(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】アミドアミン組成物およびアミドアミン組成物を含む接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20240423BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240423BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240423BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240423BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240423BHJP
C08G 69/32 20060101ALI20240423BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240423BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K5/54
C08L101/00
C08L27/06
C08L63/00 Z
C08G69/32
C09J201/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570337
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 CN2021093881
(87)【国際公開番号】W WO2022236819
(87)【国際公開日】2022-11-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チェンロン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】脇田 啓二
(72)【発明者】
【氏名】リミン チョウ
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J001EB71
4J001EC05
4J001EC06
4J001EC14
4J001EC24
4J001EC27
4J001EC28
4J001EC29
4J001FB03
4J001FB05
4J001FC03
4J001FC05
4J001FD05
4J001GA12
4J001GB05
4J001JB02
4J002AA022
4J002BD042
4J002BD052
4J002BD082
4J002CD002
4J002CD052
4J002CD062
4J002CL031
4J002CL041
4J002EB027
4J002EH098
4J002EX076
4J002EX086
4J002FD028
4J002GJ01
4J040DC021
4J040DE021
4J040GA03
4J040GA07
4J040GA13
4J040GA31
4J040HA156
4J040HA306
4J040HB30
4J040JA03
4J040JB02
4J040KA23
4J040KA25
4J040KA26
4J040KA31
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA02
4J040MB05
4J040NA15
4J040NA16
4J040PA30
4J040QA02
(57)【要約】
アミドアミン組成物、アミドアミン組成物を含む接着剤組成物、およびアミドアミン組成物を調製するための方法が提供される。アミドアミン組成物は、ポリアミドアミンと、アミノシランまたはメルカプトシランのアンモニウム塩とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミドアミン組成物であって、
i)
a)少なくとも1つのアミド基または少なくとも1つのイミド基と、
b)少なくとも1つのアミノ基と
を有するアミドアミン;および
ii)
c)式(I):
【化1】
で表されるアミノシランのアンモニウム塩と、
d)式(II)
【化2】
で表されるメルカプトシランと
[これらの式中、R
1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基であり;R
2およびR
2’は、独立して、少なくとも1つの炭素原子を有する脂肪族鎖であり;R
3、R
3’、R
4、R
4’、R
5、およびR
5’は、独立して、1~20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基である]
からなる群から選択される1種以上のシラン
を含む、アミドアミン組成物。
【請求項2】
R
1が、-NH
2、-NHR
6、または-NR
7R
8の形態で少なくとも1つの窒素原子を有し、R
6、R
7、およびR
8が、独立して、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基である、請求項1記載のアミドアミン組成物。
【請求項3】
R
3、R
3’、R
4、R
4’、R
5、およびR
5’が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、または2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシから独立して選択される、請求項1記載のアミドアミン組成物。
【請求項4】
前記アミドアミンが、a)1種以上のカルボン酸と、b)少なくとも2つのアミノ基を有する1種以上のアミンとの反応生成物である、請求項1記載のアミドアミン組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸がジカルボン酸を含む、請求項4記載のアミドアミン組成物。
【請求項6】
前記アミンが1種以上のポリアルキレンポリアミンを含む、請求項4記載のアミドアミン組成物。
【請求項7】
前記アミドアミンが、a)末端一級アミノ基を有する1種以上のアミンと、b)α-オレフィンと不飽和カルボン酸無水物との1種以上のコポリマーとの反応生成物である、請求項1記載のアミドアミン組成物。
【請求項8】
前記アミンが、アミノメチルピペラジン、アミノエチルピペラジン、アミノプロピルピペラジン、アミノメチルイミダゾリジン、アミノエチルイミダゾリジン、アミノプロピルイミダゾリジン、ジメチルアミノプロピルアミン、またはジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミンから選択される、請求項7記載のアミドアミン組成物。
【請求項9】
前記α-オレフィンが、2~20個の炭素原子を有するα-オレフィンである、請求項7記載のアミドアミン組成物。
【請求項10】
前記不飽和カルボン酸無水物が、無水マレイン酸、無水イタコン酸、または無水シトラコン酸から選択される、請求項7記載のアミドアミン組成物。
【請求項11】
有機塩化物をさらに含む、請求項1記載のアミドアミン組成物。
【請求項12】
接着剤組成物であって、
i)請求項1記載のアミドアミン組成物と、
ii)硬化性ポリマー組成物と
を含む、接着剤組成物。
【請求項13】
前記硬化性ポリマー組成物がポリ(塩化ビニル)または塩化ビニルコポリマーを含む、請求項12記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記硬化性ポリマー組成物がエポキシポリマーを含む、請求項12記載の接着剤組成物。
【請求項15】
