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特表2024-518577植物生長促進効能を有する微細藻類菌株およびその用途
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  • 特表-植物生長促進効能を有する微細藻類菌株およびその用途 図1
  • 特表-植物生長促進効能を有する微細藻類菌株およびその用途 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】植物生長促進効能を有する微細藻類菌株およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
C12N1/12 C ZNA
C12N1/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570310
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 KR2022011885
(87)【国際公開番号】W WO2023043063
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0125207
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウォン・ソプ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョン‐ウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ユナ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヘ‐ウォン
(72)【発明者】
【氏名】オ,ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギュリ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ・ヨン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA84X
4B065BC07
4B065BD15
4B065CA49
(57)【要約】
本出願は植物生長促進効能を有する新規な微細藻類菌株およびその用途に関するものであって、一様相による新規なクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株は発酵排気ガスの存在下で培養時成長速度が速く光合成効率が高くて微生物発酵による排気ガスを効率的に低減させることができ、菌株の培養物または培養上清液などを植物に処理すれば植物の生長を促進する効能があって植物用肥料として使用できるため、環境に優しく産業的活用度が高い新たな炭素低減技術として有用に活用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株。
【請求項2】
受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、植物生長促進用組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の植物生長促進用組成物を含む植物用肥料。
【請求項4】
受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株を発酵排気ガスの存在下で培養する段階を含む、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法。
【請求項5】
前記発酵排気ガスは、0.5~20%(v/v)の二酸化炭素を含むものである、請求項4に記載のクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法。
【請求項6】
前記発酵排気ガスは、微生物発酵によって発生したものである、請求項4に記載のクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法。
【請求項7】
前記培養する段階は、20~40℃で行うことである、請求項4に記載のクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法。
【請求項8】
前記培養する段階は、30日以下で行うことである、請求項4に記載のクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法。
【請求項9】
受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む植物生長促進用組成物を製造する段階;および
前記植物生長促進用組成物を植物に接触させる段階を含む、植物生長を促進する方法。
【請求項10】
前記接触させる段階は、前記植物生長促進用組成物を土壌、植物、または植物の種子に処理する方法によって行われることである、請求項9に記載の植物生長を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年9月17日付韓国特許出願第10-2021-0125207号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、植物生長促進効能を有する新規な微細藻類菌株およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0003】
バイオ産業の規模が拡大するにつれて微生物の発酵技術を基盤にして多様な産物を作り出すことができるようになり、特に、最近、ホワイトバイオ(White Bio)分野の成長に伴い、微生物発酵分野の産業も大きく成長している。但し、発酵は基本的に二酸化炭素を排出する工程であるため、微生物発酵分野の産業が発達するにつれて発酵によって発生する温室ガスの排出量が大きく増大するという問題点が随伴されている。これと共に全世界的に気候変動問題が台頭するにつれて、気候変動の主要原因として指目される温室ガスを低減するための努力が多角的に行われているところ、微生物発酵によって発生する温室ガスを低減することも主要課題になっている。
【0004】
現在まで主に温室ガスの排出自体を抑制して炭素低減に寄与することができる技術が商用化されているが、微生物発酵工程上で二酸化炭素の排出量を減少させることは非常に難しいことと思われている。また、まだ温室ガスを直接捕集して低減することができる技術の開発は微小な水準であり、特に、二酸化炭素は大気中に非常に低濃度で存在し反応性も非常に低い安定な物質であるため、既に排出された二酸化炭素を低減する技術の開発に困難がある。これと関連して、生物学的炭素低減技術の一種として光合成の可能な生物を用いる方法が考慮されるが、炭素低減目的以外に収益構造が不明で実際産業に適用しにくいという問題がある。よって、環境親和的な方法で微生物発酵によって発生する二酸化炭素を減少させることができながらも産業的に適用可能な炭素低減技術の開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の目的は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株を提供することである。
