(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両接続式の吊り上げ装置を開ループ制御および/または閉ループ制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20240423BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20240423BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B66C13/46 Z
B66C13/00 D
B66C23/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570338
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 AT2022060102
(87)【国際公開番号】W WO2022236346
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】GM50105/2021
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518129329
【氏名又は名称】パルフィンガー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】PALFINGER AG
【住所又は居所原語表記】Lamprechtshausener Bundesstrasse 8, 5101 Bergheim bei Salzburg, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ダイマー
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204CA05
3F204FE02
3F205AA05
3F205CB02
3F205HA01
3F205HA06
3F205HB06
(57)【要約】
クレーン先端部(3)とクレーン基部(4)とを備えた関節式のクレーンブームシステム(2)を含む、車両接続式の吊り上げ装置(1)を、クレーンブームシステム(2)の、とりわけクレーン先端部(3)の少なくとも1つの点(5)の特定された位置を考慮して開ループ制御および/または閉ループ制御するための方法であって、少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、動的な力および/または静的な力の作用下で生じるクレーンブームシステム(2)の変形(6)が考慮され、少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的なクレーン基部(4)の傾き(7)に基づいて、吊り上げ装置(1)の斜め姿勢が決定および考慮される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン先端部(3)とクレーン基部(4)とを備えた関節式のクレーンブームシステム(2)を含む、車両接続式の吊り上げ装置(1)を、前記クレーンブームシステム(2)の、とりわけ前記クレーン先端部(3)の少なくとも1つの点(5)の特定された位置を考慮して開ループ制御および/または閉ループ制御するための方法であって、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、動的な力および/または静的な力の作用下で生じる前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)が考慮される、
方法において、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的な前記クレーン基部(4)の傾き(7)に基づいて、前記吊り上げ装置(1)の斜め姿勢が決定および考慮される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記クレーンブームシステム(2)は、少なくとも2つの伸縮ブーム(9)を備えた少なくとも1つの入れ子式の伸縮ブームシステム(8)を含み、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)のうちの少なくとも1つの伸縮ブーム(9)の現在のストローク長さ(10)が、好ましくはストローク長さセンサによって決定および考慮され、
前記現在のストローク長さ(10)は、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルにおいて考慮される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)は、互いに異なる剛性を有し、
前記剛性が、前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定するために計算かつ/または考慮される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記剛性、前記剛性が前記クレーンブームシステム(2)の前記変形(6)に対して及ぼす影響、および/または前記クレーンブームシステム(2)の前記変形(6)が、前記クレーン基部(4)の前記傾き(7)および/または前記吊り上げ装置(1)の前記斜め姿勢および/または前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)の前記ストローク長さ(10)によって特定される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記クレーンブームシステム(2)は、少なくとも2つの入れ子式の伸縮ブーム(9)を含み、
前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)は、シーケンス制御を有し、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、少なくとも1つの伸縮ブーム(9)の現在の目下のストローク長さ(10)が考慮される、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記クレーンブームシステム(2)は、少なくとも2つの入れ子式の伸縮ブーム(9)を含み、前記クレーンブームシステム(2)は、部分的なシーケンス制御を含むか、またはシーケンス制御を有さないように構成されており、
・前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)のストローク長さ(10)を特定するための追加的なセンサが設けられており、かつ/または
・シーケンス制御されていない伸縮ブーム(9)の剛性が、1つの共通の剛性に統合され、好ましくは前記吊り上げ装置(1)の重心のシフトが考慮され、かつ/または
・前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)の計算が、前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)の第1の剛性と、前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)の、前記第1の剛性とは異なる第2の剛性とを用いる前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルによって実施される、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記吊り上げ装置(1)は、少なくとも1つの固定式の吊り上げ装置区分(11)、好ましくは前記クレーン基部(4)と、前記吊り上げ装置(1)および/またはクレーン支柱(13)のための車両(12)と、少なくとも1つの変形可能な吊り上げ装置区分(14)、好ましくは前記クレーンブームシステム(2)の場合によって設けられている少なくとも1つの伸縮ブーム(9)とを含み、
前記少なくとも1つの固定式の吊り上げ装置区分(11)における前記吊り上げ装置(1)の傾き(7)が決定され、かつ/または前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルにおいて考慮される、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
好ましくは少なくとも1つの傾きセンサ(15)および/または少なくとも1つの角度センサ(16)によって、
・地面(17)に対して相対的な、前記クレーン基部(4)の傾き(7)、および/または
・固定式の吊り上げ装置区分(11)と、少なくとも1つのさらなる固定式の吊り上げ装置区分(11)との間の少なくとも1つの角度(18)、および/または
・固定式の吊り上げ装置区分(11)と、変形可能な吊り上げ装置区分(14)との間の少なくとも1つの角度(18)、および/または
・変形可能な吊り上げ装置区分(14)と、さらなる変形可能な吊り上げ装置区分(14)との間の少なくとも1つの角度(18)
が特定され、
前記クレーン基部(4)の前記傾き(7)、前記吊り上げ装置(1)の前記斜め姿勢、および/または前記少なくとも1つの角度(18)が、前記クレーンブームシステム(2)の変形を決定するためのモデルにおいて考慮され、
前記少なくとも1つの点(5)の位置が計算される、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記クレーンブームシステム(2)の複数の点(5)が計算され、
前記複数の点(5)によって、前記クレーンブームシステム(2)の、好ましくは前記吊り上げ装置(1)の幾何形状が特定される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記吊り上げ装置(1)に配置されている荷重質量(22)が、前記クレーンブームシステム(2)の前記変形(6)と、前記クレーン基部(4)の前記傾き(7)とを考慮して計算され、
好ましくは、前記荷重質量(22)は、前記少なくとも1つの点(5)の位置の決定前、決定中、および/または決定後に、特に好ましくは場合によって設けられている角度センサ(16)および/または圧力センサ(30)によって計算される、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
荷重質量(22)、好ましくは請求項10に従って計算された荷重質量(22)が、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を特定するためのモデルにおいて考慮される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルが、前記クレーンブームシステム(2)の設定可能なまたは設定された摩耗によって、かつ/または少なくとも1つの設定可能なまたは設定されたパラメータによって較正される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記吊り上げ装置(1)のための少なくとも1つの制御信号が手動で設定され、
少なくとも1つのアクチュエータ(23)のための少なくとも1つの操作量が、前記少なくとも1つの点(5)の位置および/または少なくとも1つの点(5)の予測位置を考慮して計算される、
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記吊り上げ装置(1)が載置されている車両(12)の、地面(17)に対する変形(6)および/または傾き(7)が特定され、かつ/または計算され、前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に考慮される、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの点(5)の位置は、前記位置に関連する前記クレーン基部(4)の傾き(7)、および/または前記位置に関連する前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)、好ましくは場合によって存在する伸縮ブーム(9)のストローク長さ(10)、および/または伸縮ブーム(9)と前記クレーン基部(4)との間の角度(18)とともに、データベース(24)に保存される、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定することにより、前記少なくとも1つの点(5)および/または前記吊り上げ装置(1)の位置の軌道計画が、計画された軌道に沿った前記クレーン基部(4)の傾き(7)と、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)とを考慮して作成される、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記軌道計画は、前記データベース(24)に保存されている前記少なくとも1つの点(5)の位置に基づいて作成される、請求項15および16記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの点(5)の位置が、クレーン制御装置(25)の少なくとも1つの半自動機能に提供され、
