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特表2024-518561クロスフロー濾過に適合する非シリコーン系植物油性消泡剤
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  • 特表-クロスフロー濾過に適合する非シリコーン系植物油性消泡剤 図1
  • 特表-クロスフロー濾過に適合する非シリコーン系植物油性消泡剤 図2A
  • 特表-クロスフロー濾過に適合する非シリコーン系植物油性消泡剤 図2B
  • 特表-クロスフロー濾過に適合する非シリコーン系植物油性消泡剤 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】クロスフロー濾過に適合する非シリコーン系植物油性消泡剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20240423BHJP
   C12C 11/11 20190101ALI20240423BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20240423BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20240423BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240423BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20240423BHJP
   B01D 71/18 20060101ALI20240423BHJP
   C12G 1/08 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B01D19/04 B
C12C11/11
A23L2/00 K
B01D61/14 500
B01D71/02
B01D71/68
B01D71/18
C12G1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570179
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022062494
(87)【国際公開番号】W WO2022238334
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/186,437
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509262688
【氏名又は名称】ケリー・グループ・サービシーズ・インターナショナル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カダム,シェクハル ウマカントゥラオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオリス,ジャッケス
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ラロア,オーエン
(72)【発明者】
【氏名】カスケリー,ダラー
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
4D006
4D011
【Fターム(参考)】
4B117LK10
4B117LL06
4B117LP01
4B128CP35
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA03
4D006KA63
4D006KD04
4D006KD07
4D006MA01
4D006MC03
4D006MC16
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB20
4D006PC12
4D011CB15
4D011CC01
(57)【要約】
プロセス液に消泡剤を添加することと、当該消泡剤を添加した後にクロスフロー濾過用に構成された1つ以上のクロスフロー濾過膜を通して当該プロセス液を連続的に供給することと、を含む液体の処理方法であって、当該消泡剤は、(A)植物油と、(B)有機乳化剤または界面活性剤と、の混合物を含む、当該処理方法。当該消泡剤は、例えば、シリコーンを含まなくてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を処理する方法であって、
消泡剤をプロセス液に添加することと、
前記消泡剤を添加した後、クロスフロー濾過用に構成された1つ以上のクロスフロー濾過膜を通して前記プロセス液を連続的に供給することと、を含み、
