(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】付加製造に有用な光硬化性及び熱硬化性樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 18/02 20060101AFI20240423BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20240423BHJP
C08G 18/24 20060101ALI20240423BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240423BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240423BHJP
C09D 175/16 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08G18/02 020
C08G18/09 020
C08G18/24
C08G18/08 038
C09D4/02
C09D175/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571155
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022063199
(87)【国際公開番号】W WO2022243247
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509113977
【氏名又は名称】ストラタシス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー アンネ
(72)【発明者】
【氏名】ビュスゲン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】アクテン ディルク
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
樹脂が、A)(メタ)アクリレート官能性化合物と、B)ポリイソシアネートと、C)ラジカル開始剤と、D)触媒とを含む。化合物A)は、(メタ)アクリレートC=C二重結合に関する500g/mol以上の等価分子量を有し、1分子あたりの(メタ)アクリレート基の平均数1.8以上~2.2以下を有し、ポリイソシアネートB)は、2以上の平均NCO基官能価、及びNCO基に関する300g/mol以下の等価分子量を有し、触媒D)は、イソシアネート三量化触媒であり、樹脂はNCO反応性化合物を含まないか、又はNCO反応性化合物が樹脂中に存在する場合、NCO基とNCO反応性基とのモル比は5:1以上である。かかる樹脂はハイブリッドポリマーネットワークを形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)(メタ)アクリレート官能性化合物と、
B)ポリイソシアネートと、
C)ラジカル開始剤と、
D)触媒と、
を含む樹脂であって、
前記化合物A)は、(メタ)アクリレートC=C二重結合に関する500g/mol以上の等価分子量を有し、1分子あたりの(メタ)アクリレート基の平均数1.8以上~2.2以下を有し、
前記ポリイソシアネートB)は、2以上の平均NCO基官能価、及びNCO基に関する300g/mol以下の等価分子量を有し、
前記触媒D)は、イソシアネート三量化触媒であり、
前記樹脂はNCO反応性化合物を含まないか、又はNCO反応性化合物が該樹脂中に存在する場合、NCO基とNCO反応性基とのモル比が5:1以上であることを特徴とする、樹脂。
【請求項2】
前記化合物A)が、(メタ)アクリレート官能性ポリウレタン化合物である、請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記化合物A)が、一般式[アクリル]-[イソ]-[ポリオール]-[イソ]-[アクリル]による構造を有し、[ポリオール]が二官能性ポリオール出発材料のラジカルであり、[イソ]が脂肪族ジイソシアネート出発材料のラジカルであり、[アクリル]がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート出発材料のラジカルである、請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートB)が、B)の総重量ベースで30重量%以上の量で、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、又は前述のポリイソシアネートの少なくとも2つの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂。
【請求項5】
前記ラジカル開始剤C)が、アクリル相の総重量ベースで3重量%以下の量で存在し、前記触媒D)が、ポリイソシアネートB)の重量ベースで1重量%以下の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂。
【請求項6】
前記化合物A)及び前記ポリイソシアネートB)が、A)とB)との総重量ベースで2:1~1:3の重量比で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂。
【請求項7】
前記イソシアネート三量化触媒が、エチルヘキサン酸スズ(II)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂。
【請求項8】
I)樹脂を準備することと、
II)前記樹脂中に存在するラジカル開始剤からラジカルを発生させ、それによってラジカル硬化樹脂を得ることと、
III)工程II)の前記ラジカル硬化樹脂を加熱し、それによって熱硬化樹脂を得ることと、
を含む、樹脂を硬化する方法であって、
工程I)において、前記樹脂は、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂であり、
工程II)において、前記ラジカルは、前記樹脂中の(メタ)アクリレート基間の反応を開始させ、
工程III)において、前記ラジカル硬化樹脂を50℃以上の温度に加熱し、それによって前記樹脂中のイソシアネート基の三量化反応を開始させ、
工程II)及び工程III)は、同時に又は順次行うことができることを特徴とする、方法。
【請求項9】