好ましくは、前記吊り上げ装置(1)の軌道計画が、前記少なくとも1つの点(5)の位置を考慮して特定され、かつ/または手動での設定によって補正可能である、
請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記吊り上げ装置(1)の到達範囲内にある対象物および/または障害物を検出するための少なくとも1つの検出センサ(26)、好ましくはカメラが設けられており、
前記対象物および/または前記障害物が、前記軌道計画において考慮される、
請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際における前記クレーンブームシステム(2)の重心位置が、前記クレーン基部(4)の傾き(7)、前記クレーンブームシステム(2)の変形、前記クレーンブームシステム(2)の幾何形状、および/または前記クレーンブームシステム(2)の少なくとも1つの伸縮ブーム(9)内に配置されている作動油の重量に依存して考慮され、
好ましくは、場合によって前記吊り上げ装置(1)に配置されている荷重質量(22)が、前記クレーン基部(4)の傾き(7)、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)、前記クレーンブームシステム(2)の幾何形状、および/または前記クレーンブームシステム(2)の少なくとも1つの伸縮ブーム(9)内に配置されている作動油の重量によって計算される、
請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記重心位置のシフトは、安定性および/または過荷重安全性の変化を引き起こす、請求項20記載の方法。
【請求項22】
クレーン先端部(3)を備えた関節式のクレーンブームシステム(2)を含む、車両接続式の吊り上げ装置(1)のための開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)であって、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)に、前記吊り上げ装置(1)に配置されている少なくとも1つのセンサ(29)の少なくとも1つのセンサ信号を供給することができ、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、少なくとも1つの動作モードにおいて、前記少なくとも1つのセンサ信号を考慮して、動的な力および静的な力の作用下で生じる前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を特定し、前記変形(6)を考慮して、前記クレーンブームシステム(2)の、とりわけ前記クレーン先端部(3)の少なくとも1つの点(5)の位置を決定するように構成されている、
開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)において、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、傾きセンサ(15)に信号を伝送するように接続されているかまたは接続可能であり、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、前記少なくとも1つの動作モードにおいて、前記傾きセンサ(15)の傾きセンサ信号を考慮して、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的な、前記吊り上げ装置(1)が載置されている前記クレーン基部(4)の傾き(7)に基づいて、前記吊り上げ装置(1)の斜め姿勢を決定し、前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に考慮するように構成されている
ことを特徴とする、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)。
【請求項23】
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、請求項22記載の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)。
【請求項24】
車両接続式の吊り上げ装置(1)であって、
請求項22または23記載の、少なくとも1つの開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)と、
クレーン先端部(3)と、クレーン基部(4)と、前記吊り上げ装置(1)に配置されている少なくとも1つのセンサ(29)と、傾きセンサ(15)とを備えた関節式のクレーンブームシステム(2)と、
を備える、吊り上げ装置(1)。
【請求項25】
請求項22または23記載の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)によって実行された場合に、前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)に、請求項1から21までのいずれか1項記載の少なくとも1つの方法のステップを実施させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン先端部とクレーン基部とを備えた関節式のクレーンブームシステムを含む、車両接続式の吊り上げ装置を、クレーンブームシステムの、とりわけクレーン先端部の少なくとも1つの点の特定された位置を考慮して開ループ制御および/または閉ループ制御するための方法であって、少なくとも1つの点の位置を決定する際に、動的な力および/または静的な力の作用下で生じるクレーンブームシステムの変形が考慮される、方法に関する。さらに、本発明は、請求項22の上位概念に記載の特徴を有する、車両接続式の吊り上げ装置のための開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置に関する。さらに、本発明は、少なくとも1つのこのような開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置を備えた車両接続式の吊り上げ装置と、このような方法を実施するためのコンピュータプログラム製品とに関する。
【0002】
このような方法は、欧州特許第2636634号明細書からすでに公知であり、同明細書では、クレーンブームシステムの変形を特定することができるようにするために、吊り上げ装置のクレーンブームシステムがビームモデルによってモデル化され、荷重取り上げ手段の位置が、この荷重取り上げ手段に配置されている、測定によって決定された荷重質量によって決定される。荷重取り上げ手段の位置を決定する際に、クレーン塔またはクレーン支柱と水平線との間の、または船舶に組み付けられている場合にはクレーン塔またはクレーン支柱と吊り上げ装置全体の傾きとの間の、ブーム直立角度を考慮することができる。
【0003】
クレーンブームシステムの変形は、例えば-とりわけ吊り上げ装置の使用姿勢における側方向および/または垂直方向での-たわみ、ねじれ、ひねり、またはこれらの組み合わせの形態で存在している可能性があり、このような変形は、一般的にクレーン支柱と、吊り上げ装置が載置されている車両とに当てはまる。一般的に、複数の異なる種類の変形の組み合わせが生じる。クレーンブームシステムは、一般的に、例えばクレーン支柱、入れ子式の伸縮ブームシステム、および入れ子式の伸縮ブームシステムとクレーン支柱との間に配置されている主ブームを含むことができ、クレーンブームシステムは、例えば折曲システムを含むこともでき、折曲システムのうちの、クレーン基部に配置されている主ブームを、クレーン支柱として識別することができる。しかしながら、一般的に、クレーン支柱は、クレーン基部と、(例えば、入れ子システムまたは折曲ブームシステムとして構成されている)クレーンブームシステムの主ブーム(第1のクレーンブーム)との間の接続部である。クレーンブームシステムの全ての構造コンポーネントは、通常、顕著な変形を受ける可能性がある。
【0004】
変形されたクレーンブームシステムの傾き自体は、この傾きによって引き起こされる変形と相互作用しており、例えば、車両の傾きを把握するだけでは、クレーンブームシステムの点の位置を精確に決定するためには不十分である。なぜなら、支持要素が有限の剛性を有していて、かつ支持点が変化する場合には、車両もまた、車両の長手延在方向にわたって種々異なる強さで、位置に依存して変形する可能性があるからであり、これにより、従来技術では、(吊り上げ装置全体の絶対的な座標を有する世界座標系という意味での)水平線に対する、または平坦であることが仮定されている地面に対する、実際の目下のクレーンブームシステムの傾きについての説得力のある基準が与えられなくなるからである。
【0005】
車両の傾きは、一義的ではなく、長手延在方向にわたって種々異なる力の作用および/または変形に基づいて、長手延在方向に関して一定ではない。クレーンブームシステムとクレーン基部との間の接続部材としてのクレーン支柱もまた、一般的に顕著な変形を受ける。しかしながら、入念に決定された傾きによって変形を高度に正確にモデル化し、これによってクレーンブームシステムの点の位置を決定することができるようにするためには、基準としての傾きを精確に把握することが不可欠である。さらに、従来技術では、クレーンブームシステムの変形を推定することができるようにするために、-吊り上げ装置の傾きも含めて幾何形状が既知である場合に、定義された変形を同様にもたらす-荷重質量を、測定によって決定しなければならないことが欠点であり、この場合、荷重質量は、吊り上げ装置の質量とは異なり、吊り上げ装置の使用中に変化しやすい可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的となる技術的な課題は、従来技術の欠点が少なくとも部分的に解消されていて、とりわけクレーンブームシステムの少なくとも1つの点の位置が精確に特定されることを特徴とする、車両接続式の吊り上げ装置を開ループ制御および/または閉ループ制御するための、従来技術に比べて改善された方法と、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置とを提供することである。
【0007】
上記の課題は、請求項1の特徴によって解決される。
【0008】
したがって、本発明によれば、少なくとも1つの点の位置を決定する際に、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的なクレーン基部の傾きに基づいて、吊り上げ装置の斜め姿勢が決定および考慮される。
【0009】
これによって初めて、クレーン支柱を介してクレーンブームシステムが載置されていて、かつ車両に接続することができる吊り上げ装置の、実質的に固定式の構造コンポーネントとしてのクレーン基部を、クレーンブームシステムの傾きに対する基準平面を高精度で決定するために使用または利用することが可能となり、この場合、車両自体およびクレーンブームシステム自体は、クレーンブームシステムの変形を決定するための十分な基準平面ではない。空間内における方向に対する-とりわけ平坦であることが仮定されている地面に対する、または(設定されたまたは設定可能な基準方向に対する座標という意味での)世界座標系に対する-クレーン基部の傾きが既知である場合には、このクレーン基部の傾きによって引き起こされるクレーンブームシステムの傾きを考慮して、クレーンブームシステムの変形を特に好適にモデル化することができる。
【0010】
一般的に、クレーン支柱は、クレーン基部と関節式に接続されていてもよいし、またはクレーン基部と固定式に接続されていてもよく、かつ/またはクレーン基部は、車両の車両フレームと直接的に接続されていてよい。クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とに関するデータが検出されて、点を決定するために考慮される。
【0011】