前記消泡剤は、(A)植物油と、(B)有機乳化剤または界面活性剤と、の混合物を含む、前記方法。
【請求項2】
精製された液体は、濾液として前記クロスフロー濾過膜を通過し、前記クロスフロー濾過膜の細孔を通過するには大きすぎる前記プロセス液中に懸濁した固形物は、ますます濃縮された残余分中に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセス液は、液体処理工程中に過度に発泡しやすい液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセス液は飲料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセス液はビールまたはワインである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセス液はビールであり、前記消泡剤は、麦汁煮沸工程及び/または発酵工程の間に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2ppm~500ppmの前記消泡剤を前記プロセス液に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クロスフロー濾過膜は、セラミック材料またはポリマー材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記クロスフロー濾過膜は、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、変性ポリエーテルスルホン(mPES)、混合エステル(ME)、混合セルロースエステル(MCE)、またはこれらのブレンドからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記クロスフロー濾過膜は、ポリエーテルスルホン(PES)からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセス液の温度を、前記消泡剤の前記植物油の融点未満に低下させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のクロスフロー濾過膜を通して前記プロセス液を連続的に供給する前に、前記消泡剤を少なくとも部分的に固化させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記植物油は、大豆油、パーム油、米ぬか油、ヒマワリ油、オリーブ油、ココナツ油、ナタネ油、キャノーラ油、落花生油、綿実油、コーン油、亜麻仁油(linseed oil)、ベニバナ油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アサイーパーム油、アボカド油、ブラジルナッツ油、カシュー油、チアシード油、ココアバター油、亜麻仁油(flaxseed oil)、麻の実油、ペカン油、及びクルミ油からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機乳化剤及び前記界面活性剤は、マスタード、大豆及び卵レシチン、モノグリセリド及びジグリセリド、ポリソルベート、カラギーナン、グアーガム、ポリグリセロールエステル、ステアロイル乳酸塩、プロピレングリコール、プロピレングリコールエステル、スクロースエステル、糖脂肪酸エステル、乳タンパク質、小麦グルテン、ゼラチン、プロラミン、大豆タンパク質単離物、デンプン、アセチル化多糖、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、イヌリン、長鎖脂肪酸、ワックス、寒天、アルギン酸塩、グリセロール、ガム、ポロキサマー、リン酸一ナトリウム、モノステアリン酸塩、脂肪酸メチルエステル(例えば、ステアリン酸メチル、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル(cis-9))、ならびにこれらのブレンドからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の方法。具体的な例としては、例えば、モノドデカン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン、モノ-9-オクタデセン酸ソルビタン、及び9-オクタデセン酸が挙げられる。
【請求項15】
前記消泡剤は、疎水性シリカ及び/または親水性シリカを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記植物油はナタネ油を含み、
