(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ポリペプチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20240423BHJP
C12N 15/16 20060101ALN20240423BHJP
C07K 14/575 20060101ALN20240423BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12P21/00 C
C12N15/16
C07K14/575
C07K19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571760
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 CN2021097429
(87)【国際公開番号】W WO2022241831
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110554938.8
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516336828
【氏名又は名称】凱菜英医藥集團(天津)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】肖 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】焦 学成
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲軍▼旗
(72)【発明者】
【氏名】王 磊
(72)【発明者】
【氏名】孟 翔宇
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 慕キョウ
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG15
4B064CA02
4B064CA19
4B064CA21
4B064CB01
4B064CC06
4B064CC10
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4B064CC15
4B064CC24
4B064CE02
4B064CE03
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4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA32
4H045EA01
4H045FA70
4H045FA74
4H045GA01
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
ポリペプチドの製造方法である。当該製造方法は、Sumoタグでポリペプチド遺伝子を融合発現するエンジニアリング菌株を構築し、且つエンジニアリング菌株がポリペプチドを可溶性発現するように誘導するステップと、エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップと、Ulp1プロテアーゼを用いてポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を酵素切断し、Sumoタグを切除するステップと、アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法を用いるか、又はヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法を用いて、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物を精製し、ポリペプチドを得るステップと、を含む。可溶性組換えに基づいて薬用ポリペプチド又はその前駆体を発現する高効率な技術を確立し、ワンステップ沈殿精製に基づく簡単な精製プロセスを確立し、さらにHPLC精製を合わせると、97%以上のポリペプチド純度を達成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sumoタグでポリペプチド遺伝子を融合発現するエンジニアリング菌株を構築し、且つ前記エンジニアリング菌株が前記ポリペプチドを可溶性発現するように誘導するステップと、
前記エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップと、
Ulp1プロテアーゼを用いて前記ポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を酵素切断し、前記Sumoタグを切除するステップと、
アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法を用いるか、又はヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法を用いて、前記Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物を精製し、前記ポリペプチドを得るステップと、を含む、ことを特徴とするポリペプチドの製造方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、リラグルチド前駆体、ネシリタイド又はテリパラチドである、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記Ulp1プロテアーゼは、Ulp1プロテアーゼ発現菌株を構築して、発現を誘導することにより得られるものであり、ここで、前記Ulp1プロテアーゼはシャペロンと共発現する、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記シャペロンはGroEL/Sシャペロンである、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法は、前記Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