【0006】
本出願の他の目的は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、植物生長促進用組成物を提供することである。
【0007】
本出願の他の目的は、前記植物生長促進用組成物を含む植物用肥料を提供することである。
【0008】
本出願の他の目的は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を発酵排気ガスの存在下で培養する段階を含む、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法を提供することである。
【0009】
本出願の他の目的は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む植物生長促進用組成物を製造する段階;および前記植物生長促進用組成物を植物に接触させる段階を含む、植物生長を促進する方法を提供することである。
【0010】
本出願の他の目的は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の植物用肥料製造のための用途、または植物生長促進のための用途を提供することである。
【0011】
本出願の他の目的は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、組成物の植物生長促進のための植物用肥料製造のための用途、または植物生長促進のための用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願で開示されるそれぞれの説明および実施形態はそれぞれの他の説明および実施形態にも適用できる。即ち、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、下記記述された具体的な叙述によって本出願の範疇が制限されると見られない。また、当該技術分野の通常の知識を有する者は通常の実験のみを使用して本出願に記載された本出願の特定様態に対する多数の等価物を認知するか確認することができる。また、このような等価物は本出願に含まれることと意図される。
【0013】
一様相は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株を提供する。
【0014】
前記植物は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)属の植物であってもよい。例えば、前記シロイヌナズナ属植物はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)であってもよいが、これに制限されない。
【0015】
本明細書で使用された用語、“植物生長”は植物の種が発芽して根、幹、葉を出すかまたはその後次第に大きさと重さを増していく過程を意味し、用語、“植物生長促進”は植物の種の発芽または発芽した植物の大きさおよび/または重量の増加を促進することを意味する。
【0016】
前記クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株は配列番号1の18S rRNA塩基配列を有するものであってもよいが、これに制限されるわけではない。例えば、前記クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株は配列番号1の塩基配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の配列同一性を示す塩基配列から構成される18S rRNAを有するものであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0017】
他の様相は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、植物生長促進用組成物を提供する。
【0018】
前記クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株は前記の通りである。
【0019】
前記菌株の“培養物”は前記菌株を培養して生成された産物を指すものであって、具体的に、菌株を含む培養液であってもよく、前記“培養上清液”は前記菌株の培養物または培養液から菌株が除去された培養濾液であってもよい。前記“濃縮物”は、前記培養物または培養上清液を濃縮したものを意味することができる。前記“乾燥物”は前記菌株の培養物、培養上清液またはその濃縮物から水分が除去されたものであって、例えば、前記菌株の乾燥菌体形態であってもよいが、これに制限されるわけではない。また、前記乾燥物の“破砕物”は前記水分が除去された乾燥物を破砕した結果物を総称するものであって、例えば、前記菌株の乾燥菌体粉末であってもよいが、これに制限されるわけではない。前記菌株の培養物は培養培地に前記菌株を接種し、当業界に公知された培養方法によって製造することができ、または前記菌株を発酵排気ガスの存在下で培養する段階を含む方法で製造することができる。前記濃縮物、その乾燥物またはその破砕物は、当業界に公知された微細藻類またはその培養物の処理または乾燥方法によって製造することができる。
【0020】
前記植物はシロイヌナズナ(Arabidopsis)属の植物のことであってもよい。例えば、前記シロイヌナズナ属植物はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)であってもよいが、これに制限されない。
【0021】
前記植物生長促進用組成物は、保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、凍結保護剤、または賦形剤などを含有することができる。
【0022】
前記保存剤、安定化剤、または賦形剤は前記組成物の品質低下(deterioration)を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであってもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語、“品質低下”は、組成物などに含まれるクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の数減少、活性減少、またはこれらの組み合わせを含むことであってもよい。
【0024】
例えば、前記組成物は組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量の保存剤、安定化剤、または賦形剤を含むことによって、自然状態に存在するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株と異なり、組成物内でクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株がより長い期間生存するか活性が維持されるのであり得る。