前記有機乳化剤または前記界面活性剤は、モノドデカン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン、モノ-9-オクタデセン酸ソルビタン、及び9-オクタデセン酸からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記消泡剤中の前記植物油の重量比は、5.0~70.0重量%であり、前記消泡剤中の前記有機乳化剤または前記界面活性剤の重量比は、5.0~60.0重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記消泡剤中の前記植物油の重量比は、5.0~70.0重量%であり、前記消泡剤中の前記有機乳化剤または前記界面活性剤の重量比は、5.0~60.0重量%である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
シリカは、前記消泡剤に含まれない、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
シリコーンは、前記消泡剤に含まれない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、例えば、効率的かつ持続可能なクロスフロー濾過を達成するために特に有用であり得る、天然植物油に基づく非シリコーン系消泡剤配合物の使用方法に関する。いくつかの態様では、本開示は、従来の飲料製造プロセス、例えば、ビールまたはワインの従来の製造プロセスにおける発酵中の消泡剤配合物の添加に関するが、この方法は、概して、泡立ちが問題となり得る場合、及び/または脱泡/消泡プロセスの後にクロスフロー濾過を使用する場合、特にポリマークロスフロー膜を使用する場合(より具体的には、ポリエーテルスルホン(PES)クロスフロー膜を使用する場合)のすべての液体処理に適用される。
【背景技術】
【0002】
発酵プロセス中に生じ得る泡立ちは、泡抑制剤または消泡剤の添加により制御することができる。典型的な消泡剤配合物は、シリコーン化合物(シロキサン構造を有する合成生成物である)に基づいている。バッチ法では、消泡剤は、通常、必要に応じて、例えば、麦汁煮沸の間、発酵の間、または液体処理において過度の泡立ちが存在するあらゆる場合などに、バッチ式で添加される。
【0003】
シリコーンは、食品製造における使用が一般的に承認されており、シリコーンは安全であると考えられている可能性があるが、天然材料に基づく代替的な消泡製品の開発のために、飲料メーカー、特にビール醸造者による需要が増加している。このために、代替的な消泡剤は当技術分野で公知である。
【0004】
例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2013/021177は、ビール醸造材料の抽出物、または材料を二酸化炭素もしくは有機溶媒で抽出することにより得られる醸造関連材料の抽出物を含む、消泡剤を開示し、材料は、ホップ、酵母、米及び醸造関連穀類から選択される少なくとも1つの材料であってもよく、醸造関連穀類は、大麦、小麦、アワ、スペルト及びオート麦から選択されてもよい。
【0005】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,339,466号は、粉砕麦芽をエタノール濃度が75%を超えるエタノール溶液で抽出してエタノール抽出物を生成し、粉砕麦芽からエタノール抽出物を分離し、エタノール抽出物を濃縮して消泡剤を得ることによって製造される、発酵中の泡立ちを低減させるための消泡剤を開示する。
【0006】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、英国特許第2444359号は、ホップの溶媒抽出物からα酸及び精油と、任意選択でβ酸と、を除去することによって得ることができる、硬質樹脂、脂質ならびにワックスの混合物を含有する消泡剤を開示する。英国特許‘359号は、ホップを二酸化炭素またはエタノールなどの他の溶媒で抽出し、次いで全ホップ抽出物からα酸、β酸及び精油を抽出することによって得られた残留物を開示する。
【0007】
これらの代替的な消泡剤の1つの限界は、それらがシリコーン消泡剤よりも効率が低いことが判明したことである。別の限界は、これらの代替の消泡剤のいくつかは、使用が困難である場合があるか、及び/または保管中に分離する場合があることである。したがって、使用も容易である、十分な効率を有する代替の消泡剤に対する必要性が依然として残っている。
【0008】
