(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】心臓画像解析
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571286
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022062971
(87)【国際公開番号】W WO2022243178
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD15
4C601DD27
4C601EE11
4C601FF08
4C601JB34
4C601JC06
(57)【要約】
1つ又は複数の解剖学的/生理学的評価又は定量化のアルゴリズムを適用するために、画像フレームのシーケンスから画像フレームを選択するための自動化された方法である。詳細には、本方法は、画像フレームのシーケンスが取得された撮像視野に従って、受信された画像フレームのシーケンスを分類することに基づく。本方法は、シーケンス内の各フレームについて、対象者の撮像された心臓の心周期内の画像フレームのサブフェーズを決定することをさらに有する。これらの決定されたパラメータは、1つ又は複数の所定のアルゴリズムを適用するために1つ又は複数の適切なフレームを特定するために使用され、及び/又は、フレームのそれぞれ若しくはサブセットに適用するための1つ又は複数の適切なアルゴリズムを特定するために使用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの心臓周期にわたる、対象者の心臓の超音波フレームの時間シーケンスを受信するステップと、
フレームの前記時間シーケンスによって表される視野を決定するステップと、
各フレームについて、心周期内の前記フレームのフェーズ点を決定するステップであって、前記フェーズ点が収縮期フェーズ又は拡張期フェーズの一方の、サブフェーズ点である、当該決定するステップと、
1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムを適用するステップであって、各心臓弁解析アルゴリズムが、前記心周期の予め定義された1つ又は複数のフェーズ点において、予め定義された1つ又は複数の視野の前記心臓を表す1つ又は複数の入力超音波フレームを受信するように構成され、各心臓弁解析アルゴリズムに提供される1つ又は複数の入力画像フレームが、受信された前記フレームのそれぞれの、決定された前記視野及び前記フェーズ点に基づいて選択される、当該適用するステップと、
前記1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムのそれぞれの出力を表すデータ出力を生成するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記フェーズ点が、所定のフェーズ区間のセットのうちの1つに対応し、各フェーズ区間が、収縮期フェーズ及び拡張期フェーズの一方のサブ区間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のフェーズ区間が、等容性弛緩、心室充満、心房収縮、等容性収縮、及び心室駆出を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、各フレーム内で、1つ又は複数の解剖学的構造物の運動状態を検出するステップであって、各解剖学的構造物が1つの心周期にわたる周期的運動パターンを有する、当該検出するステップをさらに有し、各フレームの前記フェーズ点を決定するステップが、前記1つ又は複数の解剖学的構造物の検出された前記運動状態に基づく、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記視野を決定するステップが、前記視野を予め定義された視野のセットのうちの1つとして分類するステップを有し、前記予め定義された視野が、傍胸骨短軸断面(PSAx)視野、傍胸骨長軸断面(PLAx)視野、心尖部四腔断面視野、心尖部二腔断面視野、及び心尖部長軸断面視野のうちの1つ又は複数を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムの少なくともサブセットが、大動脈弁又は僧帽弁のパラメータを出力するように適合されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムが、大動脈弁狭窄(AS)、大動脈弁口面積(AVA)、大動脈弁石灰化、僧帽弁口面積、及び僧帽弁尖数又は大動脈弁尖数のうちの1つ又は複数の評価インジケータを出力するように適合されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記対象者のECG信号を受信するステップをさらに有し、各フレームについて前記フェーズ点を前記決定するステップが、前記ECG信号にさらに基づく、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フェーズ点を決定するステップ、及び/又は前記視野を決定するステップが、AIアルゴリズムの使用に基づく、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フェーズ点を決定するステップ、及び/若しくは前記視野を決定するステップが、ディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)の使用に基づき、並びに/又は
前記フェーズ点を決定するステップが、リカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)の使用に基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ユーザ・インタフェースに、前記画像フレームのうちの1つ又は複数と、前記フレームについて決定された前記フェーズ点とを同時に表示させるための表示出力を生成するステップをさらに有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサ上で実行されると、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させるコード手段を含む、コンピュータ・プログラム。