【0025】
前記保存剤、安定化剤、または賦形剤は、前記組成物の品質低下を減少させることができるものであれば、当業界で通常使用されるものが制限なく使用できる。例えば、前記安定化剤は、アルギン酸塩(alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、カゼイン、カゼインナトリウム、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)、ペクチン、ゼラチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストラン、シクロデキストリンおよびデンプンから構成される群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0026】
前記凍結保護剤は、前記組成物が凍結乾燥された状態の時、組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであってもよい。例えば、自然状態に存在するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株と異なり、前記組成物は凍結乾燥された状態で組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量の凍結保護剤を含むことによって、凍結乾燥された組成物内でクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株がより長い期間生存するか活性が維持されるのであり得る。
【0027】
前記凍結保護剤は、凍結乾燥された状態の組成物の品質低下を減少させるためのものであれば、当業界で通常使用されるものが制限なく使用できる。例えば、前記凍結保護剤は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)、グルコース、トレハロース、マルトデキストリン、デキストリン、スキムミルク、およびデンプンから構成される群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0028】
前記組成物は、浸漬、噴霧または混合して植物の肥料に添加できる。
【0029】
また他の様相は、前記植物生長促進用組成物を含む植物用肥料を提供する。
【0030】
前記植物生長促進用組成物は前記の通りである。
前記植物は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)属の植物のことであってもよい。例えば、前記シロイヌナズナ属植物はシロイヌナズナ(Arabidopsisthaliana)であってもよいが、これに制限されない。
【0031】
前記植物用肥料は、当業界で通常使用される製造方法によって製造することができる。例えば、前記植物用肥料は当業界で通常使用される賦形剤または担体をさらに含むことができ、当業界に公知された通常の植物用肥料の剤形に製造することができる。
【0032】
前記植物用肥料は、化学肥料を代替することができる環境に優しい肥料であってもよい。
【0033】
前記植物用肥料は、植物の生長を促進するために使用できる。
【0034】
また他の様相は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を発酵排気ガスの存在下で培養する段階を含む、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を培養する方法を提供する。
【0035】
前記クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株は前記の通りである。
【0036】
前記発酵排気ガスは、0.5~20%(v/v)の二酸化炭素を含むものであってもよい。例えば、前記発酵排気ガスは、0.5~18%(v/v)、0.5~16%(v/v)、0.5~14%(v/v)、0.5~12%(v/v)、0.8~18%(v/v)、0.8~16%(v/v)、0.8~14%(v/v)、または0.8~12%(v/v)の二酸化炭素を含むものであってもよい。
【0037】
前記発酵排気ガスは、微生物発酵によって発生されたものであってもよい。例えば、前記発酵排気ガスは、微生物発酵によって発生された二酸化炭素を含むものであってもよい。前記微生物は、発酵または培養過程中に二酸化炭素を発生させる全ての微生物を制限なく含むことができる。
【0038】
前記培養する段階は、発酵排気ガスを発酵槽に供給しながら行うことであってもよい。例えば、前記発酵排気ガスは微生物発酵によって発生されたガスをろ過して発酵槽に供給することであってもよい。前記発酵排気ガスは発酵槽に0.001~1vvmの速度で供給されるのであってもよい。例えば、前記発酵排気ガスは発酵槽に0.001~1vvm、0.001~0.7vvm、0.001~0.5vvm、0.001~0.3vvm、0.001~0.2vvm、0.005~1vvm、0.005~0.7vvm、0.005~0.5vvm、0.005~0.3vvm、0.005~0.2vvm、0.01~1vvm、0.01~0.7vvm、0.01~0.5vvm、0.01~0.3vvm、または0.01~0.2vvmの速度で供給されるのであってもよい。
【0039】
前記培養する段階は20~40℃で行うことであってもよい。例えば、前記培養する段階は20~30℃で行うことであってもよい。
【0040】
前記培養する段階は光の存在下で行うことであってもよい。例えば、前記培養する段階は、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株が成長するのに十分な量の光源を照射しながら行うことであってもよい。前記光源は例えばLED光源であってもよいが、これに制限されない。
【0041】
前記培養する段階は30日以下に行うことであってもよい。例えば、前記培養する段階は、3~30日、3~20日、3~15日、3~12日、または3~10日間行うことであってもよい。
【0042】
前記培養する段階は、特にこれに制限されないが、公知された回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などによって行うことができる。本出願のクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の培養に使用される培地およびその他の培養条件は通常のクロレラ・ブルガリス菌株の培養に使用される培地であれば特別な制限なくいずれも使用することができ、例えば、BG-11培地を使用することができる。具体的に、本出願のクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸および/またはビタミンなどを含有した通常の培地内で温度、pHなどを調節しながら培養することができる。具体的に、塩基性化合物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例:リン酸または硫酸)を使用して適正pHを調節することができるが、これに制限されるわけではない。
