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特表2024-518576スラリー配合物を用いた炭化ケイ素(SiC)ウェハ研磨及びプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】スラリー配合物を用いた炭化ケイ素(SiC)ウェハ研磨及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240423BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240423BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570300
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-09
(86)【国際出願番号】 US2022028536
(87)【国際公開番号】W WO2022240842
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/188,305
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523311708
【氏名又は名称】アラカ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARACA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】フィリポッシアン, アラ
(72)【発明者】
【氏名】サンプルノ, ヤサ
(72)【発明者】
【氏名】ケラハー, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ワートマン‐オット, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】リンハート, アビゲイル
(72)【発明者】
【氏名】カウエ, キアナ エー.
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB03
3C158CB06
3C158CB10
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
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3C158ED26
5F057AA28
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5F057DA03
5F057EA01
5F057EA21
5F057EA22
5F057EA29
5F057EA33
(57)【要約】
炭化ケイ素表面を研磨するための方法。炭化ケイ素表面は、水、酸化剤、及び求電子剤の組成物に晒されている間に粒子状研磨剤で研磨される。方法は、刺激の強い化学物質を利用せずに、従来の方法と競合するか、又はそれよりも優れた材料除去速度(MRR)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素表面を研磨するための方法であって、前記方法が、
炭化ケイ素表面を、2~5のpHを有する組成物に晒すことと、ここで前記組成物は、(1)水、(2)酸化剤、(3)0.005重量%~0.05重量%の濃度の求電子剤、及び(4)粒子状研磨剤を含む、
前記炭化ケイ素表面が前記組成物に晒されている間に、前記炭化ケイ素表面を研磨することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記求電子剤が、ホウ素系化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記求電子剤が、ボロン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記求電子剤が、エチルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、p-トリルボロン酸、フェニルボロン酸、ホウ砂、及びホウ酸からなる群から選択されるボロン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記求電子剤が、ホウ酸又はホウ酸塩であり、前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記求電子剤が、ホウ酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記求電子剤が、ホウ酸トリメチル及びホウ酸トリエチルからなる群から選択されるホウ酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤が、過硫酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤が、過硫酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、前記組成物中に1重量%~10重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化剤が、前記組成物中に1重量%~5重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤が、前記組成物中に2重量%~4重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記水、前記酸化剤、前記求電子剤、及び前記粒子状研磨剤からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記求電子剤が、アルデヒド、ハロゲン化アシル、又はカルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
炭化ケイ素表面を研磨するための方法であって、前記方法が、
炭化ケイ素表面を、2~5のpHを有する組成物に晒すことと、ここで前記組成物は、(1)水、(2)酸化剤、(3)リガンドを含む金属イオン求電子剤であって、前記金属イオン求電子剤が、0.005重量%~0.05重量%の濃度で存在し、かつ前記リガンドが、1:8~1:12の金属:リガンド重量比で存在している、金属イオン求電子剤、及び(4)粒子状研磨剤を含む、