可塑剤をさらに含む、請求項12記載の接着剤組成物。
【請求項16】
充填剤、補強剤、接着促進剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、造核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、柔軟剤、液だれ防止剤、安定剤、金属光沢剤、金属被覆粒子、細孔形成剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動助剤、またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項12記載の接着剤組成物。
【請求項17】
前記添加剤が、前記接着剤組成物の総重量を基準として90%未満の重量パーセント割合を有する、請求項16記載の接着剤組成物。
【請求項18】
前記アミドアミン組成物が、前記接着剤組成物の総重量を基準として10%未満の重量パーセント割合を有する、請求項12記載の接着剤組成物。
【請求項19】
前記アミドアミン組成物が、前記接着剤組成物の総重量を基準として0.5%超8%未満の重量パーセント割合を有する、請求項18記載の接着剤組成物。
【請求項20】
請求項1記載のアミドアミン組成物を調製するための方法であって、
i)
a)少なくとも1つのアミド基と、
b)少なくとも1つのアミノ基と
を有するアミドアミンを準備すること;
ii)
c)式(I):
【化3】
で表されるアミノシランのアンモニウム塩と、
d)式(II)
【化4】
で表されるメルカプトシランと
[これらの式中、R
1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基であり;R
2およびR
2’は、独立して、少なくとも1つの炭素原子を有する脂肪族鎖であり;R
3、R
3’、R
4、R
4’、R
5、およびR
5’は、独立して、1~20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基である]
からなる群から選択される1種以上のシランを準備すること;および
iii)
前記アミドアミンと前記1種以上のシランとを混合して、前記アミドアミン組成物を形成すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アミドアミン組成物、アミドアミン組成物を含む接着剤組成物、およびアミドアミン組成物を調製するための方法に関する。
【0002】
背景技術
環境規制、特に揮発性有機化合物(VOC)排出抑制やカーボンニュートラルの達成に関する規制がより厳しくなってきていることに伴い、新エネルギー車、特に電気自動車(EV)の需要が高まっている。所定のバッテリーサイズおよび重量で長い走行距離を達成するためには、EVの軽量化が必要である。現在、アルミニウムは、エンジニアやデザイナーの間で優先して選択されている材料である。軽量アルミニウム合金は、様々なEVの内部において、エネルギーの節約および耐食性の改善のために、カチオン電着塗装(CED)コーティング処理された炭素鋼に代わる候補となっている。CEDコーティングが存在しないため、従来のポリ塩化ビニル(PVC)プラスチゾルをアルミニウム合金の表面に直接結合させることは非常に困難である。アルミニウム合金部材の表面に強く結合することができる接着剤およびコーティングに対する高い需要が存在する。
【0003】
以下の公開特許出願には、エポキシ2K(2液型)組成物と、接着剤またはインクコーティング用途におけるアルミニウム合金表面へのその良好な接着とが開示されている。
【0004】
公開特許出願1:欧州特許出願公開第3317329号明細書
公開特許出願2:欧州特許出願公開第1885764号明細書
【0005】
本開示では、PVCプラスチゾルまたはエポキシ樹脂と混合した後、金属表面への改善された接着を達成することができるアミドアミン組成物が提供される。また、アミドアミン組成物を含む接着剤組成物、およびアミドアミン組成物を調製するための方法も提供される。
【0006】
発明の概要
本開示の1つの目的は、硬化性ポリマー組成物と組み合わせた際にアルミニウム合金表面などの金属表面への強い接着を実現することができるアミドアミン組成物を提供することである。
【0007】
本開示のこの目的は、アミドアミン組成物であって、
i)
a)少なくとも1つのアミド基または少なくとも1つのイミド基と、
b)少なくとも1つのアミノ基と
を有するアミドアミン;および
ii)
c)式(I):
【化1】
で表されるアミノシランのアンモニウム塩と、
d)式(II)
【化2】
で表されるメルカプトシランと
[これらの式中、R
1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基であり;R
2およびR
2’は、独立して、少なくとも1つの炭素原子を有する脂肪族鎖であり;R
3、R
3’、R
4、R
4’、R
5、およびR
5’は、独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基である]
からなる群から選択される1種以上のシラン
を含む、アミドアミン組成物を提供することによって達成される。
【0008】
好ましくは、R1は、-NH2、-NHR6、または-NR7R8の形態で少なくとも1つの窒素原子を有し、R6、R7、およびR8は、独立して、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基である。
【0009】
好ましくは、R3、R3’、R4、R4’、R5、およびR5’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、または2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシから独立して選択される。
【0010】
好ましくは、アミドアミンは、a)1種以上のカルボン酸と、b)少なくとも2つのアミノ基を有する1種以上のアミンとの反応生成物である。
【0011】
好ましくは、カルボン酸はジカルボン酸を含む。
【0012】
好ましくは、アミンは1種以上のポリアルキレンポリアミンを含む。
【0013】
好ましくは、アミドアミンは、a)末端一級アミノ基を有する1種以上のアミンと、b)α-オレフィンと不飽和カルボン酸無水物との1種以上のコポリマーとの反応生成物である。
【0014】
好ましくは、アミンは、アミノメチルピペラジン、アミノエチルピペラジン、アミノプロピルピペラジン、アミノメチルイミダゾリジン、アミノエチルイミダゾリジン、アミノプロピルイミダゾリジン、ジメチルアミノプロピルアミン、またはジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミンから選択される1つ以上を含む。
【0015】
好ましくは、α-オレフィンは、2~20個の炭素原子を有するα-オレフィンである。
【0016】
好ましくは、不飽和カルボン酸無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、または無水シトラコン酸から選択される。
【0017】
好ましくは、アミドアミン組成物は有機塩化物をさらに含む。
【0018】
本開示の別の目的は、接着剤組成物であって、1)アミドアミン組成物と、2)硬化性ポリマー組成物とを含む、接着剤組成物を提供することによって達成される。
【0019】
好ましくは、硬化性ポリマー組成物はポリ(塩化ビニル)または塩化ビニルコポリマーを含む。
【0020】
