
図6図6は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対する治療用抗TNF-α抗体アダリムマブ(150nMのヒトTNF-αと予め複合体化されているか、又は複合体化されていない)の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。
図7図7は、ビオチン化抗ヒトFab抗体、及びドナーで直接的に標識されたC1qを使用してヒトC1qタンパク質に対するIgGの結合を判定するために実施されたTR-FRETサンドイッチアッセイを示す。このアッセイは、HTRF(R)技術に基づいており、Tb3+クリプテート(ドナー)にコンジュゲートされたヒトC1q、及びd2(アクセプター)で標識されたストレプトアビジンを使用する。被験抗体がヒトC1qに結合すると、それはドナーをアクセプターに近接させる。光源(UV領域)によるドナーの励起は、アクセプターに向かうエネルギー移動を引き起こし、次いで特異的蛍光(TR-FRETシグナル)が放出される。
図8図8は、図7に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対する各種のアイソタイプのIgG抗体の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。被験抗体は、治療用抗体リツキシマブ(IgG1)、並びに組換えヒトIgGアイソタイプ対照IgG1、IgG2、及びIgG4である。
図9図9は、ビオチン化抗ヒトFab抗体、及びアクセプターで間接的に標識されたC1qを使用してヒトC1qタンパク質へのIgGの結合を判定するために実施されたALPHAサンドイッチアッセイを示す。このアッセイは、AlphaLISA(R)技術に基づいており、Alphaストレプトアビジン被覆ドナービーズ(ドナー)、及びAlphaLISAアクセプタービーズ(アクセプター)にコンジュゲートされた抗C1q抗体を使用する。被験抗体がヒトC1qに結合すると、それはドナーをアクセプターに近接させる。680nmのレーザーによるドナーの励起は、一重項酸素の生成及びアクセプターへの拡散を引き起こし、次いで特異的蛍光(ALPHAシグナル)が生成される。
図10図10は、図9に記載のALPHA法に基づく、ヒトC1qに対する各種のアイソタイプのIgG抗体の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対ALPHAシグナルを表す。被験抗体は、治療用抗体リツキシマブ(IgG1)、並びに組換えヒトIgGアイソタイプ対照IgG1、IgG2、及びIgG4である。
図11図11は、ビオチン化抗原、及びドナーで間接的に標識されたC1qを使用してヒトC1qタンパク質に対するIgGの結合を判定するために実施されたTR-FRETサンドイッチアッセイを示す。このアッセイは、HTRF(R)技術に基づいており、Eu3+クリプテート(ドナー)にコンジュゲートされた抗C1q抗体、及びd2(アクセプター)で標識されたストレプトアビジンを使用する。被験抗体がヒトC1qに結合すると、それはドナーをアクセプターに近接させる。光源(UV領域)によるドナーの励起は、アクセプターに向かうエネルギー移動を引き起こし、次いで特異的蛍光(TR-FRETシグナル)が放出される。
図12図12は、ビオチン化組換えヒトTNF-αを使用し、図11に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対する治療用抗TNF-α抗体アダリムマブの結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。
図13図13は、ドナーで間接的に標識されたC1qと、ビオチン化され、アクセプター標識ストレプトアビジンに複合体化されるか、又はアクセプターに直接コンジュゲートされた抗ヒトFab抗体とを使用してヒトC1qタンパク質に対するIgGの結合を判定するために実施されたTR-FRETサンドイッチアッセイを示す。これらのアッセイは、HTRF(R)技術に基づき、Eu3+クリプテート(ドナー)にコンジュゲートされた抗C1q抗体、及びA)ストレプトアビジン-d2(アクセプター)に複合体化されたビオチン化抗ヒトFab抗体、又はB)d2で直接的に標識された同じ抗ヒトFab抗体を使用する。被験抗体がヒトC1qに結合すると、それはドナーをアクセプターに近接させる。光源(UV領域)によるドナーの励起は、アクセプターに向かうエネルギー移動を引き起こし、次いで特異的蛍光(TR-FRETシグナル)が放出される。
図14図14は、図13に記載される2つの異なるTR-FRETアッセイフォーマットを使用した、ヒトC1qに対する治療用抗体リツキシマブの結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対正規化HTRFシグナル(デルタF%)を表す。
図15図15は、飽和結合実験を実施し、ドナーで標識された各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)のヒトIgGに対する抗ヒトFab抗体の親和性(Kd)を決定するために使用されたTR-FRETサンドイッチアッセイを示す。これらのアッセイは、HTRF(R)技術に基づいており、Eu3+クリプテート(ドナー)で標識されたヒトIgG(IgG1、IgG2、又はIgG4)、及びA)d2(アクセプター)で直接的に標識された抗ヒトFab抗体、又はB)ビオチンにコンジュゲートされ、ストレプトアビジン-d2に複合体化された同じ抗ヒトFabを使用する。ヒトIgGに対する抗ヒトFab抗体の結合により、TR-FRETシグナルの放出が引き起こされ、プラトー(飽和)に達するまで被験抗ヒトFab抗体の濃度に比例して増加する。
図16図16は、図15に記載される2つの異なるTR-FRETサンドイッチアッセイを使用した、Eu3+クリプテート-ヒトIgG1に対する3つの異なる抗ヒトFab抗体(1、2、及び3)の結合の結果を示す。飽和結合曲線は、[抗ヒトFab抗体](nM)対HTRFシグナル(HTRF比)を表す。総シグナルは、非標識ヒトIgG1の非存在下で得られたシグナルに対応する。非特異的シグナルは、過剰の非標識IgG1の存在下で得られたシグナルに対応する。総シグナルに対して非特異的シグナルを差し引くことにより、特異的シグナルを計算した。A)d2で直接的に標識された抗ヒトFab1で得られた結果。B)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1で得られた結果。C)d2で直接的に標識された抗ヒトFab2で得られた結果。D)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab2で得られた結果。E)d2で直接的に標識された抗ヒトFab3で得られた結果。F)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab3で得られた結果。
図17図17は、図15に記載される2つの異なるTR-FRETサンドイッチアッセイを使用した、Eu3+クリプテート-ヒトIgG2に対する3つの異なる抗ヒトFab抗体(1、2、及び3)の結合の結果を示す。飽和結合曲線は、[抗ヒトFab抗体](nM)対HTRFシグナル(HTRF比)を表す。総シグナルは、非標識ヒトIgG2の非存在下で得られたシグナルに対応する。非特異的シグナルは、過剰の非標識IgG2の存在下で得られたシグナルに対応する。総シグナルに対して非特異的シグナルを差し引くことにより、特異的シグナルを計算した。A)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1で得られた結果。B)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab2で得られた結果。C)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab3で得られた結果。
図18図18は、図15に記載される2つの異なるTR-FRETサンドイッチアッセイを使用した、Eu3+クリプテート-ヒトIgG4に対する3つの異なる抗ヒトFab抗体(1、2、及び3)の結合の結果を示す。飽和結合曲線は、[抗ヒトFab抗体](nM)対HTRFシグナル(HTRF比)を表す。総シグナルは、非標識ヒトIgG4の非存在下で得られたシグナルに対応する。非特異的シグナルは、過剰の非標識IgG4の存在下で得られたシグナルに対応する。総シグナルに対して非特異的シグナルを差し引くことにより、特異的シグナルを計算した。A)d2で直接的に標識された抗ヒトFab1で得られた結果。B)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1で得られた結果。C)d2で直接的に標識された抗ヒトFab2で得られた結果。D)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab2で得られた結果。E)d2で直接的に標識された抗ヒトFab3で得られた結果。F)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab3で得られた結果。
図19図19は、競合結合実験を実施し、各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)の完全ヒトIgG、ヒト化IgG、又はキメラIgGに対する抗ヒトFab抗体の親和性(Ki)を決定するために使用されたTR-FRET競合アッセイを示す。これらのアッセイは、図15に示される2つの異なるHTRF(R)サンドイッチアッセイフォーマットに基づく。競合剤(非標識IgG)の非存在下では、Eu3+クリプテート-ヒトIgGはアクセプター-抗ヒトFabに結合し、TR-FRETシグナルの放出が引き起こされる。抗ヒトFab抗体と相互作用し、Eu3+クリプテート-ヒトIgGと競合することができる非標識IgGの存在下では、TR-FRETシグナルは被験IgGの濃度に比例して減少する。
図20図20は、図19に記載される2つのTR-FRET競合アッセイの一方を使用し、3つの異なる抗ヒトFab抗体(1、2、及び3)を用いた、Eu3+クリプテート-ヒトIgG1と各種の非標識IgG1抗体との間の競合の結果を示す。シグモイド用量反応阻害曲線は、log[非標識IgG1](M)対正規化HTRFシグナル最大値の%(=デルタF%非標識IgG1抗体/デルタF%最大値×100)を表す。A)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1で得られた結果。B)d2で直接的に標識された抗ヒトFab2で得られた結果。C)d2で直接的に標識された抗ヒトFab3で得られた結果。
図21図21は、図19に記載されるように、ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1を用いた、Eu3+クリプテート-ヒトIgG2と各種の非標識IgG2抗体との間の競合の結果を示す。シグモイド用量反応阻害曲線は、log[非標識IgG2](M)対正規化HTRFシグナル最大値の%(=デルタF%非標識IgG1抗体/デルタF%最大値×100)を表す。
図22図22は、図19に記載される2つのTR-FRET競合アッセイの一方を使用し、3つの異なる抗ヒトFab抗体(1、2、及び3)を用いた、Eu3+クリプテート-ヒトIgG4と各種の非標識IgG4抗体との間の競合の結果を示す。シグモイド用量反応阻害曲線は、log[非標識IgG4](M)対正規化HTRFシグナル最大値の%(=デルタF%非標識IgG1抗体/デルタF%最大値×100)を表す。A)ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1で得られた結果。B)d2で直接的に標識された抗ヒトFab2で得られた結果。C)d2で直接的に標識された抗ヒトFab3で得られた結果。
図23図23は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、ストレプトアビジン-d2と複合体化(比1/1)されたビオチン化抗ヒトFab抗体を各種の濃度で使用した、ヒトC1qに対するIgG1及びIgG2抗体の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対正規化HTRFシグナル(デルタF%)を表す。A)治療用抗体アテゾリズマブ(IgG1)で得られた結果。B)組換えヒトIgG2アイソタイプ対照で得られた結果。
図24図24は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、各種の濃度のNaClの存在下での、ヒトC1qに対する治療用I型及びII型抗CD20抗体リツキシマブ及びオビヌツズマブの結合の結果を示す。ヒストグラムは、各種の濃度のNaClの存在下で50nMの各被験抗体で得られた特異的HTRFシグナル(デルタ比)を表す。
図25図25は、図1に記載のTR-FRET法に基づく、各種の濃度のNaClの存在下での、ヒトC1qに対する各種のIgG抗体の結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対正規化HTRFシグナル(デルタF%)を表す。A)155mMのNaClの存在下で得られた結果。B)135mMのNaClの存在下で得られた結果。
図26図26は、抗体が表面にランダムに固定化されている(受動的コーティング)、先行技術(ELISA)によるC1qに対する抗体の結合を判定するための方法を示す[参考文献1]。
図27図27は、抗体がプロテインLを使用して表面に間接的に固定化されている、先行技術(SPR)によるC1qに対する抗体の結合を判定するための方法を示す[参考文献2]。
図28図28は、抗原が表面にコーティングされ、次いで抗体が添加される、先行技術(ELISA)によるC1qに対する抗体の結合を判定するための方法を示す[参考文献3]。
図29図29は、アクセプター標識ストレプトアビジンに複合体化されたビオチン化抗ヒトFab抗体(図29A)、又はアクセプター標識ストレプトアビジンに複合体化されたビオチン化プロテインL(図29B)、及びドナーで間接的に標識されたC1qを使用してヒトC1qタンパク質に対するIgGの結合を判定するために実施されたTR-FRETサンドイッチアッセイを示す。このアッセイは、HTRF(R)技術に基づいており、Eu3+クリプテート(ドナー)にコンジュゲートされた抗C1q抗体、及びd2(アクセプター)で標識されたストレプトアビジンを使用する。被験抗体がヒトC1qに結合すると、それはドナーをアクセプターに近接させる。光源(UV領域)によるドナーの励起は、アクセプターに向かうエネルギー移動を引き起こし、次いで特異的蛍光(TR-FRETシグナル)が放出される。
図30図30は、図29に記載のTR-FRET法に基づく、ヒトC1qに対するトラスツズマブ又はアダリムマブの結合の結果を示す。シグモイド用量反応曲線は、log[抗体](M)対正規化HTRFシグナル(デルタF%)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
「C1q」という用語は、補体成分1qを意味する。C1qは、自然免疫系の一部である補体系に関与するタンパク質である。C1qは、C1r及びC1sと共にC1複合体を形成する。抗体のFc部分は、補体系の補体経路を活性化するためにC1qに結合することができる。本発明によれば、C1qは、好ましくは、被験抗体のFc部分の種に由来する。例えば、被験抗体がキメラ(すなわち、ヒトFc部分を有する)、ヒト化、又はヒト被験抗体である場合、C1qは好ましくはヒトC1qである。
【0014】
本発明の意味において、「リガンド」という用語は、標的分子に特異的かつ可逆的に結合することができる分子を指す。本発明の文脈において、標的分子は、Fab、ストレプトアビジン、又はC1qである。したがって、本記載は、それぞれ「抗Fabリガンド」、「抗ストレプトアビジンリガンド」、又は「抗C1qリガンド」を指す。リガンドは、タンパク質性(例えば、タンパク質又はペプチド)又はヌクレオチド性(例えば、DNA又はRNA)であり得る。本発明の文脈において、リガンドは、有利には、抗体、抗体断片、タンパク質、ペプチド、又はアプタマーから選択され、好ましくは抗体又は抗体断片から選択される。本発明の方法で使用されるリガンドは、リガンドがC1qを標的化する際の診断剤として有用であるように、十分な親和性でそれらの標的分子に結合することができる。
