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特表2024-518623PVCプラスチック材料中に含有されるフタラートの抽出およびエステル交換による変換のための方法
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  • 特表-PVCプラスチック材料中に含有されるフタラートの抽出およびエステル交換による変換のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】PVCプラスチック材料中に含有されるフタラートの抽出およびエステル交換による変換のための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/02 20060101AFI20240423BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08J11/02 ZAB
B29B17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571658
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022062082
(87)【国際公開番号】W WO2022243043
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2105300
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】カドラン ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ショーモンノ アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クパール ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】デルクロワ ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャカン マルク
(72)【発明者】
【氏名】パスキエ ダヴィッド
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA13
4F401AB03
4F401BA13
4F401CA48
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA63
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のフタラートを含有しているPVC供給原料からフタル酸ジアルキルおよび再利用可能な標的PVCプラスチック材料を得るための方法であって、以下を含む方法に関する:a)粒子状の形態にある前記PVC供給原料の固体-液体抽出;PVC供給原料の前記粒子を、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの少なくとも1種の化学分子を含んでいる溶媒と接触配置することによって行う;nおよびmは、正整数であり、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、Zは、R、COOR、CO、CR、CNRR’、PO、P、SO、SO、CORまたはHCOから選択され、RおよびR’は、アルキルまたはアリールの基である;前記フタラートに富む液相と、前記フタラートに乏しいPVCプラスチック材料を含んでいる固相とを生じさせる;b)前記液相の前記フタラートを式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルに変換する;前記溶媒によるエステル交換によって行う;c)固相と液相との間の固体-液体分離;前記フタラートに乏しいPVCプラスチック材料を含んでいる少なくとも1個の固体流れを生じさせて、前記標的PVCプラスチック材料を得る;d)液相の液体-液体分離;前記フタル酸ジアルキルを含んでいる第1の液体流出物と、前記溶媒を少なくとも含んでいる第2の液体流出物とを少なくとも生じさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のフタラートを含有しているPVC供給原料からフタル酸ジアルキルおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 粒子状の形態にある前記PVC供給原料(1)の固体-液体抽出;粒子状の形態にあるPVC供給原料(1)の前記粒子を、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの少なくとも1種の化学分子を含む溶媒(9)と接触配置することによって行う;nおよびmは、正整数であり、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、Zは、以下の要素:R、COOR、CO、CR、CNRR’、PO、P、SO、SO、COR、およびHCOからなるリストから選ばれる基であり、RおよびR’は、独立して、直鎖、分枝または環状のアルキル基、またはアリール基から選ばれる;前記フタラートに富む液相と、前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む固相とを生じさせる;
b) エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの前記化学分子を用いる前記液相の前記フタラートの式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへのエステル交換による化学変換;前記液相を前記フタル酸ジアルキルで豊富にする;
c) 前記固相と前記液相との間の固体-液体分離;前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む少なくとも1個の固体流れ(6)を生じさせて、前記標的PVCプラスチックを回収する;
d) 前記液相の液体-液体分離;前記フタル酸ジアルキルを含む第1の液体流出物((5)、(14))と、前記溶媒を少なくとも含んでいる第2の液体流出物((7)、(12))とを少なくとも生じさせる。
【請求項2】
同一の個別操作内で工程a)およびb)を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)およびb)は、2つの相異なる個別操作の対象を形成し、工程 a)は、前記液相を含む流れと、前記固相(2)とを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)と工程b)との間に工程c)を実行し、工程a)から得られた前記液相および前記固相(2)を含む前記流れを、固体-液体分離工程c)に送って、前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む前記流れ(6)と、前記液相を含む第1の液体流れ(18)とを生じさせ、第1の液体流れ(18)を工程b)に送る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
追加の工程f)も含んでおり、該工程f)は、工程b)において転化されていないおよび/または部分的に転化されている前記フタラートの式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記溶媒(9)を用いたエステル交換による化学変換であり、前記工程f)を、工程c)と工程d)との間に、全ての工程a)、b)およびc)の終結の際に得られた前記液相を第1の追加のエステル交換反応器に送ることによって実行して、式C(COOC2n+1の前記フタル酸ジアルキルに富む第2の液体流れ(13)を生じさせ、前記第2の液体流れ(13)を工程d)に送る、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒(9)第1の追加のエステル交換反応器にを供給し、および/または工程d)から得られた前記溶媒を少なくとも含んでいる前記第2の液体流出物((7)、(12))の少なくとも一部を、第1の追加のエステル交換反応器にリサイクルする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程d)において、前記第1の流出物(5)は、本質的に、前記フタル酸ジアルキルからなる、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
液体-液体分離工程d)は、工程b)の間に得られたエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの副生物を含む第3の流出物(10)、および場合による、工程b)において部分的に転化されているおよび/または転化されていない前記フタラートおよび場合による他の可溶性不純物を含む第4の流出物(11)も生じさせ、前記第1の液体流出物(5)は、本質的に、前記フタル酸ジアルキルからなり、前記第2の液体流出物(12)は、本質的に、前記溶媒からなる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
液体-液体分離工程d)は、工程b)の間に得られたエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの副生物を含む第3の流出物(10)、前記フタル酸ジアルキル、工程b)において部分的に転化されているおよび/または転化されていないフタラートおよび場合による可溶性不純物を含んでいる前記第1の液体流出物(14)、本質的に前記溶媒からなる前記第2の液体流出物(12)も生じさせ、
前記方法は、
e) 前記第1の液体流出物(14)の精製;本質的に前記フタル酸ジアルキルからなる液体生成物(16)と、工程b)において部分的に転化されているおよび/または転化されていない前記フタラートおよび場合による前記可溶性不純物を含んでいる液体残渣(17)とを生じさせる
も含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
追加の工程f)も含み、該工程f)は、工程b)において転化されていないおよび/または部分的に転化されている前記フタラートの、式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記溶媒(9)を用いたエステル交換による化学変換であり、前記工程f)を、工程e)の後に、前記液体残渣(17)を第2の追加のエステル交換反応器に送ることによって実行して、式C(COOC2n+1の前記フタル酸ジアルキルに富む第3の液体流れ(15)を生じさせ、前記第3の液体流れ(15)を、工程d)に戻す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒(9)を第2の追加のエステル交換反応器に供給し、かつ/または、工程d)から得られた前記溶媒(12)を少なくとも含んでいる前記第2の液体流出物の少なくとも一部を、第2の追加のエステル交換反応器にリサイクルする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体残渣(17)の少なくとも一部の工程b)および/または追加工程f)へのリサイクルも含み、該追加工程f)は、工程b)において転化されていないおよび/または部分的に転化されている前記フタラートの式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記溶媒(9)を用いたエステル交換による化学変換であり、前記工程f)を、工程c)と工程d)との間で、全ての工程a)、b)およびc)の終結の際に得られた前記液相を第1の追加エステル交換反応器に送ることによって実行し、式C(COOC2n+1の前記フタル酸ジアルキルに富んだ第2の液体流れ(13)を生じさせ、前記第2の液体流れ(13)を工程d)に送る、請求項9~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
工程d)から得られた前記溶媒(9)を少なくとも含んでいる前記第2の液体流出物((7)、(12))を、少なくとも部分的に工程a)および/または工程b)にリサイクルする、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む前記固体流れ(6)を、少なくとも部分的に工程a)にリサイクルする、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒(9)の前記化学分子は、式(C2n+1O)の1個または複数個のアルコキシ基を有するエステルであり、式中、nは、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、前記エステルは、好ましくは、式(C2n+1O)CORのカルボン酸エステル、式(C2n+1O)COの炭酸エステル、式(C2n+1O)CRのオルトエステル、式(C2n+1O)CNRR’のイミノエステル、式(C2n+1O)Pの亜リン酸エステル、式(C2n+1O)Pのリン酸エステル、式(C2n+1O)SOの亜硫酸エステル、式(C2n+1O)SOの硫酸エステル、およびその混合物からなるリストから選ばれるが、ただし、前記混合物中に含まれるエステルは、アルコキシ基C2n+1Oを含有し、式中、nの値は、厳密に同一であり、より優先的には、前記溶媒(9)の前記化学分子は、式(C2n+1O)CORのカルボン酸エステルであり、式中、n<4またはn>8であり、好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノニル(直鎖または分枝であってもよい)、酢酸デシル(直鎖または分枝であってもよい)、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸ノニル(直鎖または分枝であってよい)、およびプロパン酸デシル(直鎖または分枝であってよい)からなるリストから選ばれ、好ましくは、酢酸メチルまたはプロパン酸メチルから選ばれる、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒(9)の前記化学分子は、式C2n+1O)Rのエーテルであり、式中、n<4またはn>8であり、好ましくは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジノニルエーテル(直鎖または分枝であってもよい)、ジデシルエーテル(直鎖または分枝であってもよい)、およびシクロペンチルメチルエーテルからなるリストから選ばれ、より優先的には、ジメチルエーテルまたはジエチルエーテルから選ばれる、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒(9)の前記化学分子は、それぞれに式(C2n+1O)CRR’または(C2n+1O)CRHのケタールまたはアセタールであり、式中、n<4またはn>8であり、好ましくは、ジメチラール、2,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジメトキシブタン、ジエチルアセタール、2,2-ジエトキシプロパンおよび2,2-ジプロポキシプロパンからなるリストから、より優先的にはジメチラール、2,2-ジメトキシプロパンおよび2,2-ジメトキシブタンから選ばれる、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒(9)の前記化学分子は、プロパン酸メチルであり、前記フタル酸ジアルキルは、フタル酸ジメチルである、請求項1~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