【請求項13】
入力/出力部と1つ又は複数のプロセッサとを備える処理装置であって、前記プロセッサが、
少なくとも1つの心臓周期にわたる、対象者の心臓の超音波フレームの時間シーケンスを前記入力/出力部において受信することと、
フレームの前記時間シーケンスによって表される視野を決定することと、
各フレームについて、心周期内の前記フレームのフェーズ点を決定することであって、前記フェーズ点が収縮期フェーズ又は拡張期フェーズの一方のサブフェーズである、当該決定することと、
1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムを適用することであって、各心臓弁解析アルゴリズムが、前記心周期の予め定義された1つ又は複数のフェーズ点において、予め定義された1つ又は複数の視野の前記心臓を表す1つ又は複数の入力超音波フレームを受信し、各心臓弁解析アルゴリズムに提供される1つ又は複数の入力画像フレームが、受信された前記フレームのそれぞれの、決定された前記視野及び前記フェーズ点に基づいて選択される、当該適用することと、
前記1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムのそれぞれの出力を表すデータ出力を生成することとを行うように適合されている、処理装置。
【請求項14】
前記フェーズ点が、所定のフェーズ区間のセットのうちの1つに対応し、各フェーズ区間が、収縮期フェーズ及び拡張期フェーズの一方のサブ区間である、請求項13に記載の処理装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の処理装置と、
超音波画像データを前記処理装置に出力する超音波撮像装置と、
前記処理装置と動作可能に連結された、ディスプレイを備えたユーザ・インタフェースと
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓画像解析の方法、詳細には心臓弁の評価の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁膜症は心臓病理の主要な分類である。これらは超音波撮像を用いて評価することができる。通常、診断には臨床医による手動評価を伴う長時間の検査が必要である。
【0003】
大動脈弁疾患は最も蔓延している心臓弁膜症の1つである。例えば、先進国における大動脈弁狭窄の有病率は3%である。
【0004】
大動脈弁狭窄は、最大経大動脈ジェット速度、平均経大動脈圧較差、又は大動脈弁口面積などのドップラ心エコー・パラメータを用いて超音波画像から評価可能である。これらは連続方程式から導出可能である。
【0005】
現在、大動脈石灰化はコンピュータ断層撮影を用いて評価され、その結果得られるAgatstonスコアが至適基準となっている。
【0006】
僧帽弁疾患も心臓弁病理の主要な部類である。僧帽弁疾患としては、僧帽弁狭窄又は僧帽弁逆流が挙げられる。僧帽弁疾患は、超音波撮像を用いて評価することができる。例えば、心尖部四腔断面視野からの超音波撮像により僧帽弁口面積の評価が可能になり、僧帽弁狭窄の検出が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超音波を用いて自動的又は半自動的にそのような検査を実行することが以前から提案されてきた。しかしながら、全ての知られている手法では、自動的な評価が適用される前に、ユーザが適切なフレームを選択する必要がある。例えば、特定のパラメータを定量化するには、超音波画像が正しい視野、例えば傍胸骨短軸断面(PSAx)又は傍胸骨長軸断面(PLAx)を捉えることが必要である。また、心臓周期の特定の部分にわたる1つ又は一連の画像フレームが必要となる場合がある。
【0008】
米国特許出願公開第2017/007201号は、処理回路を含む超音波診断装置を開示している。この処理回路は、画像生成回路によって生成された3D画像に基づいて僧帽弁のエッジを抽出し、僧帽弁のエッジを追跡し、収縮終期のタイミングを決定し、収縮終期に対応するフレームの3D画像に基づいて弁尖間の隔たりを計算するように構成されている。
【0009】
EP3,571,999A1は、処理回路を含む超音波診断装置を開示している。この処理回路は、心臓を描画する動画データに基づいて心臓の一部である領域を特定し、動画データ内のその領域に基づいて心臓フェーズを推定することを可能にする基準波形を取得するように構成されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0011】
本発明の一態様に従った実施例によると、少なくとも1つの心臓周期にわたる、対象者の心臓の超音波フレームの時間シーケンスを受信するステップと、フレームの時間シーケンスによって表される視野を決定するステップと、各フレームについて心周期内のフレームのフェーズ点を決定することであって、フェーズ点が収縮期フェーズ又は拡張期フェーズの一方の、サブフェーズ点である、当該決定するステップと、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムを適用するステップであって、各心臓弁解析アルゴリズムが、心周期の予め定義された1つ又は複数のフェーズ点において、予め定義された1つ又は複数の視野の心臓を表す1つ又は複数の入力超音波フレームを受信するように構成されており、各心臓弁解析アルゴリズムに提供される1つ又は複数の入力画像フレームが、受信されたフレームのそれぞれの、決定された視野及びフェーズ点に基づいて選択される、当該適用するステップと、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムのそれぞれの出力を表すデータ出力を生成するステップとを有する方法が、提供される。
【0012】
本発明の実施形態は、超音波フレームのシーケンスに基づいて自動化された心臓弁(例えば、大動脈弁)評価を行う方法を提供する。
【0013】
一連の画像によって表される視野を検出し、各フレームがどのフェーズ区間内にあるかに従ってそのフレームを分類することによって、適切な評価アルゴリズムの入力として適切な画像フレームを自動的に供給することができ、心臓弁評価が可能になる。より具体的には、各フレームの(収縮期又は拡張期の一方の、補助部分である)サブフェーズを検出することによって、どのフレームがどのアルゴリズムに供給されるかをより精確に制御することが可能になる。
