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  • 特表-薄型で移行可能なアクセスポート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】薄型で移行可能なアクセスポート
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61M37/00 560
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571650
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021033386
(87)【国際公開番号】W WO2022245358
(87)【国際公開日】2022-11-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442637
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】ホイ、ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】デンスリー、ブライオン レイ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーセン、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フィウメフレッド、ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、イアン エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA75
4C267GG02
4C267GG21
(57)【要約】
本明細書に開示される実施形態は、リザーバを画定する本体とステムとを含むポートシステムに関する。本体のうちの1つは、下部ハウジングと、下部ハウジングに対して摺動可能に係合される上部ハウジングとを含んでよいとともに、拡張構成と収縮構成との間を移行可能である。収縮構成のポート本体は、拡張構成のポート本体よりも小さい容積または外形を画定してよい。収縮構成のリザーバは、拡張構成のリザーバよりも小さい容積を画定してよい。付勢部材は、ポートを拡張構成に付勢してよい。ラッチ機構は、ポートを拡張構成および収縮構成のうちの1つに保持してよい。アクチュエータは、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させてよい。収縮構成にあるポートを皮下に配置することによって、必要な切開部位がより小さくなり、縫合がより少なくなり、および患者の回復時間が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下アクセスポートであって、
下部ハウジングと、前記下部ハウジングに対して摺動可能に係合されるとともに、協働してリザーバを画定する上部ハウジングとを含む本体であって、拡張構成と収縮構成との間を移行可能であり、前記収縮構成はより小さい全体の外形を画定する、本体と、
針が貫通可能なセプタムであって、前記上部ハウジングの上面に配置されたリザーバ開口内に配置されるとともに、前記リザーバ開口への経皮的アクセスを提供するように構成されたセプタムと、
前記リザーバと流体連通するステムルーメンを画定するポートステムと、を備える、
皮下アクセスポート。
【請求項2】
前記拡張構成にある前記ポート本体は第1ポート高さを画定し、前記収縮構成にある前記ポート本体は第2ポート高さを画定し、前記第2ポート高さは前記第1ポート高さ未満である、請求項1に記載の皮下アクセスポート。
【請求項3】
前記拡張構成にある前記ポート本体は第1ポート容積を画定し、前記収縮構成における前記ポート本体は第2ポート容積を画定し、前記第2ポート容積は前記第1ポート容積未満である、請求項1または2に記載の皮下アクセスポート。
【請求項4】
前記拡張構成にある前記リザーバは第1リザーバ高さを画定し、前記収縮構成にある前記リザーバは第2リザーバ高さを画定し、前記第2リザーバ高さは前記第1リザーバ高さ未満である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項5】
前記拡張構成にある前記リザーバは第1リザーバ容積を画定し、前記収縮構成にある前記リザーバは第2リザーバ容積を画定し、前記第2リザーバ容積は前記第1リザーバ容積未満である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項6】
前記第2リザーバ容積は、0容積または極小容積を画定する、請求項5に記載の皮下アクセスポート。
【請求項7】
前記下部ハウジングは、前記上部ハウジングと伸縮自在に係合されるとともに、前記拡張構成と前記収縮構成との間を移行するように摺動可能に係合される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項8】
前記上部ハウジングの外面は、前記下部ハウジングの内面と摺動可能に係合される、請求項7に記載の皮下アクセスポート。