更に、醸造産業は、天然資源の保護、及び「環境に優しい」製品の生産に対してますます関心を抱くようになっている。これは、クロスフロー濾過(接線流濾過またはTFFとしても知られる)の採用につながった。これは、例えば、クロスフロー濾過では、従来の濾過助剤使用に特有の無駄を省きながら、一貫した品質で明るくクリアな製品を提供することを約束するからである。クロスフロー濾過の使用はまた、水の節約及び必要なエネルギーの削減をもたらすこともでき、これはまた、クロスフロー濾過の商業的採用を促進する要因でもある。更に、クロスフロー濾過の使用はまた、感覚受容安定性を有する高品質の濾過製品を提供し得る。更に、ビールを醸造する際に使用される従来の濾過と比較して、クロスフロー濾過はまた自動化することができる。
【0009】
クロスフロー濾過では、液体供給物が、クロスフロー濾過膜表面に接線方向に連続的に再循環される。精製された液体は、濾液または透過液としてクロスフロー膜を通過するが、クロスフロー膜の細孔を通過するには大きすぎる、供給/プロセス流体中の懸濁固形物は、ますます濃縮された残余流中に保持される。クロスフロー法は、保持された固形物がクロスフロー膜表面上に蓄積するのではなく、濾過方向に対して直角なプロセス液の流れによってクロスフロー膜表面から洗い流される/押し流されるように設計される(プロセス流体のバルクの接線運動)。しかし、クロスフロー膜は時間の経過と共に閉塞する可能性があり、洗浄剤がすべての汚染部位に到達することが困難である可能性があるため、物理的及び/または化学的洗浄に時間を要する。
【0010】
従来のクロス濾過システムは、複数のセラミックもしくはポリマーモジュールまたはフィルターエレメントを含み得る。クロスフロー膜の付着物は、洗浄及び/または交換手順にかなりのダウンタイムを生じさせる可能性があり、その結果、実質的に利益の損失及びコストの増加をもたらし得る。
【0011】
場合によっては、クロスフロー濾過が使用される醸造発酵プロセスにおけるシリコーン系消泡剤の使用は、クロスフロー濾過膜の付着物またはスケーリングを引き起こすことが判明した。付着物は、発酵プロセスで使用されるクロスフロー濾過に従来使用されている膜材料である、ポリエーテルスルホン(PES)系クロスフロー膜を使用する場合に特に問題であった。理論に束縛されるものではないが、クロスフロー膜の付着物は、シリコーンとPESの間の化学的相互作用により起こる。
【0012】
そのような付着物はまた、セラミッククロスフロー膜、ならびに他の種類のポリマー濾過膜、例えば、ポリスルホン(PS)、変性ポリエーテルスルホン(mPES)、混合エステル(ME)及び混合セルロースエステル(MCE)を使用する場合にも問題となり得る。
【0013】
したがって、天然由来の成分に基づき、効率的かつ持続可能なクロスフロー濾過を提供し、最終食品(例えば、ビールもしくはワインなどの飲料、または他の液体)に感覚的影響を与えず、従来の消泡剤と同様またはより良好な使用コストを有し、従来のシリコーン系消泡剤と同様またはより良好な泡抑制を有する、非シリコーン系消泡剤に対する強い必要性が残っている。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、例えば、発酵の間、または泡を生成する別の液体プロセス中に生成された泡を消滅させる機能を有する、シリコーンを植物油及び有機乳化剤などの天然成分に置き換える、消泡剤を提供する。
【0015】
本開示の消泡剤は、例えば、効率的かつ持続可能なクロスフロー濾過を提供し、最終食品(例えば、ビールまたはワインなどの飲料、または他の液体)に感覚的影響を与えず、従来の消泡剤と同様またはより良好な使用コストを有し、従来のシリコーン系消泡剤と同様またはより良好な泡抑制を有するように構成され得る。
【0016】
本開示の消泡剤は、例えば、消泡剤と接触するプロセス流体がクロスフロー濾過に供されるときにクロスフロー膜を汚染しないように構成され得る、組成物を有する。
【0017】
ビールを醸造するプロセスで使用される場合、本開示の消泡剤は、例えば、濾過前に、濾過される製品(例えば、ビール)から分離することができ、最終的なビールの泡安定性を維持することができる。
【0018】
一実施形態では、本開示の消泡剤は、(A)植物油と、(B)有機乳化剤または界面活性剤との混合物を含有する。
【0019】
いくつかの態様では、消泡剤は、シリコーンをまったく含有せず(例えば、約0.0重量%)、及び/またはシリコーンは、濾過されるべき製品(例えば、ビール)に添加されない。いくつかの態様では、消泡剤中のシリコーンの量は、約5.0重量%未満、約1.0重量%未満、約100ppm未満、約10ppm未満、または約1ppm未満である。
【0020】
いくつかの態様では、水は、配合物の一部として添加され得ないが、水は、上記の成分のうちの1種以上の固有の成分及び/または不純物として組成物に含まれ得ることは理解されるであろう。
【0021】
いくつかの態様では、本開示の消泡剤中の植物油の重量比は、例えば、約5.0~約70.0重量%、約20.0~約60.0重量%、または約40.0~約50.0重量%であり得る。