好ましくは、硬化性ポリマー組成物はエポキシポリマーを含む。
【0021】
好ましくは、接着剤組成物は可塑剤をさらに含む。
【0022】
好ましくは、接着剤組成物は、充填剤、補強剤、接着促進剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、造核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、柔軟剤、液だれ防止剤、安定剤、金属光沢剤、金属被覆粒子、細孔形成剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動助剤、またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤をさらに含む。
【0023】
好ましくは、添加剤は、接着剤組成物の総重量を基準として90%未満の重量パーセント割合を有する。
【0024】
好ましくは、アミドアミン組成物は、接着剤組成物の総重量を基準として10%未満の重量パーセント割合を有する。
【0025】
好ましくは、アミドアミン組成物は、接着剤組成物の総重量を基準として0.5%超5%未満の重量パーセント割合を有する。
【0026】
本開示の別の目的は、アミドアミン組成物を調製するための方法であって、
i)
a)少なくとも1つのアミド基と、
b)少なくとも1つのアミノ基と
を有するアミドアミンを準備すること;
ii)
c)式(I):
【化3】
で表されるアミノシランのアンモニウム塩と、
d)式(II)
【化4】
で表されるメルカプトシランと
[これらの式中、R
1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基であり;R
2およびR
2’は、独立して、少なくとも1つの炭素原子を有する脂肪族鎖であり;R
3、R
3’、R
4、R
4’、R
5、およびR
5’は、独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基である]
からなる群から選択される1種以上のシランを準備すること;および
iii)
アミドアミンと1種以上のシランとを混合して、アミドアミン組成物を形成すること
を含む方法を提供することによって達成される。
【0027】
本開示の組成物は、電気自動車における多くの用途に適した金属表面への強い結合という優れた特性を備えたPVCプラスチゾルまたはエポキシ系を提供する。
【0028】
詳細な説明
以下の説明は、説明のために使用されているにすぎず、本開示の範囲を制限するものではない。
【0029】
「アミドアミン」という用語は、少なくとも1つのアミノ基に加えて、その骨格に少なくとも1つのアミド基またはイミド基を含む有機化合物の分類を指す。アミノ基は、一級アミノ基-NH2、二級アミノ基-NHRA、または三級アミノ基-NRBRCであってよく、RA、RB、およびRCは、独立して炭化水素ラジカル基である。アミドアミンは、例えばエポキシ樹脂などの様々なポリマー組成物の硬化剤として機能することができる。
【0030】
「メルカプトシラン」という用語は、炭素鎖を介してケイ素原子に直接的にまたは間接的に結合している少なくとも1つのメルカプト基を有するシランの分類を指す。慣例的に、メルカプトシランは、その性質が二官能性であるため、シリカ系材料のカップリング剤に広く使用されている。限定するものではないが、公知のメルカプトシランとしては、(3-メルカプトプロピル)-トリエトキシシランおよび(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランが挙げられる。
【0031】
「アミノシラン」という用語は、炭素鎖を介してケイ素原子に直接的にまたは間接的に結合した少なくとも1つのアミノ基を有するシランの分類を指す。慣例的に、アミノシランは、その性質が二官能性であるため、シリカ系材料のカップリング剤に広く使用されている。限定するものではないが、公知のアミノシランとしては、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)-ジエトキシ-メチルシラン、(3-アミノプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン、(3-(アミノエチルアミノ)プロピル)-トリメトキシシラン、(3-(アミノエチルアミノ)プロピル)-メチルジメトキシシラン、(3-(アミノエチルアミノ)プロピル)-トリエトキシシランが挙げられる。
【0032】
本明細書において、「プラスチゾル」という用語は、液体可塑剤中のポリ塩化ビニル(PVC)または他のポリマー粒子の懸濁液を指す。プラスチゾルは液体として流動し、加熱された型に流し込むことができる。特定の温度または温度範囲に加熱すると、プラスチック粒子は溶解し、混合物は流し込むことができない高粘度のゲルになる。プラスチゾルは、一般的にはコーティングとして使用される。
【0033】
アミドアミン
本開示によれば、アミドアミンは、少なくとも1つのアミド基またはイミド基と、少なくとも1つのアミノ基とを有する。このアミドアミンは、カルボン酸を、少なくとも2つのアミノ基を有する少なくとも1種のアミンと反応させることによって調製することができる。代替的には、アミドアミンは、無水物に基づくコポリマーを、末端一級アミノ基を有する少なくとも1種のアミンと反応させることによって調製することができる。
【0034】
反応は、非水性媒体中で高温で行うことができる。カルボン酸および/または無水物とポリアミンとの混合物は、好ましくは、反応物の均一な分布を実現するために激しく撹拌される。酸化や副反応を防止または抑制するために、好ましくは不活性雰囲気が適用される。数時間縮合した後、反応生成物の1つとしての水を除去するために留去が行われた。
【0035】
カルボン酸および/またはカルボン酸無水物中のカルボン酸基とポリアミン中のアミノ基との化学量論比とは、ほぼ全てのカルボン酸基および無水物基が使い果たされるものの、かなりの量のアミノ基が未反応のまま残るような比である。結果として生じたものの中の未反応アミノ基は、PVCプラスチゾルやエポキシ樹脂などのポリマー組成物の金属表面への接着を促進するために不可欠である。
【0036】
カルボン酸
本明細書で使用されるカルボン酸は、1つ以上のカルボキシル基を有する有機酸を指す。カルボキシル基はアミン中のアミノ基と反応してアミド部位を形成することができる。カルボン酸としては、脂肪酸、水素化脂肪酸、二量化脂肪酸、二量化脂肪酸の水素化生成物、三量化脂肪酸、三量化脂肪酸の水素化生成物、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、カルボン酸には少なくとも1種のジカルボン酸が含まれる。より好ましくは、ジカルボン酸には、二量化脂肪酸または水素化二量化脂肪酸が含まれる。さらにより好ましくは、二量化脂肪酸または水素化二量化脂肪酸は、24~48個の炭素原子を有する。
【0037】
無水物に基づくコポリマー
アミドアミンは、無水物に基づくコポリマーを、末端一級アミノ基を有するポリアミンと反応させることによって調製することができる。無水物に基づくコポリマーとは、不飽和モノマーと不飽和無水物とを重合させることによって調製されるコポリマーの一群を指す。無水物に基づくコポリマーには反応性無水物部位が含まれており、この部位はアミンと反応してイミド基含有縮合物を形成することができる。
【0038】
