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特表2024-518592蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤並びにその調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤並びにその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20240423BHJP
   A61K 49/06 20060101ALI20240423BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K49/00
A61K49/06
A61B5/055 383
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571130
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2022089377
(87)【国際公開番号】W WO2022242437
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110533217.9
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523430803
【氏名又は名称】海南普利製薬股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAINAN POLY PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523430814
【氏名又は名称】浙江普利薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG POLY PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523430825
【氏名又は名称】安徽普利薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI POLY PHARMACEUTICAL CO., LTD
(71)【出願人】
【識別番号】522394580
【氏名又は名称】ジャージアン・ロングチャーム・バイオ-テック・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG LONGCHARM BIO-TECH PHARMA. Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】韓 玉▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 逸凡
(72)【発明者】
【氏名】範 敏華
(72)【発明者】
【氏名】張 震
(72)【発明者】
【氏名】祝 興龍
【テーマコード(参考)】
4C085
4C096
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085HH11
4C085KA09
4C085KA27
4C085KA28
4C085KB12
4C085KB45
4C085KB56
4C085KB74
4C085LL05
4C096AA03
4C096AA11
4C096FC14
(57)【要約】
構造X-L-Yを有する蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤並びにその調製方法及び使用であって、式(I)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、NH、COOH、CONH、NO、CN、及び低級アルキルから選択され、前記低級アルキルは、ハロゲン、OH、NH、COOH、CONH、SOH、NO、又はCNで置換されていてもよく、RとR、RとRは、それぞれ独立して、それらと結合する炭素原子と、フェニル基、又は複素環に環化してもよく、Lは、連結基であり、Yは、金属キレートである、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤並びにその調製方法及び用途である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-L-Yの構造を有する蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤であって、
Xは、
【化1】
の構造を有し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、NH、COOH、CONH、NO、CN、及び低級アルキル基から選択され、前記低級アルキル基は、ハロゲン、OH、NH、COOH、CONH、SOH、NO、又はCNで置換されていてもよく、RとR、RとRは、それぞれ独立して、それらと結合する炭素原子と、フェニル基、又は複素環に環化していてもよく、
Lは、連結基であり、
【化2】
の構造を有し、
Aは、S、N、及びOから選択され、好ましいAは、N、又はOであり、
は、8~20の長さの炭素鎖からなり、前記炭素鎖における炭素原子は、酸素原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、前記炭素鎖中に、二重結合が含まれていてもよく、前記炭素鎖における水素原子は、1~5個のR13で置換されていてもよく、前記R13は、それぞれ独立して、ベンジル基、カルボキシル基、若しくはC1-3アルキル基であり、又は隣接するR13は、それらと結合する原子と、環状構造を形成していてもよく、前記炭素鎖における炭素は、さらにカルボニル基で置換されていてもよく、
Yは、金属キレートである、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤。
【請求項2】
前記Xは、
【化3】
の構造を有し、