【0014】
超音波画像フレームは、超音波撮像装置から受信され、本方法は、撮像装置による画像取得とリアルタイムで実行される。他の実施例では、画像シーケンスがデータストアから受信され、その場合、本方法は、事前の撮像セッションからの画像データに基づいてオフラインで実行される。
【0015】
決定されたフェーズ点は、所定のフェーズ区間のセットの1つに対応し、各フェーズ区間は収縮期フェーズ及び拡張期フェーズの一方の、サブ区間である。
【0016】
いくつかの実施形態では、所定のフェーズ区間が、等容性弛緩、心室充満、心房収縮、等容性収縮、及び心室駆出の、少なくともサブセットを含む。
【0017】
いくつかの実施例では、アルゴリズムの少なくとも1つは、画像フレームのシーケンスを受信するように適合される。任意選択で、本方法は、フレームのフェーズ点に基づいて、画像フレームの時間的に連続したサブセットを受信された画像フレームから選択することを有する。例えば、フェーズ区間の1つにわたる画像フレームの時間的に連続したサブセットが選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、各フレーム内で、1つ又は複数の解剖学的構造物の運動状態を検出することであって、1つ又は複数の解剖学的構造物のそれぞれが、1つの心周期にわたる周期的運動パターンを有する、検出するステップをさらに有する。各フレームのフェーズ点の決定は、1つ又は複数の解剖学的構造物の検出された運動状態に基づく。
【0019】
視野を決定することは、視野を予め定義された視野のセットのうちの1つとして分類することを有し、予め定義された視野は、傍胸骨短軸断面(PSAx)視野、傍胸骨長軸断面(PLAx)視野、心尖部四腔断面視野、心尖部二腔断面視野、及び心尖部長軸断面視野のうちの1つ又は複数を含む。
【0020】
傍胸骨短軸断面(PSAx)視野、及び傍胸骨長軸断面(PLAx)視野は大動脈弁の検査にとって特に有用である。僧帽弁の検査には、心尖部視野が特に有用である。例えば、僧帽弁口面積は心尖部四腔断面視野から評価することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムの少なくともサブセットが、大動脈弁及び/又は僧帽弁のパラメータを出力するように適合されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムが、大動脈弁狭窄(AS)、大動脈弁口面積(AVA)、大動脈弁石灰化、僧帽弁口面積、及び僧帽弁尖数又は大動脈弁尖数のうちの1つ又は複数の評価インジケータを出力するように適合されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象者のECG信号を受信するステップをさらに有する。各フレームについてフェーズ点を決定することは、ECG信号にさらに基づく。
【0024】
対象者のECG信号の波形は心周期と密接に関連している。例えば、QRSパターンは心室収縮の直前に開始する。P波及びT波は、それぞれ心房の分極と心室の再分極に関係しており、したがって心臓のフェーズと密接に関連している。したがって、ECG信号が利用可能である場合、このECG信号はフェーズ分類器への追加入力として提供され、フェーズ点検出の精度が向上する。
【0025】
各画像フレームにおいて検出又は追跡される1つ又は複数の解剖学的構造物としては、大動脈弁、僧帽弁、及び/又は心臓の心室若しくは心房の少なくとも一部分が挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、フェーズ点を決定するステップ、及び/又は視野を決定するステップは、人工知能(AI)アルゴリズム、例えば機械学習アルゴリズムの使用に基づく。
【0027】
いくつかの実施形態では、フェーズ点を決定するステップ、及び/又は視野を決定するステップは、ディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)の使用に基づく。
【0028】
いくつかの実施形態では、フェーズ点を決定するステップ、及び/又は視野を決定するステップは、リカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)の使用に基づく。
【0029】
画像の空間構造のみが解析される古典的なDNNと比較すると、RNN及び時空間ネットワークは、シーケンスにおける連続したフレーム間の時間的関係を解析することができる。これにより、フェーズ検出の精度が高まる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、ユーザ・インタフェースに、画像フレームのうちの1つ又は複数と、フレームについて決定されたフェーズ点とを同時に表示させるための表示出力を生成するステップをさらに有する。
【0031】
決定されたフェーズ点を各フレームについて表示することで、ユーザは決定の精度を評価し、確認することができる。
【0032】
任意選択で、本方法は、画像フレームのうちの1つ又は複数の、心臓フェーズ点に対するユーザによる修正を示すユーザ入力をユーザ・インタフェースから受信するステップをさらに有する。このようにして、自動的なフェーズ決定は、ユーザによって手動で上書き可能である。
【0033】
本発明のさらなる態様による実施例では、プロセッサ上で実行されると、上記で概説した、若しくは後述される任意の実施例若しくは実施形態による、又は本出願の任意の請求項に記載の方法を、プロセッサに実行させるように構成されたコード手段を含むコンピュータ・プログラム製品が提供される。
【0034】