物のpHを5.6に調整し、続いて、アセトニトリルを加え、均一に混合した後、60~80℃で0.5~3h熱処理し、その後、上清と沈殿とを遠心分離する、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記アセトニトリルは、質量百分率が20~70%のアセトニトリル水溶液である、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップは、前記エンジニアリング菌株に対して超音波破砕、遠心分離、膜でのろ過を行った後、粗酵素液を得、続いて、アフィニティークロマトグラフィー又はアニオンカラムを用いて精製し、前記粗タンパク質を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法は、前記Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物のpHを5.6に調整し、続いて、ヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一に混合した後、室温で1h沈殿させ、その後、上清と沈殿とを遠心分離する、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ヘキサフルオロイソプロパノールは、質量百分率が20~70%のヘキサフルオロイソプロパノール水溶液である、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ヘキサフルオロイソプロパノールは、質量百分率が50%のヘキサフルオロイソプロパノール水溶液である、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記製造方法は、さらに、HPLCを用いてターゲットポリペプチドを精製するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬技術分野に関し、具体的に言えば、ポリペプチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチド系薬物は、アルブミノイドと小分子薬物の二重特性を有することから注目を浴びており、ポリペプチド薬物の販売は、2015年だけで、薬物市場の5%を占め、500億ドルに達し、且つ、毎年9~10%の速度で増加しているため、高効率で低コストのポリペプチド合成及び精製技術の確立が急務になっている。ポリペプチド合成には、主に、化学方法、化学/酵素方法及び生物学的方法が含まれる。ここで、化学方法は、複雑な保護と脱保護過程を必要とし、大量の有毒試薬を使用する必要があり、且つ、ラセミ体が生成する可能性があり、化学/生物学の方法は、一般に、化学方法でポリペプチドを合成し、さらに特定のペプチドリガーゼにより複数のペプチドセグメントを連結することであり、プロセスが比較的複雑であり、連結効率及び特異性がポリペプチド配列の影響を受けており、生物学的方法には、加水分解酵素を用いて植物タンパク質又は動物タンパク質を加水分解してから、特定の機能性ポリペプチドを抽出することが含まれるが、一般に、収量が低く、周期が長く、汚染が厳しいため、工業化生産の実現が難い。もう1つの比較的一般的な方法は、組換え発現であり、即ち、遺伝子工学の技術的手段を用いて、原核生物又は真核生物にターゲット遺伝子発現エレメントを導入し、微生物発酵によりターゲットポリペプチドの高効率合成を実現するが、ポリペプチド自体が短いため、特定の空間構造を形成し難いことにより、それが非常に発現宿主のプロテアーゼによって分解されやすく、また、複雑な精製プロセスにより生成物の収率も低下し、コストが増加する。
【0003】
現在、組換え法で生産したポリペプチドには、ポリペプチド系抗生物質、インターフェロン、リラグルチド前駆体(GLP-1)及びインスリンなどが含まれ、そのうち、GLP-1は、ノボ・ノルディスク・ファーマ株式会社(Novo Nordisk Pharma Ltd.)から開発された、II型糖尿病を治療するためのポリペプチド薬物であり、毎年の売上げが数十億ドルに達し、その最初の合成方式は、サッカロマイセス・セレヴィシエの分泌発現に基づくエンジニアリング菌株であるが、その細胞外プロテアーゼの作用により生成物が分解されやすいため、収量が低く、プロテアーゼをノックアウトした後に発現する最高レベルは59mg/Lしかない。ピキア酵母にGLP-1を融合して発現させ、5日間発酵した後の発現量は26mg/Lしかない。大腸菌は、よく使われる宿主として、すでにポリペプチドの生物合成に広く使用されているが、プロテアーゼ分解の恐れが同様に存在し、融合発現により、このような問題を解決することができる。現在、GLP-1は、主に、封入体の融合発現を用い、例えばKSIタグ、インテインペプチドintein及びシグナルペプチド-エンテロキナーゼ酵素切断部位-GLP-1などであり、封入体は、発現量が高く、プロテアーゼによる分解を回避できるが、複雑な変性及び再生の過程に尿素又は塩酸グアニジンなどの変性剤を大量使用する必要があり、精製プロセスの複雑さにより最終の収率が非常に低い。同時に、融合タグを完全に除去するために、通常、エンテロキナーゼを使用する必要があるが、当該酵素は、発現しにくいだけでなく、非特異的切断にもつながる。最近、MFH融合タグで構築した封入体発現を用い、ギ酸による切断及び変性条件下で精製するプロセスを合わせ、再生過程を回避したが、尿素を使用する必要があり、さらに、Tevプロテアーゼ切断によりN端に1つのGlyを含有するGLP-1を取得し、且つTev酵素は、生物活性が低く、非特異的切断が発生し、生産ステップが煩雑であり、コストが高い。例えばGST、MBP、TrxAなどの他の融合タグは、可溶性発現タグとして使用されるものが多く、且つ、一部のペプチドは、これらのタグを介して可溶性発現を得たが、これらのタグの分子量は、一部のターゲットペプチドに対して大きいため、タグを除去した後のターゲットペプチドの収率が低いことになる。さらに、GLP-1及びその誘導体は、ポリマー状態を呈するものが多く、精製は、変性条件で行う必要があり、現在の精製ステップは複雑で、収率が低い。
【0004】