【0022】
いくつかの態様では、植物油の重量比は、例えば、7.5重量%以上、10.0重量%以上、15.0重量%以上、20.0重量%以上、25.0重量%以上、30.0重量%以上、35.0重量%以上、40.0重量%以上、45.0重量%以上、50.0重量%以上、55.0重量%以上、60.0重量%以上、もしくは65.0重量%以上であり得るか、または例えば、65.0重量%以下、60.0重量%以下、55.0重量%以下、50.0重量%以下、45.0重量%以下、40.0重量%以下、35.0重量%以下、30.0重量%以下、25.0重量%以下、20.0重量%以下、15.0重量%以下、10.0重量%以下、もしくは7.5重量%以下であり得る。
【0023】
いくつかの態様では、本開示の消泡剤において使用するための植物油は、任意の公知の植物油であってよい。例としては、種から抽出された油(例えば「脂肪種子脂肪酸」)、または野菜及び果物の他の部分から抽出された油が挙げられる。
【0024】
消泡剤に用いることができる植物油の具体例としては、大豆油、パーム油、米ぬか油、ヒマワリ油、オリーブ油、ココナツ油、ナタネ油、キャノーラ油、落花生油、綿実油、コーン油、亜麻仁油(linseed oil)、ベニバナ油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アサイーパーム油、アボカド油、ブラジルナッツ油、カシュー油、チアシード油、ココアバター油、亜麻仁油(flaxseed oil)、麻の実油、ペカン油、クルミ油、及びこれらのブレンドが挙げられる。
【0025】
いくつかの態様では、植物油成分は、例えば、C12未満の脂肪酸鎖長を含むように選択され得る。一態様では、植物油の10重量%超は、C12未満の脂肪酸鎖長を含み得る。
【0026】
いくつかの態様では、植物油成分は、飽和脂肪酸、一価飽和脂肪酸、多価飽和脂肪酸、またはこれらの組み合わせを含むように選択され得る。
【0027】
いくつかの態様では、消泡剤の植物油成分は、特定の融点を達成する目的で選択することができ、その結果、例えば、植物油成分は、従来の液体処理工程中、及び/または植物油成分の融点以下に温度を下げる追加の工程中に、本質的に固体になる。
【0028】
いくつかの態様では、本開示の消泡剤中の有機乳化剤または界面活性剤の重量比は、例えば、約5.0~約60.0重量%、約10.0~約40.0重量%、または約15.0~約25.0重量%であり得る。
【0029】
いくつかの態様では、有機乳化剤または界面活性剤の重量比は、例えば、7.5重量%以上、10.0重量%以上、15.0重量%以上、20.0重量%以上、25.0重量%以上、30.0重量%以上、35.0重量%以上、40.0重量%以上、45.0重量%以上、50.0重量%以上、もしくは55.0重量%以上であり得るか、または例えば、55.0重量%以下、50.0重量%以下、45.0重量%以下、40.0重量%以下、35.0重量%以下、30.0重量%以下、25.0重量%以下、20.0重量%以下、15.0重量%以下、10.0重量%以下、もしくは7.5重量%以下であり得る。
【0030】
いくつかの態様では、有機乳化剤または界面活性剤は、天然源から得られる任意の既知の乳化剤または界面活性剤であり得る。有機乳化剤及び界面活性剤の例としては、マスタード、大豆及び卵レシチン、モノグリセリド及びジグリセリド、ポリソルベート、カラギーナン、グアーガム、ポリグリセロールエステル、ステアロイル乳酸塩、プロピレングリコール、プロピレングリコールエステル、スクロースエステル、糖脂肪酸エステル、乳タンパク質、小麦グルテン、ゼラチン、プロラミン、大豆タンパク質単離物、デンプン、アセチル化多糖、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、イヌリン、長鎖脂肪酸、ワックス、寒天、アルギン酸塩、グリセロール、ガム、ポロキサマー、リン酸一ナトリウム、モノステアリン酸塩、脂肪酸メチルエステル(例えば、ステアリン酸メチル、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル(cis-9))、ならびにこれらのブレンドが挙げられる。他の例としては、例えば、モノドデカン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン、モノ-9-オクタデセン酸ソルビタン、9-オクタデセン酸、及びこれらの2種以上のブレンドが挙げられる。
【0031】
いくつかの態様では、消泡剤は、任意選択で、例えば、約0.010重量%~約40.0重量%、または約2.0重量%~約30.0重量%、または約15.0重量%~約25.0重量%の量のシリカ(例えば、疎水性シリカ及び/または親水性シリカなど)を更に含有し得る。いくつかの態様では、消泡剤は、シリカをまったく含まない(例えば、約0.0質量%の量)。