工程b)において、場合によっては、工程f)および/またはf)においてエステル交換によって実行される化学変換を、触媒の存在中で実行し、該触媒は、好ましくは、無機または有機の塩基性または酸性のブレンステッド均一系触媒、またはルイス酸、およびアルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩、またはアルミナまたはゼオライト上に担持されたアルカリ金属、または亜鉛酸化物および他の酸化物とのそれらの混合物、またはイオン交換樹脂によって形成される不均一系触媒からなるリストから選ばれる、請求項1~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記PVC供給原料の前記少なくとも1種のフタラートは、実験式C(COOR)(COOR)のフタラートであり、ここで、エステル基は、ベンゼン核のオルト位にあり、RまたはRは、独立して、直鎖または分枝または環式のアルキル鎖、直鎖または分枝のアルコキシアルキル鎖、またはアリールまたはアルキルアリールの鎖からなる群の要素の1つから選ばれ、Rおよび/またはRは、好ましくは、1~20個の炭素原子、さらには1~15個の炭素原子を含んでいる。請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記標的PVCプラスチックは、前記フタラートを実質的に含まず、好ましくは、以下のリストから選ばれるフタラートを合計で0.1質量%未満含み、リストは、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルまたはフタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸n-ペンチルイソペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ビス(2-メトキシエチル)、およびそれらの混合物からなる、請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
工程b)、場合によっては、工程f)および/またはf)を、室温と200℃との間、好ましくは40℃~180℃の温度、大気圧と11.0MPaとの間、好ましくは大気圧と5.0MPaとの間の圧力で、1分~10時間、好ましくは10分~4時間の期間にわたって実行する、請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
工程a)および/または工程b)、および場合によっては工程f)および/またはf)を、前記溶媒(9)の量と抽出対象または変換対象の前記フタラートの量との間のモル比が2~250、好ましくは4~90になるように実行する、請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種のフタラートを含有しているPVCベースの物体をリサイクルするための方法であって、以下を含む、方法:
- 前記PVCベースの物体のコンディション調整;前記PVCベースの物体を粉砕または細断して、粒子状の形態にあるPVC供給原料を形成するようにすることを少なくとも含んでいる;
- 請求項1~23のいずれか1つに記載された、粒子状の形態にある前記PVC供給原料からのフタル酸ジアルキルおよび再利用可能な標的PVCプラスチックの回収。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか1つに記載の方法を介して得られたリサイクルされたPVCプラスチックおよび/またはフタル酸ジアルキルを含むフレキシブルPVCベース物体を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chlorides:PVC)をベースとするプラスチックのリサイクルの分野、特に、エステル交換によって、PVCの組成物中に含まれる可塑剤であるフタラートを抽出および変換するための方法に関する。より正確には、本発明は、フタル酸ジアルキル(dialkyl phthalate:DAP)および再利用可能な標的PVCプラスチックを、少なくとも1種のフタラートを含有しているPVC供給原料から回収するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
定義上、プラスチックは、ベースのポリマー材料と、数多くの添加剤とからなる混合物であり、その集合体は、(一般的には高温でかつ/または圧力下に)成形または造形されて、半完成品または物体を得るようにすることができる。一般に受け入れられている慣行は、プラスチックが作製されるポリマーの名称で前記プラスチックを名称付けることにある。このように、プラスチックのポリ塩化ビニル(PVC)は、実際に、以降の本明細書において「PVC樹脂」と呼ばれるポリマーPVCと、前記プラスチックに要求される機能性に応じて選ばれる種々の添加剤との組み合わせに対応する。前記添加剤は、有機性の分子または巨大分子または代わりに無機の(ナノ)粒子であってよく、PVC樹脂に与える特性:耐熱性、耐光性または機械的応力に対する耐性(安定剤)、柔軟性(可塑剤)、加工性(潤滑剤)、着色性(染料/顔料)等に応じて用いられる。
【0003】
PVCプラスチックをリサイクルするためのいくつかの方法が存在する:プラスチックの単純な機械的リサイクルによる「従来の」方法、それらの組成の改変、さらにはプラスチックを構成する化合物の化学変換を伴う方法。
【0004】
20世紀半ば以来、化学作用を伴うPVCプラスチックのリサイクルは、数多くの研究の対象となっており、第1の工程において、可変の割合の添加剤によりPVC樹脂を溶解させる方に、次に、第2の工程において、種々の化学方法(沈殿、蒸発等)を用いて可溶性の添加剤の全部または一部の存在中で前記樹脂を回収することの方に向けられる。例えば、特許文献1~3は、それぞれに、種々のPVCベースの物体(フレキシブルパイプまたはリジッドパイプ、窓枠、ケーブル等)、具体的には繊維強化PVCベースの物体(防水シート、床材等)を、有機溶媒中にPVC樹脂および可溶性添加剤を溶解させる第1工程と、次の、樹脂および大部分の添加剤の回収を可能にする水蒸気による沈殿の第2工程とを含む方法に従ってリサイクルすることの方に向けられている。
【0005】
しかしながら、リサイクルされるためにこのように回収されたPVC中に前記添加剤を保持することが常に望ましいわけではない。例えば、それらに関する規制の時間の経過による変化が決定要因である。それ故に、約40年前に「フレキシブル」PVCの配合にとりわけ幅広く用いられていたフタラート系統に属している所定の可塑剤は、欧州においてREACH規制に基づいて徐々に認可の対象となっていき、2006年末以来、欧州産業における化学物質の製造および使用の安全性を確立することに向けられ、最終的に、使用のために許可される添加剤から徐々に除外されるようになった。これは、とりわけ、以下の非網羅的なフタラートのリストに当てはまる:フタル酸ジブチル(dibutyl phthalate:DBP)、フタル酸ジオクチルまたはフタル酸ジエチルヘキシル(dioctyl phthalate(DOP)またはdiethyl hexyl phthalate:DEHP)、フタル酸ベンジルブチル(benzyl butyl phthalate:BBP)、フタル酸ジイソブチル(diisobutyl phthalate:DIBP)、フタル酸ジペンチル(dipentyl phthalate:DPP)、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸n-ペンチルイソペンチル、フタル酸ジヘキシル等。
【0006】
これらの新しい規制は、現在、リサイクル原材料(recycled raw material s:RRM)中のこのような化合物の存在の禁止の方に向かっている。PVCベースの物体のしばしば非常に長い耐用期間(数十年)を考慮すると、2006年末以前に配合され現在それらの耐用期間の終わりにあるPVCベースの物体は、これらの禁止された添加剤の維持につながる再生方法が従来の方法、例えば、機械的リサイクル方法であるかないか、例えば上記の溶解/沈殿方法の例であるかどうかにかかわらず、前記方法を介してリサイクルされ得ない。
【0007】
さらに、現在欧州において用いられているフタラート可塑剤(REACH適合フタラート)および世界の残りの部分において用いられているフタラート可塑剤は、高い付加価値の添加剤を示すが、これは、PVCリサイクル原材料中に維持される場合にはアップグレードされない。これについての理由は、それらは、高価な製品であり、初期のPVC配合物中にかなりの割合(数十パーセント)で存在し、直接的には、PVC RRMにアドホックなフレキシビリティ特性を与えることができないからである。リサイクルPVC材料の再利用可能性のために「フレッシュな」可塑剤をかなりの量で供給することが不可欠である。
【0008】
除去またはアップグレードのためのPVCベースの物体からのフタラートタイプの添加剤の抽出は、このように、PVCの最適化されたリサイクル可能性の大きな挑戦課題である。
【0009】
PVC樹脂を溶解させる工程を含むいくつかの方法がこの抽出を可能にするように採用されている。例えば、特許文献4および5の両方に、PVC樹脂および少なくともフタラートタイプの添加剤を第1の有機溶媒と溶解させる第1の工程と、これに続く、第1の有機溶媒とは異なる第2の有機溶媒の使用を介する、すでに得られた溶液からのフタラートの液体-液体抽出の第2の工程とが提案されている。特許文献6には、超臨界条件下の溶媒の使用を介した、PVC樹脂および少なくともフタラートタイプの添加剤の溶解および前記超臨界条件の「破壊」の後のこの同一の溶媒中の前記フタラートの回収による別の可能な実施の例が開示されている。
【0010】
PVCプラスチックからのフタラートタイプの添加剤の除去またはアップグレードは、前記プラスチックを溶解させる予備的工程を介して、とりわけ、適切な有機溶媒による固体ポリマーマトリクスからの前記フタラートの直接的な抽出を介して進行することなく、非特許文献1からの出版物において完全に指示されているように実行されてもよい。挑戦課題は、抽出されるフタラートの考えられる最良の収率を達成するように抽出条件(溶媒の性質、接触時間、温度、圧力等)を最適にすることにある。PVCプラスチックからのフタラートの除去のためのこの方法論は、とりわけ、前記プラスチック中のこれらの特定の添加剤を検出しかつ分析的に定量するために頻繁に用いられるが、本出願人の知識に、PVCベースの物体を再生するための方法は、この技術を含まない。
【0011】
PVCプラスチックの効率的なリサイクルを確実にし、再利用可能なリサイクルPVCを得るために重大であるが、フタラートタイプの可塑剤の抽出は、PVCベースの物体を再生するための方法の経済的実行可能性を確実にするには不十分である。頻繁に指摘される主な理由は、前記再生方法において実行される個別操作のコストと得られた製品の再販コスト(付加価値に相当する)との間で経済的に実行可能なバランスを見出すことの困難性にある。前記製品は、自然にアップグレード可能であるフタラート不含有のPVCベースのリサイクル材料と、前記抽出されたフタラートとからなり、前記抽出されたフタラートは、それ自体、わずかにアップグレード可能である。具体的には、PVCベースの物体からフタラートを抽出する工程を含む任意の再生方法は、「REACH適合」ではないフタラートを含む場合があるフタラートの混合物の回収につながるだろう。前記非REACH適合フタラートのアップグレードは、当然に、除外され、前記フタラートは、追加のコストを生じさせる特定廃棄物として処理される必要があるだろう。REACH適合フタラートのアップグレードは、それ自体有利であるが、実際の点で、技術的に複雑で高価な分離/精製の工程を含むことから困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0945481号明細書(特開平11-310660号公報)
【特許文献2】欧州特許出願公開第1268628号明細書(特表2003-528191号公報)
【特許文献3】欧州特許出願公開第2276801号明細書(特表2011-520004号公報)
【特許文献4】欧州特許出願公開第1311599号明細書
【特許文献5】特開2007―191586号公報
【特許文献6】特開2007-092035号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Uegdulerら著、「Challenge and opportunities of solvent-based additive extraction methods for plastic recycling」、Waste Management、2020、第104号、p.148-182
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、少なくとも部分的に、従来技術の問題を克服することを目的とし、フタラートを含有している任意のタイプのPVC供給原料の処理およびアップグレードされ得る興味対象の次の2種の生成物へのそれらの変換を可能とするPVCベースの物体を再生するための方法を提供することの方に特に向けられる:特定のフタル酸ジアルキルおよびフタラート、とりわけ、望ましくないフタラート、典型的には、欧州REACH規制による認可の対象とされるものを含有しないリサイクル可能なPVCプラスチック。本発明の別の目的は、フタラートを含有しているPVCのリサイクルの間に、フタラートの分離/精製の操作と従来関連する個別の工程の数を制限し、このために、加工処理コストを制限することを可能にすることにある。
【0015】
それ故に、上記の目的の少なくとも1つを達成するために、中でも、本発明は、第1の態様に従って、少なくとも1種のフタラートを含有しているPVC供給原料からフタル酸ジアルキルおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するための方法であって、以下の工程を含む、方法を提案する:
a) 粒子状の形態にある前記PVC供給原料の固体-液体抽出;PVC供給原料の前記粒子を、実験式(C2n+1O)Zのエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの少なくとも1種の化学分子を含む溶媒と接触配置することによって行う;nおよびmは、正の整数であり、nは、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、Zは、以下の要素:R、COOR、CO、CR、CNRR’、PO、P、SO、SO、COR、およびHCOからなるリストから選ばれる基であり、RおよびR’は、独立して、直鎖、分枝または環状のアルキル基、またはアリール基から選ばれる;前記フタラートに富んだ液相と、前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む固相とを生じさせる;
b) 前記液相の前記フタラートの、式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの化学変換;実験式(C2n+1O)Zのエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールタイプの前記化学分子を用いるエステル交換によって行う;前記液相を前記フタル酸ジアルキルで富化する;
c) 前記固相と前記液相との間の固体-液体分離;前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む少なくとも1種の固体流れを生じさせて、前記標的PVCプラスチックを回収する;
d) 前記液相の液体-液体分離;前記フタル酸ジアルキルを含む第1の液体流出物と、前記溶媒を少なくとも含んでいる第2の液体流出物とを少なくとも生じさせる。
【0016】
本発明の1つの利点は、化学的エステル交換反応を用いて、PVCプラスチックをベースとする種々の物体のポリマーマトリクス中に最初に捕捉されたフタラートの混合物を、前記混合物の組成に関係なく(すなわち、種々のフタラートの性質および起源に関係なく)、数多くの他の添加剤が存在する可能性があるにも拘わらず、単一のREACH適合可能かつアップグレード可能なDAPタイプのフタラート生成物に変換する本方法の能力にある。フタラートの混合物からの単一の特定のDAP生成物の製造は、分離/精製の操作に関係する個別工程の数を制限し、それ故に、コストを制限することも可能にする。
【0017】
第1の変形によると、工程a)およびb)は、同一の個別操作内で実行される。
【0018】
第1の変形に代わる第2の変形によると、工程a)およびb)は、2つの相異なる個別操作の対象を形成し、工程a)は、液相および固相を含む流れを生じさせる。
【0019】
この第2の変形によると、工程c)は、工程a)と工程b)との間に実行されてよく、工程a)から得られた液相および前記固相を含む流れは、場合によっては、固体-液体分離工程c)に送られて、前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む流れと、液相を含む第1の液体流れとを生じさせ、第1の液体流れは、工程b)に送られる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、化学変換の追加工程f)も含み、この工程f)は、工程b)において転化されていないかつ/または部分的に転化されている前記フタラートの式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記溶媒によるエステル交換によって行われ、前記工程f)は、工程c)と工程d)との間に、全ての工程a)、b)およびc)の終結の際に得られた前記液相を第1の追加のエステル交換反応器に送ることによって実行され、式C(COOC2n+1の前記フタル酸ジアルキルに富む第2の液体流れを生じさせ、前記第2の液体流れは、工程d)に送られる。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、前記溶媒は、第1の追加のエステル交換反応器に供給され、かつ/または、工程d)から得られた前記溶媒を少なくとも含んでいる前記第2の液体流出物の少なくとも一部は、第1の追加のエステル交換反応器にリサイクルされる。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、工程d)において、前記第1の流出物は、本質的に、前記フタル酸ジアルキルからなる。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、液体-液体分離工程d)は、工程b)の間に得られたエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの副生物を含む第3の流出物も生じさせ、場合によっては、工程b)において部分的に転化されているかつ/または転化されていない前記フタラートと場合による他の可溶性不純物を含む第4の流出物も生じさせ、前記第1の液体流出物は、本質的に、前記フタル酸ジアルキルからなり、前記第2の液体流出物は、本質的に、前記溶媒からなる。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、液体-液体分離工程d)は、工程b)の間に得られたエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの副生物を含む第3の流出物も生じさせ、前記第1の液体流出物は、前記フタル酸ジアルキル、工程b)において部分的に転化されているかつ/または転化されていないフタラートおよび場合による可溶性の不純物を含んでおり、前記第2の液体流出物は、本質的に、前記溶媒からなり、本方法は、以下の工程も含む:
e) 前記第1の液体流出物の精製;本質的に前記フタル酸ジアルキルからなる液体生成物と、工程b)において部分的に転化されているかつ/または転化されていない前記フタラートおよび場合による前記可溶性不純物を含んでいる液体残渣とを生じさせる。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、化学変換の追加工程f)も含み、この工程f)は、工程b)において転化されていないかつ/または部分的に転化されている前記フタラートの、式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記溶媒によるエステル交換によって行われ、前記工程f)は、工程e)の後に、前記液体残渣を第2の追加エステル交換反応器に送ることによって実行され、式C(COOC2n+1の前記フタル酸ジアルキルに富む第3の液体流れを生じさせ、前記第3の液体流れは、工程d)に戻される。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、前記溶媒は、第2の追加エステル交換反応器に供給され、かつ/または工程d)から得られた前記溶媒を少なくとも含んでいる前記第2の液体流出物の少なくとも一部は、第2の追加エステル交換反応器にリサイクルされる。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、前記液体残渣の少なくとも一部の工程b)および/または追加工程f)へのリサイクルも含み、追加工程f)は、工程b)において転化されていないおよび/または部分的に転化されている前記フタラートの式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記溶媒を用いたエステル交換による化学変換であり、前記工程f)は、工程c)と工程d)との間に、全ての工程a)、b)およびc)の終結の際に得られた前記液相を第1の追加エステル交換反応器に送ることによって実行され、式C(COOC2n+1の前記フタル酸ジアルキルに富む第2の液体流れを生じさせ、前記第2の液体流れは、工程d)に送られる。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によると、工程d)から得られた前記溶媒を少なくとも含んでいる第2の液体流出物は、少なくとも部分的に、工程a)および/または工程b)にリサイクルされる。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によると、フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む固体流れは、少なくとも部分的に、工程a)にリサイクルされる。
【0030】
1つまたは複数の実施形態によると、前記溶媒の化学分子は、式(C2n+1O)の1個または複数個のアルコキシ基を有するエステルであり、式中、nは、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、前記エステルは、好ましくは、式(C2n+1O)CORのカルボン酸エステル、式(C2n+1O)COの炭酸エステル、式(C2n+1O)CRのオルトエステル、式(C2n+1O)CNRR’のイミノエステル、式(C2n+1O)Pの亜リン酸エステル、式(C2n+1O)POのリン酸エステル、式(C2n+1O)SOの亜硫酸エステル、式(C2n+1O)SOの硫酸エステル、およびその混合物からなるリストから選ばれるが、ただし、前記混合物中に含まれるエステルは、アルコキシ基C2n+1Oを含有し、式中、nの値は、厳密に同一であり、より優先的には、前記溶媒(9)の前記化学分子は、式(C2n+1O)CORのカルボン酸エステルであり、式中、nは、n<4またはn>8であり、好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノニル(直鎖または分枝であってもよい)、酢酸デシル(直鎖または分枝であってもよい)、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸ノニル(直鎖または分枝であってよい)、およびプロパン酸デシル(直鎖または分枝であってよい)からなるリストから選ばれ、好ましくは、酢酸メチルまたはプロパン酸メチルである。
【0031】
1つまたは複数の実施形態によると、前記溶媒の化学分子は、式C2n+1O)Rのエーテルであり、式中、n<4またはn>8であり、好ましくは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジノニルエーテル(直鎖または分枝であってもよい)、ジデシルエーテル(直鎖または分枝であってもよい)からなるリストから選ばれ、より優先的には、ジメチルエーテルまたはジエチルエーテルである。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によると、前記溶媒の化学分子は、それぞれに式(C2n+1O)CRR’または(C2n+1O)CRHのケタールまたはアセタールであり、式中、n<4またはn>8であり、好ましくは、ジメチラール、2,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジメトキシブタン、ジエチルアセタール、2,2-ジエトキシプロパンおよび2,2-ジプロポキシプロパンからなるリストから選ばれ、より優先的には、ジメチラール、2,2-ジメトキシプロパンまたは2,2-ジメトキシブタンである。
【0033】
1つまたは複数の実施形態によると、前記溶媒の化学分子は、プロパン酸メチルであり、前記フタル酸ジアルキルは、フタル酸ジメチルである。
【0034】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b)および場合によっては工程f)および/またはf)においてエステル交換によって実行される化学変換は、エステル交換触媒を用いて実行され、この触媒は、好ましくは、無機または有機の塩基性または酸性のブレンステッド均一系触媒、ルイス酸、およびアルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩、またはアルミナまたはゼオライト上に担持されたアルカリ金属、または酸化亜鉛および他の酸化物とのそれらの混合物、またはイオン交換樹脂によって形成される不均一系触媒からなるリストから選ばれる。
【0035】
1つまたは複数の実施形態によると、前記PVC供給原料の前記少なくとも1種のフタラートは、実験式C(COOR)(COOR)のフタラートであり、式中、エステル基が、ベンゼン核のオルト位にあり、RまたはRは、独立して、直鎖または分枝または環式のアルキル鎖、直鎖または分枝のアルコキシアルキル鎖、またはアリールまたはアルキルアリールの鎖からなる群の要素の1つから選ばれ、Rおよび/またはRは、好ましくは、1~20個の炭素原子、さらには1~15個の炭素原子を含んでいる。
【0036】
1つまたは複数の実施形態によると、標的PVCプラスチックは、前記フタラートを実質的に含まず、好ましくは、以下からなるリストから選ばれるフタラートをトータルで0.1質量%未満で含み、このフタラートは、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルまたはフタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸n-ペンチルイソペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ビス(2-メトキシエチル)、およびそれらの混合物からなるリストから選ばれる。
【0037】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b)、および場合によっては、工程f)および/またはf)は、室温と200℃との間、好ましくは40℃~180℃の温度、大気圧と11.0MPaとの間、好ましくは大気圧と5.0MPaとの間の圧力で、1分~10時間、好ましくは10分~4時間の期間にわたって実行される。
【0038】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a)および/または工程b)、および場合によっては、工程f)および/またはf)は、前記溶媒(9)の量と抽出対象または変換対象の前記フタラートの量との間のモル比が2~250、好ましくは4~90になるように実行される。
【0039】
第2の態様によると、本発明は、少なくとも1種のフタラートを含有しているPVCベースの物体をリサイクルするための方法であって、以下を含む方法に関する:
- 前記PVCベースの物体のコンディション調整;前記PVCベースの物体を粉砕または細断して、粒子状の形態にあるPVC供給原料を形成するようにすることを少なくとも含んでいる;
- 本発明による、粒子状の形態にある前記PVC供給原料からのフタル酸ジアルキルおよび再利用可能な標的PVCプラスチックの回収。