まとめると、従来技術には、主に、以下の問題が存在する。1)化学合成において、プロセスが複雑であり、化学試薬が有毒であり、ラセミ体を生成する可能性があり、周期が長く、製品の品質制御が難しい。2)封入体発現において、変性と再生の精製プロセスが複雑で、尿素を大量使用し、切断過程に使用されるエンテロキナーゼ又はTevは高価であり、非特異性切断が発生しやすく、複雑な変性と再生プロセスにより精製過程が非常に複雑になり、収率が低下する。3)可溶性発現において、現在使用されている可溶性発現タグには、主に、TrxA、GST、MBPが含まれ、ターゲットペプチドセグメント及びタグに酵素切断部位を加える必要があり、よく使われる酵素は、一般的に発現しにくく、且つ非特異的切断につながり、Sumoタグをリラグルチド前駆体の融合発現に使用した研究がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリペプチドの精製ステップが複雑で、収率が低いという従来技術における技術的問題を解決するための、ポリペプチドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現するために、本発明の一態様によれば、ポリペプチドの製造方法を提供する。当該製造方法は、Sumoタグでポリペプチド遺伝子を融合発現するエンジニアリング菌株を構築し、且つエンジニアリング菌株がポリペプチドを可溶性発現するように誘導するステップと、エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップと、Ulp1プロテアーゼを用いてポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を酵素切断し、Sumoタグを切除するステップと、アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法を用いるか、又はヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法を用いて、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物を精製し、ポリペプチドを得るステップと、を含む。
【0007】
さらに、ポリペプチドは、リラグルチド(Liraglutide)前駆体、ネシリタイド(Nesiritide)又はテリパラチド(teriparatide)である。
【0008】
さらに、Ulp1プロテアーゼは、Ulp1プロテアーゼ発現菌株を構築して、発現を誘導することにより得られるものであり、ここで、Ulp1プロテアーゼはシャペロンと共発現する。
【0009】
さらに、シャペロンはGroEL/Sシャペロンである。
【0010】
さらに、アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法は、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物のpHを5.6に調整し、続いて、アセトニトリルを加え、均一に混合した後、60~80℃で0.5~3h熱処理し(好ましくは、70℃で2h熱処理し)、その後、上清と沈殿とを遠心分離するステップを含む。
【0011】
さらに、アセトニトリルは、質量百分率が20~70%のアセトニトリル水溶液である。
【0012】
さらに、エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップは、エンジニアリング菌株に対して超音波破砕、遠心分離、膜でのろ過を行った後、粗酵素液を得、続いて、アフィニティークロマトグラフィー又はアニオンカラムを用いて精製し、粗タンパク質を得るステップを含む。
【0013】
さらに、ヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法は、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物のpHを5.6に調整し、続いて、ヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一に混合した後、室温で1h沈殿させ、その後、上清と沈殿とを遠心分離するステップを含む。
【0014】
さらに、ヘキサフルオロイソプロパノールは、質量百分率が20~70%のヘキサフルオロイソプロパノール水溶液であり、好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノールは、質量百分率が50%のヘキサフルオロイソプロパノール水溶液である。
【0015】
さらに、製造方法は、HPLCを用いてターゲットポリペプチドを精製するステップを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、可溶性組換えに基づいて薬用ポリペプチド又はその前駆体を発現する高効率な技術を確立し、ワンステップ沈殿精製に基づく簡単な精製プロセスを確立し、さらにHPLC精製を合わせると、97%以上のポリペプチド純度に達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の一部を構成する明細書と図面は、本発明の更なる理解を提供するために用いられ、本発明の模式的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明を不当に限定するものではない。
【
図1】実施例1及び5における、Sumo-Lira融合タンパク質の発現、アフィニティークロマトグラフィーでの精製によるターゲットタンパク質のSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1はタンパク質分子量基準であり、Lane2はSumo-Lira可溶性発現部分であり、Lane3はフロースルー試料であり、Lane4は60mMイミダゾール溶出製品であり、Lane5は300mMのイミダゾール溶出製品である。
【
図2】実施例2及び3における、Sumo-Nesi及びSumo-Teriの融合発現によるターゲットタンパク質のSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1はタンパク質分子量基準であり、Lane2、3はSumo-Teri可溶性発現部分であり、Lane4はSumo-Teri沈殿部分であり、Lane5はSumo-Nesi可溶性発現部分であり、Lane6はSumo-Nesi沈殿部分である。