【0043】
また他の様相は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む植物生長促進用組成物を製造する段階;および前記植物生長促進用組成物を植物に接触させる段階を含む、植物生長を促進する方法を提供する。
【0044】
前記クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株、および前記植物生長促進用組成物は前記の通りである。
【0045】
前記クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の培養物または培養上清液は、当業界に公知された適した方法を用いて回収するものであってもよい。また、前記植物生長促進用組成物を製造する段階は当業界に公知された適した方法を用いることであってもよい。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化およびHPLCなどを使用することができ、精製工程をさらに含むことであってもよく、当業界に公知された微細藻類またはその培養物の濃縮、乾燥などの方法を含むことができる。
【0046】
前記接触させる段階は、前記植物生長促進用組成物を土壌、植物、または植物の種子に処理する方法によって行われることであってもよい。例えば、前記接触させる段階は前記植物生長促進用組成物を植物の葉に噴霧する方法で行われることであってもよいが、これに制限されない。
【0047】
また他の様相は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の植物用肥料製造のための用途、または植物生長促進のための用途を提供する。
【0048】
また他の様相は、受託番号KCTC14659BPで寄託され、植物生長促進効能を有するクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株;前記菌株の培養物または培養上清液;前記培養物または培養上清液の濃縮物;前記培養物、培養上清液または濃縮物の乾燥物;および前記乾燥物の破砕物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、組成物の植物生長促進のための植物用肥料製造のための用途、または植物生長促進のための用途を提供する。
【発明の効果】
【0049】
一様相による新規なクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002菌株は発酵排気ガスの存在下で培養時成長速度が速く光合成効率が高くて微生物発酵による排気ガスを効率的に低減させることができ、前記菌株の培養物または培養上清液などを植物に処理すれば植物の生長を促進する効能があって植物用肥料として使用できるため、環境に優しく産業的活用度が高い新たな炭素低減技術として有用に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】クロレラ・ブルガリス菌株各4種の培養後、乾燥細胞重量(dry cell weight:DCW)を測定した結果グラフである。
図2】DW、BG-11液体培地、Acadian 29、またはクロレラ・ブルガリス菌株各4種の培養上清液の希釈液をそれぞれ処理した後、シロイヌナズナの地上部重量を測定した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を、実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるのではない。
【実施例
【0052】
実施例1.新規な野生型緑藻類の分離
大韓民国京畿道水原市の河川の計5箇所の地域から試料を採取し、ダイレクトプレーティング(direct plating)技法を用いて緑藻類(green algae)に属する微細藻類を分離した。
【0053】
具体的に、試料を採取後、2~3日以内にこれから微細藻類を分離し、顕微鏡観察を通じて緑色を帯び球形の形態(morphology)を含む試料を微生物分離用BG-11固体培地(1.5g/L NaNO、40mg/L KHPO、75mg/L MgSO・7HO、36mg/L CaCl・2HO、6mg/L クエン酸(citric acid)・HO、6mg/L クエン酸鉄アンモニウム(ferric ammonium citrate)、1mg/L NaEDTA・2HO、20mg/L NaCO、2.86mg/L HBO、1.81mg/L MnCl・4HO、0.22mg/L ZnSO・7HO、0.39mg/L NaMoO・2HO、0.079mg/L CuSO・5HO、0.049mg/L Co(NO・6HO、15g/L アガー(agar))に塗抹した。得られたコロニーは抗生剤カクテルミックス(cocktail mix)溶液(0~500mg/L 硫酸ストレプトマイシン(Streptomycin sulfate)、0~500mg/L アンピシリン(Ampicillin)、0~500mg/L 硫酸カナマイシン(Kanamycin sulfate))の濃度を調節して投入したBG-11固体培地で継代培養を通じて純粋分離した。
【0054】
実施例2.分離した微細藻類のDNA配列同定
前記実施例1から分離した微細藻類の分子生物学的同定のために18S rRNA配列を分析した。
【0055】
具体的に、純粋分離されたコロニーからDNAを抽出した後、18S rRNA部分の遺伝子増幅用プライマー(表1)を用いてPCRを行った。
【0056】
【表1】
【0057】
PCR反応は95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で2分間重合を35回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。増幅された反応液を活用して塩基配列を分析した結果、約1,565bp大きさの塩基配列を確保した(配列番号1)。これをNCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)でBLAST検索した結果、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)KMMCC FC-42菌株と99.68%の相同性を有することを確認して、前記分離された菌株をクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)CD02-3002と命名し、2021年8月23日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国生命工学研究院生物資源センター(Korean Collection for Type Cultures:KCTC)に寄託して受託番号KCTC14659BPの付与を受けた。