、R10、R11、及びR12の定義は、請求項1と同じである、請求項1に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項3】
前記Xは
【化4】
の構造を有する、請求項1に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項4】
前記Lの構造は、
【化5】
であり、
Aの定義は、請求項1と同じであり、
の定義は、Lと同じである、請求項1に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項5】
前記Lは、
【化6】

であり、nは、8~20である、請求項4に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項6】
前記金属キレートは、Gdと錯形成してGd錯体を形成する、請求項1に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項7】
前記Gd錯体は、
【化7】
の構造を有する、請求項6に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項8】
【化8】
の構造から選択される、請求項1に記載のバイモーダル造影剤。
【請求項9】
蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤の調製方法であって、
蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤IIIは式Iの化合物と式IIの化合物とが縮合して得られ、前記式IIの化合物は、
【化9】
と塩化ガドリニウム水和物とが錯形成して得られ、
【化10】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12、Y、A、L、及びZの定義は、請求項1~8のいずれかの定義と同じであり、
あるいは、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤は、式III-1の化合物と塩化ガドリニウム水和物とが錯形成して得られ、
【化11】
前記III-1の化合物は、式I-2の化合物と式II-2の化合物とが縮合して得られ、
【化12】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12、A、L、及びYの定義は、請求項1~8のいずれかの定義と同じである、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤の調製方法。
【請求項10】
医療用磁気共鳴増強イメージング、肝機能の測定、術前計画の支援、手術中の蛍光ナビゲーション、磁気共鳴画像により内臓の蛍光分布の予測、肝機能の測定、腎機能の測定、体内循環の状況と標識細胞のモニタリング、及び体外細胞の分析標識物などの試薬を調製することにおける、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤の使用であって、
前記蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤は請求項1~8のいずれかの定義と同じである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年5月17日に中国知的財産権局に提出され、出願番号は20211053217.9であり、発明名称は「蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤並びにその調製方法及び使用」である、中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医用診断イメージング分野、より具体的には、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤並びにその調製方法及び使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、疾病、特に癌の早期診断の面で著しい発展を遂げているため、従来の臨床イメージング技術は、個人化の癌診療の新たな需要を満たすことが徐々に困難になっている。例えば、陽電子放出断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CT)、X線イメージング、超音波イメージング(US)、及び磁気共鳴スキャンイメージング(MRI)のような従来の臨床診断技術は、特異性が劣り、病変の位置情報が限られることなどの、固有の欠陥に制限されている。その中で、MRIは、臨床上、最も広く応用されている画像診断方法であり、MRI技術は、一般に、異なる組織又は器官における陽子の「スピン-格子緩和時間」と「スピン-スピン緩和時間」の違いを利用してイメージングを行う。MRIは、非侵襲的な、電離放射線を利用しないイメージング方式であり、生体動物の解剖、生理、さらには分子情報を提供することができる。MRIは、透過深さについて、人体全体をイメージングすることに十分であり、且つ磁場強度により、空間分解能が、10μm以下に達することができ、他のイメージング学的手段では提供されにくい画像情報を提供する。そして、一般に、造影剤を利用しない条件で、解剖構造に対してMRIイメージングを行うことができるが、分子レベルの情報が必要であれば、MRIの感度が低いなどの理由で、微小の腫瘍病巣の鮮明な画像を得ることが難しく、腫瘍の早期発見・早期治療に不利であり、造影剤を利用してその画像の品質を向上させることが必要になる。よく使われるMRIの低感度は、シグナル検出のメカニズムに関連しており、自身の改良によって克服することが困難である。現在、よく使われているMRI造影剤であるガドペンテト酸メグルミン(Gd-DTPA)は、緩和率が低く、且つ小分子の造影剤は、体内で除去されるのが速いため、MRI造影剤の緩和効率を高めることは、MRIのコントラストを高めるのにとって重要なステップである。
【0004】