好ましくは、不飽和モノマーは少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含む。より好ましくは、不飽和モノマーは、α-オレフィン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0039】
より好ましくは、α-オレフィンには、2~20個の炭素原子を有するα-オレフィンが含まれる。例示的なα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、または1-オクタデセンが挙げられる。
【0040】
不飽和カルボン酸無水物は、不飽和ジカルボン酸の無水物である。好ましくは、不飽和カルボン酸無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、または無水シトラコン酸から選択される1つ以上である。
【0041】
例示的な無水物に基づくコポリマーとしては、ポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸、無水マレイン酸-グラフトポリプロピレン、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、無水マレイン酸-メチルメタクリレートコポリマー、または無水マレイン酸-アクリルアミドコポリマーが挙げられる。
【0042】
アミン
本開示においてアミドアミンを調製するためのアミンには、様々なジアミン、トリアミン、テトラアミン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。ジアミンとしては、非環状または環状ジアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非環状ジアミンとしては、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。環状ジアミンとしては、脂環式アミン、芳香族アミン、およびアミノ含有ヘテロ環が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
例示的なポリアルキルアミンは公知であり、例えばエチレンアミン、プロピレンアミン、または置換エチレンアミン、例えばエチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’’-ビス(3-アミノプロピル)ジエチレントリアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、アミノエチルピペラジン、ジプロピレントリアミン、およびトリプロピレンテトラミンである。
【0044】
ポリエーテルアミンは、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミンまたはアミン末端ポリエーテルとしても知られている。例示的なポリエーテルアミンは公知であり、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、またはそれらの組み合わせに基づくものである。市販のポリエーテルアミンは、例えばHuntsman CorporationのJEFFAMINE(登録商標)Dシリーズのポリエーテルアミンとしてなど、様々なメーカーから購入することができる。
【0045】
例示的な脂環式アミンは、非芳香族炭素環系に直接的にまたは間接的に連結したアミノ基を有するジアミンまたはトリアミンである。市販の脂環式アミンとしては、ジアミノシクロヘキサンの異性体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの異性体、4,4’-メチレンビスシクロヘキサンアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、およびイソホロンジアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
例示的な芳香族アミンは、芳香環系に直接的にまたは間接的に連結したアミノ基を有するジアミンまたはトリアミンである。市販の芳香族アミンとしては、フェニレンジアミンの異性体、キシリレンジアミンの異性体、メチレンジアニリンの異性体、および1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
アミノ含有ヘテロ環は公知であり、例えば窒素含有ヘテロ環に結合したアミノアルキル基を有するものである。窒素含有ヘテロ環としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、アゼパン、アゼピン、アゾカン、アゾナン、アゾニン、ジアジリジン、ジアゼチジン、イミダゾリジン、イミダゾール、ピラゾリジン、ピラゾール、トリアゾール、ジアジナン、ジアジン、およびトリアジナンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミノアルキル基は、一級、二級、または三級のアミノ基で置換された少なくとも1つの水素原子を有する飽和炭化水素ラジカルを指す。例示的なアミノ含有ヘテロ環としては、アミノメチルピペラジン、アミノエチルピペラジン、アミノプロピルピペラジン、アミノメチルイミダゾリジン、アミノエチルイミダゾリジン、またはアミノプロピルイミダゾリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
シラン
本開示で提供されるアミドアミン組成物は、
a)式(I):
【化5】
で表されるアミノシランのアンモニウム塩と、
b)式(II)
【化6】
で表されるメルカプトシランと、
[これらの式中、R
1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基であり;R
2およびR
2’は、独立して、少なくとも1つの炭素原子を有する脂肪族鎖であり;R
3、R
3’、R
4、R
4’、R
5、およびR
5’は、独立して、1~20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基である]
からなる群から選択される1種以上のシランをさらに含む。
【0049】
炭化水素ラジカルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基であってよい。好ましくは、炭化水素ラジカルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル;ビニル、アリル;エチニル;フェニル、トリル、ベンジル、2-フェニルエチル、キシリル、またはナフチルである。
【0050】
アルコキシ基またはアリールオキシ基は、アルコールまたはフェノール類中のヒドロキシル基(-OH)から水素原子を除くことによって形成される有機基を指す。
【0051】
アルコールは、モノヒドロキシアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール;ジヒドロキシアルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール;トリヒドロキシアルコール、例えばグリセロール;または4つ以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシアルコールであってよい。好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、またはグリコールモノエーテルから誘導される基である。グリコールモノエーテルは、グリコール、通常はエチレングリコールまたはプロピレングリコールのアルキル/アリールエーテルである。一般的に使用されるグリコールモノエーテルとしては、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-フェノキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名ブチルジグリコール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エトキシル化C12アルコール、エトキシル化C13アルコール、エトキシル化C14アルコール、またはエトキシル化C15アルコールを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