【0032】
いくつかの態様では、本開示の消泡剤は、(A)植物油と、(B)有機乳化剤または有機界面活性剤と、を任意の順序で混合することにより得ることができる。消泡剤は、予め調製して保管しておくことができる。消泡剤の成分はまた、液体処理工程の間に個別に投与することもできる。
【0033】
一実施形態では、本開示は、消泡剤及び/または消泡剤と接触した液体を含有する液体を濾過する方法を提供する。
【0034】
いくつかの態様では、濾過の方法は、クロスフロー濾過である。
【0035】
いくつかの態様では、この方法によって濾過される液体(または、プロセス液)は、液体処理中に過剰な泡立ちを生じる任意の液体である。
【0036】
いくつかの態様では、この方法によって濾過される液体は、本開示の消泡剤と混合された任意の液体である。
【0037】
いくつかの態様では、この方法によって濾過される液体は、飲料である。
【0038】
いくつかの態様では、この方法によって濾過される飲料は、ビール、ワイン、または他の真菌もしくは細菌性発酵飲料、例えば、昆布茶及びランビックビールである。
【0039】
いくつかの態様では、この方法は、ビールの製造における工程(この態様では、濾過される液体は、ビールまたはビール醸造プロセスにおける中間体である)の間に消泡剤の量(または、用量)を添加し、続いて、クロスフロー濾過を用いてビールを濾過することを含む。例えば、ビール醸造工程は、消泡剤が従来添加される任意の工程であり得る。いくつかの態様では、投与点は、麦汁煮沸の工程の間、発酵の間、過剰な泡立ちを生じることがある任意の他の工程の間、及び/または消泡剤の添加から利益を得ることがあり得る任意の他の工程の間であることができる。
【0040】
いくつかの態様では、この方法は、発酵される液体中の約2.0ppm~約500.0ppmの消泡剤を添加することを含む。いくつかの態様では、消泡剤の投与量は、発酵される液体中の約2.0ppm~約500.0ppm、約5.0ppm~約250.0ppm、または約10.0ppm~約100.0ppmであり得る。
【0041】
いくつかの態様では、クロスフロー濾過は、濾過される液体(または、プロセス液)を1つ以上のクロスフロー膜を通して連続的に供給または再循環させることを含み、精製された液体は、濾液または透過液としてクロスフロー膜を通過するが、クロスフロー膜の細孔を通過するには大きすぎる、供給液体中の懸濁固形物は、ますます濃縮された保持液中に保持される。
【0042】
いくつかの態様では、クロスフロー膜は、例えば、セラミック材料もしくはポリマー材料から製造されているか、またはそれらからなる。
【0043】
いくつかの態様では、クロスフロー膜は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、変性ポリエーテルスルホン(mPES)、混合エステル(ME)、混合セルロースエステル(MCE)、またはこれらのブレンドからなる。いくつかの態様では、クロスフロー膜の細孔径は、例えば、精密濾過の場合は約0.10μm~約10.0μmの範囲であり、限外濾過の場合は約0.0010μm~約0.10μmの範囲であり得る。
【0044】
本開示の更なる特徴及び利点を、以下で更に記載する。この概要の章は単に、本開示の特定の特徴を記載するためだけのものであり、いかなる方法においても本開示の範囲を限定することを意味するものではない。この概要の章において、本開示の特定の特徴もしくは実施形態を議論していないこと、または1つ以上の特徴を含めていることは、特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0045】
本明細書に含まれるすべての図は、例示のためにのみ提供されるものであり、限定を意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施例1における消泡効率に対する様々な配合物の効果を示す、チャートである。
図2A】実施例2のビール発酵における泡の高さの増加率に対するAFV3の用量反応の効果を示す、グラフである。
図2B】実施例2における完成ビールの泡安定性に対する消泡剤用量反応の効果を示す、グラフである。
図3】実施例3におけるクロスフローadvanced及び0.45μmのPES膜を使用したクロスフロー濾過に対する消泡剤の効果を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本組成物、方法、及び方法論をより詳細に記載する前に、本開示は、記載された特定の組成物、方法、及び実験条件に限定されず、そのような組成物、方法、及び条件は変化し得ると理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するものとしては意図されないことも理解されたい。