【0040】
第3の態様によると、本発明は、本発明によるフタル酸ジアルキルおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するための方法を介して得られるリサイクルPVCプラスチックおよび/またはフタル酸ジアルキルを含むフレキシブルPVCベースの物体を製造するための方法に関する。
【0041】
本発明の他の目的および利点は、本発明の特定の実施の例の以下の説明を読む際に明らかになることになり、これらは、非限定的な例として与えられ、本説明は、下記の添付の図面を参照してなされている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(図面のリスト)
図1は、本発明の1つの実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでいる。
【0043】
図2は、別の実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、工程d)において、DAP、溶媒、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの工程b)において得られた副生物、および、場合による可溶性不純物との混合物としての部分的に転化されているおよび/または転化されていないフタラートの間の分離を行う。
【0044】
図3は、図1または図2に図示された実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、エステル交換(f)および種々の流れのリサイクルの他の任意選択の工程の実施を示している。
【0045】
図4は、本発明の別の実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物の精製の工程e)も含んでいる。
【0046】
図5は、図4に図示された実施形態による方法のスキームであり、エステル交換(f;f)および種々の流れのリサイクルの他の任意選択の工程の実施を示している。
【0047】
図6は、本発明の好適な実施形態による方法のスキームであり、工程a)およびb)の同一の個別の操作(本発明による方法の第1の変形)内の実施、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物の精製の工程e)および工程e)から得られた残渣のエステル交換の追加の工程f)を含んでいる。
【0048】
図7は、本発明の別の実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、工程a)およびb)は、2つの相異なる個別の操作(本発明による方法の第2の変形)の対象を形成し、工程c)は、工程a)と工程b)との間に実行される。
【0049】
図8は、図7において図示されたのと同様の好適な実施形態による方法のスキームであり、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物の精製の工程e)と、工程e)から得られた残渣のエステル交換の追加の工程f)とを含んでいる。
【0050】
図中、同一の参照符号は、同一のまたは類似の要素を表している。
【0051】
(実施形態の説明)
(用語)
所定の定義が以下に与えられるが、以下に定義される対象に関するさらなる詳細は、後に明細書中に与えられる場合がある。
【0052】
用語「PVCベースの物体」は、物体、一般に、消費者物体を意味し、これは、少なくとも1種のPVCプラスチックを含み、好ましくはそれらからなる。
【0053】
用語「ポリ塩化ビニルプラスチック」は、PVCプラスチックまたは単純にPVCとしても知られており、このものは、PVC樹脂としても知られているPVCポリマーと、PVCプラスチックに要求される機能性に応じて選ばれる種々の添加剤との組み合わせを意味し、添加剤は、それら自体、意図された用途に応じて選ばれる。
【0054】
前記PVCポリマーは、塩化ビニル(VCM)のラジカルポリマー化に由来し、そのモノマーは、それ自体、塩素およびエチレンから得られる。前記ポリマー化の実施に応じて、4系統のPVC樹脂が用いられてよい:1)懸濁PVCまたはS-PVC樹脂(VCMの懸濁ポリマー化)、2)エマルションPVCまたはPVC「ペースト」樹脂(エマルションポリマー化)、3)塊状PVCまたはM-PVC樹脂(塊状ポリマー化)および4)先行樹脂上の後処理としての過塩素化によって得られる過塩素化PVCまたはC-PVC樹脂。
【0055】
PVCプラスチックの組成物中に含まれる前記添加剤は、有機分子または巨大分子あるいは無機(ナノ)粒子であってよく、それらがPVC樹脂に与える特性に応じて用いられる:耐熱性、耐光性または機械的ストレスに対する耐性(安定剤)、柔軟性(可塑剤)、加工適性(潤滑剤)、着色性(染料/顔料)等。
【0056】
用語「フタラート」は、o-フタル酸のジカルボン酸エステルによって形成された化学生成物の群を意味する。それらは、ベンゼン核およびベンゼン核のオルト位に置かれた2つのカルボン酸エステル基から構成される。それらは、以下の式:
【0057】
【化1】
【0058】
によってあるいは実験式C(COOR)(COOR)によって記載されてよく、式中、RおよびRは、独立して、直鎖、分枝または環式のアルキル鎖、直鎖または分枝のアルコキシアルキル鎖、またはアリールまたはアルキルアリールの基からなる群の要素の1つから選ばれる。前記アルキル、アルコキシアルキル、アリールまたはアルキルアリールの鎖は、典型的には、1~20個の炭素原子を含んでよいか、さらには、1~15個の炭素原子を含んでもよい。
【0059】
例えば、Rおよび/またはRは、エチル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、メトキシエチルおよびベンジルの基から選ばれてよい。フタラートは、プラスチックのための可塑剤として、特に、PVCタイプのプラスチックのための可塑剤として一般的に用いられ、とりわけ、それらをフレキシブルにする。
【0060】
本説明において、用語「エステル交換」は、上記定義のフタラートの少なくとも一方のカルボン酸エステル基-COORまたは-COORを新たなカルボン酸エステル基-COO(C2n+1)に変換するための化学反応を指し、ここで、式中、用いられる試薬に拘わらずn<4またはn>8である。
【0061】
本説明において、用語「フタル酸ジアルキル」(dialkyl phthalate:DAP)は、実験式C(COOC2n+1の生成物を指し、PVCベースの物体中に存在するフタラートタイプの(特に、上記の実験式C(COOR)(COOR)の)少なくとも1種の可塑剤と、実験式(C2n+1O)Zのエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの任意の化学分子との間のエステル交換反応から生じたものであり、上記の任意の化学分子は、本説明の以降において「試薬」または「溶媒」と呼ばれてもよく、nおよびmは、正の整数であり、nは、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、Zは、以下の要素:R、COOR、CO、CR、CNRR’、PO、P、SO、SO、COR、およびHCOの1つからなるリストから選ばれ基であり、式中、RおよびR’は、独立して、(直鎖、分枝または環式の)アルキルまたはアリールの基から選ばれ、例えば、1~20個の炭素原子、さらには1~15個の炭素原子を含んでいる。前記化学分子は、後に本説明においてより詳細に記載される。フタル酸ジメチルは、DAPの例である。
【0062】
用語「エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの副生物」(BP)は、式ROZまたはROZの副生物を意味し、PVCベースの物体中に存在するフタラートタイプの(特に上記の実験式C(COOR)(COOR)の)少なくとも1種の可塑剤と、試薬(上記の実験式(C2n+1O)Zのエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの化学分子)との間のエステル交換反応から生じたものである。RおよびRは、フタラートのRおよびRと同義である。Zは、試薬のZと同義である。
【0063】
用語「中間体フタル酸アルキル」(intermediate alkyl phthalate:IAP)は、実験式 C(COOR)(COOC2n+1)またはC(COOR)(COOC2n+1)の副生物を意味し、PVCベースの物体中に存在するフタラートタイプの(上記の実験式C(COOR)(COOR)の)少なくとも1種の可塑剤と、試薬(上記定義の実験式(C2n+1O)Zのエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの化学分子)との間の不完全エステル交換反応から生じたものである。RおよびRは、フタラートのRおよびRと同義である。Zは、試薬のZと同義である。
【0064】
用語「再利用可能な標的PVCプラスチック」は、「フタラート不含有PVC」、すなわち、少なくとも1種のPVC樹脂に、本発明に従って処理されるPVC供給原料のPVCプラスチック中に当初から存在する添加剤の少なくとも1種を補充したものを含んでいる固体であって、本発明によりフタラートが抽出され、かつ、少なくとも1種のフタル酸ジアルキルの形態に変換されたものを特に意味する。用語「フタラート不含有」は、本発明による方法の生成物として得られた固体PVCは、欧州におけるREACH規則(2006年12月18日の欧州議会および理事会の規制(EC)Number1907/2006の付属書類XIV)による認可の対象となるフタラートをトータルで0.1重量%より低く、特に、以下のフタラートからなるリストから選ばれるフタラートをトータルで0.1重量%より低く含有することを特に意味し、ここで、フタラートは、以下のフタラートからなるリスト:フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチルまたはフタル酸ジエチルヘキシル(DOPまたはDEHP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジペンチル(DPP)、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸n-ペンチルイソペンチル 、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ビス(2-メトキシエチル)から選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用される。
【0065】
本説明において、用語「超(greater than…)」は、厳密に超であると理解され、記号「>」によって記号表示され、用語「未満(less than…)」は、厳密に未満であるように理解され、記号「<」によって記号表示される。
【0066】
本明細書において、引用された化学式中の指数「n」および「m」は、正の整数(すなわち、厳密に0超である)である。本発明によると、nは、4未満または8超、好ましくは20以下、さらには15以下である。本発明によると、mは、1以上かつ3以下の整数である。
【0067】
本説明において、用語「室温(room temperature)」(r.t.)は、典型的には20℃±5℃の温度を意味し、用語「大気圧」は、0.101325MPaの圧力を意味する。
【0068】
本説明において、用語「を含む(comprise)」は、「を含む(include)」および「を含有する(contain)」と同義(同じ意味)であり、包括的または無制限(open-ended)であり、特定されていない他の要素を排除するものではない。用語「を含む(comprise)」は、排他的かつ制限的な(closed)用語「からなる(consist)」を包含することが理解される。
【0069】
本説明において、表現「・・・と・・・との間または・・・~・・・(between ... and ...)」は、特に断りのない限り、間隔の両限界値が記載された値の範囲中に含まれることを意味する。
【0070】
本説明において、所与の工程についてのパラメータ、例えば、圧力範囲および温度範囲の種々の範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本説明において、好適な圧力値の範囲は、より好適な温値値の範囲と組み合わされ得る。
【0071】
以下の本文において、本発明の特定の実施形態が記載される場合がある。それらは、別個にまたは一緒に組み合わされて実施されてよく、これが技術的に可能な場合に組み合わせの制限はない。
【0072】
本発明による方法の下記の記載は、本発明による方法の種々の実施を示している、図1~8におけるスキームを参照する。
【0073】
本発明によれば、少なくとも1種のフタラートを含有しているPVC供給原料からDAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するための方法は、以下の工程を含み、それらからなってよい:
a) 粒子状の形態にある前記PVC供給原料(1)の固体-液体抽出;PVC供給原料の前記粒子を、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの少なくとも1種の化学分子を含んでいる溶媒(9)と接触配置することによって行う;nおよびmは、正の整数であり、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、Zは、以下の要素:R、COOR、CO、CR、CNRR’、PO、P、SO、SO、COR、およびHCOの1つからなるリストから選ばれる基であり、RおよびR’は、独立して、直鎖、分枝または環式のアルキル基、またはアリール基から選ばれる;前記フタラートに富む液相と、前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含んでいる固相とを生じさせる;
b) 式C(COOC2n+1のフタル酸ジアルキルへの前記液相の前記フタラートの化学変換;エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの前記化学分子を用いるエステル交換によって行う;前記液相を前記フタル酸ジアルキルで富ませる;
c) 前記固相と前記液相との間の固体-液体分離;前記フタラートに乏しいPVCプラスチックを含む少なくとも1種の固体流れ(6)を生じさせ、前記標的PVCプラスチックを回収する;
d) 前記液相(4)の液体-液体分離;前記フタル酸ジアルキル((5)または(14))を含む第1の液体流出物と、前記溶媒((7)または(12))を少なくとも含んでいる第2の液体流出物とを少なくとも生じさせる。
【0074】