【0015】
一般に「免疫グロブリン」とも呼ばれる「抗体」は、それぞれ約50~70kDaの2つの重鎖(重鎖はH鎖と呼ばれる)及びそれぞれ約25kDaの2つの軽鎖(軽鎖はL鎖と呼ばれる)によって構成され、鎖内及び鎖間ジスルフィド架橋によって互いに連結したヘテロ四量体を含む。各鎖は、N末端位置では、軽鎖はVLと、重鎖はVHと呼ばれる可変領域又はドメインによって構成され、C末端位置では、軽鎖はCLと呼ばれる単一のドメイン、重鎖はCH1、CH2、CH3、CH4と呼ばれる3つ又は4つのドメインで構成される定常領域によって構成される。本発明による抗体は、哺乳動物起源(例えば、ヒト又はマウス、又はラクダ科)、ヒト化、キメラ、組換えであり得る。好ましくは、当業者に広く知られている技術を使用して遺伝子改変細胞によって組換え産生されたモノクローナル抗体である。抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgE、及び任意のサブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4であり得る。
【0016】
「抗体断片」という用語は、酵素消化によって得られた、又は少なくとも1つのジスルフィド架橋を含む生物工学によって得られた免疫グロブリンの任意の部分であって、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb又はナノボディとしても知られる)、一本鎖抗体(例えばscFv)などの全抗体によって認識される抗原に結合することができる免疫グロブリンの任意の部分を意味する。ペプシンによる免疫グロブリンの酵素消化は、いくつかのペプチドに分割されたF(ab’)断片及びFc断片を生成する。F(ab’)断片は、鎖間ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’断片から形成される。Fab断片は、可変ドメイン(V及びV)、CHドメイン、及びCドメインによって形成される。Fab’断片は、Fab領域及びヒンジ領域によって形成される。Fab’-SHは、ヒンジ領域のシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’断片を指す。
【0017】
「抗原」という用語は、抗体又は抗体断片の抗原結合部位によって結合される分子又は分子構造、例えばタンパク質を意味する。したがって、本発明によれば、本発明の方法において使用され得る「ビオチン化抗原」は、被験抗体の抗原結合部位によって結合される分子又は分子構造、例えばタンパク質である。
【0018】
本発明による「ビオチン化」という用語は、ビオチン分子と直接コンジュゲートしていることを意味する。本発明によれば、抗Fabリガンドは、リジンの側方NH基、又は抗Fab抗体、抗体断片、若しくは抗原のN末端のNH基と反応するビオチン分子とコンジュゲートされ得る。ビオチン化試薬及びキットは、当技術分野で一般的に使用されている。
【0019】
ストレプトアビジンは、細菌ストレプトマイセス・アビジン(Streptomyces avidinii)から精製された52.8kDaのタンパク質(四量体)である。ストレプトアビジンホモ四量体は、ビオチンに対して非常に高い親和性を有する。約10-14mol/L程度の解離定数(Kd)の場合、ストレプトアビジンに対するビオチンの結合は、自然界で知られている最も強い非共有結合性相互作用の1つである。ストレプトアビジンは、ストレプトアビジン-ビオチン複合体のために分子生物学で広く使用されている。
【0020】
「ホモジニアスアッセイ」という用語は、ヘテロジニアスアッセイとは異なり、分離によって試料を処理することを必要としないで、例えば、洗浄工程なしで且つ/又は遠心分離工程なしで、混合及び測定手順によってアッセイ-測定を行うことを可能にするアッセイフォーマットを指す。
【0021】
「HPA」という用語は、「ホモジニアスプロキシミティアッセイ」を指す。HPAは当技術分野で周知であり、ドナー(以下、「ドナー化合物」とも呼ばれる)とアクセプター(以下、「アクセプター化合物」とも呼ばれる)との近接に起因するシグナルを測定するホモジニアスアッセイとして定義することができる。
【0022】
「HPAパートナーペア」という用語は、ドナー(以下、「ドナー化合物」ともいう)及びアクセプター(以下、「アクセプター化合物」ともいう)からなるペアを指し、それらが互いに近接して、ドナーが励起されると、これらの化合物はHPAシグナルを放出する。
【0023】
「HPAシグナル」という用語は、ドナー化合物とアクセプター化合物との間のHPAを表す任意の測定可能なシグナルを指す。
【0024】
「RET」という用語は、「共鳴エネルギー移動」を指す。RETは、FRET又はBRETであり得る。
【0025】
「FRET」という用語は、「蛍光共鳴エネルギー移動」を指す。FRETは、ドナーとエネルギーアクセプターとの間の双極子-双極子相互作用から生じる非放射エネルギー移動として定義される。この物理的現象は、これらの分子間のエネルギー的適合性を必要とする。これは、ドナーの発光スペクトルが少なくとも部分的にアクセプターの吸収スペクトルをカバーしなければならないことを意味する。フェルスターの理論によれば、FRETは、2つの分子、すなわちドナーとアクセプターとの間の距離に依存するプロセスであり、これらの分子が互いに近接している場合、FRETシグナルが放出される。FRETは、TR-FRET(時間分解FRET)であり得る。
【0026】
「BRET」という用語は、「生物発光共鳴エネルギー移動」を指す。
【0027】
本発明の意味において、ストレプトアビジン及びC1qは、RETパートナーペアのメンバーで標識される。ストレプトアビジン及びC1qは、例えば以下に記載されるように、当業者に周知の方法によって直接的又は間接的に標識され得る。
【0028】
特定の実施形態では、ストレプトアビジンは、RETパートナーペアのメンバーとの共有結合によって直接的に標識される。
【0029】
別の特定の実施形態では、C1qは、RETパートナーペアのメンバーで標識された抗C1q抗体で間接的に標識される。本発明のこの実施形態によれば、当業者は、工程a)のビオチン化抗Fabリガンドが抗C1q抗体のFabに結合すべきでないことを理解する。例えば、被験抗体のFabの種は、抗C1q抗体のFabの種とは異なり、例えば、被験抗体のFabはヒトであり、抗C1q抗体のFabはマウスである。
【0030】
「RETパートナーペア」という用語は、エネルギードナー化合物(以下、「ドナー化合物」という)及びエネルギーアクセプター化合物(以下、「アクセプター化合物」という)からなるペアを指し、それらが互いに近接して、ドナー化合物の励起波長で励起されると、これらの化合物はRETシグナルを放出する。2つの化合物がRETパートナーであるためには、ドナー化合物の発光スペクトルがアクセプター化合物の励起スペクトルを部分的にカバーしなければならないことが知られている。例えば、蛍光ドナー化合物とアクセプター化合物を用いる場合には「FRETパートナーペア」が用いられ、ドナー生物発光化合物とアクセプター化合物を用いる場合には「BRETパートナーペア」が用いられる。
【0031】
「RETシグナル」という用語は、ドナー化合物とアクセプター化合物との間のRETを表す任意の測定可能なシグナルを指す。したがって、例えば、FRETシグナルは、蛍光ドナー化合物又はアクセプター化合物(後者が蛍光性である場合)の蛍光の強度又は寿命の変動量であり得る。
【0032】
「LOCI」という用語は、「発光酸素チャネリングアッセイ」を意味する。LOCIは、米国特許第5,340,716号明細書(その全内容が参照により本明細書に明確に組み込まれる)に記載されている誘導発光イムノアッセイである。LOCI技術は、高感度を有するホモジニアスアッセイ(すなわち、分離工程は含まれない)を含み、このアッセイはいくつかの試薬を使用し、シグナルを得るために、他のイムノアッセイ試薬によって保持されるこれらの試薬のうちの2つ(「ドナービーズ」及び「アクセプタービーズ」と呼ばれる)が近接していることを必要とする。特定の波長の光に曝露されると、ドナービーズは一重項酸素を放出し、2つのビーズが近接している場合、一重項酸素はアクセプタービーズに移動し、これが化学反応を引き起こす結果、アクセプタービーズが、異なる波長で測定することができる光を発する。
【0033】
「LOCIパートナーペア」という用語は、一重項酸素ドナー化合物(以下、「ドナービーズ」という)及び一重項酸素アクセプター化合物(以下、「アクセプタービーズ」という)からなるペアを指し、それらが互いに近接して、ドナービーズの励起波長で励起されると、これらの化合物はLOCIシグナルを放出する。「LOCIシグナル」という用語は、ドナービーズとアクセプタービーズとの間の一重項酸素移動を表す任意の測定可能なシグナルを指す。したがって、例えば、LOCIシグナルは、アクセプタービーズによって放出される光の強度の変動量であり得る。
【0034】
「容器」という用語は、膜調製物を本発明による方法の実施に必要な試薬と混合するためのプレートのウェル、試験管、又は他の好適な容器を指す。
【0035】
C1qに対する抗体の結合を判定するための方法
第1の態様によれば、本発明は、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するためのインビトロ方法、すなわち、抗体(被験抗体)がCDCを媒介する能力を評価するためのインビトロ方法に関する。
【0036】
第1の態様によれば、本発明は、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するためのインビトロ方法であって、
a)測定媒体に、
・被験抗体、
・ビオチン化抗Fabリガンドであって、被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
・HPA(ホモジニアスプロキシミティアッセイ)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、及び
・HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q
を接触させる工程と、
b)測定媒体中のHPAシグナルを測定する工程であって、HPAシグナルの存在がC1qに対する被験抗体の結合を表す、工程と
を含む方法に関する。
【0037】
工程a)
本発明によれば、工程a)は、測定媒体に以下の4つの要素:
・被験抗体、好ましくはIgG又はIgMである被験抗体、
・ビオチン化抗Fabリガンドであって、被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
・HPA(ホモジニアスプロキシミティアッセイ)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、及び
・HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q
を接触させる工程からなる。
【0038】
測定媒体は、容器に収容されていてもよい。各種の要素は、任意の順序で連続的に、又は同時に若しくはほぼ同時に測定媒体に導入することができる。例えば、ビオチン化抗Fabリガンド、HPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、被験抗体、及びHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1qの順に各種の要素を測定媒体に導入する。
【0039】
要素の混合は、HPAの実施に適合した反応溶液を得ることを可能にする。したがって、溶液をHPAの実施に適合させるために、他の要素を測定媒体に加えることができる。例えば、測定媒体は、緩衝液、被験抗体の抗原(抗原がビオチン化されるべきでないと仮定する)、及び/又は本発明の方法を実施するのに適した任意の化合物、例えば、アルブミン、界面活性剤、防腐剤も含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、測定媒体は、HPAシグナルを検出するように適合されたオスモル濃度を有する。好ましくは、測定媒体は、250mOsm/L~500mOsm/L、好ましくは250mOsm/L~350mOsm/L、例えば、275mOsm/L~325mOsm/L、例えば、275mOsm/L~310mOsm/L、例えば280mOsm/L~300mOsm/L、例えば約282mOsm/Lのオスモル濃度を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、測定媒体は、HPAシグナルを検出するのに十分な量で、ナトリウム緩衝液、例えばNaCl、及び/又はリン酸緩衝液、例えばNaHPO及び/又はKHPOを含む。有利には、測定媒体は、50mM~250mM、例えば、100mM~200mM、例えば125mM~150mM、例えば135mMのナトリウム緩衝液(例えばNaCl)を含み得る。本発明の方法を実施するのに適したNaCl濃度は、例えば実施例9で説明されるように、当業者によって容易に決定することができる。
【0042】
好ましい実施形態では、測定媒体のpHは、HPAシグナルを検出するのに適している。有利には、pHは、pH6.0~pH8.0、例えばpH7.0~pH8.0、例えばpH7.2~pH7.6、例えばpH7.4である。当業者は、本発明の方法を実施するのに適したpHを容易に決定することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、測定媒体は、(ii)リン酸緩衝液、例えば、NaHPO及び/又はKHPO、(ii)ナトリウム緩衝液、例えばNaCl、及び最終的には(iii)アルブミンを含む。
【0044】
測定媒体はまた、界面活性剤、例えばTween-20、及び/又は防腐剤、例えばProClin-300を含んでいてもよい。
【0045】
極めて具体的な実施形態では、測定媒体は、NaHPO 3mM、KHPO 1mM、NaCl 135mM、BSA(好ましくはプロテアーゼ不含及びIgG不含)0.1%、Tween-20 0.05%、ProClin-300 0.01%、pH7.4を含む。
【0046】
本発明によれば、被験抗体はIgG又はIgMであり得る。IgG及びIgMは、C1qに結合することが知られている。好ましくは、被験抗体はIgG、例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4である。いくつかの実施形態では、被験抗体はIgG1又はIgG2である。
【0047】
被験抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であり得る。
【0048】
本発明によれば、ビオチン化抗Fabリガンドは、被験抗体のFab領域に結合することができる。先に説明したように、抗Fabリガンドは、有利には、抗Fab抗体、抗Fab抗体断片、抗Fabペプチド、抗Fabアプタマー、又は抗原から選択される。抗Fab抗体が抗Fabポリクローナル抗体であり得るとしても、抗Fab抗体は抗Fabモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0049】
一実施形態では、ビオチン化抗Fabリガンドは、被験抗体のC領域及び/又はCH領域に結合する。この実施形態では、抗Fabリガンドは、抗Fab抗体又は抗Fab抗体断片であることが好ましい。
【0050】
別の実施形態では、ビオチン化抗Fabリガンドは、被験抗体の可変領域、例えばV及び/又はVに結合する。この実施形態では、抗Fabリガンドは、好ましくは抗原である。
【0051】
被験抗体に応じて好適なビオチン化抗Fabリガンドを選択することは当業者にとって難しくないであろう。例えば、被験抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である場合、ビオチン化抗Fabリガンドは、被験抗体のC領域及び/又はCH領域に結合し得る。したがって、ビオチン化抗Fabリガンドは、ビオチン化抗ヒトFabリガンド、例えば、ビオチン化抗ヒトFab抗体、ビオチン化抗ヒトFab抗体断片、ビオチン化抗ヒトFabペプチド、ビオチン化抗ヒトFabアプタマー、又はビオチン化抗原であり得る。