【請求項9】
前記上部ハウジングの内面は、前記下部ハウジングの外面と摺動可能に係合される、請求項7に記載の皮下アクセスポート。
【請求項10】
前記ポートが前記収縮構成にあるとき、前記上部ハウジングおよび前記セプタムのうちの1つが前記ステムルーメンを閉塞する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項11】
前記ポートを前記拡張構成に向けて付勢するように構成された付勢部材をさらに含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項12】
ロック位置とアンロック位置との間を移行可能であるとともに、前記上部ハウジングを前記拡張構成および前記収縮構成のうちの1つに保持するように構成されたラッチ機構をさらに含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項13】
前記ラッチ機構は、針が前記リザーバにアクセスするときに前記上部ハウジングを拡張構成にロックするように構成されている、請求項12に記載の皮下アクセスポート。
【請求項14】
前記ラッチ機構は、前記上部ハウジングに係合して収縮構成に保持するとともに、前記ポートの上面が押し下げられたときに前記上部ハウジングの係合を解除するように構成されている、請求項12または13に記載の皮下アクセスポート。
【請求項15】
前記ラッチ機構に結合されるとともに、前記ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成されたアクチュエータをさらに含む、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の皮下アクセスポート。
【請求項16】
前記アクチュエータは、前記本体の上面および側面のうちの1つに配置された押しボタン、スライダ、およびロッカースイッチのうちの1つである、請求項15に記載の皮下アクセスポート。
【請求項17】
前記アクチュエータは、磁界を有する磁石が前記アクチュエータに近接して配置されたときに、前記ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成された磁気スイッチを含む、請求項15に記載の皮下アクセスポート。
【請求項18】
前記アクチュエータは、前記ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるための信号を受信するように構成され、前記信号は、磁気、電磁気、無線周波数、音響、および光学のモダリティ信号のうちの1つを含む、請求項15に記載の皮下アクセスポート。
【請求項19】
皮下アクセスポートを製造する方法であって、
下部ハウジングと、前記下部ハウジングに対して摺動可能に係合されるとともに、協働してリザーバを画定する上部ハウジングとを含むポート本体であって、拡張構成と収縮構成との間を移行可能であり、前記収縮構成はより小さい全体の外形を画定する、ポート本体を形成する工程と、
針が貫通可能なセプタムであって、前記上部ハウジングの上面に配置されたリザーバ開口内に配置されるとともに、前記リザーバ開口への経皮的アクセスを提供するように構成されたセプタムを結合する工程と、
前記本体に結合されるポートステムであって、前記リザーバと流体連通するステムルーメンを画定するポートステムを形成する工程と、を備える方法。
【請求項20】
前記拡張構成にある前記ポート本体は第1ポート高さを画定し、前記収縮構成にある前記ポート本体は第2ポート高さを画定し、前記第2ポート高さは前記第1ポート高さ未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記拡張構成にある前記ポート本体は第1ポート容積を画定し、前記収縮構成における前記ポート本体は第2ポート容積を画定し、前記第2ポート容積は前記第1ポート容積未満である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記拡張構成にある前記リザーバは第1リザーバ高さを画定し、前記収縮構成にある前記リザーバは第2リザーバ高さを画定し、前記第2リザーバ高さは前記第1リザーバ高さ未満である、請求項19乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記拡張構成にある前記リザーバは第1リザーバ容積を画定し、前記収縮構成にある前記リザーバは第2リザーバ容積を画定し、前記第2リザーバ容積は前記第1リザーバ容積未満である、請求項19乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2リザーバ容積は、0容積または極小容積を画定する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記下部ハウジングを、前記拡張構成と前記収縮構成との間を移行するように摺動可能なように、前記上部ハウジングと伸縮自在に係合させる工程をさらに備える、請求項19乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