吊り上げ装置という用語には、例えば車載クレーン、橋梁点検車クレーン、ダンプトラック、高所作業車クレーン等が含まれており、クレーンブームシステムという用語、クレーン基部という用語、および「クレーン」という接頭辞が付されたさらなる構造コンポーネント用語は、これらの用語に、例えば昇降作業床に関連するこのような構造コンポーネントも含まれているというように、広義に解釈されるべきである。特に好ましいのは、折曲システムまたは入れ子システムであり、これらは、組み合わせで使用されてよい。
【0012】
地面または水平線に対して相対的に斜めになっているクレーンブームシステムの方向性が、クレーン基部の傾きによって引き起こされているのか、または荷重質量によって引き起こされているのか、またはクレーンブームシステムの目下の幾何形状に基づいて引き起こされているのかは、クレーンブームシステムの目下の変形にとっては重要でない。クレーン基部の傾きを把握することにより、変形を、特に好適にはクレーンブームシステムの運動中に変形モデルによって考慮することができ、その原因を細分化することができる。
【0013】
クレーン基部の傾きは、例えば傾きセンサによって特定可能であり、クレーン基部の剛性に基づいて、-少なくともクレーンブームシステムが静止状態にあり、かつクレーンブームシステムに配置されている荷重質量が不変である場合における-傾きは、実質的に一定であり、かつ水平線に対して一義的である。傾きは、とりわけ伸縮ブームの目下のストローク長さと、クレーンブームシステムに配置されている荷重質量とに依存しており、ストローク長さおよび荷重質量の両方が、クレーンブームの変形に影響を及ぼし、これに伴って生じる傾きの変化によって、今度はクレーンブームシステムの変形を伴うフィードバックが生成される。クレーン基部の目下の傾きに関連するさらなる要因は、例えば、吊り上げ装置の幾何形状(クレーンブームシステムの目下の角度等)、地面における吊り上げ装置の支持状態、地面の強度、支持要素の剛性等であってよく、空間内におけるクレーンブームシステムの伸縮ブームの角度も、クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とに依存しており、クレーンブームシステムの変形と、クレーン基部の傾きとに対するフィードバックを生じさせる。
【0014】
少なくとも1つの点の位置は、軌道忠実性、衝突回避性、(とりわけ自動化率の増加に伴う)快適性機能の性能および/または精度、現在の目下の過荷重防止、または現在の目下の安定性のような、吊り上げ装置に対する種々異なる要求にとって不可欠であり、この場合、クレーンブームシステムの変形モデルに基づいて、一般的に、クレーン基部の傾きを決定的な基準として考慮することなく、個々の伸縮ブームの角度を十分に推定することは不可能である。したがって、本発明によれば、クレーン先端部を、絶対的な座標(世界座標系)において高精度で特定することができる。クレーンブームシステムの変形は、クレーン基部の傾きに依存している個々の伸縮ブームの角度と相互作用しているので、クレーンブームシステムの個々の構造コンポーネントの絶対的な位置特定を精確に決定することができる。
【0015】
この場合、特に好ましくは、クレーンブームシステムおよび/または吊り上げ装置のための(場合により、配置されている車両を伴う)変形モデルが使用され、この変形モデルは、伸縮ブーム、主ブーム、入れ子式の伸縮ブームシステムに接続されたブームシステム、および/またはクレーン支柱(同様の考察は、これに補足してまたはこれに代えて設けられる折曲システムにも当てはまる)を、アルゴリズムによってモデル化し、この場合、個々の構造コンポーネント-とりわけ、クレーンシステムの、好ましくは折曲システムの伸縮ブーム、主ブーム、および/またはクレーン支柱-を、固定的に、弾性的に、かつ/または少なくとも1つの点の位置を決定するためのビームモデルによってモデル化する。弾性的という専門用語は、この文脈では、例えば伸縮ブームが、荷重が加えられた場合に剛性を考慮してフレキシブルに変形可能であるということを意味する。一般的に、クレーンブームシステムは、例えば入れ子式の伸縮ブームシステムの形態で構成されていてもよいし、または折曲システムとして構成されていてもよい。
【0016】
ユーザのために車両接続式の吊り上げ装置の機能性を改善することができるか、またはより快適にかつ/またはよりフレキシブルに提供することができるというポジティブな特性がさらに加わる。このことは、例えば、傾斜姿勢、空間内におけるクレーン位置、および/または制限区域(例えば、高さ制限、対向線路の封鎖、またはとりわけ吊り上げ装置の操作員によって定義することができる建物正面のような保護ゾーン)の遵守のような、幾何形状に依存した機能と、過荷重、安定性、および/または計量のような、積載量に依存した機能と、座標制御、少なくとも1つの点の位置の保存、軌道計画、および/または衝突保護のような半自動機能または快適性機能とに関する。例えば、吊り上げ装置の衝突保護に関して、吊り上げ装置のクレーン制御装置によって計算された補正信号を特定することができるか、または吊り上げ装置の操作設定の無効化を実現することができる。
【0017】
クレーン制御装置は、この文脈では、吊り上げ装置に対応付けられた開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置として見なされるべきであり、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置は、例えば、開ループ制御および/または閉ループ制御するための本方法を実施するために設けられたクレーン制御装置の一部(例えば、決定モジュールという意味で)であってよい。クレーン制御装置と吊り上げ装置との接続、および/またはクレーン制御装置と開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置との接続は、一般的に有線接続を介して、かつ/または無線信号接続を介して実現されていてよい。
【0018】
例えば、機械式および/または液圧式の折曲システムを組み付けるために、空間内における伸縮ブームの-とりわけ(クレーン支柱からの距離に関して)最も外側にある伸縮ブームの-絶対的な角度も、特に関心が持たれる可能性がある。このために、従来技術では通常、伸縮ブームの角度が、クレーンブームのベアリングにおいて、またはそのすぐ近傍において直接的に測定される。なぜなら、クレーンブームのベアリングにおいては実質的に変形が生じないからである。したがって、とりわけ変形下における伸縮ブームの角度は、空間内における絶対的な角度とは明確に相違することとなり、固定式のクレーンブームシステムを仮定したときの補正角度も、折曲システムの正確な絶対的な角度をもたらさない。なぜなら、この場合、角度の測定は、最も外側にある伸縮ブームに対して相対的に実施されるからである。したがって、とりわけ最も外側にある伸縮ブームの角度を、変形モデルと、クレーン基部の傾きとを考慮して決定することが特に好ましい。角度の決定を、もっぱら変形モデルの計算によって実施してもよいし、かつ/または例えば角度センサのようなセンサデータを使用して実施してもよい。
【0019】
変形を決定するためのモデルでは、クレーン支柱および/または主ブームのような特定の構造コンポーネントは、実際には変形するにもかかわらず固定式であると仮定されてよく、計算の精度に対する要求に応じて、これらの構造コンポーネントの変形を、完全に変形モデルに算入してもよい。
【0020】
冒頭で述べたように、クレーン先端部を備えた関節式のクレーンブームシステムを含む、車両接続式の吊り上げ装置のための開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置であって、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置に、吊り上げ装置に配置されている少なくとも1つのセンサの少なくとも1つのセンサ信号を供給することができ、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置は、少なくとも1つの動作モードにおいて、少なくとも1つのセンサ信号を考慮して、動的な力および静的な力の作用下で生じるクレーンブームシステムの変形を特定し、変形を考慮して、クレーンブームシステムの、とりわけクレーン先端部の少なくとも1つの点の位置を決定するように構成されており、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置は、傾きセンサに信号を伝送するように接続されているかまたは接続可能であり、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置は、少なくとも1つの動作モードにおいて、傾きセンサの傾きセンサ信号を考慮して、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的な、吊り上げ装置が載置されているクレーン基部の傾きに基づいて、吊り上げ装置の斜め姿勢を決定し、少なくとも1つの点の位置を決定する際に考慮するように構成されている、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置に対する保護も求められている。
【0021】
例えば、クレーン基部の傾きを検出するための傾きセンサを、クレーン基部のような固定式の構造コンポーネントに配置することができ、これにより、変形モデルによって(とりわけ少なくとも1つのセンサのデータに基づいて)伸縮ブーム同士の間の、伸縮ブームとクレーン支柱との間の、かつ/またはクレーン支柱とクレーン基部との間の現在の角度を推定することができ、とりわけ、角度に関する補正値が計算される。
【0022】
傾きの測定を間接的に実施することも考えられ、この場合、傾きセンサは、例えば外側にある伸縮ブームに配置されており、変形モデルによって(クレーン基部、クレーン支柱、および/またはさらなる伸縮ブームに対して相対的な)伸縮ブームの測定された傾きによって、クレーン基部の傾きが推定される。
【0023】
センサおよび傾きセンサの数は、一般的に任意であり、複数のセンサおよび/または傾きセンサを用いることによって、クレーン基部の傾き測定の精度を高めることができる。特に好ましくは、センサおよび/または傾きセンサの数は、車両接続式の吊り上げ装置の伸縮可能な伸縮ブームの数から1を引いた数に等しく、かつ1以上である。
【0024】
クレーンブームシステムの斜め姿勢は、クレーンブームシステムの幾何形状にわたる意図的な斜め姿勢によって、すなわちクレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とによって引き起こされる可能性があり、少なくとも1つの点の位置を決定する際に、とりわけクレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルにおいて、全ての3つの態様を考慮することができる。
【0025】
冒頭で述べたように、車両接続式の吊り上げ装置であって、少なくとも1つのこのような開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置、クレーン先端部と、クレーン基部と、吊り上げ装置に配置されている少なくとも1つのセンサと、傾きセンサとを備えた関節式のクレーンブームシステムを備えた、吊り上げ装置に対する保護も求められている。
【0026】
冒頭で述べたように、このような開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置によって実行された場合に、このような開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置に、このような方法のステップを実施させる命令を含む、コンピュータプログラム製品に対する保護も求められている。
【0027】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項において規定されている。
【0028】
本発明の有利な実施形態によれば、クレーンブームシステムは、少なくとも2つの伸縮ブームを備えた少なくとも1つの入れ子式の伸縮ブームシステムを含み、少なくとも1つの点の位置を決定する際に、少なくとも2つの伸縮ブームのうちの少なくとも1つの伸縮ブームの現在のストローク長さが、好ましくはストローク長さセンサによって決定および考慮され、現在のストローク長さは、クレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルにおいて考慮される。
【0029】
一般的に、伸縮ブームは、関節式に(折曲システムによって)かつ/または並進的に運動可能であるように構成されていてよく、ストローク長さの変化によってクレーンブームシステムの幾何形状が変化させられ、これにより、クレーンブームシステムの変形と、クレーン基部の傾きとを変化させることができる。場合によってクレーンブームシステムに配置されている荷重質量、および/または伸縮ブームおよび/または折曲システムの角度の変化も、とりわけストローク長さが種々異なる場合には、モーメントの変化を引き起こす。