【0052】
被験抗体のC領域及び/又はCHに結合する抗Fabリガンド、例えば、被験抗体のC領域及び/又はCHに結合する抗Fab抗体を得るための標準的な方法は、先行技術、例えば[参考文献8]に広く開示されている。
【0053】
ビオチン化又は非ビオチン化抗Fabリガンド、例えばビオチン化又は非ビオチン化抗Fab抗体はいずれも市販されている。ビオチン化及び非ビオチン化抗Fabリガンドの例は、Abcam製のビオチン化組換えヒトTNF-αタンパク質(#ab167747)、R&D Systems製の組換えヒトTNF-αタンパク質(#10291-TA)、ThermoFisher Scientific製の抗ヒトIgG Fab(マウスIgG2b、モノクローナル抗体、クローン4A11)(#SA1-19255)、GeneTex製の抗ヒトIgG Fab(マウスIgG2b、モノクローナル抗体、クローン2A11)(#GTX27497)、Sigma-Aldrich製の抗ヒトIgG Fab(ヤギIgG、ポリクローナル抗体)(#I5260)、SouthernBiotech製のビオチン化抗ヒトIg(IgG、IgM、及びIgA)Fab(ヤギIgG、ポリクローナル抗体)(#2085-08)、Sigma-Aldrich製のビオチン化抗ヒトIgG Fab(ヤギIgG、ポリクローナル抗体)(#SAB3701251)、Jackson ImmunoResearch Inc.製のビオチン化抗ヒトIgG Fab(ヤギIgG、ポリクローナル抗体)(#109-065-006)、ThermoFisher Scientific製のビオチン化抗ヒトIgG Fab(ニワトリIgY、ポリクローナル抗体)(#SA1-72044)である。抗Fabリガンドがビオチン化されていない場合、当技術分野で公知の標準的な手順でそれをビオチン化すること、例えば、ThermoFisher Scientific製の抗ヒトIgG Fab(マウスIgG2b、モノクローナル抗体、クローン4A11)(#SA1-19255)、GeneTex製の抗ヒトIgG Fab(マウスIgG2b、モノクローナル抗体、クローン2A11)(#GTX27497)、又はSigma-Aldrich製の抗ヒトIgG Fab(ヤギIgG、ポリクローナル抗体)(#I5260)のビオチン化は当業者にとって難しくないであろう。このように、ありとあらゆる被験抗体についてビオチン化抗Fabリガンドを得ることは当業者にとって難しくないであろう。
【0054】
特定の実施形態では、ビオチン化抗Fabリガンドは、マウスビオチン化抗Fab抗体又は抗体断片、例えばマウスビオチン化抗Fab抗体又は抗体断片である。本発明の方法は、マウスビオチン化抗Fab抗体又は抗体断片を用いて実施し得ることが本出願人によって示されている。実際、マウスビオチン化抗Fab抗体又は抗体断片は、被験抗体とC1qの結合を妨害せず、したがって工程b)においてRETシグナルを変化させないことが本出願人によって示されている。
【0055】
好ましくは、ビオチン化抗Fabリガンドは、被験抗体と比較して過剰である。例えば実施例8で説明されるように、本発明の方法の実施に適したビオチン化抗Fabリガンドの濃度を特定することは当業者にとって難しくないであろう。いくつかの実施形態では、ビオチン化抗Fabリガンドの濃度は、被験抗体に対する当該ビオチン化抗FabリガンドのnM単位の解離定数(Kd)の10倍~200倍、例えば50倍~150倍、例えば100倍であり得る。例えば、Kdが0.5nMである場合、ビオチン化抗Fabリガンドの濃度は50nMである。例えば実施例7で説明されるように、被験抗体に対するビオチン化抗FabリガンドのKdを決定することは当業者にとって難しくないであろう。
【0056】
ストレプトアビジン及びC1qは、直接的又は間接的に標識することができる。
【0057】
ストレプトアビジン及びC1qをHPAパートナーのペアのメンバー、例えば、HPAがFRETである場合には蛍光化合物で直接的に標識することは、ストレプトアビジン及びC1q上の反応基の存在に基づいて、当業者に公知の従来の方法によって実施することができる。例えば、以下の反応基:末端アミノ基、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシレート基、リジンのアミノ基、アルギニンのグアニジン基、システインのチオール基、チロシンのフェノール基、トリプトファンのインドール環、メチオニンのチオエーテル基、ヒスチジンのイミダゾール基を使用することができる。ストレプトアビジン及びC1qは、それ自体がアクセプター/ドナー化合物に共有結合している抗体又は抗体断片を測定媒体に導入することなどによって間接的に標識することもでき、この第2の抗体又は抗体断片は、ストレプトアビジン又はC1qを特異的に認識する。明らかに、ストレプトアビジン又はC1qをHPAパートナーのペアのメンバーで間接的に標識することは、ストレプトアビジン、C1q、又はHPAパートナーのペアのメンバーのビオチン化を伴わないことが重要である。
【0058】
有利には、ストレプトアビジンは、HPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されており、C1qは、HPAパートナーのペアの第2のメンバーで標識された抗C1qリガンド、例えば抗C1q抗体又は抗体断片で間接的に標識されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターである。
【0060】
本発明の方法の実施に適した濃度比[ストレプトアビジン]:[ビオチン化抗Fabリガンド]を特定することは当業者にとって難しくないであろう。例えば、濃度比[ストレプトアビジン]:[ビオチン化抗Fabリガンド]は、約1:1であり得る。
【0061】
工程b)
工程b)は、測定媒体中のHPAシグナルを測定する工程であって、HPAシグナルの存在がC1qに対する被験抗体の結合を表す、工程からなる。
【0062】
本明細書では、工程b)における「存在」という用語は、「強度」という用語に置き換えることができる。当業者は、C1qに対する被験抗体の結合が増加すると、HPAシグナルの強度が増加することを理解している。
【0063】
測定されたシグナルは、被験抗体の存在下で測定媒体中で得られたシグナルに対応する。測定は、当業者に広く知られている従来の方法で行うことができ、特に問題はない。HPAシグナルを検出及び測定するために、TR-FRETを用いたPHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)、又はALPHAを用いたVICTOR Nivo(PerkinElmer)などのデバイスが通常使用される。
【0064】
特定の実施形態では、被験抗体のHPAシグナルを、標準抗体又は参照抗体などの別の抗体で得られたHPAシグナルと比較する。この特定の実施形態では、他の抗体のHPAシグナルは、他の抗体を使用して、すなわち被験抗体を他の抗体で置き換えて本発明の方法を実施することによって得られる。他の抗体は、HPAシグナルのレベルが既に知られている標準抗体であってもよく、又は被験抗体が比較される参照抗体であってもよい。被験抗体がバイオシミラー抗体であり、参照抗体がプリンセプス抗体である場合、比較は特に興味深い。この特定の実施形態では、被験抗体を含む測定媒体中のHPAシグナルは、第1の容器中で行うことができ、他の抗体を含む測定媒体中のHPAシグナルは、第2の容器中で行うことができ、次いで、2つの容器の各々で得られたHPAシグナルを比較する。
【0065】
いくつかの実施形態では、工程(a)及び(b)は、各種の濃度の被験抗体を用いて繰り返され、好ましくは、当該方法は、
・C1qに対する被験抗体(又は他の抗体)の結合の解離定数(Kd)、及び/又は
・C1qに対する被験抗体(又は他の抗体)の結合のEC50
を決定する追加工程(c)を含む。
【0066】
本発明によれば、HPAは、(i)化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(ALPHA)などの化学増幅型発光酸素チャネリングイムノアッセイ(LOCI)、(ii)蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などの共鳴エネルギー移動(RET)、及び(iii)空間近接分析試薬捕捉ルミネッセンス(SPARCL)から選択することができる。したがって、本明細書において、「HAS」という用語は、「RET」、「LOCI」、又は「SPARCL」に置き換えることができる。「RET」、「LOCI」、及び「SPARCL」の具体的な実施形態を以下に詳述する。
【0067】
SPARCL法
SPARCL技術は、近接依存性非分離化学発光検出法である。SPARCLアッセイでは、化学発光基質(アクリダン)を特異的抗原/抗体相互作用によって酸化酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、HRP)に近接させる。H及びパラヒドロキシケイ皮酸(pHCA)を含有するトリガー溶液を添加すると、試料中に存在する分析物の量に比例する閃光が発生する。
【0068】
RET法
HPAがRETである場合、本発明は、したがって、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合のための又は該結合を判定するためのインビトロ方法であって、
a)測定媒体に、
・被験抗体、
・ビオチン化抗Fabリガンドであって、被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
・RET(共鳴エネルギー移動)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、及び
・RETパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q
を接触させる工程と、
b)測定媒体中のRETシグナルを測定する工程であって、RETシグナルの存在がC1qに対する被験抗体の結合を表す、工程と
を含む方法に関する。
【0069】
溶液をRETの実施に適合させるために、他の要素を測定媒体に加えることができる。例えば、セレンテラジンh(ベンジル-セレンテラジン)又はビスデオキシセレンテラジン(DeepBlueCTM)又はジヒドロセレンテラジン(セレンテラジン-400a)又はD-ルシフェリンを加えることができる。
【0070】
●RETパートナーのペアのメンバーによるストレプトアビジン及びC1qの標識
反応基は、RETパートナーペアのメンバーが有する反応基と共有結合を形成することができる。RETパートナーのペアのメンバーが有する適切な反応基は、当業者に周知であり、例えば、マレイミド基で官能化されたドナー化合物又はアクセプター化合物は、例えば、タンパク質又はペプチド、例えば、ストレプトアビジン又はC1qが有するシステインが有するチオール基と共有結合することができるであろう。同様に、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを有するドナー/アクセプター化合物は、タンパク質又はペプチドを含むアミンに共有結合することができるであろう。
【0071】
本発明の文脈において、ストレプトアビジン及びC1qはそれぞれ、RETパートナーのペアのメンバーで標識されてもよく、このペアのメンバーの一方は蛍光ドナー又は発光ドナー化合物であり、このペアの他方のメンバーは蛍光アクセプター化合物又は非蛍光アクセプター化合物(クエンチャー)である。
【0072】
●FRETの実施のための標識
特定の実施形態では、RETはFRETである。したがって、ストレプトアビジン及びC1qはそれぞれ、FRETパートナーペアのメンバー、すなわち蛍光ドナー化合物又は蛍光エネルギー受容性化合物で標識される。
【0073】
FRETシグナルを得るためのFRETパートナーペアの選択は、当業者の知る範囲内である。例えば、FRET現象を研究するために使用することができるドナー-アクセプターペアは、当業者が参照することができるJoseph R.Lakowiczによる研究(Principles of fluorescence spectroscopy、第2版338)に記載されている。
【0074】
蛍光ドナー化合物
長寿命のエネルギー供与性蛍光化合物(0.1m超、好ましくは0.5~6msの範囲)、特に希土類キレート又はクリプテートは、測定媒体によって放出されるバックグラウンドノイズの大部分を処理する必要なく、時間分解FRETを可能にするので、有利である。このため、それらは一般に、本発明によるプロセスの実施に好ましい。有利には、これらの化合物はランタニド錯体である。これらの錯体(キレート又はクリプテートなど)は、エネルギー供与性FRETペアのメンバーとして特に適している。
【0075】
ユーロピウム(Eu3+)、テルビウム(Tb3+)、又はサマリウム(Sm3+)の錯体も本発明に適した希土類錯体であり、ユーロピウム(Eu3+)及びテルビウム(Tb3+)錯体が特に好ましい。
【0076】
一実施形態では、ランタニド錯体Ln3+は、以下の錯体のうちの1つから選択される。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【0077】
pHに応じて、-SOH、-COH、及び-PO(OH)基は脱プロトン化形態であるか、又は脱プロトン化形態ではない。したがって、これらの基は、-SO 、-CO 、及び-PO(OH)Oも表す。
【0078】
ランタニド錯体C1~C90は、以下の刊行物又は特許に記載されている。これらの錯体は市販されているか、又は国際公開第2020/157439号(A1)などの先行技術に記載されているように合成経路によって得ることができる。
【0079】
有利には、蛍光ドナー化合物は、ユーロピウムクリプテート、ユーロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、量子ドット、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、及びニトロベンゾオキサジアゾールから選択されるFRETパートナーである。
【0080】
特に有利には、蛍光ドナー化合物は、ユーロピウムクリプテート、ユーロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、及び量子ドットから選択されるFRETパートナーであり、ユーロピウム及びテルビウムのキレート及びクリプテートが特に好ましい。
【0081】
蛍光アクセプター化合物
蛍光アクセプター化合物は、以下の群:アロフィコシアニン、特に商品名XL665で知られるもの、発光有機分子、例えば、ローダミン、シアニン(Cy5など)、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体(「Bodipy」として市販されている)、「Atto」として知られているフルオロフォア、「DY」として知られているフルオロフォア、「Alexa」として知られている化合物、ニトロベンゾオキサジアゾールから選択することができる。有利には、蛍光アクセプター化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾールから選択される。
【0082】
「シアニン」及び「ローダミン」という用語は、それぞれ「シアニン誘導体」及び「ローダミン誘導体」として理解されたい。当業者は、市場で入手可能なこれらの異なるフルオロフォアに精通している。
【0083】
「Alexa」化合物は、Invitrogenによって市販され、「Atto」化合物は、Attotecによって市販され、「DY」化合物は、Dyomicsによって市販され、「Cy」化合物はAmersham Biosciencesによって市販されており、他の化合物は、Sigma、Aldrich、又はAcrosなどの様々な化学試薬供給業者によって市販されている。
【0084】