記上部ハウジングの外面は、前記下部ハウジングの内面と摺動可能に係合される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記上部ハウジングの内面は、前記下部ハウジングの外面と摺動可能に係合される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポートが前記収縮構成にあるとき、前記上部ハウジングおよび前記セプタムのうちの1つが前記ステムルーメンを閉塞する、請求項19乃至27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ポートを前記拡張構成に向けて付勢するように構成された付勢部材を、前記ポート本体内に形成する工程をさらに含む、請求項19乃至28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ロック位置とアンロック位置との間を移行可能であるとともに、前記上部ハウジングを前記拡張構成および前記収縮構成のうちの1つに保持するように構成されたラッチ機構をさらに含む、請求項19乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ラッチ機構は、針が前記リザーバにアクセスするときに前記上部ハウジングを拡張構成にロックするように構成されている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ラッチ機構は、前記上部ハウジングに係合して収縮構成に保持するとともに、前記ポートの上面が押し下げられたときに前記上部ハウジングの係合を解除するように構成されている、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記ラッチ機構に結合されるとともに、前記ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成されたアクチュエータをさらに含む、請求項30乃至32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記アクチュエータは、前記本体の上面および側面のうちの1つに配置された押しボタン、スライダ、およびロッカースイッチのうちの1つである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アクチュエータは、磁界を有する磁石が前記アクチュエータに近接して配置されたときに、前記ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成された磁気スイッチを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記アクチュエータは、前記ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるための信号を受信するように構成され、前記信号は、磁気、電磁気、無線周波数、音響、および光学のモダリティ信号のうちの1つを含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄型で移行可能なアクセスポートに関する。
【発明の概要】
【0002】
簡潔に要約すると、本明細書に開示される実施形態は、拡張構成と収縮構成との間を移行可能な皮下アクセスポート、およびその関連する方法に関する。ポートは、下部ハウジングと、下部ハウジングに対して摺動可能に係合される上部ハウジングとを有する本体を含み得る。下部ハウジングおよび上部ハウジングは、協働してリザーバを画定してよい。拡張構成では、ポートは、第1ポート容積および第1リザーバ容積を画定してよい。収縮構成では、ポートは、第1ポート容積よりも小さい第2ポート容積と、第1リザーバ容積よりも小さい第2リザーバ容積とを画定してよい。有利には、ポートは、挿入のために縮小された全体サイズまたは外形を提供するように、収縮構成に移行してよい。任意選択で、ポートは、アクセスイベント間に縮小された全体サイズを提供してよい。したがって、ポートによって、必要な切開部位がより小さくなり、必要な縫合がより少なくなり、または縫合を全く必要とせず、患者の回復時間や患者の快適さを改善し、瘢痕を低減しかつ審美性を改善し得る。
【0003】
本明細書に開示されるのは、皮下アクセスポートであって、下部ハウジングと、下部ハウジングに対して摺動可能に係合されるとともに、協働してリザーバを画定する上部ハウジングとを含む本体であって、拡張構成と収縮構成との間を移行可能であり、収縮構成はより小さい全体の外形を画定する、本体と、針が貫通可能なセプタムであって、上部ハウジングの上面に配置されたリザーバ開口内に配置されるとともに、リザーバ開口への経皮的アクセスを提供するように構成されたセプタムと、リザーバと流体連通するステムルーメンを画定するポートステムと、を備える。
【0004】