【
図3】実施例4における、Ulp1の発現最適化中のターゲットタンパク質のSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1はIPTG誘導Ulp1、37℃、6h、可溶性発現部分であり、Lane2はタンパク質分子量基準であり、Lane3はIPTG誘導Ulp1、37℃、6h、沈殿部分であり、Lane4はIPTGで誘導されたUlp1とGroEL/Sとを共発現させる菌株、37℃、6h、可溶性発現部分であり、Lane5はIPTGで誘導されたUlp1とGroEL/Sとを共発現させる菌株、37℃、6h、沈殿部分である。
【
図4】実施例5における、アニオンカラムクロマトグラフィーでSumo-Liraターゲットタンパク質を精製するSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1はタンパク質分子量基準であり、Lane2はSumo-Lira破砕液の上清であり、Lane3はフロースルー試料であり、Lane4は50mMのNaCl溶出であり、Lane5は100mMのNaCl溶出であり、Lane6は500mMのNaCl溶出であり、Lane7は700mMのNaCl溶出である。
【
図5】実施例7における、Ulp1アフィニティークロマトグラフィーでターゲットタンパク質を精製するSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1はタンパク質分子量基準であり、Lane2はUlp1可溶性発現部分であり、Lane3はフロースルー試料であり、Lane4は500mMのイミダゾール溶出である。
【
図6】実施例9における、アセトニトリルでリラグルチド前駆体ターゲットタンパク質を沈殿させたSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1は、20%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の上清部分であり、Lane2は、20%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の沈殿部分であり、Lane3は、30%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の上清部分であり、Lane4は、30%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の沈殿部分であり、Lane5はタンパク質分子量基準であり、Lane6は、40%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の上清部分であり、Lane7は、40%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の沈殿部分であり、Lane8はタンパク質分子量基準であり、Lane9は、50%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の上清部分であり、Lane10は、50%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の沈殿部分であり、Lane11は、60%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の上清部分であり、Lane12は、60%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の沈殿部分であり、Lane13は、70%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の上清部分であり、Lane14は、70%アセトニトリル、pH5.6、70℃で処理した後の沈殿部分である。
【
図7】実施例9における、アセトニトリルでNesi及びTeriターゲットタンパク質を沈殿させたSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1はタンパク質分子量基準であり、Lane2はUlp1によるSumo-Nesiの切断であり、Lane3はSumo-NesiのUlp1酵素切断体系を沈殿法で処理した上清部分であり、Lane4はSumo-NesiのUlp1酵素切断体系を沈殿法で処理した沈殿部分であり、Lane5はUlp1によるSumo-Teriの切断であり、Lane6はSumo-TeriのUlp1酵素切断体系を沈殿法で処理した上清部分であり、Lane7はSumo-TeriのUlp1酵素切断体系を沈殿法で処理した沈殿部分である。
【
図8】実施例9における、HFIP沈殿法でリラグルチド前駆体を精製したSDS-PAGE電気泳動図を示し、ここで、Lane1は、18%HFIPで選択的に沈殿させた上清液であり、Lane2は、18%HFIPで選択的に沈殿させた沈殿部分であり、Lane3は、50%HFIPで選択的に沈殿させた上清液であり、Lane4は、50%HFIPで選択的に沈殿させた沈殿部分であり、Lane5は、70%HFIPで選択的に沈殿させた上清液であり、Lane6は、70%HFIPで選択的に沈殿させた沈殿部分である。
【
図9】実施例9及び10における、リラグルチド前駆体製造のHPLC精製クロマトグラムを示す。
【
図10】実施例10における、リラグルチド前駆体純度分析クロマトグラムを示す。
【
図11】実施例10における、Nesi製造のHPLC精製クロマトグラムを示す。
【
図12】実施例10における、Nesi純度分析クロマトグラムを示す。
【
図13】実施例10における、Teri製造のHPLC精製クロマトグラムを示す。
【
図14】実施例10における、Teri純度分析クロマトグラムを示す。
【
図15】実施例11における、質量分析のLiraglutide分子量を示す。
【
図16】実施例11における、質量分析のNesiritide分子量を示す。
【