工程I)において、前記樹脂が基材上のコーティングとして準備される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程II)において、前記樹脂に、製造される目的の物品の所定断面に従って選択的に照射し、選択的照射を、前記光硬化樹脂を含む所定の中間物品が得られるまで繰り返し、
工程III)において、前記中間物品を50℃以上の温度に加熱し、それにより目的の物品を得る、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
工程II)の前に、前記樹脂を、製造される目的の物品の所定断面に従った表面上に選択的に塗布し、工程II)による選択的な塗布及び照射を、前記光硬化樹脂を含む所定の中間物品が得られるまで繰り返し、
工程III)において、前記中間物品を50℃以上の温度に加熱し、それにより目的の物品を得る、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
工程III)が、90℃以上~110℃以下の温度で、6時間以上~7時間以下の時間実施される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の方法の工程II)の後に得ることができる、又は得られる、光硬化樹脂。
【請求項14】
請求項8~12のいずれか一項に記載の方法の工程III)の後に得ることができる、又は得られる、熱硬化樹脂。
【請求項15】
請求項13に記載の光硬化樹脂及び/又は請求項14に記載の熱硬化樹脂を含む、製造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート官能性化合物、ポリイソシアネート、ラジカル開始剤及び触媒を含む樹脂に関する。本発明はまた、かかる樹脂を硬化する方法、硬化樹脂及び製造品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリレートのみをベースとする付加製造用構造材料の使用は、通常、脆い材料特性をもたらし、機能性材料の製造に関しては望ましくない。そのため、樹脂系中のアクリレートの量を減らすことが強く望まれている。
【0003】
特許文献1は、活性化されたエチレン性不飽和基を含むポリイソシアネートの低粘度反応生成物を調製するプロセスに関するものであり、これは、化学線(actinic radiation)に曝すことにより重合を伴って反応する。特に、0.5重量%未満の残留モノマー含量及び1重量%未満のNCO含量を有する放射線硬化性アロファネートを調製するプロセスであって、該プロセスは、1)A)イソシアネート基を含む1つ以上の化合物と、B)ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシプロピルアクリレートを少なくとも90mol%含む混合物であって、その中に10mol%~45mol%のヒドロキシエチルアクリレートが含まれる、混合物と、C)任意に、更に、NCO反応性基を含む非放射線硬化性化合物とを、D)任意に、触媒の存在下で、反応させることによって、放射線硬化性基を有するNCO基含有ウレタンを調製することと、2)イソシアネート基を含む化合物を更に添加することなく、NCO基含有ウレタンを、同時に又は順次、E)アロファネート化(allophanatization)触媒、及びF)任意に第三級アミンの存在下で反応させることとを含み、A)からの化合物のNCO基と、B)及び使用される場合にはC)からの化合物のOH基との比は、1.45:1.0~1.1:1.0である。
【0004】
特許文献2は、前駆体から目的物を製造するプロセスであって、担体上にフリーラジカル架橋樹脂を堆積させて前駆体の第1の選択断面に対応する担体に接合された構築材料の層を得る工程と、先に塗布された構築材料の層の上にフリーラジカル架橋樹脂を堆積させて、前駆体の更なる選択断面に対応し、先に塗布された層に接合される構築材料の更なる層を得る工程と、前駆体が形成されるまで、工程II)を繰り返す工程とを含み、少なくとも工程II)におけるフリーラジカル架橋樹脂の堆積は、目的物のそれぞれの選択断面に対応するフリーラジカル架橋性樹脂の選択領域の曝露及び/又は照射によって行われ、フリーラジカル架橋性樹脂は、5mPas以上~100000mPas以下の粘度(23℃、DIN EN ISO 2884-1)を有する、プロセスを開示する。このプロセスにおいて、フリーラジカル架橋性樹脂は、NCO基及びオレフィン性C=C二重結合が存在する硬化性成分を含み、硬化性成分において、NCO基とオレフィン性C=C二重結合とのモル比は、1:5以上~5:1以下の範囲である。
【0005】
特許文献3は、前駆体から目的物を製造するプロセスであって、I)担体上にフリーラジカル架橋樹脂を堆積させて、前駆体の第1の選択断面に対応する担体に接合された構築材料の層を得る工程と、II)先に塗布された構築材料の層の上にフリーラジカル架橋樹脂を堆積させて、前駆体の更なる選択断面に対応し、先に塗布された層に接合される構築材料の更なる層を得る工程と、III)前駆体が形成されるまで、工程II)を繰り返す工程とを含む、プロセスを開示する。少なくとも工程II)におけるフリーラジカル架橋樹脂の堆積は、目的物のそれぞれの選択断面に対応するフリーラジカル架橋性樹脂の選択領域にエネルギーを導入することによって行われる。フリーラジカル架橋性樹脂は、5mPas以上100000mPas以下の粘度(23℃、DIN EN ISO 2884-1)を有する。フリーラジカル架橋性樹脂は、ブロッキング剤でブロックされたNCO基、少なくとも2個のツェレビチノフ活性H原子を有する化合物、及びオレフィン性C=C二重結合を含む硬化性成分を含み、ブロッキング剤はイソシアネートであるか、又はNCO基のデブロッキングの後に遊離分子として、又は他の分子若しくは部位の一部としてのブロッキング剤の遊離が続かないようにブロッキング剤を選択する。工程III)の後に得られた前駆体を、得られた前駆体のフリーラジカル架橋樹脂中に存在するNCO基を少なくとも部分的にデブロッキングするのに十分な条件下で処理し、このようにして得られた官能基を、少なくとも2個のツェレビチノフ活性H原子を有する化合物と反応させて目的物を得る更なる工程IV)が工程III)の後に続く。
【0006】