前記炭化ケイ素表面が前記組成物に晒されている間に、前記炭化ケイ素表面を研磨することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記金属イオン求電子剤が、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+からなる群から選択される二価金属イオンである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記金属イオン求電子剤が、Cu2+である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記金属イオン求電子剤が、Fe3+、Co3+、Ti4+、V4+、V5+、Cr6+、Mo6+、及びMn7+からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記金属イオン求電子剤が、Co3+、Ti4+、V4+、V5+、Cr6+、Mo6+、及びMn7+からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記金属イオン求電子剤が、V4+又はV5+である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記リガンドが、アミノ酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記リガンドが、グリシン、セリン、アルギニン、シスチン、及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記リガンドが、一塩基性カルボン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記リガンドが、ギ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ピルビン酸、及びt-桂皮酸からなる群から選択される一塩基性カルボン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記リガンドが、二塩基性カルボン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記リガンドが、炭酸、イタコン酸、マロン酸、及び酒石酸からなる群から選択される二塩基性カルボン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記リガンドが、酒石酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記リガンドが、カルバメートである、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記リガンドが、ヒドロキサム酸又はヒドロキサムエステルである、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記リガンドが、スベロヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、及びアセトヒドロキサム酸エチルからなる群から選択されるヒドロキサム酸又はヒドロキサムエステルである、請求項16に記載の方法。
【請求項33】
前記リガンドが、脂肪族アミドである、請求項16に記載の方法。
【請求項34】
前記リガンドが、ヒドロキシ尿素である、請求項16に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、前記水、前記酸化剤、前記金属イオン求電子剤、及び前記粒子状研磨剤からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項36】
前記酸化剤が、過酸化水素であり、前記金属イオン求電子剤が、V4+であり、前記リガンドが、酒石酸である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第63/188,305号(2021年5月13日出願)の優先権を主張し、その非仮出願であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
硬質ワイドバンドギャップ材料の製造は、炭化ケイ素(silicon carbide、SiC)除去の速度によって制限される。除去速度を増加させるためには、炭化ケイ素材料の表面において、軟質であるが緻密な酸化物層の形成を可能にしなければならない。この層は、機械摩耗(研磨パッドの表面上の硬質研磨剤及び凹凸による)によって除去される。そのような機械摩耗プロセスは、非常に高い作業圧力及び摺動速度を使用する傾向がある。この酸化物層の形成は、典型的には、炭化ケイ素基板上の表面力を弱める強酸化剤過マンガン酸カリウム(KMnO)の添加によって達成される。
【0003】
過マンガン酸塩の強い腐食性に起因して、また、研磨機器が過マンガン酸塩に長時間の晒された後に著しく変色する(例えば、紫色に変わる)傾向があるという事実に起因して、基板レベルの欠陥の最終的な数を減少させながら、除去速度も向上させ、変色を引き起こさない、あまり攻撃的でない条件で炭化ケイ素表面を活性化させることが産業界の一部に強く望まれている。現在まで、完全に満足のいく解決策は見出されていない。
【0004】
上記の議論は、一般的な背景情報のために提供されているに過ぎず、特許請求の範囲の主題の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図していない。
【発明の概要】
【0005】
炭化ケイ素表面を研磨するための方法が提供される。炭化ケイ素表面は、水、酸化剤、及び求電子剤の組成物に晒されている間に粒子状研磨剤で研磨される。方法は、刺激の強い化学物質を利用せずに、従来の方法と競合するか、又はそれよりも優れた材料除去速度(material removal rate、MRR)を提供する。方法のいくつかの開示される実施形態の実践において実現され得る利点は、従来のKMnO方法と競合するか、又はそれよりも優れているが、そのような強力な変色性及び腐食性試薬を利用しない、材料除去速度を提供することである。残留物質はまた、より環境に優しい。
【0006】
第1の実施形態では、炭化ケイ素表面を研磨するための方法が提供される。方法は、炭化ケイ素表面を、(1)水、(2)酸化剤、(3)求電子剤、及び(4)粒子状研磨剤を含む組成物に晒すことと、炭化ケイ素表面が組成物に晒されている間に、炭化ケイ素表面を研磨することと、を含む、方法。
【0007】
第2の実施形態では、炭化ケイ素表面を研磨するための方法が提供される。方法は、炭化ケイ素表面を、(1)水、(2)酸化剤、(3)リガンドを含む金属イオン求電子剤、及び(4)粒子状研磨剤を含む組成物に晒すことと、炭化ケイ素表面が組成物に晒されている間に、炭化ケイ素表面を研磨することと、を含む、方法。
【0008】