いくつかの実施形態では、拡張構成にあるポート本体は第1ポート高さを画定し、収縮構成にあるポート本体は第2ポート高さを画定し、第2ポート高さは第1ポート高さ未満であるいくつかの実施形態では、拡張構成にあるポート本体は第1ポート容積を画定し、収縮構成におけるポート本体は第2ポート容積を画定し、第2ポート容積は第1ポート容積未満である。いくつかの実施形態では、拡張構成にあるリザーバは第1リザーバ高さを画定し、収縮構成にあるリザーバは第2リザーバ高さを画定し、第2リザーバ高さは第1リザーバ高さ未満である。
【0005】
いくつかの実施形態では、拡張構成にあるリザーバは第1リザーバ容積を画定し、収縮構成にあるリザーバは第2リザーバ容積を画定し、第2リザーバ容積は第1リザーバ容積未満である。いくつかの実施形態では、第2リザーバ容積は、0容積または極小容積を画定する。いくつかの実施形態では、下部ハウジングは、上部ハウジングと伸縮自在に係合されるとともに、拡張構成と収縮構成との間を移行するように摺動可能に係合される。いくつかの実施形態では、上部ハウジングの外面は、下部ハウジングの内面と摺動可能に係合される。いくつかの実施形態では、上部ハウジングの内面は、下部ハウジングの外面と摺動可能に係合される。いくつかの実施形態では、ポートが収縮構成にあるとき、上部ハウジングおよびセプタムのうちの1つがステムルーメンを閉塞する。
【0006】
いくつかの実施形態では、皮下アクセスポートは、ポートを拡張構成に向けて付勢するように構成された付勢部材をさらに含む。いくつかの実施形態では、皮下アクセスポートは、ロック位置とアンロック位置との間を移行可能であるとともに、上部ハウジングを拡張構成および収縮構成のうちの1つに保持するように構成されたラッチ機構をさらに含む。いくつかの実施形態では、ラッチ機構は、針がリザーバにアクセスするときに上部ハウジングを拡張構成にロックするように構成されている。いくつかの実施形態では、ラッチ機構は、上部ハウジングに係合して収縮構成に保持するとともに、ポートの上面が押し下げられたときに上部ハウジングの係合を解除するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、皮下アクセスポートは、ラッチ機構に結合されるとともに、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成されたアクチュエータをさらに含む。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、本体の上面および側面のうちの1つに配置された押しボタン、スライダ、およびロッカースイッチのうちの1つである。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、磁界を有する磁石がアクチュエータに近接して配置されたときに、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成された磁気スイッチを含む。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるための信号を受信するように構成され、信号は、磁気、電磁気、無線周波数、音響、および光学のモダリティ信号のうちの1つを含む。
【0008】
皮下アクセスポートを製造する方法も開示され、下部ハウジングと、下部ハウジングに対して摺動可能に係合されるとともに、協働してリザーバを画定する上部ハウジングとを含むポート本体であって、拡張構成と収縮構成との間を移行可能であり、収縮構成はより小さい全体の外形を画定する、ポート本体を形成する工程と、針が貫通可能なセプタムであって、上部ハウジングの上面に配置されたリザーバ開口内に配置されるとともに、リザーバ開口への経皮的アクセスを提供するように構成されたセプタムを結合する工程と、本体に結合されるポートステムであって、リザーバと流体連通するステムルーメンを画定するポートステムを形成する工程と、を備える。
【0009】
いくつかの実施形態では、拡張構成にあるポート本体は第1ポート高さを画定し、収縮構成にあるポート本体は第2ポート高さを画定し、第2ポート高さは第1ポート高さ未満である。いくつかの実施形態では、拡張構成にあるポート本体は第1ポート容積を画定し、収縮構成におけるポート本体は第2ポート容積を画定し、第2ポート容積は第1ポート容積未満である。いくつかの実施形態では、拡張構成にあるリザーバは第1リザーバ高さを画定し、収縮構成にあるリザーバは第2リザーバ高さを画定し、第2リザーバ高さは第1リザーバ高さ未満である。
【0010】
いくつかの実施形態では、拡張構成にあるリザーバは第1リザーバ容積を画定し、収縮構成にあるリザーバは第2リザーバ容積を画定し、第2リザーバ容積は第1リザーバ容積未満である。いくつかの実施形態では、第2リザーバ容積は、0容積または極小容積を画定する。いくつかの実施形態では、本方法は、下部ハウジングを、拡張構成と収縮構成との間を移行するように摺動可能なように、上部ハウジングと伸縮自在に係合させる工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上部ハウジングの外面は、下部ハウジングの内面と摺動可能に係合される。
【0011】