本発明のさらなる態様による実施例では、入力/出力部、及び1つ又は複数のプロセッサを備える処理装置が提供される。1つ又は複数のプロセッサは、少なくとも1つの心臓周期にわたる、対象者の心臓の超音波フレームの時間シーケンスを入力/出力部において受信することと、フレームの時間シーケンスによって表される視野を決定することと、各フレームについて、心周期内のフレームのフェーズ点を決定することであって、当該フェーズ点が収縮期フェーズ又は拡張期フェーズの一方の、サブフェーズであるフェーズ点を決定することと、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムを適用することであって、各心臓弁解析アルゴリズムが、心周期の予め定義された1つ又は複数のフェーズ点において、予め定義された1つ又は複数の視野の心臓を表す1つ又は複数の入力超音波フレームを受信するように構成されており、各心臓弁解析アルゴリズムに提供される1つ又は複数の入力画像フレームが、受信されたフレームのそれぞれの、決定された視野及びフェーズ点に基づいて選択される、心臓弁解析アルゴリズムを適用することと、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムのそれぞれの出力を表すデータ出力を生成することとを行うように適合されている。
【0035】
前述のように、いくつかの実施形態では、フェーズ点は、所定のフェーズ区間のセットのうちの1つに対応し、各フェーズ区間は、収縮期フェーズ及び拡張期フェーズの一方の、サブ区間である。
【0036】
前述のように、いくつかの実施形態では、処理装置は、各フレーム内で1つ又は複数の解剖学的構造物の運動状態を検出するようにさらに適合され、1つ又は複数の解剖学的構造物のそれぞれは、1つの心周期にわたる周期的運動パターンを有する。各フレームのフェーズ点の決定は、1つ又は複数の解剖学的構造物の検出された運動状態に基づく。
【0037】
本発明のさらなる態様による実施例は、上記で概説した、若しくは後述される任意の実施例若しくは実施形態による、又は本出願の任意の請求項に記載の処理装置と、処理装置に超音波画像データを出力するように適合された超音波撮像装置と、処理装置と動作可能に連結された、ディスプレイを含むユーザ・インタフェースとを備えるシステムを提供する。
【0038】
本発明のこれら及び他の態様は、以下で説明される実施形態から明らかになり、以下で説明される実施形態を参照してより明瞭になるであろう。
【0039】
本発明のより良好な理解のために、また本発明がどのように実施されるかをより明快に示すため、例示のみのために、ここで添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】1つ又は複数の実施形態による例示的な方法のステップを示す図である。
【
図2】1つ又は複数の実施形態による処理装置を備えるシステムを示す図である。
【
図3】
図3は、画像フレーム及び検出されたフェーズ点を示すサンプル表示出力を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明について図を参照して説明する。
【0042】
詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することは意図していないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法の、これら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良好に理解されることになるであろう。図は単に概略的であり、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、同一又は類似した部分を示すために、同じ参照数字が図全体を通して使用されていることを理解されたい。
【0043】
本発明では、1つ若しくは複数の解剖学的/生理学的評価又は定量化のアルゴリズムを適用するために、画像フレームのシーケンスから画像フレームを選択する自動化方法が提供される。特に、本方法は、画像フレームのシーケンスが取得された撮像視野に従って、受信された画像フレームのシーケンスを分類することに基づく。本方法は、シーケンス内の各フレームについて、撮像された対象者の心臓の心周期内の画像フレームのサブフェーズを決定することをさらに含む。これらの決定されたパラメータは、1つ若しくは複数の所定のアルゴリズムに適用するための1つ若しくは複数の適切なフレームを特定するために使用され、及び/又はフレームのそれぞれ若しくはサブセットに適用するための1つ若しくは複数の適切なアルゴリズムを特定するために使用可能である。
【0044】
本発明の実施形態は、具体的には、心臓弁及び心臓弁膜症、例えば大動脈弁又は僧帽弁の評価に適用可能である。
【0045】
本発明の実施形態は、(i)画像シーケンス内に表された撮像された心臓の視野を自動的に分類すること、及び(ii)超音波画像シーケンス(1つ又は複数の心周期にわたる)について、心周期の様々なフェーズを自動的に識別することを容易にする。これにより、操作者にとって、これらのステップを手動で実行する負担がなくなり、1つ又は複数の評価アルゴリズムの適用に適したフレームを手動で選択する必要がなくなる。この結果、完全自動化されたワークフローとなり、超音波シーケンスがシステム又はプロセッサに伝達され、シーケンスによって表される視野、及びシーケンスに含まれる心周期のフェーズに応じて、1つ又は複数の解剖学的構造物、例えば大動脈弁又は僧帽弁の総合的評価が生成される。本方法の全てのステップは、スタンドアロン処理装置によって、処理装置を備えるコンピュータ・システムによって、及び/又は超音波撮像システム、例えばカートベースの超音波撮像システムに含まれる処理装置によって、実行される。本方法のステップは、超音波走査セッション中にオンラインで(リアルタイムで)実行されるか、又は、オフラインで、例えばコンピュータのプロセッサを用いて実行される。
【0046】
本明細書で説明されるいずれの方法も、コンピュータで実施される方法であり得る。
【0047】
本発明の特定の実施形態の有利な点は、例えば、心臓周期のフェーズ又はサブフェーズのうちの1つに対応する画像フレームのサブシーケンスを分離して、画像のシーケンス全体の中で、様々な予め定義されたサブシーケンスを識別可能なことである。
【0048】
図1は、本発明の実施形態による、コンピュータ又はプロセッサによって実施するための、例示的な方法のステップの概要を示している。
【0049】
方法10は、少なくとも1つの心臓周期にわたる、対象者の心臓の超音波フレームの時間シーケンスを受信するステップ(12)を有する。これは2D超音波画像のシーケンスを含む。これらは、例えばBモード超音波画像である。シーケンスは複数の心臓周期にわたっていてよい。画像シーケンスは、超音波スキャンを用いてリアルタイムで超音波撮像システムから受信されてよく、又はデータストアから受信されてもよい。