以下の蛍光タンパク質:シアン蛍光タンパク質(AmCyan1、Midori-Ishi Cyan、mTFP1)、緑色蛍光タンパク質(EGFP、AcGFP、TurboGFP、Emerald、Azami Green、ZsGreen)、黄色蛍光タンパク質(EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、PhiYFP、ZsYelllow1、mBanana)、オレンジ色及び赤色蛍光タンパク質(Orange kusibari、mOrange、tdtomato、DsRed、DsRed2、DsRed-Express、DsRed-Monomer、mTangerine、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、mStrawberry、HcRed1、mRaspberry、HcRed-Tandem、mPlim、AQ143)、遠赤色の蛍光タンパク質(mKate、mKate2、tdKatushka2)も蛍光アクセプター化合物として使用することができる。
【0085】
有利には、蛍光アクセプター化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、及び量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、及びeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、及びYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるFRETパートナーである。
【0086】
●BRETを実施するための標識
特定の実施形態では、ストレプトアビジン及びC1qはそれぞれ、BRETパートナーペアのメンバー、すなわち発光ドナー化合物又は蛍光エネルギー受容性化合物で標識される。
【0087】
BRETパートナーペアのメンバーである発光ドナー化合物又はタンパク質型蛍光アクセプター化合物によるストレプトアビジン及びC1qの直接的な標識は、当業者に公知の古典的な方法、特に、当業者が参照することができるTarik Issad及びRalf Jockersによる論文(Bioluminescence Resonance Energy Transfer to Monitor Protein-Protein Interactions,Transmembrane Signaling Protocols pp 195-209,Part of the Methods in Molecular BiologyTMブックシリーズMIMB,第332巻)に記載されている古典的な方法によって行うことができる。
【0088】
BRETパートナーペアのメンバーである有機分子型蛍光アクセプター化合物によるストレプトアビジン及びC1qの直接的な標識は、前述したリガンド上の反応基の存在に基づいて、当業者に公知の古典的な方法によって行うことができる。例えば、以下の反応基:末端アミノ基、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシレート基、リジンのアミノ基、アルギニンのグアニジン基、システインのチオール基、チロシンのフェノール基、トリプトファンのインドール環、メチオニンのチオエーテル基、ヒスチジンのイミダゾール基を使用することができる。
【0089】
反応基は、BRETパートナーペアのメンバーが有する反応基と共有結合を形成することができる。BRETパートナーペアのメンバーが有する適切な反応基は当業者に周知であり、例えば、マレイミド基で官能化されたアクセプター化合物は、タンパク質又はペプチド、例えばC1qが有するシステインが有するチオール基と共有結合することができるであろう。同様に、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを有するアクセプター化合物は、タンパク質又はペプチドを含むアミンに共有結合することができるであろう。
【0090】
BRETシグナルを得るためのBRETパートナーペアの選択は、当業者の知る範囲内である。例えば、BRET現象を調べるために使用することができるドナー-アクセプターペアは、特に、当業者が参照することができるDasiel O.Borroto-Escuelaによる論文(BIOLUMINESCENCE RESONANCE ENERGY TRANSFER(BRET)METHODS TO STUDY G PROTEIN-COUPLED RECEPTOR-RECEPTOR TYROSINE KINASE HETERORECEPTOR COMPLEXES,Cell Biol.2013;117:141-164)に記載されている。
【0091】
発光ドナー化合物
特定の実施形態では、発光ドナー化合物は、ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼの変異体(Rluc8)、及びホタルルシフェラーゼから選択されるBRETパートナーである。
【0092】
蛍光アクセプター化合物
特定の実施形態では、蛍光アクセプター化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP変異体(GFP10、GFP2、eGFP)、YFP、YFP変異体(eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、YPet)、mOrange、DsRedから選択されるBRETパートナーである。
【0093】
先に説明したように、ストレプトアビジン及び/又はC1qはまた、それ自体がアクセプター/ドナー化合物に共有結合している抗体又は抗体断片を測定媒体に導入することなどによって、RETパートナーのペアのメンバーで間接的に標識されてもよく、この抗体又は抗体断片はストレプトアビジン又はC1qを特異的に認識する。
【0094】
LOCI法
HPAがLOCIである場合、本発明は、したがって、補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するためのインビトロ方法であって、
a)測定媒体に、
・被験抗体、
・ビオチン化抗Fabリガンドであって、被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
・LOCI(発光酸素チャネリングイムノアッセイ)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、
・LOCIパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q
を接触させる工程と、
b)測定媒体中のLOCIシグナルを測定する工程であって、LOCIシグナルの存在がC1qに対する被験抗体の結合を表す、工程と
を含む方法に関する。
【0095】
マイクロプレートフォーマットにおける生体分子相互作用を調べるために使用されるいくつかのLOCI技術、例えば、化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(ALPHA)がある。例えば、ALPHAキットは、マサチューセッツ州ウォルサムのPerkinElmerによって製造され、AlphaScreen(R)及びAlphaLISA(R)の商標で市販されている。これらの技術は、非放射性のホモジニアスプロキシミティアッセイである。ビーズ上に捕捉された分子の結合は、一方のビーズから他方のビーズへの一重項酸素拡散をもたらし、最終的に検出可能な発光/蛍光シグナルを生じさせ、試料中の1つ以上の分析物に関する定性的及び定量的情報を提供する。
【0096】
LOCIパートナーのペアは、以下の2つのビーズタイプ:ドナービーズ及びアクセプタービーズを含む。ドナービーズは、光増感剤、例えばフタロシアニンを含み、これは、680nmの照射時に雰囲気酸素を励起された反応性形態の酸素である一重項酸素に変換する。一重項酸素はラジカルではなく、単一の励起電子を有する酸素分子である。他の励起分子と同様に、一重項酸素は、基底状態に戻る前の寿命が限られている。その4μ秒の半減期内で、一重項酸素は、溶液中で約200nm拡散することができ、これと比較して、TR-FRETは約10nmの最大移動距離を有する。アクセプタービーズがその近傍にある場合、エネルギーは一重項酸素からアクセプタービーズ内のチオキセン誘導体に移され、その後、波長範囲内、例えば520~620nm(AlphaScreen(R))又は特定の波長、例えば615nm(AlphaLISA(R))の光生成に至る。アクセプタービーズが存在しない場合、一重項酸素は基底状態に低下し、シグナルは生じない。この近接依存性化学エネルギー移動は、LOCIのホモジニアス性の基礎であるため、ELISAアッセイ、電気化学発光、及びフローサイトメトリーアッセイとは異なり、洗浄工程は必要とされず、それによって著しい利点をもたらす。
【0097】
アクセプタービーズには、チオキセン、アントラセン、及びルブレンの3つの色素が埋め込まれている。最終蛍光であるルブレンは、520~620nmの間で検出可能な光を放出する(例えばAlphaScreen(R))。
【0098】
アントラセン及びルブレンは、ユーロピウムキレート(例えばAlphaLISA(R))で置換されていてもよい。ユーロピウム(Eu)キレートは、一重項酸素との反応後のチオキセンのジケトン誘導体への変換から生じる340nmの光によって直接励起される。励起されたユーロピウムキレートは、約615nmを中心とするはるかに狭い波長帯域内で検出可能な強い光を生じる。したがって、ユーロピウムキレートで置換されていないアクセプタービーズとは対照的に、ユーロピウムキレート発光で置換されたアクセプタービーズは、500~600nmの間の光を吸収する人工又は天然化合物(ヘモグロビンなど)による干渉を受けにくい。
【0099】
●LOCIパートナーのペアのメンバーによるストレプトアビジン及びC1qの標識
LOCIパートナーのペアのメンバーでストレプトアビジン及びC1qを直接的に標識することは、ストレプトアビジン及びC1q上の反応基の存在に基づいて、当業者に公知の従来の方法によって行うことができる。例えば、以下の反応基:N末端アミノ基、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシレート基、リジンのアミノ基、システインのチオール基を使用することができる。
【0100】
反応基は、LOCIパートナーのペアのメンバーが有する反応基と共有結合を形成することができる。LOCIパートナーのペアのメンバーが有する適切な反応基は、当業者に周知であり、例えば、マレイミド基で官能化されたドナー化合物又はアクセプター化合物は、例えば、タンパク質又はペプチド、例えばストレプトアビジン又はC1qが有するシステインが有するチオール基と共有結合することができるであろう。同様に、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを有するドナー/アクセプター化合物は、タンパク質又はペプチドを含むアミンに共有結合することができるであろう。
【0101】
ALPHAビーズ(ドナー又はアクセプター)は、ペプチド、タンパク質(例えば、ストレプトアビジン又はC1q)、又は抗体(例えば抗C1q抗体)に直接コンジュゲートすることができる。このコンジュゲーションは、ALPHAビーズの表面に存在する反応性アルデヒド基と目的の分子の(リジン及びN末端の)遊離アミン基との間の還元的アミノ化反応に基づく。この反応は、形成された結合を安定化させるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)の存在下で行われ、次いで、ALPHAビーズ上の残りの遊離アルデヒド基をブロックするカルボキシメチルアミン(CMO)の添加によって停止される。
【0102】
先に説明したように、ストレプトアビジン及び/又はC1qはまた、それ自体がアクセプター/ドナー化合物に共有結合している抗体又は抗体断片を測定媒体に導入することなどによって、LOCIパートナーのペアのメンバーで間接的に標識されてもよく、この抗体又は抗体断片はストレプトアビジン又はC1qを特異的に認識する。
【0103】
本発明の方法を実施するための試薬キット
第2の態様によれば、本発明は、本発明の方法を実施するための試薬キットであって、
(i)ビオチン化抗Fabリガンドと、
(ii)ストレプトアビジン、又はHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されたストレプトアビジンと、
(iii)C1q、又はHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されたC1qと、
(iv)ストレプトアビジンがHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識された抗ストレプトアビジンリガンドと、
(v)C1qがHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識された抗C1qリガンドと
を含むキットに関する。
【0104】
本発明のキットの各種の構成要素の特定の実施形態は、先の説明で詳述したように、本発明のキットにも適用される。
【0105】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法を実施するための試薬キットは、
(i)ビオチン化抗Fab抗体と、
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバー、好ましくはTR-FRETパートナーのペアの第1のメンバー、例えばd2で直接的に標識されたストレプトアビジンと、
(iii)C1qと、
(iv)HPAパートナーのペアの第2のメンバー、好ましくはTR-FRETパートナーのペアの第2のメンバー、例えばユーロピウムクリプテートで直接的に標識された抗C1q抗体と
を含む。
【0106】
好ましい実施形態では、本キットはまた、本明細書で先に開示されるように、緩衝液、被験抗体の抗原(抗原がビオチン化されるべきでないと仮定する)、及び/又は本発明の方法を実施するのに適した任意の化合物、例えば、アルブミン、界面活性剤、及び/又は防腐剤を含む。
【0107】
本キットの試薬は、1つ又は複数の容器、好ましくは複数の容器に収容される。
【実施例
【0108】
実施例1:ビオチン化抗ヒトFab抗体、及びドナーで間接的に標識されたC1qを使用して、C1qに対する被験抗体の結合を判定するための方法(TR-FRET)
【0109】
C1qに対する被験抗体の結合を判定するために、TR-FRETサンドイッチアッセイを図1に示すように行った。
【0110】
TR-FRET検出は、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づいた。HTRF(R)技術は、蛍光ドナー色素(ドナー)であるEu3+クリプテート又はTb3+クリプテートと、蛍光アクセプター色素(アクセプター)であるd2との間の蛍光共鳴エネルギー移動に対応する。各色素は、分子(抗体又はタンパク質)に共有結合的に標識される。
【0111】
本明細書に記載の方法は、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、被験抗体を溶液中で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(ThermoFisher Scientific、#SA1-19255)との複合体の使用に基づいていた(図1)。被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、Eu3+クリプテートにコンジュゲートしたマウスモノクローナル抗C1q抗体(HycultBiotech、#HM2382)で検出した。
【0112】
抗ヒトIgG Fab抗体のビオチン化
ビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma-Aldrich、#B2643)の5mMストック溶液を無水DMSOで調製した。抗体を0.1M、pH9の炭酸塩緩衝液中に1mg/mLの濃度で入れ、ビオチンをビオチン/抗体のモル比6で添加した。室温(RT)で30分間インキュベートした後、予め充填したゲル濾過重力流カラム(Amersham NAP-10カラム、Cytiva、#17085401)を製造者の説明書に従って使用して、0.1M、pH7のリン酸緩衝液中で抗体を精製して過剰のコンジュゲートされていないビオチンを除去した。ビオチン化抗体のストック溶液に0.1%BSAを補充し、使用するまで-20℃で保存した。
【0113】
Eu3+クリプテートに対する抗C1q抗体のコンジュゲーション