特許文献4は、付加製造プロセスにおいて前駆体から目的物を製造する方法であって、I)前駆体の第1の選択断面に対応するラジカル架橋性構築材料の層を担体上に堆積させる工程と、II)ラジカル架橋構築材料の先に塗布された層の上に、前駆体の更なる選択断面に対応するラジカル架橋性構築材料の層を堆積させる工程と、III)前駆体が形成されるまで工程II)を繰り返す工程とを含む、方法に関する。ラジカル架橋性構築材料は、5重量%以上のウレタン基含量を有する熱可塑性ラジカル架橋性ポリウレタンと光開始剤とを含む。ラジカル架橋性構築材料はまた、ラジカル架橋性ポリウレタンの融点よりも高い処理温度に加熱される。工程III)の後、20℃の温度を有する前駆体が目的物として定義されるか、又は工程III)の後に得られた前駆体において化学反応を行い、その結果目的物を得る工程IV)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/062500号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/133953号
【特許文献3】国際公開第2018/104223号
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0140707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、純粋なアクリレート樹脂に比べて収縮率を低減した付加製造プロセスにおいて使用することができる樹脂を提供し、最終的に製造品の靭性を向上させた放射線硬化性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の樹脂によって達成される。かかる樹脂を硬化する方法は、請求項8の主題である。硬化された樹脂及び製造品は、それぞれ請求項13、14及び15の主題である。好ましい実施の形態は、従属請求項の主題である。これらは、文脈上明らかにそうでない場合を除き、自由に組み合わせることができる。
【0010】
したがって、樹脂は、A)(メタ)アクリレート官能性化合物と、B)ポリイソシアネートと、C)ラジカル開始剤と、D)触媒とを含む。化合物A)は、(メタ)アクリレートC=C二重結合に関する500g/mol以上の等価分子量を有し、1分子あたりの(メタ)アクリレート基の平均数1.8以上~2.2以下を有する。ポリイソシアネートB)は、2以上の平均NCO基官能価、及びNCO基に関する300g/mol以下の等価分子量を有する。触媒D)は、イソシアネート三量化触媒であり、樹脂はNCO反応性化合物を含まないか、又はNCO反応性化合物が樹脂中に存在する場合、NCO基とNCO反応性基とのモル比は5:1以上である。
【0011】
かかる樹脂は、(メタ)アクリレート基の放射線硬化、及びNCO基の熱誘起三量化(特にイソシアヌレート形成をもたらす)の2つの硬化経路を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、両方の硬化経路が取られた後、相互侵入ネットワークが少なくとも部分的に形成され、一方のネットワークは放射線硬化化合物A)に由来し、他方のネットワークは三量化ポリイソシアネートB)に由来すると考えられる。
【0012】
二重硬化型熱硬化樹脂は、温度又はUV光等の類似した又は異なる刺激によって、同時に又は順次引き起こされる2つの重合プロセスを組み合わせたものである。
【0013】
かかる二重ポリマーネットワークの汎用性は、機械的特性に関する2つの異なるポリマーの相乗的な挙動にある。
【0014】
エラストマーと可塑性物質とを組み合わせた場合、2つのポリマー相のうちどちらが優勢かによって、強化ゴム又は耐衝撃性可塑性物質のいずれかが形成される。二重硬化型ポリマーネットワークの顕著な例は、ポリウレタンとポリ(メチルメタクリレート)ポリマーとの組み合わせがあり、これらは様々な産業で数多くの用途に使用されている。
【0015】
本発明による放射線硬化樹脂及び熱硬化樹脂は、2つのガラス転移温度を有する。二重ポリマーネットワークの(メタ)アクリルネットワークは、例えば-50℃程度のガラス転移温度を有し得る。この転移温度は、化合物A)の分子量だけでなく、A)中の任意のポリオールの選択によっても調整され得る。第2のガラス転移温度は、NCO基の三量体ネットワークに起因するものであり、例えば60℃程度であり得る。
【0016】
これらの2つのガラス転移温度の間では、低い方のガラス転移温度より低い温度での初期値に対する、温度上昇に伴う貯蔵弾性率の低下を減少させることができる。これは、二重硬化樹脂を、より広い温度範囲での用途又は「オールシーズン」用途に適したものとする。したがって、二重ネットワークの形成は、純粋なアクリルネットワークと比較して強靭化効果を有する。これは引張測定でも明らかになった。実験セクションでわかるように、ポリイソシアヌレートの量が増えるにつれて、引張強さ及びヤング率は増加するが、伸びは本質的には一定である。
【0017】
本発明による樹脂の更なる利点は、A)とB)との比率を変えることによって、二重硬化材料の機械的特性を微調整できることである。
【0018】
本発明による樹脂における放射線硬化性二重結合密度はかなり小さいため、照射後の「グリーン体」又は中間物品の収縮は最小限に抑えられ得るか、又は完全に抑制され得ると考えられる。
【0019】
化合物A)は、(メタ)アクリレートC=C二重結合に関して、500g/mol以上の等価分子量を有することを条件とする。また、この等価分子量は、500g/mol以上~4000g/mol以下であることが好ましく、500g/mol以上~3000g/mol以下であることがより好ましく、750g/mol以上~2000g/mol以下であることが最も好ましい。
【0020】
A)の合成経路が既知であり、分子量が過度に広い分布に従わない場合、等価分子量は、分子量を1分子あたりの(メタ)アクリレート基の平均数で割ることによって単純に算出することができる。これが適切でない場合は、間接的なアプローチを取ることができる。この間接的アプローチは、NCO末端前駆体とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物A)に特に適している。
【0021】
まず、前駆体の総重量ベースの重量パーセンテージで表されるNCO含量(「%NCO」)を求めるために、NCO末端前駆体を、例えばDIN EN ISO 14896に従って滴定する。NCO基に関する前駆体の等価分子量は、NCO基の分子量(42g/mol)と100の係数との積を%NCO値で割ることによって算出される。この数値にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの分子量を加えると、A)の二重結合1つあたりの等価分子量が得られる。