(供給原料)
本発明による方法は、少なくとも1種のPVCプラスチックを含んでいる「PVC供給原料」(1)として知られている供給原料を給送され、これは、本発明において記載されたような少なくとも1種のフタラートを必ず含んでいる。
【0075】
前記PVCプラスチックは、最低0.1質量%のフタラート、さらには最低1質量%のフタラート、あるいはほかに最低5質量%のフタラートを含む場合がある。一般に、PVCプラスチックは、有利には、60重量%未満のフタラート、典型的には30重量%未満のフタラートを含む。
【0076】
前記PVC供給原料は、有利には、「製造スクラップ」タイプのリサイクルされるべきPVCの供給原料、すなわち、PVCポリマーをそのポリマー化の間に生じさせるための方法からまたはその配合/成形の間にPVCプラスチックから生じた廃棄物またはその製造の間のPVCベースの物体の供給原料、または「消費後廃棄物」タイプの供給原料、すなわち、前記PVCベースの物体のユーザによる消費後に生じた廃棄物である。
【0077】
特に、リサイクルされるべきPVC供給原料は、任意の既存の収集および選別のチャネルまたは製造スクラップのためのネットワークおよび/または少なくとも1種のフタラートを含んでいる少なくとも1種のPVCプラスチックをベースとする流れを隔離することを可能にする消費後廃棄物、とりわけ、プラスチック廃棄物に特有の収集および選別のチャネルまたはネットワークに由来する場合がある。
【0078】
それ故に、PVC供給原料は、典型的には、「製造スクラップ」タイプおよび/または「消費後廃棄物」タイプのものであるが、このものは、一般に、PVCプラスチックを用いる用途の主要な分野、例えば、非網羅的に、建築および建設の部門、包装、自動車、電気および電子の設備、スポーツ、医療設備などから得られる。好ましくは、PVC供給原料は、建築および建設の部門から得られる。より正確には、PVCベースの物体は、一般に、これらの分野において、種々のリジッドプロファイル(窓、ドア、日よけ、ローラーブラインドのケーシング)、パイプおよび接続部、およびリジッドボトル、プレートおよびフィルム、フレキシブルフィルムおよびシート、フレキシブルチューブおよびプロファイル、ケーブル、床材、コーティングされた布地等として用いられる。好ましくは、PVC供給原料を形成するPVCベースの物体は、少なくとも1種の「フレキシブルな」PVC、すなわち、可塑剤タイプ、好ましくはフタラートタイプの添加剤を含有しているPVCを含むが、これは、例えば、以下のPVCベースの物体にも当てはまる:フレキシブルフィルムおよびシート、フレキシブルチューブおよびプロファイル、ケーブル、床材、コーティングされた布地等。
【0079】
有利には、PVC供給原料は、少なくとも1種のフタラートを含んでいるPVCプラスチックを、最低50質量%、好ましくは最低70質量%、好ましくは最低90質量%、一層より好ましくは最低95質量%で含む。
【0080】
好ましくは、PVC供給原料は、「フレキシブル」PVC、すなわち、可塑剤タイプ、好ましくはフタラートタイプの添加剤を含有しているPVCを含む。
【0081】
一層より好ましくは、PVC供給原料は、主にさらには排他的に、「フレキシブル」PVC、すなわち、可塑剤タイプ、好ましくはフタラートタイプの添加剤を含有しているPVCを含む。
【0082】
本発明によるDAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するための方法において処理されるPVC供給原料は、粒子状の形態にある。それ故に、PVC供給原料が、製造スクラップまたは消費後廃棄物に特有の形態である当初の形態にあるならば、とりわけ、後者の場合において、PVCベースの物体の当初の形態にあるならば、それは、最初に、粒子状の形態にあるPVC供給原料を形成する粉砕または裁断を少なくとも含んでいるコンディション調整の工程を経る。耐用期間の終わりにおけるこれらの製造スクラップおよび/またはPVCベース物体が由来するチャネルおよび/またはネットワークに応じて、PVC廃棄物は、粉砕されかつ/または洗浄されてよく、並びに/または、以下に説明する任意の他のコンディション調整工程を経て、本発明による方法に適した粒子状の形態にあるPVC供給原料を形成するようにしてよい。例えば、PVC供給原料は、有利には、粉砕され、場合によっては、洗浄された材料の形態にあってよく、その最大寸法は、20cm未満、好ましくは10cm未満、好ましくは1cm未満、一層より好ましくは5mm未満である。PVC供給原料は、有利には、微粉化固体の形態、すなわち、1mm未満、例えば、10マイクロメートル(μm)~800マイクロメートル(μm)の平均サイズを好ましくは有している粒子状の形態にあってもよい。平均サイズは、有利には、前記粒子が取り囲まれる球の平均径に対応する。
【0083】
それ故に、用語「粒子状の形態にあるPVC供給原料」は、すでに定義されたような平均サイズ10μm~20cmを典型的に有しているPVCプラスチックの粒子、例えば、1mm~20cm、好ましくは1mm~10cm、より優先的には1mm~1cm、一層より優先的には1mm~5mmの平均サイズを有する粉砕された材料タイプの粒子、または1mm未満、好ましくは10μm~800μmの平均サイズを有する微粉化(粉体を生じさせる非常に微細な粉砕)に由来する粒子を意味する。
【0084】
好ましくは、本発明による方法において処理されるPVC供給原料は、粉砕された材料タイプの粒子状の形態にあり、好ましくは、1mm~5mmの平均サイズを有する粒子、または1mm未満の平均サイズを有する微粉化(粉体を生じさせる非常に微細な粉砕)に由来する粒子である。
【0085】
PVC供給原料は、「巨視的」不純物、例えば、ガラス、金属、PVC以外のプラスチック(例えば、PET等)、木材、紙、ボール紙、無機成分等を含む場合もある。有利には、PVC供給原料は、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、好ましくは10質量%以下、一層より好ましくは5質量%以下の「巨視的」不純物を含む。
【0086】
有利には、粒子状の形態にあるPVC供給原料が有する水含有率は、0.3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。
【0087】
DAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックに至る本発明による方法の種々の工程は、以下の段落において詳述される。
【0088】
(PVC供給原料をコンディション調整する任意選択の予備工程)
本発明によると、本方法は、PVC供給原料をコンディション調整する予備工程(図に示されない)を含んでよく、この工程は、PVC供給原料の粉砕または細断を行って上記に定義された固体粒子状の形態にあるPVC供給原料を形成する少なくとも1回の工程を含み、粒子状の形態にあるPVC供給原料は、固体-液体抽出工程a)に送られ得る。この予備コンディション調整工程は、以下の非網羅的リストにおいて言及される1回または複数回の工程を含んでもよい:微粉化による粉砕、選別、過選別、洗浄、乾燥等。処理されるPVC供給原料の性質に応じて、予備コンディション調整工程に含まれる1回または複数回の工程、およびそれらの可能な頻度および配列は、とりわけ、当業者によって、巨視的不純物の量を制限するようにかつPVC供給原料を当初から構成している固体要素のサイズを低減させるように選ばれる。
【0089】
例えば、予備コンディション調整工程により、粒子状の形態にあるPVC供給原料、例えば、平均サイズが5mm未満である粉砕・洗浄済みの材料を提供することが可能となり、その巨視的不純物含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。前記予備コンディション調整済みのPVC供給原料は、微粉化された固体粒子の形態、すなわち、平均サイズが1mm未満、例えば10μm~800μmである粒子状の形態にあってもよい。
【0090】
PVC供給原料の予備コンディション調整の工程は、好ましくは、アドホックサイズおよび巨視的不純物含有率のすでに固体粒子状の形態にあるPVC供給原料を乾燥させる少なくとも1回の工程を含み、前記PVC供給原料が有する残留水含有率は、0.3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下になるようにされる。
【0091】
(フタラートの固体-液体抽出の工程a))
本発明による方法は、粒子状の形態にあるPVC供給原料(1)の1種または複数種のフタラートの固体-液体抽出の工程a)を含み、この工程a)は、前記供給原料(1)を溶媒(9)と接触配置することによって行われ、該溶媒(9)は、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの化学分子を含み、好ましくはそれらからなり、ここで、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下であり、Zは、以下の要素の1つからなるリスト:R、COOR、CO、CR、CNRR’、PO、P、SO、SO、COR、およびHCOから選ばれる基であり、RおよびR’は、独立して、(直鎖、分枝または環式の)アルキルまたはアリールの基から選ばれ、例えば、1~20個の炭素原子、さらには1~15個の炭素原子を含んでおり、液相および固相を少なくとも含んでいる流出物(2)を得る。
【0092】
特に、式(C2n+1O)Z中:
m=1である場合、Zは、R、COOR、COR、CNRR’、HCOの中で選ばれる:
m=2である場合、Zは、CO、SO、SOの中で選ばれる:
m=3である場合、Zは、PO、P、CRの中で選ばれる。
【0093】
前記液相は、次いで、前記1種または複数種のフタラートで富化され、固相は、前記1種または複数種のフタラートに乏しいPVCプラスチックを含む。
【0094】
溶媒のエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの化学分子のnの具体的なチョイス(C4、C5、C6、C7、およびC8の鎖のアルキル鎖C2n+1のチョイスを除く)により、工程b)の間に、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの前記化学分子を用いて、前記フタラートを、本説明において上記に定義された少なくとも1種のDAPにエステル交換により変換することが可能となり、これは、望みでないフタラート、例えば、前述のREACH規則による認可の対象となるものの中にないものである。
【0095】
1つまたは複数の実施形態によると、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの前記化学分子は、実験式(C2n+1O)Zを有し、ここで、n<4、好ましくはn=1またはn=2、一層より好ましくはn=1である。
【0096】
1つまたは複数の実施形態によると、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの前記化学分子は、実験式(C2n+1O)Zを有し、ここで、n>8でありかつnは20以下であるか、さらには、nは、15以下である。
【0097】
好ましくは、nは、整数であり、n<4、より好ましくは、nは、1または2に等しい。
【0098】
1つまたは複数の実施形態によると、前記化学分子は、1個または複数個の式(C2n+1O)のアルコキシ基を有するエステルであり、ここで、n<4またはn>8であり、mは、1以上かつ3以下である。
【0099】
前記エステルは、好ましくは、以下からなるリスト:式(C2n+1O)CORのカルボン酸エステル、式(C2n+1O)COの炭酸エステル、式(C2n+1O)CRのオルトエステル、式(C2n+1O)CNRR’のイミノエステル、式(C2n+1O)Pの亜リン酸エステル、式(C2n+1O)POのリン酸エステル、式(C2n+1O)SOの亜硫酸エステル、式(C2n+1O)SOの硫酸エステル、式(C2n+1O)HCOのギ酸エステル(ギ酸アルキル)、例えば、ギ酸エチルまたはギ酸メチル、およびそれらの混合物から選ばれるが、ただし、前記混合物中に含まれるエステルは、厳密に同一のnの値を有するアルコキシ基C2n+1Oを含有する。前記エステルのリストは、網羅的なものではない。基RおよびR’は、独立して、(直鎖、分枝または環式の)アルキルまたはアリールの基から選ばれ、例えば、1~20個の炭素原子、さらには1~15個の炭素原子を含んでいる。
【0100】
好ましくは、エステルタイプの前記化学分子は、式(C2n+1O)CORのカルボン酸エステルであり、ここで、nは、n<4またはn>8になるようにされ、以下からなるリストから選ばれる:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノニル(直鎖または分枝)、酢酸デシル(直鎖または分枝)、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸ノニル(直鎖または分枝)、プロパン酸デシル (直鎖または分枝)。一層より好ましくは、エステルタイプの前記化学分子は、酢酸メチルまたはプロパン酸メチルである。
【0101】
1つまたは複数の実施形態によると、前記化学分子は、式(C2n+1O)Rのエーテルであり、ここで、n<4またはn>8であり、好ましくは、以下からなるリストから選ばれる:ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジノニルエーテル(直鎖または分枝)、ジデシルエーテル(直鎖または分枝)である。好ましくは、前記化学分子は、ジメチルエーテルまたはジエチルエーテルである。
【0102】
好適なエーテルは、シクロペンチルメチルエーテル(cyclopentyl methyl ether:CPME)であることもできる。
【0103】
1つまたは複数の他の実施形態によると、前記化学分子は、それぞれに式(C2n+1O)CRR’または(C2n+1O)CRHのケタールまたはアセタールであり、ここで、n<4またはn>8であり、RおよびR’は、独立して、(直鎖、分枝または環式の)アルキルまたはアリールの基から選ばれ、前記ケタールまたはアセタールの化学分子は、好ましくは、以下からなるリストから選ばれる:ジメチラール、2,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジメトキシブタン、ジエチルアセタール、2,2-ジエトキシプロパンおよび2,2-ジプロポキシプロパン。好ましくは、ケタールまたはアセタールのタイプの前記化学分子は、ジメチラール、2,2-ジメトキシプロパンまたは2,2-ジメトキシブタンである。
【0104】