【0048】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈により別様に明確に示されない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば「グリセリド」への言及は、1種以上のグリセリド、及び/または本開示などを読めば当業者には明らかになるであろう本明細書に記載された種類の組成物を含む。
【0049】
特に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施または試験において使用することができ、改変及び変形は、本開示の趣旨及び範囲内に包含されることが理解されるであろう。
【0050】
特に明記しない限り、本明細書に開示される各範囲は、当範囲内の各個別の点、及びすべての可能な部分範囲を包含し、その開示であることが理解されよう。
【0051】
本明細書で使用する場合、「約」、「およそ」、「実質的に」、及び「著しく」とは、当業者により理解され、それらが使用される文脈に応じてある程度変化するであろう。それが使用される文脈において、当業者にとって明確ではない用語の使用が見られる場合、「約」及び「およそ」は、特定の用語の±10%未満を意味し、「実質的に」及び「著しく」は、特定の用語の±10%超を意味する。「を含む」、及び「から本質的になる」は、当技術分野における通例の意味を有する。
【0052】
諸実施形態では、本開示は、消泡剤の成分の混合及び/または消泡剤の獲得、消泡剤のプロセス液への添加、ならびにプロセス液のクロスフロー濾過への適用を提供する。
【0053】
以下の実施例に示されるように、消泡剤は、例えば、従来のシリコーン系消泡剤の使用と比較して、上記の利点の1つ以上を提供する。
【0054】
加えて、消泡剤は、例えば、最終食品(例えば、ビールもしくはワインなどの飲料、または他の液体)に対する感覚的影響を与えない。
【実施例
【0055】
以下では、本開示の実施形態を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0056】
<実施例1>
実施例1は、発酵プロセスに対する様々な消泡剤の効果を示す。
【0057】
方法論
消泡剤溶液の調製及び投与
以下の配合物を、消泡効率について試験した。
AFS:水65重量%、シリコーン20重量%、及び有機乳化剤15重量%、
AFV1:水60重量%、シリコーン25重量%、有機乳化剤15重量%;
AFV2:ポリアルキルグリコール90重量%、及びプロピルアルコール10重量%、
AFV3:ナタネ油45重量%、9-オクタデセン酸35重量%、モノドデカン酸ソルビタン15重量%、及び他の有機乳化剤5重量%。
【0058】
水中の各消泡剤の1%(w/v)溶液を得て、30~60分間激しく再循環させた。試験の用量要件に従って、消泡溶液を1~2時間以内にビールに加えた。ビールを、室温(RT)、すなわち約20℃で、またはブランドのスタイルに応じて4~5日間発酵させた。泡の測定を毎日24時間間隔で記録し、酵母を添加していない発酵が起こらないブランク試料と比較して、泡高さの増加率(%)を計算した。
【0059】
結果
結果を図1に示す。
【0060】
試験した様々な消泡剤の中で、AFV3は、シリコーン系消泡剤AFSと比較して良好に機能した。上記のように、AFV3は、ナタネ油及び他の有機乳化剤に基づく消泡配合物であり、これらの結果に基づいて、AFV3を更に試験するために選択した。
【0061】
実施例2
実施例2は、完成したビールにおける用量最適化及び泡安定性の効果を示す。
【0062】
方法論
ビールの調製
琥珀色の麦芽抽出物約1.5Kgを、水8.5Lに添加した。混合物を加熱し、混合物が沸騰し始めたときにホップ1.5g/lを添加し、ぐらぐらと沸騰した状態を45分間維持した。次に、沸騰を止める15分前に、1個のwhirlfloc錠を加えた。その後、必要に応じて水またはデキストロースを用いて、初期比重(OG)を約1.045~1.050にした。次に、麦汁を熱交換器を用いて冷却し、次いでホットブレイク(麦汁が沸騰している間に凝固するタンパク質及びポリフェノール)は、麦汁を20分間放置して沈殿させ、透明な麦汁をデカントすることにより、分離した。次いで、700mlの麦汁を、泡を測定することができるように、メスシリンダーに注ぎ入れた。次に、250g/hlのエール酵母Safeale K-97を各メスシリンダーに加え、麦汁を室温で4~5日間発酵させた。最後に、メスシリンダーを、0.5℃の冷却インキュベーターに48時間入れた。
【0063】