【0022】
化合物A)の官能価に関しては、1.8以上~2.2以下、好ましくは2.0以上~2.1以下の1分子あたりの(メタ)アクリレート基の平均数を有する。化合物A)における(メタ)アクリレート基は、更に好ましくは末端基である。
【0023】
ポリイソシアネートB)は、2以上の平均NCO基官能価を有する。2以上~4以下の1分子あたりのNCO基の平均数が好ましい。ポリイソシアネートB)が、NCO基に関する、300g/mol以下、好ましくは100g/mol以上~300g/mol以下、より好ましくは170g/mol以上~220g/mol以下の等価分子量を有することを更に条件とする。
【0024】
明確に定義されたポリイソシアネートB)の場合、等価分子量は単純に分子量を1分子あたりのイソシアネート基の平均数で割ることで算出することができる。これが実施不可能な場合は、ポリイソシアネートの総重量ベースの重量パーセンテージで表されるNCO含量(「%NCO」)を求めるために、例えばDIN EN ISO 14896に従って試料を滴定することができる。NCO基に関するポリイソシアネートの等価分子量は、NCO基の分子量(42g/mol)と100の係数との積を%NCO値で割ることによって算出される。
【0025】
DIN EN ISO 2884-1に従って求められる、ポリイソシアネートB)についての23℃における好ましい粘度範囲は、100mPa・s以上~3000mPa・s以下であり、175mPa・s以上~2500mPa・s以下がより好ましい。
【0026】
ラジカル開始剤C)は、熱開始剤及び/又は光開始剤であり得る。熱開始剤C)の例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ジベンゾイル(BPO)、tert.-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、ジ-tert.-ブチルペルオキシド(DTBP)、クミルペルオキシネオデカノエート、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
光開始剤C)は、ノリッシュI型(開裂)、ノリッシュII型(引き抜き)又はカチオン性の光開始剤であり得る。具体例は、Irgacur(商標)500(ベンゾフェノンと(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトンとの混合物)、Irgacure(商標)819 DW(フェニルビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)、Esacure(商標)KIP EM(オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)-フェニル]-プロパノン])及びIvocerin(商標)(ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム)である。好ましい光開始剤は、Omnirad(商標)1173として市販されている2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンである。別の好ましい光開始剤系は、Omnirad(商標)BL 750として市販されている混合物である。前述の光開始剤化合物又は系の混合物を採用してもよい。
【0028】
本発明による樹脂において、ラジカル開始剤は、概して、採用される硬化性成分の量ベースで、0.01重量%~6.0重量%、好ましくは0.5重量%~4.0重量%、特に好ましくは2.0重量%~3.0重量%の濃度で採用される。
【0029】
イソシアネート三量化触媒D)は、原則として、イソシアネート基の付加を促進してイソシアヌレート基を生成し、その結果、存在するイソシアネート含有分子を架橋する全ての化合物である。具体例は、酢酸カリウム、クラウンエーテルと組み合わせた酢酸カリウム、ポリエチレングリコールと組み合わせた酢酸カリウム、ポリプロピレングリコールと組み合わせた酢酸カリウム、エチルヘキサン酸スズ、ナトリウムフェノキシド、水酸化カリウム、トリオクチルホスフィン及び/又はトリブチルスズオキシドである。
【0030】
本発明による樹脂において、イソシアネート三量化触媒は、概して、ポリイソシアネートB)ベースで、0.0005重量%~5.0重量%、好ましくは0.1重量%~2.0重量%、特に好ましくは0.5重量%~1重量%の量で採用することができる。
【0031】
好ましくは、光開始剤C)は、α-ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド及び/又はビス(4-メトキシ-ベンゾイル)ジエチルゲルマニウムから選択され、触媒D)は、酢酸カリウム、クラウンエーテルと組み合わせた酢酸カリウム、ポリエチレングリコールと組み合わせた酢酸カリウム、ポリプロピレングリコールと組み合わせた酢酸カリウム、エチルヘキサン酸スズ、ナトリウムフェノキシド、水酸化カリウム、トリオクチルホスフィン及び/又はトリブチルスズオキシドから選択される。
【0032】
さらに、樹脂がNCO反応性化合物を含まないか、又はNCO反応性化合物が樹脂中に存在する場合、NCO基とNCO反応性基とのモル比が5:1以上であることを条件とする。避けるべきかかるNCO反応性化合物としては、モノアルコール、ポリオール、モノアミン、及びポリアミンが挙げられる。ここでの目標は、ポリウレタン又はポリウレアのネットワーク形成をできるだけ避けることである。「~を含まない(Free from)」とは、技術的に避けられない極微量は含まれるが、かかるNCO反応性化合物の意図的な添加は行われていないことを意味すると理解される。何らかの理由でNCO反応性化合物を樹脂中に存在させなければならない場合、NCO基とNCO反応性基とのモル比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましく、100:1以上が最も好ましい。
【0033】
所望により、樹脂は単官能性(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。これは反応性希釈剤(thinner)としてはたらく。
【0034】