【0058】
実施例3.発酵排気ガス基盤の光培養条件下でクロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の成長能確認
分離された新規菌株クロレラ・ブルガリスCD02-3002が発酵排気ガス基盤の光培養条件下で成長可能な菌株なのか確認するために、様々な種のクロレラ・ブルガリス菌株と成長能を比較評価した。
【0059】
対照群菌株としてUTEX Culture Collection of Algae at UT-Austin機関から分譲を受けたクロレラ・ブルガリスUTEX265菌株を使用し、比較群として前記実施例1に記載されたものと同様な方法で分離したクロレラ・ブルガリスCD11-2001およびCD11-2003菌株を使用した。それぞれの菌株は滅菌されたBG-11液体培地(1.5g/L NaNO、40mg/L KHPO、75mg/L MgSO・7HO、36mg/L CaCl・2HO、6mg/L クエン酸(citric acid)・HO、6mg/L クエン酸鉄アンモニウム(ferric ammonium citrate)、1mg/L NaEDTA・2HO、20mg/L NaCO、2.86mg/L HBO、1.81mg/L MnCl・4HO、0.22mg/L ZnSO・7HO、0.39mg/L NaMoO・2HO、0.079mg/L CuSO・5HO、0.049mg/L Co(NO・6HO)100mLに接種した後、LED光源で光を持続的に照射し、1~10%(v/v)濃度のCOを0.01~0.1vvmで供給しながら4~7日間培養した。その後、培養液を滅菌された新しいBG-11液体培地900mLに接種し、LED光源で光を持続的に照射しながら3~5日間培養し、前記培養期間の間に発酵排気ガスを空気ろ過器(air filter)を経て前記培養液に0.01~0.5vvmで直接供給した。発酵排気ガスは大腸菌(Escherichia coli)CJ181(KFCC 10902)菌株(米国公開特許US2008/0299644 A1)を5L発酵槽で培養温度30℃、培養pH6.9~7.1(アンモニア水でpH調整)、通気量0.5~1.0vvmおよび攪拌速度500~700rpmを維持しながら流加式で培養する間に発生するガスを使用した。
【0060】
培養終了後、それぞれの菌株培養液10mLを0.45μmフィルターでろ過した後、60℃オーブンで24時間乾燥した後、ろ過前フィルターの重量と、ろ過および乾燥以後乾燥された細胞を含むフィルターの重量差を計算して乾燥細胞重量(dry cell weight:DCW)値を算出した。
【0061】
その結果、図1に示したように、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株が分譲を受けたクロレラ・ブルガリス菌株(UTEX265)や新規分離した他のクロレラ・ブルガリス菌株(CD11-2001およびCD11-2003)に比べて顕著に高い乾燥細胞重量を有することを確認した。これによって、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株が他のクロレラ・ブルガリス菌株に比べて発酵排気ガス基盤の光培養条件下で成長速度が最も優れた菌株であることが分かった。
【0062】
実施例4.クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の培養上清液の植物生長促進効能確認
クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株の培養上清液の植物生長促進効能を確認するために、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を対象にして生長促進有無を評価した。
【0063】
具体的に、野生型シロイヌナズナ種子を70%エタノールで1分、1%NaOCl溶液で3分間表面殺菌後、滅菌された蒸留水で洗浄して準備した。シロイヌナズナは2日間冷蔵保管(4℃)後、床土((株)東部ファーム韓農)に植えた後、21℃恒温器で12時間は光を照射し、12時間は光を照射しない暗い状態で1週間程度栽培した。
【0064】
クロレラ・ブルガリスUTEX265、CD11-2001、CD02-3002、およびCD11-2003の計4種の菌株を滅菌されたBG-11液体培地200mLに接種後、LED光源を照射し1~10%(v/v)COを0.1vvmで持続的に供給しながら25℃で5~7日間培養した。培養された種培養物(seed culture)を滅菌されたBG-11液体培地1.8Lに接種し同一な条件で最大10日間培養した。培養終了後、培養物を遠心分離して各菌株の培養上清液を得た。
【0065】
植物生長促進効能を評価するために、栽培したシロイヌナズナに各菌株培養上清液の10~1000倍希釈液を1mL/plant水準で処理し、4日間隔で3回葉面施肥した。対照群として蒸留水(DW)を同一に処理した群に設定し、比較群として微細藻類光培養に使用した培地(BG-11液体培地)または商用化されている海藻抽出物液体肥料(Acadian 29)を同一に処理した群を追加した。シロイヌナズナの生長測定指標として地上部生体重(地上部重量)を測定した。各試験群別シロイヌナズナの8個体で反復実験を行って地上部生体重の平均値および標準偏差を計算して示した。
【0066】
その結果、図2に示したように、他のクロレラ・ブルガリス菌株は対照群に比べて生長促進効能が微小であるか殆どないことと示された反面、クロレラ・ブルガリスCD02-3002菌株は顕著に優れた生長促進効能を示し、これは商用化肥料であるAcadian29よりも顕著に優れた効能であることが分かった。
【0067】
以上の説明から、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者は本出願がその技術的思想や必須的特徴を変更せず他の具体的な形態に実施することができるのが理解できるはずである。これと関連して、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり限定的なものではないと理解しなければならない。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは後述の特許請求範囲の意味および範囲そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【0068】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)
受託番号:KCTC14659BP
受託日付:20210823
図1
図2
【配列表】
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【国際調査報告】