Eu3+クリプテートN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Cisbio Bioassays)の5mMストック溶液を無水DMSOで調製した。抗体を50mM、pH8のリン酸緩衝液中に1mg/mLの濃度で入れ、Eu3+クリプテートをEu3+クリプテート/抗体のモル比15で添加した。室温(RT)で30分間インキュベートした後、予め充填したゲル濾過重力流カラム(Amersham NAP-5カラム、Cytiva、#17085301)を製造者の説明書に従って使用して、0.1M、pH7のリン酸緩衝液中で抗体を精製して過剰のコンジュゲートされていないEu3+クリプテートを除去した。Eu3+クリプテート-抗体のストック溶液に0.1%BSAを補充し、使用するまで-20℃で保存した。
【0114】
被験抗体の説明
アッセイで試験した抗体の特徴を表1に詳述する。それらはすべて、既知の濃度の精製抗体である。
【0115】
【表1】
【0116】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、実験に応じて、緩衝液1(NaHPO 3mM、KHPO 1mM、NaCl 135mM、BSA 0.1%、Tween-20 0.05%、ProClin-300 0.01%、pH7.4)(図2図3図4A、及び図5)又は緩衝液2(NaHPO 42.13mM、KHPO 7.86mM、BSA 0.1%、Tween-20 0.05%、pH7.4)(図6)のいずれかで希釈した。
【0117】
1~200nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、被験抗体の段階希釈物を4×で調製した。アダリムマブも、その抗原であるヒトTNF-α(R&D Systems、#10291-TA)の存在下で試験した。その場合、150nMのTNF-αを補充した緩衝液で段階希釈物を調製した。
【0118】
プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体/ストレプトアビジン-d2]を、50nM/50nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。実験に応じて、0.6nM(図6)又は2.4nM(図2図3図4A、及び図5)の最終濃度を目指して、Eu3+クリプテート-抗C1q抗体を4×で調製した。
【0119】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の4×溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLの被験抗体の段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体/ストレプトアビジン-d2]
・5μLのヒトC1qタンパク質
・5μLのEu3+クリプテート-抗C1q抗体
【0120】
プレートをシーラーで覆い、実験に応じて、室温で3時間(図2図3図4A、及び図5)又は一晩(図6)インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0121】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「HTRF比」は、以下の式:シグナル665nm/シグナル620nm×10,000を使用して計算した。次いで、特異的シグナル「デルタ比」を以下のように計算した。デルタ比=HTRF比抗体-HTRF比陰性対照。log[抗体](M)対デルタ比をプロットすることによって結合曲線を表し、図2図3図4A図5、及び図6に示すように、「シグモイド用量反応曲線-可変勾配(4つのパラメータ)」モデルを使用してGraphPad Prism 9でフィッティングした。各結合曲線について、バックグラウンドに対するシグナル(S/B)を以下のように計算することによってシグナル強度を求めた。S/B=HTRF比最大値抗体/HTRF比陰性対照。EC50値も求めた。各被験抗体で得られた結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
TR-FRETアッセイによって、各種のアイソタイプ1、2、及び4のIgG抗体のC1q結合能を識別することができた(図2)。
【0124】
図2Aに示すように、ヒトIgG1アイソタイプ対照で最良のS/B及びEC50が得られ、このアイソタイプがヒトC1qに最も効率的に結合することが示された。ヒトIgG2アイソタイプ対照で得られたより低いS/B及び増加したEC50は、ヒトIgG2がヒトC1qと弱く相互作用することを示す。ヒトIgG4アイソタイプ対照では顕著なシグナルが測定されず、このアイソタイプがヒトC1qに結合しないことが示された。これらの結果は[参考文献6]と一致している。治療用IgG1抗体リツキシマブをそのIgG2及びIgG4アイソタイプ変異体と比較した場合(図2B)、並びに治療用IgG1抗体セツキシマブ及びイピリムマブをそれらの対応するIgG2アイソタイプ変異体と比較した場合(図2C及び2D)、同様の結果が得られた。
【0125】
TR-FRETアッセイによって、ヒトC1qに対するグリコシル化抗体対非グリコシル化抗体の相互作用の能力を区別することができた(図3)。
【0126】
治療用IgG1抗体リツキシマブを、非フコシル化変異体(ここでは無関係な対照として使用)及び非グリコシル化変異体と並行して試験した(図3A)。Fcドメイン上にフコース残基が存在しないことによって、ADCC活性のみが調節され、C1q結合は調節されないことが知られている。予想通り、リツキシマブと比較して、非フコシル化抗体を用いたアッセイでは、C1q結合の検出可能な変化は得られなかった。
【0127】
逆に、非グリコシル化変異体の相互作用能力は変化し(S/Bが減少、EC50が増加)、これは抗体Fcグリコシル化がC1q結合に重要であるという事実と一致する。同様に、このアッセイから、治療用IgG1抗体セツキシマブと比較して、非グリコシル化バージョンのセツキシマブがヒトC1qに結合する能力の重大な減少が示された(図3B)。
【0128】
TR-FRETアッセイにより、治療用I型及びII型抗CD20抗体のC1q結合能を識別することができた(図4)。
【0129】
リツキシマブ(I型抗CD20)と比較してオビヌツズマブ(II型抗CD20)で得られた低下したシグナル強度は、オビヌツズマブがヒトC1qに結合する効率が低いことを示している(図4A)。これらの結果は、ELISAアッセイを使用して得られた文献からのデータに従っている(図4Bは、[参考文献5]から適合させた)。
【0130】
治療用抗体アテゾリズマブ及びスパルタリズマブもTR-FRETアッセイで試験した(図5)。
【0131】
予想通り、抗PD-L1 IgG1アテゾリズマブはヒトC1qと効率的に相互作用したが、抗PD-1 IgG4スパルタリズマブはタンパク質に結合する能力を示さなかった。
【0132】
TR-FRETアッセイによって、ヒトC1qと、抗原ヒトTNF-αと予め複合体化された又は複合体化されていない治療用抗TNF-α IgG1抗体アダリムマブとの間の相互作用を検出することができた(図6)。
【0133】
更に、このアッセイによって、抗体のC1q結合能をその抗原の非存在下又は存在下で、抗原の存在下でのEC50値の改善に基づいて、識別することができた。これらの結果は[参考文献7]と一致している。
【0134】
実施例2:ビオチン化抗ヒトFab抗体、及びドナーで直接的に標識されたC1qを使用して、C1qに対する抗体の結合を判定するための方法(TR-FRET)
【0135】
別の方法は、図7に示されるように、ドナーに直接コンジュゲートされたヒトC1qタンパク質を用いてTR-FRETアッセイを実施することからなる。
【0136】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0137】
本明細書に記載の方法は、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、被験抗体を溶液中で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(ThermoFisher Scientific、#SA1-19255)との複合体の使用に基づいている(図7)。被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)をTb3+クリプテートに直接コンジュゲートした。
【0138】
抗ヒトIgG Fab抗体は、実施例1に記載されるようにビオチン化した。テルビウムクリプテート標識キット(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#62TBSPEA)を製造者の説明書に従って使用して、ヒトC1qタンパク質をLumi4(R)-テルビウムクリプテートにコンジュゲートした。
【0139】
被験抗体の説明
ヒトアイソタイプ対照IgG1、IgG2、及びIgG4、並びに治療用IgG1抗体リツキシマブをアッセイで試験した。それらの特徴を表1に詳述する。それらはすべて、既知の濃度の精製抗体である。
【0140】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例1に詳述されている緩衝液2で希釈した。1~200nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、被験抗体の段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体/ストレプトアビジン-d2]を、50nM/50nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。Tb3+クリプテート-ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように2×で調製した。
【0141】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の作業溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLの被験抗体の段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体/ストレプトアビジン-d2]
・10μLのTb3+クリプテート-ヒトC1qタンパク質
【0142】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0143】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
HTRFデータを分析し、実施例1に記載されるように表した。各被験抗体について得られた結合曲線を図8に示す。各結合曲線について、実施例1に詳述したようにS/Bを計算し、EC50値も求めた。各被験抗体で得られた結果を表3に示す。
【0144】
【表3】
【0145】
実施例1に示される方法と同様に、TR-FRETアッセイによって、各種のアイソタイプ1、2、及び4のヒトIgG抗体のC1q結合能を識別することができた。ヒトIgG1アイソタイプ対照で最良のS/B及びEC50が得られ、このアイソタイプがヒトC1qに最も効率的に結合することが示された。ヒトIgG2アイソタイプ対照で得られたより低いS/B及び増加したEC50は、ヒトIgG2がヒトC1qと弱く相互作用することを示す。ヒトIgG4アイソタイプ対照では顕著なシグナルが測定されず、このアイソタイプがヒトC1qに結合しないことが示された。これらの結果は[参考文献6]と一致している。
【0146】
治療用IgG1キメラ抗CD20抗体リツキシマブの結合プロファイルは、ヒトIgG1アイソタイプ対照で得られたものに近く、同様のS/B及びEC50値を有していた。
【0147】
実施例3:ビオチン化抗ヒトFab抗体を使用して、C1qに対する被験抗体の結合を判定するための方法(ALPHA)
【0148】
C1qに対する被験抗体の結合を判定するために、ALPHAサンドイッチアッセイを図9に示すように行った。
【0149】
ALPHA検出は、AlphaLISA(R)技術(PerkinElmer)に基づいた。AlphaLISA(R)技術は、Alphaドナービーズ(ドナー)とAlphaLISAアクセプタービーズ(アクセプター)との間の一重項酸素の拡散に対応する。各ビーズは、分子(抗体又はタンパク質)に共有結合的にコンジュゲートされる。
【0150】
本明細書に記載の方法は、Alphaストレプトアビジン被覆ドナービーズ(PerkinElmer、#6760002)と、被験抗体を溶液で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(ThermoFisher Scientific、#SA1-19255)との複合体の使用に基づいている(図9)。被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、AlphaLISAアクセプタービーズ(PerkinElmer、#6772002)にコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗C1q抗体(HycultBiotech、#HM2382)で検出した。
【0151】
抗ヒトIgG Fab抗体は、実施例1に記載されるようにビオチン化した。
【0152】
AlphaLISAアクセプタービーズに対する抗C1q抗体のコンジュゲーション
このコンジュゲーションは、20mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)(SIGMA、#156159)及び0.06%Tween-20(ThermoFisher Scientific、#85113)の存在下、5mgのAlphaLISAアクセプタービーズ/100μgの抗C1q抗体の比で、PBS緩衝液pH7.4(ThermoFisher Scientific、#10010023)中で実施した。37℃で一晩インキュベートした後、3.1mg/mLのカルボキシ-メトキシルアミン(CMO)(Sigma、#C13408)を添加することによって反応を停止させた。PBS緩衝液pH7.4中のいくつかの洗浄/遠心分離工程によってビーズを精製して過剰のコンジュゲートされていない抗体を除去した。
【0153】
被験抗体の説明
ヒトアイソタイプ対照IgG1、IgG2、及びIgG4、並びに治療用IgG1抗体リツキシマブをアッセイで試験した。それらの特徴を表1に詳述する。それらはすべて、既知の濃度の精製抗体である。
【0154】
ALPHAアッセイ成分の調製
Alphaストレプトアビジン被覆ドナービーズは光感受性である。この試薬を使用するすべての工程(調製、分注、プレート読み取り)は、抑えた実験室照明下で実施した。使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例1に詳述されている緩衝液1で希釈した。
【0155】
1~200nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、被験抗体の段階希釈物を8×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体/Alphaストレプトアビジン被覆ドナービーズ]を、50nMのビオチン抗体/67μg/mLのビーズの最終濃度が得られるように2.67×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。抗C1q抗体にコンジュゲートされたAlphaLISAアクセプタービーズを、20μg/mLの最終濃度を目指して4×で調製した。
【0156】
ALPHAアッセイプロトコル
アッセイ成分の作業溶液を、以下のように384ウェル薄灰色マイクロプレート(AlphaPlate-384、PerkinElmer、#6005350)に順次分注した。
・5μLの被験抗体の段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・15μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体/Alphaストレプトアビジン被覆ドナービーズ]
・10μLのヒトC1qタンパク質。プレートをシーラーで覆い、暗所で23℃にて30分間プレインキュベートした。
・10μLの抗C1q抗体にコンジュゲートされたAlphaLISAアクセプタービーズ。プレートをシーラーで覆い、暗所で23℃で更に30分間インキュベートした。