本発明のこの簡単な説明は、1つ以上の例示的な実施形態に従って本明細書で開示される主題の簡単な概要を提供することのみを意図しており、特許請求の範囲を解釈するためのガイドとして、又は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を定義若しくは限定するための指針としての役割を果たすものではない。この簡単な説明は、発明を実施するための形態において以下で更に説明される概念の例示的な選択を簡略化された形態で紹介するために提供される。この簡単な説明は、特許請求の範囲の主題の主要な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求の範囲の主題の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図するものでもない。特許請求の範囲の主題は、背景技術において言及されたいずれか又は全ての欠点を解決する実施態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の特徴が理解され得るように、本発明の詳細な説明は、特定の実施形態を参照することによって行われ得、それらの一部は、添付の図面に例示されている。しかしながら、図面は、本発明の特定の実施形態のみを例示し、したがって、本発明の範囲は、他の等しく有効な実施形態を包含するため、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意されたい。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の特定の実施形態の特徴を例示することに重点が置かれている。図面において、同様の数字は、様々な図を通して同様の部分を示すために使用される。したがって、本発明を更に理解するために、図面と関連して読まれる以下の詳細な説明が参照され得る。
図1】開示される方法を使用した炭化ケイ素表面の活性化の例示である。
図2】開示される方法とともに使用するための非金属求電子剤の例を図示する。
図3】金属イオン求電子剤とともに使用するための様々なリガンドの例を図示する。
図4】開示される方法とともに使用される2つの非金属求電子剤の材料除去速度(MRR)を図示するグラフである。従来のフェロKMnO MRRが灰色で示されている。
図5】4つの異なるリガンドとともに使用された銅金属求電子剤の材料除去速度(MRR)を図示するグラフである。従来のフェロKMnO MRRが灰色で示されている。
図6】2つの異なるリガンドとともに使用されるバナジウム金属求電子剤の材料除去速度(MRR)を図示するグラフである。従来のフェロKMnO MRRが灰色で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、あまり攻撃的でない物理化学的環境下で除去速度を向上させる特定の添加剤の添加時に調整可能な性能を有する炭化ケイ素研磨のためのスラリー配合物を提供する。より具体的には、本開示は、炭化ケイ素研磨プロセス、及び、特に、平坦化を含む化学機械研磨(chemical-mechanical polishing、CMP)プロセスの開発を促進する配合物及びシステムを提供する。
【0011】
概して、配合物は、(1)水、(2)有機金属錯体リガンド交換(Organometallic Complex Ligand Exchange、OMC-LE)を介してリガンドでキレート化された金属イオンなどの水溶性求電子剤(E)又は非金属求電子剤、(3)酸化剤(Ox)、及び(4)粒子状研磨剤を含む。アルミナなどの粒子状研磨剤は、機械的研磨力が適用されている間(例えば、回転パッド又はブラシによって適用される3psi~7psi(0.21bar~0.48bar))、等電点を上回るpH(例えば、pH4~5又は8~9のpHなどの、>2)で使用される。研磨剤は、概して、約2%~約5%(重量/重量)の濃度で存在し、非水溶性である。一実施形態では、研磨剤は、100nm未満の平均直径を有するアルミナナノ粒子である。一実施形態では、配合物は、水溶性求電子剤、酸化剤、及び水からなる。別の実施形態において、研磨剤は、シリカ、ジルコニア、チタニア、ダイヤモンド、又は金属酸化物のナノ粒子である。研磨方法は、概して、室温(例えば、20℃~25℃)で実施される。
【0012】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、図1は、開示される方法を理解することを補助するために、1つの考えられる機構を図示する。図1のパネルAは、水溶性求電子剤(E)と錯体形成する炭化ケイ素基板の酸化物表面を示す。表面ヒドロキシル基は、添加剤-表面界面間の錯体化層内で脱プロトン化され、高度にアニオン性であり(すなわち、それらは求核剤として機能する)、Si-C結合の弱化を結果的にもたらす。パネルBは、酸化剤(oxidizing agent、Ox)によって酸化されている活性化された表面を示す。パネルCでは、研磨剤(例えば、アルミナ)が最上シリコン層を遊離させて、パネルDに示される研磨された表面を生成する。
【0013】
好適な酸化剤の例としては、過酸化水素(H)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO(KPS))、及び過硫酸アンモニウム(APS、(NH)などの過硫酸塩が挙げられる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、これらの酸化剤は、インサイチュでヒドロキシルラジカルを生成すると考えられる。酸化剤は、概して、1重量%~10重量%の濃度で存在する。一実施形態では、酸化剤は、1重量%~5重量%の濃度で存在する。更に別の実施形態では、酸化剤は、2重量%~4重量%の濃度で存在する。
【0014】
図2を参照すると、1つの実施形態では、水溶性求電子剤は、アルデヒド、ハロゲン化アシル(若しくはそれからのカルボン酸)、又はホウ素系化合物などの、非金属求電子剤である。ホウ素系化合物としては、例えば、エチルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、p-トリルボロン酸、フェニルボロン酸、ホウ砂、又はホウ酸などの、ボロン酸が挙げられる。他の好適なホウ素系化合物としては、ボログリシン、又はホウ酸トリメチル若しくはホウ酸トリエチルなどのホウ酸塩が挙げられる。これらの超分子分子の電子不足の性質に起因して、炭化ケイ素基板からの増強された求核攻撃が起こり得る。
【0015】
OMC-LEの場合、有機金属錯体のM中心は、炭化ケイ素基板からの求核攻撃を受ける求電子剤として作用する。更に、有機金属錯体は、酸化剤からのヒドロキシルラジカルのインサイチュ形成を容易にする。
【0016】
好適な金属イオンの例としては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+などのII族金属、及びCu2+、Zn2+などの二価遷移金属が挙げられる。好適な金属イオンの更なる例としては、Fe3+、Co3+、Ti4+、V4+、V5+、Cr6+、Mo6+、及びMn7+が挙げられる。概して、金属は、水溶性であるか、又はリガンド若しくはミセルとの錯体形成によって水溶性にされる。金属は、概して、0.005重量%~0.05重量%の濃度で存在する。別の実施形態では、金属は、0.005~0.015重量%の濃度で存在する。
【0017】