フェノール類は、フェノール、4-ノニルフェノール、キシレノール、またはビスフェノールAであってよい。好ましくは、アリールオキシ基はフェノキシ基またはアリールオキシ基である。
【0053】
R3、R3’、R4、R4’、R5、およびR5’は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、または2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシである。
【0054】
メルカプト基およびアンモニウムカチオンは、金属表面への接着を向上させるために重要な優れた反応性を有することが知られている。
【0055】
好ましくは、シランは、少なくとも1つのメルカプト基(-SH)を有するメルカプトシランである。例示的なメルカプトシランは公知であり、例えば3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)、および(3-メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン(MPDMS)である。
【0056】
好ましくは、シランはアミノシランのアンモニウム塩である。
【0057】
好ましくは、アミノシランのアンモニウム塩において、R1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基である。
【0058】
好ましくは、アミノシラン中のラジカルR1は、少なくとも1つの窒素原子を有することができる。窒素原子は、-NH2、-NHR6、または-NR7R8の形態で存在し、R6、R7、およびR8は、独立して、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基である。そのような場合、アミノシランは少なくとも2つのアミノ基を有する。
【0059】
アンモニウム塩は、当業者に公知の任意の酸のアンモニウム塩であってよい。好ましくは、アンモニウム塩は、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩などである。
【0060】
アミノシランのアンモニウム塩は、当業者に公知の合成アプローチによって調製することができる。一例として、本開示における式(II)で表されるアミノシランを有するアミノシラン塩酸塩は、式(III)で表されるクロロ炭化水素と式(IV)で表されるアミノシランとを反応させることによって調製された。
【化7】
[これらの式中、R
1は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、または置換アリール基であり;R
2は、少なくとも2つの炭素原子を有する脂肪族鎖であり;R
3、R
4、およびR
5は、独立して、1~20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基である]。
【0061】
有機塩化物
幾つかの実施形態では、未反応のアミノ基を含むアミドアミンおよびシランに加えて、アミドアミン組成物は、少なくとも1種の有機塩化物をさらに含むことができる。有機塩化物は、好ましくは、塩化アルキル、塩化アルケニル、塩化アルキニル、または塩化アリールであり、クロロメタン、クロロエタン、クロロプロパン、塩化ベンジル、塩化ビニルベンジル、および二塩化キシリレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
有機塩化物は、任意の適切な順序でアミドアミン組成物に添加することができる。幾つかの実施形態では、新たに調製されたアミドアミンに有機塩化物が添加されることで混合物が形成された。その後、混合物にシランが添加された。
【0063】
接着剤組成物
本開示で提供されるアミドアミン組成物は、接着剤組成物、特にPVCプラスチゾルまたはエポキシ樹脂に基づく接着剤組成物におけるカップリング剤または接着促進剤として使用することができる。
【0064】
接着剤組成物内で、アミドアミン組成物は、接着剤組成物の総重量を基準として好ましくは10%未満、より好ましくは0.5%超8%未満、さらに好ましくは1%超4%未満の重量パーセント割合を有する。
【0065】
本開示で提供されるアミドアミン組成物に加えて、接着剤組成物は、1種以上の硬化性ポリマー組成物を含有することができる。硬化性ポリマー組成物に関する詳細な事項は以下で説明する。
【0066】
硬化性ポリマー組成物
接着剤組成物は、湿気、光、熱、または硬化剤などの複数の要因にさらされると加硫または硬化することができる硬化性ポリマー組成物を含有する。硬化性ポリマー組成物は、好ましくは、ポリ(塩化ビニル)、塩化ビニルコポリマー、またはエポキシポリマーを含む。本明細書では「ポリマー」という用語が使用されるが、「硬化性ポリマー組成物」という用語は、重合または共重合して硬化/固化した材料を形成できる限り、プレポリマーまたはオリゴマーを指すことができる。
【0067】
塩化ビニルコポリマーは、モノマーとして塩化ビニルを有するコポリマーの分類である。コモノマーは、オレフィン、ビニル、(メタ)アクリル、またはその誘導体などに基づくことができる。一般に知られているコポリマーとしては、塩化ビニルと、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリルなどとのコポリマーが挙げられる。
【0068】
本明細書で使用されるエポキシポリマーは、少なくとも1つのエポキシド基を有するポリマー、プレポリマー、オリゴマーの分類である。市販のエポキシポリマーは周知であり、例えばHexion Inc.のEpon(商標)、Epikure(商標)、およびEpikote(商標)、Olin CorporationのD.E.R.(商標)およびD.E.N.(商標)などのブランド名で様々なメーカーから購入することができる。
【0069】
その他の成分
接着剤組成物は、本開示で提供されるアミドアミン組成物および硬化性ポリマー組成物以外のさらなる成分を含むことができる。
【0070】
本開示の幾つかの態様では、接着剤組成物中に可塑剤が含まれる。可塑剤は、PVCプラスチゾル中ではポリ(塩化ビニル)/塩化ビニルコポリマー粒子と共に、またはエポキシ樹脂中ではエポキシポリマーと共に存在することができる。可塑剤は、PVCプラスチゾル/エポキシ樹脂と本開示のアミドアミン組成物とを混合することによって導入することができる。代替的には、可塑剤を別に添加することができる。数種類の可塑剤が使用される場合、それらは好ましくは異なる分類の化合物に由来する。適切な可塑剤は、PVCに一般的に使用されている全ての可塑剤である。可塑剤は、好ましくはフェノールエステル、アジピン酸エステル、および酪酸エステルからなる群から選択される。
【0071】