【0157】
標準的なAlpha設定(680nmで励起、520~620nmで放出を読み取る)を使用して、VICTOR(R)NivoTMリーダー(PerkinElmer)でALPHAシグナルを記録した。
【0158】
ALPHAシグナル解析及びデータ処理
log[抗体](M)対ALPHAシグナルをプロットすることによって結合曲線を表し、図10に示すように、「シグモイド用量反応曲線-可変勾配(4つのパラメータ)」モデルを使用してGraphPad Prism 9でフィッティングした。各結合曲線について、S/B:S/B=ALPHAシグナル最大値抗体/ALPHAシグナル陰性対照を計算することによってシグナル強度を求めた。EC50値も求めた。各被験抗体で得られた結果を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
実施例1に示されるTR-FRETに基づく方法と同様に、ALPHAアッセイによって、各種のアイソタイプ1、2、及び4のヒトIgG抗体のC1q結合能を識別することができた。ヒトIgG1アイソタイプ対照で最良のS/B及びEC50が得られ、このアイソタイプがヒトC1qに最も効率的に結合することが示された。ヒトIgG2アイソタイプ対照で得られたより低いS/B及び増加したEC50は、ヒトIgG2がヒトC1qと弱く相互作用することを示す。ヒトIgG4アイソタイプ対照では顕著なシグナルが測定されず、このアイソタイプがヒトC1qに結合しないことが示された。これらの結果は[参考文献6]と一致している。
【0161】
治療用IgG1キメラ抗CD20抗体リツキシマブの結合プロファイルは、ヒトIgG1アイソタイプ対照で得られたものに近く、同様のS/B及びEC50値を有していた。
【0162】
実施例4:ビオチン化抗原を使用してC1qに対する抗体の結合を判定するための方法(TR-FRET)
【0163】
別の方法は、図11に示すように、ビオチン化抗ヒトFab抗体の代わりにビオチン化抗原を用いてTR-FRETアッセイを行うことからなる。
【0164】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0165】
本明細書に記載される方法は、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、被験抗体を溶液中で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化抗原(ビオチン化組換えヒトTNF-αタンパク質、Abcam、#ab167747)との複合体の使用に基づいている(図11)。被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、実施例1に記載したようにEu3+クリプテートにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗C1q抗体(HycultBiotech、#HM2382)で検出した。このアッセイで試験した抗体は、特徴が表1に詳述されている治療用抗TNF-α抗体アダリムマブである。これは、既知の濃度の精製抗体である。
【0166】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例1に詳述されている緩衝液2で希釈した。1~100nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、アダリムマブの段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化ヒトTNF-α/ストレプトアビジン-d2]を、100nM/100nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。Eu3+クリプテート-抗C1q抗体を、0.6nMの最終濃度を目指して4×で調製した。
【0167】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の4×溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLのアダリムマブの段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・5μLのプレミックス[ビオチン化ヒトTNF-α/ストレプトアビジン-d2]
・5μLのヒトC1qタンパク質
・5μLのEu3+クリプテート-抗C1q抗体
【0168】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0169】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
HTRFデータを分析し、実施例1に記載されるように表した。アダリムマブで得られた結合曲線を図12に示す。S/Bを実施例1に詳述されるように計算し、EC50値も求めた。得られた結果を表5に示す。
【0170】
【表5】
【0171】
ビオチン化ヒトTNF-αを使用するTR-FRETアッセイにより、ヒトC1qと治療用抗TNF-α IgG1抗体アダリムマブとの間の相互作用を検出することができた(図12)。この方法で得られたS/B及びEC50値(表5)は、ビオチン化抗ヒトFab抗体を用いたTR-FRETアッセイで得られたもの(表2)と同様である。
【0172】
実施例5:試験フォーマット[抗ヒトFab-ビオチン/ストレプトアビジン-d2]対抗ヒトFab-d2(TR-FRET)
【0173】
実施例1に記載され、図13Aに示されるTR-FRETアッセイフォーマットを、d2で直接的に標識された抗ヒトIgG Fabを使用した別のアッセイフォーマットと比較した(図13B)。
【0174】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0175】
図13Aに示すアッセイフォーマットは、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、被験抗体を溶液中で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(GeneTex、#GTX27497)との複合体の使用に基づいている。抗ヒトIgG Fab抗体は、実施例1に記載されるようにビオチン化した。
【0176】
図13Bに示すアッセイフォーマットは、d2標識キット(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#62D2DPEA)を製造者の説明書に従って使用してd2で直接的に標識された同じマウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(GeneTex、#GTX27497)の使用に基づいている。
【0177】
両方のアッセイフォーマットにおいて、被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、実施例1に記載したように、Eu3+クリプテートにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗C1q抗体(HycultBiotech、#HM2382)で検出した。
【0178】
このアッセイで試験した抗体は、特徴が表1に詳述されている治療用抗体リツキシマブであった。リツキシマブは、既知の濃度の精製抗体であった。
【0179】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例1に詳述されている緩衝液2で希釈した。1~100nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、リツキシマブの段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]を、50nM/50nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。抗ヒトIgG Fab-d2を、50nMの最終濃度を目指して4×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。Eu3+クリプテート-抗C1q抗体を、0.6nMの最終濃度を目指して4×で調製した。
【0180】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の4×溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLのリツキシマブの連続希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]又は5μLの抗ヒトIgG Fab-d2
・5μLのヒトC1qタンパク質
・5μLのEu3+クリプテート-抗C1q抗体
【0181】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0182】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「HTRF比」及び「デルタ比」の値を実施例1に詳述されるように計算した。次いで、以下の式を使用して正規化シグナル「デルタF%」を計算した。デルタF%=デルタ比抗体/HTRF陰性対照。log[抗体](M)対デルタF%をプロットすることによって結合曲線を表し、図14に示すように、「シグモイド用量反応曲線-可変勾配(4つのパラメータ)」モデルを使用してGraphPad Prism 9でフィッティングした。S/Bを実施例1に詳述されるように計算し、EC50値も求めた。得られた結果を表6に示す。
【0183】
【表6】
【0184】
d2で直接的に標識された抗ヒトIgG Fabを用いてリツキシマブ結合曲線で得られたS/Bは、複合体[抗ヒトIgG Fab-ビオチン/ストレプトアビジン-d2]を用いて得られたものの1/3倍であった。更に、複合体[ビオチン-抗体/ストレプトアビジン-d2]をd2-抗体で置換すると、リツキシマブのEC50値は2.1倍増加した。これらのデータは、抗ヒトIgG Fab-d2単独(ストレプトアビジンと複合体化していない)ではリツキシマブの凝集を適切に誘導できず、その結果、ヒトC1qに対するその適切な結合を適切に誘導できないことを示唆している。
【0185】
実施例6:各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)のヒトIgGに対する抗ヒトFab抗体の親和性を判定するためのサンドイッチ法(TR-FRET)
【0186】
図15に示すように、TR-FRETサンドイッチアッセイをセットアップして、飽和結合実験を行い、各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)のヒトIgGに対する抗ヒトFab抗体の親和性を判定した。
【0187】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0188】
2つの異なる結合アッセイフォーマットを試験した(図15A及びB)。両方のアッセイフォーマットは、ユーロピウムクリプテート標識キット(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#62EUSUEA)を製造者の説明書に従って使用してEu3+クリプテートで標識されたヒトIgG(IgG1、IgG2、又はIgG4)抗体の使用に基づいている。アッセイで使用したヒトIgG抗体を表7に記載する。
【0189】
【表7】
【0190】
図15Aに示す結合アッセイフォーマットは、d2標識キット(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#62D2DPEA)を製造者の説明書に従って使用してd2で直接的に標識された抗ヒトIgG Fab抗体を濃度を漸増させて使用する。図15Bに示す結合アッセイフォーマットは、ストレプトアビジン-d2(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)に複合体化されたビオチン化抗ヒトIgG Fab抗体を濃度を漸増させて使用する。抗ヒトIgG Fab抗体は、実施例1に記載されるようにビオチン化した。
【0191】
アッセイで試験した3つの異なる抗ヒトIgG Fab抗体の特徴を表8に示す。
【0192】
【表8】
【0193】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を緩衝液3(Tris-HCl 50mM、0.1%BSA、100mM KF、pH7.4)で希釈した。Eu3+クリプテートで標識されたヒトIgG(IgG1、IgG2、又はIgG4)抗体を、0.3nMの最終濃度に達するように4×で調製した。対応する非標識ヒトIgGの2×溶液を、300nMの最終濃度が得られるように調製した(標識ヒトIgGと競合するように大過剰で使用した)。0.02~50nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、抗ヒトIgG Fab-d2の段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]を、0.02nM/0.02nM~50nM/50nMの間に含まれるアッセイの最終濃度が得られるように4×で調製し、比1/1を維持しながら段階希釈した。
【0194】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の作業溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・10μLの緩衝液3(又は非特異的シグナルを判定するために10μLの非標識ヒトIgG)
・5μLのEu3+クリプテート-ヒトIgG
・5μLの抗ヒトIgG Fab-d2の連続希釈物、又は5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]の連続希釈物
【0195】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0196】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「HTRF比」を実施例1に詳述されるように計算した。総シグナルは、非標識ヒトIgGの非存在下で得られたHTRF比に対応する。非特異的シグナルは、非標識IgGの存在下で得られたHTRF比に対応する。特異的シグナルを以下のように計算した。特異的シグナル=HTRF比総シグナルHTRF比非特異的シグナル。[抗ヒトIgG Fab抗体](nM)対HTRF比をプロットすることによって(総シグナル及び特異的シグナルの)飽和結合曲線を表し、「結合-飽和(1つの部位)」モデルを使用してGraphPad Prism 9でフィッティングした。「単純線形回帰」モデルを用いて非特異的シグナルをフィッティングした。Eu3+クリプテート-ヒトIgG1、Eu3+クリプテート-ヒトIgG2、及びEu3+クリプテート-ヒトIgG4で得られた結果を、それぞれ図16図17、及び図18に示す。Eu3+クリプテート-ヒトIgG2を用いた飽和結合実験は、ストレプトアビジン-d2と複合体化されたビオチン化抗ヒトFabに基づくアッセイフォーマットのみで行った(図17)。特異的結合飽和曲線から求めたKd値を表9に示す(nd=未測定)。
【0197】
【表9】
【0198】
各アッセイフォーマット(抗ヒトIgG Fab-d2、又はストレプトアビジン-d2に複合体化されたビオチン化抗ヒトIgG Fab)で求めたKd値は比較的近く、最大で2.3倍の差があった。抗ヒトFab1及び2は、Eu3+クリプテート-ヒトIgG1、IgG2、及びIgG4抗体について、0.16nM~0.47nMの範囲の同様のKd値を与えた。これは、これらのマウスモノクローナル抗体が異なるヒトIgGアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)を同様に認識し、サブナノモル範囲で良好な親和性を有することを示している。逆に、抗ヒトFab3は、Eu3+クリプテート-ヒトIgG1で得られた親和性(Kd値約0.6~1nM)と比較して、Eu3+クリプテート-ヒトIgG2及びIgG4に対してより低い親和性(Kd値は3.3~9.6nMの間に含まれる)を示した。これは、このヤギポリクローナル抗体が異なるヒトIgGアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)を同様に認識することはなく、IgG1と比較してIgG2に対して約1/6倍の親和性を有し、IgG1と比較してIgG4に対して約1/9倍~1/7倍の親和性を有することを示す。