【0050】
方法10は、フレームの時間シーケンスによって表される視野を決定するステップ(14)をさらに有する。フレームのシーケンスによって表される視野は、フレームのシーケンスを取得するために使用される撮像の位置及び方向(すなわち、超音波デバイスの位置及び向き)に依存し、フレーム内に捉えられる解剖学的構造及びフレーム内のこれらの解剖学的構造の形状の観点から定義され得る。
【0051】
フレームのシーケンスによって表される視野は、標準的な心臓視野のセットなどの、事前に定義された視野のセットから選択される。標準的な心臓視野は、傍胸骨短軸断面(PSAx)視野、傍胸骨長軸断面(PLAx)視野、心尖部四腔断面視野、心尖部二腔断面視野、及び心尖部長軸断面視野を含む。多くの解剖学的/生理学的評価は、特定の解剖学的視野に対応する画像を必要とする。例えば、大動脈弁石灰化の超音波に基づく評価には、傍胸骨短軸断面(PSAx)画像が必要であり、連続方程式からの大動脈弁口面積の計算には傍胸骨長軸断面(PLAx)画像が必要である。
【0052】
方法10は、各フレームについて、心周期内のフレームのフェーズ点を決定するステップ(16)をさらに有し、フェーズ点は収縮期フェーズ又は拡張期フェーズの一方の、サブフェーズ点である。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法10は、シーケンスの各フレーム内で1つ又は複数の解剖学的構造物の運動状態を検出するステップを有し、1つ又は複数の解剖学的構造物のそれぞれは、1つの心周期にわたる周期的運動パターンを有し、フェーズ点の検出は、1つ又は複数の解剖学的構造物の検出された運動状態に基づく。1つ又は複数の解剖学的構造物としては、例えば、1つ若しくは複数の心腔(例えば、左心室/右心室)又は1つ若しく複数の心臓弁が挙げられる。運動状態には、解剖学的構造物の拡張/収縮の状態、例えば、左心室/右心室などの心腔の拡張状態又は収縮状態が含まれる。他の実施例では、運動状態は、大動脈弁又は僧帽弁などの心臓弁の配置を含む。
【0054】
方法10は、1つ又は複数の心臓弁解析/評価アルゴリズムを適用するステップ(18)をさらに有し、各アルゴリズムは、心周期の予め定義された1つ又は複数のフェーズ点において、予め定義された1つ又は複数の視野で心臓を表す1つ又は複数の入力超音波フレームを受信するように構成される。本方法は、受信されたフレームのそれぞれの、決定された視野及びフェーズ点に基づいて、アルゴリズムの少なくともサブセットに提供される1つ又は複数の入力画像フレームを選択するステップを有する。1つ又は複数の解析又は評価のアルゴリズムは、データストアに保存され、本方法中に使用するために取り出される。各アルゴリズムの入力画像フレームに対する視野及びフェーズ点への要件は、データストアの各アルゴリズムに関連付けられたメタデータとして格納することができる。本方法は、各アルゴリズムの入力画像フレーム要件を特定するために、このメタデータを読みとるステップを有する。1つ又は複数のアルゴリズムは、方法の先行ステップの完了に応答して自動的にトリガされてよい。
【0055】
本方法は、1つ又は複数の心臓弁解析アルゴリズムのそれぞれの出力を表すデータ出力を生成するステップ(20)をさらに有する。この出力は、別のシステム若しくはデバイス、例えばリモート・コンピュータ、又はローカル若しくはリモートのデータストアに伝達される。データ出力の伝達は、通信モジュール又は入力/出力モジュールを使用して実行される。
【0056】
いくつかの実施形態では、本方法は、超音波画像フレームのシーケンスを、各画像フレームの検出されたフェーズと共に視覚的に提示するように、ユーザ・インタフェースの表示デバイスを制御するための表示出力を生成するステップを有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、ユーザ・インタフェースにより、ユーザによる各フレームのフェーズの検証及び/又は修正を可能にし、例えば、ユーザが様々なサブフェーズ間の時間間隔を調整することを可能にする。これは、1つ又は複数の解析又は評価のアルゴリズムが続いて適用されるよりも先に実行される。例えば、本方法は、ユーザ・インタフェースにおけるユーザによる入力があるまで一時停止する。
【0058】
図2に概略的に示されるように、本発明のさらなる態様は、入力/出力(I/O)部34、及び上記で概説された方法、或いは上記で開示された、若しくは後述される任意の実施形態による、又は本出願の任意の請求項に記載の方法を、実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサ36を備える処理装置を提供する。
【0059】
本発明のさらなる態様ではシステム40が提供され、システム40は、上記の処理装置32を備え、処理装置に超音波画像データを出力するように適合された超音波撮像装置42をさらに備え、このデータは入力/出力部34において受信される。本システムは、任意選択で、処理装置と動作可能に連結されたディスプレイを備えるユーザ・インタフェース44をさらに含む。
【0060】
上記のように、本方法のステップの1つは、画像シーケンス内の各フレームについて、そのフレームが属する心周期のサブフェーズを決定するステップを有する。本ステップを実施するための詳細を、ここで概説する。
【0061】
各フレームの決定されたフェーズ点は、好ましくは、所定のフェーズ区間のセットのうちの1つに対応し、各フェーズ区間は、収縮期及び拡張期の一方のサブ区間である。
【0062】
具体的には、心周期は5つの主要なフェーズ区間のシーケンスを含むと理解することができ、5つの主要なフェーズ区間は、それぞれが心臓周期のサブフェーズに対応し、以下のように要約される。
【0063】
等容性弛緩:このフェーズ区間の間、血液は心房に返るように流れる。
【0064】
心室充満:このフェーズ区間の間、房室弁が開き、血液が心房から心室へ流れ始める。
【0065】
心房収縮:心房が収縮し、血液が心室に充満し続ける。これが拡張期の終了である。
【0066】
等容性収縮:心室は収縮するが、大動脈弁及び肺動脈弁は閉じたままである。これが収縮期の開始である。血液はまだ大動脈及び肺動脈を通って流れていない。