本開示の接着剤組成物中の可塑剤の量は、非常に大きく変動する可能性があり、該当する場合の要件によって、特にPVC、塩化ビニルコポリマー、またはエポキシ樹脂などの硬化性ポリマー組成物に対する可塑化効果によって導かれる。その量は、それぞれの場合の接着剤組成物の総量を基準として好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~50重量%、特に20重量%~40重量%である。
【0072】
より多くの機能性または特徴を持たせて工業的な要件を満たすために、接着剤組成物は、好ましくは添加剤を含む。添加剤とは、接着剤組成物の特性を望みの方向に変更するために、例えば粘度、湿潤特性、安定性、反応速度、ブリスター形成、保存性、または接着性、および使用特性を最終用途に適合させるために添加される物質を意味すると理解される。幾つかの添加剤は、例えば国際公開第99/55772号のpp.15~25に記載されている。
【0073】
好ましい添加剤は、充填剤、補強剤、カップリング剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、造核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、柔軟剤、接着促進剤、液だれ防止剤、金属顔料、安定剤、金属グリッター、金属被覆粒子、細孔形成剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動助剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0074】
添加剤は、好ましくは、添加剤組成物の総重量に対して90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは30重量%以下の割合を占める。
【0075】
例えば、光安定剤、例えば立体障害を有するアミン、または記載されている他の助剤を、例えば0.05重量%~5重量%の合計量で添加することが有利である。
【0076】
本開示の接着剤組成物を製造するために、レベリング剤、例えばポリシロキサンなどの添加剤を添加することがさらに可能である。加えて、さらに別の成分が任意選択的に存在することもできる。追加的に使用される助剤および添加剤は、連鎖移動剤、可塑剤、安定剤、および/または阻害剤であってよい。
【0077】
場合によっては、接着剤組成物は好ましくは酸化防止剤添加剤を含む。酸化防止剤は、立体障害を有するフェノール、硫化物、または安息香酸塩から選択される1つ以上の構造単位を含み得る。ここで、立体障害を有するフェノールにおいては、2個のオルト水素原子が、好ましくは少なくとも1~20個、特に好ましくは3~15個の炭素原子を有し、かつ好ましくは分岐している水素ではない化合物によって置換されている。安息香酸塩も、好ましくはOH基に対してオルト位に、特に好ましくは1~20個、より好ましくは3~15個の炭素原子を有し、かつ好ましくは分岐している水素ではない置換基を有する。
【0078】
さらに別の実施形態では、必要に応じて、エポキシ樹脂のエポキシド基と硬化剤組成物のアミン基との反応を促進するために、1種以上の触媒が、好ましくは硬化剤組成物の一部として、接着剤組成物に好ましくは導入される。接着剤組成物に導入することができる有用な触媒としては、Evonik Operations GmbHから入手可能なAncamine(登録商標)製品、およびHuntsman Corporationから入手可能な「Accelerators」として市販されている製品が挙げられる。1つの例示的な触媒は、Huntsman Corporationから入手可能なピペラジン系のAccelerator 399である。そのような触媒は、利用される場合、好ましくは接着剤組成物全体の0~約10重量パーセントを占める。
【0079】
好ましくは、接着剤組成物を金属表面に塗布する際の硬化プロセスを加速するために、接着剤組成物に硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、トリス-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、ノニルフェノールの様々な異性体、トリエタノールアミン、またはN-(3-アミノプロピル)イミノジエタノールから選択される1種以上が挙げられる。
【0080】
接着剤組成物が使用される最終用途または環境に応じて、他の添加剤または成分が系内に存在することができる。
【0081】
好ましくは、本開示による接着剤組成物は、上で特定された成分を含む。
【0082】
接着剤の他に、本開示で提供されるアミドアミン組成物は、コーティング、表面塗料、保護フィルム、シーラント、充填材、防音材などの他の多くの分野で用途を見出すことができるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本開示を、以下の実施例によって説明する。
【0084】
実施例
以下の実施例では、下記の材料を使用した。
【0085】
Ancamine(登録商標)2655は、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.の脂肪族ポリアミンであった。
【0086】
Huntsman CorporationのJeffamine(登録商標)D230およびJeffamine(登録商標)D400は、オキシプロピレン部位を有するジアミンであった。Huntsman CorporationのJeffamine(登録商標)T403は、オキシプロピレン部位を有するトリアミンであった。
【0087】
Ancamine(登録商標)TEPAとしてのテトラエチレンペンタアミン(TEPA)は、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.からのものであった。
【0088】
Ancamine(登録商標)TETAとしてのテトラエチレンテトラアミン(TETA)は、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.からのものであった。
【0089】
2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(DGBE)は、Eastman (China) Co., Ltd.からのものであった。
【0090】
二量体酸は、Yihai Yuanda (Lianyungang) Co. Ltd.からのものであった。
【0091】
3-(トリエトキシシリル)プロパンチオールとエトキシル化C13アルコールとの反応生成物であるシラン1は、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.からのものであった。アミノシランの塩酸塩であるシラン2は、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.からのものであった。メルカプトシランであるシラン3は、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.からのものであった。
【0092】
塩化ビニルベンジルはWuhan Organic Industry Co., Ltd.からのものであった。
【0093】
Exxsol(商標)D80(脱芳香化脂肪族炭化水素溶媒)はExxonMobil Chemicalからのものであった。
【0094】
ジイソプロピルナフタレン(DINP)はBluesail Group Co., Ltd.からのものであった。
【0095】