【0030】
有利には、少なくとも2つの伸縮ブームは、互いに異なる剛性を有し、これらの剛性が、少なくとも1つの点の位置を決定するために計算かつ/または考慮される。しかしながら、一般的には、剛性は、必ずしも種々異なっている必要はなく、例えば、伸縮ブームの比較的薄肉で大きい横断面は、伸縮ブームの比較的肉厚で小さい横断面と同じ剛性を有している場合があり、変形モデルにおいて、例えば複数の伸縮ブームを、これら複数の伸縮ブーム(例えば、入れ子式の伸縮ブームシステム全体)のうちの1つに対応付けられた剛性を介して統合することができる。
【0031】
種々異なる剛性と、種々異なる剛性がクレーンブームシステム(例えば、入れ子式の伸縮ブームシステムおよび/または折曲システム)の変形に対して及ぼす影響とを考慮することにより、少なくとも1つの点の位置の決定を、特に厳密に実現することができる。剛性は、一般的に材料固有のパラメータと、幾何形状的なパラメータとに依存している。
【0032】
剛性、剛性がクレーンブームシステムの変形に対して及ぼす影響、および/またはクレーンブームシステムの変形が、クレーン基部の傾きおよび/または吊り上げ装置の斜め姿勢および/または少なくとも2つの伸縮ブームのストローク長さによって特定されることが、好適であると判明している。
【0033】
-例えば、伸縮ブームの剛性が厳密に把握されていない場合には-種々異なる剛性を、クレーンブームシステムの変形のためのモデルに基づいて少なくとも1つの点の位置を決定するための出力パラメータとしてもよい。例えば、クレーンブームシステムの変形と、クレーン基部の傾きとが(場合によってはセンサによって特定されて)既知である場合には、とりわけ吊り上げ装置の所与の運転期間の後にクレーンブームシステムの摩耗が存在する場合に、目下の剛性を推定することができる。特に好ましくは、クレーンブームシステムの剛性、好ましくは種々異なる剛性は、少なくとも1つの点の位置を特定するための変形モデルの入力パラメータである。
【0034】
一般的に、吊り上げ装置の幾何形状に関するパラメータは、変形を計算するためのモデルに対する影響量、または逆方向に見ると、変形モデルからの出力量であってよい。通常、クレーンブームシステムの剛性と、この剛性が変形に対して及ぼす影響とが、クレーンブームシステムの変形を計算するためのパラメータを成しており、一般的に、変形モデルに基づいて、ストローク長さおよび/またはクレーン基部の傾きおよび/または吊り上げ装置の斜め姿勢を考慮して、クレーンブームシステムの剛性、またはこの剛性が変形に対して及ぼす影響についての推定を特定することもできる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、クレーンブームシステムは、少なくとも2つの入れ子式の伸縮ブームを含み、少なくとも2つの伸縮ブームは、シーケンス制御を有し、少なくとも1つの点の位置を決定する際に、少なくとも1つの伸縮ブームの現在の目下のストローク長さが考慮される。
【0036】
シーケンス制御は、所与のプロフィール形状および/または横断面において、伸縮ブームのストロークの長さと、個々の伸縮ブームの剛性との間の一義的な関係性を、特に好適に生成することができるようにするために利用可能であり、クレーンブームシステムの個々の伸縮ブームには、それぞれ異なる剛性が付与されていてよい。同様の考察は、重心および固有モーメントの計算にも当てはまる。使用される変形モデルを適用するために個々の伸縮ブームの位置決めについて把握することに関連して、シーケンス制御を使用することができ、例えば、(クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムに作用する力とによって引き起こされる)空間内におけるクレーンブームシステムの傾きによって、クレーンブームシステムの少なくとも1つの点の位置が水平線の上方に存在するか、または下方に存在するかを、特に精確に決定することができる。特に好ましくは、個々の伸縮ブームがそれぞれ異なる剛性を有する場合に、シーケンス制御が使用される。
【0037】
これに代えて、本発明の好ましい実施形態によれば、クレーンブームシステムは、少なくとも2つの入れ子式の伸縮ブームを含むことができ、クレーンブームシステムは、部分的なシーケンス制御(クレーンブームシステムのただ1つの伸縮ブームに関連するシーケンス制御)を含むことができるか、またはシーケンス制御を有さない(シーケンス制御が設けられていない)ように構成されていてよく、
・少なくとも2つの伸縮ブームのストローク長さを特定するための追加的なセンサが設けられており、かつ/または
・シーケンス制御されていない伸縮ブームの剛性が、1つの共通の剛性に統合され、好ましくは吊り上げ装置の重心のシフトが考慮され、かつ/または
・クレーンブームシステムの変形の計算が、第1の剛性と、第1の剛性とは異なる第2の剛性とを用いるクレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルによって実施される。
【0038】
とりわけ、スペース上および/またはコスト上の理由から、部分的なシーケンス制御だけが可能であるか、またはシーケンス制御が全く不可能である場合には、これにより、ストローク長さおよび/または剛性との関係性を、少なくとも1つの点の位置を決定するために間接的に推定することができ、この場合、シーケンス制御されていない伸縮ブームの選択および数は、一般的に任意である。好ましくは設定されたまたは設定可能な、種々異なる剛性を用いて計算が実施される場合には、吊り上げ装置の使用分野および/または吊り上げ装置に対する要求に応じて、計算の結果として不都合なケース(ワーストケースシナリオ)を引き起こすような計算を使用することができ、これにより、例えばクレーンブームシステムにおける、計算によって最も遠くにあるとされた点によって、確実な過荷重防止および/または高さ制限を特定することができるか、または少なくとも1つの点の位置の計算において場合によって生じる誤差限界を考慮することができる。第1の剛性および第2の剛性を、一般的に伸縮ブームの幾何形状に基づいて、好ましくは個々の伸縮ブームに対して個別に仮定することができる。より好適なケースを利用すること、および多数の剛性を用いて計算することも考えられる。
【0039】
特に好ましくは、少なくとも3つの入れ子式の伸縮ブームが設けられている場合に、部分的なシーケンス制御が設けられており、例えば、少なくとも3つの入れ子式の伸縮ブームのうちの少なくとも2つに(部分的な)シーケンス制御が設けられている。部分的なシーケンス制御とは、この文脈では、クレーンブームシステムに設けられている全ての伸縮ブームが順次連続して伸長または収縮させられるのではなく、伸縮ブームの総数のうちの一部だけが伸長または収縮させられるということを意味し、シーケンス制御されていない伸縮ブームに対しては、これらの伸縮ブームの順序を、任意に(個別にかつ/または定義可能に)実現することができる。
【0040】
本発明の有利な実施形態によれば、吊り上げ装置は、少なくとも1つの固定式の吊り上げ装置区分、好ましくはクレーン基部と、吊り上げ装置および/またはクレーン支柱のための車両と、少なくとも1つの変形可能な吊り上げ装置区分、好ましくはクレーンブームシステムの場合によって設けられている少なくとも1つの伸縮ブームとを含み、少なくとも1つの固定式の吊り上げ装置区分における吊り上げ装置の傾きが決定され、かつ/またはクレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルにおいて考慮される。
【0041】
クレーンブームシステムの変形を決定し、次いで少なくとも1つの点の位置を決定するためのモデルを、吊り上げ装置の精度および/または種類に対する要求に応じて適合させることができる。一般的に、車両接続式の吊り上げ装置全体の変形を、好ましくは車両接続式の吊り上げ装置に配置されている車両とともに特定するためのモデルを設けることも可能である。固定式の吊り上げ装置区分と、変形可能な吊り上げ装置区分との選択は、一般的に任意であり、吊り上げ装置の全ての構造コンポーネントを、変形可能であると仮定してもよい。主ブームの代わりに入れ子式のクレーン支柱または折曲ブームを備えた吊り上げ装置の形態も考えられ、変形モデルにおいてフレキシブルに考慮可能である。好ましくは、クレーン支柱は、クレーン基部と主ブーム(例えば、クレーン支柱に結合された第1の入れ子式の伸縮ブームまたは第1の折曲ブーム)との間の接続部材である。
【0042】
好ましくは少なくとも1つの傾きセンサおよび/または少なくとも1つの角度センサによって、
・地面に対して相対的な、クレーン基部の傾き、および/または
・固定式の吊り上げ装置区分と、少なくとも1つのさらなる固定式の吊り上げ装置区分との間の少なくとも1つの角度、および/または
・固定式の吊り上げ装置区分と、変形可能な吊り上げ装置区分との間の少なくとも1つの角度、および/または
・変形可能な吊り上げ装置区分と、さらなる変形可能な吊り上げ装置区分との間の少なくとも1つの角度
が特定され、クレーン基部の傾き、吊り上げ装置の斜め姿勢、および/または少なくとも1つの角度が、クレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルにおいて考慮され、少なくとも1つの点の位置が計算されることが、有利であると判明している。
【0043】
特に好ましくは、クレーンブームシステムにおける少なくとも1つの点を決定することに加えて、空間内における少なくとも1つの伸縮ブームの角度も決定され、少なくとも1つの伸縮ブームの角度は、好ましくは固定式の吊り上げ装置区分と、固定式の吊り上げ装置区分との間のさらなる角度によって角度センサによって特定され、このさらなる角度は、変形モデルにおいて、クレーン基部の傾きを考慮して考慮される。
【0044】
固定式の吊り上げ装置区分は、この文脈では、定置の構造コンポーネントを定義しているわけではなく、例えば吊り上げ装置のさらなる構造コンポーネントに対して相対的に関節式に運動可動であるが、変形モデルにおいて、高められた剛性を有することおよび/または実質的に非フレキシブルであることが仮定されている構造コンポーネントを定義している。
【0045】
少なくとも1つの角度を決定することにより、クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とに対して影響を及ぼす幾何形状を、-場合により、伸縮ブームのストローク長を考慮して-推定することができる。クレーンブームシステムの変形のためのモデルは、クレーンブームシステムの変形をモデル化するために、入力パラメータとして、例えばクレーン基部の傾きと、角度センサによって決定される角度とを含むことができる。
【0046】
例えば、クレーン基部の傾きと、クレーン支柱に対する角度とを測定することができ、伸縮ブームの角度は、変形を特定するためのモデルによって、クレーン支柱に対する傾きおよび/または角度を考慮して算出される。しかしながら、この角度を、1つの伸縮ブームにおいて測定してもよいし、またはクレーンブームシステムの複数の構造エレメントにおいて測定してもよい。
【0047】
伸縮ブームおよび/またはクレーン支柱の剛性を、クレーン基部の傾きの情報と、特定された角度とによって決定することも考えられる。
【0048】
とりわけ、吊り上げ装置の側方向の変形と、クレーンブームシステムの個々の伸縮ブームの-互いに対して相対的な、かつ/または空間内における絶対的な-角度とを、クレーン基部の傾きを考慮して特定することができる。
【0049】
本発明の有利な変形形態では、クレーンブームシステムの複数の点が計算され、複数の点によって、クレーンブームシステムの、好ましくは吊り上げ装置の幾何形状が特定される。
【0050】
クレーンブームシステムの複数の点が既知である場合には、例えばクレーン先端部の衝突回避を、吊り上げ装置のさらなる構造コンポーネントまで拡張することができる。しかしながら、衝突回避は、一般的にクレーン先端部に限定されているわけではなく、とりわけ、-例えば、周囲認識のためのセンサを備えた-車両および/またはクレーンブームシステムの構造コンポーネントに関連していてよい。
【0051】
特に好ましくは、吊り上げ装置に配置されている荷重質量が、クレーンブームシステムの変形と、クレーン基部の傾きとを考慮して計算され、好ましくは、荷重質量は、少なくとも1つの点の位置の決定前、決定中、および/または決定後に、特に好ましくは場合によって設けられている角度センサおよび/または圧力センサによって計算される。