光学イメージング技術は、光の異なる物理パラメータと組織との相互作用によってイメージングを行い、多くの異なる光学イメージング方法が、報道されている。これらの技術は、比較の源としての蛍光、吸収光、反射光、又は生物発光に依存する。光学イメージング技術は、主に、近赤外蛍光イメージング(NIRF)、反射イメージング、及び生体発光イメージングを含む。登場したのが比較的に遅いにもかかわらず、光学イメージングに関する様々な臨床研究と基礎研究は、急速に進展している。光学イメージングの利点は、使用が簡単で、画像が直感的で、複数の標識を同時に行うことができ、亜細胞レベルから組織レベルまでの広い空間スケールに適用されており、生物実験、蛍光誘導手術、及び内視鏡イメージングにも用いられることができることである。同時に、ほとんどの光学造影剤は、無毒であり、且つ比較的に安価で、汎用的で、感度が高いものである。光学イメージングは、種々の異なる励起光の波長で蛍光を発する有機、又は無機蛍光造影剤を利用することができる。最初、癌診断に用いられる光学イメージングは、腫瘍組織における内因性蛍光の変化に基づいたものである。しかしながら、診断シグナル成分と背景蛍光とを区別することが困難であるので、腫瘍組織と正常組織とのコントラストを高めて蛍光イメージングを行うために、外因性造影剤を開発せざるを得なかった。光学イメージングが直面している主な問題は、シグナルと正常組織の背景ノイズとを確実に区別することが困難であることにあり、画像品質に深刻な影響を与える恐れがある。同時に、組織に対する透過深さ差と空間分解能とが低いことも、光学イメージング技術が解決しなければならない問題である。インドシアニングリーン(ICG)は、現在臨床最前線の蛍光造影剤であり、最初は、肝臓機能と肝臓の有効血流量を検査するための染料薬であるが、現在では、肝臓手術の術中ナビゲーション及び乳がんのリンパ節スキャンに広く応用されている。静脈を通じて体内に注入された後、直ちに血漿タンパク質と結合し、血液循環に従って迅速に全身の血管内に分布し、効率が高く、選択的に肝細胞に摂取され、そして肝細胞から遊離形式で胆汁に排出され、胆道を経て腸に入り、糞便と一緒に体外に排出される。排出が速いため、一般的に、正常人の場合、静脈注射20分後に、約97%が血から排除され、体内の化学反応に関与せず、腸肝循環なし、リンパ逆流なし、腎臓などの他の肝外臓器から排出されない。ICGの構造上の理由により、滅菌された注射用水は、その一番好ましい溶媒であるが、その水溶液の安定性はあまりよくなく、さらに、手術の指導において、肝硬変などの状況により、インドシアニングリーンは、肝臓で偽陽性を呈し、肝臓切除手術の正確性を低下させる。
【0005】
そのため、より豊富で全般的な診断情報は、診断の精度を高めることに有利であり、単純な形態画像では十分に充実した情報を提供することが困難である。一方、光学イメージング技術、PET、単一光子放射断層撮影(SPECT)などの、感度が高く、映像以外に多くの情報を提供できるイメージング技術は、空間分解能が低いという欠陥に制約されている。複数の造影剤を同時に単独で使用することで、各種のイメージング方式においてより優れた造影効果を得ることができるが、バイモーダル造影剤を確立することは、各モードのシグナルの薬物動態学が同じであることを確保するのに寄与し、且つ共局在を行うことができ、さらに体の血液除去メカニズムに余分なストレスを与えることを回避できる。マルチモーダル造影剤を設計する際には、選択されたイメージングモードの機能と利点とが互いに重ならないように注意するとともに、各イメージング方式の弱点を補い、最大限に相乗作用を発揮するように注意しなければならない。
【発明の概要】
【0006】
従来の技術に存在する不足に対して、本発明は、蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤を提供し、
前記造影剤は、X-L-Yの構造を有し、
Xは、
【化1】
の構造を有し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、NH、COOH、CONH、NO、CN、及び低級アルキル基から選択され、前記低級アルキル基は、ハロゲン、OH、NH、COOH、CONH、SOH、NO、又はCNで置換されていてもよく、RとR、RとRは、それぞれ独立して、それらと結合する炭素原子と、フェニル基、又は複素環に環化していてもよい。
前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素イオンである。
前記低級アルキル基は、C1-6アルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基、ペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基である。
【0007】
好ましくは、前記低級アルキル基は、C1-3アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基である。
【0008】
当該バイモーダル造影剤は、良好な磁気共鳴T1強調イメージング造影能力と生体蛍光イメージング能力を有し、高い緩和率を有する。
【0009】
好ましくは、前記Xは、
【化2】
の構造を有し、
、R10、R11、及びR12の定義は、前述の定義と同じである。
【0010】
さらに好ましくは、前記Xは、
【化3】
の構造を有する。
【0011】
Lは、連結基であり、
【化4】
の構造を有し、
Aは、S、N、及びOから選択され、好ましいAは、N、又はOである。
【0012】
は、8~20の長さの炭素鎖からなり、前記炭素鎖における炭素原子は、酸素原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、前記炭素鎖中に、二重結合が含まれていてもよく、前記炭素鎖における水素原子は、1~5個のR13で置換されていてもよく、前記R13は、それぞれ独立して、ベンジル基、カルボキシル基、若しくはC1-3アルキル基であり、又は隣接するR13は、それらと結合する原子と、環状構造を形成していてもよく、例えば、
【化5】
を形成し、前記炭素鎖における炭素は、さらにカルボニル基で置換されていてもよく、例えば、炭素鎖中に