いくつかの実施形態では、上部ハウジングの内面は、下部ハウジングの外面と摺動可能に係合される。いくつかの実施形態では、ポートが収縮構成にあるとき、上部ハウジングおよびセプタムのうちの1つがステムルーメンを閉塞する。いくつかの実施形態では、本方法は、ポートを拡張構成に向けて付勢するように構成された付勢部材を、ポート本体内に形成する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ロック位置とアンロック位置との間を移行可能であるとともに、上部ハウジングを拡張構成および収縮構成のうちの1つに保持するように構成されたラッチ機構をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ラッチ機構は、針がリザーバにアクセスするときに上部ハウジングを拡張構成にロックするように構成されている。いくつかの実施形態では、ラッチ機構は、上部ハウジングに係合して収縮構成に保持するとともに、ポートの上面が押し下げられたときに上部ハウジングの係合を解除するように構成されている。いくつかの実施形態では、本方法は、ラッチ機構に結合されるとともに、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成されたアクチュエータをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、アクチュエータは、本体の上面および側面のうちの1つに配置された押しボタン、スライダ、およびロッカースイッチのうちの1つである。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、磁界を有する磁石がアクチュエータに近接して配置されたときに、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成された磁気スイッチを含む。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、ラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるための信号を受信するように構成され、信号は、磁気、電磁気、無線周波数、音響、および光学のモダリティ信号のうちの1つを含む。
【0014】
添付の図面に示される特定の実施形態を参照することによって、本開示はより詳細に説明される。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を使用してさらに具体的かつ詳細に、記述および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書に開示される実施形態による、カテーテルに結合されたポートの斜視図。
図2A】本明細書に開示される実施形態による、拡張構成のポートの縦方向断面図。
図2B】本明細書に開示される実施形態による、収縮構成のポートの縦方向断面図。
図3A】本明細書に開示される実施形態による、拡張構成のポートの横方向断面図。
図3B】本明細書に開示される実施形態による、収縮構成のポートの横方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書において提示される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に切り離すことができ、本明細書に開示される複数の他の実施形態のうちの任意の実施形態の特徴と任意選択で組み合わせまたは置換してよい特徴を有する場合があることも理解されたい。
【0017】
本明細書で使用する用語に関しては、各用語はいくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、本明細書において提示される概念の範囲を限定しないということも理解されたい。序数(たとえば、第1、第2、第3等)は、一般的に、複数の特徴または工程の群の中で互いに異なる特徴または工程を区別または識別するために使用され、順番の限定または数的な限定を加えるものではない。たとえば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴または工程は、必ずしもこの順序で現れる必要はなく、またそのような特徴または工程を含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴または工程に限定される必要はない。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等の表記は、便宜的に使用されており、たとえば、いかなる特定の固定的な位置、向き、または方向も意味するものではない。むしろ、こうした表記は、たとえば相対的な位置、向き、または方向を示すために使用される。文脈からそうでないことが明らかに示されていなければ、「a」、「an」、および「the」で表す単数形は、複数形を含む。
【0018】