【0052】
これにより、センサによって荷重質量を特定する必要がなくなり、例えば、荷重質量が計算され、計算された荷重質量によって、とりわけ伸縮ブームの目下の角度、ストローク長さ、および/または剛性を考慮して、変形モデルが適合させられる。荷重質量は、例えばクレーンブームの幾何形状の変化、クレーンブームシステムの変形、および/または水平線に対して相対的なクレーン基部の傾きの変化に基づいて計算可能である。荷重質量は、例えばクレーンフックに配置されている吊り荷によって定義可能である。
【0053】
例として、荷重質量は、以下のように決定可能である。すなわち、角度センサの形態のセンサが、伸縮ブームと、クレーン支柱と、クレーン基部との間の角度を特定し、伸縮ブームのストローク長さが、所与の全ストローク長さにおける角度によって、または場合によってストローク長さセンサによって特定され、吊り上げ装置の積載量が、伸縮ブームの荷重を決定するシリンダ内に設けられた圧力測定センサによって特定および/または計算され、積載量によってクレーンブームシステムの変形が計算され、変形と積載量とによって荷重質量が計算される。
【0054】
同様にして、伸縮ブームに加えてかつ/または伸縮ブームに代えて折曲システムを有する吊り上げ装置においても、荷重質量を特定することができ、相応にして、角度は、折曲システムの(主ブームおよび/またはさらなる関節式に接続されたブームのような)ブームに対して相対的に決定される。
【0055】
少なくとも1つの点の位置は、少なくとも1つのクレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とを考慮して特定可能である。
【0056】
一般的に、少なくとも1つの点の位置を決定するために、少なくとも2つの変形モデルを使用すること、または実際の目下の変形を、変形モデルからの変形と比較することも考えられる。場合により、変形モデルからの変形を、実際の目下の変形によって適合させることができる。変形モデルを、例えばビームモデルによって近似させることができる。
【0057】
本発明の好ましい実施例では、荷重質量、好ましくは計算された荷重質量が、クレーンブームシステムの変形を特定するためのモデルにおいて考慮される。
【0058】
クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とは、とりわけクレーンブームシステムに配置されている荷重質量に依存しており、これにより、一方では、クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とから荷重質量を特定することができ、他方では、荷重質量を、(傾きを考慮して)クレーンブームシステムの変形モデルに算入することができ、これにより、少なくとも1つの点の位置が特に有利に決定されることを保証することができる。
【0059】
一方では、反復プロセスにおいて、まず始めに変形モデルによって荷重質量を特定し、次いでこの荷重質量を、変形モデルによる計算のために利用することができ、他方では、荷重質量が変形に対して及ぼすフィードバックによって変形モデルに影響を及ぼすことができるか、または変形モデルが、クレーンブームシステムの実際の目下の変形についての推定を特に高精度で保証するように、変形モデルを適合させることができる。一般的に、クレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルを較正する目的で、荷重質量を使用することも可能である。
【0060】
本発明の好ましい実施例によれば、クレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルが、クレーンブームシステムの設定可能なまたは設定された摩耗によって、かつ/または少なくとも1つの設定可能なまたは設定されたパラメータによって較正される。
【0061】
設定可能なまたは設定された少なくとも1つのパラメータは、例えば、伸縮ブームの現在の目下のストローク長さ、運動の速度、プロファイル形状、および/または横断面であってよく、所望の過荷重安全性および/または安定性を、較正のためのパラメータとして、またはクレーンブームシステムの最大変形のための限界値として規定することも考えられる。特に好ましくは、パラメータは、短時間期間内での正確な較正のために特に好適に使用することができる荷重質量である。摩耗は、通常、長期効果であり、好ましくは、例えば吊り上げ装置および/または変形モデルの性能が低下している場合に摩耗を考慮して(後)較正を実施することにより、少なくとも1つの点の位置を決定する際の精度を高めるために、摩耗を利用することができる。好ましくは、例えば(製造時等における構成部材の)ある程度の製造誤差の影響を補償するために、初回較正が実施され、この製造誤差が、特に好ましくはクレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルにおいて考慮される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によれば、吊り上げ装置のための少なくとも1つの制御信号が手動で設定され、少なくとも1つのアクチュエータのための少なくとも1つの操作量が、少なくとも1つの点の位置および/または少なくとも1つの点の予測位置を考慮して計算される。
【0063】
クレーン基部の傾きと、少なくとも1つの点の位置とを把握することにより、クレーンブームシステムの運動に関する外挿が可能となり、これにより、とりわけ軌道忠実性を高めることができる。予測位置は、同じ変形モデルによって特定可能であり、将来的に変化させられるべきクレーンブームの幾何形状が、計算のためのパラメータとして使用される。現在の位置と、予測位置とを把握することにより、(とりわけ、吊り上げ装置における2つの折曲システムにおける)座標制御のような半自動機能を改善することができ、アクチュエータ制御または操作者プロセスにも、好適な影響を及ぼすことができる。
【0064】
これに関連して、とりわけ種々異なる積載量または種々異なる荷重質量のもとで、クレーンブームシステムの格納されている軌道曲線を、繰り返し進行させることも可能である。
【0065】
快適性機能という意味での半自動機能は、例えば、(場合によっては、軌道忠実性および/または衝突回避を考慮した)空間内におけるクレーンブームシステムの位置決めに関連することができ、例えば、所望の荷下ろし箇所が設定されており、その荷下ろし箇所において荷重質量を降ろすことができるようにするために、吊り上げ装置のクレーン制御装置によって、計算のために必要とされる位置が吊り上げ装置に伝達される。
【0066】
クレーンブームシステムが、折曲システムと、さらなる折曲システムとを含んでいる場合には、これら両方の折曲システムの間の(基準平面に対して相対的な空間内における絶対的な)角度を、クレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とを考慮して決定することが、特に好ましい(
図5を参照のこと)。
【0067】
さらに好ましくは、吊り上げ装置が載置されている車両の、地面に対する変形および/または傾きが特定され、かつ/または計算され、少なくとも1つの点の位置を決定する際に考慮される。
【0068】
車両および/またはクレーン支柱の傾きは、本発明によれば、一般的に決定されなくてもよいが、少なくとも1つの点の位置が誤差を受けることを追加的に軽減することができる。クレーン基部の傾きは、一般的に車両の傾きを含み、車両の傾きは、ひねりに基づいて、位置に依存して種々異なる値をとる可能性もある。
【0069】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの点の位置を、位置に関連するクレーン基部の傾き、および/または位置に関連するクレーンブームシステムの変形、好ましくは場合によって存在する伸縮ブームのストローク長さ、および/または伸縮ブームとクレーン基部との間の角度とともに、データベースに保存することができる。
【0070】
データベースに保存することにより、ユーザが、少なくとも1つの点のすでに実現された位置を改めて快適に制御することを可能にすることができ、場合により、クレーンブームシステムの(傾きおよび変形に対する作用を伴う)荷重質量の変化または幾何形状の変化によって、吊り上げ装置の運動が補正される。
【0071】
本発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1つの点の位置を決定することにより、少なくとも1つの点および/または吊り上げ装置の位置の軌道計画が、計画された軌道に沿ったクレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの変形とを考慮して作成される。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、軌道計画は、データベースに保存されている少なくとも1つの点の位置に基づいて作成される。
【0073】
一般的に、クレーンブームシステムを変形させるためのモデルに基づいても-場合によってはクレーン基部の傾きの変更を考慮して-、すでに決定された少なくとも1つの点の位置によっても、軌道計画を生成することができ、とりわけ、クレーンブームシステムの幾何形状のようなパラメータを考慮することができる。
【0074】
特に好ましくは、少なくとも1つの点の位置が、クレーン制御装置の少なくとも1つの半自動機能に提供され、好ましくは、吊り上げ装置の軌道計画が、少なくとも1つの点の位置を考慮して特定され、かつ/または手動での設定によって補正可能である。
【0075】
手動での設定を、軌道計画によって、かつ/または少なくとも1つの点の位置または予測位置によって、クレーン制御装置によって補正することも考えられる。
【0076】
特に好ましくは、吊り上げ装置の到達範囲内にある対象物および/または障害物を検出するための少なくとも1つの検出センサ、好ましくはカメラが設けられており、対象物および/または障害物が、軌道計画において考慮される。これに代えてまたはこれに加えて、少なくとも1つの検出センサとして、レーダ、LiDAR、LADAR、レーザ、超音波センサ、またはこれらに類するものを使用してもよい。
【0077】
少なくとも1つの検出センサによって、衝突回避という意味で回避経路および/または回避されるべき対象物または障害物を考慮して、軌道計画を計算することができる。例えば、カメラは、対象物を検出し、少なくとも1つの点の位置に基づいて、かつ/または少なくとも1つの点の予測位置に基づいて回避経路を作成する。外部のコントローラによって現在のクレーン先端部の位置を伝達することによって、ロボットクレーンを操作することも考えられる。
【0078】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの点の位置を決定する際におけるクレーンブームシステムの重心位置が、クレーン基部の傾き、クレーンブームシステムの変形、クレーンブームシステムの幾何形状、および/またはクレーンブームシステムの少なくとも1つの伸縮ブーム内に配置されている作動油の重量に依存して考慮され、好ましくは、場合によって吊り上げ装置に配置されている荷重質量が、クレーン基部の傾き、クレーンブームシステムの変形、クレーンブームシステムの幾何形状、および/またはクレーンブームシステムの少なくとも1つの伸縮ブーム内に配置されている作動油の重量によって計算される。
【0079】
重心位置は、とりわけクレーン基部の傾きと、クレーンブームシステムの幾何形状と、伸縮ブームの目下のストローク長さとに依存している。さらに、重心位置は、(所与の温度および/または密度における)作動油体積の大きさと、伸縮ブーム内における作動油体積の場所とによって影響を受ける。
【0080】
例えば、とりわけ入れ子式の伸縮システムのたわみのような変形のためのモデルにおいて、それぞれの伸縮システムの重心の変化を考慮および/または計算することができ、これにより、特に好適には、荷重質量を-例えば、そのために設けられたセンサによって-事前に決定する必要なしに、現在の目下の荷重質量を特定することが可能となり、この場合、この特定は、液圧シリンダ内の作動油の量の変化によって引き起こされる目下のクレーン位置および/またはクレーン幾何形状に依存していてよく、作動油の量自体は、シリンダ位置に依存している可能性があり、かつ/またはピストン面積とロッド面積との比に依存している可能性がある。
【0081】