図17】実施例11における、質量分析のTeriparatide分子量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
なお、本願における実施例及び実施例の特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、図面を参照しながら、実施例と合わせて本発明を詳細に説明する。
【0019】
名詞の解釈
ポリペプチド、英語名はpolypeptideであり、10~50個のアミノ酸残基からなるペプチドである。
【0020】
リラグルチドは、ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似体であり、英語名はLiraglutideで、Liraと略称する。
【0021】
ネシリタイドは、英語名はNesiritideで、Nesiと略称する。
【0022】
テリパラチドは、英語名はTeriparatideで、Teriと略称する。
【0023】
ポリペプチド前駆体は、本発明ではSumoタグを有するポリペプチドを言う。
【0024】
本発明の典型的な実施形態によれば、ポリペプチドの製造方法を提供する。当該製造方法は、Sumoタグでポリペプチド遺伝子を融合発現するエンジニアリング菌株を構築し、且つエンジニアリング菌株がポリペプチドを可溶性発現するように誘導するステップと、エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップと、Ulp1プロテアーゼを用いてポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を酵素切断し、Sumoタグを切除するステップと、アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法を用いるか、又はヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法を用いて、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物を精製し、ポリペプチドを得るステップと、を含む。
【0025】
本発明は、Sumoタグに基づいてタンパク質の可溶性発現を促進することができ、且つ、Sumoタグは、融合タグとして三段構造を特異的に認識するUlp1プロテアーゼ(SUMOプロテアーゼ)によって効率よく切除されることができ、そして、非特異的切断の方法によるターゲットポリペプチドの取得につながらないため、封入体変性の問題を回避し、Sumoタグがポリペプチド遺伝子を融合発現するエンジニアリング菌株を構築した。
【0026】
典型的に、本発明におけるポリペプチドは、リラグルチド前駆体、ネシリタイド又はテリパラチドであってもよい。
【0027】
また、融合発現タグによる必要なプロテアーゼの除去が高価であり、且つ、非特異的切断を起こすという問題について、Ulp1でSumoタグを特異的に切断する策略を用い、Ulp1が識別するのは、Sumoタグの空間構造であり、特異的部位のみで切断を行い、高効率のUlp1エンジニアリング菌株の取得及びUlp1の容易な精製のために、Ulp1とシャペロンとが共発現させる菌株を構築し、好ましくは、シャペロンはGroEL/Sシャペロンであり、Ulp1の発現レベルを大幅に向上させた。
【0028】
本発明の典型的な実施形態によれば、アセトニトリルと加熱沈殿とを組み合わせる方法は、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物のpHを5.6(等電点のデータを組み合わせて取得)に調整し、続いて、アセトニトリルを加え、均一に混合した後、60~80℃で0.5~3h熱処理し(好ましくは、70℃で2h熱処理し)、その後、上清と沈殿とを遠心分離するステップを含む。好ましくは、アセトニトリルは、質量百分率が20~70%のアセトニトリル水溶液であり、20~70%の濃度のアセトニトリルは、いずれも良好な予備精製効果を有する。
【0029】
本発明の一典型的な実施形態において、エンジニアリング菌株から精製してポリペプチド前駆体を含有する粗タンパク質を得るステップは、エンジニアリング菌株に対して超音波破砕、遠心分離、膜でのろ過を行った後、粗酵素液を得、続いて、アフィニティークロマトグラフィー又はアニオンカラムを用いて精製し、粗タンパク質を得るステップを含む。
【0030】
本発明の典型的な実施形態によれば、ヘキサフルオロイソプロパノールによる沈殿の方法は、Ulp1プロテアーゼの酵素切断による生成物のpHを5.6に調整し、続いて、ヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一に混合した後、室温で1h沈殿させ、その後、上清と沈殿とを遠心分離するステップを含み、好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノールは、質量百分率が20~70%のヘキサフルオロイソプロパノール水溶液であり、好ましくは、50%のヘキサフルオロイソプロパノールを使用して選択的に沈殿させた後、上清液におけるリラグルチド前駆体の濃度は約90%である。
【0031】
好ましくは、製造方法は、さらに、HPLCを用いてターゲットポリペプチドを精製するステップを含む。リラグルチド前駆体は、凝集しやすく、本発明では、有機溶媒処理及び逆相精製の方法を用い、凝集効果による精製の問題を回避することができる。
【0032】
以下、実施例と合わせて、本発明の有益な効果についてさらに説明する。
【0033】
実施例1
Sumoタグでリラグルチド前駆体(Liraと略称)を融合発現する遺伝子エンジニアリング菌株の構築
ポリペプチドの可溶性発現に基づく策略の構築とは、具体的には、Sumoタグを用いてターゲットポリペプチド配列と融合させ、pET-28a(+)又はpET-22b(+)発現ベクターに構築することである。GENEWIZによって全遺伝子合成が行われ、コドン最適化を経たSumo-Lira配列は、配列5’端にNdeI酵素切断部位が導入され、配列3’端にXhoI酵素切断部位が導入され、pUC57クローンベクターに構築され、配列は、下記のとおりである。