樹脂の一実施の形態においては、化合物A)は(メタ)アクリレート官能性ポリウレタン化合物である。かかる化合物A)は、NCO末端ポリウレタン化合物をヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させ、それによってポリウレタン骨格と(メタ)アクリレート末端基とを有する化合物を得ることで得ることができる。別の方法は、OH末端ポリウレタンとイソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のNCO末端(メタ)アクリレートとの反応である。
【0035】
好ましくは、化合物A)は、一般式[アクリル]-[イソ]-[ポリオール]-[イソ]-[アクリル]による構造を有し、[ポリオール]が二官能性ポリオール出発材料のラジカルであり、[イソ]が脂肪族ジイソシアネート出発材料のラジカルであり、[アクリル]がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート出発材料のラジカルである。かかる化合物A)は、重合性ジオールを大モル過剰のジイソシアネートと反応させることによって得ることができる。例えば、NCO基とOH基とのモル比は15:1以上であり得る。次いで、得られたNCO末端化合物を、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる。
【0036】
好適なジイソシアネートは、例えば、140g/mol~400g/molの範囲の分子量を有し、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatically)及び/又は芳香族によって結合したイソシアネート基を有するものであり、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナト-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-2-メチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4’-及び4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-2,2’,5,5’-テトラメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、1,8-ジイソシアナト-p-メンタン、1,3-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-ジメチル-5,7-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート;XDI)、1,3-及び1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、並びにビス(4-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)フェニル)カーボネート、2,4-及び2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’- 及び4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン、並びにかかるジイソシアネートの任意の所望の混合物である。非芳香族ジイソシアネート、特にPDI及びHDIが好ましい。
【0037】
適切なポリオールは、好ましくは線状ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエポキシドポリオール又はポリカーボネートポリオールである。[ポリオール]ラジカルの分子量は、500g/mol~3000g/mol、好ましくは1000g/mol~2000g/molであり得る。適切なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキルラジカル中に2個~12個の炭素原子を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル酸にプロピレンオキシドを付加して得られる異性体の混合物である2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、又は4-ヒドロキシブチルアクリレート、及び類似のメタクリレートが好ましい。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が特に好ましい。
【0038】
好ましい組み合わせは以下の通りである:
【0039】
【0040】
好ましい化合物A)についての構造例を下記式に示す:
【化1】
【0041】
ここで、[ポリオール]ラジカルはポリプロピレングリコールであり、nは例えば8~35の範囲である。
【0042】
樹脂の別の実施の形態においては、ポリイソシアネートB)は、B)の総重量ベースで30重量%以上の量で、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、又は前述のポリイソシアネートの少なくとも2つの混合物を含む。この量は、好ましくは30重量%以上~100重量%以下であり、95重量%以上~100重量%以下がより好ましい。特に好ましいポリイソシアネートB)は、以下の構造を有するアロファネートであり、o及びpは、互いに独立して、4、5又は6であり、Rは1個~6個の炭素原子を有するアルキル残基(alkyl rest)である:
【化2】
【0043】
樹脂の別の実施の形態においては、ラジカル開始剤C)は、アクリル相の総重量ベースで3重量%以下の量で存在し、触媒D)は、ポリイソシアネートB)の重量ベースで1重量%以下の量で存在する。
【0044】
樹脂の別の実施の形態においては、化合物A)及びポリイソシアネートB)は、A)とB)との総重量ベースで2:1~1:3の重量比で存在する。1.5:1~1:1.5の重量比が好ましい。
【0045】
樹脂の別の実施の形態においては、イソシアネート三量化触媒は、エチルヘキサン酸スズ(II)を含む。
【0046】