【化6】
が含まれている。
【0013】
さらに好ましくは、Lの構造は、
【化7】
であり、
Aの定義は、前述と同じであり、
の定義は、Lと同じである。
【0014】
当該バイモーダル造影剤は、高い緩和率、優れた熱安定性、低い毒性及び副作用、蛍光及び磁気共鳴シグナルへの良好な対応性などの利点があり、生体細胞と生体の磁気共鳴イメージング及び蛍光イメージングに有効に応用されることができる。
【0015】
さらに好ましくは、Lは、
【化8】
であり、nは、8~20であり、より好ましいnは、10~15である。
【0016】
本発明が提供する蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤は、磁気共鳴シグナルを利用して人体組織における蛍光染料の分布及び代謝状況をリアルタイムでモニタリングし、大量の実験検証により、一部の連結基が分解しやすいため、二種類の成分が体内で急速に分離し、最後のモニタリングの効果に影響を与え、本発明において、L
【化9】
とすると、得られた蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤は、安定しており、優れた検出効果を実現でき、臨床の需要を満たすことができると予測される。
【0017】
Yは、金属キレートである。
【0018】
好ましくは、前記金属キレートは、Gdと錯形成してGd錯体(Z)を形成する。
【0019】
さらに好ましくは、前記Gd錯体は、
【化10】
の構造を有する。
【0020】
さらに好ましくは、本発明の前記蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤は、
【化11】
の構造を有する。
【0021】
他の態様において、本発明は、前記蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤の調製方法を提供し、反応式は、次の通りである。
【化12】
【0022】
前記方法は、式Iの化合物と式IIの化合物とが縮合して目的とする化合物IIIを得るものである。
【0023】
前記式IIの化合物は、
【化13】
と塩化ガドリニウム水和物とが錯形成して得られる。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12、Y、A、L、及びZの定義は、前述と同じである。
【0024】
あるいは、本発明に提供される蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤は、式III-1の化合物と塩化ガドリニウム水和物とが錯形成して得られてもよく、その反応式は、次の通りである。
【化14】
【0025】
さらに、前記III-1の化合物は、式I-2の化合物と式II-2とが縮合して得られ、その反応式は、次の通りである。
【化15】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12、A、L、及びYの定義は、前述と同じである。
【0026】
同時に、本発明は、前記蛍光-磁気共鳴バイモーダル造影剤の使用を提供し、前記使用は、主に医療用診断であり、具体的には、医療用磁気共鳴増強イメージング、肝機能の測定、術前計画の支援、手術中の蛍光ナビゲーション、磁気共鳴画像により内臓の蛍光分布の予測、肝機能の測定、腎機能の測定、体内循環の状況と標識細胞のモニタリングを行うとともに、体外細胞の分析標識物として用いられることである。
【0027】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。本発明が提供するバイモーダル造影剤は、良好な磁気共鳴T1強調イメージング造影能力と生体蛍光イメージング能力を有し、高い緩和率、優れた熱安定性、低い毒性及び副作用、蛍光及び磁気共鳴シグナルへの良好な対応性などの利点があり、生体細胞と生体の磁気共鳴イメージング及び蛍光イメージングに有効に応用されることができ、投与6h後も肝臓及び腎臓の磁気共鳴シグナルを顕著に増強でき、臓器の境界の分解能を著しく向上させ、磁気共鳴シグナルの強度と蛍光の強度に比較的に高い対応関係があり、臨床に必要な腫瘍診断及び手術ナビゲーションの磁気共鳴-蛍光バイモーダル造影剤の効果を備える。臨床応用には、大きい潜在力を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1において、Aは、化合物PL-001の、マウスの磁気共鳴T1における増強イメージングであり、図Bは、肝臓と腎臓のT1増強磁気共鳴画像シグナルの平均値の棒グラフであり、図Cは、PL-001投与6h後の、肝臓及び腎臓の蛍光イメージング画像であり、図Dは、肝臓と腎臓の蛍光の効率値の棒グラフである。
図2図2は、フローサイトメーターで測定された、H22細胞に対して造影剤の細胞への移行速度の結果である。
図3図3は、造影剤注射前後の、マウス肝臓上皮内腫瘍の磁気共鳴T1増強イメージングの横断画像であり、点線内は、腫瘍組織である。
図4図4は、肝臓上皮内腫瘍マウスの、主な組織の蛍光イメージング結果である。
図5図5は、PL-003のHPLC純度のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態をより良好に理解するために、以下は、具体的な実施例を参照して本発明の実施形態についてさらに説明するが、下記の実施例は、単に本発明を理解させるためのものであり、本発明の具体的な制限と見なすべきではない。
【0030】
実施例1:化合物PL-001の調製
【化16】
反応経路は、以下の通りである。
【化17】
【0031】
反応ステップ:
1.DMSO溶液に、IR-820(ニューインドシアニングリーン)と1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカンとを、1:1~1:5の比率で加え、トリエチルアミンを酸スカベンジャーとし、20~80℃で2h加熱して反応させ、沈殿させた後、目的生成物B01を得た。
【0032】