濾過
濾過は特に限定されず、当然ながら、醸造所のブランドのスタイルに従って行うことができる。この試験では、以下のプロセスを実施した。250g/hlの濾過助剤をビールに添加し、混合した。次に、0.45μmのPES濾過膜を使用してフィルターユニットを組み立てた(SARTOFLOW(登録商標)Slice 200 Benchtop System)。冷却水を、フィルターユニットジャケットの周りで2℃で再循環させた。フィルターを、水中で700g/hlの濾過助剤でプレコートした。次に、冷却したビールをフィルターユニットに注ぎ入れ、フィルタープリコートの破壊を最小限にした。次いで、フィルターユニットを密封し、一定の空気圧をかけた。次いで、濾過されたビールを回収した。
【0064】
炭酸化及びNIBEM分析
ビールを、5g/lのCOの濃度で炭酸化した。完成ビールの泡安定性を、標準的なプロトコルに従ってNIBEM装置を使用して行った。
【0065】
結果
実施例1からの結果に基づいて、用量反応曲線(図2A参照)を実施し、完成ビール中の泡安定性を測定するために(図2B参照)、消泡剤としてAFV3を選択した。結果に基づいて、40ppmでのAFV3の使用は、消泡効率を送達し、完成ビールの泡安定性を保持するのに最も適していた。
【0066】
実施例3
実施例3は、クロスフロー濾過によるビールの効果を示す。
【0067】
ビールの調製
ビールの調製を、実施例2に記載したのと同じ方法論を用いて実施した。
【0068】
濾過
濾過は特に限定されず、当然ながら、醸造所のブランドのスタイルに従って行うことができる。クロスフロー濾過を、Sartoflow Advanced機器及び0.45μmの多孔度のPES中空糸膜を使用して行った。クロスフロー濾過には、以下のビール試料プロトコルを使用した。
【0069】
中空糸膜試料分析プロトコルによるSartorius Advanced
リザーバタンクを、蠕動ポンプを使用して9リットルの試料で充填した。供給ポンプを低速で始動させた。システム内の空気がカラムに入らないように、ポンプを始動する前にバイパス弁を完全に開放した。システムを5%のポンプ速度で5分間再循環させ、システムから空気を排出した。次に、バイパス弁をゆっくりと閉じ、ポンプ速度を徐々に上げて、供給及びTMP=0.5~5psigにし、モジュールを湿らせ、システムから空気を除去した。保持液上のピンチバルブを使用して、背圧及び膜間圧(TMP)を生成し、透過流を繊維を透過させた。次に、ポンプ速度をゆっくりと上げ、供給及びTMP=0.5~5psigにし、それによってシステムから空気を除去した。入口圧力をゆっくりと0.7barに上昇させ、流量解析を実施した。保持液流量(L/h)、透過液流量(L/h)、入口圧(bar)、DPRESS(bar)、TMP(bar)、及び隔膜(%容量)を5分ごとに記録した。
【0070】
ビール試料には、それぞれ40ppmで非シリコーン系消泡剤AFV3及びシリコーン系消泡剤AFSを添加した。次いで、それらを上記のプロトコルを使用して濾過し、流量をリットル/時間で測定した。
【0071】
結果
実施例1からの結果に基づいて、濾過とショーケースのフィルター目詰まりの効率を比較するために、非シリコーン系消泡剤としてAFV3を選択し、シリコーン系消泡剤としてAFSを選択した。結果に基づいて、AFV3は、AFSと比較して、より良好な濾過性能を提供することが示された。AFV3はまた、より速い濾過速度、及びより遅い膜の目詰まり、したがって0.45μmの膜を用いたクロスフロー濾過性能に対する影響がより低いことを示した。
【0072】
好ましい、及び例示的な実施形態に適用される本開示の、不可欠な新規の特徴を図示及び記載してきたが、本開示の趣旨を逸脱することなく、本開示の形態及び詳細の省略及び置換及び変化が、当業者によりなされることが可能であることが理解されよう。更に、速やかに明らかとなるように、様々な改変及び変更を、当業者であれば速やかに想起することができる。例えば、1つ以上の実施形態における任意の特徴(複数可)を、1つ以上の他の実施形態に適用可能である、または1つ以上の他の実施形態と組み合わせることができる。故に、本開示を、図示及び記載される厳密な構成及び操作に限定されることは望まれず、したがって、すべての好適な改変同等物は、特許請求される本開示の範囲内に収まるように用いることができる。換言すれば、本開示の実施形態を上記の実施例を参照して説明してきたが、改変及び変形は、本開示の趣旨及び範囲内に包含されることが理解されるであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0073】
本明細書に開示されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】