配列番号1は、CATATGGGCGGCAGTCTGCAAGATAGCGAAGTGAATCAAGAAGCGAAGCCAGAAGTGAAACCGGAAGTTAAACCGGAGACCCACATCAATCTGAAGGTGAGCGACGGCAGCAGCGAGATCTTCTTCAAGATCAAGAAGACGACCCCGCTGCGTCGTCTGATGGAAGCCTTCGCCAAACGCCAAGGCAAAGAAATGGACAGTCTGCGCTTTCTGTACGATGGTATCCGCATCCAAGCCGATCAAGCCCCGGAAGATCTGGACATGGAGGACAACGACATCATCGAGGCGCATCGCGAACAGATCGGCGGCCATGCCGAAGGCACCTTCACCAGCGATGTTAGCAGCTATCTGGAAGGCCAAGCCGCCAAAGAATTCATCGCGTGGCTGGTTCGCGGCCGCGGTTAGCTCGAGである。ここで、下線を付した部分がSumoタグであり、後ろに続くのがリラグルチド前駆体配列である。
【0034】
合成された遺伝子断片をpUC57-Sumo-LiraからNdeI及びXhoIで酵素切断し、ゲルで切断して回収した後、同様に酵素切断したpET-28a(+)又はpET-22b(+)と16℃で一晩連結し、その後、BL21(DE3)コンピテント細胞を形質転換し、モノクローンのシークエンシング分析を行って、正確なクローン発現ベクターpET-28a-Sumo-Lira又はpET-22b-Sumo-Liraを取得し、形質転換毎に3つの正確なクローンを選択して活性化した後、種として250mLのフラスコで予備スクリーニングし、それらから最適なものを選択して最終の発現菌株とした。組換えプラスミド含有のBL21(DE3)菌株を4mL取って、LB培地を600mL含有する2L三角フラスコに接種し、37℃、200rpmでOD600が1.0になるまで振とう培養したとき、最終濃度が1mMのIPTGを加え、37℃で6h誘導して、誘導が終了すると、4℃で遠心分離して菌体を採集した。超音波破砕により、上清を採集し、12%分離ゲルSDS-PAGE結果から分かるように、ターゲットタンパク質が主に可溶性発現を呈した(
図1)。
【0035】
実施例2
SumoタグでNesiritide(ネシリタイド、Nesiと略称)を融合発現する遺伝子エンジニアリング菌株の構築
同様に、Sumoタグで融合発現する策略を用い、ベクターの構築策略は、実施例1と同じであり、合成遺伝子の配列は、下記のとおりである。
配列番号2は、CATATGGGCGGCAGTCTGCAAGATAGCGAAGTGAATCAAGAAGCGAAGCCAGAAGTGAAACCGGAAGTTAAACCGGAGACCCACATCAATCTGAAGGTGAGCGACGGCAGCAGCGAGATCTTCTTCAAGATCAAGAAGACGACCCCGCTGCGTCGTCTGATGGAAGCCTTCGCCAAACGCCAAGGCAAAGAAATGGACAGTCTGCGCTTTCTGTACGATGGTATCCGCATCCAAGCCGATCAAGCCCCGGAAGATCTGGACATGGAGGACAACGACATCATCGAGGCGCATCGCGAACAGATCGGCGGCTCTCCGAAAATGGTTCAGGGTTCTGGTTGCTTCGGTCGTAAAATGGACCGTATCTCTTCTTCTTCTGGTCTGGGTTGCAAAGTTCTGCGTCGTCACTAGCTCGAGである。ここで、下線を付した部分がSumoタグであり、後ろに続くのがネシリタイド配列である。
【0036】
遺伝子は、酵素切断と連結を経て、pET-28a(+)に構築され、シークエンシングにより正確な発現プラスミドpET-28a-Sumo-Nesi及び当該発現を含有する組換えBL21(DE3)菌株を取得し、Sumo-Liraと同様な方法を用い、IPTG誘導後の融合タンパク質は可溶性発現を呈した(
図2)。
【0037】
実施例3
SumoタグでTeriparatide(テリパラチド、Teriと略称)を融合発現する遺伝子エンジニアリング菌株の構築
同様に、Sumoタグで融合発現する策略を用い、ベクターの構築策略は、実施例1と同じであり、合成遺伝子の配列は、下記のとおりである。
配列番号3は、CATATGGGCGGCAGTCTGCAAGATAGCGAAGTGAATCAAGAAGCGAAGCCAGAAGTGAAACCGGAAGTTAAACCGGAGACCCACATCAATCTGAAGGTGAGCGACGGCAGCAGCGAGATCTTCTTCAAGATCAAGAAGACGACCCCGCTGCGTCGTCTGATGGAAGCCTTCGCCAAACGCCAAGGCAAAGAAATGGACAGTCTGCGCTTTCTGTACGATGGTATCCGCATCCAAGCCGATCAAGCCCCGGAAGATCTGGACATGGAGGACAACGACATCATCGAGGCGCATCGCGAACAGATCGGCGGCTCTGTTTCTGAAATCCAGCTGATGCACAACCTGGGTAAACACCTGAACTCTATGGAACGTGTTGAATGGCTGCGTAAAAAACTGCAGGACGTTCACAACTTCTAACTCGAGである。ここで、下線を付した部分がSumoタグであり、後ろに続くのがテリパラチド配列である。
【0038】
遺伝子は、NdeI及びXhoIの酵素切断と連結を経て、pET-28a(+)に構築され、シークエンシングにより正確な発現プラスミドpET-28a-Sumo-Teri及び当該発現を含有する組換えBL21(DE3)菌株を取得し、Sumo-Liraと同様な発現条件を用い、IPTG誘導後の融合タンパク質は可溶性発現を呈した(
図2)。
【0039】
実施例4
Ulp1プロテアーゼ発現菌株の構築
Ulp1プロテアーゼのC端部分(D390~K621)をPCR方法によりサッカロマイセス・セレヴィシエS288Cゲノムから直接増幅し、使用されるプライマーは、Ulp1-F(配列番号4):gggcatatgGATCTTAAAAAAAAGAAAGAACAATTGGCCAAGAAGAAACTTG及びUlp1-R(配列番号5):Gggctcgaggtattttaaagcgtcggttaaaatcaaatgggcであり、遺伝子配列は、下記のとおりである(又は配列に従って人工的に合成してもよい)。