【0199】
実施例7:各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)の完全ヒト、ヒト化、及びキメラIgGに対する抗ヒトFab抗体の親和性を判定するための競合法(TR-FRET)
【0200】
実施例6で示されるTR-FRETサンドイッチアッセイに基づいて、競合結合アッセイを実施して、図19に示すように、各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)の完全ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体、及びキメラIgG抗体に対する抗ヒトFab抗体の親和性を判定した。
【0201】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0202】
実施例6に記載の2つの結合アッセイフォーマット(図15A及びB、表7、表8)に基づいて、2つの異なる競合結合アッセイフォーマットを試験した(図19)。抗ヒトFab(d2で標識されているか、又はビオチン化され、ストレプトアビジン-d2と複合体化されている)の濃度は、実施例6で求めたKd値に基づいて決定した。各種のアイソタイプ(IgG1、IgG2、及びIgG4)及び各種のフォーマット(完全ヒト、ヒト化、及びキメラ)の非標識IgG抗体を濃度を漸増させて添加することによって、競合結合実験を行った。アッセイで試験したIgG抗体の特徴を表10に記載する。それらはすべて、既知の濃度の精製抗体である。
【0203】
【表10】
【0204】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例6に記載されている緩衝液3で希釈した。Eu3+クリプテートで標識されたヒトIgG(IgG1、IgG2、又はIgG4)抗体を、0.3nMの最終濃度に達するように4×で調製した。実施例6で求めたKd値(表9)×2に相当する最終濃度を目指して、抗ヒトIgG Fab(d2で標識されているか、又はビオチン化され、ストレプトアビジン-d2と比1/1で複合体化されている)を4×で調製した。0.03~150nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、非標識IgG抗体の段階希釈物を2×で調製した。
【0205】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の作業溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・10μLの非標識IgG抗体の段階希釈物(又はシグナル最大値を決定するための10μLの緩衝液3)
・5μLのEu3+クリプテート-ヒトIgG
・5μLの抗ヒトIgG Fab-d2、又は5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]
【0206】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0207】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「デルタF%」値を実施例5に詳述されるように計算した。デルタF%最大値は、非標識IgG抗体の非存在下で得られたデルタF%に対応する。以下のように非標識IgG抗体の各濃度についてシグナル最大値の%を計算した。シグナル最大値の%=デルタF%非標識IgG抗体/デルタF%最大値×100。log[非標識IgG抗体](M)対シグナル最大値の%をプロットすることによって競合結合曲線を表し、「用量反応-阻害(可変勾配-4つのパラメータ)」モデルを使用してGraphPad Prism 9でフィッティングした。非標識IgG1抗体、非標識IgG2抗体、及び非標識IgG4抗体で得られた競合結合曲線をそれぞれ図20図21、及び図22に示す。競合結合曲線から求めたIC50値により、Cheng-Prusoff方程式:Ki=IC50/(1+([標識ヒトIgG]/Kd))を使用してKi値を計算した。非標識IgG1、IgG2、及びIgG4で得られたIC50及びKi値をそれぞれ表11、表12、及び表13に示す(nd=未測定)。
【0208】
完全ヒト、ヒト化、及びキメラIgG1抗体を用いた競合結合実験を、ストレプトアビジン-d2に複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1を用いて(図20A)、また、d2で直接的に標識された抗ヒトFab2及び3を用いて(図20B及びC)行った。抗ヒトFab3-d2は、すべてのIgG1抗体では試験しなかった。
【0209】
【表11】
【0210】
使用した抗ヒトFabが何であれ、すべての被験IgG1抗体で得られた競合曲線を重ね合わせた。各被験IgG1抗体に対する各抗ヒトFabの親和性に対応するKi値は、使用した抗ヒトFabが何であれ、非常に近く、平均が約0.2nMであった(表11)。これは、抗ヒトFab1、2、及び3が、サブナノモル範囲の親和性で、完全ヒト、ヒト化、及びキメラIgG1抗体を同様に認識することを示している。
【0211】
【表12】
【0212】
完全ヒトIgG2抗体及びキメラIgG2抗体を用いた競合結合実験を、ストレプトアビジン-d2に複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1のみを用いて行った(図21)。すべての被験IgG2抗体で得られた競合曲線のプロファイルは類似しており、Ki値は0.27~0.72nMの範囲であった(表12)。これは、抗ヒトFab1が、0.5nMの平均親和性で、完全ヒトIgG2抗体及びキメラIgG2抗体を同様に認識することを示している。
【0213】
【表13】
【0214】
完全ヒト、ヒト化、及びキメラIgG4抗体を用いた競合結合実験を、ストレプトアビジン-d2に複合体化されたビオチン化抗ヒトFab1を用いて(図22A)、また、d2で直接的に標識された抗ヒトFab2及び3を用いて(図22B及びC)行った。抗ヒトFab3-d2は、すべてのIgG4抗体では試験しなかった。
【0215】
すべての被験IgG4抗体で得られた競合曲線のプロファイルは、抗ヒトFab1又は抗ヒトFab2のいずれを用いても類似していた(図22A及びB)。2つの抗ヒトFabのそれぞれで求められたKi値は非常に近く、抗ヒトFab1については平均が0.1nM、抗ヒトFab2については平均が0.4nMであった(表13)。これは、これらのマウスモノクローナル抗ヒトFab抗体が、サブナノモル範囲の親和性で、完全ヒト、ヒト化、及びキメラIgG4抗体に同じように結合することを示している。抗ヒトFab3で得られた競合結合曲線は、試験した抗体の性質に応じて異なるプロファイルを示した(図22C)。実際、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体は、シグナルの全阻害を誘導し、Ki値は0.13nMであった。逆に、治療用抗体ペンブロリズマブ(ヒト化IgG4)及びニボルマブ(完全ヒトIgG4)との競合は部分的であり、わずか31~32%のシグナル阻害であった。これらの結果は、ヤギポリクローナル抗ヒトFab3抗体が治療用IgG4抗体を適切に認識しないことを示唆している。
【0216】
実施例8:ビオチン化抗Fabリガンドの濃度の最適化
【0217】
ビオチン化抗Fabリガンドの濃度を最適化するために、実施例1に記載したTR-FRETアッセイを、各種の濃度の抗Fabリガンドを使用して行った。
【0218】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0219】
アッセイフォーマットは、実施例1に記載されるように、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、ビオチンにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(ThermoFisher Scientific、#SA1-19255)との複合体を使用する。被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、実施例1に記載されるように、Eu3+クリプテートにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗C1q抗体(HycultBiotech、#HM2382)で検出した。
【0220】
アッセイで試験した抗体は、特徴が表1に詳述されている治療用抗体アテゾリズマブ及びヒトIgG2アイソタイプ対照であった。両方とも既知の濃度の精製抗体である。
【0221】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例1に詳述されている緩衝液2で希釈した。0.5~100nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、被験抗体の段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]の3つの異なる溶液を、30nM/30nM、40nM/40nM、又は50nM/50nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。Eu3+クリプテート-抗C1q抗体を、0.6nMの最終濃度を目指して4×で調製した。
【0222】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の4×溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLの被験抗体の段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・3つの各種の濃度で試験した5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]
・5μLのヒトC1qタンパク質
・5μLのEu3+クリプテート-抗C1q抗体
【0223】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0224】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「デルタF%」値を計算し、用量反応結合曲線を実施例5に記載されるようにフィッティングした。各種の濃度のビオチン化抗ヒトIgG Fabと共にアテゾリズマブ(IgG1)及びIgG2アイソタイプ対照を使用した結合プロファイルを、それぞれ図23A及び図23Bに示す。S/Bを実施例1に詳述されるように計算し、EC50値も求めた。結果を表14に示す。
【0225】
【表14】
【0226】
IgG1抗体及びIgG2抗体の両方で、30nMのビオチン化抗ヒトIgG Fabを用いて得られた結合曲線は、50nMのビオチン化抗Fabリガンドを用いて得られた結合曲線と比較して、左にシフトしたEC50値を示した。40又は50nMのビオチン化抗ヒトIgG Fabを用いて得られた結合曲線はほぼ重ね合わせられ、50nMのビオチン化抗Fabリガンドを用いた場合のシグナル強度(S/B)がわずかにより良好であった。
【0227】
これらの結果は、確実に飽和用量で機能するには使用されるビオチン化抗ヒトIgG Fabの最適濃度が50nMであることを示している。この濃度は、実施例7で以前に求めた親和性(IgG1について約0.2nM、IgG2について約0.5nM)よりも約100倍高く、大過剰であることが確認される。
【0228】
実施例9:塩濃度の最適化
【0229】
アッセイにおける塩の濃度を最適化するために、実施例1に記載したTR-FRETアッセイを、各種の濃度のNaClを補充した4mMのPO緩衝液中で行った。
【0230】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づく。
【0231】
アッセイフォーマットは、実施例1に記載されるように、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、ビオチンにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(ThermoFisher Scientific、#SA1-19255)との複合体を使用する。被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、実施例1に記載されるように、Eu3+クリプテートにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗C1q抗体(HycultBiotech、#HM2382)で検出した。
【0232】
このアッセイで試験した抗体は、治療用抗体リツキシマブ及びオビヌツズマブ、並びにリツキシマブIgG2アイソタイプ変異体であった。それらの特徴は表1に詳述されている。すべてが既知の濃度の精製抗体である。
【0233】
TR-FRETアッセイ成分の調製
4mMのPO緩衝液(NaHPO 3mM、KHPO 1mM、BSA 0.1%、Tween-20 0.05%、ProClin-300 0.01%、pH7.4)を調製し、125~155mMの範囲の各種の濃度のNaClを補充した。使用直前に、すべてのアッセイ成分を、異なる濃度のNaClを含有する各緩衝液で希釈した。1~100nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、被験抗体の段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]を、50nM/50nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。Eu3+クリプテート-抗C1q抗体を、1.2nMの最終濃度を目指して4×で調製した。
【0234】
TR-FRETアッセイプロトコル
各緩衝液で調製したアッセイ成分の4×溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLの被験抗体の段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]
・5μLのヒトC1qタンパク質
・5μLのEu3+クリプテート-抗C1q抗体
【0235】
プレートをシーラーで覆い、室温で一晩インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0236】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「デルタ比」及び「デルタF%」値を、それぞれ実施例1及び実施例5に記載されるように計算した。結合曲線を実施例5に記載されるようにフィッティングした。
【0237】
各種の濃度のNaClを補充した緩衝液中の50nMのリツキシマブ及び50nMのオビヌツズマブについて得られた最大デルタ比の値を図24に示す。各濃度のNaClについて、緩衝液の対応するオスモル濃度を計算し、さらに、2つの抗CD20抗体のC1q結合能を識別するためのアッセイの能力を評価するのに使用したシグナル最大値リツキシマブ/シグナル最大値オビヌツズマブの比を計算した(表15)。
【0238】
【表15】
【0239】
135~155mMの範囲の濃度のNaCl(282mOsm/L~322mOsm/Lのオスモル濃度に対応する)の存在下では、比は3超であり、このアッセイが、I型抗CD20抗体リツキシマブ及びII型抗CD20抗体オビヌツズマブがヒトC1qと相互作用する能力を適切に識別することを示している。このNaCl濃度未満(オスモル濃度282mOsm/L未満)では、比は3未満であり、識別があまり良好でないことを示している。
【0240】
155mM及び135mMのNaClの存在下で得られたリツキシマブ、オビヌツズマブ、及びリツキシマブIgG2アイソタイプ変異体の結合曲線(デルタF%で表される)を、それぞれ図25A及びBに示す。各曲線について、実施例1に詳述されるようにS/Bを計算し、EC50値も求めた。これらの値を表16に示す。