2.DMSO溶液に、B01とDOTA-NHS(NBSは、N-ヒドロキシコハク酸イミドである)とを、1:1~1:3の比率で溶解させ、トリエチルアミンを1~20倍当量加え、10~40℃で24h反応させ、沈殿させた後、目的生成物B02を得た。
【0033】
3.DMSOにおいて、B02と0.5~2倍当量の塩化ガドリニウム水和物とを、10~50℃で10h~50h反応させ、沈殿させた後、目的生成物PL-001が得られ、収率は、83%であり、純度は、91%であった。
【0034】
4.純水に、得られた製品を溶解させ、溶液として調製した。尾静脈注射で、ICRマウスに、5mg/kg及び30mg/kgの用量で、それぞれ投与した。そして投与前後に、マウスの肝臓と腎臓の主要なスライスに対して磁気共鳴T1増強イメージング(SEシーケンス)をそれぞれ行った。磁気共鳴イメージングが完了した後、肝臓、腎臓を取り出し、蛍光イメージングを行った。得られた画像をImageJソフトウェアにより分析し、結果は、表1に示す通り:Aは、化合物PL-001の、マウスの磁気共鳴T1における増強イメージングであり、肝臓と腎臓は、顕著に増強されており、図Bは、肝臓と腎臓のT1増強磁気共鳴画像シグナルの平均値のヒストグラムであり、図Cは、PL-001投与6h後の、肝臓及び腎臓の蛍光イメージング画像であり、肝臓と腎臓には、明らかな蛍光があり、図Dは、肝臓と腎臓の蛍光の効率値のヒストグラムである。図から、肝臓、腎臓の磁気共鳴増強イメージングと蛍光イメージングの結果は、ほぼ一致していることが明らかとなった。
【0035】
実施例2:化合物PL-002の調製
【化18】
反応経路:
【化19】
【化20】
【0036】
反応ステップ:
1.DMSOに、IR-820とp-(ソジオオキシ)フェニルプロピオン酸ナトリウムとを、1:1~1:5の当量で溶解させ、20~80℃で1~8h反応させ、沈殿させた後、目標中間体C01を得た。
【0037】
2.DMSOに、C01とジピロリジニル(N-コハク酸イミジルオキシ)カルボニウムヘキサフルオロリン酸塩とを、1:05~1:3の当量で溶解させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1当量加え、10~50℃で10~30h反応させ、沈殿させた後、目的中間体C02を得た。
【0038】
3.DMSOに、N-Boc-1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカンとDOTA-NHSとを、1:1~1:3の比率で溶解させ、トリエチルアミンを1~3当量加え、室温で24h反応させ、沈殿させた後、目的中間体D01を得た。
【0039】
4.トリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合溶液に、D01を加え、0~40℃で24h反応させ、エチルエーテルで沈殿させた後、目的中間体D02を得た。
【0040】
5.水に、D02と塩化ガドリニウム水和物とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、室温で1~5日間反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、中間体D03を得た。
【0041】
6.DMSOに、D03とC02とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1~5当量加え、0~50℃で8h反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、目的生成物PL-002が得られ、純度は、91.2%であり、収率は、55%であった。
【0042】
実施例3:化合物PL-003の調製
【化21】
反応経路:
【化22】
【0043】
反応ステップ:
DMSOに、N-Boc-1,10-ジアミノデカンとDOTA-NHSとを、1:1~1:3の比率で溶解させ、トリエチルアミンを1~3当量加え、室温で24h反応させ、沈殿させた後、目的中間体E01を得た。
【0044】
トリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合溶液に、D01を加え、0~40℃で24h反応させ、エチルエーテルで沈殿させた後、目的中間体E02を得た。
【0045】
水に、D02と塩化ガドリニウム水和物とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、室温で1~5日間反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、中間体E03を得た。
【0046】
DMSOに、D03とC02とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1~5当量加え、0~50℃で8h反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、目的生成物PL-003が得られ、純度は、96.3%であり、収率は、51%であり、そのHPLCスペクトルを、図5に示し、そのデータを、表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
そのHPLCの方法は、次の通りである。流速は、0.8mL/minであり、注入量は、10μLであり、検出波長は、254nmであり、カラムは、Xtimate C 18 Welch 250×4.6mm×3umであり、溶離剤Aは、120mM酢酸アンモニウム+5mMクエン酸溶液(pH6.0)であり、溶離剤Bは、アセトニトリルであり、希釈剤は、メタノールであり、移動相勾配は、次の通りである。
【0049】
【表A】
【0050】
実施例4:化合物PL-004の調製
【化23】
反応式
【化24】
【0051】
反応ステップ
DMSOに、N-Boc-2,2′-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)とDOTA-NHSとを、1:1~1:3の比率で溶解させ、トリエチルアミンを1~3当量加え、室温で24h反応させ、沈殿させた後、目的中間体F01を得た。