【0067】
心室駆出:大動脈弁及び肺動脈弁が開き、血液が体の他の部位に流れ出す。
【0068】
大動脈弁は最初の4つのフェーズ区間の間は閉じており、5番目のフェーズ区間の間は開いている。心臓周期のこれらのサブフェーズ、及びそれぞれに対応する大動脈弁の状態を、以下の表1に要約する。
【0069】
【0070】
各画像フレームのフェーズ点の検出は、機械学習アルゴリズムなどのAIアルゴリズムを用いて実行可能である。ディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)はフェーズ点の検出によく適している。しかしながら、古典的な画像処理技法が追加的又は代替的に使用されてもよい。
【0071】
上述のように、本方法は、受信された画像シーケンスについて、当該シーケンスによって表される心臓の視野を決定するステップを有する。
【0072】
視野を決定するステップは、視野を予め定義された視野のセットのうちの1つとして分類するステップを有し、予め定義された視野は、傍胸骨短軸断面(PSAx)視野、傍胸骨長軸断面(PLAx)視野、心尖部四腔断面視野、心尖部二腔断面視野、及び心尖部長軸断面視野のうちの1つ又は複数を含む。
【0073】
例えば、本方法が大動脈弁の解析又は評価を目的としている場合、視野を決定するステップは、傍胸骨短軸断面(PSAx)視野、及び傍胸骨長軸断面(PLAx)視野のうちの1つとして視野を分類するステップを有する。本方法が僧帽弁の評価又は解析を目的としている場合、視野を決定するステップは、心尖部四腔断面視野、心尖部二腔断面視野、及び心尖部長軸断面視野のうちの1つとして視野を分類するステップを有する。
【0074】
画像シーケンスの視野の検出は、機械学習アルゴリズムなどのAIアルゴリズムを用いて実行可能である。例えば、ニューラル・ネットワークが適用され、当該ニューラル・ネットワークは、シーケンスの画像のうちの1つ又は複数を入力として受信するように適合され、シーケンスの画像の予測視野を示すデータ出力を生成するように適合される。いくつかの実施例ではディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)が使用される。機械学習アルゴリズムは、画像シーケンス全体を受信してもよく、又は画像のシーケンスのうちの、1つのみ、又はサブセットを受信してもよい。後者の選択肢の方が、方法の開始時に画像のシーケンス全体が利用可能でない場合に、画像取得とリアルタイムで本方法を適用することができるので、好ましい。画像シーケンス全体が利用可能な場合でも、アルゴリズムは、画像の1つのみ、又はサブセット、例えばシーケンスのランダムに選択されたフレームを受信するように訓練されてもよい。機械学習アルゴリズムは、訓練データセットに基づいて予め訓練され、訓練データセットは、所定の標準視野のセットの異なる視野における心臓の、事前に取得された画像フレームを含み、それぞれのフレームが、表す視野に従って手動でラベル付けされている。機械学習アルゴリズムは、画像フレームにおいて表された視野に従って入力画像フレームの分類を出力するように適合された分類器アルゴリズムであり得る。
【0075】
上述のように、画像フレームのそれぞれのフェーズ点の決定は、AIアルゴリズム、例えば機械学習アルゴリズムによって実行される。いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、1つ又は複数の心周期にわたる画像シーケンス全体を、入力として受信し、シーケンス内の各フレームについて、そのフレームが対応するフェーズ点を示すラベル又はタグを出力するように適合される。この選択肢により、アルゴリズムが一連のフレームの各フレームの前後の画像フレームによって提供されるコンテキスト情報を考慮できるので、フェーズ識別の精度が向上する。他の実施例では、アルゴリズムは、一度に単一の画像フレームのみを入力として受信し、画像フレームのフェーズ点を示す出力を生成するように適合される。この後者の選択肢は、本発明の開始時には、通常、画像シーケンス全体は利用可能でないので、本方法を画像取得と共にリアルタイムで適用する場合に好ましい。
【0076】
機械学習アルゴリズムは、訓練データセットに基づいて予め訓練され、訓練データセットは、(それぞれが収縮期フェーズ又は拡張期フェーズの一方の、サブフェーズに対応する)フェーズ区間の所定のセットの異なるフェーズ区間における、心臓の事前に取得された画像フレームを含み、それぞれのフレームは、対応するフェーズ点に従って手動でラベル付けされている。機械学習アルゴリズムは、画像フレームにおいて表されたフェーズ点に従って入力画像フレームの分類を出力するように適合された分類器アルゴリズムであってもよい。
【0077】
一組の実施形態では、フェーズ点を決定するための機械学習アルゴリズムは、時空間ニューラル・ネットワーク又はリカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)であり得る。この一組の実施形態では、アルゴリズムへの入力は、画像フレームのシーケンス全体である。画像の空間構造のみが解析される古典的なDNNに比べると、RNN及び時空間ニューラル・ネットワークは、シーケンスの連続するフレーム間の時間関係を解析することができる。
【0078】
上述のように、いくつかの実施例では、各画像フレームのサブフェーズ点を決定するステップは、まず、各フレーム内で、1つ又は複数の解剖学的構造物の運動状態であって、それぞれが1つの心周期にわたる周期的な運動パターンを有する運動状態を検出するステップと、次いで、検出された運動状態に基づいてフェーズ点を決定するステップとを有する。いくつかの実施例では、運動状態を検出するための独立したアルゴリズムと、それに続く、運動状態に基づいてフェーズ点を検出するためのアルゴリズムとが、存在する。いくつかの実施例では、運動状態を検出するアルゴリズムが存在し、それに続き、検出された運動状態に関連付けられた対応するフェーズ点を識別するためのルックアップ・テーブルが使用される。いくつかの実施例では、運動状態の検出は、所与の画像フレームのフェーズ点を決定するステップの一部として、単一の機械学習アルゴリズムによって暗黙的に実行される。
【0079】