本発明の別の態様によれば、樹脂を硬化する方法は、I)樹脂を準備することと、II)樹脂中に存在するラジカル開始剤からラジカルを発生させ、それによってラジカル硬化樹脂を得ることと、III)工程II)のラジカル硬化樹脂を加熱し、それによって熱硬化樹脂を得ることとを含む。工程I)において、樹脂は、本発明による樹脂である。工程II)において、ラジカルは、樹脂中の(メタ)アクリレート基間の反応を開始させる。工程III)において、ラジカル硬化樹脂を50℃以上の温度に加熱し、それによって樹脂中のイソシアネート基の三量化反応を開始させる。工程II)及び工程III)は、同時に又は順次行うことができる。
【0047】
本発明による樹脂に関する詳細は、本明細書の先のセクションで既に述べた通りであり、簡潔にするためにここでは繰り返さない。
【0048】
本発明による方法は、熱的又は放射線(例えば赤外線、可視光線又は紫外線)による樹脂の照射が、(メタ)アクリレートポリマーネットワークの形成下で液体又は可塑性の出発材料を固化させ、熱硬化が、(メタ)アクリレートネットワークを少なくとも部分的に相互侵入するイソシアヌレートネットワークを構築する、二重硬化プローチを反映する。工程III)の温度は、好ましくは50℃以上~150℃以下であり、90℃以上~110℃以下がより好ましい。工程II)において樹脂の熱誘起ラジカル硬化が望まれる場合、工程II)における温度は好ましくは50℃以上~150℃以下であり、90℃以上~110℃以下がより好ましい。熱誘起ラジカル硬化工程としての工程II)のその後の実施に工程III)が続くことが望ましい場合、工程II)の温度は工程III)の温度よりも低い。
【0049】
工程II)において光化学的硬化を伴う方法の一実施の形態は、I)樹脂を準備することと、II)樹脂に照射し、それにより光硬化樹脂を得ることと、III)工程II)の光硬化樹脂を加熱し、それにより熱硬化樹脂を得ることとを含む。工程I)において、樹脂は、ラジカル開始剤C)が光開始剤である本発明による樹脂である。工程II)において、樹脂に照射することにより、樹脂中の(メタ)アクリレート基間の反応を開始させ、工程III)において、光硬化樹脂を50℃以上の温度に加熱し、それにより、樹脂中のイソシアネート基の三量化反応を開始させる。
【0050】
上記方法の別の実施の形態においては、工程I)において、樹脂を基材上のコーティングとして準備する。熱硬化工程は、光が十分に照射されなかったシャドウ部分を硬化させる役割を果たし得る。
【0051】
方法の別の実施の形態においては、工程II)において、樹脂に、製造される目的の物品の所定断面に従って選択的に照射し、選択的照射を、光硬化樹脂を含む所定の中間物品が得られるまで繰り返し、工程III)において、中間物品を50℃以上の温度に加熱し、それにより目的の物品を得る。この実施の形態は、ステレオリソグラフィ(SLA)及びDLP等の付加製造プロセスを包含する。熱硬化工程III)はSLA又はDLPシステムの外部で行うことができるため、SLA又はDLPマシンの利用可能台数に対する完成品の空時収率を向上させることができる。
【0052】
方法の別の実施の形態においては、工程II)の前に、樹脂を、製造される目的の物品の所定断面に従った表面上に選択的に塗布し、工程II)による選択的な塗布及び照射を、光硬化樹脂を含む所定の中間物品が得られるまで繰り返し、工程III)において、中間物品を50℃以上の温度に加熱し、それにより目的の物品を得る。選択的塗布はインクジェット印刷プロセスで行うことができる。表面はパウダー表面とすることができる。そして、この実施の形態による方法は、バインダー噴射プロセスに似ている。代替的には、該プロセスは、いわゆるフォトポリマー噴射プロセスであってもよい。樹脂の塗布は選択的であるため、工程II)の照射は選択的である必要はない。そうであれば、構築プラットフォーム全体への照射で十分であると考えられる。
【0053】
方法の別の実施の形態においては、工程III)は、90℃以上~110℃以下の温度で、6時間以上~7時間以下の時間実施される。
【0054】
本発明の別の態様は、本発明による方法の工程II)の後に得ることができる、又は得られる光硬化樹脂である。
【0055】
本発明の別の態様は、本発明による方法の工程III)の後に得ることができる、又は得られる熱硬化樹脂である。好ましくは、この樹脂は、2K/分の加熱速度で1Hzの振動周波数においてISO 6721に従って動的機械分析におけるピークtanδとして決定される第1のガラス転移温度及び第2のガラス転移温度を有し、第1のガラス転移温度は-60℃以上~20℃以下であり、第2のガラス転移温度は50℃以上~120℃以下である。第2のガラス転移温度と第1のガラス転移温度との差ΔTgは、好ましくは50℃以上である。さらに、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との間のtanδ曲線の最小値が0.2以下であることが好ましい。第1のガラス転移温度及び第2のガラス転移温度のピーク値は、1:5以上~2:1以下の比を有することが更に好ましい。
【0056】
本発明の別の態様は、本発明による光硬化樹脂及び/又は本発明による熱硬化樹脂を含む製造品である。かかる製造品の例としては、医療機器、パーソナライズされた(personalized)医療用物品、複製された医療用インプラント、歯科用物品、滅菌容器、及び履物構成品が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0058】
以下の実施例及び図面を参照して、本発明を更に説明するが、これらに限定されることを望むものではない。
【0059】
材料
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)はCovestro Deutschland AGから供給され、そのまま使用した。
【0060】
ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)はCovestro Deutschland AGから供給され、そのまま使用した。
【0061】
イソシアネートISO-1:低粘度脂肪族ポリイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするアロファネート。イソシアネート含量およそ20.0%(DIN EN ISO 14896に従う)、23℃における粘度およそ500mPa・s(DIN EN ISO 2884-1に従う)、イソシアネート官能価およそ2.5、モノマーHDI含量0.16%以下(DIN EN ISO 10283に従う)。NCO基に関する等価分子量は210g/molであった。
【0062】
ISO-1は以下:
【化3】
の構造を有し、o及びpは6であり、RはC