「近位」に関しては、たとえば本明細書に開示されるカテーテルの「近位部分」または「近位端部分」は、カテーテルのうち、カテーテルを患者に使用するときに医師の近くにあるものである部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「近位長」は、カテーテルを患者に使用するときに医師の近くにあるものであるカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「近位端部」は、カテーテルを患者に使用するときに医師の近くにあるものである、カテーテルの端部を含む。カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端部を含んでもよいが、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端部を含む必要はない。つまり、文脈からそうでないことが示唆されていなければ、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの終端部分または終端長ではない。
【0019】
「遠位」に関しては、たとえば本明細書に開示されるカテーテルの「遠位部分」または「遠位端部分」は、カテーテルのうち、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは中にあるものである部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「遠位長」は、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは体中にあるものであるカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「遠位端部」は、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは体中にあるものである、カテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端部を含んでもよいが、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端部を含む必要はない。つまり、文脈からそうでないことが示唆されていなければ、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの終端部分または終端長ではない。
【0020】
本明細書に記載の実施形態の説明を補助するため、図1に示すように、縦軸は、ポートステムの軸方向長さに実質的に平行に延在する。横軸は縦軸に対して垂直に延在しており、横断軸は縦軸および横軸の両方に対して垂直に延在する。本明細書で使用される場合、水平面は、横軸および縦軸に沿って延在する。垂直面は、水平面に対して垂直に延在する。
【0021】
別段の定義がない限り、本明細書に用いるあらゆる技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
図1は、皮下配置のために構成された血管アクセスデバイス、すなわち「ポート」100を示す。ポート100は、一般的に、リザーバ110を画定するとともにその上部を針が貫通可能なセプタム120を含む、本体150を含み得る。ポート100は、ステムルーメン132を画定するとともにリザーバ110と流体連通するポートステム130をさらに含んでよい。ポートステム130は、カテーテル90のルーメンと締まり嵌めで係合することで、流体連通を提供してよい。カテーテル90の遠位先端は、患者の血管内に配置されてよい。使用時に、アクセス針は、皮膚表面を貫通するとともに、セプタム120を穿孔することによってリザーバにアクセスしてよい。次いで、流体は、リザーバ100内に配置されるか、またはリザーバ110から排出され得る。
【0022】
一実施形態では、図2Aおよび図2Bに示すように、ポート100は、第1ハウジングすなわち下部ハウジング152と、下部ハウジング152に対して摺動可能に係合される第2ハウジングすなわち上部ハウジング154とを含むポート本体150を含み得る。下部ハウジング152および上部ハウジング154は、協働してリザーバ110を画定してよい。一実施形態では、上部ハウジング154は、上部ハウジング154の上面に配置されるとともに、針が貫通可能なセプタム120を上部ハウジング154の中に保持するように構成されたリザーバ開口112を画定してよい。一実施形態では、セプタム120は、シリコーンゴムまたは同様の適切な材料で形成してよい。使用時に、リザーバ110は、セプタム120を貫通するとともにリザーバ110に流体的にアクセスするアクセス針によって経皮的にアクセスされ得る。
【0023】
一実施形態では、ポート100は、軸80に沿って延在するポートステム130をさらに含んでよい。ステム130は、リザーバ110と流体連通するステムルーメン132を画定してよい。ステム130は、患者の血管にアクセスするように構成されたカテーテル90または類似のデバイスに結合されるように構成されてよい。カテーテル90は、カテーテル90を通って延在するルーメン92を画定する長尺状本体を含んでよい。一実施形態では、ポート本体150は、プラスチック、ポリマー、金属、合金、複合材料などを含む実質的に剛性の材料から形成されてよい。
【0024】