好ましくは、PVC供給原料(1)の1種または複数種のフタラートの固体-液体抽出の工程a)は、粒子状の形態にある前記供給原料(1)を、酢酸メチルまたはプロパン酸メチル、例えば、プロパン酸メチルと接触配置することによって実行される。この場合、本方法によって生じたDAPは、フタル酸ジメチル(dimethyl phthalate:DMP)である。
【0105】
PVC供給原料(1)の1種または複数種のフタラートの固体-液体抽出の工程a)は、好ましくは、以下の操作条件下に実行される:温度は、室温と200℃との間、好ましくは40℃~180℃、より好ましくは60℃~150℃であり、圧力は、大気圧と11.0MPaとの間、好ましくは大気圧と5.0MPaとの間、より好ましくは大気圧と2.0MPaとの間であり、滞留時間は、1分~10時間、好ましくは10分~4時間、より好ましくは10分~2時間である。
【0106】
好ましくは、工程a)は、溶媒(9)のエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの化学分子の量とPVC供給原料(1)から抽出されるべき1種または複数種のフタラートの量との間のモル比が2~250、好ましくは4~90、一層より好ましくは4~30になるように実行される。
【0107】
本発明による方法の工程a)の反応器は、有利には、機械的撹拌システムおよび/または再循環ループおよび/または流動化により撹拌されるタイプの反応器であってもよく、例えば、不連続または連続のタイプの完全撹拌式反応器、または回転ドラムタイプの反応器がある。
【0108】
実施に関して、粒子状の形態PVC供給原料(1)および溶媒(9)は、有利には、混合される。
【0109】
第1のオプションによると、前記混合は、固体-液体抽出工程a)の反応器への供給原料および溶媒の導入より前に実行されてよい。この場合、前記混合物は、ミキサにおいて形成されてよく、次いで、反応器に導入されてよく、前記反応器は、望みの圧力および温度で維持される。
【0110】
第2のオプションによると、粒子状の形態にあるPVC供給原料(1)および溶媒(9)は、本発明による方法の工程a)の反応器に別個に導入されてよい。前記固体PVC供給原料および溶媒は、その後、好ましくは、2つの別個のラインを介して反応器に注入され、一方は、溶媒(9)の注入を可能にし、他方は、粒子状の形態にある固体のPVC供給原料(1)の注入を可能にする。この場合、PVC供給原料および溶媒の混合物は、前記反応器内で直接的に形成される。
【0111】
本発明によれば、前記固体-液体抽出工程a)により、少なくとも1つの流出物(2)を得ることが可能となり、当該流出物(2)は、抽出されたフタラートを少なくとも含有している少なくとも液相と、フタラートに乏しい、好ましくは、フタラートを含まないPVCプラスチックを含有している少なくとも固相とを含んでいる。
【0112】
(前記フタラートの化学変換の工程b))
本発明による方法は、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートの式C(COOC2n+1の少なくとも1種のDAPへの化学変換の工程b)を含み、この工程b)は、工程a)から得られた液相の前記1種または複数種のフタラートと、工程a)において上記に定義されたような溶媒(9)(前記溶媒(9)について工程a)において同様に定義されたような分子の全ての好適物も含む)のエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの実験式(C2n+1O)Zの化学分子との間のエステル交換反応、好ましくは液相中のエステル交換反応によって行われる。
【0113】
工程a)の終結の際に液相中に存在する1種または複数種のフタラートの式C(COOC2n+1のDAPへのエステル交換反応による化学変換の工程b)は、好ましくは、以下の操作条件下に実行される:温度は、室温と200℃との間、好ましくは40℃~180℃、より好ましくは60℃~150℃であり、圧力は、大気圧と11.0MPaとの間、好ましくは大気圧と5.0MPaとの間、より好ましくは大気圧と2.0MPaとの間であり、滞留時間は、1分~10時間、好ましくは10分~4時間、より好ましくは10分~2時間である。
【0114】
好ましくは、工程b)は、溶媒(9)のエステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの化学分子の量と、工程a)の終結の際に抽出された1種または複数種のフタラートを含有している液相の変換されるべき1種または複数種のフタラートの量との間のモル比が2~250、好ましくは4~90、一層より好ましくは4~30になるように実行される。
【0115】
工程b)を実行するために用いられる溶媒は、工程a)を実行するために用いられたものと同一である。
【0116】
好ましくは、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートの、式C(COOC2n+1のDAPへのエステル交換反応による化学変換の前記工程b)は、エステル交換触媒の存在中で実行され、このエステル交換触媒は、有利には、反応媒体に導入される。
【0117】
このように用いられるエステル交換触媒は、例えば、当業者に周知である以下の非網羅的なリストの触媒から、好ましくは以下からなるリストから選ばれる:
- 均一系触媒、例えば、塩基性触媒(ナトリウムまたはカリウムの水酸化物、ナトリウムまたはカリウムのメトキシド、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩等)、鉱物ブレンステッド酸触媒(塩酸、硫酸、リン酸等)、有機ブレンステッド酸触媒(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)、ルイス酸触媒、とりわけ、ホウ素化合物(BH、BF)およびアルミニウム化合物(AlF、AlCl)を含むもの、および有機金属化合物;
- 不均一系触媒、例えば、アルカリ土類金属酸化物(CaO、BaO等)、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩(CaCO等)、アルミナまたはゼオライト上に担持されたアルカリ金属、酸化亜鉛および他の酸化物とのそれらの混合物(例えば、酸化亜鉛およびアルミナ)、イオン交換樹脂(カチオンまたはアニオン)、例えば、スルホン酸樹脂等。
【0118】
例えば、本発明により用いられる触媒は、均一系触媒、とりわけ、塩基性触媒タイプの均一系触媒、例えば、ナトリウムメトキシドである。
【0119】
化学分子が工程a)のところで上記で定義されたようなエステル、特に、式 (C2n+1O)COR(nは、n<4またはn>8とされる)のエステル、好ましくは、以下からなるリスト:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノニル(直鎖または分枝)、酢酸デシル(直鎖または分枝)、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸ノニル(直鎖または分枝)、プロパン酸デシル(直鎖または分枝)から選ばれるエステル、例えば、酢酸メチルまたは酢酸エチルである場合、好適な触媒は、均一系触媒、特に、ナトリウムメトキシドのような塩基性タイプの均一系触媒である。
【0120】
化学分子が工程a)のところで上記に定義されたようなエーテル、特に、式(C2n+1O)R(nは、n<4またはn>8である)のエーテル、好ましくは以下からなるリスト:ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジノニルエーテル(直鎖または分枝)、ジデシルエーテル(直鎖または分枝)、およびシクロペンチルメチルエーテルから選ばれるエーテル、例えば、ジメチルエーテルまたはジエチルエーテルである場合、好適な触媒は、均一系触媒、特に酸性触媒、典型的には、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸のような有機ブレンステッド酸触媒である。
【0121】
化学分子が工程a)のところで上記に定義されたようなケタールまたはアセタール、特に、それぞれに式(C2n+1O)CRR’または(C2n+1O)CRH(nは、n<4またはn>8であり、RおよびR’が、独立して、(直鎖、分枝または環式の)アルキルまたはアリールの基から選ばれる)であるケタールまたはアセタールであり、前記ケタールまたはアセタールの化学分子が好ましくは以下からなるリスト:ジメチラール、2,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジメトキシブタン、ジエチルアセタール、2,2-ジエトキシプロパンおよび2,2-ジプロポキシプロパン、例えばジメチラールから選ばれる場合、好適な触媒は、均一系触媒、特に、酸触媒、典型的には、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸のような有機ブレンステッド酸触媒である。
【0122】
好ましくは、導入される触媒の量は、触媒と、変換されるべき1種または複数種のフタラートとの間の質量比が0.5質量%~15質量%、好ましくは1質量%~10質量%、一層より好ましくは1質量%~8質量%になるようにされる。
【0123】
均一系または不均一系であるかに拘わらず、触媒は、当業者に周知である方法による処理方法においてリサイクルされ、かつ/または除去されてよく、好ましくはリサイクルされる。それは、単離され、除去され、または、本方法の下流工程に、好ましくは工程c)に、工程d)におよび/または工程e)に、または任意の他の専用工程にエステル交換反応のためにリサイクルされてよい。
【0124】
本発明による方法の工程b)の反応器は、有利には、機械的撹拌システムおよび/または再循環ループおよび/または流動化により撹拌されるタイプの反応器であってよく、例えば、不連続または連続のタイプの完全撹拌式反応器、または回転ドラムタイプの反応器である。
【0125】
本発明によれば、フタラートの変換の前記工程b)により、エステル交換反応の後に得られた式C(COOC2n+1のDAPを少なくとも含有している少なくとも1種の液相、すなわち、工程a)の終結の際に形成され、かつ、工程b)においてDAPで富化された液相を含んでいる少なくとも1種の流出物を得ることが可能となる。
【0126】
本発明による方法の工程a)およびb)は、同一の個別の操作で実行されてよいか、または、2つの相異なる連続する個別操作の対象であってよく、工程a)の個別操作は、次いで、常に、工程b)の個別操作の前に実行される。
【0127】
図1~5に提示されている実施形態において、工程a)およびb)は、別個の「ボックス」の形態で特徴付けられているが、同一の個別操作で実行されるか、または、2つの相異なる連続する個別操作の対象であるかのいずれかであってよい。第1のケースにおいて、流出物(2)は、2つの工程a)およびb)を実行するために例えば用いられる同一の反応器中に存在する。
【0128】
図6に提示されている実施形態において、これは、本発明による好適な実施形態のものであり、工程a)およびb)は、同一の個別操作の対象であり、これは今回、単一の「ボックス」(a+b)の使用によって特徴付けられる。
【0129】
図7および8に示されている実施形態において、図8の実施形態は、本発明による好適な実施形態のものであり、工程a)およびb)は、2つの相異なる連続する個別操作の対象を形成し、下記に説明される、工程a)と工程b)との間に工程c)が実行されるスキームに対応する。
【0130】
(固体-液体分離の工程c))
本発明による方法は、一方での、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートおよび/または工程b)におけるエステル交換反応の後に得られた式C(COOC2n+1のDAPを含有している液相と、他方での、フタラートに乏しい、好ましくはフタラートを含んでいないPVCプラスチックを含有している固相との間の固体-液体分離の工程c)を含む。
【0131】
液相および固相の物理的分離は、有利には、当業者に知られている技術に従って、例えば、非網羅的に、ろ過、遠心分離、電気集塵またはデカンテーションで実行されてよく、前記技術は、単独でまたは組み合わせで、任意の順序で用いられる。
【0132】
固体-液体分離のこの工程c)により、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートに乏しいPVCプラスチックを含んでいる少なくとも1種の固体流れ(6)を生じさせることがこのように可能となり、前記再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するようにする。
【0133】
本発明により定義されたような再利用可能な標的PVCの生成は、工程c)において得られた固体流れ(6)の全部または一部を、前記標的PVCプラスチックを生じさせるのに必要なだけ多くのサイクルで工程a)に戻す必要がある場合がある。
【0134】
固体流れをリサイクルすることのこの可能性は、図2~8に示されている。
【0135】
本発明による方法の第1の変形によると、前記固体-液体分離工程c)は、工程a)およびb)を実行した後に行われる。この第1の変形は、図1~6に図示されている。この場合、工程b)から得られた液体流出物(3)は、固体-液体分離工程c)に送られ、工程b)におけるエステル交換反応後に得られたDAPを少なくとも含有している液相と、1種または複数種のフタラートに乏しいPVCプラスチックを含有している固相との間の分離に至る。有利には、本発明による方法のこの第1の変形について、工程a)およびb)は、同一の個別の操作において一緒に実行され、この特定の実施は、本発明による方法を実行するために要求される個別の操作の数における低減に至り、それ故に、機器の数、用いられる溶媒の量、使用されるエネルギーの制限等、それ故に、コストの低下に至る。この変形による実施の好適な例は、図6に図示されている。
【0136】
本発明による方法の第2の変形によると、固体-液体分離工程c)は、工程a)を実行した後かつ工程b)を実行する前に行われる。この第2の変形は、特に、図7および8に図示されている。この場合、工程a)から得られた液体流出物(2)は、固体-液体分離工程c)に送られ、抽出されたフタラートを含有している液相の、1種または複数種のフタラートに乏しいPVCを含有している固相からの分離に至る。その結果、この第2の変形について、工程a)およびb)は、2つの相異なる個別の操作の対象を形成する。工程c)は、1種または複数種のフタラートに乏しいPVCプラスチックを含む固体流れ(6)と、第1の液体流れ(18)をこのように生じさせ、第1の液体流れ(18)は、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートを含有し、次いで、エステル交換による前記1種または複数種のフタラートの変換のために工程b)に送られる。この第2の変形は、処理されるべきPVC供給原料が、エステル交換化学反応を実行するのに(化学またはレオロジーの特性等の観点から)不利な固相の形成に工程a)の間に至るだろう場合において特に適している。