【化1】
【0040】
増幅された遺伝子断片は、NdeI及びXhoIによる酵素切断の後にpET-28a(+)に連結され、発現ベクターpET-28a-Ulp1を取得し、BL21(DE3)を形質転換し、形質転換体に対してシークエンシングを行った。シークエンシングが正確なクローンを3つ選択して種とし、250mLのフラスコで予備スクリーニングを行い、その中から最適なものを選択して最終の発現菌株とした。組換えプラスミドを含有するBL21(DE3)菌株を4mL取って、600mLのLB培地を含有する2Lの三角フラスコに接種し、37℃、200rpmでOD600が1.0になるまで振とう培養したとき、最終濃度が1mMのIPTGを加え、37℃で6h誘導し、誘導が終了すると、4℃で遠心分離して菌体を採取した。超音波破砕により、上清を採集し、12%分離ゲルSDS-PAGE結果から分かるように、ターゲットタンパク質部分が可溶性発現を呈した。Ulp1の発現レベルをさらに向上させるために、発現ベクターpET-28a-Ulp1とシャペロンGroEL/Sの発現プラスミドpGRO7とを共発現させ、SDS-PAGE結果から分かるように、Ulp1の発現レベルが一層向上した(
図3)。
【0041】
実施例5
Sumo-Liraの精製
発現したSumo-Lira細菌スラッジを20%の細菌濃度で再懸濁し、超音波で破砕し(5s超音波、6sの間隔、35%パワー)、遠心分離し、0.45μmのフィルター膜を通過させると、粗酵素液を取得し、続いて、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製(AKTAシステムに5mLのHisTrap HPを搭載)を行った。具体的な流れは、次のとおりである。フィルター膜で試料をろ過し、5mL/minの流速でローディングし、続いて、結合バッファー(20mMのTris-HCl、500mMのNaCl、pH7.4)を用いて、未結合タンパク質が完全に溶出するまで洗浄し、次に、60mMのイミダゾールを用いて4カラム体積のタンパク質不純物を溶出し、続いて、500mMでターゲットタンパク質を溶出した(
図1)。当該試料は、脱塩及びイミダゾール除去を必要とせずに、直接Ulp1酵素切断することができる。1gの細菌スラッジから、精製されたSumo-Lira融合タンパク質を35~40mg得ることができ、1gの細菌スラッジから、精製されたSumo-Nesiを15.2mgを得ることができ、1gの細菌スラッジから、精製されたSumo-Teriを18.3mgを得ることができる(条件を最適化して一層向上させることができる)。
【0042】
コストを低減するために、発現Sumo-Liraをアニオンカラムで精製することを試み、粗タンパク質の取得方式はアフィニティークロマトグラフィーと同じであり、アニオンカラムが搭載されているAKTAシステム(Q FF、5mL)を用い、流速は5mL/minであり、結合バッファーは、pH8.0の50mMのTris-HClで、ローディングした後、結合バッファーを用いて未結合タンパク質が完全に溶出するまで洗浄し、続いて、50mMのTris-HClを用い、pH8.0の1MのNaClで勾配溶出し、500mM勾配でターゲットタンパク質を取得し、SDS-PAGE分析から分かるように、ターゲットタンパク質は、80%以上の純度を達成でき(
図4)、試験によると、当該ステップで精製された試料も、同様に、脱塩を必要とせずに、Ulp1で直接酵素切断することができた。
【0043】
実施例6
Sumo-Teri及びSumo-Nesiの精製
菌株を組換えて発現を誘導して取得した細菌スラッジから、Sumo-Lira試料と同様の方式により粗タンパク質を取得し、さらに、同様に、同じアフィニティークロマトグラフィー方式を用いて精製して、ターゲット融合タンパク質を取得した。
【0044】
実施例7
Ulp1の精製
発現したUlp1細菌スラッジを10%の細菌濃度で再懸濁し、超音波で破砕し(5s超音波、6sの間隔、35%パワー)、遠心分離し、0.45μmのフィルター膜を通過させた後、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製(AKTAシステムに5mLのHisTrap HPを搭載)を行った。具体的な流れは、次のとおりである。フィルター膜で試料をろ過し、4mL/minの流速でローディングし、続いて、結合バッファー(20mMのTris-HCl、500mMのNaCl、pH7.4)を用いて、未結合タンパク質が完全に溶出するまで洗浄し、次に、60mMのイミダゾールを用いて4カラム体積のタンパク質不純物を溶出し、続いて、500mMでターゲットタンパク質を溶出し、結果は、
図5のSDS-PAGEに示すように、ターゲットタンパク質純度は約70%に達し、取得したターゲットタンパク質は、脱塩を必要とせずに、よく接融合タンパク質Sumo-Lira、Sumo-Teri及びSumo-Nesiの酵素切断(実施例5及び6の生成物)に使用した。
【0045】
実施例8
酵素切断
Ulp1酵素切断反応は30℃で行われ、具体的な過程は、次のとおりである。50mMのTris-HCl、10mMのDTT、pH8.0で精製したSumo-Lira(実施例5の生成物)とUlp1との質量比は10:1~1:1(mg/mg)であり、異なる時間でサンプリングし、Tricineを用いてその切断効率を検出し、ターゲットポリペプチドが生成したか否かを検出し、24hで切断効率が80%以上に達することができた。Sumo-Teri及びSumo-Nesiの酵素切断条件は、Sumo-Liraと同じである。
【0046】
実施例9
アセトニトリル/加熱沈殿法でのターゲットポリペプチドの精製
実施例8の酵素切断が完了した後、pHを5.6に調整し、続いて、反応体系に異なる最終濃度のアセトニトリル(20%、30%、40%、50%、60%、70%)を加え、均一に混合した後、70度で2h熱処理し、その後、12000rpmで上清と沈殿とを遠心分離し、Tricineでポリペプチドの分布状況を検出し、結果から、組み合わせた条件で、20~70%濃度範囲のアセトニトリルは、いずれも良好な予備精製効果を有し、処理後のリラグルチド前駆体粗製品の純度は90%以上に達することができ(