【0052】
トリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合溶液に、F01を加え、0~40℃で24h反応させ、エチルエーテルで沈殿させた後、目的中間体F02を得た。
【0053】
水に、F02と塩化ガドリニウム水和物とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、室温で1~5日間反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、中間体F03を得た。
【0054】
DMSOに、F03とC02とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1~5当量加え、0~50℃で8h反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、目的生成物PL-003が得られ、純度は、93.3%であり、収率は、43%であった。
【0055】
実施例5:
【化25】
反応式
【化26】
【0056】
反応ステップ
DMSOに、N1-Boc-N4-N9-ジメチルスペルミンとDOTA-NHSとを、1:1~1:3の比率で溶解させ、トリエチルアミンを1~3当量加え、室温で24h反応させ、沈殿させた後、目的中間体J01を得た。
【0057】
トリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合溶液に、J01を加え、0~40℃で24h反応させ、エチルエーテルで沈殿させた後、目的中間体J02を得た。
【0058】
水に、J02と塩化ガドリニウム水和物とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、室温で1~5日間反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、中間体J03を得た。
【0059】
DMSOに、J03とC02とを、1:0.5~1:3の当量で溶解させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1~5当量加え、0~50℃で8h反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製した後、目的生成物PL-005を得た。
【0060】
以下の表2において、実施例6~13で得られた化合物は、反応中間体を変更した後、実施例2の方法に従って調製して得られたものである。
【0061】
【表2】
【0062】
調製によりPL-005、PL-008、PL-013を得た後、これらの化合物は、高極性有機溶媒(メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなど)に溶けやすく、水に溶けにくい(<0.1mg/mL)ことを発見した。
【0063】
実施例13
造影剤の縦方向の緩和率(r1)は、0.35T小型核磁気共鳴イメージングシステムにおいて、IR反応シーケンスを用いて測定した。純水及びウシ血清タンパク質溶液(1%、w/w)という異なる溶媒における、造影剤の緩和率は、以下の表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例14
造影剤水溶液(0.1mg/mL)を室温で放置し、異なる時点でHPLC法によりその相対含有量を較正し、その安定性を測定し、造影剤の安定性は、表4に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
実施例15
造影剤の最大耐量(MTD)を、マウス尾静脈投与により、初歩的に測定した。ICR雌マウス(8週齢)を1グループあたり4匹選択し、25、50、75、100、125、150mg/kgで尾静脈投与し、1週間連続的に臨床観察した結果は、表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
実施例16
造影剤が細胞レベルで細胞への移行速度は、フローサイトメーターで測定した。対数増殖期の、マウス由来肝癌細胞H22を採取して12ウェルプレートに均一に敷き、1ウェルあたりの細胞数は、約1.5×105であり、24hで完全に付着した後、各ウェルに、PBS、PL-002、PL-003、PL-004、及びPL-006をそれぞれ添加し、一定時間でインキュベートした後、膵酵素で細胞を消化し、PBSで2回洗浄し、最後に0.5mLのPBS溶液に再懸濁し、フローサイトメーターを用いてその細胞移行状況を測定した。その結果は、図2に示すように、PL-003の細胞への移行速度が最も速い。
【0070】
実施例17
造影剤の肝臓上皮内腫瘍の磁気共鳴イメージングは、GE 3.0T磁気共鳴イメージングシステムを用いて完成された。Balb/cマウスに、H22細胞を、肝臓局所インサイチュ注射で接種し、磁気共鳴により肝臓の状況を観察し、腫瘍形成後に尾静脈を通じて造影剤溶液(5mL/kg)を1mg/mL注射し、そして投与後の異なる時点で、肝臓に対して磁気共鳴T1増強イメージングを行い、結果は、図3に示す。造影剤を注射した後、腫瘍部位のイメージング効果を顕著に増強することができ、その中で、PL-003の増強効果は、全体として比較的に良い。
【0071】
実施例18
肝臓上皮内腫瘍マウス組織蛍光は、小動物生体イメージングアナライザー(Perkin Elmer)で観察した。磁気共鳴イメージング後、マウスの主要臓器を取り出し、生体イメージング装置で観察し、結果は、図4に示す。造影剤は、肝臓において比較的に明らかな蛍光があり、主な蛍光範囲は、磁気共鳴イメージングの結果と一致しており、その中で、PL-003腫瘍は、正常組織とある程度の区別があり、蛍光の強度が比較的に良い。このスペクトルは、本発明の造影剤が、イメージングにおいて正常組織と腫瘍組織との区別度を効果的に高めることができ、それによって術前計画の支援及び手術中の蛍光ナビゲーションに有利であることを示している。

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】