3-アルキル及びC
4-アルキルである。
【0063】
イソシアネートISO-2:低粘度の脂肪族ポリイソシアネート樹脂であるヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする不斉三量体イソシアヌレート。イソシアネート含量23.5±0.5%(DIN EN ISO 14896に従う)、23℃における粘度730±100mPa・s(DIN EN ISO 2884-1に従う)、モノマーHDI 0.25%未満(DIN EN ISO 10283に従う)、イソシアネート官能価およそ3.2。NCO基に関する等価分子量は179g/molであった。
【0064】
イソシアネートISO-3:低粘度脂肪族ポリイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするビウレット。イソシアネート含量23.0±0.5%(DIN EN ISO 14896に従う)、23℃における粘度2500±1000mPa・s(DIN EN ISO 2884-1に従う)、イソシアネート官能価およそ3.5、モノマーHDI 0.4%以下(DIN EN ISO 10283に従う)。NCO基に関する等価分子量は183g/molであった。
【0065】
イソシアネートISO-4:低粘度脂肪族ポリイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートの二量体。イソシアネート含量21.8±0.5%(DIN EN ISO 14896に従う)、23℃における粘度175±75mPa・s(DIN EN ISO 2884-1に従う)、イソシアネート官能価およそ2.5。NCO基に関する等価分子量は193g/molであった。
【0066】
光開始剤Omnirad 1173及びOmnirad BL 750はIGM Resinsから供給され、そのまま使用した。
【0067】
触媒Desmorapid(商標)SO(エチルヘキサン酸スズ(II))はそのまま使用した。
【0068】
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)をsigma Aldrichから購入し、そのまま使用した。
【0069】
阻害剤2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)をsigma Aldrichから購入し、そのまま使用した。
【0070】
使用したポリオールは以下の通りであった。
【0071】
【0072】
方法
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を、DIN 55672-1:2016-03に従い、Agilentの1100シリーズポンプ及びAgilentの1200シリーズUV検出器(230nm)を使用し、40℃及び1mL/分で溶離溶媒としてテトラヒドロフランを用い、4本のPSSのSDV Analyticalカラムで実施した。
【0073】
ガラス基材上にドクターブレードを用いて400μmの薄膜を塗布した。ガラス基材を除去剤(大豆レシチン)で前処理した。その後、ガリウム及び水銀の放射線源が装備されており、総エネルギー入力が1300mJ/cm2である、SuperficiのUV乾燥機で、薄膜を硬化させた。
【0074】
FTIRスペクトルを、ATRクリスタルを装備したBrukerのFTIR Spectrometer Tensor IIで測定した。
【0075】
硬化した薄膜の動的機械分析を、ISO 6721に従い、セイコーインスツル株式会社のExstar 6100 DMSにて振動周波数1Hzで行った。実験を、-150℃から250℃まで、加熱速度2K/分で行った。ガラス転移温度を、損失係数曲線tanδの最大ピークの評価により決定した。
【0076】
引張試験を、DIN EN ISO 527に従い、2kNのロードセルを備えたZwick Retroを用い、試験速度200mm/分、予荷重0.5Nで測定した。弾性率(E-modulus)を、1mm/分の試験速度で、0.05%から0.25%の伸びの間で求めた。
【0077】
NCO含量を、滴定によって求めた。イソシアネート基を含まない試料(ブランク試料)約2.0gを、キシレン中の0.1mol/Lジブチルアミン溶液5.0mLに加え、続いてアセトン50.0mL及びフェノールレッド溶液(水中20%エタノールの混合物80gに0.1g)3滴を加えた。次いで、この溶液を0.1mol/L塩酸溶液で滴定して色変化をもたらし、消費量を記録した。NCO基含有試料を、適宜処理した。NCO含量「%NCO」を、以下の方法で算出した:
%NCO=4.2×M×(Vブランク-V試料)/m
(式中、Mは塩酸のモル濃度(例えば0.1mol/L)であり、mは試料重量(g)であり、Vブランクはブランク試料中の塩酸のmL単位の消費量であり、V試料は試料中の塩酸のmL単位の消費量である)。
【0078】
ポリイソシアネートの等価重量(EW)を、イソシアネート含量を用いて、以下に従って求めた:
EW=M(NCO)×100/%NCO
(式中、M(NCO)=42g/molである)。
【0079】
化合物の二重結合(db)あたりの等価分子量を、HEMAで官能化する前に測定したイソシアネート含量を用いて算出した。次いで、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の分子量を以下に従って順次加算した:
dbあたりのEW=[(M(NCO)×100)/(%NCO)]+M(HEMA)
(式中、M(HEMA)は130g/molである)。
【0080】
(メタ)アクリレート官能性ポリウレタンを、若干の修正を加えて、文献に従って調製した(Driest, P. J.; Dijkstra, D. J.; Stamatialis, D.; Grijpma, D. W., The Trimerization of Isocyanate-Functionalized Compounds: An Effective Method for Synthesizing Well-Defined Polymer Networks. Macromolecular Rapid Communications 2019, 40 (9), 1800867))。
【0081】