VESTOLIT(登録商標)P1353Kは、Vestolit GmbH & Co. KG.のPVCホモポリマーであった。VINNOLIT(登録商標)SA1062/7は、Vestolit GmbH & Co. KG.の塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーであった。Lacovyl(登録商標)PA1384は、ARKEMA S.A.の塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーであった。
【0096】
Socal(登録商標)312は、Solvay Chemicals GmbHのコーティングされたチョークであった。Ulmer Weiss XMは、Eduard Merkle GmbHの天然チョークであった。
【0097】
Evonik CorporationのAerosil(登録商標)200はチキソトロープ剤として使用した。
【0098】
ブランド名Precal(登録商標)30SのCaOは、Schaefer Kalk GmbH & Co. KG.の乾燥剤であった。
【0099】
AppliChem GmbHの酸化亜鉛を安定剤として使用した。
【0100】
Exxon Mobil Chemical CompanyのExxsol(商標)D80は、脱芳香化脂肪族炭化水素溶媒であった。
【0101】
サンプルの物理的性能または特性を試験するために次のプロトコルを使用した:
粘度は、ASTM D445-83に従って、25℃でBrookfield DV-II+Pro粘度計により測定した。薄膜硬化時間(TFST)は、ASTM D5895に準拠してBeck-Koller乾燥記録計を使用して測定した。
【0102】
アミン価は、ASTM D2074(過塩素酸滴定)に準拠してMettler滴定装置で測定した。
【0103】
ガードナー色はASTM D1544-80に準拠して測定した。
【0104】
手作業による接着試験方法は以下に説明する通りである。
【0105】
長さが8cmであり、幅が15mmであり、厚さが0mmから3mmまで徐々に増加する連続リボンの状態で、PVCプラスチゾルを清浄な金属基材に塗布した。サンプルを、焼成サイクルに基づいて対流式オーブン内で焼成した。焼成後、サンプルを周囲温度まで冷却し、手作業による接着試験を2回行う。最初の試験は焼成終了から1時間後に行った。2回目は焼成終了から24時間後に行った。接着測定手法は以下に説明する通りである。最初に、プラスチゾルリボンの最も厚い(3mm)端部で2本の平行なストリップをカットした。ストリップは1.5cm離れていた。カットしたストリップの下にスクレーパーを挿入し、ストリップの最初の0.5~1cmを基材からきれいに剥がした。次いで、プラスチゾルストリップのゆるく垂れ下がった端部を基材から引き剥がした。最初のストリップは素早く引っ張り、2番目のものはゆっくりと引っ張った。手作業による接着力は、プラスチゾルストリップを基材から引き剥がすために必要な力の程度に基づいて、優れた接着力(大きな力)、許容できる接着力(中間の力)、または許容できない接着力(弱い力)の3つのカテゴリーで評価した。
【0106】
合成手順
実施例1
合成は以下のステップで行った。
【0107】
ステップ1:2000mLの四口丸底フラスコに、真空ライン、滴下漏斗、窒素出口、および撹拌機を取り付けた。フラスコに、460gの二量体酸、102gのAncamine(登録商標)2655、および133gのテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を入れた。混合物を撹拌しながら180℃まで加熱して水を除去した。温度を250℃まで上げ、反応を2時間継続した。その後、真空ラインのスイッチを入れ、窒素のパージを停止することによって圧力を下げた。水を除去した。内容物を100℃まで冷却した。この混合物に、60gの2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(DGBE)を入れた。混合物を1時間撹拌し、その後70℃まで冷却した。
【0108】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物90gをフラスコに入れ、50℃まで加熱し、次いでメタノール中の10gのシラン1を30分以内に滴下した。真空ラインのスイッチを入れてメタノールを蒸留した。1時間撹拌した後、混合物を取り出した。
【0109】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、22,102mPa・s;ガードナー色10;アミン価、302mgKOH/g。
【0110】
実施例2
ステップ1:2000mLの四口丸底フラスコに、真空ライン、滴下漏斗、窒素出口、および撹拌機を取り付けた。フラスコに、460gの二量体酸、102.1gのAncamine(登録商標)2655、および133.1gのテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を入れた。混合物を撹拌しながら180℃まで加熱して水を除去した。温度を250℃まで上げ、反応を2時間継続した。水を除去した。その後、真空ラインのスイッチを入れ、窒素のパージを停止することによって圧力を下げた。内容物を100℃まで冷却した。この混合物に、100gのジイソプロピルナフタリン(naphthaline)(DINP)を入れた。混合物を1時間撹拌し、その後70℃まで冷却した。
【0111】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物95gをフラスコに入れ、50℃まで加熱し、次いでメタノール中の10gのシラン1を30分以内に滴下した。真空ラインのスイッチを入れた。1時間撹拌した後、混合物を取り出した。
【0112】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、35,890mPa・s;ガードナー色12;アミン価、286mgKOH/g。
【0113】
実施例3
ステップ1:全ての合成プロセスは実施例1のステップ1と同じである。
【0114】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物90gをフラスコに入れ、50℃まで加熱し、次いでメタノール中の10gのシラン2を30分以内に滴下した。真空ラインのスイッチを入れた。1時間撹拌した後、混合物を取り出した。
【0115】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、19,800mPa・s;ガードナー色8;アミン価、293mgKOH/g。
【0116】
実施例4
ステップ1:全ての合成プロセスは実施例1のステップ1と同じである。
【0117】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物97gをフラスコに入れ、45℃まで加熱した。3gの塩化ビニルベンジル(VBC)を20分間で添加した。わずかな発熱作用が認められた。全てのVBCが完全に使い果たされたことを確認するために、後反応を数時間続けた。
【0118】
ステップ3:ステップ2からの反応生成物80gを入れ、60℃まで加熱した。メタノール中の20gのシラン2を30分間で添加した。次いで、混合物を1時間撹拌した後に取り出した。
【0119】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、31,289mPa・s;ガードナー色9;アミン価、287mgKOH/g。