【0137】
例えば、図7および8に示される方法のこの第2の変形による実施形態によると、ここでは、工程c)は、工程a)と工程b)との間に実行されており、本発明による工程a)およびc)は、同一の不連続の反応器において連続的に実行されてよく、この不連続反応器は、固相からのフタラートの数サイクルの抽出を可能にする液体流出物(2)をろ過するためのデバイスおよび標的PVCプラスチックの最終的な回収を可能にする固相(6)を少なくとも抜き出すためのデバイスを有している。
【0138】
別の例について、工程c)は、抽出されたフタラートおよび/またはDAPを少なくとも含有している液相を含んでいる液体流出物(2)または(3)および工程a)から得られた固相の遠心分離によって行われてよく、前記固体(6)の分離に至り、有利には、工程a)への前記固体の全部または一部の戻りに至り、好ましくは、事前に、例えば、再利用可能な標的PVCプラスチックが生じるまで、溶媒(9)(図に示されていない)を供給することによって懸濁状に置かれる。
【0139】
(液体-液体分離の工程d))
本発明による方法は、少なくとも工程a)、b)およびc)の実施の終結の際に得られた液相から式C(COOC2n+1のDAPを抽出するための液体-液体分離工程d)を含む。
【0140】
前記液相を含有している液体流れ((4)、(13))は、有利には、この液体-液体分離工程d)に給送し、DAPを含む第1の液体流出物(図による流れ(5)または(14))と、前記溶媒を少なくとも含んでいる第2の液体流出物(図による流れ(7)または(12))を少なくとも生じさせることがこのように可能になる。
【0141】
液体-液体分離工程d)は、当業者に周知である方法、例えば、非網羅的に、蒸留、デカンテーション、蒸発、液体-液体抽出等により実行されてよく、これらは、単独でまたは組み合わせで実行される。この工程の操作条件(温度、圧力等)は、選ばれた分離方法に応じて決定される。
【0142】
1つまたは複数の実施形態によると、第1の流出物(5)は、本質的に、前記DAPからなる。この場合(これらの場合)において、第2の液体流出物(7)は、例えば、図1(または選択肢として図3)に示され、これは、DAPの抽出後の残留液相からなり、これは、溶媒、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの副生物(BP)、中間体フタル酸アルキル(intermediate alkyl phthalates:IAP)および本発明による方法の工程a)の終結の際に抽出された転化されていない場合がある1種または複数種のフタラートを少なくとも含有する。第2の液体流出物(7)は、全体的または部分的に、好ましくは全体的に、本発明による方法の工程b)に戻されてよい。
【0143】
この場合(これらの場合)に、とりわけ、選ばれる液体-液体分離法、例えば、側部抜き出しを伴う蒸留または液体-液体抽出に応じて、液相から、溶媒だけでなくBPおよび大いに有利には工程a)において抽出された転化されていないフタラートを場合により有するIAPも分離することも可能である。このような分離は、例えば、図2または図7(および流れ(7)の製造への代替として図3)に示されており、ここでは、工程d)は、本質的に前記DAPからなる第1の流出物(5)、本質的に溶媒からなる第2の流出物(12)に加えて、工程b)におけるエステル交換の間に得られたBPを含む第3の流出物(10)、および工程b)において部分的に転化されている(IAP)および/または転化されていない1種または複数種のフタラートおよび場合による他の可溶性不純物を含む第4の流出物(11)を生じさせることが理解されてよい。第4の流出物(11)は、有利には、本発明による方法の工程b)に、とりわけ、本発明による方法の第1および第2の変形に従って戻されて、DAPをもたらす化学反応を継続し、それ故に、この生成物の収率を改善するようにしてよい。
【0144】
1つまたは複数の代わりの実施形態によると、図4~6および図8に示されるように、DAPを含む第1の液体流出物(14)は、他の化合物、例えば、工程b)において部分的に転化されている(IAP)および/または転化されていない1種または複数種のフタラートおよび/または可溶性不純物(例えば、IAP)も含む。後に説明されるように、このまたはこれらの実施形態によると、第1の流出物のDAPの精製の工程は必要である。このまたはこれらの実施形態によると、液体-液体分離工程d)は、それ故に、有利には、不純なDAPの前記第1の液体流出物(14)と、好ましくは本質的に前記溶媒からなる第2の液体流出物(12)と、好ましくは、工程b)におけるエステル交換の間に得られたBPを含む第3の流出物(10)とを生じさせる。BPおよび溶媒の単離は、とりわけ、選ばれる液体-液体分離法、例えば、側部抜き出しを有する蒸留または液体-液体抽出に応じて可能とされる。第2の液体流出物(12)が本質的に、このようにして回収された前記溶媒からなる場合、第2の液体流出物(12)は、有利には、部分的または全体的に、好ましくは全体的に、本発明による、とりわけ、本発明による第1および第2の方法の変形による方法の工程a)および/または工程b)に戻されてよい。
【0145】
(DAPの精製の工程e)(任意選択))
本発明による方法は、液体-液体分離工程d)から得られたDAPを含んでいる第1の流出物(14)の精製の任意選択の工程e)を含んでよく、その品質、それ故に、究極的には、そのアップグレードを改善する。図4、5、6および8に示される実施形態は、このような精製工程e)の実施を示す。
【0146】
前記工程e)を実行するケースにおいて、溶媒は、有利には、工程d)の実施の間に単離された。さらに、本発明による方法の工程a)の終結の際に抽出されかつ工程b)の終結の際に転化されなかったIAPおよび場合による1種または複数種のフタラートは、本発明による方法の工程d)の間に単離されてよいか、あるいは代わりに、前記精製工程e)の実施の間に単離されてよい。
【0147】
それ故に、DAP、工程b)において部分的に転化されているおよび/または転化されていない1種または複数種のフタラートおよび場合による可溶性の不純物を含んでいる第1の流出物(14)を、この精製工程e)に送って、本質的に前記DAPからなる液体生成物(16)と、工程b)において部分的に転化されているおよび/または転化されていない1種または複数種のフタラートおよび場合による可溶性不純物を含んでいる液体残渣(17)とを形成することは可能である。
【0148】
このように回収された液体残渣(17)は、有利には、図4または図5に示されているように、本発明による方法、とりわけ、本発明による方法の第1および第2の変形の工程b)に戻されて、DAPに至る化学反応を継続してよい。
【0149】
精製工程e)は、有利には、当業者に周知である方法、例えば、沈殿、結晶化または吸着を介して実行されてよく、場合によっては、ろ過または遠心分離が続けられる。精製工程e)は、これらの方法のいくつかの実施を並行または連続で含んでよい。例えば、網羅的でなく、精製工程e)は、沈殿およびろ過の工程と、その後の吸着工程を含んでよいか、あるいは代わりに、吸着およびろ過の工程と、場合によるその後の沈殿工程を含んでよいか、あるいは代わりに、結晶化およびろ過の工程を含んでよい。この工程e)の操作条件(温度、圧力等)は、選ばれる精製方法に応じて決定される。
【0150】
(エステル交換による化学変換の追加工程f)および/またはf)(任意選択))
本発明によるDAPの生成を促進するために、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートの化学変換の工程b)とは別に、IAPおよび/または工程b)の終結の際に転化されていなかった場合がある抽出された1種または複数種のフタラートの変換を可能にする追加の化学変換工程を実行することは可能である。
【0151】
本方法は、図3または図5に示されるように、工程b)において転化されていない1種または複数種のフタラートおよび/または工程b)において生じた少なくとも1種のIAPの式C(COOC2n+1のDAPへのエステル交換による化学変換の溶媒を用いた追加工程f)をこのように含んでもよい。これらの実施形態において、工程f)は、工程c)と工程d)との間に、有利には、工程b)の後に、液相(4)、有利には全ての工程a)、b)およびc)の終結の際に得られたものを第1の追加のエステル交換反応器に送ることによって実行され、DAPに富む第2の液体流れ(13)を生じさせ、前記第2の液体流れ(13)は、工程d)に送られる。この実施形態によると、工程c)は、好ましくは、工程b)の終結の際に実行される。
【0152】
本方法は、工程b)において転化されていない1種または複数種のフタラートおよび/または工程b)においてまたは場合によっては任意選択の工程f)において生じた少なくとも1種のIAPの式C(COOC2n+1のDAPへの溶媒を用いたエステル交換による化学変換の追加工程f)を含んでもよく、工程f)は、工程e)の後に、液体残渣(17)を第2の追加エステル交換反応器に送ることによって実行されて、前記DAPに富む第3の液体流れ(15)を生じさせ、前記第3の液体流れ(15)は、工程d)に戻される。
【0153】
エステル交換による化学変換の追加の工程f)および/または追加の工程f)の実施は、本発明による方法の第1の変形(工程a)およびb)の後に実行される固体-液体分離工程c))または第2の変形(工程a)と工程b)との間の固体-液体分離工程c))に従って実行されてよい。
【0154】
好ましくは、本発明による方法は、エステル交換による化学変換の1回だけの追加の工程、好ましくは工程f)を含む。
【0155】
工程f)および/または工程f)の実施は、本発明による方法の工程b)について記載されている通りである。特に、工程b)およびf)および/またはf)の操作条件に関連する範囲は、類似しており、前記範囲は、当業者によって、前記工程f)および/または工程f)の入口のところで処理されるべき流れの化学的性質に応じてDAPの生成を促進するように選ばれる。
【0156】
これは、工程b)に記載されているように、エステル交換触媒(8)の好適な使用にも当てはまる。工程f)および/またはf)におけるエステル交換触媒は、工程b)において用いられたものと同一であっても異なっていてもよい。
【0157】
工程f)および/または工程f)に送られる前記流れ(流れ(4)または液体残渣(17))は、工程a)において抽出され、工程b)において場合によっては部分的に転化されており(IAP)および/または転化されていない1種または複数種のフタラート、および場合による可溶性不純物を含んでいる液相であり、これは、次いで、本発明による方法の液体-液体分離工程d)の実施の間、または本発明による方法の精製工程e)の実施が有利に実行されるならば、前記実施の間かのいずれかに単離される。
【0158】
工程f)および/または工程f)を含むことが考慮される工程の配列に応じて、溶媒の追加供給を用いることが必要であってよく、この溶媒の追加供給は、「フレッシュな」溶媒(9)の供給、あるいはほかに、前記溶媒の流れ(12)のリサイクルであって、場合によっては、本発明による方法の工程d)の終結の際に単離されたものに由来する場合がある。工程f)において実行される第1の追加エステル交換反応器および/または工程f)において実行される第2の追加エステル交換反応器におけるこの追加供給は、フレッシュな溶媒(9)を供給することによっておよび/または前記溶媒からなる第2の流出物(12)をリサイクルすることによって、図3、5、6および8に示されている。
【0159】
精製工程e)が実行される場合、工程e)において生じた前記液体残渣(17)の少なくとも一部は、図5に示されているように、工程f)にリサイクルされて、DAPに至る化学反応を継続してよい。
【0160】
図6および8は、それぞれに、本発明による方法の第1の変形(工程a)およびb)を実行した後の固体-液体分離工程c))および第2の変形(工程a)と工程b)との間の固体-液体分離工程c))による好適な実施形態を表している。
【0161】
図6において理解されてよいように、第1の変形による本発明の好適な実施形態によると、本方法は、工程a)およびb)、工程a)およびb)の後の固体-液体分離工程c)、液体-液体分離工程d)、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物(14)の精製の工程e)、および有利には工程e)から得られた残渣(17)のエステル交換の追加の工程f)の同一の個別操作における実施を含む。
【0162】
この実施形態によると、図6において概略的に示されているように、粒子状の形態にあるPVC供給原料(1)は、場合によっては、予備コンディション調整されて、それぞれに固体-液体抽出およびエステル交換による化学変換、好ましくは触媒(8)の存在中の化学変換の工程a)およびb)の実施を組み合わせる反応器に導入される。反応器は、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプのすでに定義された実験式(C2n+1O)Zの化学分子を少なくとも含んでいる、好ましくはそれらからなる本方法に対して外部のフレッシュな溶媒(9)の流れも給送され、化学分子は、例えば、酢酸メチルまたはプロパン酸メチル、好ましくは、プロパン酸メチルであり、場合によっては、液体-液体分離工程d)において単離された溶媒の流れ(12)の少なくとも一部を給送される。DAP、好ましくはDMPを少なくとも含む液相と、フタラートに乏しい、好ましくはフタラートを含まないPVCプラスチックを含む固相とを含有している反応流出物(3)は、固体-液体分離工程c)に送られ、例えば、遠心分離を実行して、抽出された1種または複数種のフタラートに乏しい前記PVCプラスチックを含む固体流れ(6)を生じさせて、前記再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するようにし、かつ、DAP、好ましくは、少なくともDMPと少なくとも溶媒を含有している液体流れ(4)とを生じさせる。固体流れ(6)は、工程a)に部分的にリサイクルされてよい。工程c)から得られた、DAP、溶媒、場合によっては転化されていないかまたは部分的に転化されている(IAP)1種または複数種のフタラートおよび場合による副生物(BP)を含有している液体流れ(4)は、液体-液体分離工程d)に送られ、これにより、一方で流れ(12)としての溶媒を単離するだけでなく、好ましくは、流れ(10)としてのBP、および最終的に、DAP、好ましくはDMP、および場合によっては、部分的に転化されているおよび/または転化されていない1種または複数種のフタラートおよび場合による可溶性不純物を含む液体流出物(14)も単離することが可能となる。液体流出物(14)は、精製工程e)に送られて、精製済みDAP、好ましくはDMPを得る。この精製工程e)から得られた残渣(17)は、転化されていないかまたは部分的に転化されている(IAP)1種または複数種のフタラートを依然として含有する可能性があるので、エステル交換の追加の化学変換工程f)が好ましくは実行される。残渣(17)は、そのため、有利には、適切なエステル交換触媒を含有している第2のエステル交換反応器に送られて、転化されていないかまたは部分的に転化されている(IAP)1種または複数種のフタラートのエステル交換を、溶媒(9)を用いて実行する。溶媒は、フレッシュな溶媒の供給であってよいか、または、この工程f)に少なくとも部分的にリサイクルされた流れ(12)を起源としてよい。この工程f)は、前記DAP、好ましくはDMPに富む液体流れ(15)を生じさせ、これは、液体-液体分離工程d)に戻される。