図3を参照すると、好適なリガンドの例としては、アミノ酸(例えば、グリシン、セリン、アルギニン、シスチン、フェニルアラニンなど)、一塩基性カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ピルビン酸、t-桂皮酸など)、二塩基性カルボン酸(例えば、炭酸、イタコン酸、マロン酸、酒石酸など)、カルバメート(例えば、tert-ブチルN-(ベンジルオキシ)カルバメート)、ヒドロキサム酸及びヒドロキサムエステル(例えば、スベロヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、エチルアセトヒドロキサム酸)、ヒドロキシ尿素及び脂肪族アミド(例えば、ブチルアミド)が挙げられる。概して、リガンドは、水溶性である。リガンドは、約1:5~約1:20(金属:リガンド)の重量比で存在する。別の実施形態では、リガンドは、約1:8~約1:12(金属:リガンド)の重量比で存在する。更に別の実施形態では、リガンドは、1:10(金属:リガンド)の重量比で存在する。
【0018】
開示される組成物は、従来のフェロKMnO研磨技術と競合し、場合によっては、より優れた材料除去速度(MRR)を有する。図4図6は、灰色で示された従来のKMnOの典型的なMMRを図示する。
【0019】
図4は、対照(実施例1参照)、ホウ酸の実施例(実施例11参照)、及びホウ砂の実施例(実施例12参照)を図示する。Cu-ホウ酸及びCu-ホウ砂の両方の実施例は、同一条件下で従来のKMnO MRR(灰色で示される)よりも性能が優れていた。
【0020】
図5は、対照(実施例1参照)、並びにグリシンリガンド(実施例2)、セリンリガンド(実施例3)、シスチンの実施例(実施例5)、及びサリチルヒドロキサム酸の実施例(実施例6)を含む3つの銅リガンドの実施例を図示する。Cu-セリンは、同一条件下で従来のKMnO MRR(灰色で示される)よりも性能が優れている。Cu-グリシン、Cu-シスチン、及びCu-サリチルヒドロキサム酸は、従来のKMnO技術と競合するが、これらの従来の試薬と関連付けられた欠点を回避する。
【0021】
図6は、対照(実施例1参照)、並びにセリンリガンド(実施例7)及び酒石酸リガンド(実施例8)を含む2つのバナジウムリガンドの実施例を図示する。V-セリンの実施例は、従来のフェロKMnO技術と競合するが、これらの従来の試薬と関連付けられた欠点を回避する。V-酒石酸の実施例は、同一条件下で従来のKMnO MRR(灰色で示される)よりも性能が優れており、材料除去速度(MRR)はほぼ2倍である。
【0022】
詳細な実施例
全ての研磨試験は、Allied METPREP(商標)研磨機で、繰り返し再研磨された直径100mm及び厚さ350mmの4H-SiC N型ウェハを使用して実行された。200mm回転プラテン上でDupont SUBA(R)800-II-12 X-Y溝付きパッドを使用した。3M(PB33A-1)毛ブラシコンディショニングディスクを、研磨の持続時間中はインサイチュコンディショニングモードで、研磨後のエクスサイチュディスクコンディショニング中は1分間使用した。ウェハのSi面を、α-Alナノ粒子(nanoparticle、NP)、水、過酸化水素、及び各実施例に説明されるそれぞれの添加剤(有機金属錯体又は求電子性添加剤)からなるスラリーを使用して10分間研磨した。プロセス圧力は、3~7PSIの範囲であった。相対的な摺動速度は、0.25~1.05m/秒の範囲であった。スラリー流量を、25cc/分で一定に保った。実施例が表1に要約される。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例1-対照(求電子剤なし)
3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、及び3%の過酸化水素からなる炭化ケイ素(SiC)スラリーを実験に使用した。200mm回転プラテン上でDupont SUBA(R)800-II-12 X-Y溝付きパッドを使用した。3M(PB33A-1)毛ブラシコンディショニングディスクを、研磨の持続時間中はインサイチュコンディショニングモードで、研磨後のエクスサイチュコンディショニング中は1分間使用した。直径100mm及び厚さ350μmを有する4H-SiC N型ウェハのシリコン面を研磨した。プロセス圧力は、3~7PSIの範囲であった。摺動速度を、1.05m/秒で一定に保った。スラリー流量を、25cc/分で一定に保った。
【0025】
観察されたSiC除去速度は、毎時348~532ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時348ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、より低いダウンフォースからの35%の増加に対応して、毎時532ナノメートルの平均除去速度を与えた。
【0026】
実施例2-Cu2+-グリシン
実施例2は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びCu2+-グリシン(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0027】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、毎時936~1,198ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時936ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、より低いダウンフォースからの22%の増加に対応して、毎時1,198ナノメートルの平均除去速度を与えた。図5を参照されたい。
【0028】
実施例3-5%アルミナを含むCu2+-セリン
実施例3は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが5%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びCu2+-セリン(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0029】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、7PSIで毎時1563ナノメートルであった。
【0030】
実施例4-3%アルミナを含むCu2+-セリン
実施例4は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びCu2+-セリン(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0031】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、毎時1,371~1,709ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時1,371ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、より低いダウンフォースからの20%の増加に対応して、毎時1,709ナノメートルの平均除去速度を与えた。図5を参照されたい。