一実施形態では、ポート100は、皮下配置を可能にするために、拡張構成(図2A)と収縮構成(図2B)との間を移行可能であってよい。一実施形態では、下部ハウジング152および上部ハウジング154は、互いに摺動可能に係合してよいとともに、第1構成すなわち拡張構成(図2A)と第2構成すなわち収縮構成(図2B)との間を移行してよい。一実施形態では、上部ハウジング154の外面は、下部ハウジング152の内面と伸縮自在に係合されてよい。一実施形態では、上部ハウジング154の内面は、下部ハウジング152の外面と伸縮自在に係合されてよい。
【0025】
一実施形態では、拡張構成において、ポート100は、第1ポート高さ(H1)を画定してよい。一実施形態では、拡張構成において、リザーバ110は、第1リザーバ高さ(RH1)を画定してよい。一実施形態では、収縮構成において、ポート100は、第2ポート高さ(H2)を画定してよい。第2ポート高さ(H2)は、第1ポート高さ(H1)未満であってもよい。一実施形態では、収縮構成において、リザーバ110は、第2リザーバ高さ(RH1)を画定してよい。第2リザーバ高さ(RH2)は、第1リザーバ高さ(RH1)未満である。
【0026】
一実施形態では、拡張構成において、ポート100は、第1ポート容積(V1)を画定してよい。一実施形態では、収縮構成において、ポート100は、第2ポート容積(V2)を画定してよい。第2ポート容積(V2)は、第1ポート容積(V1)未満である。一実施形態では、拡張構成において、リザーバ110は、第1リザーバ容積(RV1)を画定してよい。一実施形態では、収縮構成において、リザーバ110は、第2リザーバ容積(RV2)を画定してよい。第2リザーバ容積(RV2)は、第1リザーバ容積(RV1)未満である。一実施形態では、第2リザーバ容積(RV2)は、0容積または極小容積を画定してよい。
【0027】
一実施形態では、セプタム120の一部分または本体150の一部分、例えば、下部ハウジング152の一部分または上部ハウジング154の一部分は、ポート100が収縮構成にあるとき、ポートステムルーメン132を閉塞してよい。したがって、リザーバ110と、ポートステム130に結合されたカテーテルルーメン92との間の流体連通は制限され得る。
【0028】
一実施形態では、ポート100は、ポートを拡張構成に向けて付勢するように構成された付勢部材(例えば、ばねなど)を含んでよい。一実施形態では、ポート100は、ポート100を拡張構成および収縮構成のうちの1つに選択的に保持するように構成されたラッチ機構を含んでよい。使用時、医師は、ポート100を拡張構成と収縮構成との間を選択的に移行させることができる。
【0029】
一実施形態では、図2Aおよび図2Bに示すように、医師は、ポート100の上面、例えばセプタム120の上面または上部ハウジング154の上面を押し下げることで、付勢部材の力に抗するとともに、上部ハウジング154を拡張構成(図2A)から収縮構成(図2B)に摺動可能に移行させてよい。収縮構成になった場合、ラッチ機構は、上部ハウジング154に係合することで上部ハウジング154を収縮構成に保持してよい。
【0030】
一実施形態では、医師は、ポート100を収縮構成から拡張構成に選択的に移行させてよい。医師は、ポート100の上面、例えばセプタム120の上面または上部ハウジング154の上面を押し下げることで、付勢部材の力に抗するとともに、ラッチ機構の係合を解除してよい。次いで、医師は、ポート100の上面を放すとともに、付勢部材に上部ハウジング154を拡張構成に移行させてよい。
【0031】
一実施形態では、付勢部材の力は、ポート100を拡張構成に維持してよい。ある実施形態では、針が貫通可能なセプタム120を通してアクセス針が押し進められることで下のリザーバ110にアクセスする場合でも、付勢部材の力は、ポート100を拡張構成に維持してよい。一実施形態では、ラッチ機構は、ポート100を拡張構成に維持するように構成されてよい。したがって、医師は、ポート100の上面を押し下げて意図せずにポートを拡張構成から収縮構成に移行させることなく、アクセス針をセプタム120を通して押し進められる。
【0032】
一実施形態では、ラッチ機構は、ロック位置とアンロック位置との間を移行してよい。ロック位置では、ラッチ機構は、上部ハウジング154を解除することが防止される。アンロック位置では、ラッチ機構は、上部ハウジング154の係合を解除することで、ポート100が拡張構成と収縮構成との間を移行することを可能にする。一実施形態では、ラッチ機構は、リザーバ101にアクセスする針の存在によってロック位置に維持されてよい。例えば、リザーバ110にアクセスする針は、ラッチ機構に係合するとともに、ラッチ機構をロック位置に維持することで、ポート100が拡張構成と収縮構成との間を移行することを防止してよい。有利には、ラッチ機構は、ポート100が使用中であるとき、および/または針がリザーバ110に接続しているときなど、ポート100が拡張構成と収縮構成との間で偶発的に移行することを防止し得る。
【0033】