重心位置は、車両接続式の吊り上げ装置の固有モーメントに対して影響を及ぼし、この固有モーメント自体を、変形モデルによって、クレーンの具体的な目下の過荷重および/または安定性のために利用することができる。例えば、変形モデルの入力量として積載量を使用することができ、とりわけ、圧力センサによってリフトシリンダ内の圧力が測定され、クレーン幾何形状によって積載量が決定され、好ましくは、摩擦モデルによって決定されたシリンダ摩擦の分だけシリンダ力が修正される。決定された荷重質量を、変形モデルにおいて考慮することができる。
【0082】
好ましくは、クレーンブームシステムの第1の折曲システムの少なくとも1つの伸縮ブームおよび/または少なくとも1つの折曲ブームシリンダのための作動油の量が考慮される。吊り上げ装置が2つの折曲システムを備えるように構成されている場合には、第2の折曲システムの少なくとも1つの伸縮ブームおよび/または少なくとも1つの折曲ブームシリンダのための作動油の量が考慮される。これにより、吊り上げ装置の目下の幾何形状における固有モーメントを、特に好ましくは変形モデルに算入することができる。
【0083】
重心位置のシフトが、安定性および/または過荷重安全性の変化を引き起こすことが、好適であると判明している。
【0084】
安定性は、この文脈では、定義された安全マージンを考慮して吊り上げ装置が傾倒しない最大のモーメントに関する。過荷重安全性は、この文脈では、定義された安全マージンを考慮して吊り上げ装置の塑性変形が依然として生じない最大のトルクに関する。
【0085】
重心位置のシフトは、センサによって識別可能であり、かつ/またはクレーンブームシステムの変形を決定するためのモデルから算出可能であり、この場合、安定性および過荷重安全性を、より厳密に計算することができ、かつ/またはより良好に利用し尽くすことができる。
【0086】
重心位置は、吊り上げ装置の吊り上げ運転によっても、吊り上げ装置の装備状態によっても影響を受ける可能性がある。例えば、ロープウィンチ動作では、クレーンの重量は、実質的に常に一定であるが、重心位置は、一般的に装備状態によって-例えば、ロープストランドの数、ロープドラムの巻き出し度、ロープの位置等のように、ロープの状況が種々異なる場合-吊り上げ装置におけるロープの重量分布に依存して変化する。
【0087】
クレーンブームシステムの側方向の変形、および/または個々の伸縮ブームの傾きが、特に好ましくは、少なくとも1つの点の位置を特定する際、かつ/または伸縮ブームの傾きを決定する際に考慮される。
【0088】
クレーン制御装置は、幾何形状センサにより、固定式であってかつ傾けられていないモデルに従ってクレーン位置を反復的に特定することができ、傾き測定センサにより、固定式であってかつ傾けられたモデルに従ってクレーン位置を反復的に特定することができ、荷重を決定するリフトシリンダ内に設けられた圧力測定センサにより、クレーン位置を変形させられかつ傾けられた状態で特定することができ、荷重および固有モーメントを決定することにより、荷重質量または吊り荷を決定することができる。一般的に、クレーン制御装置は、複数のプロセスステップを同時に実施してもよいし、かつ/または例えば荷重質量の特定を省略してもよい。
【0089】
車両接続式の吊り上げ装置のユーザが制御信号を設定する場合には、クレーン制御装置によって操作量を計算することができ、例えば安全性指向機能および/または快適性機能のために適合させることができ、対応するアクチュエータのための操作量のセットを生成することができる。
【0090】
2つの点の少なくとも2つの位置によって、吊り上げ装置の選択された構造コンポーネントの角度を決定することもできる。
【0091】
方法についての請求項の特徴を、装置についての請求項に転用することができ、その逆もまた可能である。
【0092】
本発明のさらなる詳細および利点を、図面に示された実施例を参照しながら図面の説明に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】クレーン基部が傾けられており、かつクレーンブームシステムに荷重質量が配置されている状態における吊り上げ装置を、クレーンブームシステムの2つの異なる幾何形状において示す概略図である。
【
図2】クレーン基部が傾けられている状態と、クレーン基部が傾けられていない状態とにおける吊り上げ装置を示す概略図である。
【
図3a】シーケンス制御を有する吊り上げ装置を示す概略図である。
【
図3b】シーケンス制御を有していない吊り上げ装置を示す概略図である。
【
図4a】クレーン基部が傾けられておらず、かつクレーンブームシステムが変形させられていない場合における吊り上げ装置を示す図である。
【
図4b】クレーン基部が傾けられており、かつクレーンブームシステムが変形させられていない場合における吊り上げ装置を示す概略図である。
【
図4c】クレーン基部が傾けられており、かつクレーンブームシステムが変形させられている場合における吊り上げ装置を示す概略図である。
【
図5a】2つの折曲システムを備えた吊り上げ装置を示す概略図であり、この場合、2つの折曲システム間の角度が、クレーンブームシステムの変形と、クレーン基部の傾きとを考慮して特定されている。
【
図5b】クレーン基部の傾きを補償するために角度が補正されている、傾けられておりかつ変形させられていない吊り上げ装置を示す概略図である。
【
図6】クレーンブームシステムとクレーン制御装置とを備えた車両接続式の吊り上げ装置を示す概略図である。
【0094】
図1は、車両接続式の吊り上げ装置1を示し、車両は、見易くする理由から図面に示されていない(
図6を参照のこと)。吊り上げ装置1は、クレーン先端部3とクレーン基部4とを備えた関節式のクレーンブームシステム2を含み、吊り上げ装置1は、クレーンブームシステム2の、とりわけクレーン先端部3の複数の点5(以下の説明では単数形を使用する)の特定された位置を考慮して制御されるように構成されており、点5の位置を決定する際に、動的な力および静的な力の作用下で生じるクレーンブームシステム2の変形6が考慮される。クレーンブームシステム2の複数の点5が、変形モデルによって計算され、複数の点5によって吊り上げ装置1の幾何形状が特定される。
【0095】
吊り上げ装置1は、2つの姿勢で示されており、固有モーメントと荷重質量22とに基づいて、クレーンブームシステム2の幾何形状に依存して、複数の異なる変形6が引き起こされている。これらの変形6から荷重質量22を算出することができ、センサによって別個に特定する必要はない。クレーンブームシステム2の対応する変形させられていない幾何形状が、破線で示されている。
【0096】
点5の位置を決定する際に、空間内における設定された方向に対して相対的なクレーン基部4の傾き7に基づいて、吊り上げ装置1の斜め姿勢が決定および考慮される。空間内における設定された方向は、基準方向であり、この基準方向は、絶対的な座標(自由に定義されるべき世界座標)において定義可能であり、水平線に対して相対的なクレーンブームシステム2の幾何形状のための基礎として表されてよい。
【0097】
吊り上げ装置1のクレーンブームシステム2に配置されている荷重質量22が、クレーンブームシステム2の変形6と、クレーン基部4の傾き7とを考慮して計算され、点5の位置の決定前、決定中、および決定後に、荷重質量22を計算することができる。補助として、角度センサ16または圧力センサ30(
図6を参照のこと)を使用することができる。
【0098】
計算された荷重質量22は、クレーンブームシステム2の変形6を決定するためのモデルにおいて考慮される。
【0099】
図2は、クレーン支柱13およびクレーン基部4としての固定式の吊り上げ装置区分11と、伸縮ブーム9の形態の変形可能な吊り上げ装置区分14とを備えた吊り上げ装置1を示す。折曲システムのうちの、入れ子式の伸縮ブーム9に隣接する折曲ブームは、固定式であると仮定された吊り上げ装置区分11である。一般的に、クレーンブームシステム2の変形を特定するためのモデルのための固定式の構造エレメントの選択は、任意であって必ずしも必要というわけではなく、特に好ましくは、吊り上げ装置1の全ての区分が変形可能であると仮定される。特に好ましくは、クレーン基部に、または伸縮ブーム9と比較してわずかな変形性を有する区分に、傾きセンサ15が配置されるが、一般的に、クレーン基部4の傾き7を変形モデルによって間接的に決定することも考えられる。
【0100】
本明細書における「固定式」とは、変形モデルにおいても固定式であると仮定することができるか、または固定式であると仮定されるということを意味する。例えば、伸縮ブーム9に対して相対的に固定式であるクレーン支柱13も変形可能であると仮定するようなビームモデルが、特に好ましく、この場合、クレーン支柱13(またはクレーン基部4)が相当な変形を受ける可能性がある場合であっても、それでもなお、クレーン支柱13(またはクレーン基部4)における吊り上げ装置1の傾き7を決定することができる。クレーン基部における傾き7を直接的に測定することが、特に有利であると判明している。
【0101】
吊り上げ装置1は、クレーン基部4が傾けられている場合と、傾けられていない場合とにおいて示されており、折曲システムのうちの、クレーン支柱13に隣接するブームの角度18は、同一であるが、吊り上げ装置1の幾何形状は、傾き7に基づいてそれぞれ異なるように表現されている。クレーン先端部3のような点5を自動的に所望の姿勢へと操縦するために、これに伴って生じるクレーンブームシステム2の変形を考慮して、補正角度によって、傾き7を補償することができる。
【0102】
図3aは、シーケンス制御を備えたクレーンブームシステム2を示し、この場合、複数の伸縮ブーム9が、それぞれ異なる剛性を有し、これらの剛性と、これらの剛性がクレーンブームシステム2の変形6に対して及ぼす影響と、クレーンブームシステムの変形6とが、とりわけ少なくとも1つの点5の位置を決定するために特定および考慮される。続いて、剛性が変形6に対して及ぼす影響が、変形モデルに取り込まれ、なお、剛性は、一般的に既知であってもよい。点5の位置を決定する際に、クレーンブームシステム2の入れ子式の伸縮ブーム9の現在の目下のストローク長さ10が考慮される。
【0103】
剛性と、剛性がクレーンブームシステム6の伸縮ブーム9の変形6に対して及ぼす影響とは、吊り上げ装置1が傾けられている場合には、場合によってクレーン基部4の傾き7、吊り上げ装置1の斜め姿勢、または伸縮ブーム9のストローク長さ10によって計算可能である。
【0104】
図3bは、入れ子式の伸縮ブームシステム8と、複数の入れ子式の伸縮ブーム9とを備えた折曲システムを含む、クレーンブームシステム2を示し、この場合、点5の位置を決定する際に、複数の伸縮ブーム9のうちの少なくとも1つの伸縮ブーム9の現在のストローク長さ10が、ストローク長さセンサ(図示せず)によって決定および考慮される。現在のストローク長さ10は、クレーンブームシステム2の変形6を決定するためのモデルにおいて考慮される。しかしながら、図示の吊り上げ装置1は、
図3aとは異なり、シーケンス制御を含まない。
【0105】
図4aは、傾けられておらず、かつ変形させられていない姿勢における吊り上げ装置1の状態を示す。
【0106】
図4bは、クレーン基部4の傾き7に基づいて斜め姿勢を有する吊り上げ装置1を示し、この場合、吊り上げ装置1は、変形させられていない。
【0107】
図4cは、傾けられており、かつ変形させられている吊り上げ装置1を示し、この場合、クレーンブームシステム2(および吊り上げ装置1全体)の変形6を決定するためのモデルを、クレーンブームシステム2の設定可能な摩耗と、設定可能なパラメータとによって較正することができ、これにより、点5の位置を決定する精度を高めることができる。クレーン制御装置25は、例えば摩耗が存在する場合には、設定に応じてクレーンブームシステム2の幾何形状を適合させることができるか、または安全性パラメータの欠如に基づいて操作設定を阻止することができる。
【0108】
変形6は、一般的に、荷重質量22にも、吊り上げ装置1の目下の幾何形状における傾き7および固有モーメントにも依存している。
【0109】
吊り上げ装置1のための制御信号を手動で設定することができ、クレーンブームシステム2に接続されたアクチュエータ23(
図6を参照のこと)のための操作量を、点5の位置および点5の予測位置を考慮して計算することができる。
【0110】
点5の位置を決定することにより、点5および吊り上げ装置1自体の位置の軌道計画を、軌道計画という意味での計画された軌道に沿ったクレーン基部4の傾き7と、クレーンブームシステム2の変形6とを考慮して作成することができ、軌道計画は、データベース24(
図6のクレーン制御装置25を参照のこと)に保存されている点5の位置に基づいて作成可能であるか、または新たに計算可能である。
【0111】
図5aは、吊り上げ装置1を示し、この場合、傾きセンサ15および角度センサ16(