図6)、Nesiの純度は80%に達することができ、Teriの純度は50%に達することができる(
図7)ことを見出した。さらに、回転蒸発又は凍結乾燥法を用いてポリペプチド粗製品におけるアセトニトリルを除去し、続いて、pH7.0の50mMのTris-HClに再溶解させ、製造レベルのHPLC精製を行った。
【0047】
ヘキサフルオロイソプロパノール(hexafluoroisopropanol、HFIP)によるリラグルチド前駆体の沈殿
実施例8の酵素切断が完了した後、pHを5.6に調整し、反応体系にそれぞれ10%~70%(v/v)のヘキサフルオロイソプロパノールを加え、室温で1h沈殿させ、遠心分離し、上清及び沈殿を採集し、Tricine-SDS-PAGEを使用して、異なる濃度のヘキサフルオロイソプロパノールのリラグルチド前駆体に対する選択的な沈殿効果を検出し、結果は、
図9に示すように、50%のヘキサフルオロイソプロパノールを使用して選択的に沈殿させた後、上清液におけるリラグルチド前駆体の濃度は約90%であった(
図8)。さらに、回転蒸発又は凍結乾燥を用いてポリペプチド粗製品におけるヘキサフルオロイソプロパノールを除去し、続いて、pH7.0の50mMのTris-HClに再溶解させ、且つ製造レベルのHPLC精製を行った。
【0048】
実施例10
HPLCを製造してターゲットポリペプチドを精製
実施例9の生成物は、UniSil AQ C18 10μm 21.5*250mmを用い、使用されるバッファーは、バッファーAが0.1%TFAで、バッファーBがアセトニトリルである。Liraに用いられる勾配溶出方式は、0minに5%Bで、5minに5%Bで、25minに50%Bで、27minに95%Bで、33minに95%Bで、38minに5%Bであり、紫外線検出器が210nmであり、流速が25mL/minであり、温度が25℃であることである。結果は、
図9に示すように、Liraは、24min付近で溶出され、その後、試料を採集して回転蒸発させ、大部分の溶媒を除去した後に凍結乾燥し、純度をHPLC方法で検出し、結果から分かるように、Liraの純度は98%以上に達した(
図10)。
【0049】
Nesiに用いられる勾配溶出方式は、5minに5%Bで、35minに30%Bで、40minに95%Bであり、紫外線検出器が210nmであり、流速が25mL/minであり、温度が25℃であることである。結果は、
図11に示すように、Nesiは、30minで溶出され、その後、試料を採集して回転蒸発させ、大部分の溶媒を除去した後、凍結乾燥し、純度をHPLC方法で検出し、結果から分かるように、Nesi純度は98%以上に達した(
図12)。
【0050】
Teriに用いられる勾配溶出方式は、5minに5%Bで、35minに30%Bで、47.8minに42.8%Bで、50.5minに42.8%Bで、57.7minに50%Bで、67.7minに95%Bで、40minに95%Bであり、紫外線検出器が210nmであり、流速が25mL/minであり、温度が25℃であることである。結果は、
図13に示すように、Teriは、約43minに溶出され、その後、試料を採集して回転蒸発させ、大部分の溶媒を除去した後に凍結乾燥し、純度をHPLC方法で検出し、分析カラムは、Eclipse plus C18 4.6×100mm 3.5μmであり、210nmで検出し、flow=1.5ml/minであり、溶出勾配は、0minに10%Bで、9minに95%Bで、12minに100%で、12.1minに10%Bで、15minに10%Bであった。結果から分かるように、Teri純度は~78%に達した(
図14)。
【0051】
この方法を用いてリラグルチド前駆体を製造し、1gのフラスコ発酵細菌スラッジから純度が98%のリラグルチド前駆体を3~4mg取得でき、この方法により1gの細菌スラッジを製造し、純度が98%のNesiを1.26mg取得でき、この方法により1gの細菌スラッジを製造し、純度が78%のTeriを1.55mg取得でき、更なる発酵と最適化により融合タンパク質の発現レベルを向上させ、ターゲットポリペプチドの収率を一層向上させることが見込まれる。
【0052】
実施例11
質量スペクトルによるポリペプチド分子量の検出
製造したポリペプチド(実施例10の生成物)の分子量を、LC-MSを用いて分析した。具体的には、試料を、先にHPLCカラム(Agilent ZORBAX Edipse Plus C18、4.6*100mm、3.5μmによって分離し、移動相Aが0.1%トリフルオロ酢酸であり、移動相Bが0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液であり、用いられる勾配溶出方式は、0minに10%Bで、9minに95%Bで、12minに100%Bで、12.1minに10%Bで、15minに10%Bであり、カラム温度は40℃であり、紫外線検出器は210nmであり、流速が1.5mL/minであることである)によって分離し、アジレント6200シリーズ飛行時間液体クロマトグラフ質量分析計を使用して、HPLC分離後の成分の構造を同定し、エレクトロスプレーイオン源(Dual AJS ESI)を用いてポジティブイオンモードを検出し、スプレー圧力は35psigで、イオン源温度は300℃で、乾燥ガス(N2)の流速は10L/minで、スキャン範囲は100~2000m/zで、フラグメント(Fragmentor)電圧は70Vであり、Analystソフトウェアにより質量スペクトルデータを採集及び処理する。Liraは、理論的分子量が3383.7Daで、質量分析の分子量が3382.7であり(
図15)、Nesiは、理論的分子量が3464.8で、質量分析分子量が3463.7であり(
図16)、Teriは、理論的分子量が4117.7で、質量分析の分子量が4118.7である(
図17)。
【0053】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明の種々の変更及び変形が可能である。本発明の趣旨及び原理を逸脱しない範囲で行われた任意の修正、等価置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】