【0120】
実施例5
ステップ1:2000mLの四口丸底フラスコに、真空ライン、滴下漏斗、窒素出口、および撹拌機を取り付けた。フラスコに、460gの二量体酸と225gのAncamine(登録商標)2655を入れた。混合物を撹拌しながら180℃まで加熱して水を除去した。温度を240℃まで上げ、反応を2時間継続した。水を除去した。その後、真空ラインのスイッチを入れ、窒素のパージを停止することによって圧力を下げた。内容物を100℃まで冷却した。この混合物に、100gのExxsol(商標)D80を入れた。混合物を1時間撹拌し、その後70℃まで冷却した。
【0121】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物95gをフラスコに入れ、50℃まで加熱し、次いでメタノール中の5gのシラン2を30分以内に滴下した。真空ラインのスイッチを入れた。1時間撹拌した後、混合物を取り出した。
【0122】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、17,350mPa・s;ガードナー色8;アミン価、310mgKOH/g。
【0123】
実施例6
ステップ1:2000mLの四口丸底フラスコに、真空ライン、滴下漏斗、窒素出口、および撹拌機を取り付けた。フラスコに、460gの二量体酸と240gのテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を入れた。混合物を撹拌しながら180℃まで加熱して水を除去した。温度を240℃まで上げ、反応を2時間継続した。水を除去した。その後、真空ラインのスイッチを入れ、窒素のパージを停止することによって圧力を下げた。内容物を100℃まで冷却した。この混合物に、105gのジイソプロピルナフタレン(DINP)を入れた。混合物を1時間撹拌し、その後70℃まで冷却した。
【0124】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物93gをフラスコに入れ、50℃まで加熱し、次いで7gのシラン3を30分以内に滴下した。真空ラインのスイッチを入れた。1時間撹拌した後、混合物を取り出した。
【0125】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、17,890mPa・s;ガードナー色8;アミン価、279mgKOH/g。
【0126】
実施例7
ステップ1:2000mLの四口丸底フラスコに、真空ライン、滴下漏斗、窒素出口、および撹拌機を取り付けた。フラスコに、460gの二量体酸、102.1gのAncamine(登録商標)2655、および115gのトリエチレンテトラミン(TETA)を入れた。混合物を撹拌しながら180℃まで加熱して水を除去した。温度を240℃まで上げ、反応を2時間継続した。水を除去した。その後、真空ラインのスイッチを入れ、窒素のパージを停止することによって圧力を下げた。内容物を100℃まで冷却した。この混合物に、125gのジイソプロピルナフタレン(DINP)を入れた。混合物を1時間撹拌し、その後70℃まで冷却した。
【0127】
ステップ2:ステップ1からの反応生成物86gをフラスコに入れ、50℃まで加熱し、次いで14gのシラン3を30分以内に滴下した。真空ラインのスイッチを入れた。1時間撹拌した後、混合物を取り出した。
【0128】
この最終生成物の典型的な特性は次の通りであった:40℃における粘度、21,080mPa・s;ガードナー色9;アミン価、320mgKOH/g。
【0129】
試験
PVCプラスチゾル配合物における金属表面への接着力の向上を評価するために、PVCプラスチゾル配合物を以下の表に示す通りに調製した。実施例1~7で調製したアミドアミン組成物を接着促進剤として使用した。
【0130】
【0131】
金属への接着力は、PVCプラスチゾル中での実施例1~7の生成物の異なる焼成サイクルおよび異なる添加量を用いた試験によって評価した。全ての試験で6枚の金属パネルを使用し、そのうち4枚は異なるアルミニウム合金製であり、2枚は異なる鋼製であった。焼成サイクルは、PVCプラスチゾルでコーティングされた表面を焼成する温度が異なっていた。ここで使用した温度には、120℃、130℃、140℃、および150℃が含まれていた。焼成時間は30分であった。鋼製パネルおよびCEDパネルはアルミニウム合金製のパネルと比較して接着しやすいことが通常観察されるため、鋼製パネルおよびCEDパネル上での接着試験での生成物の添加量は全体的に少なかった。
【0132】
接着促進剤組成物の量を変化させたPVCプラスチゾル配合物の接着性能を実証するために、8枚のパネルを使用した。4枚はアルミニウム合金6061、5052、3003、および5083から製造された。2枚はカチオン電着塗装されたLS-800(Kansai Paint Co., Ltd.より)およびES-27(Axalta Coating Systemsより)から製造された。2枚は冷間圧延鋼および304タイプの炭素鋼から製造された。
【0133】
試験結果を示す表において、異なる記号は異なる接着レベルを示している。
【0134】
- 不十分な接着力;
+ 許容できる接着力;
++ 優れた接着力。
【0135】
【0136】
上の表から、焼成温度が120℃から140℃に上昇するのに伴い接着力が向上することが観察される。
【0137】
また、上の表から、PVCプラスチゾル中への接着促進剤の添加量が2%から5%に増加するのに伴い接着力が向上することも観察される。
【0138】
実施例1~5の他の生成物と比較して、実施例6および実施例7の生成物は、焼成サイクルおよび添加量にかかわらず、試験した全ての異なるアルミニウム合金表面に対して良好な接着力を有し得ることが観察される。
【0139】
【0140】
120℃~150℃の範囲の焼成温度での焼成サイクルの後、実施例1~7の全ての生成物は、PVCプラスチゾル中で0.5重量%~1重量%の非常に低い添加量で2枚の異なるCEDパネル上に優れた接着力を生じさせた。
【0141】
【0142】
表4によれば、120℃の焼成温度では、炭素鋼は、少ない添加量で鋼と比較してPVCプラスチゾル配合物に対してわずかに弱い接着力を示した。実施例6および7の生成物は、0.5重量%という低い添加量であっても基材への優れた接着力を示した。焼成温度が130℃を超えると、実施例1~7の全ての生成物は、2つの鋼から製造された基材上に許容できる接着力を生じさせることができた。
【0143】
様々な態様および実施形態が可能である。それらの態様および実施形態の幾つかが本明細書で説明されている。当業者は、本明細書を読めば、それらの態様および実施形態が例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。実施形態は、以下で列挙する実施形態のいずれか1つ以上に従うことができる。
【0144】
上の説明は、当業者が本開示を製造および使用できるようにするために提示されており、用途およびその要件に関連して提供されている。好ましい実施形態に対する様々な修正は当業者には明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用することができる。したがって、本開示は、示されている実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。この点に関し、本開示内の特定の実施形態は、広く考慮すると、本開示の全ての利点を示すわけではない可能性がある。
【国際調査報告】