一実施形態では、図3Aおよび図3Bに示すように、ポート100は、ラッチ機構に結合されるとともに、ラッチ機構の係合を解除し、および/またはラッチ機構をロック位置とアンロック位置との間を移行させるように構成されたアクチュエータ160を含んでよい。使用時、医師は、本明細書に記載されたように、ポート100の上面を押し下げることによって、ポート100を収縮構成に移行させてよい(図3A)。ラッチ機構は、上部ハウジング154に係合するとともに、上部ハウジング154を収縮構成に保持してよい。次いで、医師は、アクチュエータ160を作動させて、上部ハウジング154の係合を解除してよい。次いで、付勢部材は、上部ハウジングを拡張構成(図3B)に移行させてよい。
【0034】
一実施形態では、ラッチ機構は、上部ハウジング154に係合することで、上部ハウジング154を拡張構成に維持してよい。使用中、医師は、アクチュエータ160を作動させてラッチ機構の係合を解除するとともに、上部ハウジング154を拡張構成から収縮構成に移行させてよい。有利には、アクチュエータ160およびラッチ機構は、ポート100が使用中であるとき、および/または針がリザーバ110に接続しているときなど、ポート100が拡張構成から収縮構成へ偶発的に移行することを防止するように構成されてよい。
【0035】
一実施形態では、アクチュエータ160は、ポート100の外面、例えば上面、側面などに配置された押しボタン、スライダ、ロッカースイッチ、または同様の機械的アクチュエータであってよい。一実施形態では、ポート100は、ポートの第1側面に配置された第1アクチュエータ160Aと、第1側面とは反対側のポート100の第2側面に配置された第2アクチュエータ160Bとを含んでよい。医師は、横方向の「挟む」力をポート100に加えることによって、第1アクチュエータ160Aおよび第2アクチュエータ160Bのうちの1つを作動させてよい。有利には、横方向の挟持力は、患者に直接圧力を加えることを軽減してよい。
【0036】
一実施形態では、アクチュエータ160は、磁場の有無によって第1位置と第2位置との間を移行するように構成された磁気スイッチを含んでよい。使用時、ポート100が皮下に配置された状態で、医師は、磁石(永久磁石または電磁石)をポート100の近くに、例えば、ポートに近接する皮膚表面上に配置してよい。磁場の存在により、アクチュエータ160を作動させてラッチ機構の係合を解除するとともに、ポートが拡張構成と収縮構成との間を移行することを可能にしてよい。
【0037】
一実施形態では、アクチュエータ160は、例えば、磁気、電磁気、無線周波数、音響、光学などの1つ以上のモダリティからの信号によって作動してよい。例えば、アクチュエータ160は、患者の外部に配置されたデバイスからポート100に信号を送信または受信することによって経皮的に作動してよい。アクチュエータ160は、本明細書に記載されたように、ラッチ機構の係合を解除するとともに、ポート100を移行させてよい。
【0038】
有利には、収縮構成は、ポート100に関してより小さい全体の外形、サイズ、または容積を提供してよい。したがって、収縮構成のポート100は、比較的小さい挿入部位を通して皮下に配置され得る。有利には、より小さい挿入部位は、挿入部位を閉じるために必要な縫合がより少ない、または縫合を必要としないことにより、瘢痕(scaring)の低減、回復時間の改善、患者の快適性の改善、および審美性の改善に繋がり得る。ある実施形態では、ポート100は、医師がラッチ機構またはアクチュエータ160を経皮的に作動させることによって、拡張構成と収縮構成との間を移行してよい。ポート100が皮下に配置されると、ポート100は、収縮(第2)構成から使用可能な拡張(第1)構成に選択的に移行してよい。
【0039】
一実施形態では、ポート100は、本明細書に記載されたように、患者の体外で拡張構成から収縮構成に移行してよい。皮下に配置された場合、ポート100は、収縮構成のままであってよい。使用時、医師は、ポート100を収縮構成から使用可能な拡張構成に選択的に移行させてよい。治療が完了すると、医師は、ポート100を拡張構成から収縮構成に選択的に移行させてよい。有利には、ポート100は、使用するまでの期間は皮下配置後に収縮構成を維持することで、より薄い外形を提供するとともに皮膚の伸張を低減し、さらに瘢痕(scaring)を低減し、かつ患者の快適さおよび審美性を改善し得る。ポート100がアクセスされる必要がある場合は、ポート100は、医師がラッチ機構を経皮的に作動させることによって、拡張構成に選択的に移行してよい。
【0040】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示されるとともに、特定の実施形態がある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態は、本明細書で提供された概念の範囲を制限することを意図するものではない。追加的な適応および/または変更が当業者に理解され得る。より広い態様では、これらの適応および/または変更もまた包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から逸脱してよい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
【国際調査報告】