【0241】
【表16】
【0242】
これらの結果は、NaCl濃度もまたアッセイ感度に影響を及ぼすことを示した。155mMのNaClでは、オビヌツズマブ及びリツキシマブIgG2アイソタイプ変異体を用いて得られたS/Bは非常に低かった(1.2~1.6の間に含まれる)。135mMのNaClを使用した場合、異なる抗体間の識別は依然として良好であり、S/Bはより堅牢であった(1.7以上)。したがって、この濃度のNaClは、ヒトC1qに対する抗体の結合を調べるのに最適であった。
【0243】
実施例10:試験フォーマット[抗ヒトFab-ビオチン/ストレプトアビジン-d2]対[プロテインL-ビオチン/ストレプトアビジン-d2](TR-FRET)
【0244】
実施例1に記載され、図29Aに示されるTR-FRETアッセイフォーマットを、抗ヒトFab抗体の代わりに組換えプロテインLを使用する別のアッセイフォーマットと比較した(図29B)。
【0245】
TR-FRET検出は、実施例1に記載されるように、HTRF(R)技術(PerkinElmer/Cisbio Bioassays)に基づいていた。
【0246】
図29Aに示すアッセイフォーマットは、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、被験抗体を溶液中で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIgG Fab抗体(GeneTex、#GTX27497)との複合体の使用に基づいていた。抗ヒトIgG Fab抗体は、実施例1に記載されるようにビオチン化した。
【0247】
図29Bに示すアッセイフォーマットは、d2標識ストレプトアビジン(PerkinElmer/Cisbio Bioassays、#610SADLF)と、被験抗体を溶液中で捕捉し凝集させるために使用したビオチン化組換えプロテインL(ThermoScientific、#21189)との複合体に基づいていた。組換えプロテインLは、実施例1に記載した抗ヒトFab抗体に用いたプロトコルと同じプロトコルを用いてビオチン化した。
【0248】
両方のアッセイフォーマットにおいて、被験抗体に結合したヒトC1qタンパク質(Sigma-Aldrich、#C1740)を、実施例1に記載されるように、Eu3+クリプテートにコンジュゲートされたマウスモノクローナル抗C1q抗体(Hycult Biotech、#HM2382)で検出した。
【0249】
このアッセイで試験した抗体は、治療用モノクローナル抗体アダリムマブ及びトラスツズマブであった。アダリムマブの特徴を表1に詳述する。トラスツズマブは、HER2受容体を標的化するヒト化IgG1抗体である。両方とも既知濃度の精製抗体であった。
【0250】
TR-FRETアッセイ成分の調製
使用直前に、すべてのアッセイ成分を、配合が実施例1に詳述されている緩衝液1で希釈した。1~400nMの間に含まれるアッセイの最終濃度を目指して、各抗体の段階希釈物を4×で調製した。プレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]又は[ビオチン化プロテインL/ストレプトアビジン-d2]を、50nM/50nMの最終濃度が得られるように比1/1で4×で調製した。ヒトC1qタンパク質を、5nMの最終濃度に達するように4×で調製した。Eu3+クリプテート-抗C1q抗体を、0.6nMの最終濃度を目指して4×で調製した。
【0251】
TR-FRETアッセイプロトコル
アッセイ成分の4×溶液を、以下のように384ウェル低容量白色マイクロプレート(Proxiplate Plus、PerkinElmer、#6008280)に順次分注した。
・5μLの被験抗体の段階希釈物(又は陰性対照用の5μLの緩衝液)
・5μLのプレミックス[ビオチン化抗ヒトIgG Fab/ストレプトアビジン-d2]又は[ビオチン化プロテインL/ストレプトアビジン-d2]
・5μLのヒトC1qタンパク質
・5μLのEu3+クリプテート-抗C1q抗体
【0252】
プレートをシーラーで覆い、室温で3時間インキュベートした。HTRF検出モジュール(337nmのフラッシュランプによる励起、665nm及び620nmでのシグナル放出の記録)を使用して、PHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)でHTRFシグナルを記録した。
【0253】
TR-FRETシグナル解析及びデータ処理
「HTRF比」及び「デルタ比」値を実施例1に詳述されるように計算した。次いで、正規化シグナル「デルタF%」を実施例5に詳述されるように計算した。log[抗体](M)対デルタF%をプロットすることによって結合曲線を表し、図30に示すように、「シグモイド用量反応曲線-可変勾配(4つのパラメータ)」モデルを使用してGraphPad Prism 9でフィッティングした。S/Bを実施例1に詳述されるように計算し、EC50値も求めた。得られた結果を表17に示す。
【0254】
【表17】
【0255】
複合体[プロテインL-ビオチン/ストレプトアビジン-d2]を使用してアダリムマブ及びトラスツズマブ結合曲線で得られたS/Bは、複合体[抗ヒトFab-ビオチン/ストレプトアビジン-d2]を使用して得られたS/Bの1/3.4倍であった(表17)。更に、抗ヒトFab抗体を組換えプロテインLで置換した場合、両抗体のEC50値は9倍増加した(表17)。
【0256】
これらのデータは、ビオチン化抗ヒトFab抗体が、ビオチン化プロテインLとは異なり、適切なシグナルを誘導することを示している。
【0257】
参考文献
[参考文献1]Kaul et al.,Dissection of C1q Capability of Interacting with IgG,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997
[参考文献2]Patel et al.,IgG subclass specificity to C1q determinated by surface plasmon resonance using Protein L capture technique,Analytical biochemistry,2015
[参考文献3]Lilienthal et al.,Potential of Murine IgG1 and Human IgG4 to Inhibit the Classical Complement and Fcγ Receptor Activation Pathways,Frontiers in Immunology,2018
[参考文献4]Diebolder et al.,Complement Is Activated by IgG Hexamers Assembled at the Cell Surface,Science,2014
[参考文献5]Herter et al.,Preclinical Activity of the Type II CD20 Antibody GA101(Obinutuzumab)Compared with Rituximab and Ofatumumab In Vitro and in Xenograft Models,Molecular Cancer Therapeutics,2013
[参考文献6]Almagro et al.,Progress and Challenges in the Design and Clinical Development of Antibodies for Cancer Therapy,Frontier in Immunology,2018
[参考文献7]Zhou et al.,Characterization of antibody-C1q interactions by Biolayer Interferometry,Analytical Biochemistry,2018
[参考文献8]Stubenrauch et al.,Characterization of murine anti-human Fab antibodies for use in an immunoassay for generic quantification of human Fab fragments in non-human serum samples including cynomolgus monkey samples,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2013
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図20
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図25
図26
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図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補体成分1q(C1q)に対する抗体(被験抗体)の結合を判定するためのインビトロ方法であって、
a)測定媒体に、
被験抗体、
ビオチン化抗Fabリガンドであって、上記被験抗体のFab領域に結合することができるビオチン化抗Fabリガンド、
HPA(ホモジニアスプロキシミティアッセイ)パートナーのペアの第1のメンバーで直接的又は間接的に標識されたストレプトアビジン、及び
HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的又は間接的に標識されたC1q
を接触させる工程と、
b)上記測定媒体中のHPAシグナルを測定する工程であって、HPAシグナルの存在が上記C1qに対する上記被験抗体の結合を表す、工程と
を含む方法。
【請求項2】
上記HPAが、(i)化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(ALPHA)などの化学増幅型発光酸素チャネリングイムノアッセイ(LOCI)、(ii)共鳴エネルギー移動(RET)、及び(iii)空間近接分析試薬捕捉ルミネッセンス(SPARCL)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記被験抗体が、IgG、例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4、好ましくはIgG1又はIgG2である、請求項1及び2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
上記ビオチン化抗Fabリガンドが、ビオチン化抗Fab抗体又は抗体断片、例えばビオチン化抗Fabマウス抗体又は抗体断片、例えばビオチン化抗Fabマウス抗体又は抗体断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記ビオチン化抗Fabリガンドが、ビオチン化抗原又は抗原断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記ストレプトアビジンが、RETパートナーのペアの第1のメンバー又はLOCIパートナーのペアの第1のメンバーなどのHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記C1qが、RETパートナーのペアの第2のメンバー又はLOCIパートナーのペアの第2のメンバーなどのHPAパートナーのペアの第2のメンバーで標識された抗C1qリガンドで間接的に標識されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターであり、
上記HPAがRETであり、上記ドナーが、
ユーロピウムクリプテート、ユーロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、量子ドット、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、及びニトロベンゾオキサジアゾールから選択されるFRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)ドナー、又は
ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼの変異体(Rluc8)、及びホタルルシフェラーゼから選択されるBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)ドナー
などの発光ドナー化合物又は蛍光ドナー化合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターであり、
上記HPAがRETであり、上記アクセプターが、
アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、及びeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、及びYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるFRETアクセプター、又は
アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、及びeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、及びYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるBRETアクセプター
などの蛍光アクセプター化合物又は非蛍光アクセプター化合物(クエンチャー)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターであり、
上記HPAがLOCIであり、上記ドナーがフタロシアニンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(i)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがアクセプターであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがドナーであるか、又は
(ii)HPAパートナーのペアの第1のメンバーがドナーであり、HPAパートナーのペアの第2のメンバーがアクセプターであり、
上記HPAがLOCIであり、上記ドナーがフタロシアニンであり、
上記アクセプターが(i)チオキセン、アントラセン、及びルブレン、又は(ii)チオキセン及びユーロピウムキレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)及び工程(b)が各種の濃度の上記被験抗体を用いて繰り返され、好ましくは、上記方法が、上記C1qに対する上記被験抗体の結合の解離定数(Kd)及び/又はEC50を決定する追加工程(c)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記測定媒体のオスモル濃度が、250mOsm/L~500mOsm/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法を実施するための試薬キットであって、
(i)ビオチン化抗Fabリガンドと、
(ii)ストレプトアビジン、又はHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されたストレプトアビジンと、
(iii)C1q、又はHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されたC1qと、
(iv)上記ストレプトアビジンがHPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第1のメンバーで直接的に標識された抗ストレプトアビジンリガンドと、
(v)上記C1qがHPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識されていない場合には、HPAパートナーのペアの第2のメンバーで直接的に標識された抗C1qリガンドと
を含むキット。
【国際調査報告】