いくつかの実施例では、各画像フレームについてフェーズ点を決定するステップは、対象者のECG信号を使用して行われる。したがって、方法10は、対象者のECG信号を受信するステップをさらに有し、各フレームのフェーズ点を決定するステップは、ECG信号にさらに基づく。
【0080】
ECG信号の形状は、心周期のフェーズと密接に関連している。例えば、標準的なQRSパターンは常に心室収縮の直前に始まる。さらに、P波及びT波は、心房の分極及び心室の再分極にそれぞれ関連しており、したがって心臓のフェーズと密接に関連している。したがって、ECG検知が利用可能な場合、フェーズ点決定アルゴリズムへの追加入力として任意選択で提供され、これにより、例えば上述のECG曲線パターンの識別に基づいて、フェーズ決定の精度が向上する。例えば、機械学習アルゴリズムは、訓練データ・エントリを使用して訓練され、訓練データ・エントリは、入力画像フレームと、フレームの時点と一致するECG信号データとの組み合わせを含み、各訓練データ・エントリは、画像フレームの対応するフェーズ点に手動でタグ付けされている。
【0081】
しかしながら、大動脈弁とその周囲の心室及び心房の運動は、例えば機械学習アルゴリズムによって、フェーズ点を検出するのに通常十分であるので、ECGの使用は必須ではない。
【0082】
画像シーケンスで表される視野が決定され、シーケンス内の各フレームのフェーズ点が決定されると、本方法は、1つ又は複数の心臓弁解析又は評価のアルゴリズムを適用するステップを有し、各アルゴリズムは、心周期の予め定義された1つ又は複数のフェーズ点において、予め定義された1つ又は複数の視野で心臓を表す1つ又は複数の入力超音波フレームを受信するように構成される。いくつかの実施例では、本方法は、アルゴリズムの少なくともサブセットへの入力として提供される画像フレームのシーケンスの中から1つ又は複数の画像フレームを選択するステップを有する。少なくとも1つの適切なフレーム又はフレームのサブシーケンスが、各評価アルゴリズムに提供され、この場合、適切とは、関連するアルゴリズムの入力要件に合致する視野及びフェーズ点を有するフレームを意味する。いくつかの実施例では、各フレームについて、適切な1つ又は複数の評価アルゴリズムが適用される。いくつかの実施例では、1つ又は複数の評価又は解析アルゴリズムは、画像フレームのシーケンスのサブシーケンス、例えば、心臓周期の特定のサブフェーズにわたる連続した画像フレームのサブシーケンスを、入力として受信するように適合される。
【0083】
評価又は解析のアルゴリズムは、それぞれ、心臓弁、例えば大動脈弁又は僧帽弁に関する1つ又は複数のパラメータを決定するためのものである。アルゴリズムの1つ又は複数は、心臓弁の面積などの、1つ又は複数のパラメータの定量的測定値を導出するように適合される。アルゴリズムの1つ又は複数は、特定の病理学的状態の有無、又は特定の病理学的状態の重症度の段階などの分類を導出するように適合される。
【0084】
いくつかの実施形態では、評価アルゴリズムの少なくとも1つは、大動脈弁狭窄(AS)の有無又は重症度を示すインジケータを出力するように適合される。大動脈弁狭窄とは、大動脈弁の狭窄を意味する。
【0085】
いくつかの実施形態では、評価アルゴリズムの少なくとも1つは、大動脈弁口面積(AVA)を示すインジケータを出力するように適合される。AVA計算は、例えば画像化された大動脈弁の画像解析に基づいて、弁のサイズを推定するために直接的に実行可能である。特に、収縮期フェーズの終期の間(すなわち、大動脈弁が開いているとき)の心臓のPSAx視野を使用して、直接的なAVA計算を実現することができる。あるいは、AVAは、標準的なAVA連続方程式を使用して間接的に計算されてもよく、AVA連続方程式は、(収縮期中の)駆出ジェットの時間-速度関数の積分値、及び左室流出路(LVOT)の直径を含む入力を必要とする。連続方程式を使用したAVA計算は、PLAx視野の、収縮期をカバーする画像フレームのサブシーケンスを使用して実行可能である。
【0086】
いくつかの実施形態では、評価アルゴリズムの少なくとも1つは、大動脈弁石灰化の有無又は重症度を示すインジケータを出力するように適合される。大動脈弁石灰化評価には、拡張終期におけるPSAx(及び任意選択でPLAx)視野の1つ又は複数の画像フレームが必要である。
【0087】
いくつかの実施形態では、評価アルゴリズムの少なくとも1つは、僧帽弁口面積を示すインジケータを出力するように適合される。
【0088】
いくつかの実施形態では、評価アルゴリズムの少なくとも1つは、僧帽弁及び/又は大動脈弁の弁尖数を示すインジケータを出力するように適合される。例えば、二尖大動脈弁は、大動脈弁が2つの弁尖しか有していない心疾患である。
【0089】
上記のように、1つ又は複数の実施形態では、本方法は、ユーザ・インタフェースに、画像フレームのうちの1つ又は複数と、そのフレームについての決定されたフェーズ点とを同時に表示させるための表示出力を生成するステップをさらに有する。いくつかの実施例では、ユーザ・インタフェースは、心周期中の所望のフェーズ点の選択を可能にするユーザ制御を提供するように制御され、これに応答して、選択されたフェーズ点に対応する画像フレームが、ユーザ・インタフェースのディスプレイに表示される。例えば、ユーザ・インタフェースは、ある長さを有するスライダ・バーを表示し、スライダ・バー上の各選択可能位置は、心周期全体の範囲内のフェーズ点に対応する。スライダ・バーの、連続する長さ部分は、それらが対応する心周期のそれぞれのフェーズ区間に従ってラベル付けされる。
図3では、例示的なユーザ・インタフェースの表示出力を、一例として示す。
【0090】
任意選択で、いくつかの実施形態では、本方法は、画像フレームの1つ又は複数の心臓フェーズ点のユーザ修正を示すユーザ入力を、ユーザ・インタフェースから受信するステップをさらに有する。このようにして、自動的なフェーズ決定は、ユーザによって手動で上書き可能である。ユーザ・インタフェースは、所与のフレームの選択、及びそのフレームについての調整フェーズ点の入力を可能にするユーザ制御機能を提供する。
【0091】
ユーザ・インタフェースは、タッチパネル・ディスプレイを有するコンソールを含む。追加的又は代替的に、ユーザ・インタフェースは、ディスプレイ、ポインタ及び/又はキーボードなどのさらなるユーザ入力手段を有するコンソールを含む。