図6を参照のこと)によって、基準としての平坦な地面17に対して相対的なクレーン基部4の傾き7、2つの折曲システム間の角度18、および第1の折曲システムのうちの第1の伸縮ブーム9(クレーン支柱13の次の伸縮ブーム9)と、第1の伸縮ブーム9に(クレーン支柱13の方向に)隣接する折曲ブームとの間の角度18が特定される。とりわけ傾き7によって引き起こされた変形6を考慮していない折曲システムの幾何形状が、破線で示されている。
【0112】
一点鎖線の線に対して相対的な角度18が算出され、この角度18は、空間内における絶対的な座標における第2の折曲システムの傾きを正確に決定することができるようにするために、個々の伸縮ブーム9に関する変形6を考慮しており、この傾きを、両方の折曲システムの間の角度決定(相対座標)のみによって(または場合によって補正角度を用いて)特定することは不可能であろう。
【0113】
一般的に、さらなる固定式の吊り上げ装置区分11および/または固定式の吊り上げ装置区分11および/または変形可能な吊り上げ装置区分14の間の角度18を、特定または計算することもできる。
【0114】
クレーン基部4の傾き7と、吊り上げ装置1の斜め姿勢と、検出または計算された角度18とが、クレーンブームシステム2の変形を決定するためのモデルにおいて考慮され、点5の位置が計算される。
【0115】
基本的に、第2の折曲システムも変形6を受けるが、クレーンブームシステム2の一部としての第2の折曲システムは、変形モデルにおいて固定式であるものとして、ひいては変形させられていないものとして仮定された。しかしながら、一般的に、第2の折曲システムの変形6も、クレーンブームシステム2全体の変形6を計算するためのモデルに取り入れることができる。一般的に、複数の折曲システムおよび/または複数の入れ子システムを、吊り上げ装置1のクレーンブームシステム2に統合することができ、吊り上げ装置1は、複数のクレーンブームシステム2を含むこともできるか、または両方の折曲システムを、1つの共通のクレーンブームシステム2として見なすことができる。(ここでは第2の折曲システムの結合位置としての)特定されるべき点5の位置は、一般的に任意であり、例えば第2の折曲システムのクレーン先端部3であってもよい。吊り上げ装置1の幾何形状を高精度でモデル化することができるようにするために、多数の点5が特に好ましい。
【0116】
図5bは、傾けられた吊り上げ装置1を示し、この場合、クレーン基部4の傾き7が存在しない場合におけるクレーン幾何形状が、破線で示されている。クレーン基部4の傾き7が存在する場合におけるクレーン幾何形状は、一点鎖線で見て取れ、図面では、クレーン先端部3が、伸縮ブーム9のストローク長さ10が同一である場合における傾けられていない状態に近似するように、クレーンブームシステム2の折曲システムの角度18が適合させられている。個々の伸縮ブーム9のストローク長さ10から、クレーンブームシステムの全体ストローク長さを計算することができる。
【0117】
一般的に、この場合には、吊り上げ装置1の種々異なる変形6も考慮しなければならない。なぜなら、クレーン基部4のこの傾けられた状態では、変形6の増大が生じるからである。伸縮ブーム9のストローク長さ10は、適合させられるべきさらなる自由度をもたらし、変化する剛性も、種々異なる変形6をもたらす。折曲システムのための所要の補正角度は、クレーンブームシステム2の変形を計算するためのモデルから-好ましくはベクトル加法によって-算出可能であり、これにより、場合によって配置されている荷重質量22も考慮して、側方向のずれおよび高さのずれ(ならびに張り出し)が補償され、とりわけ安全性基準を考慮することができる。
【0118】
例えば、傾き7は、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28によって以下のように補償可能である。すなわち、1つの座標系が基準として選択され、この基準は、傾き補償の過程において一般的に変化するので、計算中に適合させられるべきである。線形代数によって、クレーンブームシステム2のブームの第1の補正角度を推定することができ、傾けられた幾何形状の点5の位置と、クレーンブームシステム2の開始幾何形状の対応する点5の位置とが同一であるべきであるという境界条件により、変形モデルにおいてブームの第2の補正角度を推定することができ、この第2の補正角度は、例えば変化した重心位置、変化した作動油分布、変化した固有モーメント、変化した荷重質量位置等を、変換行列において考慮している。
【0119】
点5の位置を決定する際におけるクレーンブームシステム2の重心位置が、クレーン基部4の傾き7と、クレーンブームシステム2の変形と、クレーンブームシステム2の幾何形状と、クレーンブームシステム2の伸縮ブーム9内に配置されている作動油の重量とに依存して考慮される。吊り上げ装置1に配置されている荷重質量22が、クレーン基部4の傾き7と、クレーンブームシステム2の変形6と、クレーンブームシステム2の幾何形状と、クレーンブームシステム2の伸縮ブーム9内に配置されている作動油の重量とによって計算され、クレーンブームシステム2の変形を計算し、次いで点5の位置を決定するためのモデルに、作動油の重量および荷重質量22が取り込まれる。重心位置のシフトは、安定性または過荷重安全性の変化を引き起こす可能性があり、したがって、吊り上げ装置1の変形を決定するための計算アルゴリズムまたはモデルに、重心位置のシフトを含め入れることができる。
【0120】
図6は、車両接続式の吊り上げ装置1を示し、吊り上げ装置1は、支持装置を備えた車両12に配置されている。支持装置の位置は、一般的に任意であり、車両12の傾きに対するクレーン基部4の傾きは、例えば地面が凹凸である場合、または地面の強度が種々異なる場合には、種々異なる結果となる可能性がある。角度センサ16は、好ましくは吊り上げ装置1の回転関節部に位置している。
【0121】
吊り上げ装置1は、クレーンブームシステム2に信号を伝送するようにデータ接続されたクレーン制御装置25を有するように構成されており、クレーン制御装置25は、吊り上げ装置1の一部であってもよいし、またはクレーンブームシステム2にケーブル接続されていてもよい。吊り上げ装置1は、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28、クレーン先端部3とクレーン基部4と吊り上げ装置1に配置されているセンサ29と同じく吊り上げ装置1に配置されている傾きセンサ15とを備えた関節式のクレーンブームシステム2を含む。
【0122】
吊り上げ装置1のための開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28に、吊り上げ装置1に配置されているセンサ29のセンサ信号を供給することができ、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28は、少なくとも1つの動作モードにおいて、センサ信号を考慮して、動的な力および静的な力の作用下で生じるクレーンブームシステム2の変形6を特定し、変形6を考慮して、クレーン先端部3のようなクレーンブームシステム2の点5の位置を決定するように構成されている。開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28は、傾きセンサ15に信号を伝送するように接続されており、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28は、少なくとも1つの動作モードにおいて、傾きセンサ15の傾きセンサ信号を考慮して、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的な、吊り上げ装置1が載置されているクレーン基部4の傾き7に基づいて、吊り上げ装置1の斜め姿勢を決定し、点5の位置を決定する際に考慮するように構成されている。
【0123】
クレーン制御装置25は、データベース24として構成されたデータメモリと、本方法を実施するためのクレーン制御装置25の決定モジュールとしての開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28とを含み、データメモリには、コンピュータプログラムの形態のアルゴリズムが格納されており、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28によってコンピュータプログラムが実行された場合に、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28に、点5の位置を考慮して吊り上げ装置1を制御させる命令が実施される。
【0124】
点5の位置は、点5の位置に関連するクレーン基部4の傾き7と、例えば点5の位置に関連する伸縮ブーム9のストローク長さ10、および伸縮ブーム9同士の間の角度18、または伸縮ブーム9とクレーン基部4との間の角度18のような、さらなる情報とを伴って、データベース24に保存可能である。
【0125】
点5の位置は、クレーン制御装置25の半自動機能に提供可能であり、吊り上げ装置1の軌道計画が、点5の位置を考慮して特定され、吊り上げ装置1の操作員の手動での設定によって修正可能である。
【0126】
吊り上げ装置1は、吊り上げ装置1の到達範囲内にある対象物および障害物を検出するためのカメラの形態の検出センサ26を含み、対象物および障害物は、クレーン制御装置25の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置28によって軌道計画において考慮される。LiDAR、レーダ、またはこれらに類するもののようなその他の検出センサ26も可能である。
【0127】
吊り上げ装置1が載置されている車両12の、地面17に対する変形6および傾き7を、車両センサによって特定または計算することができ、点5の位置を決定する際に、これらの追加的なデータを考慮することができる。
【0128】
クレーンブームシステム2が、部分的なシーケンス制御を有している場合、またはシーケンス制御を有していない場合には、伸縮ブーム9のストローク長さ10を、追加的なセンサによって特定することができ、かつ/またはシーケンス制御されていない伸縮ブーム9の剛性を、計算における重心の変化を考慮して1つの共通の剛性に統合することができる。クレーンブームシステム2の変形6の計算を、伸縮ブーム9の第1の剛性と、伸縮ブーム9の第1の剛性とは異なる第2の剛性とを用いる変形モデルによって実施することも可能であり、とりわけ、点5のより不利な位置を生成する計算が利用される。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン先端部(3)とクレーン基部(4)とを備えた関節式のクレーンブームシステム(2)を含む、車両接続式の吊り上げ装置(1)を、前記クレーンブームシステム(2)の、とりわけ前記クレーン先端部(3)の少なくとも1つの点(5)の特定された位置を考慮して開ループ制御および/または閉ループ制御するための方法であって、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、動的な力および/または静的な力の作用下で生じる前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)が考慮される、
方法において、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的な前記クレーン基部(4)の傾き(7)に基づいて、前記吊り上げ装置(1)の斜め姿勢が決定および考慮される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記クレーンブームシステム(2)は、少なくとも2つの伸縮ブーム(9)を備えた少なくとも1つの入れ子式の伸縮ブームシステム(8)を含み、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)のうちの少なくとも1つの伸縮ブーム(9)の現在のストローク長さ(10)が、好ましくはストローク長さセンサによって決定および考慮され、
前記現在のストローク長さ(10)は、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルにおいて考慮される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)は、互いに異なる剛性を有し、