概して、HDIを、撹拌機、冷却器、及び温度計を備えた3つ口フラスコ内において、窒素雰囲気下で100℃に加熱した。0.1gのリン酸ジブチルで緩衝した100gのポリマージオールを、15:1(NCO:OH)のモル比でHDIに滴下して加えた。これを、3時間、又は所望のイソシアネート含量が得られる(滴定により求められる)まで反応させた。その後、生成物を薄膜エバポレータに移し、140℃、減圧下(典型的には、10-2mbar)で過剰なHDIを除去した。HDIモノマー含量をGCで求めた。
【0082】
最後の工程で、イソシアネート官能化化合物を、撹拌機、冷却器、及び温度計を備えた3つ口フラスコに移し、70℃に加熱した。安定剤としてブチルヒドロキシトルエン(250ppm)を化合物に添加した。ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を混合物に滴下して加え、全てのイソシアネート基が変換される(滴定により求められる)まで反応させた。得られたメタクリレート官能性ポリウレタンを、透明で粘性のある樹脂として得た。使用した高分子ジオールによっては、生成物がいくらか冷却時に結晶化した。
【0083】
第1表は、合成したメタクリレート官能性ポリウレタン(「AFP」)のデータを示す。ガラス転移温度は、それぞれのメタクリレート官能性ポリウレタンを、ガリウム及び水銀の照射下、1300mJcm-2の総エネルギー入力でUV硬化させた後、DMAによりピークtanδとして求めた。
【0084】
【0085】
ポリマー試料の調製:異なる量のAFPと低粘度ポリイソシアネート、光開始剤、及び三量化触媒としてエチルヘキサン酸Sn(II)を混合することによりポリマー試料を調製した。全ての試料を、ThinkyのSpeedmixerを使用して2分間、物質を混合することにより調製した。その後、400μmのギャップを持つドクターブレードを用いてガラス基材上に薄く塗布した。ガラスを大豆レシチン溶液で前処理し、除去しやすくした。この目的のため、ガラス基材を酢酸エチルで洗浄し、大豆レシチン溶液(酢酸エチル中1.5%)を、ブラシを用いて薄く塗布した。次いで、これらの薄膜を、ガリウム及び水銀の照射下、1300mJcm-2の総エネルギー入力で硬化させた。
【0086】
熱的後硬化のために、薄膜を、100℃で6.5時間、又はFTIR分光法によって求められる場合に全てのイソシアネート基が変換されるまでオーブンに入れた。高含量のポリイソシアネートを含む薄膜は、熱処理により不透明になった。
【0087】
印刷を、405nmのUV-LED光源を備えるANYCUBIC PhotonSで行った。STLファイルを、ANYCUBIC Photonスライサーを用いて作成した。層厚は100μmであり、印刷パラメーターを第7表に示すように選択した。全ての印刷製剤は、追加的に、0.1重量%の阻害剤分子(2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)(BBOT)を含む。
【0088】
実験結果を、以下の第2表~第6表に要約する。
【0089】
第2表は、触媒含量の関数としての反応時間についての結果を示す。IR測定は1時間後、3時間後、6.5時間後、及び22時間後に行われ、2262cm-1のNCOシグナルの減少が観察された。エチルヘキサン酸スズ(II)濃度0.75重量%、及び後処理パラメーター100℃、6.5時間が、効率的な印刷プロセスと硬化時間に関して、イソシアヌレート形成に理想的に適していることがわかった。
【0090】
第3表は、同様の製剤における4つの異なるAFPの結果を示す。全ての製剤について、2つのガラス転移温度が現れることから、重合過程で相分離したネットワークが形成されたことが示される。第1のガラス転移温度はアクリル軟質相に由来し、第2のガラス転移温度はアロファネートの三量化によって形成されるイソシアヌレートネットワークに属する。第1のガラス転移温度は、メタクリレート官能性ポリウレタンの性質、より正確にはポリオールの性質に依存する。
【0091】
第4表は、異なる比率のメタクリレート官能性ポリウレタン対アロファネートを含有する製剤11~製剤16を示す。非発明例は、製剤11及び製剤16であり、製剤11は純粋なアクリルネットワークを与え、製剤16は純粋なイソシアヌレートネットワークを与える。
【0092】
第5表は、代替の低粘度ポリイソシアネート(17~25)を含む更なる例を示す。そうすることで、第2のガラス転移温度をより高い温度にシフトさせ、室温付近での貯蔵弾性率のプラトーを高めることができる。
【0093】
第6表は、反応性希釈剤としてCTFA(純粋な重合材料のガラス転移温度は23℃である)を製剤に添加した製剤26~製剤29を示す。そうすることで、AFP及びCTFAによって形成されるネットワークの第1のガラス転移温度を調整することが可能である。
【0094】
第7表は、標準的なDLPデスクトッププリンターで3Dプリントされた製剤20と、それに対応するプリントパラメーター(プリント1)とを示す。
【0095】
全ての表において、比較例はアスタリスク(「*」)で示される。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
実施例11~実施例16についての貯蔵弾性率とtanδ曲線を
図1に示し、引張強度曲線を
図2に示す。
【0100】
比較例11は、ポリイソシアネートが添加されていないため、本発明による二重ポリマーネットワークに存在する純粋な軟質相を表す。したがって、硬化材料におけるガラス転移温度は-43℃の1点のみとなる。同様に、比較例16は74℃のガラス転移温度を有する純粋な硬質相を表す。
【0101】
本発明による実施例12~実施例15は、化合物A)とポリイソシアネートB)との比率を変化させた場合の影響を調べる。材料の貯蔵弾性率を、2つのガラス転移温度の間の一定の範囲内に保つことができることがわかる。
【0102】
図2の引張強さ曲線は、二重ポリマーネットワーク内のポリイソシアヌレート量が増加するにつれて、引張強さとヤング率は増加するが、破断伸びは基本的に一定であることを示す。また、それぞれの曲線下面積が引張強さ試験におけるエネルギー散逸に相当することから、ポリイソシアネートB)の添加が二重硬化材料の靭性を向上させることがわかる。
【0103】
図3は、実施例11~実施例16についてのAFM測定を示す。本発明による実施例は、アクリル化合物が軟質相であり、三量化イソシアネートが硬質相であるナノメータースケールのドメインを有する、明確に相分離した形態を示す。
【0104】
【0105】
【0106】
【国際調査報告】