【0092】
上記で考察したように、本発明のいくつかの実施形態は、1つ又は複数の機械学習アルゴリズムを使用する。機械学習アルゴリズムとは、出力データを生成又は予測するために入力データを処理する任意の自己訓練アルゴリズムである。
【0093】
本発明で採用するのに適した機械学習アルゴリズムは、当業者にとっては明らかであろう。適切な機械学習アルゴリズムの例としては、決定木アルゴリズム及び人工ニューラル・ネットワークが挙げられる。ロジスティック回帰、サポート・ベクタ・マシン、又は単純ベイズ・モデルなどの、他の機械学習アルゴリズムが、適切な代替案である。
【0094】
人工ニューラル・ネットワーク(又は単にニューラル・ネットワーク)の構造は、人間の脳をモデルにしている。ニューラル・ネットワークは層で構成され、各層は複数のニューロンを含む。各ニューロンは数学的演算を含む。具体的には、各ニューロンは、単一のタイプの変換の異なる重み付けされた組み合わせ(例えば、同じタイプの変換、シグモイドなどであるが、異なる重み付け)を含んでもよい。入力データを処理するプロセスでは、各ニューロンの数学的演算が入力データに対して実行されて、数値出力が生成され、ニューラル・ネットワークの各層の出力が次の層に順次送られる。最後の層によって出力が提供される。
【0095】
機械学習アルゴリズムの訓練の方法はよく知られている。典型的には、そのような方法は、訓練入力データ・エントリと、対応する訓練出力データ・エントリとを含む訓練データセットを取得することを有する。初期化された機械学習アルゴリズムが、各入力データ・エントリに適用されて、予測出力データ・エントリを生成する。予測出力データ・エントリと、対応する訓練出力データ・エントリとの間の誤差は、機械学習アルゴリズムを修正するために使用される。このプロセスは、誤差が収束し、予測出力データ・エントリが、訓練出力データ・エントリと十分に類似する(例えば±1%)まで繰り返されてよい。これは一般に、教師付き学習技法として知られている。
【0096】
例えば、機械学習アルゴリズムがニューラル・ネットワークで形成されている場合、各ニューロンの数学的演算(の重み付け)は、誤差が収束するまで変更することができる。ニューラル・ネットワークを修正する知られている方法としては、勾配降下法、逆伝播アルゴリズムなどが挙げられる。
【0097】
上記の本発明の実施形態は、処理装置を利用している。処理装置は、一般に、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを備える。処理装置は、単一の収容用のデバイス、構造体、若しくはユニット内に配置されてもよく、又は複数の異なるデバイス、構造体、若しくはユニットの間に分散されてもよい。したがって、処理装置が特定のステップ又はタスクを実行するように適合又は構成されているという記載は、そのステップ又はタスクが、複数の処理装置要素のうちのいずれかの1つ又は複数の処理装置要素によって、単独又は組み合わせのいずれかで、実行されることに相当する。当業者であれば、そのような分散処理装置をどのように実施し得るかを、理解するであろう。処理装置は、データを受信し、データをさらなる構成要素に出力するための通信モジュール又は入力/出力部を含む。
【0098】
処理装置の1つ又は複数のプロセッサは、様々な必要な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多くのやり方で実施可能である。プロセッサは典型的には、1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用し、マイクロプロセッサは、必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされる。プロセッサは、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実施される。
【0099】
本開示の様々な実施形態に利用される回路の例としては、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
様々な実施例において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータ・メモリなどの1つ又は複数の記憶媒体と関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラで実行されるとき、必要な機能を実行する1つ又は複数のプログラムで符号化される。様々な記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定されていてもよく、又は自身に格納された1つ若しくは複数のプログラムをプロセッサに読み込ませることができるように、可搬式であってもよい。
【0101】
開示の実施形態に対する変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲を研究することによって、特許請求された発明を実施する際に、当業者であれば理解し、実施することができる。特許請求の範囲において、「備える/含む/有する」という単語は、他の要素又はステップを排除せず、単数形の要素は、複数であることを排除しない。
【0102】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数の項目の機能を満たしてもよい。
【0103】
ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
【0104】
コンピュータ・プログラムは、他のハードウェアと共に、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に記憶/分散されてよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介したものなどの、他の形態で分散されてもよい。
【0105】
特許請求の範囲又は明細書において、「ように適合される」という用語が使用される場合、「ように適合される」という用語は、「ように構成される」という用語と等価であることを意図していることに留意されたい。
【0106】
特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】