前記剛性が、前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定するために計算かつ/または考慮される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記剛性、前記剛性が前記クレーンブームシステム(2)の前記変形(6)に対して及ぼす影響、および/または前記クレーンブームシステム(2)の前記変形(6)が、前記クレーン基部(4)の前記傾き(7)および/または前記吊り上げ装置(1)の前記斜め姿勢および/または前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)の前記ストローク長さ(10)によって特定される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記クレーンブームシステム(2)は、少なくとも2つの入れ子式の伸縮ブーム(9)を含み、
前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)は、シーケンス制御を有し、
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に、少なくとも1つの伸縮ブーム(9)の現在の目下のストローク長さ(10)が考慮される、
請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記クレーンブームシステム(2)は、少なくとも2つの入れ子式の伸縮ブーム(9)を含み、前記クレーンブームシステム(2)は、部分的なシーケンス制御を含むか、またはシーケンス制御を有さないように構成されており、
・前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)のストローク長さ(10)を特定するための追加的なセンサが設けられており、かつ/または
・シーケンス制御されていない伸縮ブーム(9)の剛性が、1つの共通の剛性に統合され、好ましくは前記吊り上げ装置(1)の重心のシフトが考慮され、かつ/または
・前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)の計算が、前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)の第1の剛性と、前記少なくとも2つの伸縮ブーム(9)の、前記第1の剛性とは異なる第2の剛性とを用いる前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルによって実施される、
請求項
1記載の方法。
【請求項7】
前記吊り上げ装置(1)は、少なくとも1つの固定式の吊り上げ装置区分(11)、好ましくは前記クレーン基部(4)と、前記吊り上げ装置(1)および/またはクレーン支柱(13)のための車両(12)と、少なくとも1つの変形可能な吊り上げ装置区分(14)、好ましくは前記クレーンブームシステム(2)の場合によって設けられている少なくとも1つの伸縮ブーム(9)とを含み、
前記少なくとも1つの固定式の吊り上げ装置区分(11)における前記吊り上げ装置(1)の傾き(7)が決定され、かつ/または前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルにおいて考慮される、
請求項
1記載の方法。
【請求項8】
好ましくは少なくとも1つの傾きセンサ(15)および/または少なくとも1つの角度センサ(16)によって、
・地面(17)に対して相対的な、前記クレーン基部(4)の傾き(7)、および/または
・固定式の吊り上げ装置区分(11)と、少なくとも1つのさらなる固定式の吊り上げ装置区分(11)との間の少なくとも1つの角度(18)、および/または
・固定式の吊り上げ装置区分(11)と、変形可能な吊り上げ装置区分(14)との間の少なくとも1つの角度(18)、および/または
・変形可能な吊り上げ装置区分(14)と、さらなる変形可能な吊り上げ装置区分(14)との間の少なくとも1つの角度(18)
が特定され、
前記クレーン基部(4)の前記傾き(7)、前記吊り上げ装置(1)の前記斜め姿勢、および/または前記少なくとも1つの角度(18)が、前記クレーンブームシステム(2)の変形を決定するためのモデルにおいて考慮され、
前記少なくとも1つの点(5)の位置が計算される、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記クレーンブームシステム(2)の複数の点(5)が計算され、
前記複数の点(5)によって、前記クレーンブームシステム(2)の、好ましくは前記吊り上げ装置(1)の幾何形状が特定される、
請求項
1記載の方法。
【請求項10】
前記吊り上げ装置(1)に配置されている荷重質量(22)が、前記クレーンブームシステム(2)の前記変形(6)と、前記クレーン基部(4)の前記傾き(7)とを考慮して計算され、
好ましくは、前記荷重質量(22)は、前記少なくとも1つの点(5)の位置の決定前、決定中、および/または決定後に、特に好ましくは場合によって設けられている角度センサ(16)および/または圧力センサ(30)によって計算される、
請求項
1記載の方法。
【請求項11】
荷重質量(22)、好ましくは請求項10に従って計算された荷重質量(22)が、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を特定するためのモデルにおいて考慮される、請求項
1記載の方法。
【請求項12】
前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を決定するためのモデルが、前記クレーンブームシステム(2)の設定可能なまたは設定された摩耗によって、かつ/または少なくとも1つの設定可能なまたは設定されたパラメータによって較正される、請求項
1記載の方法。
【請求項13】
前記吊り上げ装置(1)のための少なくとも1つの制御信号が手動で設定され、
少なくとも1つのアクチュエータ(23)のための少なくとも1つの操作量が、前記少なくとも1つの点(5)の位置および/または少なくとも1つの点(5)の予測位置を考慮して計算される、
請求項
1記載の方法。
【請求項14】
前記吊り上げ装置(1)が載置されている車両(12)の、地面(17)に対する変形(6)および/または傾き(7)が特定され、かつ/または計算され、前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に考慮される、請求項
1記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの点(5)の位置は、前記位置に関連する前記クレーン基部(4)の傾き(7)、および/または前記位置に関連する前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)、好ましくは場合によって存在する伸縮ブーム(9)のストローク長さ(10)、および/または伸縮ブーム(9)と前記クレーン基部(4)との間の角度(18)とともに、データベース(24)に保存される、請求項
1記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定することにより、前記少なくとも1つの点(5)および/または前記吊り上げ装置(1)の位置の軌道計画が、計画された軌道に沿った前記クレーン基部(4)の傾き(7)と、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)とを考慮して作成される、請求項
1記載の方法。
【請求項17】
前記軌道計画は、前記データベース(24)に保存されている前記少なくとも1つの点(5)の位置に基づいて作成される、請求項15および16記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの点(5)の位置が、クレーン制御装置(25)の少なくとも1つの半自動機能に提供され、
好ましくは、前記吊り上げ装置(1)の軌道計画が、前記少なくとも1つの点(5)の位置を考慮して特定され、かつ/または手動での設定によって補正可能である、
請求項
1記載の方法。
【請求項19】
前記吊り上げ装置(1)の到達範囲内にある対象物および/または障害物を検出するための少なくとも1つの検出センサ(26)、好ましくはカメラが設けられており、
前記対象物および/または前記障害物が、前記軌道計画において考慮される、
請求項1
6記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際における前記クレーンブームシステム(2)の重心位置が、前記クレーン基部(4)の傾き(7)、前記クレーンブームシステム(2)の変形、前記クレーンブームシステム(2)の幾何形状、および/または前記クレーンブームシステム(2)の少なくとも1つの伸縮ブーム(9)内に配置されている作動油の重量に依存して考慮され、
好ましくは、場合によって前記吊り上げ装置(1)に配置されている荷重質量(22)が、前記クレーン基部(4)の傾き(7)、前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)、前記クレーンブームシステム(2)の幾何形状、および/または前記クレーンブームシステム(2)の少なくとも1つの伸縮ブーム(9)内に配置されている作動油の重量によって計算される、
請求項
1記載の方法。
【請求項21】
前記重心位置のシフトは、安定性および/または過荷重安全性の変化を引き起こす、請求項20記載の方法。
【請求項22】
クレーン先端部(3)を備えた関節式のクレーンブームシステム(2)を含む、車両接続式の吊り上げ装置(1)のための開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)であって、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)に、前記吊り上げ装置(1)に配置されている少なくとも1つのセンサ(29)の少なくとも1つのセンサ信号を供給することができ、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、少なくとも1つの動作モードにおいて、前記少なくとも1つのセンサ信号を考慮して、動的な力および静的な力の作用下で生じる前記クレーンブームシステム(2)の変形(6)を特定し、前記変形(6)を考慮して、前記クレーンブームシステム(2)の、とりわけ前記クレーン先端部(3)の少なくとも1つの点(5)の位置を決定するように構成されている、
開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)において、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、傾きセンサ(15)に信号を伝送するように接続されているかまたは接続可能であり、
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、前記少なくとも1つの動作モードにおいて、前記傾きセンサ(15)の傾きセンサ信号を考慮して、空間内における設定されたまたは設定可能な方向に対して相対的な、前記吊り上げ装置(1)が載置されている前記クレーン基部(4)の傾き(7)に基づいて、前記吊り上げ装置(1)の斜め姿勢を決定し、前記少なくとも1つの点(5)の位置を決定する際に考慮するように構成されている
ことを特徴とする、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)。
【請求項23】
前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)は、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、請求項22記載の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)。
【請求項24】
車両接続式の吊り上げ装置(1)であって、
請求項2
2記載の、少なくとも1つの開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)と、
クレーン先端部(3)と、クレーン基部(4)と、前記吊り上げ装置(1)に配置されている少なくとも1つのセンサ(29)と、傾きセンサ(15)とを備えた関節式のクレーンブームシステム(2)と、
を備える、吊り上げ装置(1)。
【請求項25】
請求項2
2記載の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)によって実行された場合に、前記開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置(28)に、請求項1から21までのいずれか1項記載の少なくとも1つの方法のステップを実施させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】