【0032】
実施例5-Cu2+-シスチン
実施例5は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びCu2+-シスチン(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0033】
研磨後、プロセス条件に応じて、7PSI、1.05の摺動速度、及び25cc/分の流量で観察されたSiC除去速度は、883nm/時であった。図5を参照されたい。
【0034】
実施例6-Cu2+-サリチルヒドロキサム酸
実施例6は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びCu2+-サリチルヒドロキサム酸(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0035】
研磨後、プロセス条件に応じて、7PSI、1.05の摺動速度、及び25cc/分の流量で観察されたSiC除去速度は、753nm/時であった。図5を参照されたい。
【0036】
実施例7-V4+-セリン
実施例7は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びV4+-セリン(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0037】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、毎時926~1,132ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時926ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、より低いダウンフォースからの18%の増加に対応して、毎時1,132ナノメートルの平均除去速度を与えた。図6を参照されたい。
【0038】
実施例8-V4+-酒石酸
実施例8は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びV4+-酒石酸(0.01%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0039】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、毎時1,837~2,152ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時1,837ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、より低いダウンフォースからの15%の増加に対応して、毎時2,152ナノメートルの平均除去速度を与えた。図6を参照されたい。
【0040】
実施例9-V4+-酒石酸
実施例9は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びV4+-酒石酸(0.02%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0041】
研磨後、プロセス条件に応じて、7PSI、1.05の摺動速度、及び25cc/分の流量で観察されたSiC除去速度は、999nm/時であった。
【0042】
実施例10-V4+-酒石酸
実施例10は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3%の過酸化水素、及びV4+-酒石酸(0.05%の金属、0.1%のリガンド)から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0043】
研磨後、プロセス条件に応じて、7PSI、1.05の摺動速度、及び25cc/分の流量で観察されたSiC除去速度は、1442nm/時であった。
【0044】
実施例11-ホウ酸
実施例11は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3.0%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3.0%の過酸化水素、及び1.0%のホウ酸から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。図4を参照されたい。
【0045】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、毎時1,427~1,904ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時1,427ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、より低いダウンフォースからの25%の増加に対応して、毎時1,904ナノメートルの平均除去速度を与えた。
【0046】
実施例12-ホウ砂
実施例12は、炭化ケイ素(SiC)スラリーが3.0%のα-Alナノ粒子(NP)、水、3.0%の過酸化水素、及び1.0%のホウ砂から構成されたことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。
【0047】
研磨後、プロセス条件に応じて、7PSI、1.05の摺動速度、及び25cc/分の流量で観察されたSiC除去速度は、2446nm/時であった。図4を参照されたい。
【0048】
実施例13-過硫酸アンモニウム
実施例13は、Hの代わりに5%の過硫酸アンモニウムを使用し、かつpHが4.0であったことを除いて、実施例1と実質的に同一であった。スラリーは、3.0%のα-Alナノ粒子(NP)、水、上述の5%(m/m)過硫酸アンモニウム、及びCu2+-セリン(0.01%金属0.1%リガンド)を含んでいた。
【0049】
研磨後、プロセス条件に応じて、観察されたSiC除去速度は、毎時1,162~1,408ナノメートルの範囲であった。3PSIでは、SiC除去速度は、平均して毎時1,162ナノメートルであった。7PSIにおける比較は、毎時1,408ナノメートルの平均除去速度を与えた。
【0050】
本明細書は、最良の形態を含めて本発明を開示するために、また、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用すること、並びに任意の組み込まれた方法を実施することを含めて、当業者が本発明を実施することを可能にするために、例を使用する。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】