【0163】
図8に示されているように、第2の変形による本発明の別の好適な実施形態によると、本方法は、2つの相異なる個別操作における工程a)およびb)の実施を含み、工程c)は、工程a)と工程b)との間に実行され、その後に、工程d)を行い、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物(14)の精製の工程e)、および工程e)から得られた残渣(17)のエステル交換の追加の工程f)も含む。
【0164】
この実施形態によると、図8に概略的に示されているように、粒子状の形態にあるPVC供給原料(1)は、場合によっては、予備コンディション調整されて、反応器に導入されて、前記PVC供給原料からの1種または複数種のフタラートの固体-液体抽出の工程a)を実行する。反応器は、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの化学分子、例えば、酢酸メチルまたはプロパン酸メチル、好ましくはプロパン酸メチルを含んでいる本方法に対して外部のフレッシュな溶媒(9)の流れ、および場合によっては、溶媒の流れ(12)を給送され、後続の液体-液体分離工程d)において単離される。工程a)において生じた流出物(2)は、前記供給原料(1)から抽出された1種または複数種のフタラートを少なくとも含有している少なくとも液相と、フタラートに乏しい、好ましくは抽出されたフタラートを含まないPVCプラスチックを含有している少なくとも固相とを含む。流出物(2)は、固体-液体分離工程c)に送られ、例えば、遠心分離を実行して、1種または複数種のフタラートに乏しい前記PVCプラスチックを含む固体流れ(6)を生じさせ、前記再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するようにし、工程a)において抽出された1種または複数種のフタラートを少なくとも含有している液体流れ(18)、および少なくとも溶媒を生じさせる。液体流れ(18)は、次いで、抽出された1種または複数種のフタラートのエステル交換による化学変換の工程b)を、好ましくは触媒(8)の存在中で実行する反応器に送られる。エステル交換反応器は、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの同一の化学分子、例えば、酢酸メチルまたはプロパン酸メチル、好ましくはプロパン酸メチルを含んでいる、本方法に対して外部のフレッシュな溶媒(9)の流れ、および場合によっては、液体-液体分離工程d)において単離された溶媒の流れ(12)の少なくとも一部を給送されてもよい。反応流出物(4)は、DAP、好ましくはDMP、溶媒、場合による転化されていないかまたは部分的に転化されている(IAP)1種または複数種のフタラートおよび場合による副生物(BP)を少なくとも含む液相を含有しており、このものは、液体-液体分離工程d)に送られ、これにより、一方で流れ(12)としての溶媒だけでなく、流れ(10)としてのBP、および最終的には、DAP、好ましくはDMPおよび場合による部分的に転化されている(IAP)および/または転化されていない1種または複数種のフタラートおよび場合による可溶性不純物を含む液体流出物(14)も単離することが可能となる。液体流出物(14)は、好ましくは、精製工程e)に送られて、精製済みDAP(16)、好ましくはDMPを得る。この精製工程e)から得られた残渣(17)は、転化されていないかまたは部分的に転化されている(IAP)1種または複数種のフタラートを依然として含有している場合があるので、追加のエステル交換化学変換工程f)が好ましくは実行される。残渣(17)は、有利には、適切なエステル交換触媒を好ましくは含有している第2のエステル交換反応器に送られて、転化されていないかまたは部分的に転化されている(IAP)1種または複数種のフタラートのエステル交換を、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプのすでに定義された実験式(C2n+1O)Zの化学分子を含んでいる溶媒(9)を用いて実行する。溶媒は、フレッシュな溶媒の供給物であってよいか、または、この工程f)に少なくとも部分的にリサイクルされた流れ(12)を起源としてよい。この工程f)は、前記DAP、好ましくはDMPに富んだ液体流れ(15)を生じさせ、これは、液体-液体分離工程d)に戻される。
【0165】
本発明は、少なくとも1種のフタラートを含有しているPVCベースの物体をリサイクルするための方法にも関し、前記リサイクル方法は、以下を含む:
- PVCベースの物体のコンディション調整;PVCベースの物体を粉砕または細断して粒子状の形態にあるPVC供給原料を形成することを少なくとも含んでいる;
- DAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックの回収のために、詳細に上記に記載された、本発明による前記粒子状の形態にあるPVC供給原料からのDAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックの回収。
【0166】
PVCベースの物体のコンディション調整の工程は、工程a)に導入される前にPVC供給原料の予備コンディション調整について上記に詳述された種々の工程を含んでよい。
【0167】
本発明は、上記に詳細に記載されたDAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収するための方法を介して得られるリサイクルPVCプラスチックおよび/またはDAPを含むフレキシブルPVCベースの物体を製造するための方法にも関する。
【0168】
このような製造方法は、典型的には、上記のようなPVC供給原料からDAPおよび再利用可能な標的PVCプラスチックを回収する工程と、その後の、前記再利用可能な標的PVCプラスチックを添加剤と混合する工程または前記回収済みDAPをPVC樹脂と混合する工程と、次いで、前記混合物を形成する工程とを含む。
【0169】
(実施例)
(実施例1)
この実施例1は、本発明を例証するものであり、本発明の範囲を制限するものではなく、とりわけ、PVCプラスチック中に含有されるフタラートの抽出および触媒の存在中でのフタラートのフタル酸ジメチルへのカルボン酸エステル化学分子であるプロパン酸メチルを用いるエステル交換による転化を例証する。
【0170】
(「医療用チューブ」タイプのPVCベースの物体から得られた)PVCプラスチック供給原料18.2gを、パドルタイプの機械的撹拌システムにより撹拌される反応器に導入する。PVCプラスチック供給原料は、平均サイズが2mmである押出物状の形態にあり、フタル酸ジデシル(DIDP)4.4gを含有している。プロパン酸メチル17.35gを次いで加え、プロパン酸メチル/DIDPのモル比は、20である。触媒(NaOMe)0.17gを、次いで、前述の混合物に加え、NaOMe/DIDPの質量百分率は、4%である。
【0171】
反応器を密閉し、窒素によりページし、次いで、1.2MPa程度の自生圧力で100℃に加熱し、これらの条件下に4時間にわたって1000rpmの撹拌を伴って維持する。反応器を、次いで、冷却する。
【0172】
4時間後に、固体および液体を得て、分析する。
【0173】
液相の水素炎イオン化型検出器付きのガスクロマトグラフィー(gas chromatography with flame ionization detection:GC-FID)による分析により、それは、DIDPの転化から得られたフタル酸ジメチル(DMP)0.13gおよびDIDPの部分的な転化によるフタル酸デシルメチル0.07gを含有することが示される。同定は、高純度分析標準の保持時間の比較によって可能となされ、定量は、これらの同一の標準の分析から得られる応答係数の決定によって実行された。
【0174】
得られた固体の予備分画を、二重の光学検出(UV/可視)および屈折率測定(RI)を備えた分取サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography:SEC)によって行った。収集から得られたフラクションの分析を、定量的UV-可視タイプの光学検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography:HPLC)により行った。結果は、標的PVCプラスチック中のDIDPの存在を、1000ppm未満の含有率で指し示し、これは、現行の欧州の規制に準拠している。
【0175】
これらの結果により、本発明によるフタラート不含有PVCが得られること、およびDIDPが10%転化されたことが示されている。この転化の程度は、DIDPのDMPへの全転化およびそれの部分転化を考慮に入れる。転化されていないDIDPは、液相中にある。この実施例において、DIDPの抽出およびその転化を、同一の工程において実行する。
【0176】
(実施例2)
この実施例2は、本発明を例証し、本発明の範囲を制限するものではなく、とりわけ、PVCプラスチック中に含有されるフタラートの抽出および触媒の存在中でのカルボン酸エステル化学分子である酢酸メチルを用いたフタラートのフタル酸ジメチルへのエステル交換による転化を例証する。
【0177】
(「医療用チューブ」タイプのPVCベースの物体から得られた)PVCプラスチック供給原料13.23gを、パドルタイプの機械的撹拌システムにより撹拌される反応器に導入する。PVCプラスチック供給原料は、平均サイズが2mmである押出物状の形態にあり、フタル酸ジデシル(DIDP)3.2gを含有している。次いで、酢酸メチル10.61gを加え、酢酸メチル/DIDPのモル比は、20である。次いで、触媒(NaOMe)0.12gを、先行混合物に加え、その結果、NaOMe/DIDPの質量百分率は、4%である。
【0178】
反応器を密閉し、窒素によりパージし、次いで、1.2MPa程度の自生圧力で100℃に加熱し、これらの条件下に4時間にわたって1000rpmの撹拌を伴って維持する。反応器を、次いで、冷却する。
【0179】
4時間後に、固体および液体を得て、分析する。
【0180】
液相の水素炎イオン化型検出器付きのガスクロマトグラフィー(GC-FID)による分析により、それは、DIDPの転化から得られたフタル酸ジメチル(DMP)0.07gおよびDIDPの部分的な転化によるフタル酸デシルメチル0.17gを含有することが示される。同定は、高純度分析標準の保持時間の比較によって可能となされ、定量は、これらの同一の標準の分析から得られる応答係数の決定によって実行された。
【0181】
得られた固体の予備分画を、二重の光学検出(UV/可視)および屈折率測定(RI)を備えた分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって行った。収集から得られたフラクションの分析を、定量的UV-可視タイプの光学検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。結果は、標的PVCプラスチック中のDIDPの存在を、1000ppm未満の含有率で指し示し、これは、現行の欧州の規制に準拠している。
【0182】
これらの結果により、本発明によりフタラート不含有PVCが得られること、およびDIDPが9%転化されたことが示される。この転化の程度は、DIDPのDMPへの全転化およびそれの部分転化を考慮に入れる。転化されていないDIDPは、液相中にある。この実施例において、DIDPの抽出およびその転化を、同一の工程において実行する。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図1】本発明の1つの実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでいる。
図2】別の実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、工程d)において、DAP、溶媒、エステル、エーテル、ケタールまたはアセタールのタイプの工程b)において得られた副生物、および、場合による可溶性不純物との混合物としての部分的に転化されているおよび/または転化されていないフタラートの間の分離を行う。
図3図1または図2に図示された実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、エステル交換(f)および種々の流れのリサイクルの他の任意選択の工程の実施を示している。
図4】本発明の別の実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物の精製の工程e)も含んでいる。
図5図4に図示された実施形態による方法のスキームであり、エステル交換(f;f)および種々の流れのリサイクルの他の任意選択の工程の実施を示している。
図6】本発明の好適な実施形態による方法のスキームであり、工程a)およびb)の同一の個別の操作(本発明による方法の第1の変形)内の実施、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物の精製の工程e)および工程e)から得られた残渣のエステル交換の追加の工程f)を含んでいる。
図7】本発明の別の実施形態による方法のスキームであり、工程a)、b)、c)およびd)を含んでおり、工程a)およびb)は、2つの相異なる個別の操作(本発明による方法の第2の変形)の対象を形成し、工程c)は、工程a)と工程b)との間に実行される。
図8図7において図示されたのと同様の好適な実施形態による方法のスキームであり、DAPを含んでいる工程d)において得られた第1の流出物の精製の工程e)と、工程e)から得られた残渣のエステル交換の追加の工程f)とを含んでいる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】